説明

多層フィルムおよび包装袋

【課題】耐熱性および耐衝撃性を有し、高速製袋・充填適性に優れた多層フィルム、およびこの多層フィルムからなる易開封性包装袋を提供すること。
【解決手段】多層フィルムは、プロピレン単位のメソペンタッド分率が94〜99mol%であるポリプロピレン系樹脂および水添ビニル芳香族ジエン系共重合体からなる外層と、ポリプロピレン系樹脂および造核剤からなる中間層と、ポリエチレン系樹脂からなるシール層と、を含んで構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層フィルム、およびこの多層フィルムからなる包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリプロピレン系樹脂フィルムは、耐熱性、耐薬品性、光学的性質、機械的強度、ヒートシール強度、および包装適性などにすぐれていることから、各種食品、繊維、衣料、雑貨などの包装に幅広く利用されている。しかし、ポリプロピレン系樹脂フィルムは、単層フィルムとして、これらの特性を満足することは困難である。このため、多層構造にすることにより、それぞれの目的に適したフィルム特性を得ることが数多く提案されている。
例えば、外層にポリプロピレン系樹脂と水添ビニル芳香族ジエン共重合体との混合樹脂を用い、ヒートシール層にランダムポリプロピレン樹脂を用いた3層フィルムの例や(特許文献1参照)、中間層にポリプロピレン系樹脂を用い、両外層にポリオレフィンとスチレン系熱可塑性エラストマーからなる混合樹脂を用いた3層フィルムの例(特許文献2参照)が提案されている。このような多層構造のフィルムとすることで、耐衝撃性、ヒートシール性、および包装機械適性等の諸物性を両立させようとしている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−88254号公報
【特許文献2】特開平7−68722号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2に記載の多層フィルムは、ラミネートフィルム用の包装機(例えばOPP//CPP用包装機)や高速充填包装機といった、高温での充填シールを行う包装機を用いた場合に問題が生じやすい。すなわち、加熱シールバーの温度を上げ、高速包装を行おうとすると、加熱シールバーが直接触れる外層の耐熱性が不十分なため、シール部の収縮、白化さらには破れといった外観不良が発生するおそれがある。また、ポリプロピレン系樹脂からなるフィルムはヒートシール強度には優れるものの、包装袋を構成した場合に、ユーザが手で開封しにくいという問題もあった。
そこで、本発明の目的は、十分な耐熱性および耐衝撃性を有し、高速製袋・充填適性に優れた多層フィルムを提供するとともに、この多層フィルムからなる易開封性包装袋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、以下の多層フィルム、およびそれを使用した包装袋が提供される。
(1)プロピレン単位のメソペンタッド分率が94〜99mol%であるポリプロピレン系樹脂および水添ビニル芳香族ジエン系共重合体からなる外層と、ポリプロピレン系樹脂および造核剤からなる中間層と、ポリエチレン系樹脂からなるシール層と、を含んで構成されることを特徴とする多層フィルム。
(2)前記外層に含まれる水添ビニル芳香族ジエン系共重合体の含有量が外層基準で4.5〜10質量%であることを特徴とする(1)記載の多層フィルム。
(3)前記中間層に、さらに耐衝撃性向上剤を含むことを特徴とする(1)または(2)記載の多層フィルム。
(4)前記耐衝撃性向上剤がメタロセン系LLDPEであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の多層フィルム。
(5)前記耐衝撃性向上剤の含有量が中間層基準で3〜20質量%であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の多層フィルム。
(6)前記中間層における造核剤の含有量が中間層基準で100〜1500質量ppmであることを特徴とする(1)〜(5)にいずれかに記載の多層フィルム。
(7)各層の層比が、外層:中間層:シール層=0.2〜5:1〜10:0.3〜1であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の多層フィルム。
