説明

多孔質無電解めっき

金属を表面上に無電解めっきする、多孔質金属被膜を形成させるための新規な無電解めっき方法を提供する。該金属内の微粒子を除去して金属被膜内に細孔を残す。ブロッキング配位子を表面に結合させ、次いで第2の被覆工程を行う別の無電解被膜形成方法も提供する。本発明は、本発明の方法によって形成された被膜及び被覆装置を包含する。また、本発明は、緻密基材を有する触媒構造及び該緻密基材に付着した多孔質金属(具体的な特徴の一つ以上によりさらに特徴付けられる)を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
米国特許法第119条(e)に従い、本願は、2007年9月13日に出願された米国仮出願第60/972,210号を基礎とする優先権を主張する。
本発明は、多孔質金属被膜を生じさせるための新規な無電解めっき方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
序論
多孔質金属被膜を形成させるために充てられた研究には長い歴史がある。例えば、1927年に発行された米国特許第1,628,190号において、Raneyは、ニッケルとアルミニウムとを混ぜて合金にし、その後アルミニウムを溶解させて多孔質ニッケルを残すことによって多孔質ニッケルを製造する方法を記載した。
【0003】
近年では、マイクロチャンネル内に金属被膜を形成することに大きな興味が持たれている。Tonkovich外は、WO2006/127889A2(PCT/US2006/020220号;完全に複写されたかのように本明細書に含める)は、構造化された壁部(これはその後触媒で被覆され得る)のデザインを含め、マイクロチャンネル壁部上に触媒を形成させる様々なマイクロチャンネル装置及び多数の方法を記載している。また、この特許には、ポリマーテンプレート剤を使用し、その後金属テンプレート剤により処理し、そして酸化工程を実施して多孔質金属構造を形成させることも言及されている。
【0004】
白金などの金属を基材上に無電解めっきすることに大きな関心が持たれている。というのは、これは、耐腐食性及び耐摩耗性を改善させることや、所望の電気的特性を増大させることや、様々な化学反応の触媒として作用することができるからである。Pt及びPt合金触媒は、蒸気メタン改質、部分酸化、CO2改質、ガソリンの自動熱改質、燃焼、アンモニア酸化、脱水素化及びアルカン類の水素化分解、アルカン類の酸化的脱水素化及び自動車の排ガス規制におけるNOx軽減などの様々な化学反応の触媒として幅広く使用されている。また、これらのものは、アルカリ形燃料電池、リン酸形燃料電池、プロトン交換膜形燃料電池及び直接メタノール燃料電池などの低温燃料電池におけるアノード触媒及びカソード触媒としても使用されている。Ptの表面積が大きいと触媒活性が高くなることが予期される。しかしながら、無電解めっき及び電気めっきは、通常、表面積の小さい緻密なPt層を生じさせる。
【0005】
米国特許第3486928号(1969)において、Rhoda及びVinesは、Na2Pt(OH)6と、NaOHと、エチルアミンと、ヒドラジンとを含有する、無電解Ptめっき用の溶液を使用した。しかしながら、この系ではヒドラジンが安定ではないので、その場での添加が必要となる。独国特許第2607988(1977)、特開昭59−80764号(1984)及び米国特許第6391477号(2002)では、Pt(NH32(NO22 がPt塩として使用されており、ヒドラジンはめっき用の還元剤であった。Pt(NH32(NO22 塩は、水には溶解し難い。その溶解度を増大させるために、その溶液に水酸化アンモニウムを添加する場合もある。これは、マイクロチャンネル装置などの小さいチャンネル内にPtをめっきするに際していくつかの問題をもたらす。多くのめっき工程は、目標のローディングを達成することが必要である。例えば、1インチ×0.18インチ×0.046インチの寸法のマイクロチャンネルにおいて10mg/インチ2のPtローディングを得るためには、2g/LのPt溶液(例えば、Pt(NH32(NO22塩)を使用することにより17回のめっきプロセスが必要となる。これに対し、30g/LのPt溶液を使用すれば1回の被覆しか必要ない。本発明者は、Pt(NH34(NO32及びPt(NH34(OH)2を無電解めっき用のPt塩として使用できることを発見した。これら両者の塩は、水に大量に溶解できる。しかし、上記のように、生成されるPt層はPt表面積が低い。
【0006】
独国特許第2607988(1977)には、亜硝酸アミンロジウム、すなわち(NH3xRh(NO2yと、還元剤としてのヒドラジンと、錯化剤としての水酸化アンモニウムとを使用した無電解ロジウムめっき浴の例が報告されている。この亜硝酸アミンロジウムは、塩化ロジウムと過剰量の亜硝酸ナトリウム及び水酸化アンモニウムとの反応によって製造された。同様に、米国特許第6455175号(2002)には、亜硝酸アミンロジウムと、水酸化アンモニウムと、ヒドラジン水和物とを使用した無電解Rhめっき用の組成物が報告されている。この特許では、亜硝酸アミンロジウムは、K3[Rh(NO23Cl3]とNH4OHとを反応させることによって合成された。これら2つのプロセスについて、Rh還元プロセスは、多数の泡が発生するほどに速い。また、この溶液ではRhの沈殿も見られる。泡の形成及びRhの沈殿のため、これらのめっきプロセスは、マイクロチャンネル装置を被覆するのには現実的でないことは明らかである。また、これらの泡は、Rh被膜の不均質性も促進させる。さらに、Rhは高価なため、Rhの沈殿によりコストも増加する。
【0007】
特開昭58−204168号(1983)では、塩化ロジウムアミンと、安定剤としてのヒドロキシルアミン塩と、還元剤としてのヒドラジンとを使用したRhめっき浴が提供された。このRh(NH36Cl3は、RhCl3と濃縮NH4OHとをオートクレーブ中150℃及び20気圧で反応させることによって製造された。しかしながら、Rh(NH36Cl3は、僅かにしか水に溶解できないため、非常に多くの廃液を処理するためにめっきプロセスが非常に高価なものになる。また、容量/表面比が小さいため、マイクロチャンネル装置について目標のローディングを得るには多数のめっきサイクルが必要である。
