説明

多層シート、熱成形容器、および、易開封性包装体

【課題】成形が容易でシール性能が安定した易開封性包装体を提供する。
【解決手段】易開封性包装体の熱成形容器を形成する多層シート20は、蓋材が融着される表面層27として、ポリプロピレン系樹脂が30質量%以上70質量%以下と、融点130℃以下のプロピレン−エチレンランダムコポリマーが10質量%以上30質量%以下と、融点120℃以上の低密度ポリエチレン系樹脂が20質量%以上40質量%以下とを含有するものとする。表面層27に隣接して設けられる表下層26として、アイソタクティックペンタッド分率が93mol%以上であるポリプロピレン系樹脂を主成分とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層シート、熱成形容器、および、この熱成形容器を備えた易開封性包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食に対する安全意識の高まりに伴い、内容物の密封性を高めると共に内容物を取り出すことができる易開封性の容器、蓋材、これら容器および蓋材を備えた包装体が提案されている(特許文献1〜5参照)。
特許文献1に記載のものは、ポリオレフィン系樹脂50〜95wt%と、エチレン・アクリル酸エステル・無水マレイン酸共重合体系樹脂50〜5wt%とからなるA層と、ポリプロピレン系樹脂からなるB層を積層してなる多層シートを用いる構成が採られている。A層の厚さ寸法は、5〜500μmである。
特許文献2に記載のものは、低密度ポリエチレン99〜55重量%と、プロピレン重合体1〜45重量%との低密度ポリエチレン組成物からなる熱融着層を有するフィルムを用いる構成が採られている。
特許文献3に記載のものは、オレフィン系樹脂とスチレン系樹脂との混合樹脂フィルムを第1層とし、スチレン系樹脂シートを第2層とする複合シートからなる容器に、オレフィン系樹脂の蓋材を融着させる構成が採られている。
特許文献4に記載のものは、ポリプロピレンが50〜83質量%と、密度が0.95g/cm3以上でメルトフローレートが10〜100g/10分の高密度ポリエチレンが10〜35重量%と、低密度ポリエチレンが5〜15重量%と、密度が0.90g/cm3以下のエチレン・α−オレフィン共重合体が2〜10重量%とを含有する組成物を用い、容器のシール面のスキン層を形成する構成が採られている。
特許文献5に記載のものは、融点が128〜140℃でメルトフローレートが2.6〜3.2g/10分のポリプロピレンと、オレフィン系熱可塑性エラストマーまたはスチレン系熱可塑性エラストマーとからなる熱可塑性エラストマーの重合体組成物を、容器の内壁面とした構成が採られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−231226号公報
【特許文献2】特開2002−241716号公報
【特許文献3】特開昭57−107812号公報
【特許文献4】特開2005−271972号公報
【特許文献5】特開2006−150099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、シール層を設けた容器と蓋材とのシール強度は、シール条件の影響を受け易く、強度のばらつきが生じ易い。
そして、上記従来の包装体において、樹脂材料として凝集剥離する表面層の樹脂として融点が低いものを用いると、直接熱板加熱方式成形機を使用して連続生産した際に、熱板へ樹脂が付着して生産を継続できなくなるおそれがある。また、表下層に使用する原料を適切に選択しないと、ヒートシール時にシール盤の食込み過剰になりやすく、シール強度の安定性がなくなり、ヒートシール時の条件を狭く設定せざるを得ない不都合がある。
本発明は、この様な点に鑑みて、成形が容易でシール性能が安定した多層シート、熱成形容器および易開封性包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に記載の多層シートは、表面層と、この表面層に隣接して設けられた表下層との少なくとも2層以上を積層して構成される多層シートであって、前記表面層は、ポリプロピレン系樹脂が30質量%以上70質量%以下と、融点130℃以下のプロピレン−エチレンランダムコポリマーが10質量%以上30質量%以下と、融点120℃以上の低密度ポリエチレン系樹脂が20質量%以上40質量%以下とを含有し、前記表下層は、アイソタクティックペンタッド分率が93mol%以上であるポリプロピレン系樹脂を主成分とすることを特徴とする。
【0006】
そして、本発明では、前記表下層は、アイソタクティックペンタッド分率が93mol%以上のポリプロピレンを80質量%以上で含有することが好ましい。
さらに、本発明では、アイソタクティックペンタッド分率93mol%以上のポリプロピレンの含有量が80質量%未満の場合には、前記表下層は、タルクを0.5質量%以上5質量%以下で含有することが好ましい。
また、本発明では、前記表面層は、厚さ寸法が10μm以上150μm以下であることが好ましい。
【0007】
本発明に記載の熱成形容器は、本発明に記載の多層シートを熱成形することで得られ開口部を有する熱成形容器であって、前記開口部の周縁に外方に向けて延出するフランジ部が形成されており、該熱成形容器の内面側に前記表面層が形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明に記載の易開封性包装体は、本発明に記載の熱成形容器と、前記熱成形容器のフランジ部に融着され前記開口部を塞ぐ蓋材と、を備えたことを特徴とする。
そして、本発明では、前記蓋材は、前記熱成形容器に融着される面にシーラント層を有し、前記フランジ部の開口部側近傍には、前記表面層、前記表下層および前記蓋材のシーラント層による樹脂溜まり部が形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上述した組成の表面層により、例えば容器を連続成形する際に、直接加熱方式成形機の加熱板に樹脂が付着することを防止でき、成形条件を広く設定でき、容易に成形できる。さらに、表面層に隣接して積層する表下層として上述した組成とするので、例えば容器に蓋材を融着する際に、融着する治具が食い込み過剰となるなどの不都合を防止でき、安定した融着状態で製造でき、シール強度がばらつくことを防止でき、安定したシール特性を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る易開封性包装体において蓋材で密封された概略構成を示す斜視図である。
【図2】本実施形態の易開封性包装体における蓋材を開封した状態を示す斜視図である。
【図3】本実施形態の易開封性包装体における開封開始部の部分断面図である。
【図4】本実施形態の易開封性包装体における熱成形容器を形成する多層シートを示す断面図である。
【図5】本実施形態における易開封性包装体を製造する場合における蓋材の融着工程を示す模式図である。
【図6】本実施形態における融着時の第一環状シール盤とフランジ部との状態を示した部分断面図である。
【図7】本実施形態における第一環状シール盤の部分拡大図である。
【図8】本実施形態の易開封性包装体が初期開封された状態を示した断面図である。
【図9】本実施形態の易開封性包装体が完全に開封された状態を示した断面図である。
【図10】本発明の他の実施形態に係る易開封性包装体が初期開封された状態を示した断面図である。
