説明

外部ビーム放射線治療とMRIとの統合システム

放射線治療システムは、放射線ビームを発生する放射線源と、磁気共鳴画像診断装置を有する。インターフェースが放射線源とMRI装置との間で動作し、照射が撮像と同時に行われることを可能にする。MRI装置と放射線源は、放射線源が、MRI画像の品質を低下させることなく、基本的にどのような角度からでも放射線を被術者に照射することができる回転モードでこのシステムを使用できるように、結合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、放射線治療に関し、特に、外部ビーム放射線治療と磁気共鳴影画像診断(MRI;magnetic resonance imaging)との統合システムに関する。
【背景技術】
【0002】
放射線治療法は、癌、動静脈奇形、皮膚病変などを含むがこれらに限定されない増殖性組織疾患を治療するために用いることができる。放射線治療の間、病患に罹っていることがわかっているまたはその疑いのある患者の組織が放射線に曝される。放射線治療の間、治療すべき組織を取り囲む目標体積(target volume)に放射線を照射するために、線型加速器が一般に用いられる。周知のように、線型加速器は、マイクロ波技術を用いて導波管内の電子を加速し、電子が重金属ターゲットと衝突できるようにする。衝突の結果、高エネルギーX線がターゲットから散乱する。散乱したX線の一部は、目標体積の形状に一致する放射線出力ビームが形成するために、ビームコリメータ装置によって収集、整形される。線型加速器はガントリーも含んでおり、このガントリーは患者の周りを回転して、放射線出力ビームが所望の目標体積に、ガントリーを回転させることによって任意の角度から送られることを可能にする。
【0003】
治療すべき組織の位置とその組織を放射線によって最良に治療する方法を正確に決定するために、通常、患者を放射線に曝す前に治療計画が作成される。例えば、コンピュータ断層撮影法(CT;computer tomography)、磁気共鳴画像診断法(MRI)、単一光子放出断層撮影法(SPECT;single photon emission tomography)とポジトロン放出断層撮影法(PET;positron emission tomography)を含む核シンチグラフィのような、多くのイメージング技術が治療計画において用いられてきた。組織の取得された画像は、放射線ビーム出力によって照射される実際の組織が目標体積にできるだけ多く一致するように、目標体積を定めるのに使用される。多くの場合、目標体積を定めるのに使用される組織の画像は、単一のシュミレーションで取得される。
【0004】
1回分を照射するために、IMRTによる腫瘍の不動化、画像誘導などの技術が一般に用いられてきた。画像ガイダンスの目的は、目標組織を、放射線治療の開始時に線型加速器の照射野中心(アイソセンター;isocenter)に確実に置くことである。組織の大量の動きが予期される組織部位では(例えば肺癌放射線療法)、照射時間が、組織が線型加速器の照射野中心に位置しているときに確実に限定されるように、画像誘導治療が放射線出力ビームの制御も行う。
【0005】
残念なことにこの方法は、目標体積を定めるのに使用された画像が単一のシュミレーションで得られる場合に、基本的な難しさを有している。その理由は、引き続く治療画分(treatment fraction)での目標位置の画像誘導による再生が、目標及び非目標の組織に正確に送られる計画された線量測定につながるかどうかが分からないからである。これは、単一のシュミレーション画像が引き続く放射線治療画分での患者の位置及び目標体積の形状を表しているかどうか、先験的には分からないからである。
【0006】
目標組織に関するより正確な位置情報を与え、放射線ビームが引き続く放射線治療画分において正しい方向に確実に向けられるようにするために、線型加速器を磁気共鳴画像診断装置と一体化することが考えられてきた。
【0007】
MRIは良く知られたイメージング技術である。MRIの間、目標(典型的には人間の患者)はMRI機械内に置かれ、MRI機械内に収容された分極した磁石によって生成された一様な磁場に曝される。MRI機械内に収容されたRFコイルによって特定の局所化方法にしたがって発生した無線周波数(RF)パルスが、患者の目標組織を走査するのに使用される。MRI信号が、目標組織内の励起された原子核によって、連続するRFパルスの間隔内に放射され、RFコイルによって感知される。局所化された領域において一様な磁場を変化させて目標組織の選択された薄片(スライス)から放射されたMRI信号を空間的に局所化するのを可能にするために、MRI信号を感知する間、勾配磁場が速やかに切り替えられる。感知されたMRI信号は次にデジタル化され、多くの公知の技術の1つを用いて目標組織の薄片の画像を再構築するように処理される。
【0008】
