説明

多出力電源回路

【課題】部品点数の少ない簡易な構成で、複数の出力を有しながら入力直流電圧に対し昇降圧制御が可能であり、高い電力変換効率を有する多出力電源回路の提供を目的とする。
【解決手段】本発明の電源回路は、入力直流電源1と並列に接続されたハイサイドスイッチ11とローサイドスイッチ12との直列回路と、降圧制御回路13とを有するスイッチ回路10、及びそのスイッチ回路の出力端に接続された複数の昇圧回路20、30を具備し、各昇圧回路が、スイッチ回路の出力端に接続されるインダクタと、昇圧用スイッチと、昇圧用整流器と、出力直流電圧を出力する平滑手段と、昇圧用スイッチを駆動する昇圧制御回路とを有することにより、入力直流電圧に対し昇降圧制御が可能な複数の所望の出力を負荷に供給することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力された直流電圧に対し昇降圧制御が可能な出力を含む、複数の出力を有する多出力電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、入力直流電源から電力が供給され、各種電子回路に対して複数の電源電圧を出力する多出力電源回路において、入力された直流電圧が出力電圧に比べて大きい電圧から小さい電圧まで変動する場合であっても一定の出力電圧を出力する多出力電源回路が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図6は特許文献1に開示された従来の多出力電源回路の構成を示す回路図である。図6に示すように、入力直流電源1は電圧制限回路100に直流電圧Viを出力しており、電圧制限回路100はPチャンネルの第1のFET101、第1のダイオード102、第1のチョークコイル103、第1のコンデンサ104、及び第1の制御回路105により構成されている。第1のFET101のソースは入力直流電源1に接続されており、第1のFET101のドレインには第1のダイオード102のカソードが接続されている。第1のダイオード102のアノードは接地されている。第1のチョークコイル103の一端は、第1のFET101のドレインと第1のダイオード102のカソードとの接続点に接続されており、第1のチョークコイル103の他端には第1のコンデンサ104の一方の電極が接続されている。第1のコンデンサ104の他方の電極は接地されている。第1の制御回路105は、第1のコンデンサ104の電圧V1を制限電圧Vlimに保つように、第1のFET101のゲートにパルス電圧を印加して第1のFET101を開閉制御する。電圧制限回路100は、入力直流電圧Viが制限電圧Vlim以下の場合に積極的に第1のFET101を閉状態に保つように設定されている。
【0004】
図6に示すように、電圧制限回路100には、第1の昇圧回路200と第2の昇圧回路300が接続されている。第1の昇圧回路200は、第2のチョークコイル201、第2のFET202、第2のダイオード203、第2のコンデンサ204、及び第2の制御回路205で構成されている。第2の昇圧回路300は、第3のチョークコイル301、第3のFET302、第3のダイオード303、第3のコンデンサ304、及び第3の制御回路305で構成されている。
【0005】
第1の昇圧回路200において、第2のチョークコイル201の一端は第1のコンデンサ105に接続されており、第2のチョークコイル201の他端はNチャンネルの第2のFET202のドレインに接続されている。第2のFET202のソースは接地されている。第2のチョークコイル201と第2のFET202との接続点には第2のダイオード203のアノードが接続されている。第2のダイオード203のカソードには第2のコンデンサ204の一方の電極が接続されており、第2のコンデンサ204の他方の電極は接地されている。第2のコンデンサ204は出力直流電圧Vo2を出力する。第2の制御回路205は、出力直流電圧Vo2を所望の電圧に保つよう、第2のFET202のゲートにパルス電圧を印加して第2のFET202を開閉制御する。
【0006】
第2の昇圧回路300は、第1の昇圧回路200と並列に接続され、第1の昇圧回路200と同様に構成されている。第2の昇圧回路300は、電圧制限回路100の出力V1が入力されて、第3のコンデンサ304から出力直流電圧Vo3を出力する。第3の制御回路305は、出力直流電圧Vo3を所望の電圧に保つよう、第3のFET302のゲートにパルス電圧を印加して第3のFET302を開閉制御する。
【0007】
図6に示した従来の多出力電源回路の動作について次に説明する。入力直流電圧Viが制限電圧Vlimより大きい場合、第1のFET101は制御回路105からゲートに供給される駆動信号により開閉される。この第1のFET101の開閉動作により、第1のFET101のドレインには第1のFET101の開閉時間に応じたパルス幅を持つ、振幅が略Viの矩形波電圧が発生する。この矩形波電圧は、第1のチョークコイル103と第1のコンデンサ104で構成されるローパスフィルタで平滑され、第1のコンデンサ104には大きさが前記矩形波電圧の平均値に等しい直流電圧が発生する。ここで、デューティ比D1を第1のFET101の閉状態の時間が第1のFET101への駆動信号の繰り返し周期に占める割合とすると、第1のコンデンサ104に現れる直流電圧V1は次式(1)のような関係となる。
【0008】
V1=Vi×D1 ・・・(1)
【0009】
すなわち、デューティ比D1を大きくすると電圧V1は大きくなり、逆にデューティ比D1を小さくすると電圧V1は小さくなる。第1の制御回路105は入力直流電圧Viの変動や負荷の変動に対して、デューティ比D1を調整し、電圧V1が予め設定した制限電圧Vlimに等しくなるように動作する。
【0010】
次に、入力直流電圧Viが制限電圧Vlim以下の場合には、デューティ比D1は100%となり、第1のFET101は常に閉状態となって、第1のコンデンサ104には入力直流電圧Viとほぼ等しい電圧が現れる。
電圧制限回路100の出力電圧V1は第1の昇圧回路200の入力電圧となる。第1の昇圧回路200では、第2のFET202が第2の制御回路205からの駆動信号によって開閉動作される。第2のFET202が閉状態の期間には第2のチョークコイル201には入力直流電圧Viが印加される。第2のFET202が開状態の期間には第2のチョークコイル201の逆起電力によって第2のダイオード203が導通し、第2のコンデンサ204を充電する。ここで、デューティ比D2は第2のFET202が閉状態である時間が第2のFET202への駆動信号の繰り返し周期に占める割合とすると、第2のコンデンサ204に現れる出力直流電圧Vo2は次式(2)のような関係となる。
【0011】
Vo2=V1/(1−D2) ・・・(2)
【0012】
すなわち、出力直流電圧Vo2は、第1のコンデンサ104の電圧V1より大きく、デューティ比D2を大きくすると出力直流電圧Vo2は大きくなり、逆にデューティ比D2を小さくすると出力直流電圧Vo2は小さくなる。第2の制御回路205は入出力条件の変動に対して、デューティ比D2を調整し、第1の昇圧回路200は出力直流電圧Vo2を所望の電圧になるように動作する。
同様に、第2の昇圧回路300は、第3の制御回路305が第3のFET302を開閉動作して、そのデューティ比D3を調整することにより、出力直流電圧Vo3が所望の電圧になるように動作する。
【特許文献1】特開平8−205528号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
多出力電源回路は各種電子機器の内蔵電源として用いられており、小型化及び高効率化はこの分野において重要な課題である。前述の従来の多出力電源回路の構成においては、入力直流電圧Viが入力されてこの入力直流電圧Vi以下の直流電圧V1を出力する電圧制限回路100は降圧回路であり、この降圧回路と昇圧回路とを直列接続して構成されている。このため、従来の多出力電源回路は部品点数が多く小型化の課題を達成しがたい構成であり、且つ高い電力変換効率で入力直流電圧Viを所望の電圧に生成することができないという問題を有していた。
【0014】
本発明は、上記の従来における問題を解決して、部品点数の少ない簡易な構成で入力直流電圧に対し所望の昇降圧制御が可能であり、高い電力変換効率を有して一定の出力を生成することができる多出力電源回路の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記の目的を達成するため、本発明の多出力電源回路は、請求項1に記載したように、入力直流電源に並列接続されたハイサイドスイッチとローサイドスイッチとの直列回路と、前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチを交互に開閉動作する降圧制御回路と、を有するスイッチ回路、及び
前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチとの中間接続点に接続される複数の昇圧回路、を具備する。
このように構成された本発明の多出力電源回路は、部品点数の少ない簡易な構成で入力直流電圧に対し所望の昇降圧制御が可能であり、高い電力変換効率を有して一定の出力を生成することができる。
【0016】
本発明の多出力電源回路は、請求項2に記載したように、請求項1に記載の前記昇圧回路が、前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチとの中間接続点に一端が接続されたインダクタと、
前記インダクタの他端に接続された前記昇圧用スイッチと昇圧用整流器と、
前記昇圧用整流器に接続されて出力直流電圧を出力する平滑手段と、
