説明

外用剤、外用剤の塗布方法、イオントフォレーシス装置及び経皮パッチ

【課題】生体皮膚からの生体対イオンの放出の抑制と、作用極構造体及び非作用極構造体と皮膚との良好な接触状態の維持とを両立させることで薬剤の投与効率を向上させる。
【解決手段】皮膚に親水性高分子マトリクス剤及び当該親水性高分子マトリクス剤中に分散するイオン交換樹脂を含有する外用剤よりなる塗膜、又は、イオン交換機能を有する親水性高分子を含有する外用剤よりなる塗膜を形成し、この塗膜を介してイオントフォレーシスを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオントフォレーシスによる薬剤投与に際して使用される外用剤、外用剤の塗布方法、及び、この外用剤と組み合わせて使用されるイオントフォレーシス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
イオントフォレーシス装置は、一般に、溶解することにより薬効成分がプラス又はマイナスの薬剤イオンに解離する薬剤の溶液を保持する作用極構造体と、作用極構造体の対極の役割を有する非作用極構造体を備えており、これら両構造体を生体(ヒト又は動物)の皮膚に当接させた状態で、作用極構造体に薬剤イオンと同一極性の電圧(第1の導電型の電圧)を印加し、非作用極構造体にその反対極性の電圧(第2の導電型の電圧)を印加することにより薬剤イオンの生体への投与が行われる。
【0003】
ここで、作用極構造体に給電された電荷は、薬剤イオンの生体への移動と、生体対イオン(生体内に存在するイオンであって、薬剤イオンとは反対導電型に荷電したイオン)の作用極構造体側への放出により消費されることになるが、生体からは、分子量が小さく、従って、移動度が大きい生体対イオン(例えば、NaやClなど)が主として放出されることになるため、この生体対イオンの放出により消費される電荷量の比率が高くなり、そのために、薬剤イオンの効果的な投与が行えない問題がある。
【0004】
また、薬剤投与のために一定以上の時間継続して通電を行った場合には、両構造体が当接する皮膚面にpH値やイオンバランスの変化に起因すると考えられる炎症が発生するなどの問題もある。
【0005】
特許文献1、2は、このような問題を解決したイオントフォレーシス装置を開示している。
【0006】
即ち、特許文献1、2のイオントフォレーシス装置では、作用極構造体を、第1電極と、第1電極からの通電を受ける薬剤保持部と、当該薬剤保持部の前面側(皮膚に当接する側)に配置され、当該薬剤保持部に保持される薬剤イオンと同一導電型(第1の導電型)のイオンを選択的に通過させるイオン交換膜とから構成し、薬剤イオンがこのイオン交換膜を介して投与されるようにすることで、生体からの生体対イオンの放出が抑制され、また、作用極構造体が当接する皮膚面での炎症の発生が抑制されている。
【0007】
また、特許文献2のイオントフォレーシス装置では、更に非作用極構造体を、第2電極と、第2電極からの通電を受ける電解液保持部と、当該電解液保持部の前面側(皮膚に当接する側)に配置され、薬剤イオンと反対導電型(第2の導電型)のイオンを選択的に通過させる第2イオン交換膜とから構成することで、非作用極構造体が当接する皮膚面での炎症の発生が抑制されている。
【0008】
なお、特許文献1、2では、イオントフォレーシス装置の作用極構造体を、上記第1電極、上記第1電極と接触を保つようにされた電解液を保持する電解液保持部、第2の導電型のイオンを選択的に通過させるイオン交換膜、上記薬剤保持部、及び、上記第1の導電型のイオンを選択的に通過させるイオン交換膜の5層構造とし、或いは更にイオントフォレーシス装置の非作用極構造体を、上記第2電極、上記第2電極と接触を保つようにされた電解液保持部、第1の導電型のイオンを選択的に通過させるイオン交換膜、上記電解液保持部、及び、上記第2の導電型のイオンを選択的に通過させるイオン交換膜の5層構造とすることにより、電極部材近傍における薬剤イオンの分解の阻止、第1、第2電極において発生するHやOHイオンの皮膚界面への移行の阻止などの追加的な効果をも達成できることが開示されている。
【0009】
ところで、これら特許文献1、2のイオントフォレーシス装置では、イオン交換膜として、比較的分子量の大きい薬剤イオンの通過を容易にし、かつ、生体からの生体対イオンの放出を効果的に抑制するために、ポリオレフィン、塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂などの素材よりなる多孔質フィルムにイオン交換樹脂を充填させたタイプのイオン交換膜が使用されるが、これらの多孔質フィルムは生体皮膚に対する親和性が低いために、薬剤イオンの投与中、イオン交換膜と生体皮膚の(電気的乃至物理的な)接触を良好な状態に保つことが難しく、作用極構造体、非作用極構造体を当接させる皮膚の部位や投与中の生体(患者)の動作などによっては、薬剤イオンの投与効率を十分なレベルに維持できない問題がある。
【0010】
このため、薬剤イオンの投与中、イオン交換膜と生体皮膚との間に電解液を介在させ、或いは更に、何らかの付勢手段により両構造体を生体皮膚に押しつけた状態に保つことが必要になるなどの不便を生じている。
【0011】
また、作用極構造体に関しては、イオン交換膜と生体皮膚の間に電解液を介在させると、イオン交換膜による皮膚からの生体対イオンの放出を抑制する機能が阻害されることになるため、このような態様で電解液を介在させたとしても理想的な状態での薬剤投与を実現することはできない。
なお、特許文献3には、イオントフォレーシスによる生理活性ペプチドの経皮投与を行うに際して、カチオン界面活性剤を含有する水溶液などで皮膚表面を清拭することで、生理活性ペプチドが皮膚表面に難再溶解的に吸着することを防止し、投与量の制御性を向上させる技術が開示されているが、特許文献3におけるカチオン界面活性剤はイオン交換樹脂或いはイオン交換機能を有する親水性高分子に該当するものではなく、また、特許文献3は、カチオン系界面活性剤と正負いずれかに帯電した薬剤イオンの投与との組み合わせを示唆している訳でもない。
【特許文献1】特許第3030517号公報
【特許文献2】特開2000−229128号公報
【特許文献3】特開平08−163212号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、生体皮膚からの生体対イオンの放出の抑制と、作用極構造体と皮膚との良好な接触状態の維持とを両立させることにより、薬剤の投与効率の更なる向上を達成することをその課題とする。
【0013】
また本発明は、作用極構造体、非作用極構造体が当接する皮膚において発生する炎症などのダメージを軽減させるとともに、これら両構造体の生体皮膚への接触状態を良好なものとすることにより、安全性及び効率の高い薬剤投与を可能とすることをもその目的とする。
【0014】
また本発明は、薬剤イオンの電極近傍での分解や皮膚面におけるpH変動を抑制することにより、薬剤投与の安全性及び安定性を一層向上させることをもその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、親水性高分子マトリクス剤及び当該親水性高分子マトリクス剤中に分散するイオン交換樹脂を含有することを特徴とする外用剤(第1発明)であり、かかる外用剤を塗布した生体皮膚(粘膜を含む)からイオントフォレーシスによる薬剤投与を行うことで上記課題が解決される。
【0016】
ここで、第1発明におけるイオン交換樹脂は、三次元的な網目構造を持つ高分子にイオン交換基(水溶液中で正又は負の電荷を有する基を生じる官能基)を導入したものである。
【0017】