線型加速器をMRI装置と一体化することはいくつかの技術的問題を引き起こす。例えば、MRI装置によって発生した磁場は線型加速器の動作を妨げる。具体的には、MRI装置内に発生した磁場は、線型加速器内の電子ビームの軌道に対して磁力F=qvBによって干渉し、電子ビームを偏向させることがある。強い磁場の場合、この偏向は、加速された電子ビームを加速導波管内に押しやり、電子ビームが加速導波管の出口力にある重金属ターゲットに到達するのを妨げるのに十分なほどに大きいことがある。部分的に偏向させられた電子ビームの場合でも、重金属ターゲットへの変更された入射角は制動放射X線ビームに十分な動揺を引き起こし、その制動放射X線ビームが臨床的に受け入れられないものとすることがある。
【0009】
さらに線型加速器の存在は、MRI装置によって発生した磁場を乱す。最新の放射線治療では、放射線治療を目標体積の形状に適合させるために、放射線ビームを患者に対して動かすことが必要である。MRI磁石のフリンジ(fringe)磁場内におかれた大量の物体が磁力線の変化を引き起こし、この変化は磁石の一様領域にまで拡大することがある。補償することができるため、それ自体問題ではない。しかし、(例えば、この物体が線型加速器であるか、あるいはコバルト線源を囲む遮蔽体であるならば)この物体が動かされると、一様領域における磁場の動的変動は、受け入れられないほどの画像ゆがみを引き起こしかねない。この問題は、線型加速器ベースの放射線治療とコバルトベースの放射線治療の両方に対して存在する。
【0010】
さらに他の問題は、線型加速器によって発生したRF場がMRI装置の受信コイルと干渉することである。線型加速器は、伝送導波管を経て加速導波管に送られる適切なRFパワーを生成するマイクロ波発生器(クライストロンまたはマグネトロン)へのパルス状の高電圧電流を生成するマイクロ波周波数RFが生成されるパルスパワーモードで動作する。加速導波管は、電子をメガボルト(Megavolt)のエネルギーへと加速するのに適した電場を生成する周期的構造である。線型加速器によって発生したRF場は、感知できるほどパワーが漏れ出してMRI装置の動作を妨げないように、これらの共鳴、伝送及び加速構造内に封じ込められている。しかしながら、パルスパワー変調器は、通常4マイクロ秒の継続時間の高電圧(70から110アンペアの大電流において典型的には50から100kV)を発生する。立ち上がり及び立ち下がり時間は、通常、1マイクロ秒未満である。パルスの周波数スペクトルは、MRI装置のRF受信コイルに著しく障害を与える十分なパワーを持ったノイズ信号を生成する、MHz範囲の成分を含んでいる。変調器ノイズの正確な周波数及びパワーレベルは、変調器高電圧パルスの形状と、高電圧回路及び高電圧回路を収容する構造の機械的特性とに依存している。
【0011】
Greenに与えられた米国特許第6,366,798号明細書(特許文献1)は、磁気共鳴画像診断システムを含む放射線治療機械を開示している。この放射線治療機械は、被術者の部位を、その部位とその部位に接する体積とを磁気共鳴画像診断システムによって画像形成しながら治療する。ビームと画像診断システムの励振コイルアッセンブリとは、ビームがコイルアッセンブリに入射しないように配置されている。励振コイルアッセンブリは、主DC磁場を発生する、間隔をおいて位置する2つの巻線部分を含んでいる。この巻線部分は、被術者の部位の向き合う側に位置している。被術者用の治療寝椅子が、巻線部分の一列に並んだ中央の開口内に嵌っている。コイルアッセンブリは、ビームの回転中心の軸線と概ね同じ方向に延びる主磁場線を発生する。回転するビーム発生器を静止した磁気共鳴画像診断システム内に配置することから生ずる相互干渉の問題は、論じられていない。
【0012】
Lagendijkに与えられた英国特許第2 393 373号(特許文献2)は、MRI装置と一体化された線型加速器を開示している。他の問題点のうちで、MRI装置の磁場が線型加速器の動作を妨げるのを防ぐ部品とシステムが設けられている。
【0013】
Dempseyの米国特許公開第2005/0197564号(特許文献3)は、コバルト照射源とともにヘルムホルツ対コイルMRIシステムを使用することによって、放射線治療の間、MRイメージングを行う装置及び方法を開示している。コバルト線源に要求される強力な遮蔽は、回転中に、MR画像の質を悪くすることがある。
【特許文献1】米国特許第6,366,798号明細書
【特許文献2】英国特許第2 393 373号
【特許文献3】米国特許公開第2005/0197564号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
理解されるように、上述の欠点の少なくとも1つを取り除きまたは軽減する、線型加速器とMRI装置との改良された統合システムに対する必要性が存在する。したがって本発明の目的は、外部ビーム放射線治療と磁気共鳴画像診断(MRI)と新規の統合装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
