説明

外気温予測による車両用警告装置

【課題】外気温度等の気象情報を情報センターから取り込み、次に車を発進するまでにサイドブレーキが凍結する等の警告を的確に出力することができるようにした「外気温予測による車両用警告装置」とする。
【解決手段】現在位置が予め登録した長時間駐車する地点、長時間駐車する施設のジャンル、或いはナビゲーション装置の走行履歴等により長時間駐車する位置の検出等による所定の位置に現在駐車することを検出した時、そこに駐車する時間帯を予測設定する。その時間帯の外気温度変化等の気象データを外部の情報センターから取り込み、予め設定しているサイドブレーキ凍結条件のデータとを比較し、その条件内の時には、サイドブレーキが凍結する旨の画面或いは音声で警告出力する。同様の手法によりフロントガラスの着霜凍結の警告出力等をを行うことも可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外気温度等の予測データを利用して、例えばサイドブレーキの凍結等の車両の運転に障害が発生しそうなことを警告する外気温予測による車両用警告装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の車両は通常の運転操作を行っている限りほとんど故障しないようになってきたものの、特別な環境下にある時には思わぬ故障をすることがある。その一つとして、比較的寒い地方において、冬季の夜間に、屋外にサイドブレーキをかけたまま駐車していると、サイドブレーキが凍結し、車両を発車させようとしてもサイドブレーキが戻らず、無理をして発車するとサイドブレーキをかけたまま走行することになるためサイドブレーキが焼損する等により、その後修理せざるを得なくなることがある。
【0003】
その原因としては種々考えられるが、主として車両の前方からサイドブレーキがかかる後輪まで、多くの車はワイヤで接続しているため、そのワイヤを保護するカバーに外部からの水分が進入し、これが特に冬季の夜間の外気温度が低い時に凍結してしまい、ワイヤが動かなくなることが主たる原因と言われている。
【0004】
そのため、寒冷地においては、屋外に駐車する際はサイドブレーキを引くことなく、例えばギアをパーキング位置にし、或いは上り坂ではギアをドライブ側に、また下り坂ではバック側に入れて駐車することも行われている。特に頻繁にサイドブレーキの凍結を経験した人は、冬季は常にサイドブレーキをかけないようにす人すらある。
【0005】
しかしながらこのようなサイドブレーキをかけないことの習慣化は危険であり、特に長時間の駐車中はできる限りサイドブレーキをかけておくことが望ましい。また、近年はほとんどの車がオートマチック車となっているが、この種の車でもシフトレバーをパーキングに入れておくと車は動かないものの、例えばある程度の坂道では自動変速機内部のギヤやクラッチに負担がかかり、長期間のうちには自動変速機の不調の原因になる場合もある。
【0006】
一方、冬季における車両の障害としては、フロントガラスの着霜の問題がある。このような着霜は、軽度の場合は拭き取り、或いは熱湯で溶かす等によって解決することができる。また、車両の内部からはデフロスタによって着霜を溶かす補助を行うこともできる。しかしながら、通常の着霜が一時的な気温上昇でペースト状になった後、明け方等の気温低下によって、これが凍結してしまい、拭き取ることはできず、少しくらいの熱湯では溶かすことができない。また、ある程度大量の熱湯を車両まで運ぶには多くの手数を要し、またそのように多量の熱湯を得ることができない場合も多い。
【0007】
このようなフロントガラスの着霜やその凍結は気象条件によって異なり、日中はある程度暖かく、夜間に冷える地域で、空気中に比較的水分の多い時に着霜し、夜間に外気温の変化があり、その後更に低下するとそれが厚く凍り付き、とれなくなってしまう。そのため、車の利用者は大きなバスタオルや各種布を巻き、その端を可動ウインドに挟み込んで止める等の種々の対策を行い、更にはフロントガラスの着霜防止器具として売られている、フロントカラスカバーを用いる等の対策を行っている。
【0008】
しかしながらこのような着霜の凍結防止は面倒であり、しかも冬季にいつでも生じるとは限らず、湿度も含めた気象条件にもよるため、常に着霜凍結予防の各種の手段を講じることは困難であり、その対策を行っている人でも、たまにその対策をしなかった時にフロントガラスの着霜凍結がある等、出勤時等で急いでいる運転者をいらいらさせる原因となっている。
