説明

外観検査装置

【課題】セラミック成型体に対して検査液を適量かつ持続的に付与でき、簡便にセラミック成型体の外観を検査できる外観検査装置を提供する。
【解決手段】外観検査装置1では、検査対象のセラミック成型体Sが載置される載置部11が複数の孔を有する多孔質体からなり、載置部11の底面11b側が検査液貯留部13内に配置されている。したがって、検査液貯留部13内の検査液Vが毛管現象によって載置部11の底面11bから載置面11aに伝わり、載置面11aにおいて、セラミック成型体Sに対して検査液Vを適量かつ持続的に付与できる。これにより、外観検査装置1では、簡便にセラミック成型体Sの外観を検査することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック成型体の外観検査を行う外観検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック成型体の外観を検査する手法として、セラミック成型体への影響が小さく、かつ揮発性の高い検査液(例えばアルコール)を用いる手法がある。この手法では、セラミック成型体にクラックが生じている場合に検査液がクラックに浸入し、クラック部位が他の部位に対して目立つことによってクラックの有無を判別している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−31500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した手法では、セラミック成型体に付与する検査液の量の調整が課題となっていた。すなわち、検査液が過剰になると、クラック部位を含めたセラミック成型体の全体に検査液が浸入し、クラック部位を目立たせることが困難となり、検査液が不足すると、検査液がすぐに揮発してクラック部位の判別が困難となるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記課題の解決のためになされたものであり、セラミック成型体に対して検査液を適量かつ持続的に付与でき、簡便にセラミック成型体の外観を検査できる外観検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決のため、本発明に係る外観検査装置は、検査液をセラミック成型体の表面に付与することによってセラミック成型体の外観検査を行う外観検査装置であって、セラミック成型体が載置される載置面、及び当該載置面の反対側に位置する底面を有する載置部と、検査液が貯留される検査液貯留部に検査液を供給する検査液供給部と、を備え、載置部は、載置面から底面にかけて貫通する複数の孔を有する多孔質体からなり、載置部の底面側は、検査液貯留部内に配置されていることを特徴としている。
【0007】
この外観検査装置では、載置部が複数の孔を有する多孔質体からなり、載置部の底面側が検査液貯留部内に配置されている。したがって、検査液貯留部内の検査液が毛管現象によって載置部の底面から載置面に伝わり、載置面において、セラミック成型体に対して検査液を適量かつ持続的に付与できる。セラミック成型体に対して検査液を適量かつ持続的に付与できることで、簡便にセラミック成型体の外観を検査することが可能となる。
【0008】
また、載置部及び検査液貯留部が周方向に沿って設置された回転テーブルと、載置部に向けてセラミック成型体を順次供給する成型体供給部と、を更に備えたことが好ましい。この場合、検査対象となるセラミック成型体の供給及び移送を自動化できるので、より簡便にセラミック成型体の外観を検査できる。
【0009】
また、載置部に載置された状態で回転テーブル上を移送されるセラミック成型体を撮像する撮像部と、撮像部によって撮像された画像に基づいてセラミック成型体の外観の良否を判断する判断部と、を更に備えたことが好ましい。この場合、検査液が付与されたセラミック成型体の外観の良否判断を自動化できるので、より簡便にセラミック成型体の外観を検査できる。
【0010】
また、回転テーブルは、成型体供給部から供給されたセラミック成型体を受ける予備載置部を載置部よりも外周側に有し、予備載置部に載置されたセラミック成型体を載置部に寄せる寄せ部を更に備えたことが好ましい。この場合、成型体供給部からセラミック成型体が供給されるときの勢いでセラミック成型体の上面に検査液が付着してしまうことを防止できる。
【0011】
また、検査液は、表面張力が80mN/m以下の液体であることが好ましい。こうすると、載置面への検査液の染み出し量を好適にできる。
【0012】
