説明

多層シート材料およびその製造方法

本発明は、ポリマー材料でできた印刷層(21)と、少なくとも1つの圧縮性層(22、23)と、少なくとも1つの補強ベース層(24、25)とを有し、個々の層が互いに結合を形成する印刷用ブランケットの形態の多層シート材料(20)であって、印刷層(21)が、印刷層(21)の少なくとも1つの位置に局所的に結合し、前記局所的に結合した位置におけるインキの転写を完全に防止する追加のコーティング(27)を有し、追加のコーティング(27)が、少なくとも1種類の樹脂および/または少なくとも1種類の塗料および/または少なくとも1種類のポリマーで構成されることを特徴とする多層シート材料に関する。本発明はさらに、そのような多層シート材料(20)の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー材料でできた印刷層、少なくとも1つの圧縮性層、および少なくとも1つの補強層を有し、個々の層を合わせたものが接合複合材料を形成する印刷用ブランケットの形態の多層シート状構造に関する。本発明は、さらにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多層シート状構造、特に印刷用ブランケットは、特に以下の刊行物から従来技術において周知である:
D1:独国実用新案第200 07 227 U1号明細書
D2:独国特許第689 19 783 T2号明細書
D3:独国特許出願公開第10 2004 023 316 A1号明細書
D4:欧州特許出願公開第1 504 921 A2号明細書
D5:国際公開第91/11330 A1号パンフレット
【0003】
現在の印刷機は、印刷用インキを版胴から印刷原材料にシートまたはウェブに転写する。この転写は、たとえばオフセット印刷法においては、圧力を加える印刷用ブランケットによって行われ、印刷版からのインキは印刷用ブランケットによって、印刷される媒体上に塗布される。インキは、印刷版のインキを受容する領域によって、印刷用ブランケットに転写される。印刷版の含水領域ではインキの転写は起こらない。そのため印刷版は現在の印刷機中に固定される場合があるので、印刷版が固定される領域で湾曲させる必要が生じる。特にコーティングが設けられた印刷版の場合、湾曲によって表面コーティングが損傷し、これによって、影響を受けた領域中で、印刷版から印刷用ブランケットへの意図せぬインキの転写が生じる。亀裂が形成されることによる最終的な結果として、インキマークが印刷原材料上に現れる。さらに、印刷層上にインキの蓄積が起こり、これによって印刷層、あるいは印刷用ブランケット全体および/または印刷版全体に不可逆的な損傷が生じうる。この影響は、コーティングが印刷層全体、すなわち全面を覆う水なしオフセット印刷において特に重大となる。この場合、コーティングに損傷が生じ、損傷は絶えず増加して広がり、それによってプリントアウトに大きな問題が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって本発明の目的の1つは、特に印刷用ブランケットが固定され、激しい機械的応力にさらされる印刷層の位置における亀裂に対して良好な抵抗性を有し、それゆえ前記位置における望ましくないさらなるインキ転写が回避されることを特徴とする、印刷用ブランケット形態の多層シート状構造を提供することである。印刷用ブランケットの形態の本発明の多層シート状構造は、印刷版に損傷が生じた位置において、印刷版から印刷用ブランケットへのインキの転写が起こらないことが保証され、したがって前述の問題が解決されることも意図している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的は、ポリマー材料でできた印刷層と、少なくとも1つの圧縮性層と、少なくとも1つの補強層とを有し、個々の層を合わせたものが接合複合材料を形成する、印刷用ブランケットの形態の多層シート状構造であって、印刷層には、局所的に限定された方法で、印刷層の少なくとも1つの位置において、前記局所的に限定された位置におけるインキの転写を完全に防止する追加のコーティングが提供され、追加のコーティングが、少なくとも1種類の樹脂および/または少なくとも1種類のラッカーおよび/または少なくとも1種類のポリマーで構成されることを特徴とする、多層シート状構造によって達成される。
【0006】
驚くべきことに、印刷用ブランケットの形態の多層シート状構造上のこの種の追加のコーティングによって、激しい機械的応力にさらされる位置における亀裂を防止またはその程度を顕著に軽減することができ、そのため望ましくないインキの転写を防止できることが分かった。印刷版の損傷した位置における印刷版から印刷用ブランケットへのインキの転写も同様に防止される。したがって印刷版から印刷用ブランケットへのインキの転写が起こらず、これは、印刷用ブランケットから印刷される媒体へのインキの転写も起こらないことを意味する。