【0008】
特開2000−282248号(2000)には、アンモニウムジ(ピリジン−2,6−ジカルボキシレート)ロジウム(III)と、RhClx(NH36-x(xは0〜3を表す)と、酢酸ロジウムと、塩化ロジウムのトリエチレンテトラアミン錯体又はロジウムのジエチレントリアミン錯体とを使用したRhめっき浴が報告されている。めっきは、好ましくは8〜9のpH及び70〜95℃で実施される。
【0009】
無電解めっきには、ほとんどの基材をめっきすることができること及びほとんどの形状に対して均質な被膜ローディングを達成できることを含め、他のめっき方法を超える多くの利点があるが、無電解めっきで製造された被膜は緻密で表面積が小さい。従来の無電解めっき被膜には高い金属負荷が必要であり、また、特に高価な金属を効果的に使用することが経済的な理由のみならず技術的な理由で重要である貴金属の触媒用途についてそれらの有用性を制限する小さい表面積の被膜が生じる。したがって、多孔質で表面積の大きい被膜を生じさせ、かつ、貴金属だけでなく他の金属と共に使用できる無電解めっき方法に関する要望が存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第1628190号明細書
【特許文献2】国際公開第2006/127889号パンフレット
【特許文献3】米国特許第3486928号明細書
【特許文献4】独国特許第2607988号明細書
【特許文献5】特開昭59−80764号公報
【特許文献6】米国特許第6391477号明細書
【特許文献7】米国特許第6455175号明細書
【特許文献8】特開昭58−204168号公報
【特許文献9】特開2000−282248号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の概要
本発明は、多孔質金属被膜を生じさせるための新規な無電解めっき方法を提供する。多孔質触媒金属は、高い表面積を有するため、化学反応において高い活性を示す。この多孔質被膜は、同じ露出表面の表面積を達成するために低い金属負荷しか要しないので、経済的により一層魅力的な被膜となる。この無電解めっき方法は、Pt、Pd、Rh、Ag、Cu、Au、Fe、Co、Re及びそれらの合金などの金属を沈着させる。例えば、Pt合金触媒、例えば、Pt−Rh、Pt−Pd、Pt−Au、Pt−Pd−Au、Pt−Cu及びPt−Agを製造するために、この形成された多孔質Ptを使用することができる。
【0012】
第1の態様では、本発明は、基材上に金属被膜を形成させる方法であって、次の工程:
金属錯体を含む液体組成物を準備し;
該基材と微粒子とを接触させ;
該基材と該液体組成物とを接触させ;
該金属錯体と還元剤とを反応させ;そして
該微粒子を除去して該基材上に多孔質金属被膜を形成させる
ことを含む方法を提供する。該多孔質金属被膜は、サイズが微粒子に相当する、金属被膜内に分散した細孔を含有する。少なくとも当初は、微粒子と細孔のサイズは、粒子が酸化又は溶解するため概ね同じである;しかしながら、細孔のサイズは、多孔質金属被膜がその後加熱され又は腐食条件に曝された場合には変化する可能性がある。また、本発明は、この方法によって作製された金属被膜又は金属膜も包含する。また、本発明は、少なくとも一つの内部マイクロチャンネル壁が本発明の方法によって作製された多孔質金属被膜を備えるマイクロチャンネル装置も包含する。
【0013】
いくつかの実施形態では、多孔質被膜は、追加の金属、酸化物又はゾルの添加によって改質される。いくつかの好ましい実施形態では、還元剤は、前記組成物をマイクロチャンネルに添加する前に該組成物に添加される。或いは、還元剤は、液体組成物と基材とを接触させた後に添加できる。好ましくは、微粒子は、酸素の存在下で焼成することによって除去される重合体ミクロスフェアである。
【0014】
別の態様では、本発明は、
緻密基材、
該緻密基材に付着した多孔質金属、及び
次の特徴の一つ以上:該多孔質金属内の細孔を満たす第2材料(該多孔質金属に加えて)であってイオン伝導体を含むもの;又は該多孔質金属において少なくとも1ミクロンの平均細孔サイズ;又は該多孔質金属において細孔サイズの二峰性分布;又は100m2/m3を超える多孔質金属の表面積
を備える触媒構造を提供する。本発明の構造は、上記特徴の任意の組合せを備えることができる。好ましくは、緻密基材は、マイクロチャンネル装置の金属壁を備える。別の実施形態では、緻密基材は電極を備える。また、本発明は、本発明の構造を備える化学反応器、化学分離器又は燃料電池などのマイクロチャンネル装置も包含する。
【0015】
さらなる態様では、本発明は、表面上に金属の層を形成させる方法であって、次の工程:
(1)表面上に金属を無電解めっきし;
(2)該無電解めっき金属にブロッキング配位子を結合させ;そして
(3)工程(2)から得られた材料上に同一の又は異なる金属を無電解めっきすること
を含む方法を提供する。
【0016】
別の態様では、本発明は、膜の製造方法及び得られた膜を提供する。膜は、基材から被膜を除去してフィルム様(又はリボン)材料を形成させることによって形成できる。このフィルム様材料を反対側から処理して細孔を部分的に又は完全に満たすことができる。別の実施形態では、膜は、細孔を含む多孔質基材上に、めっき材料が充填される十分に小さな孔又は細孔を無電解めっきによって形成できる。活性膜材料は、多孔質基材、1種以上の無電解めっき金属又はこれら2相の組合せであることができるであろう。さらに別の実施形態では、小さな孔を含む、予め準備された膜を、該膜の反対側から金属及び還元剤を導入し、そしてこれらをそれら2つの側の間にある孔で反応させることによって無電解めっきを行い、これらの孔内でめっきし、それによって膜を密閉することで漏れ止めにすることができる。
【0017】
用語解説
「二峰性細孔分布」とは、細孔が次の2つの別個の重複しないサイズ範囲に実質的に分けられる材料における分布をいう:微粒子のサイズに相当する比較的大きな細孔からなる群及び比較的小さな細孔の第2の群。好ましくは、大きな細孔は、0.1〜10マイクロメートル(μm)のサイズ範囲内にあり、小さな細孔は10nm以下、いくつかの実施形態では1〜10nmの範囲内にある。好ましくは、全細孔容量の少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%が、二峰性分布を決める2つの範囲内にある。