また、載置部は、分子量が100万以上の超高分子ポリエチレンによって形成されていることが好ましい。この場合、載置部の載置面の耐摩耗性及び滑り性を好適に確保できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、セラミック成型体に対して検査液を適量かつ持続的に付与でき、簡便にセラミック成型体の外観を検査できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る外観検査装置の一実施形態を示す平面図である。
【図2】図1におけるII−II線断面図である。
【図3】撮像部で取得される画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る外観検査装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明に係る外観検査装置の一実施形態を示す平面図である。同図に示す外観検査装置1は、回転テーブル2の回転によって移送されるセラミック成型体Sの表面を順次撮像することにより、セラミック成型体Sにクラックが発生しているか否かを検査する装置として構成されている。検査対象であるセラミック成型体Sは、例えばリングバリスタの素体やバルク型コンデンサの素体として用いられるものであり、例えば厚さ0.45mm〜1.0mm、直径6.0mm〜13.5mm程度の円形状をなしている。
【0017】
外観検査装置1は、図1に示すように、セラミック成型体Sを移送する円形の回転テーブル2と、セラミック成型体Sを供給する成型体供給部3と、セラミック成型体Sを撮像する撮像部4と、セラミック成型体Sの外観の良否を判断する判断部5と、検査を終えたセラミック成型体Sを回収する良品回収部6及び不良品回収部7とを備えている。
【0018】
回転テーブル2は、図1及び図2に示すように、周方向に沿って設けられた環状の載置部11と、載置部11よりも外周側に設けられた環状の予備載置部12と、外観検査に使用する検査液Vが貯留される検査液貯留部13と、検査液貯留部13に検査液Vを供給する検査液供給部14とを有している。回転テーブル2は、例えばサーボモータ(不図示)の駆動により、中心軸周りに所定の速度で回転するようになっている。
【0019】
載置部11は、図2に示すように、回転テーブル2の厚さ方向に延びており、載置部11の上面は、回転テーブル2の上面と略面一になっており、セラミック成型体Sが載置される載置面11aとなっている。また、載置部11の底面11bは、回転テーブル2の内部において検査液貯留部13内に位置している。この載置部11は、載置面11aから底面11bにかけて貫通する複数の孔を有する多孔質体によって形成されている。
【0020】
多孔質体としては、例えば紙などの繊維、セラミック、金属、樹脂などが挙げられるが、載置部11の載置面11aの耐摩耗性及び滑り性を考慮すると、分子量が100万以上の超高分子ポリエチレンを用いることが好ましい。一方、予備載置部12は、載置部11に隣接して回転テーブル2の周縁に沿って設けられている。この予備載置部12は、例えば載置部11と略等幅で回転テーブル2の表面に設定されており、検査液貯留部13とは隔てられている。
【0021】
検査液貯留部13は、図2に示すように、回転テーブル2の内部において、載置部11に対応して環状に設けられている。また、検査液供給部14は、回転テーブル2の中央に設置されている。検査液貯留部13と検査液供給部14とは、検査液導入路15によって接続されている。検査液導入路15は、回転テーブル2の内部において、検査液供給部14が設置されている回転テーブル2の中心から検査液貯留部13にかけて延びており、例えば90°間隔で4本設けられている。
【0022】
検査液供給部14と検査液導入路15との間には、バルブ16が設けられている。バルブ16が開放されると、検査液供給部14内の検査液Vが検査液導入路を通って検査液貯留部13に流れ込み、載置部11の底面11b側が検査液Vに浸るようになっている。また、検査液導入路15の末端部分には、液量調整部17が設けられている。液量調整部17は、例えば回転テーブル2の上面側から螺入されたネジ19によって構成されている。
【0023】
ネジ19の先端は、検査液導入路15内に進出可能となっており、進出量の調整によって検査液貯留部13に流れ込む検査液Vの量を調整できる。また、回転テーブル2が回転するときの遠心力によって検査液Vが一度に検査液貯留部13に流れ込むことが防止される。
【0024】
検査液Vとしては、セラミック成型体Sへの影響が小さく、かつ揮発性の高い液体が用いられる。また、検査液Vの表面張力は、80mN/m以下であることが好ましい。このような検査液Vとしては、例えばアルコールが挙げられる。検査液貯留部13内の検査液Vは、多孔質体で形成されている載置部11の内部を毛管現象によって伝わり、載置部11の載置面11aに一定の量で持続的に染み出す。
