説明

多層フィルム及びそれよりなる包装袋

【課題】 本発明は、ポリブチレンテレフタレート樹脂の耐熱性、保香性を維持したまま、ヒートシール性、ガスバリアー性、レトルト適性に優れる多層フィルム及びそれよりなる包装袋を提供するものである。
【解決手段】 多層フィルムであって、その少なくとも一方の外層にポリブチレンテレフタレート樹脂80〜98重量%及びエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物2〜20重量%からなるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる層を有するとともに、ガスバリアー性樹脂からなる層をも有する多層フィルム及びそれよりなる包装袋。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリブチレンテレフタレート樹脂及びエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物からなる組成物を外層に有すると共に、ガスバリアー性樹脂からなる層を有する多層フィルム及びそれよりなる包装袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
臭気の強い食品や廃棄物の包装等、保香性やガスバリアー性が求められる包装袋には複合フィルムが多く使用されている。複合フィルムを用いる理由としては、一般に保香性やガスバリアー性を有する樹脂は、結晶性が高いため単層フィルムではヒートシール性が悪く製袋が困難であるため、ヒートシール性の優れたフィルムと複合化して用いられている。
【0003】
保香性及び耐熱性に優れた食品包装袋として好適なものとして、例えば変性されたポリブチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートからなる組成物とポリアミドフィルムとシーラントフィルムを積層したフィルム(例えば特許文献1参照。)、ポリブチレンテレフタレート層を最外層として、ガスバリアー性樹脂層とヒートシール性樹脂層を順次積層してなる多層構造の食品包装袋(例えば特許文献2参照。)、ポリブチレンテレフタレート樹脂層(A)、ポリ酢酸ビニル系重合体のケン化物質(B)、ビニル芳香族化合物−共役ジエン系ブロック共重合体のエポキシ化合物層(C)からなり、A−C−B−C−Aの順に積層されているバリアー包装材料(例えば特許文献3参照。)、等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−005283号公報(例えば特許請求の範囲参照。)
【特許文献2】特開2000−025184号公報(例えば特許請求の範囲参照。)
【特許文献3】特開平09−039186号公報(例えば特許請求の範囲参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の様に、ポリブチレンテレフタレート樹脂とガスバリアー性樹脂を含む多層構造の包装材料は、ポリブチレンテレフタレート樹脂が耐熱性、耐油性及び保香性に優れるため、ガスバリアー性に優れる樹脂との複合化により、レトルト食品包装袋、レトルトパウチ、電子レンジ調理用包装袋として用いられる。
【0006】
しかし、特許文献1又は2に提案されている積層フィルムや包装袋は、シーラントフィルムやヒートシール層として、ポリオレフィン系樹脂が使われているが、レトルト処理等の加熱処理によりポリオレフィン臭が生じることがあり、食品等の内容物の香りを損なう問題がある。
【0007】
また、特許文献3に提案されている多層構造のバリアー包装材料は、結晶性が高いポリブチレンテレフタレート樹脂がヒートシール層となるため、製袋時のヒートシール性に劣り、包装袋としての十分な密封性が得られない問題がある。
【0008】
このため、これらの課題を解決できるポリブチレンテレフタレート樹脂製の包装袋が望まれている。
【0009】
そこで、本発明は上記課題を解決し、ポリブチレンテレフタレートの耐熱性及び保香性を維持したまま、ヒートシール性に優れ、更にはレトルト処理においても優れたヒートシール性を有するポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる層を有する多層フィルム及びそれよりなる包装袋を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、少なくともポリブチレンテレフタレート樹脂に特定のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物を配合したポリエステル樹脂組成物からなる層とガスバリアー性樹脂からなる層を設けた多層フィルムとすることにより、ポリブチレンテレフタレートの優れた耐熱性と保香性を維持したまま、ヒートシール性を向上させ、更にはレトルト処理後においても優れたヒートシール性を維持したガスバリアー性を有する多層フィルムとなることを見出し、本発明を完成させるに到った。
【0011】
即ち、本発明は、多層フィルムであって、その少なくとも一方の外層にポリブチレンテレフタレート樹脂80〜98重量%及びエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物2〜20重量%からなるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる層を有するとともに、ガスバリアー性樹脂からなる層を有することを特徴とする多層フィルム及びそれよりなる包装袋に関するものである。
【0012】
本発明の多層フィルムにおいては、その外層の少なくとも一方は、ポリブチレンテレフタレート樹脂80〜98重量%及びエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物2〜20重量%からなるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる層である。
【0013】
その際のポリブチレンテレフタレート樹脂は、1,4−ブタンジオールを主成分とするジオール成分とテレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分又はそのアルコールエステル成分とを縮合して得られるポリエステルであり、一般的にポリブチレンテレフタレート樹脂として知られている範疇に属するものであれば如何なるものでも用いることができ、また、市販品として入手することもできる。
【0014】
該ポリブチレンテレフタレート樹脂としては、多層フィルムとする際の製膜性に優れることからo−クロロフェノール中で温度35℃の条件下で測定した固有粘度(IV値)が0.5dl/g〜2.5dl/gのポリブチレンテレフタレート樹脂であることが好ましい。固有粘度の測定は、ウベローデ型粘度計で行う。
【0015】
また、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物は、エチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニルの部分がケン化されたものであり、一般的にエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物として知られている範疇に属するものであれば如何なるものを用いることも可能である。その中でも特にヒートシール性、耐ピンホール性及び耐衝撃性に優れた多層フィルムとなることからJIS K6924に準拠し測定した酢酸ビニル含量が5〜50重量%、好ましくは15〜42重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体をケン化度20〜100モル%にケン化したエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物であることが好ましい。
【0016】
該エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物は、例えば高圧法、乳化重合法等の公知の製造方法により製造されたエチレン−酢酸ビニル共重合体をメタノール、エタノールなどの低沸点アルコールと水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラートなどのアルカリからなる系で処理するケン化を施すことにより製造することができる。また、該エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物は市販品であっても良い。
【0017】
また、該ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物には、本発明の目的を阻害しない限り一般の熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂に添加される公知の物質、即ち、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、界面活性剤、染料や顔料等の着色剤、潤滑剤、結晶化促進剤、結晶化遅延剤、他の熱可塑性樹脂、無機充填剤等を配合されてもよい。
【0018】
そして、本発明の多層フィルムは、その外層の少なくとも一方が、該ポリブチレンテレフタレート樹脂80〜98重量%及び該エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物2〜20重量%、好ましくはポリブチレンテレフタレート樹脂85〜95重量%及びエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物5〜15重量%からなるポリエステル樹脂組成物からなる層を有するものである。ここで、ポリブチレンテレフタレート樹脂の配合量が80重量%未満である場合、ポリブチレンテレフタレート樹脂とエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物の相溶性に劣り多層フィルムとする際の製膜加工が困難となる。一方、ポリブチレンテレフタレート樹脂の配合量が98重量%を超える場合、多層フィルムはヒートシール性に劣るものとなる。
【0019】
また、該ポリブチレンテレフタレート樹脂と該エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物からなるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物とする際の混合方法については、例えばポリブチレンテレフタレート樹脂とエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物をドライブレンドにより混合する方法、ポリブチレンテレフタレート樹脂とエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物をブレンド後、押出機で溶融混練し溶融混合体のペレットとする方法、等を適用することができる。
【0020】
