多孔質チタン酸リチウムの製造方法、多孔質チタン酸リチウム及びそれを用いたリチウム電池
【課題】リチウム電池の電極活物質として用いた場合に、非水電解質の含浸性に優れ、充放電サイクル特性を高めることができる多孔質チタン酸リチウムの製造方法及び多孔質チタン酸リチウム並びにそれを用いたリチウム電池を提供する。
【解決手段】チタン源及びリチウム源を含む原料をメカノケミカルに粉砕しながら混合することにより粉砕混合物を得る。粉砕混合物を焼成する。
【解決手段】チタン源及びリチウム源を含む原料をメカノケミカルに粉砕しながら混合することにより粉砕混合物を得る。粉砕混合物を焼成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質チタン酸リチウムの製造方法、多孔質チタン酸リチウム及びそれを用いたリチウム電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム電池の電極活物質としてチタン酸リチウムを用いた際、チタン酸リチウムには充放電に伴う結晶構造の変化が見られないことから、チタン酸リチウムは、安定性、安全性に優れた電池材料として期待され、種々の開発が行われている。
【0003】
特許文献1は、リチウムイオンのドープ、脱ドープを速やかに行われる、薄片状あるいは板状の粒子形状を有する緻密なチタン酸リチウムを提案している。しかし、特許文献1に記載のチタン酸リチウムは、粒子形状が薄片状あるいは板状であるため、このチタン酸リチウムを用いたスラリーは、流動性が悪く、集電体上への塗工が難しい。また、特許文献1に記載のチタン酸リチウムは、電極作製時に導電剤やバインダーと混合するときのハンドリング性が悪く、導電剤やバインダーと均一に混合することが困難である。また、特許文献1に記載のチタン酸リチウムは、緻密な構造を有するため、非水電解質の含浸性が悪いという課題もある。
【0004】
一方、特許文献2は、電極活物質として用いるチタン酸リチウムのタップ密度を高くすることで、電池の単位体積当たりの電池容量を大きくすることを提案している。しかし、特許文献2では、チタン化合物とリチウム化合物とを含むスラリーを乾燥造粒したのみの反応活性が低い混合物を焼成しているため、一次粒子が緻密に結合した二次粒子が形成されている。このため、特許文献2に記載のチタン酸リチウムは、非水電解質の含浸性が悪いという課題がある。
【0005】
特許文献3は、非水電解質の含浸性が良好な、平均細孔直径が5nm〜50nmであるリチウムチタン複合酸化物粒子を提案している。しかし、特許文献3に記載のリチウムチタン酸複合酸化物粒子の製造方法では、粉体強度が低下するため平均細孔直径を50nm以上にすることができず、粒子径が1μm以上であって、十分な非水電解質の含浸性を有するリチウムチタン複合酸化物粒子を製造することができない。また、特許文献3に記載のリチウムチタン酸複合酸化物粒子の製造方法には、粒子径を大きくできないことからタップ密度を高くすることができないという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9-309728号報
【特許文献2】特開2005-293460号報
【特許文献3】特開2007-18883号報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、先行技術文献1〜3においては、非水電解質の含浸性を充分に高めることができないという課題がある。
【0008】
本発明の目的は、リチウム電池の電極活物質として用いた場合に、非水電解質の含浸性に優れ、充放電サイクル特性を高めることができる多孔質チタン酸リチウムを製造する方法、多孔質チタン酸リチウム及びそれを用いたリチウム電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の製造方法は、多孔質チタン酸リチウムを製造する方法であって、チタン源及びリチウム源を含む原料をメカノケミカルに粉砕しながら混合することにより粉砕混合物を得る工程と、粉砕混合物を焼成する工程とを備えることを特徴としている。
【0010】
本発明の製造方法によれば、リチウム電池の電極活物質として用いた場合に、非水電解質の含浸性に優れ、充放電サイクル特性を高めることができる多孔質チタン酸リチウムを製造することができる。
【0011】
粉砕混合物を焼成する温度は、800℃〜1000℃の範囲内であることが好ましく、800〜950℃の範囲内であることがより好ましい。このような温度範囲内で焼成することにより、多孔質チタン酸リチウムをより効果的に製造することができる。焼成温度が800℃未満であると、二酸化チタンが析出し、チタン酸リチウムの含有率が低下するため、リチウム電池に使用した際、サイクル特性が悪くなる場合がある。また、焼成温度が1000℃を超えると、ラムスデライト型チタン酸リチウムが生成し、リチウム電池に使用した際、サイクル特性が悪くなる場合がある。
【0012】
また、粉砕混合物を焼成する時間は、特に限定されるものではないが、0.5時間〜10時間の範囲内であることが好ましく、1時間〜6時間の範囲内であることがより好ましい。
【0013】
なお、粉砕混合物の焼成は、電気炉、ロータリーキルン、管状炉、流動焼成炉、トンネルキルン等の各種焼成手段を用いて行うことができる。また、得られた焼成物を、ハンマーミル、ビンミル、ジョークラッシャー等を用いて粗粉砕、及び微粉砕し、必要に応じて篩処理を行ってもよい。
【0014】
本発明の製造方法において、メカノケミカルな粉砕としては、物理的な衝撃を与えながら粉砕する方法が挙げられる。具体的には、メカノケミカルな粉砕の例としては、振動ミルによる粉砕が挙げられる。混合粉体の摩砕による剪断応力により、原子配列の乱れと原子間距離の減少が同時に起こり、異種粒子の接点部分の原子移動が起こる結果、準安定相が得られると考えられる。これにより、反応活性の高い粉砕混合物が得られ、この反応活性の高い粉砕混合物を焼成することにより、非水電解質の含浸性に優れた多孔質チタン酸リチウムを製造することができる。
【0015】
本発明におけるメカノケミカルな粉砕は、水や溶剤を用いない乾式処理として行われることが好ましい。
【0016】
メカノケミカルな粉砕による混合処理の時間は、特に限定されるものではないが、一般に、0.1時間〜2.0時間の範囲内であることが好ましい。
【0017】
本発明において、多孔質チタン酸リチウムの製造に用いる原料には、チタン源及びリチウム源が含まれる。チタン源としては、酸化チタンを含有するものや、加熱により酸化チタンを含有する化合物を生成させるものを用いることがでる。チタン源の具体例としては、例えば、酸化チタン、ルチル鉱石、水酸化チタンウエットケーキ、含水チタニアなどが挙げられる。
