説明

外用感染症治療軟膏剤

【課題】創部において抗菌活性を保持し、滲出液の吸水性および保水性に優れ、湿潤環境を適度に保つことで、創傷治癒に必要な期間を早めることができる銀系抗菌剤を含む外用感染症治療軟膏剤を提供すること。
【解決手段】銀系抗菌剤を含有する吸水性の良い親水性軟膏にペクチンを加えて保水性を補うことにより、抗菌活性を保持したまま、創部の湿潤環境維持に優れた軟膏剤となり、創傷治癒に必要な期間を画期的に早めることができる銀系抗菌剤を含む外用感染症治療軟膏剤に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、創傷治癒に必要な期間を早めることを目的とした外用感染症治療軟膏剤に関する。さらに詳しくは、本発明は、抗菌活性を保持し、滲出液の吸水性および保水性に優れ、湿潤環境を適度に保つことで、創傷治癒に必要な期間を早めることができる銀系抗菌剤を含む外用感染症治療軟膏剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
創傷は、内的または外的な要因により皮膚組織が損傷されることにより生じ、具体的には、切傷、擦傷、びらん、また、褥瘡および血管不全や糖尿病が原因となる慢性的な潰瘍等が挙げられる。特に、慢性的な潰瘍は、治療抵抗性で、創部に壊死組織や過剰な滲出液を伴い、寝たきりの老人や障害者、栄養状態の悪い者、あるいは免疫力や回復力の低下している者に発生しやすい。このため、これらの患者は、創部で感染症を引き起こす可能性が高く、場合によっては死に至ることがあり、早期に創傷を治癒させることが望ましい。
【0003】
従来、創傷治癒を早めるためには、創面の乾燥療法(Dry Wound Healing)が重要であると考えられてきたが、近年、滲出液により、創面の適度な湿潤状態を維持する湿潤環境下療法(Moist Wound Healing)が注目されている(非特許文献1、2)。滲出液による創面の湿潤環境の維持は、滲出液に含まれる種々の成長・増殖因子(bFGF、TGF−β等)を創部に留まらせ、治癒を早めることができる。しかし、湿潤環境は、細菌等の好適な増殖環境にもなるため、創面の余分な滲出液の貯留を避け、感染症の予防および治療を行う必要がある。
【0004】
創部の感染症に対する予防および治療は、ポビドンヨード等のヨウ素系抗菌剤、スルファジアジン銀等の銀系抗菌剤およびその他の抗菌剤が感染症治療剤として使用される。これらの感染症治療剤のうち、銀系抗菌剤は、幅広い抗菌スペクトルを持ち、菌に対する有効性が高く、長期間の使用による耐性菌の発生確率が非常に少ない等、他の感染症治療剤と比較して優れた特徴を有している。
この臨床応用として、スルファジアジン銀含有クリーム剤は、創部の感染症に対して予防および治療を目的に使用されている(特許文献1)。しかし、クリーム剤は、基剤中の水分含量が高く、吸水性が悪いため、創部に余分な滲出液が貯留し、浮腫や細菌感染を引き起こすことで治癒を抑制する課題があり、滲出液が過剰な創部に適していない(非特許文献3)。
【0005】
クリーム剤の吸水性を改善した例として、スルファジアジン銀含有クリーム剤にメルブロミンまたはヨード剤および糖を加えることにより創部の滲出液を吸水できる製剤が提案されている(特許文献2)。しかし、この製剤は、滲出液の吸水除去のみを特徴としており、適度な湿潤環境の維持はできていない。
創部の滲出液を吸水する他の手段として、吸水性に優れたポリエチレングリコールを基剤とした製剤が用いられている。しかし、ポリエチレングリコールによる基剤は、吸水性が強過ぎるために、治癒に必要な滲出液までも除去し、創部を過剰に乾燥させ、湿潤環境の維持ができない課題がある。
また、過度の乾燥を起こさずに創部の滲出液を除去する手段として、網状骨組構造を持つ基剤を用いたスルファジアジン銀含有製剤が提案されている(特許文献3)。しかし、この方法は、網状骨組構造を介して汗や滲出液の自然蒸発による除去を可能にし、過度の乾燥は抑制されているが、慢性潰瘍のような滲出液の多い創部において、積極的に滲出液を除去することが困難であり、適度な湿潤環境を維持する点で不十分である。
【0006】
これら課題を解決するためには、余分な滲出液を吸い取る吸水性と吸水した滲出液を保持し過剰な乾燥を防ぐ保水性の両面を持ち、創部の湿潤環境を維持できる軟膏製剤が必要である。
