説明

外部寄生虫の制御のためのゲル組成物

メタフルミゾン、ゲル化因子および非水性溶媒を含む半固体組成物が提供される。本発明の半固体組成物は、動物へ局所投与され得、かつ、延長された期間中、温血動物において外部寄生虫の外寄生を予防または処置するために、有用である。本発明は、重量対重量ベースで、約5%から約30%のメタフルミゾン、約1%から約15%のゲル化因子、約0%から約8%の界面活性剤、および約45%から約80%の非水性溶媒系を含む局所投与のための半固体組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
温血動物に一般に感染している節足動物の外部寄生虫としては、マダニ、ダニ、シラミ、ノミ、クロバエ、ヒツジの外部寄生虫キンバエ種、咬む昆虫(ケッド(Ked)(Melophagus ovinus)が挙げられる)、ならびにウシにおけるウシバエ種およびヒフバエ種、ウマにおけるウマバエ、およびげっ歯目におけるウサギヒフバエ種のような体内移行する双翅目幼虫が挙げられる。
【0002】
メタフルミゾンは、温血動物において、外部寄生虫による外寄生の予防および制御のために有用である。この活性因子の局所投与は、この化合物を投与するために好ましい方法である。
【0003】
温血動物における、外部寄生虫の感染または外寄生に対する適切な保護を提供するために、比較的高い充填量のメタフルミゾンを有している、半固体局所処方物を使用することが望ましい。そのような処方物は、塗布が簡単で、皮膚上に良く延び、かつ流出を避ける処方物を提供する効果を有している。しかしながら、半固体組成物の望ましい特性を維持しながら、上記活性因子の安定性を有するそのような組成物を処方することは、しばしば困難である。メタフルミゾンは、動物(特に、イヌ、ネコ、およびウマのようなコンパニオンアニマル)でのノミおよびダニの制御のために具体的な用途を見出しているいくつかの有用な殺虫薬の一つである。メタフルミゾンは、コンパニオンアニマルにおいてノミおよびダニからの4〜6週間の保護を提供し得るということは、特に有利であるが、この被験体動物による摂取の可能性ならびに/または活性因子の流出および浪費の可能性を避けながら、被験体動物の保護のため、半固体の外用薬を塗布し得るようにメタフルミゾンを処方することがさらに望ましい。それでもなお、多くの溶媒におけるメタフルミゾンの不溶性および第一級アルコール存在下でのメタフルミゾンの不安定性に起因して、処方は困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
比較的高い充填量のメタフルミゾンを包み、かつ適切な期間中、外部寄生虫の外寄生からの保護を提供する局所投与のための半固体組成物を提供することが、本発明の1つの目的である。
【0005】
延長された期間中、温血動物における外部寄生虫の外寄生を予防または処置するための方法を提供することもまた、本発明の目的である。
【0006】
局所的に塗布された活性因子(その処方物は、投与による有害な皮膚反応を回避するのに十分に、穏やかでかつ強くなく、さらに、保護のための必要な時間中、動物の皮膚および/または被毛内に保持される能力を有している)により、延長された期間中、温血動物におけるそのような虫の増殖を減少させるかまたは制御することが、本発明の別の目的である。
【0007】
本発明のこれらおよび他の目的が、以下に述べる記載および添付の特許請求の範囲から、より明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、重量対重量ベースで:
約5%から約30%のメタフルミゾン;
約1%から約15%のゲル化因子;
約0%から約8%の界面活性剤;および
約45%から約80%の非水性溶媒系
を含む局所投与のための半固体組成物を提供する。
【0009】
本発明は、温血動物における外部寄生虫の感染または外寄生を予防または処置する方法をさらに提供する。この方法は、本発明の組成物の有効量を、この動物へ局所投与する工程を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(発明の詳細な説明)
本発明に一致して、上記半固体組成物は、メタフルミゾン、ゲル化因子、および非水性溶媒系を含む。本発明はまた、前記処方物の局所塗布によって、温血動物におけるコナダニ科または節足動物の外部寄生虫の感染または外寄生を、予防または処置する方法を提供する。
【0011】
本発明の好ましい半固体組成物は、重量対重量ベースで:
約5%から約30%のメタフルミゾン;
約1%から約15%のゲル化因子;
約0%から約8%の界面活性剤;
約45%から約80%の非水性溶媒系
を含む。
【0012】
好ましい非水性溶媒系は、その溶媒系が、少なくともひとつの、そして好ましくは1つより多い非水性溶媒を包む系である。非常に好ましい溶媒は、N,Nジメチル−m−トルアミド(DEET)、γ−ヘキサラクトン(gamma−hexalactone)、プロピレングリコールジカプリレート/ジカプレート(Miglyol 840として市販されている)、カプリル酸/カプリン酸/コハク酸トリグリセリド(Miglyol 829として市販されている)、およびカプリル酸/カプリン酸トリグリセリド(Miglyol 812として市販されている)のような溶媒である。特に好ましい溶媒の組み合わせは、γ−ヘキサラクトン:N,Nジメチル−m−トルアミド:Miglyol 840の、重量比で約7:1:2の混合物を含む。
【0013】
任意の特定の理論に拘束されることを望むわけではないが、その特定の溶媒系は、適切なゲル化因子を使用して簡単かつ効率的にゲル化され得、かつ活性メタフルミゾンに安定した環境を提供すると同時にメタフルミゾンが、動物の皮膚、毛において保持され、そして期間中放出される溶液を、提供すると考えられている。
【0014】
独特なことに、この溶媒系を使用する半固体組成物はまた、比較的高い充填量のメタフルミゾンを保持し得、その結果、ラブ−オン(rub−on)、スポット−オン(spot−on)、スクイーズ−オン(squeeze−on)またはプアー−オン(pour−on)として使用する比較的少容量の処方物を提供し得るということが発見されている。有利なことに、局所ゲルからのメタフルミゾン吸収率は、メタフルミゾンの自然による消失への抵抗と同様に、長く持続する治療効果の両方を達成するために、制御される。動物は適切な期間保護されるので、得られる有効期間は有利である。ほとんどの動物は、処置の過程中、雨、水浴び、日光などの一般的な自然にさらされているので、自然による消失に対する抵抗は欠くことのできないものであり、かつメタフルミゾン消失は、処方物の非有効性に帰着する。
【0015】
メタフルミゾンは、米国特許第5,543,573号、および米国特許出願公開2004−0122075A1中に記載されており、双方とも本明細書中で参考として援用される。化学的に、それは、(EZ)−2−[2−(4−シアノフェニル)−1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]エチリジン]−N−[4−(トリフルオロメトキシ)フェニル]ヒドラジンカルボキサミドとして公知である。
【0016】
【化1】