【0018】
リチウム源としては、加熱により酸化リチウムを生じる化合物を用いることができる。リチウム源の具体例としては、例えば、炭酸リチウム、水酸化リチウム、塩化リチウムなどが挙げられる。これらの中でも、特に炭酸リチウムが好ましく用いられる。
【0019】
チタン源とリチウム源の混合割合は、Ti:Li=5:4(モル比)の割合を基本とするが、それぞれ±5%程度の範囲内であれば変化させても支障はない。
【0020】
本発明の製造方法で製造される多孔質チタン酸リチウムの平均細孔直径は、100nm〜1000nmの範囲内であることが好ましく、100nm〜700nmの範囲内であることがより好ましい。多孔質チタン酸リチウムの平均細孔直径を、このような範囲内とすることにより、多孔質チタン酸リチウムをリチウム電池の電極活物質として用いた場合の、非水電解質の含浸性がさらに高められ、リチウム電池の充放電サイクル特性をさらに向上させることができる。
【0021】
多孔質チタン酸リチウムは、不規則方向に複数の突起が延びる形状を有する粒子が、融合してなるものであることが好ましい。すなわち、多孔質チタン酸リチウムは、不規則方向に複数の突起が延びるアメーバ状の形状を有する粒子が、互いに融合し、多孔質体粒子となったものであることが好ましい。
【0022】
また、多孔質チタン酸リチウムは、スピネル型チタン酸リチウムを含んでいることが好ましい。この場合、多孔質チタン酸リチウムをリチウム電池の電極活物質として用いた場合に、充放電サイクル特性などの電池特性を高めることができる。
【0023】
本発明に係る第1の多孔質チタン酸リチウムは、上記本発明の方法で製造されたことを特徴としている。
【0024】
本発明に係る第2の多孔質チタン酸リチウムは、不規則方向に複数の突起が延びる形状を有する粒子が融合してなり、平均細孔直径が100nm〜1000nmであり、かつ、スピネル型チタン酸リチウムを含んでいるものである。
【0025】
本発明に係る第2の多孔質チタン酸リチウムの吸油量は、0.5ml/g以上であることが好ましい。この場合、非水電解質の含浸性がさらに優れており、かつ、リチウム電池の充放電サイクル特性をさらに向上し得る。吸油量の上限値は、特に限定されるものではないが、一般には、5ml/g以下である。
【0026】
本発明に係る第3の多孔質チタン酸リチウムは、吸油量が0.5ml/g以上、平均細孔直径が100nm〜1000nmであり、スピネル型チタン酸リチウムを含んでいることを特徴としている。
【0027】
本発明の多孔質チタン酸リチウムに含まれるチタン酸リチウムは、一般式LixTiyO4(0.8≦x≦1.4、1.6≦y≦2.2)で表されることが好ましい。
【0028】
本発明の多孔質チタン酸リチウム粒子のタップ密度は、1.0g/ml〜2.0g/mlの範囲内であることが好ましく、1.0g/ml〜1.4g/mlの範囲内であることがより好ましい。この場合、多孔質チタン酸リチウム粒子の充填性が高められるため、リチウム電池の電極活物質として用いた場合に、電池の単位体積当たりの電池容量を大きくすることができる。
【0029】
本発明の多孔質チタン酸リチウム粒子のメディアン径(平均粒径)は、1μm〜200μmの範囲内であることが好ましく、3μm〜40μmの範囲内であることがより好ましく、20μm〜40μmの範囲内であることがさらに好ましい。この構成によれば、多孔質チタン酸リチウム粒子の充填性が改善され、リチウム電池の電極活物質として用いた場合に、電池の単位体積当たりの電池容量を大きくすることができる。
【0030】
本発明のリチウム電池は、上記本発明の多孔質チタン酸リチウムを電極活物質として含んでいることを特徴としている。
【0031】
本発明の多孔質チタン酸リチウムを正極活物質に用いる場合には、負極活物質としては、例えば、金属リチウム、リチウム合金など、あるいはグラファイト、コークスなどの炭素系材料を用いることができる。
【0032】
本発明の多孔質チタン酸リチウムを負極活物質に用いる場合には、正極活物質として、リチウム含有酸化マンガン、マンガン酸リチウム、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、五酸化バナジウムなどを用いることができる。
【0033】
本発明の多孔質チタン酸リチウムを電極活物質として用いた電極は、多孔質チタン酸リチウム粒子に、カーボンブラックなどの導電剤と、フッ素樹脂などのバインダーを加え、適宜成形または塗布することにより製造することができる。
【0034】
非水電解質に用いる溶媒としては、従来リチウム電池に用いられている溶媒を用いることができ、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、1,2−ジメトキシエタンなどを用いることができる。
【0035】
非水電解質に添加するリチウム塩としては、従来リチウム電池に用いられているリチウム塩を用いることができ、例えば、LiPF6などのリチウム塩を用いることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の製造方法によれば、リチウム電池の活物質として用いた場合に、非水電解質の含浸性に優れ、充放電サイクル特性を高めることができる多孔質チタン酸リチウムを製造することができる。
【0037】
本発明の多孔質チタン酸リチウムは、リチウム電池の電極活物質として用いた場合に、非水電解質の含浸性に優れ、充放電サイクル特性を高めることができる。
【0038】
本発明のリチウム電池は、上記本発明の多孔質チタン酸リチウムを含んでいるので、充放電サイクル特性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に従う実施例1において製造された多孔質チタン酸リチウムを示すSEM写真(左側:倍率10000倍、右側:倍率2000倍)。
【図2】本発明に従う実施例2において製造された多孔質チタン酸リチウムを示すSEM写真(左側:倍率10000倍、右側:倍率2000倍)。
【図3】本発明に従う実施例3において製造された多孔質チタン酸リチウムを示すSEM写真(左側:倍率10000倍、右側:倍率2000倍)。
【図4】本発明に従う実施例4において製造された多孔質チタン酸リチウムを示すSEM写真(左側:倍率10000倍、右側:倍率2000倍)。