このため、これらの課題を解決した抗菌活性を保持し、滲出液の吸水性および保水性に優れ、湿潤環境を適度に保つことで、創傷治癒に必要な期間を早めることができる銀系抗菌剤を含む外用感染症治療軟膏剤の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第3761590号明細書
【特許文献2】特開平3−167123号公報
【特許文献3】特許第3065530号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】古田勝経著、「褥瘡外用療法のヒミツ−事例で学ぶ極意−」、南山堂、2006年、p.25
【非特許文献2】Debbie Sharman,「Moist wound healing:a review of evidence,application and outcome」,The Diabetic Foot,2003年,Vol.6,No.3,p.112−116
【非特許文献3】「褥瘡予防・管理ガイドライン」、日本褥瘡学会、2009年、p.110
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、創部において抗菌活性を保持し、滲出液の吸水性および保水性に優れ、湿潤環境を適度に保つことで、創傷治癒に必要な期間を早めることができる銀系抗菌剤を含む外用感染症治療軟膏剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、銀系抗菌剤を含有する吸水性の良い親水性軟膏にペクチンを加えて保水性を補うことにより、抗菌活性を保持したまま、創部湿潤環境維持に優れた軟膏剤となり、創傷治癒に必要な期間を画期的に早めることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(4)に示したものである。
(1)ペクチンおよび銀系抗菌剤を含有し、親水性軟膏基剤を用いた外用感染症治療軟膏剤であって、前記ペクチンの含量が5.0〜20.0質量%であることを特徴とする外用感染症治療軟膏剤。
(2)銀系抗菌剤がスルファジアジン銀である上記(1)に記載の外用感染症治療軟膏剤。
(3)創傷治癒効果が50%以上である上記(1)または(2)に記載の外用感染症治療軟膏剤。
(4)ペクチンの含量が7.5〜10.0質量%である上記(1)から(3)のいずれかに記載の外用感染症治療軟膏剤。
【発明の効果】
【0011】
以上述べたように、本発明は、銀系抗菌剤の抗菌活性を保持したまま、滲出液の吸水性および保水性に優れ、創部の湿潤環境を適度に保つことで、創傷治癒に必要な期間を早めることができる外用感染症治療軟膏剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の外用感染症治療軟膏剤を詳細に説明する。
本発明は、銀系抗菌剤をペクチンと親水性軟膏基剤からなる基剤中に含有する軟膏剤である。
本発明の「吸水性」とは、透析用セルロース膜を装着したフランツ型拡散セルの下層セルをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(−)で満たし、上層セルに被検製剤を適用し、90分インキュベートした際の被検製剤が吸収したPBS(−)量を意味する。また、吸水性は、1.2gの軟膏の吸水量が500mg以上のものを改善していると判断する。
【0013】
本発明の「保水性」とは、各被験製剤の「水分蒸発率」から算出した「保水効果率」を意味し、保水効果率が5%以上のものを保水性が改善していると判断する。「水分蒸発率」とは、被検製剤:水=2:1となるように均一に混合し、蓋の無い3.5mmのシャーレに一定の表面積となるように詰めた軟膏質量に対して、温度30℃、湿度60%で6時間インキュベートした際に蒸発した水分量の比率を意味する。また、「保水効果率」とは、ペクチンを含有していない比較例3の水分蒸発量に対して各被験製剤が比較例3より変化した水分蒸発量の比率を意味する。
【0014】
