説明

外部寄生虫を防除するための方法および組成物

【課題】担体と活性剤の混合物を乳化剤と共に含む外部寄生虫駆除剤組成物を提供する。
【解決手段】前記担体は、非揮発性の低粘度シロキサンを含み、前記活性剤は、非揮発性の高粘度シロキサンを含む。前記低粘度シロキサンおよび前記高粘度シロキサンの両方は、少なくとも100℃の密閉式引火点を有する。好ましくは、前記低粘度シロキサンおよび前記高粘度シロキサンの両方は、ジメチコンもしくはジメチコノールまたはそれらの混合物を含み、前記低粘度シロキサンは包括的に5〜1000センチストークスの範囲の粘度を有し、前記高粘度シロキサンは、少なくとも1000センチストークスの粘度を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部寄生虫駆除剤組成物および外部寄生虫、特にアタマジラミとその卵を防除する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
外部寄生虫、特にアタマジラミの防除のための組成物は、伝統的に従来の殺虫剤から構成されている。しかし、これらの物質の多くは、不快な匂いを有しており、そして、アレルギー反応を引き起こす場合がある。さらに最近では、非毒性の製品が、臨床的に有効であることが発見されている。特に、シャンプーやヘアコンディショナーなどのパーソナルケア製品で広く使用される一部のシリコンポリマーは、特定の製剤で使用する場合、アタマジラミやその卵の両方を根絶するのに非常に有効であることが知られている。
【0003】
米国特許第4,146,619号は、シラミ駆除剤および/または殺卵剤として使用するために、約20,000センチストークス未満の粘度を有する直鎖状アルキルまたはアリールシロキサンポリマーの使用を記述している。このようなポリマーは、使用しても安全である。しかし、その後、20,000センチストークスを超える粘度を有するシロキサンポリマーを含む組成物が、臨床的にもっと有効であることが見出された。
【0004】
米国特許第6,683,065号は、ポリジメチルシロキサンの少なくとも約40%から成るシラミ駆除剤として使用するための組成物を記載しており、そこでは、組成物の表面張力が20℃で約25ダイン/センチメートルより下であり、そして、その組成物の粘度が20℃で約200センチストークスより上である。この組成物は、ジメチコンの有効性を利用するが、特定の高粘度のため、髪の表面を通り中にまで組成物が浸透することができない。さらに、このような高粘度のシロキサンは、使用後に十分に髪を洗うのが困難であることが発見された。このことは、それらを使用することを難しくし、そして不快にしている。
【0005】
対照的に、ヨーロッパ特許第1,215,965号は、外部寄生虫、特にシラミ寄生の防除のために、有効成分として、20,000センチストークス未満の粘度を有する直鎖状アルキルまたはアリールシロキサン単独以外の少なくとも1種のシロキサン誘導体を含む組成物の使用について記述している。特に、この特許は、アタマジラミの防除のための、シクロメチコンなどの揮発性シロキサンとジメチコンなどの非揮発性シロキサンとの混合物を含む組成物の使用について記述している。使用時に組成物が髪に適用されると、揮発性シロキサンは、頭皮と髪の上に非揮発性シロキサンを広げるように作用し、それから蒸発して、髪および存在するどんなシラミと卵をもコーティングする活性沈積物として非揮発性シロキサンを後に残す。この製品の欠点の1つは、アタマジラミの卵に対して限られた効果を有するということである。しかしながら、この組成物およびシクロメチコンなどの揮発性シロキサンを含む他の外部寄生虫駆除剤組成物の主要な欠点は、それらが引火性あるいは可燃性であり、そのため火災の危険性があることである。
【0006】
「揮発性」という用語には、絶対的な定義はないが、科学的な文脈では、物質が蒸発する傾向の尺度として使用されることが理解されるであろう。ほとんどの場合、この用語は、液体が蒸発する傾向を記述するために使用される。これを定量する一つの方法は、液体の気化熱を測定することであり、それは、特定の温度での液体の所定質量を蒸発させるのに必要なエネルギーである。25℃における水の気化熱は、2257kJ/kgであり、一方、エタノールのそれは840kJ/kgである。対照的に、シクロメチコン類の気化熱は、157kJ/kgの範囲であり、それは、皮膚に冷却効果を示さない程度にそれらを非常に揮発性とする。一般的に言って、気化熱がより低いほど、引火点がより低くなることが理解されるであろう。
【0007】
粘度は、ポアズまたはセンチポアズで測定される絶対粘度、または動粘度として表記できることが理解されるであろう。動粘度は、密度に対する絶対粘度の比であり、ストークスまたはセンチストークスで測定される。本明細書では便宜上、粘度は、特に断りのない限り、センチストークスで表記される。物質の密度が1に近いときは、典型的には0.96と0.98の間の比重を有するジメチコン類の場合には、絶対粘度と動粘度は、ほぼ同じ数値を有する。
