説明

多タンパク質適用のための新規発現ツール

本発明は、新規な機能的配置を含む複数遺伝子適用のためのポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、並びに前記ポリヌクレオチドを含む組み換え動物に関する。加えて、本発明は、複数遺伝子発現カセットを作製するための方法、in vitro及びin vivoにおける多タンパク質複合体の製造方法、並びにワクチンを製造するための方法を対象とする。さらに、本発明は、タンパク質複合体相互作用又はタンパク質の修飾をスクリーニングする方法、及びタンパク質複合体と相互作用できるか、若しくはタンパク質を修飾できるか、又はタンパク質複合体相互作用を阻害できるか、若しくはタンパク質の修飾を阻害できる候補となる化合物のin vitro又はin vivoにおけるスクリーニング方法を包含する。また、本発明は、(i)遺伝子治療用の薬剤を製造するため、(ii)多タンパク質複合体の組み換え体を製造するため、(iii)ワクチンを製造するため、又は(iv)関心のある化合物をスクリーニングするための、本発明のポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、又は組み換え動物の使用に関する。最後に、これは大切なことだが、本発明は、少なくとも本発明のポリヌクレオチド、ベクター、及び/又は宿主細胞を含む部品からなるキットを対象とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な機能的配置を含む複数遺伝子適用のためのポリヌクレオチド、並びにベクター、宿主細胞、及び前記ポリヌクレオチドを含む組み換え動物に関する。
【0002】
加えて、本発明は、複数遺伝子発現カセットの作製方法、in vitro及びin vivoでの多タンパク質複合体の製造方法、並びにワクチンの製造方法を対象とする。
【0003】
さらに、本発明は、タンパク質複合体相互作用又はタンパク質の修飾をスクリーニングする方法、及びタンパク質複合体と相互作用できるか、若しくはタンパク質を修飾できるか、又はタンパク質複合体相互作用を阻害できるか、若しくはタンパク質の修飾を阻害できる候補となる化合物のin vitro又はin vivoにおけるスクリーニング方法を包含する。
【0004】
また、本発明は、(i)遺伝子治療用の薬剤を製造するため、(ii)多タンパク質複合体の組み換え体を製造するため、(iii)ワクチンを製造するため、又は(iv)関心のある化合物をスクリーニングするための、本発明のポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、又は組み換え動物の使用に関する。
【0005】
最後に、これは大切なことだが、本発明は、少なくとも本発明のポリヌクレオチド、ベクター、及び/又は宿主細胞を含む部品からなるキットを対象とする。
【背景技術】
【0006】
真核細胞における新規な多タンパク質複合体の同定が急速に進みつつあるが、これは特に、タンパク質−タンパク質相互作用のゲノムワイド分析の到来、強力な複数の親和性タンパク質精製方法の導入、及び超高感度分析技術の開発に起因している。広範な2ハイブリッド研究に基づき、特定のタンパク質と相互作用するパートナーの数が、パン酵母では平均して5〜8個であると推定された(Schwikowski et al. A network of protein−protein interactions in yeast. Nat. Biotechnol. 18, 1257−1261 (2000); Bader et al. Analyzing protein−protein interaction data obtained from different sources. Nat. Biotechnol. 20, 991−997 (2002); Von Mering et al. Comparative assessment of large−scale data sets of protein−protein interactions. Nature 417, 399−403 (2002); Grigoriev, A. On the number of protein−protein interactions in the yeast proteome. Nucleic Acids Res. 31, 4157−4161 (2003))。これにより、本質的には主要なプロセスにつき1つの、複数の構成要素からなるタンパク質装置の集積としての細胞の概念が出現した。これは、真核生物の多タンパク質複合体の、分子レベルでの構造及び機能研究を目的とするタンパク質製造技術に対し、重要な課題を提起しており、その理由は、その細胞内の量が供給源からの大規模な抽出に一般的には不向きだからである。
【0007】
多タンパク質複合体構成要素をコードする複数の遺伝子を運ぶポリシストリン性ベクターが、遺伝子治療における輸送の選択的なケースで使用されている(De Felipe, P. Polycistronic viral vectors. Curr. Gene Ther. 2, 355−378 (2002); Planelles, V. Hybrid lentivirus vectors. Methods Mol. Biol. 229, 273−284 (2003))。最近、ポリシストロン性ベクターが、E. coli中の4個のサブユニットからなる転写因子複合体の発現に用いられている(Selleck et al. A histone fold TAF octamer within the yeast TFIID transcriptional coactivator. Nat. Struct. Biol. 8, 695−700 (2001))。これらの研究におけるDNA構築物は、エンドヌクレアーゼ及びリガーゼを用いた常法により作製された。しかし、真核生物におけるタンパク質複合体には、しばしば、最大数百kDaサイズの個別のポリペプチドを有する10個以上のサブユニットが含まれるため、通常のクローニング戦略の適用性が非常に制限され、かつ異種タンパク質発現のための有用な宿主系としてE. coliの大部分が除外される。
【0008】
組み換えバキュロウイルスは、大きなタンパク質集合体の高レベルの製造に対して特に魅力的である(O'Reilly et al. Baculovirus expression vectors. A laboratory manual. Oxford Press, New York (1994))。Autographa californica核多角体病ウイルス(AcNVP)後期プロモーターにより促進される遺伝子は、多くの場合豊富に発現し、確実にプロセッシングされ、その適切な細胞内コンパートメントへと向けられる。カプシド構造などの構造的に複雑な粒子でさえも、バキュロウイルス系を用いた昆虫細胞内でうまく集合されている(Roy et al. Baculovirus multigene expression vectors and their use for understanding the assembly process of architecturally complex virus particles. Gene 190, 119−129(1997))。1つの細胞における複数の遺伝子発現は、1つの外来遺伝子を運ぶ各ウイルスを共インフェクションすることにより達成され得る。しかし、この試みは、感染細胞間のウイルス化学量論における統計的分散の結果として、個別のタンパク質製造レベルにおいて相当のばらつきを必然的にもたらす。優れた別法は、選択した全ての異種遺伝子を含む1つのバキュロウイルスを感染させることである(Roy et al., 上記参照; Bertolotti−Ciarlet et al. Immunogenicity and protective efficacy of rotavirus 2/6−virus−like particles produced by a dual baculovirus expression vector and administered intramuscularly, intranasally, or orally to mice. Vaccine 21, 3885−3900 (2003))。これは、大きなDNA挿入物を環状の130kbのdsDNAバキュロウイルスゲノムへと適合させ得る、AcNVPエンベロープの柔軟な特性により可能となる。これまでのところ、組み換えバキュロウイルス製造は、2つの工程で実施されている。この工程とは、初めに、外来遺伝子を、E. coli中で増殖させた小さなトランスファーベクターへとクローニングし、ついで、昆虫細胞内の相同組み換えにより大きなバキュロウイルスゲノムへと挿入するものであり、これにより、線形化された親ウイルスDNAを用いた場合には、30〜80%の組み換え子孫が得られる(O'Reilly et al., 上記参照)。この手順は、E. coli中で増殖させたバキュロウイルスシャトルベクター(bacmid bMON14272)の導入により、実際には簡素化されていた(Luckow et al. Efficient generation of infectious recombinant baculoviruses by site−specific transposon−mediated insertion of foreign genes into a baculovirus genome propagated in E. coli. J. Virol. 67, 4566−4579 (1993))。バクミドには、トランスファーベクター(Bac−to−Bac(登録商標), Invitrogen)から外来遺伝子を転移させるためのTn7接着部位が含まれている(Luckow et al., 上記参照; Bac−to BacTM Baculovirus Expression Systems Manual, Invitrogen, Life technologies Incorporated (2000))。2つの別々の発現カセット(共発現のために2種の外来遺伝子を連続してサブクローニングするための制限部位セットを有する)内にポリへドリン(polh)及びp10後期ウイルスプロモーターを含む、2シストロン性のトランスファーベクターpFastBacTM Dualが導入された。
【非特許文献1】O'Reilly et al. Baculovirus expression vectors. A laboratory manual. Oxford Press, New York (1994)
【非特許文献2】Luckow et al. Efficient generation of infectious recombinant baculoviruses by site−specific transposon−mediated insertion of foreign genes into a baculovirus genome propagated in E. coli. J. Virol. 67, 4566−4579 (1993)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
大きくかつ多数のサブユニットを含む多タンパク質複合体を製造するために、それぞれ数千塩基対を含むコード配列の一群において有用な制限部位の不足により生じる制限を緩和する、非連続的なモジュラー方式で遺伝子を集合できるトランスファーベクターが依然として非常に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従って、本発明の目的は、多タンパク質複合体を急速かつ柔軟に製造するための新規ツール及び方法を提供することである。
【0011】
また、最大数百kDaサイズである個別のポリペプチドを有する10個以上のサブユニットの多タンパク質複合体を組み換え技術により製造するための新規ツール及び方法も必要とされている。
【0012】
本発明のさらなる目的は、多数のサブユニットを有する大きな多タンパク質複合体を製造し、かつ同時に必要とされるユニークな制限部位を最小限に抑えるための新規ツール及び方法を提供することである。
【0013】
本発明のさらなる目的は、個別のサブユニットに対するコード配列集合体全体の新たな再構築を避けるモジュラー方式で前記コード配列を置き換えることができる、多タンパク質複合体を製造するための柔軟性の高い系を提供することである。
【0014】
さらに、様々な生物、真核生物(哺乳動物、酵母菌など)、及び原核生物で、又は選択される条件下(例えば、宿主細胞のウイルス感染の初期、後期、最後期など)で、特定の多タンパク質複合体を組み換え技術により製造するために、生物特異的プロモーター、組織特異的プロモーター、又は細胞タイプ特異的プロモーターの容易なモジュール交換が可能であるツール及び方法も必要とされている。