【図5】本発明に従う実施例5において製造された多孔質チタン酸リチウムを示すSEM写真(左側:倍率10000倍、右側:倍率2000倍)。
【図6】比較例1において製造された多孔質チタン酸リチウムを示すSEM写真(左側:倍率10000倍、右側:倍率2000倍)。
【図7】本発明に従う実施例1において製造された多孔質チタン酸リチウムのX線回折チャートを示す図。
【図8】本発明に従う実施例2において製造された多孔質チタン酸リチウムのX線回折チャートを示す図。
【図9】本発明に従う実施例3において製造された多孔質チタン酸リチウムのX線回折チャートを示す図。
【図10】本発明に従う実施例4において製造された多孔質チタン酸リチウムのX線回折チャートを示す図。
【図11】本発明に従う実施例5において製造された多孔質チタン酸リチウムのX線回折チャートを示す図。
【図12】比較例1において製造された多孔質チタン酸リチウムのX線回折チャートを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、具体的な実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0041】
(実施例1)
酸化チタン584.0g、及び炭酸リチウム216.0gを、振動ミルで粉砕しながら2.0時間混合した。得られた粉砕混合物500gを、ルツボに充填し、電気炉にて950℃で4時間焼成した。
【0042】
得られた焼成物をハンマーミルにて粉砕処理を行い、目開き250μmの篩にて処理を行った。
【0043】
得られた生成物は、X線回折により結晶相がLi1.33Ti1.66O4であり、スピネル型であることが確認された。また、結晶子径は、100nm以上であった。
【0044】
得られたチタン酸リチウムのメディアン径(平均粒径)は38.6μmであり、平均細孔直径は620nmであり、タップ密度は1.2g/mlであり、比表面積は0.55m2/gであり、吸油量は0.55ml/gであった。
【0045】
なお、X線回折は、リガク社製「RINT2000」で測定した。結晶子径は、Scherrerの式より求めた。メディアン径(平均粒径)は、島津社製「SALD−2100レーザー回折式粒度分布測定装置」により測定した。
【0046】
平均細孔直径は、島津社製「オートポア9510」にて水銀圧入法により測定した。タップ密度は、ホソカワミクロン社製「パウダーテスターPT−S」にて測定した。比表面積は、島津社製「GEMINI2360」にてBET法により測定した。吸油量は、JISK 5101−13−1に準拠して測定した。
【0047】
得られたチタン酸リチウム粒子について、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した。
【0048】
図1に、得られたチタン酸リチウム粒子のSEM写真を示す。左側の写真が倍率10000倍であり、右側の写真が倍率2000倍である。
【0049】
図1から明らかなように、得られたチタン酸リチウム粒子は、不規則方向に複数の突起が延びる形状を有する粒子が融合した形状を有している。すなわちアメーバ形状またはジグソーパズル形状の粒子が融合することにより結合した多孔質体粒子となっていることがわかる。
【0050】
(実施例2)
焼成温度を900℃とする以外は、実施例1と同様にしてチタン酸リチウムを合成した。
【0051】
得られたチタン酸リチウムは、Li1.33Ti1.66O4の結晶相を有していた。結晶子径は100nm以上であり、メディアン径は25.2μmであり、平均細孔直径は390nmであり、タップ密度は1.4g/mlであり、比表面積は1.00m2/gであり、吸油量は0.65ml/gであった。
【0052】
図2は、得られたチタン酸リチウム粒子を示すSEM写真である。左側の写真は倍率10000倍、右側の写真は倍率2000倍である。
【0053】
図2から明らかなように、得られたチタン酸リチウム粒子は、不規則方向に複数の突起が延びる形状を有する粒子が融合した形状を有している。すなわちアメーバ形状またはジグソーパズル形状の粒子が融合することにより結合した多孔質体粒子となっていることがわかる。
【0054】
(実施例3)
焼成温度を850℃とする以外は、実施例1と同様にしてチタン酸リチウムを合成した。
【0055】
得られたチタン酸リチウムは、Li1.33Ti1.66O4の結晶相を有していた。結晶子径は100nm以上であり、メディアン径は23.7μmであり、平均細孔直径は250nmであり、タップ密度は1.4g/mlであり、比表面積は1.22m2/gであり、吸油量は0.65ml/gであった。
【0056】
図3は、得られたチタン酸リチウム粒子を示すSEM写真である。左側の写真は倍率10000倍、右側の写真は倍率2000倍である。
【0057】
図3から明らかなように、得られたチタン酸リチウム粒子は、不規則方向に複数の突起が延びる形状を有する粒子が融合した形状を有している。すなわちアメーバ形状またはジグソーパズル形状の粒子が融合することにより結合した多孔質体粒子となっていることがわかる。
【0058】
(実施例4)
焼成温度を800℃とする以外は、実施例1と同様にしてチタン酸リチウムを合成した。
【0059】
得られたチタン酸リチウムは、Li1.33Ti1.66O4の結晶相を有していた。結晶子径は100nm以上であり、メディアン径は22.7μmであり、平均細孔直径は140nmであり、タップ密度は1.3g/mlであり、比表面積は1.60m2/gであり、吸油量は0.70ml/gであった。
【0060】
図4は、得られたチタン酸リチウム粒子を示すSEM写真である。左側の写真は倍率10000倍、右側の写真は倍率2000倍である。
【0061】
図4から明らかなように、得られたチタン酸リチウム粒子は、不規則方向に複数の突起が延びる形状を有する粒子が融合した形状を有している。すなわちアメーバ形状またはジグソーパズル形状の粒子が融合することにより結合した多孔質体粒子となっていることがわかる。
【0062】
(実施例5)
焼成温度を1000℃とする以外は、実施例1と同様にしてチタン酸リチウムを合成した。
【0063】
得られたチタン酸リチウムは、Li1.33Ti1.66O4の結晶相及びラムスデライト型のLi2Ti3O7の結晶相を有していた。結晶子径は100nm以上であり、メディアン径は31.5μmであり、平均細孔直径は810nmであり、タップ密度は1.3g/mlであり、比表面積は0.40m2/gであり、吸油量は0.55ml/gであった。
【0064】
図5は、得られたチタン酸リチウム粒子を示すSEM写真である。左側の写真は倍率10000倍、右側の写真は倍率2000倍である。