【0009】
一方、近年はナビゲーション装置の高機能化によって外部との通信が可能なシステムを車両に搭載するようになっている。その際の外部とは、例えば車両メーカーが運営している情報センターや、独自に各種情報を提供する情報センター等、種々の情報センターが存在する。これらの情報センターでは特定の地域の交通情報以外に広範囲の交通情報を提供し、また、観光地や公園等の行楽情報、美術館や映画館等の各種施設の情報等、極めて広範囲の情報を独自の通信システム、或いはインターネットを通して提供している。そのため、各車両は例えば携帯電話を用いてこれらの情報センターと接続し、必要とする情報を容易に取り込むことができるようになっている。
【0010】
これらの情報センターから提供される情報の中には天気予報等の気象情報も存在する。この気象に関する情報には、例えば特定の地方について3時間毎の気象の移り変わりの情報の他、例えば特定の時間の外気温度や、3時間毎の外気温度の移り変わりの予測情報も提供されている。
【0011】
このような気象情報については、前記のような車両専用の情報センター以外に、主として特定の会員会社等に詳細な天気予報の情報を提供すると共に、一般の人向けにはある程度粗い情報ではあるものの、一般の人の通常の使用時には充分な情報を公開している、気象情報センターも存在する。したがって、このような気象情報センターからも、特定の地域についての天気予報や、気温の移り変わり等の気象情報を、車両からでも取り込むことができるようになっている。
【0012】
なお、サイドブレーキ(パーキングブレーキ)の作動を検出し、且つ運転席側のドアの開閉を検出して運転者が外に出ることを検出すると共に、更に外気温を検出して、所定温度以下の凍結温度であることを検出した時には、サイドブレーキが凍結する恐れがある旨の警報出力を行うようにした技術は下記特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開昭62−225444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
前記特許文献に記載しているように、サイドブレーキをかけて運転者が外に出ようとすると、外気温が低いことによりサイドブレーキが凍結する恐れがある旨の警報を出力する技術では、現在の外気温度を計測しているため、例えば夕方に車で会社から帰宅した時のような場合、外気温が5℃の時には凍結しないものとして、警報は出力されないものの、その夜間に−5℃以下に長時間なった場合には、次の朝出勤する時にサイドブレーキが凍結している、という事態が生じ、これではサイドブレーキの凍結対策としては充分と言うことができない。
【0015】
また、前記特許文献に記載している技術では、例えばコンビニで買い物をしてすぐ帰ってくる場合でも、外気温が所定温度以下の状態では、運転者が車外に出るたびに警報を出力することとなり、このような装置は有効な時はあっても、日常は逆にその機能の存在が煩わしく感じ、日常的にその機能を解除してしまい、本当に必要な時にその機能を使用しないでサイドブレーキの凍結を招いてしまうことも考えられる。
【0016】
したがって本発明は、気象情報を提供している情報センターを利用し、これからの外気温度の変化を含む気象情報を取り込み、運転者が車両から降りようとする時、外気温度変化の予測情報により、また、車両が駐車している場所を判断することにより、外気温の変化によって車両が次に発進する時に障害を生じる恐れがある旨の警報を、本当に必要な場所で、本当に必要な時に出力することができるようにした外気温予測による車両用警告装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る外気温予測による車両用警告装置は、前記課題を解決するため、外部から気象予報データを取り込む気象予報データ取込手段と、現在位置データを取り込んで現在位置が予め設定した長時間駐車する位置にあることを検出する長時間駐車位置検出手段と、前記長時間駐車位置検出手段で車両が現在長時間駐車位置にあることを検出した時、その駐車位置に駐車する時間帯を設定する駐車時間帯設定手段と、前記駐車時間帯設定手段で設定した時間帯における、前記気象予報データ取込手段で取り込んだデータを処理する所定時間帯内気象データ処理手段と、車両の走行に障害が発生する気象データを記憶する車両走行障害発生気象データ記憶手段と、前記所定時間帯内気象データ処理手段のデータと、前記車両走行障害発生気象データ記憶手段のデータにより、車両が駐車した時に次の車両の走行に障害が発生する恐れあることを警告出力する警告出力手段とを備えたことを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る他の外気温予測による車両用警告装置は、前記外気温予測による車両用警告装置において、前記車両の走行の障害はサイドブレーキの凍結であり、前記車両走行障害発生気象データ記憶手段では、サイドブレーキの凍結を生じる温度データを記憶することを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る他の外気温予測による車両用警告装置は、前記外気温予測による車両用警告装置において、前記車両の走行の障害はフロントガラスの着霜凍結であり、前記車両走行障害発生気象データ記憶手段では、フロントガラスに着霜し凍結する温度データを記憶することを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る他の外気温予測による車両用警告装置は、前記外気温予測による車両用警告装置において、前記警告出力手段では、外気温度と天候を考慮して、警告を出力するか判断することを特徴とする。
【0021】
また、本発明に係る他の外気温予測による車両用警告装置は、前記外気温予測による車両用警告装置において、前記長時間駐車位置検出手段で検出する位置は、予め登録している警告出力要求場所であることを特徴とする。
【0022】
また、本発明に係る他の外気温予測による車両用警告装置は、前記外気温予測による車両用警告装置において、前記長時間駐車位置検出手段で検出する位置は、ナビゲーション装置に蓄積した走行履歴データを用いて設定する位置であることを特徴とする。
【0023】
また、本発明に係る他の外気温予測による車両用警告装置は、前記外気温予測による車両用警告装置において、前記長時間駐車位置検出手段で検出する位置は、予め登録してあるジャンルの施設の位置であることを特徴とする。
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明は上記のように構成したので、気象情報を提供している情報センターを利用し、これからの外気温度の変化を含む気象情報を取り込み、運転者が車両から降りようとする時、外気温度変化の予測情報により、また、車両が駐車している場所を判断することにより、例えばサイドブレーキが夜間の外気温低下で凍結する等の、外気温の変化によって車両が次に発進する時に障害を生じる恐れがある旨の警報を、本当に必要な場所で、本当に必要な時に出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例の機能ブロック図である。
【図2】同実施例におけるサイドブレーキの凍結警告出力用の作動フロー図である
【図3】同実施例において各種の警告出力を行う一般化した作動フロー図である。
【図4】外気温度予測例を示すグラフである。
【図5】(a)は車両障害発生温度データ例、(b)はサイドブレーキ凍結警告例、(c)はフロントガラス着霜凍結警告例である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0026】
本発明の実施例を図面に沿って説明する。図1は本発明の機能ブロック図であり、特に外気温度変化によって車両が次に発進する時に障害になる状態として、サイドブレーキの凍結と、フロントガラスの着霜凍結対策を行うことができるようにした例を示している。したがって、本発明は図1に示す各種機能部を適宜選択して利用することによって種々の態様で実施することができる。なお、図1に示す各機能部は、それぞれの機能を行う手段ということができる。
【0027】
図1に示す例においては、本発明の主たる機能を行う外気温予測対応警告出力処理部1を備え、気象予報データ取込部12においては、例えば車両に対する各種情報を提供する車両情報センター3や、特定地域の比較的詳細な気象情報を提供する気象情報センター等の、外部に存在する情報センター2と通信を行い、気象予報データを取り込んでいる。その際には外気温予測データ取込部13において、外気温度の予測データを取り込み、また、天候予測データ取込部14において、例えば湿度や雨、雪等の天候に関する種々のデー^タを取り込む。
【0028】