より具体的に説明すると、第1発明の外用剤は、イオントフォレーシスによる薬剤(本明細書において「薬剤」の語は、用途に応じた調製等が行われているか否かに拘わらず、薬理作用を有する物質の意味で用いられている)の投与に際して、この外用剤が塗布された皮膚上にイオントフォレーシス装置の電極体(作用極構造体又は非作用極構造体)を当接させた状態で通電を行う態様で使用されるが、プラスの電圧が印加される電極体が当接する皮膚に塗布される外用剤には、上記イオン交換樹脂としてスルホン酸基、カルボン酸基などの陽イオン交換基が導入されたカチオン交換樹脂を含有する外用剤が使用され、マイナスの電圧が印加される電極体が当接する皮膚に塗布される外用剤には、上記イオン交換樹脂として四級アンモニウムや一〜三級アンモニウムなどの陰イオン交換基が導入されたアニオン交換樹脂を含有する外用剤が使用される。
【0018】
また、第1発明における親水性高分子マトリクス剤は、イオン交換樹脂の外用剤中における適度な分散状態を保つためのバインダーの役割を果たすことができる水系の溶媒(水、グリセリン、ポリエチレングリコール、エチルアルコール、プロパノールなど)に対してある程度以上の溶解性又は膨潤性を有する高分子であり、生体への安全性などの観点からは、ポリビニルアルコール、コラーゲン、セリシン、ポリエチレンオキシド、キチン、キトサン、サッカロース、ゼラチン、ヒアルロン酸、アルギン酸、フィブロイン、ポリ乳酸、アラビアゴム、カンテン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、カーボポール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルメロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム又はハイドロオキシアパタイト又はこれらの混合物からなる親水性高分子マトリクス剤が好適に使用することができる。
【0019】
また、第1発明の外用剤には、外用剤の粘性を適度に調整するために水、エチルアルコール、プロパノールなどの溶剤が配合される。
【0020】
また、本発明は、イオン交換機能を有する親水性高分子を含有することを特徴とするイオントフォレーシス用外用剤(第2発明)であり、かかる外用剤を塗布した生体皮膚(粘膜を含む)からイオントフォレーシスによる薬剤投与を行うことによっても上記課題が解決される。
【0021】
この第2発明の外用剤における親水性高分子としては、再生セルロース、セルロースエステル、セルロースエーテル、ニトロセルロースなどのセルロース系樹脂、コラーゲン、セリシン、キチン、キトサン、ゼラチン、ヒアルロン酸、アルギン酸、フィブロイン又はポリ乳酸又はこれらの混合物を使用することができ、この外用剤の場合も、外用剤の使用に適する粘性を付与するために水、エチルアルコール、プロパノールなどの適宜の溶剤が配合される。
【0022】
より具体的に説明すると、第2発明の外用剤は、イオントフォレーシスによる薬剤投与に際して、第2発明の外用剤が塗布された皮膚上にイオントフォレーシス装置の電極体(作用極構造体又は非作用極構造体)を当接させた状態で通電を行う態様で使用されるが、プラスの電圧が印加される電極部材が当接する皮膚に塗布される外用剤には、陽イオン交換機能を有する親水性高分子として、セルロース系樹脂、ヒアルロン酸、アルギン酸又はポリ乳酸又はこれらの混合物を含有するものを使用することができ、薬剤投与中のpH値が等電点以上に保たれる場合には、陽イオン交換機能を有する親水性高分子として、コラーゲン、セリシン、ゼラチン又はフィブロイン又はこれらの混合物を含有するものを使用することも可能である。
【0023】
また、マイナスの電圧が印加される電極部材の当接する皮膚に塗布される外用剤には、陰イオン交換機能を有する親水性高分子として、キチン又はキトサン又はその混合物を含有するものを使用することができ、薬剤投与中のpH値が等電点以下に保たれる場合には、陰イオン交換機能を有する親水性高分子として、コラーゲン、セリシン、ゼラチン又はフィブロイン又はこれらの混合物を含有するものを使用することも可能である。
【0024】
なお、上記第1、第2発明の外用剤には、上記各成分に加えて、保湿剤、抗炎症剤、香料、着色剤、粘度調整剤、安定化剤、界面活性剤、可塑剤、可溶化剤、緩衝剤、基剤、吸着剤、結合剤、懸濁化剤、抗酸化剤、香料、消泡剤、着色剤、等張化剤、pH調節剤、乳化剤、粘着増強剤、粘稠剤、分散剤、芳香剤、防腐剤、保存剤、溶剤、溶解剤、溶解補助剤、流動化剤などの追加的な成分を適宜配合することも可能である。
【0025】
また、上記第1、第2発明の外用剤の生体皮膚への塗布は、イオントフォレーシスによる薬剤投与が行われている間、塗布された外用剤の塗膜がイオン交換膜としての機能(プラス又はマイナスのイオンを選択的に通過させる機能)を維持できる限度でなるべく薄く(例えば、数μm〜数百μm)、均一に行うことが好ましく、この目的のため、第1、第2発明の外用剤は、静電塗装法により生体皮膚上に塗布されることが好ましい。
【0026】
また本発明は、
第1電極と、
前記第1電極と接触を保つようにされた第1電解液保持部と、
前記第1電解液保持部の前面側に配置され、第2の導電型のイオンを選択的に通過させる第1イオン交換膜と、
前記第1イオン交換膜の前面側に配置され、第1の導電型に荷電した薬剤イオンを含む薬剤液を保持する薬剤保持部と、
前記薬剤保持部の前面側の表面に貼付される第1ライナーであって、前記薬剤イオンの生体への投与に際して取り外される第1ライナーとを有する作用極構造体を備えることを特徴とするイオントフォレーシス装置(第3発明)である。
【0027】
かかるイオントフォレーシス装置は、請求項1〜7の外用剤と組み合わせて好適に使用されるものであり、イオントフォレーシス装置の保管、取扱中においては、第1ライナーにより薬剤保持部の乾燥や薬剤保持部への異物の混入が防止され、薬剤の投与に際しては、第1ライナーが取り除かれることにより露出する薬剤保持部を、皮膚上に形成された請求項1〜7の外用薬よりなる塗膜に直接当接させた状態で第1電極に第1の導電型の電圧を印加することで薬剤の投与を行うことが可能である。
【0028】
この場合、請求項1〜7の外用薬よりなる塗膜が第1の導電型のイオンを選択的に通過させるイオン交換膜として動作するために生体皮膚からの生体対イオンの放出が抑制され、同時に、その塗膜に含有される親水性高分子マトリクス剤又は親水性高分子の作用により皮膚と塗膜、塗膜と薬剤保持部の接触状態が良好に保たれることになり、薬剤の投与効率の飛躍的な向上が達成される。
【0029】
このイオントフォレーシス装置における第1ライナーとしては、薬剤保持部からの水分の蒸発や薬剤保持部への異物の混入を抑止でき、装置の保管、取扱中に容易に破損しない程度の強度を有する任意の材質の膜状体(樹脂フィルムや金属フィルム)を使用できる。
【0030】
また、このイオントフォレーシス装置では、第1電解液保持部と薬剤保持部との間に配置される第1イオン交換膜により、薬剤イオンの第1電解液保持部における分解や薬剤保持部におけるpH値の変動が抑制されるため、薬剤投与における十分な安全性、安定性が確保されている。
【0031】
また、上記第3発明のイオントフォレーシス装置は、
第2電極と、
前記第2電極と接触を保つようにされた第2電解液保持部と、
前記第2電解液保持部の前面側に配置され、第1の導電型のイオンを選択的に通過させる第2イオン交換膜と、
前記第2イオン交換膜の前面側に配置される第3電解液保持部と、
前記第3電解液保持部の前面側に貼付される第2ライナーであって、前記薬剤イオンの生体への投与に際して取り外される第2ライナーとを有する非作用極構造体を更に備えることが可能である。
【0032】