したがって、一態様では、放射線治療システムであって、
放射線ビームを発生することができる放射線源と、
磁気共鳴画像診断(MRI)装置と、
照射がイメージングと同時に行われることを可能にする、放射線源とMRI装置との間のインターフェースと、
を有し、MRI装置と放射線源は、MRI画像品質を下げることなく放射線源が基本的にどのような角度からでも放射線を被術者に当てることができる回転モードでシステムを使用できるように、結合されている、放射線治療システムが提供される。
【0016】
放射線源は、リニアック(ライナック)、(光子、X線、コヒーレントな放射線のような)電磁放射線、電子、陽子、炭素イオン、他の重イオン、中性子、または、パイ中間子のようなサブ原子レベル粒子を発生する、レーザで誘起されたプラズマを用いるものを含む他の粒子加速器、放射性同位元素線源、電磁波、音響、熱、紫外線等を発生する放射発生装置、または、例えばシンクロトロンのようなコヒーレントな放射源であってもよい。
【0017】
一実施態様では、放射線源は、MRI装置の磁場の均一性に影響を及ぼすことなく、被術者の周りを回転可能である。あるいは、他の実施態様では、放射線源とMRI装置が不動に保たれ、回転照射が被術者の回転によって実現される。
【0018】
一実施態様では、放射線源のパルスが、MRI装置のRF信号読み取りと同時には起こらない。また、MRI装置のRF信号読み取りを妨げることがあるRFノイズが低減される。
【0019】
他の態様によれば、放射線源と磁気共鳴画像診断(MRI)との統合システムであって、
放射線源と、
MRI装置と、
放射線源とMRI装置とを結合する接続器と、
放射線源とMRI装置とが動作中に互いに干渉するのを防ぐ干渉低減構造と、
を有する、放射線源とMRIとの統合システムが提供される。
【0020】
一実施態様では、接続器は、放射線源が放射線源及び/またはMRI装置の運動中にMRI装置によって発生した磁場に影響を及ぼさないように、放射線源とMRI装置とを結合する。一実施態様では、これは、放射線源とMRI装置とを一致して(in unison)運動させることによって達成される。接続器は、放射線源のガントリーとMRI装置のガントリーとを結合してもよく、あるいは放射線源とMRI装置とを共通のガントリーに結合してもよい。
【0021】
干渉低減構造は、放射線源によって発生した電子ビームの位置を維持するビームステアリング(beem steering)装置を含んでもよい。この場合、ビームステアリング装置は、放射線源の加速導波管に沿って配置されている、ビーム位置センサとステアリングコイルとの複数の構成体を含む。
【0022】
他の実施態様では、このシステムは、二次元イメージング装置をさらに有する。このイメージング装置は、メガ電圧(megavoltage)の軸方向の算出されたトモグラフィ画像の1つを、治療計画の計算で使用されるビームの検証及び位置決めと減衰データの生成とのために、MR画像と同時に取得する。あるいは、または一緒に、イメージング装置は、改良された診断情報と治療計画のためにSPECT画像をMR画像と同時に取得する。
【0023】
さらに他の態様によれば、放射線源と磁気共鳴画像診断(MRI)との統合システムであって、
放射線源と、
MRI装置と、
放射線源とMRI装置を結合する接続器と
を有し、放射線源の動作とMRI装置の動作のタイミングが、放射線源とMRI装置とが動作中に互いに干渉するのを防ぐように調整されている、放射線源とMRIとの統合システムが提供される。
【0024】
一実施態様によれば、放射線源駆動パルスは、MRI装置のRF信号の読み取りの間、中断される。また、MRI装置のRF信号の読み取りを妨げることがある、放射線源によって発生したRFノイズが、放射線源駆動パルスを整形することによって低減される。
【0025】
放射線源とMRIとのこの統合システムは、放射線源とMRI装置が、動作中に放射線源とMRI装置とが互いに干渉することなく効率的に動作することを可能にする。これによって、被術者の画像を取得して使用し、放射線源によって発生した放射線ビームが放射線治療画分の間に目標組織に確実に正しく向けられるようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
次に、実施形態を添付の図面を参照してより詳しく説明する。
【0027】
さて図1から図3を参照すると、線型加速器とMRIとの統合システムが示されており、全体として参照番号10によって示されている。図から分かるように、線型加速器とMRIとの統合システム10は、線型加速器(「リニアック(LINAC)」)12とMRI装置14とを含んでいる。本出願の文脈では、リニアックは、例えばX線、ガンマ線、電子、陽子、ヘリウムイオン、炭素イオン、その他の重イオンまたは中性子を含む放射線ビームを発生することができる、例えば粒子加速器や放射線同位元素線源のような、ほとんどあらゆる放射線源を指している。