前記出力直流電圧を制御するように前記昇圧用スイッチの開閉動作を制御する昇圧制御回路と、を有するよう構成されている。このように構成された本発明の多出力電源回路は、簡単な構成で入力直流電圧に対し確実な昇降圧制御が可能である。
【0017】
本発明の多出力電源回路において、請求項3に記載したように、請求項1に記載の前記降圧制御回路と前記昇圧制御回路は、同じスイッチング周波数で前記ハイサイドスイッチ、前記ローサイドスイッチ、及び前記昇圧用スイッチを駆動するよう構成されている。このように構成された本発明の多出力電源回路は、簡易な構成で所望の昇降圧制御が可能であり、一定の出力を確実に生成することができる。
【0018】
本発明の多出力電源回路は、請求項4に記載したように、請求項1に記載の前記降圧制御回路が、前記ハイサイドスイッチのスイッチング周期に対するオン時間の割合を、前記入力直流電源の出力する入力電圧に対する、前記複数の昇圧回路の出力する出力直流電圧のうちの最小値の割合以下に設定するよう構成されている。このように構成された本発明の多出力電源回路は、簡易な構成で所望の昇降圧制御が可能である。
【0019】
本発明の多出力電源回路は、請求項5に記載したように、入力直流電源と並列接続されたハイサイドスイッチとローサイドスイッチとの直列回路と、前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチを交互に開閉動作する降圧制御回路と、を有するスイッチ回路、
前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチとの中間接続点に接続され、第1の出力直流電圧を出力する平滑回路、及び
前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチとの中間接続点に接続される少なくとも1つの昇圧回路、を具備する。
このように構成された本発明の多出力電源回路は、簡易な構成で所望の降圧制御と昇降圧制御が可能であり、所望の複数の一定出力を生成することができる。
【0020】
本発明の多出力電源回路においては、請求項6に記載したように、請求項5の前記昇圧回路が、前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチとの中間接続点に一端が接続されたインダクタと、
前記インダクタの他端に接続された前記昇圧用スイッチと昇圧用整流器と、
前記昇圧用整流器に接続されて出力直流電圧を出力する平滑手段と、
前記出力直流電圧を制御するように前記昇圧用スイッチの開閉動作を制御する昇圧制御回路と、を有するよう構成されている。このように構成された本発明の多出力電源回路は、簡易な構成で所望の昇降圧制御が可能である。
【0021】
本発明の多出力電源回路においては、請求項7に記載したように、請求項5の前記平滑回路が、前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチとの中間接続点に一端が接続されたインダクタと、前記インダクタの他端が接続されたコンデンサとにより構成されており、前記コンデンサの両端から前記第1の出力直流電圧が出力されるよう構成されている。このように構成された本発明の多出力電源回路は、簡易な構成で所望の降圧制御が可能である。
【0022】
本発明の多出力電源回路においては、請求項8に記載したように、請求項5の 前記降圧制御回路が、前記第1の出力直流電圧を制御するように前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチの開閉動作を制御するよう構成されている。このように構成された本発明の多出力電源回路は、簡単な構成で入力直流電圧に対し所望の昇降圧制御が可能である。
【0023】
本発明の多出力電源回路においては、請求項9に記載したように、請求項6の 前記降圧制御回路と前記昇圧制御回路が、同じスイッチング周波数で前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチ、及び前記昇圧用スイッチを駆動するよう構成されている。このように構成された本発明の多出力電源回路は、簡単な構成で入力直流電圧に対し所望の昇降圧制御が可能である。
【発明の効果】
【0024】
本発明の多出力電源回路によれば、少ない部品点数で、入力直流電圧に対し昇降圧制御が可能な所望の出力を複数得ることができる。
また、本発明の多出力電源回路によれば、入力直流電圧に対して降圧制御が可能な所望の出力と、少なくとも一つの昇降圧制御が可能な所望の出力を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の多出力電源回路に係る好適な実施の形態を添付の図面を参照しつつ説明する。
【0026】
《第1の実施の形態》
以下、本発明に係る第1の実施の形態の多出力電源回路の構成を示す回路図である。
図1に示すように、第1の実施の形態の多出力電源回路は、入力直流電圧Viを出力する入力直流電源1が接続されたスイッチ回路10と、2つの出力を生成する昇圧回路20,30とにより構成されている。
【0027】
スイッチ回路10は、ハイサイドスイッチ11とローサイドスイッチ12と降圧制御回路13とにより構成されている。ハイサイドスイッチ11はPチャンネルのFETで構成されており、ソースが入力直流電源1に接続されている。ローサイドスイッチ12はNチャンネルのFETで構成されており、ドレインがハイサイドスイッチ11のドレインに接続されており、ソースが接地されている。降圧制御回路13は、ハイサイドスイッチ11とローサイドスイッチ12の各ゲートにパルス電圧を印加して、ハイサイドスイッチ11とローサイドスイッチ12を所定のスイッチング周期Tとパルス幅で交互に開閉制御する。ハイサイドスイッチ11とローサイドスイッチ12との接続点がスイッチ回路10の出力端である。
【0028】
第1の昇圧回路20において、インダクタ21の一端はスイッチ回路10の出力端に接続される。昇圧用スイッチ22はNチャンネルのFETで構成されており、ドレインがインダクタ21の他端に接続され、ソースが接地されている。昇圧用整流器23はアノードがインダクタ21と昇圧用スイッチ22との接続点に接続される。平滑手段24はコンデンサで構成され、その一方の電極は昇圧用整流器23のカソードに接続されており、他方の電極は接地されている。出力直流電圧Vo2は平滑手段24から出力される。昇圧制御回路25は、出力直流電圧Vo2を所望の一定電圧に保つように、昇圧用スイッチ22のゲートにパルス電圧を印加して昇圧用スイッチ22を開閉制御する。以上のように、第1の昇圧回路20は、インダクタ21、昇圧用スイッチ22、昇圧用整流器23、平滑手段24、及び昇圧制御回路25を具備して構成されている。
【0029】
第2の昇圧回路30は、第1の昇圧回路20と同様に、インダクタ31、昇圧用スイッチ32、昇圧用整流器33、平滑手段34、及び昇圧制御回路35を具備して構成されている。第2の昇圧回路30は、第1の昇圧回路20と並列に接続されており、スイッチ回路10の出力が入力されて平滑手段34から出力直流電圧Vo3を出力する。
【0030】
図2は第1の実施の形態の多出力電源回路における各部の動作波形図である。図2において、(a)はスイッチ回路10の出力端子電圧V10、(b)は昇圧用スイッチ22のドレイン電圧V22、(c)はインダクタ21の電流I21、(d)は昇圧用スイッチ32のドレイン電圧V32、(e)はインダクタ31の電流I31を示す。
【0031】
まず、図2の(a)に示すように、ハイサイドスイッチ11とローサイドスイッチ12が交互に開閉動作することにより、スイッチ回路10の出力端子電圧V10は、入力直流電圧Viを振幅とする矩形波電圧となる。ここで、ハイサイドスイッチ11が閉状態であるオン時間が、スイッチング周期Tに占める割合をデューティ比D1とする。
【0032】
次に、図2の(b)に示すように、第1の昇圧回路20の昇圧用スイッチ22のドレイン電圧V22は、昇圧用整流器23の導通時電圧降下を無視すると、出力直流電圧Vo2を振幅とする矩形波電圧となる。第1の実施の形態の多出力電源回路においては、昇圧制御回路25がスイッチ回路10の降圧制御回路13と同期しており、昇圧用スイッチ22がスイッチ回路10に同期して同じスイッチング周期Tで開閉動作される。
【0033】
第1の実施の形態においては、スイッチ回路10のハイサイドスイッチ11が閉状態になって所定時間(Ton)経過後に、昇圧用スイッチ22が開状態となり、出力直流電圧Vo2を所望の一定電圧に保つように、昇圧制御回路25によって昇圧用スイッチ22の閉状態となるタイミングが設定されるものとする。昇圧用スイッチ22が閉状態であるオン時間が、スイッチング周期Tに占める割合をデューティ比D2とする。
【0034】
スイッチング周期T内において、ハイサイドスイッチ11と昇圧用スイッチ22ともに閉状態である時間Tonでは、インダクタ21には入力直流電圧Viが印加される。この時、図2の(c)に示すようにインダクタ21の電流は増加する。次に、ハイサイドスイッチ11が閉状態で昇圧用スイッチ22が開状態である時間T1では、インダクタ21には入出力電圧差(Vi−Vo2)が印加される。この時インダクタ21の電流は、Vi>Vo2であれば増加、Vi=Vo2であれば一定、Vi<Vo2であれば減少する。次にハイサイドスイッチ11と昇圧用スイッチ22ともに開状態である時間Toffでは、インダクタ21には出力直流電圧Vo2が逆向きに印加される。この時インダクタ21の電流は減少する。また、ハイサイドスイッチ11が開状態で昇圧用スイッチ22が閉状態である時間T2では、インダクタ21は短絡されて印加電圧は0であり、インダクタ21の電流は一定値を保つ。このようなインダクタ21を流れる電流の増減は、インダクタ21における磁束の増減に対応しており、1スイッチング周期内において電流の増減、即ち磁束の増減が均衡する条件式は次の式(3)のようになる。