本発明の「創傷治癒効果」とは、ラット背部に直径10mmの欠損創を作製し、被検製剤塗布後、7日目に再上皮化していない創傷面の大きさ(長径×短径)を測定し、欠損創作成時の創傷面の大きさと比較した際の治癒した創面の割合を意味する。また、創傷治癒効果は、7日目に50%以上が治癒しているものを改善していると判断した。
【0015】
本発明に用いるペクチンは、天然由来のものであっても、合成等によって得られたものでも良い。また、その部分加水分解物および生理的に許容される塩であっても良い。生理的に許容される塩としては、生理的に許容できれば特段の限定はない。本発明に用いられるペクチンの組成物中での含量は、好ましくは5.0〜20.0質量%であり、より好ましくは7.5〜10.0質量%である。ペクチンの含量が、5.0質量%より少ない場合、または、20.0質量%より多い場合、適度な湿潤環境が維持されなくなり好ましくない。
【0016】
本発明の基剤成分としては、これらには限定されないが、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600、ポリエチレングリコール1000、ポリエチレングリコール1500、ポリエチレングリコール1540、ポリエチレングリコール2000、ポリエチレングリコール4000、ポリエチレングリコール6000、ポリエチレングリコール8000、ポリエチレングリコール10000、ポリエチレングリコール20000等のポリエチレングリコール類、プロピレングリコール等のアルコール類等が挙げられる。
【0017】
本発明に用いうる銀系抗菌剤としては、酢酸銀、アセチルアセトン酸銀、アジ化銀、銀アセチリド、ヒ酸銀、安息香酸銀、フッ化水素銀、臭素酸銀、臭化銀、炭酸銀、塩化銀、塩素酸銀、クロム酸銀、クエン酸銀、シアン酸銀、シアン化銀、(cis,cis−1,5−シクロオクタジエン)−1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトン酸銀、二クロム酸銀テトラキス(ピリジン)錯体、ジエチルジチオカルバミン酸銀、フッ化銀(I)、フッ化銀(II)、7,7−ジメチル−1,1,1,2,2,3,3−ヘプタフルオロ−4,6−オクタンジオン酸銀、ヘキサフルオロアンチモン酸銀、ヘキサフルオロヒ酸銀、ヘキサフルオロリン酸銀、ヨウ素酸銀、ヨウ化銀、イソチオシアン酸銀、シアン化銀カリウム、乳酸銀、モリブデン酸銀、硝酸銀、亜硝酸銀、酸化銀(I)、酸化銀(II)、シュウ酸銀、過塩素酸銀、ペルフルオロ酪酸銀、ペルフルオロプロピオン酸銀、過マンガン酸銀、過レニウム酸銀、リン酸銀、ピクリン酸銀一水和物、プロピオン酸銀、セレン酸銀、セレン化銀、亜セレン酸銀、スルファジアジン銀、硫酸銀、硫化銀、亜硫酸銀、テルル化銀、テトラフルオロ硼酸銀、テトラヨードムキュリウム酸銀、テトラタングステン酸銀、チオシアン酸銀、p−トルエンスルホン酸銀、トリフルオロメタンスルホン酸銀、トリフルオロ酢酸銀およびバナジン酸銀等が挙げられる。種々の銀塩の混合物も使用することができる。最も好ましい銀系抗菌剤は、スルファジアジン銀である。
【0018】
本発明においては、さらに必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、医薬品を製造するに当たり許容される各種成分、すなわち、pH調整剤、緩衝剤、防腐剤、酸化防止剤等を適宜配合することができる。
pH調整剤および緩衝剤としては、塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム水和物、クエン酸水和物、ジイソプロパノールアミン、酢酸、酢酸ナトリウム水和物等が挙げられる。
【0019】
防腐剤としては、安息香酸塩、サリチル酸塩、ソルビン酸塩、デヒドロ酢酸塩、パラオキシ安息香酸エステル、2,2,4´−トリクロロ−2´−ヒドロキシジフェニルエーテル、塩化ベンザルコニウム、チモール、フェノキシエタノール等を添加しても良い。
【0020】
抗酸化剤としては、アスコルビン酸、トコフェロール、ベンゾトリアゾール、亜硫酸水素ナトリウム、エデト酸ナトリウム水和物、ジブチルヒドロキシトルエン等を加えても良い。
【0021】
本発明の製造に際しては上記に説明した含量範囲に基づいて更に、後述の実施例や軟膏剤の製造法として従来から知られている方法、もしくは今後新しく提供される方法を利用すれば、本発明で目的とする外用感染症治療軟膏剤を製造することができる。