本発明の組成物に用いられる適切なゲル化因子としては、コロイド状二酸化ケイ素、エチルセルロース、メチルセルロース、メタクリル酸エステル共重合体、カルボキシル化された酢酸ビニル三量体、ポリビニルプロピレン(PVP)/酢酸ビニル共重合体などが挙げられる(しかし、これらには制限されない)。
【0017】
一般的に、上記ゲル化因子は、約1重量/重量%から約15重量/重量%の量(好ましい量は、約2%から約8%までの範囲中である)で、最終処方物において利用される。
【0018】
適切な界面活性剤は、非水性溶媒(特に、非イオン性界面活性剤)と混合しても化学反応を起こさない界面活性剤であり、ポリソルベート80(ポリオキシエチレン20ソルビタンモノオレエート)が、特に好ましい界面活性剤である。他の有用な界面活性剤としては、ポリエチレングリコール660ヒドロキシステアレート、ポリオキシ35ヒマシ油などのような非イオン性界面活性剤、エステル(好ましくは脂肪エステル)、ならびにアルコキシル化アルコールおよびエステルが挙げられる。これらの界面活性剤の中で、好ましいのは、1分子当たり、平均して20未満(より好ましくは、15未満)の酸化エチレン単位を含む、アルコキシル化された脂肪アルコールおよびアルコキシル化されたノニルフェノール(エトキシル化された脂肪アルコール)のような界面活性剤である。好ましくは、上記非イオン性界面活性剤は低吸湿性であって、75%相対湿度空気において21℃で、平衡状態において、上記界面活性剤は、乾燥材料100gにつき、25g未満(より好ましくは、20g未満)の水分を吸収し、そして、32%相対湿度空気において21℃で、平衡状態において、上記イオン性界面活性剤は、好ましくは、乾燥材料100gにつき、10g未満(より好ましくは、5g未満)の水分を吸収する。
【0019】
上記界面活性剤の好ましい量は、約0%から約8%の範囲内である(約3%から約5%の範囲の量が特に好ましい)。
【0020】
本発明の組成物を製造するために、上記メタフルミゾンが、上記界面活性剤および溶媒系中に溶解され、次いで、上記ゲル化因子が撹拌しながら添加される。真空系の使用が好ましい。なぜなら、それがトラップされた空気がないゲルを提供するからである。
【0021】
温血動物への局所投与のための特に好ましい半固体組成物は、重量対重量ベースで、非水性溶媒系(ここでその溶媒系は、γ−ヘキサラクトン:N,N−ジエチル−m−トルアミド:Miglyol 840を約7:1:2の比で包含する)の約50%から約80%を包含する。
【0022】
本発明の組成物はさらに、当該分野において公知である、抗シネレシス因子、防腐剤、着色剤、抗酸化剤などのような他の因子を包含し得る。一般に、これらの因子は、重量対重量ベースで約10%までの量で上記組成物中に存在する。代表的な抗シネレシス因子としては、コロイド状二酸化ケイ素およびエチルセルロースのような抗シネレシス因子が挙げられる。代表的は防腐剤としては、メチルパラベン、プロピルパラベン、塩化ベンザルコニウムおよびチメロサール、もしくはそれらの混合物のような防腐剤であり、これらは慣習的な量で使用され得る。他の任意の成分もまた、当業者に周知なレベルで組み入れられ得る。
【0023】
好ましくは、本発明の組成物は、体重1kg当たり5〜10mgの範囲の用量をもたらすように、塗布される。
【0024】
局所投与された場合、本発明の組成物は、ウシ、ヒツジ、ウマ、ラクダ、シカ、ブタ、ヤギ、イヌ、ネコ、トリなどのような温血動物において、延長された期間中、外部寄生虫の感染および外寄生を予防または処置するために、非常に有効である。
【0025】
本発明のさらなる理解を容易にするために、以下の実施例は、主にその特定の実施形態を例示する目的で示される。特許請求の範囲において定められる場合を除き、本発明は、実施例によって制限されるとみなされるべきではない。
【実施例】
【0026】
(実施例1:メタフルミゾン半固体組成物Aの調製法)
【0027】
【表1】