【0035】
Vi×Ton+(Vi−Vo2)×T1=Vo2×Toff ・・・(3)
【0036】
第1の実施の形態において、各時間T、T1、Ton、及びToffは、式(4)及び式(5)の関係を有している。
【0037】
Ton+T1=D1×T ・・・(4)
Toff+T1=(1−D2)×T ・・・(5)
【0038】
したがって、次のような入出力関係式が得られる。
【0039】
Vo2=Vi×D1/(1−D2) ・・・(6)
【0040】
上記式(6)の入出力関係式から分かるように、デューティ比D1及びD2を大きくすると出力直流電圧Vo2は大きくなり、逆に小さくすると出力直流電圧Vo2は小さくなる。降圧制御回路13はデューティ比D1を固定とし、昇圧制御回路25は入出力条件の変動に対して、デューティ比D2を調整することにより、第1の昇圧回路20は出力直流電圧Vo2を所望の一定電圧に等しくなるよう動作する。
【0041】
同様に、第2の昇圧回路30の出力直流電圧Vo3は、昇圧制御回路35が昇圧用スイッチ32を開閉動作させるデューティ比をD3とすると、次の式(7)のような入出力関係式が得られる。
【0042】
Vo3=Vi×D1/(1−D3) ・・・(7)
【0043】
したがって、デューティ比D1及びD3を大きくすると出力直流電圧Vo3は大きくなり、逆に小さくすると出力直流電圧Vo3は小さくなる。昇圧制御回路35は入出力条件の変動に対して、デューティ比D3を調整することにより、第2の昇圧回路30は出力直流電圧Vo3を所望の一定電圧に等しくなるように調整する。
【0044】
第1の実施の形態においては、2つの出力(Vo2、Vo3)の場合を説明したが、第1の昇圧回路20や第2の昇圧回路30と同様の構成のものを追加することにより出力数を増加することが可能であり、動作原理上出力はいくつであっても構わない。
【0045】
以上のように、本発明に係る第1の実施の形態の多出力電源回路では、図6に示した従来の構成に比べてインダクタとコンデンサが1つずつ不要となり、尚且つ複数の昇降圧出力を制御することが可能な構成である。また、第1の実施の形態の多出力電源回路ではスイッチ回路に昇圧回路を直接接続する構成であるため、高い電力変換効率を得ることができる。
【0046】
尚、第1の実施の形態の多出力電源回路においては、昇圧制御回路25が昇圧用スイッチ22のデューティ比D2を調整し、昇圧制御回路35が昇圧用スイッチ32のデューティ比D3を調整することによって、出力直流電圧Vo2及びVo3のそれぞれを制御する構成である。しかし、出力直流電圧は入力直流電圧Viとデューティ比D1によって制限されている。例えば、昇圧制御回路25がデューティ比D2をゼロにしても、上記の入出力関係式から出力直流電圧は、Vo2=Vi×D1となり、これが出力直流電圧Vo2の下限値となる。出力直流電圧Vo3も同様である。即ち、降圧制御回路13では、入力直流電圧Viが最大値Vimaxの時に、Vimax×D1が所望の出力直流電圧の内の最小値以下となるようにデューティ比D1を設定する必要がある。
【0047】
また、第1の実施の形態では、スイッチ回路10のハイサイドスイッチ11が閉状態になって所定時間(Ton)経過後に、昇圧用スイッチ22及び32が開状態となり、昇圧制御回路25及び35によって出力直流電圧Vo2及びVo3を所望の一定電圧に保つように、閉状態となるタイミングが設定されるものとした。図3はその昇圧制御回路25及びスイッチ回路10における降圧制御回路13の具体的な回路例を示す図である。
【0048】
図3において、スイッチ回路10の降圧制御回路13は、所定のパルス幅のパルス電圧を出力するパルス発生回路130と、そのパルス電圧を電力増幅し、ハイサイドスイッチ11のゲートとローサイドスイッチ12のゲートのそれぞれに出力する駆動回路131とから構成される。パルス発生回路130からのパルス電圧は、昇圧制御回路25のNチャンネルのFET250のゲートに入力される。即ち、FET250はハイサイドスイッチ11が開状態の時に閉状態となるスイッチであり、FET250と並列に接続されたコンデンサ251は、ハイサイドスイッチ11が開状態の時にはゼロ電圧に放電され、ハイサイドスイッチ11が閉状態の時には電流源252によって定電流充電される。コンデンサ251の電圧は、比較器253によって基準電圧源254の基準電圧と比較される。ハイサイドスイッチ11が閉状態になると、コンデンサ251は定電流充電されて電圧が上昇し、電圧源254の基準電圧を越えると、比較器253の出力はHレベルの状態に反転する。比較器253の出力はRSラッチ255のセット端子に接続され、比較器253の出力がHレベル状態になると、昇圧用スイッチ22のゲートに接続されたRSラッチ255の出力もHレベル状態となり、昇圧用スイッチ22を閉状態とする。
【0049】
一方、出力直流電圧Vo2は誤差増幅器256によって電圧源257の基準電圧との誤差が比較増幅される。誤差増幅器256から出力される誤差電圧は、比較器258によってコンデンサ259の電圧と比較される。コンデンサ259は電流源260によって定電流充電されるが、RSラッチ255の反転出力によって開閉されるNチャンネルのFET261によってゼロ電圧に放電される。比較器258の出力はRSラッチ255のリセット端子に接続される。即ち、昇圧用スイッチ22が閉状態になると同時にFET261が開状態となり、コンデンサ259はゼロ電圧から定電流充電され、その電圧が誤差電圧に至ると、比較器258の出力がHレベル状態となってRSラッチ255はリセットされる。RSラッチ255がリセットされると、昇圧用スイッチ22は開状態となるとともに、FET261が閉状態となってコンデンサ259をゼロ電圧に放電する。
【0050】
以上のように、昇圧用スイッチ22の閉状態は、スイッチ回路10のハイサイドスイッチ11が閉状態となって、コンデンサ251の電圧が電圧源254の基準電圧を越えるまでの所定時間後から、コンデンサ259の電圧が誤差電圧に至るまでの期間となる。出力直流電圧Vo2が所望値より高くなると誤差電圧は低下して、昇圧用スイッチ22が閉状態であるオン時間は短くなり、出力直流電圧Vo2を低下させ、逆に出力直流電圧Vo2が所望値より低くなると誤差電圧は上昇して、昇圧用スイッチ22のオン時間は長くなり、出力直流電圧Vo2を上昇させる。このようにして出力直流電圧Vo2は所望値に一定となるよう制御される。
【0051】
尚、本発明は第1の実施の形態において図3を用いて説明した制御方法に限定されるものではない。例えば、スイッチ回路10のハイサイドスイッチ11と昇圧用スイッチ22を同時に閉状態となるよう制御してもよい。この制御の場合、図3においては、パルス発生回路130からのパルス電圧の立ち下がりエッジでワンショットパルスを生成し、そのワンショットパルスをRSラッチ255のセット端子に入力するよう構成すればよい。このようにパルス電圧の立ち下がりエッジでRSラッチ255をセットすれば、ハイサイドスイッチ11と昇圧用スイッチ22が同時に閉状態となるよう構成することができる。逆にパルス電圧の立ち上がりエッジでRSラッチ255をセットすれば、ローサイドスイッチ12と昇圧用スイッチ22が同時に閉状態となるよう構成することができる。また、パルス電圧を反転してFET250のゲートに入力することにより、ローサイドスイッチ12が閉状態になった所定時間経過後に昇圧用スイッチ22を閉状態とすることもできる。
【0052】
《第2の実施の形態》
図4は、本発明に係る第2の実施の形態の多出力電源回路における主要部の構成を示す回路図である。図4において、図1に示した前述の第1の実施の形態の多出力電源回路における要素と同じ機能、構成を有するものには、同じ符号を付してその説明は第1の実施の形態の説明を適用する。第2の実施の形態において、第1の実施の形態の構成と異なる点は、スイッチ回路10における降圧制御回路の構成であり、第1の実施の形態の降圧制御回路13と区別するため降圧制御回路13Aとして説明する。
【0053】
図4に示した降圧制御回路13Aにおける駆動回路131は、パルス電圧を電力増幅し、ハイサイドスイッチ11のゲートとローサイドスイッチ12のゲートのそれぞれに出力するよう構成した、図3に示した駆動回路131の構成と同じである。クロック信号発生器132は所定の周期を有するクロック信号をRSラッチ133へ出力する。RSラッチ133は、クロック信号がリセット端子に入力されて、駆動回路131へ駆動信号を出力する。入力直流電圧Viは抵抗134と抵抗135によって分圧される。この電圧比をαとし、分圧電圧αViは、PチャンネルのFET136のゲートに入力される。FET136のドレインは接地されており、ソースは電流源137とNチャンネルのFET138のゲートに接続されている。FET136のソースには電流源137からの定電流が流入するよう構成されている。FET138のソースは抵抗139を介して接地され、ドレインはPチャンネルのFET140のドレインとゲートが接続される。FET138のソースの電位は、即ち抵抗139への印加電圧は、αViと等しく、従ってFET138を流れる電流は抵抗139の抵抗値をrとすると、αVi/rとなる。PチャンネルのFET140とPチャンネルのFET141はカレントミラーを構成しており、そのミラー電流はFET141のドレインに接続されたコンデンサ142への充電電流となる。コンデンサ142の電圧は比較器143によって電圧源144の基準電圧と比較され、比較器143の出力はRSラッチ133のセット端子に接続される。RSラッチの反転出力はNチャンネルのFET145のゲート端子に接続され、FET145のドレインとソースはコンデンサ142の両端に接続される。
