説明

多孔性填料およびその製造方法

【課題】多孔性填料スラリーでの粘度が低く、取り扱い性が優れており、紙に配合した際の嵩高化効果および白紙不透明度が高く、しかも適切な平均粒子径および狭い粒度分布を有し、紙の表面強度および内部結合強度を高くできる多孔性填料とその製造方法、また、嵩高であり、不透明度、表面強度および内部結合強度が高い紙を提供する。
【解決手段】本発明の多孔性填料は、コア粒子と、該コア粒子の周囲に付着した酸化ケイ素化合物とアルミニウムを有する多孔性填料であって、蛍光X線分析法によるケイ素とアルミニウムの比率が100/0.05〜100/10である。本発明の紙は、上述した多孔性填料を含有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙の嵩高化に用いられる多孔性填料ならび多孔性填料の製造方法に関する。また、多孔性填料が配合された紙に関する。
【背景技術】
【0002】
紙は省資源や物流費の削減といった観点、環境保護運動の高まりといった社会的要求等から軽量化が望まれている。しかし、紙を軽量化すると紙厚が減少し、不透明度が下がって裏側の印刷が透けてしまうため、読みにくくなるだけでなく紙の高級感も損なわれるという問題があった。そのため、紙の厚さを維持した上での軽量化、すなわち嵩高化が要求されている。
【0003】
紙の嵩高化方法としては、例えば、紙の主原料である木材パルプを適宜選択する方法、パルプを叩解、マーセル化処理や酵素処理する方法、抄紙時にかかるウェットプレス圧または平滑化処理の圧力を緩和する方法、界面活性剤などの嵩高剤をパルプに添加する方法などが知られている。
しかしながら、これらの方法では、紙を充分に嵩高にできない上に、嵩高剤を用いた場合には抄紙時に発泡するという問題があった。
【0004】
そこで、嵩比重が小さい填料を添加する方法が提案されている。例えば、針状、柱状、イガグリ状炭酸カルシウム等のアスペクト比の高い填料を配合する方法(特許文献1参照)、中空の合成有機物カプセルを配合する方法(特許文献2参照)、無定形シリカや無定形シリケート、ゼオライト等の多孔性填料を配合する方法(特許文献3参照)などが提案されている。
しかしながら、針状、柱状、イガグリ状炭酸カルシウム等の様にアスペクト比の高い填料は粒子径が大きくなるほど嵩比重は小さくなるが、このような填料を紙に配合した場合には、抄紙時のシェアや、ロールニップなどの機械的な負荷により多孔性填料の多孔性構造が破壊されてしまい、充分な嵩高化効果が得られないのが実情である。また、中空の合成有機物カプセルを配合する方法は優れた嵩高化効果を示すものの、高価であることから汎用性のある印刷用紙への適用は難しい。
【0005】
多孔性填料は、紙の嵩高化効果に優れる上に、印刷時のインキ成分を吸収する能力が他の填料よりも優れているが、炭酸カルシウムやタルクに比べて紙の不透明度を高める能力が低かった。また、粒度分布が広いため、表面強度が乏しく、粗大粒子に起因する印刷時のパイリングや粉落ちといった問題が生じると共に、微細粒子に起因する繊維間結合強度(内部結合強度)の低下といった問題が生じた。
そこで、紙の不透明度を高める方法として、二酸化チタンなどの高屈折率の填料を配合することが提案されている。しかし、二酸化チタンは粒子径が0.2〜0.3μmと微小であり、歩留が低くなるため、二酸化チタンと炭酸カルシウムやホワイトカーボンなどとを複合化した複合粒子が提案されている。(特許文献4)また、二酸化ケイ素またはケイ酸塩と軽質炭酸カルシウムとからなり、二酸化ケイ素またはケイ酸塩より軽質炭酸カルシウムが多い複合粒子が提案されている。(特許文献5)
しかしながら、特許文献4に記載の複合粒子では、二酸化チタンが他の填料に比べて高価であるため、汎用性の高い印刷用紙ではコスト面から二酸化チタンの使用量に限界があり、白紙の不透明度を充分に確保できなかった。特許文献5に記載の複合粒子では、紙の嵩高化効果が不充分であった。
そこで、白紙の不透明度と紙の嵩高化効果の向上を目的として、他の填料に比べて安価な軽質炭酸カルシウムをコア粒子として使用した複合粒子が提案されている。(特許文献6)また、特許文献6に記載の複合粒子は、二酸化ケイ素またはケイ酸塩と軽質炭酸カルシウムとからなり、二酸化ケイ素またはケイ酸塩より軽質炭酸カルシウムが少ない。
しかしながら、特許文献6に記載の複合粒子では、スラリー状態での粘性が高いためスクリーン通過が低下したり、コア粒子として軽質炭酸カルシウムを使用しているため、配管への付着といった問題が生じる恐れがある。
また、粗大粒子を除去する方法として、振動スクリーン等を用いた分級処理や、反応終了後のスラリーを湿式粉砕する方法(特許文献7参照)が提案されている。また、多孔性填料の製造工程中に徹底的に粉砕処理を施すことで、粗大粒子を減らして平均粒子径を小さくしつつ、1μm以下の微細粒子の生成を少なくする方法が開示されている(特許文献8参照)。

【特許文献1】特開平10−226974号公報
【特許文献2】特開平11−12993号公報
