説明

多層プリント配線板とその製造方法

【課題】非貫通孔を含む層間絶縁層をスクリーン印刷で一括形成した場合においても高密度配線化が可能な多層プリント配線板の提供。
【解決手段】コア基板の少なくとも一方の面に層間絶縁層と配線パターンとが交互に積層され、上下層の配線パターン間を接続するブラインドビアホールが当該配線パターン間に位置する層間絶縁層に形成されてなる多層プリント配線板であって、少なくとも、ブラインドビアホール形成用の非貫通孔の開口側周囲に凹み状に形成された傾斜部と当該非貫通孔の開口縁部に形成された丸み部とを有する、スクリーン印刷によって形成された層間絶縁層と、当該スクリーン印刷により滲み出た当該非貫通孔の底部に位置する下層の配線パターン上の樹脂を除去して得られた配線パターン露出済みの非貫通孔と、当該配線パターン露出済みの非貫通孔を含む層間絶縁層に形成された金属めっきからなる配線パターン及びブラインドビアホールとを有する多層プリント配線板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線パターンが形成されたコア基板の少なくとも一方の面に、絶縁層と配線パターンとを必要層数分くり返し積層してなるビルドアップ型の多層プリント配線板に関し、特に、ビルドアップ層の高密度配線化を図った多層プリント配線板と当該多層プリント配線板を容易に且つ低コストで得られる製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の多層プリント配線板は、小型・高密度配線化の観点から、複数のコア基板を絶縁接着剤層を介して積層するものに代わって、コア基板の少なくとも一方の面に層間絶縁層と配線パターンとを必要層数分くり返し積層してなるビルドアップ型のものが主流となっており、その製造方法としては、例えば「特許文献1」に開示されているようなものがある。
【0003】
この特許文献1の方法を図6を用いて簡単に説明すると、まず、複数の導体層と各導体層間に設けられた層間絶縁層とで構成される多層プリント配線板(図6(a)参照)の金属箔11に、次工程で照射するレーザビームLBの照射径よりも大径のウィンドウ部12を形成し(図6(b)参照)、次いで、当該ウィンドウ部12から露出する層間絶縁層3cに当該ウィンドウ部12の径より小さい径のレーザビームLBを照射することによって(図6(c)参照)、下層の配線パターン2(図中の「ビア底部ランド2a」に相当)に達する非貫通孔4cを明ける(図6(d)参照)。次に、デスミア処理を行った後、金属めっき処理を行うことによって、上下層の導体層(即ち、図中のウィンドウ部12が形成された側の金属箔11と内層に形成されたビア底部ランド2a)が金属めっき8により接続された多層プリント配線板Pbを得るというものである(図6(e)参照)。
【0004】
このように、上記特許文献1の方法においては、上下層の導体層間(図中の「金属箔11とビア底部ランド2a間」に相当)を接続するブラインドビアホール(以降これを「BVH」と表記する)形成用の非貫通孔4cをレーザで穿孔するようにしているため、ドリルによる孔明けよりも小径の孔明け加工が可能となり、また、層間接続用のBVHを必要な層間にのみ形成できるため、層間接続の不要な部分にまで孔明け加工が施されるドリル加工(即ち「貫通孔加工」)と比較して高密度配線化を図ることができる。
【0005】
しかし、BVH形成用の非貫通孔4cを穿孔する場合、まず、金属箔11にウィンドウ部12をエッチング工程などにより形成し、その後、露出した層間絶縁層3cに、例えば炭酸ガスレーザ(図中の「レーザビームLB」に相当)を1穴づつ照射して(実際には1穴につき複数回のレーザを照射する)非貫通孔4cを穿孔するという工程を要するため、製造効率が非常に低いという問題があった。
【0006】
また、非貫通孔4cの開口縁部13(図7に示した図6(e)の要部拡大断面図参照)が角張っていることから、当該開口縁部13には金属めっき8が析出し難いという傾向があった。従って、これに起因して発生するBVHのコーナークラック(図示せず)を防止するために、外層に析出させる金属めっき8の厚さをかなり厚めに設定する必要があり(例えば、非貫通孔4cの開口縁部13に析出させるめっき厚T1を、15μm以上とする場合、外層表面に析出させるめっき厚T2を25μm以上に設定する必要がある)、結果、外層(上層)に設ける配線パターンのファイン化(即ち高密度配線化)が困難であるという問題も有していた(特許文献1では、予め外層に金属箔11が積層されている構成であるため、そもそも配線パターンのファイン化には適していないが、当該金属箔11が積層されていない仕様であったとしても、外層に析出されるめっき厚T2が25μm以上となるため、ファインパターン{例えば、L/S(即ち、配線パターン幅/配線パターン間の間隙)=70μm/70μmを形成するのが困難であることには変わりがない}。