【0008】
WO2007/104345は、また、外部寄生虫、特にアタマジラミおよびそれらの卵と闘うための組成物を記述しており、その目的は、潜在的に有害とみなされる環状シロキサン類の使用を回避することである。記載された組成物は、10センチストークス未満の粘度を有する低粘度の直鎖状ポリシロキサン、90センチストークスを超える粘度を有する高粘度の直鎖状ポリシロキサン、および少なくとも1種の展着剤の混合物を含む。特に、低粘度ポリシロキサンは、好ましくは1センチストークスの粘度を有するジメチコンであり、そして、より高粘度のポリシロキサンは、好ましくは、100センチストークスの粘度を有するジメチコンである。約1センチストークスの粘度を有するジメチコン類は、約57℃の引火点を有し、揮発性であり、したがって可燃性である。したがって、その好ましい実施形態では、この組成物は、また、引火性または可燃性であることが理解されるであろう。
【0009】
前記に鑑みて、引火性または可燃性の製品を使用するとき、治療されるレシピエントを裸火、火のついたタバコなどから遠ざけておくことは最も重要であることが理解されるであろう。したがって、顧客は、子供たちがそのような製品を使用することを危惧するかもしれない。
【0010】
他の市販のシラミ駆除の製品も、上記のような同じ欠点に悩まされる。いくつかは、アルコール類とシロキサン類のブレンドを含み、引火性あるいは可燃性であるのに対し、他方では、あまり展着しないジメチコン類を使用して、使用後に洗浄するのが困難である。組成物が非揮発性シロキサン類を含み、リンスするのが困難であるか、あるいは組成物が揮発性シロキサン類を高い割合で含み、全体の組成物を引火性あるいは可燃性とし、それにより、危険にするかのいずれかの妥協に一般的に達しなければならないことが理解されるであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第4,146,619号
【特許文献2】米国特許第6,683,065号
【特許文献3】欧州特許第1,215,965号
【特許文献4】国際公開番号2007/104345号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、引火性を伴う問題を克服または実質的に軽減する外部寄生虫駆除剤組成物を提供し、それと同時に、一方では、使用後の毛髪や皮膚を従来のシャンプーやコンディショナーで洗い流すことができる外部寄生虫駆除剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
用語「引火性液体」と「可燃性液体」は、容易に発火する液体を意味するとして大まかに使用されることが多い。しかし、本明細書では「引火性」と「可燃性」の用語は、火災安全に関わる国際的に認められた米国の団体である米国防火協会(NFPA)によりそれらに適用される厳密な定義を用いて理解されるべきである。これらの定義は、米国政府機関、特に米国運輸省、米国環境保護庁、米国労働安全衛生局等によっても使用されている。これらの団体は、華氏100度(37.8℃)より下の引火点を有する液体に「引火性」の用語を適用し、そして、華氏100度(37.8℃)と華氏200度(93.3℃)の間の引火点を有する、あまり引火性でない液体に「可燃性」の用語を適用する。液体の引火点は、それが空気中で可燃性混合物を形成することができる最低温度である。この温度では、引火源が除去されると、蒸気は燃えるのを止める可能性がある。わずかに高い温度、燃焼点は、蒸気が引火した後に燃え続ける温度として定義される。これらのパラメータのどちらも、引火源または燃焼液体の温度に関係がなく、それらはずっと高い。
【0014】
2つの基本的なタイプの引火点測定法がある:開放式法と密閉式法。密閉式試験は、引火点に対して開放式試験よりも低い値を通常与え、蒸気圧がより低い引火性限界に達する温度により良く近似する。したがって、本明細書および添付の請求項では、用語「引火点」は、多数の国際的な基準があるPensky−Martens密閉式法を用いて得られるものとして理解されなければならない。
【0015】
驚くべきことに、出願人は、非揮発性の低粘度シロキサンの使用は、非揮発性の高粘度シロキサンを展着させる作用があり、そして、低粘度シロキサンの蒸発は、製品の有効性に必要とされないことを発見した。
【発明を実施するための形態】
【0016】
したがって、本発明の第1態様によれば、担体と活性剤の混合物を乳化剤と共に含む外部寄生虫駆除剤組成物が提供され、前記担体は、非揮発性の低粘度シロキサンを含み、そして、前記活性剤は、非揮発性の高粘度シロキサンを含み、前記低粘度シロキサンおよび前記高粘度シロキサンの両方は、少なくとも100℃の密閉式引火点を有する。
