説明

多孔性膜および記録媒体並びにそれらの調製方法

本発明は、微小細孔性膜の調製方法であって、該微小細孔性膜に溶液を含浸させる工程を含み、該溶液は該微小細孔性膜の化学的および/もしくは物理的特性を改変するためのカチオン性化合物を含む方法に関する。本発明は、さらに、これらの微小細孔性膜が用いられる画像記録材料に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線によって化合物を硬化させることによる多孔性膜の調製方法に関する。本発明は、さらに、そのようにして製造されるこれらの多孔性膜が、特にはインク受容層として用いられる画像記録材料に関する。本発明は、該膜および該記録媒体の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
硬化性混合物がインクジェット記録媒体の製造に用いられるいくつかの例を見出すことができる。欧州特許出願公開第1 289 767号(EP−A−1 289 767)、第1 418 058号(EP−A−1 418 058)および第1 477 318号(EP−A−1 477 318)は、UVもしくは他の放射線によって硬化される層であって、十分な溶媒の取り込みを得るため、多孔性の特徴が有機もしくは無機粒子によってもたらされる層を開示する。しかしながら、無機粒子の使用はその層の物理的な弱さを生じ、その層のクラッキングもしくは破損を生じる可能性がある。
欧州特許出願公開第0 738 608号(EP−A−0 738 608)は水溶性高分子量化合物を含有する硬化性組成物を記載するが、これらの組成物は固体層を生じ、したがって、迅速に乾燥しない。
【0003】
国際公開第99/21723号(WO−A−99/21723)は、水溶性溶媒混合液に溶解した結合剤でコートされた基体を開示し、その層は後に硬化される。あらゆる量の溶媒が適切であり、かつ硬化に先立って結合剤を希釈する程度に限度がないことを教示する。
国際公開第01/91999号(WO−A−01/91999)および英国特許出願公開第2 182 046号(GB−A−2 182 046)は、硬化性インクジェットコーティングであって、そのコーティングの乾燥後に硬化するコーティングを開示する。
【0004】
米国特許第6 210 808号(US−A−6 210 808)は、水不溶性粒子および水不溶性モノマー/プレポリマーのコロイド状懸濁液が硬化するインクジェット記録用紙を記載する。
【0005】
米国特許第6 734 514号(US−A−6 734 514)は、水不溶性ラテックスを含む、インクジェット印刷用の放射線硬化性コーティングを開示する。
【0006】
他の方法は、例えば欧州特許出願公開第0 888 903号(EP−A−0 888 903)におけるような、フォーム層(foamed layers)の使用である。
【0007】
上記従来技術においては、受容層は単離されず、乾燥および/もしくはコートされた基体のさらなる操作の後に基体上に直接形成される。そのような層を、そのようなものとして用いることができ、もしくは別のプロセスで基体に付与して、例えばインクジェット受容媒体として、有利な特性をもたらすことができる膜として単離できれば有利である。膜は様々な方法、例えば、ポリマー溶液の乾式および湿式転相、均一な部分的に結晶性のポリマーフィルムの伸長、微粒子物質の焼成、均一ポリマー溶液の熱ゲル化、並びに照射もしくは熱的開始による同時相分離を伴うラジカル重合によって製造される。これらの方法のうち、湿式転相法(本方法ではポリマー溶液を沈殿剤もしくは固体ポリマーに富む相および液体溶媒に富む相への分離を生じる非溶媒と接触させる)が多孔性構造を得るのに最も広く用いられる技術である。この技術が適用される例は、国際公開第98/32541号(WO−A−98/32541)、国際公開第2005/016655号(WO−A−2005/016655)、米国特許第4 707 265号(US−A−4 707 265)、米国特許第5 079 272号(US−A−5 079 272)、欧州特許出願公開第0 803 533号(EP−A−0 803 533)、第0 812 697号(EP−A−0 812 697)、第0 824 959号(EP−A−0 824 959)、第0 889 080号(EP−A−0 889 080)および第1 149 624号(EP−A−1 149 624)に見出すことができる。
【0008】
湿式転相の主な不利益は、得られる製造速度が制限され、かつ大量の有機溶媒を必要とすることである。
【0009】
乾式転相法は、例えば、欧州特許出願公開第1 176 030号(EP−A−1 176 030)に記載される。別の方法が米国特許第4 466 931号(US−A−4 466 931)、欧州特許出願公開第0 216 622号(EP−A−0 216 622)および第0 481 517号(EP−A−0 481 517)に開示され、硬化性モノマーを非揮発性有機溶媒中で照射することによって製造され、非揮発性有機溶媒は低沸点の洗浄液で洗浄することによって除去される膜が記載される。
【0010】
多くの硬化性化合物は自然状態で疎水性であるため、乾式および湿式転相技術の両方は透明溶液を得るのに有機無極性溶媒を必要とする。これらの膜はしばしば親水性ではないため、例えば、膜に、例えば仏国特許出願公開第2 687 589号(FR−A−2 687 589)に記載される、塩類溶液、例えば国際公開第2004/022201(WO2004/022201)に記載される、親水性および疎水性基を含む分子、または、例えば特開平2−107649号(JP−A−2 107 649)に記載される、カチオン性もしくはアニオン性ポリマーの溶液を含浸させることにより、膜を親水性にするのにさらなる工程が必要となることがある。
【0011】
国際公開第00/63023(WO−A−00/63023)は、転相もしくは伸長によって製造された膜にカチオン性ポリマーの溶液を含浸させて顔料インクの移動を防止することを記載する。
【0012】
膜は他の方法、例えば、欧州特許出願公開第0 251 511号(EP−A−0 251 511)、特開平5−177120(JP−A−5 177 120)および米国特許第4 942 204(US−A−4 942 204)に記載される、熱重合もしくは、英国特許出願公開第1 549 352号(GB−A−1 549 352)に記載される、アクリル酸のPVCフィルムへのグラフト化によって製造することもできるが、これらの膜もしくはフィルムは多孔性ではなく、溶媒からの相分離によっては形成されない。
【0013】
両親媒性コポリマーから自立型フィルム(free standing films)として製造される膜が国際公開第01/88025(WO−A−01/88025)に記載されるが、これも多孔性ではなく、比較的小サイズ(1mm2まで)のものである。
【特許文献1】欧州特許出願公開第1 289 767号
【特許文献2】欧州特許出願公開第1 418 058号
【特許文献3】欧州特許出願公開第1 477 318号
【特許文献4】欧州特許出願公開第0 738 608号
【特許文献5】国際公開第99/21723号
【特許文献6】国際公開第01/91999号
【特許文献7】英国特許出願公開第2 182 046号
【特許文献8】米国特許第6 210 808号
【特許文献9】米国特許第6 734 514号
【特許文献10】欧州特許出願公開第0 888 903号
【特許文献11】国際公開第98/32541号
【特許文献12】国際公開第2005/016655号
【特許文献13】米国特許第4 707 265号
【特許文献14】米国特許第5 079 272号
【特許文献15】欧州特許出願公開第0 803 533号
【特許文献16】第0 812 697号
【特許文献17】第0 824 959号
【特許文献18】第0 889 080号
【特許文献19】第1 149 624号
【特許文献20】欧州特許出願公開第1 176 030号
【特許文献21】米国特許第4 466 931号
【特許文献22】欧州特許出願公開第0 216 622号
【特許文献23】欧州特許出願公開第0 481 517号
【特許文献24】仏国特許出願公開第2 687 589号
【特許文献25】国際公開第2004/022201
【特許文献26】特開平2−107649号
【特許文献27】国際公開第00/63023
【特許文献28】欧州特許出願公開第0 251 511号
【特許文献29】特開平5−177120
【特許文献30】米国特許第4 942 204
【特許文献31】英国特許出願公開第1 549 352号
【特許文献32】国際公開第01/88025
【発明の開示】
【0014】
特定の条件下で、上述の従来技術の材料を用いて許容し得る結果を得ることができるが、依然として改良の要求が存在する。本発明は、少なくとも部分的に、この要求を満たすことを探求する。
【0015】
記録媒体については、特にスメア生成特性に関して改良が必要であり、これは多孔性フィルムの吸収特性、特には、吸収速度に関連し得る。同時に、良好な光沢を有する多孔性フィルムが提供されなければならない。
【0016】
安全性を保証し、かつ環境の汚染を防止するのに経費のかかる手段を必要とせずに、高速で製造できる膜の必要性が存在する。本発明は、少なくとも部分的に、これらの問題を解決することを目的とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
低コストおよび高コーティング速度で製造することができる多孔性膜を提供することが本発明の目的である。優れた乾燥特性を有し、かつ高い画像印刷密度および良好な白色性をも有する記録媒体を提供することが本発明のさらなる目的である。本発明者らは、硬化前に少なくとも1つのタイプのモノマーおよび水性溶媒を含む硬化性組成物を提供することによってこれらの目的を達成できることを、予期せず見出した。好ましくは、このモノマーは両親媒性を有する。該組成物を基体上にコーティングし、コートされた組成物を硬化させることで架橋した化合物と溶媒との間に相分離を生じさせることにより、多孔性層を備える基体が形成される。続いて、その多孔性膜に、少なくとも1種類のカチオン性化合物、例えば、金属イオン、媒染剤もしくは蛍光増白剤を含む溶液を含浸させることで膜の機能性が改善される。この膜に洗浄および/もしくは乾燥工程を施してもよい。硬化性化合物を含むそのような混合物を基体上にコーティングした後、混合物の硬化、生じる多孔性層の洗浄および/もしくは乾燥、多孔性層への機能性化合物の含浸並びに、所望により多孔性層の基体からの分離の引き続く工程を行うとき、様々な用途において用いることができ、かつその高い溶媒流動および/もしくは取り込み能力を特徴とする多孔性膜を得ることができる。分離された場合、本発明の多孔性膜は、後に、全ての種類の支持体に固定することができる。基体からの分離は、基体の適正な処理により、例えば、硬化性化合物混合物を基体上にコーティングする前に、例えばシロキサン系ポリマーを含む、「剥離」層を付与することにより、容易に達成することができる。単離された本発明の多孔性膜は接着剤層により基体に別途取り付けることができる。この接着剤層は得られる媒体に特定の特性を付与することもできる。本文を通して、硬化性化合物および(硬化性)モノマーという用語は交換可能に用いられる。本発明のよる多孔性膜は様々な用途、例えば、気体、液体および混合物の分離、濃縮および精製プロセスにおいて用いることができる。
【0018】
含浸により、全ての種類の添加物を多孔性膜に導入することができる。好ましくは、これらの添加物は水溶性であるか、またはエマルジョンとして分散もしくは添加することができる。多孔性を維持するため、添加される添加物の総量は膜の合計細孔容積よりも少なくなければならず、換言すると、細孔を添加物で完全に充填してはならない。含浸溶液のpHは、好ましくは、多孔性膜のpHに匹敵するものであり、もしくは、必要であれば、透明溶液が得られるように調整することができる。含浸溶液は、添加物のタイプに依存して、広い範囲の濃度で適用することができる。適切な濃度は1〜20wt.%であり、5〜15wt.%がより好ましい。含浸コーティングは単層であってもよいが、多層であってもよい。1種類以上の化合物を膜内の所望の領域に向けるのには多層が非常に適する。化合物、例えば、媒染剤および蛍光増白剤は、好ましくは、膜の最上領域に存在する。これらの化合物が最上層に存在する多層による含浸によって、これらの化合物は膜の表面近傍に位置する。含浸溶液の最上層は好ましくは水性溶液であり、媒染剤、蛍光増白剤、界面活性剤、硬化性モノマー、アミン共力剤、水溶性ポリマー、輸送能力改善(transportability improving)/摩擦軽減剤、UV吸収剤、染料退色防止剤(dye fading prevention agents)(ラジカルスカベンジャー、光安定化剤、酸化防止剤)、架橋剤および通常の添加物、例えば、pH調節剤、粘度調節剤、殺生物剤、有機溶媒を含むことができる。
【0019】
カチオン性媒染剤は、硬化性組成物に添加された場合、負に荷電した硬化性化合物と共に凝固することがある。したがって、媒染剤は組成物に添加せず、硬化後に多孔性膜に付与することが一般に望ましい。これは、部分的に乾燥させるか、もしくは完全に乾燥させた後に、含浸によって行うことができる。含浸は、例えば、溶液を膜上にコーティングもしくは噴霧することにより、または膜を溶液中に浸漬することによって行うことができる。秤量コーティング、例えば、スライドもしくはスロットコーティングが好ましい。乾燥後、負電荷がマトリックスに組み込まれる部位に媒染剤分子が捕獲されている多孔性膜が残る。
好ましい実施形態において、カチオン性媒染剤(の一部)は硬化後に導入されるのではなく、硬化性組成物中でアニオン性硬化性化合物と組み合わされる。これらのアニオン性およびカチオン性化合物は溶液中で複合体を形成し、これは、驚くべきことに、沈殿することなく溶液中に留まる。それらの複合体は水との相溶性が制限されるモノマー混合物中で良好な溶解度を有するものと思われる。この水との限られた相溶性は、これらのモノマー混合物を相分離の開始に非常に適するものとする。それらの単一のイオン性化合物は、それらの電荷のため、電荷が遮蔽される複合体よりも親水性であるものと考えられる。両方の方法(硬化性組成物中への導入および含浸によるもの)の組み合わせを用いることもできる。