【0065】
図5から明らかなように、得られたチタン酸リチウム粒子は、不規則方向に複数の突起が延びる形状を有する粒子が融合した形状を有している。すなわちアメーバ形状またはジグソーパズル形状の粒子が融合することにより結合した多孔質体粒子となっていることがわかる。
【0066】
(比較例1)
酸化チタン588.0g、及び水酸化リチウム141.0gを、水1353.0gに投入し、湿式で撹拌混合した。この混合物を110℃で噴霧乾燥させ、乾燥させた混合物500gをルツボに充填し、電気炉にて850℃で4時間焼成した。
【0067】
得られたチタン酸リチウムは、Li1.33Ti1.66O4の結晶相を有していた。結晶子径は100nm以上であり、メディアン径は19.8μmであり、平均細孔直径は50nmであり、タップ密度は1.5g/mlであり、比表面積は2.13m2/gであり、吸油量は0.35ml/gであった。
【0068】
図6は、得られたチタン酸リチウム粒子を示すSEM写真である。左側の写真は倍率10000倍、右側の写真は倍率2000倍である。
【0069】
同じ850℃で焼成した実施例3において得られた多孔質チタン酸リチウム粒子に比べ、本比較例では、一次粒子の大きさが小さくなっていることがわかる。
【0070】
〔リチウム電池の電極活物質としての評価〕
上記のようにして得られた実施例1〜5及び比較例1のチタン酸リチウムを電極活物質として用い電極を作製した。具体的には、チタン酸リチウム90重量部、カーボンブラック5重量部、フッ素樹脂5重量部を混練し、厚さ0.8mm、直径17.0mmの大きさのペレットを成形した。成形したペレットを250℃で真空乾燥し、脱水処理した後、これを正極として用いた。
【0071】
負極としては金属リチウム板を使用し、セパレータとしてはポリプロピレン製不織布を使用した。電解液としては、ポリプロピレンカーボネート(PC)とジメチルエーテル(DEM)の混合溶媒に、LiPF6を1モル/リットル溶解させた電解液を用いた。
【0072】
上記の正極、負極、セパレータ及び電解液を用いて、外径約23mm、高さ約3.0mmのコイン型リチウム電池(リチウム二次電池)を作製した。
【0073】
上記コイン型リチウム電池を用いて、電流密度0.4mA/cm2の定電流で、3.0Vまで充電し、その後1.0Vまで放電し、初期放電容量を測定した。その後、100サイクルまで上記の充放電を繰り返して行い、容量維持率を、以下の式により算出した。初期放電容量及び容量維持率を表1に示す。
【0074】
容量維持率(%)=(100サイクル後の放電容量/初期放電容量)×100
【0075】
【表1】
【0076】
表1に示すように、本発明に従い製造された実施例1〜5の多孔質チタン酸リチウムを正極活物質として用いたリチウム電池の初期放電容量及び容量維持率は、比較例1のチタン酸リチウムを用いたリチウム電池の初期放電容量及び容量維持率に比べ高い値が得られている。特に、平均細孔直径が100nm〜700nmの範囲内である実施例1〜4の多孔質チタン酸リチウムを用いた場合においては、より高い容量維持率が得られている。
【0077】
表1に示すように、実施例1〜5の多孔質チタン酸リチウムは、平均細孔直径が比較例1に比べ大きくなっており、吸油量も大きくなっていることから、実施例1〜5の多孔質チタン酸リチウムを用いることにより、非水電解質の含浸性を高めることができ、その結果として充放電サイクル特性を高めることができたものと思われる。
【0078】
以上のように、本発明に従う多孔質チタン酸リチウム粒子を、リチウム電池の電極活物質として用いることにより、非水電解質の含浸性に優れ、充放電サイクル特性を高めることができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質チタン酸リチウムの製造方法、多孔質チタン酸リチウム及びそれを用いたリチウム電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム電池の電極活物質としてチタン酸リチウムを用いた際、チタン酸リチウムには充放電に伴う結晶構造の変化が見られないことから、チタン酸リチウムは、安定性、安全性に優れた電池材料として期待され、種々の開発が行われている。
【0003】
特許文献1は、リチウムイオンのドープ、脱ドープを速やかに行われる、薄片状あるいは板状の粒子形状を有する緻密なチタン酸リチウムを提案している。しかし、特許文献1に記載のチタン酸リチウムは、粒子形状が薄片状あるいは板状であるため、このチタン酸リチウムを用いたスラリーは、流動性が悪く、集電体上への塗工が難しい。また、特許文献1に記載のチタン酸リチウムは、電極作製時に導電剤やバインダーと混合するときのハンドリング性が悪く、導電剤やバインダーと均一に混合することが困難である。また、特許文献1に記載のチタン酸リチウムは、緻密な構造を有するため、非水電解質の含浸性が悪いという課題もある。
【0004】
一方、特許文献2は、電極活物質として用いるチタン酸リチウムのタップ密度を高くすることで、電池の単位体積当たりの電池容量を大きくすることを提案している。しかし、特許文献2では、チタン化合物とリチウム化合物とを含むスラリーを乾燥造粒したのみの反応活性が低い混合物を焼成しているため、一次粒子が緻密に結合した二次粒子が形成されている。このため、特許文献2に記載のチタン酸リチウムは、非水電解質の含浸性が悪いという課題がある。
【0005】
特許文献3は、非水電解質の含浸性が良好な、平均細孔直径が5nm〜50nmであるリチウムチタン複合酸化物粒子を提案している。しかし、特許文献3に記載のリチウムチタン酸複合酸化物粒子の製造方法では、粉体強度が低下するため平均細孔直径を50nm以上にすることができず、粒子径が1μm以上であって、十分な非水電解質の含浸性を有するリチウムチタン複合酸化物粒子を製造することができない。また、特許文献3に記載のリチウムチタン酸複合酸化物粒子の製造方法には、粒子径を大きくできないことからタップ密度を高くすることができないという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9-309728号報
【特許文献2】特開2005-293460号報
【特許文献3】特開2007-18883号報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、先行技術文献1〜3においては、非水電解質の含浸性を充分に高めることができないという課題がある。
