多光軸光電式安全装置
【課題】同一のバス上にライトカーテンの投受光ユニット等を接続可能とし、省配線を図る。
【解決手段】投光部の投光側通信回路及び受光部の受光側通信回路は、共通のバスに接続してデータ通信可能に構成している。多光軸光電式安全装置は、一の投光部に対して一の受光部を関連付けるための設定手段と、光軸の入光/遮光状態に基づいて、安全信号を生成する安全信号生成手段と、安全信号生成手段で生成された安全信号を出力するための出力手段とを備え、投光部は設定手段で関連付けられた受光部との間で光軸を構成し、共通バスを介して所定のタイミングで投光/受光を行い安全信号を出力可能に構成している。これによって、投光部及び受光部を接続するバスを共通化して配線を簡素化できる。
【解決手段】投光部の投光側通信回路及び受光部の受光側通信回路は、共通のバスに接続してデータ通信可能に構成している。多光軸光電式安全装置は、一の投光部に対して一の受光部を関連付けるための設定手段と、光軸の入光/遮光状態に基づいて、安全信号を生成する安全信号生成手段と、安全信号生成手段で生成された安全信号を出力するための出力手段とを備え、投光部は設定手段で関連付けられた受光部との間で光軸を構成し、共通バスを介して所定のタイミングで投光/受光を行い安全信号を出力可能に構成している。これによって、投光部及び受光部を接続するバスを共通化して配線を簡素化できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多光軸光電センサを含む多光軸光電式安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光電センサは、光電スイッチともいわれ、検出領域に検出対象物があるか否かを検出することができる。この光電センサを複数使用して多光軸とした多光軸光電センサは、投光ユニットと受光ユニットとを対にして、プレス機や折り曲げ機等の危険源が存在する装置近傍に配置されて、作業者の安全を守るために多光軸光電式安全装置として用いられる。この多光軸光電式安全装置は、一列に数多くの投光素子を配置した投光ユニットと、投光素子と同じ数の受光素子を一列に配置した受光ユニットとを含み、これら投光ユニットと受光ユニット(以下まとめて「投受光ユニット」と呼ぶことがある。)でライトカーテンつまり保護バリアを形成して、この保護バリアの検出領域に遮光物が侵入すると、安全信号で危険を報知してプレス機や折り曲げ機等の危険源の動作を強制的に停止させる(例えば特許文献1等参照)。
【特許文献1】特許第3465263号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来、複数の投受光ユニットを使用して安全システムを構築する場合は、投光ユニット同士、受光ユニット同士を個別のバス上に設けるべく、それぞれ専用のケーブルで個々に接続する必要があった。一般には、いずれかのユニットをマスターユニットとし、マスターユニットとサブユニットとを直列接続線で接続する。また投光ユニットと受光ユニットとの間で投受光のタイミングの同期をとる必要があり、このための同期通信線も投光ユニット用バスと受光ユニット用バスとの間で必要となる。
【0004】
さらに、光軸の相互干渉を防止するため、干渉防止線も必要となる。仮に各光軸が無秩序に発光すると、光学的に分離されていない他のライトカーテンの受光ユニットに光が入光するおそれが生じる。この結果、人体の一部が検出領域に侵入してライトカーテンの一部光軸を遮光したとしても、他のライトカーテンの光により遮光状態とならず、結果的に制御対象装置が停止しない等の影響が出る可能性がある。このため、ライトカーテンの構築において干渉防止機能は非常に重要な機能であり、投光タイミングを管理するため、干渉防止線が要求されていた。
【0005】
このように、独立した3種の専用ラインが必要となり、配線が面倒となっていた。特に、使用するユニット数が多くなるほど、この手間は増大する。加えて、投光ユニット、受光ユニット以外に、非常停止スイッチやドアスイッチ、動作表示灯等、他の機器を安全システムに接続したい場合もあり、このような機器を接続するための配線がさらに安全システムを複雑化させる一因となっていた。
【0006】
本発明は、従来のこのような問題点を解決するためになされたものである。本発明の主な目的は、投光ユニット、受光ユニットを意識することなく、同一のバス上に自由に接続可能で配線を簡素化し得る多光軸光電式安全装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の側面に係る多光軸光電式安全装置は、光を投光するための複数の投光素子を有する一以上の投光部と、投光部と対向するように配置され、投光部から投光された光を受光するための複数の受光素子を有する一以上の受光部と、投光部と受光部との間で構成される複数の光軸で検出領域を構成し、光軸の入光/遮光状態に基づいて生成された安全信号を外部に出力可能なコントローラ部とを備える多光軸光電式安全装置であって、投光部は、投光側通信回路を備えており、受光部は、受光側通信回路を備えており、投光側通信回路及び受光側通信回路は、共通のバスに接続してデータ通信可能に構成してなり、一の投光部に対して一の受光部を関連付けるための設定手段と、光軸の入光/遮光状態に基づいて、安全信号を生成する安全信号生成手段と、安全信号生成手段で生成された安全信号を出力するための出力手段とを備え、投光部は設定手段で関連付けられた受光部との間で光軸を構成し、共通バスを介して所定のタイミングで投光/受光を行い安全信号を出力可能に構成している。これによって、投光部及び受光部を接続するバスを共通化して配線を簡素化できる。また、共通化されたバス上に接続された一以上の投光部及び受光部のペアリングを、設定手段で割り当てることにより、従来のような専用線を必要とせずに対応する投光部と受光部の組み合わせを正しく認識、管理でき、これらを正しく同期させて動作させることが可能となる。
【0008】
また、本発明の第2の側面に係る多光軸光電式安全装置は、光を投光するための複数の投光素子を有する第1及び第2の投光部と、投光部と対向するように配置され、投光部から投光された光を受光するための複数の受光素子を有する第1及び第2の受光部と、一の投光部と一の受光部との間で構成される複数の光軸で検出領域を構成し、光軸の入光/遮光状態に基づいて生成された安全信号を外部に出力可能なコントローラ部とを備える多光軸光電式安全装置であって、投光部は、投光側通信回路を備えており、受光部は、受光側通信回路を備えており、投光側通信回路及び受光側通信回路は、共通のバスに接続してデータ通信可能に構成してなり、一の投光部に対して一の受光部を関連付けるための設定手段と、設定手段により設定された第1及び第2の投光部を異なるタイミングで投光させるための投光タイミング制御手段と、光軸の入光/遮光状態に基づいて、安全信号を生成する安全信号生成手段と、安全信号生成手段で生成された安全信号を出力するための出力手段とを備え、投光部は設定手段で関連付けられた受光部との間で光軸を構成し、共通バスを介して投光タイミング制御手段で生成される所定のタイミングで投光/受光を行い、安全信号生成手段で生成された安全信号を出手段から出力可能に構成している。これによって、投光部及び受光部を接続するバスを共通化して配線を簡素化できる。また、共通化されたバス上に接続された一以上の投光部及び受光部のペアリングを、設定手段で割り当てることにより、従来のような専用線を必要とせずに対応する投光部と受光部の組み合わせを正しく認識、管理でき、これらを正しく同期させて動作させることが可能となる。また共通バスで接続された投光部及び受光部が投光/受光を実行するタイミングが投光タイミング制御手段で管理されるので、光軸の相互干渉を防止することができる。
【0009】
さらに、本発明の第3の側面に係る多光軸光電式安全装置はさらに、検出領域を複数指定可能とすると共に、安全信号を複数として検出領域毎に生成し、各検出領域に属する光軸を割り当てるための検出領域設定部を備え、光軸の入光/遮光状態に基づいて各検出領域で安全信号を生成し、出力手段が各安全信号を出力可能に構成している。これによって、安全信号を複数化でき、さらにどの光軸が遮光された場合にどの安全信号を停止するといった出力のグループ化を行うことができる。
【0010】
さらにまた、本発明の第4の側面に係る多光軸光電式安全装置は、コントローラ部が、共通バスを介して多光軸光電式安全装置の断線管理を行う。これによって、断線管理も共通バスを介して一元的に行うことができるので、多光軸光電式安全装置の信頼性を高めることができる。
【0011】
さらにまた、本発明の第5の側面に係る多光軸光電式安全装置は、投光側通信回路及び/又は受光側通信回路は、共通バスを介して光軸毎の入光/遮光情報を含むデータをコントローラ部に送信可能に構成している。これによって、光軸毎の情報を共通バスを介してコントローラ部で一元的に管理でき、省配線で詳細な情報の収集が可能となる。
【0012】
さらにまた、本発明の第6の側面に係る多光軸光電式安全装置は、投光部同士又は受光部同士の間に、干渉防止用の渡り線を接続可能に構成している。これによって、他のユニットとの間で光軸の干渉防止が用意に実現できる。また、投光部や受光部にマスター/スレーブの設定は不要にできる。
【0013】
さらにまた、本発明の第7の側面に係る多光軸光電式安全装置は、投光側通信回路及び受光側通信回路のデータ通信が、通信時間が保証された通信制御方式に従い行われる。これによって、通信時間が保証され検出の時間遅れなく安全性が確保される。
【0014】
さらにまた、本発明の第8の側面に係る多光軸光電式安全装置はさらに、共通バス上に接続された、検出領域と関連付けられた動作表示灯、ミューティングランプ、リモートI/Oモジュールの少なくともいずれかを備え、コントローラ部が共通バスを介して、動作表示灯、ミューティングランプ、リモートI/Oモジュールの少なくともいずれかの動作制御を行う。これによって、動作表示灯やミューティングランプ、リモートI/Oモジュール等も個別の配線を行うことなく共通バス上に接続できるので、省配線及び設置作業の簡素化が実現できる。
【0015】
さらにまた、本発明の第9の側面に係る多光軸光電式安全装置はさらに、共通バス上に接続された非常停止スイッチを備える。これによって、非常停止スイッチも個別の配線を行うことなく共通バス上に接続できるので、省配線及び設置作業の簡素化が実現できる。
【0016】
さらにまた、本発明の第10の側面に係る多光軸光電式安全装置は、多光軸光電式安全装置は、安全信号を出力する安全機能を一時的に無効化する無効化機能を備え、設定手段は、1以上の光軸の入光/遮光状態と、1以上の光軸に適用される無効化機能とを関連付け可能であり、コントローラ部が、各光軸の入光/遮光状態、及び無効化機能の適用を管理するよう構成されている。これによって、光軸毎の入光/遮光状態及び無効化機能の管理も、共通バスを介して一元的に行うことができるので、省配線のシステムで高度な機能を実現できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の多光軸光電式安全装置によれば、投光部、受光部を接続するバスラインを一の共通バスに統合したことで、投光部、受光部を別々に配線する必要がなく、省配線が可能となる。さらに他の機器も接続可能とすることで、これらの配線も極めて簡素化でき、システムの構築や変更が容易に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための多光軸光電式安全装置を例示するものであって、本発明は多光軸光電式安全装置を以下のものに特定しない。特に本明細書は、特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
【0019】
なお本発明において多光軸光電式安全装置は、光電効果を応用したすべての非接触検出器を包含するが、典型的には検出する検出対象物自体の反射、輻射あるいは遮光によって生ずる受光量の大小によって、対象の有無、大小あるいは明暗等を検知し、接点あるいは無接点のスイッチング出力を出力する狭義の意味の光電形近接スイッチである。以下、光電形近接スイッチとして半導体開閉素子を備え、可視、不可視光線の反射又は遮光のいずれかによって物体を検出する近接スイッチを利用する例について説明する。
【0020】
図1に、本発明の一実施の形態に係る多光軸光電式安全装置のブロック図を示す。この図に示す多光軸光電式安全装置100は、一対の投光部10と受光部20と、これらを制御するコントローラ部30とを備える。投光部10は、検出領域に対して光を投光する投光素子11を一列に多く配置した投光ユニットであり、受光部20は、投光素子11と同数の受光素子21を一列に配置した受光ユニットである。これらの投受光ユニットは、ユニットの一面に投受光素子を配置する他、ユニットの両側等2面以上に配置することもできる。また投受光素子を一列に配置するのみならず、2列以上に配置することもできる。
【0021】
多光軸光電センサを構成する投受光ユニットで投光素子11と受光素子21で光軸を構成し、複数の光軸でライトカーテンつまり保護バリアを形成して、この保護バリア内の所望の領域に検出領域を設定する。設定された検出領域毎に安全信号が生成される。すなわち、検出領域に遮光物(ワーク)が侵入し、いずれかの光軸が遮光されると、コントローラ部30は設定に従って安全信号が生成され、制御対象物の動作を強制的に停止させるよう制御する。なお、光軸の入光/遮光状態に基づいて安全信号を生成する方法としては、投光状態から遮光状態に切り替わったことを検出する方式の他、遮光状態から投光状態に切り替わったことを検出する方式とすることも可能であることはいうまでもない。
(投光ユニット)
【0022】
投光部10は、各投光素子11毎に投光回路12を設けており、各投光回路12を投光制御回路14で制御する。さらに投光部10は投光側通信回路を備えており、コントローラ部30と必要なデータ通信を行う。
【0023】
図1に示す投光部10を構成する投光ユニットは、発光ダイオード(LED)、LD(レーザダイオード)等の投光素子11を個々に駆動するN個の投光回路12と、これらの投光回路12を制御する投光制御回路14と、コントローラ部30との間の通信を制御する投光側通信回路16とを含む。投光制御回路14は、コントローラ部30からの指示を受けて、N個の投光回路12を順次起動させることにより、一番目の光軸の投光素子11からN番目の投光素子11まで次々と点灯させる。これにより、投光ユニットは、受光ユニットに向けて、所定の投光タイミングで一番目の光軸からN番目の光軸まで、順次、光ビームを発射する。
【0024】
投光ユニットは、一方向に延長された細長いケースを有し、このケースの中に、その長手方向に沿って一列にN個の投光素子11がほぼ等間隔に配置されている。隣接する投光素子11間の間隔は、特に限定するものではないが、例えば20mmである。
(受光ユニット)
【0025】
一方受光部20も、受光素子21毎に受光回路22を設けており、各受光回路22に接続された受光制御回路24がこれらを個別に制御する。受光制御回路24は、各受光回路22で受光された受光データを保持するためのメモリとして受光データレジスタ25と、受光データレジスタ25で保持された受光データに従って判定を行うための判定回路27を備える。受光回路22から出力された受光量に相当する電気信号を受光制御回路24の増幅回路で増幅し、増幅回路の出力電圧をA/D変換器でデジタル値に変換して受光データレジスタ25に保持する。さらに受光部20も、コントローラ部30と通信を行うための受光側通信回路26を備える。
【0026】
図1に示す受光部20を構成する受光ユニットは、フォトダイオード、フォトトランジスタ、PSD(位置検出用フォトダイオード)等の受光素子21を個々に駆動するN個の受光回路22と、これらの受光回路22を制御する受光制御回路24と、コントローラ部30との間の通信を制御する受光側通信回路26とを含む。受光制御回路24は、コントローラ部30からの制御信号を受けて、投光ユニットから次々と照射される光ビームを、対応する受光素子21で受光できるように、対応する投光回路12の動作に同期して、一番目の光軸の受光回路22からN番目の光軸の受光回路22まで、順次、有効化する。これによってほぼ等間隔で互いに平行な複数の光軸がエリア状に形成され、ライトカーテンを構成する。
(コントローラ部30)
【0027】
コントローラ部30は、投光部10、受光部20とデータ通信を行うためのコントローラ側通信回路31と、コントローラ側通信回路31と接続されて各種制御を行うためのコントローラ制御回路32とを備える。コントローラ制御回路32は、制御手段を構成する。またコントローラ制御回路32は、ティーチングに関する処理を行うためのティーチング入力回路33、ワーク検出センサからの入力を行うためのワーク検出センサ入力回路34、各種設定値を保持するためのメモリ35、判定結果に基づき安全信号を生成し出力するための出力回路36、判定結果や設定内容等を表示したり、あるいは状態表示のモニタやユーザインタフェース用の表示部37、検出領域の指定等を行うための設定部38等を備える。コントローラ部30には、PLCが利用できる。PLCには、イネーブルスイッチやミュートセンサ、手動動作信号等が接続可能である。なおコントローラ部30は、図1の例では投受光ユニットと別部材としているが、投光ユニット又は受光ユニット内に内蔵することも可能である。
【0028】
この投受光ユニットを、工作機械、パンチ機、プレス機、鋳造機、自動制御機等の危険源となり得る装置を含む作業エリアの境界に設置してコントローラ部30と接続して制御駆動されるライトカーテンを構成する。そしてオペレータの指先等身体の一部が作業エリアに侵入すると、これを多光軸光電センサで検知して、コントローラ部30が直ちに制御対象装置の動作を停止する及び/又は警報を発することにより、オペレータや作業員を保護する。ここでは、制御対象装置の一例としてプレス機を用いる。
【0029】
この多光軸光電式安全装置は、安全信号を多出力化し、さらに光軸毎の管理を可能として、複数の領域を割り当て、各領域毎に独立した安全信号を出力できる。従来のライトカーテンは1ユニット1出力であり、複数のユニットを連結して1ユニットして扱うとしても、その出力は1出力でしかなかった。この構成では、1ユニットのライトカーテンを複数の検出領域に分割し、それぞれに応じた安全信号を出力することができない。これに対して、本実施の形態に係る多光軸光電式安全装置は、一の多光軸センサを使用して、これに含まれる複数の光軸を独立して複数の出力に割り当てることにより、あたかも複数の多光軸光電式安全装置を使用する安全システムと同様の効果を得ることができる。特に一の多光軸光電式安全装置によって複数の出力を制御可能とすることにより、省配線による設計の容易さ及び低コストで安全システムの構築が実現できる。これにより、隣り合う複数台の装置に対して、作業者と装置が対峙する面に一本、或いは直列に増設された複数の多光軸光電センサで全域を保護できるように設置し、各装置毎に遮光する光軸をグループ化し、そのグループ毎で安全信号の出力を個別に設けることが可能になる。従来は制御対象装置毎に一本ずつ多光軸光電センサを設置し、各々で安全信号の出力を設けていたが、本実施例によって一本の多光軸光電センサで可能になるため、省配線とコストダウン及びセンサの光軸数に依存することなく、自由に保護するエリアをユーザが選択することが可能になる。
(出力回路36)
【0030】
