説明

多層シートおよびその成形方法

【課題】キャリアテープ等の物品収容体の製造に供される場合において、その成形温度を260℃〜280℃程度から200〜250℃程度まで引き下げることができると共に、離型フィルムを介して接触式の加熱装置により比較的高温に加熱される場合であっても、離型フィルムの形状転写による外観不良が生じにくい樹脂組成物シートを提供する。
【解決手段】ポリカーボネート樹脂、非晶性ポリエステル樹脂を含有する基材層と、ポリカーボネート樹脂、非晶性ポリエステル樹脂とケイ酸塩化合物フィラーおよび導電性カーボンブラックを含有する導電層を有する多層シート。本シートは、キャリアテープ等の物品収容体の製造に好適に用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層シートに関する。また、本発明は、多層シートの成形方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
過去に「ポリカーボネート樹脂に非晶性ポリエステル樹脂をブレンドしたブレンド物から形成されるシート状物」が提案されている(例えば、特開2004−91691号公報等参照)。そして、このようなシート状物をキャリアテープ等の物品収容体の製造に供すると、その成形温度を260〜280℃程度から200〜250℃程度まで引き下げることができ、このようなシート状物の利用者は、エネルギー消費量の低減等に貢献することができる。
ただ、導電層が厚さの全てを占めていると、高価になるため表面の導電層と基材層を異なった樹脂で積層することが行われている(特許4131634)。しかしながら、導電層と基材層の樹脂の種類が異なると積層、成形後の剥離や成形条件のコントロールが非常に難しくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−91691号公報
【特許文献2】特許4131634
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、本願発明者らが、そのようなシート状物を接触式の加熱装置により200〜250℃付近の温度で加熱しようとしたところ、接触式の加熱装置の熱盤に取り付けられた離型フィルム(例えば、テフロン(登録商標)テープ等)の形状がシート状物に転写して外観不良が発生することが明らかとなった。この問題に対し、本願発明者らは、熱盤の設定温度を比較的低温に設定することを試みたが、それでは十分な成形精度が得られないことが判明した。また、中間層に導電層と異なった樹脂を積層すると積層、成形後の剥離および成形条件の調整が非常に困難であることが判明した。
【0005】
本発明の課題は、キャリアテープ等の物品収容体の製造に供される場合において、その成形温度を260〜280℃程度から200〜250℃程度まで引き下げることができると共に、離型フィルムを介して接触式の加熱装置により比較的高温で加熱される場合であっても、離型フィルムの形状転写による外観不良が生じにくい多層シートを提供することにある。
本発明の課題は、キャリアテープ等の物品収容体の製造に供される場合において、従来の導電層の樹脂が基材層と同一種類であるため、導電層単層だけの場合と同様に積層による剥離が起こりにくく、成形条件のコントロールが行いやすい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題は、以下に記載の本発明(1)から(11)により解決される。
(1)基材層と、
前記基材層の少なくとも片面に設けられる導電層と、
を有する多層シートであって、
基材層がポリカーボネート樹脂(A1)と非晶性ポリエステル樹脂(B1)を含有する第一樹脂組成物で構成され、
導電層がポリカーボネート樹脂(A2)と、非晶性ポリエステル樹脂(B2)と、ケイ酸塩化合物フィラーと導電性カーボンブラックを含有する第二樹脂組成物で構成されることを特徴とする多層シート。
(2)前記ケイ酸塩化合物フィラーの含有量は、前記ポリカーボネート樹脂(A2)および前記非晶性ポリエステル樹脂(B2)の合計重量を100重量部としたとき、1重量部以上3重量部以下である(1)に記載の多層シート。
(3)前記第二樹脂組成物における前記ポリカーボネート樹脂(A2)の含有量は、前記ポリカーボネート樹脂(A2)および前記非晶性ポリエステル樹脂(B2)の合計重量を100重量部としたとき、30重量部以上80重量部以下である(1)または(2)に記載の多層シート。
(4)前記第二樹脂組成物における前記非晶性ポリエステル樹脂(B2)は、テレフタル酸由来単位およびテレフタル酸誘導体由来単位からなる群より選択される少なくとも1種のジカルボン酸由来単位と、1,4−シクロヘキサンジメタノール由来単位を含有するグリコール由来単位とから構成される(1)から(3)のいずれかに記載の多層シート。
(5)前記第二樹脂組成物における前記非晶性ポリエステル樹脂(B2)は、テレフタル酸由来単位およびテレフタル酸誘導体由来単位からなる群より選択される少なくとも1種のジカルボン酸由来単位と、1,4−シクロヘキサンジメタノール由来単位を50モル%以上含有するグリコール由来単位とから構成される(1)から(4)のいずれかに記載の多層シート。
(6)前記導電性カーボンブラックの含有量は、前記ポリカーボネート樹脂(A2)および前記非晶性ポリエステル樹脂(B2)の合計重量を100重量部としたとき、5重量部以上20重量部以下である(1)から(5)のいずれかに記載の多層シート。
(7)前記第一樹脂組成物における前記ポリカーボネート樹脂(A1)および前記非晶性ポリエステル樹脂(B1)の合計重量を100重量部としたときの、ポリカーボネート樹脂(A1)の重量部をXとして、