【0015】
生体高分子の溶解性及び活性は、相互作用する構成要素が分離して製造及び単離精製される場合にしばしば低下し、その結果、in vitro条件下で再構築しても生理学的に意味のあるデータが得られない。従って、互いの高分子間相互作用の研究のために、理想的には1つの細胞内で2種以上のタンパク質集合の共発現を可能にし、それぞれが複数の構成要素からなる、強力かつ拡張性のある系が必要とされている。
【0016】
[発明の要旨]
第一の側面として、上述の目的は、下記式(I):
【0017】
【化1】

[この配置は以下を含む:
(a)頭部−頭部、頭部−尾部、又は尾部−尾部の配置での少なくとも2つの発現カセット、T1−MCS1−P1及びP2−MCS2−T2;それぞれ、マルチクローニングサイトであるMCS1又はMCS2を含み、MCS1はプロモーターP1及び終了配列T1に隣接しており、MCS2はプロモーターP2及び終了配列T2に隣接している、
(b)プロモーターP1とP2との間にある少なくとも1つの増殖モジュールM(少なくとも2つの制限部位A及びBを含む)、
(c)少なくとも2つの制限部位X及びY(それぞれ発現カセットの1つに隣接している)、
{式中:
(i)制限部位A及びX並びにB及びYは適合する、しかし、
(ii)AY及びBXのライゲーション産物は、制限部位A、B、X及びYに特異的な制限酵素であるa、b、x、又はyによって酵素的に切断されず、かつ
(iii)制限部位A及びB並びにX及びYは適合しない}]
の機能的配置を含む、複数遺伝子適用のための新規なポリヌクレオチドを提供することにより解決される。
【0018】
本発明のポリヌクレオチドは、DNA、RNA、又は1つ以上の合成ヌクレオチドアナログを含むポリヌクレオチドであってよく、好ましくはDNAであり、より好ましくは二本鎖DNAである。
【0019】
本明細書で用いられる、「発現カセット」という用語は、DNAフラグメントに関し、このDNAフラグメントは、DNA転写機構を補充するために用いられるプロモーター配列を含み、それに続いて、RNA翻訳機構を補充するためのシグナル配列(例えば、真核生物におけるKozak consensus配列、又は原核生物におけるShide−Dalgarno配列)をコードするオリゴヌクレオチドを含み、それに続いて、選択される遺伝子産物をコードするDNAフラグメントの挿入のために使用される制限酵素によって切断される少なくとも1つのDNA配列(マルチクローニングサイトMCS)、並びに転写の終了及びRNA転写物の修飾(例えば、真核生物におけるポリアデニル化)に関連するプロセスを対象とする終了配列とを含むオリゴヌクレオチド配列を含むものであると理解されるべきである。
【0020】
本明細書で用いられる、「増殖モジュール」という用語は、発現カセットの外側及び/又は発現カセットの間に置かれ、複数又は多数の発現カセットの反復する組み合わせを可能にする、DNAフラグメントのセットに関すると理解されるべきである。
【0021】
適合する制限部位とは、同種の酵素による切断時に、同一のヌクレオチド長のDNAの突出一本鎖領域又は陥没一本鎖領域をもたらし、粘着する制限部位であり、すなわち、相補的なWatson−Crick塩基対合を用いて互いにアニーリングでき、従って、共有結合した機能的DNA分子を産生するためにリガーゼにより再結合できる。別法として、切断時に平滑末端DNAフラグメントをもたらす制限部位もまた適合性であり、すわなち、これらは共有結合した機能的DNA分子を産生するためにリガーゼにより再結合できる。
【0022】
適合性のある粘着末端をもたらす制限エンドヌクレアーゼの非限定的な例は、SpeI / AvrII ; AgeI / XmaI /SgrA ; BamHI / BglII ; BsrGI / BanI ; EagI / NotI ; EcoRI / MfeI ; NdeI / AseI ; NheI / XbaI ; PstI / NsiI ; SalI / XhoIである。
【0023】
適合性のある平滑末端(例えば、全ての組み合わせが互いに結合可能である)をもたらす制限エンドヌクレアーゼの非限定的な例は、BstZ17I、EcoRV、FspI、HpaI、MluNI、PmeI、ScaI、SnaBI、StuI、XmnIである。
【0024】
「頭部−頭部」、「頭部−尾部」、及び「尾部−尾部」という用語は、互いに向かい合う個別の発現カセットのプロモーター及びターミネーターの配置を意味する。例えば、T1−T2は「尾部−尾部」配置であって、P1−P2は「頭部−頭部」配置であって、P1/P2−T2/T1は「頭部−尾部」配置である。式(I)は、頭部−頭部配置を示しているが、もちろん、異なる配置(但し、増殖部位Mは発現カセットの間にあり、制限部位X及びYはそれぞれ式(I)の配置の発現カセットの外部境界に隣接している)も本発明の範囲内であることが理解される。
【0025】
好ましくは、少なくとも2つの発現カセットは、「頭部−頭部」の配置である。
【0026】
好ましい実施態様では、本発明は、増殖モジュールMの制限部位A及びBが、BstZ17I、SpeI、ClaI及びNruIからなる群、又は前記酵素と同一の切断部位を有する制限酵素(「イソシゾマー」)から選択される、ポリヌクレオチドに関する。
【0027】
さらに好ましい実施態様では、本発明は、制限部位X及びYが、PmeI及びAvrIIからなる群、又は前記酵素と同一の制限部位を有する制限酵素(「イソシゾマー」)から選択される、ポリヌクレオチドに関する。
【0028】
別の好ましい実施態様では、本発明は、プロモーターP1及びP2が、polh、p10及びpXIV最後期バキュロウイルスプロモーター、vp39バキュロウイルス後期プロモーター、vp39polhバキュロウイルス後期/最後期ハイブリッドプロモーター、Pcap/polh、pcna、etl、p35、egt、da26バキュロウイルス初期プロモーター;CMV、SV40、UbC、EF−1α、RSVLTR、MT、PDS47、Ac5、PGAL及びPADHからなる群から選択される、ポリヌクレオチドに関する。
【0029】
さらに、本発明の好ましい実施態様は、終了配列T1及びT2が、SV40、HSVtk、又はBGH(ウシ成長ホルモン)から選択される、ポリヌクレオチドに関する。
【0030】
式(I)の機能的配置に加えて、好ましくは、本発明のポリヌクレオチドには、ベクター又は宿主細胞へと組み込まれるための少なくとも1つの部位がさらに含まれる。このような組み込み部位は、ベクター及び宿主細胞へのポリヌクレオチドの簡便なゲノムの組み込み又は一過性の組み込みを可能にするだろう。ゲノムの取り込みのための組み込み部位であることがより好ましい。
【0031】
組み込み部位が、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス(AAV)、オートノマスパルボウイルス(autonomous parvovirus)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、レトロウイルス、ラジノウイルス、エプステインバーウイルス、レンチウイルス、セムリキフォレストウイルス及びバキュロウイルスからなる群から選択されるウイルスへのポリヌクレオチドの組み込みに適合する、ポリヌクレオチドがとりわけ好ましい。
【0032】
組み込み部位が、バキュロウイルスへのポリヌクレオチドの組み込みに適合する、本発明のポリヌクレオチドがより好ましい。
【0033】
バキュロウイルス発現系は、昆虫細胞における組み換えタンパク質の発現のための広く使用されている。最近、哺乳動物細胞活性プロモーターエレメントを含むように改変された組み換えバキュロウイルスベクターが、広範囲に亘る初代及び樹立哺乳動物細胞系において、一過性で安定な遺伝子デリバリーのために首尾よく使用されている。in vivo遺伝子デリバリーのための改変バキュロウイルスの適用も実証されている。他の一般的に使用されているウイルスベクターとは対照的に、バキュロウイルスは、哺乳動物細胞では複製周期の開始及び感染ウイルスの産生が不可能である一方で、昆虫細胞では複製の独特な特性を有している。このウイルスは、操作が容易であり、外来DNAの大きな挿入が可能であり、哺乳動物細胞において、顕微鏡により観察可能な細胞変性作用を起こすことが皆無かそれに近く、かつ良好なバイオセーフティー性質を有している(Kost et al. Recombinant baculoviruses as mammalian cell gene−delivery vectors. Trends in Biotechnology, 20 (4), April 2002)。これらの特性により、バキュロウイルスは本発明の実施に対し特に有用なものとなる。
【0034】
より好ましい実施態様では、本発明のポリヌクレオチドに任意選択で含まれていてもよい前記組み込み部位(1つ以上)は、Tn7のトランスポゾンエレメント、λ−インテグラーゼ特異的接着部位及びSSR(部位特異的リコンビナーゼ)、好ましくはcre−lox特異的組み換え(LoxP)部位又はFLPリコンビナーゼ特異的組み換え(FRT)部位、からなる群から選択される。
【0035】
好ましくは、組み込み部位(1つ以上)は、哺乳動物、好ましくはヒト細胞;ブタ、好ましくはCPK、FS−13、PK−15細胞;ウシ、好ましくはMDB、BT細胞;ヒツジ、好ましくはFLL−YFT細胞;C. elegans;酵母菌、好ましくはS. cerevisiae、S. pombe、C. albicans、P. Pastoris細胞;及び昆虫細胞からなる群から選択される真核生物の宿主細胞へのポリヌクレオチドの組み込みに適合する。
【0036】
ヒト宿主細胞に関しては、組み込み部位は、HeLa、Huh7、HEK293、HepG2、KATO−III、IMR32、MT−2、膵臓β細胞、ケラチノサイト、骨髄線維芽細胞、CHP212、初代神経細胞、W12、SK−N−MC、Saos−2、WI38、初代肝細胞、FLC4、143TK−、DLD−1、胎児肺線維芽細胞、初代包皮線維芽細胞、Saos−2骨肉腫、MRC5、及びMG63細胞からなる群から選択される宿主細胞へのポリヌクレオチドの組み込みに適合することが好ましい。
【0037】
昆虫宿主細胞に関しては、組み込み部位は、S. frugiperda細胞、より好ましくはSf9、Sf21、Express Sf+、High Five H5細胞、及びD. melanogaster細胞、最も好ましくはS2 Schneider細胞からなる群から選択される宿主細胞へのポリヌクレオチドの取り込みに適合することが好ましい。
【0038】
好ましい実施態様では、本発明のポリヌクレオチドは、毒性物質への耐性に基づく所望の特性を有する宿主細胞を選択するための1つ以上の耐性マーカーをさらに含む。より好ましくは、前記耐性マーカーは、アンピシリン、クロラムフェニコール、ゲンタマイシン、スペクチノマイシン、及びカナマイシン耐性マーカーから選択される。
【0039】
本発明のヌクレオチドの取り込みに原核生物の宿主細胞を所望する場合には、本発明のポリヌクレオチドが、原核生物の宿主でpir遺伝子依存性の増殖を起こさせるためのR6Kγ条件(conditional)複製起点をさらに含むことが好ましい。
【0040】
非常に好ましい実施態様では、本発明のポリヌクレオチドは以下を含む:
(a)polh及びp10から選択されるプロモーターP1及びP2、
(b)SV40及びHSVtkから選択される終了配列、
(c)BstZ17I、SpeI、ClaI及びNruIからなる群から選択される、増殖モジュールM中の制限部位A及びB、
(d)PmeI及びAvrIIからなる群から選択される制限部位X及びY、
(e)cre−lox及びTn7組み換え系から選択されるウイルス組み込みのための部位。
【0041】
さらなる側面において、本発明は、本発明のポリヌクレオチド配列を含むベクターを対象とする。
【0042】
好ましい実施態様では、前記ベクターは、プラスミド、発現ベクター及びトランスファーベクターからなる群から選択される。
【0043】
これらのベクターは、異種DNAエレメント、好ましくは遺伝子の組み込みに有用である。前記ベクターは、発現ベクター又はトランスファーベクターであってよく、好ましくは、真核生物の遺伝子導入、一過性又はウイルスベクターを介した遺伝子導入に有用なものである。
【0044】
より好ましい前記ベクターは、プラスミド又はウイルスである。
【0045】
特に好ましい実施態様では、前記ウイルスは、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス(AAV)、オートノマスパルボウイルス(autonomous parvovirus)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、ラジノウイルス、エプステインバーウイルス、レンチウイルス、セムリキフォレストウイルス及びバキュロウイルスからなる群から選択される。