出力回路36は、安全信号としてOSSD又はFSDを出力する。OSSD(output signal switching device)は、プレス機等の制御対象装置の制御システムに接続したESPEの構成部品であって、制御対象装置の正常運転中、検知器の作動に伴いOFF状態となるものである。なおESPE(electro-sensitive protective equipment)とは、人体保護又は物体検知のために共同して働く一群の機器及び/又は部品であって、少なくとも検出器、制御監視機器、及びOSSDを持つものをいう。またFSD(final switching device)は、制御対象装置の安全関連制御システムの一部品であって、OSSDがOFF状態となったとき、MPCEの回路を遮断するものである。なおMPCE(machine primary control element)とは、制御対象装置の通常運転を直接制御し電気的に駆動される要素で、制御対象装置の運転を起動し又は停止する際、時間的に最後に動作する要素である。このように安全信号は、制御対象装置の運転を停止する動作停止信号として機能する。
【0031】
図1の例では、出力回路36は複数の安全信号を出力できる。複数の安全信号を出力するためには、物理的に複数の出力端子を設けて、各々が安全信号を出力可能に構成する他、一の出力端子が複数の安全信号を出力可能とする構成も含む。一の出力端子で複数の安全信号を出力する手段としては、時分割による多重化等の既知の、あるいは将来開発される手法が適宜利用できる。このように、一の出力端子が複数の安全信号を出力可能とする構成も、本明細書においては複数の出力部として表現する。
(投受光ユニットの連結)
【0032】
多光軸光電センサを構成する投受光ユニットは、通信機能を備えており、これらを複数連結して接続可能である。図2に、投受光ユニットをケーブル40で接続する状態を示す。ケーブル40は通信線又は信号線である。またケーブル40に電源線を含めてもよい。さらにケーブル40に含まれる電源線を使用せずに分離させるよう、電源線の使用を切り替え可能に構成することもできる。これにより、ユーザの使用状況に応じて電源線を切り離すことが可能となり、絶縁や基準電圧の問題から解放され、システム構築上有利となる。
【0033】
投光ユニット又は受光ユニットにはケーブル40を接続するためのコネクタを備えており、ケーブル40を介して複数の投受光ユニットを数珠繋ぎに連結できる。コネクタは投受光ユニットの両端部に設けられ、2つのコネクタのいずれの側に接続してもよい。またコネクタは、ケーブルを使用せずコネクタ同士を機械的に接合してユニットを接続するよう構成することもできる。
【0034】
図3に、共通バスを介してコントローラ部30を複数の投受光ユニットと接続して安全システムを構成する例を示す。このように数珠繋ぎされたケーブル40の一部は、コントローラ部30に接続される。コントローラ部30は、連結された投受光ユニットをあたかも一本の投受光ユニットのように制御できる。これにより、各投受光ユニットを個別に配線する必要が無く、安全システムの構築に際して省配線が実現できる。
【0035】
また、共通バス上には投受光ユニットのみならず、非常停止スイッチ42やドアスイッチ44、動作表示灯46、マルチ分岐、マルチドロップ接続等のリモートI/Oモジュール等、他の機器を接続することもできる。これらの機器は、通信機能が必要な場合はバスライン上の通信規格と共通の規格とする。また、バスラインのT字分岐を行ってもよく、また直列増設の形態のようにバスラインに接続したユニットに対し、他のユニットをデイジーチェーン状に接続することもできる。このように複数の機器を同一のバスライン上に接続しコントローラ部30で制御することにより、すべての安全機器の情報をコントローラ部30で一元的に管理、制御することが可能となる。
【0036】
共通バス上の通信方式は、RS−485等の差動通信、オプティカルリンク等の耐ノイズ性に強い通信形態が望ましい。RS485では複数の終端を許容する多重端末(マルチドロップ)方式が利用できる。またケーブルで数珠繋ぎした投受光ユニットの共通バスをループ状に接続することで、断線検出等より高度な検出、制御を行うことも可能となる。
【0037】
またバスラインは、例えばプレス機の周囲にライトカーテンを設ける場合、複数のプレス機に跨って配線される可能性が高いので、各ユニットのコネクタやケーブル40等の送受信部分は、絶縁タイプの送受信機能を備えることが望ましい。これによって各プレス機間の電位差及びバスラインに誘起される電気的ノイズの影響を受けにくくなり、工場設置時等フィールドにおける耐ノイズ性の向上に効果がある。
(通信制御方法)
【0038】
また、バスラインの通信制御方法は種々の方式が利用できるが、一定の応答速度の確保できる方式が好ましい。特にライトカーテンでは、人体が検出領域に侵入した場合、速やかに制御対象の装置を停止させる必要があるため、光軸が遮光されてから安全信号を出力するまでの応答速度が非常に重要となる。よって、例えばバス上に複数の機器が接続されたイーサネット(登録商標)等で採用されているCSMA/CD(Carrier Sense Multiple Access with Collision Detection)方式のような、複数アクセスを許可し、その結果通信時間の保証が得られない方式は適切でない。適切な通信制御方式としては、例えばポーリングセレクティング通信等、親局が全体の通信管理を行い、親局よりポーリング信号と呼ばれる回線利用権を各子局に送り、ポーリング信号を受け取った装置が他の装置との通信を行う手順が挙げられる。この方式では、データの送信前に共通バスに対して先に呼びかけを行い、他のユニット等が共通バスを使用していないことを確認してから、共通バスを専有してデータ送信を開始する。この場合、コントローラ部30が親局に該当し、ライトカーテンや非常停止ボタン等のバス上に接続された各装置が子局に該当する。また、独自のネットワークではなく、通信の遅延時間が規定された汎用のネットワークを使用することも可能である。このようなネットワークとしては、例えばCANの拡張タイプであり安全性を重視した時間同期(タイム・トリガ)を有するTTCAN(Time Triggered CAN)、車載用エアバック等の安全関連に使用するネットワークとして知られるByteflight、FlexRay等が利用できる。またアクセス方式はFTDMA(flexible time division multiple access)等が利用できる。このように、TDM(Time Division Multiplexing)により各ユニットにネットワークへのアクセス権を時分割して与え、各ユニットがバスラインへ情報を送出するまでの遅延時間を一定に保てるような通信制御手段を持つことが望ましい。これによって通信時間の保証が得られ、一定の応答速度を確保して安全性を高められる。通信制御は、共通バス上のコントローラ部30が受け持つ。
【0039】
上述のように、コントローラ部30は、共通バス上の通信を管理する親局としての機能を持たせることが望ましい。これによって、共通バスに接続されたいずれかのユニットで電源が落ちる等の問題が生じても、コントローラ部30によってそれ以外のユニットとの間の通信が維持できる。さらにコントローラ部30も一台に限られず、共通バス上に2台以上を接続することも可能である。コントローラ部30が共通バス上に接続された複数のユニットを区別して通信を行うために、各ユニットには相互を区別する識別情報としてID情報が付与される。各ユニットに対し割り振られたID情報に基づいて、コントローラ部30が通信のタイミングを割り振る。
(識別情報の付与)
【0040】
ID情報の設定の方法としては、例えば各ユニット毎にDIPスイッチやロータリースイッチ等を設け、個別のIDを手動で設定する。またハンディコンソール等の外部入力手段を接続して設定したり、各ユニットのシリアル番号等、固定して割り振られた固有の情報を利用する方法等も利用できる。また、このような手動設定の手間を省くために、コントローラ部30が共通バス上に接続された各接続機器を認識して、自動でIDを付与することもできる。例えば電源投入時に、コントローラ部30は起動順あるいは接続順にすべての接続機器に対してID情報を自動的に付与する。この場合は、電源投入毎に各ユニットのID情報が再度付与される。このようにして同一ライン上に接続された投受光ユニット等の接続機器を、コントローラ部30は各機器に付与されたID情報に基づいて区別できる。ID情報は、ID番号やID記号等とできる。コントローラ部30から各ユニットへの命令は、共通バスを介してパケットデータ形式で送信できる。パケットデータは、命令の送信先のID情報と、指示内容とを含む。
(同期)
【0041】
さらに一本の共通バスで制御することにより、複数の投受光ユニットの投受光の動作タイミングをずらして相互干渉の防止を図ることも可能となる。ライトカーテンの場合は、投光、受光という光を使った入光/遮光状態を検出しているため、他のユニットから投光された光が、本来関連のない受光ユニットにも入光し、安全信号が誤動作を引き起こすという相互干渉が発生し得る。相互干渉を防止するためには、光軸を光学的に分離する方法と、投光のタイミングをずらして時間的に分離する方法がある。またその他の方法として、相互干渉の有無を検出し、干渉した場合には一定時間経過後に再履行する方法もあるが、一定時間を空けることにより相互干渉が発生した場合には応答速度が遅くなる可能性があり、即応性の観点からは適切でない。
【0042】
これに対して、本実施例のように各ユニットを同一バス上に接続し、コントローラ部が通信制御する方式では、コントローラ部より各ユニットの投光タイミングを制御することが容易に行える。具体的には、各ユニット毎に通信タイミングを割り振る際に、投受光動差に必要な時間を割り振り、この通信に割り当てられた時間内に各光軸の投光/受光動作を行う。ここで投受光動作に必要な要処理時間はユニットの光軸数によって異なり、光軸が多くなる程時間も長くなる。このように予め各ユニット毎に投受光の動作時間を割り当てることにより、このバス上に接続されたライトカーテン同士では投光タイミングが重なることが無くなり、相互干渉を解消できる。このような時間的な分離を自動的を設定する干渉防止機能を、コントローラ部30に備えることができる。さらに、ライトカーテンの設置後に投光部同士、受光部同士の間に渡り線を設けることにより、より確実な干渉防止が容易に実現できる。渡り線は、複数のバス間に接続されたライトカーテンの相互干渉を防止する目的で、複数のバス間を接続するラインであり、相互干渉防止用の信号を伝送する。例えば、隣接する装置同士のGNDレベルが異なる場合等、予期せぬノイズ電流を防止する目的で、好ましくは絶縁タイプ変換器を使用して電気的に絶縁し、信号のみを伝送する。
【0043】
このような干渉防止機能は、安全信号の出力を割り当てたグループの範囲内で実行することができる。すなわち、同一グループ内では自動的に干渉防止機能が働くので、複数のグループを使用する場合は、これらの間で干渉が生じないように、空間的な分離を図る。例えば、図4に示すようにグループA、B、Cの3つのグループを設定し、各グループに同じ光軸数の4組の投受光ユニット1〜4が含まれる場合を考える。この場合、各グループでユニット1〜4は同じタイミングで順次ユニットを切り替えて投受光される。すなわち、ユニットA1、B1、C1はそれぞれ同じタイミングで投受光され、またユニットA2、B2、C2、さらにユニットA3、B3、C3、さらにまたユニットA4、B4、C4もそれぞれ同じタイミングで投受光される。このため、各グループの同じ番号のユニットが干渉しないように、これらのユニットを空間的に分離する。ユニット間の空間的な分離方法としては、例えば投受光を構成する光軸の光の進行方向が逆向きとなるように、投光ユニットと受光ユニットの配置関係を逆転させたり、ユニットの間に光を遮断する遮蔽板Sを配置したり、ユニットを離間して配置する等の既知の方法を検討すればよい。このように、時間的分離と空間的分離を併用することで、多数のユニットや光軸を使用する安全システムにおいても、容易にかつ確実に相互干渉の防止を図ることができる。
(ユニットのダウン、再起動へのコントローラ部の対応)
【0044】
さらに、同一の共通バス上に接続された接続機器は、一部が停止しても他の機器の動作に影響を与えないように動作させることが好ましい。例えば、一部のライトカーテンで電源が切断される場合を考える。複数のライトカーテンが同一バス上に接続されている場合において、通常動作時はこれら複数のライトカーテンもコントローラ部に通信タイミング及び投光タイミングを制御されて動作している。このうち1台のライトカーテンの電源がシャットダウンした場合、電源が遮断したライトカーテンは動作が停止し、コントローラ部との通信も途絶える。コントローラ部は一のライトカーテンからの通信が途絶えた場合、そのライトカーテンはシステムより切り離されたと判断し、この投受光ユニットに割り当て有られていた通信タイミング/投光タイミングをそのままブランクとして維持する。あるいは、その次のタイミングに位置するユニットの通信/投光タイミングを繰り上げるよう、再割り当てを行う。このように、コントローラ部で通信/投光タイミングの割り当てを制御する結果、一部のユニットが停止したとしても他のユニットの制御は継続され、システム全体の停止を回避できる。
【0045】
逆に、共通バス上に接続されていたものの、通電していなかったユニットが動作を開始した場合にも、適切な対応が可能である。コントローラ部は、常時バスの通信を監視し、新たにユニットが追加された場合には、通信タイミングの一番終わりのタイミングに、このユニットの通信タイミングを割り当てる。もし通信タイミングに空きが無く、タイミングを割り当てをできない場合には、このユニットを通信エラーによりロックアウトさせる。これにより、ユニットの追加にも適切に対応できる。
【0046】
一方、バスラインの物理的な障害により、ユニットがコントローラ部との通信が確立できない場合、このユニットは通信エラーと認識しロックアウト状態になる。これにより、動作中にケーブルの切断等が発生した場合にはフェイルセーフ側に動作可能である。
【0047】
また各ユニットの通信は、上述の通り各光軸が投受光を行っている間はバスを占有しており、このタイミングで光軸毎の入光/遮光情報をバス上に送信する。これにより、コントローラ部や他のユニットは、該当する光軸の入光/遮光情報を得ることができ、これに基づいて光軸毎に出力をグループ化することができる。
(出力のグループ化)
【0048】
安全信号のグループ化には、ユニット同士のグループ化と、光軸単位のグループ化があり、本実施例ではいずれも可能である。以下、ユニット同士のグループ化の前提として、まず投受光ユニットの関連付けについて説明する。
【0049】
従来、複数の投受光ユニットを増設する場合は、投光ユニット同士、あるいは受光ユニット同士を直列に増設していた。例えば親機側の投光ユニットの上部よりケーブルを引き出し、投光ユニットの子機側に接続する。また同様に、受光ユニットも親機の上部よりケーブルを引き出し、子機側に配線する必要があった。また現在の設定が親機か子機かの確認も容易でなく、このような区別が面倒であった。さらに制御対象の装置にこれらの投受光ユニットを設置する場合、ケーブル取り回しラインをライトカーテン下部と上部に設ける必要がある等、設置上の制約を受ける場合もあった。
【0050】
これに対し、本実施例では一つの共通バス上に投光ユニット、受光ユニットを問わず取り付け可能であり、配線の自由度が増加する。従来のように直列接続を行う場合に子機の受光ユニットを親機の受光ユニットに直接接続しなければならないといった接続順序の制約がなく、例えば直列増設の親機と子機の順番を入れ替えたり、受光ユニットに投光ユニットを接続する等、自由な接続形態を選択できる。またライトカーテンの上部より共通バスを引き出せるようにしておけば、図5に示すように投受光ユニットをL字状に取り付ける際にも使い勝手がよい。さらにコントローラ部からマルチ分岐が可能な共通バス上に、投光ユニット、受光ユニットの他、動作表示灯やミューティングランプ、非常停止スイッチ、ドアスイッチといった他の安全機器の入出力も接続でき、これによって省配線化を計ることができる。
(関連付けの設定)
【0051】
このように共通のバスライン上に複数の投受光ユニットを混在させる場合、対となる投光ユニットと受光ユニットの関連付け又はペアリングを設定する必要がある。ユニットの対をユーザが指定することで、共通バス上に接続された複数の機器をコントローラ部は正しく認識でき制御できる。この設定は、投受光ユニットの本体に設定スイッチを備える方法や、コンピュータ等の外部機器と接続して設定する方法等がある。またコントローラ部のプログラミングによって関連付けを行うこともできる。また、関連付けをユニット単位でなく光軸単位で行うこともできる。光軸単位での関連付けを可能とすることで、例えば長さや光軸数の異なる投光ユニット、受光ユニットであっても、これらを組み合わせてトータルの光軸数が一致するように構成して正しく関連付けを使用できる。
(関連付けの手順の詳細)
【0052】
上記のような関連付け作業は、通常は安全システムの制御対象の装置への設置時や、メンテナンス等でユニットの取り替えを実施したとき等に行われる。なお不用意な設定変更は、安全システムの信頼性を損ねるおそれがあるため、誤って設定が変更されることのないよう、安易に設定変更できないような構成とすることが好ましい(詳細は後述)。また、共通バスに接続されたユニットの構成を、関連付け設定用のユーザインターフェースで確認できることが好ましい。これによって、関連付け作業に先立ち、ユーザは関連付けの必要なユニットを確認できる。
(外部入力手段による設定方法)
【0053】
投光ユニットと受光ユニットの関連付けを設定する方法の一例として、外部入力手段を使用する方法について説明する。ここでは、外部入力手段として、コンピュータ等の汎用機器にインストールされた設定プログラムを利用し、コンピュータとコントローラ部とを何らかの方法で接続してデータのやりとりを行う。
【0054】
まず共通バス上に接続された安全機器の数と種類を決定し、各ユニットにID情報を割り当てる。例えば投受光ユニットの接続数や各ユニットの光軸数、非常停止ボタンの種別や接続位置等が確認される。例えば、コントローラ部30とコンピュータをUSB等の汎用の通信手段もしくはメモリカード等の媒体を使用してデータをやりとりする。コントローラ部30のコントローラ制御回路36より、これに接続されたライトカーテンを構成する投受光ユニットの光軸数/ユニット数/最小検出体等の設定データをコンピュータ側に取り込んで、基本情報を設定し、その上で設定項目を具体的に設定する。ここでは、各安全機器の属性及び関連付けを設定する。例えば、ユーザはコンピュータ上の設定プログラムにより、1ユニット目の1光軸目から16光軸までのどこかが遮光されたら出力1−A、1−BをOFFさせる、1ユニット目の15光軸より64光軸までのどこかが遮光されたたら出力2−A、2−BをOFFさせる、1ユニット目の32光軸目から2ユニット目の最終光軸までの合計2光軸が遮光されたら出力3−A、3−BをOFFさせる、といった設定を行う。なおライトカーテンの場合は、出力回路の故障に備えて、1系統の安全信号出力に対し、2本の出力ラインを持たせることが好ましい。設定終了後、各安全機器をコンピュータと接続し、各安全機器に対してID情報等の設定情報を書き込む。例えば、設定プログラムをインストールしたコンピュータと各安全機器とを直接接続し、あるいは共通バスを介して通信を確立し、上記の設定内容を転送する。通信方式としては汎用の通信方式が適宜利用でき、例えばUSBやシリアル接続等の有線接続の他、IrDA等の赤外線通信やBluetooth(登録商標)等の無線接続を利用することもできる。同様にコンピュータをコントローラ部30とも接続し、各安全機器の設定データを送信してコントローラ部30のメモリ等に記憶させ、設定内容を更新させる。そしてコントローラ部30は、設定内容の確認のため共通バス上に接続された安全機器を監視し、設定された設定データとの不一致がないかどうかを判定する。設定との差異が発生した場合にはシステムの異常と判断し、出力をOFFさせる。
