説明

多孔質高分子樹脂

多孔質高分子樹脂、反応混合物、並びに該多孔質高分子樹脂の調製に用いることができる方法、及び該多孔質高分子樹脂の用途を記載する。より詳細には、前記高分子樹脂は通常階層性多孔質構造と、異なる様々な目的化合物との相互作用又は反応に用いることができる反応基と、を有する。前記反応基は、酸性基若しくはその塩、アミノ基若しくはその塩、ヒドロキシル基、アズラクトン基、グリシジル基、又はこれらの組み合わせから選択することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
多孔質高分子樹脂、多孔質高分子樹脂を調製するための方法並びに反応混合物、及び多孔質高分子樹脂の様々な使用を記載する。
【背景技術】
【0002】
高分子樹脂は様々な目的化合物の分離及び精製に広く用いられる。例えば、高分子樹脂は、イオン基の存在に基づいて、目的化合物の大きさに基づいて、疎水性相互作用に基づいて、親和性相互作用に基づいて又は共有結合の形成に基づいて、目的化合物を精製又は分離するために用いることができる。
【0003】
バイオテクノロジー産業においては、タンパク質、酵素、ワクチン、DNA及びRNAなどの様々な生体分子の大規模な分離及び/又は精製は、きわめて関心のあるものである。生体分子の分離及び精製に用いられる高分子樹脂の大部分は、スチレン/ジビニルベンゼンコポリマー又は架橋アガロースのいずれかに基づいている。スチレン/ジビニルベンゼンコポリマーの疎水性主鎖は、不純製品をもたらす多くの材料と、非特異的相互作用を起こす傾向がある。架橋アガロース樹脂は、一般的に、それほど非特異的相互作用を起こしやすいものではないが、これらの材料はかなり柔らかいゲルであることが多く、多くの生体分子に対して相対的に低容量を有する場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特に生体分子の分離及び精製のために、改善された高分子樹脂が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
多孔質高分子樹脂、多孔質高分子樹脂を調製する方法並びに反応混合物、及び多孔質高分子樹脂の様々な使用を記載する。より具体的には、通常、高分子樹脂は、目的化合物を試料中の他の分子から精製又は分離するために用いることができる、階層性多孔質構造並びに官能基を有する。高分子樹脂はしばしば親水性であり、低い非特異性吸着を有する場合がある。多数の実施形態では、高分子樹脂は高分子ビーズの形状にある。
【0006】
第一の態様では、多孔質高分子樹脂の調製に用いることのできる、反応混合物が提供される。この反応混合物は、a)フリーラジカル重合の可能なモノマー混合物と、b)粒経が0.05〜5マイクロメートルである分散又は懸濁した有機凝集体と、c)水及び水混和性である任意選択の極性有機溶媒を含む水相溶媒と、を含む、水相組成物を含有する。水相組成物のモノマー混合物は、1)架橋性モノマーと、2)官能性モノマーとを含む。架橋性モノマーは、化学式(I)の化合物を含む。
【0007】
【化1】

【0008】
式中、Rは水素又はメチルであり、Qはオキシ又は−NH−であり及びYはアルキレン又はヘテロアルキレンである。アルキレンヘテロアルキレンY基は、ヒドロキシル基で置換されているか又は置換されていない。官能性モノマーは、(a)エチレン性不飽和基と、(b)(1)酸性基若しくはその塩、(2)アミノ基若しくはその塩、(3)ヒドロキシル基、(4)アズラクトン基、(5)グリシジル基、又は(6)これらの組み合わせから選択される官能基と、を含む。
【0009】
第二の態様では、多孔質高分子樹脂の調製のための方法が提供される。この方法は、1)フリーラジカル重合可能なモノマー混合物と、2)0.05〜5マイクロメートルの、分散又は懸濁した有機凝集体と、3)水及び水混和性である任意選択の極性有機溶媒を含む水相溶媒と、を含む、水相組成物の形成を含む。水相組成物中のモノマー混合物は、i)架橋性モノマーと、ii)官能性モノマーとを含む。架橋性モノマーは、化学式(I)の化合物を含む。
【0010】
【化2】

【0011】
式中、Rは水素又はメチルであり、Qはオキシ又は−NH−であり及びYはアルキレン又はヘテロアルキレンである。アルキレン又はヘテロアルキレンY基は、ヒドロキシル基で置換されているか又は置換されていない。官能性モノマーは、(a)エチレン性不飽和基と、(b)(1)酸性基若しくはその塩、(2)アミノ基若しくはその塩、(3)ヒドロキシル基、(4)アズラクトン基、(5)グリシジル基、又は(6)これらの組み合わせから選択される第1官能基と、を含有する。更にこの方法は、モノマー混合物の重合によって、有機凝集体を含有する高分子物質を形成すること、次いでその高分子物質から少なくとも一部の有機凝集体を除去して、多孔質高分子樹脂を形成することを含む。
【0012】
第三の態様では、目的化合物の精製又は分離のための方法が提供される。この方法は、(1)酸性基若しくはその塩、(2)アミノ基若しくはその塩、(3)ヒドロキシル基、(4)アズラクトン基、(5)グリシジル基、又は(6)これらの組み合わせから選択された官能基を有する、前述の多孔質高分子樹脂の形成を含む。この方法は、多孔質高分子ビーズの少なくとも1つの官能基と反応又は相互作用する目的化合物を含有する試料を、多孔質高分子樹脂と接触させることを更に含む。ある用途では、多孔質高分子樹脂を濾過媒質の表面でクロマトグラフカラム内に配置するか又は連続多孔質マトリックス中に組み込むことができる。
【0013】
第四の態様では、目的化合物の精製又は分離のための別の方法が提供される。この方法は、(1)酸性基若しくはその塩、(2)アミノ基若しくはその塩、(3)ヒドロキシル基、(4)アズラクトン基、(5)グリシジル基又は(6)これらの組み合わせから選択される第1官能基を有する、前述の多孔質高分子樹脂の形成を含む。この方法は、多孔質重合樹脂を修飾剤で処理して第1官能基を第2官能基に変換することによって修飾多孔質重合樹脂を調整することを、更に含む。その後、第2官能基を含む修飾多孔質重合樹脂を、目的化合物を含有する試料と接触させる。目的化合物は、修飾多孔質重合樹脂の第2官能基と反応又は相互作用する。
【0014】
第五の態様では、多孔質高分子樹脂が提供される。高分子樹脂は、平均孔径が200ナノメートル未満の第一組の孔と、平均孔径が500ナノメートルを超える第二組の孔を含む、階層性多孔質構造を有する。多孔質高分子樹脂は、a)架橋性モノマーと、b)官能性モノマーとを含む、水相モノマー混合物の反応生成物である。架橋性モノマーは、化学式(I)の化合物を含む。
【0015】
【化3】

【0016】
式中、Rは水素又はメチルであり、Qはオキシ又は−NH−であり及びYはアルキレン又はヘテロアルキレンであり、Yはヒドロキシル基と置換されているか又は置換されていない。官能性モノマーは、(a)エチレン性不飽和基と、(b)(1)酸性基若しくはその塩、(2)アミノ基若しくはその塩、(3)ヒドロキシル基、(4)アズラクトン基、(5)グリシジル基、又は(6)これらの組み合わせから選択される第1官能基と、を含む。モノマー混合物中の全て又は実質的に全てのモノマーは、20未満の親油性指数を有する。ある実施形態では、多孔質高分子樹脂は多孔質高分子ビーズである。
【0017】
前述の「課題を解決するための手段」は、本発明の各実施形態又はあらゆる実施を説明することは意図しない。以下の図、「発明を実施するための形態」、及び「実施例」が、これらの実施形態をより詳細には例示する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
添付の図面と共に以下の本発明の様々な実施形態の詳細な説明を検討することで、本発明はより完全に理解され得る。
【図1】一次及び二次多孔質構造を有する、代表的な多孔質高分子ビーズ(実施例6で調製)の走査電子顕微鏡写真。
【図2】一次多孔質構造を有するが、二次多孔質構造を有さない、比較高分子ビーズ(比較実施例2で調製)の走査電子顕微鏡写真。
【図3】一次及び二次多孔質構造を有する、代表的な高分子ビーズ(実施例4で調製)の光学顕微鏡写真。
【図4】一次及び二次の多孔質構造の両方を有する、代表的な多孔質高分子ビーズ(実施例4で調製)の走査電子顕微鏡写真。
【図5】一次及び二次の多孔質構造を有する、更に別の代表的な高分子ビーズ(実施例5で調製)の走査電子顕微鏡像写真。
【0019】
本発明は種々の修正及び代替の形態に容易に応じるが、その細部は一例として図面に示しており、また詳しく説明することにする。しかしながら、その意図は、記載された特定の実施形態に本発明を限定することにないことを理解するべきである。逆にその意図は、本発明の趣旨及び範囲内にある全ての変更例、等価物、及び代替物を網羅することにある。
【発明を実施するための形態】
【0020】
多孔質高分子樹脂、多孔質高分子樹脂の調製に使用することができる反応混合物及び方法、並びに多孔質高分子樹脂の使用を記載する。より具体的には、通常、高分子樹脂は親水性であり、及び階層性多孔質構造と、それに加えて異なる様々な目的化合物との相互作用又は反応に使用することができる官能基とを有する。しばしば多孔質高分子ビーズの形態である、多孔質高分子樹脂は、試料中の他の分子から望ましい材料を精製又は分離するために使用することができる。ある実施形態では、多孔質高分子樹脂は、クロマトグラフカラム内の濾過媒質の表面上に位置するかあるいは連続多孔質マトリックス内に組み込まれている。
【0021】
用語「a」、「an」、及び「the」は、「少なくとも1つの」と互換的に用いられ、記載された要素の1つ又はそれ以上を意味する。
【0022】
用語「アルキル」は、アルカンのラジカルである一価の基を指し、飽和炭化水素である。アルキルは、直鎖、分枝状、環状、又はこれらの組み合わせであることができ、典型的には、1〜20個の炭素原子を有する。ある実施形態において、このアルキル基は1〜16個の炭素原子、1〜12個の炭素原子、1〜10個の炭素原子、1〜8個の炭素原子、1〜6個の炭素原子又は1〜4個の炭素原子を含有する。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル及びエチルヘキシルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
用語「アルキレン」は、アルカンのラジカルである二価の基を指す。アルキレンは、直鎖、分枝状、環状、又はこれらの組み合わせであることができる。典型的には、アルキレンは1〜20個の炭素原子を有する。ある実施形態では、このアルキレンは、1〜10個の炭素原子、1〜8個の炭素原子、1〜6個の炭素原子又は1〜4個の炭素原子を含有する。アルキレンのラジカル中心は、同一炭素原子上に(すなわち、アルキリデン)、又は異なる炭素原子上にあることができる。
【0024】
用語「アルコキシ」は、化学式−ORの一価の基を意味し、式中、Rはアルキル基である。
【0025】
用語「アシル」は、化学式−(CO)−Rの一価の基を指し、式中、Rはアルキルであり、(CO)は、炭素が酸素に二重結合で結合していることを意味する。代表的なアシル基は、Rがメチルであるアセチルである。
【0026】
用語「アシルオキシ」は、化学式−O−(CO)−Rの一価の基を指し、式中、Rはアルキルであり、(CO)は、炭素が酸素に二重結合で結合していることを意味する。代表的なアシルオキシ基は、Rがメチルであるアセトキシである。
【0027】
用語「アラルキル」は、化合物R−Arのラジカルである一価の基を意味し、式中、Arは芳香族炭素環基であり、Rはアルキル基である。
【0028】
用語「アリール」は、芳香族炭素環式化合物のラジカルである一価の基を意味する。アリールは1つの芳香環を有することができ、又は芳香環に結合又は縮合する5つまでの他の炭素環を含むことができる。その他の炭素環は、芳香族、非芳香族、又はこれらの組み合わせであることができる。アリール基の例としては、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、アンスリル、ナフチル、アセナフチル、アントラキノニル、フェナンスリル、アントラセニル、ピレニル、ペリレニル、及びフルオレニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
用語「アズラクトン」は、化学式
【0030】
【化4】

【0031】
を指し、
pは0又は1の整数であり、Rは水素、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、アラルキルからそれぞれ独立して選択されるか、又は両方のR基が炭素原子で一緒になってそれらの結合形態である炭素環を形成する。
【0032】
用語「カルボキシ」は、式−(CO)OHの一価の基を指し、式中、(CO)は、炭素が酸素に二重結合で結合していることを意味する。
【0033】
用語「カルボキシアルキル」は、カルボキシ基で置換されたアルキルを指す。
【0034】
用語「グリシジル」は、以下の化学式の基を指す。
【0035】
【化5】

【0036】
用語「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨードを指す。
【0037】
用語「ハロアルキル」は、ハロ基で置換されたアルキルを指す。
【0038】
用語「ヘテロアルキレン」は、チオ、オキシ又は−NR−(式中、Rは水素又はアルキル)により置換された1個以上の−CH−基を有する二価のアルキレンを指す。ヘテロアルキレンは、直鎖、分枝状、環状、又はこれらの組み合わせであることができ、60個以下の炭素原子及び15個以下のヘテロ原子を含むことができる。ある実施形態では、ヘテロアルキレンは、50個以下の炭素原子、40個以下の炭素原子、30個以下の炭素原子、20個以下の炭素原子、又は10個以下の炭素原子を含む。代表的なヘテロアルキレンとして、アルキレンオキシド又はポリ(アルキレンオキシド)が挙げられる。すなわち、ヘテロアルキレンは、化学式−(R−O)の基を少なくとも1つ含み、式中、Rはアルキレンである。本明細書で使用されるとき、用語「アルキレングリコール」と「アルキレンオキシド」は、この式の二価の基を指すために互換的に使用される。
【0039】
用語「(メタ)アクリロイル」は、式HC=CR−(CO)−の基を指し、式中、Rは水素又はメチルである。
【0040】
用語「(メタ)アクリルアミド」は、式HC=CR−(CO)−NH−の基を指し、式中、Rは水素又はメチルである。
【0041】
用語「(メタ)アクリロキシ」は、式HC=CR−(CO)−O−の基を指し、式中、Rは水素又はメチルである。
【0042】
用語「(メタ)アクリレート」は、メタクリレートとアクリレートの両方を指す。同様に、用語「(メタ)アクリルアミド」は、メタクリルアミドとアクリルアミドの両方を指し、用語「(メタ)アクリル酸」は、メタクリル酸とアクリル酸の両方を指し、用語「(メタ)アクリロイルアミノ酸」は、メタクリロイルアミノ酸とアクリロイルアミノ酸の両方を指す。
【0043】
用語「ポリマー」又は「高分子の」は、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマーなどである材料を指す。同様に、用語「重合する」又は「重合」は、ホモポリマー、コポリマー及びターポリマー等の製造プロセスを指す。
【0044】
語句「〜の範囲で」は、端点及び端点間の全ての数を含む。例えば、語句「1〜10の範囲で」は、1、10及び1〜10の全ての数を含む。
【0045】
用語「室温」は、20℃〜25℃の範囲の温度を指す。
【0046】
特に指示がない限り、明細書及び特許請求の範囲に使用される機構の寸法、量、及び物理的特性を表す全ての数字は、全ての事例において用語「約」により修飾されると理解されたい。したがって、指示がない限り、本明細書の数字は、本明細書で開示される教示を使用する所望の特性に応じて変化し得る近似値である。
【0047】
多孔質である高分子樹脂を提供する。多孔質高分子樹脂は、マクロ孔質高分子物質又はゲル状高分子物質の形態であることができる。本明細書で使用されるとき、用語「マクロ孔質」は、乾燥状態においてさえ永続的な多孔質構造を有する高分子樹脂を指す。高分子樹脂は溶媒に接触したときに膨潤することが可能であるが、膨潤は多孔質構造を通って高分子樹脂の内部に接近することを可能にするためには必要とされない。本明細書で使用されるとき、用語「ゲル状の」又は「ゲル」は互換的に用いられ、乾燥状態時に永続的な多孔質構造を有さないが、適切な溶媒によって膨張して高分子樹脂の内部に拡散到達が可能である高分子樹脂を指すためにほぼ同じ意味で使用される。マクロ孔質高分子物質とゲル状高分子物質は、Sherrington,Chem.Commun.,2275〜2286(1998)及びMacintyre et al.,Macromolecules,37,7628〜7636(2004)に更に記載される。用語「マクロ孔質」と「ゲル状」は、特定の孔径又は孔径の範囲を示すことを意味しない。
【0048】
高分子樹脂は、階層性多孔質構造を有する。本明細書で使用されるとき、用語「階層性多孔質」構造は、高分子樹脂が少なくとも一次多孔質構造と二次多孔質構造を有することを指す。一次多孔質構造は、バルク高分子マトリックスと関連する。この一次多孔質構造は、ゲル状又はマクロ孔質のいずれかであることができ、本明細書に記載されているものと類似であるが有機凝集体を含まない反応混合物の重合から得られる多孔質構造体と、実質的に同一である。一次多孔質構造は、多くの場合、平均孔径が約200ナノメートル(nm)未満の複数の孔を含む。反応混合物中に有機凝集体が介在することにより、二次多孔質構造がもたらされる。二次多孔質構造は、多くの場合、大きく、かつしばしば環状断面である複数の孔(例えば、球形、又は半球形の空洞若しくは孔隙などの部分的に球形)を樹脂内部に含む。これらの大きな孔の平均孔径は、一般的に約500ナノメートルを超え、ある孔は、約15〜20マイクロメートルほどの大きさであることもある。これらの大きな孔は、開放気泡形状、独立気泡形状、又はこれらの組み合わせを有することができる。いずれの形状においても、液体、改質剤、又は目的化合物は、二次多孔質構造の1つの孔から二次多孔質構造の別の孔に移動することができる。独立気泡形状において、この移動は一次多孔質構造を通じる。二次多孔質構造の孔は、ビーズの外面に直接接触が可能であり、又は一次多孔質構造を通じて接触が可能である場合がある。
【0049】
階層性多孔質構造は、相対的に大きな分子量を有する目的化合物の分離又は精製に、特に好都合である場合がある。より詳細には、平均孔径が約200ナノメートル未満の第一組の孔と平均孔径が約500ナノメートルを超える第二組の孔のある高分子樹脂は、生体分子(すなわち生物学的分子)の精製又は分離に好都合である場合がある。酵素、タンパク質及び核酸などの生体分子は、多くの場合、5,000g/モル以上、10,0000g/モル以上、20,0000g/モル以上、50,0000g/モル以上、又は100,0000g/モル以上の重量平均分子量を有する。相対的に大きな孔が欠如する場合に、分子量が増加するに伴って、高分子樹脂の内側領域への生体分子の分散は多くの場合減少する。典型的に、直径が約500ナノメートルを超える孔など、相対的に大きい孔を有する高分子樹脂を用いることによって、高分子樹脂での生体分子の分離及び精製に要する時間を短縮することができる。しかし、孔の大きさは、通常、1つ以上の目的化合物を精製及び分離するための高分子樹脂の総表面積と容量に影響を及ぼす。相対的に大きい孔のみを有する高分子樹脂は、目的化合物に対する表面積が小さく、かつ容量が小さい傾向がある。高分子樹脂の容量を最大限にするために、直径が約200ナノメートル未満のものなど、より小さい孔径が好都合である場合がある。すなわち、直径が約200ナノメートル未満である孔は、高分子樹脂の表面積を増大させる傾向がある。
【0050】
高分子樹脂は様々な官能基を有し、目的化合物と反応又は相互作用させるために用いることができる。官能基は、(1)酸性基若しくはその塩、(2)アミノ基若しくはその塩、(3)ヒドロキシル基、(4)アズラクトン基、(5)グリシジル基、又は(6)これらの組み合わせ、から選択される第1官能基であることができる。あるいは、第1官能基を改質剤によって反応させて、第1官能基と異なる第2官能基を提供することができる。高分子樹脂又は修飾高分子樹脂を有する目的化合物の反応又は相互作用は、試料中の他の分子から目的化合物を精製又は分離するための基礎を提供することができる。ある実施形態では、目的化合物は、高分子樹脂又は修飾高分子樹脂を用いて分離及び収集できる、望ましい材料である。他の実施形態では、目的化合物は、高分子樹脂又は修飾高分子樹脂を用いて望ましい材料から分離することができる不純物である。
【0051】
水相組成物中に存在するモノマーは、フリーラジカル重合反応を用いて重合される。重合反応中に高分子物質の分子量が増加するにつれて、得られた高分子物質は、典型的に、水相と非相溶性であり、分相する傾向がある。通常、水相構成成分の一部は高分子物質内部に捕捉される。その後、捕捉されている水相構成成分を除去することによって、しばしば孔が形成される。水相構成成分が異なる場合、異なる大きさの孔の形成がもたらされる場合がある。すなわち、水相構成成分を選択して、一次多孔質構造及び二次多孔質構造を有する、階層的多孔質高分子ビーズを提供することができる。
【0052】
水相組成物を重合して、単体の多孔質高分子樹脂を形成することができる。単体形状は、任意の望ましい形状を有することができ、あるいは粒子に分割することもできる。あるいは、水相組成物を重合して、高分子ビーズを形成することができる。例えば、逆相(reverse phase)すなわち逆相懸濁重合方法(inverse suspension polymerization method)を用いて重合ビーズを形成することができる。この重合方法で、モノマー混合物を含む水相組成物は、水と非混和性の有機相の液滴として分散又は懸濁される。高分子物質の重量が増大するに従って、高分子物質は、典型的に水相と混合できなくなり、液滴内部で分相する傾向がある。一部の水相成分は、通常、高分子物質内部に捕捉されて、孔の形成をもたらす。
【0053】
高分子樹脂の調製に用いられる反応混合物として、水相組成物が挙げられる。水相組成物には、1)モノマー混合物と、2)0.05〜5マイクロメートルの大きさの範囲にある分散又は懸濁した有機凝集体と、3)水相溶媒とが含まれる。モノマー混合物として、i)架橋性モノマーと、ii)官能性モノマーと、が挙げられる。水相溶媒として、水と、水混和性である任意選択の極性有機溶媒が挙げられる。
【0054】
水相組成物中の架橋性モノマーは、化学式(I)のものである。
【0055】
【化6】