【特許文献3】特開平10−226982号公報
【特許文献4】特開2002−29739号公報
【特許文献5】特開2003−212539号公報
【特許文献6】特願2006−343028号公報
【特許文献7】特開平5−301707号公報
【特許文献8】特開平8−91820号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、多孔性填料スラリーでの粘度を下げることにより、取り扱い性が優れ、さらにパルプへの結合性が高く、紙に配合した際の嵩高化効果および白紙不透明度が高く、しかも適切な平均粒子径および狭い粒度分布を有し、紙の表面強度および内部結合強度を高くできる多孔性填料とその製造方法、また、嵩高であり、不透明度、表面強度および内部結合強度が高い紙の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは多孔性填料の粘性について検討し、硫酸アルミニウムを多孔性填料表面に結合させることによって、多孔性填料表面の結晶構造を変化させることにより本発明を完成させた。
本発明は、以下の構成を含む。
[1] コア粒子と酸化ケイ素化合物とアルミニウムが複合した多孔性填料であって、蛍光X線分析法によるケイ素とアルミニウムの比率が100/0.05〜100/10である多孔性填料。
[2] 平均粒子径が5〜40μmである[1]に記載の多孔性填料。
[3] コア粒子が炭酸カルシウムである[1]または[2]に記載の多孔性填料。
[4] ケイ酸アルカリ水溶液にコア粒子を添加した後、鉱酸溶液を添加し、中和して、コア粒子の周囲に酸化ケイ素化合物を析出させて多孔性填料を含む多孔性填料スラリーを調製する工程と、該多孔性填料スラリーに硫酸アルミニウ溶液を添加し、アルミニウムを結合させる工程とを有する多孔性填料の製造方法。
[5] [1]〜[3]いずれか1項に記載の多孔性填料を含有する紙。
【発明の効果】
【0008】
本発明の多孔性填料は、多孔性填料スラリーでの粘度が低く、取り扱い性におよびパルプへの結合性に優れており、紙に配合した際に歩留まり性が高いため、嵩高化効果および白紙不透明度が高く、しかも適切な平均粒子径および狭い粒度分布を有し、紙の表面強度および内部結合強度を高くできる。
本発明の多孔性填料の製造方法によれば、紙に配合した際の嵩高化効果が高い上に、白紙の不透明度、紙の表面強度および内部結合強度をいずれも高くでき、また、スラリー状態での粘性が低く、取り扱い性およびパルプへの結合性に優れる多孔性填料を製造できる。
また、本発明の紙は、嵩高であり、白紙不透明度、表面強度および内部結合強度が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(多孔性填料)
本発明の多孔性填料は、コア粒子と酸化ケイ素化合物とアルミニウムが複合した多孔性填料である。
コア粒子の材質としては、例えば、カオリン、焼成カオリン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、タルク、アルミナ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられる。これらの中でも、コスト的にも優位であることから、炭酸カルシウム、カオリン、タルクが好ましく、中でもさらに炭酸カルシウムが、紙の白色度が向上するため、最も好ましい。炭酸カルシウムとしては、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウムなどが挙げられる。
また、コア粒子の形状としては、紡錘状、立方状、柱状、花飾り状、針状、扁平状(板状)、球状、不定形状などが挙げられる。
【0010】
コア粒子の質量割合は、酸化ケイ素化合物100質量部に対して0.1〜40質量部であり、好ましくは0.5〜30質量部である。コア粒子の質量割合が0.1質量部以上では、多孔性填料の粒度分布を狭くでき、紙の表面強度および内部結合強度を高くできるため好ましい。また、コア粒子の質量割合が40質量部以下では、多孔性填料の粒度分布を狭くできる上に、嵩高化効果を充分に発揮でき、さらに、多孔性填料の透明性が低くなり、紙に配合した際の不透明度が向上するため好ましい。 なお、コア粒子の質量割合は、多孔性填料の粉末サンプルを錠剤化した後、蛍光X線分析により各元素量として測定することにより求められる。
【0011】
コア粒子の平均粒子径は0.2〜7.0μmであることが好ましい。コア粒子の平均粒子径は、サンドグラインダ等の粉砕設備を用いることにより調整できる。その際、ポリアクリル酸塩、ポリカルボン酸塩、ヘキサメタリン酸塩、ピロリン酸塩などの分散剤を用いることができる。
本発明における平均粒子径とは、レーザー回折法により測定した体積積算で50%となる値のことである。
【0012】
多孔性填料を構成する酸化ケイ素化合物は、具体的には、二酸化ケイ素および/またはケイ酸塩である。ケイ酸塩とは、一般式xMO・ySiO、xMO・ySiO、xM・ySiOのいずれかで表される化合物であって、MがAl,Fe,Ca,Mg,Na,K,Ti,Znのいずれかのものである(x,yは任意の正の数値である。)。
