多孔性コーティング部材及び低温噴射法を利用したその製造方法
多孔性金属コーティング層が形成されたコーティング部材及びその製造方法が開示される。前記方法は多孔性コーティング層を母材に形成する方法において、母材を提供する工程、前記母材上にAl、Mg、Zn及びSnからなる群よりそれぞれ選択され、xA−(1−x)B(0<x<1、xはAとBの重量比)で表現される互いに異なる2種以上の金属を少なくとも含む金属組成の粉末を供給する工程、前記粉末に高圧ガスを提供する工程、前記高圧ガスによって前記金属粉末を超音速ノズルで噴射して前記母材にコーティングする工程、及び前記コーティングされた母材を熱処理して多孔性コーティング層を形成する工程を含むことを特徴とする。本発明の方法によれば、コーティング部材の内部の気孔大きさ及び気孔率を自由に調節することができる。したがって、多様な熱的機械的部材に適用できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多孔性コーティング層が形成されたコーティング部材及びその製造方法に関し、より詳しくは、低温噴射法によって母材表面に多孔性コーティング層を提供する方法及びコーティング層の気孔分布及び大きさが制御されるコーティング部材に関する。
【背景技術】
【0002】
部材の表面に形成された多孔性コーティング層は部材の熱的機械的特性の向上をもたらすことができる。
例えば、熱交換機の表面に相互連結された開気孔(open pore)から構成された多孔性コーティング層が形成されている場合、熱交換機は周辺空気と一層広い接触面積を有するようになって、より効率的な熱交換性能を達成することができる。一方、摩擦部材の場合、周辺コンポーネントとの関係によって部材が低い強度及び硬度を有することが要求されることもあり、多孔性コーティング層はこのような要求を満足させることができる。また、母材と異種物質を接合することにおいては、接合界面に格子不整合による応力が発生することがあり、多孔性コーティング層はこのような接合応力を解消する緩衝層としても作用することができる。
【0003】
従来、熱的及び機械的部材表面に金属コーティング層を形成する方法としては多様なコーティング方法が使用されてきた。例えば、電気メッキ、溶融メッキまたは溶射法などがその例である。しかし、このような方法は応用分野の制約が伴ったり、母材に熱衝撃または熱変形などを誘発するおそれがある。また、これら方法でコーティング層内部に人為的に気孔率を調節したり気孔分布を制御することは現実的に困難である。
【0004】
また、従来の熱交換機の配管などに使用される熱伝導性金属コーティング層は、廃水や海水などの腐食性環境では腐食されて離れたり、表面に苔が形成されて本来の機能を果たすことができなくなるなど、その耐久性を保障できないという問題点も有している。
【発明の開示】
【0005】
本発明は、母材に熱的変形または熱衝撃による損傷を誘発するおそれがなく、広範囲な分野に使用できる熱的及び機械的応用部材及びこれに使用される多孔性コーティング層形成方法を提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明は、表面コーティング層内部の気孔率、気孔大きさ及び気孔分布が制御可能な熱的及び機械的部材及びこれに使用される多孔性コーティング層形成方法及びそれによって製造された多孔性コーティング部材を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、外部の腐食性環境で長期間使用可能であり、高い熱伝導率を有する多孔性コーティング層形成方法を提供することを目的とする。
前記技術的課題を達成するために、本発明は、多孔性コーティング層を母材に形成する方法において、母材を提供する工程、前記母材上にAl、Mg、Zn及びSnからなる群よりそれぞれ選択され、xA−(1−x)B(0<x<1、xはAとBの重量比)で表わされる互いに異なる2種以上の金属を少なくとも含む金属組成の粉末を供給する工程、前記粉末に高圧ガスを提供する工程、前記高圧ガスによって前記金属粉末を超音速ノズルで噴射して前記母材にコーティングする工程及び前記コーティングされた母材を熱処理して多孔性コーティング層を形成する工程を含む多孔性コーティング層形成方法を提供する。
【0008】
本発明の実施例によれば、前記方法で前記AはAlであり、前記BはMg、Zn及びSnからなる群より選択された1種の金属元素である。また、前記熱処理工程は前記AとBの共融温度以上及び前記AとBのうちの高い融点を有する金属の融点以下で行われるのが好ましく、具体的には、約200〜650℃の温度範囲である。
【0009】
また、前記方法で前記粉末供給工程は、前記xを変化させることによって粉末組成を変化させる工程をさらに含むことができる。
本発明は、金属コーティング部材を提供する。金属コーティング部材は、金属母材及び前記金属母材上にxA−(1−x)B(ここで、xはAとBの重量比)で表わされる少なくとも2種の金属元素を含むコーティング層を備え、前記AとBはそれぞれAl、Mg、Zn及びSnからなる群より選択された互いに異なる1種の金属であり、前記xは0<x<1の範囲内で前記コーティング層の厚さ方向に変化し、前記xの変化によって前記コーティング層内の気孔率が変化する。
【0010】
本発明の実施例によれば、前記部材で前記xは前記コーティング層の厚さ方向に増加または減少し、前記xの増加または減少によって前記コーティング層内の気孔率が増減する。また、前記AはAlであり、前記BはMg、Zn及びSnからなる群より選択された1種の金属である場合、前記金属母材と前記コーティング層の界面から前記コーティング層の表面に向かって進むに従って前記xは減少し、前記コーティング層の気孔率が増加する。
【0011】
また、本発明は、金属母材、及び前記金属母材上にA−Bで表わされる少なくとも2種以上の金属元素を含むコーティング層を備え、前記AとBはそれぞれAl、Mg、Zn及びSnからなる群より選択された互いに異なる1種の金属であり、前記群より選択されるAまたはBは前記コーティング層の厚さ方向によって変化し、前記AまたはBの変化によって前記コーティング層内の気孔率が変化することを特徴とする金属コーティング部材を提供する。
【0012】
本発明で前記コーティング層は前記コーティング層内部の少なくとも一部分に相互連結された開気孔を含むことができ、特定応用分野では前記開気孔が前記コーティング層の上部に存在するのが好ましい。
【0013】
また、本発明は、母材上に、多孔性カーボンコーティング層を形成する方法を提供する。その方法は、母材を提供する工程、有機バインダーによって造粒化(conglomeration)されたカーボン粉末を供給する工程、前記カーボン粉末に高圧ガスを提供する工程及び前記高圧ガスによって前記カーボン粉末を超音速ノズルで噴射して前記母材にコーティングする工程を含む。
【0014】
前記方法では、カーボン粉末の造粒化に使用される有機バインダーとしては、ポリビニルアルコール(PVA)、ロジン、レジン(resin)、ポリビニルブチラール(PVB)及びポリエチレングリコール(PEG)からなる群より選択された少なくとも一つの有機バインダーを使用できる。前記有機バインダーは前記カーボンに対して10〜30重量%で含まれるのが好ましい。
また、前記コーティング方法で形成されたコーティング層は400〜500℃の温度で前記有機バインダーをバーンアウトする工程をさらに経ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明でコーティング層を形成するために使用される低温噴射装置100を概略的に示した図面である。
【図2a】本発明の実施例によって多孔性コーティング層形成方法の各工程を示したフローチャートである。
【図2b】本発明の実施例によって多孔性コーティング層形成方法の各工程を示したフローチャートである。
【図3】本発明の実施例によって内部組成が変化するコーティング層を有するコーティング部材200の一例を示した断面図である。
【図4】本発明の実施例によって0.5Al−0.5AlMg組成のコーティング層を熱処理した後、その断面を撮影した光学顕微鏡写真である。
【図5】本発明の実施例によって0.3Al−0.7AlMg組成のコーティング層を熱処理した後、その断面を撮影した光学顕微鏡写真である。