【0056】
式(I)において、それぞれのRは独立して水素又はメチルであり、それぞれのQは独立してオキシ又は−NH−であり及びYはアルキレン又はヘテロアルキレンである。アルキレン又はヘテロアルキレンのY基はヒドロキシル基で置換されていてもよい(すなわち、Y基はヒドロキシル基と置換できるか又は置換できない)。この架橋性モノマーは、1つのポリマー鎖と別のポリマー鎖とが架橋するように反応し得る、あるいは一部分のポリマー鎖と別の部分の同一ポリマー鎖とが架橋するように反応し得る、2個の(メタ)アクリロイル基を有する。架橋剤は、水相組成物中で可溶性であるように選択される。
【0057】
化学式(I)の架橋性モノマーのある実施形態で、Q基は両方とも−NH−と等価であり、Yは、1〜10個、1〜8個、1〜6個又は1〜4個の炭素原子を有するアルキレン基である。アルキレン基は、直鎖、分枝状、環式、又はこれらの組み合わせであることができる。具体的な実施例としては、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−エチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−(1,2−ジヒドロキシエチレン)ビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−プロピレンビス(メタ)アクリルアミド、及びN,N’−ヘキサンメチレンビス(メタ)アクリルアミドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
化学式(I)の架橋性モノマーの他の実施形態では、Q基は両方とも−NH−と等価であり、Yは2〜20個、2〜16個、2〜12個、2〜10個、2〜8個、2〜6個、又は2〜4個の炭素原子を有するヘテロアルキレンである。ヘテロアルキレンは直鎖、分岐鎖、環状、又はこれらの組み合わせであることができる。具体的な実施例としては、N,N’−シスタミンビス(メタ)アクリルアミド、ビス3−(メタ)アクリルアミドプロプ−1−イルポリエチレングリコール、
ビス−2−(メタ)アクリルアミドプロプ−1−イルポリエチレングリコール及びN,N’−ピペラジンビス(メタ)アクリルアミドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
化学式(I)の架橋性モノマーの更なる他の実施形態では、Q基は両方ともオキシであり、Yは2〜10個、2〜8個、2〜6個、又は2〜4個の炭素原子を有するアルキレンである。アルキレンは、直鎖、分岐鎖、環状、又はこれらの組み合わせであることができる。具体的な実施例としては、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリル酸、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリル酸、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリル酸、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリル酸、2,2−ジメチルプロパンジオールジ(メタ)アクリル酸、トランス−1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリル酸、及びエチレングリコールジ(メタ)アクリル酸が挙げられる。
【0060】
化学式(I)の架橋性モノマーの更なる別の実施例では、Q基は両方ともオキシであり、Yはヘテロアルキレンである。ヘテロアルキレンは直鎖、分岐鎖、環状、又はこれらの組み合わせであることができる。ヘテロアルキレンはしばしば直鎖であって、式−(R−O)−の1つ以上のアルキレンオキシド単位を有し、式中、Rはアルキレンである。アルキレンはしばしば2個、3個又は4個の炭素原子を有する。具体的な実施例としては、ジ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリル酸、トリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリル酸、テトラ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリル酸、ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリル酸、ジ(プロピレングリコール)ジ(メタ)アクリル酸、及びポリ(プロピレングリコール)ジ(メタ)アクリル酸が挙げられる。更なる実施例としては、アルコキシル化ジオールジ(メタ)アクリレートの例としては、例えば、エトキシル化ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシル化ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、及びエトキシル化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アルコキシル化トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレートの例としては、例えば、エトキシル化トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート及びプロポキシル化トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、及びアルコキシル化ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートの例としては、例えば、エトキシル化ペンタエリスリトージ(メタ)アクリレート及びプロポキシル化ペンタエリスリトージ(メタ)アクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
具体的に挙げた架橋性モノマーの一部は、シグマ−アルドリッチ(Sigma-Aldrich)(ウィスコンシン州ミルウォーキー)、ポリサイエンス・インク(Polysciences, Inc.)(ペンシルベニア州ウォーリントン)、及びサトーマー(Sartomer)(ペンシルベニア州エクセター)などの様々な供給元から市販されている。あるいは、これらの架橋性モノマーの一部は、例えば、Rasmussen,et al.,Reactive Polymers,16,199〜212(1991/1992)のような、当該技術分野において記載される手順により、合成できる。
【0062】
ある代表的な反応混合物では、水相中の架橋性モノマーは、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド又はN,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミドの混合物、更に化学式(I)の少なくとも一つの他の架橋性モノマーである。架橋性モノマーの総量の少なくとも10重量%、少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、又は少なくとも80重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも98重量%、又は少なくとも99重量%は、多くの場合、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミドである。
【0063】
モノマー混合物は、化学式(I)の架橋性モノマーに加えて、追加の架橋性モノマーを更に含有してよい。例えば、水相は化学式(I)の第一架橋性モノマー、及び3つ以上のエチレン性不飽和基を有する第2の架橋性モノマーを含有することができる。典型的に、水相構成成分中の総架橋性モノマーの少なくとも10重量%、少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、又は少なくとも90重量%は、化学式(I)のものである。
【0064】
いくつかの代表的な第二架橋剤として、トリス[2−(アクリロイルオキシ)エチル]イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及び様々なアルコキシル化トリ(メタ)アクリレートなど、3個のエチレン性不飽和基を有するものが挙げられる。アルコキシル化トリ(メタ)アクリレートの例としては、アルコキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、例えば、エトキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及びエチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、そして、アルコキシル化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、例えば、エトキシル化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
他の代表的な第二架橋剤として、アルコキシル化テトラ(メタ)アクリレート、及びアルコキシル化ペンタ(メタ)アクリレートなど、4つ以上のエチレン性不飽和基を有するものが挙げられる。アルコキシル化テトラ(メタ)アクリレートの例としては、アルコキシル化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、例えば、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0066】
いくつかの代表的な反応混合物では、水相組成物中の架橋性モノマーは、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、又は3つ以上のエチレン性不飽和基を有する第二架橋性モノマーを備えるN,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミドである。架橋性モノマーの総量の少なくとも10重量%、少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも98重量%、又は少なくとも99重量%は、多くの場合、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミドである。
【0067】
モノマー混合物は、モノマー混合物中のモノマーの総重量を基準にして少なくとも1重量%の架橋性モノマーを含有する。少量の架橋性モノマーを用いる場合、得られる高分子物質は、マクロ孔質高分子樹脂の形状ではなく、ゲルの形状となる傾向がある。高分子樹脂が耐えることができる差圧により測定される剛性又は機械的強度は、モノマー混合物中に含まれる架橋性モノマーの量と共に増加する傾向がある。いくつかのモノマー混合物は、少なくとも2重量%、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、又は少なくとも30重量%の架橋性モノマーを含有する。
【0068】
モノマー混合物は、多くの場合、モノマー混合物中のモノマーの総重量を基準にして99重量%以下の架橋性モノマーを含有する。架橋性モノマーの分量が99重量%を超えると、モノマー混合物中に存在する官能性モノマーの対応分量が減少するため、多くの場合、様々な目的化合物との反応度が減少する。いくつかのモノマー混合物は、95重量%以下、90重量%以下、85重量%以下、80重量%以下、70重量%以下、65重量%以下、60重量%以下、55重量%以下、50重量%以下、45重量%、又は40重量%以下の架橋性モノマーを含有する。
【0069】
モノマー混合物は、多くの場合、モノマーの総重量を基準として、1〜99重量%、10〜99重量%、10〜95重量%、10〜90重量%、20〜90重量%、30〜90重量%、20〜80重量%、30〜80重量%、30〜75重量%、25〜70重量%、25〜60重量%、又は25〜50重量%の架橋性モノマーを含有する。
【0070】
架橋性モノマーに加えて、モノマー混合物は少なくとも1つの官能性モノマーを含有する。官能性モノマーは、フリーラジカル重合が可能であり、かつ(a)エチレン性不飽和基、及び(b)(1)酸性基若しくはその塩、(2)アミノ基若しくはその塩、(3)ヒドロキシル基、(4)アズラクトン基、(5)グリシジル基、又は(6)これらの組み合わせから選択される官能基とを含有する、化合物である。エチレン性不飽和基はフリーラジカル重合反応を起こし、一方、官能基は、目的化合物又は修飾剤と反応又は相互作用させるために使用することができる。
【0071】
第一の種類の官能性モノマーはエチレン性不飽和基を、及び酸性基又はその塩である官能基を有する。官能性モノマーは、弱酸、強酸、弱酸の塩、強酸の塩、又はこれらの組合せであることができる。すなわち、官能性モノマーは、中性の状態であることができるが、pHを調整した場合には負に帯電可能である。pHを適切に調整すると、得られる高分子樹脂は負に帯電した基を有し、目的化合物(すなわち、目的化合物はカチオン)の正に帯電した基と相互作用することができる。すなわち、高分子樹脂はカチオン交換樹脂として機能することができる。官能性モノマーが弱酸の塩又は強酸の塩の形状である場合、これらの塩の対イオンは、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、又はテトラアルキルアンモニウムイオンであることができるが、これらに限定されない。
【0072】
酸性基又はその塩を有する、いくつかの代表的な官能性モノマーとして、化学式(II)の(メタ)アクリルアミドスルホン酸又はその塩が挙げられる。
【0073】
【化7】

【0074】
化学式(II)において、Yは1〜10個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖アルキレンであり、Rは水素又はメチルである。式(II)に従う代表的な官能性モノマーとして、N−(メタ)アクリルアミドメタンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミドエタンスルホン酸、及び2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸が挙げられるが、これらに限定されない。これらの酸性モノマーの塩も使用することができる。
【0075】
酸性基又はその塩を有する、いくつかの他の代表的な官能性モノマーとしては、例えば、ビニルスルホン酸及び4−スチレンスルホン酸などの他のスルホン酸、例えば、2−(メタ)アクリルアミドエチルホスホン酸及び3−(メタ)アクリルアミドプロピルホスホン酸などの(メタ)アクリルアミドアルキルホスホン酸、アクリル酸及びメタクリル酸、並びに例えば、2−カルボキシエチル(メタ)アクリル酸及び3−カルボキシプロピル(メタ)アクリル酸などのカルボキシアルキル(メタ)アクリル酸、が挙げられる。なお他の好適なモノマーとしては、本明細書に参照として組み込まれる米国特許第4,157,418号(Heilman)に記載されるもののような(メタ)アクリロイルアミノ酸が挙げられる。代表的な(メタ)アクリロイルアミノ酸として、N−(メタ)アクリロイルグリシン、N−(メタ)アクリロイルアスパラギン酸、N−(メタ)アクリロイル−bーアラニン、及びN−(メタ)アクリロイル−2−メチルアラニンが挙げられるが、これらに限定されない。これらの酸性モノマーのうちのいずれか1つの塩を用いることもできる。
【0076】
第二の種類の官能性モノマーは、エチレン性不飽和基、及びアミノ基又はその塩を有する。アミノ基は、一級アミノ基、二級アミノ基、三級アミノ基、又は四級アンモニウム基であることができる。この種類の官能性モノマーは、弱塩基、強塩基、弱塩基の塩、強塩基の塩又はこれらの混合物であることができる。すなわち、官能性モノマーは、中性の状態であることができるが、pHを調整した場合には正に帯電可能である。pHを適切に調整すると、得られる高分子樹脂は正に帯電した基を有し、目的化合物(すなわち、目的化合物はアニオン)の負に帯電した基と相互作用することができる。すなわち、高分子樹脂はアニオン交換樹脂として機能することができる。官能性モノマーが塩の形状である場合、対イオンは、ハロゲン化物(例えば塩化物)、カルボキシレート(例えばアセテート又はギ酸塩)、硝酸塩、リン酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、メチルサルフェート、又は水酸化物であることができるが、これらに限定されない。あるいは、一級アミノ基又は、二級アミノ基は求核剤として目的化合物と反応することができる。
【0077】
アミノ基又はその塩を有する、いくつかの代表的な官能性モノマーとして、式(III)のアミノ(メタ)アクリレート若しくはアミノ(メタ)アクリルアミド、又はその第四級アンモニウム塩が挙げられる。
【0078】
【化8】