【0013】
本発明の多孔性填料は、蛍光X線分析法によるケイ素とアルミニウムの比率が100/0.05〜100/10.0であり、好ましくは100/0.1〜100/5.0である。多孔性填料のケイ素とアルミニウムの比率が100/0.05〜100/10.0の範囲では、多孔性填料表面の酸化ケイ素化合物にアルミニウムが結合することにより、多孔性填料表面の結晶構造が不安定になるため、スラリー状態での粘性が低下すると考えられる。多孔性填料スラリーの粘性が低下するため、スクリーンの通過性が向上し、また、配管への付着等の汚れが減少するため好ましい。
【0014】
本発明の多孔性填料は、アルミニウムにより多孔性填料表面がカチオン性を帯び、マイナスに帯電したパルプ繊維との結合性が高くなり、紙に配合した際に歩留りが向上するため、嵩高化効果が高くなる。
【0015】
本発明の多孔性填料は平均粒子径が5〜40μmであることが好ましく、10〜30μmであることがより好ましい。多孔性填料の平均粒子径が5μm以上であれば、紙に配合した際の嵩高化効果がより高くなり、平均粒子径が40μm以下であれば、紙面に存在する粗大粒子が少なくなり、粗大粒子の脱落に起因する表面強度の低下を防止できる。
また、多孔性填料の粒度分布としては、標準偏差(σ)が0.350以下であることが好ましく、さらには0.300以下であることが好ましい。このような粒度分布であれば、粗大粒子および微細粒子が共により少なくなり、紙に配合した際に、より優れた表面強度および内部結合強度が得られる。
【0016】
本発明の多孔性填料は、比表面積が20〜200m/gであり、好ましくは20〜150m/gである。多孔性填料の比表面積が20m/g以上では、多孔性填料の粒度分布が狭くなり、微細粒子と粗大粒子が少なくなるため、内部結合強度および表面強度が向上するため好ましい。また、比表面積が200m/g以下では、多孔性填料の強度が向上し、パルプスラリー調製時の剪断力およびプレス圧、キャレンダー処理圧力で潰れにくくなり、紙に配合した際の嵩高性が高くなる。また、多孔性填料の不透明度が向上し、紙に抄き込んだ際の不透明度が向上する。
本発明における比表面積は、水銀圧入法により測定した値であって、細孔形状が幾何学的な円筒であると仮定した全細孔の表面積で、測定範囲内における圧力と圧入された水銀量の関係から求めた値である。
【0017】
本発明の多孔性填料は、細孔径が0.10〜0.80μmであり、好ましくは0.15〜0.80μmである。多孔性填料の細孔径が0.10μm以上であることにより、多孔性填料の凝集結合力が高くなり、多孔性填料の強度が向上し、パルプスラリー調製時の剪断力およびプレス圧力、キャレンダー処理圧力で潰れにくくなり、紙に配合した際の嵩高性が高くなる。また、多孔性填料の細孔径が0.80μm以下では、多孔性填料の粒度分布が狭く、その結果、微細粒子と粗大粒子が少なくなり、内部結合強度および表面強度が向上するため好ましい。
本発明における細孔径は、水銀圧入法により測定した値であって、積分比表面積曲線から得られるメジアン細孔直径のことである。
【0018】
上記多孔性填料は、コア粒子とコア粒子のに結合した酸化ケイ素化合物とアルミニウムを特定量を含有している上に、特定範囲の比表面積と細孔径を有している。比表面積と細孔径とが前記特定の範囲にあることにより、多孔性填料の嵩高性を確保できる上に、不透明度を高くできる。このような多孔性填料は、充分な嵩高性を有しつつ強度を有しているため、紙を製造する際のパルプスラリー調製時に剪断力がかかっても、あるいは抄紙時のプレス処理およびキャレンダー処理時に圧力がかかっても多孔性構造が破壊されにくい。したがって、多孔性を保ったまま紙中に含まれるため、得られる紙を充分に嵩高にできる。
【0019】
また、上記多孔性填料は、多孔性填料表面の酸化ケイ素化合物にアルミニウムが結合することにより多孔性填料表面がカチオン性を帯び、パルプ繊維との結合性が高くなり、歩留りを向上させることができる。
また、上記多孔性填料は、酸化ケイ素化合物と酸化ケイ素化合物より少ない特定量のコア粒子とを含有していることにより、微細粒子と粗大粒子とが共に少ない狭い粒度分布を有し、紙に配合した際に紙の表面強度および内部結合強度を高くできる。
さらに、上記多孔性填料が紙に配合された際には白紙の不透明度を高くすることができるほか、紙に抄き込んだ際に充分に嵩高にできる。
【0020】
(多孔性填料スラリー)
本発明の多孔性填料スラリーは、上記多孔性填料を得るためのものであって、コア粒子と該コア粒子の周囲に結合した酸化ケイ素化合物とアルミニウムを有する多孔性填料を分散媒中に含むものである。分散媒としては、水、各種有機溶媒が挙げられる。
この多孔性填料におけるコア粒子の質量割合は、酸化ケイ素化合物100質量部に対して0.1〜40質量部、好ましくは0.5〜30質量部である。
【0021】