【図11】他の実施形態の易開封性包装体が完全に開封された状態を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[易開封性包装体の構造]
以下、本発明の一実施形態の易開封性包装体について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の易開封性包装体において蓋材で密封された概略構成を示す斜視図である。図2は、易開封性包装体における蓋材を開封した状態を示す斜視図である。図3は、本実施形態の易開封性包装体における開封開始部の部分断面図である。図4は、本実施形態の易開封性包装体における熱成形容器を形成する多層シートを示す断面図である。
【0012】
図1および図2に示すように、易開封性包装体1は、食品、薬品、化粧品、雑貨など、液体や固体などの形態を問わず、各種物品を包装する。
この易開封性包装体1は、熱成形容器2と、蓋材3とを備えている。
【0013】
(熱成形容器の構成)
熱成形容器2は、上面に開口部21を開口し内部に図示しない物品を収容する収納空間22を形成する収納部23を有し、略長方形のトレー形状に形成されている。この収納部23の開口部21の周縁には、外方に向けて鍔状に延出するフランジ部24が一連に設けられている。
この熱成形容器2は、図3に示すように、基材層25と、この基材層25に隣接して積層する表下層26と、この表下層26に隣接して積層する凝集破壊性の表面層27とを有する積層体である。
そして、熱成形容器2は、表面層27が収納部23の内面側に臨む状態で、多層シート20を例えば直接熱板加熱方式成形機などの成形機により加熱成形して得られる。なお、成形方法としては、直接熱板加熱方式に限らず、各種の成形方法を適用できる。
【0014】
ここで、多層シート20は、図4に示すように、基材層25、表下層26および表面層27が積層する積層構造である。
基材層25は、第一基材層25A、第一接着層25B、ガスバリア層25C、第二接着層25D、第二基材層25Eが順次積層された構造である。
第一基材層25Aおよび第二基材層25Eは、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂などを使用できるが、これに限られない。第一基材層25Aおよび第二基材層25Eの厚さ寸法は、100μm以上2000μm以下であり、好ましくは、200μm以上1000μm以下である。
第一接着層25Bおよび第二接着層25Dには、例えば、不飽和カルボン酸またはその誘導体変性ポリオレフィン樹脂を使用できるが、ポリ塩化ビニリデン系樹脂を使用してもよい。
ガスバリア層25Cとしては、ポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、エチレン−ビニルアルコール系樹脂、ポリ塩化ビニリデン等の材料を使用することが好ましいが、中でもエチレン−ビニルアルコール系樹脂を使用することが好ましい。
そして、基材層25には、さらに分散剤や顔料あるいは染料などの添加剤が含有されていてもよい。
分散剤としては、グリセリン脂肪酸エステルモノグリセライド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルなどが例示できる。そして、分散剤を添加する場合、分散剤の含有量は、1質量%以上8質量%以下、好ましくは2質量%以上5質量%以下である。
【0015】
表下層26は、アイソタクティックペンタッド分率が93mol%以上、好ましくは97mol%以上のポリプロピレン系樹脂を主成分として含有している。表下層26は、ポリプロピレン系樹脂の他、各種ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、これらの混合物などを含有してもよい。ポリプロピレン系樹脂としては、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレンなどが単独または適宜組み合わされて用いられる。
表下層26は、ポリプロピレン系樹脂の含有量は、60質量%以上90質量%以下、好ましくは65質量%以上85質量%以下、より好ましくは80質量%以上85質量%以下である。ここで、ポリプロピレン系樹脂の含有量が60質量%より少なくなると、シール時に食い込み過剰が発生しやすくなるという不都合を生じるおそれがあるためである。一方、ポリプロピレン系樹脂の含有量が90質量%より多くなると、熱成形容器2の割れが発生しやすくなるという不都合を生じるおそれがあるためである。
【0016】
さらに、表下層26は、アイソタクティックペンタッド分率が93mol%以上のポリプロピレンを80質量%以上で含有することが好ましい。ここで、該ポリプロピレンが80質量%より少なくなると、シール時に食い込み過剰が発生しやすくなるという不都合を生じるおそれがあるためである。
さらに、表下層26は、アイソタクティックペンタッド分率93mol%以上のポリプロピレンが80質量%未満、特に65質量%以上80質量%未満で含有する場合、タルクを0.5質量%以上5質量%以下で含有していることが好ましい。ここで、タルクが0.5質量%より少なくなると、シール時の食い込み安定性が悪くなるおそれがある。一方、タルクが5質量%より多くなると、熱成形する際の加熱温度をより高くする必要があり、成形機の熱板に付着するおそれがあるためである。
そして、表下層26には、基材層25と同様に、さらに分散剤や顔料あるいは染料などの添加剤が含有されていてもよい。
【0017】
また、表下層26は、ポリプロピレン系樹脂のアイソタクティックペンタッド分率が93mol%より小さくなると、シール時に食い込み過剰が発生しやすくなるため、93mol%以上に設定する。
ここで、立体規則性の指標として用いたアイソタクティックペンタッド分率の測定は、例えばA.Zambelliにより開示された13C−NMR法(Macromolecules,6925,1973)に準拠した方法などが例示できる。具体的には、まず、i−PP試料220mgを10mm径NMR試料管に採取し、1,2,4−トリクロロベンゼン/重ベンゼン混合溶液(90/10vol%)を2.5ml加え140℃で均一に混合物を溶解させた後、JNM−EX400(商品名:日本電子株式会社製)を用いて13C−NMRスペクトルを測定した。13C−NMRスペクトル測定条件を以下に示す。
・パルス幅 :7.5μs/45度
・観測周波数の範囲 :25,000Hz
・パルス繰り返し時間:4秒
・測定温度 :130℃
・積算回数 :10,000回
そして、アイソタクティックペンタッド分率は、プロピレン5分子の結合パターントータル9種類(「mmmm」、「mmmr」、「rmmr」、「mmrr」、「rmrr+mrmm」、「rmrm」、「rrrr」、「mrrr」、「mrrm」)のそれぞれに対応して13C−NMRスペクトルとして観測される9本のピークすべての面積に対して、「mmmm」に対応するピーク面積の相対比率として定義される。具体的には、以下の関係式(1)により算出した。ここで、2つのピークに重なりがある場合、2つのピークの谷からベースラインまで垂直に垂線を引き、両者のピークを分割した(垂直分割法)。
{関係式(1)}
アイソタクティックペンタッド分率(mol%)
={A(mmmm)/A(トータル)}×100 …(1)
ここで、A(mmmm)はmmmmピークの面積であり、A(トータル)は9本のピーク面積の合計を意味する。