本発明の多層フィルムは、保香性、ガスバリアー性に優れる多層フィルムとなることから、ガスバリアー性樹脂からなる層を有するものであり、該ガスバリアー性樹脂からなる層は、中間層又はもう一方の外層として位置するものであってもよい。該ガスバリアー性樹脂としては、例えばポリアミド、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート等を挙げることができ、その中でも特にガスバリアー性に優れる多層フィルムとなることから、ポリアミド(例えばナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン12等)又はエチレン−ビニルアルコール共重合体(例えばエチレン含量20〜60モル%)であることが好ましい。
【0021】
また、本発明の多層フィルムにおいては、該ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる層とガスバリアー性樹脂からなる層を積層してなる際には、接着性樹脂からなる層を介してなることが好ましく、該接着性樹脂としては、例えばポリオレフィン樹脂にα、β―不飽和カルボン酸又はその誘導体を共重合及び/又はグラフト重合させて得られる変性ポリオレフィン樹脂を挙げることができ、より具体的には、ポリオレフィン樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン−アクリル酸共重合体などが挙げられ、共重合及び/又はグラフトされるα、β−不飽和カルボン酸又はその誘導体としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、グリシジルメタクリレート、無水マレイン酸、無水フマル酸などが挙げられ、特に無水マレイン酸が好適である。
【0022】
該接着性樹脂は、層間接着性を上げるため、粘着付与剤を添加してもよく、粘着付与剤としては、天然樹脂や合成樹脂を挙げることができ、例えば天然樹脂ロジン、重合ロジン、水素添加ロジン、ペンタエリスリトール等のロジン系樹脂、テルペン、芳香族テルペン、テルペンフェノール、水素添加テルペン等のテルペン系樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、水素環式系石油樹脂等が挙げられる。
【0023】
さらに、本発明の多層フィルムにおいては、フィルムに剛性、導電性、断熱性等の機能を付与することを目的として、中間層又はもう一方の外層に基材層を積層してなるものであってもよく、その際の基材層としては、例えば紙、金属(アルミなど)、成形体等を挙げることができる。
【0024】
本発明の多層フィルムとしては、例えばポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる層/接着性樹脂からなる層/ガスバリアー性樹脂からなる層、具体的には、ポリブチレンテレフタレート樹脂とエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物からなる組成物/マレイン酸変性ポリエチレン/ポリアミド−6、ポリブチレンテレフタレート樹脂とエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物からなる組成物/マレイン酸変性ポリエチレン/エチレン−ビニルアルコール共重合体、この他には、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる層/接着性樹脂からなる層/ガスバリアー性樹脂からなる層/接着性樹脂からなる層/基材層、具体的には、ポリブチレンテレフタレート樹脂とエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物からなる組成物/マレイン酸変性ポリエチレン/ポリアミド−6/マレイン酸変性ポリエチレン/印刷紙、ポリブチレンテレフタレート樹脂とエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物からなる組成物/マレイン酸変性ポリエチレン/ポリアミド−6/マレイン酸変性ポリエチレン/ポリブチレンテレフタレート樹脂又はポリブチレンテレフタレート樹脂とエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物からなる組成物、更には、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる層/接着性樹脂からなる層/ガスバリアー性樹脂からなる層/接着剤層(アンカーコート剤)/基材層、具体的には、ポリブチレンテレフタレート樹脂とエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物からなる組成物/マレイン酸変性ポリエチレン/ポリアミド−6/接着剤層/アルミ箔、ポリブチレンテレフタレート樹脂とエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物からなる組成物/マレイン酸変性ポリエチレン/ポリアミド−6/接着剤層/延伸PET、ポリブチレンテレフタレート樹脂とエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物からなる組成物/マレイン酸変性ポリエチレン/エチレン−ビニルアルコール共重合体/接着剤層/鋼板、ポリブチレンテレフタレート樹脂とエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物からなる組成物/マレイン酸変性ポリエチレン/エチレン−ビニルアルコール共重合体/接着剤層/ポリスチレン又はポリウレタン発泡体などを挙げることができる。
【0025】