【0079】
式(III)において、Rは水素又はメチルであり、Qはオキシ又は−NH−であり、Yは単結合又はアルキレン(例えば、1〜10個の炭素原子、2〜6個又は2〜4個の炭素原子を有するアルキレン)である。それぞれのRは独立して、水素、アルキル、ヒドロキシアルキル(すなわち、ヒドロキシで置換されているアルキル)、アミノアルキル(すなわち、アミノで置換されているアルキル)、アリール又はアラルキルである。あるいは、2つのR基は、それらが結合している窒素と一緒になって、芳香族、部分的に不飽和(すなわち、不飽和であるが芳香族)、又は飽和である複素環基を形成することができる。このような複素環基は、芳香族(例えばベンゼン)、部分的に不飽和(例えばシクロヘキセン)、又は飽和(例えばシクロヘキサン)である第二環と任意に融合させることができる。四級アンモニウム塩類の対イオンは、多くの場合、ハロゲン化物類、硫酸塩類、リン酸塩類、硝酸塩類等である。
【0080】
化学式(III)のいくつかの実施形態において、R基は両方とも水素である。他の実施形態では、R基の1個は水素で、他の1個は、1〜10個、1〜6個、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキルである。更に他の実施形態では、R基の少なくとも1個は、ヒドロキシアルキルであるか又は2〜10個、2〜6個、若しくは2〜4個の炭素原子を有する、ヒドロキシ基又はアミノ基が、アルキル基の最初の炭素原子を除くいずれかの炭素原子で位置決めされている、アミノアルキルである。更に別の実施形態では、R基の少なくとも1個は、5若しくは6個の炭素原子を有するアリールであるか、又は1〜10個の炭素原子を有するアルキル基と、5若しくは6個の炭素原子を有するアリール基とを備えるアラルキルである。更に他の実施形態では、R基は両方とも、それらが結合している窒素原子と結合して複素環式基を形成する。複素環式基は、少なくとも1個の窒素原子を含み、そして酸素又は硫黄などのその他のへテロ原子を含むことができる。代表的な複素環基として、イミダゾリル、ピペラジニル、及びモルホリニルが挙げられるが、これらに限定されない。複素環式基は、ベンゼン、シクロヘキセン、又はシクロヘキサンなどの追加の環に融合することができる。追加の環と融合した代表的な複素環式基としては、ベンズイミダゾリルが挙げられるが、これに限定されない。
【0081】
代表的なアミノ(メタ)アクリル酸(すなわち、式(III)のQがオキシである)としては、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリル酸、例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリル酸、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリル酸、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリル酸、並びにN−tert−ブチルアミノプロピル(メタ)アクリル酸などが挙げられる。
【0082】
代表的なアミノ(メタ)アクリルアミド(すなわち、式(III)のQが−NH−である)としては、例えば、N−(3−アミノプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル](メタ)アクリルアミド、N−(3−イミダゾリルプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−イミダゾリルエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(1,1−ジメチル−3−イミダゾリルプロピル)(メタ)アクリルアミド、及びN−(3−ベンゾイミダゾリルプロピル)(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0083】
化学式(III)の官能性モノマーの代表的な四級塩としては、(メタ)アクリルアミドアルキルトリメチルアンモニウム塩、例えば(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、及び(メタ)アクリルオキシアルキルトリメチルアンモニウム塩、例えば2−(メタ)アクリルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、並びに2−(メタ)アクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムメチル硫酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
第三の種類の官能性モノマーはエチレン性不飽和基、及びヒドロキシル基を有する。高分子樹脂のヒドロキシル基は目的化合物と直接反応することができ、あるいは目的化合物と相互作用するための異なる種類の官能基を提供するために修飾剤と反応することができる。ヒドロキシル基は、多くの場合、目的化合物又は修飾剤と縮合反応を起こす。例えば、ヒドロキシル基は、目的化合物と、又はカルボキシ基(−COOH)を有する修飾剤と反応して、エステル含有物質を形成することができる。すなわち、反応によって、目的化合物又は修飾剤を高分子樹脂に共有結合する、カルボニルオキシ連結基の形成がもたらされる。例えば、タンパク質又は他の生体分子は高分子樹脂と共有結合することができる。結合したタンパク質又は生体分子は、親和性リガンドとして機能し、その後相補的生体分子と相互作用することができる。親和性リガンドは、別の分子と結合することができる化合物である。例えば、結合抗原(すなわち、抗原は修飾剤)は抗体(すなわち、抗体は目的化合物)と相互作用することができ、あるいは結合抗体(すなわち、抗体は修飾剤)は抗原(すなわち、抗原は目的化合物)と相互作用することができる。
【0085】
好適なヒドロキシ含有モノマーとして、ヒドロキシで置換されたアルキル(メタ)アクリル酸、ヒドロキシで置換されたアルキル(メタ)アクリルアミド、又はビニルアルコールが挙げられる。具体的なヒドロキシ含有モノマーとして、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシルプロピル(メタ)アクリルレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アクリルアミド、ビニルベンジルアルコール、及びヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0086】
第四の種類の官能性モノマーは、エチレン性不飽和基、及びアズラクトン基を有する。アズラクトン基は、目的化合物と、又は求核基を有する修飾剤と開環反応を起こすことができる。アズラクトン基と反応する好適な求核基としては、一級アミノ基、二級アミノ基、及びヒドロキシ基が挙げられるが、これらに限定されない。通常、アズラクトン基と、目的化合物の求核基との、又は修飾剤との反応は、目的化合物又は修飾剤を高分子樹脂に結合させる、連結基の形成によりもたらされる。アズラクトン基の開環によって形成される連結基は、多くの場合、基−(CO)NHC(R(CH(CO)−を含み、式中、Rはメチルなどのアルキルであり、(CO)はカルボニルを示す。アズラクトン機能性樹脂と様々な求核化合物(例えば、目的化合物又は修飾剤)との反応は、米国特許第5,292,840号(Heilmann et al.)、同第5,561,097号(Gleason et al.)、及び同第6,379,952号(Rasmussen et al.)に更に記載されている。
【0087】
修飾剤との反応後、アズラクトン基を本来含有していた高分子樹脂を用いて、様々な相互作用又は反応に基づいて目的化合物を精製又は分離することができる。例えば、修飾高分子樹脂は、親和性樹脂、イオン交換樹脂、疎水性相互作用樹脂、逆相樹脂、サイズ排除樹脂、キレート樹脂、細胞選択樹脂、固定化酵素樹脂、及び混合型樹脂等として機能することができる。
【0088】
親和性樹脂は、高分子樹脂上のアズラクトン基と、親和性リガンドの求核基(すなわち、修飾剤は求核基を有する親和性リガンド)と反応させて調製することができる。より詳細には、生体分子のアミノ基はアズラクトン基と反応して、生体分子を高分子樹脂に共有結合させることができる。結合した生体分子は相補的生体分子と相互作用することができる。代表的な親和性リガンドとして、対応する(すなわち、相補的な)抗体と結合することができる抗原、又は対応する(すなわち、相補的な)抗原と結合することができる抗体が挙げられる。他の代表的な親和性リガンドとしては、相補的なDNA又はRNA断片と結合することができる、DNA又はRNA断片、及び炭水化物部分を含有する化合物又は生体分子と結合することができるレクチンが挙げられる。
【0089】
イオン交換樹脂は、高分子樹脂上のアズラクトン基を、求核基と、塩基性、酸性、又はそれらの塩である第二基との両方を有する修飾剤と反応させて調製することができる。求核基はアズラクトン基と反応して、イオン基(すなわち酸性基、塩基性基、又はそれらの塩)を有する修飾剤の高分子樹脂への結合がもたらされる。求核基とイオン基の両方を有する好適な修飾剤には、2−アミノエチルスルホン酸又はアミノプロピルジメチルアミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0090】
疎水性相互作用樹脂は、高分子樹脂上のアズラクトン基を、求核基と疎水性の第二基との両方を有する修飾剤と反応させることによって調製することができる。求核基はアズラクトン基と反応して、疎水基を有する修飾剤の高分子樹脂への結合をもたらす。求核基と疎水基の両方を有する好適な修飾剤としては、ベンジルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、又はフェネチルアミンが挙げられるが、これらに限定されない。疎水性相互作用樹脂では、多くの場合、溶離液は水系塩溶液である。疎水性相互作用樹脂は、例えば、タンパク質などの相対的に大きな分子の精製又は分離に用いることができる。
【0091】
逆相樹脂は、疎水性相互作用樹脂の調製に用いられるものと同様な修飾剤を用いて調製することができる。すなわち、逆相樹脂は、高分子樹脂上のアズラクトン基を、求核基と疎水性の第二基とを有する、修飾剤と反応させることによって調製することができる。求核基はアズラクトン基と反応して、疎水基を有する修飾剤の高分子樹脂への結合がもたらされる。求核基及び疎水基を有する好適な修飾剤としては、例えば、少なくとも8個の炭素原子、少なくとも10個の炭素原子、少なくとも12個の炭素原子、又は少なくとも16個の炭素原子を有する、アルキルアミンが挙げられる。アルキルアミンは、例えば、オクタデシルアミンであることができる。逆相相互作用樹脂では、通常、溶離液は水系塩溶液ではなく、有機溶媒である。更に、逆相樹脂は典型的に、タンパク質ではなく、相対的に小さい分子の分離又は精製に用いられる。
【0092】
サイズ排除樹脂は、高分子樹脂上のアズラクトン基を、求核基と、非双方向性基又は中性の基である第二基との両方を有する修飾剤と反応させることによって調製することができる。求核基はアズラクトン基と反応して、非双方向性基又は中性の基を有する修飾剤の、高分子ビーズへの結合をもたらす。求核基と、及び非双方向性基又は中性の基の両方を有する好適な修飾剤としては、エタノールアミン及びアンモニアが挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
キレート樹脂は、高分子樹脂上のアズラクトン基を、求核基と、金属キレート基である第二基との両方を有する修飾剤と反応させることによって調製することができる。求核基はアズラクトン基と反応して、金属キレート基を有する修飾剤の結合をもたらす。好適な修飾剤としては、イミノ二酢酸、N−(3−アミノプロピル)イミノ二酢酸及びN−(2−ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸が挙げられるが、これらに限定されない。金属キレート基は、金属イオンのキレート後に、例えばヒスチジン基などのタンパク質の特定の基と反応することができる。
【0094】
細胞選別樹脂は、高分子樹脂上のアズラクトン基を、細胞表面マーカーに対する抗体と反応させることによって調製することができる。すなわち、多くの場合、抗体は、アズラクトン基と反応して抗体を高分子樹脂に結合させることができる、求核基を有する。同様に、抗体は、細胞上の細胞表面マーカーと結合することで、高分子樹脂への細胞の結合をもたらすことができる。細胞選別樹脂は、例えば、幹細胞、血液細胞又はバクテリアの精製又は分離に用いることができる。
【0095】
固定化酵素樹脂は、高分子樹脂上のアズラクトン基を酵素の求核基と反応させ、酵素を高分子樹脂に結合させることによって調製することができる。例えば、酵素は、ペニシリンG−アシラーゼ又はグルコアミラーゼであることができる。固定化酵素樹脂は様々な反応について触媒として使用することができる。
【0096】
混合型樹脂は、アズラクトン基を、求核基と、高分子樹脂に2つ以上の相互作用型を付与することのできる追加の基とを有する修飾剤と反応させることによって調製することができる。2つ以上の相互作用型は、前述のいずれかであることができる。例えば、アズラクトン基は、フェニルアラニンなどの修飾剤と反応することができ、この場合アミノ基は求核基として機能し、フェニル基は疎水基として機能し、そしてカルボキシ基はイオン基として機能する。
【0097】
アズラクトン基を有する代表的な官能性モノマーとしては、ビニルアルキルアズラクトン、例えば2−ビニル−4,4−ジメチルアズラクトン(2−ビニル−4,4−ジメチル−2−オキサゾリン−5−オンとも呼ばれる)、2−(4−ビニルフェニル)−4,4−ジメチルアズラクトン、2−イソプロペニル−4,4−ジメチルアズラクトン、2−ビニル−4−エチル−4−メチル−2−オキサゾリン−5−オン、及び2−ビニル−4,4−ジメチル−1,3−オキサジン−6−オンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0098】
更に他の官能性モノマーは、エチレン性不飽和基及びグリシジル基を有する。グリシジル基は、目的化合物と又は求核基を有する修飾剤と、開環反応を起こすことができる。グリシジルエポキシ基と反応する好適な求核基としては、一級アミノ基、2級アミノ基、チオール基及びカルボキシ基が挙げられるが、これらに限定されない。グリシジル基と、目的化合物の求核基との又は修飾剤との反応は、通常、目的化合物又は修飾剤を高分子樹脂に結合させる機能を有する連結基を形成させる。グリシジル基の開環によって形成される連結基は、グリシジル基が一級アミノ基と反応する場合には−C(OH)HCHNH−を、グリシジル基がチオール基と反応する場合にはC(OH)HCHS−を、又はグリシジル基がカルボキシ基と反応する場合には−C(OH)HCHO(CO)−を含有することが多い。
【0099】
グリシジル基を含有する高分子樹脂は、修飾剤との反応による修飾後、様々な相互作用又は反応に基づいて目的化合物を精製又は分離するために用いることができる。例えば、これらの修飾高分子樹脂は、親和性樹脂、イオン交換樹脂、疎水性相互作用樹脂、逆相樹脂、サイズ排除樹脂、キレート樹脂、細胞選別樹脂、固定化酵素樹脂及び混合型樹脂等として機能することができる。これらの異なる種類の樹脂は、アズラクトン基を有する高分子樹脂に関して前述したものと類似する反応を用いて、グリシジル基を有する高分子樹脂から調製することができる。
【0100】
グリシジル基を有する代表的なモノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリルレートが挙げられるが、これに限定されない。
【0101】
更なる他の官能性モノマーは、(1)酸性基若しくはその塩、(2)アミノ基若しくはその塩、(3)ヒドロキシル基、(4)アズラクトン基、又は(5)グリシジル基から選択される2つ以上の官能基の組み合わせを有する。複数の異なる種類の反応基を有する代表的な官能性モノマーは、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、及び2−(メタ)アクリルアミドグリコール酸である。それぞれの官能基は前述のように反応又は相互作用することができる。
【0102】
モノマー混合物は、モノマー混合物中のモノマーの総重量を基準として少なくとも1重量%の官能性モノマーを含む。低濃度の官能性モノマーを用いると、多くの場合、得られる高分子物質が有する、目的化合物との又は修飾剤との反応又は相互作用の機能部位数が減少する。いくつかのモノマー混合物は、少なくとも2重量%、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、少なくとも30重量%、少なくとも35重量%、少なくとも40重量%、又は少なくとも50重量%の官能性モノマーを含有する。
【0103】
モノマー混合物は、モノマーの総重量を基準にして、99重量%未満の官能性モノマーを含有することが多い。高いレベルの官能性モノマーを用いると、得られる高分子物質の一次多孔質構造がマクロ孔質ではなくゲルである傾向がある。すなわち、高濃度の官能性モノマーは、相当する量の架橋性モノマーの減少を伴うことが多い。高分子樹脂の剛性及び機械的強度は、架橋性モノマーの量と相関する傾向がある。いくつかのモノマー混合物は、95重量%以下、90重量%以下、85重量%以下、80重量%以下、75重量%以下、70重量%以下、65重量%以下、60重量%以下、55重量%以下、50重量%以下、45重量%以下、又は40重量%以下の官能性モノマーを含有する。
【0104】
いくつかのモノマー混合物は、モノマーの総重量を基準として、1〜99重量%、1〜95重量%、1〜90重量%、5〜90重量%、10〜90重量%、20〜90重量%、30〜90重量%、30〜80重量%、40〜90重量%、40〜80重量%、50〜80重量%、又は60〜80重量%の官能性モノマーを含有する。機械的強度、多孔性、及び目的化合物との又は修飾剤との反応又は相互作用のための容量、が望ましい組み合わせである高分子樹脂を提供するため、官能性モノマーと架橋性モノマーの分量を変更することができる。
【0105】
多くの場合、25〜75重量%の官能性モノマー及び25〜75重量%の架橋性モノマーを含有するモノマー混合物が、イオン交換樹脂の調製などの用途について、目的化合物容量と機械的強度の最良の均衡を提供する。イオン交換樹脂の調製に使用されるいくつかの代表的なモノマー混合物は、35〜75重量%の官能性モノマー及び25〜65重量%の架橋性モノマー、40〜75重量%の官能性モノマー及び25〜60重量%の架橋性モノマー、50〜75重量%の官能性モノマー及び25〜50重量%の架橋性モノマー、又は60〜70重量%の官能性モノマー及び30〜40重量%の架橋性モノマーを含む。
【0106】
モノマー混合物は、親和性樹脂、疎水性相互作用樹脂、逆相樹脂、又は固定化酵素樹脂の調製などの用途について、1〜20重量%の官能性モノマー及び80〜99重量%の架橋性モノマーを含むことが多い。これらの種類の樹脂に使用されるいくつかの代表的なモノマー混合物は、1〜15重量%の官能性モノマー及び85〜99重量%の架橋性モノマー、5〜15重量%の官能性モノマー及び85〜95重量%の架橋性モノマー、5〜20重量%の官能性モノマー及び80〜95重量%の架橋性モノマー、又は1〜10重量%の官能性モノマー及び90〜99重量%の架橋性モノマーを含む。
【0107】
いくつかのモノマー混合物は、架橋性モノマー及び官能性モノマー以外のモノマーを含有しないが、他のモノマー混合物は、単一エチレン性不飽和基を有する親水性コモノマーを含むが、(1)酸性基若しくはその塩、(2)アミノ基若しくはその塩、(3)ヒドロキシル基、(4)アズラクトン基、(5)グリシジル基、又は(6)その混合物から選択される官能基を含有しない。例えば、架橋モノマーの量を一定に維持しながら官能性モノマーの含有量を調整する目的で、親水性のコモノマーを添加することができる。高分子樹脂の架橋性又は剛性の分量を著しく変化させることなく、官能性モノマーの含量を変化させることができる。更に、高分子樹脂の親水性特徴はこれらのコモノマーを使うことによって変化させることができる。好適な親水性コモノマーとしては、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、及びN−ビニルアセトアミドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0108】
好適な親水性モノマーは、典型的には、モノマー混合物中のモノマーの総重量を基準にして50重量%以下の量で存在する。いくつかの反応混合物では、モノマー混合物は、モノマーの総重量を基準として40重量%以下、30重量%以下、20重量%以下、10重量%以下、5重量%以下、2重量%以下、又は1重量%以下の親水性モノマーを含有する。
【0109】
多くの実施形態では、モノマー混合物中の全て又は実質的に全てのモノマーは、20以下の親油性指数を有する。本明細書で使用されるとき、用語「親油性指数」又は「LI」は、モノマーの疎水性又は親水性を特徴付けるための指標を指す。親油性指数は、等体積(1:1)の非極性溶媒(例えば、ヘキサン)と極性溶媒(例えば、75:25のアセトニトリル−水の溶液)の中にモノマーを分配することにより、測定される。親油性指数は、分割後に非極性相に残るモノマーの重量%に等しい。より疎水性のモノマーはより高い親油性指数を有する傾向があり、同様に、より親水性のモノマーはより低い親油性指数を有する傾向がある。親油性指数の測定は、Drtina et al.,Macromolecules,29、4486〜4489(1996)に更に記載されている。
【0110】
モノマー混合物中の全て又は実質的に全てのモノマーが20以下の親油性指標を有する場合、得られる高分子樹脂が親水性である傾向がある。親水性の高分子樹脂は、低い非特定結合を有する傾向がある。親油性指数が20以下であるモノマー混合物に関連して本明細書で使用されるとき、用語「実質的に全ての」は、20超過の親油性指数を示す任意のモノマーが、不純物として存在することを意味する。親油性指数が20超過の任意の不純物は、モノマー混合物中のモノマーの総重量を基準にして2重量%未満、1重量%未満、0.5重量%未満、0.2重量%未満、又は0.1重量%未満の量で存在する。いくつかの樹脂では、モノマー混合物中の全て又は実質的に全てのモノマーは、15以下、10以下、5以下、3以下又は1以下の親油性指数を有する。
【0111】
水相組成物は、通常、水相組成物(例えば、モノマー混合物、有機凝集体、及び水相溶媒)の総重量を基準として、少なくとも4重量%のモノマー混合物を含有する。いくつかの実施形態では、水相組成物は少なくとも10重量%、又は少なくとも15重量%のモノマー混合物を含有する場合がある。水相組成物は、通常、水相組成物の総重量を基準にして50重量%以下のモノマー混合物を含有する。いくつかの実施形態では、水相組成物は、40重量%以下、30重量%以下、25重量%以下、又は20重量%以下のモノマー混合物を含有する場合がある。例えば、水相組成物は、水相組成物の総重量を基準として5〜50重量%、5〜40重量%、5〜30重量%、5〜25重量%、5〜20重量%、又は10〜20重量%のモノマー混合物を含有する場合がある。
【0112】
水相は、フリーラジカル重合を起こすことができるモノマー混合物に加えて、分散された又は懸濁された有機凝集体を含む。有機凝集体には、水相に溶解せずかつ水相組成物に添加された際に凝固しないか又は完全に凝結しない有機凝集体である限り、0.05〜5マイクロメートルの大きさの範囲内の任意の好適な有機凝集体を使用することができる。しかし、いくつかの有機凝集体の融合が発生して、本来の有機凝集体の大きさよりも大きい孔が発生する場合がある。有機凝集体は、通常、水系エマルション又は水系分散液の形状で水相組成物に添加される。
【0113】
有機凝集体は、多くの場合、少なくとも0.05マイクロメートル、少なくとも0.1マイクロメートル、少なくとも0.2マイクロメートル、少なくとも0.5マイクロメートル、又は少なくとも1マイクロメートルの大きさを有する。有機凝集体は、通常、5マイクロメートル以下、4マイクロメートル以下、3マイクロメートル以下、2マイクロメートル以下、又は1マイクロメートル以下の大きさを有する。例えば有機凝集体は、0.05〜5マイクロメートルの範囲、0.05〜3マイクロメートルの範囲、0.05〜2マイクロメートルの範囲、0.05〜1マイクロメートルの範囲、1〜5マイクロメートルの範囲、1〜3マイクロメートルの範囲、又は1〜2マイクロメートルの範囲の大きさであることができる。有機凝集体は、初めに、高分子物質の分子量が増加するに伴って、高分子物質内に捕捉される。平均直径が通常約500ナノメートルを超える孔を有する二次多孔質構造を提供するため、有機凝集体は少なくとも部分的に高分子樹脂から除去される。
【0114】
いくつかの好適な有機凝集体は疎水基に結合する親水基を有する。有機凝集体が水性媒質に配置されると、水系エマルション又は水系分散液が形成される。例えば、炭化水素疎水基はポリ(アルキレンオキシド)などの親水基と結合することができる。すなわち、有機凝集体のあるものはアルコキシル化物質である。いくつかの代表的なアルコキシル化物質では、アルコキシル化物質の少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、又は少なくとも60重量%は親水性であり、残りは疎水性である。長鎖エトキシ化アルコールを含有する代表的な水系エマルション又は水系分散液は、PETROLITE及びUNITHOXという商品名でBakerPetrolite(テキサス州シュガーランド)から市販されている。より詳細には、UNITHOX D−100は、25重量%の固形物を有し、かつ平均粒径約0.5マイクロメートルである有機凝集体を含有し、この有機凝集体の50重量%は親水性で、約50重量%は疎水性である。PETROLITE D−110は、10重量%の固形物を有し、平均粒径が約0.1マイクロメートルの有機凝集体を含有する。PETROLITE D−1038は、10重量%の固形物を有し、平均粒径が約0.1マイクロメートルの有機凝集体を含有する。UNITHOX D−300は、23重量%の固形物を有し、かつ平均粒径約が0.5マイクロメートルの有機凝集体を含有し、この有機凝集体の約50重量%は親水性で、約50重量%は疎水性である。
【0115】
他の好適な水系エマルション又は水系分散液は、界面活性剤を用いて安定化された蝋である有機凝集体を含有する。例えば、アルコキシル化炭化水素を界面活性剤として用いて、蝋を水相媒質中に分散させることができる。より詳細には、PETROLITE D−800は50重量%の固形物を有し、かつエトキシル化炭化水素を用いて安定化された石蝋を含む有機凝集体を含有する。この有機凝集体は平均粒径が0.7マイクロメートルである。PETROLITE D−900は40重量%の固形物を有し、かつエトキシル化炭化水素を用いて安定化された微結晶蝋を含む有機凝集体を含有する。この有機凝集体は平均粒径が0.7マイクロメートルである。他の蝋エマルション及び分散液は様々な供給元から入手することができる。例えば、他の蝋エマルションは、MICHEMという商品名でMichelman(オハイオ州シンシナティ)から、そしてLIQUILUBEという商品名でLubrizol(オハイオ州ウィックリフ)から市販されている。
【0116】
更に他の好適な水系エマルション又は水系分散液は、界面活性剤を用いて安定化されたポリマーである有機凝集体を含有する。例えば、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリビニルアセテート、又はゴムなどの疎水性ポリマーを、界面活性剤で安定させて水系エマルションを提供することができる。具体的な実施例としては、ポリスチレン又はポリスチレンコポリマーエマルション又はラテックス、ポリ(メタ)アクリレートエマルション又はラテックス、ゴムエマルション又はラテックス、そしてポリビニルアセテートエマルション又はラッテックスなどが挙げられるが、これらに限定されない。これらのエマルション又は分散液を提供する方法は当該技術分野において周知である。例えば、アクリロニトリル、メチルアクリレート、スチレン、酢酸ビニル、及び他の様々なモノマーのエマルション重合の手順はW.R.Sorenson and T.W.Campbell,「Preparative Methods of Polymer Chemistry」,pp.214〜265,Interscience Publishers,1968に記載されている。アクリル微小球分散液を提供する手順は、米国特許出願公開第2003/0104042号(Lucast et al.)に記載されている。加えて、有用なエマルション及び分散液は、Rohm and Haas(ペンシルバニア州フィラデルフィア)、Cray Valley(フランス、パリ)、Lubrizol(オハイオ州ウィクリッフ)、及びBASF(ニュージャージー州フローハムパーク)など、様々な供給元から市販されている。
【0117】
水相組成物は、典型的に、水相組成物の総重量を基準にして10重量%以下の有機凝集体を含有する。多くの実施例では、水相組成物は、8重量%以下、6重量%以下、又は5重量%以下の有機凝集体を含有する。この有機凝集体の分量は、水相組成物の重量を基準として少なくとも0.5重量%、少なくとも1重量%、少なくとも2重量%、又は少なくとも3重量%の量で存在することができる。いくつかの水相組成物は0.5〜10重量%の有機凝集体、1〜10重量%の有機凝集体、又は0.5〜5重量%の有機凝集体を含有する。
【0118】
水相組成物は、モノマー混合物と有機凝集体に加えて、水と、水混和性である任意選択の極性有機溶媒とを含む、水相溶媒を含有する。本明細書で極性有機溶媒に関連して使用されるとき、用語「混和性の」は、極性有機溶媒が主として水に可溶性であるか又は水と相溶性であることを意味する。一般的に、極性有機溶媒の少なくとも95重量%、少なくとも97重量%、少なくとも98重量%、少なくとも99重量%、少なくとも99.5重量%、少なくとも99.8重量%、又は少なくとも99.9重量%は水に可溶性である。
【0119】
水相溶媒中で使用される任意の水は、水道水、井戸水、脱イオン水、湧き水、蒸留水、滅菌水、又はその他の好適な種類の水のいずれかであることができる。本明細書で使用されるとき、用語「極性有機溶媒」は、水混和性の有機溶媒を指す。極性有機溶媒は典型的に、水素結合が可能であり、水と混合した場合に単一相を形成する。極性有機溶媒は典型的に、水相組成物中に存在するモノマーと反応しないが、水相組成物中の架橋性モノマーなどの一部のモノマーの溶解度を改善させる場合がある。極性有機溶媒は、ポリマーを形成する相分離作用に影響を及ぼす場合があり、得られる高分子物質の一次多孔質構造特性(すなわち、一次多孔質構造)に影響を与える場合がある。
【0120】
いくつかの実施形態では、極性有機溶媒は、モノアルコール(すなわち、単一ヒドロキシル基を有するアルコール)であり、1〜10個の炭素分子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有する。好適なモノアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソ−プロパノール、n−ブタノール、イソ−ブタノール、tert−ブタノール、シクロヘキサノール、又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかのモノアルコールはポロゲンとして機能する場合があり、少なくとも部分的に、多孔質高分子物質の一次孔構造の一因となる場合がある。より詳細には、溶媒としての機能に加えて、一部のモノアルコールは直径が約200ナノメートル未満の孔の数を増加させる場合がある。
【0121】
他の極性有機溶媒は、モノアルコールと組み合わせて、又はモノアルコールの代用として使用される場合がある。これらの他の好適な極性有機溶媒としては、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、アセトン、N−メチルピロリドン、及びアセトニトリルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0122】
極性有機溶媒は、使用される際、水相溶媒の総重量を基準にして少なくとも10重量%の量で存在することが多い。いくつかの実施形態では、水相の少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、又は少なくとも50重量%が極性有機溶媒である場合がある。極性有機溶媒は、水相溶媒の80重量%以下、70重量%以下、60重量%以下、又は50重量%以下であることができる。例えば、極性有機溶媒の量は、水相溶媒の10〜80重量%、20〜80重量%、30〜80重量%、40〜80重量%、又は50〜80重量%の範囲内となり得る。
【0123】
極性溶媒、官能性モノマー及び架橋性モノマーの選択が、得られる高分子樹脂がゲル状樹脂であるのか又はマクロ孔質樹脂であるのかに影響を与える場合がある。水相内で形成されることになる高分子物質に対してその水相が良好な溶媒である場合、得られる高分子樹脂がゲル状樹脂となる可能性が高い。水相内で形成されることになる高分子物質に対してその水相が特に良好な溶媒ではない場合、得られる高分子樹脂がマクロ孔質樹脂となる可能性が高い。
【0124】
水相組成物は、任意でポロゲンなどの他の水可溶性構成成分を含むことができ、得られる高分子樹脂の一次孔構造を修飾することができる。より詳細には、ポロゲンを添加することで、直径が約200ナノメートル未満の孔の数を増加させることができる。ポロゲンは通常、固体であるか又は水相組成物内でモノマー混合物と混和性である液体である。一般に、有用なポロゲンは、使用時に、水相組成物と非極性有機溶媒との間で、任意の感知可能な範囲に分割しない(すなわち、ポロゲンは、水相組成物から非極性溶媒へと、任意の感知可能な量で抽出されない)。例えば、水相組成物からトルエン、ヘプタンなどのような非極性有機溶媒へと抽出され得るポロゲンは、5重量%未満、4重量%未満、3重量%未満、2重量%未満、又は1重量%未満である。
【0125】
いくつかの好適なポロゲンは化学式(IV)のものであって、
−(R−O)−R
(IV)
式中、Rは、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、アシルオキシ又はハロであり、各Rは、独立して1〜4個の炭素原子を有するアルキレンであり、Rは、水素、アルキル、カルボキシアルキル、アシル又はハロアルキルであり、qは1〜1,000の整数である。
【0126】
代表的なポロゲンとしては、ポリエチレングリコール、及びヒドロキシ末端基(Rがヒドロキシであり、Rが水素である化学式(IV))を有するポリプロピレングリコールが挙げられるが、これらに限定されない。ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールの重量平均分子量は、多くの場合、10,000g/モル以下、8,000g/モル以下、6,000g/モル以下、4,000g/モル以下、1,000g/モル以下、800g/モル以下、600g/モル以下、又は400g/モル以下である。
【0127】
他の好適なポロゲンとしては、少なくとも3個のヒドロキシル基を有する脂肪族水溶性化合物が挙げられる。代表的なポロゲンとしては、単糖類、二糖類、及び例えばグルコース、リボース、スクロース、マルトース、ラクトース、マルトトリオース、並びにデキストランなどの多糖類、例えばグルコン酸、マニトール、グルクロン酸、グルコサミンなどの単糖類誘導体、及び例えば、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトールなどのポリオールが挙げられる。
【0128】
高分子樹脂が高分子ビーズの形状である実施形態では、反応混合物が有機相組成物も含む場合がある。水相組成物は、液滴として有機相組成物内に分散又は懸濁される。有機相組成物は典型的に、非極性有機溶媒及び任意の懸濁化剤を含有する。高分子ビーズの形成中に使用される有機相は、非水混和性である。本明細書で有機相に関して使用されるとき、用語「非混和性」は、有機相が水に溶解しないことを意味する。一般的に、有機相の少なくとも95重量%、少なくとも97重量%、少なくとも98重量%、少なくとも99重量%、少なくとも99.5重量%、少なくとも99.8重量%、又は少なくとも99.9重量%は水に溶解しない。
【0129】
有機相は典型的に、非極性有機溶媒及び任意の懸濁化剤(すなわち、重合安定剤)を含有する。有機相と水相組成物との体積比は、通常2:1〜6:1の範囲である。有機相の主要な目的は、水相組成物の分散又は懸濁のための不活性媒質として機能する他に、重合反応中に発生する熱を放散させることである。いくつかの実施形態では、有機相組成物の密度は、水相組成物の密度とほぼ等しく選択することができる。ほぼ一致しているこれらの密度は、より球状の高分子ビーズ及びより均一の大きさの高分子ビーズの形成をもたらす傾向がある。
【0130】
好適な非極性有機溶媒は、典型的に、ヘキサン、ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、イソドデカン及びシクロヘキサンなどのアルカン類、四塩化炭素、クロロホルム及び塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素類、ベンゼン及びトルエンなどの芳香族類、低粘度シリコーンオイル類、又はその組合せである。例えば、非極性有機溶媒は、ヘプタンと塩化メチレンの混合物、又はヘプタンとトルエンの混合物であることができる。
【0131】
非極性有機溶媒中の水相の液滴の懸濁を容易にするため、懸濁化剤を添加することができる。懸濁化剤は通常、有機溶媒に可溶であるが疎水性と親水性の部分の両方を有する。懸濁化剤は、水相と非極性有機溶媒との間の界面張力を修飾するように機能する。更に懸濁化剤により、水相組成物の液滴に分子中の原子配列安定性が提供される。この分子中の原子配列安定性により、重合過程中の凝集高分子ビーズの形成が最小限になるか又は防止される傾向がある。
【0132】
好適な懸濁化剤としては、ソルビタンセスキオレエート、ポリエチレンオキシドソルビタントリオレアート(例えば、ポリエチレンオキシド(20)ソルビタントリオレアート)、ポリエチレンオキシドモノオレエート(例えば、ポリエチレンオキシド(20)ソルビタンモノレエート)、ソルビタントリオレエート、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、イソオクチルアクリレートとアクリル酸のコポリマー、ヘキシルアクリレートとアクリル酸ナトリウムのコポリマー、及びイソオクチルアクリレートと2−アクリルアミドイソブチルアミドのコポリマーなどが挙げられる。懸濁化剤の量が、得られる高分子ビーズの大きさに影響する場合がある。すなわち、多量の懸濁化剤を使用すると、小さな高分子ビーズの形成がもたらされることが多い。一般的に、懸濁化剤が存在する場合、その分量は、モノマー混合物中のモノマーの総重量を基準にして、0.1〜10重量%の範囲である。例えば、モノマー混合物は、モノマーの総重量を基準にして、0.1〜8重量%又は0.5〜5重量%の懸濁化剤を含有することができる。
【0133】
有機凝集体と比較して、懸濁化剤は、有機相中と水相中で異なる溶解度特性を有する。懸濁化剤は有機相中で溶解するが、一部の懸濁化剤は有機相と水相の両方で溶解する場合がある。対照的に、有機凝集体は主として水相に存在し、水相内で分散しているか、又は懸濁しているかのいずれかである。有機凝集体は水相中で不溶性である。
【0134】
第二の態様で、多孔質高分子樹脂を調製する方法が提供される。この方法は、1)フリーラジカル重合が可能なモノマー混合物、2)0.05〜5マイクロメートルの分散又は懸濁している有機凝集体、及び3)水と、任意の水混和性の極性有機溶媒とを含む水相溶媒、を形成することを含む。モノマー混合物として、i)架橋性モノマーと、ii)官能性モノマーが挙げられる。架橋性モノマーは、式(I)の化合物を含む。
【0135】
【化9】