なお、2つのピークに重なりがある場合、上記垂直分割法の他に各ピークをローレンツ型ピークの集合体として波形分離を行う方法も知られており、解析ソフト(日本電子(株)のALICE 2)を用いて求めた値を用いてもよい。
【0018】
表面層27は、ポリプロピレン系樹脂と、融点130℃以下のプロピレン−エチレンランダムコポリマーと、融点120℃以上の低密度ポリエチレン系樹脂とを含む樹脂組成物にて構成されている。
ポリプロピレン系樹脂としては、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレンなどが単独または適宜組み合わされて用いられる。
そして、ポリプロピレン系樹脂としては、メルトフローレートが0.3g/10分以上0.8g/10分以下、好ましくは0.4g/10分以上0.7g/10分以下のものが用いられる。メルトフローレートが0.3g/10分より小さくなると、表面層27が均一に広がりにくくなるおそれがある。一方、メルトフローレートが0.8g/10分より大きくなると、分散性が損なわれるおそれがあるためである。
また、ポリプロピレン系樹脂の含有量は、30質量%以上70質量%以下、好ましくは40質量%以上50質量%以下である。ポリプロピレン系樹脂の含有量が30質量%より少なくなると、蓋材3との接着が弱く、密着性が悪化したり、耐熱性が悪化したりするおそれがある。一方、ポリプロピレン系樹脂の含有量が70質量%より多くなると、密着性が強くなりすぎ、開封性が悪化するおそれがあるためである。
【0019】
融点130℃以下のプロピレン−エチレンランダムコポリマーの含有量は、10質量%以上30質量%以下、好ましくは15質量%以上25質量%以下である。
プロピレン−エチレンランダムコポリマーとしては、メルトフローレートが0.5g/10分以上3g/10分以下、好ましくは1.5g/10分以上2.5g/10分以下のものが用いられる。メルトフローレートが0.5g/10分より小さくなると、表面層27が均一に広がりにくくなるおそれがある。一方、メルトフローレートが3g/10分より大きくなると、分散性が損なわれるおそれがあるためである。
そして、プロピレン−エチレンランダムコポリマーとして融点が130℃より高いものでは、蓋材3とのシール性が弱くなるおそれがある。このため、プロピレン−エチレンランダムコポリマーの融点が130℃以下、好ましくは120℃以上130℃以下である。
また、プロピレン−エチレンランダムコポリマーの含有量が10質量%より少なくなると、蓋材3とのシール性が弱くなるおそれがある。一方、プロピレン−エチレンランダムコポリマーの含有量が30質量%より多くなると、蓋材3とのシール性が強くなりすぎるおそれがあるためである。
【0020】
融点120℃以上の低密度ポリエチレン系樹脂の含有量は、20質量%以上40質量%以下、25質量%以上35質量%以下である。
低密度ポリエチレン系樹脂としては、メルトフローレートが3.5g/10分以上6.5g/10分以下、好ましくは4g/10分以上5g/10分以下のものが用いられる。メルトフローレートが3.5g/10分より小さくなると、分散状態が損なわれるおそれがある。一方、メルトフローレートが6.5g/10分より大きくなると、分散状態が損なわれるおそれがあるためである。
そして、低密度ポリエチレン系樹脂として融点が120℃より低いものでは、直接加熱方式成形機により加熱板に付着するおそれがある。このため、低密度ポリエチレン系樹脂の融点が120℃以上、好ましくは120℃以上130℃以下である。
また、低密度ポリエチレン系樹脂の含有量が20質量%より少なくなると、蓋材3との密着性が強くなりすぎ、開封性が悪化するおそれがある。一方、低密度ポリエチレン系樹脂の含有量が40質量%より多くなると、蓋材3との接着性が大きく変化してしまうおそれがある。
【0021】
また、表面層27には、基材層25や表下層26と同様に、さらに分散剤や顔料あるいは染料などの添加剤が含有されていてもよい。
そして、表面層27は、厚さ寸法が10μm以上150μm以下、特に15μm以上100μm以下で形成することが好ましい。表面層27の厚さ寸法が10μmより薄くなると、厚さ寸法の制御が困難となり、生産性が悪化するおそれがあるとともに、融着時に表面層27が排斥されるおそれがある。一方、表面層27の厚さ寸法が150μmより厚くなると、凝集破壊する面が安定せず、開封時に外観不良を生じるおそれがあるためである。
【0022】
そして、多層シート20は、例えばTダイを用いた多層押出成形法により成形される。
具体的には、基材層25、表下層26および表面層27に対応した押し出し機を使用し、各押し出し機から押し出された各基材層25、表下層26および表面層27をTダイに入る直前に設けた特殊ブロックで合流、積層させて成形する。
【0023】
(蓋材の構成)
蓋材3は、図3に示すように、易開封性包装体1の外部に現れる外層31と、熱成形容器2の表面層27と融着されるシーラント層32と、これら外層31およびシーラント層32間に介在された中間層33とを有する積層体である。
熱成形容器2の表面層27と融着される蓋材3のシーラント層32は、熱成形容器2の表面層27が凝集破壊して剥離する開封態様である(図8参照)。具体的には、図1および図2に示すように、易開封性包装体1の四隅に設けられた蓋材3の開封開始部34を熱成形容器2のフランジ部24から離間する方向(図2中の矢印方向)に引っ張ることで、表面層27が凝集破壊して剥離し、易開封性包装体1が開封される構成となっている。
【0024】
蓋材3の外層31は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、二軸延伸ナイロンフィルム(O−Ny)等を使用することができる。
中間層33は、例えばポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、エチレン−ビニルアルコール系樹脂、ポリ塩化ビニリデン等を使用することが好ましい。
シーラント層32は、例えばポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂を使用することが好ましい。
【0025】
(樹脂溜まり部の構成)
そして、易開封性包装体1は、図3に示すように、上述した多層シート20から形成された熱成形容器2に蓋材3が融着され、図1および図2に示すような環状のシール部28が形成される。この熱成形容器2の表面層27と蓋材3のシーラント層32との融着により、熱成形容器2の開口部21が密封され、易開封性包装体1の収納空間22が密封状態となる。
ここで、シール部28は、図3に示すように、第一環状シール盤7で形成される第一環状シール部281と、第二環状シール盤7aで形成される第二環状シール部282とで形成される。
この蓋材3の融着により、図3に示すように、フランジ部24上に有る環状の第一環状シール部281の内周縁近傍(図3中Xの位置)に、コブ状の樹脂溜まり部6が形成されている。この樹脂溜まり部6は、熱成形容器2の表下層26、表面層27および蓋材3のシーラント層32が、熱成形容器2の開口部21の開口縁側に押し出されるように形成されている。
具体的には、図3に示すように、樹脂溜まり部6は、熱成形容器2の表面層27の第一樹脂溜まり61、表下層26の第二樹脂溜まり62、および蓋材3のシーラント層32の第三樹脂溜まり63が集まって形成されている。