かかるイオントフォレーシス装置では、保管、取扱中においては、第2ライナーにより第3電解液保持部の乾燥や変質、或いは、第3電解液保持部への異物の混入が防止され、薬剤の投与に際しては、第2ライナーが取り除かれることにより露出する第3電解液保持部を、請求項1〜7の外用薬が塗布された皮膚に直接当接させた状態で第2電極に第2の導電型の電圧を印加することで薬剤の投与を行うことが可能である。
【0033】
この場合、第3電解液保持部が当接する請求項1〜7の外用薬よりなる塗膜が第2の導電型のイオンを選択的に通過させるイオン交換膜として動作するために、通電により生じる皮膚へのダメージが軽減され、同時に、その塗膜に含有される親水性高分子マトリクス剤又は親水性高分子の作用により皮膚と塗膜、塗膜と第3電解液保持部の接触状態が良好に保たれることになり、薬剤の投与効率の更なる向上と薬剤投与の安全性の向上が達成される。
【0034】
このイオントフォレーシス装置における第2ライナーとしては、第3電解液保持部からの水分の蒸発や第3電解液保持部への異物の混入を抑止でき、取扱中に容易に破損しない程度の強度を有する任意の材質の膜状体(樹脂フィルムや金属フィルム)を使用できる。
【0035】
また、このイオントフォレーシス装置では、第2電解液保持部と第3電解液保持部との間に配置される第2イオン交換膜により、第3電解液保持部におけるpH値の変動が抑制されるため、薬剤投与における十分な安全性、安定性が確保されている。
【0036】
また本発明は、
第1電極と、
第1の導電型に荷電した薬剤イオンを含む薬剤液を保持し、前記第1電極との導通が保たれる薬剤保持部とを有する作用極構造体を備えるイオントフォレーシス装置であって、
前記薬剤保持部を、
皮膚上に形成された、親水性高分子マトリクス剤及び当該親水性高分子マトリクス剤中に分散する第1の導電型のイオンを対イオンとするイオン交換基が導入されたイオン交換樹脂を含有する外用剤、又は、第1の導電型のイオンを交換する機能を有する親水性高分子を含有する外用剤よりなる塗膜に接触させた状態で、
前記第1電極に第1の導電型の電圧を印加することにより前記薬剤イオンの投与が行われることを特徴とするイオントフォレーシス装置(第4発明)である。
【0037】
かかる第4発明では、皮膚に塗布された外用剤(親水性高分子マトリクス剤及び当該親水性高分子マトリクス剤中に分散する第1の導電型のイオンを対イオンとするイオン交換基が導入されたイオン交換樹脂を含有する外用剤、又は、第1の導電型のイオンを交換する機能を有する親水性高分子を含有する外用剤)が、第1の導電型のイオンを選択的に通過させるイオン交換膜として機能するために、皮膚からの生体対イオンの放出を抑制しつつ生体内に薬剤イオンを投与することができ、同時に、生体皮膚と外用剤の塗膜、或いは、外用剤の塗膜と薬剤保持部の接触状態は外用剤の塗膜に含有される親水性高分子マトリクス又は親水性高分子の作用により容易に良好な状態に保つことができるため、薬剤の投与効率の飛躍的な向上を図ることが可能となる。
【0038】
また、第4発明においては、非作用極構造体を
第2電極と、
前記第2電極からの通電を受ける第3電解液保持部とを有するものとし、
前記第3電解液保持部を、
皮膚上に形成された、親水性高分子マトリクス剤及び当該親水性高分子マトリクス剤中に分散する第2の導電型のイオンを対イオンとするイオン交換基が導入されたイオン交換樹脂を含有する外用剤よりなる塗膜、又は、第2の導電型のイオンを交換する機能を有する親水性高分子を含有する外用剤よりなる塗膜に接触させた状態で、
前記第2電極に第2の導電型の電圧を印加することにより前記薬剤イオンの投与が行われるものとすることが可能である。
【0039】
この場合には、皮膚に塗布された外用剤(親水性高分子マトリクス剤及び当該親水性高分子マトリクス剤中に分散する第2の導電型のイオンを対イオンとするイオン交換基が導入されたイオン交換樹脂を含有する外用剤、又は、第2の導電型のイオンを交換する機能を有する親水性高分子を含有する外用剤)が、第2の導電型のイオンを選択的に通過させるイオン交換膜として機能するために、通電により生じる皮膚へのダメージを軽減することができ、同時に、生体皮膚と外用剤の塗膜、或いは、外用剤の塗膜と第3電解液保持部の接触状態は外用剤の塗膜に含有される親水性高分子マトリクス又は親水性高分子の作用により容易に良好な状態に保つことができる。
【0040】
なお第4発明のイオントフォレーシス装置においては、前記作用極構造体が、前記第1電極との接触を保つようにされた電解液を保持する第1電解液保持部、前記第1電解液保持部と前記薬剤保持部との間に配置され、第2の導電型のイオンを選択的に通過させる第1イオン交換膜を更に備えるものとし、薬剤保持部は、前記第1電解液保持部及び前記第1イオン交換膜を介して前記第1電極からの通電を受けるようにすることも可能であり、これにより、薬剤保持部におけるpH値の変動を抑制し、薬剤投与における安全性、安定性を更に向上させることができる。
【0041】
同様に、上記第4発明のイオントフォレーシス装置においては、前記非作用極構造体が、前記第2電極との接触を保つようにされた電解液を保持する第2電解液保持部と、前記第2電解液保持部と前記第3電解液保持部との間に配置され、第1の導電型のイオンを選択的に通過させる第2イオン交換膜を更に備えるものとし、前記第3電解液保持部は、前記第2電解液保持部及び前記第2イオン交換膜を介して前記第2電極からの通電を受けるようにすることが可能であり、これにより、第3電解液保持部におけるpH値の変動を抑制し、薬剤投与における安全性、安定性を更に向上させることができる。
また本発明は、
第1の導電型に荷電した薬剤イオンを含む薬剤液を保持する薬剤保持部を有する経皮パッチであって、
前記薬剤保持部を、
皮膚上に形成された、親水性高分子マトリクス剤及び当該親水性高分子マトリクス剤中に分散する第1の導電型のイオンを対イオンとするイオン交換基が導入されたイオン交換樹脂を含有する外用剤の塗膜、又は、第1の導電型のイオンを交換する機能を有する親水性高分子を含有する外用剤の塗膜に接触させることにより、
前記薬剤イオンの生体への投与が行われることを特徴とする経皮パッチ(第5発明)である。
かかる第5発明では、皮膚に塗布された外用剤(親水性高分子マトリクス剤及び当該親水性高分子マトリクス剤中に分散する第1の導電型のイオンを対イオンとするイオン交換基が導入されたイオン交換樹脂を含有する外用剤、又は、第1の導電型のイオンを交換する機能を有する親水性高分子を含有する外用剤)が、第1の導電型のイオンを選択的に通過させるイオン交換膜として機能するために、薬剤保持部中に存在する第2導電型のイオン(薬剤対イオン)の生体への移行や、生体からの生体対イオンの薬剤保持部への移行が抑制され、その結果、薬剤保持部の薬剤イオンと生体内に存在する第1導電型のイオンとの混合が促進され、薬剤イオンの投与効率を上昇させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0043】
図1は、本発明に係るイオントフォレーシス装置Xaであって、薬効成分がプラスのイオンに解離する薬剤(例えば、麻酔薬であるリドカイン、麻酔薬である塩酸モルヒネなど)を投与するためのイオントフォレーシス装置Xaの基本構成を示す概念説明図である。
【0044】
図示されるように、本発明のイオントフォレーシス装置Xaは、大きな構成要素(部材)として、作用極構造体1a、非作用極構造体2a及び電源3を備えている。
【0045】
作用極構造体1aは、電源3のプラス極に接続される電極部材11、当該電極部材11と接触を保つようにされた電解液を保持する電解液保持部12、当該電解液保持部12の前面に配置されたアニオン交換膜13a、当該アニオン交換膜13aの前面に配置され、電解液保持部12及びアニオン交換膜13aを介して電極部材11からの通電を受ける薬剤保持部14a、当該薬剤保持部14aの前面に配置されたライナー15を備え、その全体がカバー乃至容器16に収容されている。