【0054】
FET138のソースの電位、即ち抵抗139への印加電圧はαViと等しく、FET138を流れる電流は抵抗139の抵抗値をrとすると、αVi/rとなる。したがって、この電流は、FET140とFET141からなるカレントミラーによって、コンデンサ142への充電電流となる。一方、コンデンサ142は、駆動信号の反転信号によって開閉するFET145によって、ハイサイドスイッチ11が開状態であるオフ期間は短絡放電されている。クロック信号によってRSラッチ133がリセットされ、ハイサイドスイッチ11が閉状態になると、FET145は開状態となり、コンデンサ142は電流αVi/rによって充電される。コンデンサ142の電圧が上昇して電圧源144の基準電圧を越えると、比較器143の出力はHレベルの状態に反転する。この結果、RSラッチ133はセットされて駆動信号をHレベルの状態とし、ハイサイドスイッチ11が開状態へと移行する。このことにより、コンデンサ142のキャパシタンスをC、電圧源144の基準電圧をEとすると、ハイサイドスイッチ11が閉状態となるオン期間は、C・E・r/(αVi)となるので、デューティ比D1も入力直流電圧Viに反比例する。
【0055】
第2の実施の形態では、前述の第1の実施の形態と同様に、降圧制御回路13Aがデューティ比D1を固定してハイサイドスイッチ11及びローサイドスイッチ12を開閉制御する構成で説明するが、Vi×D1を一定化するようにデューティ比D1を調整するよう構成してもよい。即ち、降圧制御回路13Aはデューティ比D1を入力直流電圧Viに反比例するように調整することにより、入力直流電圧Viの変動に対し、Vi×D1を所望する出力直流電圧の内の最小値以下の所定値に略安定化することができる。
【0056】
《第3の実施の形態》
図5は、本発明に係る第3の実施の形態の多出力電源回路における主要部の構成を示す回路図である。図5において、図1に示した前述の第1の実施の形態の多出力電源回路における要素と同じ機能、構成を有するものには、同じ符号を付してその説明は第1の実施の形態の説明を適用する。第3の実施の形態において、第1の実施の形態の構成と異なる点は、スイッチ回路10の出力端に第1の出力直流電圧Vo1を出力する平滑回路14を接続した点と、第1の出力直流電圧Vo1を安定化するように降圧制御回路の機能を変更した点である。この変更に伴い、第1の実施の形態と区別するために、降圧制御回路13Bとした。平滑回路14は、インダクタ15とコンデンサ16とを有して構成されている。インダクタ15の一端はスイッチ回路10の出力端に接続されており、インダクタ15の他端にはコンデンサ16の一方の電極が接続されている。コンデンサ16の他方の電極は接地されており、コンデンサ16から第1の出力直流電圧Vo1が出力される。
【0057】
以下、第3の実施の形態の多出力電源回路の動作について説明する。
まず、ハイサイドスイッチ11とローサイドスイッチ12が交互に開閉動作することにより、スイッチ回路10の出力端子電圧V10は、入力直流電圧Viを振幅とする矩形波電圧となる。この矩形波電圧が平滑回路14によって平均化されて第1の出力直流電圧Vo1として出力される。ここで、ハイサイドスイッチ11が閉状態であるオン時間が、スイッチング周期Tに占める割合をデューティ比D1とすると、第1の出力直流電圧Vo1は次式(8)のように表される。
【0058】
Vo1=Vi×D1 ・・・(8)
【0059】
即ち、スイッチ回路10と平滑回路14は降圧回路を構成している。
【0060】
次に、第1の昇圧回路20を介して出力される第2の出力直流電圧Vo2が昇圧用スイッチ22のデューティ比D2を用いて次式(9)のように表される。
【0061】
Vo2=Vi×D1/(1−D2) ・・・(9)
【0062】
また、第2の昇圧回路30を介して出力される第3の出力直流電圧Vo3が、昇圧用スイッチ32のデューティ比D3を用いて次式(10)のように表される。
【0063】
Vo3=Vi×D1/(1−D3) ・・・(10)
【0064】
したがって、第2の出力直流電圧Vo2及び第3の出力直流電圧Vo3については、前述の第1の実施の形態における出力直流電圧Vo2及びVo3と同様である。ここで、Vo1=Vi×D1より、出力直流電圧Vo2及びVo3はそれぞれ次式(11)及び(12)のように表せる。
【0065】
Vo2=Vo1/(1−D2) ・・・(11)
Vo3=Vo1/(1−D3) ・・・(12)
【0066】
以上のように、本発明に係る第3の実施の形態の多出力電源回路では、1つの降圧出力と少なくとも1つの昇降圧出力を制御することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、入力直流電圧に対し昇降圧制御が可能な出力を含む、複数の出力を有する電源回路において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明に係る第1の実施の形態の多出力電源回路の構成を示す回路図
【図2】第1の実施の形態の多出力電源回路における各部分の動作波形図
【図3】第1の実施の形態の多出力電源回路の主要な構成部分の回路図
【図4】本発明に係る第2の実施の形態の多出力電源回路の構成を示す回路図
【図5】本発明に係る第3の実施の形態の多出力電源回路の構成を示す回路図
【図6】従来の多出力電源回路の構成を示す回路図
【符号の説明】
【0069】
1 入力直流電源
10 スイッチ回路
11 ハイサイドスイッチ
12 ローサイドスイッチ
13 降圧制御回路
20 第1の昇圧回路
21 インダクタ
22 昇圧用スイッチ
23 昇圧用整流器
24 平滑手段
25 昇圧制御回路
30 第2の昇圧回路
31 インダクタ
32 昇圧用スイッチ
33 昇圧用整流器
34 平滑手段
35 昇圧制御回路

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力された直流電圧に対し昇降圧制御が可能な出力を含む、複数の出力を有する多出力電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、入力直流電源から電力が供給され、各種電子回路に対して複数の電源電圧を出力する多出力電源回路において、入力された直流電圧が出力電圧に比べて大きい電圧から小さい電圧まで変動する場合であっても一定の出力電圧を出力する多出力電源回路が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図6は特許文献1に開示された従来の多出力電源回路の構成を示す回路図である。図6に示すように、入力直流電源1は電圧制限回路100に直流電圧Viを出力しており、電圧制限回路100はPチャンネルの第1のFET101、第1のダイオード102、第1のチョークコイル103、第1のコンデンサ104、及び第1の制御回路105により構成されている。第1のFET101のソースは入力直流電源1に接続されており、第1のFET101のドレインには第1のダイオード102のカソードが接続されている。第1のダイオード102のアノードは接地されている。第1のチョークコイル103の一端は、第1のFET101のドレインと第1のダイオード102のカソードとの接続点に接続されており、第1のチョークコイル103の他端には第1のコンデンサ104の一方の電極が接続されている。第1のコンデンサ104の他方の電極は接地されている。第1の制御回路105は、第1のコンデンサ104の電圧V1を制限電圧Vlimに保つように、第1のFET101のゲートにパルス電圧を印加して第1のFET101をオンオフ制御する。電圧制限回路100は、入力直流電圧Viが制限電圧Vlim以下の場合に積極的に第1のFET101を閉状態に保つように設定されている。
【0004】
図6に示すように、電圧制限回路100には、第1の昇圧回路200と第2の昇圧回路300が接続されている。第1の昇圧回路200は、第2のチョークコイル201、第2のFET202、第2のダイオード203、第2のコンデンサ204、及び第2の制御回路205で構成されている。第2の昇圧回路300は、第3のチョークコイル301、第3のFET302、第3のダイオード303、第3のコンデンサ304、及び第3の制御回路305で構成されている。
【0005】
第1の昇圧回路200において、第2のチョークコイル201の一端は第1のコンデンサ104に接続されており、第2のチョークコイル201の他端はNチャンネルの第2のFET202のドレインに接続されている。第2のFET202のソースは接地されている。第2のチョークコイル201と第2のFET202との接続点には第2のダイオード203のアノードが接続されている。第2のダイオード203のカソードには第2のコンデンサ204の一方の電極が接続されており、第2のコンデンサ204の他方の電極は接地されている。第2のコンデンサ204は出力直流電圧Vo2を出力する。第2の制御回路205は、出力直流電圧Vo2を所望の電圧に保つよう、第2のFET202のゲートにパルス電圧を印加して第2のFET202をオンオフ制御する。
【0006】
第2の昇圧回路300は、第1の昇圧回路200と並列に接続され、第1の昇圧回路200と同様に構成されている。第2の昇圧回路300は、電圧制限回路100の出力V1が入力されて、第3のコンデンサ304から出力直流電圧Vo3を出力する。第3の制御回路305は、出力直流電圧Vo3を所望の電圧に保つよう、第3のFET302のゲートにパルス電圧を印加して第3のFET302をオンオフ制御する。
【0007】