【0136】
式中、Rは水素又はメチルであり、Qはオキシ又は−NH−であり、及びYはアルキレン又はヘテロアルキレンである。アルキレン又はヘテロアルキレンY基は、ヒドロキシル基と置換されているか又は置換されていない。官能性モノマーは、(a)エチレン性不飽和基、及び(b)(1)酸性基若しくはその塩、(2)アミノ基若しくはその塩、(3)ヒドロキシル基、(4)アズラクトン基、(5)グリシジル基、又は(6)これらの組み合わせから選択される第1官能基、を含有する。この方法は、モノマー混合物の重合による、有機凝集体を含有する高分子物質の形成すること、及びそれに続くかかる高分子物質から少なくとも一部の有機凝集体を除去して、多孔質高分子樹脂を形成することを更に含む。高分子樹脂を調製するこの方法のいくつかの実施形態では、水相組成物の液滴は、水混和性ではなく、かつ非極性有機溶媒を含有する有機相中に分散又は懸濁されている。得られる多孔質高分子樹脂は、多孔質高分子ビーズを含有する。
【0137】
水相組成物に反応開始剤を添加して、フリーラジカル重合反応を開始することができる。フリーラジカル反応開始剤は、通常、水相溶媒に可溶である。フリーラジカル反応開始剤は、熱的に、光化学的に又は酸化還元反応を通じて活性化させることができる。フリーラジカル反応開始剤は、モノマー混合物中、モノマーの総重量を基準として、0.02〜10重量%の量で使用されることが多い。いくつかの実施例では、フリーラジカル反応開始剤は、モノマーの総重量を基準にして、2〜6重量%の量で存在する。
【0138】
好適な水溶性熱反応開始剤としては、例えば、アゾ化合物、過酸化物、又はヒドロペルオキシド、過硫酸塩などが挙げられる。代表的なアゾ化合物としては、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、及び4,4’−アゾビス−(4−シアノペンタン酸)が挙げられる。熱反応開始剤となり得る、市販されているアゾ化合物の例としては、VAZO 44、VAZO 56、及びVAZO 68など、「VAZO」という商品名でDuPont Specialty Chemical(デラウェア州ウィルミントン)から入手できる材料が挙げられる。好適な過酸化物及びヒドロペルオキシドとしては、過酸化アセチル、tert−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、及びペルオキシ酢酸が挙げられる。好適な過硫酸塩としては、例えば、過硫酸ナトリウム及び過硫酸アンモニウムが挙げられる。
【0139】
他の実施例では、フリーラジカル反応開始剤は、過硫酸アンモニウム又は過硫酸ナトリウムとN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、過硫酸アンモニウム又は過硫酸ナトリウムと硫酸第一鉄アンモニウム、過酸化水素と硫酸第一鉄アンモニウム、クメンヒドロペルオキシドとN,N−ジメチルアニリンなどのような酸化還元対である。
【0140】
重合温度は典型的に、選択される具体的なフリーラジカル反応開始剤に依存する。通常、熱開始重合における重合温度は約50℃〜約150℃である。ある方法では、その温度は約55℃〜約100℃である。酸化還元又は光化学的開始重合については、必要に応じて、その温度を室温近く、又は室温以下にすることができる。重合時間は、約30分間〜約24時間以上であることができる。典型的には、2〜4時間の重合時間が充分である。
【0141】
フリーラジカル重合反応が進行するにつれて、多くのポリマー分子が水相液滴内に形成される。この反応が進行するにつれて、ポリマー分子の成長及び架橋が持続される。分子量が充分に大きくなると、高分子物質は水相組成物から分離される。理論に束縛されることを望むものではないが、平均孔径が約500ナノメートルの孔を有する二次多孔質構造は、高分子物質内に有機凝集体が捕捉されていること、及びそれに続いて高分子物質から有機凝集体が除去されることから生じると考えられている。典型的に、有機凝集体には高分子物質と化学結合を形成する基は存在しない。典型的に、水で、極性有機溶媒で、又はこれらの組み合わせで洗浄することにより、有機凝集体を少なくとも部分的に除去することができる。いくつかの実施例では、二次多孔質構造の孔径は、有機凝集体の直径と実質的に等しい場合がある。他の実施例では、二次多孔質構造の孔径は、有機凝集体の数倍の大きさである場合があり、約15〜20マイクロメートルの大きさになり得る。理論に束縛されることを望むものではないが、これらの大きな孔は、重合プロセス前、又は重合プロセス中に有機凝集体が部分的に融合する結果であると考えられている。
【0142】
更に、平均孔径が約200ナノメートル未満の一次多孔質構造は、分子量が増加するにつれて、水相溶媒と任意のいずれかのポロゲンとが高分子物質と相互作用する結果として生じると考えられている。水相溶媒が高分子物質の形成において良好な溶媒である場合、その水相内には相分離が発生しない場合があり、溶媒膨潤のゲル状の一次多孔質構造が形成される傾向がある。逆に、水相溶媒と任意のいずれかのポロゲンが高分子物質の形成において相対的に劣悪な溶媒である場合、その高分子物質に相分離が発生する場合があり、マクロ孔質の一次多孔質構造が形成される傾向がある。
【0143】
相分離が発生するか否かと、相分離が水相内で発生する時点とは、形成する高分子物質と、任意のいずれかの極性有機溶媒又はポロゲンなどの様々な水相組成物との相溶性によって、及び分量によって影響され得る。更に相分離は、モノマー混合物中に存在する架橋性モノマーの量によって影響を受ける場合があり、典型的に、架橋性モノマーの量がより多くなると高分子物質の分子量がより急速に増加するため、初期の相分離に有利である。
【0144】
高分子樹脂の形成中に相分離が存在すると、この相分離が発生する時点は、一次多孔質構造の平均孔径と孔径の分布に影響を及ぼす場合がある。形成される高分子物質と相溶性である、極性有機溶媒とポロゲンを添加すると(すなわち、形成される高分子物質に対して良好な溶媒である、極性有機溶媒とポロゲン)、後期相分離が発生する傾向がある。後期相分離は、一次多孔質構造内により小さい孔を有し、かつより大きい表面積を有する高分子樹脂の形成に有利な傾向がある。逆に、形成される高分子物質に対してより低い溶解度を有する極性有機溶媒とポロゲンを追加すると、一次多孔質構造内により大きい孔を有し、かつより小さい表面積を有する高分子樹脂の形成がもたらされる傾向がある。初期相分離は、一次多孔質構造内により大きい孔を有し、かつより小さい表面積を有する高分子樹脂の形成に有利な傾向がある。
【0145】
多孔質高分子樹脂を生成するいくつかの実施形態では、多孔質高分子ビーズが形成される。高分子ビーズを調製するこの方法は、逆相又は逆懸濁重合プロセスである。水相組成物は前述のように調製される。この方法は、水と非混和性である有機相中の水相組成物の分散液又は懸濁液の液滴を更に伴う。有機相の体積は典型的に、水相組成物の体積よりも大きい。有機相は典型的に、非極性溶媒と、任意の懸濁化剤を含有する。この方法は、モノマー混合物の重合によって、有機凝集体を含有する高分子粒子を形成すること、及びそれに続いてその高分子粒子から少なくとも一部の有機凝集体を除去して、多孔質重合ビーズを形成することを更に含む。
【0146】
高分子粒径は、かなりの程度まで、水相組成物の液滴の大きさによって決定される。液滴の大きさは、攪拌速度、温度、懸濁化剤の量、懸濁化剤の選択、非極性有機溶媒の選択、及び任意の水相極性有機溶媒の選択などの変化によって影響され得る。攪拌速度、懸濁化剤の種類及び懸濁化剤の量は、生成した高分子ビーズの凝集又はアグロメレーションを制御するためしばしば変更され得る。一般的に、凝集の欠如は好ましい。
【0147】
生成した高分子粒子は、例えば、濾過又はデカンテーションにより単離することができる。高分子粒子はその後一連の洗浄工程を経て、少なくとも一部の有機凝集体と任意のポロゲンが除去される。有機凝集体及びポロゲンを除去するために好適な溶媒としては、例えば、水、アセトン、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール及びイソプロパノール)、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン及びアセトニトリルなどの極性溶媒が挙げられる。洗浄された高分子ビーズは、必要に応じて、好適な方法のいずれかを用いて乾燥させることができる。ある方法では、スクリーニング、沈殿及び空気分級などの技術を用いて、高分子ビーズを分画することができる。
【0148】
第三の態様では、目的化合物を精製又は分離する方法が提供される。この方法は、前述の多孔質高分子樹脂の形成を含む。この方法は、多孔質高分子樹脂を目的化合物を含有する試料と接触させて、目的化合物が、多孔質高分子樹脂の少なくとも1つの官能基と反応又は相互作用することを含む。官能基は、(1)酸性基若しくはその塩、(2)アミノ基若しくはその塩、(3)ヒドロキシル基、(4)アズラクトン基、(5)グリシジル基、又は(6)これらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、この多孔質高分子樹脂は多孔質高分子ビーズの形状である。
【0149】
目的化合物は試料の他の構成要素から分離又は精製することができる。いくつかの実施形態では、目的化合物は、例えば、ウィルス、タンパク質、酵素、ワクチン、DNA、及びRNAなどの、生体分子である。いくつかの用途では、試料の組成物を調整して、試料中の目的化合物が高分子樹脂上の官能基の1つと反応又は相互作用する可能性を強化することができる。例えば、試料のpHを調整して、酸性基、酸性基の塩、塩基性基、又は塩基性基の塩から選択される官能基を有する高分子樹脂を用いて、電荷を保持する生体分子の分離又は精製を最適化することができる。
【0150】
官能基が酸性基又はその塩である場合、高分子樹脂はカチオン交換樹脂として機能する場合がある。高分子樹脂が負に帯電する基を有し、かつ目的化合物が正に帯電する基を有するpHで、試料をかかる高分子樹脂と接触させることができる。この目的化合物は高分子樹脂に吸着する場合がある。吸着された目的化合物を高分子樹脂から放出させるために、pHを上げることができる(例えば、pHを少なくとも6又は7以上に上げる)。あるいは、目的化合物が生体分子である場合、試料は、pH約3〜10又はpH約4〜6において、低イオン強度緩衝剤(例えば、5〜50ミリモルの緩衝剤塩と0〜200ミリモルの塩化ナトリウム)中で高分子樹脂と接触させて吸着させることができる。吸着された生体分子を放出させるために、多くの場合高イオン強度緩衝剤をカチオン交換樹脂と接触させる。いくつかの実施形態において、高イオン強度緩衝剤は、目的化合物を吸着させるために使用されるものと同じ緩衝剤組成物と1モルの塩化ナトリウムを含む。吸着プロセスと放出プロセスは、典型的には室温に近い温度で行われる。
【0151】
カチオン交換樹脂のpHを制御するために有用な緩衝塩としては、リン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、及びTRIS(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)が挙げられるが、それらに限定されない。他の好適な緩衝剤としては、MOPS(3−モルホリノプロパンスルホン酸)、EPPS(4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−プロパンスルホン酸)、MES(2−モルホリノエタンスルホン酸)、及びその他の「グッズ(Good’s)」緩衝剤が挙げられる。
【0152】
官能基がアミノ基又はその塩である場合、高分子樹脂はアニオン交換樹脂として機能する場合がある。負に帯電した基を有する目的化合物を、アニオン交換樹脂が正に帯電した基を有するpH(例えば、1〜10のpH)で、アニオン交換樹脂と接触させることができる。一般的に、負に帯電した目的化合物のアニオン交換樹脂への効果的な吸着を得るため、目的化合物のpK(又はタンパク質についてはpI)を少なくとも約1〜2pH単位で越えるpHを使用することができる。アニオン交換樹脂から吸着した目的化合物を放出するため、必要に応じて、pHを少なくとも約1〜2pH単位又はそれ以上下げることができる。あるいは、帯電した目的化合物が生体分子である場合、適切なpH(例えば、ウシ血清アルブミンの場合、約6〜8のpH)で低イオン強度緩衝剤(例えば、5〜20ミリモル緩衝塩)中で試料をアニオン交換樹脂と接触させることができる。吸着させた生体分子を放出させるために、多くの場合高イオン強度緩衝剤をアニオン交換樹脂と接触させる。ある実施形態において、高イオン強度緩衝剤は、目的化合物吸着させるために使用されるものと同じ緩衝剤組成物と1モルの塩化ナトリウムを含む。吸着プロセス及び放出プロセスは、典型的には室温に近い温度で行われる。
【0153】
アニオン交換樹脂のpHを制御するために有用な緩衝塩としては、リン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム及びTRIS(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)が挙げられるが、これらに限定されない。他の好適な緩衝剤としては、MOPS(3−モルホリノプロパンスルホン酸)、EPPS(4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−プロパンスルホン酸)、MES(2−モルホリノエタンスルホン酸)、及びその他の「グッズ(Good’s」緩衝剤が挙げられる。
【0154】
高分子樹脂上の官能基がヒドロキシル基である場合、その高分子樹脂はサイズ排除樹脂として用いることができる。あるいは、高分子樹脂を使用して、ヒドロキシル基と反応することができる基を有する目的化合物を精製又は分離することができる。例えば、カルボキシ基を有する目的化合物を含有する試料は、ヒドロキシル基と反応して、縮合反応を通じてエステルを形成することができる。この実施例では、カルボニルオキシ基を介しての目的化合物の高分子樹脂への共有結合がもたらされる。
【0155】
高分子樹脂上の官能基がアズラクトン基である場合、求核基を有する目的化合物を含有する試料は、開環反応を通じてこのアズラクトン基と反応することができる。アズラクトン基と反応する好適な求核基としては、一級アミノ基、二級アミノ基、及びヒドロキシ基が挙げられるが、これらに限定されない。アズラクトン基と、目的化合物の求核基との反応により、通常、目的化合物を高分子樹脂に共有結合的に結合させる連結基の形成がもたらされる。アズラクトン基の開環によって形成される連結基は、多くの場合、−(CO)NHC(R(CH(CO)−を含み、式中、Rはメチルなどのアルキルであり、pは0又は1と等価であり、及び(CO)はカルボニルを示す。
【0156】
高分子樹脂上の官能基がグリシジル基である場合、求核基を有する目的化合物を含有している試料は、開環反応を通じてこのグリシジル基と反応することができる。グリシジル基と反応するために好適な求核基としては、一級アミノ基、二級アミノ基、チオール基、及びカルボキシ基が挙げられるが、これらに限定されない。グリシジル基と、目的化合物の求核基との反応によって、通常、目的化合物を高分子樹脂に共有結合的に結合させる連結基の形成がもたらされる。グリシジル基の開環によって形成される連結基は、多くの場合、グリシジル基が第1級アミノ基と反応するときには−C(OH)−HCHNH−基を、又はグリシジル基がカルボキシ基と反応するときには−C(OH)HCHO(CO)−基を含有する。
【0157】
第四の態様では、目的化合物を精製又は分離するための別の方法が提供される。この方法は、1)酸性基若しくはその塩、(2)アミノ基若しくはその塩、(3)ヒドロキシル基、(4)アズラクトン基、(5)グリシジル基、又は(6)これらの組み合わせから選択される第1官能基を含有する、前述の多孔質高分子樹脂の形成を含む。この方法は、多孔質高分子樹脂を修飾剤で処理して第1官能基を第2官能基に変換することによって修飾高分子樹脂を調製することを更に含む。続いて、第2官能基を有する修飾多孔質高分子樹脂を目的化合物を含有する試料と接触させる。目的化合物は、修飾多孔質高分子樹脂の第2官能基と反応又は相互作用する。
【0158】
修飾剤は、第1官能基と反応又は相互作用することができる化合物のいずれかであることができる。いくつかの実施例では、修飾剤は求核基と第2官能基を含む化合物である。他の実施例では、修飾剤は、カルボキシ基と第2官能基を含む化合物である。第2官能基は第1官能基と異なる。修飾剤が生体分子である場合、結合した生体分子は、別の生体分子の相補的な基と相互作用又は反応することができる官能基を有する場合がある。
【0159】
いくつかの実施形態では、修飾剤は、ヒドロキシル基である第1官能基と反応することができる。例えば、ヒドロキシル基は、カルボキシ基を有する修飾剤と反応して、カルボニルオキシを含有する連結を通じて修飾剤を高分子樹脂に結合することができる。カルボキシ基は、タンパク質などの生体分子上にあることができ、ヒドロキシ基との反応によって、タンパク質の高分子樹脂への結合をもたらす。得られる修飾高分子樹脂は親和性樹脂として機能する。すなわち、結合した生体分子は親和性リガンドとして機能して、相補的生体分子と反応又は相互作用することができる(すなわち、結合した生体分子は第2官能基を有し、別の生体分子の相補的な官能基と反応又は相互作用することができる)。
【0160】
別の実施形態では、修飾剤はグリシジル基又はアズラクトン基である第1官能基と反応することができる。これらの第1官能基のいずれも、求核基を有する修飾剤と開環反応を起こすことができる。修飾剤と第1官能基の反応は、修飾剤の高分子樹脂への結合をもたらす。修飾剤は、例えば、親和性リガンドとして機能する生体分子であることができ(すなわち、第2官能基は親和性リガンド)、相補的な生体分子と反応又は相互作用する。得られる修飾高分子樹脂は、親和性樹脂として機能することができる。他の実施例では、修飾剤はイオン電荷を提供することができ(すなわち、第2官能基はイオン基)、反対のイオン電荷を有する目的化合物と反応又は相互作用することができる。得られる修飾高分子樹脂は、イオン交換樹脂として機能することができる。あるいは、修飾高分子樹脂はサイズ排除樹脂として機能することができる。なお別の実施例では、修飾剤は疎水基を提供することができ、疎水基を有する目的化合物と反応又は相互作用することができる。得られる修飾高分子樹脂は、疎水性相互作用樹脂として、又は逆相樹脂として機能することができる。なお別の実施例では、修飾剤は、様々な金属含有種と反応又は相互作用することができる金属キレート基を提供することができる。得られる修飾高分子樹脂はキレート樹脂として機能することができる。更なる実施例では、修飾剤は抗体を提供して、今度は抗体が細胞と結合してこの細胞の高分子樹脂への結合をもたらすことができる。すなわち、修飾高分子樹脂は細胞選別樹脂として機能することができる。更なる実施例では、修飾剤は酵素である場合がある。得られる修飾高分子樹脂は固定化酵素樹脂として機能することができ、特定の目的化合物に曝露する場合、触媒として使用することができる。
【0161】
目的化合物を精製又は分離する方法のいくつかの実施形態では、多孔質高分子樹脂をカラムに配置してクロマトグラフカラムを調製することができる。高分子樹脂を修飾剤で処理して、目的化合物との反応又は相互作用に使用できる官能基を変更する場合、その修飾は高分子樹脂のカラム内への配置前であっても又は配置後であってもよい。好適なカラムは当該技術分野において知られており、ガラス、ポリマー、ステンレス鋼、チタン、及びそれらの合金、又はニッケル及びその合金などの材料から作製することができる。カラム内に高分子樹脂を効果的に充填する、カラムの充填方法は、当該技術分野において既知である。
【0162】
多くの場合、高分子樹脂はかなり硬質であり、任意の好適な流速及び圧力条件下における、任意の適切な寸法のクロマトグラフカラム中での使用に必要な機械的強度を有する。高分子樹脂は、例えば、高流速でのクロマトグラフカラム中に使用することができる。高分子樹脂は、クロマトグラフカラムで一般に遭遇する差圧条件下での使用に好適である。本明細書で用いられるとき、用語「差圧」は、クロマトグラフカラムにわたる圧力降下を意味する。例えば、治療用タンパク質の下流精製又は分離に用いられるクロマトグラフカラムを、少なくとも150cm/時間、少なくとも250cm/時間、少なくとも500cm/時間、又は少なくとも700cm/時間などの見掛け速度(例えば、流量)で使用して、生産性を増大させることができる。典型的に、より速い流量は、より高い生産性をもたらす。
【0163】
クロマトグラフカラムは、液体クロマトグラフのような分析計器の一部であることができる。クロマトグラフカラムに高分子樹脂を充填した場合、目的化合物を分離又は精製するために使用することができる。目的化合物は、高分子樹脂上の官能基と反応又は相互作用することができる。あるいは、試料中の不純物を除去して、試料中の目的混合物濃度の増大をもたらすことができる。目的化合物を含有する試料中の目的化合物又は不純物の量は、測定することができる。
【0164】
クロマトグラフカラムは、目的化合物を分離又は精製するための分取液体クロマトグラフ系の一部であることができる。分取液体クロマトグラフ系は、実験室規模の系、パイロットプラント規模の系、又は工業規模の系であることができる。
【0165】
目的化合物を精製又は分離する方法の他の実施形態では、多孔質高分子樹脂は濾過媒質の表面上に配置することができる。高分子樹脂を修飾剤で処理して、目的化合物との反応又は相互作用に使用できる官能基を変更する場合、その修飾は濾過媒質の表面上の高分子樹脂の配置前又は配置後であることができる。筐体内に濾材を配置してフィルターカートリッジを調製することができる。好適な濾過材と、フィルターカートリッジを含む系は、例えば米国特許第5,468,847号(Heilmann et al.)に更に記載されている。そのようなフィルターカートリッジは、例えば、生体分子を精製又は分離するために用いることができる。より硬質ではない粒子、又はより小さい多孔質高分子樹脂は、フィルターカートリッジ系に特有の低い圧力低下により、クロマトグラフカラム内と比較してフィルターカートリッジ内に使用することができる。
【0166】
濾過材は、単一の濾過層又は複数の濾過層を有することができ、ガラス又はポリマー繊維(例えば、ポリプロピレン繊維などのポリオレフィン繊維)から調製することができる。いくつかの実施形態において、濾過材は粗い予備濾過層、及びより細かい1つ以上の濾過層を含む。例えば、濾過材は、粗い予備濾過層と、続いて徐々により小さい平均孔径を有する一連の追加濾過層を含むことができる。高分子樹脂は、最小平均孔径を有する濾過材の層に位置することができる。
【0167】
濾過材の孔径の選択は、高分子樹脂の寸法に依存する。典型的に、濾過材の孔径は、高分子樹脂の平均寸法より小さくなるように選択される。しかし、高分子樹脂の一部は、濾過材内に入り込む場合がある。
【0168】
濾過材は、米国特許第3,058,594号(Hultgren)に記載されるものなどの垂直にひだの付いた濾過材の形態であることができる。他の実施形態において、濾過材は、米国特許第4,842,739号(Tang et al.)に記載されるものなどの水平の複雑な放射状にひだが付いた濾過材の形態である。ひだの水平配列は、濾過材を含むフィルターカートリッジを垂直方向に用いる用途において望ましい場合がある。そのような配列は、使用時及び保管時のフィルタエレメントからの多孔質樹脂の損失を減少させることができる。
【0169】
目的化合物を精製又は分離する方法の他の実施形態では、多孔質高分子樹脂は連続多孔質マトリックス内に組み込まれている。高分子樹脂を修飾剤で処理して、目的化合物との反応又は相互作用に使用できる官能基を変更する場合、その修飾は連続多孔質マトリックス内への組み込みの前であっても又は組み込みの後であってもよい。連続多孔質マトリックスは、典型的には、織繊維ウェブ又は不織繊維ウェブ、多孔質繊維、多孔質膜、多孔質フィルム、中空繊維、又は管である。好適な連続多孔質マトリックスは、米国特許第5,993,935号(Rasmussen et al.)に更に記載されている。
【0170】
繊維ウェブである連続多孔質マトリックスは、例えば、大きい表面積、製造の容易性、低い材料コスト、及び様々な繊維組織並びに繊維密度などの利点を提供することができる。広範囲の繊維直径が好適であるが、繊維は平均直径が0.05マイクロメートル〜50マイクロメートルである場合が多い。ウェブの厚さは、最終使用用途に適合するように変更することができる(例えば、約0.2マイクロメートル〜約100cm)。
【0171】
複合材料は、例えばメルトブロー法を用いて調製することができる。例えば、溶融高分子材料を押し出して、メルトブロー繊維の流れを製造することができる。高分子樹脂を繊維の流れに導入して、繊維と混合することができる。繊維と高分子樹脂の混合物は、ウェブを形成するようにスクリーン上に集めることができる。高分子樹脂は繊維ウェブ内で分散させることができる。いくつかの実施形態では、繊維ウェブ全体に均一に高分子樹脂を分散させることができる。
【0172】
複合材料は、フィブリル化ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のようなフィブリル化ポリマーマトリックスにより調製することもできる。好適な方法は、米国特許第4,153,661号(Ree et al.)、同第4,565,663号(Errede et al.)、同第4,810,381号(Hagen et al.)、及び同第4,971,736号(Hagen et al.)により充分に記載されている。一般に、これらの方法は、高分子樹脂とポリテトラフルオロエチレン分散液をブレンドしてパテ様塊状物を得ることと、パテ様塊状物を5℃〜100℃で強力な混合に供してPTFEのフィブリル化を引き起こすことと、パテ様塊状物を二軸的にカレンダ加工することと、得られたシートを乾燥させることを含む。
【0173】
複合材料を調製する別の方法では、高分子樹脂を液体内に分散し、続いて、均質混合物を形成するのに十分な温度で熱可塑性高分子とブレンドすることができる。均質混合物は、望ましい形状を有する型に入れることができる。混合物を冷却すると、液体を相分離することができ、分散した高分子粒子を含有する熱可塑性ポリマーマトリックスが残る。この方法は、米国特許第4,957,943号(McAllister et al.)に更に記載されている。
【0174】
連続多孔質マトリックスに組み込まれる高分子樹脂の量は、得られる複合体の体積を基準にして、少なくとも1体積パーセント、少なくとも5体積パーセント、少なくとも10体積パーセント、少なくとも20体積パーセント、少なくとも30体積パーセント、少なくとも40体積パーセント、又は少なくとも50体積パーセントである。連続多孔質マトリックスに組み込まれる高分子樹脂の量は、得られる複合物の体積を基準として、99体積パーセント以下、95体積パーセント以下、90体積パーセント以下、85体積パーセント以下、又は80体積パーセント以下を含有することができる。より大きい高分子樹脂の量を有する混合物は、より大きい容量を有する傾向がある。
【0175】
第五の態様では、多孔質高分子樹脂が提供される。多孔質高分子樹脂は、a)架橋性モノマーと、b)官能性モノマーと、を含むモノマー混合物の反応生成物である。架橋性モノマーは、式(I)の化合物を含む。
【0176】
【化10】