【0046】
最も好ましい実施態様では、本発明のベクターは、バキュロウイルス発現ベクターである。
【0047】
バキュロウイルス発現ベクターを改変すると、驚くべきことに、2つのバキュロウイルス遺伝子、v−cath及びchiAの機能破壊により、結果として、感染及びタンパク質発現の間の細胞内コンパートメントの保持が高められることが発見された。このような新規なバキュロウイルス系により製造されるタンパク質の特性は、ウイルス依存性タンパク質分解活性及び細胞溶解の減少を通じて、顕著に改善されている。
【0048】
従って、異なる側面において、本発明はまた、2つのバキュロウイルス遺伝子、v−cath及びchiAが機能的に破壊されている、一般的なバキュロウイルスも対象としている。
【0049】
好ましい実施態様では、本発明は、2つのバキュロウイルス遺伝子、v−cath及びchiAが機能的に破壊されている、本発明のバキュロウイルスベクターを対象としている。
【0050】
好ましくは、本発明のベクターは、SSR(部位特異的リコンビナーゼ)に対する部位、好ましくはcre−lox部位特異的組み換えのためのLoxP部位をさらに含む。
【0051】
より好ましくは、cre−lox部位は、2つのバキュロウイルス遺伝子、v−cath及びchiAの1つ又は両方に位置し、その機能を破壊している。
【0052】
別の好ましい実施態様では、本発明は、トランスポゾンエレメント、好ましくはTn7接着部位を含むベクターに関する。
【0053】
好ましくは、前記接着部位は、マーカー遺伝子内に位置する。そうすることで、転移による組み込みがうまくいっているかを、マーカー遺伝子を介して評価できる。
【0054】
より好ましくは、マーカー遺伝子は、ルシフェラーゼ、β−GAL、CAT、蛍光タンパク質コード遺伝子、好ましくはGFP、BFP、YFP、CFP、及びその改変体、並びにlacZα遺伝子からなる群から選択される。マーカー遺伝子の改変体は、30%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満の配列の差異を有するが、元のマーカー遺伝子と実質的には同一な機能的マーカー特性を保持している。
【0055】
最も好ましい実施態様では、本発明のベクターは、配列番号1(pFBDM)の配列を有する。図2も参照のこと。
【0056】
さらに最も好ましい実施態様では、本発明のベクターは、配列番号2(pUCDM)の配列を有する。図3も参照のこと。
【0057】
以下に、最も好ましいバキュロウイルスベクターであるpFBDM及びpUCDMを参照として、本発明のベクターを例証する。しかし、本発明のこれら特定のベクターについての以下の説明は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0058】
上述の好ましい新規なバキュロウイルストランスファーベクターを、特に複数遺伝子適用のために構築した。これらには、タンパク質製造を高めるように改変された、改変レシピエントバキュロウイルスDNAが含まれており、この目的のために作製されたE. coli細胞中で、前記バキュロウイルスDNAへと2つのアクセス部位(attTn7及びLoxP)を介して遺伝子を組み込むための単純かつ迅速な方法が可能となる。
【0059】
本発明のベクターにより、タンパク質相互作用ネットワーク(インタラクトーム)の解明が可能となる。同定された多タンパク質複合体の多くが、詳細な分子生物学的分析をするのに十分な量で天然細胞中に存在していないので、これらの研究は、大規模な異種タンパク質製造のための組み換え技術に依存している。現在、組み換え発現方法は、多タンパク質を発現させる前には、労力及び物質の両方で過度の投資を必要とし、発現後には、発現研究を見直すために多タンパク質構成要素を迅速に変更するための柔軟性を提供しない。
【0060】
本発明のベクター、特に本発明のバキュロウイルス発現系は、多タンパク質発現を非常に容易にし、かつ促進させる。
【0061】
本発明のトランスファーベクター、特にpFBDM及びpUCDMには、増殖モジュールが含まれており、必要とされるユニークな制限部位を最小限に抑えながら、異種遺伝子のモジュラー結合を非常に容易にする。これらのベクターにおけるウイルスプロモーター(例えば、p10及びpolh最後期プロモーター)は、必要であれば、他のプロモーター配列(初期、後期)に交換することができる。同様に、終了配列(現在のところ、SV40、HSVtk)を置換することができる。
【0062】
機能破壊されたv−cath及びchiA遺伝子を有するバキュロウイルスベクターの使用により、感染及びタンパク質製造の間の細胞内コンパートメントの保持を高めることが可能となる。このようなベクター系により製造されたタンパク質の特性は、ウイルス依存性のタンパク質分解活性の減少及び細胞溶解の減少を通じて、顕著に改善されている。
【0063】
さらに、本発明のベクターは、2つの特異的部位を介してベクターゲノムにアクセスすることにより、組み換えDNA(好ましくはバキュロウイルスDNA)を迅速に組み合わせて作製するための完全に新規なプロトコルを可能にする。
【0064】
Tn7トランスポゾン部位に加えて、部位特異的な組み換えによるpUCDMプラスミド由来の複数遺伝子発現カセットの受け入れが可能であるバキュロウイルスゲノム上の別の部位に、LoxP配列を導入した。Tn7転移(複数遺伝子カセットを運ぶpFBDM誘導体から)及びLoxP部位特異的組み換え(複数遺伝子カセットを運ぶpUCDM誘導体から)を、E. coliにおいてシングルステップで十分に実施するためのプロトコルを開発した。これらのプロトコルは、多タンパク質複合体サブユニットに対するコード配列を有する複数遺伝子カセットをベクター(例えば、バキュロウイルスベクター)へと組み込むためだけでなく、研究下のタンパク質を修飾するための特異的酵素(キナーゼ、アセチラーゼなど)を組み込むために使用され得る。さらなる説明図として図1を参照のこと。
【0065】
トランスファーベクターpFBDMには、頭部−頭部の配置で2つの発現カセットが含まれており、この発現カセットには、polh又はp10プロモーター、及びSV40又はHSVtkポリAシグナル配列にそれぞれ隣接するマルチクローニングサイトMCS1及びMCS2が含まれている。増殖モジュールMは、プロモーター配列の間に位置している。Tn7転移(Tn7L及びTn7R)のために用いられる配列は、発現カセット及びゲンタマイシン耐性マーカーを包含する(より詳細には図2参照のこと)。
【0066】
トランスファーベクターpUCDMは、pFBDMと同様の増殖モジュールを含む同一の発現カセットを有している。この発現カセットは、LoxP逆方向反復に隣接している。ベクターpUCDMには、クロラムフェニコール耐性マーカー及びR6Kγ条件複製起点が含まれており、この複製起点は、原核生物の宿主でpir遺伝子発現依存性の増殖を起こさせる。より詳細には図3参照のこと。
【0067】
ベクターpFBDM及びpUCDMは、2つのプロモーターの間に挿入された増殖モジュールによる複数遺伝子発現カセットを作製するのに特に適している。増殖のロジックを図4において図解する。複数遺伝子発現カセットを集合させるための唯一の必須条件は、増殖のために用いられる制限酵素(例えば、PmeI、AvrII、SpeI、及びBstZ17I又はNruIのいずれか)がユニークであることであって、これは、例えば、複数遺伝子カセットを集合する前に部位特異的突然変異誘発を行うことにより容易に達成され得る。遺伝子は、pFBDMのMCS1及びMCS2へとクローニングされる。ついで、発現カセット全体をPmeI及びAvrII消化(digestion)により切り出す。得られたフラグメントを、SpeI/BstZ17I又はSpeI/NruI部位のいずれかを介した遺伝子のさらなるセットを含むpFBDM誘導体の増殖モジュールに入れる。SpeIはAvrIIと適合する粘着末端を産生し、他方、BstZ17I、NruI及びPmeIは平滑カッターである。その過程で、関与した制限部位は除去され、挿入されたカセット内に存在するモジュールを反復して用いることにより、増殖を繰り返すことができる。同様のロジックはまた、複数遺伝子発現カセットを有するpUCDM誘導体の作製にも適用される。さらに、プロモーター及び終了配列は、所望する場合には、これらのベクター中の適切な制限部位を用いて容易に変更され得る。より詳細には図4参照のこと。
【0068】
加えて、改良されたタンパク質製造特性を得るために、バキュロウイルスゲノムを改変した。2つのバキュロウイルス遺伝子、v−cath及びchiAを破壊することにより、結果として、感染及びタンパク質製造の間の細胞内コンパートメントの保持を高めた。v−cath遺伝子は、ウイルスプロテアーゼV−CATHをコードしており、これは、ウイルスDNA上の近接遺伝子であるchiA(キチナーゼをコードする)依存性のプロセスにより、細胞死を活性化する。V−CATH活性を排除し、かつchiA遺伝子産物に干渉されない精製のためのキチン−親和性クロマトグラフィーを選択的に用いることができるように、両方の遺伝子を破壊した。MultiBacバキュロウイルスによって製造されるタンパク質の特性は、ウイルス依存性タンパク質分解活性の減少及び細胞溶解の減少を通じて、顕著に改善されている。破壊されたウイルスDNA配列の代わりに、cre−lox部位特異的組み換えのためのLoxP配列を入れた。より詳細には図5を参照のこと。
【0069】
本明細書で用いられる、「MultiBac」という用語は、前記バキュロウイルスのウイルスベクター、すなわちv−cath及びchiA遺伝子を欠いた改変バキュロウイルスゲノムの例証的かつ好ましい実施態様を同義的に表す。さらに、「MultiBac系」に関連する「MultiBac」は、前記改変バキュロウイルスのウイルスベクター、並びに本明細書に記載の組み換え反応(Tn7転移、部位特異的組み換え)を実施するために必要とされる因子とともに前記バキュロウイルスベクターを含むDH10α由来のE. coli細胞タイプ(DH10MultiBacET、DH10MultiBacCreなど)、及びさらに追加としての本発明の例証的かつ好ましいベクターであるpFBDM及びpUCDMを含む前記E. coli細胞タイプを包含する。
【0070】
本発明の全てのベクター、特に、好ましいトランスファーベクターであるpFBDM及びpUCDMは、多タンパク質複合体を宿主細胞へと導入するために有用である。
【0071】
別の側面では、本発明は、本発明のポリヌクレオチド配列及び/又はベクターを含む宿主細胞に関する。
【0072】
本発明を実施するのに好ましい宿主細胞は、哺乳動物細胞、好ましくは、ヒト細胞、げっ歯類細胞、ブタ細胞、ウシ細胞、ヒツジ細胞;C. elegans細胞;酵母菌細胞;昆虫細胞;及びE. coli細胞からなる群から選択されるものである。
【0073】
本発明を実施するのに好ましい酵母菌細胞は、S. cervisiae、S. pombe、C. albicans及びP. pastorisである。
【0074】
本発明を実施するのに好ましいE. coli細胞は、Top10、DH5α、DH10α、HB101、TG1、BW23473、BW23474細胞である。
【0075】
本発明を実施するのに好ましい昆虫細胞は、S. frugiperda細胞、好ましくはSf9、Sf21、Express Sf+、又はHigh Five H5細胞、及びD. melanogaster、好ましくはS2 Schneider細胞である。
【0076】
本発明を実施するのに好ましいヒト細胞は、HeLa、Huh7、HEK293、HepG2、KATO−III、IMR32、MT−2、膵臓β細胞、ケラチノサイト、骨髄線維芽細胞、CHP212、初代神経細胞、W12、SK−N−MC、Saos−2、WI38、初代肝細胞、FLC4、143TK−、DLD−1、胎児肺線維芽細胞、初代包皮線維芽細胞、Saos−2骨肉腫、MRC5、及びMG63細胞からなる群から選択される。
【0077】
もちろん、本発明のポリヌクレオチド及び/又はベクターを含む細胞は、単離された細胞又は細胞組織に決して制限されない。
【0078】
別の側面では、本発明はまた、本発明のポリヌクレオチド配列及び/又はベクターを含む組み換え動物にも関する。
【0079】
このような組み換え動物は、多酵素複合体の役割を解明するため、又はin vivoにおける生物活性のための化合物をスクリーニングするために有用である。
【0080】
好ましくは、本発明の動物は、哺乳動物、好ましくは、ヒト、げっ歯類、ブタ及びウシ;C. elegans;並びに昆虫、好ましくはS. frugiperda及びD. melanogasterから選択される。
【0081】