図6に示した従来の多出力電源回路の動作について次に説明する。入力直流電圧Viが制限電圧Vlimより大きい場合、第1のFET101は制御回路105からゲートに供給される駆動信号によりオンオフされる。この第1のFET101のオンオフ動作により、第1のFET101のドレインには第1のFET101のオンオフ時間に応じたパルス幅を持つ、振幅が略Viの矩形波電圧が発生する。この矩形波電圧は、第1のチョークコイル103と第1のコンデンサ104で構成されるローパスフィルタで平滑され、第1のコンデンサ104には大きさが前記矩形波電圧の平均値に等しい直流電圧が発生する。ここで、デューティ比D1を第1のFET101の閉状態の時間が第1のFET101への駆動信号の繰り返し周期に占める割合とすると、第1のコンデンサ104に現れる直流電圧V1は次式(1)のような関係となる。
【0008】
V1=Vi×D1 ・・・(1)
【0009】
すなわち、デューティ比D1を大きくすると電圧V1は大きくなり、逆にデューティ比D1を小さくすると電圧V1は小さくなる。第1の制御回路105は入力直流電圧Viの変動や負荷の変動に対して、デューティ比D1を調整し、電圧V1が予め設定した制限電圧Vlimに等しくなるように動作する。
【0010】
次に、入力直流電圧Viが制限電圧Vlim以下の場合には、デューティ比D1は100%となり、第1のFET101は常に閉状態となって、第1のコンデンサ104には入力直流電圧Viとほぼ等しい電圧が現れる。
電圧制限回路100の出力電圧V1は第1の昇圧回路200の入力電圧となる。第1の昇圧回路200では、第2のFET202が第2の制御回路205からの駆動信号によってオンオフ動作される。第2のFET202が閉状態の期間には第2のチョークコイル201には入力直流電圧Viが印加される。第2のFET202が開状態の期間には第2のチョークコイル201の逆起電力によって第2のダイオード203が導通し、第2のコンデンサ204を充電する。ここで、デューティ比D2は第2のFET202が閉状態である時間が第2のFET202への駆動信号の繰り返し周期に占める割合とすると、第2のコンデンサ204に現れる出力直流電圧Vo2は次式(2)のような関係となる。
【0011】
Vo2=V1/(1−D2) ・・・(2)
【0012】
すなわち、出力直流電圧Vo2は、第1のコンデンサ104の電圧V1より大きく、デューティ比D2を大きくすると出力直流電圧Vo2は大きくなり、逆にデューティ比D2を小さくすると出力直流電圧Vo2は小さくなる。第2の制御回路205は入出力条件の変動に対して、デューティ比D2を調整し、第1の昇圧回路200は出力直流電圧Vo2を所望の電圧になるように動作する。
同様に、第2の昇圧回路300は、第3の制御回路305が第3のFET302をオンオフ動作して、そのデューティ比D3を調整することにより、出力直流電圧Vo3が所望の電圧になるように動作する。
【特許文献1】特開平8−205528号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
多出力電源回路は各種電子機器の内蔵電源として用いられており、小型化及び高効率化はこの分野において重要な課題である。前述の従来の多出力電源回路の構成においては、入力直流電圧Viが入力されてこの入力直流電圧Vi以下の直流電圧V1を出力する電圧制限回路100は降圧回路であり、この降圧回路と昇圧回路とを直列接続して構成されている。このため、従来の多出力電源回路は部品点数が多く小型化の課題を達成しがたい構成であり、且つ高い電力変換効率で入力直流電圧Viを所望の電圧に生成することができないという問題を有していた。
【0014】
本発明は、上記の従来における問題を解決して、部品点数の少ない簡易な構成で入力直流電圧に対し所望の昇降圧制御が可能であり、高い電力変換効率を有して一定の出力を生成することができる多出力電源回路の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記の目的を達成するため、本発明に係る第1の観点の多出力電源回路は、入力直流電源に並列接続されたハイサイドスイッチとローサイドスイッチとの直列回路と、前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチを交互にオンオフ動作する降圧制御回路と、を有するスイッチ回路、及び
前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチとの中間接続点に接続される複数の昇圧回路、を具備する。
このように構成された本発明に係る第1の観点の多出力電源回路は、部品点数の少ない簡易な構成で入力直流電圧に対し所望の昇降圧制御が可能であり、高い電力変換効率を有して一定の出力を生成することができる。
【0016】
本発明に係る第2の観点の多出力電源回路は、前記第1の観点において前記昇圧回路が、前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチとの中間接続点に一端が接続されたインダクタと、
前記インダクタの他端に接続された昇圧用スイッチと昇圧用整流器と、
前記昇圧用整流器に接続されて出力直流電圧を出力する平滑手段と、
前記出力直流電圧を制御するように前記昇圧用スイッチのオンオフ動作を制御する昇圧制御回路と、を有するよう構成されている。このように構成された本発明に係る第2の観点の多出力電源回路は、簡単な構成で入力直流電圧に対し確実な昇降圧制御が可能である。
【0017】
本発明に係る第3の観点の多出力電源回路において、前記第1の観点の前記降圧制御回路と前記昇圧制御回路は、同じスイッチング周波数で前記ハイサイドスイッチ、前記ローサイドスイッチ、及び前記昇圧用スイッチを駆動するよう構成されている。このように構成された本発明に係る第3の観点の多出力電源回路は、簡易な構成で所望の昇降圧制御が可能であり、一定の出力を確実に生成することができる。
【0018】
本発明に係る第4の観点の多出力電源回路は、前記第1の観点において前記降圧制御回路が、前記ハイサイドスイッチのスイッチング周期に対するオン時間の割合を、前記入力直流電源の出力する入力電圧に対する、前記複数の昇圧回路の出力する出力直流電圧のうちの最小値の割合以下に設定するよう構成されている。このように構成された本発明に係る第4の観点の多出力電源回路は、簡易な構成で所望の昇降圧制御が可能である。
【0019】
本発明に係る第5の観点の多出力電源回路は、入力直流電源と並列接続されたハイサイドスイッチとローサイドスイッチとの直列回路と、前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチを交互にオンオフ動作する降圧制御回路と、を有するスイッチ回路、
前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチとの中間接続点に接続され、第1の出力直流電圧を出力する平滑回路、及び
前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチとの中間接続点に接続される少なくとも1つの昇圧回路、を具備する。
このように構成された本発明に係る第5の観点の多出力電源回路は、簡易な構成で所望の降圧制御と昇降圧制御が可能であり、所望の複数の一定出力を生成することができる。
【0020】
本発明に係る第6の観点の多出力電源回路においては、前記第5の観点の前記昇圧回路が、前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチとの中間接続点に一端が接続されたインダクタと、
前記インダクタの他端に接続された前記昇圧用スイッチと昇圧用整流器と、
前記昇圧用整流器に接続されて出力直流電圧を出力する平滑手段と、
前記出力直流電圧を制御するように前記昇圧用スイッチのオンオフ動作を制御する昇圧制御回路と、を有するよう構成されている。このように構成された本発明に係る第6の観点の多出力電源回路は、簡易な構成で所望の昇降圧制御が可能である。
【0021】
本発明に係る第7の観点の多出力電源回路においては、前記第5の観点の前記平滑回路が、前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチとの中間接続点に一端が接続されたインダクタと、前記インダクタの他端が接続されたコンデンサとにより構成されており、前記コンデンサの両端から前記第1の出力直流電圧が出力されるよう構成されている。このように構成された本発明に係る第7の観点の多出力電源回路は、簡易な構成で所望の降圧制御が可能である。
【0022】
本発明に係る第8の観点の多出力電源回路においては、前記第5の観点の前記降圧制御回路が、前記第1の出力直流電圧を制御するように前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチのオンオフ動作を制御するよう構成されている。このように構成された本発明に係る第8の観点の多出力電源回路は、簡単な構成で入力直流電圧に対し所望の昇降圧制御が可能である。
【0023】
本発明に係る第9の観点の多出力電源回路においては、前記第6の観点の前記降圧制御回路と前記昇圧制御回路が、同じスイッチング周波数で前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチ、及び前記昇圧用スイッチを駆動するよう構成されている。このように構成された本発明に係る第9の観点の多出力電源回路は、簡単な構成で入力直流電圧に対し所望の昇降圧制御が可能である。
【発明の効果】
【0024】
本発明の多出力電源回路によれば、少ない部品点数で、入力直流電圧に対し昇降圧制御が可能な所望の出力を複数得ることができる。
