説明

外装材付きワイヤハーネスおよびその製造方法

【課題】汎用のチューブを外装材として使用することができて、低コスト化および生産性の向上が図れるようにした外装材付きワイヤハーネスおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】電線束Wの外周を包囲するように外装材としてのチューブ5を装着し、そのチューブ5および電線束Wを直線形状あるいは屈曲形状の保持型1、2の配索溝3に嵌めて、ワイヤハーネスの配索形状に沿った形状に保持し、その状態でチューブ5の内部にモールド樹脂10を充填し硬化させることで、所定形状の外装体付きワイヤハーネスを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線束を包囲するように外装材としてのチューブが設けられた外装材付きワイヤハーネスおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図2は特許文献1に開示された従来の外装材付きワイヤハーネスの構成を示す図である。このワイヤハーネスは、図2(a)に示すように、直管部61と蛇腹管部62とを連続的に備えた一体成形品よりなる硬質樹脂製のチューブ60を、電線束65の外周を包囲する外装材として使用したもので、蛇腹管部62はワイヤハーネスの車両配索時に屈曲位置となる領域に配されており、チューブ60を真っすぐとした状態で電線束65を貫通させた後に、蛇腹管部62をベンダー機で所要方向に屈曲させることで、図2(b)に示すように、全体が所定の配索形状に成形されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−143326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の従来のワイヤハーネスでは、曲げる箇所に蛇腹管部62を配した専用のチューブ60を事前に準備しておく必要があるため、コスト高で生産性が悪いという問題があった。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、汎用のチューブを外装材として使用することができて、低コスト化および生産性の向上が図れるようにした外装材付きワイヤハーネスおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 電線束を包囲するように外装材としてのチューブが設けられ、そのチューブの内部にモールド樹脂が充填・硬化されていることを特徴とする外装材付きワイヤハーネス。
【0007】
(2) 電線束の外周を包囲するように外装材としてのチューブを装着し、そのチューブおよび電線束をワイヤハーネスの配索形状に沿った形状に保持した状態で、チューブの内部にモールド樹脂を充填し硬化させることを特徴とする外装材付きワイヤハーネスの製造方法。
【0008】
(3) 電線束の外周を包囲するように外装材としてのチューブを装着し、そのチューブの内部にモールド樹脂を充填し、該モールド樹脂が硬化する前に前記チューブおよび電線束をワイヤハーネスの配索形状に沿った形状に保持して、その状態で前記チューブの内部に充填したモールド樹脂を硬化させることを特徴とする外装材付きワイヤハーネスの製造方法。
【0009】
(4) 電線束の外周を包囲する外装材としてのチューブの内部にモールド樹脂を充填し、そのモールド樹脂が硬化する前に、前記チューブに前記電線束をセットすると共に、該チューブおよび電線束をワイヤハーネスの配索形状に沿った形状に保持して、その状態で前記チューブの内部に充填したモールド樹脂を硬化させることを特徴とする外装材付きワイヤハーネスの製造方法。
【0010】
上記(1)の構成の外装材付きワイヤハーネスによれば、電線束の外周を包囲するチューブの内部にモールド樹脂が充填・硬化されることで、チューブおよび電線束の形状が決定付けられているので、外装材として汎用のチューブを使用することができ、低コスト化と生産性の向上を図ることができる。また、モールド樹脂として発泡樹脂を使用することにより、軽量化を図ることができる。また、汎用のチューブを使用するものの、チューブの内部に充填・硬化されたモールド樹脂により形状保持性が与えられるので、車両組付性の向上が図れる。
【0011】
