多層光記録媒体、情報記録方法及び情報再生方法
【課題】 記録層全面が均一に着色・消色する層選択型光ディスクを提供する。
【解決手段】 記録膜を挟む一対の透明電極間へ電圧をディスク内外周より印加する。このとき、円形ディスクでは半径位置によらず記録膜に印加される電圧が等しくなる為、全面着色することが可能である。
【解決手段】 記録膜を挟む一対の透明電極間へ電圧をディスク内外周より印加する。このとき、円形ディスクでは半径位置によらず記録膜に印加される電圧が等しくなる為、全面着色することが可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を用いて情報の記録再生を行う多層光記録媒体、及びその媒体に情報を記録・再生する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光記録媒体として普及している光ディスクは、記録媒体(ディスク)自身を記録再生装置から外せること、記録媒体自身が比較的安価であること、が大きな特徴になっている。従って、この記録媒体に情報を記録したり、またはこの記録媒体から情報を再生したりするための光ディスク装置では、この特徴を失わずに情報の記録や再生をより高速・高密度化することが望ましい。
【0003】
記録媒体の記録膜に光を照射して情報を記録する原理は種々知られている。その中で、有機材料を記録膜の材料として使用した光ディスクで実用化されているものには、CD−RやDVD−Rがある。これらは、照射する光の光源の波長に対応して光を吸収する色素を含む記録膜を有しており、この記録膜にレーザを照射することで、記録膜の材料を変質させて情報が記録されている。また、記録膜材料の相変化(相転移、相変態とも呼ばれる)を利用して情報の記録や再生を行う手法など、熱による原子配列変化を利用する手法は、多数回書換え可能な情報記録媒体に利用されている。例えば、相変化光ディスクの基本構成は、基板上に保護層、Ge−Sb−Te系等の記録膜、保護層、反射層を順次積層した構造である。相変化光ディスクではDVD−R DLとして記録膜が2層のものがすでに市販されている。しかし従来の記録膜を複数層備えた多層記録媒体では、特に3層以上では、各層の透過率と記録感度とがトレードオフの関係にあるため、再生信号品質か記録感度か、どちらかが犠牲にならざるを得なかった。また、DVDの場合、隣接する層に記録されている情報の悪影響(層間クロストークなど)を受けないように層間隔を約20μm以上にする必要があり、層数を多くすると記録媒体の作製が困難であった。
【0004】
特許文献1には、記録膜の材料として、エレクトロクロミック材料を用い、電圧によって層を選択する方式を採用した光ディスクが記載されている。装置に関しては、記録・再生装置が静止している状況から回転するディスクに電圧を供給するために、回転軸またはその近傍に電圧伝達機構を配置する。特許文献1または特許文献2には、層選択方式の光ディスクへの電圧伝達機構が開示されている。
【0005】
記録膜の材料としてエレクトロクロミック材料を用いたエレクトロクロミックデバイスは、下面透明電極、エレクトロクロミック膜、固体電解質膜、上面透明電極が順次積層された構成によって形成される。この上下透明電極間に電圧印加することにより、固体電荷質膜内のH+(プロトン)もしくは陽イオンがエレクトロクロミック膜内に入り、エレクトロクロミック材料の化学構造が変わることにより着色する。記録レーザ光照射によって着色機能が失われて記録マークが形成されれば、層全体を透明に戻したとき記録マークが見えず、他の層の記録・再生時に障害とならない。これにより、他の層との間で干渉が無いので層間隔を狭くでき、従来の多層ディスクと比較して多層・大容量化が可能となる。
【0006】
【特許文献1】特開2003−346378号公報
【特許文献2】特開2004−310912号公報
【特許文献3】特開2006−107658号公報
【非特許文献1】“Optical Characteristics for Layer-Selection-type Recordable Optical Disk (LS-R)”, A. Hirotsune et al., ISOM/ODS 2005 Tech. Digest (2005) MC7