【図6】本発明の実施例によってAl/AlMg/Al/AlMg/Al組成が順次積層されたコーティング層を熱処理した後、その断面を撮影した光学顕微鏡写真である。
【図7】本発明の実施例によって0.667Al−0.333Mg/0.5Al−0.5Mg組成が順次積層されたコーティング層を熱処理した後、その断面を撮影した光学顕微鏡写真である。
【図8】本発明の実施例によって0.5Al−0.5Sn組成のコーティング層を熱処理した後、その断面を撮影した光学顕微鏡写真である。
【図9】本発明の実施例によって0.667Al−0.333Sn/0.5Al−0.5Sn組成が順次積層されたコーティング層を熱処理した後、その断面を撮影した光学顕微鏡写真である。
【図10】本発明の実施例によって0.667Al−0.333Zn/0.5Al−0.5Zn組成が順次積層されたコーティング層を熱処理した後、その断面を撮影した光学顕微鏡写真である。
【図11】本発明の他の実施例であって、多孔性カーボンコーティング層を形成する過程を説明するためのフローチャートである。
【図12a】図11の方法によって形成されたカーボンコーティング層の断面及び表面を撮影した電子顕微鏡写真である。
【図12b】図11の方法によって形成されたカーボンコーティング層の断面及び表面を撮影した電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明を詳述する。
図1は本発明で粉末を加速して基板Sにコーティング層を形成するための低温噴射装置100の概略図を示した図面である。
【0017】
前記噴射装置100はコーティング層を形成する粉末を亜音速または超音速で加速して基板Sに供給する。そのために、前記噴射装置100はガス圧縮器110、ガスヒーター120、粉末供給器130及び噴射ノズル140から構成される。
【0018】
ガス圧縮器100から供給された約5から20気圧の圧縮ガスは粉末供給器130から供給される約1〜50μmの粉末を噴射ノズル140を通して約300〜1200mm/sの速度で噴出する。ガスと共に噴出された粉末は基板Sに衝突する。この時、粉末が有する運動エネルギーは基板Sに衝突する時に粉末を塑性変形させ、基板に対する結合力を提供し、結果的に非常に高い密度のコーティング層を形成するようにする。
【0019】
前記装置100で、圧縮ガス供給経路上のガスヒーター120は圧縮ガスの運動エネルギーを増加させて噴射ノズルの噴射速度を高めるために圧縮ガスを加熱するための付加的な装置である。また、図示されているように、噴射ノズル140への粉末供給をより円滑にするために前記ガス圧縮器110の圧縮ガスの一部は前記粉末供給器130に供給してもよい。
【0020】
前記装置100で圧縮ガスとしては商用のガス、例えばヘリウム、窒素、アルゴン及び空気などを使用することができ、使用ガスの種類は噴射ノズル140での噴射速度及び経済性などを考慮して適切に選択することができる。
【0021】
図示された装置の動作及び構造についてのより具体的な説明はアルキモブ(Anatoly P. Alkimov)等による米国特許第5,305,414号に詳しく記述されており、ここでは説明を省略する。
【0022】
図2aは図1と関連して説明した噴射装置を使用して母材または基板にコーティング層を形成する各工程を示したフローチャートである。
図2aを参照すれば、本発明の方法は、まず、前記噴射装置100の粉末供給器130から2種以上の金属を含む金属粉末を供給する工程(S210)と、ガス圧縮器110から高圧の圧縮ガスを提供する工程(S220)で始まる。
【0023】
前記粉末供給工程(S210)で2種以上の金属を含む粉末はAl、Mg、Zn及びSnからなる群より選択された少なくとも2つ以上の金属の混合物または固溶物であるか、またはこれら両者の混合物を含む。また、本発明で選択された各金属は互いに異なる。例えば、前記群より選択された1種の金属がAlを含む場合、前記金属粉末の組成はAl−Mg、Al−Zn又はAl−Snのような2元系またはAl−Mg−Znのような3元系であるか、またはそれ以上とすることができる。また、羅列された金属群以外にも本発明の技術的な思想に反しない限り、Ti、Si、Mn、Cr、Fe、Co、Ni又はCuを追加的に使用することができる。
【0024】
本発明において、前記金属組成の粉末は、固溶体の形態で提供することができる。例えば、Al−Mg組成の金属粉末はいわゆるマガル(Magal)と呼ばれるAlMg固溶体形態で提供することができる。また、前記金属組成の粉末は前記固溶型粉末とモノリシック(monolith)粉末の混合体でも提供することができる。例えば、前記金属粉末は、Al粉末とAlMg粉末の混合物とすることもできる。Mgのような金属粉末は爆発などの取扱危険性があるため、このような固溶体の形態で提供することによって、取扱が容易となる。
【0025】
本発明のコーティング層が熱的機械的部材に使用される場合、前記金属粉末は比重に対して熱伝導度、強度など熱的機械的特性が相対的に優れていて、機械部材に幅広く使用されるAlまたはAl合金を含むのが好ましい。
【0026】
本発明の圧縮ガス提供工程(S220)で提供されるガスは前述のようなヘリウム、窒素、アルゴン及び空気などを使用することができる。前記ガスはコンプレッサのようなガス圧縮器で約5〜20気圧に圧縮されて供給される。必要に応じて、前記圧縮ガスは図1のガスヒーター120のような加熱手段によって約200〜500℃の温度で加熱された状態で供給することができる。しかし、このような実施例によって圧縮ガスを加熱状態で供給してもガスの比熱が非常に小さいという点を考慮すれば、金属粉末の温度変化はあまり大きくない。したがって、本発明の噴射工程は低温噴射という点から、ほとんど融点付近または融点以上に粉末を加熱してコーティングする従来の溶射法とは異なる。
【0027】
一方、前記圧縮ガス提供工程(S220)で供給される圧縮ガスの一部を前記金属粉末の持続的で安定的な供給のためのキャリアガスとして使用できるのは前述の通りである。
次に、超音速噴射ノズルで前記圧縮ガスと前記金属粉末の混合物を噴射する(S230)。前記ノズルを通して噴射されるガス−粉末混合物の速度は流入されるガスの温度、圧力及び粉末の粒子大きさ及び比重に依存する。前述の流入ガスの圧力、温度条件及び約1〜50μmの粒子大きさで、前記ガス−粉末混合体の噴射速度は約300〜1200m/sである。
【0028】
高速で噴射された金属粉末は、母材に衝突して高密度のコーティング層を形成する。所望の厚さのコーティング層を得る時まで前記噴射工程(S230)を行った後、形成されたコーティング層を熱処理する(S240)。本発明で前記熱処理温度は、約200〜650℃であるのが好ましい。650℃以上の熱処理温度はコーティングされた金属の完全溶融を招き、200℃以下の温度はコーティングされた組成の溶融がほとんど発生しないので熱処理効果がほとんど発生しない。
【0029】
母材上に形成された高密度のコーティング層は前記熱処理工程(S240)を経ることによって多孔性を有する。また、後述する本発明の実施例から分かるように、形成された多孔性コーティング層の気孔率及び気孔大きさはコーティングされた金属粉末の組成の変化によって変化する。ここで、組成の変化とは、使用された金属成分の変化だけでなく、含量の変化を含む意味で使用される。
【0030】
図2bは、図2aと関連して説明した本発明のコーティング方法でコーティング層内に気孔分布を制御するために供給される金属粉末の組成を変化させる工程(S250)を含む多孔性コーティング層形成方法の各工程を示している。
【0031】
この方法によれば、ノズル噴射工程(S240)によってコーティング層を形成する途中に供給される粉末の組成を変化させる。例えば、Al:Mgの重量比が1:1である0.5Al−0.5Mg組成粉末を供給している途中に、これを1:2の比率に調節したり、Al−Mgの代わりにAl:Znが1:1であるAl−Zn組成粉末を供給したりすることなどによって形成されるコーティング層の厚さ方向に組成傾斜を有したり、コーティング層内に相異なる成分が含有されるコーティング層を形成することができる。
【0032】
前記粉末の組成を変化させる具体的な方法は当業者が設計できる通常の方法が使用される。例えば、一つの粉末供給器に順次にいろいろな組成の粉末を投入する方式、または相異なる組成粉末を貯蔵する複数の粉末供給器を配列し、バルブによって供給される組成の粉末供給器を選択する方式を使用することができる。