前記第二樹脂組成物における前記ポリカーボネート樹脂(A2)および前記非晶性ポリエステル樹脂(B2)の合計重量を100重量部としたときの、ポリカーボネート樹脂(A2)の重量部をYとして、
−30≦Y−X≦30である(1)から(6)のいずれかに記載の多層シート。
(8)基材層と、
前記基材層の両面に設けられる導電層と、
を有する多層シートであって、
基材層がポリカーボネート樹脂(A1)と非晶性ポリエステル樹脂(B1)を含有する第一樹脂組成物で構成され、
導電層がポリカーボネート樹脂(A2)と、非晶性ポリエステル樹脂(B2)と、ケイ酸塩化合物フィラーと導電性カーボンブラックを含有する第二樹脂組成物で構成されることを特徴とする(1)から(7)のいずれかに記載の多層シート。
(9)前記導電層と基材層の厚さの体積比率で導電層が全体の5%以上40%以下である
(1)から(8)に記載の多層シート。
(10)前記(1)から(9)に記載の多層シートから構成される電子部品包装用キャリアテープ。
(11)前記(1)から(9)のいずれかに記載の多層シートに、離型フィルムを介して加熱媒体を接触させることにより前記多層シートを加熱する加熱工程と、
前記加熱工程において加熱された前記多層シートを所定の形状に成形する成形工程と、
を備える、多層シートの成形方法。
【0007】
(1)
本発明の一局面に係る多層シートは、基材層と、前記基材層の少なくとも片面に設けられる導電層と、を有する多層シートであって、基材層がポリカーボネート樹脂(A1)と非晶性ポリエステル樹脂(B1)を含有する第一樹脂組成物で構成され、導電層がポリカーボネート樹脂(A2)と、非晶性ポリエステル樹脂(B2)と、ケイ酸塩化合物フィラーと導電性カーボンブラックを含有する第二樹脂組成物で構成されることを特徴とする多層シートである。
【0008】
本願発明者の鋭意検討の結果、多層シートが上記の通りであると、多層シートがキャリアテープ等の物品収容体の製造に供される場合において、その成形温度を260〜280℃程度から200〜250℃程度まで引き下げることができると共に、多層シートが離型フィルムを介して接触式の加熱装置により比較的高温で加熱される場合であっても、多層シートに離型フィルムの形状転写が生じにくくすることができることが明らかとなった。
【0009】
このため、この多層シートは、キャリアテープ等の物品収容体の製造に供される場合において、その成形温度を260〜280℃程度から200〜250℃程度まで引き下げることができると共に、離型フィルムを介して接触式の加熱装置により比較的高温で加熱される場合であっても、離型フィルムの形状転写を生じにくくすることができる。
【0010】
(2)
本発明の一局面に係る多層シートにおいて、ケイ酸塩化合物フィラーは、ポリカーボネート樹脂および非晶性ポリエステル樹脂の合計重量を100重量部としたとき、1重量部以上3重量部以下添加されているのが好ましい。
【0011】
本願発明者の鋭意検討の結果、ケイ酸塩化合物フィラーの添加量が上記の通りであると、多層シートが離型フィルムを介して接触式の加熱装置により比較的高温で加熱される場合であっても、その多層シートに離型フィルムの形状転写が生じにくくすることができると共に、キャリアテープ等の物品収容体の外観が良好に保たれ、さらにキャリアテープ等の物品収容体の屈曲性が良好に保たれることが明らかとなった。
【0012】
このため、この多層シートは、離型フィルムを介して接触式の加熱装置により比較的高温で加熱される場合であっても、離型フィルムの形状転写が生じにくくすることができると共に、キャリアテープ等の物品収容体の外観を良好に保つことができ、さらにキャリアテープ等の物品収容体の屈曲性を良好に保つことができる。
【0013】
(3)
本発明の一局面に係る多層シートにおいて、第二樹脂組成物におけるポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネート樹脂および非晶性ポリエステル樹脂の合計重量を100重量部としたとき、30重量部以上80重量部以下添加されているのが好ましい。
【0014】
本願発明者の鋭意検討の結果、第二樹脂組成物におけるポリカーボネート樹脂の添加量が上記の通りであると、その多層シートから得られるキャリアテープ等の物品収容体は、必要物性を十分に満たすことが明らかとなった。
【0015】
このため、この多層シートは、キャリアテープ等の物品収容体の必要物性を十分に満たすことができる。
【0016】
(4)
本発明の一局面に係る多層シートにおいて、非晶性ポリエステル樹脂は、テレフタル酸由来単位およびテレフタル酸誘導体由来単位からなる群より選択される少なくとも1種のジカルボン酸由来単位と、1,4−シクロヘキサンジメタノール由来単位を含有するグリコール由来単位とから構成されるのが好ましい。
【0017】
本願発明者の鋭意検討の結果、非晶性ポリエステル樹脂が上記の通りであると、その多層シートから得られるキャリアテープ等の物品収容体が優れた物性を示すことが明らかとなった。
【0018】
このため、この多層シートは、キャリアテープ等の物品収容体に対して優れた物性を付与することができる。
【0019】
(5)
本発明の一局面に係る多層シートにおいて、非晶性ポリエステル樹脂は、テレフタル酸由来単位およびテレフタル酸誘導体由来単位からなる群より選択される少なくとも1種のジカルボン酸由来単位と、1,4−シクロヘキサンジメタノール由来単位を50モル%以上含有するグリコール由来単位とから構成されるのが好ましい。
【0020】
本願発明者の鋭意検討の結果、非晶性ポリエステル樹脂が上記の通りであると、その多層シートから得られるキャリアテープ等の物品収容体が優れた物性を示すことが明らかとなった。
【0021】
このため、この多層シートは、キャリアテープ等の物品収容体に対して優れた物性を付与することができる。
【0022】
(6)
本発明の一局面に係る多層シートにおいて、前記導電性カーボンブラックの含有量は、前記ポリカーボネート樹脂(A2)および前記非晶性ポリエステル樹脂(B2)の合計重量を100重量部としたとき、5重量部以上20重量部以下であるのが好ましい。
【0023】
本願発明者の鋭意検討の結果、導電性カーボンブラックが上記の通りであると、その多層シートから得られるキャリアテープ等の物品収容体が優れた物性を示すことが明らかとなった。
【0024】
このため、この多層シートは、キャリアテープ等の物品収容体に対して優れた物性を付与することができる。
【0025】
(7)
本発明の一局面に係る多層シートにおいて、前記第一樹脂組成物における前記ポリカーボネート樹脂(A1)および前記非晶性ポリエステル樹脂(B1)の合計重量を100重量部としたときの、ポリカーボネート樹脂(A1)の重量部をXとして、前記第二樹脂組成物における前記ポリカーボネート樹脂(A2)および前記非晶性ポリエステル樹脂(B2)の合計重量を100重量部としたときの、ポリカーボネート樹脂(A2)の重量部をYとして、−30≦Y−X≦30であるのが好ましい。
【0026】
本願発明者の鋭意検討の結果、第一樹脂層のポリカーボネート樹脂と第二樹脂層のポリカーボネート樹脂の重量部の差が上記の通りであると、その多層シートから得られる、キャリアテープ等の物品収容体に対して積層、成形での剥離が起こりにくく、成形条件の調整が容易で、優れた物性を示すことが明らかとなった。
【0027】
このため、この多層シートはキャリアテープ等の物品収容体に対して優れた成形性、物性を付与することができる。
【0028】
(8)
本発明の一局面に係る多層シートにおいて、前記導電層と基材層の厚さの体積比率で導電層が全体の5%以上、40%以下であるのが好ましい。
【0029】
本願発明者の鋭意検討の結果、導電層と基材層の厚さの比率が上記の通りであるとその多層シートから得られるキャリアテープ等の物品収容体に対して低エネルギーで優れた物性を示すことが明らかとなった。
【0030】
このため、この多層シートはキャリアテープ等の物品収容体に対して低エネルギーで優れた物性を付与することが出来る。
【0031】
(9)
本発明の他の局面に係る多層シートの成形方法は、加熱工程および成形工程を備える。加熱工程では、上述の多層シートに、離型フィルムを介して加熱媒体が接触されることにより多層シートが加熱される。成形工程では、加熱工程において加熱された多層シートが所定の形状に成形される。なお、多層シートがキャリアテープに成形される場合、成形工程では、多層シートに凹部が形成されることになる。
【0032】
上述の通り、この多層シートの成形方法では、多層シートの成形温度を260〜280℃程度から200〜250℃程度まで引き下げることができると共に、多層シートに対する離型フィルムの形状転写を生じにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態に係るキャリアテープ製造装置の模式的斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るキャリアテープ製造装置の模式的側面図である。
【図3】実施例1に係るキャリアテープの屈曲性評価時の曲げ応力付加箇所である角部分を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の実施の形態に係る多層シートは、キャリアテープ等の物品収容体の製造に用いられるものであって、導電層は主に、ポリカーボネート樹脂、非晶性ポリエステル樹脂、ケイ酸塩化合物フィラーおよび導電性カーボンブラックを含有する第二樹脂組成物で構成され、基材層にはポリカーボネート樹脂、非晶性ポリエステル樹脂を含有する第一樹脂組成物で構成されている(この多層シートの導電層は、ポリカーボネート樹脂と非晶性ポリエステル樹脂とのブレンド物にケイ酸塩化合物フィラーと導電性カーボンブラックが添加されたものから形成されているとも言える。)。
また、多層シートの表面固有抵抗値は10〜1012Ωであるのが好ましい。
【0035】
以下、多層シートを構成する各成分に詳述する。
<多層シートの構成成分>
【0036】
(1)ポリカーボネート樹脂
ポリカーボネート樹脂としては、例えば、芳香族ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリカーボネート樹脂、芳香族−脂肪族ポリカーボネート等が挙げられる。なお、本実施の形態では、芳香族ポリカーボネート樹脂が好適である。また、本実施の形態において、ポリカーボネート樹脂は、一種のポリカーボネート樹脂であってもよいし、複数種のポリカーボネート樹脂のブレンド物であってもよい。
芳香族ポリカーボネート樹脂は、芳香族ジヒドロキシ化合物より誘導される。
【0037】
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルフェニルエーテル等のジヒドロキシアリールエーテル類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルフェニルスルフィド等のジヒドロキシアリールスルフィド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルフェニルスルホキシド等のジヒドロキシアリールスルホキシド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルフェニルスルホン等のジヒドロキシアリールスルホン類などが挙げられる。
【0038】
なお、これらの芳香族ジヒドロキシ化合物の中でも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称、ビスフェノールA)が特に好ましい。これらの芳香族ジヒドロキシ化合物は、単独で使用されてもよいし、2種以上組み合わせて使用されてもよい。