【非特許文献2】J. I. Ponkove: Optical Processes in Semiconductors (Dover, 1975) p75
【非特許文献3】産業図書(株)平成3年6月28日初版発行の「エレクトロクロミックディスプレイ」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のとおり、層選択方式を採用することは多層ディスクにとって好ましい。一方、透明電極の持つ抵抗が大きいため、電圧印加時に、電圧印加点付近であるディスク内周部の電圧が最も高く、外周に向かうにつれ電圧が小さくなってしまう。このため、記録膜面内の着色が均一でなくなるので、層選択型光ディスクでは記録再生が困難になるという問題が生じる。
【0008】
まず、最初に従来の装置において内周から電圧印加を行っていた理由を説明する。電圧を印加するタイプの層選択方式を採用した光ディスクは、記録層の層数を非常に多くすることが可能であるという長所がある。そこで、電圧伝達機構では、この記録層の層選択のために、記録層の層数と同じだけのピン電極を装置側に設け、媒体側の電極に接触させる。層選択は、スイッチングにより所望の層に接続された電極に電圧印加することで行う。このピン電極は回転軸に固定されたディスク載置部に設置されており、回転安定性の観点から小型であることが望ましい。そのため、ピン電極はディスク内周部において媒体内に設けられた電極と接触する構造となっている。
【0009】
続いて、層選択方式を採用した光ディスクに用いられる透明電極の持つ抵抗がなぜ大きくなるか説明する。層選択方式を採用した光ディスクは、選択されていない層(記録領域)が透明である必要がある。しかし、記録層の多層化に伴い、ディスク1枚を構成する層数が全体として増大し、1層あたりのわずかな光の吸収量の影響が大きくなり、結果として信号強度が低下することがある。層選択方式に採用されるエレクトロクロミック材料を用いた光ディスクについては、記録層の多層化の際に必要な各々の層の光学特性計算値が述べられた非特許文献1によると、20層の記録層を有する多層ディスクでは、それを構成する各層での消衰係数k=0.01以下であることが必要であることが報告されている。この結果は、光ディスクの記録再生時に用いられる光の波長においては、各層において1%の光の吸収も許されないことを意味する。光学デバイス向けの市販のITOガラスでは、透過率90%以上という仕様が良く用いられているが、この値は吸収率10%以下と置き換えれば、多層光ディスクにおける光の吸収率1%以下に比べ非常に大きな値である。
【0010】
この透明導電膜の透過率と導電率との間にトレードオフの関係があることは、例えば、Drudeの古典電子論から導くことができるが、非特許文献2の中で、このことを引用している。古典電子論では金属における自由キャリア吸収の吸収係数αfは、以下の数1で表される。
【0011】
【数1】
【0012】
ここで、Nはキャリア密度、nは屈折率、τは散乱の緩和時間である。
半導体では、τは散乱のメカニズムによって異なる波長依存性を持つため、αfは以下の数2で表される。
【0013】
【数2】
【0014】
ここで、A、B、Cは材料によって決まる定数である。一方、シート抵抗のもとになる直流の導電率σは以下の数3で表すことができる。
【0015】
【数3】
【0016】
ここで、Nはキャリア密度、μは移動度である。この移動度μは、等方的な散乱の場合に、以下の数4で表すことができ、
【0017】
【数4】
【0018】
導電率σは以下の数5で表される。
【0019】
【数5】
【0020】
ここで、τと自由キャリア吸収のτが同じであるとすると、自由キャリア吸収と導電率の間には、以下の数6が成立する。
【0021】
【数6】
【0022】
以上により、透明電極の抵抗率を下げるためには、吸収率を上げる(透過率を下げる)必要があることがわかる。つまり、層選択方式を採用した光ディスクでは、このトレードオフを解決しながら大容量化しなければならないので、市販のITOガラスと比べても、透明電極はある程度抵抗を持ってしまうこととなる。
【0023】
続いて、この透明電極の抵抗が半径依存性(光ディスクの半径方向の位置に依存する特性)を持つことをシミュレーションによって確認したので、その結果について述べる。
(シミュレーションモデル)