図1の外気温予測対応警告出力処理部1はナビゲーション装置5からデータを取り込み、また、ナビゲーション装置に接続したモニタ10、或いはスピーカ11から警告を出力できるようにしている。なお、図示の例では警告をナビゲーション装置に接続したモニタ10やスピーカ11から出力する例を示しているが、これらはナビゲーション機能を有するヘッドユニット等から出力しても良い。
【0029】
ナビゲーション装置5には通常の装置と同様に現在位置検出部6を備え、GPS受信データを用い、また必要に応じて車速パルスや方位センサを用いた自立航法も用いて正確な現在位置を検出している。本発明では特にこの現在位置データを外気温予測対応警告出力処理部1における長時間駐車位置検出部15に出力し、現在位置が予め決められている長時間駐車する位置であるか否かを検出している。
【0030】
ナビゲーション装置5における警告画像出力部7においては、特に外気温予測対応警告出力処理部1における外気温予測対応警告出力部27で警告出力を行うものとした時、その時の警告出力内容に対応して、モニタ10に例えば「サイドブレーキが凍結する恐れがあります。」のような警告画面を表示する。それに対して警告音声出力部8ではスピーカ11から同様の音声出力を行う。
【0031】
外気温予測対応警告出力処理部1の長時間駐車位置検出部15では、前記のようにナビゲーション装置5の現在位置検出部6からの現在位置データ、及び地図データベース等のデータを取り込み、例えば現在位置が自宅16、予め登録してある勤務先17、予め登録してある月極駐車場18、ナビゲーション装置のデータベースを用いてスキー場19にいること、同様に遊園地等の行楽施設20にいること、ホテル21にいること、或いはレストラン22にいること、等を検出することができるようにしている。
【0032】
前記のような各種の長時間駐車位置としては、後述する警告出力要求場所登録部34に予め、自宅、勤務先、月極駐車場等の特定の位置を登録しておくほか、スキー場、行楽施設、ホテル、レストランのように施設のジャンルで登録しておく。また、ナビゲーション装置5の走行履歴データ蓄積部9のデータを用い、以前より頻繁に行って長時間いる図書館、定期的に行っている研修施設や運動施設等を予め取り込んでおき、現在位置がその場所である時には、いつもの時間そこにいるものとして検出するようにしても良い。この長時間駐車位置検出部15で、現在は長時間駐車する位置にいることを検出したときは、駐車時間帯予測設定部33にそのデータを出力し、現在駐車した位置では現時点から何時間留まるのかを、長時間駐車位置検出部15で取り込んだ各種検出値や設定値を用いて予測し設定する。
【0033】
外気温予測対応警告出力処理部1における所定時間帯内気象データ処理部23では、後述する駐車時間帯予測設定部33において前記長時間駐車位置検出部15で検出した駐車位置、及び駐車開始時間や現在時刻等に対応した駐車時間帯を設定したとき、これを入力して、その所定時間帯内における現在位置の気象データを気象予報データ取込部12で取り込んだデータの中から抽出する処理を行う。
【0034】
車両走行障害発生気象データ記憶部24は、後述する外気温予測対応警告出力部27で警告を出力するべきか否かの判別を行う時の基準データとして、車両走行障害の発生が開始することにより、警告を出力すべき外気温度や、その外気温度が所定温度以下になっている継続時間等の温度データ、更に必要に応じて湿度や雨、風、雪、晴れ等の各種天候データを予め設定しておき、このデータを外気温予測対応警告出力部27が利用することを可能としている。図1に示す例においてはサイドブレーキ凍結用気象データ記憶部25のデータと、フロントガラス着霜凍結用気象データ記憶部26のデータを備えた例を示している。
【0035】
外気温予測対応警告出力部27では、現在車両が駐車している状態を車両駐車状態検出部30から取り込んで、シフトレバーがパーキング位置に操作しているかを検出するシフトレバーパーキング位置操作検出部31の検出信号、或いはエンジンキーをオフしたことを検出するエンジンキーオフ検出部32の検出信号を用いて、車両が現在の位置で少なくとも一時的に駐車状態になったことを検出した時、前記のように駐車時間帯予測設定部33で設定した所定時間内の気象データを所定時間内気象データ取込部23から取り込んで、そのデータと予め設定している車両走行障害発生気象データ記憶部24の基準となるデータと比較し、警告を発すべきであるか否かを判別することで、警告を発すべきであると判別した時には、前記のようにナビゲーション装置5のもにた10やスピーカ11から警告を出力する。
【0036】