【0039】
なお、芳香族ポリカーボネート樹脂は、公知の方法、例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体とを反応せしめる方法、例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体(例えばホスゲン)を水酸化ナトリウム水溶液及び塩化メチレン溶媒の存在下で反応させる界面重合法(例えばホスゲン法)や、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル(例えば、ジフェニルカーボネート)などを反応させるエステル交換法(溶融法)、ホスゲン法または溶融法で得られた結晶化カーボネートプレポリマーを固相重合する方法(特開平1−158033号公報、特開平1−271426号公報、特開平3−68627号公報)などの方法により製造することができる。
【0040】
なお、本実施の形態において、基材層を構成する第一樹脂組成物のポリカーボネート樹脂(A1)の添加量は、ポリカーボネート樹脂(A1)および非晶性ポリエステル樹脂(B1)の合計重量を100重量部としたとき、30重量部以上80重量部以下であるのが好ましく、40重量部以上70重量部以下であるのがさらに好ましい。
【0041】
また、本実施の形態において、導電層を構成する第二樹脂組成物のポリカーボネート樹脂(A2)の添加量は、ポリカーボネート樹脂(A2)および非晶性ポリエステル樹脂(B2)の合計重量を100重量部としたとき、30重量部以上80重量部以下であるのが好ましく、40重量部以上70重量部以下であるのがさらに好ましい。
【0042】
(2)非晶性ポリエステル樹脂
非晶性ポリエステル樹脂としては、例えば、テレフタル酸由来単位およびテレフタル酸誘導体由来単位からなる群より選択される少なくとも1種のジカルボン酸由来単位と、1,4−シクロヘキサンジメタノール由来単位を50モル%未満含有するグリコール由来単位とから構成される非晶性ポリエステル樹脂(PETG)や、テレフタル酸由来単位およびテレフタル酸誘導体由来単位からなる群より選択される少なくとも1種のジカルボン酸由来単位と、1,4−シクロヘキサンジメタノール由来単位を50モル%以上含有するグリコール由来単位とから構成される非晶性ポリエステル樹脂(PCTG)等が挙げられる。
【0043】
なお、上述の非晶性ポリエステル樹脂のジカルボン酸由来単位には、本発明の趣旨を損なわない範囲で、イソフタル酸由来単位、ナフタレンジカルボン酸由来単位、ジフェニルジカルボン酸由来単位、アジピン酸由来単位、セバシン酸由来単位、トリメシン酸由来単位、トリメリット酸由来単位などが含まれてもかまわない。
【0044】
また、上述の非晶性ポリエステル樹脂において1,4−シクロヘキサンジメタノール由来単位以外のグリコール由来単位としては、例えば、エチレングリコール由来単位、プロピレングリコール由来単位、テトラメチレングリコール由来単位、ヘキサメチレングリコール由来単位が挙げられる。
【0045】
なお、本実施の形態において、基材層を構成する第一樹脂組成物の非晶性ポリエステル樹脂(B1)の添加量は、ポリカーボネート樹脂(A1)および非晶性ポリエステル樹脂(B1)の合計重量を100重量部としたとき、20重量部以上90重量部以下であるのが好ましく、30重量部以上80重量部以下であるのがより好ましく、40重量部以上70重量部以下であるのがさらに好ましい。
【0046】
また、本実施の形態において、導電層を構成する第二樹脂組成物の非晶性ポリエステル樹脂(B2)の添加量は、ポリカーボネート樹脂(A2)および非晶性ポリエステル樹脂(B2)の合計重量を100重量部としたとき、20重量部以上90重量部以下であるのが好ましく、30重量部以上80重量部以下であるのがより好ましく、40重量部以上70重量部以下であるのがさらに好ましい。
【0047】
(3)ケイ酸塩化合物フィラー
ケイ酸塩化合物フィラーの具体例としては、例えば、タルク、マイカ、ワラストナイト、ゾノトライト、カオリンクレー、モンモリロナイト、ベントナイト、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ローソナイト、スメクタイト等が挙げられる。なお、ケイ酸塩化合物フィラーは、天然物であってもよいし、人工合成物であってもよいし、天然物と人工合成物との混合物であってもよい。また、上記ケイ酸塩化合物フィラーのうち、タルク、マイカが最も好ましい。また、上記ケイ酸塩化合物フィラーは、単独で使用されてもよいし、2種以上組み合わせて使用されてもよい。
【0048】
また、このケイ酸塩化合物フィラーとしては、任意の形状(板状、針状、粒状、繊維状等)のものが使用できるが、板状、針状のものが好ましく、板状のものがさらに好ましい。
【0049】
また、ケイ酸塩化合物フィラーの平均粒子径は、0.1〜500μmであるのが好ましく、0.5〜100μmであるのがより好ましく、1〜50μmであるのがさらに好ましく、2〜30μmであるのがさらに好ましく、3〜20μmであるのがさらに好ましい。
【0050】
また、本実施の形態において、ケイ酸塩化合物フィラーの添加量は、第二樹脂組成物のポリカーボネート樹脂(A2)および非晶性ポリエステル樹脂(B2)の合計重量を100重量部としたとき、1重量部以上3重量部以下であるのが好ましく、1.5重量部以上2.5重量部以下であるのがより好ましい。
【0051】
(4)導電性カーボンブラック
導電性カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等が挙げられる。なお、これらのカーボンブラックの中でも、比表面積が大きく、樹脂への添加量が少量で高度の導電性が得られるとの理由からケッチェンブラック、アセチレンブラックが好ましい。
