説明

多孔性フォイルを有するエアーフォイルベアリング

本発明はエアーフォイルベアリングを提供する。前記エアーフォイルベアリングは、ベアリングハウジングと、第1端部が前記ベアリングハウジングに対して固定されて、第2端部が回転軸の外周面に沿って延長され、自由端を形成するように回転軸に対して所定の遊隙を維持する第1フォイルとを備える。前記エアーフォイルベアリングは、多孔性金属材料で製造されて前記第1フォイルと、ベアリングハウジング間で前記第1フォイルに沿って延長される第2フォイルとをさらに備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速回転機器、例えば、航空機用空調システムの核心部品であるACM(air cycle machine)などの回転体を支持するための空気フォイルベアリングに関するものである。より詳細には、多孔性金属材料のフォイルを用いて振動減衰能力を向上させることによって、支持された回転体の最高回転数をより上昇させることができる空気フォイルベアリングに関するものである。
【0002】
背景技術
薄膜形態のフォイル(foil)は、潤滑媒体である空気の動的(hydrodynamic)特性を用いて高速に回転する回転軸の軸荷重を支持する。高速の回転体としては航空機用補助動力装置(APU)や空気調和システム(ACM)などを挙げることができる。このようなフォイルジャーナルベアリングの形態は、一般的な空気ベアリングの形態と類似するが、ジャーナルとベアリング間にバンプフォイルを含む弾性を有する薄いフォイルが挿入されて付加的な剛性及び減衰を提供することが異なる。フォイルは一般に厚さ0.1〜0.3mm前後の非常に薄い薄板で、高速回転する軸との接触による摩耗(wear)を防止するために、一般にコーティング物質を通じて耐摩耗性を増大させた構成を有する。
【0003】
一般に、フォイルジャーナルベアリングは、運転始動時及び終了時に軸とベアリングとの不安定な接触による摩耗が発生する。従って、これに対する耐久性設計と共に荷重支持能力の向上、そして付加的な減衰性能の向上が最近の研究の焦点になってきた。このような研究の究極的な目標は700℃以上の高温環境で無給油状態で支持力を提供することができるベアリングの開発であるといえる。
【0004】
空気フォイルベアリングの振動減衰メカニズムは、主に潤滑剤とハウジング内面に設けられたフォイルが有している弾性力に依存する。
【0005】
図1には従来技術によるエアーフォイルベアリングが示されている。図1に示された通り、エアーフォイルベアリングは回転軸(1f)周囲に3つのフォイル層を有している。即ち、回転軸(1f)に近い所からトップフォイル(1d)、バンプフォイル(1c)及びシムフォイル(1b)が配置されている。各フォイル(1d,1c,1b)はステンレス鋼材質からなっている。各フォイル(1d,1c,1b)の一端はピン(1h)によりベアリングハウジング(1a)内面に固定され、他端は略ハウジング内面形状に沿って延長されて自由端を形成する。各フォイル(1d,1c,1b)の面はコーティング処理をして摩擦を高めることができるようになっている。
【0006】
トップフォイル(1d)は回転軸(1f)と空気潤滑膜(1g)を間に置いて配置される。バンプフォイル(1c)は自体の剛性が高くて回転軸荷重支持能力を向上させるために設けられるもので、回転軸(1f)の回転により動圧が発生すれば円周方向に変形されて荷重を支持する。シムフォイル(shim foil)(1b)はハウジング(1a)内面に設けられて表面を保護しながらバンプ(bump)フォイル(1c)と摩擦作用を引き起こす。
【0007】
上述した多数のフォイルはエアーフォイルベアリング内部で回転軸(1f)が回転する時、発生する振動を減衰させる機能をする。即ち、各フォイルが有している自体の弾性と、回転軸の高速回転時に作用する動圧により各フォイルが互いに密着して円周方向に相対運動することによって発生するクーロン摩擦力が回転軸振動時のエネルギーを消散させて振動を減衰させるようになる。
【0008】
しかし、図示された従来技術のエアーフォイルベアリングはエネルギー消散メカニズムが非常に弱く振動減衰能力が不十分である。特に、各フォイルにコーティング処理をして増加したクーロン摩擦力は振動が所定の限界点を超えるようになると、むしろ減衰能力が落ちる。
【0009】
エアーフォイルベアリングでのこのような減衰能力の不足あるいは減少は、直ちに回転体の支持不可能あるいは物理的衝撃による部品破損につながり得る。例えば、システム共振のような外乱が発生すれば減衰能力が不十分なベアリングは回転軸の振動を受容できずベアリング固有の支持可能回転数にはるかに至らない回転数状態にもかかわらず、これ以上回転軸支持を行えない状態になってしまう。