(8)(1)〜(7)のいずれかに記載の多層フィルムからなることを特徴とする包装袋。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、前記した構成を備えることにより、耐衝撃性に優れるとともに、外層の耐熱性が高く高速製袋・充填適性にも優れる多層フィルムを提供できる。そして、この多層フィルムを用いることにより、耐衝撃性に優れるだけでなく、易開封性にも優れる包装袋を提供できる。すなわち、中間層がポリプロピレン系樹脂からなりシール層がポリエチレン系樹脂からなるために、中間層とシール層との間で層間剥離を起こさせることができ、包装袋の易開封性を発現させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の多層フィルムは、プロピレン単位のメソペンタッド分率が94〜99mol%であるポリプロピレン系樹脂および水添ビニル芳香族ジエン系共重合体からなる外層と、ポリプロピレン系樹脂および造核剤からなる中間層と、ポリエチレン系樹脂からなるシール層と、を含んで構成される。以下、各層に用いられる樹脂および添加剤について説明する。
【0008】
[外層]
高速(充填)製袋を行う際、多層フィルムの外層は、シール時における耐熱層として機能する。シール方法として一般的なヒートシールでは、高速ヒートシールを可能にするため、ヒートシール温度(加熱シールバー温度、熱盤温度)を高めに設定することが多い。本発明においては、外層用の樹脂として、メソペンタッド分率が94〜99mol%の高立体規則性を持った耐熱性の高いポリプロピレン系樹脂が用いられるので、ヒートシールの際に、外層が加熱シールバー(熱盤)に融着するなどの問題点を解消でき、高速ヒートシールが可能となる。このメソペンタッド分率は95〜97mol%であることが好ましい。
外層用に用いられるポリプロピレン系樹脂のメソペンタッド分率が94%未満であると、耐熱性が不足して、ヒートシールの際に、熱盤に外層が融着したり、ヒートシール部の白化あるいは収縮といった外観不良が発生しやすくなる。一方、メソペンタッド分率が99%を越えると、外層の剛性が高くなりすぎて、多層フィルムの耐衝撃性(衝撃強度)が悪化する。
【0009】
ここで、メソペンタッド分率とは、ポリプロピレン系樹脂において5個隣接したプロピレンモノマー単位の立体規則性を表し、メソペンタッド分率が高いほど高立体規則性であることを意味する。具体的には、ポリプロピレン系樹脂における各種ペンタッド構造単位の総和に対するメソペンタッド構造単位の割合である。このメソペンタッド分率は、Macromolecules, Vol. 22, No. 10, 1989に記載された方法によって測定することができる。
【0010】
外層は、耐熱層として機能するので、耐熱性の観点からは、外層用のポリプロピレン系樹脂として、ホモポリプロピレン樹脂を使用することが最も好ましい。共重合タイプのポリプロピレン樹脂を用いる場合は、エチレン、ブテン−1などの他のα−オレフィンの含有量が1質量%以下、すなわち、α−オレフィンの含有量が0〜1質量%のポリプロピレン系樹脂が好ましい。本発明の多層フィルムでは、外層用樹脂として、これら単独、あるいは混合物として用いられる。なお、ホモポリプロピレン樹脂としては、低分子量成分の含有率の少ない樹脂の使用が好ましい。
【0011】
本発明の多層フィルムの外層および後述する中間層で用いられるポリプロピレン系樹脂は、通常、メルトフローレシオ(MFR)〔JIS K7210に準拠、230℃、2.16kg荷重〕が、0.5〜50g/10分、好ましくは1〜20g/10分である。ここで、MFRが0.5g/10分未満であると、特に外層に用いた場合、多層フィルムの製膜時の表面状態が悪くなりやすく、透明性、外観が悪くなる。また、50g/10分を超えると多層フィルムの強度が低下し、製膜性が低下する。さらには、多層フィルムを用いて製袋・充填を行う際の高速成形性も低下するおそれがある。
【0012】
本発明の多層フィルムでは、この外層に含まれるホモポリプロピレン樹脂に、さらに水添ビニル芳香族ジエン系共重合体を配合する。ここで、水添ビニル芳香族ジエン系共重合体は、ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物からなるランダム共重合体またはブロック共重合体に、水素添加して、共役ジエンの二重結合の通常80%以上、好ましくは90%以上を飽和した水添ビニル芳香族ジエン系共重合体である。
【0013】