【0007】
このような問題を回避するには、BVH形成用の非貫通孔を含む層間絶縁層をスクリーン印刷で一括形成するという方法が考えられる(例えば「特許文献2」参照)。
【0008】
この特許文献2の方法を図8を用いて簡単に説明すると、ガラスエポキシ銅張り積層板などのコア基板1にエッチング処理を行うことによって、下層の配線パターン2を形成し(図8(a)参照)、次いで、非貫通孔4dの形成部分に層間絶縁層3dが形成されないような形状でパターニングされたスクリーン版を用いてスクリーン印刷を行うことによって、非貫通孔4dを除いた部分に層間絶縁層3dを形成する(図8(b)参照)。次に、層間絶縁層3dの上にめっきレジスト14を形成した後、無電解銅めっき処理を行うことによって、下層の配線パターン2と上層の配線パターン9aとがBVH10aにより接続された多層プリント配線板Pcを得るというものである(図8(c)参照)。
【0009】
このように特許文献2の方法においては、非貫通孔4dを含むビルドアップ絶縁層(図中の「層間絶縁層3d」に相当)の形成をスクリーン印刷により一括で形成できるため、レーザビームで1穴づつ非貫通孔を穿孔する特許文献1の方法と比較して、製造効率が非常に高い工法といえる。
【0010】
しかし、非貫通孔4dを含む層間絶縁層3dをスクリーン印刷で一括形成した場合、当該非貫通孔4dから露出するビア底部ランド2aの表面には、印刷工法であるが故に発生する極僅かな樹脂(厚さ1〜3μm程度の樹脂)が層間絶縁層3dから滲み出てしまい、当該非貫通孔4dから露出するビア底部ランド2aの一部(図9に示した要部拡大断面図参照)あるいは非貫通孔4dの孔径が小さい場合はその全面(図10に示した要部拡大断面図参照)を樹脂(図中の「滲み樹脂5c」に相当)が覆ってしまうというのが実情であった。
従って、このままの状態でBVH10aを形成するためのめっき処理を行う特許文献2の方法では、BVH仕様としてφ300μm以下の製品には対応できないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11−87929号公報
【特許文献2】特開平9−162550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、非貫通孔を含む層間絶縁層をスクリーン印刷で一括形成した場合においても、容易に高密度配線化(即ち、「小径のBVH形成」「ビルドアップ層に形成される配線パターンのファイン化」)を図ることができる多層プリント配線板と当該多層プリント配線板を容易に且つ低コストで得られる多層プリント配線板の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、コア基板の少なくとも一方の面に層間絶縁層と配線パターンとが交互に積層され、上下層の配線パターン間を接続するブラインドビアホールが当該配線パターン間に位置する層間絶縁層に形成されてなる多層プリント配線板であって、少なくとも、ブラインドビアホール形成用の非貫通孔の開口側周囲に凹み状に形成された傾斜部と当該非貫通孔の開口縁部に形成された丸み部とを有する、スクリーン印刷によって形成された層間絶縁層と、当該スクリーン印刷により滲み出た当該非貫通孔の底部に位置する下層の配線パターン上の滲み樹脂を除去して得られた配線パターン露出済みの非貫通孔と、当該配線パターン露出済みの非貫通孔を含む層間絶縁層に形成された金属めっきからなる配線パターン及びブラインドビアホールとを有することを特徴とする多層プリント配線板により上記課題を解決したものである。
【0014】