【0018】
「複合マイクロチャンネル」とは、次の特性の一つ以上を備える装置のものをいう:少なくとも1個の連続したマイクロチャンネルが、少なくとも45°、いくつかの実施形態では少なくとも90°の屈曲部、いくつかの実施形態ではU屈曲を有すること;50cm以上の長さ又は20cm以上の長さを2mm以下の寸法とともに有すること、いくつかの実施形態では50〜500cmの長さを有すること;少なくとも2個のサブチャンネルに平行に分かれた、いくつかの実施形態では2〜4個のサブチャンネルに平行に分かれた、少なくとも1個のマイクロチャンネルを有すること;少なくとも1cmの隣接長さを有する少なくとも2個の燐するチャンネルを有し、これらのチャンネルは、共通するマイクロチャンネル壁に沿って複数のオリフィスで連結され、ここで、オリフィスの領域は、これらのオリフィスが位置するマイクロチャンネル壁の領域の20%以下になり、しかもそれぞれのオリフィスは、1.0mm2以下、いくつかの実施形態では0.6mm2以下、いくつかの実施形態では0.1mm2以下であること(これは、特に挑戦的な配置である。というのは、孔を詰まらせることなく被膜を被覆しなければならないからである);又は、少なくとも1cmの長さを有する少なくとも2個、いくつかの実施形態では少なくとも5個の平行なマイクロチャンネルが一体型のマニホールドに至る開口部を有し、ここで、該マニホールドは、平行なマイクロチャンネルの最小寸法の3倍に過ぎない少なくとも一つの寸法を有すること(例えば、これら平行なマイクロチャンネルの一つが1mmの高さ(平行なマイクロチャンネルのセットにおいて最も小さな寸法として)を有する場合には、該マニホールドは、せいぜい3mmの高さを有するに過ぎないであろう)。一体形マニホールドは、組立装置の一部であって、接続管ではない。複合マイクロチャンネルは、内部マイクロチャンネルの一種である。
【0019】
これらの無電解めっき被膜は、好ましくは組立後の被覆である。「組立後」被覆は、三次元マイクロチャンネル装置上に適用される。これは、複数のシートを積層することによって作製された多層装置での積層工程の後か、又は所定のブロックにマイクロチャンネルが作られた装置などのマルチレベル製造装置の製造後のいずれかである。この「組立後」被覆は、複数のシートを被覆し、次いで組み立て又は結合させる方法によって作られた装置や、1個のシートを被覆し、次いでこのシートを広げて三次元構造を作製することによって作られた装置と対比できる。例えば、被覆されたシート(その後広げられる)は、被覆されていない細長い縁部を有することができる。細長い縁部などの全てのタイプの被覆されていない表面は、反応条件下で腐食又は反応を受け得る。つまり、装置を組立後に被覆して内部表面の全てを腐食から防護することが有益である。組立後被覆は亀裂の充填及び製造の容易さなどの利点を与える。さらに、アルミナイドその他の被膜は、被覆された複数のシートのスタックの拡散接合を妨害し、そして結合を劣化させる可能性がある。というのは、アルミナイドは、積層装置を結合させるための理想的な材料ではなく、高温での機械的要求を満たすことができないからである。ある装置が組立後被覆によって作製されているのか否かは、間隙充填、亀裂充填、元素分析(例えば、シート表面対結合領域の元素組成)といった観測可能な特性によって判定できる。典型的には、これらの特性は、光学顕微鏡、電子顕微鏡又は電子顕微鏡と元素分析との併用によって観察される。したがって、所定の装置については、組立前に被覆された装置と組立後に被覆された装置とは相違するので、周知の分析技術を使用した分析によって、被膜がマイクロチャンネル装置の組み立て前に適用されたのか組立後に適用されたのか(又は穿孔されたマイクロチャンネルの場合には製造前に適用されたのか製造後に適用されたのか)を立証できる。
【0020】
「分離器」とは、1種以上の所定の成分を流体から分離することのできる所定のタイプの化学処理装置のことである。例えば、吸着材、蒸留装置又は反応蒸留装置などを備える装置である。
【0021】
マイクロチャンネル反応器は、少なくとも一の内部寸法(壁〜壁で、触媒はカウントしない)が1cm以下、好ましくは2mm以下(いくつかの実施形態では約1.0mm以下)でかつ100nmを超える(好ましくは1μmを超える)、いくつかの実施形態では50〜500μmの少なくとも1個の反応チャンネルによって特徴付けられる。反応チャンネルとは、触媒を含むチャンネルのことである。マイクロチャンネル装置は、触媒含有反応チャンネルを必要としないことを除き、同様に特徴付けられる。高さと幅の両方は、該反応器を介した反応体の流れの方向に対して実質的に垂直である。また、マイクロチャンネルは、少なくとも1個の出口とは別の少なくとも1個の入口の存在よっても定義される。マイクロチャンネルは、単にゼオライト又はメソ細孔材料を貫通するチャンネルだけではない。反応マイクロチャンネルの高さ及び/又は幅は、好ましくは約2mm以下、より好ましくは1mm以下である。反応チャンネルの長さは、典型的には他のものよりも長い。好ましくは、反応チャンネルの長さは、1cmを超え、いくつかの実施形態では50cmを超え、いくつかの実施形態では20cmを超え、いくつかの実施形態では1〜100cmである。マイクロチャンネルの側面は、反応チャンネル壁部によって画定される。これらの壁は、好ましくは、セラミック、スチールのような鉄系合金又はモネルなどのNi系、Co系若しくはFe系超合金といった硬質材料から作られる。該反応チャンネルの壁部用材料の選択は、反応器が目的とする反応によると考えられる。いくつかの実施形態では、反応室の壁は、耐久性がありかつ熱伝導性の良好なステンレススチール又はインコネル(商標)から構成される。これらの合金は、硫黄が少ないことを要し、いくつかの実施形態ではアルミナイドの形成の前に脱硫処理に付される。典型的には、反応チャンネル壁は、マイクロチャンネル装置用の主要な構造的支持体となる材料から形成される。該マイクロチャンネル装置は、既知の方法(ここで説明した被覆及び処理を除く)によって製造でき、いくつかの好ましい実施形態では交互に配置されるプレート(「シム」としても知られている)を積層することによって作られ、好ましくは、この場合、反応チャンネルのために設計された複数のシムは、熱交換のために設計された複数のシムに挟まれる。ある種のマイクロチャンネル装置は、所定の装置内に積層される少なくとも10個の層を有し、これらの層のいずれかは、少なくとも10個のチャンネルを含む;該装置は、数個のチャンネルを有する他の複数の層を含有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図面の簡単な説明