ここで、ビニル芳香族化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレンなどを例示でき、また、共役ジエン化合物としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどが例示で
きる。中でも、スチレンと1,3−ブタジエンまたはイソプレンからなる共重合体の水添共重合体が好ましい。これらの水添芳香族ジエン系共重合体中のビニル芳香族化合物の含有量は、特に制限はないが、通常、3〜40質量%、好ましくは5〜30質量%である。
【0014】
本発明で外層に用いる、水添ビニル芳香族ジエン系共重合体は、ポリプロピレン系樹脂中に超微粒子分散するため、他のエラストマーに比較して、透明性、ホモポリプロピレン樹脂の耐熱性への影響が少ない。具体的には、水添スチレン−ブタジエンランダム共重合体(HSBR)を例示できる。
【0015】
この、外層における、水添ビニル芳香族ジエン系共重合体の含有量は、通常、外層基準で4.5〜10質量%、好ましくは6〜8質量%である。ここで4.5質量%未満であると、耐衝撃性の改良効果が少ない。また、10質量%を超えて用いることもできるが、本発明の効果を得るためには、10質量%以下で十分である。
外層にこのような水添ビニル芳香族ジエン系共重合体を配合することで、耐熱性を維持しつつ多層フィルム全体の耐衝撃性と透明性(霞度)を著しく向上させることが可能となる。なお、エチレン−プロピレン共重合体エラストマーなどのオレフィン系エラストマーを配合しても高い衝撃強度を得ることはできるが、耐熱性と透明性は低下する。
【0016】
[中間層]
中間層のポリプロピレン系樹脂としては、特に制限はなく、ホモポリプロピレン樹脂、あるいは、α−オレフィンの含有量が20質量%以下であるプロピレンとα−オレフィンとのランダム共重合体あるいはプロピレンブロック共重合体を例示することができる。なかでも透明性の観点からは、ホモポリプロピレン樹脂、ランダムポリプロピレン系樹脂が好ましい。
【0017】
コモノマーとしてのα−オレフィンとしては、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチル−ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1などを例示でき、これらのα−オレフィンは1種または2種以上が用いられる。中でも、ホモポリプロピレン、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1ランダム共重合体が好ましく用いられる。
【0018】
本発明の多層フィルムの中間層は、多層フィルムの主要部を占める基材であり、多層フィルムが耐熱性、剛性を必要とする用途の場合には、通常ホモポリプロピレン樹脂または、α−オレフィンの含有量が1質量%以下のランダムポリプロピレン樹脂を主成分とする樹脂が好適に用いられる。また、繊維製品包装などに用いられるビニロンフィルム、軟質塩化ビニル樹脂フィルム代替の場合などには、α−オレフィン含有量が2〜20重量%のランダムポリプロピレン樹脂を用いることが好ましい。
【0019】
本発明の多層フィルムにおいて、中間層には、さらに造核剤が含まれる。中間層のポリプロピレン系樹脂に造核剤を配合することにより、中間層の結晶化度が上がり、多層フィルム全体の剛性および耐熱性を向上させる。
造核剤としては、特に制限はなく、ポリプロピレン系樹脂の造核剤として知られているものを用いることができる。例えば、リン酸2,2−メチレンビス(4,6−t−ブチルフェニル)ナトリウムなどの有機系リン酸金属塩やアルミニウムヒドロキシ−ジパラターシャリーブチルベンゾエート、ジベンジリデンソルビトール、ジメチルベンジリデンソルビトール、ケイ酸マグネシウムなどが挙げられる。この造核剤の配合量は、中間層基準で100質量ppm未満ではその添加効果の発現が充分でなく、1500質量ppmを超えるとブリードアウトするおそれがあるので、100〜1500質量ppmの範囲内とすることが好ましい。
【0020】
また、この中間層には、さらに耐衝撃向上剤が含まれることが好ましい。耐衝撃向上剤としては、熱可塑性エラストマーやエチレン−α−オレフィン共重合体等が好適に使用できる。エチレン−αオレフィン共重合体としては、LLDPEが好ましく、特にメタロセン系LLDPEが好ましい。メタロセン系LLDPEは、ポリプロピレン系樹脂との界面接着強度が高いため、マルチサイト触媒により製造されたLLDPEと比較して、多層フィルムの強度をより高めることが可能となる。さらに、透明性に関してもより優れる。