【0028】
この特定の例では、MRI装置14は0.2Tの磁場強度を有し、患者Pが横になって磁石/リニアック用の開口に入りまたこれから出ることができる台16を含む、開放開口タイプである。分極磁石の極18,20が、台16の上方と下方に配置されている。磁極18,20は、フレーム24によって支持されている回転ガントリー22の上に取り付けられている。
【0029】
リニアック12は、ガントリー22に取り付けられたアーム32に搭載された電子ビーム発生装置30を収容するヘッド28を含んでいる。このようにしてリニアック12はガントリー22と一致して回転し、したがって、磁極18,20に対するその位置を維持する。むろん望むならば、リニアック12はそれ自身のガントリーを有していてもよい。この場合、リニアック12のガントリーとガントリー22とは、リニアック12が磁極18,20と一致して回転するように、機械的に結合される。
【0030】
電子ビーム発生装置30は、電子銃33と、RF発生器34と、加速導波管36と、加速導波管36の一端にある重金属ターゲット38と、ビームコリメータ装置(不図示)とを含んでいる。図4に示すように、MRI装置14によって発生した磁場がリニアックの動作を妨げるのを防ぐビームステアリング装置50も設けられている。理解されるように、1〜2ガウス程度の低い磁場でも臨床用リニアック内の電子ビームの向きを変えることがあるので、5ガウスの磁場は潜在的にリニアックの動作を妨げるおそれがある。
【0031】
ビームステアリング装置50は、加速導波管36に沿って配置された、電子ビーム位置センサとステアリングとの複数の構成体52を含んでいる。位置センサとステアリングコイルとの構成体の各々は、加速導波管36の周りにリング状に配置された複数の誘導ピックアップコイル54を含んでおり、各誘導ピックアップコイルの相互の間には、容量センサ56が配置されている。ピックアップコイル54とセンサ56は、加速導波管36内の電子ビームが加速導波管36の中心軸からずれたときを検知し、ステアリングコイルを駆動して、それによって電子ビームを導波管36の中心軸に沿った元の位置に戻す。ピックアップコイル54とセンサ56は、通過する電子ビームに対して誘導的及び容量的に結合され、そして上述したように、加速導波管36の周りの周方向位置に配置されている。組み合わされた誘導性及び容量性の信号は、電子ビームの位置を十分な精度で検出することができる。電子ビームが中心軸からずれると、ピックアップコイル54とセンサ56のいくつかはより大きな信号を認識し、ピックアップコイル54とセンサ56の残りは小さな信号を認識する。この信号不均衡は、ステアリングコイルを駆動するフィードバック信号を生成するのに使用される。誘導性結合センサと容量性結合センサの両方が使用されているので、ビームステアリング装置50の周波数応答は、誘導性結合係数または容量性結合係数のいずれかを調整することによって修正することができる。このことは、ビームステアリング装置50が、雑音のない周波数範囲で動作することを可能にする。非常に良好な動的ステアリングを達成するために、ピックアップコイル54とセンサ56は加速導波管36に沿ったいくつかの位置に配置され、数組の直交ステアリングコイルが使用されている。
【0032】
リニアック12によって発生した電子ビームが磁場に曝されるのをできるだけ減らすために、ビームステアリング装置50に加えて、リニアック12は、(非常に高い透磁率を有する、市販の材料である)Mumetal(登録商標)(ミューメタル)バリアを電子銃33と加速導波管36の周りに配置することによって。磁気的に遮蔽されている。
【0033】
理解されるように、リニアック12内で発生した電子ビームに影響する、リニアック12に存在する磁場の変化は、ビームステアリング装置50を使用して動的に補償することができる。さらに、ビームステアリングは、Mumetal(登録商標)遮蔽の外側での磁場の変化を引き起こさず、これによってリニアック12がMRI装置の動作を妨げるのを阻止する。
【0034】
MRI装置14とリニアック12とが一致して回転するようにリニアック12とMRI装置14を同じガントリー22に固定することによって、MRI磁場のゆがみが避けられる。理解されるように、磁気的に遮蔽されたリニアックが(リニアックとMRI装置との間に磁気結合が存在するように)MRI装置の磁場に近接して位置し、かつこの磁気的に遮蔽されたリニアックがMRI装置とは独立して回転させられると、あるいはMRI装置がリニアックとは独立して回転させられると、この運動はMRI装置のイメージング領域の磁場の変化に影響を及ぼすだろう。この結果、MRI磁場における不均一さがもたらされ、これによって、受け入れられない画像ゆがみを生じるだろう。