【0008】
本発明の目的は、リチウム電池の電極活物質として用いた場合に、非水電解質の含浸性に優れ、充放電サイクル特性を高めることができる多孔質チタン酸リチウムを製造する方法、多孔質チタン酸リチウム及びそれを用いたリチウム電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の製造方法は、多孔質チタン酸リチウムを製造する方法であって、チタン源及びリチウム源を含む原料をメカノケミカルに粉砕しながら混合することにより粉砕混合物を得る工程と、粉砕混合物を焼成する工程とを備えることを特徴としている。
【0010】
本発明の製造方法によれば、リチウム電池の電極活物質として用いた場合に、非水電解質の含浸性に優れ、充放電サイクル特性を高めることができる多孔質チタン酸リチウムを製造することができる。
【0011】
粉砕混合物を焼成する温度は、800℃〜1000℃の範囲内であることが好ましく、800〜950℃の範囲内であることがより好ましい。このような温度範囲内で焼成することにより、多孔質チタン酸リチウムをより効果的に製造することができる。焼成温度が800℃未満であると、二酸化チタンが析出し、チタン酸リチウムの含有率が低下するため、リチウム電池に使用した際、サイクル特性が悪くなる場合がある。また、焼成温度が1000℃を超えると、ラムスデライト型チタン酸リチウムが生成し、リチウム電池に使用した際、サイクル特性が悪くなる場合がある。
【0012】
また、粉砕混合物を焼成する時間は、特に限定されるものではないが、0.5時間〜10時間の範囲内であることが好ましく、1時間〜6時間の範囲内であることがより好ましい。
【0013】
なお、粉砕混合物の焼成は、電気炉、ロータリーキルン、管状炉、流動焼成炉、トンネルキルン等の各種焼成手段を用いて行うことができる。また、得られた焼成物を、ハンマーミル、ビンミル、ジョークラッシャー等を用いて粗粉砕、及び微粉砕し、必要に応じて篩処理を行ってもよい。
【0014】
本発明の製造方法において、メカノケミカルな粉砕としては、物理的な衝撃を与えながら粉砕する方法が挙げられる。具体的には、メカノケミカルな粉砕の例としては、振動ミルによる粉砕が挙げられる。混合粉体の摩砕による剪断応力により、原子配列の乱れと原子間距離の減少が同時に起こり、異種粒子の接点部分の原子移動が起こる結果、準安定相が得られると考えられる。これにより、反応活性の高い粉砕混合物が得られ、この反応活性の高い粉砕混合物を焼成することにより、非水電解質の含浸性に優れた多孔質チタン酸リチウムを製造することができる。
【0015】
本発明におけるメカノケミカルな粉砕は、水や溶剤を用いない乾式処理として行われることが好ましい。
【0016】
メカノケミカルな粉砕による混合処理の時間は、特に限定されるものではないが、一般に、0.1時間〜2.0時間の範囲内であることが好ましい。
【0017】
本発明において、多孔質チタン酸リチウムの製造に用いる原料には、チタン源及びリチウム源が含まれる。チタン源としては、酸化チタンを含有するものや、加熱により酸化チタンを含有する化合物を生成させるものを用いることがでる。チタン源の具体例としては、例えば、酸化チタン、ルチル鉱石、水酸化チタンウエットケーキ、含水チタニアなどが挙げられる。
【0018】
リチウム源としては、加熱により酸化リチウムを生じる化合物を用いることができる。リチウム源の具体例としては、例えば、炭酸リチウム、水酸化リチウム、塩化リチウムなどが挙げられる。これらの中でも、特に炭酸リチウムが好ましく用いられる。
【0019】
チタン源とリチウム源の混合割合は、Ti:Li=5:4(モル比)の割合を基本とするが、それぞれ±5%程度の範囲内であれば変化させても支障はない。
【0020】
本発明の製造方法で製造される多孔質チタン酸リチウムの平均細孔直径は、100nm〜1000nmの範囲内であることが好ましく、100nm〜700nmの範囲内であることがより好ましい。多孔質チタン酸リチウムの平均細孔直径を、このような範囲内とすることにより、多孔質チタン酸リチウムをリチウム電池の電極活物質として用いた場合の、非水電解質の含浸性がさらに高められ、リチウム電池の充放電サイクル特性をさらに向上させることができる。
【0021】
多孔質チタン酸リチウムは、不規則方向に複数の突起が延びる形状を有する粒子が、融合してなるものであることが好ましい。すなわち、多孔質チタン酸リチウムは、不規則方向に複数の突起が延びるアメーバ状の形状を有する粒子が、互いに融合し、多孔質体粒子となったものであることが好ましい。
【0022】
また、多孔質チタン酸リチウムは、スピネル型チタン酸リチウムを含んでいることが好ましい。この場合、多孔質チタン酸リチウムをリチウム電池の電極活物質として用いた場合に、充放電サイクル特性などの電池特性を高めることができる。
【0023】
本発明に係る第1の多孔質チタン酸リチウムは、上記本発明の方法で製造されたことを特徴としている。
【0024】
本発明に係る第2の多孔質チタン酸リチウムは、不規則方向に複数の突起が延びる形状を有する粒子が融合してなり、平均細孔直径が100nm〜1000nmであり、かつ、スピネル型チタン酸リチウムを含んでいるものである。
【0025】
本発明に係る第2の多孔質チタン酸リチウムの吸油量は、0.5ml/g以上であることが好ましい。この場合、非水電解質の含浸性がさらに優れており、かつ、リチウム電池の充放電サイクル特性をさらに向上し得る。吸油量の上限値は、特に限定されるものではないが、一般には、5ml/g以下である。
【0026】
本発明に係る第3の多孔質チタン酸リチウムは、吸油量が0.5ml/g以上、平均細孔直径が100nm〜1000nmであり、スピネル型チタン酸リチウムを含んでいることを特徴としている。
【0027】
本発明の多孔質チタン酸リチウムに含まれるチタン酸リチウムは、一般式LixTiyO4(0.8≦x≦1.4、1.6≦y≦2.2)で表されることが好ましい。
【0028】
本発明の多孔質チタン酸リチウム粒子のタップ密度は、1.0g/ml〜2.0g/mlの範囲内であることが好ましく、1.0g/ml〜1.4g/mlの範囲内であることがより好ましい。この場合、多孔質チタン酸リチウム粒子の充填性が高められるため、リチウム電池の電極活物質として用いた場合に、電池の単位体積当たりの電池容量を大きくすることができる。
【0029】