図1に示す外気温予測対応警告出力部27においては、前記車両走行障害発生気象データ記憶部24と同様に、サイドブレーキが凍結することを警告出力するサイドブレーキ凍結用28と、フロントガラスの着霜が凍結することを警告出力するフロントガラス着霜凍結用29とを備えた例を示している。但し、これ以外に任意の警告出力を行うように設定しても良い。
【0037】
前記のような機能ブロックからなる本発明においては、前記のように種々の態様で警告出力を行うことができるものであるが、そのうち本発明の最も典型的な例である気温低下予測によるサイドブレーキ凍結警告処理を、図2の作動フローに示している。図2の気温低下予測によるサイドブレーキ凍結警告処理の例においては、最初にシフトレバーをパーキングに入れたか否かを判別している(ステップS1)。
【0038】
ここで車両が駐車スペースに入って停止したことを検出するには、前記図1の車両駐車状態検出部30で行っているが、その検出に際しては種々の手法があり、代表的な例では同図に示すように、シフトレバーをパーキング位置に入れた操作を検出した時のほか、エンジンキーをオフしたことを検出した時等が存在する。図2の例においてはその内シフトレバーをパーキング位置に入れたことを検出した時に、車両が駐車スペースに入って停止したものとして検出している。したがって、ステップS1ではこの手法以外に他の手法で駐車スペースに入って停止したことを検出することができる。
【0039】
図2の例では次いで現在位置の検出を行い(ステップS2)、その後サイドブレーキ凍結予測警告場所を読み込んでいる(ステップS3)。このときのサイドブレーキ凍結予測警告場所のデータについては、図1の警告出力要求場所登録部34に登録されている場合はその登録地点のデータを利用することができる。また、その警告出力要求場所登録部34に登録したデータ以外に、或いはその登録データ共に、ナビゲーション装置5の走行履歴データ蓄積部9に蓄積しているデータを用い、長時間駐車位置検出部15がこのデータに基づき、従来から例えば1時間以上、等の所定時間以上、複数回駐車している場所を検出して、これを長時間駐車位置として記憶しておく。このような場所は少なくとも所定以上の長時間駐車するため、とりあえずサイドブレーキ凍結警告を行う場所の候補として提示する。
【0040】
その後現在位置はサイドブレーキ凍結予測警告を必要とする地点か否かを判別する(ステップS4)。この処理においては前記ステップS2において検出した現在位置と、ステップS3で読み込んだサイドブレーキ凍結予測警告場所とが一致する時、現在位置はサイドブレーキ凍結予測警告を必要とする地点である、と判別する。
【0041】
また、この判別で現在位置はサイドブレーキ凍結予測警告を必要としない地点であると判別した時、即ち、現在駐車した位置はコンビニの駐車場であり、或いは通常の一般商店であるようなときは、すぐ車に戻ってきて走行を開始する可能性が極めて高いので、そのような地点であると判別した時にはステップS10に進んで、この気温低下予測によるサイドブレーキ凍結警告処理を中止する。
【0042】
ステップS4で現在位置はサイドブレーキ凍結予測警告を必要とする地点であると判別した時にはステップS5に進み、次に発進する時間を予測する。ここでは前記サイドブレーキ凍結予測警告場所であるとして、比較的長時間駐車する場所であるとされた地点においても、その駐車時間はどの程度であるかを予測する。その予測に際しては、図1の長時間駐車位置検出部15で前記のように種々の長時間駐車位置を検出したとき、駐車時間帯予測設定部33が、例えば自宅16である時には午後7時から午前7時までの12時間の時間帯を、勤務先17である時には午前8時から午後6時の10時間の時間帯等の時間帯を任意に設定する。この時には必要に応じて、ナビゲーション装置5の走行履歴データ蓄積部9のデータを用いることもできる。
【0043】
また、長時間駐車位置検出部15の月極駐車場18において、それが家近くの場合では自宅と同じ時間帯に、勤務先近傍の月極駐車場では勤務先と同じ時間帯に設定する。そのほか例えばスキー場19では、現在午前の比較的早い時間に駐車した時には現時点から夕方の6時までの時間帯に設定しておき、その後宿泊するような場合は後述するように現時点がホテル21の駐車場であることを検出することにより新たにその時間帯が設定される。行楽施設20においては駐車を開始する現在の時間から5時間程度に設定し、ホテルについては駐車してから次の日の9時程度までを設定する。また、レストランについては1時間程度の時間帯に設定する等、駐車位置や施設の特殊性に応じて、それぞれ任意の時間帯に設定する。