本発明のツール、すなわち、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞及び組み換え動物は、必要とされるユニークな制限部位を最小限に抑えながら、簡便で迅速かつ単純な異種遺伝子のモジュラー結合を可能にする。
【0082】
別の側面では、本発明は、
(a)本発明の第一のベクターのMCS1及び/又はMCS2へと1つ以上の遺伝子をクローニングする工程、
(b)本発明の第二のベクターのMCS1及び/又はMCS2へと1つ以上の遺伝子をクローニングする工程
(c)第一のトランスファーベクター中の制限部位X及びYで、機能的配置全体を切り出す工程、
(d)増殖モジュールMで第二のトランスファーベクターを切断する工程、
(e)工程(c)で切り出された機能的配置を、工程(d)で切断された第二のベクターの増殖部位へとライゲーションし、それにより第一のトランスファーベクターの増殖モジュールと、第一及び第二のベクターの両方の発現カセットとを有する第三のトランスファーベクターを作製する工程、及び
(f)複数の発現カセットを有するトランスファーベクターを集合させるために、工程(a)から工程(e)を任意選択で反復する工程、
を含む、複数遺伝子発現カセットの作製方法を対象とする。
【0083】
好ましくは、工程(c)における制限部位X及びYは、PmeI及びAvrII、又はこれらの酵素のイソシゾマーであって、工程(d)における第二のベクターの増殖モジュールの制限部位は、BstZ17I、SpeI、ClaI及びNruI、又はこれらの酵素のイソシゾマーから選択される。
【0084】
最も好ましくは、バキュロウイルストランスファーベクターpFBDMは、工程(a)及び/又は工程(b)で用いられ得る。
【0085】
さらに、最も好ましくは、バキュロウイルストランスファーベクターpUCDMは、工程(a)及び/又は工程(b)で用いられ得る。
【0086】
一般的な本発明の方法のさらなる理解のために、好ましいベクターであるpFBDMを用いた例となる方法を図4に示す。
【0087】
本発明の方法では、本発明のベクターの1つ以上の発現カセットへと遺伝子を簡便に導入することができ、それに続く単一のベクターへのこれら発現カセットのモジュール集合を容易にし、その一方で、そうするために必要とされる制限部位の数を最小限に抑えている。
【0088】
本発明のさらなる側面は、
(a)先に定義されたとおりの本発明の複数遺伝子発現カセットを作製する工程、及び
(b)前記遺伝子を同時に発現することができる宿主細胞へと前記複数遺伝子発現カセットを導入する工程、
を含む、in vitroでの多タンパク質複合体の製造方法を対象としている。
【0089】
好ましくは、工程(b)における導入は、ベクター、好ましくはウイルスを用いて達成される。
【0090】
好ましくは、前記宿主細胞は、哺乳動物、酵母菌、E. coli及び昆虫細胞から選択される。
【0091】
前記宿主細胞が昆虫細胞である場合には、S. frugiperda細胞、より好ましくはSf9、Sf21、Express Sf+、若しくはHigh Five H5細胞、又はD. melanogaster細胞、より好ましくはS2 Schneider細胞が好ましい。
【0092】
前記宿主細胞が哺乳動物細胞である場合には、HeLa、Huh7、HEK293、HepG2、KATO−III、IMR32、MT−2、膵臓β細胞、ケラチノサイト、骨髄線維芽細胞、CHP212、初代神経細胞、W12、SK−N−MC、Saos−2、WI38、初代肝細胞、FLC4、143TK−、DLD−1、胎児肺線維芽細胞、初代包皮線維芽細胞、Saos−2骨肉腫、MRC5、及びMG63細胞からなる群から選択されるヒト細胞が好ましい。
【0093】
前記宿主細胞が酵母菌細胞である場合には、S. cerevisiae、S. pombe、C. albicans、又はP. pastorisが好ましい。
【0094】
本発明は、in vitroでの方法に限定されない。
【0095】
本発明の異なる側面は、
(a)請求項39乃至42に係る複数遺伝子発現カセットを作製する工程、及び
(b)前記遺伝子を同時に発現する動物へと前記複数遺伝子発現カセットを導入する工程、
を含む、in vivoでの多タンパク質複合体の製造方法に関する。
【0096】
好ましくは、工程(b)における導入は、ベクター、好ましくはウイルスベクター、より好ましくはバキュロウイルスベクターを用いて達成される。
【0097】
上述のとおり、バキュロウイルスは、哺乳動物細胞の遺伝子デリバリービヒクルとして特に有用である。
【0098】
in vivoで多タンパク質複合体を製造するために、前記動物は、哺乳動物、C. elegans、又は昆虫から選択されることが好ましい。
【0099】
前記方法を実施するための好ましい昆虫は、S. frugiperda及びD. melanogasterである。
【0100】
本発明を実施するための好ましい哺乳動物は、ヒト、げっ歯類、ブタ、又はウシである。
【0101】
真核細胞においてさらに増えつつある多タンパク質複合体(「インタラクトーム」)の最近の研究では、特に、供給源からの抽出には不向きの細胞内量であるタンパク質複合体(例えば、ほぼ全ての「ヒト」多タンパク質複合体)に対する、改善された異種発現技術が求められている。真核生物のタンパク質は、多くの場合、大きな(>100kDa)多ドメイン構成(multidomain entity)であり、平均5〜8個のタンパク質の複合体として細胞内に存在している。一般的に、大きなタンパク質を含むタンパク質複合体は、通常(例えば、原核生物)の発現技術では、機能的に活性な状態で製造され得ない。さらに、多タンパク質集合体の構成要素は、それが単離して製造された場合に、ホールディングの問題及び損なわれた生物活性をしばしば呈する。現在の真核生物発現技術(バキュロウイルス系、酵母菌及び哺乳類発現系など)は、多タンパク質複合体をコードする複数の大きな遺伝子を迅速かつ柔軟に発現するように設計されていない。
【0102】
しかし、本発明のベクターは、これらの要求を満足させるように作製されている。このベクターは、挿入用の複数遺伝子発現カセットを、例えば、独立したエントリー部位(Cre−loxP及びTn7及び/又は他のもの)を通じて改良されたタンパク質製造特性を有する改変バキュロウイルスへと運ぶことができる。例えば昆虫細胞などで得られる高レベルな製造割合と相まって、本発明のベクターは、それ故、研究及び薬剤開発で用いる重要な情報を提供する構造的かつ機能的研究のため、例えば、多タンパク質複合体の活性に影響を与えるリガンド(阻害剤、抗体など)を発見するための生理学的に有用なターゲットとして、多タンパク質複合体を製造するために、柔軟な方法で用いられ得る。
【0103】
本発明はまた、哺乳動物における複数サブユニットのタンパク質複合体に対するワクチンを製造するために特に有用である。複合多タンパク質ユニットは、しばしば、個々のタンパク質と比較して異なるエピトープを提示しており、それ故、多くの自然発生的なタンパク質複合体の関連するエピトープに酷似しており、従って、抗体産生のためにより良い抗原ターゲットを提供するだろう。加えて、多価ワクチン及び任意選択でさらなるタンパク質アジュバントのための多種タンパク質を、ただ1つのベクターに導入し、最大効率を確保するよう同時に発現させることができる。
【0104】
最近、重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルス由来の4つのタンパク質からなるビリオン様粒子(VLP)が、組み換えバキュロウイルス発現ベクターを用いて製造され(Mortola et al. Efficient assembly and release of SARS coronavirsus−like particles by a heterologous expression system FEBS Lertters 576, 174−178 (2004))、この病気に対するワクチンの可能性のある候補となっている。本発明のベクターを使用することにより、複数の遺伝子発現ユニットを運ぶためのそれらのモジュラー能力に起因して、SARS-VLPよりもはるかに多くの構成要素からなるこのようなワクチンの製造が非常に容易になるだろう。
【0105】
従って、本発明はまた、
(a)本発明の少なくとも1つのポリヌクレオチド及び/又はベクターを哺乳動物に投与する工程(それにより、前記ポリヌクレオチドの少なくとも1つの発現カセットによりコードされる少なくとも1つのタンパク質が、前記動物内で発現される)、
(b)任意選択でアジュバントを前記動物に投与する工程、及び
(c)前記の少なくとも1つのタンパク質に特異的な抗体及び/又は前記抗体を産生する脾臓細胞を任意選択で単離する工程、
を含む、ワクチン製造方法にも関する。
【0106】
本発明は、自然界に見られる多タンパク質複合体を組み換えにより製造するための簡便かつ単純なプロトコルを提供する。これら多タンパク質複合体は、タンパク質複合体相互作用又はタンパク質の修飾について分析され得る。これら多タンパク質複合体はまた、生物活性又はさらには治療効力の可能性のある化合物との相互作用についても分析され得る。
【0107】
別の側面では、本発明は、タンパク質複合体相互作用又はタンパク質の修飾を分析するための方法を対象とする。
【0108】
好ましい実施態様では、本発明は、
(a)本発明の少なくとも1つのポリヌクレオチド及び/又はベクターを含む宿主細胞を準備する工程(前記宿主細胞は、関心のある少なくとも2つのタンパク質に対する遺伝子を有する少なくとも1つの発現カセットを含んでおり、かつ前記タンパク質を同時に発現できる)、及び
(b)1つ以上の発現しているタンパク質における相互作用又は修飾を検出する工程、
を含む、タンパク質複合体相互作用又はタンパク質の修飾をin vitroでスクリーニングするための方法に関する。
【0109】
別の好ましい実施態様では、本発明は、(i)タンパク質複合体相互作用が可能であるか、若しくは(ii)(多タンパク質複合体の)タンパク質(1つ以上)の修飾が可能であるか、又は(iii)タンパク質複合体相互作用の阻害が可能であるか、若しくは(iv)タンパク質(1つ以上)の修飾の阻害が可能である、候補となる化合物のin vitroにおけるスクリーニング方法であって、
(a)本発明の少なくとも1つのポリヌクレオチド及び/又は本発明のベクターを含む宿主細胞を準備する工程(前記宿主細胞は、関心のある少なくとも2つのタンパク質に対する遺伝子を有する少なくとも1つの発現カセットを含んでおり、かつ前記タンパク質を同時に発現できる)、
(b)工程(a)の宿主細胞に、候補となる化合物を投与する工程、及び
(c)1つ以上の発現しているタンパク質におけるタンパク質複合体相互作用若しくは修飾を検出する工程、又はタンパク質複合体相互作用の阻害若しくはタンパク質の修飾の阻害を検出する工程、
を含む方法を包含する。
【0110】
本発明はまた、in vivoにおけるスクリーニングアッセイも包含する。
【0111】
本発明のポリヌクレオチド及び/又はベクターはまた、タンパク質−タンパク質相互作用、又は多タンパク質複合体−多タンパク質複合体相互作用のin vivoにおけるスクリーニングのため(このようなスクリーニング方法の一般的な図解として、図13Iを参照のこと)、さらには、ランダム化されたライブラリー又はcDNAプールからのin vivoにおけるスクリーニングのため、並びに特定のタンパク質複合体又は多タンパク質集合体の生理学的な修飾(リン酸化、グリコシル化など)のin vivoにおけるスクリーニングのため(このようなスクリーニング方法の一般的な図解として、図13IIを参照のこと)に使用され得る。
【0112】
さらに好ましい実施態様では、本発明は、(i)タンパク質複合体相互作用が可能であるか、若しくは(ii)(多タンパク質複合体の)タンパク質(1つ以上)の修飾が可能であるか、又は(iii)タンパク質複合体相互作用の阻害が可能であるか、若しくは(iv)タンパク質(1つ以上)の修飾の阻害が可能である、候補となる化合物のin vivoにおけるスクリーニング方法であって、
(a)本発明の少なくとも1つのポリヌクレオチド及び/又は本発明のベクターを含む動物を準備する工程(前記動物は、関心のある少なくとも2つのタンパク質に対する遺伝子を有する少なくとも1つの発現カセットを含んでおり、かつ前記タンパク質を同時に発現できる)、
(b)工程(a)の動物に、候補となる化合物を投与する工程、及び
(c)1つ以上の発現しているタンパク質におけるタンパク質複合体相互作用若しくは修飾を検出する工程、又はタンパク質複合体相互作用の阻害若しくはタンパク質の修飾の阻害を検出する工程、
を含む方法を教示する。
【0113】
生物活性多タンパク質複合体、さらにはタンパク質の医学的に有利な組み合わせ、例えば、抗体混合物、任意選択でインターロイキン及び/又はアジュバントを有するものは、本発明のポリヌクレオチド及び/又は本発明の遺伝子デリバリーベクターを用いて、同時に哺乳動物に投与され得る。