本発明の多孔性填料スラリーは、多孔性填料表面の酸化ケイ素化合物にアルミニウムが結合することにより、多孔性填料表面の結晶構造が不安定になるため、スラリー状態での粘性が低下すると考えられる。スラリー状態での粘性が低下した結果、スクリーン通過性が向上し、多孔性填料を効率的に製造することができる。
【0022】
硫酸アルミニウム溶液を添加する前の多孔性填料スラリーの電解質濃度は35〜80g/L、好ましくは45〜80g/L、より好ましくは55〜80g/Lである。電解質濃度が35g/L以上では、粒子の過度の凝集を抑制でき、多孔性填料の比表面積を200m/g以下、かつ、細孔径を0.10μm以上にできるため好ましい。そして、多孔性填料の比表面積および細孔径が前記範囲になった結果、得られる多孔性填料は、パルプスラリーに添加した後の攪拌で生ずる剪断力や、紙に配合された後のプレス圧およびキャレンダー処理圧によっても、多孔性構造が破壊されにくくなる。
一方、電解質濃度が80g/L以下では、多孔性填料の比表面積を20m/g以上、かつ、細孔径を0.80μm以下にできる。また、多孔性填料の粒度分布を狭くでき、微細粒子および粗大粒子を共に少なくできるため、多孔性填料を紙に配合した際に、紙の内部結合強度および表面強度を高くすることができる。
【0023】
ここで、電解質とは、水に溶解した際に陽イオンと陰イオンを生じる物質のことであり、具体的には、NaHSO、NaHCO、NaCl、NaSO、NaCO3、NaHPO、NaHPO、NaPO、KCl、KSO、KCO、Ca(HCO、CHCOONa、CuSO、FeCl、CHCOONH、MgCl、Mg(OH)、MgCl・Mg(OH)、NaCl、NHCl、CaCl、AlCl、NaNO、NHNO、Ca(NO、Al(NO、(NHSO、CaSO、Al(SOなどが挙げられる。
【0024】
多孔性填料スラリーの電解質濃度を求めるためには、まず、多孔性填料スラリーをろ紙(5C、例えば、アドバンテック社製ろ紙)でろ過して固形分を除去した後、得られたろ液の体積を測定する。そして、このろ液を乾燥し、電解質からなる乾固物の質量を測定し、(乾固物の質量)/(ろ液体積)により求められる。
なお、多孔性填料スラリー中の電解質は、後述する製造方法で使用する鉱酸の金属塩のみに由来するものではなく、ケイ酸ナトリウム水溶液および鉱酸溶液中のイオンなどにも由来する。そのため、必ずしも鉱酸の金属塩の添加量のみによって電解質濃度が決まるものではない。
【0025】
多孔性填料スラリーは、ケイ酸アルカリ水溶液中にコア粒子を添加した後、鉱酸溶液を添加し、コア粒子の周囲に酸化ケイ素化合物を析出させることにより得られる。
ここで、ケイ酸アルカリ水溶液としては特に制限されないが、ケイ酸ナトリウム水溶液またはケイ酸カリウム水溶液が好ましい。ケイ酸アルカリ水溶液の濃度は、多孔性填料が効率的に製造できることから、3〜15質量%であることが好ましく、ケイ酸アルカリ水溶液がケイ酸ナトリウム水溶液の場合には、SiO/NaOモル比が2.0〜3.4であることが好ましい。
コア粒子の添加量は、生成する酸化ケイ素化合物100質量部に対して0.1〜40質量部、好ましくは0.5〜30質量部になる量である。
【0026】
コア粒子のケイ酸アルカリ水溶液への添加は、ケイ酸アルカリ水溶液を攪拌しながら、その中にコア粒子を添加することが好ましいが、コア粒子の水性スラリーに、ケイ酸アルカリ水溶液を添加しても差しつかえない。
また、コア粒子は、鉱酸溶液の添加前に全部を一括してケイ酸アルカリ水溶液中に添加してもよいし、複数に分けて添加してもよい。
【0027】
本発明で用いる鉱酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸などが挙げられ、価格、ハンドリングの点で、硫酸が好ましい。
また、鉱酸溶液は、水溶液であることが好ましい。
【0028】
鉱酸溶液の添加量は、中和率が95〜150%の範囲になる量であり、酸化ケイ素化合物析出後の多孔性填料スラリーのpHが2.5超10以下の範囲になる量であることが好ましい。鉱酸溶液の添加量が、中和率が95%未満になる量あるいは得られる多孔性填料スラリーのpHが10を超える量である場合には、原料であるケイ酸アルカリ水溶液の無駄が多くなる。一方、中和率が150%超になる量あるいは得られるスラリーのpHが2.5以下になる量である場合には多孔性填料を濃縮する際に発生するろ液pHが低くなり過ぎて、取り扱いにくくなる。
ここで、中和率とは、[(鉱酸溶液の添加量(g))/(理論必要中和量(g))]×100で求められる値である。
【0029】
酸化ケイ素化合物の析出時には、攪拌装置により、周速として5〜15m/秒で攪拌することが好ましい。ここで、周速は剪断力の指標となり、周速が速ければ剪断力が大きくなる。周速が5m/秒未満である場合は、剪断力が小さすぎて、コア粒子の周囲に酸化ケイ素化合物を析出させても、適切な平均粒子径および狭い粒度分布を得ることが困難になることがある。
一方、析出時の周速が15m/秒を超える場合には、剪断力が大きくなりすぎて、多孔性填料の粒子径が小さくなり、紙に配合した際に内部結合強度が低くなることがある上に、負荷電力の増加、設備費の高額化を招く。