【0044】
図2のステップS5ではこのような時間帯の設定によって次に発進する時間を予測し、その後次に発進すると予測した時間迄の外気温変化を気象予報から取り込む(ステップS6)。この処理は図1の所定時間帯内気象データ処理部23が、気象予報データ取込部12で情報センター2から取り込んだ気象予報データを用いることにより行う。
【0045】
この時取り込まれる予報データが3時間毎のデータであるときには、例えば図4に示すようなデータが得られる。図4に示すデータ例は午後7時に駐車場で車から降りようとした時に取り込まれる外気温度変化予測データの例であり、午後7時は実測値であって、以降は午後9時、午前0時、3時、6時・・・の3時間毎のデータが得られた時の例を示しており、図中のグラフは各計測点を円滑に結ぶように処理して表したグラフであって、各予測データが得られた時間以外の時間でもこのグラフによりほぼ正確に温度の変化を推測することができる。
【0046】
この例において、最も温度が高い推移を示しているAのグラフでは、午後7時には4℃であったものの外気温度の予測では午前0時に0℃迄下がり、その後午前3時頃に−1℃迄下がった後、午前3時頃には0℃を越えることが予測される。また、Bのグラフにおいては、午後7時に4℃であった外気温度が、予測値では午後10時頃0℃以下になり、その後午前0時には−2℃になり、午前3時には−4℃まで下がって、以降温度は上昇し、午前7時頃には0℃を越えることが予測される。また、Cのグラフにおいては、午後7時には3℃であった状態から、午後8時過ぎには0℃になり、午後10時頃に−2℃を下回り、更に午後11時には−3℃を、午前0時には−4℃を下回って、午前3時頃には−5℃となり、以降は次第に温度が上昇する例を示している。このように、午後7時の外気温度は同じ程度でも、以降の温度変化は大きく変わることがある。
【0047】
図2の例においては前記の一連の処理により、例えば車で会社から7時に帰宅した時、シフトレバーをパーキングに入れると、ステップS2で現在位置を検出し、ステップS3でサイドブレーキ凍結予測警告場所を読み込み、ステップS4で現在位置が自宅のためサイドブレーキ凍結予測警告場所であると判別し、次に発進する時間は翌朝7時であることを予測し、ステップS6で前記図4に示すようなグラフの内、少なくとも現在から翌日の朝7時までのデータが読み込まれることとなる。
【0048】
図2の例ではその後、次に発進するまでの気温変化予測を、サイドブレーキ凍結の点から解析を行う(ステップS7)。即ち、前記図4に示すような外気温度の予測データが存在する時、車両にとって走行の障害になるサイドブレーキの凍結や、フロントガラス着霜凍結等にはそれぞれ特有の温度条件を含む気象条件がある。
【0049】
その例を図5(a)に示している。同図においてはサイドブレーキが凍結する時の例として、−2℃では6時間継続するとサイドブレーキが動かなくなる程度に凍結することを示し、−3℃では4時間、−4℃では3時間、−5℃では2時間、−6℃では1時間でサイドブレーキが凍結することを示している。なお、これらの値は本発明の説明のために例示したものである。
【0050】
また、サイドブレーキの凍結は前記のようにサイドブレーキのレバーから後輪までレバーの動きを伝達するワイヤのカバー内に水が溜まり、それが凍結することが主たる要因といわれているので、車両走行中に雨に当たったり、路面が濡れていて水を長時間跳ね上げていたときには、ワイヤカバー内に水が溜まり、これが凍結することが多くなる。したがって、外気温以外に走行中は雨降りであったか否か等のデータも参考にして、サイドブレーキが凍結するか否かの解析を行う参考データとしても良い。
【0051】
図5に示すようなデータを参考に、図2のステップS7で解析を行い、次いでステップS8において、次に発進する時にはサイドブレーキが凍結している恐れがあるか否かを判別する。この判別において、例えば図4のAのようなグラフの外気温度の予測となっていた時には、今夜はほとんどサイドブレーキが凍結することはないと判断し、ステップS10 に進んでこの処理を終了する。
【0052】
それに対してステップS8で、図4のグラフBのような外気温度の予測値が存在する時は、−2℃以下には5時間程度なり、−3℃以下には3時間程度なり、更に最低温度は−4℃と予測される。この例では図5(a)の条件において−2℃の6時間には至っていない範囲の5時間ではあるものの、それより低い−3℃以下に3時間もさらされることから、水を凍らせる熱量を受けることが計算によって予測される。したがってこのような場合は次に発進する時にはサイドブレーキが凍結する恐れがあると判別する。