熱成形容器2の表面層27が凝集剥離される開封形態の易開封性包装体1は、このような樹脂溜まり部6を備えることにより、包装容器として高い密封性を備えた上で、凝集剥離の開封形態により易開封性を良好な状態で維持できる。さらには、易開封性包装体1は、当該樹脂溜まり部6により、蓋材3と熱成形容器2のフランジ部24との切断が簡便に行われる。また、易開封性包装体1は、内圧による応力がかかる向きと凝集破壊による開封しやすい向きが異なることにより、密封性が向上することとなる。具体的には、内圧の応力は、第一環状シール部281の内周縁近傍Xより、コブ状の第一樹脂溜まり61および第二樹脂溜まり62における基部の凹部(図3中Yの位置)に作用しやすく、内圧の応力によっては開封しにくく、密封性が向上する。
【0026】
なお、易開封性包装体1は、熱成形容器2のフランジ部24の上面にある環状の第一環状シール部281の内周縁近傍Xの全周に樹脂溜まり部6が形成されている。そして、熱成形容器2の開封開始部34にある環状の第一環状シール部281の外周縁は、フラット、もしくは、第一環状シール部281の内周縁近傍Xにある樹脂溜まり部6より小さい樹脂溜まりしか形成されていない。
このことから、開封開始部34以外の部分には、環状の第一環状シール部281の外周縁全周にも、第一環状シール部281の内周縁近傍Xにある樹脂溜まり部6と略同じ大きさの図示しない樹脂溜まり部を形成してもよい。この構成とすることにより、高密封性、易開封性、および、開封開始部34以外からの蓋材3の開封防止性に優れる点で好ましい。
【0027】
[易開封性包装体の製造方法]
次に、易開封性包装体の製造方法について、図面を参照して説明する。
図5は、本実施形態における易開封性包装体を製造する場合における蓋材の融着工程を示す模式図である。図6は、本実施形態における融着時の第一環状シール盤とフランジ部との状態を示した部分断面図である。図7は、本実施形態における第一環状シール盤の部分拡大図である。
【0028】
易開封性包装体1を製造するにあって、熱成形容器2のフランジ部24と蓋材3とを融着して易開封性包装体1を密封状態とするには、熱成形容器2のフランジ部24に蓋材3を重ね合わせる。そして、蓋材3の上面から、加熱状態の第一環状シール盤7を押圧することによりヒートシールが実施される。
なお、前記したような、開封開始部34のシール部の内周縁近傍Xに瘤状の樹脂溜まり部6を形成するには、例えば、下記のような方法を用いればよい。
【0029】
熱成形容器2のフランジ部24と蓋材3とのヒートシールは、図5に示すように、熱成形容器2のフランジ部24に蓋材3を重ね合わせ、当該蓋材3の上部から、加熱状態の第一環状シール盤7を図5の矢印方向に押圧する。この押圧により、熱成形容器2のフランジ部24に現れた表面層27と蓋材3のシーラント層32が融着される。
ここで、本実施形態の易開封性包装体1を製造するために使用される第一環状シール盤7は、フランジ部24の上面に対して、内周縁にR加工が施され、外周縁が第一環状シール盤7の先端(図7の先端73)より遅れて蓋材3に当たるようにされた形状の第一環状シール盤7である。具体的には、第一環状シール盤7は、境界A(第一環状シール盤7の先端73でもある)を介して、外周縁側に断面が傾斜状となる傾斜面部71と、内周縁側にはR加工されて断面が曲面状の曲面部72とが連続して形成されている。
【0030】
このうち、第一環状シール盤7の外周縁側に形成される傾斜面部71は、図6に示すように、フランジ部24の表面に対して内周縁から外周縁に向かって形成されることとなる角度(θ)が、2°以上20°以下、特に3°以上15°以下に設定されることが好ましい。なお、この傾斜面部71の角度は、第一環状シール盤7の巾Hによって適宜設定される。
この傾斜面部71の角度が2°より小さいと、融着時に押圧した場合であっても、図3に示すような樹脂溜まり部6が、シール部28の外周縁近傍にも形成され易くなり、開封時におけるシール部28の外側の抵抗が大きくなり、開封を円滑に行うことが困難となるおそれがある。一方、傾斜面部71の角度が20°を超えると、境界Aの周辺がなだらかでなく尖ってしまい、融着時、もしくは開封時に蓋材3が切断されてしまう場合があり、易開封性が損なわれるおそれがある。
【0031】
また、第一環状シール盤7に内周縁側に形成される曲面部72に施されるR加工は、曲率半径Rが0.2Hmm以上0.5Hmm以下程度であることが好ましい。なお、曲面部72の曲率半径Rは、この数値範囲に乗算されて示されるように、第一環状シール盤7の巾寸法Hによって適宜設定される。
この曲面部72の曲率半径Rが0.2Hmmより小さいと、境界Aの周辺がなだらかでなく尖ってしまい、融着時、もしくは開封時に蓋材3などが切断されてしまうおそれがある。一方、曲率半径Rが0.5Hmmを超えると、融着時に押圧した場合であっても、フランジ部24のシール部28の内周縁近傍Xに樹脂溜まり部6が形成されにくくなるためである。
【0032】
ここで、第一環状シール盤7に対して、これら傾斜面部71および曲面部72は、境界Aが第一環状シール盤7の断面巾方向に対して内側寄り(内周縁寄り)となるように形成されることが好ましい。境界Aが第一環状シール盤7の断面巾方向に対して内側であれば、第一環状シール盤7の内周縁側に曲面部72、第一環状シール盤7の外周縁側に傾斜面部71が形成されていることも相俟って、融着に際して第一環状シール盤7の外周縁側より先端73が先に蓋材3と接する。すなわち、第一環状シール盤7の外周縁が先端73より蓋材3に遅れて接することが確実になされる。このため、先に接した内周縁側の開口部21側に対して樹脂溜まり部6が、内側に選択的に形成されることになる。
【0033】
また、本実施形態では、熱成形容器2の開封開始部34以外の部位に対応し、第一環状シール盤7の内周縁および外周縁の全周に、R加工されて断面が曲面状の曲面部72が形成されている。そして、熱成形容器2の開封開始部34に対応する第一環状シール盤7の部位は、内周縁にR加工されて断面が曲面状の曲面部72が形成されている。このことにより、外周縁が第一環状シール盤7の先端73より蓋材3に遅れて接するようにされた形状を持つ第一環状シール盤7を用いることで、高密封性、易開封性、および、開封開始部34以外からの蓋材3の開封防止性に優れる易開封性包装体1を製造することができる点で好ましい。
【0034】
なお、第一環状シール盤7は、図1および図2に示すような周状のシール部28を一体的に形成させるため、前記した傾斜面部71と曲面部72とを環状に連続して形成した環状シール盤(シールリング)としてもよい。また、第一環状シール盤7は、易開封性包装体1の開封開始部34に対応する部位に対してのみ、当該傾斜面部71と曲面部72を形成した環状シール盤(シールリング)としてもよい。
【0035】
図6および図7に示した形状の第一環状シール盤7を用いて、熱成形容器2のフランジ部24と蓋材3を融着するには、図6に示すように、まず、第一環状シール盤7における傾斜面部71と曲面部72との境界Aに対応する先端73が蓋材3に接する。この後、当該境界Aの内周縁側に形成された曲面部72が蓋材3の内側に向かって、また、境界Aの外周縁側に形成された傾斜面部71が蓋材3の外側に向かって押圧していく。
これにより、熱成形容器2の表面層27と当該表面層27と隣接する表下層26の樹脂成分は、前記の境界Aの下部から熱成形容器2の内側に押し出され、フランジ部24における第一環状シール盤7の内周縁が接する位置の近傍、すなわち、熱成形容器2のシール部28の内周縁近傍Xに盛り上がった瘤状の樹脂溜まり61,62を形成する。また、蓋材3のシーラント層32も追随して樹脂溜まり63を形成し、これらが樹脂溜まり部6を形成した状態で、熱成形容器2のフランジ部24に現れた表面層27と、蓋材3のシーラント層32とが融着される。