【0033】
図3はこのような方式によって形成されたコーティング層を含むコーティング部材200の一例を概念的に示した断面図である。
図3を参照すれば、Alのような母材S上に、重量比が2:1であるAl−Zn層210、重量比が1:1であるAl−Zn層220、及び重量比が1:2であるAl−Zn層230が形成された状態を示している。後述する本発明の実施例によれば、このように積層されたコーティング層を熱処理すると、Zn含有量が増加するに従って内部の気孔大きさ及び気孔率が増加する。したがって、図3のような組成でコーティングされた部材を熱処理すると、母材から遠くなるほど気孔率及び/または気孔含量が増加するコーティング部材を得ることができる。このような気孔分布は母材との界面で安定したコーティング接着性を保障するという面で好ましい。また、このような構造で気孔率及び気孔含量が増加することによってコーティング層の表面付近に形成された気孔は、相互連結された開気孔とすることができる。このような開気孔は特に母材の熱交換特性を向上させることに重要な役割を果たす。
【0034】
図3を参照して説明したコーティング層内の気孔分布の変化は、各成分の含量を変化させる方法以外にも、成分自体を変化させることによって得ることができるのは先に説明した通りである。つまり、母材上にAl−Mg層、Al−Zn層及びAl−Sn層を順次積層することによって界面から気孔率及び/または気孔大きさが増加するコーティング部材を得ることができる。
【0035】
図11は本発明の他の実施例であって、多孔性カーボンコーティング層を形成する過程を説明するためのフローチャートである。
図11を参照すれば、まず、平均粒径が10μm以下であるカーボン粉末を、PVA、PVB、PEG、レジン及びロジンからなる群より選択された少なくとも一つのバインダーと混合する(S310)。混合はバインダーによって適切な溶媒、即ち、水やアルコールなどの有機溶媒で行われる。
【0036】
次に、得られたスラリーを乾燥してカーボン粉末ケーキを製造した後、これを粉砕及び選別してノズル噴射に適切な粒度、例えば平均粒径50〜200μmを有するカーボン粉末を収得する(S320からS340)。この過程を経たカーボン粉末は有機バインダーによって結合されて、最初の粉末大きさに比べて粗大化される。
【0037】
次いで、得られたカーボン粉末を、図1を参照して説明した低温噴射装置によって、約4〜7kgf/cm2の高圧ガス(S350)と共にノズルで噴射して、母材上にコーティング層を形成する(S350)。さらに、約400〜500℃の温度でバーンアウト工程を経て前記コーティング層内の有機バインダーを除去することもできる。
【0038】
以下では好ましい実施例を通じて本発明をより詳しく説明する。
下記の実施例1から7で使用された金属の一般的な物性は表1の通りである。
【0039】
【表1】
【0040】
下記の実施例1から7でのズル噴射条件は次の通りである。
−ノズル:標準ラバル型(standard laval type)
アパーチャ:4×6mm
スロウトギャップ:1mm
−圧縮ガス:種類:空気
圧力:7気圧
温度:330℃
−供給粉末サイズ:<44μm(325メッシュ)
【0041】
実施例1
重量比50:50であるAl粉末とAlMg(共融温度約400℃)粉末の混合粉末(即ち、0.5Al−0.5AlMg)を、7気圧の空気を噴射ノズルに供給してアルミニウム基板上にコーティングした。
形成されたコーティングを約620℃で1時間熱処理した。熱処理された基板を切断及び研磨した後、その切断面を光学顕微鏡で観察した。図4はこのように製造された基板の切断面写真を図示している。
【0042】
図4でコーティング層がAl基板によく付着されていることが分かり、Al基板とコーティング層の界面はコーティング層内部にトラップされた気孔(黒い部分)によって明確に区分されている。これら気孔はコーティング状態では観察されなかったものであって、熱処理後生成されたものである。
【0043】
実施例2
混合粉末にAlMgの重量を増加させて0.3Al−0.7AlMgの組成を金属粉末の組成としたことを除いては、実施例1と同一な条件でコーティング層を製造した。実施例1と同一に製造されたコーティング層を熱処理し、その断面を光学顕微鏡で観察して、これを図5に示した。
図4と比較すると、図5では気孔の大きさが増加したことが分かり、肉眼でも気孔率が増加したことが分かる。
【0044】
実施例3
Al粉末/AlMg粉末/Al粉末/AlMg粉末/Al粉末の順に粉末組成を変化させながらコーティング層を形成した。残りコーティング条件は実施例1と同一であった。次に、形成されたコーティング層を620℃、1時間熱処理した。
図6は熱処理された基板の断面を示す光学顕微鏡写真である。図示されているように、純粋なAl層では気孔がよく観察されなかったが、AlMg層では気孔が観察されることが分かる。
【0045】
実施例4
Al基板上に組成が0.667Al−0.333Mgである混合粉末でコーティングした後、続いて組成が0.5Al−0.5Mgである混合粉末でコーティングした。残りコーティング条件は実施例1と同一であった。次に、形成されたコーティング層を約620℃の温度で1時間熱処理して、その断面を光学顕微鏡で観察した。
【0046】
図7は断面を観察した光学顕微鏡写真である。図7から分かるように、組成が0.5Al−0.5Mgであるコーティング領域(表面付近)の気孔率が、組成が0.667Al−0.333Mgであるコーティング領域(界面付近)に比べて増加していることが分かる。したがって、Mg含量の増加がコーティング層内の気孔率の増加を招くことが分かる。また、気孔形状と気孔率から、表面付近の気孔は相互連結された開気孔であることを推測することができる。このように、コーティング層の表面から内部へまで相互連結されている気孔は、周辺空気との多くの接触面積を提供するので、特に熱交換または熱放射特性が優れていることが要求される応用分野に適する。
【0047】
実施例5
Al基板上に組成が0.5Al−0.5SnであるAlとSnの混合粉末をコーティングした。残りコーティング条件は実施例1と同一であった。
形成されたコーティング層を約650℃の温度で1時間熱処理した後、その断面を研磨した後に光学顕微鏡で観察した。図8はその断面光学顕微鏡写真である。図7から分かるように、コーティング層内部で数多くの気孔を確認することができ、これら気孔は形状及び気孔率から察して、相互連結されているものであると把握される。
【0048】
実施例6
組成が0.667Al−0.333Snである混合粉末で実施例1と同様な方法でコーティングした後、続いて組成が0.5Al−0.5Snである混合粉末で追加コーティングした。形成されたコーティング層を620℃で1時間熱処理した後、研磨された断面を光学顕微鏡で観察した。
図9はその断面写真であって、0.667Al−0.333Snがコーティングされた界面付近と0.5Al−0.5Snがコーティングされた表面付近を比較すると、表面付近で気孔の大きさが大幅に増加し、気孔率も増加したことが分かる。したがって、Snの含量増加が気孔生成を促進することが分かる。
【0049】
実施例7
Al基板に組成が0.667Al−0.333Znである混合粉末でコーティングした後、続いて組成が0.5Al−0.5Znである混合粉末でコーティングした。コーティング条件は実施例1と同一であった。次に、形成されたコーティング層を約620℃の温度で1時間熱処理し、その断面を光学顕微鏡で撮影して図10に示した。
【0050】
図10からZnの添加によってコーティング層内部に多くの気孔が形成されることが分かる。また、Zn含量が高い表面付近でZn含量が相対的に低い界面付近に比べて非常に大きい気孔が存在し、気孔率も増加することを確認できる。したがって、Zn含量の増加が気孔の大きさ及び気孔率の増加をもたらすことが分かる。
【0051】
以上説明した実施例1から実施例7からコーティング層にAlと共に添加されるMg、Zn、Snが熱処理後コーティング層内の気孔の形成に関与することが分かった。また、添加量が増加するほど生成される気孔の大きさ及び気孔率も増加することが分かった。生成された気孔はMg、Zn及びSnの含量が増加するに従って相互連結されて開気孔化された。