【0020】
別の実施形態においては、基体および多孔性層は分離して単離された多孔性膜を得るのではなく、形成されたものとして、例えば、不織支持体もしくは光沢支持体上にコートされた膜として用いられ、ここで記録媒体において用いられたときに多孔性膜が着色剤受容層として機能し得る。これは、例えば、インクジェット記録媒体であってもよく、その場合、着色剤はインク溶液である。
【0021】
別の実施形態においては、基体を硬化性化合物混合物の2つ以上の層でコートする。この方法により、全体を通して特性が異なる多孔性膜を設計し、かつ調製することができる。したがって、着色剤固定化特性を有する外層を、例えば外層に媒染剤を導入することにより、設計して調製し、そして、最適化された水取り込み能力を有する内部多孔性層を構築することができる。また、いわゆるバックビュー・オプション(backview option)をバックリット材料に導入するため、外層をスクラッチ耐性に対して最適化し、着色剤固定化特性を透明支持体に最も近い層に配置する。もしくは、分離膜適用のため、外層の多孔性を制御して分離特性を決定し、それに対して内層(1以上)は強度が膜にもたらされ、かつ高い溶媒流動が許容されるように最適化する。
【0022】
一般に、単離形態にある本発明の多孔性膜の乾燥厚は、典型的には、10μm〜500μmでもよく、より好ましくは30〜300μmでもよい。基体に付着するとき、膜に内部強度を付与する必要はなく、最適厚みは溶媒取り込み能力のような特性に基づく。後者の場合、乾燥厚は、典型的には、5〜50μmである。基体が水性溶媒に対して不浸透性であるとき、乾燥厚は、好ましくは20〜50μmであり、それに対して基体が、例えば(コートされた)原紙の場合のように、溶媒の一部を吸収できるとき、好ましい乾燥厚は5〜30μmである。多孔性層が多層であるとき、様々な層の厚みは、達成しようとする特性に依存して、自由に選択することができる。
【0023】
多くの硬化性化合物は自然状態で疎水性であり、透明溶液を得るのに高濃度の有機無極性溶媒を必要とする。多量の揮発性有機溶媒は、これらが膜の乾燥フェーズの最中に製造領域内に有害な状態を生じ得るため、好ましいものではなく、それに対して不揮発性溶媒は除去が困難であり、したがって、いずれも好ましいものではない。安全性、健康および環境の理由に加えて経済性の観点から、水が最も好ましい溶媒である。適切な硬化性化合物は水希釈性で水溶液を形成できるものであることが見出された。化合物は、25℃で少なくとも2wt%の水がその硬化性化合物と相溶可能であるとき、水希釈性とみなされる。好ましくは、少なくとも4wt%、より好ましくは、少なくとも10wt%の水が本発明の硬化性化合物と混和性である。好ましくは、環境に優しい溶媒、例えば、水を用いる。水を含む溶媒は、一般には、水性溶媒と呼ばれる。水性溶媒は、好ましくは、少なくとも30wt.%の水、より好ましくは、少なくとも50wt%を含み、他の極性もしくは無極性共溶媒を含んでもよい。水との混和性が硬化性化合物を完全に溶解するのに十分ではない場合、共溶媒の混合が望ましい。好ましくは、溶媒は水を少なくとも60wt.%、好ましくは少なくとも70wt.%、より好ましくは少なくとも80wt.%、もしくは90wt.%さえも含有する。特定の実施形態において、溶媒は水であり、有機共溶媒を含有しない。例えば、10% CN132、27.5% CN435および62.5% 水、もしくは21.5% CN132、21.5% CN435および57% 水、もしくは60% CN132および40% 水、もしくは49.75% CN132、49.75% 水および0.5% 塩化ドデシルトリメチルアンモニウムが都合のよい多孔性マトリックスをもたらし得る。CN132およびCN435はフランスのクレイ・バレー(Cray Valley)から入手可能な硬化性モノマーである。CN132は低粘度脂肪族エポキシアクリレートである。CN435(USにおいてはSR9035として入手可能)はエトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレートである。
【0024】
共溶媒としては、乾燥によって十分に除去することができる極性揮発性溶媒が好ましい。好ましい共溶媒は、低級アルキルアルコール、アルカノン、アルカナール、エステルもしくはアルコキシ−アルカンである。「低級アルキル」という用語は、そのアルキル鎖が7個未満、好ましくは6個未満、より好ましくは5個未満の炭素原子、好ましくは、1−4個の炭素原子を含有することを意味する。一実施形態において、溶媒はイソプロパノールおよび水の混合液である。他の好ましい共溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、アセトン、酢酸エチル、ジオキサン、メトキシエタノールおよびジメチルホルムアミドである。最も好ましいものは、水よりも低い沸点を有する共溶媒である。
【0025】
溶媒中での硬化性化合物の溶解度が他の重要なパラメータである。好ましくは、硬化性組成物は透明溶液である。溶媒は、選択された硬化性化合物もしくは化合物混合物が完全に溶解するように選択することができる。透明溶液がより安定であり、一般に好ましい。しかしながら、わずかな濁りが不安定性を生じることは通常なく、ほとんどの場合において許容可能である。他方、相分離を生じさせるには、生長するポリマーは溶媒中で不溶性でなければならない。これは、ある溶媒との組み合わせで選択することができる硬化性化合物に特定の制限をかける。適切な組み合わせの選択を容易にすることができる方法は、例えば、欧州特許出願公開第216622号(EP−A−216622)(曇点)および米国特許第3823027号(US−A−3823027)(ハンセン(Hansen)系)に記載される。
【0026】
初期化合物と生じるポリマーとの溶解度の大きな差、したがって、高速の相分離を得るには、溶媒を慎重に選択することによって高MWポリマー多孔性膜を実現することもできるものの、好ましくは、初期化合物の分子量(MW)は大きすぎるものではない。好ましくは、硬化性モノマーもしくはオリゴマーのMWは10000ダルトン未満、より好ましくは、5000ダルトン未満である。1000ダルトン未満のMWを有する化合物で良好な結果が得られる。
【0027】
2wt%〜50wt%の水希釈性を有する硬化性化合物に加えて、他のタイプの硬化性モノマーが硬化性組成物中に存在していてもよい。本発明による硬化性化合物は、例えば、「UV・EB硬化材料の開発」(編集 田畑 米穂、シーエムシー出版、2003年,ISBN 4882317915)(「Development of ultraviolet and electron beam curable materials」(edited by Y.Tabata,CMC publishing,2003,ISBN 4882317915)に記載され、これらに限定されるものではないが、エポキシ化合物、オキセタン誘導体、ラクトン誘導体、オキサゾリン誘導体、環状シロキサンもしくはエテン性不飽和化合物、例えば、アクリレート、メタクリレート、ポリエン−ポリチオール、ビニルエーテル、ビニルアミド、ビニルアミン、アリルエーテル、アリルエステル、アリルアミン、マレイン酸誘導体、イタコン酸誘導体、ポリブタジンおよびスチレンから選択することができる。好ましくは、主成分として、(メタ)アクリレート、例えば、アルキル−(メタ)アクリレート、ポリエステル−(メタ)アクリレート、ウレタン−(メタ)アクリレート、ポリエーテル−(メタ)アクリレート、エポキシ−(メタ)アクリレート、ポリブタジエン−(メタ)アクリレート、シリコーン−(メタ)アクリレート、メラミン−(メタ)アクリレート、ホスファゼン−(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミドおよびそれらの混合物がそれらの高い反応性にため用いられる。他のタイプの硬化性化合物を、生じる膜の特定の特性を改変するため、主成分と組み合わせることができる。これらの化合物は、モノマー溶液、モノマー懸濁液、モノマー分散液、オリゴマー溶液、オリゴマー懸濁液、オリゴマー分散液、ポリマー溶液、ポリマー懸濁液およびポリマー分散液の形態で用いることができる。
【0028】
本発明の多孔性膜を調製するため、硬化性組成物および処理条件は慎重に選択しなければならない。照射することでモノマー(もしくはオリゴマーもしくはプレポリマー)は架橋して徐々にポリマーを形成する。このプロセスの最中、溶媒中で生長するポリマーの溶解度が減少して相分離を生じ、その結果、溶液からのポリマー分離を生じる。最後に、ポリマーは、多孔性構造を有し、溶媒がそれらの細孔を充填するネットワークを形成する。乾燥させることで溶媒が除去され、多孔性膜が残る。ある実施形態においては、膜を乾燥させず、所望により、洗浄して湿潤状態を保ち、細孔の崩壊を防止する。多孔性膜の最適構造を得るには、硬化性化合物もしくは硬化性化合物の混合物の濃度を慎重に選択することが重要である。濃度が低すぎるとき、硬化時にネットワーク構造が形成されないことが想定され、濃度が高すぎるとき、乾燥後に非多孔性透明層を生じる均一なゲル化層が多かれ少なかれ形成され得ることが実験で示される。その上、モノマーが溶媒に過度に可溶性であるとき、相分離が起こらず、通常は、重合後にゲル構造が形成される。多孔性構造は高い溶媒流動に必須である。この観点から、溶媒中の硬化性化合物(1種類以上)の濃度は、好ましくは、10〜80wt.%、より好ましくは、20〜70wt.%、最も好ましくは、30〜60wt%である。
【0029】
多孔性膜を、水性インクを用いて画像を形成する着色剤受容媒体、例えば、インクジェット記録媒体として用いるとき、膜は、関与する水性溶媒を迅速に吸収するため、親水性を有していなければならない。硬化性組成物が水を主溶媒として含有する場合、形成されるポリマーは、一般には、溶媒との非相溶性が相分離の生成に重要であるため、疎水性を有さなければならない。これは、この用途には、本発明の膜が親水性および疎水性の両方を有していなければならないことを暗示する。これらの一見して矛盾する要求は、例えば、両親媒性構造(分子の一部が親水性であり、かつ他の部分が疎水性を有する)を有する硬化性化合物を選択することによって実現することができる。両親媒性モノマーは親水性および疎水性基の両方を有し得るか、または両親媒性基(例えば、(1,2−もしくは1,3−)プロピレンオキシド鎖または(1,2−、1,3−もしくは1,4−)ブチレンオキシド鎖)を有し得る。疎水性基の例は脂肪族もしくは芳香族基、C3より長いアルキル鎖等である。別のアプローチは、硬化性組成物に親水性である硬化性化合物および疎水性であるものを含むことである。後者の方法は、両タイプの硬化性化合物の比を変化させることによって膜の特性を制御することを可能にする。親水性モノマーは、例えば、水溶性モノマーおよび親水性基、例えば、ヒドロキシ、カルボキシレート、スルフェート、アミン、アミド、アンモニウム、エチレンオキシド鎖等を有するモノマーである。両親媒性はいくつかの方法で得ることができる。例えば、極性基(例えば、ヒドロキシ、エーテル、カルボキシレート、スルフェート、アミン、アミド、アンモニウム等)を疎水性モノマーの構造に導入することによって両親媒性モノマーを製造することができる。他方、親水性構造から出発して、例えば、アルキルもしくは芳香族基を導入することによって疎水性を高めることにより、両親媒性モノマーを製造することができる。
【0030】
少なくとも1種類の硬化性化合物の水希釈性が制限されるとき、良好な結果が得られる。好ましくは、水を硬化性モノマーと、25℃で、2/98〜50/50、より好ましくは4/96〜50/50、さらにより好ましくは10/90〜50/50の重量比で混和可能である。多くの適切な硬化性化合物が自然状態で両親媒性である。モノマーの適切な濃度は、共溶媒、界面活性剤を添加することにより、組成物のpHを調整することにより、もしくはより高い水負荷で良好な溶解度を維持するモノマーを混合することにより達成することができる。水と後者のモノマーとの混和比は、典型的には、25℃で50wt.%を上回る。
【0031】
本発明の多孔性膜を達成する他の可能性のある方法は、水との混和性の乏しい、典型的には、25℃で2wt.%未満の水のモノマーとの混和比を有するモノマーと、良好な混和性、すなわち、モノマー中での水の混和性が25℃で50wt.%を上回るモノマーと、の混合物を適用することである。多くの異なるタイプのモノマーを、2つ、3つ以上のタイプのモノマーの組み合わせを慎重に選択し、かつそれらそれぞれの濃度および溶媒組成を最適化することにより、本発明において上手く適用することができる。
【0032】
25℃での水との混和性を2/98〜50/50の水/モノマー重量比で示す適切なモノマーは、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(好ましくは、MW<500、例えば、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート等)、エチレングリコールエポキシレートジメタクリレート、グリセロールジグリセロレートジアクリレート、プロピレングリコールグリセロレートジアクリレート、トリプロピレングリコールグリセロレートジアクリレート、オリゴ(プロピレングリコール)ジアクリレート、ポリ(プロピレングリコール)ジアクリレート、オリゴ(プロピレングリコール)グリセロレートジアクリレート、ポリ(プロピレングリコール)グリセロレートジアクリレート、オリゴ(ブチレンオキシド)ジアクリレート、ポリ(ブチレンオキシド)ジアクリレート、オリゴ(ブチレンオキシド)グリセロレートジアクリレート、ポリ(ブチレンオキシド)グリセロレートジアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(エトキシル化 3−10mol)、エトキシル化ビスフェノール−Aジアクリレート(エトキシル化3−10mol)、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−(エトキシエトキシル)エチルアクリレート、N,N’−(m)エチレン−ビス(アクリルアミド)である。商業的に入手可能な化合物、例えば、CN129(エポキシアクリレート)、CN131B(一官能性脂肪族エポキシアクリレート)、CN133(三官能性脂肪族エポキシアクリレート)、CN9245(三官能性ウレタンアクリレート)、CN3755(アミノジアクリレート)、CN371(アミノジアクリレート)(すべてフランス国クレイ・バレー(Cray Valley)製)も適切である。