【0046】
一方、非作用極構造体2aは、電源3のマイナス極に接続される電極部材21、当該電極部材21と接触を保つようにされた電解液を保持する電解液保持部22、当該電解液保持部22の前面に配置されたカチオン交換膜23a、当該カチオン交換膜23aの前面に配置され、電解液保持部22及びカチオン交換膜23aを介して電極部材21からの通電を受ける電解液保持部24、当該電解液保持部24の前面に配置されたライナー25を備え、その全体がカバー乃至容器26に収容されている。
【0047】
このイオントフォレーシス装置Xaにおいて、電極部材11、21は、任意の導電性材料よりなる電極が制限無く使用でき、水の電気分解によるHイオン、OHイオンの発生を抑制できる銀/塩化銀カップル電極などの活性電極を使用することもできるが、このイオントフォレーシス装置Xaでは、電解液保持部12、22の電解液に、酸化還元電位が水よりも低い物質を配合することでガスの発生を抑制し、また、その電解液を複数種のイオンを存在させた緩衝液とすることで、pHの変動を抑えるようにすることが可能であり、その場合には、炭素や白金などの不活性電極であっても支障なく使用することができる。
【0048】
しかしながら、高い導電性と可撓性を両立できるために両構造体1a、2aの皮膚への密着性を阻害することなく薬剤の投与効率を向上させることができ、また、電極部材から溶出する金属イオンの生体への移行の懸念を解消できるなどの点から、高分子マトリクスに炭素粉を配合した端子部材(t)と、炭素繊維又は炭素繊維紙からなる導電シート(s)から構成される複合炭素電極11、21が、特に好適に使用される。
【0049】
また、イオントフォレーシス装置Xaの電解液保持部12、22、24は、通電性を確保するための電解液を保持するものであり、この電解液としては、リン酸緩衝食塩水、生理食塩水などが典型的に使用される。
【0050】
また、電解液保持部12、22には、水の電解反応によるpH値の変動やガスの発生、或いは、これによる導電抵抗の増大をより効果的に防止するために、水の電解反応(プラス極での酸化及びマイナス極での還元)よりも酸化または還元されやすい電解質を添加することが可能であり、生体安全性、経済性(安価かつ入手の容易性)の観点からは、例えば、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄などの無機化合物、アスコルビン酸(ビタミンC)やアスコルビン酸ナトリウムなどの医薬剤、乳酸、シュウ酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸などの有機酸及び/又はその塩などを好ましく使用することができる。pH変動を防止するためには、1モル(M)乳酸と1モル(M)フマル酸ナトリウムの1:1混合水溶液を使用することもできる。
【0051】
これら電解液保持部12、22、24は、上記のような電解液を液体状態で保持するものとしても構わないが、ガーゼや濾紙などの繊維シート、或いは、アクリル系樹脂のヒドロゲル(アクリルヒドロゲル)、セグメント化ポリウレタン系ゲルなどの高分子ゲルシートなど、保水性を有する任意の素材よりなる担体に上記のような電解液を含浸又は含有させて構成することにより、その取り扱い性などを向上させることも可能である。
【0052】
本実施形態に係るイオントフォレーシス装置Xaにおける薬剤保持部14aには、薬剤液として、溶解することにより薬効成分がプラスのイオンに解離する薬剤(例えば、リドカイン、塩酸モルヒネ)の水溶液が保持される。
【0053】
薬剤保持部14aは、薬剤液を液体状態で保持するものとしても構わないが、ガーゼや濾紙などの繊維シート、或いは、アクリル系樹脂のヒドロゲル(アクリルヒドロゲル)、セグメント化ポリウレタン系ゲルなどの高分子ゲルシートなど、保水性を有する任意の素材よりなる担体に薬剤溶液を含浸又は含有させて構成することにより、その取り扱い性などを向上させることも可能である。
【0054】
電解液保持部12、22、24又は薬剤保持部14aに上記のような担体を使用する場合、十分な通電性や輸率を得ることができる適切な含浸率又は含有率を設定するべきであり、薬剤保持部14aに関しては、薬剤液の含浸率又は含有率を適切に設定することにより、高い輸率(高いドラッグデリバリー性)、例えば70%を得ることができる。
【0055】
なお、ここでの含浸率又は含有率は重量%であって、乾燥時の重量をD、含浸、配合後の重量をWとしたときの100×(W−D)/D[%]であり、輸率は、作用極構造体に給電される全電流のうち薬剤イオンの移行に寄与する電流の割合である。
【0056】
また、イオントフォレーシス装置Xaにおけるアニオン交換膜13aとしては、例えば、(株)トクヤマ製ネオセプタ(NEOSEPTA)AM−1、AM−3、AMX、AHA、ACH、ACSなど、陰イオンを選択的に通過させる機能を有する任意のアニオン交換膜が使用できるが、多孔質フィルムの孔の一部または全部に、陰イオン交換機能を有するイオン交換樹脂が充填されたアニオン交換膜が特に好適に使用される。
【0057】
また、カチオン交換膜23aとしては、例えば、(株)トクヤマ製ネオセプタ(NEOSEPTA)CM−1、CM−2、CMX、CMS、CMBなど、陽イオンを選択的に通過させる機能を有する任意のカチオン交換膜が使用できるが、多孔質フィルムの孔の一部または全部に、陽イオン交換機能を有するイオン交換樹脂が充填されたカチオン交換膜が特に好適に使用される。
【0058】
ここで、上記イオン交換樹脂としては、パーフルオロカーボン骨格にイオン交換基が導入されたフッ素系のもの又はフッ素化されていない樹脂を骨格とする炭化水素系のものが使用できるが、製造工程の簡便さから炭化水素系のイオン交換樹脂が好ましく、また、イオン交換樹脂の充填率は、多孔質フィルムの空隙率とも関係するが、一般的には5〜95質量%であり、特に、10〜90質量%、更には、20〜60質量%とすることが好ましい。
【0059】
また、上記イオン交換樹脂が有するイオン交換基としては、水溶液中で負又は正の電荷を有する基を生じる官能基であれば特に限定されない。このようなイオン交換基となり得る官能基を具体的に例示すれば、陽イオン交換基としては、スルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基などが挙げられる。また、これらの酸基は、遊離酸として或いは塩の形で存在していてもよい。塩の場合の対カチオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどのアルカリ金属陽イオンや、アンモニウムイオンなどが挙げられる。これらの陽イオン交換基の中でも、一般的に、強酸性基であるスルホン酸基が特に好ましい。また、陰イオン交換基としては、1〜3級アミノ基、4級アンモニウム基、ピリジル基、イミダゾール基、4級ピリジニウム基、4級イミダゾリウム基などが挙げられる。これら陰イオン交換基における対アニオンとしては、塩素イオンなどのハロゲンイオンやヒドロキシイオンなどが挙げられる。これら陰イオン交換基のなかでも、一般的に、強塩基性基である4級アンモニウム基や4級ピリジニウム基が好適に用いられる。
【0060】
また、上記多孔質フィルムは、表裏を連通する多数の小孔を有するフィルムもしくはシート状のものが特に制限されることなく使用されるが、高い強度と柔軟性を両立させるために、熱可塑性樹脂からなるものであることが好ましい。
【0061】