【0055】
ただ、コントローラ部自体にこのような設定機能を設けて、ユーザがコントローラ部を操作して設定を行うように構成することも可能である。コントローラ部30のコントローラ制御回路32は設定部38を備えており、設定部38はユーザインターフェースを介して、ライトカーテンのどのエリアにフローティングブランキング等の無効化機能を適用し、どのエリアに通常の安全機能を適用するかの設定情報を受光部20に供給する。設定部38のユーザインターフェースとしては、例えば、スイッチの入力、テンキーによる無効化機能適用エリアの直接的な入力、ティーチング入力等が挙げられる。ユーザは、このユーザインターフェースを用いて無効化機能適用エリアを任意に設定することができる。
【0056】
また、検出領域の設定をティーチング法により行うこともできる。ティーチングはワークを実際に通過させて、その際の入光/遮光状態を記憶させて設定する。コントローラ制御回路32のティーチング入力回路33により、ティーチングの実行が入力されると、ティーチングモードとなって検出領域がティーチング法により設定される。設定された内容は不揮発メモリであるメモリ35に保持される。またティーチングの際、検出領域のグループ化の設定も同時に行う。例えば所定の動作の間に遮光された領域を検出領域のグループ1に指定する。ティーチングの終了後、手動又は自動的に多光軸光電式安全装置は通常動作モードに切り替えられる。
【0057】
さらに、ハンディコンソールによる設定も可能である。各光軸毎に検出領域としてどのグループに属するかを設定し、そのグループ単位で多光軸光電式安全装置側で安全信号を出力する設定とする。
【0058】
上記の設定に際しては、多光軸光電センサの光軸毎の出力をコントローラ部で管理する。具体的には、プログラマブルコントローラの内部リレーと同様に、セーフティPLCのI/Oとして管理する。各光軸毎の入力をユーザが設定するプログラムによってOR回路を組むことで、光軸のグループ化が実現され、そのグループの中のいずれかの光軸が遮光されたという信号を、そのグループと関連付けた安全信号に反映させることができる。関連付けた情報は、コントローラ部30のメモリに記憶される。またこの安全信号は最終的にはプレス機の電源を遮断することを目的とし、直接そのプレス機の電源の遮断する他、遮断を介するコンタクタ等の機器の開閉に利用される。
【0059】
また、上記の設定内容は、安易に設定を変更できると予期しない安全性の低下を招き、事故が発生する可能性があるので、安易に設定変更ができないように管理することが望ましい。具体的には、機械メーカが工場出荷時に設定を行い、その後は設定変更を許可しない場合、もしくはユーザが充分な知識を持った管理者の監督の下に取り付け/設定を行い、設定変更については管理者の指示の基に行う。このようなことを実現する例として、汎用のツールでは書き込みのできないような専用メモリカードを使用する。又はパスワードによる管理や、H/Wキーをコンピュータに接続している時のみ、書き込み可能とする等の方法が適宜利用できる。
(検出領域の指定)
【0060】
以上のようにして投光ユニットと受光ユニットの関連付けがなされ、光軸が確立されると、複数の光軸で平面状の検出領域が形成される。この検出領域は、一のみならず複数を指定可能である。言い換えると、一の大きな検出領域を複数の小領域に分割して、この小領域毎に安全信号を出力するようにグループ化することができる。以下の説明では、分割された小領域を検出領域として説明する。複数の検出領域の指定は、コントローラ部30の設定部38にて行う。検出領域の指定は、検出領域を構成するユニットを単位として行う他、各検出領域に属する光軸を割り当てることもできる。このようにして、各検出領域毎に安全信号が生成され、複数の安全信号が各々出力回路36から出力される。
【0061】
例えば、図6のような配置を考える。この例では、壁面に配置されたA〜Dの4つの作業台で、各々独立した作業を行う。各作業台にプレス機等の危険源が含まれるため、各作業台に作業者の手が入るのを検知してプレス機を停止させるように、各作業台を囲むようにして投受光ユニットを上下一対に配置した多光軸光電センサが各プレス機をコ字状に囲むように配置される。一方で、A〜Dは独立した作業であるため、停止させるのは手の挿入を検出した作業台のみとし、他の台は停止させることなくそのまま作業を継続させたい。このような状態において、従来であれば投受光ユニットの出力が一系統のみであるため、図6に示すように各作業台毎に投受光ユニットで囲むように配置し、各々のセンサの出力で独立した検出を行う必要があった。このような配置では、隣接する作業台の境界に2重に投受光ユニットを配置する必要があり、図6に示すように作業台A、Bの境界で投受光ユニットA1、B1が隣接され、作業台B、Cの境界で投受光ユニットB2、C1が隣接され、作業台C、Dの境界で投受光ユニットC2、D1が隣接される。このように、隣接する作業台が多くなるほど、投受光ユニットの2重に設置する領域が増えて多くのスペースが必要となる。また投受光ユニットの使用数が増えると配線が複雑化し、コストもかかる。さらに隣接する投受光ユニットの影響で動作が不安定になる相互干渉に留意する必要もある。
【0062】
これに対して、本実施の形態に係る多光軸光電センサは、図7に示すように、隣接する領域に投受光ユニットを1列のみ配置する。図7の例では、投受光ユニットE1〜E9を配置し、作業台A、Bの境界には投受光ユニットE3のみ、作業台B、Cの間には投受光ユニットE5のみ、作業台C、Dの間には投受光ユニットE7のみを、それぞれ配置する。そして、検出領域Aとして投受光ユニットE1、E2、E3を指定する。また検出領域Bとして投受光ユニットE3、E4、E5を指定する。同様にして検出領域Cとして投受光ユニットE5、E6、E7を指定し、検出領域Dとして投受光ユニットE7、E8、E9を指定する。
【0063】
このような検出領域の指定は、上述のように設定用プログラムから行う。設定用プログラムは、同じ投受光ユニットを異なる検出領域に含めることが可能である。図8は、図7の投受光ユニットに対してグループ化を行う様子を示す斜視図である。図8に示すように、投受光ユニットE1を構成する投光ユニットE1a及び受光ユニットE1bは、この間の光軸群により平面状の検出領域1を形成している。同様に、投受光ユニットE2を構成する投光ユニットE2a及び受光ユニットE2bは、平面状検出領域2を形成し、さらに投受光ユニットE3を構成する投光ユニットE3a及び受光ユニットE3bは、平面状検出領域3をそれぞれ形成している。そして設定用プログラムは、これら平面状検出領域1、2、3をまとめて、すなわちグループ化して、コ字状の検出領域Aとしている。
【0064】
また一方で、投受光ユニットE4を構成する投光ユニットE4a及び受光ユニットE4bは、この間の光軸群により平面状の検出領域4を形成しており、さらに投受光ユニットE5を構成する投光ユニットE5a及び受光ユニットE5bは、平面状検出領域5を形成している。そして、上記の平面状検出領域3に、平面状検出領域4、5を加えて、グループ化されたコ字状検出領域Bとしている。このように、同じ投受光ユニットを利用して異なるグループを指定することができる。これによって、図6のように複数の投受光ユニットを同じ部位に並べることなく、投受光ユニットを共有することができ、低コスト、省スペース化並びに省配線が実現できる。特に、隣接する領域との境界部分に一の投受光ユニットを配置し、これを隣接する領域で共有することにより、使用する投受光ユニット数を減らしても従来と同様の効果を得られる。しかも投受光ユニットを減らせることで、すっきりした配置とできる。特にセル生産方式のように複数の作業装置が隣接して配置された状態において、壁の部分は左右の隣接するセルで共有できるので、スペース効率も向上し、光軸間の相互干渉も回避できる上、設置コストや管理も削減できる。
【0065】
さらに、各検出領域毎に個別に安全信号を出力可能とする。例えば検出領域Aで遮光が検出され、安全信号が出力されても、それは検出領域Aに含まれるプレス機のみを停止させるに止まり、検出領域B〜Dには影響を与えない。これによって、安全を確保する必要のある部位のみを停止させて、システム全体を停止させることなく、安全性と効率とを両立させることができる。
【0066】
なお、上記の構成においては、隣接する領域に配置された投受光ユニットで遮光が検出された場合は、この投受光ユニットに割り当てられた検出領域でのプレス機が停止されることはいうまでもない。例えば図7の例において投受光ユニットE3で遮光が検出された場合、検出領域A及びBが停止となるが、これは図6の構成と結果において何ら変わらない。
【0067】
また、上記の例では検出領域A〜Dで独立して制御信号を生成しているが、関連性のある領域等では、これらをまとめた検出領域として指定することもできる。例えば検出領域BとCが関連しており、停止時には両者を検出領域B、Cに含まれるプレス機を共に停止させる必要がある場合は、検出領域B+Cとして、投受光ユニットE3、E4、E6、E7を指定し、いずれかの光軸が遮光された場合に検出領域B、Cに含まれるプレス機を共に停止させることができる。
【0068】
さらに上記の例では、検出領域として投受光ユニット単位で指定したが、投受光ユニットに含まれる光軸単位で検出領域を指定することも可能である。例えば、図9として、図7と同じ条件において投受光ユニットE2、E4、E6、E8に変わって、これに相当する長さの投受光ユニットE10を配置する例を考える。そして検出領域Aとして、投受光ユニットE1、E3と、E10の光軸e1、検出領域Bとして投受光ユニットE3、E5とE10の光軸e2、検出領域Cとして投受光ユニットE5、E7とE10の光軸e3、検出領域Dとして投受光ユニットE7、E9とE10の光軸e4のように指定できる。これによって、1本の投受光ユニットを複数の投受光ユニットのようにして指定できる。また逆に上記図7のように、複数本の投受光ユニットを一本の投受光ユニットのようにまとめたり、複数の投受光ユニットを跨った指定を行うことも可能である。図10の例では、図9の投受光ユニットE10に変わって、3本の投受光ユニットE11、E12、E13を組み合わせている。そして図9と同様に、投受光ユニットE1、E3に加えて、投受光ユニットE11の一部の光軸e1でもって検出領域Aを構成し、投受光ユニットE3、E5に加えて投受光ユニットE11の一部の光軸e2’と投受光ユニットE12の一部の光軸e2”とで検出領域Bを構成する等、複数の投受光ユニットに跨った検出領域の指定を行うことができる。
【0069】
また検出領域として、一部が重複した領域を指定する他の例を図11に示す。この図に示すように、2本の細長い投受光ユニットE14、E15を上下に配置し、プレス機A、Bの前面にライトカーテンを配置する例を考える。この投受光ユニットの光軸でプレス機A用の検出領域A1、プレス機B用の検出領域B1のそれぞれ指定する際、検出領域A1、B1が端部で重複するように、一部の光軸を共有することができる。このように、一本の投受光ユニットの複数の投受光ユニットのように分割でき、さらに一部の光軸を共有するような設定も自在である。これにより、より詳細な検出領域の指定が可能となる。
【0070】
また、複数の検出領域について、好ましくは各々動作表示灯を備える。これによって、ユーザは各検出領域の出力状態等を容易に視認できるので、複数の検出領域を指定しても、確認が容易に行える。動作表示灯は、例えば赤色と緑色のLEDにより構成され、正常時に緑のLEDを点灯して赤のLEDを消灯し、異常時には緑のLEDを消灯して赤のLEDを点灯する。動作表示灯は外付けでも、いずれか一のセンサユニットにLED等の出力表示部を設ける方式でもよい。後者の場合は、各検出領域に属するセンサユニットの少なくとも一に、出力表示部を設けたセンサユニットを含め、この出力表示部を機能させる。またすべてのセンサユニットに動作表示灯を設け、検出領域のグループに属するすべてのセンサユニットで出力表示部を機能させてもよい。また、センサユニットの出力部と動作表示灯を兼用させてもよい。
【0071】
なお上記の例では、各安全機器をケーブルによって電気的に接続する場合について説明した。ただ、本明細書において接続とは、典型的には電気的に接続することを意味するものであるが、必ずしも物理的な接続のみを意味するものでなく、無線、有線を問わず、電磁気、音波、赤外線、紫外線、可視光線等を利用した通信も含む。またOEIC(オプトエレクトロニクスインテグレーテッドサーキット)等電気光素子を用いたデータやエネルギーの送受信に見られるように、電気や光をはじめとする圧力、音波、電波、熱等を媒体とする信号データの送受信や各種エネルギーの送受信が可能なように「接続」された状態も本発明にいう接続であるとするものであり、直接接続、間接接続は問わない。さらには、常時接続されている必要はなく、スイッチ回路や切り替え回路にて駆動回路の駆動状況に応じて必要時のみ(例えば電荷、電気、電流が通る時のみ)接続されるように構成してもよい。同様に、光電センサで媒体とする光についても、可視光のみならず赤外線、紫外線等も含めたあらゆる種類の光全般を含む意味で使用する。また複数の接続端子を用意すれば、通信を行わないI/O接続とすることも可能である。
(実施例1)
【0072】
また多光軸光電式安全装置は、各光軸の検知状態に応じて安全機能を切り替え可能な機能を備える。具体的には、特定のワークを検出しても安全機能を働かせないように無効化させる無効化機能を備えており、無効化機能のON/OFFを切り替えることで、必要なワークについては安全機能をOFFさせてシステムの効率的な運用を図ることができる。以下、本発明の実施例1に係る多光軸光電式安全装置について、図12〜図13に基づいて詳述する。
【0073】
図12は、ワークWがプレス機まで搬送される経路にライトカーテンを配置する例を示している。この例では光軸を1Ax〜13Axまで13個直線上に並べた投受光ユニット48を使用し、長手方向がワークWの進行方向と一致するように水平方向に配置して、投光ユニット、受光ユニットの間で検出領域を構成し、この間にワークWがコンベア等により侵入する。このワークWの侵入は当然ながら通常の動作であって、投受光ユニット48がワークWを検知してもシステムを停止したくない。このため、ワークWの侵入によってシステムが停止しないよう、投受光ユニット48の安全機能を一時的に無効化するための無効化機能をONする必要がある。
【0074】
従来のシステムでは、図12において左からワークWが侵入し、1光軸でも遮光状態にすると、直ちにその遮光状態を安全信号に反映し、出力回路のOSSDもしくはFSD出力をOFFされるので、システムが停止されることとなり、好ましくない。
【0075】
これに対して、本実施の形態に係る多光軸光電式安全装置では、検出領域から正常ワーク形状検出エリアを指定し、この正常ワーク形状検出エリアでの検出結果に基づいて安全機能の無効化機能を切り替えるように構成する。具体的には、投受光ユニット48の光軸について、1光軸目から5光軸目(1Ax〜5Ax)までを正常ワーク形状検出エリアとして指定する。このエリアに対し、予め予想されるシーケンスで遮光状態がなされれば、規定通りの正常なワークWが侵入したと判断し、逆に予想外のシーケンスで遮光状態がなされれば、規定以外の異常なワーク、例えば人の手の侵入がなされたと判断する。
【0076】
この工程を図13のタイミングチャートに基づいてより詳細に説明する。正常なワークWの侵入によって投受光ユニット48が1光軸目(1Ax)より2、3、4光軸(2Ax〜4Ax)と順次遮光される。例えばaのタイミングでは、2、3、4光軸が遮光されている状態となっている。この遮光状態より、ワークWの大きさは3光軸遮光する大きさであることが判断できる。
【0077】
次のbのタイミングでは、3、4、5光軸(3Ax〜5Ax)が遮光状態となり、3光軸遮光する大きさのワークWが、プレス機の存在する危険領域に移動していることが判別できる。
【0078】
本実施の形態の目的は、指定されたワークが、ライトカーテンの安全信号(OSSD又はFSD)をOFFさせることなく、装置の作業エリア(危険領域)に搬送され、それ以外のワーク、例えば人体等が侵入した場合には速やかに、安全信号に反映させて、システムを停止させることである。本実施の形態の場合、1〜5光軸(1Ax〜5Ax)は正常ワーク形状検出エリアに指定しているが、6〜13光軸(6Ax〜13Ax)は異常検出エリアとして設定する。すなわち、通常動作中は、1光軸でも遮光状態になると直ちに安全信号をOFFさせるが、上述のように正常ワーク形状検出エリアにて指定のワークであると判定されたワークWが、正常ワーク形状検出エリア側から順次移動してくる場合には、このワークWによる遮光状態を安全信号に反映させることなく、安全信号はOK状態のまま、ワークWを通過させることが可能である。
【0079】
具体的には、前記のように、bのタイミングでは、指定のワークWが危険領域に向かって移動しているという情報は判別できており、かつ、次は6光軸目(6Ax)を遮光状態にさせることは容易に予測できる。つまり、制御手段の一形態であるコントローラ制御回路は、bのタイミングの遮光状態より、次のタイミングでは指定のワークWが6光軸目を遮光状態にすると判断し、6光軸目を予め部分的なミュート状態に設定を行う。
【0080】
次にcのタイミングでは、4、5、6光軸が遮光状態となっており、次は7光軸目が遮光状態になることは明白である。つまり、コントローラ部は6、7光軸(6Ax〜7Ax)をミュート状態に設定し、ワークWによる6、7光軸目の遮光を安全信号に反映させないようにする。
【0081】
同様にd、eのタイミングでは順次8、9光軸(8Ax〜9Ax)をミューティング状態に設定していく。しかしfのタイミングではワークWが通過し終わって、再び入光状態に変化しているので、この光軸はワークWの通過が完了したと判断し、ミューティング設定を解除する。すなわち、人体等により再び6光軸目(6Ax)が遮光状態になった場合には、安全信号をOFFさせるように働く。上記のような動作を、ワークWが異常検出エリアを通過完了するまで繰り返す。
【0082】
このような動作をするライトカーテンシステムを供給することにより、従来のようなワークを検出してミュートを起動するためのミューティング用センサといったミューティング装置を不要にできる。またミューティング装置が不要になることで省配線が実現できる。さらにワークの大きさを厳密に判別するので、指定のワークとそれ以外のワークとの誤判別を回避できる。またワークの長さを検出することもできる。例えばティーチングにより正常ワーク形状検出エリアを設定する際に、ワークの長さが光軸にして何個分であるかを測定して表示できる。なお投光部及び受光部を、長手方向がワークの進入方向と平行となるように設置することで、ワークの進入方向に沿って光軸が配置されるので、ワークの長手方向長さの検出を確実に行える。
【0083】
さらに、ワークの大きさを厳密に判別し、かつワークの存在するエリアのみでミューティング機能を有効にし、それ以外の領域では通常の安全機能を維持できる。すなわち何らかの異物を検出すると安全信号をOFFさせる動作を継続しているので、仮にワークと人体が同時侵入しても、人体を確実に検出でき、それによって安全信号をOFFできるので、危険を防止できる。