本発明の外用感染症治療軟膏剤は、例えば以下のような方法で製造することができる。
まず、銀系抗菌剤、ペクチン、ポリエチレングリコールを加温しながらプロペラ式撹拌機やホモミキサー等で撹拌溶解し、溶解後、撹拌しながら冷却することにより製造できる。または、親水性基剤からなる軟膏に、銀系抗菌剤およびペクチンを投入し、均一になるまで撹拌することにより製造することができる。
【実施例】
【0022】
以下に実施例によりさらに詳細に本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1)
ビーカーにスルファジアジン銀を1.0g、ペクチンを5.0g、ポリエチレングリコール400を69.0g、ポリエチレングリコール4000を15.6g、ポリエチレングリコール20000を9.4g加え、これらを75℃まで加温しながら撹拌溶解した。溶解後、撹拌しながら37℃まで冷却して100.0gの外用感染症治療軟膏剤1を得た。得られた外用感染症治療軟膏剤1を試験例1に従って抗菌活性試験を行った際の抗菌活性は、++であり、試験例2に従って吸水性評価試験を行った際の吸水性は、872mgであり、試験例3に従って保水性評価試験を行った際の保水効果率は、13.1%であり、ラット全層欠損創試験を行った際の創傷治癒効果率は、57.6%であった。結果を表1に示す。
【0023】
(試験例1)
抗菌活性試験
前述の実施例1の外用感染症治療軟膏剤、後述する実施例2および3の外用感染症治療軟膏剤および後述する比較例1の外用軟膏基剤、後述する比較例2のスルファジアジン銀クリーム剤、後述する比較例3から6の外用感染症治療軟膏剤を使用し、次に示す方法で抗菌活性試験を行った。
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)に対する抗菌活性は、ペニシリンカップ(円筒平板法カップ:8mm)を用いて評価した。滅菌した基礎寒天培地に緑膿菌を加えた溶液を90mmの深型シャーレに入れ、固化後、被検製剤をペニシリンカップに100μL加え、培地上に設置した。30℃で48時間培養後、形成された阻止円の大きさを測定した。抗菌活性の評価は、阻止円の直径を測定し、9mm未満を−、9mm以上14mm未満を+、14mm以上を++として行った。
【0024】
(試験例2)
吸水性評価試験
前述の実施例1の外用感染症治療軟膏剤、後述する実施例2から4の外用感染症治療軟膏剤および後述する比較例1の外用軟膏基剤、後述する比較例2のスルファジアジン銀クリーム剤、後述する比較例3から6の外用感染症治療軟膏剤を使用し、次に示す方法で吸水性評価試験を行った。
透析用セルロース膜を装着したフランツ型拡散セルに、被検製剤を1.2g乗せ、下層セルをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(−)で満たし、初めの枝管の水位を確認した。拡散セルウォータージャケットは30℃とした。90分後に枝管の水位を確認し、初めの水位までPBS(−)を足した。加えたPBS(−)量を製剤の吸水量とした。
【0025】
(試験例3)
保水性評価試験
前述の実施例1の外用感染症治療軟膏剤、後述する実施例2から4の外用感染症治療軟膏剤および後述する比較例1の外用軟膏基剤、後述する比較例2のスルファジアジン銀クリーム剤、後述する比較例3から6の外用感染症治療軟膏剤を使用し、次に示す方法で保水性評価試験を行った。
被検製剤5.0gに対して2.5gの水を加えて均一になるように混合し、3.5mmのシャーレに詰め、初期値として質量を測定した。被検製剤は、シャーレの蓋を開けた状態で温度30℃、湿度60%でインキュベートし、6時間後に質量を測定した。保水性は、次の式1および2により保水効果率を算出して評価した。なお、保水性は、保水効果率が大きいほど高いと判断する。
【0026】
(式1)
水分蒸発率(%)=(1−6時間後の質量/初期値)×100
【0027】
(式2)
保水効果率(%)=(1−各被験製剤の水分蒸発率/比較例3の水分蒸発率)×100
【0028】
(試験例4)
ラット全層欠損創試験