ここでエレクトロクロミック膜の着色メカニズムを考察するために、図1に示す電気的等価回路モデルを考える。モデルの簡略化のために、エレクトロクロミック膜・電解質層を1セットのエレクトロクロミック記録膜とする。ここで、記録膜の垂直・水平方向を考え、等価回路モデルを考えると以下のようになる。
【0024】
光ディスクを想定したモデルでは、ディスク平面をrθ平面(半径r、角度θ)で表し、ディスク垂直方向をzで示すことがある。しかし、本モデルでは、計算の簡略化のためにディスクのθ方向に寄らず媒体構造は等しいと仮定して、中心からの距離(水平方向)、記録膜の構造(垂直)方向のみに注目している。さらにディスク平面をn個のセルに分割し、その領域の電気特性値を代入し、任意の半径位置(水平方向)での電圧応答を求めている。
【0025】
【化1】
【0026】
電圧が流れたパスのみに着目すると、この等価回路モデルは図2のように簡略化できる。ここで、n番目の電圧が流れたパスのみに着目した場合、各素子に流れる電流を以下の式のように定義する。
【0027】
【数7】
【0028】
なお、エレクトロクロミックデバイスの媒体構成によって、図3に示すような等価回路モデルとなることもある。これは、図1に示されたエレクトロクロミック記録膜の抵抗成分と電気容量成分とが並列接続された素子に、電気容量成分の前にもうひとつ抵抗成分が付与された形である。
【0029】
本発明は、エレクトロクロミックデバイスが持つ電気特性に着目したものであり、その等価回路形状を図2の一例に限定するものではない。しかしながら、以下の実施例におけるシミュレーション及び作製した媒体は、図2に示す等価回路モデルのものである。
【0030】
【数8−1】
【0031】
【数8−2】
【0032】
【数9】
【0033】
【数10】
【0034】
ここで、漸化式を使って、上記の式の微分方程式を解く。
【0035】
【数11】
【0036】
【数12】
【0037】
【化2】
【0038】
図5から分かるように、外周に向かうに従って、電圧が低くなっている。この結果は、ディスク内周に電圧印加すると、ディスク外周に向うに従って電圧が小さくなることを示している。エレクトロクロミックデバイスは、記録膜に印加される電圧の大きさによって着色し、光学的性質(透過率・反射率・吸収率)が変化するため、ディスク内部での電圧分布は、記録再生時の不安定動作を生じさせてしまう。
【0039】
本発明の目的の一つは、これらの問題点を解決し、透明電極の抵抗の大きさに関係なく安定な大容量記録・層選択を達成するための光記録媒体、並びにこの光記録媒体に情報を記録・再生する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0040】
本発明による光記録媒体は、一対の電極の間に積層して形成された複数のエレクトロクロミック記録層を有する。ディスク面内において、水平方向から見て記録膜の両側である内外周より電圧を印加する。内外周より電圧を印加するために、光記録媒体には、外周まで電気を導く引き出し電極と、内周へ電気を導く補助電極とが設けられ、エレクトロクロミック記録膜を挟んだ一対の電極のそれぞれに接続されている。
【0041】
本発明では、従来のように、記録膜を挟んだ一対の透明電極に内周から電極ピンで接触することにより記録膜への電圧印加を行うものではない。一方の電極ピンに印加された電圧は、引き出し電極の導線部分からディスク外周に設けられたリング部分を介し透明電極へ向かう。もう一方の電極ピンに印加された電圧は、内周に設けられた補助電極のリング部分より透明電極へと向かう。このように構成することで、一対の透明電極に挟まれた記録膜の印加電圧をディスク半径位置によらずに一定とすることができる。このとき、ディスクにおいては、半径位置によらずに記録膜に印加される電圧が等しくなることで、全面が均一に着色されることになる。この光記録媒体に対して記録・再生動作を行うと、選択され、着色された記録層に対してのみ、情報の記録あるいは再生を行うことができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明によると、透明電極の抵抗の大きさに関係なく、従来の光記録媒体の場合に比べて、より記録面全体が均一に着色され、かつ同一ディスク半径での着色変化、反射率変化が少ないため、安定した記録・再生を行うことが可能となる。
【0043】