【0084】
このように、実施例1によれば簡素な構成でミュート機能等の無効化機能を確実に動作させ、しかも必要最小限の部位のみで無効化を行い、高い安全性を維持できる。すなわち、従来であれば危険領域の入り口部分にライトカーテンを設置し、ミュート機能を使用してワークのみを危険領域に通過させる場合には、ワーク検出用のセンサ(ミューティング用センサ)が2ヶもしくは4ヶ必要であった。これに対して実施例1では、同様の機能をミューティング装置を使用することなく、ライトカーテンのみで提供可能である。別の観点からは、複数のセンサユニットを使用して、一部は安全センサとして使用し、一部はセンサユニットのための形状判別センサとしてペアで使用することができる。また異なる形状のワークが投入されたことも検出できる。なお、部分的なミュート機能に代えて、フローティングブランキング機能を利用することもできる。フローティングブランキング機能は、1以上の予め設定した数以下の光軸が遮光されても、安全出力をONのまま維持する機能である。上記の例では、フローティングブランキング機能で3光軸を設定すれば、部分的なミュート機能と同様の結果を得ることができる。
【0085】
また従来の方式では、ワーク検出用センサのセッティングはワークの大きさにより適切な配置を行う必要があり、ワークの大きさが変化した場合には、ワーク検出用センサの位置を再調整する必要がある。これに対して本実施例であれば、ワークの大きさは、ライトカーテンの遮光光軸数により制御回路側が認識可能であり、初期調整時にワークの大きさを記憶するメモリを複数設けることにより、例えば、上記のコントローラ側よりワークの大きさの変更を行うことも可能である。また、必要な光軸のグループのみをミューティングさせ、それ以外の光軸のグループは通常状態に設定することが可能となり、制御対象となるプレス機の状態に応じて安全性と効率を両立させた運用が可能となる。
(実施例2)
【0086】
以上の実施例1では、投受光ユニット48をワークの進行方向と沿うように横置きした場合を説明した。もちろん、投受光ユニットをワークの進行方向と直交するように、すなわち縦置きに配置することもできる。以下、本発明の実施例2に係る多光軸光電式安全装置について、図14〜図17に基づいて説明する。図14の例では、プレス機Pに向かって搬送されるワークW2が傾斜面を有しており、垂直方向に配置されたライトカーテンと交差する面積がワークW2の進行に従って変化する。よって、この変化する面積、すなわち入光/遮光状態に基づいて、ワークW2の進行を正しく検出して無効化機能を発揮できる。
【0087】
図14に示すように、ワークW2の搬入口等に、1Ax〜12Axの12個の光軸を備えるライトカーテン49を縦に設置する。またワークW2の進入経路に沿って、経路の両側にワーク検出センサ50としてセンサA1、A2、B1、B2を配置する。ワーク検出センサ50もライトカーテン49と同様の光軸を形成し、入光/遮光状態に基づいてワーク検出信号をコントローラ部に出力する。
【0088】
この多光軸光電式安全装置のブロック図を図15に示す。この図に示すように、ワーク検出センサ50のワーク検出信号はコントローラ部30のワーク検出センサ入力回路34に入力される。またライトカーテン49を構成する投受光ユニットはコントローラ部30のコントローラ側通信回路31と接続される。さらにコントローラ部30の出力回路36は、プレス機Pの装置を停止させるためのSTOP入力と接続される。コントローラ部30の出力回路が投受光ユニットの入光/遮光状態に基づいて安全信号を発すると、STOP入力が起動されてプレス機Pは停止される。
【0089】
このような場合において、従来はライトカーテンの近傍に設けたワーク検出センサA1、A2、B1、B2の入光/遮光情報に基づき、ライトカーテンの安全機能を一時的に無効にするミューティングを行うのが一般的である。この場合は、検出領域をすべて無効化するか、あるいは少なくともワークが検出されることなく通過できるように、ワークの最大サイズに応じた範囲の光軸をすべて無効にする必要があった。いずれの場合も、ミューティング状態の時にワークと同時に人の手等の異物が侵入した場合、その検出ができないという問題点があった。特に、後者の場合においてもワークの最大サイズに応じた範囲の光軸が無効化されるため、ワークの形状によっては検出できない領域(デッドスペース)が生成されるおそれがあった。
【0090】
もしくは、ライトカーテンが保護している領域の内、すべての範囲を無効にするのではなく、外部からの信号により、安全機能を無効にする領域を段階的に切り替えていく方法等が考えられる。例えば図16に示すように、上位の制御を行うシーケンサ52としてPLC等の制御装置を配置し、PLCからの切替信号をエリア切替回路54で受け、これに応じてミューティングエリアを可変させる。明らかに、この方法では制御装置を別途付加する必要があり、制御、構成が複雑化しコストがかかる問題があった。
【0091】
これに対し、実施例2に係る多光軸光電式安全装置では、ミューティング動作時に検出領域のすべてにわたって安全機能を無効にしたり、PLC等の外部信号により順次保護領域を切り替えていくのではなく、予め決められたシーケンスにより、ワークの侵入に従って自動的に保護領域を変化させていくことが可能である。具体的には、ワークW2の侵入により、最初にワーク検出センサA1、続いてA2が遮光状態となり、これらのセンサの出力であるワーク検出信号が反転する。従来のミューティング機能を利用した場合、遮光状態となった時点(図17のタイミングチャートにおけるタイミング4)でミューティング状態になり、ライトカーテンによる安全機能が検出領域の全域に渡り無効化される。これに対して本実施例の場合、ライトカーテンの保護領域のすべてにわたって無効化するのではなく、このタイミングではワークW2の侵入と共にライトカーテンが最初に遮光される部分(本実施例では、1、2光軸目)のみの部分的なミューティング状態に設定する(図17のタイミングチャートのタイミング4、5における1Ax、2Axの網掛け部分に相当)。
【0092】
次に、ワークW2が侵入しライトカーテンの1、2光軸目が遮光状態になる(タイミングチャートのタイミング6)。これまでの動作で、1、2光軸は部分的なミューティング状態に設定されているので、1、2光軸目が遮光状態になっても出力はON状態を維持している。また、1、2光軸が遮光されたことで、予めワークW2の形状が判っているので、本実施例の場合、次のタイミングで3光軸目が遮光状態になるのが容易に予想できる。従って、1、2光軸目が遮光されたタイミングで、3光軸目をミューティング状態に設定する(タイミングチャートのタイミング7、8の状態)。同様に、次に3光軸目が遮光状態になった場合には4光軸目をミューティング状態に、4光軸目が遮光状態になった場合には、5光軸目をミューティング状態というように、順次設定を行っていく。このように11光軸目までミューティング状態に設定され、かつ11光軸目まで遮光状態になった場合、ワークW2の形状より、次のタイミングではワークW2による遮光状態が途切れ、3〜11光軸目まで入光状態になることが予想される。実際に3〜11光軸が入光状態になると、予め設定したシーケンスに基づき、3〜11光軸のミューティング状態を一旦解除する。これにより、3〜11光軸の範囲で遮光状態になった場合には、この部分に人が存在する場合が予想されるので、ライトカーテンは安全信号をOFFさせて、プレス機Pの装置を停止させることができる(タイミングチャートのタイミング27、28)。ワークW2の形状より考えると、次は3〜11光軸が再び遮光状態になることが予想される。従って、ある一定時間が経過したら、3〜11光軸をミューティング状態にすることが必要である。このタイミングは、タイミングチャートの25→26のタイミングで3〜11光軸が入光状態になった時から、ワークW2の形状/コンベアラインのスピードを考慮の上、予め設定した時間経過後にミューティング状態に再び設定する(タイミングチャートで29のタイミング)。
【0093】
その後、予め設定したワークW2の形状に応じて、11光軸目が入光状態になったら、11光軸目のミューティング状態を解除し(タイミングチャートの32のタイミング)、その後同様に順次ミューティング状態を解除し、最終、1、2光軸のミューティング状態の解除は、従来例等と同じように、ワークW2がすべて通過後、ワーク検出センサB1、B2が入光状態になったタイミングで解除させる。
【0094】
上記のような方法により、従来、ワーク侵入口にミューティング機能を持ったライトカーテンを設置した場合に、ミューティング状態の時にワークと同時に人が侵入した場合、人の検出ができないという問題点を解消できる。またPLC等の外部からの切替信号に応じてミューティングエリアを可変する方法に比べ、ライトカーテンのみのシステムで、ワーク形状に合わせた必要最低限のミューティング状態を実現することが可能となる。このため図15に示すように、図16に示す従来の構成と比べて簡素化できる。
【0095】
同様に、本実施例ではミューティング機能に機能を限定して説明を行ったが、ミューティング機能だけではなく、フローティングブランキング機能、フィックスブランキング機能を組み合わせて設定を行ってもよい。例えば、タイミングチャートのタイミング4における3光軸目、タイミング24、25、26における12光軸目等は、ワークのばたつき等により遮光になる可能性がある。その場合、ミューティング機能だけではなく、例えばタイミングチャートのタイミング4では、1、2光軸をミューティング機能、3、4光軸をフローティングブランキング機能に設定することにより、ワークのばたつき等が発生しても、安全信号がすぐにOFFしない等、実使用条件における動作の安定する等のメリットが得られる。
【0096】
これらミューティング機能、フローティングブランキング機能、フィックスブランキング機能等の設定を行う設定手段も、上記と同様コンピュータ等の外部入力手段を利用する他、ティーチング法により行うことが可能である。すなわち、コントローラ制御回路32のティーチング入力回路33によりティーチングモードに切り替えた後、ライトカーテンの光軸間に実際にワークを侵入させ、その際の入光/遮光状態の変化を記憶させてパターンとして登録させることができる。またこのようにして登録されたパターンと異なるワークが侵入した場合、登録されたワークと異なるワークが侵入したことを検出できる。また設定は、ワークの侵入速度と多光軸光電センサの応答速度の関係に応じて、1光軸単位、あるいは複数光軸単位とする。さらに、この際のワークの全長や形状等を光軸の遮光状態から検出できる。また、予め複数のワークを登録しておき、これらを区別することも可能となる。さらにこの方法では、入光/遮光状態の変化を時間でなくパターンで登録可能であるため、ラインの停止や速度変化等が生じても適切に対応できる。加えて、ワークが最初にライトカーテンの光軸を遮光する領域でワークの形状等を判別するので、早い段階での判定処理を開始でき、迅速な処理が可能になるという利点も得られる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の多光軸光電式安全装置は、ライトカーテンを構成する光電センサ、光電形近接スイッチ等として好適に利用可能である。また透過形のライトカーテンのみならず、投受光部を一体としたリフレクタ形にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の一実施の形態に係る多光軸光電式安全装置を示すブロック図である。
【図2】投受光ユニットをケーブルで接続する状態を示す説明図である。
【図3】コントローラ部を投受光ユニットと接続して安全システムを構成する例を示すブロック図である。
【図4】異なるグループ間で干渉防止を設定する様子を示す斜視図である。
【図5】投受光ユニットをL字状に取り付ける例を示す斜視図である。
【図6】A〜Dの各プレス機をコ字状に囲んでそれぞれ個別に検出領域を設定する従来の例を示す概略平面図である。
【図7】A〜Dの各プレス機をコ字状に囲んで本発明の実施の形態に基づき検出領域をそれぞれ個別に設定する例を示す概略平面図である。
【図8】図7の投受光ユニットに対してグループ化を行う様子を示す斜視図である。
【図9】図7と同じ条件において長い投受光ユニットを配置した例を示す概略平面図である。
【図10】図7と同じ条件において3本の投受光ユニットを配置した例を示す概略平面図である。
【図11】図6と同じ条件において本発明の実施の形態に基づき検出領域をそれぞれ個別に設定する例を示す概略平面図である。
【図12】本発明の実施例1に係る多光軸光電式安全装置でワークを検出する例を示す斜視図である。
【図13】図12のワークを多光軸光電式安全装置で検出する状態を示すタイミングチャートである。
【図14】本発明の実施例2に係る多光軸光電式安全装置でワークを検出する例を示す斜視図である。
【図15】本発明の実施例1に係る多光軸光電式安全装置を示すブロック図である。
【図16】従来の多光軸光電式安全装置を示すブロック図である。
【図17】図14のワークを多光軸光電式安全装置で検出する状態を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0099】
100…多光軸光電式安全装置
10…投光部;11…投光素子;12…投光回路;14…投光制御回路
16…投光側通信回路
20…受光部;21…受光素子;22…受光回路;24…受光制御回路
25…受光データレジスタ;26…受光側通信回路;27…判定回路
30…コントローラ部;31…コントローラ側通信回路
32…コントローラ制御回路
33…ティーチング入力回路;34…ワーク検出センサ入力回路
35…メモリ;36…出力回路;37…表示部;38…設定部
40…ケーブル;42…非常停止スイッチ;44…ドアスイッチ
46…動作表示灯;48…投受光ユニット;49…ライトカーテン
50…ワーク検出センサ;52…シーケンサ;54…エリア切替回路
W、W2…ワーク;S…遮蔽板;P…プレス機
【技術分野】
【0001】
本発明は、多光軸光電センサを含む多光軸光電式安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光電センサは、光電スイッチともいわれ、検出領域に検出対象物があるか否かを検出することができる。この光電センサを複数使用して多光軸とした多光軸光電センサは、投光ユニットと受光ユニットとを対にして、プレス機や折り曲げ機等の危険源が存在する装置近傍に配置されて、作業者の安全を守るために多光軸光電式安全装置として用いられる。この多光軸光電式安全装置は、一列に数多くの投光素子を配置した投光ユニットと、投光素子と同じ数の受光素子を一列に配置した受光ユニットとを含み、これら投光ユニットと受光ユニット(以下まとめて「投受光ユニット」と呼ぶことがある。)でライトカーテンつまり保護バリアを形成して、この保護バリアの検出領域に遮光物が侵入すると、安全信号で危険を報知してプレス機や折り曲げ機等の危険源の動作を強制的に停止させる(例えば特許文献1等参照)。
【特許文献1】特許第3465263号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来、複数の投受光ユニットを使用して安全システムを構築する場合は、投光ユニット同士、受光ユニット同士を個別のバス上に設けるべく、それぞれ専用のケーブルで個々に接続する必要があった。一般には、いずれかのユニットをマスターユニットとし、マスターユニットとサブユニットとを直列接続線で接続する。また投光ユニットと受光ユニットとの間で投受光のタイミングの同期をとる必要があり、このための同期通信線も投光ユニット用バスと受光ユニット用バスとの間で必要となる。
【0004】
さらに、光軸の相互干渉を防止するため、干渉防止線も必要となる。仮に各光軸が無秩序に発光すると、光学的に分離されていない他のライトカーテンの受光ユニットに光が入光するおそれが生じる。この結果、人体の一部が検出領域に侵入してライトカーテンの一部光軸を遮光したとしても、他のライトカーテンの光により遮光状態とならず、結果的に制御対象装置が停止しない等の影響が出る可能性がある。このため、ライトカーテンの構築において干渉防止機能は非常に重要な機能であり、投光タイミングを管理するため、干渉防止線が要求されていた。
【0005】
このように、独立した3種の専用ラインが必要となり、配線が面倒となっていた。特に、使用するユニット数が多くなるほど、この手間は増大する。加えて、投光ユニット、受光ユニット以外に、非常停止スイッチやドアスイッチ、動作表示灯等、他の機器を安全システムに接続したい場合もあり、このような機器を接続するための配線がさらに安全システムを複雑化させる一因となっていた。
【0006】
本発明は、従来のこのような問題点を解決するためになされたものである。本発明の主な目的は、投光ユニット、受光ユニットを意識することなく、同一のバス上に自由に接続可能で配線を簡素化し得る多光軸光電式安全装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の側面に係る多光軸光電式安全装置は、光を投光するための複数の投光素子を有する一以上の投光部と、投光部と対向するように配置され、投光部から投光された光を受光するための複数の受光素子を有する一以上の受光部と、投光部と受光部との間で構成される複数の光軸で検出領域を構成し、光軸の入光/遮光状態に基づいて生成された安全信号を外部に出力可能なコントローラ部とを備える多光軸光電式安全装置であって、投光部は、投光側通信回路を備えており、受光部は、受光側通信回路を備えており、投光側通信回路及び受光側通信回路は、共通のバスに接続してデータ通信可能に構成してなり、一の投光部に対して一の受光部を関連付けるための設定手段と、光軸の入光/遮光状態に基づいて、安全信号を生成する安全信号生成手段と、安全信号生成手段で生成された安全信号を出力するための出力手段とを備え、投光部は設定手段で関連付けられた受光部との間で光軸を構成し、共通バスを介して所定のタイミングで投光/受光を行い安全信号を出力可能に構成している。これによって、投光部及び受光部を接続するバスを共通化して配線を簡素化できる。また、共通化されたバス上に接続された一以上の投光部及び受光部のペアリングを、設定手段で割り当てることにより、従来のような専用線を必要とせずに対応する投光部と受光部の組み合わせを正しく認識、管理でき、これらを正しく同期させて動作させることが可能となる。
【0008】
また、本発明の第2の側面に係る多光軸光電式安全装置は、光を投光するための複数の投光素子を有する第1及び第2の投光部と、投光部と対向するように配置され、投光部から投光された光を受光するための複数の受光素子を有する第1及び第2の受光部と、一の投光部と一の受光部との間で構成される複数の光軸で検出領域を構成し、光軸の入光/遮光状態に基づいて生成された安全信号を外部に出力可能なコントローラ部とを備える多光軸光電式安全装置であって、投光部は、投光側通信回路を備えており、受光部は、受光側通信回路を備えており、投光側通信回路及び受光側通信回路は、共通のバスに接続してデータ通信可能に構成してなり、一の投光部に対して一の受光部を関連付けるための設定手段と、設定手段により設定された第1及び第2の投光部を異なるタイミングで投光させるための投光タイミング制御手段と、光軸の入光/遮光状態に基づいて、安全信号を生成する安全信号生成手段と、安全信号生成手段で生成された安全信号を出力するための出力手段とを備え、投光部は設定手段で関連付けられた受光部との間で光軸を構成し、共通バスを介して投光タイミング制御手段で生成される所定のタイミングで投光/受光を行い、安全信号生成手段で生成された安全信号を出手段から出力可能に構成している。これによって、投光部及び受光部を接続するバスを共通化して配線を簡素化できる。また、共通化されたバス上に接続された一以上の投光部及び受光部のペアリングを、設定手段で割り当てることにより、従来のような専用線を必要とせずに対応する投光部と受光部の組み合わせを正しく認識、管理でき、これらを正しく同期させて動作させることが可能となる。また共通バスで接続された投光部及び受光部が投光/受光を実行するタイミングが投光タイミング制御手段で管理されるので、光軸の相互干渉を防止することができる。