また、コア基板の少なくとも一方の面に層間絶縁層と配線パターンとが交互に積層され、上下層の配線パターン間を接続するブラインドビアホールが当該配線パターン間に位置する層間絶縁層に形成されてなる多層プリント配線板の製造方法において、少なくとも、当該層間絶縁層とブラインドビアホール形成用の非貫通孔とをスクリーン印刷にて一括形成することによって、ブラインドビアホール形成用の非貫通孔の開口側周囲に凹み状に形成された傾斜部と当該非貫通孔の開口縁部に形成された丸み部とを有する層間絶縁層を形成する工程と、当該スクリーン印刷により滲み出た当該非貫通孔の底部に位置する下層の配線パターン上の滲み樹脂を除去する工程と、当該滲み樹脂を除去した非貫通孔を含む層間絶縁層に金属めっきを析出させて、上層の配線パターンと上下層の配線パターン間を接続するブラインドビアホールを形成する工程とを有することを特徴とする多層プリント配線板の製造方法により上記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ビルドアップ型の多層プリント配線板の高密度配線化が可能となり、また、高密度配線化を図った当該多層プリント配線板を容易に且つ低コストで得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明多層プリント配線板の第一の実施の形態を説明するための概略断面製造工程図。
【図2】本発明多層プリント配線板の第二の実施の形態を説明するための概略断面製造工程図。
【図3】本発明多層プリント配線板の高密度配線化が可能な理由を説明するための要部拡大断面図。
【図4】層間絶縁層の形成を1回と2回に分けた場合の仕上がり状態を比較説明するための要部拡大断面図。
【図5】BVH形成用以外の非貫通孔の形成例を説明するための要部拡大断面図。
【図6】特許文献1の構成を説明するための概略断面製造工程図。
【図7】特許文献1の問題点を説明するための要部拡大断面図。
【図8】特許文献2の構成を説明するための概略断面製造工程図。
【図9】特許文献2の問題点を説明するための要部拡大断面図。
【図10】特許文献2の他の問題点を説明するための要部拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の第一の実施の形態を、ビルドアップ型の多層プリント配線板Pを得るための概略断面製造工程図を示す図1を用いて説明する。
尚、ビルドアップ層としては、複数層をビルドアップしたり、コア基板の両側にビルドップすることももちろん可能であるが、説明の便宜上、コア基板の片側に1層分のビルドアップ層を積層する例を用いて説明することにした(後述する本発明の第二の実施の形態を説明するための図2に関しても同様である)。
【0018】
まず、図1(a)に示したように、ガラスエポキシ基板などのコア基板1の表面に、後に形成されるBVHのビア底部ランド2aを含む下層の配線パターン2を形成し、次いで、コア基板1上に形成される層間絶縁層3と下層の配線パターン2との密着性を上げるために、当該下層の配線パターン2(ビア底部ランド2aも含む)の露出面を粗化する(当該粗化処理としては、例えば、蟻酸やアミン系錯化剤を主成分とするソフトエッチング処理などが挙げられる。尚、粗化層の図示は省略した)。
【0019】
ここで、当該配線パターン2の形成手段としては、コア基板1に積層された金属箔(例えば「銅箔」)又は金属箔+めっき層(例えば「銅めっき」)をエッチングして形成するサブトラクティブ法や、めっきレジストを利用して所望の配線パターンをめっき(例えば「銅めっき」)で形成するアディティブ法などにより形成することができる。
【0020】
次に、少なくとも非貫通孔4の形成部分に層間絶縁層3が形成されないような形状でパターニングされたスクリーン版を用いて絶縁樹脂を印刷し、当該絶縁樹脂を熱風乾燥炉やオーブンなどで硬化させることによって、当該非貫通孔4と層間絶縁層3とをコア基板1上に一括形成する(図1(b)参照)。
【0021】
ここで、非貫通孔4を含む層間絶縁層3をスクリーン印刷工程で一括形成した場合、実際には図3(該図は図1(b)の要部拡大断面図である)に示したように、非貫通孔4の開口側周囲に凹み状に形成された傾斜部6が形成されるとともに当該非貫通孔4の開口縁部13に丸み部7が形成される形となる[該図(傾斜部6、丸み部7、滲み樹脂5の部分)においては、状態を把握し易くするために、実際のものより誇張した形で示した]。この理由は、スクリーン印刷で塗布された絶縁樹脂が、非貫通孔4側に若干ダレ込むためと考えられるが、図1に示した概略断面製造工程図には、図面を簡略化するために、表面を平滑な状態で示した(図2に関しても同様である)。