【0025】
なお、毛管現象による検査液Vの上昇高さhは、検査液Vの表面張力をT、接触角をθ、検査液Vの密度をρ、重力加速度をg、多孔質体の孔半径をrとすると、以下の式(1)を用いて求めることができる。
h=(2Tcosθ)/ρgr …(1)
【0026】
成型体供給部3は、例えばホッパー21及びフィーダ22を含んで構成されている。ホッパー21には、多数のセラミック成型体Sが収容されている。このホッパー21が開放されることによって、フィーダ22の先端から回転テーブル2の周縁部に向けてセラミック成型体Sが供給され、セラミック成型体Sが予備載置部12に順次載置される。
【0027】
また、予備載置部12に載置されたセラミック成型体Sの移送経路上には、円板状の寄せ部23が設けられている。寄せ部23は、成型体供給部3と撮像部4との間に位置しており、寄せ部23の周縁部は、予備載置部12の幅の分だけ回転テーブル2上に張り出した状態となっている。この寄せ部23により、供給当初は予備載置部12上に載置されたセラミック成型体が、寄せ部23に当たって載置部11側に寄せられ、これ以降は載置部11上に載置された状態で移送される(図1参照)。
【0028】
撮像部4は、例えばCCDカメラによって構成されている。撮像部4は、回転テーブル2の回転によって移送されてきたセラミック成型体Sが真下を通るタイミングでセラミック成型体Sの上面側を撮像する。図3は、撮像部で取得される画像の一例を示す図である。セラミック成型体Sにクラックが生じてない場合、セラミック成型体Sの底面側には検査液Vが付着した状態となっているが、セラミック成型体Sの上面側には検査液Vは一切付着しない。したがって、図3(a)に示すように、クラックのないセラミック成型体Sの上面側の画像では、一様な色相が得られる。
【0029】
一方、セラミック成型体Sにクラックが生じている場合、セラミック成型体Sが載置部11の載置面11aに載置されている間に毛管現象によって検査液Vがクラック部位Cに浸入する。このとき、クラック部位Cを通じてセラミック成型体Sの上面側まで検査液Vが伝わるが、他の部位については検査液Vが付着していない状態となる。したがって、図3(b)に示すように、クラックのあるセラミック成型体Sの上面側の画像では、クラック部位Cの色相が他の部位の色相に対して目立つようになる。
【0030】
判断部5は、撮像部4で撮像された画像に基づいてセラミック成型体Sの外観の良否を判断する部分である。判断部5は、例えばクラック部位の色相に対応する閾値を有し、取得した画像の色相が閾値以下である場合にセラミック成型体Sの外観に異常がない(良品)と判断し、取得した画像の色相が閾値を超えている場合にセラミック成型体Sの外観に異常がある(不良品)と判断する。
【0031】
判断部5は、セラミック成型体Sの外観に異常がないと判断した場合には、セラミック成型体Sをそのまま通過させる。このセラミック成型体Sは、撮像部4の下流側に配置された円板状の寄せ部24によって回転テーブル2の外方に寄せられ、良品回収部6によって回収される。なお、良品回収部6にシュートを設け、当該シュートをヒータ等によって所定の温度に暖めておくことが好ましい。この場合、セラミック成型体Sに付着した検査液Vを迅速に蒸発させることができる。
【0032】
一方、判断部5は、セラミック成型体Sの外観に異常があると判断した場合には、エア噴射部25に対して駆動を指示する指示情報を出力する。これにより、このセラミック成型体Sは、撮像部4の位置で回転テーブルの外方に押し出され、不良品回収部7によって回収される。
【0033】
以上説明したように、外観検査装置1では、検査対象のセラミック成型体Sが載置される載置部11が複数の孔を有する多孔質体からなり、載置部11の底面11b側が検査液貯留部13内に配置されている。したがって、検査液貯留部13内の検査液Vが毛管現象によって載置部11の底面11bから載置面11aに伝わり、載置面11aにおいて、セラミック成型体Sに対して検査液Vを適量かつ持続的に付与できる。
【0034】
載置面11aにおける検査液Vが過剰になると、クラック部位Cを含めたセラミック成型体Sの全体に検査液Vが浸入し、クラック部位Cを目立たせることが困難となる。また、載置面11aにおける検査液Vが不足すると、検査液Vがすぐに揮発してクラック部位Cの判別が困難となるという問題がある。これに対し、外観検査装置1では、毛管現象を利用してセラミック成型体Sに検査液Vを適量かつ持続的に付与できるので、簡便にセラミック成型体Sの外観を検査することが可能となる。
【0035】