そのため、より安価で高密度記録が可能な記録媒体とその記録媒体に情報を記録・再生する方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
本発明の情報記録媒体には、電圧選択式の層選択型多層光ディスクを用いる。電圧層選択式多層記録媒体を用いるとき、各記録層の基本状態が透明な状態であれば、記録層を挟む電極層間に電圧をかけた場合に、その記録層だけが着色する。本明細書では、H+(プロトン)もしくは陽イオンにより、エレクトロクロミック材料が着色するときの印加電圧の向きを正と定義する。
【0045】
本発明でいうエレクトロクロミック材料層は、電圧印加によって直接着色する材料の層以外に、電圧印加によって発光する領域とその光を受けて着色または消色する領域を有する層も含む。このような記録媒体を実現するには、記録層として、有機または無機のエレクトロクロミック材料層と固体電解質層との積層膜、またはエレクトロルミネッセント材料とフォトクロミック材料との混合材料層あるいは積層膜を用いれば良い。これにより、任意に選択された層だけが光を吸収し、他の層はほとんど光の吸収が無いようにできる。エレクトロクロミック材料としては、例えば酸化タングステン、チオフェン系有機分子の重合体がある。その他のエレクトロクロミック材料としては、非特許文献3に開示されている各種材料など、既知の多くのエレクトロクロミック材料が使用可能である。
【0046】
異なる層を選択する際は、異なる電極ピンを選択すれば良い。異なる電極ピンは、異なる引き出し電極、補助電極を通じて、選択を所望する層に接した透明電極に接続されている。
【0047】
以上の構造により、多層化にとって課題になっている透明電極の抵抗の大きさに関わらず、記録膜を均一に着色することが可能である。この多層光記録媒体に対して記録・再生動作を行うと、選択され、着色された記録層に対してのみ情報の記録あるいは再生を行うことができる。
【0048】
情報の記録再生は以下のように行う。一対の電極で挟まれた電圧印加によって着色する複数の記録層を有するディスクを回転軸に固定されたディスク載置部に設置し、ディスク載置部に載置されたディスクをディスク押え部により押えて固定する。この押え部はディスクと共に回転する。ディスク載置部のディスク接触面に設けた一対の接触電極により、複数の記録層の中から指定した1つの記録層を含む一対の電極に、指定した1つの記録層が着色するように電圧を印加する。こうして指定された記録層を着色させ、着色した記録層に対して、光照射によって情報の記録・再生を行う。
(実施例1)
【0049】
【数13】
【0050】
【数14】
【0051】
【化3−1】
【0052】
【化3−2】
【0053】
ただし、シミュレーションでは、上記式が全ての角度方向で成立すると仮定した。実際には媒体とピン電極との接触点は一点であるため、補助電極、引き出し電極のリング部分の抵抗は、透明電極に比べれば低いものの、ゼロではなく抵抗による電圧降下が生じている。また、実際のディスクでは製膜プロセスへの依存によって膜厚変動が生じて、面内で電気特性が多少変動している。そのため、各角度において式の係数が変わってくるため、実際に作製した媒体では、シミュレーションのように電圧分布が完全に均一になることはない。しかし、図5と図7とを比較すると分かるように、電圧印加位置変更により、外周部までの電圧が印加できるようになっている。
(実施例2)
実施例2として、3層構造の層選択方式を採用した光ディスクにおいて、ディスク内外周より電圧印加を行った例について説明する。
【0054】
本実施例で使用した光情報媒体の電気的等価回路は、図8のように表すことができる。1層目の記録層1、2層目の記録層2、3層目の記録層3は、それぞれ透明電極層4に挟まれており、それぞれの透明電極は、引き出し電極5または補助電極6と接続されている。ある特定の層の記録層選択を行うには、その層を指定して、接触電極7を通して装置より電圧供給を得ることで、所望の層に接続した引き出し電極5または補助電極6間に電圧を印加することにより記録層が着色する。
【0055】