【0177】
式中、Rは水素又はメチルであり、Qはオキシ又は−NH−であり、及びYはアルキレン又はヘテロアルキレンであり、Yはヒドロキシル基と置換されていてもよい。官能性モノマーは、(a)エチレン性不飽和基、及び(b)(1)酸性基若しくはその塩、(2)アミノ基若しくはその塩、(3)ヒドロキシル基、(4)アズラクトン基、(5)グリシジル基、又は(6)その組み合わせから選択される第1官能基と、を含む。モノマー混合物中の全てのモノマーは、20未満の親油性指数を有する。高分子樹脂は、平均孔径が200ナノメートルの第一組の孔と、平均孔径が500ナノメートルを超える第二組の孔を含む、階層性多孔質構造を有する。
【0178】
高分子樹脂は任意の望ましい形状を有することができる。形状は規則的又は非規則的であることができる。いくつかの実施形態では、高分子樹脂は高分子ビーズの形状であり、球状又は実質的に球状である。他の実施形態では、高分子樹脂はモノリスの形状である。モノリスは、例えば高分子樹脂を調製するために使用される容器の形状などの、任意の形状を有することができる。モノリスは、切断、破砕又は挽くなどすることができる。例えば、モノリスから高分子樹脂の粒子を形成することができる。この粒子は規則的又は非規則的形状を有することができる。
【0179】
高分子樹脂が高分子ビーズである場合、この高分子ビーズの平均的な大きさは、光散乱法又は画像解析を備える電子顕微鏡法などの技術を用いて測定することができる。高分子ビーズは通常、平均直径が少なくとも10マイクロメートルである。例えば、高分子ビーズは、平均直径が少なくとも20マイクロメートル、少なくとも30マイクロメートル、少なくとも40マイクロメートル、少なくとも50マイクロメートル、又は少なくとも60マイクロメートルである。高分子ビーズは、通常、平均直径が、2,000マイクロメートル以下、1,000マイクロメートル以下、500マイクロメートル以下、又は200マイクロメートル以下である。ある用途では、マクロ孔質高分子ビーズは、平均直径が10〜2,000マイクロメートル、20〜2,000マイクロメートル、20〜500マイクロメートル、50〜500マイクロメートル、20〜200マイクロメートル、50〜200マイクロメートル、50〜100マイクロメートル、50〜75マイクロメートル、50〜70マイクロメートル、又は60〜70マイクロメートルである。
【0180】
高分子樹脂は典型的に、一次多孔質構造と二次多孔質構造とを有する。一次多孔質構造は、バルクポリマーマトリックスと関連する。この多孔質構造は、有機凝集体が欠如するときに形成されるものと本質的に同一の多孔質構造である。この一次多孔質構造は、多くの場合、平均孔径が約200ナノメートル(nm)未満であるが、これより大きい孔が存在することもあり得る。一次多孔質構造には、水相組成物中に任意のポロゲン又は任意の非極性溶媒を添加することによって、影響を及ぼすことができる。水相組成物中の有機凝集体の含有は、ビーズ内に大きな孔(例えば、空洞又は孔隙)を有する二次多孔質構造をもたらす。これらの孔の平均直径は一般的に約500ナノメートルを超える。二次多孔質の平均孔径は、1マイクロメートルを超える、2マイクロメートルを超える、5マイクロメートルを超える、又は10マイクロメートルを超えるものであることができる。二次多孔質構造の一部の孔は約15〜20マイクロメートルほどの大きさであることもある。これらの空洞は互いに開放連絡(すなわち、開放気泡形状)を有するか、又は独立気泡形状を有し得る。しかしこの後者の事例でも、一次多孔質構造を通じて空洞は互いに連通する。二次孔は、ビーズ外部への開口部を有する場合も又は有さない場合もある。
【0181】
走査電子顕微鏡法などの様々な顕微鏡技術を用いると、しばしば高分子樹脂中に一次多孔質構造と二次多孔質構造の両方を観察できる。加えて、二次多孔質構造は、典型的に、通常の光学顕微鏡法によって観察され得るに充分に大きい。一次多孔質構造は、極低温条件下で窒素吸着を用いて特徴付けることができる。
【0182】
多孔質構造の組み合わせは、生体分子などの相対的に大きな目的化合物の精製又は分離に、特に好都合である。平均寸法が約500ナノメートルを超える二次多孔質構造は、相対的に大きな目的化合物の高分子樹脂内部領域への到達をより容易にする。平均孔径が約200ナノメートル未満の一次多孔質構造は、典型的に、適正な表面積と容量を目的化合物に提供する。
【0183】
一次多孔質構造がマクロ孔質である場合、通常、表面積は少なくとも20m/g、少なくとも30m/g、又は少なくとも40m/である。表面積は、20〜350m/gの範囲に、30〜200m/gの範囲に、20〜100m/gの範囲に、30〜100m/gの範囲に、又は40〜350m/gの範囲にあることが多い。
【0184】
高分子樹脂の容量は、高分子樹脂と相互作用又は反応し得る目的化合物の量として与えられる。例えば、カチオン交換樹脂として機能する高分子樹脂は、正に帯電した基を有する様々な目的化合物と相互作用することができる。より詳細には、カチオン交換容量は、高分子樹脂によって吸収され得る免疫グロブリン(immunoglobin)(例えば、lgG)などの特定のタンパク質の量として与えられる。
【0185】
前述は、実施形態を可能とする説明が入手可能であった、本発明者によって予見される実施形態を記述し、本発明の実体のない修正が現在予見されないにもかかわらず、その同等物を代表し得る。
【実施例】
【0186】
これらの実施例は、例証目的であり、添付された請求項の範囲を制限することを意図しない。用いた溶媒及びその他の試薬は、別段の記載のない限り、Sigma−Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手した。
【0187】
試験方法
免疫グロブリンG(IgG)のカチオン交換容量
高分子ビーズを脱イオン水と混合して、3000相対遠心力(rcf)で20分間遠心して充填ビーズベッドを形成し、その後脱イオン水の量を調整して総体積を充填ビーズベッドの2倍とすることによってカチオン交換高分子ビーズの50体積パーセントのスラリーを調製した。スラリーを充分に混合して高分子ビーズを懸濁させ、その後VWR(Eagan,MN)からCENTREX MFという商標表記で市販されている、5mLの0.45マイクロメートル酢酸セルロース遠心分離マイクロフィルターに、スラリーの試料400マイクロリットルをピペット注入した。3000rcfで5分間遠心して水を除去した。その後、50mM酢酸ナトリウムと80mM塩化ナトリウムをpH4.5で含有する緩衝剤4mLと高分子ビーズを混合した。3000rcfで10分間再び試料を遠心した。上清を捨てた。続いて、Equitech−Bio(Kerrville,TX)から入手した、同一の酢酸緩衝剤中で約7mg/mLの濃度を有しているヒトIgGの4.5mLの試料を、高分子ビーズを含有する濾過材に添加した。混合物を一晩混転した後、3000rcfで20分間の遠心分離により、高分子ビーズから上清を除去した。
【0188】
上清を紫外線分光法で分析した。280ナノメートルでの試料の吸光度を開始時のIgG溶液のものと比較した。数値の差を用いて高分子ビーズのIgG容量を計算した。分析を3回行って平均化した。
【0189】
免疫グロブリンG(IgG)の動的結合量(DBC)
OMNIFTという商標表記でChrometech(Apple Valley,MN)から市販されている5cm×内径0.3cmのガラスカラムに、高分子ビーズの水性スラリー(高分子ビーズの総体積約350マイクロリットル)を充填し、AKTAという商標表記でGE Healthcare(Uppsala,Sweden)から市販されている中高圧液体クロマトグラフ上に設置し、0.7mL/分で、カラム体積の10倍量の緩衝剤A(50mM酢酸、40mM塩化ナトリウム、pH4.5)により平衡化した。試料の7mLが充填されるか、あるいは280ナノメートル(A280)の波長で紫外線吸光度が800mAUを超えるまで(いずれか早い方)、課題溶液(緩衝剤A中の5.0mg/mLヒトIgG)を0.09mL/分(滞留時間3.93分/76cm/時)で50mLスーパーループを通じて収容した。0.7mL/分の流速で、カラム体積の18倍量の緩衝剤Aを流して未結合の試料の洗い出しを実施した。これに続いて、緩衝剤B(50mM酢酸、1.0Mの塩化ナトリウム、pH4.5)によって、0体積パーセントの緩衝剤B(100体積パーセントの緩衝剤A)から100体積パーセントの緩衝剤Bへとカラム体積の8倍量で勾配溶出し、100体積パーセントの緩衝剤Bでカラム体積の10倍量で残りを溶出(remaind)した。緩衝剤B溶液はIgG結合を溶出した。支持体に結合したIgGの量を、当初収容時にカラムから出ていく溶液の濃度が当初IgGの課題溶液濃度の10%であった時点で決定した(非結合タンパク質の安定期は減じた)。それに続いて、カラム体積の20倍量の緩衝剤Aを流し、カラムを再び平衡化した。
【0190】
水素イオンの小イオン容量(Small Ion Capacity)(SIC)
約8mLの高分子ビーズスラリー(脱イオン水中約50体積パーセント)を15mLの目盛り付き遠心管に移して、3000相対遠心力(rcf)で5分間遠心分離した。得られた充填高分子ビーズの体積を最も近い0.1mLに記録して、スラリーを定量的に焼結ガラス漏斗に移し、及び脱イオン水で洗浄し(3×50mL)、0.5N塩酸で洗浄し(3×50mL)、次いで再び脱イオン水で洗浄(3×50mL)した。続いて、洗浄した高分子ビーズを定量的に125mLの三角フラスコに移し、2M塩化ナトリウムを4.0mL添加して水素イオンを置換した。5分後、2滴のフェノールフタレイン(100mLエタノール中1グラム)をスラリーに添加して、溶液がわずかにピンク色になるまで、混合物を0.1Nの水酸化ナトリウムで滴定した(磁気攪拌プレート上で混ぜながら)。添加した0.1水酸化ナトリウムの体積を分析したビーズの体積で割って100倍し、高分子ビーズのmL当たりのマイクロモル中の小イオン容量を計算した。
【0191】
【表1】