【0022】
次に、図1(b)に示したように、印刷工法であるが故に発生するビア底部ランド2a上に滲み出た層間絶縁層3からの滲み樹脂5を除去する滲み樹脂除去工程を行うことによって、滲み樹脂除去済みの非貫通孔4aを形成するとともに当該層間絶縁層3の表面(露出面)を粗化する(図1(c)参照。尚、粗化層の図示は省略した。)。
【0023】
ここで、当該滲み樹脂除去工程としては、化学的な溶解処理(例えば、過マンガン酸ナトリウム水溶液や過マンガン酸カリウム水溶液などを用いる処理)、あるいは物理的な切削処理(例えば、ウェットブラストやサンドブラストなどのブラスト処理)の何れを選択することも可能であるが、高密度配線化が要求される製品に対しては、物理的な切削処理、即ち、ブラスト処理を選択するのが好ましい{図1(b)に付した符号「B」と矢印は、ブラスト処理を模式的に示したものである(図2(b)に関しても同様である)}。
【0024】
その理由は、滲み樹脂5の厚さは1〜3μm程度と非常に薄いものであるため、何れの除去処理においても極僅かな処理時間で除去が可能である。従って、処理後の状態には殆ど差がでないが、滲み樹脂5を除去する際に非貫通孔4の内壁も同時に溶解してしまう化学的な溶解処理に対し、水平方向(ブラストの吹き付け方向に対しての水平方向)への切削処理が弱いブラスト処理の方が、ビア底部ランド2a上に滲み出た滲み樹脂5のみを効率的に除去できるため(即ち、小径の非貫通孔径を維持できるため)、より高密度配線化を図れるからでる。
【0025】
しかし、ウェットブラストなどのブラスト処理は、過マンガン酸ナトリウム水溶液などを用いる化学的な溶解処理と比較して、処理コストが高いというデメリットもあるため、より高密度配線化を求める仕様の場合にはブラスト処理、非貫通孔径(即ちBVH径)が比較的ラフな仕様の場合には化学的な溶解処理とするなど、必要に応じて選択すればよい。
【0026】
因みに今回の処理では、ビア底部ランド2a上に滲み出た1〜3μm程度の滲み樹脂5が除去できればよいため、処理時間は極めて短い。そのため、滲み樹脂5を除去する手段としてブラスト処理を選択した場合、ウェットブラストとサンドブラストの何れの処理においても、ビア底部ランド2aへのダメージは殆ど発生しないが、過剰処理によるビア底部ランド2aへのダメージが少ない(即ち、処理制御が容易)という点で、ウェットブラストを選択するのが好ましい。
【0027】
その理由は、ブラスト処理は、樹脂などの低弾性のものに対しては切削力が弱く、ビア底部ランド2aを構成する銅などの硬質材に対しては切削力が高いという性質を有する。従って、過剰に処理が行われるとビア底部ランド2aが削られてしまうなどの不具合が発生してしまうのであるが、水と砥粒を混ぜ合わせたスラリーを吹き付けるウェットブラストでは、砥粒を直接吹き付けるサンドブラストと比較して対象物へのアタックが弱いため、滲み樹脂5を完全に除去するために長めの処理を行っても、ビア底部ランド2aに殆どダメージが発生しないからである。
【0028】
次に、無電解金属めっき処理(例えば「無電解銅めっき処理」)及び電解金属めっき処理(例えば「電解銅めっき処理」)を順次行うことによって、非貫通孔4aを含む層間絶縁層3の表面に金属めっき8を析出させ(図1(d)参照)、次いで、周知のフォトエッチングプロセス(サブトラクティブ法)により回路形成を行うことによって、上層の配線パターン9と上下層の配線パターン2、9間を接続するBVH10が形成された図1(e)の多層プリント配線板Pを得る。
【0029】
本発明の注目すべき点は、BVH形成用の非貫通孔を含む層間絶縁層の形成手段として、当該非貫通孔と層間絶縁層とをスクリーン印刷により一括形成した後に、当該スクリーン印刷によりビア底部ランド上に滲み出た極僅かな滲み樹脂を除去する工程を設けた点にある{厳密には、スクリーン印刷により、非貫通孔を除いた層間絶縁層形成部に絶縁樹脂を印刷し(この工程を文中において一括形成と表現した)、当該絶縁樹脂の硬化後、ビア底部ランド上に滲み出た滲み樹脂を除去することによって形成する}。
【0030】