【0010】
また、エアーフォイルベアリングの減衰能力が不十分であれば、ベアリングが支持することができる回転体の最高回転数がそれだけ低くなる。従って、示された従来技術のエアーフォイルベアリングは高速回転を必要とするターボシステムでその性能を十分に発揮することが難しい。
【0011】
発明の詳細な説明
技術的課題
本発明は、このような問題を解決するために案出されたものであって、支持される回転体の振動を減衰させる構造を改善して、回転体がより高い回転数で回転することができるようにするエアーフォイルベアリングを提供することをその目的とする。
【0012】
技術的解決方法
上述した本発明の目的を達成するために、ベアリングハウジングと、第1端部が前記ベアリングハウジングに対して固定され、第2端部が回転軸の外周面に沿って延長され、自由端を形成するように回転軸に対して所定の遊隙を維持する第1フォイルと、多孔性金属材料で製造され、前記第1フォイルとベアリングハウジングの間で前記記第1フォイルに沿って延長される第2フォイルと、を備えることを特徴とするエアーフォイルベアリングを提供して達成できる。
【0013】
発明を実施するための最良の形態
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施例を詳細に説明する。本発明のエアーフォイルベアリングの断面図が図2に示されている。
【0014】
図2を参照すれば、本発明のエアーフォイルベアリングは、ベアリングハウジング(2a)、トップフォイル(2d)、多孔性フォイル(2c)及びシムフォイル(2b)で構成されている。
【0015】
トップフォイル(2d)は、回転軸(2f)との間に空気潤滑膜(2g)をおいて位置するもので、ベアリングハウジング(2a)内で最内側に位置するフォイルである。トップフォイル(2d)の上面、即ち、回転軸(2f)に向かう面には固体潤滑コーティング面が形成されて、回転軸(2f)の始動及び停止時に回転軸(2f)との摩擦を最小化するようになっている。エアーフォイルベアリングにおけるフォイル間の摩擦力増加のためのコーティング処理としては、多くの技術が公知となっているので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0016】
トップフォイル(2d)の一端はピン(2h)によりベアリングハウジング(2a)内面に固定され、他端は自由端からなっている。
【0017】
本発明の核心部材である多孔性フォイル(2c)は金属材料からなるフォイルであって、トップフォイル(2d)下部に設けられる。多孔性フォイル(2c)は、材料が有する剛性(stiffness)特性及び構造的減衰(structural damping)特性と、気孔の幾何学的な抵抗特性とで高温空気の漏水を減少させることにより、フォイル内部で空気に対する付加的減衰効果を発生させてエネルギー消散を大きくする原理を用いるものである。
【0018】
本発明の望ましい実施例において、多孔性フォイル(2c)は、金属チップを加工して形成される。従って、多孔性フォイル(2c)は、多数の気孔が形成された多孔質形状を有するようになる。チップ材料としては、動的あるいは静的な力を加えたとき、弾性変形と共に衝撃を吸収できる特性を有する材料が用いられるが、弾性による復元力に優れたインコネル(Inconel)系列のスプリング鋼、あるいは衝撃吸収が良好な鋳鉄系列が望ましい。実験を通じて、このような材料の特性は、常温だけでなく高温での空気減衰効果に重要な影響を及ぼすと明らかになった。
【0019】
本発明の望ましい実施例において、チップフォイルは、ホットプレート(Hot Plate)を用いて一定以上の熱と圧力下で圧着モールディングされて形成される。即ち、ベアリングの大きさを考慮した大きさの雄雌形態の2つの型枠を準備し、ここにチップフォイル用材料(インコネル718)を入れて、ホットプレート装備を用いて高温、高圧状態を長時間維持してチップフォイルを形成する。
【0020】
多孔性フォイル(2c)の下面、即ち、シムフォイル(2b)に向かう面には摩擦力を増加させるために言及したようなコーティング処理をすることもできる。
【0021】
シムフォイル(2b)は、ベアリングハウジング(2a)内面と多孔性フォイル(2c)の下面間に設けられる。シムフォイル(2b)の上面、即ち、多孔性フォイル(2c)に向かう面には、多孔性フォイル(2c)との相対運動時に摩擦力を高めるためのコーティング処理がなされている。
【0022】