耐衝撃性向上剤の配合量としては、中間層基準で3〜20質量%が好ましく、より好ましくは、3〜10質量%である。3質量%より少ない配合量では、耐衝撃性の向上が不十分であり、一方、20質量%を越えると多層フィルムの剛性や耐熱性を下げてしまい、包装適性や包装袋の外観に悪影響を与えるおそれがある。
ただし、このような耐衝撃向上剤を中間層に配合しても、中間層が外層とシール層により覆われているために、多層フィルムとしての表面特性には何ら影響を与えない。従って、耐衝撃向上剤の配合の自由度は比較的高い。
【0021】
[シール層]
本発明の多層フィルムは、シール層がポリエチレン系樹脂からなることを特徴とする。
一般に、フィルム基材から包装袋を製造する際には、シール層同士を強固にシール(いわゆるタイトシール)する。それ故、ユーザがそのシール層同士を引きはがして包装袋を開封しようとしても、その強固なシール部分が逆に開封性を阻害する。
本発明の多層フィルムを用いて包装袋を製造した場合、ユーザが包装袋を開封しようとすると、ポリプロピレン系樹脂からなる中間層と、ポリエチレン系樹脂からなるシール層との間で層間剥離を起こし、結果的に易開封性(イージーピール性)を実現できる。すなわち、本発明の多層フィルムにおいては、中間層とシール層とが互いに異樹脂からなるため、界面接着強度を適度に抑えることが可能となるのである。
ここで、ポリエチレン系樹脂としては、LDPEやLLDPEあるいはEVAが好適に用いられる。シール方法は主にヒートシールであるが、超音波シールであってもよい。
【0022】
本発明の多層フィルムの厚みは、通常10〜100μmであり、外層:中間層:シール層の厚み比は、特に制限はないが、外層:中間層:シール層=0.2〜5:1〜10:0.3〜1の範囲で選択することが好ましい。この層比は、各層に用いる樹脂の種類、多層フィルムの用途、要求性状などを考慮して決定すればよい。
本発明においては、外層のみに水添ビニル芳香族ジエン系共重合体を添加して、全体に対する外層の厚みを、5〜20%とすると、少量の水添芳香族ジエン系共重合体を使用することになり、単層フィルムと異なって、他の物性への影響が比較的少なく経済性にもすぐれたものとなる。
【0023】
なお、本発明では、フィルム成形で用いられる滑剤、抗ブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、酸化防止剤、着色剤などを必要により添加することができる。例えば、滑剤としては、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミド、ステアリン酸アミドなど飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド類などを、0.01〜0.5質量%添加できる。また、抗ブロッキング剤としては、シリカ、表面処理シリカ、ゼオライト、珪藻土などを、0.1〜1.5質量%添加できる。
【0024】
本発明の多層フィルムは、各層用に必要な樹脂あるいは添加剤を準備して、少なくとも3台の押出機に供給した後、T−ダイ成形法またはインフレーションフィルム成形法など公知の成形法を用いて製造(製膜)することができる。
このような本発明の多層フィルムは、高剛性、高耐熱性の単体包装用フィルムとして、横ピロー包装機や縦ピロー包装機等による高速製袋・充填が可能であり、パン、麺、野菜(もやし等)などの食品、衣料、雑貨などの包装袋としても好適に用いられる。
【0025】
本発明を実施するための最良の構成などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
したがって、上記に開示した材質、層構成などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの材質などの限定の一部若しくは全部の限定を外した名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【実施例】
【0026】
次に、実施例および比較例により本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの例によって何等限定されるものではない。
まず、実施例および比較例に使用した(a)原料(樹脂、添加剤)、(b)多層フィルムの製造方法、および(c)評価方法を以下に示す。
なお、外層および中間層に使用したポリプロピレン系樹脂のメソペンタッド分率は、以下のようにして測定した。