また、外観検査装置1では、載置部11及び検査液貯留部13が周方向に沿って設置された回転テーブル2と、載置部11に向けてセラミック成型体Sを順次供給する成型体供給部3とを備えている。これにより、検査対象となるセラミック成型体Sの供給及び移送を自動化できるので、より簡便にセラミック成型体Sの外観を検査できる。
【0036】
また、外観検査装置1では、載置部11に載置された状態で回転テーブル2上を移送されるセラミック成型体Sを撮像する撮像部4と、撮像部4によって撮像された画像に基づいてセラミック成型体Sの外観の良否を判断する判断部5とを更に備えている。これにより、検査液Vが付与されたセラミック成型体Sの外観の良否判断を自動化できるので、一層簡便にセラミック成型体Sの外観を検査できる。
【0037】
また、外観検査装置1では、成型体供給部3から供給されたセラミック成型体Sを受ける予備載置部12が載置部11の外周側に設けられており、供給当初に予備載置部12に載置されたセラミック成型体Sが寄せ部23によって載置部11に寄せられるようになっている。このような構成により、成型体供給部3からセラミック成型体Sが供給されるときの勢いでセラミック成型体Sの上面に検査液Vが付着してしまうことを防止できる。セラミック成型体Sの上面に検査液Vが付着すると、クラック部位Cの色相と他の部位の色相との間に差異が生じなくなり、外観の良否判断が困難となる。したがって、セラミック成型体Sの上面への検査液Vの付着を防止することで、外観検査の失敗を防止できる。
【0038】
本発明は、上記実施形態に限られるものではない。例えば上述した実施形態では、成型体供給部3によって自動的にセラミック成型体Sを供給しているが、成型体供給部3を設けずに手動でセラミック成型体Sを載置部11に載置してもよい。また、上述した実施形態では、撮像部4及び判断部5によって自動的にセラミック成型体Sの外観の良否を判断しているが、撮像部4及び判断部5を設けずに目視によってセラミック成型体Sの外観の良否を判断するようにしてもよい。
【0039】
さらに、上記実施形態では、セラミック成型体Sの外観に異常があると判断した場合に、エアの噴射によってセラミック成型体Sを不良品回収部7に押し出しているが、エアの噴射に代えて、ソレノイドアームによってセラミック成型体Sを不良品回収部7に押し出すようにしてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1…外観検査装置、2…回転テーブル、3…成型体供給部、4…撮像部、5…判断部、11…載置部、11a…載置面、11b…底面、12…予備載置部、13…検査液貯留部、14…検査液供給部、23…寄せ部、S…セラミック成型体、V…検査液。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査液をセラミック成型体の表面に付与することによって前記セラミック成型体の外観検査を行う外観検査装置であって、
前記セラミック成型体が載置される載置面、及び当該載置面の反対側に位置する底面を有する載置部と、
前記検査液が貯留される検査液貯留部に前記検査液を供給する検査液供給部と、を備え、
前記載置部は、前記載置面から前記底面にかけて貫通する複数の孔を有する多孔質体からなり、前記載置部の底面側は、前記検査液貯留部内に配置されていることを特徴とする外観検査装置。
【請求項2】
前記載置部及び前記検査液貯留部が周方向に沿って設置された回転テーブルと、
前記載置部に向けて前記セラミック成型体を順次供給する成型体供給部と、を更に備えたことを特徴とする請求項1記載の外観検査装置。
【請求項3】
前記載置部に載置された状態で前記回転テーブル上を移送される前記セラミック成型体を撮像する撮像部と、
前記撮像部によって撮像された画像に基づいて前記セラミック成型体の外観の良否を判断する判断部と、を更に備えたことを特徴とする請求項2記載の外観検査装置。
【請求項4】
前記回転テーブルは、前記成型体供給部から供給された前記セラミック成型体を受ける予備載置部を載置部よりも外周側に有し、
前記予備載置部に載置された前記セラミック成型体を前記載置部に寄せる寄せ部を更に備えたことを特徴とする請求項2又は3記載の外観検査装置。
【請求項5】
前記検査液は、表面張力が80mN/m以下の液体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の外観検査装置。
【請求項6】
前記載置部は、分子量が100万以上の超高分子ポリエチレンによって形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の外観検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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