【図1】図1は、ミクロスフェアなしのPtめっきクーポンのSEM顕微鏡写真である(例1)。
【図2】図2は、ミクロスフェア薄め塗膜を有するPtめっきクーポンのSEM顕微鏡写真である(例2)。
【図3】図3は、めっき溶液中にミクロスフェアを有するPtめっきクーポンのSEM顕微鏡写真である(例3)。
【図4】図4は、その後Rhでめっきされる多孔質Pt層のSEM顕微鏡写真を示す。
【図5】図5は、めっき溶液中にPVAを有するPtめっきクーポンのSEM顕微鏡写真を示す(例6)。
【図6】図6は、微粒子なしで形成されかつ空気中900℃で焼成されたPtめっきクーポンのSEM顕微鏡写真を示す。
【図7】図7は、空気中において様々な時間で焼成した後の多孔質Pt層のSEM顕微鏡写真を示す(例えば例3)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
発明の説明
固体金属被膜は、液体組成物から形成される(金属錯体は、液体に溶解する)。出発材料は、典型的には金属錯体の水溶液を含む。該金属錯体は、無電解めっきに使用するのに好適な任意の金属錯体であってよい。例としては、Pt(NH34(OH)2及び水酸化RhアミンRh(NH3x(OH)yが挙げられる。この技術は、無電解めっきによって被着できる金属に幅広く適用できる。可能性のある他の配位子としては、硝酸塩、亜硝酸塩、塩化物、臭化物、沃化物、硫酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、酢酸塩及び蓚酸塩が挙げられるがこれらに限定されない。好ましい実施形態では、該液体組成物は、Pt、Pd、Rh、Ag、Cu、Au、Fe、Co若しくはRe又はこれらの金属の組合せを含む。これらの金属は、無電解析出のための既知の方法に知られており、また有用な触媒でもある。いくつかの好ましい実施形態では、液体組成物は、1種以上の金属を0.0001重量%〜2.0重量%、より好ましくは0.2〜2.0重量%含む(より好ましくはPt、Pd、Rh、Ag、Cu、Au、Fe、Co及びReから選択される1種以上の金属)。重量%とは、金属原子の質量を液体組成物の質量で割ったもに100をかけたものをいう。液体組成物は、好ましくは少なくとも5のpHを有する。
【0024】
重合体その他の除去可能な小さな粒子をめっき中に無電解めっき溶液に添加したり、めっき前に基材上に上塗りしたりすることができる。これらの重合体は、ポリスチレンラテックス、ポリエチレン、ポリエチレングリコール及びそれらの誘導体、アルデヒド重合体、ポリエチレンオキシド、ポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)、ポリプロピレングリコール、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリオキシアルキレン、ポリエステル及びポリカーボネートであることができるが、これらに限定されない。該重合体は、好ましくは重合体微粒子の状態である。該微粒子は、好ましくは略球形であるが、棒又は不規則形状などの他の形状であってもよい。酸素の存在下で加熱したとみに揮発する材料が特に望ましい。というのは、これらのものは焼成により容易に除去できるからである;しかしながら、溶解可能な材料も使用でき、好適な1種以上の溶媒で処理することにより除去できる。一つの好ましい実施形態では、表面を重合体粒子の水分散液で予備処理する。別の好ましい実施形態では、無電解めっき組成物(好ましくは水性)は、金属錯体と、重合体粒子の分散体とを含み、金属及び重合体を同じ工程で付着させる。
【0025】
微粒子は、無電解めっき中に被膜内に容易に取り込まれ、かつ、無電解めっき工程後に少なくとも部分的に除去できる任意の材料を含むことができる。炭化水素、例えば、重合体、炭素、ワックス、でんぷんなどを取り込み、後で例えば熱分解又は燃焼又は溶媒抽出によって除去することができる。また、微粒子は、除去可能な材料と除去可能でない材料との混合物を含むこともできる。除去可能でない材料は、燃焼や溶媒抽出では除去されないものである。溶媒抽出を使用する場合には、その溶媒は通常有機溶媒である。除去可能でない材料は、除去可能な材料とは別の粒子又は同じ粒子の範囲内にあることができる。除去可能でない材料としては、ゾル又はゲル先駆物質、金属酸化物、金属粒子などを挙げることができる。被覆層から除去されない材料は、追加の触媒機能(例えば バイメタル触媒)を与え、又は多孔質金属構造の焼結を阻害し、又は他の機能を与えることができる。除去可能でない材料が除去可能な材料と同じ粒子の範囲内にある場合には、得られる構造は、除去可能でない材料が細孔内で露出することができる。場合によっては、除去可能でない材料は、燃え尽き中又はその後の加熱処理中に、被着した金属に移動し及び/又はそれと反応するように選択できる。いくつかの好ましい除去可能でない材料としては、ゼオライト、Al23、SiO2、ZrO2、TiO2、CeO2、MgO及びそれらの混合物が挙げられる。
【0026】
微粒子のサイズは、好ましくは0.001〜1000ミクロン(μm)、より好ましくは0.01〜100ミクロンの範囲、いくつかの実施形態では少なくとも1μm、いくつかの実施形態では0.1〜10ミクロンの範囲内にある。粒子の除去後、この金属には、除去された粒子のサイズを有する細孔が残る。場合によっては、2種以上のタイプの粒子を使用することができる;最初に除去される(例えば溶媒によって)第1のタイプ及びその後除去される(例えば焼成や第2の溶媒によって)第2のタイプ。これを使用して二峰性細孔分布を創り出すことができる。相互貫入ネットワークを形成するために、第2材料を使用して細孔を充填することができる。