本発明の多層フィルムの製造方法としては、多層フィルムの製造が可能であれば如何なる方法を用いることも可能である。例えば各々の樹脂又は樹脂組成物を共押出して多層フィルムを得る共押出キャスト成形法、ガスバリアー性樹脂からなる層を構成するフィルム(ポリアミドフィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム等)に接着性樹脂及び/又はポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を溶融押出ししてラミネートする共押出ラミネート成形法、ガスバリアー性樹脂からなる層を構成するフィルム(ポリアミドフィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム等)に接着性樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を順次、溶融押出ししてラミネートするタンデムラミネート成形法、アンカーコート剤を用いて、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなるフィルムとガスバリアー性樹脂からなる層を構成するフィルム(ポリアミドフィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム等)をドライラミネートする方法、等を用いることができる。特に共押出しキャスト成形法が、層間接着性に優れ、工程も少なく生産性も高いことから好ましい。また、フィルムには、必要に応じ任意の率で一軸又は二軸延伸を加えたものであってもよい。
【0026】
本発明の多層フィルムの厚みは、任意であり、その中でも柔軟性と機械的強度のバランスに優れた多層フィルムとなることから20〜1000μmの範囲であることが好ましく、特に25μm〜500μmであることが好ましい。この際の該ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる層の厚みとしては、10〜300μmであることが好ましく、特に15〜100μmであることが好ましい。ガスバリアー性樹脂からなる層の厚みとしては、15〜600μmであることが好ましく、特に10〜300μmであることが好ましい。
【0027】
本発明の多層フィルムは、ヒートシール性、保香性、ガスバリアー性に優れ、かつレトルト処理を行なっても優れた耐熱性及びヒートシール性を有していることから、包装袋として適したものであり、特に保香性やバリアー性が求められる食品、例えばキムチ、タクアン等の漬物類;カレー、シチュー、餃子等の食品類を長期保存する包装袋やレトルト調理に用いる包装袋に好適である。さらに、食品以外にも臭気の強い産業廃棄物や汚物等の医療用廃棄物の処理袋に好適である。なお、包装袋とする際には、多層フィルムの外層に位置するポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる層面をヒートシールにて袋とじすることにより容易に得ることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の多層フィルム及びそれよりなる包装体は、ヒートシール性、保香性、ガスバリアー性に優れ、かつレトルト処理を行なっても優れた耐熱性及びヒートシール性を併せもち、特に臭気の強い食品、産業廃棄物等の包装体として優れた適性を有するものである。
【実施例】
【0029】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0030】
以下に、ヒートシール性、保香性、ガスバリアー性及びレトルト適性の試験方法を示す。
【0031】
〜ヒートシール性〜
100mm巾のキャスト多層フィルムの内層側を内側にして2枚重ね合わせ、その上にヒートシールバーへの融着防止を目的にポリイミドフィルムを置いて、ヒートシールテスター(テスター産業社製)を用いて温度215℃、圧力0.2MPa、時間1.5秒の条件にてヒートシールバーにより押さえて加熱接着を行った。次に幅15mmの短冊状に切断し、試験片とし、該加熱融着部分を引張試験機(ORIENTEC社製、(商品名)テンシロンRTE−1210)を用いて、剥離速度300mm/分、剥離角度180度にてヒートシール強度を測定した。
【0032】
〜保香性〜
100mm巾のキャスト多層フィルムの内層側を内側にして2枚重ね合わせ、インパルスシーラー(富士インパルス社製)を用いて3辺をヒートシールすることにより袋を作成した。得られた袋の中にキムチの素(桃屋製)を5g入れ、袋の開口部をヒートシールすることにより密封した。次に、密封した袋をガラス瓶の中に入れ。23℃×60%Rhの恒温室内で保管し、一定期間後(1日後、3日後、7日後)に臭気を嗅ぎ、保香性の指標とした。臭気が感じられないものを「○」、僅かに臭気が感じられるものを「△」、強い臭気が感じられるものを「×」とした。
【0033】
〜レトルト適性〜
巾100mm、長さ150mmのキャスト多層フィルムの内層を内側にして2枚重ね合わせ、インパルスシーラー(富士インパルス社製)を用いて3辺をヒートシールすることにより袋を作成した。得られた袋にサラダ油を100ml充填し、開口部をヒートシールすることにより密封した。次に、高温高圧殺菌装置(日阪製作所製、(商品名)RCS−40RTGN)を用いて、124℃×30分間のレトルト処理を行ない、袋の外観変化、ヒートシール部の剥がれの有無及びヒートシール部のシール強度を測定した。尚、シール強度の測定は、ヒートシール性評価の方法と同様にして行なった。
【0034】
袋の外観変化は、容器の変形を目視により観察し、変形が認められないものを「○」、変形しているものを「×」とした。
【0035】
〜ガスバリア性〜