このような現状の原因について本発明者は次の通り推測する。しかし、以下の説明は本発明の理解のための参照的なものであり、本発明の技術的範囲の解釈根拠として提示されるものではない。
【0052】
Alと共に添加されたMg、Zn、Snは熱処理温度でAlと共融液状を形成し、Alは部分的に溶融される。このように液状が存在する時に気孔の合体が相対的に容易になり、結局肉眼で観察される気孔の増加をもたらすことができる。
一方、溶融Alと空気中の水分が反応することによって生成された水素などの副産物ガスを気孔生成の原因として挙げることができる。AlだけでなくAlより融点が低いMg、Sn、Znなども熱処理温度でこのような反応を起こすことと推測される。
【0053】
また他の理由としては、部分的な溶融によって各金属粉末が合金化される時の密度変化によって気孔が生成されたと推測することができる。
このような推測は、前述の実施例のようにMgの添加に比べてZnやSnが添加される時に相対的に多くの気孔が形成されることにもよく符合する。なぜなら、Znの溶融温度(419.46℃)またはSnの溶融温度(231.9℃)はMgの溶融温度(650℃)に比べて低いためである。
【0054】
以上の点を考慮するとき、本発明で熱処理温度は混合される少なくとも2つの金属の共融温度(eutectic temperature)以上でなければならない。ここで、共融温度は包晶温度(peritectic temperature)を含む意味で使用される。ただし、各金属粉末が微量の不純物を含有していることがあるので、共融温度以下でも部分的な溶融現象が発生することもある。また、本発明で熱処理温度は融点が最も高い純粋Alの融点を越えてはいけない。この場合、コーティング自体が構造的安定性を有することができないためである。
【0055】
実施例8
銅(Cu)板上にカーボンコーティング層を形成した。平均粒径5〜10μmであるカーボン粉末を約15重量%のPVAに混合及び乾燥してカーボンケーキを製造した後、これを乳鉢で粉砕して粒子が150μm以下のカーボン粒子を選別した。選別されたカーボン粉末を前述の実施例と同一な温度及び圧力で前記銅板上に噴射してカーボンコーティング層を形成した。
【0056】
図12a及び図12bは銅板上に形成されたカーボンコーティング層の断面及び表面を撮影した電子顕微鏡写真である。図示された写真から、銅板上に優れた接着力を有する多孔性カーボンコーティング層が形成されることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の方法は低温噴射法が有する多数の長所をそのまま保有している。つまり、高温処理を行わないため母材またはコーティング層の酸化を最大限抑制し母材に熱衝撃による損傷を加えるおそれがない。また、非常に高いコーティング蒸着速度を達成することができ、蒸着層の厚さ調節が非常に容易である。
【0058】
特に、本発明のコーティング方法でAlと共に使用されるMg、Sn、ZnなどはAlに比べて低い融点を有する。したがって、Alの融点以下で熱処理することによって母材としてAlまたはAl合金を使用する大部分の熱的及び機械的部材に母材損傷無しに適用可能である。
【0059】
また、本発明のコーティング方法はコーティング組成を変化させることによってコーティング層に形成される気孔率を変化させる。このような方法は各産業分野で要求される多孔性コーティング層を非常に簡単な方法で提供することができるようにする。
【0060】
また、本発明の方法によって製造されたコーティング部材は内部に気孔大きさ及び気孔率を自由に調節することができる。したがって、多様な熱的及び機械的部材として使用できる。
【0061】
本発明の方法によって製造されたカーボンコーティング層は内部に数多くの気孔を有する多孔性構造によって高い熱伝導率を保障するだけでなく、カーボン自体が金属に比べて海水や廃水などの腐食性環境で一層安定的であるため腐食性環境でも熱的部材として使用されることに適合する。
【技術分野】
【0001】
本発明は多孔性コーティング層が形成されたコーティング部材及びその製造方法に関し、より詳しくは、低温噴射法によって母材表面に多孔性コーティング層を提供する方法及びコーティング層の気孔分布及び大きさが制御されるコーティング部材に関する。
【背景技術】
【0002】
部材の表面に形成された多孔性コーティング層は部材の熱的機械的特性の向上をもたらすことができる。
例えば、熱交換機の表面に相互連結された開気孔(open pore)から構成された多孔性コーティング層が形成されている場合、熱交換機は周辺空気と一層広い接触面積を有するようになって、より効率的な熱交換性能を達成することができる。一方、摩擦部材の場合、周辺コンポーネントとの関係によって部材が低い強度及び硬度を有することが要求されることもあり、多孔性コーティング層はこのような要求を満足させることができる。また、母材と異種物質を接合することにおいては、接合界面に格子不整合による応力が発生することがあり、多孔性コーティング層はこのような接合応力を解消する緩衝層としても作用することができる。
【0003】
従来、熱的及び機械的部材表面に金属コーティング層を形成する方法としては多様なコーティング方法が使用されてきた。例えば、電気メッキ、溶融メッキまたは溶射法などがその例である。しかし、このような方法は応用分野の制約が伴ったり、母材に熱衝撃または熱変形などを誘発するおそれがある。また、これら方法でコーティング層内部に人為的に気孔率を調節したり気孔分布を制御することは現実的に困難である。
【0004】
また、従来の熱交換機の配管などに使用される熱伝導性金属コーティング層は、廃水や海水などの腐食性環境では腐食されて離れたり、表面に苔が形成されて本来の機能を果たすことができなくなるなど、その耐久性を保障できないという問題点も有している。
【発明の開示】
【0005】
本発明は、母材に熱的変形または熱衝撃による損傷を誘発するおそれがなく、広範囲な分野に使用できる熱的及び機械的応用部材及びこれに使用される多孔性コーティング層形成方法を提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明は、表面コーティング層内部の気孔率、気孔大きさ及び気孔分布が制御可能な熱的及び機械的部材及びこれに使用される多孔性コーティング層形成方法及びそれによって製造された多孔性コーティング部材を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、外部の腐食性環境で長期間使用可能であり、高い熱伝導率を有する多孔性コーティング層形成方法を提供することを目的とする。
前記技術的課題を達成するために、本発明は、多孔性コーティング層を母材に形成する方法において、母材を提供する工程、前記母材上にAl、Mg、Zn及びSnからなる群よりそれぞれ選択され、xA−(1−x)B(0<x<1、xはAとBの重量比)で表わされる互いに異なる2種以上の金属を少なくとも含む金属組成の粉末を供給する工程、前記粉末に高圧ガスを提供する工程、前記高圧ガスによって前記金属粉末を超音速ノズルで噴射して前記母材にコーティングする工程及び前記コーティングされた母材を熱処理して多孔性コーティング層を形成する工程を含む多孔性コーティング層形成方法を提供する。
【0008】
本発明の実施例によれば、前記方法で前記AはAlであり、前記BはMg、Zn及びSnからなる群より選択された1種の金属元素である。また、前記熱処理工程は前記AとBの共融温度以上及び前記AとBのうちの高い融点を有する金属の融点以下で行われるのが好ましく、具体的には、約200〜650℃の温度範囲である。
【0009】
また、前記方法で前記粉末供給工程は、前記xを変化させることによって粉末組成を変化させる工程をさらに含むことができる。
本発明は、金属コーティング部材を提供する。金属コーティング部材は、金属母材及び前記金属母材上にxA−(1−x)B(ここで、xはAとBの重量比)で表わされる少なくとも2種の金属元素を含むコーティング層を備え、前記AとBはそれぞれAl、Mg、Zn及びSnからなる群より選択された互いに異なる1種の金属であり、前記xは0<x<1の範囲内で前記コーティング層の厚さ方向に変化し、前記xの変化によって前記コーティング層内の気孔率が変化する。
【0010】