【0036】
ここで、融着条件として、融着温度としては、融着される材料の種類等により適宜決定すればよいが、160℃以上240℃以下程度とすればよい。
同様に、融着圧力は、10kg/cm2(100〜500kPa)以上50kg/cm2(100〜500kPa)以下程度とすればよい。
【0037】
なお、第一環状シール盤7による融着のみでは、外周縁側から夾雑物が入りやすくなるおそれがある。そのようなことを防止するために、第一環状シール盤7により、前述した瘤状の樹脂溜まり部6を形成しながら、蓋材3のシーラント層32をフランジ部24の表面層27に融着した後に、第二環状シール盤7aを用いて、シール部28の外周側に当たるように押圧して、熱成形容器2の表面層27と蓋材3のシーラント層32を融着するようにすればよい。
前記した第二環状シール盤7aのシール面は平滑なフラット形状やR形状であれば樹脂溜まり部6と第二環状シール盤7aとの位置関係を考慮しなくても良い。
但し、前記した第二環状シール盤7aのシール面をローレットなど部分接着が可能なように加工した場合は、瘤状の樹脂溜まり部6が凹凸状に潰されることで開封外観が損なわれる場合があるため、樹脂溜まり部6に第二環状シール盤7aが当たらないようにすることが好ましい。
【0038】
[易開封性包装体の開封方法]
次に、上記易開封性包装体1の開封方法について、図面を参照して説明する。
図8は、本実施形態の易開封性包装体が初期開封された状態を示した断面図である。図9は、本実施形態の易開封性包装体が完全に開封された状態を示した断面図である。
なお、ここでいう「初期開封された状態」とは、凝集剥離された剥離面が樹脂溜まり部6まで達していない状態を指す。
【0039】
本実施形態の易開封性包装体1を開封開始部34から開封するため、図8に示すように、蓋材3に対して図8の矢印方向に力Fが掛かった場合、熱成形容器2の表面層27の凝集剥離が進行する。
また、この凝集剥離が樹脂溜まり部6に達したところにおいては、表面層27の凝集剥離は、当該表面層27と隣接する表下層26とに形成された樹脂溜まり62の形状に沿って進行されることになる。
【0040】
そして、表面層27の凝集剥離が、シール部28の内周縁近傍Xにまで達したら、蓋材3のシーラント層32に形成された樹脂溜まり63の形状に追随するようにして、熱成形容器2の表面層27の樹脂溜まり61が切断されることにより、易開封性包装体1における熱成形容器2と蓋材3との開封が容易に行われることになる。
【0041】
[実施形態の作用効果]
上述したように、上記実施の形態によれば、以下に示す作用効果が得られる。
すなわち、本実施形態では、易開封性包装体1の熱成形容器2を形成する多層シート20は、表面層27としてポリプロピレン系樹脂が30質量%以上70質量%以下と、融点130℃以下のプロピレン−エチレンランダムコポリマーが10質量%以上30質量%以下と、融点120℃以上の低密度ポリエチレン系樹脂が20質量%以上40質量%以下とを含有するものとする。このことにより、蓋材3を熱成形容器2に融着させる際の溶融開始温度が120℃以上130℃以下程度となり、融着温度を160℃以上240℃以下程度に設定できる。このため、連続生産の点で有効な直接熱板加熱方式成形機を用いて熱成形容器2を製造する際、融着温度を従来の材料に比して高い温度で広い温度範囲に設定できる。したがって、多層シート20の表面層27が成形機の熱板に付着するなどの不都合を生じることなく熱成形容器2を効率よく製造できる。
また、この表面層27に隣接して設けられる表下層26として、アイソタクティックペンタッド分率が93mol%以上であるポリプロピレン系樹脂を主成分とするものとする。このことにより、表下層26の剛性が向上し、熱成形容器2に蓋材3を融着する際に、第一環状シール盤7を押し当てた時の表下層26の過剰な流動を防止でき、表面層27の流動性を安定化できる。このため、融着時に第一環状シール盤7が食い込み過剰となるなどの不都合を生じず、安定したシール強度が得られ、安定した封止性を提供できる。さらに、表下層26の過剰な流動を防止できることから、安定した良好な樹脂溜まり部6を形成でき、安定した封止性も得られ、安定した密封性を提供できる。
【0042】
そして、本実施形態では、表下層26に含有しているアイソタクティックペンタッド分率93mol%のポリプロピレンが80質量%以上である。
このため、シール時に食い込み過剰が生じることを防止でき、良好に封止できる。
【0043】
また、表下層26に含有しているアイソタクティックペンタッド分率93mol%のポリプロピレンが80質量%未満、特に65質量%以上80質量%未満である場合には、タルクを0.5質量%以上5質量%以下で含有している。
このため、表下層26の剛性を向上でき熱成形容器2に剛性を持たせることができる。
【0044】
また、本実施形態では、多層シート20の表面層27の厚さ寸法を、10μm以上150μm以下としている。
このため、安定した厚さの表面層27を形成でき、歩留まりを向上できるとともに、融着時に排斥されることなく、良好に封止できる。さらに、凝集破壊する面が安定し、開封外観が損なわれることを防止できる。
【0045】
そして、本実施形態では、開口部21の周縁に外方に向けて延出するフランジ部24を有する熱成形容器2を、内面側に表面層27が位置、すなわち収納部23の内面側に表面層27が臨む状態に多層シート20を熱成形することで、形成している。
このため、フランジ部24に蓋材3を融着して封止すればよく、易開封性包装体1の易開封性および開封感触が安定し、耐熱性および開封面の外観が良好となる。
【0046】
さらに、本実施形態では、易開封性包装体1におけるフランジ部24に蓋材3のシーラント層32を融着させ、フランジ部24の開口部21側の近傍に樹脂溜まり部6を形成している。
このことにより、樹脂溜まり部6が介在するところまで凝集剥離が進行すると、樹脂溜まり部6の介在により剥離する応力が蓋材3を熱成形容器2から引き離す方向に作用することとなる。このため、蓋材3と熱成形容器2のフランジ部24との切断が良好に行われ、良好な開封性を備えた易開封性包装体1を提供できる。さらに、凝集破壊する表面層27の両面側に、凝集破壊しにくい表下層26および蓋材3のシーラント層32が存在するため、密封性を向上できる。
【0047】
[変形例]
なお、以上説明した態様は、本発明の一態様を示したものであって、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の構成を備え、目的および効果を達成できる範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。また、本発明を実施する際における具体的な構造および形状等は、本発明の目的および効果を達成できる範囲内において、他の構造や形状等として変形や改良したものも、本発明に含まれるものである。
【0048】
すなわち、本実施形態の多層シート20および熱成形容器2では、表面層27、表下層26および基材層25を備えた構成を示したが、これに限られない。
例えば、基材層25を設けず、表面層27および表下層26の二層にて構成されていてもよい。つまり、表下層26が基材層として機能させる構成としてもよい。
また、本実施形態の多層シート20および熱成形容器2の基材層25は、第一基材層25A、第一接着層25B、ガスバリア層25C、第二接着層25D、第二基材層25Eを備えた構成を示したが、これに限られない。