この多孔質フィルムを構成する熱可塑性樹脂としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、5−メチル−1−ヘプテンなどのα−オレフィンの単独重合体または共重合体などのポリオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−オレフィン共重合体などの塩化ビニル系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体などのフッ素系樹脂;ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂などからなるものが制限なく使用されるが、機械的強度、柔軟性、化学的安定性、耐薬品性に優れ、イオン交換樹脂との馴染みがよいことからポリオレフィン樹脂を用いるのが好ましい。ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンが特に好ましく、ポリエチレンが最も好ましい。
【0062】
上記熱可塑性樹脂からなる多孔質フィルムの性状は、特に限定されないが、薄くかつ強度に優れ、さらに電気抵抗も低いイオン交換膜としやすい点で、孔の平均孔径が、好ましくは0.005〜5.0μm、より好ましくは0.01〜2.0μm、最も好ましくは0.02〜0.2μmであるのがよい。なお、本明細書における平均孔径は、バブルポイント法(JIS K3832−1990)に準拠して測定される平均流孔径を意味する。同様に、多孔質フィルムの空隙率は、好ましくは20〜95%、より好ましくは30〜90%、最も好ましくは30〜60%であるのがよい。さらに、多孔質フィルムの厚みは、好ましくは5〜140μm、より好ましくは10〜120μm、最も好ましくは15〜55μmであるのがよい。通常、このような多孔質フィルムを使用したアニオン交換膜、カチオン交換膜は、多孔質フィルムの厚さ+0〜20μm程度の厚さになる。
【0063】
イオントフォレーシス装置Xaにおけるライナー15、25は、薬剤保持部14a、電解液保持部24の前面側の表面に貼付されることで薬剤液や電解液の蒸発やこれらへの異物の混入を防止するためのものであり、水分の透過を抑止でき、イオントフォレーシス装置Xaの保管、取り扱い中に容易に破損しない程度の強度を有し、また、イオントフォレーシス装置Xaの使用(薬剤の投与)に際して容易に取り外すことができる任意の材質の材質の膜状体(樹脂フィルムや金属フィルム)を使用することができる。
【0064】
イオントフォレーシス装置Xaにおけるカバー乃至容器16、26は、各電解液保持部12、22、24や薬剤保持部14aからの電解液、薬剤液の漏出や蒸発、或いは、外部からの異物の混入を防止し、或いは更に、両構造体1a、1bに取り扱いなどに支障を生じないための強度を付与するためのものであり、そのような目的を達成できる任意の材質(プラスチックや金属)、形状、寸法のカバー乃至容器を使用できる。
【0065】
カバー乃至容器16、26の下端部(b)には、ライナー15、25又は皮膚(乃至皮膚上に形成される外用剤の塗膜)との密着性を高めるための粘着剤層を形成することも可能である。
【0066】
イオントフォレーシス装置Xaにおける電源3としては、電池、定電圧装置、定電流装置、定電圧・定電流装置などを使用することができるが、0.01〜1.0mA/cm、好ましくは、0.01〜0.5mA/cmの範囲で任意電流調整が可能な、安全な電圧条件、具体的には、50V以下、好ましくは、30V以下で動作する定電流装置を使用することが好ましい。
【0067】
図2は、本発明に係るイオントフォレーシス装置Xbであって、薬効成分がマイナスのイオンに解離する薬剤(例えば、ビタミン剤であるアスコルビン酸など)を投与するためのイオントフォレーシス装置Xbの構成を示す概念説明図である。
【0068】
図示されるように、このイオントフォレーシス装置Xbにおいては、電極部材11が電源3のマイナス端子に、電極部材21が電源3のプラス端子に接続されている点、及び、イオントフォレーシス装置Xaにおけるアニオン交換膜13a、薬剤保持部14a、カチオン交換膜23aに代えて、カチオン交換膜13b、薬剤保持部14b、アニオン交換膜23bが配置されている点においてのみイオントフォレーシス装置Xaと相違し、その他の点においてはイオントフォレーシス装置Xaと同一の構成を有している。
【0069】
また、カチオン交換膜13b、アニオン交換膜23bには、アニオン交換膜13a、カチオン交換膜23aについて上記したと同様のものを使用することができ、薬剤保持部14bは、アスコルビン酸などの薬効成分がマイナスのイオンに解離する薬剤の水溶液が保持される点を除いて、薬剤保持部14aについて上記したと同様の構成とすることができる。
【0070】
図3は、本発明に係るイオントフォレーシス装置Xcであって、薬効成分がプラスのイオンに解離する薬剤を投与するためのイオントフォレーシス装置Xcの構成を示す概念説明図である。
【0071】
このイオントフォレーシス装置Xcは、電源3のプラス極に接続される電極部材11、当該電極部材11に接触し、電極部材11からの直接通電を受ける薬剤保持部14c、当該薬剤保持部14cの前面に貼付されたライナー15、及び、これらを収容するカバー乃至容器16から構成される作用極構造体1cと、電源3のマイナス極に接続される電極部材21、当該電極部材21に接触し、電極部材21から直接通電を受ける電解液保持部24、当該電解液保持部24の前面に貼付されたライナー25、及び、これらを収容するカバー乃至容器26から構成される非作用極構造体2cとを備えているが、これら電源3、電極部材11、21、電解液保持部24、ライナー15、25、カバー乃至容器16、26は、イオントフォレーシス装置Xaにおける対応する部材と同一の構成を有しており、薬剤保持部14cは、イオントフォレーシス装置Xaにおける薬剤保持部14aと同一の構成を有している。
【0072】
図4は、本発明に係るイオントフォレーシス装置Xdであって、薬効成分がマイナスのイオンに解離する薬剤を投与するためのイオントフォレーシス装置Xdの構成を示す概念説明図である。
【0073】
このイオントフォレーシス装置Xdは、薬剤保持部14cに代えて、薬剤保持部14dが配置されている点を除いてイオントフォレーシス装置Xcと同一の構成を有しており、この薬剤保持部14dは、アスコルビン酸などの薬効成分がマイナスのイオンに解離する薬剤溶液が保持される点を除いて、上記薬剤保持部14bと同様のものが使用される。
【0074】
図5は、イオントフォレーシス装置Xa又はXcを用いて行われる薬剤の経皮投与の態様を示す概念図であり、この図では、電極部材11、21、電解液保持部12、22、イオン交換膜13a、23aは省略又は簡略化して表示されており、イオントフォレーシス装置Xa、Xc、作用極構造体1a、1c、非作用極構造体2a、2c、薬剤保持部14a、14cは、それぞれ、符号X、1、2及び14で表示されている。
【0075】
図において、Sは薬剤を投与される生体の皮膚(又は粘膜)であり、当該皮膚S上には、本発明に係る外用剤の塗膜M1、M2が形成されている。
【0076】
この塗膜M1、M2に使用される外用剤は、ともに、イオン交換樹脂と、このイオン交換樹脂の適度な分散状態を維持するための親水性高分子マトリクス剤と、外用剤の粘度を適度に調整するための水、エチルアルコール、プロパノールなどの溶剤からなる組成を有している。
【0077】