攪拌装置としては、アジテータ、ホモミキサ、パイプラインミキサなどの装置が好ましい。なお、ボールミルやサンドグラインダ等の粉砕機を用いることも可能ではあるが、微細粒子の増加やスラリーの増粘といった問題が生じる傾向があるため好ましくない。
【0030】
鉱酸溶液は1段で一括してケイ酸アルカリ水溶液中に添加してもよいが、より良好な粒径分布になることから、2段以上に分割して添加することが好ましい。
鉱酸溶液を2段以上で添加する場合には、特に良好な粒度分布になることから、1段目のケイ酸アルカリ水溶液の温度を20〜70℃にし、2段目以降では70℃以上にすることが好ましい。また、1段目では、鉱酸溶液の添加量を、中和率が10〜50%の範囲になる量とすることが好ましい。
【0031】
1段目および2段目以降共に、鉱酸溶液の添加は、ケイ酸アルカリ水溶液に一括してまたは連続的に添加することができる。
鉱酸溶液の添加が終了した後には、必要に応じて、添加時の温度を維持したまま攪拌する熟成工程を有してもよい。
【0032】
鉱酸溶液を1段で添加する場合には、ケイ酸アルカリ水溶液の温度を60℃〜当該溶液の沸点にすることが好ましく、75℃〜当該溶液の沸点にすることがより好ましい。鉱酸溶液の添加は、ケイ酸アルカリ水溶液に一括してまたは連続的に添加することができる。
【0033】
多孔性填料スラリーの電解質濃度を前記範囲に調整するためには、上記製造方法におけるケイ酸アルカリ水溶液の濃度、鉱酸溶液の添加量を適宜選択すればよい。電解質濃度を高くするためには、ケイ酸アルカリ水溶液の濃度を高く、鉱酸溶液の添加量を多くすればよく、さらには、電解質溶液および/または粉末を必要に応じて一括又は複数回に分けて添加してもよい。電解質濃度を低くするためには、ケイ酸アルカリ水溶液の濃度を低く、鉱酸溶液の添加量を少なくすればよい。
【0034】
本発明の多孔性填料は、電解質濃度35〜80g/Lの多孔性填料スラリーに特定量の硫酸アルミニウム0.1〜45質量%添加することにより得られる。硫酸アルミニウムの添加量が0.1質量%未満になる量あるいは多孔性填料のケイ素とアルミニウムの比率が100/0.1以下になる量である場合には、多孔性填料スラリーの粘性が高くなり、スクリーンの通過性が悪化する。一方、硫酸アルミニウムの添加量が45質量%超になる量あるいは得られるスラリーのpHが2.5以下になる量である場合には多孔性填料を濃縮する際に発生するろ液pHが低くなり過ぎて、取り扱いにくくなる。
【0035】
また、本発明の多孔性填料スラリーでは、特定量のコア粒子の周囲に酸化ケイ素化合物、アルミニウムが付着した多孔性填料を含有し、電解質濃度が特定量になっている。このような多孔性填料スラリーからろ過等により回収された多孔性填料は、比表面積が20〜200m/g、かつ細孔径が0.10〜0.80μmになる。上述したように、このような多孔性填料によれば、紙に配合した際の嵩高化効果および白紙不透明度が高く、しかも適切な平均粒子径および狭い粒度分布を有し、紙の表面強度および内部結合強度を高くできる。
また、この多孔性填料スラリーによれば、平均粒子径が5〜40μmで紙に配合した際に嵩高性に優れる多孔性填料を得ることができる。
さらに、上記多孔性填料スラリーから得られた多孔性填料を紙に配合した際には、白紙の不透明度を高くできる。
【0036】
(紙)
本発明の紙は、上記多孔性填料が含まれるものである。また、上記多孔性填料の他にも、必要に応じて、一般に紙に用いられる各種の顔料、例えば、カオリン、焼成カオリン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、タルク、酸化亜鉛、アルミナ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、無定形シリケート、ベントナイト、ゼオライト、セリサイト、スメクタイト等の鉱物質顔料や、スチレン系樹脂、尿素系樹脂、メラミン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂並びにそれらの微小中空粒子等の有機顔料が含まれていてもよい。
【0037】
紙を形成するセルロース繊維原料としては、例えば、クラフトパルプ(KP)、サルファイトパルプ(SP)、ソーダパルプ(AP)等の化学パルプ、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプ、あるいは、楮、三椏、麻、ケナフ等を原料とする非木材パルプ、古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられる。これら単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0038】
本発明の紙は、セルロース繊維原料および上記多孔性填料を含む紙料を調製し、その紙料を抄紙することにより得られる。その際に使用される抄紙機としては、例えば、長網式、円網式、短網式、ツインワイヤー式抄紙機などが挙げられる。