本発明の多孔質チタン酸リチウム粒子のメディアン径(平均粒径)は、1μm〜200μmの範囲内であることが好ましく、3μm〜40μmの範囲内であることがより好ましく、20μm〜40μmの範囲内であることがさらに好ましい。この構成によれば、多孔質チタン酸リチウム粒子の充填性が改善され、リチウム電池の電極活物質として用いた場合に、電池の単位体積当たりの電池容量を大きくすることができる。
【0030】
本発明のリチウム電池は、上記本発明の多孔質チタン酸リチウムを電極活物質として含んでいることを特徴としている。
【0031】
本発明の多孔質チタン酸リチウムを正極活物質に用いる場合には、負極活物質としては、例えば、金属リチウム、リチウム合金など、あるいはグラファイト、コークスなどの炭素系材料を用いることができる。
【0032】
本発明の多孔質チタン酸リチウムを負極活物質に用いる場合には、正極活物質として、リチウム含有酸化マンガン、マンガン酸リチウム、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、五酸化バナジウムなどを用いることができる。
【0033】
本発明の多孔質チタン酸リチウムを電極活物質として用いた電極は、多孔質チタン酸リチウム粒子に、カーボンブラックなどの導電剤と、フッ素樹脂などのバインダーを加え、適宜成形または塗布することにより製造することができる。
【0034】
非水電解質に用いる溶媒としては、従来リチウム電池に用いられている溶媒を用いることができ、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、1,2−ジメトキシエタンなどを用いることができる。
【0035】
非水電解質に添加するリチウム塩としては、従来リチウム電池に用いられているリチウム塩を用いることができ、例えば、LiPF6などのリチウム塩を用いることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の製造方法によれば、リチウム電池の活物質として用いた場合に、非水電解質の含浸性に優れ、充放電サイクル特性を高めることができる多孔質チタン酸リチウムを製造することができる。
【0037】
本発明の多孔質チタン酸リチウムは、リチウム電池の電極活物質として用いた場合に、非水電解質の含浸性に優れ、充放電サイクル特性を高めることができる。
【0038】
本発明のリチウム電池は、上記本発明の多孔質チタン酸リチウムを含んでいるので、充放電サイクル特性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に従う実施例1において製造された多孔質チタン酸リチウムを示すSEM写真(左側:倍率10000倍、右側:倍率2000倍)。
【図2】本発明に従う実施例2において製造された多孔質チタン酸リチウムを示すSEM写真(左側:倍率10000倍、右側:倍率2000倍)。
【図3】本発明に従う実施例3において製造された多孔質チタン酸リチウムを示すSEM写真(左側:倍率10000倍、右側:倍率2000倍)。
【図4】本発明に従う実施例4において製造された多孔質チタン酸リチウムを示すSEM写真(左側:倍率10000倍、右側:倍率2000倍)。
【図5】本発明に従う実施例5において製造された多孔質チタン酸リチウムを示すSEM写真(左側:倍率10000倍、右側:倍率2000倍)。
【図6】比較例1において製造された多孔質チタン酸リチウムを示すSEM写真(左側:倍率10000倍、右側:倍率2000倍)。
【図7】本発明に従う実施例1において製造された多孔質チタン酸リチウムのX線回折チャートを示す図。
【図8】本発明に従う実施例2において製造された多孔質チタン酸リチウムのX線回折チャートを示す図。
【図9】本発明に従う実施例3において製造された多孔質チタン酸リチウムのX線回折チャートを示す図。
【図10】本発明に従う実施例4において製造された多孔質チタン酸リチウムのX線回折チャートを示す図。
【図11】本発明に従う実施例5において製造された多孔質チタン酸リチウムのX線回折チャートを示す図。
【図12】比較例1において製造された多孔質チタン酸リチウムのX線回折チャートを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、具体的な実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0041】
(実施例1)
酸化チタン584.0g、及び炭酸リチウム216.0gを、振動ミルで粉砕しながら2.0時間混合した。得られた粉砕混合物500gを、ルツボに充填し、電気炉にて950℃で4時間焼成した。
【0042】
得られた焼成物をハンマーミルにて粉砕処理を行い、目開き250μmの篩にて処理を行った。
【0043】
得られた生成物は、X線回折により結晶相がLi1.33Ti1.66O4であり、スピネル型であることが確認された。また、結晶子径は、100nm以上であった。
【0044】
得られたチタン酸リチウムのメディアン径(平均粒径)は38.6μmであり、平均細孔直径は620nmであり、タップ密度は1.2g/mlであり、比表面積は0.55m2/gであり、吸油量は0.55ml/gであった。
【0045】
なお、X線回折は、リガク社製「RINT2000」で測定した。結晶子径は、Scherrerの式より求めた。メディアン径(平均粒径)は、島津社製「SALD−2100レーザー回折式粒度分布測定装置」により測定した。
【0046】
平均細孔直径は、島津社製「オートポア9510」にて水銀圧入法により測定した。タップ密度は、ホソカワミクロン社製「パウダーテスターPT−S」にて測定した。比表面積は、島津社製「GEMINI2360」にてBET法により測定した。吸油量は、JISK 5101−13−1に準拠して測定した。
【0047】
得られたチタン酸リチウム粒子について、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した。
【0048】
図1に、得られたチタン酸リチウム粒子のSEM写真を示す。左側の写真が倍率10000倍であり、右側の写真が倍率2000倍である。
【0049】
図1から明らかなように、得られたチタン酸リチウム粒子は、不規則方向に複数の突起が延びる形状を有する粒子が融合した形状を有している。すなわちアメーバ形状またはジグソーパズル形状の粒子が融合することにより結合した多孔質体粒子となっていることがわかる。
【0050】
(実施例2)
焼成温度を900℃とする以外は、実施例1と同様にしてチタン酸リチウムを合成した。
【0051】