また、本発明の多出力電源回路によれば、入力直流電圧に対して降圧制御が可能な所望の出力と、少なくとも一つの昇降圧制御が可能な所望の出力を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の多出力電源回路に係る好適な実施の形態を添付の図面を参照しつつ説明する。
【0026】
《第1の実施の形態》
図1は、本発明に係る第1の実施の形態の多出力電源回路の構成を示す回路図である。
図1に示すように、第1の実施の形態の多出力電源回路は、入力直流電圧Viを出力する入力直流電源1が接続されたスイッチ回路10と、2つの出力を生成する昇圧回路20,30とにより構成されている。
【0027】
スイッチ回路10は、ハイサイドスイッチ11とローサイドスイッチ12と降圧制御回路13とにより構成されている。ハイサイドスイッチ11はPチャンネルのFETで構成されており、ソースが入力直流電源1に接続されている。ローサイドスイッチ12はNチャンネルのFETで構成されており、ドレインがハイサイドスイッチ11のドレインに接続されており、ソースが接地されている。降圧制御回路13は、ハイサイドスイッチ11とローサイドスイッチ12の各ゲートにパルス電圧を印加して、ハイサイドスイッチ11とローサイドスイッチ12を所定のスイッチング周期Tとパルス幅で交互にオンオフ制御する。ハイサイドスイッチ11とローサイドスイッチ12との接続点がスイッチ回路10の出力端である。
【0028】
第1の昇圧回路20において、インダクタ21の一端はスイッチ回路10の出力端に接続される。昇圧用スイッチ22はNチャンネルのFETで構成されており、ドレインがインダクタ21の他端に接続され、ソースが接地されている。昇圧用整流器23はアノードがインダクタ21と昇圧用スイッチ22との接続点に接続される。平滑手段24はコンデンサで構成され、その一方の電極は昇圧用整流器23のカソードに接続されており、他方の電極は接地されている。出力直流電圧Vo2は平滑手段24から出力される。昇圧制御回路25は、出力直流電圧Vo2を所望の一定電圧に保つように、昇圧用スイッチ22のゲートにパルス電圧を印加して昇圧用スイッチ22をオンオフ制御する。以上のように、第1の昇圧回路20は、インダクタ21、昇圧用スイッチ22、昇圧用整流器23、平滑手段24、及び昇圧制御回路25を具備して構成されている。
【0029】
第2の昇圧回路30は、第1の昇圧回路20と同様に、インダクタ31、昇圧用スイッチ32、昇圧用整流器33、平滑手段34、及び昇圧制御回路35を具備して構成されている。第2の昇圧回路30は、第1の昇圧回路20と並列に接続されており、スイッチ回路10の出力が入力されて平滑手段34から出力直流電圧Vo3を出力する。
【0030】
図2は第1の実施の形態の多出力電源回路における各部の動作波形図である。図2において、(a)はスイッチ回路10の出力端子電圧V10、(b)は昇圧用スイッチ22のドレイン電圧V22、(c)はインダクタ21の電流I21、(d)は昇圧用スイッチ32のドレイン電圧V32、(e)はインダクタ31の電流I31を示す。
【0031】
まず、図2の(a)に示すように、ハイサイドスイッチ11とローサイドスイッチ12が交互にオンオフ動作することにより、スイッチ回路10の出力端子電圧V10は、入力直流電圧Viを振幅とする矩形波電圧となる。ここで、ハイサイドスイッチ11が閉状態であるオン時間が、スイッチング周期Tに占める割合をデューティ比D1とする。
【0032】
次に、図2の(b)に示すように、第1の昇圧回路20の昇圧用スイッチ22のドレイン電圧V22は、昇圧用整流器23の導通時電圧降下を無視すると、出力直流電圧Vo2を振幅とする矩形波電圧となる。第1の実施の形態の多出力電源回路においては、昇圧制御回路25がスイッチ回路10の降圧制御回路13と同期しており、昇圧用スイッチ22がスイッチ回路10に同期して同じスイッチング周期Tでオンオフ動作される。
【0033】
第1の実施の形態においては、スイッチ回路10のハイサイドスイッチ11が閉状態になって所定時間(Ton)経過後に、昇圧用スイッチ22が開状態となり、出力直流電圧Vo2を所望の一定電圧に保つように、昇圧制御回路25によって昇圧用スイッチ22の閉状態となるタイミングが設定されるものとする。昇圧用スイッチ22が閉状態であるオン時間が、スイッチング周期Tに占める割合をデューティ比D2とする。
【0034】
スイッチング周期T内において、ハイサイドスイッチ11と昇圧用スイッチ22ともに閉状態である時間Tonでは、インダクタ21には入力直流電圧Viが印加される。この時、図2の(c)に示すようにインダクタ21の電流は増加する。次に、ハイサイドスイッチ11が閉状態で昇圧用スイッチ22が開状態である時間T1では、インダクタ21には入出力電圧差(Vi−Vo2)が印加される。この時インダクタ21の電流は、Vi>Vo2であれば増加、Vi=Vo2であれば一定、Vi<Vo2であれば減少する。次にハイサイドスイッチ11と昇圧用スイッチ22ともに開状態である時間Toffでは、インダクタ21には出力直流電圧Vo2が逆向きに印加される。この時インダクタ21の電流は減少する。また、ハイサイドスイッチ11が開状態で昇圧用スイッチ22が閉状態である時間T2では、インダクタ21は短絡されて印加電圧は0であり、インダクタ21の電流は一定値を保つ。このようなインダクタ21を流れる電流の増減は、インダクタ21における磁束の増減に対応しており、1スイッチング周期内において電流の増減、即ち磁束の増減が均衡する条件式は次の式(3)のようになる。
【0035】
Vi×Ton+(Vi−Vo2)×T1=Vo2×Toff ・・・(3)
【0036】
第1の実施の形態において、各時間T、T1、Ton、及びToffは、式(4)及び式(5)の関係を有している。
【0037】
Ton+T1=D1×T ・・・(4)
Toff+T1=(1−D2)×T ・・・(5)
【0038】
したがって、次のような入出力関係式が得られる。
【0039】
Vo2=Vi×D1/(1−D2) ・・・(6)
【0040】
上記式(6)の入出力関係式から分かるように、デューティ比D1及びD2を大きくすると出力直流電圧Vo2は大きくなり、逆に小さくすると出力直流電圧Vo2は小さくなる。降圧制御回路13はデューティ比D1を固定とし、昇圧制御回路25は入出力条件の変動に対して、デューティ比D2を調整することにより、第1の昇圧回路20は出力直流電圧Vo2を所望の一定電圧に等しくなるよう動作する。
【0041】
同様に、第2の昇圧回路30の出力直流電圧Vo3は、昇圧制御回路35が昇圧用スイッチ32をオンオフ動作させるデューティ比をD3とすると、次の式(7)のような入出力関係式が得られる。
【0042】
Vo3=Vi×D1/(1−D3) ・・・(7)
【0043】
したがって、デューティ比D1及びD3を大きくすると出力直流電圧Vo3は大きくなり、逆に小さくすると出力直流電圧Vo3は小さくなる。昇圧制御回路35は入出力条件の変動に対して、デューティ比D3を調整することにより、第2の昇圧回路30は出力直流電圧Vo3を所望の一定電圧に等しくなるように調整する。
【0044】
第1の実施の形態においては、2つの出力(Vo2、Vo3)の場合を説明したが、第1の昇圧回路20や第2の昇圧回路30と同様の構成のものを追加することにより出力数を増加することが可能であり、動作原理上出力はいくつであっても構わない。
【0045】
以上のように、本発明に係る第1の実施の形態の多出力電源回路では、図6に示した従来の構成に比べてインダクタとコンデンサが1つずつ不要となり、尚且つ複数の昇降圧出力を制御することが可能な構成である。また、第1の実施の形態の多出力電源回路ではスイッチ回路に昇圧回路を直接接続する構成であるため、高い電力変換効率を得ることができる。
【0046】
尚、第1の実施の形態の多出力電源回路においては、昇圧制御回路25が昇圧用スイッチ22のデューティ比D2を調整し、昇圧制御回路35が昇圧用スイッチ32のデューティ比D3を調整することによって、出力直流電圧Vo2及びVo3のそれぞれを制御する構成である。しかし、出力直流電圧は入力直流電圧Viとデューティ比D1によって制限されている。例えば、昇圧制御回路25がデューティ比D2をゼロにしても、上記の入出力関係式から出力直流電圧は、Vo2=Vi×D1となり、これが出力直流電圧Vo2の下限値となる。出力直流電圧Vo3も同様である。即ち、降圧制御回路13では、入力直流電圧Viが最大値Vimaxの時に、Vimax×D1が所望の出力直流電圧の内の最小値以下となるようにデューティ比D1を設定する必要がある。
【0047】
また、第1の実施の形態では、スイッチ回路10のハイサイドスイッチ11が閉状態になって所定時間(Ton)経過後に、昇圧用スイッチ22及び32が開状態となり、昇圧制御回路25及び35によって出力直流電圧Vo2及びVo3を所望の一定電圧に保つように、閉状態となるタイミングが設定されるものとした。図3はその昇圧制御回路25及びスイッチ回路10における降圧制御回路13の具体的な回路例を示す図である。
【0048】
図3において、スイッチ回路10の降圧制御回路13は、所定のパルス幅のパルス電圧を出力するパルス発生回路130と、そのパルス電圧を電力増幅し、ハイサイドスイッチ11のゲートとローサイドスイッチ12のゲートのそれぞれに出力する駆動回路131とから構成される。パルス発生回路130からのパルス電圧は、昇圧制御回路25のNチャンネルのFET250のゲートに入力される。即ち、FET250はハイサイドスイッチ11が開状態の時に閉状態となるスイッチであり、FET250と並列に接続されたコンデンサ251は、ハイサイドスイッチ11が開状態の時にはゼロ電圧に放電され、ハイサイドスイッチ11が閉状態の時には電流源252によって定電流充電される。コンデンサ251の電圧は、比較器253によって基準電圧源254の基準電圧と比較される。ハイサイドスイッチ11が閉状態になると、コンデンサ251は定電流充電されて電圧が上昇し、電圧源254の基準電圧を越えると、比較器253の出力はHレベルの状態に反転する。比較器253の出力はRSラッチ255のセット端子に接続され、比較器253の出力がHレベル状態になると、昇圧用スイッチ22のゲートに接続されたRSラッチ255の出力もHレベル状態となり、昇圧用スイッチ22を閉状態とする。