巾100mm、長さ100mmのキャスト多層フィルムを測定用試料として、JIS K7126、A法に準拠し、東洋精機社製差圧式ガス透過試験機を用いて、温度23℃±2℃、使用セル10ccの条件にて酸素ガス透過率を測定した。
【0036】
実施例1
〜多層フィルムの製造方法〜
ポリブチレンテレフタレート樹脂(A1)(ポリプラスチックス株式会社製、(商品名)ジュラネックス500FP、固有粘度0.88dl/g)90重量%とエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(B1)(東ソー株式会社製、(商品名)メルセンH−7540、酢酸ビニル含有率25重量%、ケン化度75モル%、メルトマスフローレート2.8g/分)10重量%をダンブラー混合機によりドライブレンドし、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を調製した。また、接着性樹脂樹脂(C1)として、(商品名)オレヴァックG 18370(アルケマ株式会社製)、ガスバリアー性樹脂(D1)として、ポリアミド樹脂(宇部興産株式会社製、(商品名)UBEナイロン 1022B)を用いた。その割合を表1に示す。
【0037】
これらの樹脂を用いて、3種3層キャスト成形機(内層:32m/m、中間層:25m/m、外層:25m/m、マルチマニホールドダイ)(株式会社モダンマシナリー製)により製膜し、外層;ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物層(30μm)/中間層;接着性樹脂層(C1)(5μm)/外層;ガスバリアー性樹脂層(D1)(20μm)の構成を有する多層フィルムを得た。
【0038】
尚、製膜時の温度条件は以下の通りである。
内層 :C31/C32/C33/H34=240/250/250/250℃
中間層:C21/C22/C23/H24=160/170/180/200℃
外層 :C11/C12/C13/H14=230/240/250/250℃
ダイス:D1/D2/D3=250/250/250℃
得られた多層フィルム、包装袋のヒートシール性、保香性、ガスバリアー性及びレトルト適性を評価した。その結果を表3に示す。
【0039】
実施例2
エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(B1)10重量%の代わりに、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(B2)(東ソー株式会社製、(商品名)メルセンH−6410、酢酸ビニル含有率28重量%、ケン化度40モル%、メルトマスフローレート16g/分)10重量%とした以外は、実施例1と同様にして多層フィルムを得た。その割合を表1に示す。
【0040】
得られた多層フィルムのヒートシール性、保香性、ガスバリアー性及びレトルト適性を評価した。その結果を表3に示す。
【0041】
実施例3
エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(B1)10重量%の代わりに、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(B3)(東ソー株式会社製、(商品名)メルセンH−6960、酢酸ビニル含有率42重量%、ケン化度90モル%、メルトマスフローレート40g/分)10重量%とした以外は、実施例1と同様にして多層フィルムを得た。その割合を表1に示す。
【0042】
得られた多層フィルムのヒートシール性、保香性、ガスバリアー性及びレトルト適性を評価した。その結果を表3に示す。
【0043】
実施例4
ポリブチレンテレフタレート樹脂(A1)90重量%及びエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(B3)10重量%の代わりに、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A1)95重量%及びエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(B3)5重量%とした以外は、実施例3と同様にして多層フィルムを得た。その割合を表1に示す。
【0044】
得られた多層フィルムのヒートシール性、保香性、ガスバリアー性及びレトルト適性を評価した。その結果を表3に示す。
【0045】
実施例5
ポリブチレンテレフタレート樹脂(A1)90重量%及びエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(B3)10重量%の代わりに、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A1)80重量%及びエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(B3)20重量%とした以外は、実施例3と同様にして多層フィルムを得た。
【0046】
得られた多層フィルムのヒートシール性、保香性、ガスバリアー性及びレトルト適性を評価した。その結果を表3に示す。
【0047】
比較例1
ポリブチレンテレフタレート樹脂(A1)90重量%及びエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(B1)10重量%の代わりに、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A1)のみとした以外は、実施例1と同様にして多層フィルムを得た。その割合を表2に示す。
【0048】