JNM−FX−200(日本電子製 13C−NMR装置、13C共鳴周波数 50.1MHz)を用い、測定モード:プロトン完全デカップリング法、パルス幅:6.9μs(45°)、パルス繰り返し時間:3s、積算回数:10000回、溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼン/重ベンゼン(90/10容量%)、試料濃度:250mg/2.5ml溶媒、測定温度:130℃の条件で13C−NMRの測定を行った。立体規則性によるメチル基のケミカルシフトの違いにより22.5〜19.5ppmの領域には、各種ペンタッド構造単位(mmmm〜mrrm)に基づく複数のピークが現れる。それらの中で、メソペンタッド構造単位(mmmm)に基づくピーク面積の各ピーク面積全体に占める割合(mol%)を求め、メソペンタッド分率とした。
【0027】
(a)原料(樹脂、添加剤)
(a-1)ポリプロピレン系樹脂(PP−1)
グレード:(株)プライムポリマー製 Y−700GV(ホモポリプロピレン樹脂)
MFR:7g/10min
密度:0.90g/cm
メソペンタッド分率:97mol%
【0028】
(a-2)ポリプロピレン系樹脂(PP−2)
グレード:(株)プライムポリマー製 F−704NP(ホモポリプロピレン樹脂)
MFR:7g/10min
密度:0.90g/cm
メソペンタッド分率:91mol%
【0029】
(a-3)水添スチレン−ブタジエンランダム共重合体(HSBR)
グレード:JSR(株)製 DYNARON 1320P
スチレン含有量:10質量%
水添率:98%以上
【0030】
(a-4)メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン(M−LLDPE)
グレード:日本ポリエチレン(株)製 KS340T
MFR:3.5g/10min
密度:0.88g/cm
【0031】
(a-5)直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)
グレード:プライムポリマー(株)製 0434N
MFR:4g/10min
密度:0.918g/cm
【0032】
(a-6)造核剤
グレード:旭電化製ADKSTAB NA−21(リン酸エステル金属塩系造核剤)
(ベース樹脂としてホモポリプロピレン樹脂〔MFR:2g/10min、密度:0.9g/cm、メソペンタッド分率:97mol%〕を用い、0.15質量%濃度のM/Bとして使用した。)
【0033】
(b)多層フィルムの製造方法
前記した原料樹脂および添加剤を用い、三層共押出多層キャスト成形機(50mmφ、65mmφ、40mmφの各押出機、マルチマニホールド型多層ダイス)に供給、溶融、混練し、吐出量=90kg/hrでT−ダイ(巾:80cm)より押出し、厚み30μmの多層フィルムを成形した。なお、多層フィルムの層厚み比は、外層:中間層:シール層=1:5:0.6とした。表1に、実施例と比較例について各層の樹脂・添加剤の組成を示す。
【0034】
(c)評価方法
(c-1)霞度(ヘイズ)
JIS K 7105に準拠して測定した。
(c-2)光沢度
JIS K 7105に準拠して測定した。
(c-3)剛性(引張弾性率)
JIS K 7127に準拠して測定した。
(c-4)ヒートシール強度
JIS Z 1707に準拠して測定した。
【0035】
(c-5)耐衝撃性(衝撃強度)
フィルムインパクト法により測定した。具体的には、東洋精機(株)製のフィルム・インパクト・テスターを使用し、固定されたリング状の多層フィルムに半円球状の振り子(直径1インチ)を打ち付けて、多層フィルムの打ち抜きに要した衝撃強度を測定した(15kg・cmスケール)。
【0036】
(c-6)開封性
前記した方法で製造された多層フィルムを用い、フジキカイ製横ピロー充填機(FW3400)にて製袋した。その後、製袋品について、エンドシール部から開封した時の開封性を、以下の基準によりレベル1(悪)〜レベル3(良)の3段階で評価した。(ショット数:120個/分、センターシール温度:140℃、エンドシール温度:140℃)
レベル1:開封不可。
レベル2:開封時に引っ掛かりやフィルム破断が発生する。
レベル3:フィルムは破断なく開封できる。
【0037】
(c-7)耐熱性