【0052】
また、本実施の形態において、導電性カーボンブラックの添加量は、第二樹脂組成物のポリカーボネート樹脂(A2)および非晶性ポリエステル樹脂(B2)の合計重量を100重量部としたとき、3重量部以上40重量部以下であるのが好ましく、5重量部以上、20重量部以下であるのがさらに好ましい。
【0053】
(5)その他の成分
本実施の形態に係る多層シートには、必要に応じて上記以外の成分、例えば、難燃剤、滴下防止剤、染顔料、熱安定剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、滑剤、可塑剤、加工助剤、分散剤、離型剤、増粘剤、酸化防止剤、帯電防止剤、増量剤などが添加されてもかまわない。
【0054】
(6)導電層と基材層のポリカーボネート樹脂の重量部の差
本実施の形態に係る多層シートにおいて、前記第一樹脂組成物における前記ポリカーボネート樹脂(A1)および前記非晶性ポリエステル樹脂(B1)の合計重量を100重量部としたときの、ポリカーボネート樹脂(A1)の重量部をXとして、前記第二樹脂組成物における前記ポリカーボネート樹脂(A2)および前記非晶性ポリエステル樹脂(B2)の合計重量を100重量部としたときの、ポリカーボネート樹脂(A2)の重量部をYとして、−30≦Y−X≦30であるのが好ましく、−20≦Y−X≦20であるのがより好ましい。
【0055】
(7)導電層と基材層の厚さの体積比率
導電層と基材層の厚さ体積比率としては、導電層が全体の5%以上40%以下が好ましく10%以上30%以下がより好ましい。
【0056】
<多層シートの製造方法>
本発明の実施の形態に係る多層シートは、上述の成分全て又は一部を、バンバリーミキサー、タンブラー、リボンブレンダー、スーパーミキサー等の予備混合装置、重量式供給機、単軸押出機や二軸押出機、コニーダー等の溶融混練装置等を用いて混練、ペレット化した後、公知の方法、例えば、押出成形やカレンダー成形などを利用して製造することができる。
【0057】
<キャリアテープの製造方法>
本実施の形態において、キャリアテープは、上述の多層シートを接触式加熱装置により加熱して軟化させた後、真空成形、プレス成形、圧空成形、プラグアシスト成形等の公知の成形方法を利用して製造することができる。
【0058】
なお、キャリアテープ製造装置の一例を図1および図2には示した。このキャリアテープ製造装置100を説明すると以下の通りである。
【0059】
キャリアテープ製造装置100は、主に、接触式ヒータ装置120および成形装置110から構成される。なお、接触式ヒータ装置120は、成形装置110の多層シート送り方向Ds上流側に配設されている。
【0060】
本実施の形態において、接触式ヒータ装置120では、図1および図2に示されるように、多層シート送り方向Dsに沿って4つの熱盤装置121,122,123,124が略等間隔に配置されている。そして、熱盤装置121,122,123,124は、主に、可動熱盤121a,122a,123a,124aおよび固定熱盤121b,122b,123b,124bから構成されている。なお、可動熱盤121a,122a,123a,124aおよび固定熱盤121b,122b,123b,124bには、図2に示されるように、対向面に離型シートTfが貼着されている。そして、この接触式ヒータ装置120では、4つの可動熱盤121a,122a,123a,124aが所定時間間隔で同期して固定熱盤121b,122b,123b,124bに向かって移動し、多層シートSに接触することにより多層シートSを加熱して軟化させる。
【0061】
なお、本実施の形態において、多層シートSは、間欠的に、2つ分の熱盤装置121,122,123,124に相当する距離だけ、多層シート送り方向Dsに送られる。つまり、この接触式ヒータ装置120では、多層シートSは2度、熱盤装置121,122,123,124により加熱されることになる。
【0062】
成形装置110は、図1および図2に示されるように、主に、可動成形型111、固定成形型112および減圧装置113から構成されている。可動成形型111には突起部(図示せず)が設けられており、固定成形型112には可動成形型111の突起部に嵌め合う凹部(図示せず)が設けられている。減圧装置113は、固定成形型112の下部に設けられており、固定成形型112の凹部の壁に形成された開口を介して、凹部の内空間を減圧することができるようになっている。
【0063】
なお、本実施の形態において、可動成形型111は、可動熱盤121a,122a,123a,124aと同期して固定成形型112に向かって移動する。
【0064】
以下、実施例および比較例を示して、本発明をより詳細に説明する。
【実施例1】
【0065】
1.キャリアテープの作製
【0066】
(1)ペレットの作製
80重量部のポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製芳香族ポリカーボネートE−2000F)、20重量部の非晶性ポリエステル樹脂(PCTG)(SKケミカル株式会社製SKYGREEN J2003)、10重量部のカーボンブラック(ケッチェンブラックインターナショナル製ケッチェンブラックEC)および1重量部のタルク(林化成株式会社製タルカンパウダーPK−C)を、シリンダー径45mmの二軸押出機に投入して混練し、ペレットを作製した。
【0067】
(2)キャリアテープ原反の作製
導電層として上述のようにして得られたペレットと基材層としてポリカーボネート樹脂80重量部と非晶性ポリエステル樹脂20重量部の混合物を、それぞれシリンダー径50mmの一軸押出機に投入して混練しながら溶融させ、マルチマニホールドダイスにて積層し、その溶融物を冷却しながら引取機により引き取り、300μm厚の多層シートを作製した。その後、そのシートを所定幅に切断してキャリアテープ原反とした。