【0007】
印刷用ブランケットの印刷層の表面上の追加のコーティングは、局所的に限定されたコーティングであり、前記表面を完全に覆うことはないことが本発明にとって重要であり、そうでなければインキが全く転写されず、本発明の目的は果たされない。
【0008】
本発明は、機械的応力が全くまたはごくわずかしか生じない位置などの位置におけるインキの転写を回避することに関する顧客の希望に応じるために使用することもできる。この場合、印刷用ブランケット上の追加の局所的に限定されたコーティングによって、印刷版の使用を省き、印刷媒体全体へのインキ転写を制御することも可能である。
【0009】
本発明の多層シート状構造は、好都合にはオフセット印刷法において、好ましくは水なしオフセット印刷法において使用される。
【0010】
追加の局所的に限定されたコーティングは、少なくとも1種類の樹脂、あるいはたとえばポリウレタン類および/またはポリイソシアネート類を主成分とする少なくとも1種類のラッカー、あるいは少なくとも1種類のポリマーで構成される。上記の材料の組み合わせの使用も考えられる。
【0011】
追加の局所的に限定されたコーティングは、好都合には少なくとも1種類のポリマーで構成される。シリコーンポリマーおよび/またはフルオロポリマーをブレンドせずに、またはブレンド中に使用すると好都合であることが分かった。
【0012】
使用されるシリコーンポリマーは、個別に、または組み合わせで、すなわち少なくとも2成分系で、当業者に周知のあらゆるシリコーンポリマー、たとえばMQ(メチルシリコーンゴム)MFQ(フルオロ基を有するメチルシリコーンゴム、FMQとも呼ばれる)、MPQ(フェニル基を有するメチルシリコーンゴム、PMQとも呼ばれる)、MVQ(ビニル基を有するメチルシリコーンゴム、VMQとも呼ばれる)、MPVQ(フェニル基およびビニル基を有するメチルシリコーンゴム、PVMQとも呼ばれる)、およびニトリルシリコーンゴム、またはフルオロシリコーンを含むことができる。
【0013】
使用されるフルオロポリマーは、個別に、または組み合わせで、当業者に周知のあらゆるフルオロポリマー、たとえばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、変性ポリテトラフルオロエチレン(TFM)、フルオロエチレンポリマー(FEP)、過フッ素化アルキルビニルエーテル−テトラエチレンコポリマー(PFA)、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、または超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を含むことができ、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)または変性ポリテトラフルオロエチレン(TFM)が特に好ましい。
【0014】
シリコーンポリマーとフルオロポリマーとを併用することも可能である。
【0015】
しかし、追加の局所的に限定されたコーティングは、ポリ塩化ビニル(PVC)、合成または天然のポリイソプレン、あるいはポリウレタン類(PU)を主成分とするポリマーコーティングを含むこともできる。
【0016】
追加の局所的に限定されたコーティングは、直接下に位置する印刷層中まで浸透すると好都合であり、浸透する深さは、好ましくは印刷層の厚さの最大1/5、特に好ましくは最大1/10である。
【0017】
使用される補強層は、織物構造、たとえば織布、あるいはポリマー箔(たとえばポリアミド箔)または金属箔などの箔を含むことができる。多くの層および少なくとも2つの補強層を有するシート状構造の場合、織物構造と、箔または箔複合材料との組み合わせを使用することも可能である。特許明細書の欧州特許第0 844 100 B1号明細書には、3つの織物層および1つの箔層(ポリマー箔または金属箔)を有する6層シート状構造が記載されている。
【0018】
少なくとも1つの補強層が、少なくとも1種類の金属または少なくとも1種類の金属−プラスチック複合材料で構成される場合に好都合となることが特に明らかであり、使用される別の用語は、金属積層体または金属系積層体である。これは特に、2つ以上の補強副層を有する多層シート状構造に適用される。
【0019】
1つのみの補強副層が存在する場合、これは、好都合には少なくとも1種類の金属または1つの金属−プラスチック複合材料で構成され、使用される別の用語は金属積層体または金属系積層体である。