紙料中には、必要に応じて、各種のアニオン性、ノニオン性、カチオン性あるいは両性の歩留向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤や内添サイズ剤等の各種抄紙用内添助剤、染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等の抄紙用内添助剤を適宜添加できる。
【0039】
本発明の紙には、澱粉、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアマイド等の各種表面バインダーや、ロジン系サイズ剤、合成サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤、中性サイズ剤等の表面サイズ剤、塩化ナトリウムや硫酸ナトリウム等の導電剤が塗布または含浸されていてもよい。
【0040】
上述した本発明の紙は、上記多孔性填料が含まれるものであるから、嵩高であり、不透明度、表面強度および内部結合強度が高い。このような紙は印刷用紙や上質系塗工紙に好適に用いられる。
【実施例】
【0041】
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はそれらの実施例に限定されるものではない。なお、例中の「部」及び「%」は特に断らない限り、「質量部」及び「質量%」のことである。
【0042】
以下の例において、平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布計(MT3000((株)日機装製 )を用いて測定された50%体積積算値の粒子径である。また、粒子径の標準偏差はレーザー回折式粒度分布計により求めた粒子径から算出した値である。
比表面積は、ポロシメーターであるAuto Pore IV((株)島津製作所製))を用いて、細孔形状が幾何学的な円筒であると仮定した場合の全細孔の表面積であり、測定範囲内における圧力と圧入された水銀量の関係から求めた値である。
細孔径は、Auto Pore IV((株)島津製作所製))を用いて測定されたメジアン細孔直径である。
多孔性填料中のコア粒子の質量割合は、蛍光X線分析装置(スペクトリス社製PW2404)を用いて測定した値である。
多孔性填料スラリーの粘度は、多孔性填料スラリーの固形分濃度を15%に調整し、温度20℃で、B型粘度計により測定した値である。
【0043】
実施例1
(多孔性填料Aの製造)
水道水274gに5%硫酸ナトリウム水溶液754gを加えた後、市販の3号ケイ酸ナトリウム水溶液330g(固形分濃度38%)をスリーワンモータで撹拌しながら添加した。さらに、コア粒子として、平均粒子径が2.5μmである炭酸カルシウムの分散液A(TP−221BM「花飾り状」、奥多摩工業製、固形分濃度9.5%、表中では「炭カルA」と表記する。)100g(酸化ケイ素化合物100部に対し10部)をスリーワンモータで攪拌しながら温度50℃において添加した。その後、攪拌翼の周速を10m/秒に調整し、硫酸(濃度20%)74gを15分間で添加して1段目の中和を行った後、上記周速の状態で90℃まで昇温した。次いで、このままの温度で硫酸173gを44分かけて添加し、2段目の中和を行い、次いで、硫酸アルミニウム(濃度20%)3gを添加し、多孔性填料Aを含むスラリー(多孔性填料スラリー)を得た。その際の全硫酸添加量(中和率で表す。)、多孔性填料スラリーのpH、電解質濃度、粘度、多孔性填料の平均粒子径および標準偏差を表1に示す。
多孔性填料スラリーはろ過・洗浄した後、水に再分散させ、手抄き評価に用いた。また、ろ過・洗浄後のケーキの一部を105℃にて乾燥し、比表面積および細孔径を測定し、また、蛍光X線分析装置によるコア粒子質量割合の測定に供した。多孔性填料の比表面積、細孔径、コア粒子の質量割合を表1に示す。
【0044】
(紙)
カナダ標準濾水度(CSF)が400mLある晒化学パルプ(BKP)スラリーに、多孔性填料Aを紙質量当たり7部になるよう添加し、さらに絶乾パルプ量100部当たり、澱粉1.0部、アルキルケテンダイマー0.05部、及び硫酸バンドを0.6部、歩留向上剤0.02部(DR−1500、ハイモ社製)となるように添加して紙料を調製した。その紙料を、角型手抄き装置を用いて目標坪量が風乾で70g/mとなるように抄造し、プレスにより脱水後、シリンダードライヤーを用いて乾燥しシートを作製した。その後、線圧25kg/cmでキャレンダー処理を施して成紙を得た。
【0045】
実施例2(多孔性填料Bの製造)
90℃で硫酸173gを44分かけて添加し、2段目の中和を行い、次いで、硫酸アルミニウム(濃度20%)14g添加した以外は実施例1と同様にして、多孔性填料Bを合成した。その際の全硫酸添加量、多孔性填料スラリーのpH、電解質濃度、粘度、多孔性填料の平均粒子径および標準偏差、多孔性填料の比表面積、細孔径、コア粒子の質量割合を表1に示す。また、実施例1における多孔性填料Aを、多孔性填料Bに変更したこと以外は、実施例1と同一条件で成紙を得た。