【0017】
少なくとも100℃の引火点は、問題のシロキサンが、組成物の通常の使用において空気中で可燃性混合物を形成しないことを意味する。
【0018】
シロキサン類は、直鎖状または環状シロキサン類のいずれかであってよい。非揮発性シロキサン類は、通常は直鎖状である。好ましくは、低粘度シロキサンおよび高粘度シロキサンは、ジメチコンもしくはジメチコノールまたはこれらの混合物を含む。
【0019】
ジメチコン類は、一般式(C2H6OSi)nの直鎖状シロキサン類である。ジメチコン類は、さもなければポリジメチルシロキサン(PDMS)として知られており、以前には「ジメチコン」と呼ばれていた。ジメチコン類は粘弾性であり、その粘度は分子量に関連している。
【0020】
好ましくは、また、低粘度シロキサンは、包括的に10〜1000センチストークスの範囲の粘度を有し、そして、高粘度シロキサンは、少なくとも1000センチストークスの粘度を有する。有利には、低粘度シロキサンは、包括的に10〜100センチストークスの範囲の粘度を有し、そして、高粘度シロキサンは、包括的に50,000〜200,000センチストークスの範囲の粘度を有する。
【0021】
10センチストークスの粘度を有し、約211℃の密閉式引火点を有するジメチコン類が、利用可能である。10センチストークス未満の粘度と200℃より高い密閉式引火点を有するジメチコン類は、現在、市場では入手できない。50,000センチストークスを超える粘度を有するジメチコン類は、300℃を超える密閉式引火点を有する可能性がある。本発明に係る組成物におけるこれらのジメチコン類の使用は、組成物が引火性または可燃性液体を含まず、したがって、ユーザーに火災の危険をもたらさないことを意味する。特に、この組成物が、裸火に近づけられて使用中の毛髪や体に自燃を起こす可能性は非常に低い。このことは、先行技術の多くよりも、本発明の組成物の使用をかなり安全なものとし、子供や幼児での使用に対して特に安全である。
【0022】
組成物は、好ましくは少なくとも0.1%の非揮発性の高粘度シロキサンを含み、そして、最大50%までを含んでもよいが、実際に使用される割合は、その粘度に依存する。好ましくは、組成物自体は、30センチストークスを超える粘度を有しており、そのために、それは外部寄生虫やその卵に付着する。一般的に言えば、使用される高粘度シロキサンの粘度が高くなればなるほど、組成物に必要とされる容積比でのその割合は低くなり、そうでない場合は、組成物は、あまりにも粘度が高くて満足に使用できない。包括的に50,000〜200,000センチストークスの範囲の粘度を有する高粘度シロキサンを含む組成物では、組成物のわずか約4容量%が、高粘度シロキサンである必要がある。
【0023】
本発明のいくつかの製剤では、粘度調整剤は、外部寄生虫およびそれらの卵への接着を助けるために、基本的な組成物に添加することができる。このような粘度調整剤は、好ましくは、使用時の組成物の粘度を高めるための揺変性添加剤を含む。任意の物理的に互換性のない材料、例えば、疎水性シリコン誘導体が添加された場合、それはまた、組成物を安定化させる場合がある。適切な粘度調整剤は、当業者に知られている。そのような一つは、サイズが7nmと40nmの間の二酸化ケイ素ナノサイズ粒子の形態での添加剤である。好ましくは、組成物は、少なくとも0.1容量%および最大0.5容量%の添加剤を含む。
【0024】
いくつかの先行技術の組成物において、展着剤は、皮膚や毛髪上に組成物の延展性を補助するために使用される。これら展着剤は、組成物の表面張力を減少させる。しかし、本発明では、展着剤の使用を不必要にする表面張力を有するシロキサン類を使用することができるので、展着剤は必要ではない。したがって、有利には、組成物のシロキサン類は、約20mN/mより大きい表面張力を有する。
【0025】
好ましくは、また、乳化剤はシリコン共重合体を含む。有利には、組成物は、ジメチコン共重合体、例えば、シクロペンタシロキサン中に分散されたジメチコン共重合体の40%溶液を含む乳化剤を少なくとも1容量%、そして、好ましくは、1容量%〜10容量%含む。このような薬剤は、容易に市場で入手可能であり、そして、それらは制汗剤、化粧品、シャンプー、およびヘアコンディショナーなどのパーソナルケア製品で広く使用されているので、当業者に公知である。それらは、安定な油中水型の乳化剤として機能し、本発明の組成物を簡単に肌と髪から洗い流し、したがって、使用することをより快適にするのに必要な洗い流せる品質を提供している。乳化剤自体は、200℃未満の引火点を有する場合があるが、組成物に必要な少量の乳化剤は、その全体的な引火性を損なうものではない。
【0026】