実際の光情報媒体、光記録再生装置の構成を考えて、図9に示すように複数の記録層を持つ記録媒体と装置とを接続して、電圧印加する方法を説明する。ディスク基板上に引き出し電極6が形成されており、外周まで引き出された配線は、1層目の記録層1と2層目の記録層2との間の透明電極4に接続されている。また、1層目の記録層1に接した片方の透明電極4は、ディスク内周部において、またディスク平面において、リング状の補助電極5に接続されている。それぞれの補助電極5と、引き出し電極6とは導電性接着剤を介して、ディスク表面に置かれた同心円状の接触電極7と接続される。記録再生装置のディスク回転軸上で、それぞれ別の電極に接続するため、装置に設けられたディスク中心穴付近の複数のピン電極8に接続されている。ディスクは図8の状態から上下を反転させて回転軸に取り付ける。回転軸9のディスク受け部分にはディスクの電極に対応する位置に置かれた上下方向に少しバネ性がある複数のピン電極8があり、各接触電極7に接続される。なお、図9中の破線9は回転軸を示している。
【0056】
図10に、図9の光情報媒体を異なる角度から見たときの断面を示す。ここで示すように、引き出し電極6を経由して、3層目の記録膜3に接続された透明電極4を形成するときには、引き出し電極配線用絶縁層14が必要となる。この引き出し電極配線用絶縁層14は、内周から電圧が印加されている透明電極と接触(導通)しないために設けられている。
【0057】
図11に示したように、直径12cm、厚さ0.6mmで表面にトラックピッチが0.74μmで深さ60nm、溝幅0.35μmのイングルーブ記録用のトラッキング用の溝を有し、アドレス情報を上記溝のウォブルとして有するポリカーボネート基板10上に、引き出し電極6としてCuを100nm、絶縁層12としてSiO2を1μm、反射層13としてAg94Pd4Cu2を100nm、透明電極4としてITO(酸化スズ亜鉛合金)を形成し、記録膜として、還元型のエレクトロクロミック材料層15、固体電解質層16、酸化型のエレクトロクロミック層17を用い、透明電極4で挟みこんだ。この構造を3回繰り替えし、3層媒体を作製した。さらに、この上に紫外線硬化樹脂18を用いて、直径120mm、厚さ0.6mmのポリカーボネート基板19を貼り付けた。光はこの貼り合せ基板側から入射させた。
【0058】
透明電極は、透明性を重視し、記録再生に用いるレーザ波長λ=660nmにて吸収がない透明電極ITOをスパッタにより製膜した。この膜厚100nmの透明電極ITO薄膜のシート抵抗は400Ω/□であり、市販の透明電極ITOガラスのシート抵抗数十Ω/□に比べ高い。これは、市販の透明電極ITOガラスはシート抵抗を最優先で作製されており、多少の吸収を含むためである。
【0059】
【化4】
【0060】
反射層13は、パターン製膜された引き出し電極6へ記録再生光が届かないようにする役目がある。アクリル系紫外線硬化樹脂14にLiトリフロロメタンスルフォネートを用いた。紫外線硬化樹脂の膜厚は25μmであった。
【0061】
図12に示すように、引き出し電極、補助電極を形成した。ポリカーボネート基板10上に製膜した引き出し電極(プリント基板部)20は、ディスク内周から外周へと伸びる配線であり、スパッタ時にマスクに形成できる。引き出し電極リング部分21は全ての記録膜が製膜を終えた後、マスクを用いてリング状に金属を製膜することにより、それぞれの接続する透明電極上に形成できる。補助電極5は、引き出し電極リング部分21と同様、全ての記録膜が製膜を終えた後、マスクを用いてリング状に金属を製膜することにより、それぞれの接続する透明電極上に形成できる。最後に、引き出し電極(プリント基板部)20と引き出し電極リング部分21とを電気的に接続する必要がある。今回は、この引き出し電極接続部22を金属膜スパッタにて形成した。全ての記録膜製膜終了時には、まだ全ての透明電極が露出しているためそのまま金属製膜を行うと、所望の透明電極以外のものと接続(導通)してしまう懸念がある。そこで図10に示したように、引き出し電極リング部分を製膜した後に絶縁膜14を形成し、その絶縁膜の上に通す形で、電極接続部(金属膜)22を形成した。
【0062】
引き出し電極、補助電極にはCuをスパッタにて製膜した。各膜厚は、引き出し電極(プリント基板部)20、引き出し電極リング部分21、補助電極5が共に100nm、引き出し電極接続部(金属膜)24は、1.5μmである。引き出し電極接続部24(金属膜)は安定した電気的接続の観点から、絶縁層14よりも膜厚が大きいことが望ましい。
【0063】