本発明の実施例によれば、前記部材で前記xは前記コーティング層の厚さ方向に増加または減少し、前記xの増加または減少によって前記コーティング層内の気孔率が増減する。また、前記AはAlであり、前記BはMg、Zn及びSnからなる群より選択された1種の金属である場合、前記金属母材と前記コーティング層の界面から前記コーティング層の表面に向かって進むに従って前記xは減少し、前記コーティング層の気孔率が増加する。
【0011】
また、本発明は、金属母材、及び前記金属母材上にA−Bで表わされる少なくとも2種以上の金属元素を含むコーティング層を備え、前記AとBはそれぞれAl、Mg、Zn及びSnからなる群より選択された互いに異なる1種の金属であり、前記群より選択されるAまたはBは前記コーティング層の厚さ方向によって変化し、前記AまたはBの変化によって前記コーティング層内の気孔率が変化することを特徴とする金属コーティング部材を提供する。
【0012】
本発明で前記コーティング層は前記コーティング層内部の少なくとも一部分に相互連結された開気孔を含むことができ、特定応用分野では前記開気孔が前記コーティング層の上部に存在するのが好ましい。
【0013】
また、本発明は、母材上に、多孔性カーボンコーティング層を形成する方法を提供する。その方法は、母材を提供する工程、有機バインダーによって造粒化(conglomeration)されたカーボン粉末を供給する工程、前記カーボン粉末に高圧ガスを提供する工程及び前記高圧ガスによって前記カーボン粉末を超音速ノズルで噴射して前記母材にコーティングする工程を含む。
【0014】
前記方法では、カーボン粉末の造粒化に使用される有機バインダーとしては、ポリビニルアルコール(PVA)、ロジン、レジン(resin)、ポリビニルブチラール(PVB)及びポリエチレングリコール(PEG)からなる群より選択された少なくとも一つの有機バインダーを使用できる。前記有機バインダーは前記カーボンに対して10〜30重量%で含まれるのが好ましい。
また、前記コーティング方法で形成されたコーティング層は400〜500℃の温度で前記有機バインダーをバーンアウトする工程をさらに経ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明でコーティング層を形成するために使用される低温噴射装置100を概略的に示した図面である。
【図2a】本発明の実施例によって多孔性コーティング層形成方法の各工程を示したフローチャートである。
【図2b】本発明の実施例によって多孔性コーティング層形成方法の各工程を示したフローチャートである。
【図3】本発明の実施例によって内部組成が変化するコーティング層を有するコーティング部材200の一例を示した断面図である。
【図4】本発明の実施例によって0.5Al−0.5AlMg組成のコーティング層を熱処理した後、その断面を撮影した光学顕微鏡写真である。
【図5】本発明の実施例によって0.3Al−0.7AlMg組成のコーティング層を熱処理した後、その断面を撮影した光学顕微鏡写真である。
【図6】本発明の実施例によってAl/AlMg/Al/AlMg/Al組成が順次積層されたコーティング層を熱処理した後、その断面を撮影した光学顕微鏡写真である。
【図7】本発明の実施例によって0.667Al−0.333Mg/0.5Al−0.5Mg組成が順次積層されたコーティング層を熱処理した後、その断面を撮影した光学顕微鏡写真である。
【図8】本発明の実施例によって0.5Al−0.5Sn組成のコーティング層を熱処理した後、その断面を撮影した光学顕微鏡写真である。
【図9】本発明の実施例によって0.667Al−0.333Sn/0.5Al−0.5Sn組成が順次積層されたコーティング層を熱処理した後、その断面を撮影した光学顕微鏡写真である。
【図10】本発明の実施例によって0.667Al−0.333Zn/0.5Al−0.5Zn組成が順次積層されたコーティング層を熱処理した後、その断面を撮影した光学顕微鏡写真である。
【図11】本発明の他の実施例であって、多孔性カーボンコーティング層を形成する過程を説明するためのフローチャートである。
【図12a】図11の方法によって形成されたカーボンコーティング層の断面及び表面を撮影した電子顕微鏡写真である。
【図12b】図11の方法によって形成されたカーボンコーティング層の断面及び表面を撮影した電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明を詳述する。
図1は本発明で粉末を加速して基板Sにコーティング層を形成するための低温噴射装置100の概略図を示した図面である。
【0017】
前記噴射装置100はコーティング層を形成する粉末を亜音速または超音速で加速して基板Sに供給する。そのために、前記噴射装置100はガス圧縮器110、ガスヒーター120、粉末供給器130及び噴射ノズル140から構成される。
【0018】
ガス圧縮器100から供給された約5から20気圧の圧縮ガスは粉末供給器130から供給される約1〜50μmの粉末を噴射ノズル140を通して約300〜1200mm/sの速度で噴出する。ガスと共に噴出された粉末は基板Sに衝突する。この時、粉末が有する運動エネルギーは基板Sに衝突する時に粉末を塑性変形させ、基板に対する結合力を提供し、結果的に非常に高い密度のコーティング層を形成するようにする。
【0019】
前記装置100で、圧縮ガス供給経路上のガスヒーター120は圧縮ガスの運動エネルギーを増加させて噴射ノズルの噴射速度を高めるために圧縮ガスを加熱するための付加的な装置である。また、図示されているように、噴射ノズル140への粉末供給をより円滑にするために前記ガス圧縮器110の圧縮ガスの一部は前記粉末供給器130に供給してもよい。
【0020】
前記装置100で圧縮ガスとしては商用のガス、例えばヘリウム、窒素、アルゴン及び空気などを使用することができ、使用ガスの種類は噴射ノズル140での噴射速度及び経済性などを考慮して適切に選択することができる。
【0021】
図示された装置の動作及び構造についてのより具体的な説明はアルキモブ(Anatoly P. Alkimov)等による米国特許第5,305,414号に詳しく記述されており、ここでは説明を省略する。
【0022】
図2aは図1と関連して説明した噴射装置を使用して母材または基板にコーティング層を形成する各工程を示したフローチャートである。
図2aを参照すれば、本発明の方法は、まず、前記噴射装置100の粉末供給器130から2種以上の金属を含む金属粉末を供給する工程(S210)と、ガス圧縮器110から高圧の圧縮ガスを提供する工程(S220)で始まる。
【0023】
前記粉末供給工程(S210)で2種以上の金属を含む粉末はAl、Mg、Zn及びSnからなる群より選択された少なくとも2つ以上の金属の混合物または固溶物であるか、またはこれら両者の混合物を含む。また、本発明で選択された各金属は互いに異なる。例えば、前記群より選択された1種の金属がAlを含む場合、前記金属粉末の組成はAl−Mg、Al−Zn又はAl−Snのような2元系またはAl−Mg−Znのような3元系であるか、またはそれ以上とすることができる。また、羅列された金属群以外にも本発明の技術的な思想に反しない限り、Ti、Si、Mn、Cr、Fe、Co、Ni又はCuを追加的に使用することができる。
【0024】
本発明において、前記金属組成の粉末は、固溶体の形態で提供することができる。例えば、Al−Mg組成の金属粉末はいわゆるマガル(Magal)と呼ばれるAlMg固溶体形態で提供することができる。また、前記金属組成の粉末は前記固溶型粉末とモノリシック(monolith)粉末の混合体でも提供することができる。例えば、前記金属粉末は、Al粉末とAlMg粉末の混合物とすることもできる。Mgのような金属粉末は爆発などの取扱危険性があるため、このような固溶体の形態で提供することによって、取扱が容易となる。
【0025】
本発明のコーティング層が熱的機械的部材に使用される場合、前記金属粉末は比重に対して熱伝導度、強度など熱的機械的特性が相対的に優れていて、機械部材に幅広く使用されるAlまたはAl合金を含むのが好ましい。
【0026】