【0053】
また、図4のCのグラフのような外気温予測が出ている時には、−4℃以下に4時間なることが予測されることにより、また他の温度条件においても同様であり、このような場合には直ちにサイドブレーキは凍結する、と判断することができる。図1の外気温予測対応警告出力部27では、所定時間帯内気象データ処理部23で処理した図4のようなグラフに基づき、車両走行障害発生気象データ記憶部24の、特にサイドブレーキ凍結用気象データ記憶部25のデータを用いて、前記のような判別処理を行い、警告を行うか否かを判断している。
【0054】
図2のステップS8で、次に発進する時にはサイドブレーキが凍結している恐れがあると判別した時には、外気温の低下予測によって、次の車両発進時にサイドブレーキが凍結している恐れがあることを警告する(ステップS9)。この警告出力は図1の例ではナビゲーション装置のモニタ10の画面に、例えば図5(b)のように表示し、スピーカ11からその旨の音声を出力する。それにより、車から降りようとする人は、サイドブレーキをかけておかず、必要に応じてタイヤに車止めをしておく等の対策を講じることとなる。
【0055】
前記の例においては、外気温度が低下することにより車両の発進時に障害となる時の例として、サイドブレーキが凍結する例を示したが、それ以外にフロントガラスに着霜して凍結するときも、運転者にとって大きな障害になる時がある。このようなフロントガラスの着霜凍結は、第1に霜が降りる条件である、風が弱く、地上付近の温度が少なくとも0℃以下であり、湿度がある程度以上高い、等の条件が必要であり、この点で地域的な条件もある。また、フロントガラスに霜が少し降りた程度では、拭き取り、熱湯をかけ、それに加えてデフロスタの作動等により取ることができる。しかしながら、この着霜が夜間の一時的な温度上昇等で崩れてペースト状となり、その後明け方の低温下において凍結し、全体が一体的な氷となってしまうと、各種手段を講じても取ることはできず、大量の熱湯をかけ、最後には自然に融けるのを待つしかなくなる。
【0056】
その対策として、フロントガラスの外側に各種の手段で貼り付ける着霜凍結用の断熱マット等が市販されているのでそれを用いることも可能ではあるが、この現象はいつ起こるのかわからないので、常にその対策をするには作業対効果の面から面倒でつい行わなくなってしまう。
【0057】
本発明はそのよな時にも、前記手法を用いて警告出力を行うことができる。図3にはそのような場合も含めて、更に各種の気象予報を用いて車両に対する警告を行う例を示している。図3に示す気温予測による車両への警告処理の例においては、前記図2に示したサイドブレーキ凍結警告処理とほぼ同様であるので、重複部分は詳細な説明は省略する。この処理においては最初にエンジンキーを切ったか否かの判別を行っている(ステップS21)。この作動は図2においてシフトレバーをパーキングに入れたか否かの判別と同様に、車両が駐車状態になったか否かの判別の一つの例を示している。
【0058】
ここでエンジンキーを切ったと判別した時には、現在位置を検出し(ステップS22)、次いで、次の車両発進時に障害が発生する予測家警告を必要とする地点を読み込み(ステップS23)、現在位置は次の車両発進時に障害が発生する予測警告を必要とする地点か否かを判別する(ステップS24)。 。フロントガラス着霜凍結警告出力処理の場合も、ここでの処理では前記図2のステップS4と同様の判別処理を行う。その後次に発進する時間を予測し(ステップS25)、次に発進すると予測した時間までの温度や天候の気象変化を気象予報から取り込む。ここではフロントガラスに着霜凍結を生じる前記のような種々の気象条件に関連するデータを気象予測データから取り込むこととなる。
【0059】
その後次に発進するまでの気温変化予測を、警告目的に対応して解析する(ステップS27)。この解析は、図1の車両走行障害発生気象データ記憶部24のデータを主として用い、図示の例ではここにフロントガラス着霜凍結用気象データ記録部26を備え、外気温予測対応警告出力部27においてそのデータと、所定時間帯内気象データ処理部22のデータ等を用いて処理を行っている。
【0060】