このように、記録膜をはさむ上下の透明電極にリング状の金属電極が形成され、内外周より電圧印加されることで、実施例1のように記録膜全面に電圧が印加されることが期待できる。この(リング状)補助電極5、引き出し電極リング部分21の配置は、ディスク上の任意の点から前記ディスク外周部までの距離が一定の場合、前記任意の点から前記引き出し電極までの距離が一定であり、前記任意の点から前記ディスク内周部までの距離が一定の場合、前記任意の点から前記補助電極までの距離が一定となる特徴がある。
【0064】
記録または再生を行うときのドライブフローを図13に示す。複数の記録層の中で情報の記録または再生を行いたい層について、本発明では当該層と表記する。
【0065】
まず、当該層を挟む一対の透明電極に電圧を印加して、当該層を着色させる。着色することにより反射率が変化し、装置の光検出器で信号を検出することが可能となる。本発明では、当該層は面内均一着色となるため、当該層全面で反射率が一定となる。したがって、当該層の内外周で反射率が変わらないため、当該層選択時に印加した電圧はそのままの状態で記録再生を行うことができる。一方、従来の電圧印加方法では、ディスク半径位置により着色分布が生じてしまうため、着色の濃い内周部と着色の薄い外周部では反射率が異なってしまう。この状態では安定した記録再生を行うことができないため、ドライブフローとして、記録再生箇所に光ヘッドを移動させた後に電圧印加制御を行い、所望の反射率になるように調整してから記録再生を行う必要がある。このため、本発明に方法に比べ、電圧制御のための時間ロスと、外周部を記録再生する際の電力ロスが生じる。
【0066】
記録または再生を行いたい記録層に対応する電圧を透明電極に印加すると、その層だけが着色し、レーザ光を吸収、反射するようになるので、波長660nmのレーザ光を照射すると着色した層のみ選択的に情報の記録や読み出しができる。このとき、他の記録層は無色であり、何も変化しない。上記記録媒体に対して、情報の記録再生を行った。図14を用いて、情報記録再生の動作を説明する。まず、記録再生を行う際のモーター制御方法として、記録再生を行うゾーン毎にディスクの回転数を変化させるZCLV(Zoned Constant Linear Ve1ocity)方式を採用したものについて述べる。
【0067】
それぞれのデータは8ビットを1単位として、8−16変調器147に伝送される。情報記録媒体141上に情報を記録する際には、情報8ビットを16ビットに変換する変調方式、いわゆる8−16変調方式を用い記録を行った。この変調方式では媒体上に、8ビットの情報に対応させた3T〜14Tのマーク長の情報の記録を行っている。図中の8−16変調器147はこの変調を行っている。なお、ここでTとは情報記録時のクロックの周期を表している。ディスクは光スポットとの相対速度が15m/sの線速度となるよう回転させた。
【0068】
8−16変調器147により変換された3T〜14Tのデジタル信号は、記録波形発生回路146に転送され、マルチパルス記録波形が生成される。記録波形発生回路146内において、3T〜14Tの信号を時系列的に交互に「0」と「1」に対応させるようにしている。また、上記記録波形発生回路146内は、マーク部を形成するための一連の高パワーパルス列を形成する際に、マーク部の前後に位置するスペース部の長さに応じてマルチパルス波形の先頭パルス幅と最後尾のパルス幅とを変化させる方式(適応型記録波形制御)に対応したマルチパルス波形テーブルを有しており、これによりマーク間に発生するマーク間熱干渉の影響を極力排除できるマルチパルス記録波形を発生している。
【0069】
記録波形発生回路145により生成された記録波形は、レーザ駆動回路146に転送され、レーザ駆動回路146はこの記録波形をもとに、光ヘッド143内の半導体レーザを発光させる。光ヘッド143には、情報記録用のレーザビームとして光波長660nmの半導体レーザが使用されている。また、このレーザ光をNA0.65の対物レンズにより光ディスク141の記録層上に絞り込み、レーザビームを照射することにより情報の記録を行った。
【0070】
上記のような記録原理であるから、同一または別々の記録トラックに、単一の光ヘッドからまたは複数の光ヘッドから複数の光スポットを形成し、同時に記録することも容易に行える複数の光スポットを用いることにより、高速化が実現可能である。