【0027】
金属及び微粒子は、粉末(酸化物、触媒担体、ゼオライトなど)、ガラス、繊維、セラミック材料及び金属材料を含め、任意の基材上に適用できる。これらの基材は、様々な形状大きさを有する平面又は改質表面を有することができる(例えば、細孔又はマイクロチャンネル)。これらの基材の表面は、Rhや別の金属でめっきする前に、Cu、Pt及びPdといった他の材料で処理できる。また、この方法は、複数の合金(例えば、Pt−Rh合金)を同時にめっきするためにも使用できる。該基材の表面は、無電解めっき前に金属、遷移金属酸化物、希土類金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物又はこれらの組合せで予備被覆することにより改質されていてもよい。金属酸化物(好ましくは希土類金属酸化物を含む)の予備被覆による処理は、無電解めっきされる金属の付着を向上させることができる。これらの基材は、平面(例えば、平坦なチャンネル壁)、様々な形状に改質された表面(例えば、エッチングされた特徴、パターン化された特徴を有するマイクロチャンネル壁)、フォーム、フェルトなどであることができる。
【0028】
それらの広い態様では、本発明の技術は、金属、セラミック及び任意の形状のプラスチックを含む様々な基材に適用できる。緻密基材は、好ましくは金属(多孔質金属ではない)であり、スチール、ステンレススチール及び超合金などのような従来の周知の材料である。特に好ましい実施形態では、多孔質金属被膜は、マイクロチャンネル装置内にある1個のマイクロチャンネル(又はより典型的には複数のマイクロチャンネル)の1以上の表面上に形成される。マイクロチャンネルは、1cm以下、好ましくは2mm以下、いくつかの実施形態では0.1mm〜1mmの少なくとも一つの寸法を有する。マイクロチャンネル装置は周知であり、本発明者は、マイクロチャンネルを被覆するのに無電解めっきが特に好適であることを発見した。本発明は、組立後被膜を形成させ、そして複合マイクロチャンネル内のマイクロチャンネル上に被膜を形成させる際に特に有用である。
【0029】
マイクロチャンネル装置は、典型的には、多数のチャンネルを有する。多くの用途では、無電解めっき溶液は、選択したチャンネルに添加される;例えば、少なくとも3個のチャンネルを無電解めっき溶液で処理すると共に、同一の装置内の少なくとも2個の他のチャンネルは処理しない。いくつかの好ましい実施形態では、選択したマイクロチャンネルの全ての側(1個の側とは対照的に)を触媒金属で被覆する。この触媒材料は、多孔質金属又は相互貫入ネットワークを有することができる。
【0030】
相互貫入ネットワークのための基材は、先に言及した基材のうち任意のものであることができる。好ましい実施形態では、該基材は緻密材料、好ましくは金属である。無電解で適用された被膜は基材に付着し、かつ、上記細孔のサイズ(又はIPNの場合には、細孔を充填する第2材料)のうちの任意のものを有することができる。
【0031】
本発明は、様々な無電解めっき条件に対して幅広く適用できる。金属層は、金属錯体と還元剤とを反応させることによって溶液から付着する。典型的には、還元剤は、ヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、ホウ酸ジメチルアミン、ホウ酸ジエチルアミン及び水素化ホウ素ナトリウム並びにそれらの混合物、好ましくはヒドラジン又は水素化ホウ素ナトリウムを挙げることができる。付着時に、溶液のpH(液体組成物+還元剤+任意の追加成分)は、好ましくは 少なくとも10である。この付着は室温度又はより迅速な付着のために高温で実施できる。
【0032】
層の無電解形成後に、重合体などの除去可能な材料を除去し、多孔質金属層を形成させる。この重合体は、焼成によって又は溶媒に溶解させることによって除去される。焼成温度は、100〜800℃、好ましくは400〜600℃の範囲内にあることができる。これらの溶媒としては、アルコール、炭化水素、アセトン、ベンゼン及び任意の他の有機溶媒を挙げることができる。
【0033】
重合体は、好ましくは、酸素の存在下に少なくとも400℃の温度で焼成することによってめっきから除去される。いくつかの実施形態では、焼成は、流動空気又は酸素の存在下で実施される。
【0034】
多孔質Rh及びPtは、高い表面積を有し、かつ、蒸気改質、特に蒸気メタン改質(SMR)、部分酸化、選択的酸化及び燃焼などの様々な化学反応用の優れた無電解めっき触媒であると考えられる。無電解めっきロジウム金属は、蒸気メタン改質及び燃料リッチ燃焼について良好な触媒性能を示す。Rhの無電解めっきは、スラリー薄め塗膜と比較すると、特に化学反応体(例えば酸素)の段階的添加のためのジェットホールデザインを有するマイクロチャンネル装置のための単純でかつ質の高い技術である。多孔質Rh表面は、その高い表面積のため、多孔質でないRhめっき表面や緻密なPhめっき表面よりも高い触媒活性を示すことが予期される。
【0035】
得られた無電解めっき金属は、明確な多孔度(粒子のサイズによって制御された)を有することができる。例えば、所望ならば、細孔のサイズは非常に均一であることができ、細孔容量の80%以上は、サイズが20%以下で変化する細孔から構成される(BET又はHg多孔度測定器で測定される)。好ましい実施形態では、多孔質構造はランダムでありかつ等方性である。
【0036】
場合によっては、多孔質金属層にわたって第2の金属を被覆することができる。該第2金属は、微粒子の存在下又は非存在下で被着できる。これは、任意の所望数の層のために繰り返すことができる。
【0037】