これにより、非貫通孔を含む層間絶縁層をスクリーン印刷で一括形成した場合においても、小径の非貫通孔を形成できるため、高密度配線化を図ったビルドアップ型の多層プリント配線板を容易に且つ低コストで得ることができる(即ち、スクリーン印刷で非貫通孔を形成した後、ビア底部ランド上に滲み出た滲み樹脂を除去する工程を設けたことにより、スクリーン印刷で予め形成する非貫通孔の径として、当該滲み樹脂除去工程で除去できる径まで小径化できるため、特許文献2のものよりも小径の非貫通孔が形成できる(例えば、使用する樹脂の種類によっても異なるが、滲み樹脂の広がり幅は非貫通孔の壁面から50μm程度であるため、予めスクリーン印刷で形成できる非貫通孔はφ100μm程度まで対応できる)。
【0031】
また、非貫通孔を含む層間絶縁層をスクリーン印刷で一括形成する構成としたため、上記でも説明したように、非貫通孔4の開口側周囲には凹み状に形成された傾斜部6が形成され、また、非貫通孔4の開口縁部13には丸み部7が形成される(図3参照)。従って、滲み樹脂除去後の非貫通孔4aへのめっき液の浸入がスムーズに行われ、非貫通孔4a内壁(丸み部7も含む)及び層間絶縁層3の表面に析出される金属めっき8の厚さがほぼ均一となるため、当該金属めっき厚を薄くすることができ(図7の例のように、非貫通孔開口縁部13のめっき厚T1を考慮しなくてすむため、層間絶縁層の表面に析出させるめっき厚を薄くできる)、以て、層間絶縁層3の表面に形成する配線パターン(即ち「上層の配線パターン9」)のファイン化も可能となり、より高密度配線化を図ることができる。
【0032】
尚、本実施の形態においては、上層の配線パターン9の形成方法として、層間絶縁層3上に析出させた金属めっき8をエッチングして形成するサブトラクティブ法の例を示したが、図8と同様に、配線パターン形成部分にめっきを析出させるアディティブ法(又はセミアディティブ法)で形成することももちろん可能である(図2に関しても同様である)。
【0033】
続いて、図2を用いて本発明の第二の実施の形態を説明する。
本実施の形態は、下層の配線パターン2が形成されたコア基板1上に形成される層間絶縁層3を、第一の印刷工程と第二の印刷工程に分けて形成した以外は、第一の実施の形態と同じ構成であるため、その説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0034】
まず、下層の配線パターン2(粗化処理済み)が形成されたコア基板1を用意する(図2(a)参照)。次に、第一の印刷工程で当該下層の配線パターン2間に第一の絶縁樹脂を印刷し、次いで、当該第一の絶縁樹脂を熱風乾燥炉やオーブン等で硬化することによって、下層の配線パターン2間に第一の絶縁層3aを埋め込む(図2(b)参照)。
【0035】
次に、下層の配線パターン2間が第一の絶縁層3aで埋め込まれたコア基板1上に、少なくとも非貫通孔4の形成部分に層間絶縁層3bが形成されないような形状でパターニングされたスクリーン版を用いて第二の絶縁樹脂を印刷し(第二の印刷工程)、次いで、当該第二の絶縁樹脂を熱風乾燥炉やオーブンなどで硬化し、第二の絶縁層3bを形成することによって、コア基板1上に非貫通孔4を含む層間絶縁層3を形成する(図2(b)参照)。
【0036】
次に、ビア底部ランド2a上に滲み出た、第一、第二の絶縁樹脂からなる滲み樹脂5a、5bを、第一の実施の形態と同様に除去して非貫通孔4bを形成し(図2(c)参照)、次いで、金属めっき8の形成、上層の配線パターン9と上下層の配線パターン2、9間を接続するBVH10も第一の実施の形態と同様に形成することによって、図2(e)に示したビルドアップ型の多層プリント配線板Paを得る。
【0037】
本実施の形態の注目すべき点は、層間絶縁層3の形成手段として、下層の配線パターン2の間隙を埋め込む第一の印刷工程と、所望の層間絶縁層厚となる残りの絶縁層と非貫通孔4を形成する第二の印刷工程とに分けて形成するようにした点にある。
【0038】
これにより、1回の印刷工程で層間絶縁層3を形成する第一の実施の形態と比較して、当該層間絶縁層3の厚みを稼ぐことができるため、樹脂不足による下層の配線パターン2の露出を確実になくすことができ、また、印刷により形成した層間絶縁層3の表面平滑性が向上するため、上層に形成する配線パターン9のファイン化や良好な形状の非貫通孔4bの形成を容易に行うことができる。
【0039】