【0009】
さらに、本発明の第3の側面に係る多光軸光電式安全装置はさらに、検出領域を複数指定可能とすると共に、安全信号を複数として検出領域毎に生成し、各検出領域に属する光軸を割り当てるための検出領域設定部を備え、光軸の入光/遮光状態に基づいて各検出領域で安全信号を生成し、出力手段が各安全信号を出力可能に構成している。これによって、安全信号を複数化でき、さらにどの光軸が遮光された場合にどの安全信号を停止するといった出力のグループ化を行うことができる。
【0010】
さらにまた、本発明の第4の側面に係る多光軸光電式安全装置は、コントローラ部が、共通バスを介して多光軸光電式安全装置の断線管理を行う。これによって、断線管理も共通バスを介して一元的に行うことができるので、多光軸光電式安全装置の信頼性を高めることができる。
【0011】
さらにまた、本発明の第5の側面に係る多光軸光電式安全装置は、投光側通信回路及び/又は受光側通信回路は、共通バスを介して光軸毎の入光/遮光情報を含むデータをコントローラ部に送信可能に構成している。これによって、光軸毎の情報を共通バスを介してコントローラ部で一元的に管理でき、省配線で詳細な情報の収集が可能となる。
【0012】
さらにまた、本発明の第6の側面に係る多光軸光電式安全装置は、投光部同士又は受光部同士の間に、干渉防止用の渡り線を接続可能に構成している。これによって、他のユニットとの間で光軸の干渉防止が用意に実現できる。また、投光部や受光部にマスター/スレーブの設定は不要にできる。
【0013】
さらにまた、本発明の第7の側面に係る多光軸光電式安全装置は、投光側通信回路及び受光側通信回路のデータ通信が、通信時間が保証された通信制御方式に従い行われる。これによって、通信時間が保証され検出の時間遅れなく安全性が確保される。
【0014】
さらにまた、本発明の第8の側面に係る多光軸光電式安全装置はさらに、共通バス上に接続された、検出領域と関連付けられた動作表示灯、ミューティングランプ、リモートI/Oモジュールの少なくともいずれかを備え、コントローラ部が共通バスを介して、動作表示灯、ミューティングランプ、リモートI/Oモジュールの少なくともいずれかの動作制御を行う。これによって、動作表示灯やミューティングランプ、リモートI/Oモジュール等も個別の配線を行うことなく共通バス上に接続できるので、省配線及び設置作業の簡素化が実現できる。
【0015】
さらにまた、本発明の第9の側面に係る多光軸光電式安全装置はさらに、共通バス上に接続された非常停止スイッチを備える。これによって、非常停止スイッチも個別の配線を行うことなく共通バス上に接続できるので、省配線及び設置作業の簡素化が実現できる。
【0016】
さらにまた、本発明の第10の側面に係る多光軸光電式安全装置は、多光軸光電式安全装置は、安全信号を出力する安全機能を一時的に無効化する無効化機能を備え、設定手段は、1以上の光軸の入光/遮光状態と、1以上の光軸に適用される無効化機能とを関連付け可能であり、コントローラ部が、各光軸の入光/遮光状態、及び無効化機能の適用を管理するよう構成されている。これによって、光軸毎の入光/遮光状態及び無効化機能の管理も、共通バスを介して一元的に行うことができるので、省配線のシステムで高度な機能を実現できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の多光軸光電式安全装置によれば、投光部、受光部を接続するバスラインを一の共通バスに統合したことで、投光部、受光部を別々に配線する必要がなく、省配線が可能となる。さらに他の機器も接続可能とすることで、これらの配線も極めて簡素化でき、システムの構築や変更が容易に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための多光軸光電式安全装置を例示するものであって、本発明は多光軸光電式安全装置を以下のものに特定しない。特に本明細書は、特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
【0019】
なお本発明において多光軸光電式安全装置は、光電効果を応用したすべての非接触検出器を包含するが、典型的には検出する検出対象物自体の反射、輻射あるいは遮光によって生ずる受光量の大小によって、対象の有無、大小あるいは明暗等を検知し、接点あるいは無接点のスイッチング出力を出力する狭義の意味の光電形近接スイッチである。以下、光電形近接スイッチとして半導体開閉素子を備え、可視、不可視光線の反射又は遮光のいずれかによって物体を検出する近接スイッチを利用する例について説明する。
【0020】
図1に、本発明の一実施の形態に係る多光軸光電式安全装置のブロック図を示す。この図に示す多光軸光電式安全装置100は、一対の投光部10と受光部20と、これらを制御するコントローラ部30とを備える。投光部10は、検出領域に対して光を投光する投光素子11を一列に多く配置した投光ユニットであり、受光部20は、投光素子11と同数の受光素子21を一列に配置した受光ユニットである。これらの投受光ユニットは、ユニットの一面に投受光素子を配置する他、ユニットの両側等2面以上に配置することもできる。また投受光素子を一列に配置するのみならず、2列以上に配置することもできる。
【0021】
多光軸光電センサを構成する投受光ユニットで投光素子11と受光素子21で光軸を構成し、複数の光軸でライトカーテンつまり保護バリアを形成して、この保護バリア内の所望の領域に検出領域を設定する。設定された検出領域毎に安全信号が生成される。すなわち、検出領域に遮光物(ワーク)が侵入し、いずれかの光軸が遮光されると、コントローラ部30は設定に従って安全信号が生成され、制御対象物の動作を強制的に停止させるよう制御する。なお、光軸の入光/遮光状態に基づいて安全信号を生成する方法としては、投光状態から遮光状態に切り替わったことを検出する方式の他、遮光状態から投光状態に切り替わったことを検出する方式とすることも可能であることはいうまでもない。
(投光ユニット)
【0022】
投光部10は、各投光素子11毎に投光回路12を設けており、各投光回路12を投光制御回路14で制御する。さらに投光部10は投光側通信回路を備えており、コントローラ部30と必要なデータ通信を行う。
【0023】
図1に示す投光部10を構成する投光ユニットは、発光ダイオード(LED)、LD(レーザダイオード)等の投光素子11を個々に駆動するN個の投光回路12と、これらの投光回路12を制御する投光制御回路14と、コントローラ部30との間の通信を制御する投光側通信回路16とを含む。投光制御回路14は、コントローラ部30からの指示を受けて、N個の投光回路12を順次起動させることにより、一番目の光軸の投光素子11からN番目の投光素子11まで次々と点灯させる。これにより、投光ユニットは、受光ユニットに向けて、所定の投光タイミングで一番目の光軸からN番目の光軸まで、順次、光ビームを発射する。
【0024】
投光ユニットは、一方向に延長された細長いケースを有し、このケースの中に、その長手方向に沿って一列にN個の投光素子11がほぼ等間隔に配置されている。隣接する投光素子11間の間隔は、特に限定するものではないが、例えば20mmである。
(受光ユニット)
【0025】
一方受光部20も、受光素子21毎に受光回路22を設けており、各受光回路22に接続された受光制御回路24がこれらを個別に制御する。受光制御回路24は、各受光回路22で受光された受光データを保持するためのメモリとして受光データレジスタ25と、受光データレジスタ25で保持された受光データに従って判定を行うための判定回路27を備える。受光回路22から出力された受光量に相当する電気信号を受光制御回路24の増幅回路で増幅し、増幅回路の出力電圧をA/D変換器でデジタル値に変換して受光データレジスタ25に保持する。さらに受光部20も、コントローラ部30と通信を行うための受光側通信回路26を備える。
【0026】
図1に示す受光部20を構成する受光ユニットは、フォトダイオード、フォトトランジスタ、PSD(位置検出用フォトダイオード)等の受光素子21を個々に駆動するN個の受光回路22と、これらの受光回路22を制御する受光制御回路24と、コントローラ部30との間の通信を制御する受光側通信回路26とを含む。受光制御回路24は、コントローラ部30からの制御信号を受けて、投光ユニットから次々と照射される光ビームを、対応する受光素子21で受光できるように、対応する投光回路12の動作に同期して、一番目の光軸の受光回路22からN番目の光軸の受光回路22まで、順次、有効化する。これによってほぼ等間隔で互いに平行な複数の光軸がエリア状に形成され、ライトカーテンを構成する。
(コントローラ部30)
【0027】
コントローラ部30は、投光部10、受光部20とデータ通信を行うためのコントローラ側通信回路31と、コントローラ側通信回路31と接続されて各種制御を行うためのコントローラ制御回路32とを備える。コントローラ制御回路32は、制御手段を構成する。またコントローラ制御回路32は、ティーチングに関する処理を行うためのティーチング入力回路33、ワーク検出センサからの入力を行うためのワーク検出センサ入力回路34、各種設定値を保持するためのメモリ35、判定結果に基づき安全信号を生成し出力するための出力回路36、判定結果や設定内容等を表示したり、あるいは状態表示のモニタやユーザインタフェース用の表示部37、検出領域の指定等を行うための設定部38等を備える。コントローラ部30には、PLCが利用できる。PLCには、イネーブルスイッチやミュートセンサ、手動動作信号等が接続可能である。なおコントローラ部30は、図1の例では投受光ユニットと別部材としているが、投光ユニット又は受光ユニット内に内蔵することも可能である。
【0028】
この投受光ユニットを、工作機械、パンチ機、プレス機、鋳造機、自動制御機等の危険源となり得る装置を含む作業エリアの境界に設置してコントローラ部30と接続して制御駆動されるライトカーテンを構成する。そしてオペレータの指先等身体の一部が作業エリアに侵入すると、これを多光軸光電センサで検知して、コントローラ部30が直ちに制御対象装置の動作を停止する及び/又は警報を発することにより、オペレータや作業員を保護する。ここでは、制御対象装置の一例としてプレス機を用いる。
【0029】
この多光軸光電式安全装置は、安全信号を多出力化し、さらに光軸毎の管理を可能として、複数の領域を割り当て、各領域毎に独立した安全信号を出力できる。従来のライトカーテンは1ユニット1出力であり、複数のユニットを連結して1ユニットして扱うとしても、その出力は1出力でしかなかった。この構成では、1ユニットのライトカーテンを複数の検出領域に分割し、それぞれに応じた安全信号を出力することができない。これに対して、本実施の形態に係る多光軸光電式安全装置は、一の多光軸センサを使用して、これに含まれる複数の光軸を独立して複数の出力に割り当てることにより、あたかも複数の多光軸光電式安全装置を使用する安全システムと同様の効果を得ることができる。特に一の多光軸光電式安全装置によって複数の出力を制御可能とすることにより、省配線による設計の容易さ及び低コストで安全システムの構築が実現できる。これにより、隣り合う複数台の装置に対して、作業者と装置が対峙する面に一本、或いは直列に増設された複数の多光軸光電センサで全域を保護できるように設置し、各装置毎に遮光する光軸をグループ化し、そのグループ毎で安全信号の出力を個別に設けることが可能になる。従来は制御対象装置毎に一本ずつ多光軸光電センサを設置し、各々で安全信号の出力を設けていたが、本実施例によって一本の多光軸光電センサで可能になるため、省配線とコストダウン及びセンサの光軸数に依存することなく、自由に保護するエリアをユーザが選択することが可能になる。
(出力回路36)
【0030】
出力回路36は、安全信号としてOSSD又はFSDを出力する。OSSD(output signal switching device)は、プレス機等の制御対象装置の制御システムに接続したESPEの構成部品であって、制御対象装置の正常運転中、検知器の作動に伴いOFF状態となるものである。なおESPE(electro-sensitive protective equipment)とは、人体保護又は物体検知のために共同して働く一群の機器及び/又は部品であって、少なくとも検出器、制御監視機器、及びOSSDを持つものをいう。またFSD(final switching device)は、制御対象装置の安全関連制御システムの一部品であって、OSSDがOFF状態となったとき、MPCEの回路を遮断するものである。なおMPCE(machine primary control element)とは、制御対象装置の通常運転を直接制御し電気的に駆動される要素で、制御対象装置の運転を起動し又は停止する際、時間的に最後に動作する要素である。このように安全信号は、制御対象装置の運転を停止する動作停止信号として機能する。
【0031】
図1の例では、出力回路36は複数の安全信号を出力できる。複数の安全信号を出力するためには、物理的に複数の出力端子を設けて、各々が安全信号を出力可能に構成する他、一の出力端子が複数の安全信号を出力可能とする構成も含む。一の出力端子で複数の安全信号を出力する手段としては、時分割による多重化等の既知の、あるいは将来開発される手法が適宜利用できる。このように、一の出力端子が複数の安全信号を出力可能とする構成も、本明細書においては複数の出力部として表現する。
(投受光ユニットの連結)
【0032】
多光軸光電センサを構成する投受光ユニットは、通信機能を備えており、これらを複数連結して接続可能である。図2に、投受光ユニットをケーブル40で接続する状態を示す。ケーブル40は通信線又は信号線である。またケーブル40に電源線を含めてもよい。さらにケーブル40に含まれる電源線を使用せずに分離させるよう、電源線の使用を切り替え可能に構成することもできる。これにより、ユーザの使用状況に応じて電源線を切り離すことが可能となり、絶縁や基準電圧の問題から解放され、システム構築上有利となる。
【0033】
投光ユニット又は受光ユニットにはケーブル40を接続するためのコネクタを備えており、ケーブル40を介して複数の投受光ユニットを数珠繋ぎに連結できる。コネクタは投受光ユニットの両端部に設けられ、2つのコネクタのいずれの側に接続してもよい。またコネクタは、ケーブルを使用せずコネクタ同士を機械的に接合してユニットを接続するよう構成することもできる。
【0034】
図3に、共通バスを介してコントローラ部30を複数の投受光ユニットと接続して安全システムを構成する例を示す。このように数珠繋ぎされたケーブル40の一部は、コントローラ部30に接続される。コントローラ部30は、連結された投受光ユニットをあたかも一本の投受光ユニットのように制御できる。これにより、各投受光ユニットを個別に配線する必要が無く、安全システムの構築に際して省配線が実現できる。
【0035】
また、共通バス上には投受光ユニットのみならず、非常停止スイッチ42やドアスイッチ44、動作表示灯46、マルチ分岐、マルチドロップ接続等のリモートI/Oモジュール等、他の機器を接続することもできる。これらの機器は、通信機能が必要な場合はバスライン上の通信規格と共通の規格とする。また、バスラインのT字分岐を行ってもよく、また直列増設の形態のようにバスラインに接続したユニットに対し、他のユニットをデイジーチェーン状に接続することもできる。このように複数の機器を同一のバスライン上に接続しコントローラ部30で制御することにより、すべての安全機器の情報をコントローラ部30で一元的に管理、制御することが可能となる。
【0036】
共通バス上の通信方式は、RS−485等の差動通信、オプティカルリンク等の耐ノイズ性に強い通信形態が望ましい。RS485では複数の終端を許容する多重端末(マルチドロップ)方式が利用できる。またケーブルで数珠繋ぎした投受光ユニットの共通バスをループ状に接続することで、断線検出等より高度な検出、制御を行うことも可能となる。
【0037】
またバスラインは、例えばプレス機の周囲にライトカーテンを設ける場合、複数のプレス機に跨って配線される可能性が高いので、各ユニットのコネクタやケーブル40等の送受信部分は、絶縁タイプの送受信機能を備えることが望ましい。これによって各プレス機間の電位差及びバスラインに誘起される電気的ノイズの影響を受けにくくなり、工場設置時等フィールドにおける耐ノイズ性の向上に効果がある。
(通信制御方法)
【0038】
また、バスラインの通信制御方法は種々の方式が利用できるが、一定の応答速度の確保できる方式が好ましい。特にライトカーテンでは、人体が検出領域に侵入した場合、速やかに制御対象の装置を停止させる必要があるため、光軸が遮光されてから安全信号を出力するまでの応答速度が非常に重要となる。よって、例えばバス上に複数の機器が接続されたイーサネット(登録商標)等で採用されているCSMA/CD(Carrier Sense Multiple Access with Collision Detection)方式のような、複数アクセスを許可し、その結果通信時間の保証が得られない方式は適切でない。適切な通信制御方式としては、例えばポーリングセレクティング通信等、親局が全体の通信管理を行い、親局よりポーリング信号と呼ばれる回線利用権を各子局に送り、ポーリング信号を受け取った装置が他の装置との通信を行う手順が挙げられる。この方式では、データの送信前に共通バスに対して先に呼びかけを行い、他のユニット等が共通バスを使用していないことを確認してから、共通バスを専有してデータ送信を開始する。この場合、コントローラ部30が親局に該当し、ライトカーテンや非常停止ボタン等のバス上に接続された各装置が子局に該当する。また、独自のネットワークではなく、通信の遅延時間が規定された汎用のネットワークを使用することも可能である。このようなネットワークとしては、例えばCANの拡張タイプであり安全性を重視した時間同期(タイム・トリガ)を有するTTCAN(Time Triggered CAN)、車載用エアバック等の安全関連に使用するネットワークとして知られるByteflight、FlexRay等が利用できる。またアクセス方式はFTDMA(flexible time division multiple access)等が利用できる。このように、TDM(Time Division Multiplexing)により各ユニットにネットワークへのアクセス権を時分割して与え、各ユニットがバスラインへ情報を送出するまでの遅延時間を一定に保てるような通信制御手段を持つことが望ましい。これによって通信時間の保証が得られ、一定の応答速度を確保して安全性を高められる。通信制御は、共通バス上のコントローラ部30が受け持つ。
【0039】