【0033】
水との良好な混和性(25℃で50/50を上回る水/モノマー重量比)を有する適切な(親水性)モノマーは、ポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート(好ましくは、MW>500)、ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート(好ましくは、MW>500)、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(10molを上回るエトキシル化)、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、3−(ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート、2−(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、3−(ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート四級アンモニウム塩(塩化物もしくは硫酸塩)、2−(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート四級アンモニウム塩(塩化物もしくは硫酸塩)、2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド四級アンモニウム塩(塩化物もしくは硫酸塩)、3−(ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド四級アンモニウム塩(塩化物もしくは硫酸塩)である。
【0034】
水との混和性に乏しい(25℃で2/98未満の水/モノマー重量比)適切な(疎水性)モノマーは、アルキル(メタ)アクリレート(例えば、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ラウリルアクリレート)、芳香族アクリレート(フェノールアクリレート、アルキルフェノールアクリレート等)、脂肪族ジオール(ジ)(メタ)アクリレート(例えば、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ヒドロキシピバル酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)、トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセリルトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、スチレン誘導体、ジビニルベンゼン、酢酸ビニル、ビニルアルキルエーテル、アルケン、ブタジエン、ノルボルネン、イソプレン、C4より長いアルキル鎖を有するポリエステルアクリレート、C4より長いアルキル鎖を有するポリウレタンアクリレート、C4より長いアルキル鎖を有するポリアミドアクリレートである。
【0035】
硬化性組成物は、25℃で2/98〜50/50の水/モノマー比で水と混和し得るモノマーを、硬化性モノマーの総量に対して、好ましくは1〜100wt%、より好ましくは10〜80wt%、最も好ましくは40〜70wt%含む。硬化性組成物は、加えて、25℃で50/50を上回る水/モノマー比で水と混和し得るモノマーを、硬化性モノマーの総量に対して99wt%まで、好ましくは30〜60wt%含んでもよい。また、混和性に乏しいモノマーが混合物中に99wt%まで存在してもよい。本発明による膜を得る別の方法は、1〜99wt%、好ましくは30〜80wt%の、水との良好な混和性を有するモノマーと、1〜99wt%、好ましくは10〜80wt%、より好ましくは20〜70wt%の、25℃で2/98未満の水/モノマー比で水との混和性に乏しいモノマーと、を組み合わせることである。
【0036】
光開始剤を本発明に従って用いることができ、硬化性化合物(1種類以上)の混合物に、好ましくはその混合物を支持体に塗布する前に、混合することができる。光開始剤は、通常、コートされた混合物がUVもしくは可視光照射によって硬化するときに必要である。適切な光開始剤は当分野において既知のもの、例えば、ラジカル型、カチオン型もしくはアニオン型光開始剤である。
【0037】
ラジカルI型光開始剤の例は、α−ヒドロキシアルキルケトン、例えば、2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパノン(商標イルガキュア(Irgacure)2959:チバ(Ciba))、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン(商標イルガキュア(Irgacure)184:チバ)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン(商標サルキュア(Sarcure)SR1173:サートマー(Sartomer))、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−{4−(1−メチルビニル)フェニル}プロパノン](商標サルキュア(Sarcure)SR1130:サートマー)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−tert−ブチル−)フェニルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−[4’−(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパノン(商標ダーキュア(Darcure)1116:チバ(Ciba))、α−アミノアルキルフェノン、例えば、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−4’−モルホリノブチロフェノン(商標イルガキュア(Irgacure)369:チバ(Ciba))、2−メチル−4’−(メチルチオ)−2−モルホリノプロピオフェノン(商標イルガキュア(Irgacure)907:チバ)、α,α−ジアルコキシアセトフェノン、例えば、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン(商標イルガキュア(Irgacure)651:チバ(Ciba))、2,2−ジエトキシ−1,2−ジフェニルエタノン(商標ウバトン(Uvatone)8302:アップジョン(Upjohn))、α,α−ジエトキシアセトフェノン(DEAP:ラーン(Rahn))、α,α−ジ−(n−ブトキシ)アセトフェノン(商標ウバトン8301:アップジョン(Upjohn))、フェニルグリオキソレート、例えば、メチルベンゾイルホルメート(商標ダロキュア(Darocure)MBF:チバ)、ベンゾイン誘導体、例えば、ベンゾイン(商標エサキュア(Esacure)BO:ランバーチ(Lamberti)、ベンゾインアルキルエーテル(エチル、イソプロピル、n−ブチル、イソ−ブチル等)、ベンジルベンゾインベンジルエーテル、アニソイン、モノ−およびビス−アシルホスフィンオキシド、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキシド(商標ルシリン(Lucirin)TPO:BASF)、エチル−2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート(商標ルシリン(Lucirin)TPO−L:BASF)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド(商標イルガキュア(Irgacure)819:チバ)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキシド(商標イルガキュア(Irgacure)1800もしくは1870)である。他の商業的に入手可能な光開始剤は、1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]−1,2−オクタンジオン(商標イルガキュア(Irgacure)OXE01)、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾル−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)エタノン(商標イルガキュア(Irgacure)OXE02)、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(商標イルガキュア(Irgacure)127)、オキシ−フェニル−酢酸 2−[2 オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]−エチルエステル(商標イルガキュア(Irgacure)754)、オキシ−フェニル−酢酸−2−[2−ヒドロキシ−エトキシ]−エチルエステル(商標イルガキュア(Irgacure)754)、2−(ジメチルアミノ)−2−(4−メチルベンジル)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(商標イルガキュア(Irgacure)379)、1−[4−[4−ベンゾイルフェニル)チオ]フェニル]−2−メチル−2−[(4−メチルフェニル)スルホニル)]−1−プロパノン(ランバーチ製の商標エサキュア1001M)、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビスイミダゾール(IGM製の商標オムニラド(Omnirad)BCIM)である。
【0038】
II型光開始剤の例は、ベンゾフェノン誘導体、例えば、ベンゾフェノン(商標アジトール(Additol)BP:UCB)、4−ヒドロキシベンゾフェノン、3−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,5−ジメチルベンゾフェノン、3,4−ジメチルベンゾフェノン、4−(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、[4−(4−メチルフェニルチオ)フェニル]フェニル−メタノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、メチル−2−ベンゾイルベンゾエート、4−フェニルベンゾフェノン、4,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ビス(エチルメチルアミノ)ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N,N−トリメチルベンゼンメタンアミニウムクロリド、2−ヒドロキシ−3−(4−ベンゾイルフェノキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロリド、4−(13−アクリロイル−1,4,7,10,13−ペンタオキサトリデシル)ベンゾフェノン(商標ウベクリル(Uvecryl)P36:UCB)、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニル)oy]エチルベンゼン−メタンアミニウムクロリド、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、アントラキノン、エチルアントラキノン、アントラキノン−2−スルホン酸ナトリウム塩、ジベンゾスベレノン、アセトフェノン誘導体、例えば、アセトフェノン、4’−フェノキシアセトフェノン、4’−ヒドロキシアセトフェノン、3’−ヒドロキシアセトフェノン、3’−エトキシアセトフェノン、チオキサンテノン誘導体、例えば、チオキサンテノン、2−クロロチオキサンテノン、4−クロロチオキサンテノン、2−イソプロピルチオキサンテノン、4−イソプロピルチオキサンテノン、2,4−ジメチルチオキサンテノン、2,4−ジエチルチオキサンテノン、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサントン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロリド(商標カヤキュア(Kayacure)QTX:日本化薬(Nippon Kayaku))、ジオン、例えば、ベンジル、カンファーキノン、4,4’−ジメチルベンジル、フェナントレンキノン、フェニルプロパンジオン、ジメチルアニリン、例えば、4,4’,4”−メチリジン−トリス(N,N−ジメチルアニリン)(IGM製の商標オムニラドLCV)、イミダゾール誘導体、例えば、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビスイミダゾール、チタノセン、例えば、ビス(η−5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス−[2,6−ジフルオロ−3−1H−ピロル−1−イル]フェニル]チタン(商標イルガキュア(Irgacure)784:チバ)、ヨードニウム塩、例えば、ヨードニウム、(4−メチルフェニル)−[4−(2−メチルプロピル−フェニル)−ヘキサフルオロホスフェート(1−)である。所望であれば、光開始剤の組み合わせを用いることもできる。
【0039】