得られたチタン酸リチウムは、Li1.33Ti1.66O4の結晶相を有していた。結晶子径は100nm以上であり、メディアン径は25.2μmであり、平均細孔直径は390nmであり、タップ密度は1.4g/mlであり、比表面積は1.00m2/gであり、吸油量は0.65ml/gであった。
【0052】
図2は、得られたチタン酸リチウム粒子を示すSEM写真である。左側の写真は倍率10000倍、右側の写真は倍率2000倍である。
【0053】
図2から明らかなように、得られたチタン酸リチウム粒子は、不規則方向に複数の突起が延びる形状を有する粒子が融合した形状を有している。すなわちアメーバ形状またはジグソーパズル形状の粒子が融合することにより結合した多孔質体粒子となっていることがわかる。
【0054】
(実施例3)
焼成温度を850℃とする以外は、実施例1と同様にしてチタン酸リチウムを合成した。
【0055】
得られたチタン酸リチウムは、Li1.33Ti1.66O4の結晶相を有していた。結晶子径は100nm以上であり、メディアン径は23.7μmであり、平均細孔直径は250nmであり、タップ密度は1.4g/mlであり、比表面積は1.22m2/gであり、吸油量は0.65ml/gであった。
【0056】
図3は、得られたチタン酸リチウム粒子を示すSEM写真である。左側の写真は倍率10000倍、右側の写真は倍率2000倍である。
【0057】
図3から明らかなように、得られたチタン酸リチウム粒子は、不規則方向に複数の突起が延びる形状を有する粒子が融合した形状を有している。すなわちアメーバ形状またはジグソーパズル形状の粒子が融合することにより結合した多孔質体粒子となっていることがわかる。
【0058】
(実施例4)
焼成温度を800℃とする以外は、実施例1と同様にしてチタン酸リチウムを合成した。
【0059】
得られたチタン酸リチウムは、Li1.33Ti1.66O4の結晶相を有していた。結晶子径は100nm以上であり、メディアン径は22.7μmであり、平均細孔直径は140nmであり、タップ密度は1.3g/mlであり、比表面積は1.60m2/gであり、吸油量は0.70ml/gであった。
【0060】
図4は、得られたチタン酸リチウム粒子を示すSEM写真である。左側の写真は倍率10000倍、右側の写真は倍率2000倍である。
【0061】
図4から明らかなように、得られたチタン酸リチウム粒子は、不規則方向に複数の突起が延びる形状を有する粒子が融合した形状を有している。すなわちアメーバ形状またはジグソーパズル形状の粒子が融合することにより結合した多孔質体粒子となっていることがわかる。
【0062】
(実施例5)
焼成温度を1000℃とする以外は、実施例1と同様にしてチタン酸リチウムを合成した。
【0063】
得られたチタン酸リチウムは、Li1.33Ti1.66O4の結晶相及びラムスデライト型のLi2Ti3O7の結晶相を有していた。結晶子径は100nm以上であり、メディアン径は31.5μmであり、平均細孔直径は810nmであり、タップ密度は1.3g/mlであり、比表面積は0.40m2/gであり、吸油量は0.55ml/gであった。
【0064】
図5は、得られたチタン酸リチウム粒子を示すSEM写真である。左側の写真は倍率10000倍、右側の写真は倍率2000倍である。
【0065】
図5から明らかなように、得られたチタン酸リチウム粒子は、不規則方向に複数の突起が延びる形状を有する粒子が融合した形状を有している。すなわちアメーバ形状またはジグソーパズル形状の粒子が融合することにより結合した多孔質体粒子となっていることがわかる。
【0066】
(比較例1)
酸化チタン588.0g、及び水酸化リチウム141.0gを、水1353.0gに投入し、湿式で撹拌混合した。この混合物を110℃で噴霧乾燥させ、乾燥させた混合物500gをルツボに充填し、電気炉にて850℃で4時間焼成した。
【0067】
得られたチタン酸リチウムは、Li1.33Ti1.66O4の結晶相を有していた。結晶子径は100nm以上であり、メディアン径は19.8μmであり、平均細孔直径は50nmであり、タップ密度は1.5g/mlであり、比表面積は2.13m2/gであり、吸油量は0.35ml/gであった。
【0068】
図6は、得られたチタン酸リチウム粒子を示すSEM写真である。左側の写真は倍率10000倍、右側の写真は倍率2000倍である。
【0069】
同じ850℃で焼成した実施例3において得られた多孔質チタン酸リチウム粒子に比べ、本比較例では、一次粒子の大きさが小さくなっていることがわかる。
【0070】
〔リチウム電池の電極活物質としての評価〕
上記のようにして得られた実施例1〜5及び比較例1のチタン酸リチウムを電極活物質として用い電極を作製した。具体的には、チタン酸リチウム90重量部、カーボンブラック5重量部、フッ素樹脂5重量部を混練し、厚さ0.8mm、直径17.0mmの大きさのペレットを成形した。成形したペレットを250℃で真空乾燥し、脱水処理した後、これを正極として用いた。
【0071】
負極としては金属リチウム板を使用し、セパレータとしてはポリプロピレン製不織布を使用した。電解液としては、ポリプロピレンカーボネート(PC)とジメチルエーテル(DEM)の混合溶媒に、LiPF6を1モル/リットル溶解させた電解液を用いた。
【0072】
上記の正極、負極、セパレータ及び電解液を用いて、外径約23mm、高さ約3.0mmのコイン型リチウム電池(リチウム二次電池)を作製した。
【0073】
上記コイン型リチウム電池を用いて、電流密度0.4mA/cm2の定電流で、3.0Vまで充電し、その後1.0Vまで放電し、初期放電容量を測定した。その後、100サイクルまで上記の充放電を繰り返して行い、容量維持率を、以下の式により算出した。初期放電容量及び容量維持率を表1に示す。
【0074】
容量維持率(%)=(100サイクル後の放電容量/初期放電容量)×100
【0075】
【表1】
【0076】
表1に示すように、本発明に従い製造された実施例1〜5の多孔質チタン酸リチウムを正極活物質として用いたリチウム電池の初期放電容量及び容量維持率は、比較例1のチタン酸リチウムを用いたリチウム電池の初期放電容量及び容量維持率に比べ高い値が得られている。特に、平均細孔直径が100nm〜700nmの範囲内である実施例1〜4の多孔質チタン酸リチウムを用いた場合においては、より高い容量維持率が得られている。
【0077】
表1に示すように、実施例1〜5の多孔質チタン酸リチウムは、平均細孔直径が比較例1に比べ大きくなっており、吸油量も大きくなっていることから、実施例1〜5の多孔質チタン酸リチウムを用いることにより、非水電解質の含浸性を高めることができ、その結果として充放電サイクル特性を高めることができたものと思われる。