また、塗膜M1については、上記イオン交換樹脂として、ポリスチレン樹脂やアクリル酸系樹脂などの炭化水素系樹脂やパーフルオロカーボン骨格を有するフッ素系樹脂などの三次元的な網目構造を持つ高分子にスルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基などの陽イオン交換基(対イオンが陽イオンである交換基)が導入されたイオン交換樹脂が使用され、上記親水性高分子マトリクス剤としては、水、エチルアルコール、プロパノールなどの水系溶媒に可溶又は可膨潤であり、かつ、陽イオン交換機能を有する高分子、イオン交換機能を有さない高分子、或いは、陰イオン交換機能を有する高分子であって、イオン交換樹脂のイオン交換機能を実質的に喪失させない程度の弱い陰イオン交換機能を有する高分子、具体的には、ポリビニルアルコール、コラーゲン、セリシン、ポリエチレンオキシド、キチン、キトサン、サッカロース、ゼラチン、ヒアルロン酸、アルギン酸、フィブロイン、ポリ乳酸、アラビアゴム、カンテン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、カーボポール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルメロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム又はハイドロオキシアパタイト又はこれらの混合物が使用される。
【0078】
一方、塗膜M2については、上記イオン交換樹脂として、ポリスチレン樹脂やアクリル酸系樹脂などの炭化水素系樹脂やパーフルオロカーボン骨格を有するフッ素系樹脂などの三次元的な網目構造を持つ高分子に、1〜3級アミノ基、4級アンモニウム基、ピリジル基、イミダゾール基、4級ピリジニウム基、4級イミダゾリウム基などの陰イオン交換基(対イオンが陰イオンである交換基)が導入されたイオン交換樹脂が使用され、上記親水性高分子マトリクス剤としては、水、エチルアルコール、プロパノールなどの水系溶媒に可溶又は可膨潤であり、かつ、陰イオン交換機能を有する高分子、イオン交換機能を有さない高分子、或いは、陽イオン交換機能を有する高分子であって、イオン交換樹脂のイオン交換機能を実質的に喪失させない程度の弱い陽イオン交換機能を有する高分子、具体的には、ポリビニルアルコール、コラーゲン、セリシン、ポリエチレンオキシド、キチン、キトサン、サッカロース、ゼラチン、ヒアルロン酸、アルギン酸、フィブロイン、ポリ乳酸、アラビアゴム、カンテン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、カーボポール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルメロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム又はハイドロオキシアパタイト又はこれらの混合物が使用される。
【0079】
また、図5に示されるように、薬剤の投与に際しては、イオントフォレーシス装置Xからはライナー15、25が取り除かれ、薬剤保持部14が塗膜M1に、電解液保持部24が塗膜M2にそれぞれ直接当接するように配置される。
【0080】
この状態で電源3からの通電が行われると、塗膜M1は、本発明の外用剤に含まれる陽イオン交換基が導入されたイオン交換樹脂の作用により、陽イオンを選択的に通過させるカチオン交換膜として機能し、電極部材11から印加されるプラス電圧の作用により、薬剤保持部14から薬剤イオンが塗膜M1を介して皮膚S内に投与される一方で、皮膚Sからのマイナスイオン(生体対イオン)の薬剤保持部14内への移行が抑止される。
【0081】
同様に、非作用極構造体2では、塗膜M2は、本発明の外用剤に含まれる陰イオン交換基が導入されたイオン交換樹脂の作用により、陰イオンを選択的に通過させるアニオン交換膜として機能し、電解液保持部24中のマイナスイオンが塗膜M2を介して皮膚S内に移行して必要な通電量が確保される一方で、pH値やイオンバランスの変化に起因すると考えられる皮膚S面での炎症の発生が抑制される。
【0082】
また、上記塗膜M1、M2に配合される親水性高分子マトリクス剤であるポリビニルアルコール、コラーゲン、セリシン、ポリエチレンオキシド、キチン、キトサン、サッカロース、ゼラチン、ヒアルロン酸、アルギン酸、フィブロイン、ポリ乳酸、アラビアゴム、カンテン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、カーボポール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルメロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム又はハイドロオキシアパタイト又はこれらの混合物は、いずれも、水系の溶媒に可溶又は可膨潤であるために、皮膚S、薬剤保持部14、電解液保持部24に対して優れた親和性を有しており、皮膚Sと塗膜M1、M2の界面、塗膜M1と薬剤保持部14の界面及び塗膜M2と電解液保持部24の界面は容易に良好な密着状態に保つことができる。
【0083】
なお図5の場合において、イオントフォレーシス装置Xcを使用した場合には、電極部材11における薬剤イオンの分解や電極部材11、21において発生するHイオン、OHイオンの皮膚Sの界面への移行などの現象が生じ得るが、イオントフォレーシス装置Xaを使用した場合には、アニオン交換膜13a、カチオン交換膜23aの作用により、これらの現象をも効果的に抑止することができる。
【0084】
また、図5における塗膜M1の外用剤は、上述した組成に代えて、親水性高分子成分として、セルロース系樹脂、ヒアルロン酸、アルギン酸又はポリ乳酸又はこれらの混合物、或いは、薬剤投与中のpH値を等電点以上に保つことができる場合には、コラーゲン、セリシン、ゼラチン又はフィブロイン又はこれらの混合物を含有し、外用剤の粘度を適度に調整するための溶媒成分として、適宜の量の水、エチルアルコール、プロパノールなどを含有する組成とすることができ、塗膜M2の外用剤は、上述した組成に代えて、親水性高分子成分として、キチン又はキトサン又はその混合物、又は、薬剤投与中のpH値を等電点以下に保つことができる場合には、コラーゲン、セリシン、ゼラチン又はフィブロイン又はこれらの混合物を含有し、外用剤の粘度を適度に調整するための溶媒成分として、適宜の量の水、エチルアルコール、プロパノールなどを含有する組成とすることができ、この場合にも、上述の場合と同様の効果を達成することができる。
【0085】
図6は、イオントフォレーシス装置Xb又はXdを用いて行われる薬剤の経皮投与の態様を示す概念図であり、この図では、電極部材11、21、電解液保持部12、22、イオン交換膜13b、23bは省略または簡略化して表示されており、イオントフォレーシス装置Xb、Xd、作用極構造体1b、1d、非作用極構造体2b、2d、薬剤保持部14b、14dは、それぞれ、符号X、1、2及び14で表示されている。
【0086】
図示されるように、生体の皮膚(又は粘膜)S上には、本発明に係る外用剤の塗膜M3、M4が形成されている。
【0087】
この場合における塗膜M3の外用剤には、塗膜M2について上記したと同様のものが使用され、塗膜M4の外用剤には、塗膜M1について上記したと同様のものが使用される。
【0088】
そして、薬剤の投与に際しては、図5の場合と同様に、イオントフォレーシス装置Xからはライナー15、25が取り除かれ、薬剤保持部14が塗膜M3に、電解液保持部24が塗膜M4にそれぞれ直接当接するように配置される。
【0089】
この状態で電源3からの通電が行われると、塗膜M3は、本発明の外用剤に含まれる陰イオン交換基が導入されたイオン交換樹脂の作用により、陰イオンを選択的に通過させるアニオン交換膜として機能し、電極部材11から印加されるマイナス電圧の作用により、薬剤保持部14から薬剤イオンが塗膜M3を介して皮膚S内に投与される一方で、皮膚Sからのプラスイオン(生体対イオン)の薬剤保持部14内への移行が抑止される。