MRI装置14の磁極18,20を、リニアック12に機械的に結合されているガントリー22に取り付けることによって、MRI装置とリニアックは被術者の周りを一緒に動き、統合されたMRI磁場も一緒に動く。このように、MRI磁場はガントリー角度の関数として一定であることが保証され、画像ゆがみは除去される。ソフトウェアによって画像を反対方向に回転させることによって、回転させられなかった画像がMRI装置のスクリーン上に表示させることが可能になる。リニアック12における磁場を遮蔽し、MRI磁石のシム調整を行うプロセスは、リニアック12が遮蔽され、磁石がその照射野中心で均一の磁場を有するような設定が見出されるまで、繰り返し実行されなければならない。しかしながら、この初期設定がいったんなされると、ガントリーの回転による動的な補償を行う必要性がなくなる。
【0035】
リニアック12とMRI装置14の磁極18,20が一致して回転することを確実にすることによって、MRI磁場の非常に複雑な動的補償の必要性が不要になる。そのような補償は、MRI装置の精巧なモデル化と、適切に設計されたフィードバックシステムによって動的に駆動されなければならないであろう多くの補償コイルとを必要とする。
【0036】
知られているように、かつ上述したように、MRI装置14は、イメージングされつつある被術体の内部から発生したRF信号を読むことによって、画像を生成する。送信RFパルスは、イメージングされる組織内のプロトンの磁気モーメントを傾ける。プロトンの歳差運動の周波数は、勾配磁場コイルによって設定される磁場強度に依存している。位相情報が第2のパルスを印加することによって設定され、それから歳差運動をするプロトンからのRF信号を読み、既知の勾配磁場に基づいて画像を再構築することによって、イメージングが行われる。このイメージングシーケンスはパルス動作で行われ、イメージングシーケンスの相互間には、ある繰り返し時間が存在する。
【0037】
リニアック12も、パルスパワー動作モードで機能する。パルスは、通常、約4μsから10μsの範囲の継続時間を有し、5msのパルス繰り返し周期に対して200Hzの典型的な繰り返し周波数を有している。リニアック12の線量率は、時間平均の線量率によって決まる。リニアックからのRFパルスは、インダクタによって結合されたコンデンサ・バンク(パルス形成ネットワーク(pulse forming network)、すなわちPFNとも呼ぶ)上の高電圧が高電圧スイッチを介して放電されたときに形成される。パルスの形状はPFNのキャパシタンスとインダクタンスに依存し、矩形波関数のように振舞うようにするために、通常、急峻な立ち上がり及び立ち下がり時間と、その間の定電圧とを有するように作られる。これらの素早い電圧上昇及び電圧降下は、リニアック12の外側を伝播するRFノイズの高周波数成分の原因である。
【0038】
患者の中に送信されたRFパルスのパワーは、リニアック12によって発生したRFノイズよりもかなり大きく、したがってリニアックのパルス動作は送信RFパルスに影響を及ぼさない。FDAによって設定されたSAR限界は0.4W/kgである。リニアックのパルス発生から生じたパワーはmWの範囲にある。しかしながら、被術者内のプロトンを歳差運動をさせることによって発生したRF信号は非常に小さく、したがってリニアック12によって発生したどのようなノイズもRF信号の読み取りプロセスを著しく妨げ、MRI装置14の全イメージング能力を奪うおそれがある。
【0039】
この問題に対処するために、MRI装置14が患者から戻ってきたRF信号を読み取っているときに、リニアック12がパルス発生していないことを確実にするタイミングシーケンスが用いられる。図5はタイミングシーケンスを例示している。2つのやり方が考えられる。1つのやり方では、MRI装置14が患者からのRF信号を読み取ろうとしたときを示す低電圧信号をMRI装置14が発生するように、MRI装置14が改造される。この信号はリニアック12内に入力され、変調器パルスと電子銃パルスを引き起こすトリガ信号に打ち勝つ。したがって、これによって、MRI装置14がRF信号を読み取ることができる休眠RF期間が生成される。
【0040】
あるいは、第2のやり方では、(数秒程度の)期間の全体をMRIのイメージングまたはリニアックのパルス発生のいずれかに取っておくことができる。このやり方は、MRI装置がRFを送信しているときにリニアックがMRI装置を妨害するシステムにおいて、あるいは第1のやり方が実行できないほどにパルスの後のRFの減衰時間が長い場合に、用いることができる。この場合、リニアック12の線量率とMRI装置のイメージング時間が小さくなり、したがって線量率と画像の解像度との間の妥協が必要となる。
【0041】
理解されるように、リニアックのノイズがMRI装置のRF信号読み出し能力を妨害することを防ぐことによって、リニアックによってイメージングシーケンスが妨げられることなく、イメージングと放射線治療の実施を同時に行うことができる。