【0071】
今回、層選択ができるかどうか確認するために、ディスクを装置に接した状態で電圧を印加して、着色による反射光量変化を装置の光検出器での出力電圧変化として確認した。これは、反射膜14があるためディスク全面で干渉による色変化が生じており、着色時の変化を目視では判別しにくいために行ったものである。それぞれの透明電極に対応したピン電極へ選択的に3Vの電圧印加を行うことにより、所望の層の着色をテスタにて反射率変化として確認した。トラッキングをかけた状態にて、ディスク一周に渡り反射率変化は10%であり、内外周より電圧印加する効果を確認できた。
(実施例3)
実施例3として、図15に示すような透明電極を引き出し電極として用いた例を挙げる。エレクトロクロミック膜等の製膜条件は実施例2と同様である。しかし、透明電極を用いるため、最下層のパターン基板を遮蔽するための反射膜13が不要となる。しかし、透明電極では光の吸収がないとしても、周りの物質との屈折率差により反射が生じてしまうので、本実施例では透明電極の屈折率に近い絶縁層の材料を選ぶ必要がある。
【0072】
【化5】
【0073】
図17に示すように、引き出し電極、補助電極を形成した。ポリカーボネート基板10上に製膜した引き出し電極(プリント基板部)23は、ディスク内周から外周へと伸びる配線であり、スパッタ時にマスクに形成した。引き出し電極リング部分21は全ての記録膜が製膜を終えた後、マスクを用いてリング状に金属を製膜することにより、それぞれの接続する透明電極上に形成した。補助電極5は、引き出し電極リング部分21と同様、全ての記録膜が製膜を終えた後、マスクを用いてリング状に金属を製膜することにより、それぞれの接続する透明電極上に形成した。最後に透明電極引き出し電極23と引き出し電極リング部分21を電気的に接続する必要がある。
【0074】
引き出し電極接続部24をワイヤーボンディングにて形成した。ワイヤーボンディングは直接ワイヤーを接続させる方法である。ワイヤーボンディングは配線作業がスパッタに比べ難しいが、実施例3のように大きな膜厚の金属膜をスパッタが必要にならないこと、また直接配線なので抵抗が金属配線同様小さくすることができる利点がある。ワイヤーは直接所望の補助電極5と引き出し電極リング部分21との間でしか接続されないが、絶縁膜3を形成した方が望ましい。
【0075】
透明電極引き出し電極23は、ITO透明電極を100nmスパッタした。その他の引き出し電極、補助電極にはCuをスパッタした。各膜厚は、引き出し電極リング部分21、補助電極5が共に100nmである。
【0076】
ディスクを装置に接した状態で電圧を印加して、着色による反射光量変化を装置の光検出器での出力電圧変化として確認した。それぞれの透明電極に対応したピン電極へ選択的に5Vの電圧印加を行うことにより、所望の層の着色をテスタにて反射率変化として確認した。トラッキングをかけた状態にて、ディスク一周に渡り反射率変化は15%であり、内外周より電圧印加する効果を確認できた。
【0077】
また、この構造のディスクでは反射膜がないため、電圧印加した状態の記録膜の変化を色の変化として目視で確認できる。5Vの電圧印加時には、当初無色だった記録膜が濃い青色へと記録膜全体で変化することが確認できた。
【0078】
実施例2に比べて着色に必要な印加電圧が大きいのは、透明電極引き出し電極23での電圧低下が原因である。しかし反射膜13が不要で、透過型の装置構成を採用できる。
(実施例4)
実施例4として、透明電極の引き出し電極が記録再生光の入射方向から見て一番奥にない例を挙げる。透明電極を用いるメリットは、反射層が必要でないこと、引き出し電極のレイアウトが自由になる点である。実施例2の金属配線の場合では、記録再生光から配線を隠すために反射膜が別途必要となったが、透明電極で配線するのであれば記録再生光からは透明に見えるため、実施例3のように光入射側よりみて一番奥の層に配置するだけでなく、途中の層、また一番手前側の層に配置することが可能となる。
【0079】
このとき図18に示すように、あらかじめエレクトロクロミック膜を製膜した基板25と、もうひとつ引き出し電極を透明電極にて形成したパターン基板26基板とを、絶縁層としての役目を持つ紫外線硬化性樹脂27により貼り合わせる。透明電極の引き出し電極23を所望の透明電極4と電気的に接続させるために、異方性導電性樹脂接着剤28を用いる。