【0114】
従って、さらなる側面において、本発明はまた、遺伝子治療用の複数遺伝子導入ビヒクルを含む薬剤を調製するための、本発明のポリヌクレオチド及び/又はベクターの使用にも関する。
【0115】
治療的適用のための遺伝子デリバリー系を開発するために、多大な努力が払われている。遺伝子治療は、従来、批判の対象となっているが、非常に強い興味や関心の的ともなっている。今日まで、ヒトの病気に対する安全かつ適用可能な臨床治療のin vivo及びex vivo戦略を達成することを目的とした臨床試験において、遺伝子治療を評価する大幅な進展がみられている(Worgall S. A realistic chance for gene therapy in the future. Pediatr. Nephrol. (2004))。概して、遺伝子治療は、治療用遺伝子産物の持続的又は一過性の発現を必要とする、遺伝子の修正及び後天性疾患に対して非常に有望な手段として現在存在している(Worgall S. 上記参照)。組み換えウイルスに基づくベクター、特に、哺乳類宿主において複製可能でないもの(例えば、バキュロウイルスベクター)が、哺乳動物細胞遺伝子デリバリーのための強力なツールとして最近浮上しており、ヒト、霊長類、げっ歯類、ウシ、ブタ及びヒツジを含むあらゆる種類の哺乳動物細胞系にうまく適用されている(Kost and Condreay. Recombinant baculoviruses as mammalian cell gene−delivery vectors. Trends Biotechnol. 20, 173−180 (2002)を参照のこと)。複合的な遺伝子導入/治療効果を得るために、ex vivo及びin vivoの両方において、単一の遺伝子治療によるものよりも、組み合わされた遺伝子治療によってより強力な成果を上げるために、ポリシストロン性のウイルスベクターへの要求が高まっている(de Felipe, P. Polycistronic viral vectors. Curr. Gene Ther. 2, 355−378 (2002) ; Planelles, V. Hybrid lentivirus vectors. Methods Mol. Biol. 229, 273−284 (2003))。また、例えば補体系による不活性化を阻害するために、in vivoで投与されるべき補助的な遺伝子のキャリアウイルスへの組み込みの必要性も、ヒト分解促進因子タンパク質ドメイン融合を運ぶバキュロウイルスgp64エンベロープタンパク質を有する、偽型バキュロウイルスを用いることによって実証されており(Hueser et al., Incorporation of decay−accelerating factor into the baculovirus envelope generates complement−resistant gene transfer vectors. Nat. Biotechnol. 19, 451−455 (2001))、治療目的のために導入される複数の遺伝子に加えて、ウイルス産生レベルでの組み換え修飾を提供する必要性が例証されている。
【0116】
好ましくは、薬剤を調製するために用いられるベクターは、組み換えバキュロウイルスである。
【0117】
より好ましくは、本発明の薬剤を調製するために用いられるベクターは、
(i)治療用の1つ以上の遺伝子産物、好ましくはタンパク質、及び
(ii)1つ以上のバキュロウイルスタンパク質、
をコードする、少なくとも1つの複数遺伝子発現カセットを含むバキュロウイルスであって、前記バキュロウイルスは、治療される動物の哺乳類プロモーター(1つ以上)活性の制御下で、治療用遺伝子産物、好ましくはタンパク質に対する遺伝子を発現でき、かつバキュロウイルスプロモーターの制御下で、バキュロウイルスタンパク質に対する遺伝子を発現できる。
【0118】
好ましい実施態様では、前記(ii)のタンパク質(1つ以上)は、偽型バキュロウイルスから発現されたヒト化バキュロウイルスタンパク質であって、好ましくはヒト化バキュロウイルスエンベロープタンパク質gp64であって、例えば、分解促進因子などのヒトタンパク質と融合したgp64である。
【0119】
より一般的な側面において、本発明は、多タンパク質複合体を組み換え技術により製造するための、本発明のポリヌクレオチド及び/又はベクター及び/又は宿主細胞及び/又は動物の使用を対象とする。
【0120】
蛍光タンパク質EYFP及びECFPをコードする遺伝子を用いると、驚くべきことに、本発明のベクター中に組み込まれたこのタンパク質をコードする遺伝子の数に伴って、蛍光タンパク質製造のほぼ線形な増加が示された。より正確には、蛍光タンパク質の製造収率(1Lの昆虫培養細胞当たり)は、発現のために用いられる本発明のベクター中に存在する遺伝子のコピーが1つである場合には6〜8mg/Lであり、存在するコピーが2つである場合には約11mgであり、存在するコピーが3つである場合には約18mgであった。これは、本発明の発現系を用いて発現された組み換えタンパク質の量を劇的に高めるための、以前には注目されていなかった、簡単な方法を示唆しており、すなわち、1つのみの遺伝子の代わりに同一遺伝子の2つ、3つ、又はそれ以上のコピーを単に提供すればよい。例えば、製剤化目的、とりわけ、その製造が低い製造収率によって非常に妨げられている、薬剤開発での最大の関心事である膜タンパク質(例えば、GPCR)などの工業規模でのタンパク質製造にとって、これは特に興味深いものである。
【0121】
さらに、本発明によって製造される組み換え多タンパク質複合体は、研究及びさらには薬剤開発のための、多タンパク質複合体の生物物理学的分析、構造分析、結晶分析、電子顕微鏡分析、及びNMRに基づく分析に対して非常に有用である。
【0122】
好ましくは、本発明は、ワクチンを製造するための、本発明のポリヌクレオチド及び/又はベクター及び/又は宿主細胞及び/又は動物の使用に関する。
【0123】
さらに好ましくは、宿主細胞若しくは動物におけるタンパク質関連性、タンパク質修飾、若しくは生物学的効果のために、又は宿主細胞若しくは動物におけるタンパク質関連性の阻害、タンパク質修飾の阻害、若しくは生物学的効果の阻害のために、任意選択で候補となる化合物と共に、in vitro又はin vivoで少なくとも1つのタンパク質をスクリーニングするための、本発明のポリヌクレオチド及び/又はベクター及び/又は宿主細胞及び/又は動物の使用である。
【0124】
別の側面では、本発明は、少なくとも本発明のポリヌクレオチド及び/又はベクター及び/又は宿主細胞を含み、任意選択でさらに取り扱い説明書、抗生物質、バッファー、及び/又はマーカー化合物を含んでいてもよい、部品からなるキットに関する。
【0125】
以下に、本発明の特定の実施態様を例として記載するが、これらの例は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0126】
[実施例]
1.複数遺伝子適用のための新規なバキュロウイルスツール
以下に、特に複数遺伝子適用のために構築された、本発明の新規なバキュロウイルストランスファーベクターを詳細に記載する。これらのトランスファーベクターは、タンパク質の製造を高めるために改変された改変レシピエントバキュロウイルスDNAを提示し、かつこの目的のために調製されたE. coli細胞でこのバキュロウイルスDNAへと、2つのアクセス部位(attTn7及びLoxP)を介して遺伝子を組み込むための単純かつ迅速な方法を提示している。前記ベクター(pFBDM及びpUCDM)は、増殖モジュールを含んでおり、必要とされるユニークな制限部位を最小限に抑えながら、異種遺伝子のモジュラー結合を非常に容易にする。これらのベクターのウイルスプロモーター(現在のところ、p10及びpolh最後期プロモーター)は、所望する場合には、他のプロモーター配列に交換され得る。同様にして、終了配列(現在のところ、SV40、HSVtk)も置換され得る。
【0127】
これらのベクターには、改良されたタンパク質製造特性を有する改変されたバキュロウイルスゲノム(MultiBac)が含まれている。2つのバキュロウイルス遺伝子を破壊し、結果として、感染及びタンパク質製造の間の細胞内コンパートメントの保持を高めた。この系によって製造されるタンパク質の量は、ウイルス依存性タンパク質分解活性の減少及び細胞溶解の減少を通じて、顕著に改善されている。
【0128】
本発明のベクターは、2つの特異的部位を介してウイルスゲノムにアクセスすることにより、組み換えバキュロウイルスDNAを迅速に組み合わせて作製するための新規な方法を可能にする(概説として図1参照のこと)。市販のTn7トランスポゾン部位に加えて、LoxP配列を、部位特異的組み換えによりpUCDMプラスミドからの複数遺伝子発現カセットを受容できるバキュロウイルスゲノム上の別の部位に導入した。Tn7転移(複数遺伝子カセットを運ぶpFBDM誘導体から)及びLoxP部位特異的組み換え(複数遺伝子カセットを運ぶpUCDM誘導体から)を、E. coliにおいてシングルステップで十分に実施するためのプロトコルを開発した。これらのプロトコルは、多タンパク質複合体サブユニットに対するコード配列を有する複数遺伝子カセットをMultiBacへと組み込むためだけでなく、研究下のタンパク質を修飾するための特異的酵素(キナーゼ、アセチラーゼなど)を組み込むためにも有用である。
【0129】
[実施例1:トランスファーベクターpFBDM及びpUCDM、並びにバキュロウイルスベクターMultiBac]
トランスファーベクターpFBDM(配列番号1、図11)は、polh又はp10プロモーター、及びSV40又はHSVtkポリAシグナル配列にそれぞれ隣接しているマルチクローニングサイトMCS1及びMCS2を有する2つの発現カセットを頭部−頭部の配置で含んでいる。増殖モジュールMは、プロモーター配列の間に位置している。Tn7転移のために用いられる配列(Tn7L及びTn7R)は、発現カセット及びゲンタマイシン耐性マーカーを包含する。より詳細には図2参照のこと。
【0130】
トランスファーベクターpUCDM(配列番号2、図12)は、pFBDMと同様の増殖モジュールを含む同一の発現カセットを有している。この発現カセットは、LoxP逆方向反復に隣接している。ベクターpUCDMには、クロラムフェニコール耐性マーカー及びR6Kγ条件複製起点が含まれており、この複製起点は、原核生物の宿主でpir遺伝子発現依存性の増殖を起こさせる。より詳細には図3参照のこと。
【0131】
要約すると、両方のベクターを以下のとおりに作製した。トランスファーベクターpFBDMは、pFastBac(登録商標)DUAL(Invitrogen)から得た。配列5’−TACTAGTATCGATTCGCGACCをpolhプロモーターとp10プロモーターとの間のBstZ17I部位に挿入し、順番に、BstZ17I、SpeI、ClaI、及びNruI切断部位を含む増殖モジュールを作製した。まれなカッターであるPmeIに対する部位を、SnaBI認識配列をオリゴヌクレオチド5’−AGCTTTGTTTAAACAAAGCTで置き換えることにより加えた。マングビーンヌクレアーゼ(New England Biolabs)で処理した後に、R6Kγ基点を含むpUNI10ユニベクターの998bpのEcoRV/AlwNIフラグメントと、pLysS(Novagen)からの1258bpのAlwNIフラグメントとを結合することにより、ベクターpUCDMを作製した。このpLysSフラグメントには、クロラムフェニコール耐性マーカーが含まれている。得られた構築物をSmaI及びXbaIで消化し、pFBDMの1016bpのPmeI/AvrIIフラグメントにライゲーションした。AvrII及びPmeI制限エンドヌクレアーゼに対するユニークな制限部位を、Quick Changeプロトコル(Stratagene)を用いて部位特異的突然変異誘発法により再導入した。ベクターpUCDM及びpFBDMには、増殖モジュールを含む同一の発現カセットが含まれている。
【0132】