即ち、一回の印刷工程で層間絶縁層3を形成する第一の実施の形態では、スクリーン印刷時に下層の配線パターン2の影響(即ち、段差の影響)を受けて、当該下層の配線パターン2上に位置する層間絶縁層3に極僅かな盛り上がりが発生してしまうため、上層に形成する配線パターン9の微細化が低下したり非貫通孔4の形状が崩れたりするなどのマイナス要素(マイナス要素といっても品質的に特に問題となるものではない)を有するものであったが、本実施の形態ではこのようなマイナス要素がないため、上層の配線パターン9のファイン化や良好な非貫通孔4bの形成を容易に行うことができる{図4は、ビア底部ランド2aの端部上に位置する層間絶縁層3が、スクリーン印刷時にビア底部ランド2aの段差の影響を受けて、若干盛り上がってしまう状態(「盛り上がり部15」参照)を示したものであるが(該図は、非貫通孔形成部の概略拡大断面図で、層間絶縁層3の片側のみを示したものである)、非貫通孔4の形成部以外の下層の配線パターン2上においても同様の盛り上がりが発生する}。
【0040】
また、第二の印刷工程で使用する樹脂を、非貫通孔の形成性に特化した樹脂(即ち、印刷後の樹脂流動性の少ない樹脂)を使用できるため、より小径で且つ良好な形状の非貫通孔を形成することができる。
【0041】
尚、本実施の形態では、第一の印刷工程において、非貫通孔4の形成部(即ち、ビア底部ランド2a上)にも絶縁樹脂が印刷されるスクリーン版を用いて、第一の絶縁層3aを形成する例を示したが、第二の印刷工程後にビア底部ランド上に滲み出る滲み樹脂の量を少なくするために(即ち、滲み樹脂の除去処理を容易にするために)、当該第一の印刷工程においても、非貫通孔4の形成部に第一の絶縁樹脂が印刷されない形状でパターニングされたスクリーン版を用いて第一の絶縁層3aを形成するようにしてもよい(この場合、第一の印刷工程と第二の印刷工程において同じスクリーン版が使用できるため、2回のスクリーン印刷工程における製造コストを削減することもできる)。また、この際、第二の印刷工程において、当該第一の印刷工程で用いたスクリーン版よりも非印刷部分(即ち、非貫通孔4の形成部分)の径が大きい径のスクリーン版を用いて、第二の絶縁層3bを形成すれば、第一の印刷工程と第二の印刷工程のそれぞれの工程で形成する非貫通孔の位置合わせを容易に行うことができる。
【0042】
さらに、下層の配線パターン2の間隙を絶縁樹脂で埋める第一の印刷工程として、ロールコーターを用いることも可能である。この場合、スクリーン印刷で用いられる絶縁樹脂よりも粘度が低いものを用いるため、スクリーン印刷で印刷する場合と比較して、当該絶縁樹脂中にボイドが入る懸念を抑制することができる。また、当該ロールコーターとして、縦型両面ロールコーターを用いれば、下層の配線パターン2の間隙に印刷する絶縁樹脂を一度に両面印刷することができるため、片面づつしか印刷できないスクリーン印刷と比較して、製造工程を簡略化することができる。
【0043】
本発明を説明するに当たって、層間絶縁層と一括形成するものとして、BVH形成用の非貫通孔のみを用いて説明したが、その他の非貫通孔ももちろん一括形成が可能である。例えば、BVH形成用の非貫通孔の他にチップ部品などの形状に合わせた非貫通孔も同時に形成すれば、当該チップ部品を埋め込み搭載するキャビティなどを容易に形成することができる{BVH形成用以外に利用される非貫通孔の形状としては、図1、図2で示した非貫通孔4a、4bと同じ構成、即ち、下層の配線パターン(図1、図2の「ビア底部ランド2a」に相当)の周囲に層間絶縁層3がオーバーラップする構成の他に、下層の配線パターン2の外形に沿って層間絶縁層3を形成する図5の構成とすることも可能である}。
【符号の説明】
【0044】
1:コア基板
2:下層の配線パターン
2a:ビア底部ランド
3、3c、3d:層間絶縁層
3a:第一の絶縁層
3b:第二の絶縁層
4、4a、4b、4c、4d:非貫通孔
5、5a、5b、5c:滲み樹脂
6:傾斜部
7:丸み部
8:金属めっき
9、9a:上層の配線パターン
10、10a:ブラインドビアホール(BVH)
11:金属箔
12:ウィンドウ部
13:開口縁部
14:めっきレジスト
15:盛り上がり部
P、Pa、Pb、Pc:多層プリント配線板
B:ブラスト
LB:レーザビーム
T1:開口縁部のめっき厚