微粒子の存在下で金属を無電解めっきすることによって形成された多孔質被覆表面を、金属、酸化物、又は除去可能な材料の除去後に2種以上の材料の相互貫入ネットワークを形成させるための他の材料の添加によりさらに機能化させることができる。この添加は、含浸、蒸着、無電解被覆その他の技術によって行うことができる。添加された材料は、追加の触媒活性を与え、付着した多孔質材料の活性を改善させ、構造支持体となり、又は処理条件下若しくはプロセス条件下で構造進化を抑制することができる。また、添加された材料は、酸素、ヒドロキシル又は水素イオン伝導性などの輸送特性を有することもできる。このような相互貫入ネットワークは、燃料電池、バッテリーその他の電気装置用の優れた電極となることが予期される。導電性及びイオン伝導性を有する材料の相互貫入ネットワークも膜として機能することができる。イオン伝導性を有する好ましい材料としては、Mg、Ca、Yその他の希土類金属により立方型で安定化されていてよいジルコニア、Gd、Euその他の希土類金属によって安定化されていてよいセリア、式:M1M2Ox(式中M1はFe、Co、Cr又はそれらの組合せから選択され、M2はBa、Sr、La、希土類金属又はそれらの組合せから選択される。)のペロブスカイト、BiVMOx材料(ここでMは任意の遷移金属又はそれらの組合せであることができる。)の酸化物が挙げられる。好ましくは、導電相及びイオン伝導相のIPNにおける導電相の部分容量は、0.1〜0.9、より好ましくは0.2〜0.8 、最も好ましくは0.3〜0.7である。特に有利な組合せは、金属相としてのPt及び酸素伝導相としてのイットリア安定化ジルコニア、並びに米国特許第5,306,411号(引用により本明細書に含める)に記載された他の組合せである。
【0038】
多孔質無電解めっき被膜を作製する例がRh、Pt及びPt−Rhで示されている。一例では、アルミナ表面を、Pt(NH34(OH)2、ヒドラジン及び1.75マイクロメートルポリスチレンミクロスフェアを含有する水性組成物を数時間にわたって処理した。被覆を乾燥させ、そして空気中で焼成した。得られたPt被膜は非常に多孔質であった。次いで、Rh層をミクロスフェアの非存在下で無電解めっきした。驚くべきことに、Rh層は、従来のPt層(ミクロスフェアなしで製造された)へのRh被着と比較して数倍の速度で被着した。これらの被膜をSEMで特徴付けし、そしてマイクロチャンネル内で燃料リッチ燃焼を触媒させることについて試験した。ミクロスフェアを使用して製造された触媒は、非常に高いRh濃度(非常に速い被着速度のため)を含有し、かつ、実質的に改善した燃焼性能を示した。ミクロスフェアの存在下でのRh無電解めっきも同様に多孔質Rh被膜を生じさせた。
【実施例】
【0039】
例1(基準)
Pt(NH34(OH)2、(0.2重量%のPt)及び0.2重量%のN24・H2Oからなる溶液を調製した。アルミナ化合金617クーポンを、使用前に1050℃で10時間熱処理した。このクーポンの表面をα−Al23スケールで被覆した。このクーポンを室温で一晩前記溶液中につるした。11.4mg/インチ2のPtを該クーポン上にめっきした。その後、このPtめっきクーポンを同じ組成の新たなPtめっき溶液に3時間置いた。次に、このクーポンを洗浄し、そして空気中において500℃で1時間焼成した。最終Ptローディングは、15.7mg/インチ2であった。SEM顕微鏡写真は、Pt層が平坦でかつ緻密であることを示す(図1)。
【0040】
例2
アルミナ化インコネル617の熱処理及びPtめっきクーポン(15mg/インチ2のPt)を0.11mgのポリスチレンミクロスフェア(1.7μm)で被覆し、そして室温で乾燥させた。次に、このクーポンをPt(NH34(OH)2、(0.2重量%のPt)及び0.2重量%のN24・H2Oからなる溶液中に20時間にわたって室温で置いた。次に、このクーポンを洗浄し、そして空気中において500℃で1時間焼成した。11mg/インチ2のPtを該クーポン上にめっきした。SEM顕微鏡写真は、Pt層の表面が多孔質であることを示す(図2)。二峰性細孔(1.7μm及び50〜100nm)が観察される。
【0041】
例3
アルミナ化インコネル617の熱処理及びPtめっきクーポン(15mg/インチ2のPt)をPt(NH34(OH)2、(0.2重量%のPt)、0.2重量%のN24・H2O及び1.0重量%ポリスチレンミクロスフェア(1.7μm)からなる溶液中に20時間にわたって室温で置いた。次に、このクーポンを洗浄し、そして空気中において500℃で1時間焼成した。12mg/インチ2のPtを該クーポン上にめっきした。SEM顕微鏡写真は、表面Pt層が非常に多孔質であることを示す(図3)。Ptの粒度は、100〜200nmの範囲内にある。
【0042】
例4
アルミナ化インコネル617クーポンを使用前に1050℃で10時間熱処理した。このクーポンの表面をα−Al23スケールで覆う。続いて、このクーポンをPt(NH34(OH)2、(0.2重量%のPt)及び0.2重量%のN24・H2Oからなる溶液中に置く。めっきを室温で4時間にわたり実施する。Ptローディングは3.0mg/インチ2である。
PtめっきクーポンをRh(NH3x(OH)3として0.23重量%のRh、4.4重量%のNH4OH、15.4重量%のN24・H2O及び1.0重量%のポリスチレンミクロスフェア(1.75μm)からなる溶液中に21時間にわたって室温で置いた。このクーポンをH2Oですすぎ、そして空気中において500℃で1時間焼成した。10mg/インチ2のRhを該クーポン上にめっきした。SEM顕微鏡写真は、図4に示すように、Rh層が多孔質及び三峰性からなることを示す。
【0043】
例5
Pt(NH34(OH)2、(0.2重量%のPt)及び0.2重量%のN24・H2Oからなる溶液を調製した。アルミナ化合金617クーポンを使用前に1050℃で10時間熱処理した。このクーポンの表面をα−Al23スケールで被覆した。このクーポンを溶液中に室温で16時間つるした。7mg/インチ2のPtを該クーポン上にめっきした。その後、このPtめっきクーポンを同じ組成の新たなPtめっき溶液に5時間置いた。全16mg/インチ2の緻密Ptを該クーポン上にめっきした。続いて、緻密PtめっきクーポンをPt(NH34(OH)2、(0.2重量%のPt)、0.2重量%のN24・H2O及び1.0重量%のポリスチレンミクロスフェア(1.7μm)からなる溶液中に7時間にわたり室温で置いた。その後、このPtめっきクーポンをミクロスフェアを有する新たなPtめっき溶液中に10時間置いた。次に、このクーポンを洗浄し、そして空気中において500℃で1時間焼成した。16mg/インチ2の多孔質Ptをクーポン上にめっきした。
【0044】