図3のステップS28で、フロントガラスの着霜凍結等により次に発進する時には車両の運転に支障を生じる恐れがある、と判別した時にはステップS29に進んで、これからの気象変化によって次の車両発進時に障害が発生する恐れがあることを警告出力っする。この時にはナビゲーション装置のモニタ画面に、例えば図5(c)のように表示を行い、また、スピーカからその旨の音声を出力する。ステップS28において次に発進する時には車両の運転に支障を生じる恐れは無いと判別した時には、ステップS20に進んでこの処理を終了する。
【0061】
本発明による気温予測による車両への警告処理は図1に示すような機能ブロック図により、また図3に示すような作動フローにしたがって処理を行うことにより、種々の態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 外気温予測対応警告出力処理部
2 情報センター
3 車両情報センター
4 気象情報センター
5 ナビゲーション装置
6 現在位置検出部
7 警告画像出力部
8 警告音声出力部
9 走行履歴データ蓄積部
10 モニタ
11 スピーカ
12 気象予報データ取込部
13 外気温予測データ取込部
14 天候予測データ取込部
15 長時間駐車位置検出部
16 自宅
17 勤務先
18 月極駐車場
19 スキー場
20 行楽施設
21 ホテル
22 レストラン
23 所定時間帯内気象データ処理部
24 車両走行障害発生気象データ記憶部
25 サイドブレーキ凍結用
26 フロントガラス着霜凍結用
27 外気温予測対応警告出力部
28 サイドブレーキ凍結用
29 フロントガラス着霜凍結用
30 車両駐車状態検出部
31 シフトレバーパーキング位置操作検出部
32 エンジンキーオフ検出部
33 駐車時間帯予測設定部
34 警告出力要求場所登録部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から気象予報データを取り込む気象予報データ取込手段と、
現在位置データを取り込んで現在位置が予め設定した長時間駐車する位置にあることを検出する長時間駐車位置検出手段と、
前記長時間駐車位置検出手段で車両が現在長時間駐車位置にあることを検出した時、その駐車位置に駐車する時間帯を設定する駐車時間帯設定手段と、
前記駐車時間帯設定手段で設定した時間帯における、前記気象予報データ取込手段で取り込んだデータを処理する所定時間帯内気象データ処理手段と、
車両の走行に障害が発生する気象データを記憶する車両走行障害発生気象データ記憶手段と、
前記所定時間帯内気象データ処理手段のデータと、前記車両走行障害発生気象データ記憶手段のデータにより、車両が駐車した時に次の車両の走行に障害が発生する恐れあることを警告出力する警告出力手段とを備えたことを特徴とする外気温予測による車両用警告装置。
【請求項2】
前記車両の走行の障害はサイドブレーキの凍結であり、前記車両走行障害発生気象データ記憶手段では、サイドブレーキの凍結を生じる温度データを記憶することを特徴とする請求項1記載の外気温予測による車両用警告装置。
【請求項3】
前記車両の走行の障害はフロントガラスの着霜凍結であり、前記車両走行障害発生気象データ記憶手段では、フロントガラスに着霜し凍結する温度データを記憶することを特徴とする請求項1記載の外気温予測による車両用警告装置。
【請求項4】
前記警告出力手段では、外気温度と天候を考慮して、警告を出力するか判断することを特徴とする請求項1記載の外気温予測による車両用警告装置。
【請求項5】
前記長時間駐車位置検出手段で検出する位置は、予め登録している警告出力要求場所であることを特徴とする請求項1記載の外気温予測による車両用警告装置。
【請求項6】
前記長時間駐車位置検出手段で検出する位置は、ナビゲーション装置に蓄積した走行履歴データを用いて設定する位置であることを特徴とする請求項1記載の外気温予測による車両用警告装置。
【請求項7】
前記長時間駐車位置検出手段で検出する位置は、予め登録してあるジャンルの施設の位置であることを特徴とする請求項1記載の外気温予測による車両用警告装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−230562(P2011−230562A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100432(P2010−100432)
【出願日】平成22年4月24日(2010.4.24)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】