【0068】
(3)キャリアテープの作製
上述の図1および図2に示されるようなキャリアテープ製造装置に、上述のキャリアテープ原反を供給して、目的のキャリアテープを製造した。なお、本実施例では、キャリアテープ原反の成形温度範囲を評価するために、接触式ヒータ装置の熱盤の設定温度を200℃から250℃まで5℃刻みで逐次、変更した。
【0069】
2.成形温度範囲およびキャリアテープの評価
【0070】
(1)ヒーターマーク評価
上述のようにして得られたキャリアテープに離型シート(テフロン(登録商標)テープ)の形状(以下「ヒーターマーク」と称する)が転写されていないか否かを目視で確認したところ、キャリアテープにヒーターマークは確認されなかった(表1参照)。
【0071】
(2)成形形状評価
上述のようにして得られたキャリアテープの凹部(収容ポケット部)の形状が設計範囲内に収まっているか否かを確認したところ、キャリアテープの凹部の形状は設計範囲内に収まっていた(表1参照)。
【0072】
(3)成形温度範囲評価
上述の通り、本実施例では、接触式ヒータ装置の熱盤の設定温度を、200℃から250℃まで5℃刻みで逐次、変更してキャリアテープを製造した。そして、キャリアテープにヒーターマークが付かず、凹部(収容ポケット部)の角部の形状がR0.3mm以下となった設定温度範囲を成形温度範囲とした。
【0073】
なお、上述のようにして得られたキャリアテープの成形温度範囲は、240℃±5℃であった(表1参照)。
【0074】
(4)外観評価
上述のようにして得られたキャリアテープに許容レベル外の凹凸がないか否かを目視で確認したところ、キャリアテープに許容レベル外の凹凸は確認されなかった(表1参照)。
【0075】
(5)屈曲性評価
上述のようにして得られたキャリアテープCT(図3参照)の角部分CPに対して180°繰り返し曲げ試験を行い、繰り返し回数5回以上で破断したものと合格とし、繰り返し回数5回未満で破断したものを不合格とした。
【0076】
なお、本実施例に係るキャリアテープは、本評価に合格していた(表1参照)。
【実施例2】
【0077】
導電層のタルクの配合量を2重量部に代えた以外は、実施例1と同様にしてキャリアテープを作製し、成形温度範囲およびキャリアテープを評価した。なお、評価結果は以下の通りであった(表1参照)。
・ヒーターマーク :無
・成形形状 :設計範囲内
・成形温度範囲 :240℃±10℃
・外観 :凹凸無
・屈曲性 :合格
【実施例3】
【0078】
導電層のタルクの配合量を3重量部に代えた以外は、実施例1と同様にしてキャリアテープを作製し、成形温度範囲およびキャリアテープを評価した。なお、評価結果は以下の通りであった(表1参照)。
・ヒーターマーク :無
・成形形状 :設計範囲内
・成形温度範囲 :240℃±5℃
・外観 :凹凸無
・屈曲性 :合格
【実施例4】
【0079】
基材層および導電層のポリカーボネート樹脂の配合量を60重量部に代え、非晶性ポリエステル樹脂(PCTG)の配合量を40重量部に代え、導電層のタルクの配合量を2重量部に代えた以外は、実施例1と同様にしてキャリアテープを作製し、成形温度範囲およびキャリアテープを評価した。なお、評価結果は以下の通りであった(表1参照)。
・ヒーターマーク :無
・成形形状 :設計範囲内
・成形温度範囲 :230℃−10,+5℃
・外観 :凹凸無
・屈曲性 :合格
【実施例5】
【0080】
基材層および導電層のポリカーボネート樹脂の配合量を40重量部に代え、非晶性ポリエステル樹脂(PCTG)の配合量を60重量部に代え、導電層のタルクの配合量を2重量部に代えた以外は、実施例1と同様にしてキャリアテープを作製し、成形温度範囲およびキャリアテープを評価した。なお、評価結果は以下の通りであった(表1参照)。
・ヒーターマーク :無
・成形形状 :設計範囲内
・成形温度範囲 :220℃±5℃
・外観 :凹凸無
・屈曲性 :合格
【実施例6】
【0081】
基材層および導電層のポリカーボネート樹脂の配合量を30重量部に代え、非晶性ポリエステル樹脂(PCTG)の配合量を70重量部に代え、導電層のタルクの配合量を2重量部に代えた以外は、実施例1と同様にしてキャリアテープを作製し、成形温度範囲およびキャリアテープを評価した。なお、評価結果は以下の通りであった(表1参照)。
・ヒーターマーク :無
・成形形状 :設計範囲内
・成形温度範囲 :210℃±5℃
・外観 :凹凸無
・屈曲性 :合格
【実施例7】
【0082】
基材層および導電層のポリカーボネート樹脂の配合量を30重量部に代え、非晶性ポリエステル樹脂(PCTG)の配合量を70重量部に代えた以外は、実施例1と同様にしてキャリアテープを作製し、成形温度範囲およびキャリアテープを評価した。なお、評価結果は以下の通りであった(表1参照)。
・ヒーターマーク :無
・成形形状 :設計範囲内
・成形温度範囲 :210℃−0,+5℃
・外観 :凹凸無
・屈曲性 :合格
【実施例8】
【0083】
基材層および導電層のポリカーボネート樹脂の配合量を30重量部に代え、非晶性ポリエステル樹脂(PCTG)の配合量を70重量部に代え、導電層のタルクの配合量を3重量部に代えた以外は、実施例1と同様にしてキャリアテープを作製し、成形温度範囲およびキャリアテープを評価した。なお、評価結果は以下の通りであった(表1参照)。
ヒーターマーク :無
成形形状 :設計範囲内
成形温度範囲 :210℃±5℃
外観 :凹凸無
屈曲性 :合格
【実施例9】
【0084】