アクリレート、ジアクリレート、トリアクリレートもしくは多官能性アクリレートには、I型光開始剤が好ましい。特には、α−ヒドロキシアルキルフェノン、例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−tert−ブチル−)フェニルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−[4’−(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンおよびオリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−{4−(1−メチルビニル)フェニル}プロパノン]、α−アミノアルキルフェノン、α−スルホニルアルキルフェノン並びにアシルホスフィンオキシド、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキシド、エチル−2,4,6−トリメチルベンゾイル−フェニルホスフィネートおよびビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシドが好ましい。好ましくは、光開始剤および硬化性化合物(1種類以上)の比は、重量基準で、0.001〜0.1、より好ましくは、0.005〜0.05である。用いられる光開始剤の量を最少化することが好ましく、換言すると、好ましくは、すべての光開始剤が硬化工程(1以上)後には反応している。残留する光開始剤は有害作用、例えば、膜が記録媒体として用いられる場合、黄変もしくは染料の分解を有することがある。分離膜として適用されるとき、残留する光開始剤を洗い流すのに過度の洗浄が必要となることがある。
【0040】
各々の層において2つ以上の層を適用するとき、光開始剤のタイプおよび濃度は独立に選択することができる。例えば、多層構造において、最上層中の光開始剤は下層(1以上)中の光開始剤と異なっていてもよく、これは、単一の開始剤をすべての層を通して適用するときよりも低い開始剤濃度で効率的な硬化をもたらし得る。放射線で照射されるとき、いくつかのタイプの光開始剤は表面の硬化において最も有効であり、それに対して他のタイプは層内のより深部で硬化する。下層に対しては良好なスルーキュア(through cure)が重要であり、高い効率の硬化には、最上層において適用される光開始剤のスペクトルと完全には重複しない吸収スペクトルを有する光開始剤を選択することが好ましい。好ましくは、最上層中および最下層中の光開始剤の間の吸収最大の差は少なくとも20nmである。UV照射が用いられる場合、いくつかの波長での放射を有する光源を選択することができる。UV光源および光開始剤の組み合わせは、光開始剤の活性化に十分な放射線が下層まで透過するように最適化することができる。典型的な例は、220nm、255nm、300nm、310nm、365nm、405nm、435nm、550nmおよび580nm近辺に放射最大を有する、フュージョンUVシステムズ(Fusion UV Systems)によって供給される、600ワット/インチの出力を有するH−バルブである。代替物は、異なる放射スペクトルを有するV−バルブおよびD−バルブである。UV光源のスペクトルと光開始剤のそれとが十分に重複する必要があることは明かである。光源および光開始剤の選択から、最適な組み合わせをすることができる。この多数のタイプの光開始剤の方法は、同じ照射強度で、より厚い層を効率的に硬化させることを可能にする。加えて、異なるタイプの光開始剤を適用することにより、光沢および多孔性のような特性を1つのタイプの光開始剤では不可能なレベルまで最適化することができる。
【0041】
アミン共力剤を硬化性化合物に添加することによって硬化速度を高めることができる。アミン共力剤は、反応性を高め、酸素阻害を遅延させることが既知である。適切なアミン共力剤は、例えば、遊離アルキルアミン、例えば、トリエチルアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、芳香族アミン、例えば、2−エチルヘキシル−4−ジメチルアミノベンゾエート、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート並びに、その上、ポリアリルアミンおよびその誘導体のようなポリマー性アミンである。硬化性アミン共力剤、例えば、エチレン性不飽和アミン(例えば、(メタ)アクリル化アミン)が好ましく、これは、それらの使用が、硬化によりポリマーマトリックスに組み込まれるその能力により、より少ない臭気、より少ない揮発性およびより少ない黄変をもたらすためである。
【0042】
アミン共力剤の量は、好ましくは、硬化性組成物中の硬化性化合物の量に対して0.1〜10wt%、より好ましくは、硬化性化合物の量に対して0.3〜3wt%である。
硬化性化合物混合物は、好ましくは、放射線を施して多孔性膜を得る。原理的には、光開始剤が存在する場合にはその吸収スペクトルと一致する限り、もしくは光開始剤の必要性なしに硬化性化合物を直接硬化させるのに十分なエネルギーがもたらされる限り、あらゆる適切な波長の(電磁気)放射線、例えば、紫外線、可視光もしくは赤外線を用いることができる。
【0043】
赤外線による硬化は熱硬化としても知られる。したがって、エチレン性不飽和モノマーをフリーラジカル開始剤と組み合わせ、その混合物を加熱することによって硬化重合を達成することができる。例示的なフリーラジカル開始剤は、有機ペルオキシド、例えば、エチルペルオキシドおよびベンジルペルオキシド;ヒドロペルオキシド、例えば、メチルヒドロペルオキシド、アシロイン、例えば、ベンゾイン;特定のアゾ化合物、例えば、α,α’−アゾビスイソブチロニトリルおよびγ,γ’−アゾビス(γ−シアノ吉草酸);ペルスルフェート;ペルアセテート、例えば、メチルペルアセテートおよびtert−ブチルペルアセテート、ペルオキサレート、例えば、ジメチルペルオキサレートおよびジ(tert−ブチル)ペルオキサレート;ジスルフィド、例えば、ジメチルチウラムジスルフィドおよびケトンペルオキシド、例えば、メチルエチルケトンペルオキシドである。約23℃〜約150℃の範囲の温度が一般に用いられる。より頻繁には、約37℃〜約110℃の範囲の温度が用いられる。
【0044】
紫外光による照射が好ましい。適切な波長は、例えば、光開始剤が存在する場合、その吸収波長と一致するという条件で、UV−A(400〜320nm)、UV−B(320〜280nm)、UV−C(280〜200nm)である。
【0045】
紫外光の適切な源は、水銀アークランプ、炭素アークランプ、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、渦流プラズマアークランプ(swirlflow plasma arc lamps)、金属ハライドランプ、キセノンランプ、タングステンランプ、ハロゲンランプ、レーザーおよび紫外線発光ダイオードである。中圧もしくは高圧水銀蒸気型の紫外線発光ランプが特に好ましい。加えて、ランプの発光スペクトルを修正するため、金属ハライドのような添加物が存在していてもよい。ほとんどの場合、200〜450nmの放射最大を有するランプが最も適する。
【0046】
露光装置のエネルギー出力は20〜240W/cm、好ましくは40〜150W/cmであり得るが、所望の露光量が実現できる限り、より大きいものであってもよい。露光強度は、膜の最終構造に影響を及ぼす、硬化の程度を制御するのに用いることができるパラメータの1つである。好ましくは、露光量は、ハイ・エナジーUVラジオメータ(High Energy UV Radiometer)(EIT−インストルメント・マーケッツ(EIT−Instrument Markets)製の商標UVパワー・パック(UV Power Puck))による、その装置によって指示されるUV−B範囲での測定で、少なくとも40mJ/cm2、より好ましくは40〜600mJ/cm2、最も好ましくは70〜220mJ/cm2である。露光時間は自由に選択することができるが、長時間である必要はなく、典型的には、1秒未満である。
【0047】
光開始剤を添加しない場合、当分野において既知の電子ビーム露光によって硬化性化合物を有利に硬化させることができる。好ましくは、出力は50〜300keVである。硬化はプラズマもしくはコロナ露出によって達成することもできる。
【0048】
硬化性組成物のpHは、好ましくは、2〜11、より好ましくは、3〜8の値で選択する。最適pHは用いられるモノマーに依存し、実験的に決定することができる。硬化速度はpH依存性であるものと思われる。高pHでは硬化速度は明瞭に低下し、生じる多孔性膜がより少ない。低pH値(2以下)ではエージングで膜の黄変が生じ、これは、良好な白色性が好ましいとき、望ましいものではない。
【0049】
所望であれば、表面張力を調整するため、もしくは他の目的、例えば、良好な光沢のため、界面活性剤もしくは界面活性剤の組み合わせを水性組成物に湿潤剤として添加することができる。所望の用途およびコートしようとする基体に依存して適切な界面活性剤を用いることは当業者の能力の範囲内である。商業的に入手可能な界面活性剤を用いることができ、これには放射線硬化性界面活性剤が含まれる。硬化性組成物における使用に適する界面活性剤には、非イオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤、両性界面活性剤およびそれらの組み合わせが含まれる。好ましい非イオン性界面活性剤には、エトキシル化アルキルフェノール、エトキシル化脂肪アルコール、エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマー、フルオロアルキルエーテル等が含まれる。好ましいイオン性界面活性剤には、これらに限定されるものではないが、以下が含まれる。アルキル基が8〜22個(好ましくは、12〜18個)の炭素原子を含有するアルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキル基が8〜22個(好ましくは、12〜18個)の炭素原子を含有するアルキルベンジルジメチルアンモニウム塩およびエチルスルフェート、並びにアルキル基が8〜22個(好ましくは、12〜18個)の炭素原子を含有するアルキルピリジニウム塩。界面活性剤はフッ素系もしくはケイ素系であってもよい。適切なフルオロ界面活性剤の例は、フルオロC2−C20アルキルカルボン酸およびそれらの塩、ジナトリウムN−ペルフルオロオクタンスルホニルグルタメート、ナトリウム3−(フルオロ−C6−C11アルキルオキシ)−1−C3−C4アルキルスルホネート、ナトリウム3−(ω−フルオロ−C6−C8アルカノイル−N−エチルアミノ)−1−プロパンスルホネート、N−[3−(ペルフルオロオクタンスルホンアミド)−プロピル]−N,N−ジメチル−N−カルボキシメチレンアンモニウムベタイン、ペルフルオロアルキルカルボン酸(例えば、C7−C13−アルキルカルボン酸)およびそれらの塩、ペルフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、Li、KおよびNa ペルフルオロC4−C12アルキルスルホネート、Li、KおよびNa N−ペルフルオロC4−C13アルカンスルホニル−N−アルキルグリシン、RfCH2CH2SCH2CH2CO2LiもしくはRfCH2CH2O(CH2CH2O)xH(式中、Rf=F(CF2CF23-8およびx=0〜25)の化学構造を有する、登録商標ゾニル(Zonyl)(E.I.デュポン(E.I.Du Pont)製造)の名称で商業的に入手可能なフルオロ界面活性剤、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)ペルフルオロオクタンスルホンアミド、2−スルホ−1,4−ビス(フルオロアルキル)ブタンジオエート、1,4−ビス(フルオロアルキル)−2−[2−N,N,N−トリアルキルアンモニウム)アルキルアミノ]ブタンジオエート、ペルフルオロC6−C10アルキルスルホンアミドプロピルスルホニルグリシネート、ビス−(N−ペルフルオロオクチルスルホニル−N−エタノールアミノエチル)ホスホネート、モノ−ペルフルオロC6−C16アルキル−エチルホスホネート並びにペルフルオロアルキルベタインである。例えば米国特許第4 781 985号(US−A−4 781 985)および米国特許第5 084 340号(US−A−5 084 340)に記載されるフルオロカーボン界面活性剤も有用である。
【0050】
ケイ素系界面活性剤は、好ましくは、ポリシロキサン、例えば、ポリシロキサン−ポリオキシアルキレンコポリマーである。そのようなコポリマーは、例えば、ジメチルシロキサン−メチル(ポリオキシエチレン)コポリマー、ジメチルシロキサン−メチル(ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン)シロキサンコポリマー、トリシロキサンおよびポリエーテルのコポリマーとしてのトリシロキサンアルコキシレート、並びにシロキサンおよびポリプロピレンオキシドのコポリマーとしてのシロキサンプロポキシレートであり得る。シロキサンコポリマー界面活性剤は当業者に既知のあらゆる方法によって調製することができ、ランダム、交互、ブロックもしくはグラフトコポリマーとして調製することができる。ポリエーテルシロキサンコポリマーは、好ましくは、100〜10,000の範囲の重量平均分子量を有する。市場で商業的に入手可能なポリエーテルシロキサンコポリマーの例には、CKウィトコ(CK WITCO)によって製造される、SILWET DAシリーズ、例えば、SILWET408、560もしくは806、SILWET Lシリーズ、例えば、SILWET−7602もしくはCOATSILシリーズ、例えば、COATSIL1211;シンエツ(SHIN−ETSU)によって製造される、KF351A、KF353A、KF354A、KF618、KF945A、KF352A、KF615A、KF6008、KF6001、KF6013、KF6015、KF6016、KF6017;ビックケミー(BYK−CHEMIE)によって製造される、BYK−019、BYK−300、BYK−301、BYK−302、BYK−306、BYK−307、BYK−310、BYK−315、BYK−320、BYK−325、BYK−330、BYK−333、BYK−331、BYK−335、BYK−341、BYK−344、BYK−345、BYK−346、BYK−348;およびテゴ(TEGO)によって製造される、GLIDEシリーズ、例えば、GLIDE450、FLOWシリーズ、例えば、FLOW425、WETシリーズ、例えば、WET265が含まれる。
【0051】