触媒クーポンを2インチ超のマイクロリアクターで試験した。この反応器は、2インチの長さを有する0.5インチOD合金617棒から作られる。0.377インチ×0.021インチ×2インチのサイズのスロットを中央部で切断して触媒クーポンと嵌め合わせ、また、該挿入物に隣接する別のスロットは、反応体ガスを触媒挿入物によって流すための、0.335インチ×0.01インチ×2インチで切断されたEDM(放電加工)ワイヤーである。このマイクロリアクターを触媒クーポンのローディング前にアルミナ化しそして熱処理した。触媒を3.2ミリ秒の接触時間、0.6%のCH4、2.0%のCO、4.3%のO2、14.5%のH2O及び残部N2の条件下で試験した。850℃で、初期CH4転化率は67%であり、CO転化率は100%であった。操業1700時間後に、CH4転化率は77%まで増加し、CO添加率は100%を維持した。試験期間中に失活は観察されなかった。
【0045】
例6(比較例)
アルミナ化インコネル617クーポンを、使用前に1050℃で10時間にわたり熱処理した。このクーポンの表面をα−Al23スケールで覆った。このクーポンをPt(NH34(OH)2、(0.2重量%のPt)及び0.2重量%のN24・H2Oからなる溶液中に置く。めっきを室温で18時間にわたり実施する。Ptローディングは、18.0mg/インチ2であった。このPtめっきクーポンをPt(NH34(OH)2、(0.2重量%のPt)、0.2重量%のN24・H2O及び1.0重量%のポリビニルアルコール(PVA,Alfa Aesar)からなる溶液中において20時間にわたって室温で置いた。このめっきプロセスを一回繰り返した。このクーポンを洗浄し、そして空気中において500℃で1時間焼成した。追加の9mg/インチ2のPtをクーポン上にめっきする。しかしながら、SEM顕微鏡写真は、表面Pt層が多孔質ではなかったことを示す(図5)。これは例3とは相違する。
【0046】
例7(熱処理後の形態)
例3で得られた多孔質構造に追加の熱処理を施した。図7から分かるように、大きな細孔の形態は、熱処理後にもそのまま存在している。
【0047】
結果の検討
合計8タイプの重合体を、従来の細孔形成体であるポリビニルアルコール(PVA)、ポリエステル及びP123(ポリ(エチレンオキシド)・ポリ(プロピレンオキシド)・ポリ(エチレンオキシド)トリブロック共重合体)を含めた細孔形成用材料として試した。これらのもののうち、ポリスチレンビーズ(Bangs Labsから得られたもの。粒径=1.75μm、懸濁液のpH=7.4)のみが、細孔の分散した多孔質Pt層を形成した。データを次の表に与える。
【表1】

【0048】
本発明は、本発明者の実験に基づく特定の機構には限定されないが、本発明者は、次の説明を提案することが可能である。ミクロスフェアの付着は複雑なプロセスである。ミクロスフェアは、ブラウン運動のため、めっき溶液内を絶えず移動する。これらのものが移動すると、これらのものは、互いに衝突するのみならず基材とも衝突し得る。衝突の頻度は、ミクロスフェアの濃度と、ミクロスフェアがいかに速く移動するかによる。同じ重量濃度(例えば、本発明者の実験では1%)については、ミクロスフェアが小さければ濃度数が高い。さらに、小さくて軽い粒子は、大きくて重い粒子よりも速く移動する。したがって、小さくて軽い粒子がより頻繁に衝突する。それぞれの衝突でミクロスフェアがそれらの標的に結合する場合には、より小さくて軽い粒子がより速く被着することが予想できる。表面上に多孔質白金層(よく分散した大きな細孔を有する)を生じさせるためには、該表面上に白金及び重合体ミクロスフェアの両方を同様の速度で被着させることが必要である。白金がミクロスフェアの被着よりも速くめっきされる場合には、緻密な白金層しか得られ得ない。白金の方が遅くめっきされる場合には、基材が完全に重合体で覆われるから、基材上に白金被膜はほとんど又は全く存在し得ない。
【0049】
複雑さを考慮すると、よく分散した重合体球を有する金属被膜を得たことは驚くべきことである。また、被着が重力による影響を比較的受けなかったことも驚くべきことである。好ましい実施形態では、マイクロチャンネルの表面を、被覆プロセスの間には静止した状態にある装置で、重力にかかわらず50%以下で変化する(全ての被覆表面について平均した厚さからの偏差)、より好ましくは20%以下で変化する多孔質金属で被覆する。好ましくは、該重合体はミクロスフェアの形態にあり、好ましくは、これらのミクロスフェアは1.4〜2.0マイクロメートル(μm)、より好ましくは1.6〜1.9μmのサイズである。好ましくは、金属はPtを含む。いくつかの好ましい実施形態では、重合体の密度は、0.90〜1.20g/ccの範囲、いくつかの実施形態では1.00〜1.10g/ccの範囲である。
【0050】
上記教示及び実施例を考慮すると、日常的な実験を通して、所望の形状のよく分散した大きな細孔(好ましくは円形細孔)を有する多孔質金属被膜(無電解めっきにより得られる)を得ることが可能である。これらの被膜は、ラネー金属及びコロイド金属溶液からの被着といった他のプロセスにより得ることのできる被膜よりも優れていると思われる。
【0051】
ブロッキング剤で改質された無電解めっき
改善された無電解被覆は、少なくとも次の3工程:(1)表面上に金属を無電解めっきし;(2)該無電解めっき金属にブロッキング配位子を結合させ;そして(3)工程(2)からの材料上に同一の又は異なる金属を無電解めっきすること、を要する改変めっき技術で作製できる。これらの工程は、所望ならば何度も繰り返すことができる。随意に、ブロッキング配位子を除去することができる。ブロッキング配位子は、工程(3)の前又は後に除去できる。また、随意に、焼成中及び/又は使用中(これは典型的には高温で実施されるであろう)に構造安定化用材料を添加して高い表面積を維持することができる。この改質は、前記のように任意の無電解金属で実施できる。この方法を使用して、装置内の選択されたチャンネルなどの所定の領域を選択的にブロックすると同時に、他の領域においては無電解めっきを続行することが可能となる。
【0052】