【0042】
リニアック12によって発生したRFノイズの高周波数成分の低減はまた、リニアックとMRI装置14の間の干渉を減らすために行われる。リニアック内のRF発生器に印加される高電圧は、複数の高周波数成分が組み合わされた矩形波である。これら高周波数成分は、高電圧駆動パルスを適切に整形することによって除去することができる。高電圧パルスの立ち上がり及び立ち下り時間は、PFN上の適切なキャパシタンスとインダクタンスを選択することによって変更することができる。これは図6に示されている。駆動パルスの特定の形状が図示されているが、当業者は、種々のパルス形状を構成できることがわかるであろう。パルス形状に対する唯一の制限は、電子とRFとが加速導波管36に同時に入るようにRF発生器と電子銃パルスが同期させられる期間の間、定電圧の領域が必要なことである。この変形例は、多くのシステムが、高電圧発生器の公称電圧を二倍にするためにパルス状高電圧の矩形波特徴を用いるように設計されているので、高電圧パルスの大きさの問題を生じることがある。その結果、より大きな高電圧発生器が必要となることがある。
【0043】
望むならば、RFノイズをさらに低減するために、ファラデー箱(Faraday cage)をリニアック構造の全体の周りに配置して、リニアック12によって発生したノイズを閉じ込めることができる。ファラデー箱は、パルスパワー変調器、伝送及び加速導波管、制動放射重金属ターゲットを中に含める。銅シールドを重金属ターゲットに組み込むこともでき、これはX線スペクトルのフィルタリングに関し、ターゲットの設計において用いられることがある。
【0044】
上述の例では、MRI装置14とリニアック12は、磁極とリニアックとが一致して回転するように、機械的に結合されている。当業者は、磁気干渉が発生しないようにMRI装置の磁場とリニアックを同期させる他の接続装置を用いてもよいことがわかるだろう。
【0045】
さらに上述の実施形態では、リニアック12に存在する、MRI装置14の磁石からの残留磁場の補償は、ビーム位置決めコイルからのフィードバックに基づいて動的ビームステアリング技術を用いて行うことができる。しかしながら当業者は、リニアック内の電子ビームを正しく位置決めするために、フィードバックを用いるいかなるステアリング方法も用いることができることがわかるであろう。
【0046】
さらに上述の実施形態では、画像形成のプロセス中にリニアック12からのRF干渉を除去することは、リニアックのパルス発生シーケンスとMRI装置の画像形成パルスシーケンスにあるタイミング制限を課すことによって、リニアックの高電圧パルスを変更することによって、また、RF遮蔽によって、行うことができる。当業者は、RF干渉を低減するために他のタイミングシーケンスを用いてもよいことがわかるであろう。
【0047】
ここで図7を参照すると、リニアックとMRIとの統合システムの他の実施形態が示されている。この実施形態では、患者が座った姿勢でその患者を治療することができる。リニアック112とMRI装置114は、電子ビームが水平方向を向くように機械的に結合され、磁極118,120は、磁場が水平であるが電子ビームに対しては直交するように、垂直に取り付けられている。これら2つの構成要素は固定されており、可動ではない。様々な角度の電子ビームの放出が、座った姿勢の被術者を回転させることによって実現される。
【0048】
この実施形態の利点は、放射線治療を可能にするのに十分な長い時間の間、仰向けの姿勢またはうつ伏せの姿勢で楽に横たわることができない被術者を画像によるガイダンス下でシュミレートし、治療することができることである。これは、ある肺癌患者にとっては特に有用であるが、他の被術者にとっても有用であろう。
【0049】
MRI装置14を0.2Tの磁場強度を有するものとして説明したが、当業者は、ヘルムホルツ対形態または開いた「c」磁石形状のような他の磁石構造タイプだけでなく、他の磁場強度も可能であることがわかるであろう。これらの場合、例えば平坦なパネルまたは他の検出器アレイのような二次元(2D)撮像装置が、メガ電圧(megavoltage)またはコアビームのCT画像、2D投影ビーム検証、または2Dから3Dへの位置決めを与えるために、被術者の反対側において、放射線源と一直線をなして配置される。この構成は、放射線治療のシュミレーションの特定の用途を有し、治療計画の算出にとって重要なメガ電圧の減衰データをもたらす。さらに、関連するMRIは、目標を定める、優れた軟部組織コントラストを有する複数の画像を同時に出力する。放射線源が診断用X線管であるならば、CT画像及びMR画像を同時に生成することができ、診断医学における本装置の用途が広くなる。
【0050】
他の実施形態において、診断用核医学イメージングに適した2D撮像装置が、MRIと同時にSPECTイメージングを行うために、磁石の2つの極の間の開口に置かれる。この構成は、上述した外部放射線源よりはむしろ、被術者の内部にある放射線源を利用している。理解されるようにこの構成は、診断医学及び治療計画に有用な追加のイメージング情報をもたらす。