例えば、基材層25として、第一基材層25Aのみで構成したものとしてもよい。
これらのように、多層シート20および熱成形容器2は、表面層27および表下層26が少なくとも含まれた二層以上の多層構成であればよい。
【0049】
そして、本実施形態のうち、熱成形容器2の表面層27が凝集剥離する態様を示したが、例えば蓋材3側が凝集剥離する態様としてもよい。すなわち、本発明の多層シートから蓋材3を形成してもよい。
具体的には、蓋材3のシーラント層32として多層シート20の表面層27と同様の材質とし、蓋材3の中間層33として多層シート20の表下層26と同様の材質とする。そして、例えば図10および図11に示すように、熱成形容器2のフランジ部24に、蓋材3のシーラント層32が融着する構成とすればよい。この図10および図11に示す構成によれば、熱成形容器2と蓋材3との開封に際して、蓋材3のシーラント層32が凝集剥離する。
さらには、開封に際し、熱成形容器2の表面層27と蓋材3のシーラント層32の両層が凝集破壊されて開封する構成としてもよい。
その他、上述した熱成形容器2と蓋材3とよりなる易開封性包装体1の他、本発明の多層シートとしては各種形状の包装体に適用してもよい。
【0050】
また、易開封性包装体1を製造するにあって、第一環状シール盤7の内周縁が接する位置に対応する部分に形成される樹脂溜まり部6のほか、第一環状シール盤7の外周縁が接する位置に対応する部分に樹脂溜まりが形成されてもよい。
この場合、外周縁に形成される樹脂溜まりより、内周縁に形成される樹脂溜まり部6の方が大きくなるため、良好な易開封性と高密封性が維持されることとなる。
【0051】
そして、多層シート20として、表下層26にタルクを0.5質量%以上5質量%以下で含有させる構成を例示したが、タルクを含有していなくてもよい。
さらに、多層シート20として、表面層27の厚さ寸法を10μm以上150μm以下としなくてもよい。用途に応じて厚さ寸法を適宜設定することができる。
【実施例】
【0052】
次に、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。
なお、本発明はこれらの実施例等の記載内容に何ら制約されるものではない。
【0053】
[包装体]
(多層シート)
多層シートは、一般的に利用されているディストリビューター方式共押出し多層シート製造装置を用いて、以下に記述する表面層/第一基材層/第一接着層/ガスバリア層/第二接着層/第二基材層からなる多層シートを製造した。
表面層:後述する実施例、比較例毎に適宜設定
第一基材層(表下層),第二基材層:後述する実施例、比較例毎に適宜設定
第一接着層,第二接着層:接着性樹脂(三菱化学株式会社製 無水マレイン酸変成PP(商品名:モディックAP P604V))
ガスバリア層:エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂(クラレ製(商品名:エバールJ171B))
(熱成形容器)
この多層シートを用いて、直接熱板加熱方式の成形機(株式会社シンワ機械製(商品名:直接加熱式容器成形機))を用い、上下の熱板共に、200℃、2.0秒で3回加熱成形することにより、熱成形容器を形成した。
(蓋材)
以下に記述する外層/中間層/シーラント層の3層の積層体に成形した。
外層:ポリエチレンテレフタレート(三菱化学株式会社製(商品名:テックバリア))12μm
中間層:ナイロン(出光ユニテック株式会社製(商品名:ユニロンS))15μm
シーラント層:LLPE(出光ユニテック株式会社製(商品名:LS700C))60μm、または、ポリプロピレン(PP)(出光ユニテック株式会社製(商品名:RT610C))60μm
(トップシール)
形成した熱成形容器のフランジの形状は、後述するように、フラット形状または凸形状に、リング状のシール盤、凸用のシール盤、Rシール盤、特殊形状のシール盤を用いて適宜形成した。なお、使用したシール盤は、以下の通りである。
実施例1〜7、各比較例のリング状のシール盤は、幅1.5mmで先端形状はフラットである。融着温度は190℃、融着圧力は150kg/個、融着時間は1.0秒である。
実施例8の凸用のシール盤は、幅3.0mmで先端形状はフラットである。融着温度は190℃、融着圧力は150kg/個、融着時間は1.0秒である。
実施例9のRシール盤は、幅1.5mmで幅方向の中央で突出する先端の曲率半径が1.0mmの曲面を有する。融着温度は210℃、融着圧力は200kg/個、融着時間は1.0秒である。
実施例10の特殊形状のシール盤は、第一環状シール盤7と同様の形状で、幅1.5mmで、傾斜角θが9°、曲面加工が距離率半径0.5mmである。融着温度は210℃、融着圧力は200kg/個、融着時間は1.0秒である。
【0054】
[実施例1]
実施例1は、以下の表1に示すように、表面層および第一基材層を以下の樹脂配合で形成した。
表面層(厚さ50μm):
ポリプロピレン(PP)(プライムポリマー株式会社製(商品名:E105GM))40質量%
+メタロセン系PP(日本ポリプロ株式会社製(商品名:WFX6 融点128℃))30質量%
+低密度ポリエチレン(LDPE)(東ソー・ニッケミ株式会社製(商品名:LW01 融点128℃))30質量%
第一基材層:
ポリプロピレン(PP)(プライムポリマー株式会社製(商品名:V300SVE 立体規則性ii97mol%))81.5質量%
+低密度ポリエチレン(LDPE)(日本ポリエチレン株式会社製(商品名:HE30))13.5質量%
+高密度ポリエチレン(HDPE)(プライムポリマー株式会社製(商品名:6203B))5質量%
フランジ部は、上述したように、リング状のシール盤を用いてフラットに形成した。
(実施例1−1)
実施例1−1は、熱成形容器を上記実施例1の多層シートを用い、蓋材のシーラント層を上述のポリプロピレン(PP)で形成したものとした。
(実施例1−2)
実施例1−2は、熱成形容器を上記実施例1の多層シートを用い、蓋材のシーラント層を上述のLLPEで形成したものとした。
【0055】
[実施例2]
実施例2は、以下の表1に示すように、表面層は実施例1と同配合で同厚さ寸法に形成し、第一基材層は以下の樹脂配合で形成した。
第一基材層:
ポリプロピレン(PP)(プライムポリマー株式会社製(商品名:V300SVE 立体規則性ii97mol%))68質量%
+高密度ポリエチレン(HDPE)(プライムポリマー株式会社製(商品名:6203B))14質量%
+熱可塑性エラストマー(東京材料株式会社製(商品名:エンゲージ8200))15質量%
+タルク(出光ライオンコンポジット株式会社製(商品名:HMP460−1))3質量%
フランジ部は、上述したように、リング状のシール盤を用いてフラットに形成した。その他は、実施例1と同様とした。
【0056】
[実施例3]
実施例3は、以下の表1に示すように、表面層を以下の樹脂配合で形成し、第一基材層は実施例1と同配合で形成した。
表面層:
ポリプロピレン(PP)(実施例1と同材料)50質量%
+メタロセン系PP(実施例1と同材料)20質量%
+低密度ポリエチレン(LDPE)(実施例1と同材料)30質量%
フランジ部は、上述したように、リング状のシール盤を用いてフラットに形成した。その他は、実施例1と同様とした。
【0057】
[実施例4]
実施例4は、以下の表1に示すように、表面層を以下の樹脂配合で形成し、第一基材層は実施例1と同配合で形成した。
表面層:
ポリプロピレン(PP)(実施例1と同材料)30質量%
+メタロセン系PP(実施例1と同材料)30質量%
+低密度ポリエチレン(LDPE)(実施例1と同材料)40質量%
フランジ部は、上述したように、リング状のシール盤を用いてフラットに形成した。その他は、実施例1と同様とした。
【0058】
[実施例5]
実施例5は、以下の表1に示すように、表面層を以下の樹脂配合で形成し、第一基材層は実施例1と同配合で形成した。
表面層:
ポリプロピレン(PP)(実施例1と同材料)70質量%
+メタロセン系PP(実施例1と同材料)10質量%
+低密度ポリエチレン(LDPE)(実施例1と同材料)20質量%
フランジ部は、上述したように、リング状のシール盤を用いてフラットに形成した。その他は、実施例1と同様とした。
【0059】
【表1】

【0060】
[実施例6]
実施例6は、以下の表2に示すように、表面層および第一基材層とも実施例1と同配合とし、表面層の厚さ寸法を150μmで形成した。
フランジ部は、上述したように、リング状のシール盤を用いてフラットに形成した。その他は、実施例1と同様とした。
【0061】
[実施例7]
実施例7は、以下の表2に示すように、表面層および第一基材層とも実施例1と同配合とし、表面層の厚さ寸法を10μmで形成した。
フランジ部は、上述したように、リング状のシール盤を用いてフラットに形成した。その他は、実施例1と同様とした。
【0062】
[実施例8]
実施例8は、以下の表2に示すように、表面層および第一基材層とも実施例1と同配合とし、表面層の厚さ寸法を50μmで形成した。
フランジ部は、上述したように、凸用のシール盤を用いて断面凸状に形成した。その他は、実施例1と同様とした。
【0063】
[実施例9]
実施例9は、以下の表2に示すように、表面層および第一基材層とも実施例1と同配合とし、表面層の厚さ寸法も50μmと同一に形成した。
フランジ部は、上述したように、Rシール盤を用いてフラットに形成した。その他は、実施例1と同様とした。
【0064】
[実施例10]
実施例10は、以下の表2に示すように、表面層および第一基材層とも実施例1と同配合とし、表面層の厚さ寸法も50μmに形成した。
フランジ部は、上述したように、特殊形状のシール盤を用いてフラットに形成した。その他は、実施例1と同様とした。
【0065】
【表2】

【0066】
[実施例11]
実施例11は、以下の表3に示すように、実施例1と同配合で形成した。表面層は、160μmの厚みで形成した。
【0067】
[実施例12]
実施例12は、以下の表3に示すように、実施例1と同配合で形成した。表面層は、5μmの厚みで形成した。
【0068】
[実施例13]
実施例13は、以下の表3に示すように、表面層は実施例1と同配合で、50μmの厚さ寸法で形成した。第一基材層は、以下の樹脂配合で形成した。その他、実施例1と同様に形成した。
第一基材層:
ポリプロピレン(PP)(プライムポリマー株式会社製(商品名:V300SVE 立体規則性ii97mol%))75質量%
+高密度ポリエチレン(HDPE)(プライムポリマー株式会社製(商品名:6203B))20質量%
+熱可塑性エラストマー(東京材料株式会社製(商品名:エンゲージ8200))5質量%
【0069】
[実施例14]
実施例14は、以下の表3に示すように、表面層は実施例1と同配合で、50μmの厚さ寸法に形成した。第一基材層は、以下の樹脂配合で形成した。その他、実施例1と同様に形成した。
第一基材層:
ポリプロピレン(PP)(プライムポリマー株式会社製(商品名:V300SVE 立体規則性ii97mol%))75質量%
+高密度ポリエチレン(HDPE)(プライムポリマー株式会社製(商品名:6203B))10質量%
+熱可塑性エラストマー(東京材料株式会社製(商品名:エンゲージ8200))5質量%
+タルク(出光ライオンコンポジット株式会社製(商品名:HMP460−1))10質量%
【0070】
[実施例15]
実施例15は、以下の表3に示すように、表面層は実施例1と同配合で、50μmの厚さ寸法に形成した。第一基材層は、以下の樹脂配合で形成した。その他、実施例1と同様に形成した。
第一基材層:
ポリプロピレン(PP)(プライムポリマー株式会社製(商品名:V300SVE 立体規則性ii97mol%))75質量%
+高密度ポリエチレン(HDPE)(プライムポリマー株式会社製(商品名:6203B))20質量%
+熱可塑性エラストマー(東京材料株式会社製(商品名:エンゲージ8200))4.7質量%
+タルク(出光ライオンコンポジット株式会社製(商品名:HMP460−1))0.3質量%
【0071】
【表3】

【0072】
[比較例1]
比較例1は、以下の表4に示すように、表面層は実施例1と同配合で同厚さ寸法に形成し、第一基材層は以下の樹脂配合で形成した。
第一基材層:
ポリプロピレン(PP)(プライムポリマー株式会社製(商品名:E105GM 立体規則性ii92mol%))80質量%
+低密度ポリエチレン(LDPE)(日本ポリエチレン株式会社製(商品名:HE30))20質量%
なお、フランジ部は、上述したように、リング状のシール盤を用いてフラットに形成した。
そして、比較例1−1は、実施例1−1と同様に、比較例1の多層シートで形成した熱成形容器に、シーラント層が上述のポリプロピレン(PP)である蓋材を融着するものとした。また、比較例1−2は、実施例1−2と同様に、比較例1の多層シートで形成した熱成形容器に、シーラント層が上述のLLPEである蓋材を融着するものとした。
【0073】
[比較例2]
比較例2は、以下の表4に示すように、表面層は以下の樹脂配合で50μmの厚さに形成し、第一基材層は実施例1と同配合で形成、すなわちポリプロピレン(PP)として立体規則性ii97mol%のもの(プライムポリマー株式会社製(商品名:V300SVE))を用いた。その他、比較例1と同様に形成した。
表面層:
ポリプロピレン(PP)(比較例1と同材質)70質量%
+エチレン・アクリル酸エステル・無水マレイン酸共重合体(日本ポリエチレン株式会社製(商品名:ET220X))30質量%
【0074】
[比較例3]
比較例3は、以下の表4に示すように、表面層は以下の樹脂配合で50μmの厚さに形成し、第一基材層は実施例1と同配合で形成した。その他、比較例1と同様に形成した。
表面層:
ポリプロピレン(PP)(比較例1と同材質)70質量%
+低密度ポリエチレン(LDPE)(実施例1と同材質)30質量%
【0075】
[比較例4]
比較例4は、以下の表4に示すように、表面層は以下の樹脂配合で50μmの厚さに形成し、第一基材層は実施例1と同配合で形成した。その他、比較例1と同様に形成した。
表面層:
ポリプロピレン(PP)(比較例1と同材質)20質量%
+メタロセン系PP(実施例1と同材質)50質量%
+低密度ポリエチレン(LDPE)(実施例1と同材質)30質量%
【0076】
【表4】

【0077】
[比較例5]
比較例5は、以下の表5に示すように、表面層は以下の樹脂配合で50μmの厚さに形成し、第一基材層は実施例1と同配合で形成した。その他、比較例1と同様に形成した。
表面層:
ポリプロピレン(PP)(比較例1と同材質)75質量%
+メタロセン系PP(実施例1と同材質)5質量%
+低密度ポリエチレン(LDPE)(実施例1と同材質)20質量%
【0078】
[比較例6]
比較例6は、以下の表5に示すように、表面層は以下の樹脂配合で50μmの厚さに形成し、第一基材層は実施例1と同配合で形成した。その他、比較例1と同様に形成した。