【0020】
当業者によってこれに対して頻繁におよび非常に一般的に使用される別の用語は、金属系であり、たとえば金属系印刷用ブランケットまたはメタルバックブランケット(MBB)の表現が存在する。
【0021】
一番下の補強層が常に金属系であることが好ましい。
【0022】
使用される金属は、あらゆる周知の金属およびそれらの合金、あるいは少なくとも1種類の金属を主成分とする複合材料を含むこともできる。しかし、鉄または鋼、特に高規格鋼、アルミニウム、またはアルミニウムと他の元素との組み合わせの使用が好都合である。
【0023】
金属系多層シート状構造として知られているものが本発明において使用される場合、さらなる利点として、追加の局所的に限定されたコーティングが、突出部分を有する金属系補強層と別の層との間の変わり目の位置に塗布されると、改善された耐摩耗性が保証される。これは、この場合の追加の局所的に限定されたコーティングの位置が:一部は印刷層上に存在し、一部は別の層の縁に存在し、一部は金属系補強層の突出部分の表面上に存在することを意味する。
【0024】
変わり目のこれらの位置は、一般に、印刷用ブランケットが版胴中に直接固定される位置である。印刷用ブランケットの亀裂、または印刷版の亀裂単独だけでなく、ある程度は印刷用ブランケットの印刷層、および場合によりりその下に位置する層の機械的摩耗によって、ここに望ましくないインキ転写が生じる。したがって、この臨界領域中の印刷用ブランケットの局所的に限定されたコーティングは、印刷用ブランケットの運転性能を改善することができる。
【0025】
ほとんどの場合、印刷機は、自動印圧制御(application−pressure−controlled)洗浄装置を有し、したがって、追加の局所的に限定されたコーティングによって、印刷ブランケット胴の残留固定チャネルがより容易に洗浄でき、これによって印刷用ブランケット上のゴム端部に関連する動的力が低下するという点で、コーティングによって洗浄性能を改善することができる。
【0026】
さらに、印刷層のポリマー材料が加硫物であると好都合であることが分かった。
【0027】
加硫物は、加硫可能なポリマー混合物の加硫によって生成する生成物または生成物成分(この場合は印刷層)を表す用語である。ここでポリマー混合物は、1種類以上のゴム成分を含む。加硫物は弾性特性を特徴とする。架橋プロセスに使用される材料は、使用されるゴムの種類に依存し、硫黄(たとえばNRの場合)または過酸化物類(たとえばEPDMの場合)であってよい。130〜200℃の温度における熱加硫が特に重量である。冷加硫または放射線加硫を使用することも可能である。
【0028】
加硫物に関して、以下の2つの変形が特に使用される。
【0029】
変形A
加硫物は、少なくとも1種類のゴム成分を含み、混合成分も含む、熱可塑性ではない加硫ゴム混合物である。特に挙げることができるゴム成分は、これらに限定されるものではないが:
エチレン−プロピレンゴム(EPM)
エチレン−プロピレンジエンゴム(EPDM)
ニトリルゴム(NBR)
(部分)水素化ニトリルゴム(HNBR)
フルオロゴム(FKM)
クロロプレンゴム(CR)
天然ゴム(NR)
スチレン−ブタジエンゴム(SBR)
イソプレンゴム(IR)
ブチルゴム(IIR)
ブロモブチルゴム(BIIR)
クロロブチルゴム(CIIR)
ブタジエンゴム(BR)
塩素化ポリエチレン(CM)
クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)
ポリエピクロロヒドリン(ECO)
エチレン−酢酸ビニルゴム(EVA)
アクリレートゴム(ACM)
エチレン−アクリレートゴム(AEM)
である。
【0030】
上記種類のゴムはブレンドせずに使用することができる。ブレンド、特に上述の種類の1種類のゴムと組み合わせられるブレンド、たとえばNR/BRブレンドまたはBR/SBRブレンドを使用することも可能である。
【0031】
以下のものが特に重要である:EPM、EPDM、SBR、BR、CR、NR、HNBR、およびNBR。通常の混合成分は、少なくとも1種類の架橋剤または1種類の架橋剤系(架橋剤および促進剤)を含む。他の混合成分は、大部分がフィラーおよび/または加工助剤および/または可塑剤および/または酸化防止剤でもあり、場合により他の添加剤(たとえばインキ顔料)でもある。これに関連して、ゴム混合物技術における一般的な従来技術が参照される。
【0032】
変形B
加硫物は、少なくとも1種類の熱可塑性成分と、少なくとも部分的に架橋した少なくとも1種類のゴム成分と、さらに混合成分とを含む熱可塑性加硫物である。
【0033】