この配位子は、当該技術分野において価数の低い又はゼロの価数の金属に結合することが知られている任意の配位子であることができる。所望のブロッキング配位子は、溶媒や表面を処理することのできる他の材料よりも強く金属に結合するものであるが、無電解被膜を傷つけることなく熱的方法又は化学的方法によってさらに除去できる。好ましい配位子の一つがCOである。いくつかの好ましい実施形態では、該配位子は、アミン、アセテート、チオール、エーテル、ホスフェート、ホスフィン、アシル、チオカルボニルなどの結合性官能基を含む。ブロッキングは、例えば立体障害であることができる;金属粒子の最も反応性の高い部分をブロックすることにより;又は金属表面にわたって選択的に疎水性表面を創り出すことにより行う。
【0053】
ブロッキング配位子は、適当な処理によって除去できる。例えば、Pt上のCOは、不活性雰囲気又は希薄H2中において加熱(例えば900℃まで)することによって除去できる。
【0054】
構造安定化用材料は、好ましくは、薄膜を形成し、かつ、焼結に抵抗することのできるロバスト構造に緻密化する酸化物である。例としては、アルミナゾル、コロイドアルミナ、シリカゾル、チタニアゾル、金属アルコキシド(例えば、珪素アルコキシド又はチタンアルコキシド)又は金属酸化物に対する他の先駆物質が挙げられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に金属被膜を形成させる方法であって、次の工程:
金属錯体を含む液体組成物を準備し;
該基材と微粒子とを接触させ;
該基材と該液体組成物とを接触させ;
該金属錯体と還元剤とを反応させ;そして
該微粒子を除去して該基材上に多孔質金属被膜を形成させること
を含む方法。
【請求項2】
前記液体が水溶液である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記微粒子が重合体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記多孔質金属被膜が表面を有し、しかも該多孔質金属被膜の該表面上にブロッキング配位子を結合させる工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ブロッキング配位子を除去し、次いで該ブロッキング配位子が除去された表面上に同一の又は異なる金属を無電解めっきする連続工程をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記微粒子が重合体を含み、かつ、前記水性組成物中に分散している、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記微粒子が1.4〜2.0マイクロメートル(μm)の寸法範囲(直径)の重合体ミクロスフェアを含み、しかも、該ミクロスフェアにおける重合体の密度が0.90〜1.20g/ccの範囲内にある、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記基材がマイクロチャンネル壁を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記微粒子が1.6〜1.9マイクロメートル(μm)の寸法範囲(直径)の重合体ミクロスフェアを含み、しかも、該ミクロスフェアにおける重合体の密度が1.0〜1.1g/ccの範囲にある、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記液体組成物が0.2〜2.0重量%の金属を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物と前記基材とを接触させた後に該組成物に重合体ミクロスフェアを添加する、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
前記金属錯体、還元剤及び重合体微粒子を、前記基材と接触させる前に、前記水性組成物中で全て混合する、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
酸素の存在下で焼成する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記金属錯体がPtを含み、多孔質Pt被膜を形成させ、しかも、該多孔質Pt被膜にRh層を無電解的に形成させる工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法によって作製された金属被膜。
【請求項16】
請求項1に記載の方法によって作製された多孔質金属被膜を有するマイクロチャンネル壁を備えるマイクロチャンネル装置。
【請求項17】
触媒構造であって、
緻密基材、及び
該緻密基材に付着した多孔質金属、及び
次の特徴の一つ以上:
該多孔質金属内の細孔を満たす第2材料(該多孔質金属に加えて)であってイオン伝導体を含むもの;又は
該多孔質金属において少なくとも1ミクロンの平均細孔サイズ;又は
該多孔質金属において細孔サイズの二峰性分布;又は
100m2/m3を超える多孔質金属の表面積
を含む触媒構造。
【請求項18】
前記緻密基材がマイクロチャンネル装置の壁部を有する、請求項17に記載の構造。
【請求項19】
前記緻密基材が電極を有する、請求項17に記載の構造。
【請求項20】
請求項17に記載の構造を備える燃料電池。
【請求項21】
次の工程:(1)表面上に金属を無電解めっきし;(2)該無電解めっき金属にブロッキング配位子を結合させ;そして(3)工程(2)から得られた材料上に同一の又は異なる金属を無電解めっきすることを含む、表面上に金属の層を形成させる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−539332(P2010−539332A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−525073(P2010−525073)
【出願日】平成20年9月15日(2008.9.15)
【国際出願番号】PCT/US2008/076448
【国際公開番号】WO2009/036454
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(504455241)ヴェロシス インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】