T2:外層のめっき厚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア基板の少なくとも一方の面に層間絶縁層と配線パターンとが交互に積層され、上下層の配線パターン間を接続するブラインドビアホールが当該配線パターン間に位置する層間絶縁層に形成されてなる多層プリント配線板であって、少なくとも、ブラインドビアホール形成用の非貫通孔の開口側周囲に凹み状に形成された傾斜部と当該非貫通孔の開口縁部に形成された丸み部とを有する、スクリーン印刷によって形成された層間絶縁層と、当該スクリーン印刷により滲み出た当該非貫通孔の底部に位置する下層の配線パターン上の滲み樹脂を除去して得られた配線パターン露出済みの非貫通孔と、当該配線パターン露出済みの非貫通孔を含む層間絶縁層に形成された金属めっきからなる配線パターン及びブラインドビアホールとを有することを特徴とする多層プリント配線板。
【請求項2】
当該層間絶縁層は、当該スクリーン印刷の際に形成されたブラインドビアホール形成用の非貫通孔以外の他の非貫通孔を有することを特徴とする請求項1に記載の多層プリント配線板。
【請求項3】
コア基板の少なくとも一方の面に層間絶縁層と配線パターンとが交互に積層され、上下層の配線パターン間を接続するブラインドビアホールが当該配線パターン間に位置する層間絶縁層に形成されてなる多層プリント配線板の製造方法において、少なくとも、当該層間絶縁層とブラインドビアホール形成用の非貫通孔とをスクリーン印刷にて一括形成することによって、ブラインドビアホール形成用の非貫通孔の開口側周囲に凹み状に形成された傾斜部と当該非貫通孔の開口縁部に形成された丸み部とを有する層間絶縁層を形成する工程と、当該スクリーン印刷により滲み出た当該非貫通孔の底部に位置する下層の配線パターン上の滲み樹脂を除去する工程と、当該滲み樹脂を除去した非貫通孔を含む層間絶縁層に金属めっきを析出させて、上層の配線パターンと上下層の配線パターン間を接続するブラインドビアホールを形成する工程とを有することを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。
【請求項4】
当該スクリーン印刷による層間絶縁層の形成の際にブラインドビアホール形成用の非貫通孔以外の他の非貫通孔も一括形成し、当該他の非貫通孔から露出する下層の配線パターン上に滲み出た滲み樹脂も当該ブラインドビアホール形成用の非貫通孔から露出する下層の配線パターン上に滲み出た滲み樹脂の除去と同時に除去することを特徴とする請求項3に記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項5】
当該スクリーン印刷による層間絶縁層と非貫通孔の一括形成が、下層の配線パターン間隙に第一の印刷工程によって埋められた絶縁樹脂を硬化させた後に、所望の絶縁層厚となる残りの絶縁層と非貫通孔とを形成する第二の印刷工程として行うことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項6】
当該下層の配線パターン間隙を埋める第一の印刷工程が、非貫通孔の形成部分が印刷されない形状でパターン化されたスクリーン版を用いて行うことを特徴とする請求項5に記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項7】
当該下層の配線パターン間隙を埋める第一の印刷工程が、非貫通孔の形成部分が印刷されない形状でパターン化されたスクリーン版を用いて行われ、且つ、当該第二の印刷工程が、当該第一の印刷工程で形成された非貫通孔の径よりも大きい径となるようにパターン化されたスクリーン版を用いて行われることを特徴とする請求項5に記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項8】
当該下層の配線パターン間隙を埋める第一の印刷工程が、ロールコーターで行われることを特徴とする請求項5に記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項9】
当該滲み樹脂を除去する工程が、ブラスト処理であることを特徴とする請求項3〜8の何れか1項に記載の多層プリント配線板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−69854(P2012−69854A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215020(P2010−215020)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000228833)日本シイエムケイ株式会社 (169)
【Fターム(参考)】