上述したトップフォイル(2d)、多孔性フォイル(2c)及びシムフォイル(2b)はベリリウムコッパー(Beryllium copper)、ステンレス鋼あるいはインコネル(inconel)系列の鋼で製造されることが望ましい。上述した各フォイルの一端はベアリングハウジング(2a)内面にピン(2h)で固定され、他側の端部は自由端からなっている。
【0023】
本発明の望ましい実施例によるエアーフォイルベアリングは3つのフォイル層を有すると記述したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、シムフォイル(2b)と多孔性フォイル(2c)との間にバンプフォイルを挿入する構成も可能であり、シムフォイル(2b)の代わりにバンプフォイルを用いることも可能である。ベアリングハウジング(2a)の内面破損のおそれがなく、振動減衰性能が十分な場合、シムフォイル(2b)を用いなくてもよい。バンプフォイルと多孔性フォイル(2c)を共に用いる場合にも、制振効果を向上させることができると判明した。
【0024】
このように構成されたエアーフォイルベアリングの動作を、図3及び図4を参照してシムフォイル(2b)がない場合を例として説明する。
【0025】
滑らかなトップフォイル(2d)上面に位置した回転軸(2f)が停止状態から回転を始めると、回転軸(2f)が浮上して、空気潤滑膜(2g)に回転軸(2f)の半径方向外側の動圧が作用する。このとき、回転軸(2f)の回転が振動が少なくて動圧が一定の場合には、図3に示した通り、多孔性フォイル(2c)を含む各フォイルはその変形量が少なくて各フォイル面の間の摩擦力も大きく作用しない。
【0026】
しかし、図4に示した通り、回転軸(2f)の振動により大きい圧力がフォイル面に作用するようになれば、全てのフォイル(2c,2d)は独自に弾性変形される。即ち、トップフォイル(2d)及び多孔性フォイル(2c)は、その厚さが小さくなって円周と軸方向に変形されながらその高さが低くなる。また、各フォイル間の接触面は振動による圧力が作用した状態で摩擦力が発生する。このとき、トップフォイル(2d)の下面と多孔性フォイル(2c)の上面、シムフォイル(2b)の上面と多孔性フォイル(2c)の下面間では、材料の構造的減衰(structural damping)特性だけでなく、チップフォイルの気孔に対する高温空気の漏水抵抗で空気に対する付加的減衰効果が発生して大きいエネルギー消散が起こる。
【0027】
このような弾性変形及び摩擦力によるエネルギー消散は振動による圧力変化をより短い時間中に異なる形態のエネルギーに変換させることによって振動に対する減衰効果を大きくする。
【0028】
図5は、多孔性フォイルを有するベアリングと従来技術のバンプフォイルベアリングをターボシステムに適用して実施したスーパーベンディングオペレーション実験での制振効果を示すグラフである。回転数(4a)は、共振が発生する回転数略30,000RPMを意味する。一般的なエアーフォイルベアリングの振幅グラフ(4b)と、本発明の多孔性フォイルを用いたベアリングの振幅グラフ(4c)とが、共振回転数近くで大きい振幅の差を示すことが分かる。
【0029】
一方、実験を通じて、このような多孔性フォイル(2c)の常温及び高温での空気減衰効果において、密集率も重要な影響を及ぼすと明らかになった。
【0030】
密集率は体積を一定にした時、それによるチップの質量をパーセントで示したもので、時々気孔率の代わりにすることもある。
密集率=1−[(インコネルの質量−チップの質量)/単位体積]
気孔率=1−密集率
【0031】
一般に気孔率によって物性値が変化するが、気孔率が高いほど、チップフォイルの密集度が低くて単位体積当りの質量が軽くなる。
【0032】
実験には、一般にスプリング鋼で活用されて8510kg/m3程度の密度(density)を有するインコネル718を1マイクロメートル大きさの微細なチップに加工した後、これを圧着成形してトップフォイルと同一の大きさに形成してトップフォイル後面に設けて行われた。
【0033】
実験に用いられたインコネル718は、次の物性値を有する。
最大使用温度:150℃、弾性係数(Elastic Modulus):3×10〜2×10、損失率(Loss Factor):0.2〜0.9
【0034】
チップフォイルは0.45mmの厚さを有し、加振機を用いて測定された鋼性係数値と、減衰係数値がそれぞれ2.0〜4.2×10の範囲及び2.0〜2.7×10の範囲を有する。
【0035】
二つのエアーフォイルベアリングの規格は次の通りである。
回転軸の直径:35mm
トップフォイル厚さ:0.1mm
多孔性フォイルの厚さ:0.45mm
バンプフォイルの高さ:0.45mm
シムフォイルの厚さ:0.076mm
空気潤滑膜の膜厚:0.07mm
【0036】