本発明の圧縮ガス提供工程(S220)で提供されるガスは前述のようなヘリウム、窒素、アルゴン及び空気などを使用することができる。前記ガスはコンプレッサのようなガス圧縮器で約5〜20気圧に圧縮されて供給される。必要に応じて、前記圧縮ガスは図1のガスヒーター120のような加熱手段によって約200〜500℃の温度で加熱された状態で供給することができる。しかし、このような実施例によって圧縮ガスを加熱状態で供給してもガスの比熱が非常に小さいという点を考慮すれば、金属粉末の温度変化はあまり大きくない。したがって、本発明の噴射工程は低温噴射という点から、ほとんど融点付近または融点以上に粉末を加熱してコーティングする従来の溶射法とは異なる。
【0027】
一方、前記圧縮ガス提供工程(S220)で供給される圧縮ガスの一部を前記金属粉末の持続的で安定的な供給のためのキャリアガスとして使用できるのは前述の通りである。
次に、超音速噴射ノズルで前記圧縮ガスと前記金属粉末の混合物を噴射する(S230)。前記ノズルを通して噴射されるガス−粉末混合物の速度は流入されるガスの温度、圧力及び粉末の粒子大きさ及び比重に依存する。前述の流入ガスの圧力、温度条件及び約1〜50μmの粒子大きさで、前記ガス−粉末混合体の噴射速度は約300〜1200m/sである。
【0028】
高速で噴射された金属粉末は、母材に衝突して高密度のコーティング層を形成する。所望の厚さのコーティング層を得る時まで前記噴射工程(S230)を行った後、形成されたコーティング層を熱処理する(S240)。本発明で前記熱処理温度は、約200〜650℃であるのが好ましい。650℃以上の熱処理温度はコーティングされた金属の完全溶融を招き、200℃以下の温度はコーティングされた組成の溶融がほとんど発生しないので熱処理効果がほとんど発生しない。
【0029】
母材上に形成された高密度のコーティング層は前記熱処理工程(S240)を経ることによって多孔性を有する。また、後述する本発明の実施例から分かるように、形成された多孔性コーティング層の気孔率及び気孔大きさはコーティングされた金属粉末の組成の変化によって変化する。ここで、組成の変化とは、使用された金属成分の変化だけでなく、含量の変化を含む意味で使用される。
【0030】
図2bは、図2aと関連して説明した本発明のコーティング方法でコーティング層内に気孔分布を制御するために供給される金属粉末の組成を変化させる工程(S250)を含む多孔性コーティング層形成方法の各工程を示している。
【0031】
この方法によれば、ノズル噴射工程(S240)によってコーティング層を形成する途中に供給される粉末の組成を変化させる。例えば、Al:Mgの重量比が1:1である0.5Al−0.5Mg組成粉末を供給している途中に、これを1:2の比率に調節したり、Al−Mgの代わりにAl:Znが1:1であるAl−Zn組成粉末を供給したりすることなどによって形成されるコーティング層の厚さ方向に組成傾斜を有したり、コーティング層内に相異なる成分が含有されるコーティング層を形成することができる。
【0032】
前記粉末の組成を変化させる具体的な方法は当業者が設計できる通常の方法が使用される。例えば、一つの粉末供給器に順次にいろいろな組成の粉末を投入する方式、または相異なる組成粉末を貯蔵する複数の粉末供給器を配列し、バルブによって供給される組成の粉末供給器を選択する方式を使用することができる。
【0033】
図3はこのような方式によって形成されたコーティング層を含むコーティング部材200の一例を概念的に示した断面図である。
図3を参照すれば、Alのような母材S上に、重量比が2:1であるAl−Zn層210、重量比が1:1であるAl−Zn層220、及び重量比が1:2であるAl−Zn層230が形成された状態を示している。後述する本発明の実施例によれば、このように積層されたコーティング層を熱処理すると、Zn含有量が増加するに従って内部の気孔大きさ及び気孔率が増加する。したがって、図3のような組成でコーティングされた部材を熱処理すると、母材から遠くなるほど気孔率及び/または気孔含量が増加するコーティング部材を得ることができる。このような気孔分布は母材との界面で安定したコーティング接着性を保障するという面で好ましい。また、このような構造で気孔率及び気孔含量が増加することによってコーティング層の表面付近に形成された気孔は、相互連結された開気孔とすることができる。このような開気孔は特に母材の熱交換特性を向上させることに重要な役割を果たす。
【0034】
図3を参照して説明したコーティング層内の気孔分布の変化は、各成分の含量を変化させる方法以外にも、成分自体を変化させることによって得ることができるのは先に説明した通りである。つまり、母材上にAl−Mg層、Al−Zn層及びAl−Sn層を順次積層することによって界面から気孔率及び/または気孔大きさが増加するコーティング部材を得ることができる。
【0035】
図11は本発明の他の実施例であって、多孔性カーボンコーティング層を形成する過程を説明するためのフローチャートである。
図11を参照すれば、まず、平均粒径が10μm以下であるカーボン粉末を、PVA、PVB、PEG、レジン及びロジンからなる群より選択された少なくとも一つのバインダーと混合する(S310)。混合はバインダーによって適切な溶媒、即ち、水やアルコールなどの有機溶媒で行われる。
【0036】
次に、得られたスラリーを乾燥してカーボン粉末ケーキを製造した後、これを粉砕及び選別してノズル噴射に適切な粒度、例えば平均粒径50〜200μmを有するカーボン粉末を収得する(S320からS340)。この過程を経たカーボン粉末は有機バインダーによって結合されて、最初の粉末大きさに比べて粗大化される。
【0037】
次いで、得られたカーボン粉末を、図1を参照して説明した低温噴射装置によって、約4〜7kgf/cm2の高圧ガス(S350)と共にノズルで噴射して、母材上にコーティング層を形成する(S350)。さらに、約400〜500℃の温度でバーンアウト工程を経て前記コーティング層内の有機バインダーを除去することもできる。
【0038】
以下では好ましい実施例を通じて本発明をより詳しく説明する。
下記の実施例1から7で使用された金属の一般的な物性は表1の通りである。
【0039】
【表1】
【0040】
下記の実施例1から7でのズル噴射条件は次の通りである。
−ノズル:標準ラバル型(standard laval type)
アパーチャ:4×6mm
スロウトギャップ:1mm
−圧縮ガス:種類:空気
圧力:7気圧
温度:330℃
−供給粉末サイズ:<44μm(325メッシュ)
【0041】
実施例1
重量比50:50であるAl粉末とAlMg(共融温度約400℃)粉末の混合粉末(即ち、0.5Al−0.5AlMg)を、7気圧の空気を噴射ノズルに供給してアルミニウム基板上にコーティングした。
形成されたコーティングを約620℃で1時間熱処理した。熱処理された基板を切断及び研磨した後、その切断面を光学顕微鏡で観察した。図4はこのように製造された基板の切断面写真を図示している。
【0042】
図4でコーティング層がAl基板によく付着されていることが分かり、Al基板とコーティング層の界面はコーティング層内部にトラップされた気孔(黒い部分)によって明確に区分されている。これら気孔はコーティング状態では観察されなかったものであって、熱処理後生成されたものである。
【0043】
実施例2
混合粉末にAlMgの重量を増加させて0.3Al−0.7AlMgの組成を金属粉末の組成としたことを除いては、実施例1と同一な条件でコーティング層を製造した。実施例1と同一に製造されたコーティング層を熱処理し、その断面を光学顕微鏡で観察して、これを図5に示した。
図4と比較すると、図5では気孔の大きさが増加したことが分かり、肉眼でも気孔率が増加したことが分かる。
【0044】
実施例3
Al粉末/AlMg粉末/Al粉末/AlMg粉末/Al粉末の順に粉末組成を変化させながらコーティング層を形成した。残りコーティング条件は実施例1と同一であった。次に、形成されたコーティング層を620℃、1時間熱処理した。
図6は熱処理された基板の断面を示す光学顕微鏡写真である。図示されているように、純粋なAl層では気孔がよく観察されなかったが、AlMg層では気孔が観察されることが分かる。
【0045】
実施例4
Al基板上に組成が0.667Al−0.333Mgである混合粉末でコーティングした後、続いて組成が0.5Al−0.5Mgである混合粉末でコーティングした。残りコーティング条件は実施例1と同一であった。次に、形成されたコーティング層を約620℃の温度で1時間熱処理して、その断面を光学顕微鏡で観察した。
【0046】