本バキュロウイルスベクター、いわゆるMultiBacは、E. coli株(例えば、DH10α及びその誘導体)でその増殖を可能にする複製起点(F−レプリコン)を含むバクミドを意味しており、これを以下の方法で構築した。プラスミドpKIloxP(ET組み換えによりbMON14272のv−cath及びchiA遺伝子を置き換えるために用いられる直鎖状のフラグメントを含む)を、3385bpのStuI/FspIフラグメントの再環状化によりpFastBac(登録商標)DUALから作製し、それにより、これらの部位を除去し、アンピシリン耐性遺伝子を破壊した。このpKIベクターは、ゲンタマイシンマーカー、並びにXhoI、NcoI及びKpnI制限部位を含む元のpFastBac(登録商標)DUAL p10 MCSを有している。pKIloxPを得るために、pKIを以下のとおりに改変した。アンピシリン耐性マーカーを含むpFastBac(登録商標)DUALの1008bpのBspHIフラグメントをNcoI部位へと導入した。次に、バキュロウイルスchiA遺伝子の相同領域HomAを、プライマー5’−GCGCGCCTCGAGGCCTCCCACGTGCCCGACCCCGGCCCG及び5’−GCGCGCCTCGAGGGAGGAGCTGCGCGCAATGCを用いて、bMON14272から増幅し、XhoIで消化した。得られた408bpのフラグメントを、pKIのXhoI部位に挿入した。v−cath遺伝子の相同領域HomBを、プライマー5’−GCGCGCGGTACCGCGTTCGAAGCCATCATTA及び5’−GCGCGCGGTACCAGGCCTGAAAAATCCGTCCTCTCCを用いて増幅し、KpnIで消化し、得られた372bpのフラグメントをpKI KpnI部位に挿入した。最後に、Cre−loxP配列を、オリゴヌクレオチド5’−CTAGAATAACTTCGTATAGCATACATTATACGAAGTTAGTTTAAACTにより、NheI部位へと導入した。開始コドンに直接隣接するCreリコンビナーゼ及び6個のヒスチジンタグをコードする遺伝子を、合成オリゴヌクレオチド(Microsynth, CH)から作製し、NcoI/KpnIで消化されたpBAD22ベクターにライゲーションした。アンピシリン耐性マーカーを、FspI/ScaI消化により不活性化した。合成した原核生物プロモーター(EM7)の支配下にあるゼオシン耐性遺伝子を、PvuII/EcoRV消化によりpPICZA(Invitrogen)から切り出し、5388bpのFspI/ScaIフラグメントにライゲーションして、pBADZ−His6Creを作製した。
【0133】
トランスファーベクターpFBDM、pKILoxP及びpBADZ−His6Creは、Top10細胞(Invitrogen)などの一般的なE. Coli株で増殖させ、pUCDMは、バクテリアの宿主である、pir遺伝子を発現しているBW23473及びBW23474で増殖させる。
【0134】
次に、バキュロウイルスバクミドMultiBacを作製するために、アラビノース誘導PBADプロモーター下の切断型(truncated)recE及びEM7プロモーター下のrecTを運ぶベクターpBAD−ETγを、pBADZ−His6Creについて記載したとおりのFspI及びScaI部位へとpPICZA由来のゼオシン耐性遺伝子を置くことにより改変し、pBADZ−ETγを産生した。このベクターを、バクミドbMON14272及びヘルパープラスミドpMON7124を提供するDH10BAC(登録商標)(Invitrogen)細胞へとトランスフォームし、カナマイシン、テトラサイクリン及びゼオシン耐性のコロニーを形成させた。20℃でこれらの抗生物質の存在下、単一のコロニーを500mlの2×TY(1.6% バクトトリプトン、1% 酵母エキス、0.5% NaCl)に植菌するために用いた。OD600=0.25で、L−アラビノース(Fluka BioChemicals)を0.1%まで添加し、OD600=0.5まで培養物をインキュベートした。ついで、エレクトロコンピテントDH10BACET細胞を、標準的な手順に従って作製し、−80℃で保存した。ベクターpKIloxPを、dam及びdcm活性を欠損したJM110細胞(Stratagene)へとトランスフォームした。非メチル化プラスミドDNAをStuIで消化し、アンピシリン耐性マーカー及びCre−loxP配列(chiA及びv−cath相同領域に近接する)を含む1827bpのフラグメントを作製した。ついで、最小0.3μgの直鎖DNAを、DH10BACET細胞へとエレクトロポレーションした。トランスフォームした細胞を、37℃で4時間成長させ、カナマイシン、テトラサイクリン及びアンピシリンを含む寒天プレート上にまいた。2つの単一の、三種類の抗生物質に耐性のあるコロニー(triple-resistant colony)からのバクミドDNAを、相同領域外でアニーリングするプライマーである5’−AGGTACTAAATATGGCG及び5’−CTGAGCGACATCACTを用いてPCR増幅することにより、また正しい組み込みを確認するためにPCRフラグメントを配列決定することにより分析した。v−cath及びchiA遺伝子をアンピシリンマーカー及びLoxPに置き換えた改変バクミドを含む、凍結エレクトロコンピテントDH10MultiBac細胞を、培養物内でアンピシリンの代わりにゼオシンを用いて上述のとおりに調製した。
【0135】
複合MultiBacバクミドを作製するために、pBADZ−His6CreをエレクトロポレーションによりDH10MultiBacへとトランスフォームし(Creリコンビナーゼ発現のため)、カナマイシン、テトラサイクリン及びゼオシン耐性のコロニーを形成させた。20℃でこれらの抗生物質の存在下、単一のコロニーを500mlの2×TYに植菌するために用いた。OD600=0.25で、L−アラビノースを0.1%まで添加した。OD600=0.5で、過剰発現させたCreリコンビナーゼを含む凍結エレクトロコンピテントDH10MultiBacCre細胞を調製した。プラスミドpUCDM又はその誘導体を、DH10MultiBacCre細胞へとエレクトロポレーションし、カナマイシン、テトラサイクリン及びクロラムフェニコールを含む寒天上にまいた。三種類の抗生物質に耐性のあるコロニーを、IPTG及びBluogalを含むプレート上で、lacZα遺伝子とTn7との統合について分析すると、試験した全てのケースで青色のコロニーが形成された。上述したとおりのPCR増幅及び配列決定により、Cre−loxP部位特異的組み換え現象の正確性についてコロニーを分析した。pBADZ−His6Creの喪失を、ゼオシンの存在下でリプレートすることにより確認した。エレクトロコンピテント細胞を、カナマイシン、テトラサイクリン及びクロラムフェニコールの存在下で個別のクローンから調製した。pFBDM誘導体由来のTn7エレメントのTn7への転移、青/白スクリーニングによる組み換え体の同定、及び精製した複合バクミドのトランスフェクションは、慣例に従って実施した(例えば、O'Reilly, D.R., Miller, L.K. & Luckow, V.A. "Baculovirus expression vectors. A laboratory manual." Oxford University Press, New York−Oxford (1994); "Bac−to−BacTM Baculoviorus Expression Systems Manual." Invitrogen, Life Technologies Incorporated (2000))。pUCDM及びpFBDM誘導体によるDH10MultiBacCreの同時トランスフォーメーションのために、それぞれ少なくとも1μgを使用した。
【0136】
バクミド上のF−レプリコンの機能は、コピー数を1つ又は2つに制限することであり、所望しない組み換えの可能性を減少させる。pFBDM誘導体のMultiBacへの導入により、lacZα遺伝子が破壊され、複合バクミドのみを含む細胞の明確な同定が可能となる。しかし、pUCDM誘導体のCre触媒融合の場合には、複合体及び親バクミドの両方のコピーの共存を、クロラムフェニコール耐性に基づいて除外できない。従って、Cre触媒により挿入されたEYFP遺伝子を含むMultiBacを用いた初めのトランスフェクションからのウイルスを、プラーク精製によりコロニー的に分離した。32個のプラーク精製試料のうち29個(91%)がEYFPを発現していたので、Cre−loxP部位特異的組み換えは、ほぼ飽和した効率(saturating efficacy)で実施された。ウイルスプロモーター(p10、polh)及びターミネーター(SV40、HSVtk)の複数のコピーが存在するにも関わらず、MultiBac誘導体を、感染多重度(MOI)≦1で、Sf21細胞において連続的に少なくとも5回継代できた。
【0137】
[実施例2:複数遺伝子発現カセットの作製]
ベクターpFBDM及びpUCDMは、2つのプロモーター間に挿入されている増殖モジュールに起因して、複数遺伝子発現カセットを作製するのに特に適している。増殖のロジックを図4で図解する。複数遺伝子発現カセットを集合させるための唯一の必須条件は、増殖のために用いられる制限酵素(例えば、PmeI、AvrII、SpeI、及びBstZ17I又はNruIのいずれか)がユニークであることであって、これは、例えば、複数遺伝子カセットを集合する前に部位特異的突然変異誘発を行うことにより、又は挿入されたDNAコード配列の切断されるべきでない追加の部位を遮蔽可能な化合物(例えば、ペプチド核酸)を提供することにより、容易に達成され得る。遺伝子は、pFBDMのMCS1及びMCS2へとクローニングされる。ついで、発現カセット全体をPmeI及びAvrII消化により切り出す。得られたフラグメントを、SpeI/BstZ17I又はSpeI/NruI部位のいずれかを介した遺伝子のさらなるセットを含むpFBDMの増殖モジュールに入れる。SpeIはAvrIIと適合する粘着末端を産生し、他方、BstZ17I、NruI及びPmeIは平滑カッターである。その過程で、関与した制限部位は除去され、挿入されたカセット内に存在するモジュールを反復して用いることにより、増殖を繰り返すことができる。同様のロジックはまた、複数遺伝子発現カセットを有するpUCDM誘導体の作製にも適用される。さらに、プロモーター及び終了配列は、所望する場合には、本発明ベクター中の適切な制限部位を用いて容易に変更され得る。
【0138】
[実施例3:タンパク質の製造を高めるために改変されたバキュロウイルス]
改良されたタンパク質製造特性を得るために、バキュロウイルスゲノムを改変した。2つのバキュロウイルス遺伝子、v−cath及びchiAを破壊することにより、結果として、感染及びタンパク質製造の間の細胞内コンパートメントの保持を高めた。v−cath遺伝子は、ウイルスプロテアーゼV−CATHをコードしており、これは、ウイルスDNA上の近接遺伝子であるchiA(キチナーゼをコードする)依存性のプロセスにより、細胞死を活性化する。V−CATH活性を排除し、かつchiA遺伝子産物に干渉されない精製のためのキチン−親和性クロマトグラフィーを選択的に用いることができるように、両方の遺伝子を破壊した。このいわゆるMultiBacバキュロウイルスによって製造されるタンパク質の特性は、ウイルス依存性タンパク質分解活性の減少及び細胞溶解の減少を通じて、顕著に改善されている。破壊されたウイルスDNA配列の代わりに、cre−lox部位特異的組み換えのためのLoxP配列を入れた。より詳細には図5を参照のこと。
【0139】
[実施例4:pFBDM又はpUCDMトランスファーベクターへのクローニング]
選択した遺伝子を、標準的なクローニング手順を用いて、pFBDM及びpUCDMのマルチクローニングサイトMCS1又はMCS2(図2、3参照のこと)へとクローニングする。pFBDM誘導体についてのライゲーション反応物を、クローニング用の標準的なE. coli細胞(例えば、TOP10、DH5α、HB101)へとトランスフォームし、アンピシリン(100μg/ml)を含む寒天上にまく。pUCDM誘導体についてのライゲーション反応物を、pir遺伝子を発現しているE. coli細胞(例えば、BW23473、BW23474)へとトランスフォームし、クロラムフェニコール(25μg/ml)を含む寒天上にまく。特異的制限消化及び挿入物のDNA配列決定に基づき、正しいクローンを選択する。
【0140】
[実施例5:Cre−lox部位特異的組み換えプロトコル]
およそ5〜10ngのpUCDM誘導体を、50〜100μlのエレクトロコンピテントDH10MultiBacCre細胞とともに、氷上でインキュベート(15分間)する。エレクトロポレーション(200Ω、25μF、1.8kVパルス)に続いて、細胞を37℃で8時間インキュベートし、カナマイシン(50μg/ml)、クロラムフェニコール(25μg/ml)及びアンピシリン(100μg/ml)を含む寒天上にまく。37℃でのインキュベート後(12〜15時間)、コロニーが現れる。ついで、バクミドは昆虫細胞トランスフェクションのために調製され得(III.6.参照のこと)、又はコロニーはTn7転移によるpFBDM誘導体の組み込みのために調製され得る(以下を参照のこと)。
【0141】
[実施例6:pFBDM誘導体についての転移プロトコル]