シロキサン類の混合物は、シラミおよびノミを殺すことに極めて有効であるが、それらの卵を殺すことは一層困難であり、生き残って、治療後の再感染を引き起こす可能性がある。したがって、好ましくは、組成物は、卵に関してその有効性を向上させるために改変される。このような組成物は、シラミのまん延の撲滅のために必要な治療の数が大幅に、特に最も効果的な組成物では単一の治療に低減できるという考慮すべき利点を有することになるであろう。
【0027】
出願人は、シロキサン組成物にテルペンまたはフェニルプロパノイド誘導体を加えることによって、固有の殺虫特性を有していないけれども、その組成物の界面活性剤の物理化学的性質が改善され、そして、親水性度が全体的な組成物に付加されることを発見した。これは、組成物の浸透性を改善し、高粘度シロキサンが、昆虫の気門に加えて卵の気孔に侵入することを可能とし、それにより全体として組成物の全体的有効性を改善する。
【0028】
したがって、好ましくは、組成物は、1種の揮発性油または複数の揮発性油を含む。また、好ましくは、組成物は、少なくとも0.1容量%の揮発性油を含み、そして、最大2容量%の揮発性油を含んでもよい。有利には、1種の揮発性油または複数の揮発性油は、1種または複数のテルペン類を含み、特に揮発性油は、ネロリドールを含む。
【0029】
第2の態様では、本発明は、ヒトまたは動物の治療または予防の方法における組成物の使用を提供し、そこでは、前記組成物は、乳化剤と共に担体と活性剤の混合物であり、前記担体は、非揮発性の低粘度シロキサンを含み、そして、前記活性剤は、非揮発性の高粘度シロキサンを含み、前記低粘度シロキサンおよび前記高粘度シロキサンの両方は、少なくとも100℃の密閉式引火点を有する。
【0030】
第3の態様では、本発明は、外部寄生虫感染を防除する方法を提供し、前記方法は、乳化剤と共に担体と活性剤の混合物を前記外部寄生虫またはその卵に適用することを含み、前記担体は、非揮発性の低粘度シロキサンを含み、そして、前記活性剤は、非揮発性の高粘度シロキサンを含み、前記低粘度シロキサンおよび前記高粘度シロキサンの両方は、少なくとも100℃の密閉式引火点を有する。
【0031】
本発明に係る外部寄生虫駆除剤組成物の製剤の2つの実施例は、以下のとおりである。
【実施例】
【0032】
実施例1
1. 4容量%の50,000センチストークスの粘度を有するジメチコン;
2. 1〜4容量%のジメチコン共重合体を含む乳化剤;
3. 最大2容量%のネロリドール;
4. 残余分の10〜100センチストークスの粘度を有するジメチコン。
【0033】
実施例2
1. 4容量%の100,000センチストークスの粘度を有するジメチコン;
2. 1〜4容量%のジメチコン共重合体を含む乳化剤;
3. 最大2容量%のネロリドール;
4. 最大0.5容量%の二酸化ケイ素ナノサイズ粒子;および
5. 残余分の10〜100センチストークスの粘度を有するジメチコン。
特に、本発明による外部寄生虫駆除剤組成物は、髪に注いで適用するための液体ゲル製剤としておよびポンプ作用のスプレーガンによる髪への噴霧のための噴霧ゲル製剤として、特定のユーザーの便宜のために開発されている。
これらの製剤の具体例は、以下のとおりである。
【0034】
液体ゲル製剤
1. 4容量%の100,000センチストークスの粘度を有するジメチコン;
2. 2容量%のジメチコン共重合体;
3. 2容量%のネロリドール;
4. 0.5容量%の二酸化ケイ素ナノサイズ粒子;および
5. 91.5%残余分の50センチストークスの粘度を有するジメチコン。
【0035】
噴霧ゲル製剤
1. 4容量%の100,000センチストークスの粘度を有するジメチコン;
2. 2容量%のジメチコン共重合体;
3. 2容量%のネロリドール;
4. 0.5容量%の二酸化ケイ素ナノサイズ粒子;および
5. 91.5%残余分の10センチストークスの粘度を有するジメチコン。
【0036】
これらの製剤の唯一の違いは、ジメチコン担体の粘度であることが理解されるであろうが、それは噴霧ゲル製剤でポンプ作用のスプレーガンによる適用を容易にするために低粘度を有する。
【0037】
アタマジラミの治療に使用する際には、組成物は、乾燥した毛髪に適用する必要があり、髪は根元から先端にかけて完全にカバーされるべきである。それから、組成物は、少なくとも1時間、所定の場所にそのままにして置く必要がある。
【0038】
両方の実施例は、アタマジラミの非常に効果的な治療であり、そして典型的には接触後の数秒以内に100%のシラミを殺し、1時間後には100%の卵を殺すことが分かった。1時間後に組成物はシャンプーで容易に洗い流すことができる。死んだシラミは同時に洗い流され、また容易に櫛ですき取ることができる。死んだシラミの卵や幼虫はいずれも、それは空の卵嚢であるが、指でまたは細かい歯のある櫛で除去することもできる。動物でのノミなどの他の外部寄生虫の処置は、同じ方法で行うことができる。
【0039】
以下の試験は、本発明を説明する。
【0040】
試験1