産業上の利用可能性
本発明の空気フォイルベアリングは多孔性フォイルを備えることによって、高速回転体を含むシステムの振動において、その周期及び振幅を大きく改善することができる。これは多孔性フォイルの減衰特性に起因する。また、従来技術による空気フォイルベアリングと比較したとき、適用されたシステムが振動挙動においてさらに安定した形態を取るようにする長所を有している。
【0037】
従来の技術である構造減衰によるフォイルベアリングが制限された減衰力をもって設計などを専門家に多く依存した反面、本発明の多孔性フォイル材料の場合、優れた振動減衰性能で、適用性に優れて、空気の付加的減衰効果で優れた制振能力を有し、設計が比較的容易であるという長所を有する。
【0038】
このような形態を有するフォイルベアリングはタービン部と同じ高温環境に露出されるベアリングなどが要求されるガスタービンやスチームタービンのベアリングのみならず、極低温冷媒用回転機器のベアリングとして活用可能で、特に、ディーゼル自動車などに用いられるターボ過給機(turbo charger)のような臨界速度以上の高速運転範囲を有するシステムにも適用が可能である。特に、既存のオイルベアリングに比べて摩擦が少ないので、過給機のターボラグ(turbo lag)現象をより改善させることができる。
【0039】
本発明は優れた振動減衰能力を有する無給油フォイルベアリングを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】従来技術によるエアーフォイルベアリングの断面図である。
【図2】本発明による多孔性フォイルを有するエアーフォイルベアリングの断面図である。
【図3】本発明に用いられたフォイルの減衰機能を説明するためにフォイルが変形される前の状態を示した概略断面図である。
【図4】本発明に用いられたフォイルの減衰機能を説明するためにフォイルが変形された後の状態を示した概略断面図である。
【図5】本発明の金属チップを用いて成形した多孔性フォイルを有するベアリングと従来技術のバンプフォイルベアリングをターボシステムに適用して実施したスーパーベンディング−オペレーション実験での制振効果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベアリングハウジングと、
第1端部が上記ベアリングハウジングに対して固定されて、第2端部が回転軸の外周面に沿って延長されて自由端を形成するように回転軸に対して所定の遊隙を維持する第1フォイルと、
多孔性金属材料で製造され、前記第1フォイルとベアリングハウジングとの間で前記第1フォイルに沿って延長される第2フォイルと、
を備えたことを特徴とするエアーフォイルベアリング。
【請求項2】
前記第2フォイルと前記ベアリングハウジングとの間に位置して、第1端部が前記ベアリングハウジングに対して固定されて、第2端部が自由端を形成する第3フォイルをさらに備える請求項1に記載のエアーフォイルベアリング。
【請求項3】
前記第2フォイルと前記ベアリングハウジングとの間に位置して、第1端部が前記ベアリングハウジングに対して固定されて、第2端部が自由端を形成するバンプフォイルをさらに備える請求項1に記載のエアーフォイルベアリング。
【請求項4】
前記第2フォイルと前記第3フォイル間に位置して、第1端部が上記ベアリングハウジングに対して固定されて、第2端部が自由端を形成するバンプフォイルをさらに備える請求項2に記載のエアーフォイルベアリング。
【請求項5】
前記第2フォイルが、多孔性を有するように金属チップを圧着成形して形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のエアーフォイルベアリング。
【請求項6】
前記金属が、スプリング鋼及び鋳鉄を含むグループより選択された一つの材料である請求項5に記載のエアーフォイルベアリング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−517238(P2008−517238A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−537790(P2007−537790)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【国際出願番号】PCT/KR2004/003078
【国際公開番号】WO2006/043736
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(399101854)コリア インスティテュート オブ サイエンス アンド テクノロジー (68)
【Fターム(参考)】