【0090】
同様に、非作用極構造体2では、塗膜M4は、本発明の外用剤に含まれる陽イオン交換基が導入されたイオン交換樹脂の作用により、陽イオンを選択的に通過させるカチオン交換膜として機能し、電解液保持部24中のプラスイオンが塗膜M4を介して皮膚S内に移行して必要な通電量が確保される一方で、pH値やイオンバランスの変化に起因すると考えられる皮膚S面での炎症の発生が抑制される。
【0091】
また、上記塗膜M3、M4は、図5におけるM1、M2と同様に皮膚S、薬剤保持部14、電解液保持部24に対して優れた親和性を有しており、皮膚Sと塗膜M3、M4の界面、塗膜M3と薬剤保持部14の界面及び塗膜M4と電解液保持部24の界面は容易に良好な密着状態に保つことができる。
【0092】
なお、図6の場合において、イオントフォレーシス装置Xdを使用した場合には、電極部材11近傍における薬剤イオンの分解や電極部材11、21において発生するHイオン、OHイオンの皮膚Sの界面への移行などの現象は生じ得るが、イオントフォレーシス装置Xbを使用した場合には、カチオン交換膜13b、アニオン交換膜23bの作用により、これらの現象をも効果的に抑止することができる。
図7(a)、(b)は、本発明に係る経皮パッチXe、Xfの構成及びその使用態様を示す説明図であり、図7(a)には、薬効成分がプラスのイオンに解離する薬剤(例えば、麻酔薬であるリドカイン、麻酔薬である塩酸モルヒネなど)を投与するための経皮パッチXe、図7(b)には、薬効成分がマイナスのイオンに解離する薬剤(例えば、ビタミン剤であるアスコルビン酸など)を投与するための経皮パッチXfが示されている。
図示されるように、経皮パッチXeは、ポリエステルなどの軟質プラスチックで形成されるバッキング材41と、溶解することにより薬効成分がプラスのイオンに解離する薬剤の水溶液が保持される薬剤保持部42aとを有しており、経皮パッチXfは、同様のバッキング材41と、溶解することにより薬効成分がマイナスのイオンに解離する薬剤の水溶液が保持される薬剤保持部42bとを有している。
この薬剤保持部42a、42bの構成は、それぞれ、イオントフォレーシス装置Xa、Xbについて上記した薬剤保持部14a、14bと同様の構成とすることができる。
また、経皮パッチXe、Xfは、皮膚Sに塗布された本発明の外用剤の塗膜M5、M6に薬剤保持部42a、42bを当接させるようにして使用される。
ここで、塗膜M5は、イオントフォレーシス装置Xa〜Xdに関して上記した塗膜M1、M4と同様のものを使用することができ、塗膜M6は、イオントフォレーシス装置Xa〜Xdに関して上記した塗膜M2、M3と同様のものを使用することができる。
この経皮パッチXeでは、塗膜M5が塗膜M1、M4と同様にカチオン交換膜として機能するために、薬剤保持部42aに存在するマイナスのイオン(薬剤対イオン)の生体への移行や、生体からのマイナスの電荷を帯びた生体対イオンの薬剤保持部42aへの移行が抑制され、その結果、薬剤保持部の薬剤イオンと生体内に存在するプラスの電荷を帯びたイオンとの混合が促進され、薬剤イオンの生体への投与効率を上昇させることができる。
同様に、経皮パッチXfでは、塗膜M6が塗膜M2、M3と同様にカチオン交換膜として機能するために、薬剤保持部42bに存在するプラスのイオン(薬剤対イオン)の生体への移行や、生体からのプラスの電荷を帯びた生体対イオンの薬剤保持部42bへの移行が抑制され、その結果、薬剤保持部の薬剤イオンと生体内に存在するマイナスの電荷を帯びたイオンとの混合が促進され、薬剤イオンの生体への投与効率を上昇させることができる。
【0093】
本発明の外用剤による上記塗膜M1〜M6は、イオントフォレーシス装置Xa〜Xd、経皮パッチXe、Xfによる薬剤の投与中において、それぞれの塗膜M1〜M6が陽イオン又は陰イオンを選択的に通過させるイオン交換膜としての機能を維持できることが必要であるが、これに必要な塗膜M1〜M6の膜厚は、それぞれに使用される外用剤の組成、薬剤保持部14、42や電解液保持部24の水分含有量などの条件に応じて実験的に容易に定めることができる。また、円滑な薬剤投与を行うためには、薬剤投与の開始時点において、塗膜M1〜M6に適当な量の水分が含まれていることが好ましいが、この塗膜M1〜M6中の水分量も、外用剤の組成、薬剤保持部14、42や電解液保持部24の水分含有量などに応じて、外用剤に使用する溶媒量や外用剤塗布後の乾燥条件などにより適宜設定することができる。
【0094】
図8は、本発明の外用剤の塗装に使用できる静電塗装 機30の例示的な構成を示す説明図である。
【0095】
図示されるように、静電塗装機30は、塗膜M1〜M4に応じた上述の組成の外用剤31を貯留するタンク32、タンク32内の外用剤に一端が浸漬された中空の金属パイプよりなる塗装ガン33、塗装ガン33に高電圧を印加するための電圧源34、及び、誘導電極35を備えており、電圧源34により塗装ガン33−誘導電極35間に印加される電圧により、タンク内の外用剤を霧状にして皮膚Sに吹き付けることができるようになっている。
【0096】
このような静電塗装機30を用いることにより、本発明の外用剤を、例えば数μm〜数百μm程度の範囲で、均一な膜厚の塗膜に形成することが可能であり、外用剤の組成や薬剤保持部、電解液保持部の水分含有量などに応じて所望の膜厚の塗膜を高い制御性をもって形成することができる。
【0097】
以上、いくつかの実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定を受けるものではなく、特許請求の範囲の記載内における種々の改変が可能である。
【0098】
例えば、上記実施形態では、いずれも薬剤保持部(14a〜14d)、第3電解液保持部(24)の前面側にはイオン交換膜を有さないイオントフォレーシス装置を用いる場合を例として記載したが、薬剤保持部、及び/又は、第3電解液保持部の前面側に、イオン交換膜或いは限外濾過膜などの選択透過性の膜を有するイオントフォレーシス装置であっても、本発明の外用薬と組み合わせて使用することは可能である。
【0099】
即ち、プラスの薬剤イオンを投与する場合であれば、作用極構造体の薬剤保持部の前面側にカチオン交換膜を備え、非作用極構造体の第3電解液保持部の前面側にアニオン交換膜を備えたイオントフォレーシス装置を使用し、作用極構造体のカチオン交換膜を、皮膚に塗布されたカチオン交換膜として機能する本発明の外用剤の塗膜に当接させ、非作用極構造体のアニオン交換膜を、皮膚に塗布されたアニオン交換膜として機能する本発明の外用剤の塗膜に当接させて薬剤の投与を行うことが可能であり、このようにした場合でも、生体対イオンの放出を抑制しつつ薬剤イオンの投与が行われ、皮膚と本発明の外用剤の塗膜の密着性が良好に保たれることとなる点においては、上記実施形態における場合と同等、乃至、それに準じる効果を得ることができ、また、本発明の外用剤の塗膜と作用極構造体が備えるカチオン交換膜又は非作用極構造体が備えるアニオン交換膜との密着性も、本発明の外用剤の塗膜を用いない従来技術における薬剤投与の場合と比較すれば、同等、乃至、より良好な密着状態を得ることができるのであり、このことは、マイナスの薬剤イオンを投与する場合も全く同様のことが言えるのであり、このような態様で使用される外用剤も本発明の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明に係るイオントフォレーシス装置であって、薬効成分がプラスのイオンに解離する薬剤を投与するためのイオントフォレーシス装置の構成を示す概念説明図である。
【図2】本発明に係るイオントフォレーシス装置であって、薬効成分がマイナスのイオンに解離する薬剤を投与するためのイオントフォレーシス装置の構成を示す概念説明図である。