上記(2)の構成の外装材付きワイヤハーネスの製造方法によれば、電線束の外周にチューブを装着し、チューブおよび電線束を配索形状に沿った形状に保持した状態で、チューブの内部にモールド樹脂を充填し硬化させるので、汎用チューブを使用しながら直線形状部と屈曲形状部を任意に容易に成形することができる。特にモールド樹脂の充填前にチューブおよび電線束を配索形状に沿った形状に保持するので、例えば屈曲部の形状を容易に作ることができる。
【0012】
上記(3)の構成の外装材付きワイヤハーネスの製造方法によれば、電線束の外周にチューブを装着し、チューブの内部にモールド樹脂を充填し、モールド樹脂が硬化する前にチューブおよび電線束をワイヤハーネスの配索形状に沿った形状に保持して、その状態でチューブの内部に充填したモールド樹脂を硬化させるので、汎用チューブを使用しながら直線形状部と屈曲形状部を任意に容易に成形することができる。特にチューブおよび電線束を配索形状に沿った形状に保持する前に、モールド樹脂をチューブの内部に充填するので、チューブを後から屈曲させる必要がある場合でも、チューブを直線状に維持した状態でモールド樹脂の充填を容易に行うことができる。
【0013】
上記(4)の構成の外装材付きワイヤハーネスの製造方法によれば、チューブの内部にモールド樹脂を充填してから、モールド樹脂が硬化する前にチューブに電線束をセットすると共に、チューブおよび電線束を配索形状に沿った形状に保持して、その状態でチューブの内部に充填したモールド樹脂を硬化させるので、汎用チューブを使用しながら直線形状部と屈曲形状部を任意に容易に成形することができる。特にモールド樹脂の充填を、チューブに電線束をセットする前に行うので、容易に行うことができる。この方法は、例えば、スリット付きチューブのスリットを開いた状態で、チューブの中にモールド樹脂を充填し、同様に電線束をセットする場合に採用することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、外装材として汎用のチューブを使用することができるので、低コスト化と生産性の向上を図ることができる。また、モールド樹脂として発泡樹脂を使用することができるので、軽量化を図ることができる。また、汎用のチューブを使用するものの、チューブの内部に充填・硬化されたモールド樹脂により形状保持性が与えられるので、車両組付性の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態の外装材付きワイヤハーネスの製造方法の説明図で、(a)は直線形状のワイヤハーネスを作る場合の工程図、(b)は屈曲形状のワイヤハーネスを作る場合の工程図である。
【図2】従来の外装材付きワイヤハーネスの説明図で、(a)はチューブの外観斜視図、(b)はチューブを電線束に装着し配索形状に沿った曲げ成形した状態を示す外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は実施形態の外装材付きワイヤハーネスの製造方法の説明図で、(a)は直線形状のワイヤハーネスを作る場合の工程図、(b)は屈曲形状のワイヤハーネスを作る場合の工程図である。
【0017】
本実施形態のワイヤハーネスは、電線束Wを包囲するように外装材としてのチューブ5が設けられ、そのチューブ5の内部にモールド樹脂10が充填・硬化されたもので、次の工程を経て作られている。
【0018】
まず、チューブ5および電線束Wの形状を配索形状に沿って保持するための保持型1、2を容易する。配索形状が直線形状の場合は(a)の直線タイプの保持型1を使用し、配索形状が屈曲形状の場合は(b)の屈曲タイプの保持型2を使用する。各保持型1、2は保持形状を決めるための配索溝3が設けられている。次に電線束Wの外周を包囲するように外装材としてのチューブ5を装着し、そのチューブ5および電線束Wを保持型1、2の配索溝3に装着することにより、チューブ5および電線束Wをワイヤハーネスの配索形状に沿った形状に保持する。次にその状態で、チューブ5の内部に開口端から注入機11によりモールド樹脂10を充填する。そして、チューブ5の全体にモールド樹脂10を行き渡らせたら、そのままの状態でモールド樹脂10を硬化させる。
【0019】
モールド樹脂10が硬化したら、保持型1、2からチューブ5および電線束Wを取り外す。これにより、保持型1、2のパターンに沿った配索形状の外装材付きワイヤハーネスを得ることができる。
【0020】
チューブ5の材質やモールド樹脂10の材質は、例えば、PP、PE、EPP(発泡系)、EPDM(ゴム系)などを採用することができる。発泡樹脂を使用した場合は、ワイヤハーネスの軽量化を図ることができる。