界面活性剤は、プリンタ可搬性、ブロッキング耐性(blocking resistance)および防水性を改善する目的で、硬化性組成物中に添加することができ、および/もしくは膜の含浸によって導入することができる。界面活性剤は、用いられる場合、好ましくは、膜の乾燥重量に対して、0.01〜2%、より好ましくは0.02〜0.5%の量で存在する。好ましくは、界面活性剤は組成物中で用いられる濃度で可溶性である。水性溶媒を用いるとき、好ましくは、水中で25℃での界面活性剤の溶解度は少なくとも0.5%である。
【0052】
特には水性インクの高速の取り込みのため、表面は親水性である必要がある。表面の親水性は、水滴の接触角を測定することによって適切に表される。80°未満の値が親水性表面を示すものであり、インク受容層としての用途に好ましい。
【0053】
本発明によると、膜は、好ましくは0.0001〜2.0μmの直径を有する、相当な量の細孔を含有する場合、「多孔性、ナノ多孔性もしくはマイクロ多孔性」と呼ばれる。より好ましくは、本発明の多孔性膜の細孔の大部分が0.001〜1.0μm、さらにより好ましくは0.003〜0.7μmのサイズを有する。選択された実施形態に対して、平均細孔経は、好ましくは、0.01〜1.0μm、より好ましくは、0.03〜0.4μmである。細孔の形状については制限がない。細孔は、例えば、球状もしくは不規則もしくは両方の組み合わせであり得る。好ましくは、細孔は内部連通するが、これは、高い流動もしくは迅速な溶媒吸収に寄与するためである。
【0054】
膜の多孔性は、好ましくは、分析用SEM断面画像による決定で、5〜90パーセントである。多孔性は以下の式によって決定される。
【0055】
(乾燥厚[m]/固体のコーティング量[kg/m2])*100%−100%
【0056】
ここで、コートされた固体(マトリックス)の密度は1kg/dm3と仮定する。より好ましくは、多孔性は10〜70パーセント、さらにより好ましくは、20〜50%である。
【0057】
インク受容層として適用される膜については高度の光沢を示すことが重要であり、そのためには表面層は滑らかである必要があり、かつ膜の表面上の細孔のサイズおよび総面積を特定の限度内に制御しなければならない。インク吸収速度の損失がない良好な光沢は、細孔が占める面積を、好ましくは、0.1〜30%に制御することによって得ることができる。高速のインク吸収速度を伴う最大光沢のためには、より好ましくは細孔面積は0.2〜25%、さらにより好ましくは0.3〜18%である。細孔面積は、細孔径および細孔の量によって決定される。これは、特定の細孔面積について、細孔の量が細孔径に依存して変化することを意味する。一般には、大きな細孔の頻度が低いことは小さな細孔の頻度が高いことよりも好ましくない。表面細孔の絶対平均細孔径は、好ましくは1.2μm未満、より好ましくは0.02〜1μm、さらにより好ましくは0.05〜0.7μmである。選択された実施形態については、0.06〜0.3μmの範囲が好ましい。良好な光沢は、さらに、表面粗さ(surface roughness)(Ra)値で表すことができる。Ra値は細孔径/細孔面積の影響を受ける。良好な光沢を有する膜に好ましいRa値は、0.8μm未満、より好ましくは0.5μm未満、さらにより好ましくは0.3μm未満、最も好ましくは0.2μm未満である。光沢のある外見は、主として、細孔間の表面領域の平滑性によって決定されるものと考えられる。ISO 13565−1(1998)およびJIS B0671−1(2002)では、細孔の計算への寄与を排除して表面のRa値を決定することができる方法が記載される。特別な実施形態においては、膜が異なる構造、つまり、開放ポリマーネットワークの形態にある等方性バルクマトリックスおよび完全に異なる構造の薄い表面層で構成される。この表面層もしくはスキン層は連通していない細孔を有する連続層であり、穿孔処理された連続層と記述することができる。プロセスおよび処方条件を変化させることにより、表面細孔の数およびサイズを所望の仕様に従って制御することができる。この表面層は膜の光沢に寄与するものと考えられる。逆浸透のような用途には、表面に細孔が全く存在しないか、もしくは非常に小さな直径の細孔のみが存在することが好ましいものであり得、これは、スキン層を閉鎖された連続層とみなし得ることを意味する。インク受容層としての用途には、表面層はインク中に存在する染料が膜内深くに吸収される(これは印刷画像の低光学密度につながる)ことを防止することが想定される。したがって、この表面層は高光学密度に寄与する。他方、スキン層は膜を通過する流速を減少させ、乾燥特性の悪化を生じ得る。したがって、好ましくは、このスキン層は3μm未満の厚みを有する薄いものであり、より好ましくは、スキン層の厚みは1.5μm未満、例えば0.1〜1.2μmである。薄いスキン層を除いて、膜は好ましくは対称的であるが、ある程度までの非対称構造も許容され得る。
【0058】
膜の重要な一特性は多孔性層の膨潤性である。多孔性に加えて、膨潤性は溶媒取り込みの速度および受容能力に寄与する。所望の特性に依存して、多孔性と膨潤性との特定のバランスを選択することができる。溶媒取り込みの特定のレベルを獲得するには、高い多孔性を低い膨潤挙動と組み合わせることができ、その逆も同じである。これは、すべてが良好な溶媒取り込み速度を有する、膜構造の多量の変種を可能にする。インク受容層として適用される膜については、膨潤は、好ましくは1〜50μm、より好ましくは2μm〜30μm、最も好ましくは3〜20μmである。多孔性層の乾燥厚みが望ましい用途に依存して変化し得るため、膨潤は相対的な方法で乾燥厚みのパーセンテージとしてより適切に表される。好ましくは、膨潤は、多孔性膜の乾燥厚みの少なくとも5%、より好ましくは6〜150%、さらにより好ましくは10〜80%である。本発明における膨潤は、膨潤前の層の乾燥厚みを膨潤後の層の膨潤厚みから差し引くことによって決定され、ここで、膨潤厚みは20℃の蒸留水に3分間浸漬した後の層の厚みを表し、乾燥厚みは23℃および60%RHで24時間を超えて静置させている層の厚みを表す。層の厚みは様々な方法によって決定することができる。例えば、層を膨潤させるために試料を所与の温度の蒸留水に所与の時間浸漬した後、その間に膨潤した層を針位置決めセンサ(needle positioning sensor)で連続的に触れることによって膨潤プロセスを観察し、膨潤前後の層の厚みを測定する方法がある。光学センサによって表面に触れることなく膨潤した層の高さを測定し、乾燥層の高さを差し引いて層の膨潤量を知る方法もある。膨潤の程度は、モノマーのタイプおよび比、硬化/架橋の程度(露光量、光開始剤のタイプおよび量)並びに他の成分(例えば、連鎖移動剤、共力剤)によって制御することができる。
【0059】
驚くべきことに、膜は、その膨潤特性のため、インク受容層として用いたときにより高い画像密度を示し、かつ改善されたオゾン堅牢性(ozone fastness)を示した。理論によって拘束されることを望むものではないが、研究者らは、膨潤のため、着色剤がポリマーネットワーク構造に組み込まれ、乾燥後に、オゾンおよび他の気体の影響に対して保護されると推測している。膨潤能力のない多孔性ネットワークにおいては着色剤は層内の深くに浸透することができ、それに対して、膨潤により、着色剤は、主として、層の表面領域に捕捉されるものと考えられ、観察された密度の増加が説明される。
【0060】
強力に膨潤する多孔性層の不利な点は幾分弱いスクラッチ耐性である。多大な膨潤性は低い程度の架橋によって達成されるが、これは膜の構造を物理的攪乱に対して敏感なものとする。驚くべきことに、乾燥が完了した後の乾燥膜の第2硬化処理が湿潤コート層の硬化の増強よりも堅牢性の強化により有効であることが見出された。ここでもまた理論によって束縛されることを望むものではないが、本発明者らは、乾燥により、未反応の硬化性二重結合が互いに近くに移動し、それにより硬化での架橋の可能性が高まることを示唆している。この第2硬化工程はUV硬化によって行うことができるが、他の方法、例えば、EB硬化もしくは他の放射線源、例えば、上述のものも適切である。UV硬化を第2硬化に適用する場合、光開始剤の少なくとも一部が第1硬化工程の後に反応性形態で留まる必要がある。他方、最終的に本質的にすべての光開始剤が反応していることが重要であり、これは残留する光開始剤がエージングのために膜の黄変を導くことがあり、それが特定の用途には望ましくないためである。これは処方における光開始剤の初期濃度を調整することによって容易に達成することができる。または、第2硬化用の光開始剤を、例えば含浸により別に添加する。
【0061】
乾燥状態の膜の第2硬化の代わりに、湿ったままで膜を硬化させることができる。実行する方法の1つは、第1硬化の後に、中間の乾燥工程なしで、第2硬化を短時間行うことである。他の方法は、乾燥した膜を1種類以上の成分、例えば、界面活性剤を含有し得る液体で予備湿潤することである。この手順の利点は、湿潤状態で、膜が適用される液体中で膨潤可能であるとき、硬化時に膜構造が変化することである。したがって、膜が膨潤状態にあるときに第2硬化工程を実施することにより、多孔性としての特性を改変することができる。この方法により、構造の調整が初期硬化工程の後に可能なままであるため、より広い範囲の材料およびプロセス条件が適切なものとなる。両硬化工程の間において含浸を行うことができる。含浸により、第1硬化工程の硬化性組成物と非常に良好に適合しない化合物を膜に導入することができる。第1硬化後の膜の構造が既に良好であるとき、第2硬化は不必要であり、含浸後の乾燥だけで十分である。しかしながら、含浸によって導入された化合物をマトリックスに固定することが望ましいとき、第2硬化工程は架橋の好ましい方法である。好ましくは、含浸工程を実施する前に膜を部分的に乾燥させる。部分的な乾燥により、含浸、例えば、コーティング、噴霧もしくは浸漬によって導入された化合物は膜内により深く浸透することができる。部分的な乾燥により、溶媒の一部、例えば、25%もしくは50%が除去され、いくつかの場合には、80%までの溶媒が含浸の前に除去される。良好なプロセス設計を用いることで、2回を超える硬化工程は一般には改善された特性を生じることはないが、特定の環境、例えば、限られたUV強度は多数回の硬化を有益なものとし得る。
【0062】
好ましくは、第2硬化工程における露光量は、ハイ・エナジーUVラジオメータ(EIT−インスツルメント・マーケッツ(Instrument Markets)製の商標UVパワー・パック(UV Power Pack)による、その装置によって指示されるUV−B範囲での測定で、80〜300mJ/m2、より好ましくは、100〜200mJ/m2である。
【0063】
多孔性膜は1種類以上の非硬化性水溶性ポリマーおよび/もしくは1種類以上の、放射線の露光によって架橋しない親水性ポリマーを含むこともできる。非硬化性水溶性ポリマーは硬化の前に硬化性化合物混合物に添加するか、もしくは硬化後に硬化した膜に塗布することができる。
【0064】
非硬化性水溶性ポリマーに加えて、層中の非硬化性水溶性ポリマーの量に対して、20wt.%まで、好ましくは0.5〜5wt.%の架橋剤を添加することができる。適切な架橋剤は欧州特許出願公開第1 437 229号(EP−A−1 437 229)に記載される。架橋剤は単独で、もしくは組み合わせて用いることができる。
【0065】
一実施形態においては、少なくとも1種類が硬化性化合物混合物である、少なくとも2種類の混合物を基体上にコートするが、これは、硬化および乾燥の後、少なくとも1つの最上層および、最上層よりも基体に近い、少なくとも1つの最下層を含む膜を生じる。少なくとも最上層、および、好ましくは最下層も、本発明の多孔性膜を含む。2層膜構造については、最下層は、好ましくは3〜50μm、好ましくは7〜40μm、最も好ましくは10〜30μmの乾燥厚を有し、最上層は、好ましくは1〜30μm、好ましくは2〜20μm、最も好ましくは4〜15μmの乾燥厚を有する。
【0066】
別の実施形態においては基体を少なくとも3つの層でコートし、そのうちの少なくとも1つの層、好ましくは、最上(外)層は硬化性化合物混合物を含む。硬化性組成物を基体に塗布し、硬化および乾燥させた後、少なくとも3つの層を含む膜が形成され、それら3つ層は、乾燥厚3〜50μm、好ましくは5〜40μm、最も好ましくは7〜30μmの少なくとも1つの最下層、乾燥厚1〜30μm、好ましくは2〜20μm、最も好ましくは3〜15μmの少なくとも1つの中間層、および、中間層の上部に、少なくとも1つの最上層を含む。最上層は、好ましくは10μm未満、好ましくは0.1〜8μm、最も好ましくは0.4〜4μmの乾燥厚を有する。
【0067】
好ましい実施形態においては、基体を2、3以上の硬化性化合物混合物でコートし、これにより、硬化および乾燥の後、すべての層が本発明の多孔性膜を含む層である記録媒体を得る。該混合物が有する組成は、達成しようとする結果に依存して、同じであっても異なっていてもよい。さらに、硬化性化合物混合物は同時にコートした後に硬化させても、連続的にコートして硬化させてもよい。連続的は、第1混合物をコートした後に硬化させ、次いで、第2混合物をコートして硬化させ、以下同様に続くことを意味する。後者の状況においては、第2混合物の少なくとも一部が第1層に浸入するものと思われ、したがって、生じる膜の細孔が塞がれないように注意しなければならない。
【0068】
好ましくは、本発明の多孔性膜を含む最上層および中間層は、水性溶媒を吸収することができる(多孔性)有機もしくは無機粒子を本質的に含まない。より好ましくは、多孔性膜は粒子を本質的に含まない。本質的に含まないは、ここでは、粒子の量および位置が、光沢もしくは色密度に有意の減少がないようなものを意味する。0.1g/m2未満の量を本質的に含まないものとみなす。好ましくは、すべての多孔性層が粒子を本質的に含まない。例外はマット剤であり、これは滑らかすぎる表面によって生じる取り扱い上の問題、例えば、ブロッキングを防止するために添加されるものであり、好ましくは、媒体の最上層に少量添加される。通常、多孔性層(1以上)の総固体含有量の0.5%未満がマット剤によって形成される。
【0069】