【0192】
(実施例1)
MBAに対してAMPSが重量比35:65で含有されるモノマー混合物を用いた逆相懸濁重合によって高分子ビーズを調製した。有機凝集体として、PETROLIYR D110を水相に添加した。
【0193】
より詳細には、懸濁化剤1(0.56グラム)とヘプタン(536mL)を、機械的撹拌機(攪拌速度450rpm)、窒素注入口、温度計、温度調節器付きマントルヒーター、及び凝縮器を備えたフラスコに添加することによって、有機相を調製した。フラスコ内の有機相を、攪拌しながら35℃に加熱し、15分間窒素を散布した。
【0194】
MBA(18.2グラム)、AMPS(50重量%水溶液19.6グラム)、IPA(85mL)、5mLのPETROLITE D110、脱イオン水(27.2mL)、PEG6000(50重量%水溶液10グラム)、及びエチレングリコール(20mL)を組み合わせて水相を調製した。この水相を攪拌し、30〜35℃の範囲の温度に加熱してMBAを溶解した。脱イオン水(3mL)に溶解した過硫酸ナトリウム(0.5グラム)を、更に攪拌しながら水相に添加した。水相を、有機相を含有している反応フラスコに添加した。得られた混合物を攪拌して窒素を10分間散布した。
【0195】
TMEDA(0.5mL)を添加して重合を開始させた。反応温度は急速に43.5℃まで上昇し、その後徐々に引いた。反応混合物を、TMDAの添加時から合計2時間攪拌し、続いて焼結ガラス漏斗を用いて濾過した。反応生成物をアセトン(2×250mL)、メタノール(2×250mL)、そしてアセトン(2×250mL)で洗浄した。ロータップ型RX−29分類器(W.Tyler、Mentor,OH)で水を流動液体として用いて、洗浄した生成物を分類し、38〜106マイクロメートルの範囲の大きさの無色高分子ビーズを産出した。
【0196】
走査電子顕微鏡法(SEM)と光学顕微鏡法を用いて、高分子ビーズが、マクロ孔質ポリマーマトリックスに囲まれた複数の大きな孔(0.5マイクロメートルを超える直径)を有することを確認した。IgG(重量平均分子量は150,000g/モルに相当)を用いて前述の方法によって測定されたカチオン交換容量は62mg/mLであり、IgGを用いて前述の方法によって測定された動的結合容量(DBC)は41mg/mLであった。
【0197】
比較例1
重量で35:65のAMPS/MBAコポリマーカチオン交換ビーズを逆相懸濁重合で調製した。水相は、分散した又は懸濁した有機凝集体を含有していなかった。
【0198】
より詳細には、懸濁化剤1(0.56グラム)とヘプタン(536mL)を、機械的撹拌機(攪拌速度450rpm)、窒素注入口、温度計、温度調節器付きマントルヒーター、及び凝縮器を備えたフラスコに添加することによって有機相を調製した。フラスコ内の有機相を、攪拌しながら35℃に加熱し、窒素を15分間散布した。
【0199】
MBA(18.2グラム)、AMPS(50重量%水溶液19.6グラム)、IPA(85mL)、脱イオン水(32.2mL)、PEG 6000(50重量%水溶液10グラム)、及びエチレングリコール(20mL)を含有する水相を調製した。水溶液を攪拌し、30〜35℃に加熱してMBAを溶解した。脱イオン水(3mL)に溶解した過硫酸ナトリウム(0.5グラム)を、更に攪拌しながら水溶液に添加した。有機相を含有する反応フラスコに水溶液を添加した。得られた混合物を拡散し、窒素を10分間散布した。
【0200】
TMEDA(0.5mL)を添加して重合を開始させた。反応温度は急速に44.5℃まで上昇し、その後徐々に引いた。反応混合物を、TMADA添加時から合計2時間攪拌し、焼結ガラス漏斗を用いて濾過して、アセトン(2×250mL)、メタノール(2×250mL)、アセトン(2×250mL)で洗浄し、ロータップ型RX−29分類器(W.S.Tyler,Mentor,OH)で水を流動液体として用いて湿分類して、38〜106マイクロメートルの範囲の大きさの無色粒子を産出した。
【0201】
IgGのカチオン交換容量は67mg/mLであった。IgGの動的結合容量(DBC)は34mg/mLであった。
【0202】
(実施例2〜5)
MBAに対してAMPSが重量比35:65で含有されるモノマー混合物を用いた逆相懸濁重合によって高分子ビーズを調製した。有機凝集体の様々な水分散液を水相に添加した。実施例2はUNITHOX D−100を含有した。実施例3はUNITHOX D−300を含有した。実施例4はPETROLITE D−800を含有した。実施例5はPETROLITE D−900を含有した。
【0203】
より詳細には、懸濁化剤1(0.56グラム)とヘプタン(536mL)を、機械的撹拌機(攪拌速度450rpm)、窒素注入口、温度計、温度調節器付きマントルヒーター、及び凝縮器を備えたフラスコに添加することによって有機相を調製した。フラスコ内の有機相を、攪拌しながら35℃に加熱し、窒素を15分間散布した。
【0204】
MBA(18.2グラム)、AMPS(50重量%水溶液19.6グラム)、IPA(85mL)、10mLの適正な水分散液(前述の有機凝集体を含有)、脱イオン水(22.2mL)、PEG 6000(50重量%水溶液10グラム)、及びエチレングリコール(20mL)を含有する水相を調製した。この水相を攪拌し、30〜35℃の範囲の温度に加熱してMBAを溶解した。脱イオン水(3mL)に溶解した過硫酸ナトリウム(0.5グラム)を、更に攪拌しながら水相に添加した。水相を、有機相を含有している反応フラスコに添加した。得られた混合物を攪拌して窒素を10分間散布した。
【0205】
TMEDA(0.5mL)を添加して重合を開始させた。反応温度は、急速に40〜45℃まで上昇し、その後徐々に引いた。反応混合物を、TMADA添加時から合計2時間攪拌し、焼結ガラス漏斗を用いて濾過して、アセトン(2×250mL)、メタノール(2×250mL)、アセトン(2×250mL)で洗浄し、ロータップ型RX−29分類器(W.S.Tyler,Mentor,OH)で水を流動液体として用いて湿分類して、38〜106マイクロメートルの範囲の大きさの無色粒子を産出した。
【0206】
SEMと光学顕微鏡法によって、高分子ビーズが、典型的なマクロ孔質のポリマーマトリックスで囲まれた複数の大きな孔隙を有していることが確認された。実施例4のSEMを図4に示し、実施例5のSEMを図5に示す。図3は実施例4の光学顕微鏡写真であり、倍率は64倍である。
【0207】
(実施例6)
5:95のMBA対VDM重量比を含有するモノマー混合物を用いた逆相懸濁重合を用いて高分子ビーズを調製した。PETROLITE D−110が有機凝集体の供給源であった。
【0208】
より詳細には、懸濁化剤2(0.27グラム)、トルエン(188mL)、及びヘプタン(348mL)を、機械的撹拌機(攪拌速度450rpm)、窒素注入口、温度計、温度調節器付きマントルヒーター、及び凝縮器を備えた1000mL丸底フラスコ(モートン型)に添加することによって有機相を調製した。フラスコ内の有機相を、攪拌しながら35℃に加熱し、窒素を15分間散布した。
【0209】
MBA(13.3グラム)、脱イオン水(45mL)、IPA(90mL)及びPETROLITE D−110(10mL)を含有する水相を調製した。この水溶液を攪拌し、30〜35℃に加熱してMBAを溶解した。脱イオン水(5mL)に溶解した過硫酸ナトリウム(0.55グラム)を、更に攪拌しながら水溶液に添加した。非水性溶液を含有する反応フラスコに水溶液を添加した。攪拌混合物にVDM(0.72mL)を注射器で添加した。得られた混合物を攪拌して、窒素を5分間散布した。
【0210】
TMEDA(0.55mL)を添加して重合を開始させた。温度を5分間にわたって40.1℃に上げた。加熱と攪拌を、重合開始後合計2時間継続させ、その後ビーズ化した生成物を濾過してアセトン(3×250mL)で洗浄した。湿濾過ケーキを一口丸底フラスコに移し、真空下で一晩室温乾燥させた。
【0211】
高分子ビーズが、典型的なマクロ孔質マトリックスで囲まれた複数の大きな孔(約1マイクロメートルを超える直径)を有していることが、走査電子顕微鏡像で示された(図1参照)。
【0212】
(実施例7)
5:95のMBA対VDM重量比を含有するモノマー混合物を用いた逆相懸濁重合を用いて高分子ビーズを調製した。手順は、水相中に用いたPETROLITE D−110(1mL)と脱イオン水(54mL)の量の変化を除いて、実施例6のものと同様であった。高分子ビーズが、典型的なマクロ孔質マトリックスで囲まれた複数の大きな孔(約1マイクロメートルを超える直径)を有していることが、走査電子顕微鏡像で示された。
【0213】
比較例2
高分子ビーズを、PETROLITE D−110を同量の脱イオン水で置き換えたことを除いて、実施例6の手順で調製した。すなわち、水相中の有機凝集体を用いずに高分子ビーズを調製した。
【0214】
高分子ビーズが、典型的なマクロ孔質マトリックス構造を有するものの、1マイクロメートルを超える大きな孔は欠くことが、走査電子顕微鏡像によって示された(図2参照)。
【0215】
(実施例8)
45:25:30のAMPS/MBA/TMPTAを含有するモノマー混合物を用いた逆相懸濁重合によって、高分子ビーズを調製した。PETROLITE D−900が有機凝集体の供給源であった。
【0216】
懸濁化剤1(0.28グラム)とヘプタン(536mL)を、機械的撹拌機(攪拌速度450rpm)、窒素注入口、温度計、温度調節器付きマントルヒーター、及び凝縮器を備えたフラスコに添加することによって、有機相を調製した。フラスコ内の有機相を攪拌しながら35℃に加熱し、窒素を15分間散布した。
【0217】
MBA(7.0グラム)、AMPS(50重量%水溶液25.2グラム)、TMPTMA(8.4グラム)、IPA(110mL)、脱イオン水(22.4mL)、及びPETROLITE D−900(10mL)を含有する水相を調製した。水溶液を攪拌し、30〜35℃に加熱してMBAを溶解した。脱イオン水(5mL)に溶解した過硫酸ナトリウム(0.5グラム)を、更に攪拌しながら水溶液に添加した。有機相を含有している反応フラスコに水溶液を添加した。得られた混合物を攪拌し、窒素を10分間散布した。
【0218】
TMEDA(0.5mL)を添加して重合を開始させた。反応温度は、急速に約10℃まで上昇し、その後徐々に引いた。反応混合物を、TMADA添加時から合計2時間攪拌し、焼結ガラス漏斗を用いて濾過して、アセトン(2×250mL)、メタノール(2×250mL)、アセトン(2×250mL)で洗浄し、ロータップ型RX−29分類器(W.S.Tyler,Mentor,OH)で水を流動液体として用いて湿分類して、38〜106マイクロメートルの範囲の大きさの無色粒子を産出した。
【0219】
高分子ビーズが、典型的なマクロ孔質ポリマーマトリックスに囲まれた複数の大きな孔を有することが、SEMと光学顕微鏡法で確認された。
【0220】
(実施例9)
35:55:10の重量比でAMPS/MBA/TEGDMAを含有するモノマー混合物を用いた逆相懸濁重合によって、高分子ビーズを調製した。PETROLITE D−1038が有機凝集体の供給源であった。異なる水相組成物を用いたことを除き、手順は実施例8に用いられたものと同様であった。水相は、MBA(15.4グラム)、AMPS(50重量%水溶液19.6グラム)TEGDMA(2.8グラム)、IPA(110mL)、脱イオン水(25.2mL)、及びPETROLITE D−1038(10mL)を含有した。
【0221】
高分子ビーズが典型的なマクロ孔質ポリマー混合物によって囲まれている複数の大きな孔(約0.5マイクロメートルを超える直径)を有していることが、SEMと光学顕微鏡法によって確認された。
【0222】
(実施例10)
35:55:10の重量比でAMPS/MBA/PEG−Acr 375を含有するモノマー混合物を用いた逆相懸濁重合によって、高分子ビーズを調製した。PETROLITE D−900が有機凝集体の供給源であった。異なる水相組成物を用いたことを除き、手順は実施例8に用いられたものと同様であった。水相は、MBA(15.4グラム)、AMPS(50重量%水溶液19.6グラム)、PEG−Acr 375(2.8グラム)、IPA(110mL)、脱イオン水(25.2mL)、及びPETROLITE D−900(10mL)を含有した。
【0223】
高分子ビーズが典型的なマクロ孔質ポリマー混合物によって囲まれている複数の大きな孔(約0.5マイクロメートルを超える直径)を有していることが、SEMと光学顕微鏡法によって確認された。
【0224】
(実施例11)
50:50の重量比でMAPTAC/MBAを含有するモノマー混合物を用いた逆相懸濁重合によって、高分子ビーズを調製した。手順は、有機相と水相の両方の組成物の変化を除いて、実施例8に用いられたものと同様であった。有機相は、懸濁化剤1(0.28グラム)、ヘプタン、(243mL)、及びトルエン(132mL)を含有した。水相は、MBA(14.0グラム)、MAPTAC(50重量%水溶液28.0グラム)、メタノール(50mL)、脱イオン水(21.0mL)、及びPETROLITE D−900(10mL)を含有した。
【0225】
高分子ビーズが典型的なマクロ孔質ポリマーマトリックスによって囲まれている複数の大きな孔(約0.5マイクロメートルを超える直径)を有していることが、SEMと光学顕微鏡法によって確認された。
【0226】
(実施例12)
65:30:5の重量比でMBA/MA/HEMAを含有するモノマー混合物を用いた逆相懸濁重合によって、高分子ビーズを調製した。手順は、有機相と水相の両方の組成物の変化を除いて、実施例8に用いられたものと同様であった。有機相は、懸濁化剤1(0.13グラム)、ヘプタン(348mL)、及びトルエン(188mL)を含有した。水相は、MBA(9.1グラム)、MA(4.2グラム)、HEMA(0.67グラム)、IPA(80mL)、脱イオン水(45.0mL)、及びPETROLITE D−1038(10mL)を含有した。
【0227】
高分子ビーズが典型的なマクロ孔質ポリマーマトリックスによって囲まれている複数の大きな孔(約0.5マイクロメートルを超える直径)を有していることが、SEMと光学顕微鏡法によって確認された。
【0228】
(実施例13)
5:95の重量比でGMA/MBAを含有するモノマー混合物を用いた逆相懸濁重合によって、高分子ビーズを調製した。手順は、異なる水相組成物を除いて、実施例6に用いられたものと同様であった。より詳細には、VDMをGMA(0.72mL)で置き換え、90mLのIPAの代わりに80mLのIPAを用い、及びPETROLITE D−110(10mL)をPETROLITE D−900(10mL)で置き換えた。
【0229】
高分子ビーズが、典型的なマクロ孔質ポリマーマトリックスによって囲まれた複数の大きな孔(約0.5マイクロメートルを超える直径)を有していることが、SEMと光学顕微鏡法によって確認された。
【0230】
(実施例14)
実施例1のものと同様の手順を用いた逆相懸濁重合によって、65:35の重量比でAMPS/MBAコポリマーを調製した。MBA(9.8グラム)、AMPS(50重量%水溶液36.3mL)、IPA(80mL)、脱イオン水(20mL)、過硫酸ナトリウム(0.5グラム)、及びPETROLITE D−110(31.8mL)を含有する水相を調製した。
【0231】
高分子ビーズが典型的なマクロ孔質ポリマー混合物によって囲まれている複数の大きな孔(約0.5マイクロメートルを超える直径)を有していることが、SEMと光学顕微鏡法によって確認された。
【0232】
(実施例15)
スチレンの標準水性乳化重合によって30重量%の水性ポリスチレンラテックスを調製して、直径0.4マイクロメートルの粒径の分散液を得た。
【0233】
MBAに対するAMPSの重量比45:55を含有するモノマー混合物を用いた逆相懸濁重合によって、高分子ビーズを調製した。より詳細には、懸濁化剤1(0.56グラム)とヘプタン(536mL)を、機械的撹拌機(攪拌速度450rpm)、窒素注入口、温度計、温度調節器付きマントルヒーター、及び凝縮器を備えたフラスコに添加することによって有機相を調製した。フラスコ内の有機相を、攪拌しながら35℃に加熱し、窒素を15分間散布した。
【0234】
MBA(15.4グラム)、AMPS(50重量%水溶液25.2グラム)、IPA(85mL)、3.3mLの前述ポリエチレンラテックス、脱イオン水(25.1mL)、PEG 6000(50重量%水溶液10グラム)、及びエチレングリコール(20mL)を組み合わせることによって、水相を調製した。この水相を攪拌し、30〜35℃の範囲の温度に加熱してMBAを溶解した。脱イオン水(5mL)に溶解した過硫酸ナトリウム(0.5グラム)を、更に攪拌しながら水相に添加した。水相を、有機相を含有している反応フラスコに添加した。得られた混合物を攪拌して窒素を10分間散布した。
【0235】
TMEDA(0.5mL)を添加して、重合を開始させた。反応温度は、急速に44.0℃まで上昇し、その後徐々に治まった。反応混合物を、TMDAの添加時から合計2時間攪拌し、続いて焼結ガラス漏斗を用いて濾過した。反応生成物を、アセトン(2×250mL)、メタノール(2×250mL)、及びアセトン(2×250mL)で洗浄した。
【0236】
高分子ビーズが、典型的なマクロ孔質マトリックスで囲まれた複数の大きな孔(約0.5マイクロメートルを超える直径)を有していることが、走査電子顕微鏡像によって示された。
【0237】
(実施例16)
有機凝集体含有分散液として使用するため、米国特許出願第2003/0104042(A1)号に記載されるものと類似する手順に従って、アクリル酸ミクロスフェアの38重量%水分散液を調製した。より詳細には、377グラムのイソオクチルアクリレート(3M Companyより入手)に、8グラムのアクリル酸(Sigma−Aldrich、Milwaukee,WIから入手)、11.8グラムのポリエチレンオキシドアクリレート(Shin−Nakamura,Arimoto,Japanから入手、商品名M90G NK ESTER)、及び1.1グラムの過酸化ベンゾイル(水中70%、Arkema Inc.,Philadelphia,PAから入手)を溶解することによって、モノマー混合物を調製した。595グラムの水に6.4グラムのラウリル硫酸アンモニウム(Cognis Corp,Hoboken,NJから入手、商品名STANDAPOL A)を溶解して、界面活性剤溶液を調製した。その後、モノマー混合物を界面活性剤溶液に添加し、得られた混合物を混合器(J.W.Greer,Wilmington,MAから商品名GIFFORD−WOODで入手)を用いて液滴の大きさが1マイクロメートル未満になるまで、乳化した。エマルションを1リットルのバッフル反応器に入れて65℃まで加熱し、窒素で脱ガスして8時間反応させた。平均粒径2マイクロメートルを有するミクロスフェアが得られた。
【0238】
MBAに対するAMPSの重量比45:55を含有するモノマー混合物を用いた逆相懸濁重合によって、高分子ビーズを調製した。より詳細には、懸濁化剤1(0.56グラム)とヘプタン(536mL)を、機械的撹拌機(攪拌速度450rpm)、窒素注入口、温度計、温度調節器付きマントルヒーター、及び凝縮器を備えたフラスコに添加することによって有機相を調製した。フラスコ内の有機相を、攪拌しながら35℃に加熱し、窒素を15分間散布した。
【0239】
MBA(15.4グラム)、AMPS(50重量%水溶液25.2グラム)、IPA(85mL)、10.0mLのアクリル酸ラテックス、脱イオン水(27.4mL)、PEG6000(50重量%水溶液10グラム)、及びエチレングリコール(20mL)を組み合わせることによって、水相を調製した。この水相を攪拌し、30〜35℃の範囲の温度に加熱してMBAを溶解した。脱イオン水(5mL)に溶解した過硫酸ナトリウム(0.5グラム)を、更に攪拌しながら水相に添加した。水相を、有機相を含有している反応フラスコに添加した。得られた混合物を攪拌して窒素を10分間散布した。
【0240】
TMEDA(0.5mL)を添加して重合を開始させた。反応温度は、急速に43.9℃まで上昇し、その後徐々に引いた。反応混合物を、TMEDAの添加時から合計2時間攪拌し、続いて焼結ガラス漏斗を用いて濾過した。反応生成物を、アセトン(2×250mL)、メタノール(2×250mL)、及びアセトン(2×250mL)で洗浄した。
【0241】
高分子ビーズが、典型的なマクロ孔質マトリックスで囲まれた複数の大きな孔(約2マイクロメートルを超える直径)を有していることが、走査電子顕微鏡像で示された。
【0242】
比較例3
重量で45:55のAMPS/MBAを含有するモノマー混合物を用いた逆相懸濁重合によって、高分子ビーズを調製した。水相は有機集合体を含有しなかった。
【0243】
より詳細には、懸濁化剤1(0.56グラム)とヘプタン(536mL)を、機械的撹拌機(攪拌速度450rpm)、窒素注入口、温度計、温度調節器付きマントルヒーター、及び凝縮器を備えたフラスコに添加することによって有機相を調製した。フラスコ内の有機相を、攪拌しながら35℃に加熱し、窒素を15分間散布した。
【0244】
MBA(15.4グラム)、AMPS(50重量%水溶液25.2グラム)、IPA(85mL)、脱イオン水(27.4mL)、PEG 6000(50重量%水溶液10グラム)、及びエチレングリコール(20mL)を含有する水相を調製した。水溶液を攪拌し、30〜35℃に加熱してMBAを溶解した。脱イオン水(5mL)に溶解した過硫酸ナトリウム(0.5グラム)を、更に攪拌しながら水溶液に添加した。非水性溶液を含有する反応フラスコに水溶液を添加した。得られた混合物を攪拌して窒素を10分間散布した。
【0245】
TMEDA(0.5mL)を添加して重合を開始させた。反応温度は、急速に43.6℃まで上昇した後、徐々に引いた。反応混合物を、TMEDAの添加時から合計2時間攪拌し、焼結ガラス漏斗を用いて濾過し、アセトン(2×250mL)、メタノール(2×250mL)、アセトン(2×250mL)で洗浄した。
【0246】
典型的なマクロ孔質マトリックス構造の存在と、0.5マイクロメートルを超える大きな孔の欠如が、走査電子顕微鏡像によって示された。
【0247】
(実施例17)
重量で35:65のAMPS/MBAの重合モノリスを調製した。より詳細には、50mLエーレンマイヤーフラスコで、MBA(1.14グラム)、AMPS(50重量%水溶液1.22グラム)、IPA(5.3mL)、脱イオン水(1.24mL)、PEG6000(50重量%水溶液0.625グラム)、及びエチレングリコール(1.25mL)を含有する水相混合物を調製した。水溶液を攪拌し、30〜35℃に加熱してMBAを溶解した。混合物を15mLポリプロピレン遠心管に移して、PETROLITE D−800(0.625グラム)を添加した。過硫酸ナトリウム(DI水中0.1mg/mL溶液0.34mL)を添加し、その後混合物に窒素ガスを1分間散布した。TMEDA(35μL)を添加し、混合物をボルテックスして、ゆるく蓋をして、試験管棚に2時間15分間放置した。形成した固形モノリスをスパチュラで壊し、濾過して、アセトン(2×15mL)、メタノール(2×15mL)、及びアセトン(2×15mL)で洗浄し、真空炉内で一晩室温乾燥させた。
【0248】
典型的なマクロ孔質マトリックスで囲まれた複数の大きな孔(0.5マイクロメートルを超える直径)の存在が、走査電子顕微鏡像によって示された。
【0249】
(実施例18)
PETROLITE D−900をD−800で置き換えたことを除いて、35:65の重量比でAMPS/MBAのコポリマーカチオン交換モノリスを実施例17と同様に調製した。高分子ビーズが、典型的なマクロ孔質マトリックスで囲まれた複数の大きな孔(約0.5マイクロメートルを超える直径)を有していることが、走査電子顕微鏡像によって示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水相組成物を含む反応混合物であって、
該水相組成物が、
a)モノマー混合物であって、
1)式(I)の架橋性モノマーであって、
【化1】