この試験は、ヨーロッパ特許第1,215,965号に記載され、96.7重量%のシクロペンタシロキサンおよび20,000センチストークス未満の粘度を有する3.3重量%のジメチコノールの混合物を含む従来のシロキサン系の製品(製剤A)と、上に詳述した噴霧ゲル製剤(製剤B)のアタマジラミに対する効果を比較した。
【0041】
材料と方法
試験で使用される昆虫
アタマジラミ(Pediculus capitis)は、地域社会のボランティアから得られた。その結果、試験で使用されるシラミは、種々の出所源から入手した。すべてのサンプルは、試験日ごとに1回評価された。同じ日に実施された試験のそれぞれについて、試験反復のバッチ内の内部一貫性があるように、シラミのすべては同じ個々の患者から得た。各製剤の唯一の反復試験がいずれかの1日に実行されたので、異なる日に実施された試験の間にはいくらかの変動があったであろう。しかし、これは地域社会で遭遇する可能性のあるアタマジラミの正常な変動を表したであろうし、そして、応答のどんな変動も消費者の使用中に遭遇すると思われる応答の範囲を代表するものであろう。
【0042】
シラミは、プラスチック製のシラミ検出櫛を使って収集され、2時間以内に検査室に運ばれる。シラミは、シラミがいる基材としてナイロンガーゼの正方形片で提供される各バッチにカウントされ、各バッチは、目盛の付いた55ミリメートルのプラスチック製ペトリ皿に割り当てられる。
【0043】
試験手順については、適切な製剤の約5〜10ミリリットルの一定分量をきれいな55ミリメートルのプラスチック製ペトリ皿の底面に注ぐ。シラミが付いたガーゼは、その液体中に10秒間浸漬され、その間、ガーゼは、気泡の除去を確実にするために少なくとも2回ひっくり返される。液体から除去後、ガーゼと昆虫は、余分な液体を除去するために軽く拭き取られ、目盛の付いたペトリ皿中の5.5mm濾紙に戻される。同じ手順は、そのバッチ内の他の反復ガーゼの正方形片について繰り返される。
【0044】
シラミが付いたガーゼの正方形片は、それから、通常のメンテナンスの条件下(30℃±2℃および50%±15%相対湿度)で、試験期間の残りをインキュベーションされる。曝露期間の終わりには、昆虫とガーゼは、14部の水で1部のシャンプーを希釈(FWS1:15)した穏やかな化粧品シャンプーを使用して洗浄し、その後、ガーゼの正方形片を通りその上に注がれる暖かい500ミリリットル(35℃)の水道水を使用して、昆虫とガーゼを濯ぐ。次に、これらは、医療用拭き取りティッシュを使って拭き取って乾かされ、結果が記録されるまで適切な大きさのきれいなプラスチック製ペトリ皿で通常のメンテナンス条件下でインキュベーションされる。
【0045】
結果
成虫シラミに対する活性
【0046】
「運動不能の」シラミは、運動の徴候を示さない。
【0047】
「瀕死の」は、結果が記録される時点での幾らかの運動を維持するシラミを言う。そのような運動は、完全な身体的運動不能から、観察し得る腸のほんの少しの動き、手足、触覚または他の付属器官の小さい痙攣を経て、這うことはほとんどできるが、彼らが継続的な生存が可能であると見做すことができない程、共調運動が十分に欠けている昆虫にまで及ぶことができる。このカテゴリーのシラミは、もはや事実上生存していないとして、全体の死亡率に分類される。
【0048】
「生存している」は、正常に歩いているように見え、食べる機会を与えられれば、通常の方法で生命を存続させることができるシラミを言う。
【0049】
試験は、試験製剤に対して1回の反復シラミと、対照用に1回の反復シラミを用いて実施された。試験は、製剤および対照のすべてについて、1時間の適用時間を用いてex vivoで実施された。これらの試験の目的は、フィールドからのシラミに対して試験された3つの製品の有効性を実証することであった。
【0050】
試験の結果は、以下の表1に示される。製剤の有効性は、10秒間の浸漬と即時の洗浄後に示され、さらなるセットの試験が、10分間の適用と、その後の洗浄により示される。これらの試験は、製剤のいずれかが、シラミに即時的効果を有するかどうか、および10分間の適用が、シラミを運動不能にするのに成功したかどうかを示す。
【0051】
【表1】

【0052】
これらの試験結果は、本発明による組成物が、両方の曝露時間後に即座にシラミを運動不能にすることに成功していることを示している。
【0053】
試験2
この試験は、上で詳述した2つの液体ゲル製剤および噴霧ゲル製剤のアタマジラミの卵に対する有効性を2つの異なる曝露時間で比較した。2つの製剤は、15分間と30分間の曝露時間で試験された。
【0054】
材料と方法
試験で使用される昆虫
シラミの卵は、48時間にわたって、目の詰まったメッシュ状ナイロンガーゼを産卵用生地として、活発に産卵する成虫を提供することにより得られた。シラミを除去した後、それぞれの大きなガーゼ片を適切な大きさの一連の小片に切断し、それには適切な数の卵を含んでいた。これらの正方形片は、目盛の付いた90ミリメートルのプラスチック製ペトリ皿にランダムに割り当てられた。