いくつかの印刷されたインクジェット媒体を積み重ねるとき、最上層にマット剤(ブロッキング防止剤として知られている)を添加して摩擦を低減し、かつ画像の移行を防止することが望ましいものであり得る。非常に適するマット剤は1〜20μm、好ましくは、2〜10μmの粒子サイズを有する。マット剤の量は0.005〜1g/m2、好ましくは、0.01〜0.4g/m2である。ほとんどの場合において、0.1g/m2未満の量で十分である。マット剤は、水性組成物中に分散させることができる無機もしくは有機物質の粒子と定義することができる。無機マット剤には、酸化物、例えば、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化マグネシウムおよび酸化アルミニウム、アルカリ土類金族塩、例えば、硫酸バリウム、炭酸カルシウムおよび硫酸マグネシウム並びにガラス粒子が含まれる。有機マット剤には、デンプン、セルロースエステル、例えば、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースエーテル、例えば、エチルセルロースおよび合成樹脂が含まれる。合成樹脂は水不溶性もしくはわずかに可溶性のポリマーであり、これにはアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエステル、例えば、ビニルアセテート、アクリロニトリル、オレフィン、例えば、エチレンもしくはスチレンのポリマー並びに上記モノマーと他のモノマー、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α、β−不飽和ジカルボン酸、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、スルホアルキル(メタ)アクリレートおよびスチレンスルホン酸とのコポリマーが含まれる。さらに、ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、フェノール樹脂、ポリビニルカルバゾールもしくは塩化ポリビニリデンを用いることができる。これらのマット剤は単独で、もしくは組み合わせて用いることができる。
【0070】
通常、多孔性膜は、マトリックスの多孔性構造のため、不透明な外観を有する。研究により、外層(1以上)が幾らか透明であるとき、より高い画像密度を得ることができることが明かとなった。これは、外層の構造を、多孔性を少なくするような方法で修正することによって達成することができる。多孔性の少ない最上層のさらなる利点はより良好な光沢である。溶媒吸収速度がとりわけ多孔性に依存するため、このより透明な最上層は幾分薄いことが好ましい。より透明な層の厚みは、通常、コートされたままの最上層の厚みと一致しないため、この層は最上領域と呼ぶことがより正確であり得る。最上領域の透明性の画像密度に対する効果の大部分は、着色剤が膜の上層内に固定され、着色剤が下層に拡散することが妨げられるときに得られる。固定は、膜に媒染機能性を組み込むことによって達成することができる。例えば、硬化性媒染剤を硬化性組成物に添加することができ、もしくは非硬化性である媒染剤を添加することができる。媒染剤は、好ましくは、外層(1以上)、例えば、最上層および/もしくは最上層直下の層に添加する。好ましくは、媒染剤はカチオン性であり、これはそれらをアニオン性着色剤と複合体を形成するのに適するものとし、かつ有機物であっても無機物であってもよい。有機および無機媒染剤は、独立に単独で、もしくは互いに組み合わせて用いられてもよい。媒染剤を外層内に固定するのに非常に適する方法は、負電荷を外層内に、例えば、アニオン性硬化性化合物を硬化性組成物において適用することによって導入することである。
【0071】
上述のカチオン性媒染剤は、好ましくは、一級から三級のアミノ基もしくは四級アンモニウム塩をカチオン性基として有するポリマー性媒染剤である。カチオン性非ポリマー性媒染剤を用いることもできる。そのようなポリマー性媒染剤は、好ましくは、一級から三級のアミノ基もしくはそれらの塩または四級アンモニウム塩基を有するモノマー(媒染性モノマー)のホモポリマーに加えて、そのような媒染性モノマーと他のモノマー(以下、非媒染性モノマーと呼ぶ)とのコポリマーもしくは縮合ポリマーである。そのようなポリマー性媒染剤は、水溶性ポリマーもしくは水分散性ラテックス粒子、例えば、ポリウレタンの分散液のいずれかの形態であり得る。適切な媒染性モノマーは、例えば、1つ以上の硬化性基、例えば、ビニル、(ジ)アリル、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミドおよび(メタ)アクリロイル基を含む、アルキル−もしくはベンジルアンモニウム塩である。
【0072】
上述の非媒染性モノマーは、塩基性もしくはカチオン性部分、例えば、一級から三級のアミノ基もしくはその塩または四級アンモニウム塩を含有せず、かつインクジェット印刷インクに含有される染料との相互作用を全く示さないか、もしくは実質的にわずかしか示さないモノマーである。そのような非媒染性モノマーは、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、アラルキルエステル、芳香族ビニル、ビニルエステル、アリルエステルであり得る。上記に列挙される非媒染性モノマーのいずれをも単独で、もしくは互いに組み合わせて用いることができる。
【0073】
有機媒染剤は、好ましくは、重量平均分子量が100000以下であるポリアミンもしくはポリアリルアミンおよびその誘導体である。ポリアミンもしくはその誘導体はあらゆる既知のアミンポリマーおよびその誘導体であり得る。そのような誘導体は、例えば、ポリアミンと酸との塩(酸は、例えば、無機酸、例えば、塩酸、硫酸、リン酸および硝酸、有機酸、例えば、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、酢酸、プロピオン酸、ケイ皮酸、(メタ)アクリル酸等、それらの組み合わせ、もしくはアミンの一部が塩に変換されているものであり得る)、ポリマー反応によって得られるポリアミンの誘導体、ポリアミンと他の共重合性モノマーとのコポリマー(そのようなモノマーは、例えば、(メタ)アクリレート、スチレン、(メタ)アクリルアミド、アクリロニトリル、ビニルエステル等であり得る)であり得る。
【0074】
無機媒染剤を媒染剤として用いることも可能であり、これには多価水溶性金属塩もしくは疎水性金属塩化合物が含まれる。本発明の無機媒染剤は、好ましくは、アルミニウム含有化合物、チタン含有化合物、ジルコニウム含有化合物、周期律表IIIB族系列の金属の化合物(塩もしくは錯体)である。特定の多価金属イオンは凝集剤であることが既知である。周知例は、アルミニウムおよび鉄(III)塩、例えば、ポリ(塩化アルミニウム)および両イオンの硫酸塩である。これらの化合物も媒染剤として適用することができる。高濃度では、これらの化合物は、他の化合物の存在下、水溶液中で凝集することがあるが、低濃度では透明溶液としての適用が可能である。
【0075】
媒染剤の量は、好ましくは0.01〜5g/m2、より好ましくは0.1〜3g/m2である。
【0076】
媒染剤が比較的小さい分子である場合、媒染剤もしくは媒染剤−着色剤複合体がその層もしくは他の層内で拡散し、鮮明さの低下を生じることがある。この問題は長期滲み(long term bleeding)とも呼ぶ。媒染剤分子の拡散を防止する非常に良い方法は、負電荷を多孔性膜のポリマーマトリックスに組み込むことである。好ましくは、負電荷を坦持する硬化性化合物を硬化性組成物に添加する。これらの負に荷電した硬化性化合物の例は、スルホン酸もしくはカルボン酸もしくはリン酸基を有するエチレン性不飽和化合物またはそれらの金属(もしくはアンモニウム)塩である。スルホン酸誘導体が、媒染剤とのより強力な結合のため、より好ましい。例えば、(メタ)アクリル酸−(スルホアルキル)エステル、例えば、スルホプロピルアクリル酸およびスルホプロピルメタクリル酸、(メタ)アクリル−(スルホアルキル)アミド、例えば、2−アクリロイルアミド−2−メチルプロパン−1−スルホン酸、スチレンスルホン酸、イタコン酸−(アルキルスルホン酸)エステル、イタコン酸−ビス−(アルキルスルホン酸)エステル、マレイン酸−(アルキルスルホン酸)エステル、マレイン酸−ビス−(アルキルスルホン酸)エステル、アルキルスルホン酸アリルエーテル、メルカプト化合物、例えば、メルカプトアルキルスルホン酸、およびそれらの金属/アンモニウム塩。適用するとき、これらの負に荷電した硬化性化合物は、好ましくは、硬化性組成物中の硬化性化合物の重量に対して、30wt.%の量まで、より好ましくは0.5〜10wt.%の量で、最も好ましくは1〜5wt.%添加される。wt.%によるよりも、導入された負電荷は当量で表すことがよく、これは、モノマー分子が2つ以上の負に荷電した基を含有することがあり、かつモノマーのMWが大きく変化し得るためである。好ましくは、本発明の多孔性膜は、m2あたり10ミリ当量(meq)までで、最小が0.1meq/m2、より好ましくは0.3〜5meq/m2、最も好ましくは0.5〜3meq/m2を含む。負に荷電した化合物は1つの組成物もしくは2層以上の組成物に添加することができる。
【0077】
特に好ましいものは、1つ以上の官能性チオール基を含むアニオン性硬化性化合物である。これらの化合物は、次に、酸素阻害に対する鋭敏性に劣り、かつ膜の構造に対する顕著な効果を有することが既知である連鎖移動剤として作用する。多孔性が小さく、表面はより滑らかになる。驚くべきことに、連鎖移動剤が適用されるとき、比較的少量でさえ画像密度が増加する。連鎖移動剤の使用のさらなる利点は、硬化後の膜の表面の粘着性が少なくなり、その構造がより硬くなることである。例には、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、アルキルメルカプトプロピオネート、メルカプト−プロピルスルホネート、エチルジチオカルボナト−S−スルホプロピルエステル、ジメルカプトプロパンスルホネートおよびメルカプトベンゾイミダゾールスルホネートが含まれる。
【0078】
または、非イオン性である連鎖移動剤を、負に荷電した硬化性化合物に加えて、もしくはそれに代えて添加し、構造および表面特性に対する類似の効果を得る。適切な物質を含む化合物のクラスは、メルカプタン、ポリメタクリレート、ポリハロアルカン、ベンゾキノン、オキシム、アントラセン、ジスルフィド、塩化スルホニル、スルホキシド、ホスフィン、アルキルアニリン、アルキルアミンおよび金属化合物(例えば、アルミニウム、鉄、コバルト、銅塩もしくは錯体)である。好ましい化合物は、メルカプトエタノール、メルカプトエチルエーテル、メルカプトベンゾイミダゾール、エチルジチオアセテート、ブタンチオール、ジメチルジスルフィド、テトラブロモメタン、ジメチルアニリン、エチレンジオキシジエタンチオールおよびトリエチルアミンである。
【0079】
連鎖移動剤の特別なクラスはいわゆるRAFT剤(RAFT=可逆的付加−開裂型連鎖移動)である。このRAFT反応は制御されたラジカル重合であり、一般には、非常に狭い分子量分布を導く。適切なRAFT剤には、式 R1−C(=S)−S−R2のジチオエステル基、式 R1−O−C(=S)−S−R2のキサンテート基、もしくは式 R1−S−C(=S)−S−R2のチオキサンテート(トリチオカルボネート)基、式 R1−NR−C(=S)−S−R2のジチオカルバメート基が含まれる。式中、R、R1およびR2はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基もしくはアレニル基から選択される。例は、エチルジチオアセテート、ベンジルジチオベンゾエート、クミルジチオベンゾエート、ベンジル1−ピロールカルボジチオエート、クミル1−ピロールカルボジチオエート、o−エチルジチオカルボナト−S−(3−スルホプロピル)エステル、N,N−ジメチル−S−チオベンゾイルチオプロピオンアミド、N,N−ジメチル−S−チオベンゾイルチオアセトアミド、トリチオカルボネートおよびジチオカルバメートである。
【0080】
連鎖移動剤はいわゆる連鎖移動定数によって特徴付けることができ、これは好ましくは0.1を上回り、より好ましくは1.0を上回る。0.1未満の移動定数については、達成される効果は全くないか、もしくは非常に限られたもののみである。最適量は硬化性組成物の組成、連鎖移動剤のタイプ(反応性)および照射量に非常に依存し、したがって、最適濃度は個別で決定しなければならない。高レベルの連鎖移動剤では、その化合物が支持体に隣接する層内にある場合、接着の問題が生じ得ることが見出された。多層膜を製造するとき、連鎖移動剤は、好ましくは、画像密度に対する効果が最高であるものと期待される最上層内に存在する。非常に高いレベルでは架橋反応が非常に遅れることがあり、高密度非多孔性層が生じるか、もしくは依然として未硬化である層さえも生じる。好ましくは、連鎖移動剤は、硬化性化合物1gあたり0.001〜1.0mmolの量で存在する。大部分の化合物については、好ましい範囲は、硬化性化合物1gあたり0.005〜0.1mmolである。膜が2層以上からなる場合、記述される範囲は連鎖移動剤を含む層(1以上)に適合する。
【0081】
適切な着色剤固定化特性には、負に荷電した着色剤分子と結合することができる正電荷を過剰に有することが重要である。好ましくは、アニオン性硬化性化合物中に存在する負電荷およびカチオン性化合物(例えば、媒染剤)中に存在する正電荷の比は少なくとも1:1、より好ましくは、1:2〜1:10である。
【0082】
膜が製造された後に正電荷の余剰が全くないか、もしくは余剰が染料を高印刷密度で固定するのに不十分である場合、さらなるカチオン性化合物を、膜が形成された後に、次の工程で、例えば、含浸によって添加することができる。したがって、最初に硬化性組成物中で、アニオン性硬化性化合物中に存在する負電荷およびカチオン性化合物中に存在する正電荷の比は1を上回って、例えば、2:1であってもよい。好ましくは、この比は、上述のような次工程において、より多くのカチオン性電荷の導入によって減少する。
【0083】
一般には、インクから着色剤(染料)を固定するのに媒染剤を適用する。カラープリンタにおいては少なくとも3種類の着色剤が用いられ、かつ多くのブランドのインクが存在するため、通常、すべての着色剤を固定するのに媒染剤の組み合わせが必要である。理想的には、そのような媒染剤の混合物は存在するすべての染料を固定可能である。または、特定のタイプのインクに専用の媒体を開発することで、すべてのタイプのインクに適する媒体を用いるよりも高い品質を実現することもできる。