およそ5〜10ngのpFBDM誘導体を、50〜100μlのエレクトロコンピテントDH10MultiBacCre細胞とともに、氷上でインキュベート(15分間)する。エレクトロポレーション(200Ω、25μF、1.8kVパルス)に続いて、細胞を37℃で8時間インキュベートし、カナマイシン(50μg/ml)、ゲンタマイシン(7μg/ml)、アンピシリン(100μg/ml)、テトラサイクリン(10μg/ml)、BluoGal(100μg/ml)及びIPTG(40μg/ml)を含む寒天上にまく。37℃でのインキュベート後(18〜24時間)、白色コロニーを選択する。ついで、バクミドは昆虫細胞感染のために調製され得る(以下を参照のこと)。
【0142】
[実施例7:ワンステップ転移/cre−lox部位特異的組み換え]
Cre−lox部位特異的組み換え及びTn7転移は、所望する場合には、DH10MultiBacCre細胞において同時に実施され得る。2つのトランスフォーメーションの効率は、1つのプラスミドのみでのトランスフォーメーションと比較して減少しているので、非常に大量のDNAをこの反応に用いなければならない。選択するおよそ2〜4μgのpFBDM誘導体及び2〜4μgのpUCDM誘導体を、50〜100μlのエレクトロコンピテントDH10MultiBacCre細胞とともに、氷上でインキュベート(15分間)する。エレクトロポレーション(200Ω、25μF、1.8kVパルス)に続いて、細胞を37℃で8時間インキュベートし、クロラムフェニコール(25μg/ml)、カナマイシン(50μg/ml)、ゲンタマイシン(7μg/ml)、テトラサイクリン(10μg/ml)、BluoGal(100μg/ml)及びIPTG(40μg/ml)を含む寒天上にまく。37℃でのインキュベート後(18〜24時間)、白色コロニーを選択する。ついで、バクミドは昆虫細胞感染のために調製され得る(以下を参照のこと)。
【0143】
[実施例8:Tn7転移のためのcre−lox組み込みの調製]
特定の適用のために、発現のためのタンパク質遺伝子を、Cre触媒によって組み込まれている外来遺伝子のセットをすでに運んでいるMultiBacバキュロウイルスのDNAに添加することが有利であり得る。ついで、組み込まれているpUCDM誘導体を有する組み換えMultiBacを提供するDH10MultiBacCre細胞(III.2.参照のこと)を、クロラムフェニコール(25μg/ml)、カナマイシン(50μg/ml)、アンピシリン(100μg/ml)、テトラサイクリン(10μg/ml)、BluoGal(100μg/ml)及びIPTG(40μg/ml)を含む寒天上に再度面線接種する。ついで、転移−コンピテントMultiBac誘導体を有する青色のコロニーを、OD600が0.5に達するまで、クロラムフェニコール(25μg/ml)、カナマイシン(50μg/ml)、アンピシリン(50μg/ml)及びテトラサイクリン(10μg/ml)を含む500mlの2×TYメディウム中で、37℃でインキュベートする。ついで、培養物を氷上で冷却し(15分間)、遠心分離(4000rpm、8分間)する。細胞ペレットを250mlの冷却10%グリセロール溶液(無菌)中に再懸濁し、遠心分離(4000rpm、8分間)する。ついで、細胞ペレットを200mlの冷却10%グリセロール溶液(無菌)に再懸濁し、再び遠心分離(4000rpm、8分間)する。ついで、細胞ペレットを50mlの冷却10%グリセロール溶液(無菌)に再懸濁し、遠心分離した後、最終的に1mlの10%グリセロール溶液(無菌)に再懸濁する。液体窒素中で、細胞を50〜100μlの一定分量で凍結し、−80℃で保存する。pFBDM誘導体の転移は、以下のとおりに実施され得る。
【0144】
[実施例9:バクミド調製及び昆虫細胞の感染]
バクミドDNAの調製、昆虫細胞の感染、及びタンパク質発現を、慣例に従って実施する(例えば、O'Reilly, D.R., Miller, L.K. & Luckow, V.A. "Baculovirus expression vectors. A laboratory manual." Oxford University Press, New York−Oxford (1994); "Bac−to−BacTM Baculoviorus Expression Systems Manual." Invitrogen, Life Technologies Incorporated, (2000))。
【0145】
[実施例10:MultiBacへのcre−lox部位特異的組み換えの効率]
DH10MultiBacCre細胞におけるMultiBacの増殖は、バクミド上のF−レプリコンの存在によって決まる。F−レプリコンの機能は、コピー数(1つ又は2つ)の厳格な管理であり、所望しない組み換えの可能性を減少させる。pFBDM誘導体のMultiBacへの導入により、lacZα遺伝子が破壊され、従って、複合バクミドのみを含む細胞の明確な同定が可能となる。しかし、pUCDM誘導体のCre触媒による組み込みの場合には、1つの複合バクミドと1つの親MultiBac分子との共存を、クロラムフェニコール耐性に基づいて除外できない。従って、Cre触媒により挿入された黄色の蛍光タンパク質EYFPに対する遺伝子を含むMultiBacを用いた初めのトランスフェクションからのウイルスを、プラーク精製によりコロニー的に分離した。32個のプラーク精製試料のうち29個(91%)がEYFPを発現していたので、ほぼ飽和した効率でcre−lox部位特異的組み換え反応が起こっていると言える(さらに詳細には図6参照のこと)。
【0146】
[実施例11:MultiBacにおけるchiA及びv−cath欠損の効果]
市販のバキュロウイルス発現系を用いた異種タンパク質製造の間に、システインプロテアーゼの作用と一致するウイルス依存性タンパク質分解ブレイクダウンが観察された。バキュロウイルスのv−cath遺伝子は、昆虫細胞の宿主の液化に直接関与するシステインプロテアーゼをコードする。V−CATHは、ウイルスDNA上の近接遺伝子であるchiA(キチナーゼをコードする)依存性のプロセスにより、細胞死を活性化する。両方の遺伝子を破壊することにより、V−CATH活性が排除され、さらにchiA遺伝子産物に干渉されない精製のためのキチン親和性クロマトグラフィーを選択的に用いることが可能となる。MultiBacウイルスで感染させた細胞由来のサンプルと、v−cath及びchiAを運ぶ市販のバキュロウイルスで感染させた細胞由来のサンプルとを比較することにより、破壊の効果を分析した。MultiBacで感染させた細胞の溶解物では、細胞の元の状態の保持(maintenance of cell integrity)が非常に高められていると同時に、タンパク質分解活性の顕著な減少が観察された(より詳細には図7参照のこと)。
【0147】
[実施例12:MultiBacを用いた275kDaタンパク質複合体の製造]
試験実験において、130kDaのIsw2pタンパク質及び145kDaのItc1pタンパク質からなる酵母菌Isw2クロマチン再構築複合体を発現させた。1つ目のMultiBacは、両方のタンパク質をattTn7部位に組み込んで作製し、2つ目のMultiBacは、Isw2pをattTn7部位に組み込み、Itc1pをLoxP部位に挿入して作製した。ウイルス上の2つの遺伝子の空間的な分断は、昆虫細胞におけるIsw2複合体の、サブユニットの相対的産生レベルにも、機能的集合にも悪影響を及ぼさず、同時組み込み及びタンパク質発現のためのCre−lox及びTn7部位の両方の有用性を裏付ける。より詳細には図8参照のこと。
【0148】
[実施例13:MultiBacを用いた多タンパク質複合体の製造]
酵母菌Isw2再構築複合体に加えて、さらに3つのメンバーからなる酵母菌Isw1b複合体(360kDa)及びヒト転写因子複合体(700kDa)を、MultiBacを用いて発現させた。さらに、全ての場合において、EYFP蛍光タンパク質も共発現させた。共発現実験において、EYFPの収率とそれぞれの複合体の収率に変化がなかったことから、この系において発現が飽和していないことが明らかとなり、より多くのサブユニットを含むさらに大きな複合体がMultibacを用いて発現可能なことが示唆される。より詳細には図9参照のこと。
【0149】
[実施例14:哺乳動物細胞における遺伝子導入のためのMultiBac(「BacMam」)
バキュロウイルスプロモーター制御下の蛍光タンパク質EYFP及びECFP、並びにCMV後期プロモーター制御下のdsREDを含むMultiBac誘導体ウイルスを作製した。このハイブリッドウイルスで感染させた昆虫細胞は、EYFP及びECFPの発現を示した。昆虫細胞において増幅させたウイルスで感染させた哺乳動物COS細胞は、dsREDタンパク質の強い蛍光を示し、哺乳動物細胞への複数遺伝子導入のためのMultiBac(「BacMam」)の利用可能性を実証した。より詳細には図10参照のこと。
【0150】
II. MultiBac系キット
本発明のMultiBac系キットは、以下を1つ以上含んでいてもよい:
DH10MultiBacCre細胞、BW23474、BW23474細胞、pFBDMベクター、pUCDMベクター、Tn7転移のためのコントロールプラスミド、cre−lox部位特異的組み換えのためのコントロールプラスミド、一般的なトランスフェクション試薬
+;pUCDM誘導体の増殖のためのpir遺伝子を発現しているE. coli株(pir+バックグラウンドを有する任意の他の株を用いることもできる)。
*;実験において、蛍光タンパク質ECFP及びEYFPに対する遺伝子を運ぶベクターをコントロールとして使用した。これらの遺伝子は、Molecular Probeにより、許可を得て販売されている。蛍光顕微鏡によるか、蛍光分光光度計を用いるかのいずれかによる蛍光観察がもっぱら容易であるので、これらはコントロールとして特に有用である。しかし、容易に同定可能なタンパク質(グルクロニダーゼ(glucuronidase)、カテコールジオキシゲナーゼ、XylE、ルシフェラーゼなど)をコードする遺伝子を運ぶ任意のタイプのコントロールプラスミドを用いることもできる。
#;例えば、CellFECTIN(Invitrogen)、LipoTAXI(登録商標)トランスフェクション試薬(Stratagene)など。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】MultiBac系の概略図:関心のある遺伝子を、トランスファーベクターpFBDM及びpUCDM上に存在する増殖モジュールを用いて複数遺伝子発現カセットへと集合させる。得られたベクターを、Tn7転移(pFBDM誘導体のため)及びcre−lox部位特異的組み換え(pUCDM誘導体のため)のための因子を含むDH10MultiBacCre E. coli細胞中のMultiBacバキュロウイルスDNAへと導入する。組み込まれた複数遺伝子カセットを運ぶバクミドを含むコロニーを、青/白スクリーニング(Tn7転移はlacZα遺伝子を破壊する)及びクロラムフェニコール耐性(pUCDM誘導体のCre触媒組み込みによって与えられる)によって同定する。転移及び部位特異的組み換えは、連続的に実施されるか、あるいはまたワンステップ反応で同時に実施される。バクミドDNAを、選択したコロニーから調製し、タンパク質製造のための昆虫細胞へのトランスフェクションに用いる。
【図2】トランスファーベクターpFBDM:pFBDMの環状マップは、プロモーター(polh、p10)、ターミネーター(SV40、HSVtk)、マルチクローニングサイト(MCS1、MCS2)、トランスポゾンエレメント(Tn7L、Tn7R)及び耐性マーカー(アンピシリン及びゲンタマイシン)を示している。関心のある遺伝子をユニークな制限部位を用いてMCS1又はMCS2へとクローニングする。増殖モジュール(M)(Multiplication Module M)は、p10プロモーターとpolhプロモーターとの間に位置している。
【図3】トランスファーベクターpUCDM:pUCDMの環状マップは、プロモーター(polh、p10)、ターミネーター(SV40、HSVtk)、マルチクローニングサイト(MCS1、MCS2)、cre−lox部位特異的組み換えのための逆方向反復(LoxP)及び耐性マーカー(クロラムフェニコール)を示している。関心のある遺伝子を、ユニークな制限部位を用いてMCS1又はMCS2へとクローニングする。増殖モジュール(M)は、p10プロモーターとpolhプロモーターとの間に位置している。
【図4】複数遺伝子発現カセットの集合:増殖のロジックをpFBDMについて示す。選択した2つの遺伝子(a、bで示す)を含む発現カセットを、AvrII及びPmeI(囲まれている)での消化(digestion)により切り出し、増殖モジュール(M)中に存在するBstZ17I/SpeI(あるいはまた、NruI/SpeI)部位を介してさらなる遺伝子(c、d)を含む構築物の増殖モジュールへと入れる(Ligation)。SpeIは、AvrIIと適合する粘着末端を産生し、他方、BstZ17I、NruI及びPmeIは平滑カッターである。同様のロジックに従って、pUCDMの複数遺伝子誘導体を作製することができる。