【0046】
実施例3(多孔性填料Cの製造)
90℃で硫酸173gを44分かけて添加し、2段目の中和を行い、次いで、硫酸アルミニウム(濃度20%)29g添加した以外は実施例1と同様にして、多孔性填料Cを合成した。その際の全硫酸添加量、多孔性填料スラリーのpH、電解質濃度、粘度、多孔性填料の平均粒子径および標準偏差、多孔性填料の比表面積、細孔径、コア粒子の質量割合を表1に示す。また、実施例1における多孔性填料Aを、多孔性填料Cに変更したこと以外は、実施例1と同一条件で成紙を得た。
【0047】
実施例4(多孔性填料Dの製造)
90℃で硫酸173gを44分かけて添加し、2段目の中和を行い、次いで、硫酸アルミニウム(濃度20%)1.2g添加した以外は実施例1と同様にして、多孔性填料Dを合成した。その際の全硫酸添加量、多孔性填料スラリーのpH、電解質濃度、粘度、多孔性填料の平均粒子径および標準偏差、多孔性填料の比表面積、細孔径、コア粒子の質量割合を表1に示す。また、実施例1における多孔性填料Aを、多孔性填料Dに変更したこと以外は、実施例1と同一条件で成紙を得た。
【0048】
実施例5(多孔性填料Eの製造)
90℃で硫酸173gを44分かけて添加し、2段目の中和を行い、次いで、硫酸アルミニウム(濃度20%)87g添加した以外は実施例1と同様にして、多孔性填料Eを合成した。その際の全硫酸添加量、多孔性填料スラリーのpH、電解質濃度、粘度、多孔性填料の平均粒子径および標準偏差、多孔性填料の比表面積、細孔径、コア粒子の質量割合を表1に示す。また、実施例1における多孔性填料Aを、多孔性填料Eに変更したこと以外は、実施例1と同一条件で成紙を得た。
【0049】
実施例6(多孔性填料Fの製造)
水道水274gに5%硫酸ナトリウム水溶液754gを加えた後、市販の3号ケイ酸ナトリウム水溶液330g(固形分濃度38%)をスリーワンモータで撹拌しながら添加した。さらに、コア粒子として、平均粒子径が2.5μmである炭酸カルシウムの分散液A(TP−221BM「花飾り状」、奥多摩工業製、固形分濃度9.5%、表中では「炭カルA」と表記する。)300g(酸化ケイ素化合物100部に対し30部)をスリーワンモータで攪拌しながら温度65℃において添加した。その後、攪拌翼の周速を10m/秒に調整し、硫酸(濃度20%)74gを15分間で添加して1段目の中和を行った後、上記周速の状態で90℃まで昇温した。次いで、このままの温度で硫酸173gを44分かけて添加し、2段目の中和を行い、次いで、硫酸アルミニウム(濃度20%)14gを添加し、多孔性填料Fを含むスラリー(多孔性填料スラリー)を得た。その際の全硫酸添加量、多孔性填料スラリーのpH、電解質濃度、粘度、多孔性填料の平均粒子径および標準偏差、多孔性填料の比表面積、細孔径、コア粒子の質量割合を表1に示す。また、実施例1における多孔性填料Aを、多孔性填料Fに変更したこと以外は、実施例1と同一条件で成紙を得た。
【0050】
実施例7(多孔性填料Gの製造)
コア粒子として、サンドグラインダにて平均粒子径が0.8μmになるように調整した微粒カオリンの分散液B(MGJ、エンゲルハード製、固形分濃度9.5%、表中では「カオリンB」と表記する。)80g(酸化ケイ素化合物100部に対し8部)をスリーワンモーターで攪拌しながら温度50℃において添加した以外は合成例2と同様にして多孔性填料Gを合成した。その際の全硫酸添加量、多孔性填料スラリーのpH、電解質濃度、粘度、多孔性填料の平均粒子径および標準偏差、多孔性填料の比表面積、細孔径、コア粒子の質量割合を表1に示す。また、実施例1における多孔性填料Aを、多孔性填料Gに変更したこと以外は、実施例1と同一条件で成紙を得た。
【0051】
実施例8(多孔性填料Hの製造)
コア粒子として、サンドグラインダにて平均粒子径が4.1μmになるように調整したデラミカオリンの分散液C(NUG、エンゲルハード製、固形分濃度9.5%、表中では「カオリンC」と表記する。)80g(酸化ケイ素化合物100部に対し8部)をスリーワンモーターで攪拌しながら温度50℃において添加した以外は合成例2と同様にして多孔性填料Hを合成した。その際の全硫酸添加量、多孔性填料スラリーのpH、電解質濃度、粘度、多孔性填料の平均粒子径および標準偏差、多孔性填料の比表面積、細孔径、コア粒子の質量割合を表1に示す。また、実施例1における多孔性填料Aを、多孔性填料Hに変更したこと以外は、実施例1と同一条件で成紙を得た。
【0052】
比較例1(多孔性填料Iの製造)
90℃で硫酸173gを44分かけて添加し、2段目の中和を行い、次いで、硫酸アルミニウム(濃度20%)0.3g添加した以外は実施例1と同様にして、多孔性填料Iを合成した。その際の全硫酸添加量、多孔性填料スラリーのpH、電解質濃度、粘度、多孔性填料の平均粒子径および標準偏差、多孔性填料の比表面積、細孔径、コア粒子の質量割合を表1に示す。また、実施例1における多孔性填料Aを、多孔性填料Iに変更したこと以外は、実施例1と同一条件で成紙を得た。
【0053】
比較例2(多孔性填料Jの製造)