【0084】
また、上述の非硬化性水溶性ポリマーを含浸によって多孔性膜に導入することもできる。
【0085】
1種類以上の硬化性組成物に添加することができるか、もしくは含浸によって含むことができる他の添加物は、UV吸収剤、増白剤(brightening agent)、酸化防止剤、光安定化剤、ラジカルスカベンジャー、ブレ防止剤(anti−blurring agents)、帯電防止剤並びに/またはアニオン性、カチオン性、非イオン性および/もしくは両性界面活性剤である。
【0086】
適切な蛍光増白剤は、例えば、RD11125、RD9310、RD8727、RD8407、RD36544およびUllmann’s Encyclopedia of industrial chemistry (Vol.A18 p153−167)に開示され、チオフェン、スチルベン、トリアジン、イミダゾロン、ピラゾリン、トリアゾール、ビス(ベンゾキサゾール)、クマリンおよびアセチレンが含まれる。本発明において用いるのに好ましい蛍光増白剤は水溶性であり、ジスチリルベンゼン、ジスチリルビフェニル、ジビニルスチルベン、ジアミノスチルベン、スチルベニル−2H−トリアゾール、ジフェニルピラゾリン、ベンゾイミダゾールおよびベンゾフランのクラスから選択される化合物が含まれる。好ましい実施形態において、蛍光増白剤はカチオン性であり、マトリックス中に存在する陰性部位によって捕獲される。これらの薬剤の有効な適用方法は上述のような含浸によるものである。正に荷電した蛍光増白剤は、好ましくは、それらが最大の効果を有する多孔性膜の最上領域において捕獲される。したがって、膜の完全層(もしくは、多層膜の場合には、すべての層)を通過して拡散する傾向にあるアニオン性薬剤と比較して少量で十分である。適切なカチオン性蛍光増白剤の商業的に入手可能な例は、商標ブランコフォア(Blankophor)ACR(バイエル(Bayer))および商標ロイコフォア(Leucophor)FTS(クラリアント(Clariant))である。
【0087】
白色性はCIELAB色モデルのb値によって適切に表される。CIE L**b(CIELAB)は人間の目に見えるすべての色を記述するのに通常用いられる色モデルである。それは、この特定の目的のため、国際照明委員会(International Commission on Illumination)(Commission Internationale d’Eclairage、したがって、CIEがその名称における頭字語である)によって開発された。このモデルにおける3つのパラメータは、色の輝度((L、最小のLは黒を表す)、赤および緑の間のその位置(a、最小のaは緑を表す)および黄および青の間のその位置(b、最小のbは青を表す)を表す。極めて白色の膜については小さいb値が好ましく、−5〜−8の値が非常に明るい白色の外観を示す。比較的大きい値(−4以上)はより黄色がかった色を示し、好ましさに劣る。小さい値(−8以下)を有する膜は青みがかる傾向にあり、一般には好ましさに劣る。蛍光増白剤の量は、好ましくは、1g/m2未満、より好ましくは、0.004〜0.2g/m2、最も好ましくは、0.01〜0.1g/m2である。
【0088】
さらに、多孔性膜は1種類以上の光安定化剤、例えば、立体的ヒンダードフェノール、立体的ヒンダードアミン並びに英国特許出願公開第2088777号(GB2088777)、RD30805、RD30362およびRD31980に開示される化合物を含むことができる。特に適するものは、国際公開第02/55618号(WO−A−02/55618)に開示される水溶性置換ピペリジニウム化合物並びにCGP−520(スイスのチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals))およびチソーブ(Chisorb)582−L(台湾のダブル・ボンド・ケミカル(Double Bond Chemical))のような化合物である。他の添加物は、達成しようとする目的に従って、1種類以上の可塑剤、例えば、(ポリ)アルキレングリコール、グリセロールエーテルおよび低Tg値を有するポリマーラテックス、例えば、ポリエチルアクリレート、ポリメチルアクリレート等、並びに、例えば欧州特許出願公開第1 437 229号(EP−A−1 437 229)および欧州特許出願公開第1 419 984(EP−A−1 419 984)並びに国際公開第2005/032832号(WO−A−2005/032832)、国際公開第2005/032834号(WO−A−2005/032834)および国際公開第2006/011800号(WO−A−2006/011800)に記載される、1種類以上の通常の添加物、例えば、酸、殺生物剤、pH制御剤、保存剤、粘度調整剤、c.p.安定化剤、分散剤、阻害剤、ブレ防止剤、消泡剤、カール防止剤、耐水性付与剤(water resistance−imparting agents)等であり得る。
【0089】
上記添加物(UV吸収剤、酸化防止剤、ブレ防止剤、可塑剤、通常の添加物)は当業者に既知のものから選択することができ、好ましくは、0.01〜10g/m2の範囲で添加することができる。上述の成分のいずれもを単独で、もしくは互いに組み合わせて用いることができる。それらは水に可溶化した後に添加し、分散させ、ポリマー分散させ、乳化し、油滴に変換し、もしくはマイクロカプセルに封入することができる。
【0090】
高強度UV光を硬化性組成物の架橋に適用するとき、UVランプ(1以上)によって熱が生じる。多くのシステムにおいて、ランプの過熱を防止するのに空気による冷却が適用される。それでもやはり、相当な量のIR光がUVビームと共に照射される。一実施形態においては、コートされた支持体の加熱を、IR反射石英版をUVランプ(1以上)とUVランプ(1以上)の下に誘導されるコートされた層との間に配置することによって低減する。
【0091】
この技術を用いることで、200m/分まで、もしくはさらに高速、例えば、300m/分以上のコーティング速度に到達することができる。所望の線量に到達させるには、連続する2つ以上のUVランプが必要となることがあり、それによりコートされた層が2つ以上のランプで連続的に露光される。2つ以上のランプを適用するとき、すべてのランプが等しい線量をもたらしても、各々のランプが個別の設定を有しもよい。例えば、第1ランプが第2以降のランプよりも大きい線量をもたらしてもよく、もしくは第1ランプの露光強度がより小さくてもよい。驚くべきことに、一定の線量では、相対強度が有する、多孔性および構造に影響を及ぼす、光重合反応に対する効果はわずかであるものと思われた。露光条件を変化させることにより、当業者は、達成されることを望む特性に依存して、それらのプロセスの最適設定を決定することができる。
【0092】
本発明を静止した支持体表面を用いてバッチ式で実施することが可能であるが、本発明の利点を十分に得るには、移動する支持体表面、例えば、ロール駆動連続ウェブもしくはベルトを用いて連続式に実施することが極めて好ましい。そのような装置を用いることで、硬化性組成物を連続式で製造するか、もしくは大バッチ式で製造し、その組成物を駆動連続ベルト支持体表面の上流端に連続的に注ぐか、もしくは他の方法で適用することができ、照射源は組成物適用ステーションの下流のベルトの上部に位置し、かつ膜除去ステーションはベルトのさらに下流にあり、膜はそれらの連続シートの形態で除去される。膜からの溶媒の除去は膜をベルトから取り出す前後のいずれかにおいて達成することができる。この実施形態および多孔性膜を支持体表面から除去することが望ましいすべての他のものについては、当然ながら、支持体表面がそれらからの膜の除去を可能な限り容易にするようなものであることが好ましい。そのような実施形態の実施に有用な支持体表面の典型は、平滑ステンレス鋼シートまたは、さらに良好なものは、テフロン(登録商標)もしくはテフロン(登録商標)コート金属シートである。連続ベルトを用いるよりは、支持体表面は消耗材料、例えば、剥離紙等(しかしながら、溶媒に可溶性ではない)のものあって、溶液適用ステーションの上流で連続駆動される長さに従ってロールから連続的に広げられ、かつ多孔性膜を載せて照射ステーションの下流で再巻き取りされるようにそれらのロールの形態にあるものであり得る。
【0093】
多孔性シートもしくは繊維ウェブ上のコーティングとしての、もしくはそれによって混合および支持される、溶液の薄層を形成し、その多孔性シートもしくは繊維ウェブには生じる膜が結合したままであり、かつそれが例えば、多孔性膜の増強補強もしくは裏打ちとして機能し得ることも本発明の範囲内である。多孔性膜が形成されるそのような多孔性支持体表面は、当然ながら、用いられる溶媒に不溶性である材料のものでなければならない。そのような実施形態の実施に用いることができる多孔性支持体表面の典型は、紙、織布もしくは不織布等である。
【0094】
多孔性膜が固体支持体から分離されることがなく、一緒に結合したその2つが望ましい最終製品である実施形態も認められる。そのような実施形態の例はポリエステルフィルム支持多孔性膜であり、これは電気泳動分離、画像用の記録媒体として用いられる透明もしくは不透明シートに取り付けられる膜等において用いられる。
【0095】
支持体としては、透明材料、例えば、プラスチックで構成される透明支持体および不透明材料、例えば、紙で構成される不透明支持体のいずれをも用いることができる。ほとんどの膜用途については、支持体は−存在するのであれば−流体もしくは気体の通過が許容されるように多孔性でなければならない。これらの多孔性支持体は紙、織布もしくは不織布であり得る。不織布の例は、セルロース、ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレン等をベースとする材料である。
【0096】
記録媒体用の透明支持体において用いることができる材料としては、透明であり、かつオーバーヘッド・プロジェクション(OHP)およびバックライト・ディスプレイにおける使用時に照射される熱に耐える性質を有する材料が好ましい。これらの材料の例には、ポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、トリアセテートセルロース(TAC)、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミド等が含まれる。支持体として用いることができる他の材料は、ガラス、ポリアクリレート等である。とりわけポリエステルが好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0097】
透明支持体の厚みは特に限定されるものではないが、50〜200μmが取り扱い特性の観点から好ましい。
【0098】
高い光沢を有する不透明支持体としては、少なくとも5%、好ましくは15%以上の光沢を有する、着色剤受容層が付与される表面を有する支持体が好ましい。光沢は、75°で支持体の鏡面光沢を試験する方法に従って得られる値である(TAPPI T480)。
【0099】
実施形態には、高い光沢を有する紙支持体、例えば、樹脂コート(RC)紙、アート紙において用いられるバライタ紙、コート紙、キャストコート紙、銀塩写真用紙に用いられる支持体等、不透明プラスチックフィルム、例えば、ポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、セルロースエステル、例えば、ニトロセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミド等(これらはカレンダー処理を施された表面を有していてもよい)を白色顔料等を含有することによって製造することにより高い光沢を有するフィルム、または、白色顔料を含有し、もしくは含有しないポリオレフィンの被覆層が前述の様々な紙支持体、前記透明支持体もしくは白色顔料を含有するフィルムの表面上に付与されている支持体等が含まれる。適切な実施形態の例には、白色顔料含有発泡ポリエステルフィルム(例えば、オレフィン微粒子を含有し、かつ伸長によって空隙が形成される発泡PET)が含まれる。
【0100】
不透明支持体の厚みは特に限定されるものではないが、50〜300μmが取り扱い特性の観点から好ましい。
【0101】
既述のように、記録媒体の重要な特性は光沢である。光沢は、Dr.ランゲ・レフォ(Dr.Lange Refo)3−D反射率計による測定で、好ましくは、20°で20%を上回り、より好ましくは30%を上回る。用いられる支持体の適切な表面粗さを選択することによって媒体の光沢を改善できることが見出されている。1.0μm未満、好ましくは0.8μm未満のRa値によって特徴付けられる表面粗さを有する支持体を提供することで、非常に光沢のある媒体を得ることができることが見出された。小さい値のRaは滑らかな表面を示す。Raは、DIN4776に従い、UBM装置、ソフトウェア・パッケージ・バージョン1.62を用いて、以下の設定で測定される。
(1)点密度500P/mm、(2)面積5.6×4.0mm2、(3)カットオフ波長0.80mm、(4)速度0.5mm/秒。
【0102】
紙を本発明の支持体として用いる場合、その紙は高品質印刷用紙において通常用いられる材料から選択する。一般には、それは天然木材パルプをベースとし、所望であれば、充填剤、例えば、タルク、炭酸カルシウム、TiO2、BaSO4等を添加することができる。一般には、紙は内部サイズ剤、例えば、アルキルケテンダイマー、高級脂肪酸、パラフィンワックス、アルケニルコハク酸、例えば、キメン、エピクロロヒドリン脂肪酸アミド等も含有する。さらに、紙は湿潤および乾燥強度増強剤、例えば、ポリアミン、ポリ−アミド、ポリアクリルアミド、ポリ−エピクロロヒドリンもしくはデンプン等を含有することもできる。紙中のさらなる添加物は、固定化剤、例えば、硫酸アルミニウム、デンプン、カチオン性ポリマー等であり得る。標準グレード原紙のRa値は、通常、2.0μm未満であり、典型的には、1.0〜1.5μmの値を有することができる。本発明の多孔性層もしくはそのうちの少なくとも1つが本発明の多孔性層を含む複数の層をこの原紙に直接適用することができる。
【0103】