表面層:
ポリプロピレン(PP)(比較例1と同材質)30質量%
+メタロセン系PP(実施例1と同材質)25質量%
+低密度ポリエチレン(LDPE)(実施例1と同材質)45質量%
【0079】
[比較例7]
比較例7は、以下の表5に示すように、表面層は以下の樹脂配合で50μmの厚さに形成し、第一基材層は実施例1と同配合で形成した。その他、比較例1と同様に形成した。
表面層:
ポリプロピレン(PP)(比較例1と同材質)60質量%
+メタロセン系PP(実施例1と同材質)25質量%
+低密度ポリエチレン(LDPE)(実施例1と同材質)15質量%
【0080】
【表5】

【0081】
[評価]
前述のようにして得られた実施例1−1〜15−2および比較例1−1〜7−2の耐熱性、接着(密封)性、剥離強度、開封外観を下記の基準にて比較・評価した。結果は上述した表1〜5に示した。
【0082】
(耐熱性)
耐熱性は、熱成形容器の熱成形時の熱板接触加熱方式を想定した加熱した加熱板との付着性を評価した。評価は、以下の3段階である。
○:170℃の加熱板に付着しない場合。
△:155℃の加熱板に付着しないが170℃の加熱板に付着する場合。
×:155℃の加熱板に付着する場合。
【0083】
(接着(密封)性)
接着(密封)性は、得られた包装体の側辺部を15mm幅に切断して試験サンプルとし、フランジ部の内側から外側へ引張試験機(株式会社イマダ製(商品名:デジタルフォースゲージ/電動スタンド))を用いて、180°剥離、300mm/分で、8回測定した。評価は、以下の2段階である。
○:引張強度が8回全て9.8N(1.0kgf)以上。
△:引張強度の8回の平均が9.8N(1.0kgf)以上。
×:引張強度の8回の平均が9.8N(1.0kgf)未満。
【0084】
(剥離強度)
剥離強度は、得られた包装体の四隅における開封開始部の位置で15mm幅に切断して試験サンプルとし、フランジ部の外側から内側へ上述の引張試験機を用いて、135°剥離、300mm/分で、6回測定した。評価は、以下の3段階である。
○:引張強度が6.9N(0.7kgf)以上11.8N(1.2kgf)未満
△:引張強度が4.9N(0.5kgf)以上6.9N(0.7kgf)未満または引張強度が11.8N(1.2kgf)以上14.7N(1.5kgf)未満
×:引張強度が4.9N(0.5kgf)未満または14.7N(1.5kgf)以下
【0085】
(開封外観)
開封外観は、開封後の毛羽立ちや蓋材の破れの有無を観察し、評価した。評価は、以下の2段階である。
○:毛羽立ちや蓋材の破れは発生していない。
△:僅かな毛羽立ちは認められるが蓋材の破れは発生していない。
×:毛羽立ちや蓋材の破れが発生。
【0086】
[結果]
上記表1〜表5に示すように、実施例1〜15は、接着(密封)性、剥離強度、開封外観とも、良好な結果が得られた。
なお、実施例3および実施例5では、表面層のPPの配合割合が多めであることから、剥離強度が若干弱めであった。また、実施例4では、表面層のPPの配合割合が少なく低密度ポリエチレンが多めとなることから、熱成形時に熱板に付着はしないものの引っ張られる傾向が認められた。その他は、良好であった。
一方、PPの配合割合が多く低密度ポリエチレンが少なめの配合である比較例5や比較例7では、接着強度が強すぎて剥離できなかった。また、低密度ポリエチレンが多めな比較例6では、熱成形時に熱板に付着し、連続成形が中断する不都合が認められた。
また、表下層のアイソタクティックペンタッド分率が92mol%の比較例1では、蓋材の融着時に安定して融着できず、接着性や剥離強度のばらつきが大きかった。一方、アイソタクティックペンタッド分率が97mol%の実施例では、安定した接着性や剥離強度が得られた。
そして、実施例1、実施例8〜10から、フランジ部の形状により評価が大きく異なることは認められなかった。
これらの結果から、本発明の配合範囲で形成することで、熱成形時に多層シートが付着する不都合が生じずに容易に連続成形できるとともに、安定したシール性が得られ、安定した特性の包装体を提供できることが認められた。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、高密封性と易開封性を併せ持っており、例えば、レトルト食品等の各種食品や薬品、化粧品、雑貨等に包装容器として広く利用することができる易開封性包装体の熱成形容器、この熱成形容器を製造する多層シートを適用できる。
【符号の説明】
【0088】
1…易開封性包装体
2…熱成形容器
3…蓋材
6…樹脂溜まり部
20…多層シート
21…開口部
24…フランジ部
26…表下層
27…表面層
32…シーラント層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面層と、この表面層に隣接して設けられた表下層との少なくとも2層以上を積層して構成される多層シートであって、
前記表面層は、ポリプロピレン系樹脂が30質量%以上70質量%以下と、融点130℃以下のプロピレン−エチレンランダムコポリマーが10質量%以上30質量%以下と、融点120℃以上の低密度ポリエチレン系樹脂が20質量%以上40質量%以下とを含有し、
前記表下層は、アイソタクティックペンタッド分率が93mol%以上であるポリプロピレン系樹脂を主成分とする
ことを特徴とする多層シート。
【請求項2】
請求項1に記載の多層シートにおいて、
前記表下層は、アイソタクティックペンタッド分率が93mol%以上のポリプロピレンを80質量%以上で含有する
ことを特徴とする多層シート。
【請求項3】
請求項1に記載の多層シートにおいて、
前記表下層は、アイソタクティックペンタッド分率93mol%以上のポリプロピレンの含有量が80質量%未満の場合には、タルクを0.5質量%以上5質量%以下で含有する
ことを特徴とする多層シート。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の多層シートにおいて、
前記表面層は、厚さ寸法が10μm以上150μm以下である
ことを特徴とする多層シート。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の多層シートを熱成形することで得られ開口部を有する熱成形容器であって、
前記開口部の周縁に外方に向けて延出するフランジ部が形成されており、
該熱成形容器の内面側に前記表面層が形成されている
ことを特徴とする熱成形容器。
【請求項6】
請求項5に記載の熱成形容器と、
前記熱成形容器のフランジ部に融着され前記開口部を塞ぐ蓋材と、を備えた
ことを特徴とする易開封性包装体。
【請求項7】
請求項6に記載の易開封性包装体において、
前記蓋材は、前記熱成形容器に融着される面にシーラント層を有し、
前記フランジ部の開口部側近傍には、前記表面層、前記表下層および前記蓋材のシーラント層による樹脂溜まり部が形成されている
ことを特徴とする易開封性包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−245777(P2011−245777A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122400(P2010−122400)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(500163366)出光ユニテック株式会社 (128)
【Fターム(参考)】