上記エチルセルロースを、混合しながら、ゆっくりその粉末を分散させることによって、上記γ−ヘキサラクトン中に溶解する。これに対し、上記DEETを添加し、次いで、上記メタフルミゾンを、撹拌しながらゆっくりと添加する。上記BHTおよびポリソルベート 80を、上記溶液に添加し、かつ混合していずれの固形物も溶解する。次に、上記Miglyol 840を撹拌しながら添加し、続いて上記コロイド状二酸化ケイ素を添加する。真空下でのさらなる混合の結果により、トラップされた空気がない、透明で、黄色いゲルが形成する。
【0028】
(実施例2:メタフルミゾン半固体組成物Bの調製法)
【0029】
【表2】

実施例1の手順に一致した、上記成分の使用により、トラップされた空気がない、透明で、黄色いゲルが形成する。
【0030】
(実施例3:メタフルミゾン半固体組成物Cの調製法)
【0031】
【表3】

実施例1の手順に一致した、上記成分の使用により、トラップされた空気がない、透明で、黄色いゲルが形成する。
【0032】
(実施例4:ウマでの研究)
本発明の組成物の有効性持続期間を比較するため、研究をウマにおいて実施する。ウマにハエを感染させ、次いで、ウマの頭部、背部、脚部にそれをすり込むことによって、上記処方物で処置する。
【0033】
具体的には、実施例1のように調製した25% W/Vのメタフルミゾンゲルを含む処方物を、5mg/kg(処方物としては0.2mL/10kg)の用量で塗布し、そして市販のハエよけスプレー(上記動物を保護するため塗布した(約300mL))と比較した。24頭のウマを、3群に無作為に割り当てた(無処置の対照―群A、市販のハエスプレー−群B、メタフルミゾンゲル−群C)。結果は、市販のハエスプレーに対し、上記メタフルミゾンゲルを使用することで、より長期の活性持続期間を生じたことを示した。
【0034】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
局所投与のための組成物であって、重量対重量ベースで
約5%から約30%のメタフルミゾン;
約1%から約15%のゲル化因子;
約0%から約8%の界面活性剤;および
約45%から約80%の非水性溶媒系
を包含する、組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物であって、約5%から約20%の前記メタフルミゾン化合物を包含する、組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の組成物であって、約2%から約15%の前記ゲル化因子を包含する、組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物であって、前記ゲル化因子が、コロイド状二酸化ケイ素、エチルセルロース、メチルセルロース、メタクリル酸エステル共重合体、カルボキシル化された酢酸ビニル三量体、ポリビニルプロピレン(PVP)/酢酸ビニル共重合体または等価の非水性溶媒可溶性ポリマーからなる群より選択される、組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物であって、前記界面活性剤が、非イオン性界面活性剤である、組成物。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物であって、前記界面活性剤が、ポリオキシエチレン20ソルビタンモノオレエートである、組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物であって、前記界面活性剤の量が、約3%から約5%である、組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物であって、前記溶媒系が、γ−ヘキサラクトン:N,N−ジエチル−m−トルアミド:Miglyol 840の重量比で約7:1:2の混合物を含む、組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物であって、重量で最高約8%の、1種または1種より多い防腐剤、着色剤、抗酸化剤、または安定化剤をさらに含む、組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物であって、さらに、抗シネレシス因子を含む、組成物。
【請求項11】
温血動物における外部寄生虫の感染または外寄生を予防または処置する方法であって、該方法が、該動物へ、外部寄生虫の駆虫薬としては有効な量の、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物を局所投与する工程を包含する、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、前記動物が、ウシ、ヒツジ、ウマ、ラクダ、シカ、ブタ、ヤギ、イヌ、ネコおよびトリからなる群から選択される、方法。

【公表番号】特表2008−542272(P2008−542272A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−513554(P2008−513554)
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【国際出願番号】PCT/US2006/019301
【国際公開番号】WO2006/127406
【国際公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】