好ましい熱可塑性成分は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、ポリアミド(PA)、およびポリエステル(PES)である。
【0034】
特に挙げることができるゴム成分は、EPM、EPDM、SBR、BR、CR、NR、HNBR、およびNBRであり、特にブレンドは行われない。
【0035】
混合成分に関しては、前述の混合技術、特に独国特許出願公開第100 04 632 A1号明細書が参照される。
【0036】
本発明においては変形Aが特に好都合であることが分かった。
【0037】
本発明の別の目的の1つは、印刷用ブランケットの形態の多層シート状構造を製造することができる方法であって、固定プロセスの結果生じかつ激しい機械的応力にさらされる印刷層の位置における亀裂に対して良好な抵抗性を有する印刷用ブランケットが得られ、前記位置におけるさらなる望ましくないインキの転写が回避される方法を提供することである。この方法は、さらに、印刷版が損傷した位置における印刷版から印刷用ブランケットへのインキの転写が防止される、印刷用ブランケットの形態の多層シート状構造を提供することを意図している。
【0038】
この目的は、ポリマー材料でできた印刷層と、少なくとも1つの圧縮性層と、少なくとも1つの補強層とを有し、個々の層を合わせたものが接合複合材料を形成する、印刷用ブランケットの形態の多層シート状構造の製造方法によって達成され、この方法は、局所的に限定された追加のコーティングを、多層シート状構造の印刷層に塗布し、次に局所的に限定された追加のコーティングを乾燥させることを特徴とする。
【0039】
本発明の方法の目的のために塗布される追加の局所的に限定されたコーティングは、少なくとも1種類のシリコーンポリマーおよび/または少なくとも1種類のフルオロポリマーでできたコーティングを含むことが好ましい。追加の局所的に限定されたコーティングは、その下に直接配置される印刷層中まで浸透する。追加の局所的に限定されたコーティングの他の材料およびその浸透の深さに関しては、本明細書の前述の説明が参照される。多層シート状構造のさらなる構造、および個々の層の材料に関しては、同様にすでに前述した説明が参照される。
【0040】
本発明の方法の目的では、多層シート状構造の少なくとも1つの補強層が金属または金属−プラスチック複合材料である、すなわちすでに前述したような金属系印刷用ブランケットを含むことが好都合なことが明らかである。
【0041】
追加の局所的に限定された層を、塗り広げまたは吹き付けによって取り付けることが好都合である。考えられるあらゆる補助をこの目的に使用することができ、例は、ブラシ、ドクター、プラズマなどである。
【0042】
乾燥は、好ましくは、乾燥が完了するまで室温で空気中で行われ、その乾燥時間は、当然ながら、追加の局所的に限定されたコーティングの構成に依存する。
【0043】
しかし、たとえば、乾燥オーブンおよびオートクレーブを使用することも可能である。
【0044】
印刷層が加硫可能なポリマー材料で構成される場合、この材料は、追加の局所的に限定されたコーティングを塗布する前に、完全またはある程度加硫させておくと好都合であることが分かった。
【0045】
これより図面を参照しながら、本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】加硫物でできた印刷層、および印刷層上に塗布された追加の局所的に限定されたコーティング、および突出部分を有する一番下の補強層を有する5層シート状構造の断面を示す。
【図2】加硫物でできた印刷層、および印刷層上に塗布された追加の局所的に限定されたコーティングを有する3層シート状構造の断面を示す。
【図3】加硫物でできた印刷層、およびよび印刷層上に塗布された追加の局所的に限定されたコーティングを有する5層シート状構造の断面を示す。
【図4】加硫物でできた印刷層、および突出部分を有する下部補強層、および印刷層上と、印刷層と一番下の補強層との間の変わり目の領域上とのそれぞれに塗布された追加の局所的に限定されたコーティングを有する5層シート状構造の断面を示す。
【図5】印刷用ブランケットおよび印刷版によるインキ転写の図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1は、以下の順序で層を有する5層シート状構造1を示している:
− たとえば加硫物でできている印刷層2;
− たとえばゴム混合物の発泡材料の形態である第1の圧縮性層3;
− たとえば織布でできている第1の補強層5;
− たとえばこの場合はゴム混合物中のプラスチックマイクロビーズの形態である第2の圧縮性層4;
− たとえば金属または金属−プラスチック複合材料でできている第2の補強層6。
【0048】