【0055】
試験のために、適切な液体の約5ミリリットルの一定分量は、きれいな30ミリメートルのプラスチック製ペトリ皿の底面に注がれた。卵を含むガーゼは、その液体中に10秒間浸漬され、その間に、ガーゼは気泡の除去を確実にするために少なくとも2回ひっくり返された。液体から除去後、ガーゼと卵は、どんな余剰物も除去するために軽く拭き取られ、目盛の付いたペトリ皿中に戻された。同じ手順が、他の試験製品と水管理に対して繰り返された。
【0056】
シラミ卵を含むガーゼの正方形片は、通常のメンテナンスの条件下(30℃±2℃および50%±15%相対湿度)で、試験期間の残りをインキュベーションされ、その終わりには、ガーゼは、ガーゼの正方形片の全体上に注がれる暖かい(34℃)250ミリリットルの水道水を使用して3回濯いだ。次に、これらは、医療用拭き取りティッシュを使って拭き取って乾かされ、結果が記録されるまで適切な大きさのきれいなプラスチック製ペトリ皿中で通常のメンテナンス条件下でインキュベーションされた。すべての対照のバッチが約12日後に孵化を完了した後に、卵に対する試験結果は記録された。
【0057】
結果
卵に対する活性
シラミの卵に対する治療活性は、殺虫剤の浸透度に応じた効果の分類を必要とする。
【0058】
「孵化」は、その中で、胚の内部が正常に発達し、そして、正常に孵化するシラミの卵を言う。
【0059】
「半孵化」は、その中で、シラミが羽化の過程で死亡し、そのために卵殻を何とか持ち上げるだけであるか、そうでなければ殻から部分的に羽化して死亡するそうした卵を言う。
【0060】
「死亡」は、その中で、胚が明らかにその発育を完了しているが、卵殻から羽化していないそうした卵を言う。若いシラミは、羽化プロセス前または羽化プロセス過程で死亡または殺されたりするが、羽化プロセス前には卵殻から蓋を持ち上げることができる。
【0061】
「発育不全」は、正しくまたは全く発育することができなかったすべてのそうした卵に当てはまる記述である。これは、幼胚の試験の時には、透明な卵殻の内側に不定形に見えるので確認することができる。発育中の胚が約48時間齢の場合には、殻のキャップの端に小さな色素性スポットの発育が開始される。このスポットは、発育してシラミの眼になり、そして「眼点」と称される。いくつかのケースでは、胚は眼点を示す時点までのみ発育する場合があるが、こうしたケースでは、眼点は奇形であるか、あるいは卵殻の間違った端にさえ存在し得る。すべてのそのようなケースは「発育不全」に分類される。
【0062】
試験結果を表2に示す。
【0063】
【表2】

【0064】
これらの結果は、異なる曝露時間におけるシラミの卵に対する両方の製剤の有効性を明らかに実証する。どちらも、15分間と30分間の曝露時間で100%の死亡率をもたらした。
【0065】
上記の試験データから、前記の液体ゲル製剤と噴霧ゲル製剤は、典型的には10〜15秒以内に、接触してシラミを100%殺すことを示し、そして、わずか15分後にはシラミの卵を100%殺すことを示すことが発見されたことが分かる。これは、シロキサン類を使用した既知製剤に対する劇的な改善である。WO2007/104345は、10センチストークス未満の粘度を有する揮発性ジメチコンと90センチストークスより大きい粘度を有するジメチコンとの混合物を含む組成物を開示している。しかし、表2中に上記したものと同じ処方を用いて、この組成物は、1時間の接触時間で82%の卵を殺す。WO2010/018360では、ネロリドールを含むシロキサン製剤は、卵を殺すための一晩という最も有効な曝露時間を有することが開示されたが、一晩の曝露時間の94.97%の死亡率と比較して、4時間の曝露期間は、92.85%の高レベルの死亡率をもたらした。したがって、一般に、そのような製剤のユーザーに与えられるアドバイスは、7日間開けて、2回の1時間処置を実施することである。しかしながら、本発明の優れた性質は、治療が1回の1時間処置後に達成されることができることである。確かに、試験データは、必要とされるわずか約15分の有効な処置時間を示している。
【0066】
ヒトのアタマジラミは、水管理のユニークな方策を有している。彼らは、尿を生成しないが、気管と気門を介する呼吸蒸散によって余分な水分を排除している。気門の閉塞は、水の排泄を妨ぎまたは低減して、しばしば腸の破裂による死をもたらす。
【0067】
上に詳述した液体ゲル製剤で処置されたシラミは、X線分光法による走査型電子顕微鏡でスキャンされ、そして、シラミの気門やその周りで見られる化学元素は、焦束イオンビームとX線微量分析を使って、周囲組織を切り離すことによって測定された。結果は、添付の図面に示される。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】上で詳述した液体ゲル製剤による治療後のヒトのアタマジラミの気門の走査型電子顕微鏡によって生成される画像の写真である。