前述の実施例1の外用感染症治療軟膏剤、後述する実施例2から4の外用感染症治療軟膏剤および後述する比較例1の外用軟膏基剤、後述する比較例2のスルファジアジン銀クリーム剤、後述する比較例3から6の外用感染症治療軟膏剤を使用し、次に示す方法でラット全層欠損創試験を行った。
5週齢のWistar系雄性ラットを一週間予備飼育した後、試験に供した。ラットの背部を電気バリカンでせん毛した後、ペントバルビタール麻酔下で背部を直径10mmの円形ポンチで打ち抜き、正中線で対称の2箇所の打ち抜き創を作製した。打ち抜き直後の創傷面の大きさ(長径×短径)をノギスで測定した。被験製剤は、欠損創作製日より7日目まで、1日1回100mgずつ各欠損創部に塗布し、布およびフィルムで覆った後、粘着テープで固定した。
欠損創作製後7日目の再上皮化していない創傷部の長径および短径を測定し、創傷治癒促進効果を次の式3により算出した。なお、創傷治癒促進効果は、創傷治癒効果率が大きいほど強いと判断する。
【0029】
(式3)
創傷治癒効果率(%)=(1−欠損創作製7日目の創部面積/欠損創作製日の創部面積)×100
【0030】
【表1】

【0031】
(実施例2)
実施例1において、ペクチンを5.0gから7.5gに、ポリエチレングリコール400を69.0gから66.5gにした以外は実施例1と全く同じ調製法を繰り返して100.0gの外用感染症治療軟膏剤2を得た。得られた外用感染症治療軟膏剤2を試験例1に従って抗菌活性試験を行った際の抗菌活性は、++であり、試験例2に従って吸水性評価試験を行った際の吸水性は、824mgであり、試験例3に従って保水性評価試験を行った際の保水効果率は、29.6%であり、ラット全層欠損創試験を行った際の創傷治癒効果率は、60.2%であった。結果を表1に示す。
【0032】
(実施例3)
実施例1において、ペクチンを5.0gから10.0gに、ポリエチレングリコール400を69.0gから64.0gにした以外は実施例1と全く同じ調製法を繰り返して100.0gの外用感染症治療軟膏剤3を得た。得られた外用感染症治療軟膏剤3を試験例1に従って抗菌活性試験を行った際の抗菌活性は、++であり、試験例2に従って吸水性評価試験を行った際の吸水性は、786mgであり、試験例3に従って保水性評価試験を行った際の保水効果率は、41.1%であり、ラット全層欠損創試験を行った際の創傷治癒効果率は、62.6%であった。結果を表1に示す。
【0033】
(実施例4)
実施例1において、ペクチンを5.0gから20.0gに、ポリエチレングリコール400を69.0gから54.0gにした以外は実施例1と全く同じ調製法を繰り返して100.0gの外用感染症治療軟膏剤4を得た。得られた外用感染症治療軟膏剤4を試験例1に従って抗菌活性試験を行った際の抗菌活性は、++であり、試験例2に従って吸水性評価試験を行った際の吸水性は、594mgであり、試験例3に従って保水性評価試験を行った際の保水効果率は、9.4%であり、ラット全層欠損創試験を行った際の創傷治癒効果率は、71.4%であった。結果を表1に示す。
【0034】
(比較例1)
実施例1において、スルファジアジン銀およびペクチンを抜き、ポリエチレングリコール400を69.0gから75.0gにした以外は実施例1と全く同じ調製法を繰り返して100.0gの外用軟膏基剤を得た。得られた外用軟膏基剤を試験例1に従って抗菌活性試験を行った際の抗菌活性は、−であり、試験例2に従って吸水性評価試験を行った際の吸水性は、1428mgであり、試験例3に従って保水性評価試験を行った際の保水効果率は、0.4%であり、ラット全層欠損創試験を行った際の創傷治癒効果率は、18.7%であった。結果を表1に示す。
【0035】
(比較例2)
ビーカーに白色ワセリンを16.4g、ステアリルアルコールを16.4g、ミリスチン酸イソプロピルを6.6g、ソルビタンモノオレエートを1.1g、ステアリン酸ポリオキシル40を8.8g加え、75℃で撹拌溶解し油相とした。別のビーカーにメチルパラベンを0.3g、水を41.7g加え、75℃で撹拌溶解し水相とした。75℃で水相を油相に撹拌しながら加え、60℃まで冷却しながらクリーム状になるまで撹拌を続けた。さらに、プロピレングリコール7.7gにスルファジアジン銀1.0gを懸濁させた液を加え撹拌しながら50℃まで冷却し、100.0gのスルファジアジン銀クリーム剤を得た。得られたスルファジアジン銀クリーム剤を試験例1に従って抗菌活性試験を行った際の抗菌活性は、+であり、試験例2に従って吸水性評価試験を行った際の吸水性は、49mgであり、試験例3に従って保水性評価試験を行った際の保水効果率は、3.8%であり、ラット全層欠損創試験を行った際の創傷治癒効果率は、21.8%であった。結果を表1に示す。