上述のように、コントローラ部30は、共通バス上の通信を管理する親局としての機能を持たせることが望ましい。これによって、共通バスに接続されたいずれかのユニットで電源が落ちる等の問題が生じても、コントローラ部30によってそれ以外のユニットとの間の通信が維持できる。さらにコントローラ部30も一台に限られず、共通バス上に2台以上を接続することも可能である。コントローラ部30が共通バス上に接続された複数のユニットを区別して通信を行うために、各ユニットには相互を区別する識別情報としてID情報が付与される。各ユニットに対し割り振られたID情報に基づいて、コントローラ部30が通信のタイミングを割り振る。
(識別情報の付与)
【0040】
ID情報の設定の方法としては、例えば各ユニット毎にDIPスイッチやロータリースイッチ等を設け、個別のIDを手動で設定する。またハンディコンソール等の外部入力手段を接続して設定したり、各ユニットのシリアル番号等、固定して割り振られた固有の情報を利用する方法等も利用できる。また、このような手動設定の手間を省くために、コントローラ部30が共通バス上に接続された各接続機器を認識して、自動でIDを付与することもできる。例えば電源投入時に、コントローラ部30は起動順あるいは接続順にすべての接続機器に対してID情報を自動的に付与する。この場合は、電源投入毎に各ユニットのID情報が再度付与される。このようにして同一ライン上に接続された投受光ユニット等の接続機器を、コントローラ部30は各機器に付与されたID情報に基づいて区別できる。ID情報は、ID番号やID記号等とできる。コントローラ部30から各ユニットへの命令は、共通バスを介してパケットデータ形式で送信できる。パケットデータは、命令の送信先のID情報と、指示内容とを含む。
(同期)
【0041】
さらに一本の共通バスで制御することにより、複数の投受光ユニットの投受光の動作タイミングをずらして相互干渉の防止を図ることも可能となる。ライトカーテンの場合は、投光、受光という光を使った入光/遮光状態を検出しているため、他のユニットから投光された光が、本来関連のない受光ユニットにも入光し、安全信号が誤動作を引き起こすという相互干渉が発生し得る。相互干渉を防止するためには、光軸を光学的に分離する方法と、投光のタイミングをずらして時間的に分離する方法がある。またその他の方法として、相互干渉の有無を検出し、干渉した場合には一定時間経過後に再履行する方法もあるが、一定時間を空けることにより相互干渉が発生した場合には応答速度が遅くなる可能性があり、即応性の観点からは適切でない。
【0042】
これに対して、本実施例のように各ユニットを同一バス上に接続し、コントローラ部が通信制御する方式では、コントローラ部より各ユニットの投光タイミングを制御することが容易に行える。具体的には、各ユニット毎に通信タイミングを割り振る際に、投受光動差に必要な時間を割り振り、この通信に割り当てられた時間内に各光軸の投光/受光動作を行う。ここで投受光動作に必要な要処理時間はユニットの光軸数によって異なり、光軸が多くなる程時間も長くなる。このように予め各ユニット毎に投受光の動作時間を割り当てることにより、このバス上に接続されたライトカーテン同士では投光タイミングが重なることが無くなり、相互干渉を解消できる。このような時間的な分離を自動的を設定する干渉防止機能を、コントローラ部30に備えることができる。さらに、ライトカーテンの設置後に投光部同士、受光部同士の間に渡り線を設けることにより、より確実な干渉防止が容易に実現できる。渡り線は、複数のバス間に接続されたライトカーテンの相互干渉を防止する目的で、複数のバス間を接続するラインであり、相互干渉防止用の信号を伝送する。例えば、隣接する装置同士のGNDレベルが異なる場合等、予期せぬノイズ電流を防止する目的で、好ましくは絶縁タイプ変換器を使用して電気的に絶縁し、信号のみを伝送する。
【0043】
このような干渉防止機能は、安全信号の出力を割り当てたグループの範囲内で実行することができる。すなわち、同一グループ内では自動的に干渉防止機能が働くので、複数のグループを使用する場合は、これらの間で干渉が生じないように、空間的な分離を図る。例えば、図4に示すようにグループA、B、Cの3つのグループを設定し、各グループに同じ光軸数の4組の投受光ユニット1〜4が含まれる場合を考える。この場合、各グループでユニット1〜4は同じタイミングで順次ユニットを切り替えて投受光される。すなわち、ユニットA1、B1、C1はそれぞれ同じタイミングで投受光され、またユニットA2、B2、C2、さらにユニットA3、B3、C3、さらにまたユニットA4、B4、C4もそれぞれ同じタイミングで投受光される。このため、各グループの同じ番号のユニットが干渉しないように、これらのユニットを空間的に分離する。ユニット間の空間的な分離方法としては、例えば投受光を構成する光軸の光の進行方向が逆向きとなるように、投光ユニットと受光ユニットの配置関係を逆転させたり、ユニットの間に光を遮断する遮蔽板Sを配置したり、ユニットを離間して配置する等の既知の方法を検討すればよい。このように、時間的分離と空間的分離を併用することで、多数のユニットや光軸を使用する安全システムにおいても、容易にかつ確実に相互干渉の防止を図ることができる。
(ユニットのダウン、再起動へのコントローラ部の対応)
【0044】
さらに、同一の共通バス上に接続された接続機器は、一部が停止しても他の機器の動作に影響を与えないように動作させることが好ましい。例えば、一部のライトカーテンで電源が切断される場合を考える。複数のライトカーテンが同一バス上に接続されている場合において、通常動作時はこれら複数のライトカーテンもコントローラ部に通信タイミング及び投光タイミングを制御されて動作している。このうち1台のライトカーテンの電源がシャットダウンした場合、電源が遮断したライトカーテンは動作が停止し、コントローラ部との通信も途絶える。コントローラ部は一のライトカーテンからの通信が途絶えた場合、そのライトカーテンはシステムより切り離されたと判断し、この投受光ユニットに割り当て有られていた通信タイミング/投光タイミングをそのままブランクとして維持する。あるいは、その次のタイミングに位置するユニットの通信/投光タイミングを繰り上げるよう、再割り当てを行う。このように、コントローラ部で通信/投光タイミングの割り当てを制御する結果、一部のユニットが停止したとしても他のユニットの制御は継続され、システム全体の停止を回避できる。
【0045】
逆に、共通バス上に接続されていたものの、通電していなかったユニットが動作を開始した場合にも、適切な対応が可能である。コントローラ部は、常時バスの通信を監視し、新たにユニットが追加された場合には、通信タイミングの一番終わりのタイミングに、このユニットの通信タイミングを割り当てる。もし通信タイミングに空きが無く、タイミングを割り当てをできない場合には、このユニットを通信エラーによりロックアウトさせる。これにより、ユニットの追加にも適切に対応できる。
【0046】
一方、バスラインの物理的な障害により、ユニットがコントローラ部との通信が確立できない場合、このユニットは通信エラーと認識しロックアウト状態になる。これにより、動作中にケーブルの切断等が発生した場合にはフェイルセーフ側に動作可能である。
【0047】
また各ユニットの通信は、上述の通り各光軸が投受光を行っている間はバスを占有しており、このタイミングで光軸毎の入光/遮光情報をバス上に送信する。これにより、コントローラ部や他のユニットは、該当する光軸の入光/遮光情報を得ることができ、これに基づいて光軸毎に出力をグループ化することができる。
(出力のグループ化)
【0048】
安全信号のグループ化には、ユニット同士のグループ化と、光軸単位のグループ化があり、本実施例ではいずれも可能である。以下、ユニット同士のグループ化の前提として、まず投受光ユニットの関連付けについて説明する。
【0049】
従来、複数の投受光ユニットを増設する場合は、投光ユニット同士、あるいは受光ユニット同士を直列に増設していた。例えば親機側の投光ユニットの上部よりケーブルを引き出し、投光ユニットの子機側に接続する。また同様に、受光ユニットも親機の上部よりケーブルを引き出し、子機側に配線する必要があった。また現在の設定が親機か子機かの確認も容易でなく、このような区別が面倒であった。さらに制御対象の装置にこれらの投受光ユニットを設置する場合、ケーブル取り回しラインをライトカーテン下部と上部に設ける必要がある等、設置上の制約を受ける場合もあった。
【0050】
これに対し、本実施例では一つの共通バス上に投光ユニット、受光ユニットを問わず取り付け可能であり、配線の自由度が増加する。従来のように直列接続を行う場合に子機の受光ユニットを親機の受光ユニットに直接接続しなければならないといった接続順序の制約がなく、例えば直列増設の親機と子機の順番を入れ替えたり、受光ユニットに投光ユニットを接続する等、自由な接続形態を選択できる。またライトカーテンの上部より共通バスを引き出せるようにしておけば、図5に示すように投受光ユニットをL字状に取り付ける際にも使い勝手がよい。さらにコントローラ部からマルチ分岐が可能な共通バス上に、投光ユニット、受光ユニットの他、動作表示灯やミューティングランプ、非常停止スイッチ、ドアスイッチといった他の安全機器の入出力も接続でき、これによって省配線化を計ることができる。
(関連付けの設定)
【0051】
このように共通のバスライン上に複数の投受光ユニットを混在させる場合、対となる投光ユニットと受光ユニットの関連付け又はペアリングを設定する必要がある。ユニットの対をユーザが指定することで、共通バス上に接続された複数の機器をコントローラ部は正しく認識でき制御できる。この設定は、投受光ユニットの本体に設定スイッチを備える方法や、コンピュータ等の外部機器と接続して設定する方法等がある。またコントローラ部のプログラミングによって関連付けを行うこともできる。また、関連付けをユニット単位でなく光軸単位で行うこともできる。光軸単位での関連付けを可能とすることで、例えば長さや光軸数の異なる投光ユニット、受光ユニットであっても、これらを組み合わせてトータルの光軸数が一致するように構成して正しく関連付けを使用できる。
(関連付けの手順の詳細)
【0052】
上記のような関連付け作業は、通常は安全システムの制御対象の装置への設置時や、メンテナンス等でユニットの取り替えを実施したとき等に行われる。なお不用意な設定変更は、安全システムの信頼性を損ねるおそれがあるため、誤って設定が変更されることのないよう、安易に設定変更できないような構成とすることが好ましい(詳細は後述)。また、共通バスに接続されたユニットの構成を、関連付け設定用のユーザインターフェースで確認できることが好ましい。これによって、関連付け作業に先立ち、ユーザは関連付けの必要なユニットを確認できる。
(外部入力手段による設定方法)
【0053】
投光ユニットと受光ユニットの関連付けを設定する方法の一例として、外部入力手段を使用する方法について説明する。ここでは、外部入力手段として、コンピュータ等の汎用機器にインストールされた設定プログラムを利用し、コンピュータとコントローラ部とを何らかの方法で接続してデータのやりとりを行う。
【0054】
まず共通バス上に接続された安全機器の数と種類を決定し、各ユニットにID情報を割り当てる。例えば投受光ユニットの接続数や各ユニットの光軸数、非常停止ボタンの種別や接続位置等が確認される。例えば、コントローラ部30とコンピュータをUSB等の汎用の通信手段もしくはメモリカード等の媒体を使用してデータをやりとりする。コントローラ部30のコントローラ制御回路36より、これに接続されたライトカーテンを構成する投受光ユニットの光軸数/ユニット数/最小検出体等の設定データをコンピュータ側に取り込んで、基本情報を設定し、その上で設定項目を具体的に設定する。ここでは、各安全機器の属性及び関連付けを設定する。例えば、ユーザはコンピュータ上の設定プログラムにより、1ユニット目の1光軸目から16光軸までのどこかが遮光されたら出力1−A、1−BをOFFさせる、1ユニット目の15光軸より64光軸までのどこかが遮光されたたら出力2−A、2−BをOFFさせる、1ユニット目の32光軸目から2ユニット目の最終光軸までの合計2光軸が遮光されたら出力3−A、3−BをOFFさせる、といった設定を行う。なおライトカーテンの場合は、出力回路の故障に備えて、1系統の安全信号出力に対し、2本の出力ラインを持たせることが好ましい。設定終了後、各安全機器をコンピュータと接続し、各安全機器に対してID情報等の設定情報を書き込む。例えば、設定プログラムをインストールしたコンピュータと各安全機器とを直接接続し、あるいは共通バスを介して通信を確立し、上記の設定内容を転送する。通信方式としては汎用の通信方式が適宜利用でき、例えばUSBやシリアル接続等の有線接続の他、IrDA等の赤外線通信やBluetooth(登録商標)等の無線接続を利用することもできる。同様にコンピュータをコントローラ部30とも接続し、各安全機器の設定データを送信してコントローラ部30のメモリ等に記憶させ、設定内容を更新させる。そしてコントローラ部30は、設定内容の確認のため共通バス上に接続された安全機器を監視し、設定された設定データとの不一致がないかどうかを判定する。設定との差異が発生した場合にはシステムの異常と判断し、出力をOFFさせる。
【0055】
ただ、コントローラ部自体にこのような設定機能を設けて、ユーザがコントローラ部を操作して設定を行うように構成することも可能である。コントローラ部30のコントローラ制御回路32は設定部38を備えており、設定部38はユーザインターフェースを介して、ライトカーテンのどのエリアにフローティングブランキング等の無効化機能を適用し、どのエリアに通常の安全機能を適用するかの設定情報を受光部20に供給する。設定部38のユーザインターフェースとしては、例えば、スイッチの入力、テンキーによる無効化機能適用エリアの直接的な入力、ティーチング入力等が挙げられる。ユーザは、このユーザインターフェースを用いて無効化機能適用エリアを任意に設定することができる。
【0056】
また、検出領域の設定をティーチング法により行うこともできる。ティーチングはワークを実際に通過させて、その際の入光/遮光状態を記憶させて設定する。コントローラ制御回路32のティーチング入力回路33により、ティーチングの実行が入力されると、ティーチングモードとなって検出領域がティーチング法により設定される。設定された内容は不揮発メモリであるメモリ35に保持される。またティーチングの際、検出領域のグループ化の設定も同時に行う。例えば所定の動作の間に遮光された領域を検出領域のグループ1に指定する。ティーチングの終了後、手動又は自動的に多光軸光電式安全装置は通常動作モードに切り替えられる。
【0057】
さらに、ハンディコンソールによる設定も可能である。各光軸毎に検出領域としてどのグループに属するかを設定し、そのグループ単位で多光軸光電式安全装置側で安全信号を出力する設定とする。
【0058】
上記の設定に際しては、多光軸光電センサの光軸毎の出力をコントローラ部で管理する。具体的には、プログラマブルコントローラの内部リレーと同様に、セーフティPLCのI/Oとして管理する。各光軸毎の入力をユーザが設定するプログラムによってOR回路を組むことで、光軸のグループ化が実現され、そのグループの中のいずれかの光軸が遮光されたという信号を、そのグループと関連付けた安全信号に反映させることができる。関連付けた情報は、コントローラ部30のメモリに記憶される。またこの安全信号は最終的にはプレス機の電源を遮断することを目的とし、直接そのプレス機の電源の遮断する他、遮断を介するコンタクタ等の機器の開閉に利用される。
【0059】
また、上記の設定内容は、安易に設定を変更できると予期しない安全性の低下を招き、事故が発生する可能性があるので、安易に設定変更ができないように管理することが望ましい。具体的には、機械メーカが工場出荷時に設定を行い、その後は設定変更を許可しない場合、もしくはユーザが充分な知識を持った管理者の監督の下に取り付け/設定を行い、設定変更については管理者の指示の基に行う。このようなことを実現する例として、汎用のツールでは書き込みのできないような専用メモリカードを使用する。又はパスワードによる管理や、H/Wキーをコンピュータに接続している時のみ、書き込み可能とする等の方法が適宜利用できる。
(検出領域の指定)
【0060】
以上のようにして投光ユニットと受光ユニットの関連付けがなされ、光軸が確立されると、複数の光軸で平面状の検出領域が形成される。この検出領域は、一のみならず複数を指定可能である。言い換えると、一の大きな検出領域を複数の小領域に分割して、この小領域毎に安全信号を出力するようにグループ化することができる。以下の説明では、分割された小領域を検出領域として説明する。複数の検出領域の指定は、コントローラ部30の設定部38にて行う。検出領域の指定は、検出領域を構成するユニットを単位として行う他、各検出領域に属する光軸を割り当てることもできる。このようにして、各検出領域毎に安全信号が生成され、複数の安全信号が各々出力回路36から出力される。
【0061】
例えば、図6のような配置を考える。この例では、壁面に配置されたA〜Dの4つの作業台で、各々独立した作業を行う。各作業台にプレス機等の危険源が含まれるため、各作業台に作業者の手が入るのを検知してプレス機を停止させるように、各作業台を囲むようにして投受光ユニットを上下一対に配置した多光軸光電センサが各プレス機をコ字状に囲むように配置される。一方で、A〜Dは独立した作業であるため、停止させるのは手の挿入を検出した作業台のみとし、他の台は停止させることなくそのまま作業を継続させたい。このような状態において、従来であれば投受光ユニットの出力が一系統のみであるため、図6に示すように各作業台毎に投受光ユニットで囲むように配置し、各々のセンサの出力で独立した検出を行う必要があった。このような配置では、隣接する作業台の境界に2重に投受光ユニットを配置する必要があり、図6に示すように作業台A、Bの境界で投受光ユニットA1、B1が隣接され、作業台B、Cの境界で投受光ユニットB2、C1が隣接され、作業台C、Dの境界で投受光ユニットC2、D1が隣接される。このように、隣接する作業台が多くなるほど、投受光ユニットの2重に設置する領域が増えて多くのスペースが必要となる。また投受光ユニットの使用数が増えると配線が複雑化し、コストもかかる。さらに隣接する投受光ユニットの影響で動作が不安定になる相互干渉に留意する必要もある。
【0062】
これに対して、本実施の形態に係る多光軸光電センサは、図7に示すように、隣接する領域に投受光ユニットを1列のみ配置する。図7の例では、投受光ユニットE1〜E9を配置し、作業台A、Bの境界には投受光ユニットE3のみ、作業台B、Cの間には投受光ユニットE5のみ、作業台C、Dの間には投受光ユニットE7のみを、それぞれ配置する。そして、検出領域Aとして投受光ユニットE1、E2、E3を指定する。また検出領域Bとして投受光ユニットE3、E4、E5を指定する。同様にして検出領域Cとして投受光ユニットE5、E6、E7を指定し、検出領域Dとして投受光ユニットE7、E8、E9を指定する。
【0063】
このような検出領域の指定は、上述のように設定用プログラムから行う。設定用プログラムは、同じ投受光ユニットを異なる検出領域に含めることが可能である。図8は、図7の投受光ユニットに対してグループ化を行う様子を示す斜視図である。図8に示すように、投受光ユニットE1を構成する投光ユニットE1a及び受光ユニットE1bは、この間の光軸群により平面状の検出領域1を形成している。同様に、投受光ユニットE2を構成する投光ユニットE2a及び受光ユニットE2bは、平面状検出領域2を形成し、さらに投受光ユニットE3を構成する投光ユニットE3a及び受光ユニットE3bは、平面状検出領域3をそれぞれ形成している。そして設定用プログラムは、これら平面状検出領域1、2、3をまとめて、すなわちグループ化して、コ字状の検出領域Aとしている。