【図2】図1の印をした領域のX線分光写真である。
【図3】上で詳述した液体ゲル製剤による治療後のヒトのアタマジラミの気門を通る断面の走査型電子顕微鏡によって生成される画像の写真である。
【図4】図3の印をした領域のX線分光写真である。
【0069】
X線分析は、処置されたシラミの表面全体にわたって存在するシリコンを示す;シリコンは、ジメチコン中に存在し、そしてシラミ中には存在しない。図1に示すように、シリコンは、処置されたシラミの気門の内側にプラグまたは薄いコーティングを形成していた。走査型電子顕微鏡でのイオンビーム切断は、図3に示すように、腹部の気門の断面図を作成した。図1および3で印をつけた領域の図2および4で示されるX線分光分析は、それぞれジメチコンからのシリコンの分布をハイライトしている。
【0070】
シロキサン類を含む外部寄生虫駆除剤製剤は、シラミの気門をブロックすることによって作用し、それによって水分喪失を防止することが知られている。本発明による組成物は、同じメカニズムによって作用する。しかし、本明細書に添付された画像と分光写真は、従来の組成物と比較して、はるかに多くのシリコンが、気門およびシラミの表面(洗浄後)に沈積し、残存することを示している。図1では、シラミの表面の厚いコーティングを、気門をブロックする物理的なプラグと共に見ることができる。図2は、プラグが主にシリコンであることを明らかにしている。気門をカバーするそのようなプラグは、非揮発性シロキサン類がシラミの表皮に十分に接着性であるため、本製剤で使用される非揮発性シロキサン類によってのみ達成することができる。同様に、気門を通る断面を示す図3は、気管よりずっと下にある気門に、組成物が浸透することを明らかにしている。図4は、気門内に存在するシリコンのかなりの量を明らかにする。これらの画像と分光写真は、本発明の組成物の優れた性能を説明する。対照的に、従来のシロキサン組成物は、シラミの表皮上に薄く広がる非常に低粘度で非常に低い表面張力のシロキサン製剤に依存している。
【0071】
WO2010/018360に開示されているようにアタマジラミの卵を殺すことに関して、テルペノイド類およびフェニルプロパノイド誘導体、特にネロリドールなどの直鎖状テルペノイド類は、シラミの卵の気孔へのシロキサン類の浸透特性を改善すると考えられている。シラミの卵は、発育するために、それらの気孔開口部を通る酸素/二酸化炭素のガス交換が必要である。この構造をブロックすると、卵が発育するのが妨げられる。両方がネロリドールを含む液体ゲル製剤と噴霧製剤は、シラミの卵を殺すのに非常に有効であることを上に詳述した試験結果は示している。ネロリドールは、本発明による組成物のシロキサン類の卵の気孔への浸透を改善することが期待されるが、一方、これらの組成物において使用される非揮発性シロキサン類は、また、気門上と同じように気孔上にプラグを形成すると考えられており、必ずしも気孔に深く浸透することなく効果的に気孔をブロックする。これは、卵が非常に迅速に殺される理由を説明する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体と活性剤の混合物を乳化剤と共に含む外部寄生虫駆除剤組成物であって、前記担体は、非揮発性の低粘度シロキサンを含み、そして、前記活性剤は、非揮発性の高粘度シロキサンを含み、前記低粘度シロキサンおよび前記高粘度シロキサンの両方は、少なくとも100℃の密閉式引火点を有する組成物。
【請求項2】
前記低粘度シロキサンおよび前記高粘度シロキサンの両方が、ジメチコンもしくはジメチコノールまたはそれらの混合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記混合物が、30センチストークスを超える粘度を有する、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記低粘度シロキサンおよび前記高粘度シロキサンの両方が、約20mN/mの表面張力を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記乳化剤が、シリコン共重合体を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも1容量%の前記シリコン共重合体を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
1容量%〜10容量%の前記シリコン共重合体を含む、請求項5または請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