90℃で硫酸173gを44分かけて添加し、2段目の中和を行い、次いで、硫酸アルミニウム(濃度20%)131g添加した以外は実施例1と同様にして、多孔性填料Jを合成した。その際の全硫酸添加量、多孔性填料スラリーのpH、電解質濃度、粘度、多孔性填料の平均粒子径および標準偏差、多孔性填料の比表面積、細孔径、コア粒子の質量割合を表1に示す。また、実施例1における多孔性填料Aを、多孔性填料Jに変更したこと以外は、実施例1と同一条件で成紙を得た。
【0054】
実施例1〜8および比較例1,2の多孔性填料A〜J、および各多孔性填料A〜Jのスラリーを配合した紙について以下のように評価した。実施例1〜8および比較例1,2の条件、および評価結果を表1に示す。
(作業性)
多孔性填料スラリーの固形分濃度を15%に調整し、温度20℃で、B型粘度計により測定した粘度により作業性を評価した。
◎:作業性が非常に良好である。(粘度:200mPa・s未満)
○:作業性が良好である。(粘度:200〜300mPa・s)
×:作業性が劣る。(粘度:300mPa・s以上)
【0055】
(米坪)
JIS P 8124に基づいて測定した。
(密度)
JIS P 8118により測定した。
(灰分)
JIS P 8251に基づき525℃で灰化して測定した。
(不透明度)
JIS P 8149に従って測定した。
(内部結合強度)
J.TAPPI No.18−2に従い測定した。
【0056】
(多孔性填料歩留り)
カナダ標準濾水度(CSF)が400mLある晒化学パルプ(BKP)スラリーに、多孔性填料を絶乾パルプ量100部当たり、10部添加し歩留り性を評価した。
◎:実用上問題なく、品質も優れている。(歩留り:70〜80%)
○:実用上問題ない。(歩留り:65〜70%)
×:実用上問題ある。(歩留り:65%未満)
【0057】
(表面強度)
RI印刷機(明製作所製)にてオフセットインキT13を用いて印刷し、その際の紙の表面強度を評価した。
◎:強度が高く、実用上問題なく、品質も優れている。
○:強度が高く、実用上問題ない。
△:強度がやや劣り、実用上問題ある。
×:強度が著しく劣り、実用上問題であり、品質も著しく劣っている。
【0058】
(総合評価)
◎:多孔性填料スラリーの取り扱い、および紙へ配合した際の紙質が共に非常に優れている。
○:多孔性填料スラリーの取り扱い、および紙へ配合した際の紙質が共に優れている。
×:多孔性填料スラリーの取り扱い、または紙へ配合した際の紙質が劣る。
【0059】
【表1】

【0060】
コア粒子とコア粒子の周囲に結合した酸化ケイ素化合物とアルミニウムを含有し、特定のケイ素とアルミニウムの比率を有する実施例1〜8、および比較例2の多孔性填料A〜H,Jは、各多孔性填料スラリーの粘性が低く、取り扱い性に優れている上に、パルプ繊維との結合性に優れ、紙に配合した際の歩留りが高かった。
これに対し、ケイ素とアルミニウムの比率が低い比較例1の多孔性填料Iのスラリーは、粘性が高く取り扱い性が劣っていた。
また、コア粒子とコア粒子の周囲に結合した酸化ケイ素化合物とアルミニウムを含有し、特定の製法で製造され、特定の比表面積および細孔径を有する実施例1〜8、および比較例1の多孔性填料A〜Iは、パルプスラリー調製時の剪断力およびプレス圧およびキャレンダー圧による潰れが防止されており、紙の嵩高化効果が高い上に、白紙での不透明度が高かった。また、適切な平均粒子径および狭い粒度分布を有するため、紙の表面強度および内部結合強度が高かった。
これに対し、コア粒子の質量割合が少ない比較例2の多孔性填料Jは、内部結合強度、表面強度が不足していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア粒子と、酸化ケイ素化合物と、アルミニウムが複合してなる多孔性填料であって、蛍光X線分析法によるケイ素とアルミニウムの比率が100/0.05〜100/10であることを特徴とする多孔性填料。
【請求項2】
平均粒子径が5〜40μmであることを特徴とする請求項1に記載の多孔性填料。
【請求項3】
前記コア粒子が炭酸カルシウムであることを特徴とする請求項1または2に記載の多孔性填料。
【請求項4】
ケイ酸アルカリ水溶液にコア粒子を添加した後、鉱酸溶液を添加し、中和して、コア粒子の周囲に酸化ケイ素化合物を析出させて多孔性填料を含む多孔性填料スラリーを調製する工程と、該多孔性填料スラリーに硫酸アルミニウ溶液を添加し、アルミニウムを結合させる工程とを有することを特徴とする多孔性填料の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3いずれか1項に記載の多孔性填料を含有することを特徴とする紙。

【公開番号】特開2009−270206(P2009−270206A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−118873(P2008−118873)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】