導電層のタルクの配合量を5重量部に代えた以外は、実施例1と同様にしてキャリアテープを作製し、成形温度範囲およびキャリアテープを評価した。なお、評価結果は以下の通りであった(表1参照)。
ヒーターマーク :無
成形形状 :設計範囲内
成形温度範囲 :240℃−5,+0℃
外観 :凹凸有
屈曲性 :不合格
【実施例10】
【0085】
基材層および導電層のポリカーボネート樹脂の配合量を90重量部に代え、非晶性ポリエステル樹脂(PCTG)の配合量を10重量部に代え、導電層のタルクの配合量を2重量部に代えた以外は、実施例1と同様にしてキャリアテープを作製し、成形温度範囲およびキャリアテープを評価した。なお、評価結果は以下の通りであった(表1参照)。
ヒーターマーク :無
成形形状 :設計範囲外
成形温度範囲 :無
外観 :凹凸無
屈曲性 :合格
【実施例11】
【0086】
基材層および導電層のポリカーボネート樹脂の配合量を20重量部に代え、非晶性ポリエステル樹脂(PCTG)の配合量を80重量部に代え、導電層のタルクの配合量を3重量部に代えた以外は、実施例1と同様にしてキャリアテープを作製し、成形温度範囲およびキャリアテープを評価した。なお、評価結果は以下の通りであった(表2参照)。
ヒーターマーク :無
成形形状 :設計範囲内
成形温度範囲 :無
外観 :凹凸有
屈曲性 :不合格
【実施例12】
【0087】
基材層および導電層の非晶性ポリエステル樹脂(PCTG)を非晶性ポリエステル樹脂(PETG)(SKケミカル株式会社製SKYGREEN K2012)に代え、導電層のタルクの配合量を2重量部に代えた以外は、実施例1と同様にしてキャリアテープを作製し、成形温度範囲およびキャリアテープを評価した。なお、評価結果は以下の通りであった(表2参照)。
ヒーターマーク :無
成形形状 :設計範囲内
成形温度範囲 :240℃−10,+5℃
外観 :凹凸無
屈曲性 :合格
【実施例13】
【0088】
基材層および導電層のポリカーボネート樹脂の配合量を60重量部に代え、非晶性ポリエステル樹脂(PCTG)を非晶性ポリエステル樹脂(PETG)(SKケミカル株式会社製SKYGREEN K2012)に代えると共に非晶性ポリエステル樹脂の配合量を40重量部に代え、導電層のタルクの配合量を2重量部に代えた以外は、実施例1と同様にしてキャリアテープを作製し、成形温度範囲およびキャリアテープを評価した。なお、評価結果は以下の通りであった(表2参照)。
ヒーターマーク :無
成形形状 :設計範囲内
成形温度範囲 :230℃±5℃
外観 :凹凸無
屈曲性 :合格
【実施例14】
【0089】
基材層および導電層のポリカーボネート樹脂の配合量を30重量部に代え、非晶性ポリエステル樹脂(PCTG)を非晶性ポリエステル樹脂(PETG)(SKケミカル株式会社製SKYGREEN K2012)に代えると共に非晶性ポリエステル樹脂の配合量を70重量部に代え、導電層のタルクの配合量を2重量部に代えた以外は、実施例1と同様にしてキャリアテープを作製し、成形温度範囲およびキャリアテープを評価した。なお、評価結果は以下の通りであった(表2参照)。
ヒーターマーク :無
成形形状 :設計範囲内
成形温度範囲 :220℃−5,+0℃
外観 :凹凸無
屈曲性 :合格
【実施例15】
【0090】
基材層のポリカーボネート樹脂の配合量を50重量部に代え、非晶性ポリエステル樹脂の配合量を50重量部に代え、導電層のタルクの配合量を2重量部に代えた以外は、実施例1と同様にしてキャリアテープを作製し、成形温度範囲およびキャリアテープを評価した。なお、評価結果は以下の通りであった(表2参照)。
ヒーターマーク :無
成形形状 :設計範囲内
成形温度範囲 :240℃±5℃
外観 :凹凸無
屈曲性 :合格
【実施例16】
【0091】
基材層のポリカーボネート樹脂の配合量を60重量部に代え、非晶性ポリエステル樹脂の配合量を40重量部に代え、導電層のポリカーボネート樹脂を30重量部に代え、非晶性ポリエステル樹脂の配合量を70重量部に代え、タルクの配合量を2重量部に代えた以外は、実施例1と同様にしてキャリアテープを作製し、成形温度範囲およびキャリアテープを評価した。なお、評価結果は以下の通りであった(表2参照)。
ヒーターマーク :無
成形形状 :設計範囲内
成形温度範囲 :240℃±5℃
外観 :凹凸無
屈曲性 :合格
【実施例17】
【0092】
導電層の比率を5%、基材層の比率を95%にした以外は実施例1と同様にしてキャリアテープを作製し、成形温度範囲およびキャリアテープを評価した。なお、評価結果は以下の通りであった(表2参照)。
ヒーターマーク :無
成形形状 :設計範囲内
成形温度範囲 :240℃±5℃
外観 :凹凸無
屈曲性 :合格
【実施例18】
【0093】
導電層の比率を40%、基材層の比率を60%にした以外は実施例1と同様にしてキャリアテープを作製し、成形温度範囲およびキャリアテープを評価した。なお、評価結果は以下の通りであった(表2参照)。
ヒーターマーク :無
成形形状 :設計範囲内
成形温度範囲 :220℃±5℃
外観 :凹凸無
屈曲性 :合格
【実施例19】
【0094】
導電層のポリカーボネート樹脂を60重量部に代え、非晶性ポリエステル樹脂を40重量部に代え、基材層のポリカーボネート樹脂を30重量部に代え、非晶性ポリエステル樹脂の70重量部に代えた以外は実施例1と同様にしてキャリアテープを作製し、成形温度範囲およびキャリアテープを評価した。なお、評価結果は以下の通りであった(表2参照)。
ヒーターマーク :無
成形形状 :設計範囲内
成形温度範囲 :220℃±5℃
外観 :凹凸無
屈曲性 :合格
(比較例1)
【0095】
タルクを配合しなかった以外は、実施例1と同様にしてキャリアテープを作製し、成形温度範囲およびキャリアテープを評価した。なお、評価結果は以下の通りであった(表3参照)。
ヒーターマーク :有