図7は断面を観察した光学顕微鏡写真である。図7から分かるように、組成が0.5Al−0.5Mgであるコーティング領域(表面付近)の気孔率が、組成が0.667Al−0.333Mgであるコーティング領域(界面付近)に比べて増加していることが分かる。したがって、Mg含量の増加がコーティング層内の気孔率の増加を招くことが分かる。また、気孔形状と気孔率から、表面付近の気孔は相互連結された開気孔であることを推測することができる。このように、コーティング層の表面から内部へまで相互連結されている気孔は、周辺空気との多くの接触面積を提供するので、特に熱交換または熱放射特性が優れていることが要求される応用分野に適する。
【0047】
実施例5
Al基板上に組成が0.5Al−0.5SnであるAlとSnの混合粉末をコーティングした。残りコーティング条件は実施例1と同一であった。
形成されたコーティング層を約650℃の温度で1時間熱処理した後、その断面を研磨した後に光学顕微鏡で観察した。図8はその断面光学顕微鏡写真である。図7から分かるように、コーティング層内部で数多くの気孔を確認することができ、これら気孔は形状及び気孔率から察して、相互連結されているものであると把握される。
【0048】
実施例6
組成が0.667Al−0.333Snである混合粉末で実施例1と同様な方法でコーティングした後、続いて組成が0.5Al−0.5Snである混合粉末で追加コーティングした。形成されたコーティング層を620℃で1時間熱処理した後、研磨された断面を光学顕微鏡で観察した。
図9はその断面写真であって、0.667Al−0.333Snがコーティングされた界面付近と0.5Al−0.5Snがコーティングされた表面付近を比較すると、表面付近で気孔の大きさが大幅に増加し、気孔率も増加したことが分かる。したがって、Snの含量増加が気孔生成を促進することが分かる。
【0049】
実施例7
Al基板に組成が0.667Al−0.333Znである混合粉末でコーティングした後、続いて組成が0.5Al−0.5Znである混合粉末でコーティングした。コーティング条件は実施例1と同一であった。次に、形成されたコーティング層を約620℃の温度で1時間熱処理し、その断面を光学顕微鏡で撮影して図10に示した。
【0050】
図10からZnの添加によってコーティング層内部に多くの気孔が形成されることが分かる。また、Zn含量が高い表面付近でZn含量が相対的に低い界面付近に比べて非常に大きい気孔が存在し、気孔率も増加することを確認できる。したがって、Zn含量の増加が気孔の大きさ及び気孔率の増加をもたらすことが分かる。
【0051】
以上説明した実施例1から実施例7からコーティング層にAlと共に添加されるMg、Zn、Snが熱処理後コーティング層内の気孔の形成に関与することが分かった。また、添加量が増加するほど生成される気孔の大きさ及び気孔率も増加することが分かった。生成された気孔はMg、Zn及びSnの含量が増加するに従って相互連結されて開気孔化された。
このような現状の原因について本発明者は次の通り推測する。しかし、以下の説明は本発明の理解のための参照的なものであり、本発明の技術的範囲の解釈根拠として提示されるものではない。
【0052】
Alと共に添加されたMg、Zn、Snは熱処理温度でAlと共融液状を形成し、Alは部分的に溶融される。このように液状が存在する時に気孔の合体が相対的に容易になり、結局肉眼で観察される気孔の増加をもたらすことができる。
一方、溶融Alと空気中の水分が反応することによって生成された水素などの副産物ガスを気孔生成の原因として挙げることができる。AlだけでなくAlより融点が低いMg、Sn、Znなども熱処理温度でこのような反応を起こすことと推測される。
【0053】
また他の理由としては、部分的な溶融によって各金属粉末が合金化される時の密度変化によって気孔が生成されたと推測することができる。
このような推測は、前述の実施例のようにMgの添加に比べてZnやSnが添加される時に相対的に多くの気孔が形成されることにもよく符合する。なぜなら、Znの溶融温度(419.46℃)またはSnの溶融温度(231.9℃)はMgの溶融温度(650℃)に比べて低いためである。
【0054】
以上の点を考慮するとき、本発明で熱処理温度は混合される少なくとも2つの金属の共融温度(eutectic temperature)以上でなければならない。ここで、共融温度は包晶温度(peritectic temperature)を含む意味で使用される。ただし、各金属粉末が微量の不純物を含有していることがあるので、共融温度以下でも部分的な溶融現象が発生することもある。また、本発明で熱処理温度は融点が最も高い純粋Alの融点を越えてはいけない。この場合、コーティング自体が構造的安定性を有することができないためである。
【0055】
実施例8
銅(Cu)板上にカーボンコーティング層を形成した。平均粒径5〜10μmであるカーボン粉末を約15重量%のPVAに混合及び乾燥してカーボンケーキを製造した後、これを乳鉢で粉砕して粒子が150μm以下のカーボン粒子を選別した。選別されたカーボン粉末を前述の実施例と同一な温度及び圧力で前記銅板上に噴射してカーボンコーティング層を形成した。
【0056】
図12a及び図12bは銅板上に形成されたカーボンコーティング層の断面及び表面を撮影した電子顕微鏡写真である。図示された写真から、銅板上に優れた接着力を有する多孔性カーボンコーティング層が形成されることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の方法は低温噴射法が有する多数の長所をそのまま保有している。つまり、高温処理を行わないため母材またはコーティング層の酸化を最大限抑制し母材に熱衝撃による損傷を加えるおそれがない。また、非常に高いコーティング蒸着速度を達成することができ、蒸着層の厚さ調節が非常に容易である。
【0058】
特に、本発明のコーティング方法でAlと共に使用されるMg、Sn、ZnなどはAlに比べて低い融点を有する。したがって、Alの融点以下で熱処理することによって母材としてAlまたはAl合金を使用する大部分の熱的及び機械的部材に母材損傷無しに適用可能である。
【0059】
また、本発明のコーティング方法はコーティング組成を変化させることによってコーティング層に形成される気孔率を変化させる。このような方法は各産業分野で要求される多孔性コーティング層を非常に簡単な方法で提供することができるようにする。
【0060】
また、本発明の方法によって製造されたコーティング部材は内部に気孔大きさ及び気孔率を自由に調節することができる。したがって、多様な熱的及び機械的部材として使用できる。
【0061】
本発明の方法によって製造されたカーボンコーティング層は内部に数多くの気孔を有する多孔性構造によって高い熱伝導率を保障するだけでなく、カーボン自体が金属に比べて海水や廃水などの腐食性環境で一層安定的であるため腐食性環境でも熱的部材として使用されることに適合する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性コーティング層を母材に形成する方法であって、
母材を提供する工程;
前記母材上にAl、Mg、Zn及びSnからなる群より選択され、xA−(1−x)B(0<x<1、xはAとBの重量比)で表わされる互いに異なる2種以上の金属を少なくとも含む金属組成の粉末を供給する工程;
前記粉末に高圧ガスを供給する工程;
前記高圧ガスによって前記金属粉末を超音速ノズルで噴射して前記母材にコーティングする工程;及び
前記コーティングされた母材を熱処理して多孔性コーティング層を形成する工程
を含む多孔性コーティング層形成方法。
【請求項2】
前記金属組成の粉末は、前記群より選択された少なくとも2種の金属の合金粉末を含む請求項1に記載の多孔性コーティング層形成方法。
【請求項3】
前記AはAlであり、前記BはMg、Zn及びSnからなる群より選択された1種の金属元素を含む請求項1に記載の多孔性コーティング層形成方法。
【請求項4】
前記ガス供給工程は、
前記ガスを圧縮する工程;
前記圧縮されたガスを予熱する工程を含む請求項1に記載の多孔性コーティング層形成方法。
【請求項5】
コーティング母材の前記熱処理工程は、前記AとBの共融温度以上及び前記AとBのうちの高い融点を有する金属の融点以下で行われる請求項1に記載の多孔性コーティング層形成方法。
【請求項6】