前記した方法で製造された多層フィルムを用い、フジキカイ製横ピロー充填機(FW3400)にて製袋した時の、加熱シールバー(熱盤)への融着性、およびシール部の外観(白化、収縮の程度)を、以下の基準によりレベル1(悪)〜レベル3(良)の3段階で評価した。(ショット数:120個/分、センターシール温度:140℃、エンドシール温度:140℃)
レベル1:熱盤への融着大。シール部外観不良。
レベル2:熱盤への融着はほどんど無し。シール部外観やや不良。
レベル3:熱盤への融着無し。シール部外観良好。
【0038】
【表1】

【0039】
(d)評価結果
表1の結果からわかるように、実施例1、2の多層フィルムはいずれの評価項目に対しても良好な結果が得られた。それ故、本発明の多層フィルムは、単体包装用のフィルムとして、高速製袋・充填適性に優れるとともに耐熱性および耐衝撃性に優れていることがわかる。また、本発明の包装袋は、易開封性(イージーピール性)に優れている。
一方、比較例1の多層フィルムは、外層用樹脂として水添ビニル芳香族ジエン系共重合体が配合されていないため著しく耐衝撃性に劣り、また、霞度も高く透明性に劣っている。比較例2の多層フィルムは、中間層に造核剤が配合されていないため、耐熱性や剛性に劣る結果となっている。比較例3の多層フィルムは、外層用として使用されたポリプロピレン系樹脂のメソペンタッド分率が91mol%と低いために、耐熱性や剛性が劣り、外層が熱盤に優着してしまうため製袋不良が発生する。また、比較例2、3における包装袋では、開封性も劣っている。ここで、開封性が劣る原因は、多層フィルムの剛性が低いと熱盤の圧力がシール層に伝わりやすくなり、中間層とシール層との接着強度が強くなり過ぎ、層間剥離(界面剥離)が円滑にできなくなるためと推定される。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の多層フィルムは、耐衝撃性、高速製袋・充填適性に優れた単体包装用フィルムとして利用することができ、得られた包装袋は、易開封性包装袋として利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン単位のメソペンタッド分率が94〜99mol%であるポリプロピレン系樹脂および水添ビニル芳香族ジエン系共重合体からなる外層と、
ポリプロピレン系樹脂および造核剤からなる中間層と、
ポリエチレン系樹脂からなるシール層と、
を含んで構成されることを特徴とする多層フィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の多層フィルムにおいて、
前記外層に含まれる水添ビニル芳香族ジエン系共重合体の含有量が外層基準で4.5〜10質量%であることを特徴とする多層フィルム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の多層フィルムにおいて、
前記中間層に、さらに耐衝撃性向上剤を含むことを特徴とする多層フィルム。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の多層フィルムにおいて、
前記耐衝撃性向上剤がメタロセン系LLDPEであることを特徴とする多層フィルム。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の多層フィルムにおいて、
前記耐衝撃性向上剤の含有量が中間層基準で3〜20質量%であることを特徴とする多層フィルム。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の多層フィルムにおいて、
前記中間層における造核剤の含有量が中間層基準で100〜1500質量ppmであることを特徴とする多層フィルム。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載の多層フィルムにおいて、
各層の層比が、
外層:中間層:シール層=0.2〜5:1〜10:0.3〜1
であることを特徴とする多層フィルム。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれかに記載の多層フィルムからなることを特徴とする包装袋。

【公開番号】特開2008−12833(P2008−12833A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−187667(P2006−187667)
【出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【出願人】(500163366)出光ユニテック株式会社 (128)
【Fターム(参考)】