【図5】MultiBacバキュロウイルスDNA:改変したウイルスゲノムを略図で示す。Tn7接着部位は、LacZα遺伝子内に位置しており;従って、BluoGal及びIPTGを含む寒天上にまいた場合には、pFBDM誘導体からのTn7エレメントの挿入により、白色の表現型が産生される。破壊されたv−cath及びchiAウイルス遺伝子の代わりに、Cre触媒によってpUCDM誘導体を受け入れさせるためにLoxP配列を挿入すると、クロラムフェニコール耐性の表現型が産生される。
【図6】MultiBacにおけるcre−lox部位特異的組み換えの効率:黄色の蛍光タンパク質であるEYFPをコードする遺伝子を、pUCDMへとクローニングし、Cre触媒によってMultiBacへと組み込んだ。プラークアッセイによりウイルスをコロニー的に分離した。蛍光分光法により、EYFPの発現について32個のプラークを試験した。励起は488nmであった。1〜12のウイルスの細胞溶解物から記録したスペクトルを示す(上部)。この実験において、試験したサンプルの91%(32個中29個)が、EYFPタンパク質の発現を示す強い蛍光発光を示した(下部の表)。
【図7】Multibacにおけるv−cath及びchiAの効果:MultiBacウイルスで感染させた細胞の溶解物(BacLoxP)と市販のバキュロウイルス(「野生型」)で感染させた細胞の溶解物(Wildtype)とを比較した。両方のサンプルにおいて、ウイルス依存性タンパク質製造は、感染後48時間では実質的に同一である(図A)。集菌後、室温で96時間細胞溶解物をインキュベートすると、MultiBacで感染させた細胞の溶解物サンプルにおけるタンパク質含有量は実質的に変わらないことが示されている。対照的に、野生型ウイルスで感染させた細胞のサンプルでは、タンパク質分解が明らかに起こっている(図B)。感染後72時間での細胞形態についてのプロテアーゼ欠損の効果を、v−cath及びchiAを欠失したMultiBacで感染させた細胞の顕微鏡写真(MultiBac;BacLoxP)、又はプロテアーゼ及びキチナーゼ遺伝子を含む市販のウイルス(Wildtype)で感染させた細胞の顕微鏡写真により示す。上部の顕微鏡写真の細胞は、均一な円形であり、原型を保っているようである。対照的に、下部の顕微鏡写真では細胞溶解が広まっている。
【図8】MultiBacを用いた275kDaのクロマチン再構築複合体Isw2の発現:Isw2複合体をattTn7部位から発現させるか、あるいはまた、MultiBacのattTn7及びLoxP部位から発現させた。両方の複合バクミドから精製したタンパク質複合体並びに細胞溶解物は、実質的に同一なタンパク質製造レベルを示している。感染させていないSf21細胞からのサンプルを、コントロールとして含めた。
【図9】MultiBacを用いた酵母菌Isw2、Isw1b及びヒトTFIID部分的複合体(subcomplex)の発現:組み込み部位を、それぞれの多タンパク質複合体の構成要素を示すクマシー染色ゲルセクションの上部に概略的に示す。収率を示す。吸光度スペクトルから計算した収率と、それぞれの細胞溶解物のウエスタンブロットセクションとにより、EYFPの発現を下部に示す。
【図10】哺乳動物細胞における遺伝子導入のためのMultiBacの使用(「BacMam」):ハイブリッドウイルス(左側)は、昆虫細胞ではEYFP及びECFPの発現をもたらし(右側の上部)、Sf21細胞で増幅させたウイルスで感染させたCOS細胞ではdsREDの発現をもたらす(右側の下部)。
【図11】環状のバキュロウイルストランスファーベクターpFBDM:図11に、本発明の好ましい実施態様の、環状バキュロウイルストランスファーベクターpFBDMの完全なポリヌクレオチド配列を示す。
【図12】環状のバキュロウイルストランスファーベクターpUCDM:図12に、本発明の好ましい実施態様の、環状バキュロウイルストランスファーベクターpUCDMの完全なポリヌクレオチド配列を示す。
【図13】MultiBacを用いたタンパク質−タンパク質相互作用及び修飾のin vivoスクリーニング:図13に、in vivoにおけるタンパク質/タンパク質複合体の物理的結合(I.)及び/又はそれらの修飾(II.)を評価するための、本発明のベクターを用いたスクリーニング戦略を図解する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I):
【化1】

[この配置は以下を含む:
(a)頭部−頭部、頭部−尾部、又は尾部−尾部の配置での少なくとも2つの発現カセット、T1−MCS1−P1及びP2−MCS2−T2;それぞれ、マルチクローニングサイトであるMCS1又はMCS2を含み、MCS1はプロモーターP1及び終了配列T1に隣接しており、MCS2はプロモーターP2及び終了配列T2に隣接している、
(b)プロモーターP1とP2との間にある少なくとも1つの増殖モジュールM(少なくとも2つの制限部位A及びBを含む)、
(c)少なくとも2つの制限部位X及びY(それぞれ発現カセットの1つに隣接している)、
{式中:
(i)制限部位A及びX並びにB及びYは適合する、しかし、
(ii)AY及びBXのライゲーション産物は、制限部位A、B、X及びYに特異的な制限酵素であるa、b、x、又はyによって酵素的に切断されず、かつ
(iii)制限部位A及びB並びにX及びYは適合しない}]
の機能的配置を含む、複数遺伝子適用のためのポリヌクレオチド。
【請求項2】
前記増殖モジュールMの制限部位A及びBが、BstZ17I、SpeI、ClaI及びNruIからなる群、又は前記酵素と同一の切断部位を有する制限酵素(「イソシゾマー」)から選択される、請求項1記載のポリヌクレオチド。
【請求項3】
前記制限部位X及びYが、PmeI及びAvrIIからなる群、又は前記酵素と同一の制限部位を有する制限酵素(「イソシゾマー」)から選択される、請求項1又は2記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
前記プロモーターP1及びP2が、polh、p10及びpXIV最後期バキュロウイルスプロモーター、vp39バキュロウイルス後期プロモーター、vp39polhバキュロウイルス後期/最後期ハイブリッドプロモーター Pcap/polh、pcna、etl、p35、egt、da26バキュロウイルス初期プロモーター;CMV、SV40、UbC、EF−1α、RSVLTR、MT、PDS47、Ac5、PGAL及びPADHからなる群から選択される、請求項1乃至3のいずれか一項記載のポリヌクレオチド。
【請求項5】
前記終了配列T1及びT2が、SV40、HSVtk、又はBGH(ウシ成長ホルモン)から選択される、請求項1乃至4のいずれか一項記載のポリヌクレオチド。
【請求項6】
ベクター又は宿主細胞へと組み込まれるための少なくとも1つの部位をさらに含む、請求項1乃至5のいずれか一項記載のポリヌクレオチド。
【請求項7】
前記組み込み部位が、Tn7のトランスポゾンエレメント、λ−インテグラーゼ特異的接着部位及びSSR(部位特異的リコンビナーゼ)、好ましくはcre−lox特異的組み換え(LoxP)部位又はFLPリコンビナーゼ特異的組み換え(FRT)部位、からなる群から選択される、請求項6記載のポリヌクレオチド。
【請求項8】
(a)polh及びp10から選択されるプロモーターP1及びP2、
(b)SV40及びHSVtkから選択される終了配列、
(c)BstZ17I、SpeI、ClaI及びNruIからなる群から選択される、増殖モジュールM中の制限部位A及びB、
(d)PmeI及びAvrIIからなる群から選択される制限部位X及びY、
(e)cre−lox及びTn7組み換え系から選択されるウイルス組み込みのための部位、
を含む、請求項1乃至7のいずれか一項記載のポリヌクレオチド。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項記載のポリヌクレオチド配列を含むベクター。
【請求項10】
前記ウイルスが、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス(AAV)、オートノマスパルボウイルス、単純ヘルペスウイルス(HSV)、レトロウイルス、ラジノウイルス、エプステインバーウイルス、レンチウイルス、セムリキフォレストウイルス及びバキュロウイルスからなる群から選択される、請求項9記載のベクター。
【請求項11】
前記ベクターがバキュロウイルス発現ベクターである、請求項10記載のベクター。
【請求項12】
2つのバキュロウイルス遺伝子v−cath及びchiAが機能破壊されている、請求項11記載のベクター。
【請求項13】
SSR(部位特異的リコンビナーゼ)に対する部位、好ましくはcre−lox部位特異的組み換えのためのLoxP部位をさらに含む、請求項9乃至12のいずれか一項記載のベクター。
【請求項14】
前記cre−lox部位が、2つのバキュロウイルス遺伝子v−cath及びchiAの1つ又は両方に位置している、請求項12又は13記載のベクター。
【請求項15】
トランスポゾンエレメント、好ましくはTn7接着部位を含む、請求項9乃至14のいずれか一項記載のベクター。
【請求項16】
前記ベクターが、配列番号1(pFBDM)の配列を有する、請求項9記載のベクター。
【請求項17】
前記ベクターが、配列番号2(pUCDM)の配列を有する、請求項9記載のベクター。
【請求項18】
請求項1乃至8のいずれか一項記載のポリヌクレオチド配列及び/又は請求項9乃至17のいずれか一項記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項19】
哺乳動物細胞、好ましくは、ヒト細胞、げっ歯類細胞、ブタ細胞、ウシ細胞及びヒツジ細胞;C. elegans細胞;酵母菌細胞、好ましくは、S. cervisiae、S. pombe、C. albicans及びP. pastoris;昆虫細胞;及びE. coli細胞からなる群から選択される、請求項18記載の宿主細胞。
【請求項20】
請求項1乃至8のいずれか一項記載のポリヌクレオチド配列及び/又は請求項9乃至17のいずれか一項記載のベクターを含む、組み換え動物。
【請求項21】
哺乳動物、好ましくは、ヒト、げっ歯類、ブタ及びウシ、並びにC. elegansから選択される、請求項20記載の動物。
【請求項22】
(a)請求項9乃至17のいずれか一項記載の第一のベクターのMCS1及び/又はMCS2へと1つ以上の遺伝子をクローニングする工程、
(b)請求項9乃至17のいずれか一項記載の第二のベクターのMCS1及び/又はMCS2へと1つ以上の遺伝子をクローニングする工程
(c)前記第一のトランスファーベクター中の制限部位X及びYで、機能的配置全体を切り出す工程、
(d)増殖モジュールMで前記第二のトランスファーベクターを切断する工程、
(e)工程(c)で切り出された機能的配置を、工程(d)で切断された前記第二のベクターの増殖部位へとライゲーションし、それにより前記第一のトランスファーベクターの増殖モジュールと、前記第一及び第二のベクターの両方の発現カセットとを有する第三のトランスファーベクターを作製する工程、及び
(f)複数の発現カセットを有するトランスファーベクターを集合させるために、工程(a)から工程(e)を任意選択で反復する工程、
を含む、複数遺伝子発現カセットの作製方法。
【請求項23】
(a)請求項22記載の複数遺伝子発現カセットを作製する工程、及び
(b)前記遺伝子を同時に発現することができる宿主細胞へと前記複数遺伝子発現カセットを導入する工程、
を含む、in vitroでの多タンパク質複合体の製造方法。
【請求項24】
(a)請求項22記載の複数遺伝子発現カセットを作製する工程、及び
(b)前記遺伝子を同時に発現する動物へと前記複数遺伝子発現カセットを導入する工程、
を含む、in vivoでの多タンパク質複合体の製造方法。
【請求項25】
遺伝子治療用の複数遺伝子導入ビヒクルを含む薬剤を調製するための、請求項1乃至8のいずれか一項記載のポリヌクレオチド、及び/又は請求項9乃至17のいずれか一項記載のベクターの使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公表番号】特表2007−527722(P2007−527722A)
【公表日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−502200(P2007−502200)
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【国際出願番号】PCT/EP2004/013381
【国際公開番号】WO2005/085456
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(505357971)
【Fターム(参考)】