【0064】
また一方で、投受光ユニットE4を構成する投光ユニットE4a及び受光ユニットE4bは、この間の光軸群により平面状の検出領域4を形成しており、さらに投受光ユニットE5を構成する投光ユニットE5a及び受光ユニットE5bは、平面状検出領域5を形成している。そして、上記の平面状検出領域3に、平面状検出領域4、5を加えて、グループ化されたコ字状検出領域Bとしている。このように、同じ投受光ユニットを利用して異なるグループを指定することができる。これによって、図6のように複数の投受光ユニットを同じ部位に並べることなく、投受光ユニットを共有することができ、低コスト、省スペース化並びに省配線が実現できる。特に、隣接する領域との境界部分に一の投受光ユニットを配置し、これを隣接する領域で共有することにより、使用する投受光ユニット数を減らしても従来と同様の効果を得られる。しかも投受光ユニットを減らせることで、すっきりした配置とできる。特にセル生産方式のように複数の作業装置が隣接して配置された状態において、壁の部分は左右の隣接するセルで共有できるので、スペース効率も向上し、光軸間の相互干渉も回避できる上、設置コストや管理も削減できる。
【0065】
さらに、各検出領域毎に個別に安全信号を出力可能とする。例えば検出領域Aで遮光が検出され、安全信号が出力されても、それは検出領域Aに含まれるプレス機のみを停止させるに止まり、検出領域B〜Dには影響を与えない。これによって、安全を確保する必要のある部位のみを停止させて、システム全体を停止させることなく、安全性と効率とを両立させることができる。
【0066】
なお、上記の構成においては、隣接する領域に配置された投受光ユニットで遮光が検出された場合は、この投受光ユニットに割り当てられた検出領域でのプレス機が停止されることはいうまでもない。例えば図7の例において投受光ユニットE3で遮光が検出された場合、検出領域A及びBが停止となるが、これは図6の構成と結果において何ら変わらない。
【0067】
また、上記の例では検出領域A〜Dで独立して制御信号を生成しているが、関連性のある領域等では、これらをまとめた検出領域として指定することもできる。例えば検出領域BとCが関連しており、停止時には両者を検出領域B、Cに含まれるプレス機を共に停止させる必要がある場合は、検出領域B+Cとして、投受光ユニットE3、E4、E6、E7を指定し、いずれかの光軸が遮光された場合に検出領域B、Cに含まれるプレス機を共に停止させることができる。
【0068】
さらに上記の例では、検出領域として投受光ユニット単位で指定したが、投受光ユニットに含まれる光軸単位で検出領域を指定することも可能である。例えば、図9として、図7と同じ条件において投受光ユニットE2、E4、E6、E8に変わって、これに相当する長さの投受光ユニットE10を配置する例を考える。そして検出領域Aとして、投受光ユニットE1、E3と、E10の光軸e1、検出領域Bとして投受光ユニットE3、E5とE10の光軸e2、検出領域Cとして投受光ユニットE5、E7とE10の光軸e3、検出領域Dとして投受光ユニットE7、E9とE10の光軸e4のように指定できる。これによって、1本の投受光ユニットを複数の投受光ユニットのようにして指定できる。また逆に上記図7のように、複数本の投受光ユニットを一本の投受光ユニットのようにまとめたり、複数の投受光ユニットを跨った指定を行うことも可能である。図10の例では、図9の投受光ユニットE10に変わって、3本の投受光ユニットE11、E12、E13を組み合わせている。そして図9と同様に、投受光ユニットE1、E3に加えて、投受光ユニットE11の一部の光軸e1でもって検出領域Aを構成し、投受光ユニットE3、E5に加えて投受光ユニットE11の一部の光軸e2’と投受光ユニットE12の一部の光軸e2”とで検出領域Bを構成する等、複数の投受光ユニットに跨った検出領域の指定を行うことができる。
【0069】
また検出領域として、一部が重複した領域を指定する他の例を図11に示す。この図に示すように、2本の細長い投受光ユニットE14、E15を上下に配置し、プレス機A、Bの前面にライトカーテンを配置する例を考える。この投受光ユニットの光軸でプレス機A用の検出領域A1、プレス機B用の検出領域B1のそれぞれ指定する際、検出領域A1、B1が端部で重複するように、一部の光軸を共有することができる。このように、一本の投受光ユニットの複数の投受光ユニットのように分割でき、さらに一部の光軸を共有するような設定も自在である。これにより、より詳細な検出領域の指定が可能となる。
【0070】
また、複数の検出領域について、好ましくは各々動作表示灯を備える。これによって、ユーザは各検出領域の出力状態等を容易に視認できるので、複数の検出領域を指定しても、確認が容易に行える。動作表示灯は、例えば赤色と緑色のLEDにより構成され、正常時に緑のLEDを点灯して赤のLEDを消灯し、異常時には緑のLEDを消灯して赤のLEDを点灯する。動作表示灯は外付けでも、いずれか一のセンサユニットにLED等の出力表示部を設ける方式でもよい。後者の場合は、各検出領域に属するセンサユニットの少なくとも一に、出力表示部を設けたセンサユニットを含め、この出力表示部を機能させる。またすべてのセンサユニットに動作表示灯を設け、検出領域のグループに属するすべてのセンサユニットで出力表示部を機能させてもよい。また、センサユニットの出力部と動作表示灯を兼用させてもよい。
【0071】
なお上記の例では、各安全機器をケーブルによって電気的に接続する場合について説明した。ただ、本明細書において接続とは、典型的には電気的に接続することを意味するものであるが、必ずしも物理的な接続のみを意味するものでなく、無線、有線を問わず、電磁気、音波、赤外線、紫外線、可視光線等を利用した通信も含む。またOEIC(オプトエレクトロニクスインテグレーテッドサーキット)等電気光素子を用いたデータやエネルギーの送受信に見られるように、電気や光をはじめとする圧力、音波、電波、熱等を媒体とする信号データの送受信や各種エネルギーの送受信が可能なように「接続」された状態も本発明にいう接続であるとするものであり、直接接続、間接接続は問わない。さらには、常時接続されている必要はなく、スイッチ回路や切り替え回路にて駆動回路の駆動状況に応じて必要時のみ(例えば電荷、電気、電流が通る時のみ)接続されるように構成してもよい。同様に、光電センサで媒体とする光についても、可視光のみならず赤外線、紫外線等も含めたあらゆる種類の光全般を含む意味で使用する。また複数の接続端子を用意すれば、通信を行わないI/O接続とすることも可能である。
(実施例1)
【0072】
また多光軸光電式安全装置は、各光軸の検知状態に応じて安全機能を切り替え可能な機能を備える。具体的には、特定のワークを検出しても安全機能を働かせないように無効化させる無効化機能を備えており、無効化機能のON/OFFを切り替えることで、必要なワークについては安全機能をOFFさせてシステムの効率的な運用を図ることができる。以下、本発明の実施例1に係る多光軸光電式安全装置について、図12〜図13に基づいて詳述する。
【0073】
図12は、ワークWがプレス機まで搬送される経路にライトカーテンを配置する例を示している。この例では光軸を1Ax〜13Axまで13個直線上に並べた投受光ユニット48を使用し、長手方向がワークWの進行方向と一致するように水平方向に配置して、投光ユニット、受光ユニットの間で検出領域を構成し、この間にワークWがコンベア等により侵入する。このワークWの侵入は当然ながら通常の動作であって、投受光ユニット48がワークWを検知してもシステムを停止したくない。このため、ワークWの侵入によってシステムが停止しないよう、投受光ユニット48の安全機能を一時的に無効化するための無効化機能をONする必要がある。
【0074】
従来のシステムでは、図12において左からワークWが侵入し、1光軸でも遮光状態にすると、直ちにその遮光状態を安全信号に反映し、出力回路のOSSDもしくはFSD出力をOFFされるので、システムが停止されることとなり、好ましくない。
【0075】
これに対して、本実施の形態に係る多光軸光電式安全装置では、検出領域から正常ワーク形状検出エリアを指定し、この正常ワーク形状検出エリアでの検出結果に基づいて安全機能の無効化機能を切り替えるように構成する。具体的には、投受光ユニット48の光軸について、1光軸目から5光軸目(1Ax〜5Ax)までを正常ワーク形状検出エリアとして指定する。このエリアに対し、予め予想されるシーケンスで遮光状態がなされれば、規定通りの正常なワークWが侵入したと判断し、逆に予想外のシーケンスで遮光状態がなされれば、規定以外の異常なワーク、例えば人の手の侵入がなされたと判断する。
【0076】
この工程を図13のタイミングチャートに基づいてより詳細に説明する。正常なワークWの侵入によって投受光ユニット48が1光軸目(1Ax)より2、3、4光軸(2Ax〜4Ax)と順次遮光される。例えばaのタイミングでは、2、3、4光軸が遮光されている状態となっている。この遮光状態より、ワークWの大きさは3光軸遮光する大きさであることが判断できる。
【0077】
次のbのタイミングでは、3、4、5光軸(3Ax〜5Ax)が遮光状態となり、3光軸遮光する大きさのワークWが、プレス機の存在する危険領域に移動していることが判別できる。
【0078】
本実施の形態の目的は、指定されたワークが、ライトカーテンの安全信号(OSSD又はFSD)をOFFさせることなく、装置の作業エリア(危険領域)に搬送され、それ以外のワーク、例えば人体等が侵入した場合には速やかに、安全信号に反映させて、システムを停止させることである。本実施の形態の場合、1〜5光軸(1Ax〜5Ax)は正常ワーク形状検出エリアに指定しているが、6〜13光軸(6Ax〜13Ax)は異常検出エリアとして設定する。すなわち、通常動作中は、1光軸でも遮光状態になると直ちに安全信号をOFFさせるが、上述のように正常ワーク形状検出エリアにて指定のワークであると判定されたワークWが、正常ワーク形状検出エリア側から順次移動してくる場合には、このワークWによる遮光状態を安全信号に反映させることなく、安全信号はOK状態のまま、ワークWを通過させることが可能である。
【0079】
具体的には、前記のように、bのタイミングでは、指定のワークWが危険領域に向かって移動しているという情報は判別できており、かつ、次は6光軸目(6Ax)を遮光状態にさせることは容易に予測できる。つまり、制御手段の一形態であるコントローラ制御回路は、bのタイミングの遮光状態より、次のタイミングでは指定のワークWが6光軸目を遮光状態にすると判断し、6光軸目を予め部分的なミュート状態に設定を行う。
【0080】
次にcのタイミングでは、4、5、6光軸が遮光状態となっており、次は7光軸目が遮光状態になることは明白である。つまり、コントローラ部は6、7光軸(6Ax〜7Ax)をミュート状態に設定し、ワークWによる6、7光軸目の遮光を安全信号に反映させないようにする。
【0081】
同様にd、eのタイミングでは順次8、9光軸(8Ax〜9Ax)をミューティング状態に設定していく。しかしfのタイミングではワークWが通過し終わって、再び入光状態に変化しているので、この光軸はワークWの通過が完了したと判断し、ミューティング設定を解除する。すなわち、人体等により再び6光軸目(6Ax)が遮光状態になった場合には、安全信号をOFFさせるように働く。上記のような動作を、ワークWが異常検出エリアを通過完了するまで繰り返す。
【0082】
このような動作をするライトカーテンシステムを供給することにより、従来のようなワークを検出してミュートを起動するためのミューティング用センサといったミューティング装置を不要にできる。またミューティング装置が不要になることで省配線が実現できる。さらにワークの大きさを厳密に判別するので、指定のワークとそれ以外のワークとの誤判別を回避できる。またワークの長さを検出することもできる。例えばティーチングにより正常ワーク形状検出エリアを設定する際に、ワークの長さが光軸にして何個分であるかを測定して表示できる。なお投光部及び受光部を、長手方向がワークの進入方向と平行となるように設置することで、ワークの進入方向に沿って光軸が配置されるので、ワークの長手方向長さの検出を確実に行える。
【0083】
さらに、ワークの大きさを厳密に判別し、かつワークの存在するエリアのみでミューティング機能を有効にし、それ以外の領域では通常の安全機能を維持できる。すなわち何らかの異物を検出すると安全信号をOFFさせる動作を継続しているので、仮にワークと人体が同時侵入しても、人体を確実に検出でき、それによって安全信号をOFFできるので、危険を防止できる。
【0084】
このように、実施例1によれば簡素な構成でミュート機能等の無効化機能を確実に動作させ、しかも必要最小限の部位のみで無効化を行い、高い安全性を維持できる。すなわち、従来であれば危険領域の入り口部分にライトカーテンを設置し、ミュート機能を使用してワークのみを危険領域に通過させる場合には、ワーク検出用のセンサ(ミューティング用センサ)が2ヶもしくは4ヶ必要であった。これに対して実施例1では、同様の機能をミューティング装置を使用することなく、ライトカーテンのみで提供可能である。別の観点からは、複数のセンサユニットを使用して、一部は安全センサとして使用し、一部はセンサユニットのための形状判別センサとしてペアで使用することができる。また異なる形状のワークが投入されたことも検出できる。なお、部分的なミュート機能に代えて、フローティングブランキング機能を利用することもできる。フローティングブランキング機能は、1以上の予め設定した数以下の光軸が遮光されても、安全出力をONのまま維持する機能である。上記の例では、フローティングブランキング機能で3光軸を設定すれば、部分的なミュート機能と同様の結果を得ることができる。
【0085】
また従来の方式では、ワーク検出用センサのセッティングはワークの大きさにより適切な配置を行う必要があり、ワークの大きさが変化した場合には、ワーク検出用センサの位置を再調整する必要がある。これに対して本実施例であれば、ワークの大きさは、ライトカーテンの遮光光軸数により制御回路側が認識可能であり、初期調整時にワークの大きさを記憶するメモリを複数設けることにより、例えば、上記のコントローラ側よりワークの大きさの変更を行うことも可能である。また、必要な光軸のグループのみをミューティングさせ、それ以外の光軸のグループは通常状態に設定することが可能となり、制御対象となるプレス機の状態に応じて安全性と効率を両立させた運用が可能となる。
(実施例2)
【0086】
以上の実施例1では、投受光ユニット48をワークの進行方向と沿うように横置きした場合を説明した。もちろん、投受光ユニットをワークの進行方向と直交するように、すなわち縦置きに配置することもできる。以下、本発明の実施例2に係る多光軸光電式安全装置について、図14〜図17に基づいて説明する。図14の例では、プレス機Pに向かって搬送されるワークW2が傾斜面を有しており、垂直方向に配置されたライトカーテンと交差する面積がワークW2の進行に従って変化する。よって、この変化する面積、すなわち入光/遮光状態に基づいて、ワークW2の進行を正しく検出して無効化機能を発揮できる。
【0087】
図14に示すように、ワークW2の搬入口等に、1Ax〜12Axの12個の光軸を備えるライトカーテン49を縦に設置する。またワークW2の進入経路に沿って、経路の両側にワーク検出センサ50としてセンサA1、A2、B1、B2を配置する。ワーク検出センサ50もライトカーテン49と同様の光軸を形成し、入光/遮光状態に基づいてワーク検出信号をコントローラ部に出力する。
【0088】
この多光軸光電式安全装置のブロック図を図15に示す。この図に示すように、ワーク検出センサ50のワーク検出信号はコントローラ部30のワーク検出センサ入力回路34に入力される。またライトカーテン49を構成する投受光ユニットはコントローラ部30のコントローラ側通信回路31と接続される。さらにコントローラ部30の出力回路36は、プレス機Pの装置を停止させるためのSTOP入力と接続される。コントローラ部30の出力回路が投受光ユニットの入光/遮光状態に基づいて安全信号を発すると、STOP入力が起動されてプレス機Pは停止される。
【0089】
このような場合において、従来はライトカーテンの近傍に設けたワーク検出センサA1、A2、B1、B2の入光/遮光情報に基づき、ライトカーテンの安全機能を一時的に無効にするミューティングを行うのが一般的である。この場合は、検出領域をすべて無効化するか、あるいは少なくともワークが検出されることなく通過できるように、ワークの最大サイズに応じた範囲の光軸をすべて無効にする必要があった。いずれの場合も、ミューティング状態の時にワークと同時に人の手等の異物が侵入した場合、その検出ができないという問題点があった。特に、後者の場合においてもワークの最大サイズに応じた範囲の光軸が無効化されるため、ワークの形状によっては検出できない領域(デッドスペース)が生成されるおそれがあった。
【0090】
もしくは、ライトカーテンが保護している領域の内、すべての範囲を無効にするのではなく、外部からの信号により、安全機能を無効にする領域を段階的に切り替えていく方法等が考えられる。例えば図16に示すように、上位の制御を行うシーケンサ52としてPLC等の制御装置を配置し、PLCからの切替信号をエリア切替回路54で受け、これに応じてミューティングエリアを可変させる。明らかに、この方法では制御装置を別途付加する必要があり、制御、構成が複雑化しコストがかかる問題があった。
【0091】
これに対し、実施例2に係る多光軸光電式安全装置では、ミューティング動作時に検出領域のすべてにわたって安全機能を無効にしたり、PLC等の外部信号により順次保護領域を切り替えていくのではなく、予め決められたシーケンスにより、ワークの侵入に従って自動的に保護領域を変化させていくことが可能である。具体的には、ワークW2の侵入により、最初にワーク検出センサA1、続いてA2が遮光状態となり、これらのセンサの出力であるワーク検出信号が反転する。従来のミューティング機能を利用した場合、遮光状態となった時点(図17のタイミングチャートにおけるタイミング4)でミューティング状態になり、ライトカーテンによる安全機能が検出領域の全域に渡り無効化される。これに対して本実施例の場合、ライトカーテンの保護領域のすべてにわたって無効化するのではなく、このタイミングではワークW2の侵入と共にライトカーテンが最初に遮光される部分(本実施例では、1、2光軸目)のみの部分的なミューティング状態に設定する(図17のタイミングチャートのタイミング4、5における1Ax、2Axの網掛け部分に相当)。
【0092】