乳化剤がシクロペンタシロキサンに分散されたジメチコン共重合体の40%溶液を含む、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
前記低粘度シロキサンが、包括的に10〜1000センチストークスの範囲の粘度を有し、そして、前記高粘度シロキサンが少なくとも1000センチストークスの粘度を有する、請求項1〜8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
前記低粘度シロキサンが、包括的に10〜100センチストークスの範囲の粘度を有する、請求項1〜9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
前記高粘度シロキサンが、包括的に50,000から200,000センチストークスの範囲の粘度を有する、請求項1〜10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
前記高粘度シロキサンが、組成物に少なくとも0.1容量%含まれる、請求項1〜11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
1種の揮発性油または複数の揮発性油を含む、請求項1〜12のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
前記の1種の揮発性油または複数の揮発性油が、1種または複数のテルペン類を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記揮発性油が、ネロリドールを含む、請求項13または請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記の1種の揮発性油または複数の揮発性油が、組成物に少なくとも0.1容量%含まれる、請求項13〜15のいずれかに記載の組成物。
【請求項17】
前記の1種の揮発性油または複数の揮発性油が、組成物に最大2容量%含まれる、請求項13〜16のいずれかに記載の組成物。
【請求項18】
4容量%の100,000センチストークスの粘度を有するジメチコン;
1容量%〜4容量%のジメチコン共重合体を含む乳化剤;
最大2容量%のネロリドール;および
残余分の10〜100センチストークスの粘度を有するジメチコン;
を含む、請求項1〜17のいずれかに記載の組成物。
【請求項19】
残余分の50センチストークスの粘度を有するジメチコンを含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
残余分の10センチストークスの粘度を有するジメチコンを含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
使用時の組成物の粘度を高める揺変性添加剤を含む、請求項1〜20のいずれかに記載の組成物。
【請求項22】
前記揺変性添加剤が、二酸化ケイ素のナノサイズ粒子を含み、そして、組成物の少なくとも0.1容量%である、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
外部寄生虫による寄生のヒトまたは動物の治療または予防における使用のための組成物であって、前記組成物は、担体と活性剤の混合物を乳化剤と共に含み、前記担体は、非揮発性の低粘度シロキサンを含み、そして、前記活性剤は、非揮発性の高粘度シロキサンを含み、前記低粘度シロキサンおよび前記高粘度シロキサンの両方は、少なくとも100℃の密閉式引火点を有する組成物。
【請求項24】
アタマジラミの寄生の治療または予防に使用するための、請求項23に記載の組成。
【請求項25】
請求項1〜24のいずれかに記載の組成物を前記外部寄生虫またはその卵に適用することを含む、外部寄生虫の寄生を防除する方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−526788(P2012−526788A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510358(P2012−510358)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【国際出願番号】PCT/GB2010/000933
【国際公開番号】WO2010/130983
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(503412012)ソーントン・アンド・ロス・リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】Thornton & Ross Limited
【住所又は居所原語表記】Linthwaite, Huddersfield, United Kingdom
【Fターム(参考)】