式中、
は水素又はメチルであり、
Qはオキシ又は−NH−であり、及び
Yはアルキレン又はヘテロアルキレンであり、該アルキレン又はヘテロアルキレンはヒドロキシル基で置換されているか又は置換されていない、架橋性モノマー、並びに
2)官能性モノマーであって、(a)エチレン性不飽和基と、(b)(1)酸性基若しくはその塩、(2)アミノ基若しくはその塩、(3)ヒドロキシル基、(4)アズラクトン基、(5)グリシジル基、又は(6)これらの組み合わせから選択される官能基とを有する、官能性モノマー、を含む、モノマー混合物と、
b)0.05〜5マイクロメートルの範囲の大きさで分散又は懸濁した有機凝集体と、
c)水及び水混和性である任意選択の極性有機溶媒を含む、水相溶媒と、を含む、反応混合物。
【請求項2】
非極性有機溶媒を含み水混和性ではない有機相組成物を更に含む、請求項1に記載の反応混合物。
【請求項3】
前記水相組成物が前記有機相組成物内に液滴として分散又は懸濁している、請求項2に記載の反応混合物。
【請求項4】
前記水相が更にポロゲンを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の反応混合物。
【請求項5】
前記モノマー混合物中の全て又は実質的に全ての前記モノマーが20以下の親油性指標を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の反応混合物。
【請求項6】
多孔質高分子樹脂を調製する方法であって、該方法が、
a)モノマー混合物であって、
1)式(I)の架橋性モノマーであって、
【化2】