次に、ワークW2が侵入しライトカーテンの1、2光軸目が遮光状態になる(タイミングチャートのタイミング6)。これまでの動作で、1、2光軸は部分的なミューティング状態に設定されているので、1、2光軸目が遮光状態になっても出力はON状態を維持している。また、1、2光軸が遮光されたことで、予めワークW2の形状が判っているので、本実施例の場合、次のタイミングで3光軸目が遮光状態になるのが容易に予想できる。従って、1、2光軸目が遮光されたタイミングで、3光軸目をミューティング状態に設定する(タイミングチャートのタイミング7、8の状態)。同様に、次に3光軸目が遮光状態になった場合には4光軸目をミューティング状態に、4光軸目が遮光状態になった場合には、5光軸目をミューティング状態というように、順次設定を行っていく。このように11光軸目までミューティング状態に設定され、かつ11光軸目まで遮光状態になった場合、ワークW2の形状より、次のタイミングではワークW2による遮光状態が途切れ、3〜11光軸目まで入光状態になることが予想される。実際に3〜11光軸が入光状態になると、予め設定したシーケンスに基づき、3〜11光軸のミューティング状態を一旦解除する。これにより、3〜11光軸の範囲で遮光状態になった場合には、この部分に人が存在する場合が予想されるので、ライトカーテンは安全信号をOFFさせて、プレス機Pの装置を停止させることができる(タイミングチャートのタイミング27、28)。ワークW2の形状より考えると、次は3〜11光軸が再び遮光状態になることが予想される。従って、ある一定時間が経過したら、3〜11光軸をミューティング状態にすることが必要である。このタイミングは、タイミングチャートの25→26のタイミングで3〜11光軸が入光状態になった時から、ワークW2の形状/コンベアラインのスピードを考慮の上、予め設定した時間経過後にミューティング状態に再び設定する(タイミングチャートで29のタイミング)。
【0093】
その後、予め設定したワークW2の形状に応じて、11光軸目が入光状態になったら、11光軸目のミューティング状態を解除し(タイミングチャートの32のタイミング)、その後同様に順次ミューティング状態を解除し、最終、1、2光軸のミューティング状態の解除は、従来例等と同じように、ワークW2がすべて通過後、ワーク検出センサB1、B2が入光状態になったタイミングで解除させる。
【0094】
上記のような方法により、従来、ワーク侵入口にミューティング機能を持ったライトカーテンを設置した場合に、ミューティング状態の時にワークと同時に人が侵入した場合、人の検出ができないという問題点を解消できる。またPLC等の外部からの切替信号に応じてミューティングエリアを可変する方法に比べ、ライトカーテンのみのシステムで、ワーク形状に合わせた必要最低限のミューティング状態を実現することが可能となる。このため図15に示すように、図16に示す従来の構成と比べて簡素化できる。
【0095】
同様に、本実施例ではミューティング機能に機能を限定して説明を行ったが、ミューティング機能だけではなく、フローティングブランキング機能、フィックスブランキング機能を組み合わせて設定を行ってもよい。例えば、タイミングチャートのタイミング4における3光軸目、タイミング24、25、26における12光軸目等は、ワークのばたつき等により遮光になる可能性がある。その場合、ミューティング機能だけではなく、例えばタイミングチャートのタイミング4では、1、2光軸をミューティング機能、3、4光軸をフローティングブランキング機能に設定することにより、ワークのばたつき等が発生しても、安全信号がすぐにOFFしない等、実使用条件における動作の安定する等のメリットが得られる。
【0096】
これらミューティング機能、フローティングブランキング機能、フィックスブランキング機能等の設定を行う設定手段も、上記と同様コンピュータ等の外部入力手段を利用する他、ティーチング法により行うことが可能である。すなわち、コントローラ制御回路32のティーチング入力回路33によりティーチングモードに切り替えた後、ライトカーテンの光軸間に実際にワークを侵入させ、その際の入光/遮光状態の変化を記憶させてパターンとして登録させることができる。またこのようにして登録されたパターンと異なるワークが侵入した場合、登録されたワークと異なるワークが侵入したことを検出できる。また設定は、ワークの侵入速度と多光軸光電センサの応答速度の関係に応じて、1光軸単位、あるいは複数光軸単位とする。さらに、この際のワークの全長や形状等を光軸の遮光状態から検出できる。また、予め複数のワークを登録しておき、これらを区別することも可能となる。さらにこの方法では、入光/遮光状態の変化を時間でなくパターンで登録可能であるため、ラインの停止や速度変化等が生じても適切に対応できる。加えて、ワークが最初にライトカーテンの光軸を遮光する領域でワークの形状等を判別するので、早い段階での判定処理を開始でき、迅速な処理が可能になるという利点も得られる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の多光軸光電式安全装置は、ライトカーテンを構成する光電センサ、光電形近接スイッチ等として好適に利用可能である。また透過形のライトカーテンのみならず、投受光部を一体としたリフレクタ形にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の一実施の形態に係る多光軸光電式安全装置を示すブロック図である。
【図2】投受光ユニットをケーブルで接続する状態を示す説明図である。
【図3】コントローラ部を投受光ユニットと接続して安全システムを構成する例を示すブロック図である。
【図4】異なるグループ間で干渉防止を設定する様子を示す斜視図である。
【図5】投受光ユニットをL字状に取り付ける例を示す斜視図である。
【図6】A〜Dの各プレス機をコ字状に囲んでそれぞれ個別に検出領域を設定する従来の例を示す概略平面図である。
【図7】A〜Dの各プレス機をコ字状に囲んで本発明の実施の形態に基づき検出領域をそれぞれ個別に設定する例を示す概略平面図である。
【図8】図7の投受光ユニットに対してグループ化を行う様子を示す斜視図である。
【図9】図7と同じ条件において長い投受光ユニットを配置した例を示す概略平面図である。
【図10】図7と同じ条件において3本の投受光ユニットを配置した例を示す概略平面図である。
【図11】図6と同じ条件において本発明の実施の形態に基づき検出領域をそれぞれ個別に設定する例を示す概略平面図である。
【図12】本発明の実施例1に係る多光軸光電式安全装置でワークを検出する例を示す斜視図である。
【図13】図12のワークを多光軸光電式安全装置で検出する状態を示すタイミングチャートである。
【図14】本発明の実施例2に係る多光軸光電式安全装置でワークを検出する例を示す斜視図である。
【図15】本発明の実施例1に係る多光軸光電式安全装置を示すブロック図である。
【図16】従来の多光軸光電式安全装置を示すブロック図である。
【図17】図14のワークを多光軸光電式安全装置で検出する状態を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0099】
100…多光軸光電式安全装置
10…投光部;11…投光素子;12…投光回路;14…投光制御回路
16…投光側通信回路
20…受光部;21…受光素子;22…受光回路;24…受光制御回路
25…受光データレジスタ;26…受光側通信回路;27…判定回路
30…コントローラ部;31…コントローラ側通信回路
32…コントローラ制御回路
33…ティーチング入力回路;34…ワーク検出センサ入力回路
35…メモリ;36…出力回路;37…表示部;38…設定部
40…ケーブル;42…非常停止スイッチ;44…ドアスイッチ
46…動作表示灯;48…投受光ユニット;49…ライトカーテン
50…ワーク検出センサ;52…シーケンサ;54…エリア切替回路
W、W2…ワーク;S…遮蔽板;P…プレス機
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を投光するための複数の投光素子を有する一以上の投光部と、
前記投光部と対向するように配置され、前記投光部から投光された光を受光するための複数の受光素子を有する一以上の受光部と、
前記投光部と受光部との間で構成される複数の光軸で検出領域を構成し、前記光軸の入光/遮光状態に基づいて生成された安全信号を外部に出力可能なコントローラ部と、
を備える多光軸光電式安全装置であって、
前記投光部は、投光側通信回路を備えており、
前記受光部は、受光側通信回路を備えており、
前記投光側通信回路及び受光側通信回路は、共通のバスに接続してデータ通信可能に構成してなり、
一の投光部に対して一の受光部を関連付けるための設定手段と、
前記光軸の入光/遮光状態に基づいて、前記安全信号を生成する安全信号生成手段と、
前記安全信号生成手段で生成された前記安全信号を出力するための出力手段と、
を備え、
前記投光部は前記設定手段で関連付けられた受光部との間で光軸を構成し、共通バスを介して所定のタイミングで投光/受光を行い安全信号を出力可能に構成してなることを特徴とする多光軸光電式安全装置。
【請求項2】
光を投光するための複数の投光素子を有する第1及び第2の投光部と、
前記投光部と対向するように配置され、前記投光部から投光された光を受光するための複数の受光素子を有する第1及び第2の受光部と、
一の投光部と一の受光部との間で構成される複数の光軸で検出領域を構成し、前記光軸の入光/遮光状態に基づいて生成された安全信号を外部に出力可能なコントローラ部と、
を備える多光軸光電式安全装置であって、
前記投光部は、投光側通信回路を備えており、
前記受光部は、受光側通信回路を備えており、
前記投光側通信回路及び受光側通信回路は、共通のバスに接続してデータ通信可能に構成してなり、
一の投光部に対して一の受光部を関連付けるための設定手段と、
前記設定手段により設定された第1及び第2の投光部を異なるタイミングで投光させるための投光タイミング制御手段と、
前記光軸の入光/遮光状態に基づいて、前記安全信号を生成する安全信号生成手段と、
前記安全信号生成手段で生成された前記安全信号を出力するための出力手段と、
を備え、
前記投光部は前記設定手段で関連付けられた受光部との間で光軸を構成し、共通バスを介して前記投光タイミング制御手段で生成される所定のタイミングで投光/受光を行い、前記安全信号生成手段で生成された安全信号を前記出手段から出力可能に構成してなることを特徴とする多光軸光電式安全装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の多光軸光電式安全装置であって、さらに、
前記検出領域を複数指定可能とすると共に、前記安全信号を複数として検出領域毎に生成し、各検出領域に属する光軸を割り当てるための検出領域設定部を備え、
光軸の入光/遮光状態に基づいて各検出領域で安全信号を生成し、前記出力手段が各前記安全信号を出力可能に構成してなることを特徴とする多光軸光電式安全装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の多光軸光電式安全装置であって、
前記コントローラ部が、共通バスを介して多光軸光電式安全装置の断線管理を行うことを特徴とする多光軸光電式安全装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の多光軸光電式安全装置であって、
前記投光側通信回路及び/又は受光側通信回路は、共通バスを介して光軸毎の入光/遮光情報を含むデータを前記コントローラ部に送信可能に構成してなることを特徴とする多光軸光電式安全装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の多光軸光電式安全装置であって、
前記投光部同士又は受光部同士の間に、干渉防止用の渡り線を接続可能に構成してなることを特徴とする多光軸光電式安全装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の多光軸光電式安全装置であって、
前記投光側通信回路及び受光側通信回路のデータ通信が、通信時間が保証された通信制御方式に従い行われることを特徴とする多光軸光電式安全装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の多光軸光電式安全装置であって、さらに、
前記共通バス上に接続された、検出領域と関連付けられた動作表示灯、ミューティングランプ、リモートI/Oモジュールの少なくともいずれかを備え、
前記コントローラ部が前記共通バスを介して、動作表示灯、ミューティングランプ、リモートI/Oモジュールの少なくともいずれかの動作制御を行うことを特徴とする多光軸光電式安全装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の多光軸光電式安全装置であって、さらに、
前記共通バス上に接続された非常停止スイッチを備えることを特徴とする多光軸光電式安全装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の多光軸光電式安全装置であって、
前記多光軸光電式安全装置は、安全信号を出力する安全機能を一時的に無効化する無効化機能を備え、
前記設定手段は、1以上の光軸の入光/遮光状態と、1以上の光軸に適用される前記無効化機能とを関連付け可能であり、
前記コントローラ部が、各光軸の入光/遮光状態、及び無効化機能の適用を管理するよう構成されてなることを特徴多光軸光電式安全装置。
【請求項1】
光を投光するための複数の投光素子を有する一以上の投光部と、
前記投光部と対向するように配置され、前記投光部から投光された光を受光するための複数の受光素子を有する一以上の受光部と、
前記投光部と受光部との間で構成される複数の光軸で検出領域を構成し、前記光軸の入光/遮光状態に基づいて生成された安全信号を外部に出力可能なコントローラ部と、
を備える多光軸光電式安全装置であって、
前記投光部は、投光側通信回路を備えており、
前記受光部は、受光側通信回路を備えており、
前記投光側通信回路及び受光側通信回路は、共通のバスに接続してデータ通信可能に構成してなり、
一の投光部に対して一の受光部を関連付けるための設定手段と、
前記光軸の入光/遮光状態に基づいて、前記安全信号を生成する安全信号生成手段と、
前記安全信号生成手段で生成された前記安全信号を出力するための出力手段と、
を備え、
前記投光部は前記設定手段で関連付けられた受光部との間で光軸を構成し、共通バスを介して所定のタイミングで投光/受光を行い安全信号を出力可能に構成してなることを特徴とする多光軸光電式安全装置。
【請求項2】
光を投光するための複数の投光素子を有する第1及び第2の投光部と、
前記投光部と対向するように配置され、前記投光部から投光された光を受光するための複数の受光素子を有する第1及び第2の受光部と、
一の投光部と一の受光部との間で構成される複数の光軸で検出領域を構成し、前記光軸の入光/遮光状態に基づいて生成された安全信号を外部に出力可能なコントローラ部と、
を備える多光軸光電式安全装置であって、
前記投光部は、投光側通信回路を備えており、
前記受光部は、受光側通信回路を備えており、
前記投光側通信回路及び受光側通信回路は、共通のバスに接続してデータ通信可能に構成してなり、
一の投光部に対して一の受光部を関連付けるための設定手段と、
前記設定手段により設定された第1及び第2の投光部を異なるタイミングで投光させるための投光タイミング制御手段と、
前記光軸の入光/遮光状態に基づいて、前記安全信号を生成する安全信号生成手段と、
前記安全信号生成手段で生成された前記安全信号を出力するための出力手段と、
を備え、
前記投光部は前記設定手段で関連付けられた受光部との間で光軸を構成し、共通バスを介して前記投光タイミング制御手段で生成される所定のタイミングで投光/受光を行い、前記安全信号生成手段で生成された安全信号を前記出手段から出力可能に構成してなることを特徴とする多光軸光電式安全装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の多光軸光電式安全装置であって、さらに、
前記検出領域を複数指定可能とすると共に、前記安全信号を複数として検出領域毎に生成し、各検出領域に属する光軸を割り当てるための検出領域設定部を備え、
光軸の入光/遮光状態に基づいて各検出領域で安全信号を生成し、前記出力手段が各前記安全信号を出力可能に構成してなることを特徴とする多光軸光電式安全装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の多光軸光電式安全装置であって、
前記コントローラ部が、共通バスを介して多光軸光電式安全装置の断線管理を行うことを特徴とする多光軸光電式安全装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の多光軸光電式安全装置であって、
前記投光側通信回路及び/又は受光側通信回路は、共通バスを介して光軸毎の入光/遮光情報を含むデータを前記コントローラ部に送信可能に構成してなることを特徴とする多光軸光電式安全装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の多光軸光電式安全装置であって、
前記投光部同士又は受光部同士の間に、干渉防止用の渡り線を接続可能に構成してなることを特徴とする多光軸光電式安全装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の多光軸光電式安全装置であって、
前記投光側通信回路及び受光側通信回路のデータ通信が、通信時間が保証された通信制御方式に従い行われることを特徴とする多光軸光電式安全装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の多光軸光電式安全装置であって、さらに、
前記共通バス上に接続された、検出領域と関連付けられた動作表示灯、ミューティングランプ、リモートI/Oモジュールの少なくともいずれかを備え、
前記コントローラ部が前記共通バスを介して、動作表示灯、ミューティングランプ、リモートI/Oモジュールの少なくともいずれかの動作制御を行うことを特徴とする多光軸光電式安全装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の多光軸光電式安全装置であって、さらに、
前記共通バス上に接続された非常停止スイッチを備えることを特徴とする多光軸光電式安全装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の多光軸光電式安全装置であって、
前記多光軸光電式安全装置は、安全信号を出力する安全機能を一時的に無効化する無効化機能を備え、
前記設定手段は、1以上の光軸の入光/遮光状態と、1以上の光軸に適用される前記無効化機能とを関連付け可能であり、
前記コントローラ部が、各光軸の入光/遮光状態、及び無効化機能の適用を管理するよう構成されてなることを特徴多光軸光電式安全装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
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【図5】
【図6】
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【図11】
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【図16】
【図17】
【公開番号】特開2006−317237(P2006−317237A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−139142(P2005−139142)
【出願日】平成17年5月11日(2005.5.11)
【出願人】(000129253)株式会社キーエンス (681)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月11日(2005.5.11)
【出願人】(000129253)株式会社キーエンス (681)
【Fターム(参考)】
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