【0049】
一方、出力直流電圧Vo2は誤差増幅器256によって電圧源257の基準電圧との誤差が比較増幅される。誤差増幅器256から出力される誤差電圧は、比較器258によってコンデンサ259の電圧と比較される。コンデンサ259は電流源260によって定電流充電されるが、RSラッチ255の反転出力によってオンオフされるNチャンネルのFET261によってゼロ電圧に放電される。比較器258の出力はRSラッチ255のリセット端子に接続される。即ち、昇圧用スイッチ22が閉状態になると同時にFET261が開状態となり、コンデンサ259はゼロ電圧から定電流充電され、その電圧が誤差電圧に至ると、比較器258の出力がHレベル状態となってRSラッチ255はリセットされる。RSラッチ255がリセットされると、昇圧用スイッチ22は開状態となるとともに、FET261が閉状態となってコンデンサ259をゼロ電圧に放電する。
【0050】
以上のように、昇圧用スイッチ22の閉状態は、スイッチ回路10のハイサイドスイッチ11が閉状態となって、コンデンサ251の電圧が電圧源254の基準電圧を越えるまでの所定時間後から、コンデンサ259の電圧が誤差電圧に至るまでの期間となる。出力直流電圧Vo2が所望値より高くなると誤差電圧は低下して、昇圧用スイッチ22が閉状態であるオン時間は短くなり、出力直流電圧Vo2を低下させ、逆に出力直流電圧Vo2が所望値より低くなると誤差電圧は上昇して、昇圧用スイッチ22のオン時間は長くなり、出力直流電圧Vo2を上昇させる。このようにして出力直流電圧Vo2は所望値に一定となるよう制御される。
【0051】
尚、本発明は第1の実施の形態において図3を用いて説明した制御方法に限定されるものではない。例えば、スイッチ回路10のハイサイドスイッチ11と昇圧用スイッチ22を同時に閉状態となるよう制御してもよい。この制御の場合、図3においては、パルス発生回路130からのパルス電圧の立ち下がりエッジでワンショットパルスを生成し、そのワンショットパルスをRSラッチ255のセット端子に入力するよう構成すればよい。このようにパルス電圧の立ち下がりエッジでRSラッチ255をセットすれば、ハイサイドスイッチ11と昇圧用スイッチ22が同時に閉状態となるよう構成することができる。逆にパルス電圧の立ち上がりエッジでRSラッチ255をセットすれば、ローサイドスイッチ12と昇圧用スイッチ22が同時に閉状態となるよう構成することができる。また、パルス電圧を反転してFET250のゲートに入力することにより、ローサイドスイッチ12が閉状態になった所定時間経過後に昇圧用スイッチ22を閉状態とすることもできる。
【0052】
《第2の実施の形態》
図4は、本発明に係る第2の実施の形態の多出力電源回路における主要部の構成を示す回路図である。図4において、図1に示した前述の第1の実施の形態の多出力電源回路における要素と同じ機能、構成を有するものには、同じ符号を付してその説明は第1の実施の形態の説明を適用する。第2の実施の形態において、第1の実施の形態の構成と異なる点は、スイッチ回路10における降圧制御回路の構成であり、第1の実施の形態の降圧制御回路13と区別するため降圧制御回路13Aとして説明する。
【0053】
図4に示した降圧制御回路13Aにおける駆動回路131は、パルス電圧を電力増幅し、ハイサイドスイッチ11のゲートとローサイドスイッチ12のゲートのそれぞれに出力するよう構成した、図3に示した駆動回路131の構成と同じである。クロック信号発生器132は所定の周期を有するクロック信号をRSラッチ133へ出力する。RSラッチ133は、クロック信号がリセット端子に入力されて、駆動回路131へ駆動信号を出力する。入力直流電圧Viは抵抗134と抵抗135によって分圧される。この電圧比をαとし、分圧電圧αViは、PチャンネルのFET136のゲートに入力される。FET136のドレインは接地されており、ソースは電流源137とNチャンネルのFET138のゲートに接続されている。FET136のソースには電流源137からの定電流が流入するよう構成されている。FET138のソースは抵抗139を介して接地され、ドレインはPチャンネルのFET140のドレインとゲートが接続される。FET138のソースの電位は、即ち抵抗139への印加電圧は、αViと等しく、従ってFET138を流れる電流は抵抗139の抵抗値をrとすると、αVi/rとなる。PチャンネルのFET140とPチャンネルのFET141はカレントミラーを構成しており、そのミラー電流はFET141のドレインに接続されたコンデンサ142への充電電流となる。コンデンサ142の電圧は比較器143によって電圧源144の基準電圧と比較され、比較器143の出力はRSラッチ133のセット端子に接続される。RSラッチの反転出力はNチャンネルのFET145のゲート端子に接続され、FET145のドレインとソースはコンデンサ142の両端に接続される。
【0054】
FET138のソースの電位、即ち抵抗139への印加電圧はαViと等しく、FET138を流れる電流は抵抗139の抵抗値をrとすると、αVi/rとなる。したがって、この電流は、FET140とFET141からなるカレントミラーによって、コンデンサ142への充電電流となる。一方、コンデンサ142は、駆動信号の反転信号によってオンオフするFET145によって、ハイサイドスイッチ11が開状態であるオフ期間は短絡放電されている。クロック信号によってRSラッチ133がリセットされ、ハイサイドスイッチ11が閉状態になると、FET145は開状態となり、コンデンサ142は電流αVi/rによって充電される。コンデンサ142の電圧が上昇して電圧源144の基準電圧を越えると、比較器143の出力はHレベルの状態に反転する。この結果、RSラッチ133はセットされて駆動信号をHレベルの状態とし、ハイサイドスイッチ11が開状態へと移行する。このことにより、コンデンサ142のキャパシタンスをC、電圧源144の基準電圧をEとすると、ハイサイドスイッチ11が閉状態となるオン期間は、C・E・r/(αVi)となるので、デューティ比D1も入力直流電圧Viに反比例する。
【0055】
第2の実施の形態では、前述の第1の実施の形態と同様に、降圧制御回路13Aがデューティ比D1を固定してハイサイドスイッチ11及びローサイドスイッチ12をオンオフ制御する構成で説明するが、Vi×D1を一定化するようにデューティ比D1を調整するよう構成してもよい。即ち、降圧制御回路13Aはデューティ比D1を入力直流電圧Viに反比例するように調整することにより、入力直流電圧Viの変動に対し、Vi×D1を所望する出力直流電圧の内の最小値以下の所定値に略安定化することができる。
【0056】
《第3の実施の形態》
図5は、本発明に係る第3の実施の形態の多出力電源回路における主要部の構成を示す回路図である。図5において、図1に示した前述の第1の実施の形態の多出力電源回路における要素と同じ機能、構成を有するものには、同じ符号を付してその説明は第1の実施の形態の説明を適用する。第3の実施の形態において、第1の実施の形態の構成と異なる点は、スイッチ回路10の出力端に第1の出力直流電圧Vo1を出力する平滑回路14を接続した点と、第1の出力直流電圧Vo1を安定化するように降圧制御回路の機能を変更した点である。この変更に伴い、第1の実施の形態と区別するために、降圧制御回路13Bとした。平滑回路14は、インダクタ15とコンデンサ16とを有して構成されている。インダクタ15の一端はスイッチ回路10の出力端に接続されており、インダクタ15の他端にはコンデンサ16の一方の電極が接続されている。コンデンサ16の他方の電極は接地されており、コンデンサ16から第1の出力直流電圧Vo1が出力される。
【0057】
以下、第3の実施の形態の多出力電源回路の動作について説明する。
まず、ハイサイドスイッチ11とローサイドスイッチ12が交互にオンオフ動作することにより、スイッチ回路10の出力端子電圧V10は、入力直流電圧Viを振幅とする矩形波電圧となる。この矩形波電圧が平滑回路14によって平均化されて第1の出力直流電圧Vo1として出力される。ここで、ハイサイドスイッチ11が閉状態であるオン時間が、スイッチング周期Tに占める割合をデューティ比D1とすると、第1の出力直流電圧Vo1は次式(8)のように表される。
【0058】
Vo1=Vi×D1 ・・・(8)
【0059】
即ち、スイッチ回路10と平滑回路14は降圧回路を構成している。
【0060】
次に、第1の昇圧回路20を介して出力される第2の出力直流電圧Vo2が昇圧用スイッチ22のデューティ比D2を用いて次式(9)のように表される。
【0061】
Vo2=Vi×D1/(1−D2) ・・・(9)
【0062】
また、第2の昇圧回路30を介して出力される第3の出力直流電圧Vo3が、昇圧用スイッチ32のデューティ比D3を用いて次式(10)のように表される。
【0063】
Vo3=Vi×D1/(1−D3) ・・・(10)
【0064】
したがって、第2の出力直流電圧Vo2及び第3の出力直流電圧Vo3については、前述の第1の実施の形態における出力直流電圧Vo2及びVo3と同様である。ここで、Vo1=Vi×D1より、出力直流電圧Vo2及びVo3はそれぞれ次式(11)及び(12)のように表せる。