第2の、そして同時に一番下にある補強層6は、シート状構造が印刷ロール上に固定される場合に好都合となる突出部分を有する。追加の局所的に限定されたコーティング19が存在し、これは印刷層14上に直接配置され、たとえば二成分シリコーンゴムでできている。
【0049】
図2は、たとえばEPDMを主成分とする加硫物などでできた印刷層9を有する印刷用ブランケットの形態の3層シート状構造8を示しており、印刷層は圧縮性層10の上に直接配置されている。次に、前記圧縮性層は、織布または金属などでできた補強層11と直接接触している。追加の局所的に限定されたコーティング12が存在し、これは印刷層9上に直接配置され、たとえばポリマーでできている。
【0050】
図3は、以下の順序で層を有する5層シート状構造13を示している:
− たとえば加硫物でできている印刷層14;
− たとえばゴム混合物中のプラスチックマイクロビーズの形態である第1の圧縮性層15;
− たとえば織布でできている第1の補強層17;
− たとえばゴム混合物の発泡材料の形態である第2の圧縮性層16;
− たとえばこの場合は織布または金属または金属−プラスチック複合材料でできている第2の補強層18。
【0051】
図3のシート状構造の場合、たとえば第1の補強層が織布で構成され、第2の補強層が箔、たとえばポリマー箔(たとえばポリアミド箔)、または金属箔、または箔複合材料、たとえばポリアミド−ポリエステル箔複合材料の形態で構成されるという点で、異なる補強層を使用可能である。
【0052】
追加の局所的に限定されたコーティング19が存在し、これは印刷層14の上に直接配置され、たとえば二成分シリコーンゴムでできている。
【0053】
図4は、以下の順序で層を有する5層シート状構造20を示している:
− たとえば加硫物でできている印刷層21;
− 第1の圧縮性層22;
− たとえば織布でできている第1の補強層24;
− たとえばゴム混合物中のプラスチックマイクロビーズ、または発泡プラスチック箔の形態である第2の圧縮性層23;
− たとえば金属または金属−プラスチック複合材料でできている第2の補強層25。
【0054】
第2の、そして同時に一番下にある補強層6は、シート状構造が印刷ロール上に固定される場合に好都合となる突出部分を有する。一番下の補強層6は、さらに、版胴の腐食防止として機能する保護箔26を有する。保護箔26が一番下の補強層の下側、すなわちシート状構造の他の層が接触していない側を覆う程度は、完全である場合も、部分的である場合もある。
【0055】
追加の局所的に限定されたコーティング19が存在し、これは印刷層14上に直接配置され、たとえばTeflonでできている。印刷層21と一番下の補強層26との間の変わり目の領域上には、同じまたは異なる材料でできたもう1つの追加の局所的に限定されたコーティング19が存在する。図4中に示されるような、印刷層21中および/または保護箔26中のさらなる切り欠きまたは窪みは、この位置における圧力が解消または低下され、本発明の好ましい効果が促進されるので好都合である。切り欠きおよび/または切り込みは、機械的方法、たとえばスクライビング、切削、または加圧によって、あるいは化学的方法、たとえばエッチング、あるいは放射線照射によって得ることができる。図4、切り欠きおよび/または切り込みが記載されているので、追加の局所的に限定されたコーティング19の一部は、ある程度で印刷層21と直接接触していない。しかし、たとえば圧力によって、切り欠きおよび/または切り込みは、印刷層21の厚さを単に減少させるだけとなる場合もある。この場合、追加の局所的に限定されたコーティング19は、再び前記位置において印刷層21と完全に接触する。
【0056】
図5は、印刷版28および印刷用ブランケット29によるインキ転写の図である。印刷版28および印刷用ブランケット29は、それぞれ版胴30、31の上に使用されている。印刷版によって、インキが印刷用ブランケットに塗布され、次にそのインキが、印刷される媒体32上に渡される。ここでの意図は、印刷版と印刷用ブランケットとの間の差を再び明確にすることである。
【0057】
重要語
(説明の一部)
1 多層シート状構造(印刷用ブランケット)
2 印刷層
3 第1の圧縮性層
4 第2の圧縮性層
5 第1の補強層
6 第2の補強層(金属)
7 局所的に限定されたコーティング
8 多層シート状構造(印刷用ブランケット)
9 印刷層
10 圧縮性層
11 補強層
12 局所的に限定されたコーティング
13 多層シート状構造(印刷用ブランケット)
14 印刷層
15 第1の圧縮性層
16 第2の圧縮性層
17 第1の補強層
18 第2の補強層
19 局所的に限定されたコーティング
20 多層シート状構造(印刷用ブランケット)
21 印刷層
22 第1の圧縮性層