得られた多層フィルムのヒートシール性、保香性、ガスバリアー性及びレトルト適性を評価した。その結果を表4に示す。得られた多層フィルムは、ヒートシール強度が低く、レトルト後の包装袋のシール部に剥がれが認められ、レトルト適性に劣るものであった。
【0049】
比較例2
エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(B1)10重量%の代わりに、エチレン−酢酸ビニル共重合体(B4)(東ソー株式会社製、(商品名)ウルトラセン710、酢酸ビニル含有率28重量%、メルトマスフローレート18g/分)を10重量%とした以外は、実施例1と同様にして多層フィルムを得た。その割合を表2に示す。
【0050】
得られた多層フィルムのヒートシール性、保香性、ガスバリアー性及びレトルト適性を評価した。その結果を表4に示す。得られた多層フィルムは、ヒートシール強度が低く、レトルト後の包装袋には微かに酢ビ臭があり、包装袋の皺の発生とシール部の一部に剥がれが認められ、保香性、レトルト適性に劣るものであった。
【0051】
比較例3
ポリブチレンテレフタレート樹脂(A1)90重量%及びエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(B3)10重量%の代わりに、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A1)70重量%及びエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(B3)を30重量%とした以外は、実施例3と同様にして多層フィルムの製造を試みた。
【0052】
製膜時の吐出に脈動がみられダイスから押し出された溶融膜が不安定となり、多層フィルムを得ることができず製膜性に劣るものであった。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
【表3】

【0056】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明多層フィルムは、ポリブチレンテレフタレート樹脂及びエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物からなる組成物を外層に有すると共に、ガスバリアー性樹脂からなる層を有することから、ヒートシール性、保香性、ガスバリアー性、レトルト適性に優れる多層フィルムであり、食品をはじめ医薬、化粧品、香料等の包装袋用材料として適用が期待されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層フィルムであって、その少なくとも一方の外層にポリブチレンテレフタレート樹脂80〜98重量%及びエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物2〜20重量%からなるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる層を有するとともに、ガスバリアー性樹脂からなる層を有することを特徴とする多層フィルム。
【請求項2】
エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物が、JIS K6924に準拠し測定した酢酸ビニル含量が5〜50重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル単位を20〜100モル%ケン化したものであることを特徴とする請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項3】
ガスバリアー性樹脂が、ポリアミド、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフフタレート及びポリカーボネートからなる群より選択される少なくとも1種以上の樹脂であることを特徴とする請求項1又は2に記載の多層フィルム。
【請求項4】
ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる層とガスバリアー性樹脂層とを接着性樹脂からなる層を介して積層してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の多層フィルム。
【請求項5】
さらに、基材層を積層してなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の多層フィルム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の多層フィルムからなることを特徴とする包装袋。
【請求項7】
多層フィルムの外層に位置するポリブチレンテレフタレート樹脂80〜98重量%及びエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物2〜20重量%からなるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる層面をヒートシールにて袋とじしてなるものであることを特徴とする請求項6に記載の包装袋。
【請求項8】
食品用包装袋であることを特徴とする請求項6又は7に記載の包装袋。
【請求項9】
産業廃棄物又は医療廃棄物の処理用包装袋であることを特徴とする請求項6又は7に記載の包装袋。

【公開番号】特開2013−46970(P2013−46970A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185950(P2011−185950)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】