【図3】本発明に係るイオントフォレーシス装置であって、薬効成分がプラスのイオンに解離する薬剤を投与するためのイオントフォレーシス装置の構成を示す概念説明図である。
【図4】本発明に係るイオントフォレーシス装置であって、薬効成分がマイナスのイオンに解離する薬剤を投与するためのイオントフォレーシス装置の構成を示す概念説明図である。
【図5】本発明による薬剤の経皮投与の態様を示す概念図である。
【図6】本発明による薬剤の経皮投与の態様を示す概念図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る経皮パッチの構成及びその使用態様を示す説明図である。
【図8】本発明の外用剤の塗装に使用できる静電塗装機の例示的な構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0101】
X、Xa〜d・・・イオントフォレーシス装置
1、1a〜d・・・作用極構造体
2、2a〜d・・・非作用極構造体
3・・・電源
11、21・・・電極部材
12、22、24・・・電解液保持部
13a、23b・・・アニオン交換膜
13b、23a・・・カチオン交換膜
14a〜14d・・・薬剤保持部
15、25・・・ライナー
16、26・・・容器
30・・・静電塗装機
31・・・外用剤
32・・・タンク
33・・・塗装ガン
34・・・電圧源
35・・・誘導電極
Xe、Xf・・・経皮パッチ
41・・・バッキング材
42a、42b・・・薬剤保持部
M1〜M6・・・外用剤塗膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性高分子マトリクス剤及び当該親水性高分子マトリクス剤中に分散するイオン交換樹脂を含有することを特徴とする外用剤。
【請求項2】
前記親水性高分子マトリクス剤が、ポリビニルアルコール、コラーゲン、セリシン、ポリエチレンオキシド、キチン、キトサン、サッカロース、ゼラチン、ヒアルロン酸、アルギン酸、フィブロイン、ポリ乳酸、アラビアゴム、カンテン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、カーボポール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルメロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム又はハイドロオキシアパタイト又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項1に記載の外用剤。
【請求項3】
前記イオン交換樹脂が、三次元的な網目構造を持つ高分子に陽イオン交換基又は陰イオン交換基が導入されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の外用剤。
【請求項4】
前記陽イオン交換基が、スルホン酸基、カルボン酸基又はホスホン酸基であることを特徴とする請求項3に記載の外用剤。
【請求項5】
前記陰イオン交換基が、1〜3級アミノ基、4級アンモニウム基、ピリジル基、イミダゾール基、4級ピリジニウム基又は4級イミダゾリウム基であることを特徴とする請求項3に記載の外用剤。
【請求項6】
イオン交換機能を有する親水性高分子を含有することを特徴とするイオントフォレーシス用外用剤。
【請求項7】
前記親水性高分子が、セルロース系樹脂、コラーゲン、セリシン、ポリエチレンオキシド、キチン、キトサン、サッカロース、ゼラチン、ヒアルロン酸、アルギン酸、フィブロイン、ポリ乳酸又はハイドロオキシアパタイト又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項6に記載のイオントフォレーシス用外用剤。
【請求項8】
親水性高分子マトリクス剤及び当該親水性高分子マトリクス剤中に分散するイオン交換樹脂を含有する外用剤、又は、イオン交換機能を有する親水性高分子を含有する外用剤を静電塗装法により生体皮膚上に塗布することを特徴とする外用剤の塗布方法。
【請求項9】
第1電極と、
前記第1電極と接触を保つようにされた電解液を保持する第1電解液保持部と、
前記第1電解液保持部の前面側に配置され、第2の導電型のイオンを選択的に通過させる第1イオン交換膜と、
前記第1イオン交換膜の前面側に配置され、第1の導電型の薬剤イオンを含む薬剤液を保持する薬剤保持部と、
前記薬剤保持部の前面側の表面に貼付される第1ライナーであって、前記薬剤イオンの生体への投与に際して取り外される第1ライナーとを有する作用極構造体を備えることを特徴とするイオントフォレーシス装置。
【請求項10】
第2電極と、
前記第2電極と接触を保つようにされた電解液を保持する第2電解液保持部と、
前記第2電解液保持部の前面側に配置され、第1の導電型のイオンを選択的に通過させる第2イオン交換膜と、
前記第2イオン交換膜の前面側に配置され、電解液を保持する第3電解液保持部と、
前記第3電解液保持部の前面側の表面に貼付される第2ライナーであって、前記薬剤イオンの生体への投与に際して取り外される第2ライナーとを有する非作用極構造体を備えることを特徴とする請求項9に記載のイオントフォレーシス装置。
【請求項11】
第1電極と、
第1の導電型に荷電した薬剤イオンを含む薬剤液を保持し、前記第1電極からの通電を受ける薬剤保持部とを有する作用極構造体を備えるイオントフォレーシス装置であって、
前記薬剤保持部を、
皮膚上に形成された、親水性高分子マトリクス剤及び当該親水性高分子マトリクス剤中に分散する第1の導電型のイオンを対イオンとするイオン交換基が導入されたイオン交換樹脂を含有する外用剤の塗膜、又は、第1の導電型のイオンを交換する機能を有する親水性高分子を含有する外用剤の塗膜に接触させた状態で、
前記第1電極に第1の導電型の電圧を印加することにより前記薬剤イオンの投与が行われることを特徴とするイオントフォレーシス装置。
【請求項12】
第2電極と、
前記第2電極からの通電を受ける電解液を保持する電解液保持部とを有する非作用極構造体を更に備え、
前記電解液保持部を、
皮膚上に形成された、親水性高分子マトリクス剤及び当該親水性高分子マトリクス剤中に分散する第2の導電型のイオンを対イオンとするイオン交換基が導入されたイオン交換樹脂を含有する外用剤の塗膜、又は、第2の導電型のイオンを交換する機能を有する親水性高分子を含有する外用剤の塗膜に接触させた状態で、
前記第2電極に第2の導電型の電圧を印加することにより前記薬剤イオンの投与が行われることを特徴とする請求項11に記載のイオントフォレーシス装置。
【請求項13】
第1の導電型に荷電した薬剤イオンを含む薬剤液を保持する薬剤保持部を有する経皮パッチであって、
前記薬剤保持部を、
皮膚上に形成された、親水性高分子マトリクス剤及び当該親水性高分子マトリクス剤中に分散する第1の導電型のイオンを対イオンとするイオン交換基が導入されたイオン交換樹脂を含有する外用剤の塗膜、又は、第1の導電型のイオンを交換する機能を有する親水性高分子を含有する外用剤の塗膜に接触させることにより、
前記薬剤イオンの生体への投与が行われることを特徴とする経皮パッチ。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−296511(P2006−296511A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−119024(P2005−119024)
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【出願人】(504153989)トランスキュー・テクノロジーズ 株式会社 (83)
【Fターム(参考)】