【0021】
このように製造した外装材付きワイヤハーネスによれば、電線束Wの外周を包囲するチューブ5の内部にモールド樹脂10が充填・硬化されることで、チューブ5および電線束Wの形状が決定付けられているので、外装材として汎用のチューブ5を使用することができ、低コスト化と生産性の向上を図ることができる。また、汎用のチューブ5を使用するものの、チューブ5の内部に充填・硬化されたモールド樹脂10により形状保持性が与えられるので、車両組付性の向上が図れる。また、この製造方法では、モールド樹脂10の充填前にチューブ5および電線束Wを保持型1、2の配索溝3に嵌めるようにしたので、屈曲部の形状を容易に作ることができる。
【0022】
なお、保持型1、2は必ずしも使用する必要はない。例えば、チューブ5で保護した部分を、モールド樹脂10の充填から硬化までの間、配索形状に沿わせて仮保持することができれば、保持型1、2を使用しなくてもよい。
【0023】
また、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0024】
例えば、上記実施形態では、モールド樹脂10の充填前にチューブ5および電線束Wを保持型1、2の配索溝3に嵌めるようにしたが、電線束Wの外周を包囲するように外装材としてのチューブ5を装着し、そのチューブ5の内部にモールド樹脂10を充填してから、モールド樹脂10が硬化する前にチューブ5および電線束Wを保持型1、2の配索溝3に嵌めて、その状態でチューブ5の内部に充填したモールド樹脂10を硬化させるようにしてもよい。
【0025】
このようにした場合、チューブ5および電線束Wを屈曲形状とする場合でも、チューブ5を直線状に維持した状態でモールド樹脂10の充填を行うことができるので、充填の容易化を図ることができる。
【0026】
また、更に別の方法として、電線束Wの外周を包囲するチューブ5の内部に先にモールド樹脂10を充填し、そのモールド樹脂10が硬化する前に、チューブ5に電線束Wをセットすると共に、チューブ5および電線束Wをワイヤハーネスの配索形状に沿った形状に保持して、その状態でチューブ5の内部に充填したモールド樹脂10を硬化させるようにすることも可能である。この場合は、モールド樹脂10の充填を、チューブ5に電線束Wをセットする前に行うので、容易に行うことができる。この方法は、例えば、スリット付きチューブのスリットを開いた状態で、チューブの中にモールド樹脂を充填し、同様に電線束をセットする場合に採用することができる。
【符号の説明】
【0027】
W 電線束
5 チューブ
10 モールド樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線束を包囲するように外装材としてのチューブが設けられ、そのチューブの内部にモールド樹脂が充填・硬化されていることを特徴とする外装材付きワイヤハーネス。
【請求項2】
電線束の外周を包囲するように外装材としてのチューブを装着し、そのチューブおよび電線束をワイヤハーネスの配索形状に沿った形状に保持した状態で、チューブの内部にモールド樹脂を充填し硬化させることを特徴とする外装材付きワイヤハーネスの製造方法。
【請求項3】
電線束の外周を包囲するように外装材としてのチューブを装着し、そのチューブの内部にモールド樹脂を充填し、該モールド樹脂が硬化する前に前記チューブおよび電線束をワイヤハーネスの配索形状に沿った形状に保持して、その状態で前記チューブの内部に充填したモールド樹脂を硬化させることを特徴とする外装材付きワイヤハーネスの製造方法。
【請求項4】
電線束の外周を包囲する外装材としてのチューブの内部にモールド樹脂を充填し、そのモールド樹脂が硬化する前に、前記チューブに前記電線束をセットすると共に、該チューブおよび電線束をワイヤハーネスの配索形状に沿った形状に保持して、その状態で前記チューブの内部に充填したモールド樹脂を硬化させることを特徴とする外装材付きワイヤハーネスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−5688(P2013−5688A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137566(P2011−137566)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】