コーティング母材の前記熱処理工程は、約200〜650℃の温度範囲で行われる請求項1に記載の多孔性コーティング層形成方法。
【請求項7】
前記粉末供給工程は、前記xを変化させることによって粉末組成を変化させる工程をさらに含む請求項1に記載の多孔性コーティング層形成方法。
【請求項8】
前記ガスは、ヘリウム、窒素、アルゴン及び空気からなる群より選択された1種を含む請求項1に記載の多孔性コーティング層形成方法。
【請求項9】
金属母材;及び
前記金属母材上にxA−(1−x)B(ここで、xはAとBの重量比)で表わされる少なくとも2種の金属元素を含むコーティング層を備え、
前記AとBはそれぞれAl、Mg、Zn及びSnからなる群より選択された互いに異なる1種の金属であり、前記xは0<x<1の範囲内で前記コーティング層の厚さ方向に変化し、前記xの変化によって前記コーティング層内の気孔率が変化する金属コーティング部材。
【請求項10】
前記xは前記コーティング層の厚さ方向に増加または減少し、前記xの増加または減少によって前記コーティング層内の気孔率が増減する請求項9に記載の金属コーティング部材。
【請求項11】
前記AはAlであり、前記BはMg、Zn及びSnからなる群より選択された1種の金属であり、前記金属母材と前記コーティング層の界面から前記コーティング層の表面に向かって進むに従って前記xは減少し、前記コーティング層の気孔率が増加する請求項10に記載の金属コーティング部材。
【請求項12】
金属母材;及び
前記金属母材上にA−Bで表わされる少なくとも2種の金属元素を含むコーティング層を備え、
前記AとBはそれぞれAl、Mg、Zn及びSnからなる群より選択された互いに異なる1種の金属であり、前記群より選択されるAまたはBは前記コーティング層の厚さ方向によって変化し、前記AまたはBの変化によって前記コーティング層内の気孔率が変化する金属コーティング部材。
【請求項13】
前記コーティング層は、前記コーティング層内部の少なくとも一部分に相互連結された開気孔を含む請求項9または請求項12に記載の金属コーティング部材。
【請求項14】
前記開気孔は、前記コーティング層の上部に存在する請求項13に記載の金属コーティング部材。
【請求項15】
多孔性カーボンコーティング層を母材に形成する方法であって、
母材を提供する工程;
有機バインダーによって結合されたカーボン粉末を供給する工程;
前記カーボン粉末に高圧ガスを供給する工程;及び
前記高圧ガスによって前記カーボン粉末を超音速ノズルで噴射して前記母材にコーティングする工程を含む多孔性コーティング層形成方法。
【請求項16】
前記コーティング工程以後に、400〜500℃の温度で前記有機バインダーをバーンアウトする工程をさらに含む請求項15に記載の多孔性コーティング層形成方法。
【請求項1】
多孔性コーティング層を母材に形成する方法であって、
母材を提供する工程;
前記母材上にAl、Mg、Zn及びSnからなる群より選択され、xA−(1−x)B(0<x<1、xはAとBの重量比)で表わされる互いに異なる2種以上の金属を少なくとも含む金属組成の粉末を供給する工程;
前記粉末に高圧ガスを供給する工程;
前記高圧ガスによって前記金属粉末を超音速ノズルで噴射して前記母材にコーティングする工程;及び
前記コーティングされた母材を熱処理して多孔性コーティング層を形成する工程
を含む多孔性コーティング層形成方法。
【請求項2】
前記金属組成の粉末は、前記群より選択された少なくとも2種の金属の合金粉末を含む請求項1に記載の多孔性コーティング層形成方法。
【請求項3】
前記AはAlであり、前記BはMg、Zn及びSnからなる群より選択された1種の金属元素を含む請求項1に記載の多孔性コーティング層形成方法。
【請求項4】
前記ガス供給工程は、
前記ガスを圧縮する工程;
前記圧縮されたガスを予熱する工程を含む請求項1に記載の多孔性コーティング層形成方法。
【請求項5】
コーティング母材の前記熱処理工程は、前記AとBの共融温度以上及び前記AとBのうちの高い融点を有する金属の融点以下で行われる請求項1に記載の多孔性コーティング層形成方法。
【請求項6】
コーティング母材の前記熱処理工程は、約200〜650℃の温度範囲で行われる請求項1に記載の多孔性コーティング層形成方法。
【請求項7】
前記粉末供給工程は、前記xを変化させることによって粉末組成を変化させる工程をさらに含む請求項1に記載の多孔性コーティング層形成方法。
【請求項8】
前記ガスは、ヘリウム、窒素、アルゴン及び空気からなる群より選択された1種を含む請求項1に記載の多孔性コーティング層形成方法。
【請求項9】
金属母材;及び
前記金属母材上にxA−(1−x)B(ここで、xはAとBの重量比)で表わされる少なくとも2種の金属元素を含むコーティング層を備え、
前記AとBはそれぞれAl、Mg、Zn及びSnからなる群より選択された互いに異なる1種の金属であり、前記xは0<x<1の範囲内で前記コーティング層の厚さ方向に変化し、前記xの変化によって前記コーティング層内の気孔率が変化する金属コーティング部材。
【請求項10】
前記xは前記コーティング層の厚さ方向に増加または減少し、前記xの増加または減少によって前記コーティング層内の気孔率が増減する請求項9に記載の金属コーティング部材。
【請求項11】
前記AはAlであり、前記BはMg、Zn及びSnからなる群より選択された1種の金属であり、前記金属母材と前記コーティング層の界面から前記コーティング層の表面に向かって進むに従って前記xは減少し、前記コーティング層の気孔率が増加する請求項10に記載の金属コーティング部材。
【請求項12】
金属母材;及び
前記金属母材上にA−Bで表わされる少なくとも2種の金属元素を含むコーティング層を備え、
前記AとBはそれぞれAl、Mg、Zn及びSnからなる群より選択された互いに異なる1種の金属であり、前記群より選択されるAまたはBは前記コーティング層の厚さ方向によって変化し、前記AまたはBの変化によって前記コーティング層内の気孔率が変化する金属コーティング部材。
【請求項13】
前記コーティング層は、前記コーティング層内部の少なくとも一部分に相互連結された開気孔を含む請求項9または請求項12に記載の金属コーティング部材。
【請求項14】
前記開気孔は、前記コーティング層の上部に存在する請求項13に記載の金属コーティング部材。
【請求項15】
多孔性カーボンコーティング層を母材に形成する方法であって、
母材を提供する工程;
有機バインダーによって結合されたカーボン粉末を供給する工程;
前記カーボン粉末に高圧ガスを供給する工程;及び
前記高圧ガスによって前記カーボン粉末を超音速ノズルで噴射して前記母材にコーティングする工程を含む多孔性コーティング層形成方法。
【請求項16】
前記コーティング工程以後に、400〜500℃の温度で前記有機バインダーをバーンアウトする工程をさらに含む請求項15に記載の多孔性コーティング層形成方法。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12a】
【図12b】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12a】
【図12b】
【公表番号】特表2007−522346(P2007−522346A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−553054(P2006−553054)
【出願日】平成17年2月11日(2005.2.11)
【国際出願番号】PCT/KR2005/000387
【国際公開番号】WO2005/078150
【国際公開日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(506276929)
【出願人】(506276918)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月11日(2005.2.11)
【国際出願番号】PCT/KR2005/000387
【国際公開番号】WO2005/078150
【国際公開日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(506276929)
【出願人】(506276918)
【Fターム(参考)】
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