【0036】
(比較例3)
実施例1において、ペクチンを抜き、ポリエチレングリコール400を69.0gから74.0gにした以外は実施例1と全く同じ調製法を繰り返して100.0gの外用感染症治療軟膏剤5を得た。得られた外用感染症治療軟膏剤5を試験例1に従って抗菌活性試験を行った際の抗菌活性は、++であり、試験例2に従って吸水性評価試験を行った際の吸水性は、1385mgであり、試験例3に従って保水性評価試験を行った際の保水効果率は、0.0%であり、ラット全層欠損創試験を行った際の創傷治癒効果率は、26.7%であった。結果を表1に示す。
【0037】
(比較例4)
実施例1において、ペクチンを5.0gから1.0gに、ポリエチレングリコール400を69.0gから73.0gにした以外は実施例1と全く同じ調製法を繰り返して100.0gの外用感染症治療軟膏剤6を得た。得られた外用感染症治療軟膏剤6を試験例1に従って抗菌活性試験を行った際の抗菌活性は、++であり、試験例2に従って吸水性評価試験を行った際の吸水性は、1077mgであり、試験例3に従って保水性評価試験を行った際の保水効果率は、4.2%であり、ラット全層欠損創試験を行った際の創傷治癒効果率は、39.8%であった。結果を表1に示す。
【0038】
(比較例5)
実施例1において、ペクチンを5.0gから25.0gに、ポリエチレングリコール400を69.0gから49.0gにした以外は実施例1と全く同じ調製法を繰り返して100.0gの外用感染症治療軟膏剤7を得た。得られた外用感染症治療軟膏剤7を試験例1に従って抗菌活性試験を行った際の抗菌活性は、++であり、試験例2に従って吸水性評価試験を行った際の吸水性は、472mgであり、試験例3に従って保水性評価試験を行った際の保水効果率は、6.5%であり、ラット全層欠損創試験を行った際の創傷治癒効果率は、43.4%であった。結果を表1に示す。
【0039】
(比較例6)
実施例1において、スルファジアジン銀をスルファジアジンにした以外は実施例1と全く同じ調製法を繰り返して100.0gの外用感染症治療軟膏剤8を得た。得られた外用感染症治療軟膏剤8を試験例1に従って抗菌活性試験を行った際の抗菌活性は、−であり、試験例2に従って吸水性評価試験を行った際の吸水性は、832mgであり、試験例3に従って保水性評価試験を行った際の保水効果率は、12.4%であり、ラット全層欠損創試験を行った際の創傷治癒効果率は、54.3%であった。結果を表1に示す。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、創部において抗菌活性を保持し、滲出液の吸水性および保水性に優れ、湿潤環境を適度に保つことで、創傷治癒に必要な期間を早めることができる銀系抗菌剤を含む外用感染症治療軟膏剤に関するものであって、産業上十分に利用できるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペクチンおよび銀系抗菌剤を含有し、親水性軟膏基剤を用いた外用感染症治療軟膏剤であって、前記ペクチンの含量が5.0〜20.0質量%であることを特徴とする外用感染症治療軟膏剤。
【請求項2】
銀系抗菌剤がスルファジアジン銀である請求項1に記載の外用感染症治療軟膏剤。
【請求項3】
創傷治癒効果が50%以上である請求項1または2に記載の外用感染症治療軟膏剤。
【請求項4】
ペクチンの含量が7.5〜10.0質量%である請求項1から3のいずれかに記載の外用感染症治療軟膏剤。

【公開番号】特開2013−87080(P2013−87080A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228689(P2011−228689)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(390039468)三笠製薬株式会社 (7)
【Fターム(参考)】