23 第2の圧縮性層
24 第1の補強層
25 第2の補強層(金属)
26 第2の補強層の保護箔
27 局所的に限定されたコーティング
28 印刷版
29 印刷用ブランケット
30 印刷用ブランケットの版胴
31 印刷版の版胴
32 印刷される媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
− ポリマー材料でできた印刷層(2、9、14、21)と、
− 少なくとも1つの圧縮性層(3、4、10、15、16、22、23)と、
− 少なくとも1つの補強層(5、6、11、17、18、24、25)と
を有し、
前記個々の層を合わせたものが接合複合材料を形成する、印刷用ブランケットの形態の多層シート状構造(1、8、13、20、29)であって、
前記印刷層(2、9、14、21)には、局所的に限定された方法で、前記印刷層(2、9、14、21)の少なくとも1つの位置において、前記局所的に限定された位置におけるインキの転写を完全に防止する追加のコーティング(7、12、19、27)が提供され、前記追加のコーティング(7、12、19、27)が、少なくとも1種類の樹脂および/または少なくとも1種類のラッカーおよび/または少なくとも1種類のポリマーで構成される
ことを特徴とする、多層シート状構造。
【請求項2】
オフセット印刷に使用されることを特徴とする、請求項1に記載の多層シート状構造。
【請求項3】
前記局所的に限定された追加のコーティング(7、12、19、27)が少なくとも1種類のポリマーで構成されることを特徴とする、請求項1または2に記載の多層シート状構造。
【請求項4】
前記局所的に限定された追加のコーティング(7、12、19、27)が少なくとも1種類のシリコーンポリマーおよび/または少なくとも1種類のフルオロポリマーで構成されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の多層シート状構造。
【請求項5】
1つの補強層(11)が存在する場合、前記補強層が少なくとも1種類の金属または1種類の金属−プラスチック複合材料で構成されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の多層シート状構造。
【請求項6】
複数の補強層(5、6、17、18、24、25)が存在する場合、少なくとも1つの補強層(6、25)が少なくとも1種類の金属または1種類の金属−プラスチック複合材料で構成されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の多層シート状構造。
【請求項7】
少なくとも一番下の補強層(6、25)が、金属または金属−プラスチック複合材料で構成されることを特徴とする、請求項6に記載の多層シート状構造。
【請求項8】
前記補強層(6、25)の前記金属が、鉄、あるいは高規格またはその他の鋼、あるいはアルミニウムまたはアルミニウムと他の元素との組み合わせであることを特徴とする、請求項5〜7のいずれか1項に記載の多層シート状構造。
【請求項9】
前記印刷層(2、9、14、21)の前記ポリマー材料が加硫物であることを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の多層シート状構造。
【請求項10】
前記加硫物が、少なくとも1種類のゴム成分を含み、混合成分も含む、熱可塑性ではない加硫ゴム混合物であることを特徴とする、請求項9に記載の多層シート状構造。
【請求項11】
前記ゴム成分が、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ニトリルゴム(NBR)、(部分)水素化ニトリルゴム(HNBR)、クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム(NR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、ブロモブチルゴム(BIIR)、クロロブチルゴム(CIIR)、ブタジエンゴム(BR)、塩素化ポリエチレン(CM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、ポリエピクロロヒドリン(ECO)、エチレン−酢酸ビニルゴム(EVA)、アクリレートゴム(ACM)、またはエチレン−アクリレートゴム(AEM)であり、前記種類のゴムが、ブレンドせずに、またはブレンド中で使用されることを特徴とする、請求項10に記載の多層シート状構造。
【請求項12】
前記ゴム成分がEPM、EPDM、SBR、BR、CR、NR、HNBR、またはNBRであることを特徴とする、請求項11に記載の多層シート状構造。