1.0μm未満のRa値を有する原紙を得るため、標準グレード原紙を顔料でコートすることができる。あらゆる顔料を用いることができる。顔料の例は、カルシウム−カーボネート、TiO2、BaSO4、粘土、例えば、カオリン、スチレン−アクリルコポリマー、Mg−Al−シリケート等もしくはそれらの組み合わせである。その量は、0.5〜35.0g/m2、より好ましくは、2.0〜25.0g/m2である。紙は片側もしくは両側をコートすることができる。前述の量は片側にコートされる量である。両側をコートする場合、総量は、好ましくは、4.0〜50g/m2である。この顔料コーティングは、水中の顔料スラリーとして、適切な結合剤、例えば、スチレン−ブタジエンラテックス、スチレン−アクリレートラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエンラテックス、ポリビニルアルコール、修飾デンプン、ポリアクリレートラテックスもしくはそれらの組み合わせと共に、当分野において既知のあらゆる技術、例えば、ディップコーティング、ロールコーティング、ブレードコーティング、バーコーティング、サイズプレスもしくはフィルムプレスによって適用することができる。顔料コート原紙は、所望によりカレンダー処理することができる。用いられる顔料の種類並びに顔料およびカレンダー処理の組み合わせは表面粗さに影響を及ぼし得る。顔料コート原紙基体は、好ましくは、0.4〜0.8μmの表面粗さを有する。表面粗さがスーパーカレンダー処理(super calendering)によって0.4μm未満の値までさらに低下する場合、一般には、厚みおよび剛度の値が幾分小さくなる。
【0104】
多孔性層もしくはそのうちの少なくとも1つが本発明の多孔性層を含む複数の層をこの顔料コート原紙に直接適用することができる。
【0105】
別の実施形態においては、顔料付与(pigmented)最上面および背面を有する顔料コート原紙であって、少なくとも最上面に高温同時押出によるポリマー樹脂を有し、それが積層顔料コート原紙をもたらす顔料コート原紙が提供される。典型的には、この(同時)押出法における温度は280℃を上回るが350℃未満である。用いられる好ましいポリマーはポリオレフィン、特には、ポリエチレンである。好ましい実施形態においては、最上面のポリマー樹脂は、積層顔料コート原紙の白色性を改善するため、不透明白色顔料、例えば、TiO2(アナターゼもしくはルチル)、ZnOもしくはZnS、染料、着色顔料(青味剤、例えば、ウルトラマリーンもしくはコバルトブルー)、接着促進剤、蛍光増白剤、酸化防止剤のような化合物を含む。白色顔料以外を用いることにより、様々な色の積層顔料コート原紙を得ることができる。積層顔料コート原紙の総重量は、好ましくは、80〜350g/m2である。この積層顔料コート原紙は非常に良好な平滑性を示し、多孔性層もしくは多孔性層含む複数の層もしくは本発明の複数の層を適用された後、優れた光沢を有する記録媒体を生じる。
【0106】
他方、製造しようとする製品に依存して、当分野において周知であるようなマット表面もしくはシルキー表面を有するポリエチレンコート紙を用いることができる。そのような表面は、ポリエチレンを紙基体上に押し出す際にエンボス処理を行うことによって得られる。
【0107】
上述の説明から明らかなように、本発明の多孔性層を含む記録媒体は支持体上に付与された単層であっても多層であってもよい。非多孔性であり、かつ多孔性層の下に位置する層を含むこともできる。
【0108】
本発明の多孔性層(1以上)を含む媒体は、好ましい細孔径および多孔性が得られる限り、1つの単一工程でも連続する工程でもコートすることができる。
【0109】
コーティング方法としては、あらゆる方法を用いることができる。例えば、カーテンコーティング、押出コーティング、エアナイフコーティング、スライドコーティング、ロールコーティング法、逆ロールコーティング、ディップコーティング、ロッドバーコーティング。このコーティングは、用いられる実施形態によって、同時にでも連続的にでも行うことができる。高速コーティング機において用いるのに十分な流動性の組成物を生成するため、粘度は25℃で4000mPa.sを超えないことが好ましく、より好ましくは、25℃で1,000mPa.sを超えるべきではない。
【0110】
上記支持体材料の表面にコーティングを付与する前に、湿潤性および接着性を改善する目的で、この支持体にコロナ放電処理、グロー放電処理、炎熱処理、紫外線照射処理等を施すことができる。
【0111】
記録媒体として用いるとき、本発明の膜は多くの記録用途に用いることができ、したがって、例えば、ジクレー印刷、カラーコピー、スクリーン印刷、グラビア、染料昇華(dye−sublimation)、フレキソ印刷、インクジェット等の技術を用いることによって高品質画像を創出するのに適する記録媒体を提供することは本発明の範囲内である。
【0112】
(インクジェット)記録媒体における用途を除いて、多孔性膜は様々な他の用途において、例えば、水処理用の膜において、化学および石油化学産業において、塗料の電気コーティングにおける超濾過法用、食品産業において、例えば、チーズの製造プロセス、フルーツジュースの浄化およびビール製造において、有機溶媒用の高抵抗性膜が必要である医薬産業において、並びに、特にはタンパク質による汚染のための流量減少を回避する必要がある、バイオテクノロジー産業において利用法が見出される。ナノ濾過もしくは逆浸透に適する膜を、適切な成分およびプロセス条件を選択することによって製造することができる。本発明による多孔性膜の親水性は膜の汚染速度の著しい低下を生じることができ、それを通常の微量および限外濾過が適用されるすべての種類の他の用途に適するものとする。
【0113】
本発明を以下の非限定的な例によってより詳細に説明する。他に記載しない限り、すべての示される比および量は重量基準である。
【実施例】
【0114】
以下のコーティング溶液を室温で一定に攪拌しながら調製した。
3種類の試料を調製した。各々の試料には、3種類の異なる処方の各々をコーティング溶液に用いて、単一の層を支持体上にコートした。
【0115】
【表1】

【0116】
CN−132はクレイ・バレー(Cray Valley)によって供給されるアクリレートモノマーである。
CN−435はクレイ・バレー(Cray Valley)によって供給されるアクリレートモノマーである。
AAMPSAはシグマ・アルドリッチ(Sigma Aldrich)によって供給される2−アクリロイルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸モノマーである。
SPIはドイツのラシヒ(Raschig)によって供給されるイタコン酸のビス−(3−スルホプロピル)エステルの二カリウム塩である。
商標イルガキュア(Irgacure)2959はチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)によって供給される光開始剤である。
商標ゾニル(Zonyl)FSNはデュポン(SuPont)によって供給されるフルオロ界面活性剤である。
GMAはシグマ・アルドリッチ(Shigma Aldrich)によって供給されるグリシジルメタクリレートである。
【0117】
両面にポリエチレンが積層された写真グレード紙を支持体として用いた。
これらの溶液を、スライドコーティング機により、24m/分のコーティング速度で40cc/m2の量を塗布してコートした。
コーティングの1.2秒後、焦点を合わせて配置されたフュージョンUVシステムズ社(Fusion UV Systems Inc.)の商標ライト・ハマー(Light Hammer)6ランプを用いて、80%の強度でUV硬化を適用した。このプロセスの後、硬化した試料を40℃、8%RHで3分間乾燥させた。
【0118】
試料:
上述のように調製された3つの試料に、オーバーコーティング溶液を15cc/m2の量で塗布した。乾燥後、それらの試料の白色性を、ミノルタ(Minolta)CM1000色測定装置を用いて、CIELAB色モデルに従って決定した。CIELABモデルおいては、結果はL***として記載され、L*は反射光の量を示し、a*およびb*は色方向である。良好な白色性のためには、L*は可能な限り大きくなければならず、理論上、a*およびb*は、さらなる色をもたらさないよう、ゼロでなければならない。しかしながら、実際上は、幾らかより青みがかった白色が純粋な偏りのない白色よりも好ましい。蛍光増白剤の適用はb*値を低下させて負のb*値を生じ、これはより青みがかった白色を示す。最適b*値は用途および個人の好みに依存する。明るい白色のインクジェット紙をもたらすb*値の範囲は−5〜−8である。−5を上回る値はわずかに黄色がかっているものと考えられ、−8を下回る値は青みがかって好ましいものではない。
【0119】
【表2】

【0120】
ACRはチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)製の商標ブランコフォア(Blankophor)ACR、カチオン性蛍光増白剤である。
PPWはチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)製の商標ブランコフォア(Blankophor)PPW、アニオン性蛍光増白剤である。
【0121】
処方Aについては、カチオン性ACRが、特には1.0g/lの濃度で、アニオン性PPWよりも明らかに良好である。処方BおよびCはカチオン性蛍光増白剤でより良好な結果が得られるものと期待されるが、これは負電荷が膜のマトリックス中に組み込まれるためである。処方Bが最良の結果をもたらす。0.25g/l ACRのような低濃度でさえ良好な白色性が得られるのに対して、PPWは同じレベルに到達するのに1.0g/lを必要とする。処方Cについては、絶対値が処方Aよりも低く、その理由は未だに理解されていない。明らかに、マトリックス構造内のAAMPSAの組み込みはSPIの適用よりも良好な結果をもたらす。それらの相対値は処方Aに対して改善を示す。処方Bと比較すると、それらの差は目立ったほどではないが、依然としてカチオン性蛍光増白剤を適用する利点を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性膜の調製方法であって、
a.少なくとも1つのタイプの硬化性化合物および溶媒の混合物を提供する工程であって、硬化性化合物の濃度は20〜80重量パーセントであり、かつ前記溶媒の少なくとも30重量パーセントは水である工程と、
b.前記混合物を支持体に塗布する工程と、
c.前記硬化性化合物をフリーラジカル重合によって硬化させ、それにより架橋した硬化性化合物と溶媒との間で相分離を生じさせる工程と、
d.所望により行う、前記溶媒を乾燥および/または洗浄によって除去して多孔性膜を得る工程と、
e.前記多孔性膜に含浸溶液を含浸させる工程であって、前記溶液は、前記多孔性膜の化学的および/または物理的特性を改変するための少なくとも1種類のカチオン性化合物を含有する工程と、
を含む方法。
【請求項2】
前記膜が水性溶媒を吸収することができる無機または有機粒子を本質的に含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記含浸溶液中の前記カチオン性化合物の濃度が1〜20重量パーセントである、請求項1〜2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記含浸溶液が、カチオン性媒染剤、ポリエーテル修飾ポリシロキサン誘導体、界面活性剤およびそれらの組み合わせから選択される化合物を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
フリーラジカル重合を光開始剤の存在下におけるUV光による照射での硬化によって達成し、前記光開始剤が、好ましくは、α−ヒドロキシアルキルフェノン、α−アミノアルキルフェノン、α−スルホニルアルキルフェノン、アシルホスフィンオキシドまたはそれらの組み合わせである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記膜を、少なくとも2種類の硬化性化合物混合物を硬化させ、それにより少なくとも2つの層を有する膜を形成することによって調製する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
支持体および、前記支持体に接着する受容層としての、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる多孔性膜を含む記録媒体。
【請求項8】
前記受容層が、好ましくは0.004〜0.2g/m2の量の、少なくとも1種類のカチオン性蛍光増白剤を含む、請求項7に記載の媒体。
【請求項9】
前記膜がポリエーテル修飾ポリシロキサン誘導体を含む、請求項7〜8に記載の媒体。
【請求項10】
前記支持体がバックリット用途に適する透明支持体であり、かつポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリイミド、ポリカーボネートおよびポリアミドからなる群より選択される、請求項7〜9のいずれか一項に記載の媒体。
【請求項11】
前記支持体が反射性支持体であり、かつ紙支持体、プラスチックフィルムおよび所望により白色顔料を含有するポリオレフィンの被覆層を備える支持体からなる群より選択される、請求項7〜9のいずれか一項に記載の媒体。
【請求項12】
ジクレー印刷、カラーコピー、スクリーン印刷、グラビア、染料昇華、フレキソ印刷および/またはインクジェット印刷を用いる、それらへの画像または文字の印刷への、請求項7〜11のいずれか一項に記載の媒体の使用。

【公表番号】特表2009−503226(P2009−503226A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−524915(P2008−524915)
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【国際出願番号】PCT/NL2006/000405
【国際公開番号】WO2007/018423
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(505232782)フジフィルム マニュファクチャリング ユーロプ ビー.ブイ. (50)
【Fターム(参考)】