【0065】
Vo2=Vo1/(1−D2) ・・・(11)
Vo3=Vo1/(1−D3) ・・・(12)
【0066】
以上のように、本発明に係る第3の実施の形態の多出力電源回路では、1つの降圧出力と少なくとも1つの昇降圧出力を制御することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、入力直流電圧に対し昇降圧制御が可能な出力を含む、複数の出力を有する電源回路において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明に係る第1の実施の形態の多出力電源回路の構成を示す回路図
【図2】第1の実施の形態の多出力電源回路における各部分の動作波形図
【図3】第1の実施の形態の多出力電源回路の主要な構成部分の回路図
【図4】本発明に係る第2の実施の形態の多出力電源回路の構成を示す回路図
【図5】本発明に係る第3の実施の形態の多出力電源回路の構成を示す回路図
【図6】従来の多出力電源回路の構成を示す回路図
【符号の説明】
【0069】
1 入力直流電源
10 スイッチ回路
11 ハイサイドスイッチ
12 ローサイドスイッチ
13 降圧制御回路
20 第1の昇圧回路
21 インダクタ
22 昇圧用スイッチ
23 昇圧用整流器
24 平滑手段
25 昇圧制御回路
30 第2の昇圧回路
31 インダクタ
32 昇圧用スイッチ
33 昇圧用整流器
34 平滑手段
35 昇圧制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力直流電源に並列接続されたハイサイドスイッチとローサイドスイッチとの直列回路と、前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチを交互に開閉動作する降圧制御回路と、を有するスイッチ回路、及び
前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチとの中間接続点に接続される複数の昇圧回路、を具備する多出力電源回路。
【請求項2】
前記昇圧回路は、前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチとの中間接続点に一端が接続されたインダクタと、
前記インダクタの他端に接続された前記昇圧用スイッチと昇圧用整流器と、
前記昇圧用整流器に接続されて出力直流電圧を出力する平滑手段と、
前記出力直流電圧を制御するように前記昇圧用スイッチの開閉動作を制御する昇圧制御回路と、を有する請求項1に記載の多出力電源回路。
【請求項3】
前記降圧制御回路と前記昇圧制御回路は、同じスイッチング周波数で前記ハイサイドスイッチ、前記ローサイドスイッチ、及び前記昇圧用スイッチを駆動するよう構成された請求項1記載の多出力電源回路。
【請求項4】
前記降圧制御回路は、前記ハイサイドスイッチのスイッチング周期に対するオン時間の割合を、前記入力直流電源の出力する入力電圧に対する、前記複数の昇圧回路の出力する出力直流電圧のうちの最小値の割合以下に設定された請求項1記載の多出力電源回路。
【請求項5】
入力直流電源と並列接続されたハイサイドスイッチとローサイドスイッチとの直列回路と、前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチを交互に開閉動作する降圧制御回路と、を有するスイッチ回路、
前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチとの中間接続点に接続され、第1の出力直流電圧を出力する平滑回路、及び
前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチとの中間接続点に接続される少なくとも1つの昇圧回路、を具備する多出力電源回路。
【請求項6】
前記昇圧回路は、前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチとの中間接続点に一端が接続されたインダクタと、
前記インダクタの他端に接続された前記昇圧用スイッチと昇圧用整流器と、
前記昇圧用整流器に接続されて出力直流電圧を出力する平滑手段と、
前記出力直流電圧を制御するように前記昇圧用スイッチの開閉動作を制御する昇圧制御回路と、を有する請求項5に記載の多出力電源回路。
【請求項7】
前記平滑回路は、前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチとの中間接続点に一端が接続されたインダクタと、前記インダクタの他端が接続されたコンデンサとにより構成され、前記コンデンサの両端から前記第1の出力直流電圧が出力されるよう構成された請求項5に記載の多出力電源回路。
【請求項8】
前記降圧制御回路は、前記第1の出力直流電圧を制御するように前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチの開閉動作を制御するよう構成された請求項5に記載の多出力電源回路。
【請求項9】
前記降圧制御回路と前記昇圧制御回路は、同じスイッチング周波数で前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチ、及び前記昇圧用スイッチを駆動するよう構成された請求項6に記載の多出力電源回路。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力直流電源に並列接続されたハイサイドスイッチとローサイドスイッチとの直列回路と、前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチを交互にオンオフ動作する降圧制御回路と、を有するスイッチ回路、及び
前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチとの中間接続点に接続される複数の昇圧回路、を具備する多出力電源回路。
【請求項2】
前記昇圧回路は、前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチとの中間接続点に一端が接続されたインダクタと、
前記インダクタの他端に接続された昇圧用スイッチと昇圧用整流器と、
前記昇圧用整流器に接続されて出力直流電圧を出力する平滑手段と、
前記出力直流電圧を制御するように前記昇圧用スイッチのオンオフ動作を制御する昇圧制御回路と、を有する請求項1に記載の多出力電源回路。
【請求項3】
前記降圧制御回路と前記昇圧制御回路は、同じスイッチング周波数で前記ハイサイドスイッチ、前記ローサイドスイッチ、及び前記昇圧用スイッチを駆動するよう構成された請求項1記載の多出力電源回路。
【請求項4】
前記降圧制御回路は、前記ハイサイドスイッチのスイッチング周期に対するオン時間の割合を、前記入力直流電源の出力する入力電圧に対する、前記複数の昇圧回路の出力する出力直流電圧のうちの最小値の割合以下に設定された請求項1記載の多出力電源回路。
【請求項5】
入力直流電源と並列接続されたハイサイドスイッチとローサイドスイッチとの直列回路と、前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチを交互にオンオフ動作する降圧制御回路と、を有するスイッチ回路、
前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチとの中間接続点に接続され、第1の出力直流電圧を出力する平滑回路、及び
前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチとの中間接続点に接続される少なくとも1つの昇圧回路、を具備する多出力電源回路。
【請求項6】
前記昇圧回路は、前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチとの中間接続点に一端が接続されたインダクタと、
前記インダクタの他端に接続された前記昇圧用スイッチと昇圧用整流器と、
前記昇圧用整流器に接続されて出力直流電圧を出力する平滑手段と、
前記出力直流電圧を制御するように前記昇圧用スイッチのオンオフ動作を制御する昇圧制御回路と、を有する請求項5に記載の多出力電源回路。
【請求項7】
前記平滑回路は、前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチとの中間接続点に一端が接続されたインダクタと、前記インダクタの他端が接続されたコンデンサとにより構成され、前記コンデンサの両端から前記第1の出力直流電圧が出力されるよう構成された請求項5に記載の多出力電源回路。
【請求項8】
前記降圧制御回路は、前記第1の出力直流電圧を制御するように前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチのオンオフ動作を制御するよう構成された請求項5に記載の多出力電源回路。
【請求項9】
前記降圧制御回路と前記昇圧制御回路は、同じスイッチング周波数で前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチ、及び前記昇圧用スイッチを駆動するよう構成された請求項6に記載の多出力電源回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−149107(P2006−149107A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−336543(P2004−336543)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】