【0051】
いくつかの検出器システムをSPECTのみならず診断CT用に用いることができるので、当業者は、上述したMRI−CTシステムとMRI−SPECTシステムを組み合わせてMRI−CT−SPECTシステムを得ることができることがわかるであろう。
【0052】
上述の例はリニアックを使用することを述べているが、当業者は、ほとんどどのような放射線源を用いてもよいことがわかるであろう。例えば、放射線源は、(光子、X線、コヒーレントな放射線のような)電磁放射線、電子、陽子、炭素イオン、他の重イオン、中性子、または、パイ中間子のようなサブ原子レベル粒子を発生する、レーザで誘起されたプラズマを用いるものを含む他の粒子加速器であってもよい。あるいは放射線源は、放射性同位元素線源、電磁波、音響、熱、紫外線等を発生する放射発生装置、または、例えばシンクロトロンのようなコヒーレントな放射源であってもよい。
【0053】
実施形態をここに添付図面を参照して説明したが、開示はこれら明確な実施形態に限定されるものではなく、種々の他の変更及び修正が、開示の範囲及び要旨から逸脱することなく当業者によってここで行なわれてもよいことが理解されるべきである。そのような変更及び修正は全て添付の特許請求の範囲によって定められる開示の範囲に含められることを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】図1は、線型加速器とMRIとの統合システムの、1つの向きにおける部分的な概略斜視図である。
【図2】図2は、図1の線型加速器とMRIとの統合システムの、他の向きにおける横断平面内の図である。
【図3】図3は、図1の線型加速器とMRIとの統合システムの矢状面内の図である。
【図4】図4は、線型加速器の一部を構成する、加速導波管とビームステアリング装置の端面図である。
【図5】図5は、図1〜3の線型加速器とMRIとの統合システムの動作を示すパルスシーケンス図である。
【図6】図6は、線型加速器に加えられる高電圧パルスの形状を示す図である。
【図7】図7は、線型加速器とMRIとの統合システムの他の実施形態の端面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線治療システムであって、
放射線ビームを発生することができる放射線源と、
磁気共鳴画像診断(MRI)装置と、
照射がイメージングと同時に行われることを可能にする、前記放射線源と前記MRI装置との間のインターフェースと、
を有し、前記MRI装置と前記放射線源は、MRI画像品質を下げることなく前記放射線源が基本的にどのような角度からでも放射線を被術者に当てることができる回転モードで前記システムを使用できるように、結合されている、放射線治療システム。
【請求項2】
前記放射線源は、前記MRI装置の磁場の均一性に影響を及ぼすことなく、被術者の周りを回転可能である、請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項3】
前記放射線源と前記MRI装置が不動に保たれ、回転治療が前記被術者の回転によって実現される、請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項4】
前記放射線源と前記MRI装置は一致して回転可能である、請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項5】
前記放射線源のパルスが、前記MRI装置のRF信号読み取りと同時には起こらない、請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項6】
前記MRI装置のRF信号読み取りを妨げることがあるRFノイズを低減する手段をさらに有する、請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項7】
放射線源と磁気共鳴画像診断(MRI)との統合システムであって、
放射線源と、
MRI装置と、
前記放射線源と前記MRI装置とを結合する接続器と、
前記放射線源と前記MRI装置とが動作中に互いに干渉するのを防ぐ干渉低減構造と、
を有する、放射線源とMRIとの統合システム。
【請求項8】
前記接続器は、前記放射線源が前記放射線源及び/または前記MRI装置の運動中に前記MRI装置によって発生した磁場に影響を及ぼさないように、前記放射線源と前記MRI装置とを結合する、請求項7に記載の放射線源とMRIとの統合システム。
【請求項9】
前記放射線源と前記MRI装置とは、それらが一致して同時に運動するように結合されている、請求項8に記載の放射線源とMRIとの統合システム。
【請求項10】