成形形状 :設計範囲内
成形温度範囲 :無
外観 :凹凸無
屈曲性 :合格
(比較例2)
【0096】
基材層および導電層のポリカーボネート樹脂の配合量を100重量部に代え、非晶性ポリエステル樹脂(PCTG)の配合量を0重量部に代え、タルクの配合量を2重量部に代えた以外は、実施例1と同様にしてキャリアテープを作製し、成形温度範囲およびキャリアテープを評価した。なお、評価結果は以下の通りであった(表3参照)。
ヒーターマーク :無
成形形状 :設計範囲外
成形温度範囲 :無
外観 :凹凸無
屈曲性 :合格
【0097】
【表1】

【0098】
【表2】

【0099】
【表3】

【符号の説明】
【0100】
100 キャリアテープ製造装置
110 真空成形装置
111 可動成形型
112 固定成形型
113 減圧装置
120 接触式ヒータ装置
121〜124 熱盤装置
121a〜124a 可動熱盤
121b〜124b 固定熱盤
Ds 多層シート送り方向
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明に係る多層シートは、キャリアテープ等の物品収容体の製造に供される場合において、その成形温度を260〜280℃程度から200〜250℃程度まで引き下げることができると共に、離型フィルムを介して接触式の加熱装置により比較的高温で加熱される場合であっても、離型フィルムの形状転写を生じにくくすることができるという特徴を有し、特に、キャリアテープや、インジェクショントレー、真空成形トレー、マガジン等の物品収容体の原反などとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、
前記基材層の少なくとも片面に設けられる導電層と、
を有する多層シートであって、
基材層がポリカーボネート樹脂(A1)と非晶性ポリエステル樹脂(B1)を含有する第一樹脂組成物で構成され、
導電層がポリカーボネート樹脂(A2)と、非晶性ポリエステル樹脂(B2)と、ケイ酸塩化合物フィラーと導電性カーボンブラックを含有する第二樹脂組成物で構成されることを特徴とする多層シート。
【請求項2】
前記ケイ酸塩化合物フィラーの含有量は、前記ポリカーボネート樹脂(A2)および前記非晶性ポリエステル樹脂(B2)の合計重量を100重量部としたとき、1重量部以上3重量部以下である請求項1に記載の多層シート。
【請求項3】
前記第二樹脂組成物における前記ポリカーボネート樹脂(A2)の含有量は、前記ポリカーボネート樹脂(A2)および前記非晶性ポリエステル樹脂(B2)の合計重量を100重量部としたとき、30重量部以上80重量部以下である請求項1または2に記載の多層シート。
【請求項4】
前記第二樹脂組成物における前記非晶性ポリエステル樹脂(B2)は、テレフタル酸由来単位およびテレフタル酸誘導体由来単位からなる群より選択される少なくとも1種のジカルボン酸由来単位と、1,4−シクロヘキサンジメタノール由来単位を含有するグリコール由来単位とから構成される請求項1から3のいずれかに記載の多層シート。
【請求項5】
前記第二樹脂組成物における前記非晶性ポリエステル樹脂(B2)は、テレフタル酸由来単位およびテレフタル酸誘導体由来単位からなる群より選択される少なくとも1種のジカルボン酸由来単位と、1,4−シクロヘキサンジメタノール由来単位を50モル%以上含有するグリコール由来単位とから構成される請求項1から3のいずれかに記載の多層シート。
【請求項6】
前記導電性カーボンブラックの含有量は、前記ポリカーボネート樹脂(A2)および前記非晶性ポリエステル樹脂(B2)の合計重量を100重量部としたとき、5重量部以上20重量部以下である請求項1から5のいずれかに記載の多層シート。
【請求項7】
前記第一樹脂組成物における前記ポリカーボネート樹脂(A1)および前記非晶性ポリエステル樹脂(B1)の合計重量を100重量部としたときの、ポリカーボネート樹脂(A1)の重量部をXとして、
前記第二樹脂組成物における前記ポリカーボネート樹脂(A2)および前記非晶性ポリエステル樹脂(B2)の合計重量を100重量部としたときの、ポリカーボネート樹脂(A2)の重量部をYとして、
−30≦Y−X≦30である請求項1から6のいずれかに記載の多層シート。
【請求項8】
基材層と、
前記基材層の両面に設けられる導電層と、
を有する多層シートであって、
基材層がポリカーボネート樹脂(A1)と非晶性ポリエステル樹脂(B1)を含有する第一樹脂組成物で構成され、
導電層がポリカーボネート樹脂(A2)と、非晶性ポリエステル樹脂(B2)と、ケイ酸塩化合物フィラーと導電性カーボンブラックを含有する第二樹脂組成物で構成されることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の多層シート。
【請求項9】
前記導電層と基材層の厚さの体積比率で導電層が全体の5%以上40%以下である
請求項1から8に記載の多層シート。
【請求項10】
前記1から9に記載の多層シートから構成される電子部品包装用キャリアテープ。
【請求項11】
請求項1から9のいずれかに記載の多層シートに、離型フィルムを介して加熱媒体を接触させることにより前記多層シートを加熱する加熱工程と、
前記加熱工程において加熱された前記多層シートを所定の形状に成形する成形工程と、
を備える、多層シートの成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−71318(P2013−71318A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212160(P2011−212160)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】