【0078】
以上のように、本発明に従う多孔質チタン酸リチウム粒子を、リチウム電池の電極活物質として用いることにより、非水電解質の含浸性に優れ、充放電サイクル特性を高めることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質チタン酸リチウムを製造する方法であって、
チタン源及びリチウム源を含む原料をメカノケミカルに粉砕しながら混合することにより粉砕混合物を得る工程と、
前記粉砕混合物を焼成する工程とを備えることを特徴とする多孔質チタン酸リチウムの製造方法。
【請求項2】
前記粉砕混合物を800℃〜1000℃の範囲内の温度で焼成することを特徴とする請求項1に記載の多孔質チタン酸リチウムの製造方法。
【請求項3】
前記粉砕混合物を0.5時間〜10時間の範囲内の時間で焼成することを特徴とする請求項1または2に記載の多孔質チタン酸リチウムの製造方法。
【請求項4】
平均細孔直径が、100nm〜1000nmの範囲内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の多孔質チタン酸リチウムの製造方法。
【請求項5】
前記多孔質チタン酸リチウムが、不規則方向に複数の突起が延びる形状を有する粒子が融合したものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の多孔質チタン酸リチウムの製造方法。
【請求項6】
多孔質チタン酸リチウムが、スピネル型チタン酸リチウムを含んでいることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の多孔質チタン酸リチウムの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法で製造されたことを特徴とする多孔質チタン酸リチウム。
【請求項8】
不規則方向に複数の突起が延びる形状を有する粒子が融合してなり、平均細孔直径が100nm〜1000nmであり、かつ、スピネル型チタン酸リチウムを含んでいることを特徴とする多孔質チタン酸リチウム。
【請求項9】
吸油量が、0.5ml/g以上であることを特徴とする請求項7または8に記載の多孔質チタン酸リチウム。
【請求項10】
吸油量が0.5ml/g以上、平均細孔直径が100nm〜1000nmであり、スピネル型チタン酸リチウムを含んでいることを特徴とする多孔質チタン酸リチウム。
【請求項11】
タップ密度が1.0g/ml〜2.0g/mlの範囲内であることを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の多孔質チタン酸リチウム。
【請求項12】
メディアン径が1μm〜200μmの範囲内であることを特徴とする請求項7〜11のいずれか1項に記載の多孔質チタン酸リチウム。
【請求項13】
請求項7〜12のいずれか1項に記載の多孔質チタン酸リチウムを電極活物質として含んでいることを特徴とするリチウム電池。
【請求項1】
多孔質チタン酸リチウムを製造する方法であって、
チタン源及びリチウム源を含む原料をメカノケミカルに粉砕しながら混合することにより粉砕混合物を得る工程と、
前記粉砕混合物を焼成する工程とを備えることを特徴とする多孔質チタン酸リチウムの製造方法。
【請求項2】
前記粉砕混合物を800℃〜1000℃の範囲内の温度で焼成することを特徴とする請求項1に記載の多孔質チタン酸リチウムの製造方法。
【請求項3】
前記粉砕混合物を0.5時間〜10時間の範囲内の時間で焼成することを特徴とする請求項1または2に記載の多孔質チタン酸リチウムの製造方法。
【請求項4】
平均細孔直径が、100nm〜1000nmの範囲内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の多孔質チタン酸リチウムの製造方法。
【請求項5】
前記多孔質チタン酸リチウムが、不規則方向に複数の突起が延びる形状を有する粒子が融合したものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の多孔質チタン酸リチウムの製造方法。
【請求項6】
多孔質チタン酸リチウムが、スピネル型チタン酸リチウムを含んでいることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の多孔質チタン酸リチウムの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法で製造されたことを特徴とする多孔質チタン酸リチウム。
【請求項8】
不規則方向に複数の突起が延びる形状を有する粒子が融合してなり、平均細孔直径が100nm〜1000nmであり、かつ、スピネル型チタン酸リチウムを含んでいることを特徴とする多孔質チタン酸リチウム。
【請求項9】
吸油量が、0.5ml/g以上であることを特徴とする請求項7または8に記載の多孔質チタン酸リチウム。
【請求項10】
吸油量が0.5ml/g以上、平均細孔直径が100nm〜1000nmであり、スピネル型チタン酸リチウムを含んでいることを特徴とする多孔質チタン酸リチウム。
【請求項11】
タップ密度が1.0g/ml〜2.0g/mlの範囲内であることを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の多孔質チタン酸リチウム。
【請求項12】
メディアン径が1μm〜200μmの範囲内であることを特徴とする請求項7〜11のいずれか1項に記載の多孔質チタン酸リチウム。
【請求項13】
請求項7〜12のいずれか1項に記載の多孔質チタン酸リチウムを電極活物質として含んでいることを特徴とするリチウム電池。
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2012−12261(P2012−12261A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151589(P2010−151589)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(000206901)大塚化学株式会社 (55)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(000206901)大塚化学株式会社 (55)
【Fターム(参考)】
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