前記接続器は前記放射線源のガントリーと前記MRI装置のガントリーとを機械的に結合する、請求項9に記載の放射線源とMRIとの統合システム。
【請求項11】
前記接続器は、前記放射線源と前記MRI装置を共通のガントリーに結合する、請求項9に記載の放射線源とMRIとの統合システム。
【請求項12】
前記干渉低減構造は、前記放射線源によって発生した電子ビームの位置を維持するビームステアリング装置を含む、請求項7に記載の放射線源とMRIとの統合システム。
【請求項13】
前記ビームステアリング装置は、前記放射線源の加速導波管に沿って配置されている、ビーム位置センサとステアリングコイルとの複数の構成体を含む、請求項12に記載の放射線源とMRIとの統合システム。
【請求項14】
前記干渉低減構造は、前記放射線源を取り囲むRFシールドである、請求項7に記載の放射線源とMRIとの統合システム。
【請求項15】
放射線源と磁気共鳴画像診断(MRI)との統合システムであって、
放射線源と、
MRI装置と、
前記放射線源と前記MRI装置を結合する接続器と、
を有し、前記放射線源の動作と前記MRI装置の動作のタイミングが、前記放射線源と前記MRI装置とが動作中に互いに干渉するのを防ぐように調整されている、放射線源とMRIとの統合システム。
【請求項16】
放射線源駆動パルスが、MRI装置のRF信号の読み取りの間、中断される、請求項15に記載の放射線源とMRIとの統合システム。
【請求項17】
MRI装置のRF信号の読み取りを妨げることがある、前記放射線源によって発生したRFノイズが低減させられる、請求項16に記載の放射線源とMRIとの統合システム。
【請求項18】
前記RFノイズの低減が、前記放射線源駆動パルスを整形することによって達成される、請求項17に記載の放射線源とMRIとの統合システム。
【請求項19】
前記接続器は、前記放射線源及び/または前記MRI装置の運動中に前記MRI装置によって発生した磁場に前記放射線源が影響を及ぼさないように、前記放射線源と前記MRI装置を結合する、請求項15に記載の放射線源とMRIとの統合システム。
【請求項20】
前記放射線源と前記MRI装置は、それらが一致して運動するように結合されている、請求項19に記載の放射線源とMRIとの統合システム。
【請求項21】
前記接続器は前記放射線源のガントリーと前記MRI装置のガントリーを機械的に結合する、請求項20に記載の放射線源とMRIとの統合システム。
【請求項22】
前記接続器は、前記放射線源と前記MRI装置を共通のガントリーに結合する、請求項21に記載の放射線源とMRIとの統合システム。
【請求項23】
前記放射線源によって発生した電子ビームの位置を維持するビームステアリング装置をさらに有する、請求項15に記載の放射線源とMRIとの統合システム。
【請求項24】
前記ビームステアリング装置は、前記放射線源の加速導波管に沿って配置されている、ビーム位置センサとステアリングコイルとの複数の構成体を含む、請求項23に記載の放射線源とMRIとの統合システム。
【請求項25】
前記放射線源を取り囲むRFシールドをさらに有する、請求項23に記載の放射線源とMRIとの統合システム。
【請求項26】
二次元イメージング装置をさらに有する、請求項7から14のいずれか1項に記載の放射線源とMRIとの統合システム。
【請求項27】
前記イメージング装置は、メガ電圧の軸方向の算出されたトモグラフィ画像の1つを取得する、請求項26に記載の放射線源とMRIとの統合システム。
【請求項28】
メガ電圧の軸方向の、または算出されたトモグラフィ画像は、治療計画の計算で使用される、ビームの検証及び位置決めと減衰データの生成とのために、MR画像と同時に取得される、請求項27に記載の放射線源とMRIとの統合システム。
【請求項29】
CT画像とMR画像とが同時に取得される、請求項27に記載の放射線源とMRIとの統合システム。
【請求項30】
前記イメージング装置はSPECT画像を取得する、請求項26に記載の放射線源とMRIとの統合システム。
【請求項31】
前記SPECT画像が、改善された診断情報及び治療計画のためにMR画像と同時に取得される、請求項30に記載の放射線源とMRIとの統合システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−511222(P2009−511222A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−535859(P2008−535859)
【出願日】平成18年10月10日(2006.10.10)
【国際出願番号】PCT/CA2006/001656
【国際公開番号】WO2007/045076
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(508117547)アルバータ キャンサー ボード (3)
【氏名又は名称原語表記】ALBERTA CANCER BOARD
【Fターム(参考)】