式中、
は水素又はメチルであり、
Qはオキシ又は−NH−であり、及び
Yはアルキレン又はヘテロアルキレンであり、該アルキレン又はヘテロアルキレンはヒドロキシル基で置換されているか又は置換されていない、架橋性モノマー、並びに
2)官能性モノマーであって、(a)エチレン性不飽和基と、(b)(1)酸性基若しくはその塩、(2)アミノ基若しくはその塩、(3)ヒドロキシル基、(4)アズラクトン基、(5)グリシジル基、又は(6)これらの組み合わせから選択される官能基とを有する、官能性モノマー、を含む、モノマー混合物と、
b)0.05〜5マイクロメートルの範囲の大きさで分散又は懸濁した有機凝集体と、
c)水及び水混和性である任意選択の極性有機溶媒を含む、水相溶媒と、を含む、水相組成物を形成することと、
前記モノマー混合物を重合して、前記有機凝集体を含有する高分子材料を形成することと、
前記高分子材料から少なくとも一部の前記有機凝集体を除去して、前記多孔質高分子樹脂を形成することと、を含む、多孔質高分子樹脂を調製する方法。
【請求項7】
非極性有機溶媒を含み水混和性ではない有機相組成物中に、前記水相組成物を液滴として分散又は懸濁させることを更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記グリシジル基又は前記アズラクトン基を、求核基を有する修飾剤と反応させて、該修飾剤を前記高分子樹脂に結合させることを更に含む、請求項6又は7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ヒドロキシル基を、カルボキシル基を有する修飾剤と反応させて、該修飾剤を前記高分子樹脂に結合させることを更に含む、請求項6又は7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
多孔質高分子樹脂を形成することと、
前記多孔質高分子樹脂を、目的化合物を含有する試料と接触させることと、を含む、目的化合物を精製又は分離する方法であって、
前記多孔質高分子樹脂を形成することが、
a)モノマー混合物であって、
1)式(I)の架橋性モノマーであって、
【化3】

式中、
は水素又はメチルであり、
Qはオキシ又は−NH−であり、及び
Yはアルキレン又はヘテロアルキレンであり、該アルキレン又はヘテロアルキレンはヒドロキシル基で置換されているか又は置換されていない、架橋性モノマー、並びに
2)官能性モノマーであって、(a)エチレン性不飽和基と、(b)(1)酸性基若しくはその塩、(2)アミノ基若しくはその塩、(3)ヒドロキシル基、(4)アズラクトン基、(5)グリシジル基、又は(6)これらの組み合わせから選択される官能基とを有する、官能性モノマー、を含む、モノマー混合物と、
b)0.05〜5マイクロメートルの範囲の大きさで分散又は懸濁した有機凝集体と、
c)水及び水混和性である任意選択の極性有機溶媒を含む、水相溶媒と、を含む、水相組成物を調製することと、
前記モノマー混合物を重合して、前記有機凝集体を含有する高分子材料を形成することと、
前記高分子材料から少なくとも一部の前記有機凝集体を除去して、前記多孔質高分子樹脂を形成することと、を含み、
前記目的化合物が前記多孔質高分子樹脂の少なくとも1つの官能基と相互作用又は反応する、目的化合物を精製又は分離する方法。
【請求項11】
接触させることが、前記多孔質高分子樹脂をカラムに配置してクロマトグラフカラムを調製することと、前記試料を前記クロマトグラフカラムに通すことと、を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
接触させることが、前記多孔質高分子樹脂を濾過材の表面上に配置させることと、前記試料を前記濾過材に通すことと、を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
接触させることが、前記多孔質高分子樹脂を連続多孔質マトリックス内に組み込むことと、前記試料を前記多孔質マトリックスに通すことと、を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記多孔質高分子樹脂を形成することが、非極性有機溶媒を含み水混和性ではない有機相組成物中の液滴として前記水相組成物を分散又は懸濁させることを更に含む、請求項10〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記多孔質高分子樹脂が多孔質高分子ビーズである、請求項10〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
多孔質高分子樹脂を形成することと、
前記多孔質高分子樹脂を修飾剤で処理すること及び第1官能基を第2官能基に変換することを含んでなる、修飾した多孔質高分子樹脂を調製することと、
前記修飾した多孔質高分子樹脂を、目的化合物を含有する試料と接触させることと、を含む、目的化合物を精製又は分離する方法であって、
前記多孔質高分子樹脂を形成することが、
a)モノマー混合物であって、
1)式(I)の架橋性モノマーであって、
【化4】

式中、
は水素又はメチルであり、
Qはオキシ又は−NH−であり、及び
Yはアルキレン又はヘテロアルキレンであり、前記Yはヒドロキシル基で置換されていてもよい、架橋性モノマー、並びに
2)官能性モノマーであって、(a)エチレン性不飽和基と、(b)(1)酸性基若しくはその塩、(2)アミノ基若しくはその塩、(3)ヒドロキシル基、(4)アズラクトン基、(5)グリシジル基、又は(6)これらの組み合わせから選択される第1官能基とを有する、官能性モノマー、を含む、モノマー混合物と、
b)0.05〜5マイクロメートルの範囲の大きさで分散又は懸濁した有機凝集体と、
c)水及び水混和性である任意選択の極性有機溶媒を含む、水相溶媒と、を含む、水相組成物を調製することと、
非極性有機溶媒を含み水混和性ではない有機相に前記水相組成物を懸濁することと、
前記モノマー混合物を重合して、前記有機凝集体を含有する高分子材料を形成することと、
前記高分子材料から少なくとも一部の前記有機凝集体を除去して、前記多孔質高分子樹脂を形成することと、を含み、
前記目的化合物が前記修飾した多孔質高分子樹脂の第2官能基と相互作用又は反応する、目的化合物を精製又は分離する方法。
【請求項17】
処理することが、前記修飾剤の求核基を前記グリシジル基又はアズラクトン基と反応させることを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
処理することが、前記修飾剤のカルボキシ基を前記ヒドロキシ基と反応させることを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
平均孔径が200ナノメートル未満の第一組の孔を含む第一多孔質構造と、平均孔径が500ナノメートルを超える第二組の孔を含む第二多孔質構造と、を含む、階層性多孔質構造を有する多孔質高分子樹脂であって、前記多孔質高分子ビーズが水相モノマー混合物の反応生成物を含み、前記モノマー混合物中の全ての又は実質的に全てのモノマーが20以下の親油性指標を有し、前記モノマー混合物が、
a)式(I)の架橋性モノマーであって、
【化5】

式中、
は水素又はメチルであり、
Qはオキシ又は−NH−であり、及び
Yはアルキレン又はヘテロアルキレンであり、前記Yはヒドロキシル基で置換されていてもよい、架橋性モノマー、並びに
b)官能性モノマーであって、(a)エチレン性不飽和基と、(b)(1)酸性基若しくはその塩、(2)アミノ基若しくはその塩、(3)ヒドロキシル基、(4)アズラクトン基、(5)グリシジル基、又は(6)これらの組み合わせから選択される官能基とを有する、官能性モノマー、を含む、多孔質高分子樹脂。
【請求項20】
前記多孔質高分子樹脂が多孔質高分子ビーズである、請求項19に記載の多孔質高分子樹脂。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−503293(P2011−503293A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533190(P2010−533190)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【国際出願番号】PCT/US2008/082396
【国際公開番号】WO2009/061759
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】