【請求項13】
前記加硫物が、少なくとも1種類の熱可塑性成分と、少なくとも部分的に架橋している少なくとも1種類のゴム成分と、さらに混合成分とを含む熱可塑性加硫物であることを特徴とする、請求項9に記載の多層シート状構造。
【請求項14】
前記熱可塑性成分がポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリアミド(PA)、またはポリエステル(PES)であることを特徴とする、請求項13に記載の多層シート状構造。
【請求項15】
前記ゴム成分がEPM、EPDM、SBR、BR、CR、NR、HNBR、またはNBRであることを特徴とする、請求項13または14に記載の多層シート状構造。
【請求項16】
前記局所的に限定された追加のコーティング(7、12、19、27)が前記印刷層(2、9、14、21)中まで浸透することを特徴とする、請求項1〜15のいずれか1項に記載の多層シート状構造。
【請求項17】
前記局所的に限定された追加のコーティング(7、12、19、27)が前記印刷層(2、9、14、21)中に浸透する深さが、前記印刷層(2、9、14、21)の厚さの最大1/5であることを特徴とする、請求項16に記載の多層シート状構造。
【請求項18】
前記局所的に限定された追加のコーティング(7、12、19、27)が前記印刷層(2、9、14、21)中に浸透する深さが、前記印刷層(2、9、14、21)の厚さの最大1/10であることを特徴とする、請求項17に記載の多層シート状構造。
【請求項19】
ポリマー材料でできた印刷層(2、9、14、21)と、少なくとも1つの圧縮性層(3、4、10、15、16、22、23)と、少なくとも1つの補強層(5、6、11、17、18、24、25)とを有し、前記個々の層を合わせたものが接合複合材料を形成する印刷用ブランケットの形態の多層シート状構造(1、8、13、20、29)の製造方法であって、
局所的に限定された追加のコーティング(7、12、19、27)が多層シート状構造(1、8、13、20、29)の前記印刷層(2、9、14、21)に塗布し、次に前記局所的に限定された追加のコーティング(7、12、19、27)を乾燥させることを特徴とする方法。
【請求項20】
前記局所的に限定された追加のコーティング(7、12、19、27)が、少なくとも1種類のシリコーンポリマーおよび/または少なくとも1種類のフルオロポリマーで構成されることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記局所的に限定された追加のコーティング(7、12、19、27)が前記印刷層(2、9、14、21)中まで浸透することを特徴とする、請求項18または20に記載の方法。
【請求項22】
前記局所的に限定された追加のコーティング(7、12、19、27)が、塗り広げまたは吹き付けによって塗布されることを特徴とする、請求項19〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記局所的に限定された追加のコーティング(7、12、19、27)の前記乾燥が、室温において空気中で行われることを特徴とする、請求項19〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
加硫可能なポリマー材料でできた印刷層(2、9、14、21)が使用される場合、前記加硫可能なポリマー材料が、前記局所的に限定されたコーティング(7、12、19、27)を塗布する前に、完全にまたはある程度まで加硫していることを特徴とする、請求項19〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記多層シート状構造(1、8、13、20)のの前記少なくとも1つの補強層(5、6、11、17、18、24、25)が、金属または金属−プラスチック複合材料であることを特徴とする、請求項19〜24のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−503755(P2013−503755A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−526008(P2012−526008)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/062020
【国際公開番号】WO2011/026731
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(501158848)コンテイテヒ・エラストマー−ベシヒトウンゲン・ゲゼルシヤフト・ミト・ベシユレンクテル・ハフツング (4)
【Fターム(参考)】