説明

多孔質ガラス被膜を表面に形成した容器

【課題】液体との接触面積に富む多孔質ガラス被膜を形成した陶磁器やガラス容器を提供する。
【解決手段】従来技術の問題点を鑑みて鋭意研究を重ねた結果、基材となる陶磁器またはガラス容器の全部または内表面一部に、液体との接触面積に富む相分離を利用して形成され、加熱時間をコントロールすることによりその細孔径を自由に設計することのできる多孔質ガラス被膜を形成することにより、酸化還元電位の高い水を手軽に低下させて利用できる容器に係る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスのミクロ相分離を利用して得られる多孔質ガラスを表面に被膜として施した陶磁器またはガラス容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水の酸化還元電位を低下させる方法として、例えば特許文献1のような還元水用粒状セラミックスなどを直接水中に沈めて改質する手段が一般的である。
【特許文献1】特開平11−043365公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1のようなセラミックスでは限られた容量の水と接触する面積には限界があり、セラミックスを多くすると本来利用目的の水容量が小さくなり、少ないセラミックスで大量の水を改質するとなると長時間を要するなど手軽に水改質することに対しては難しい。例えば、飲料用容器内に注いだ液体が、時間をかけなくても直ぐに改質されるためには、液体との豊富な接触面積が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、液体との豊富な接触面積が期待できるガラスの相分離を利用した多孔質ガラス皮膜を表面に施した陶磁器またはガラス容器を形成することを見出した。
【発明の効果】
【0005】
本発明によると、容器内に水を注いだ直後から水改質が起こり、その豊富な表面積を有するシラノール基との接触効果により、例えば、飲料用の器などに形成すると水をまろやかに改質することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の容器表面の一部または全部に形成する多孔質ガラスは、分相法多孔質ガラス体として、周知のNaO−B−SiOを基礎ガラス組成とし骨格SiO組成となる多孔質ガラス、NaO−P−SiOを基礎ガラス組成とし骨格P−SiO組成となる多孔質ガラス、NaO−B−SiO−GeOを基礎ガラス組成とし骨格SiO−GeO組成となる多孔質ガラス、CaO−B−TiO−SiOを基礎ガラス組成とし骨格TiO−SiO組成となる多孔質ガラス、NaO−B−ZrO−SiOを基礎ガラス組成とし骨格ZrO−SiO組成となる多孔質ガラス、CaO−B−Al−SiOを基礎ガラス組成とし骨格Al−SiO組成となる多孔質ガラスがあるが、適しているCaO−B−SiO−Al系の多孔質ガラス、CaO−B−SiO−Al−NaO系の多孔質ガラス及びCaO−B−SiO−Al−NaO−MgO系の多孔質ガラス、CaO−B−SiO−Al−NaO−MgO−ZrO系の多孔質ガラスなどを被膜とした多孔質ガラス被膜容器を使用するのが好ましい。
【0007】
本発明に最も適している本実施例で用いたCaO−B−SiO−Alを基礎ガラス組成とし骨格Al−SiO組成となる多孔質体のシラス多孔質ガラス膜(以下、SPGという)は、膜を貫通し自由にコントロールすることができる無数の超微細孔を有しており、気孔率が非常に高く、細孔の均一性について非常に優れている公知の多孔質ガラス膜である。またSPGの多孔質を構成する気孔率は微細孔径に因ることなく約50%乃至60%を有し、その比表面積は、細孔径0.05μm乃至20μmにおいては、35m/g乃至0.1m/gを有し実に豊富である。
【0008】
ここで本発明の実施の形態を図面に示す実施例に基づいて説明する。ただし、多孔質ガラスは、特にSPGについては周知のとおり分相性基礎ガラスを600℃乃至800℃の加熱時間をコントロールすることによりその細孔径が決定されるが、本発明に関しては、液体との接触による効果としてその表面積が豊富なより微細な孔径が望ましく、特に細孔径について限定されるものではない。
【実施例1】
【0009】
図1(a)は、基材となる容器1の陶磁器全面に、ミクロ相分離を利用して得られる多孔質ガラス被膜を形成した横断面であり、図1(b)は、基材となる容器1の陶磁器内面に、ミクロ相分離を利用して得られる多孔質ガラス被膜を形成した横断面であり、図1(c)は、基材となる容器1の陶磁器内面の約半分に、ミクロ相分離を利用して得られる多孔質ガラス被膜を形成した横断面であり、図1(d)は、基材となる容器1の陶磁器内面の底部に、ミクロ相分離を利用して得られる多孔質ガラス被膜を形成した横断面である。
【0010】
[実験例1]
図1(d)に示す本発明に係る基材容器1内面の底部に前記SPG被膜を形成した約100cc容の陶器に関し、蒸留水を注いだ直後の酸化還元電位を経時的に計測した。本発明に係る基材容器1内面の底部に前記SPG被膜を形成した約100cc容の陶器5検体に注いだ蒸留水は、それぞれ表1中「A」、「B」、「C」、「D」、「E」の5検体で、比較対象として、SPG被膜を形成していないそのままの同類陶器に注いだ蒸留水(表1中「原水」)、底部が埋まる程度にSPG破片を投入した100cc容プラスチック容器に注いだ蒸留水(表1中「SPG破片」)、底部が埋まる程度に外径3mm×内径2mm×長さ4mmのSPGビーズを投入した100cc容プラスチック容器に注いだ蒸留水(表1中「SPGビーズ大」)である。ここで、本実施例で形成したSPG被膜の微細孔は、1μm以下である。
【0011】
【表1】

【0012】
このように、本発明に係る容器によると、水道水など原液そのものの酸化還元電位が500mVなど高い数値の水溶液を、−200mV程度下げることができる。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明のガラスの相分離を利用して得られる多孔質ガラス被膜を形成した陶磁器またはガラス容器は、現在の一般に酸化還元電位が500mV以上といわれる水道水社会において手軽に酸化還元電位を下げることのできる容器として利用することができる。飲用する水やアルコール類、水割り用水、生け花、植物水栽、プランター、観賞魚などあらゆる場面で使用される酸化還元電位の高値な水道水を生体環境に良い酸化還元電位の低値な水として供給させることができる。酸化還元電位の高値な水は生体を酸化させてしまい老化の原因にもなる。このように本発明に係る容器の形態を、陶磁器やガラス製などの飲料用容器や水差し、かめ、花瓶など種々の基材に合わせて多孔質ガラス被膜を形成することが可能で、より酸化還元電位の低い水を手軽に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る表面に多孔質ガラス被膜を形成した容器の一実施例を示す横断面図である。
【図2】本発明に係る容器に注いた蒸留水の酸化還元電位の経時変化を示す比較図である。
【符号の説明】
【0015】
1 容器
2 多孔質ガラス被膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面の一部または全部にガラスのミクロ相分離を利用して形成される多孔質ガラス被膜を形成した陶磁器。
【請求項2】
表面の一部または全部にガラスのミクロ相分離を利用して形成される多孔質ガラス被膜を形成したガラス容器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−63465(P2011−63465A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213982(P2009−213982)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(597011566)エス・ピー・ジーテクノ株式会社 (13)
【Fターム(参考)】