【0080】
異方性導電性接着剤とは、応力を与えた方向のみに導電性を有する接着剤であり、各層へ接続するための引き出し電極と対応する電極を一度に接続することが可能となる(例えば、(株)日立化成製アニソルム)。従来の実施例と比較すると、スパッタ等の製膜時のようにパターン製膜のためのマスクや絶縁層が必要なく、銀ペーストに代表される通常の導電性接着剤を用いるときのように、導電性接着剤が所望の透明電極以外のものと接続しないよう特別な仕切り等を設ける必要がない。したがって、媒体垂直方向の配線プロセスが容易となり、層選択可能な光情報媒体の作製が安価で可能となる。
【0081】
【化6−1】
【0082】
【化6−2】
【0083】
図20に示すように、引き出し電極、補助電極を形成した。ポリカーボネート基板25上に製膜した透明電極の引き出し電極23は、ディスク内周から外周へと伸びる配線であり、スパッタ時にマスクに形成した。引き出し電極リング部分21はポリカーボネート基板26上の全ての記録膜が製膜を終えた後に、マスクを用いてリング状に金属を製膜することにより、それぞれの接続する透明電極上に形成した。補助電極5は、引き出し電極リング部分21と同様、全ての記録膜が製膜を終えた後に、マスクを用いてリング状に金属を製膜することにより、それぞれの接続する透明電極上に形成した。最後に透明電極引き出し電極23と引き出し電極リング部分21とを電気的に接続する必要がある。
【0084】
この引き出し電極接続部28を25μmの膜厚で、異方性導電性樹脂によって形成した。透明電極の引き出し電極23は、ITO透明電極を100nmスパッタした。その他の引き出し電極、補助電極にはそれぞれCuをスパッタした。各膜厚は、引き出し電極リング部分21、補助電極5が共に100nmである。
【0085】
ディスクを装置に接した状態で電圧を印加し、着色による反射光量変化を装置の光検出器での出力電圧変化として確認した。それぞれの透明電極に対応したピン電極へ選択的に6Vの電圧印加を行うことにより、所望の層の着色をテスタにて反射率変化として確認した。トラッキングをかけた状態で、ディスク一周に渡り反射率変化は15%であり、内外周より電圧印加する効果を確認できた。
【0086】
実施例3に比べて着色に必要な印加電圧が大きかったのは、導電性接着剤の密着性が低かったことによる電極内での電圧低下が原因である。しかし、実施例3と比べて、本実施例では、記録膜とパターン電極とを別々の基板に分けて作製することができ、絶縁層が必要ではなく、異方性導電性樹脂を用いて容易にディスク垂直方向での配線が可能であり、光情報媒体作製プロセスが容易であるという利点がある。
(実施例5)
実施例5として、図21に示すように、引き出し電極が形成された層にプリント回路基板29を作製した例を挙げる。プリント回路基板29の作製はスパッタ、あるいは塗布で行われるため、製膜時には配線部分のみ選択的に電極材料を堆積するためのマスクが必要である。ここでは、このマスクを用いて、引き出し電極だけでなく基板上配線も作製し、ICチップとの接続を行った。本発明では、ディスク一面に電気配線の作製が容易にでき、かつ層選択方式を採用した光ディスクでは、媒体に直接電気を供給できる特徴を利用し、大規模な電気回路を駆動することができる。
【0087】
【化7】
【0088】
図23に示すように、引き出し電極、補助電極、基板上配線を形成し、基板上に積載したICチップと電気的接続を行った。ポリカーボネート基板10上には、ICチップが積載されており、ICチップへ電気を供給するための配線は、引き出し電極(プリント基板部)20と同時にマスクに用いて製膜した。
【0089】
引き出し電極リング部分21は全ての記録膜が製膜を終えた後、マスクを用いてリング状に金属を製膜することにより、それぞれの接続する透明電極上に形成できる。補助電極5は、引き出し電極リング部分21と同様に、全ての記録膜が製膜を終えた後、マスクを用いてリング状に金属を製膜することにより、それぞれの接続する透明電極上に形成できる。最後に引き出し電極(プリント基板部)20と引き出し電極リング部分21とを電気的に接続する必要がある。今回は、この引き出し電極接続部22をワイヤーボンディングにて形成した。
【0090】
引き出し電極、補助電極、基板上配線はそれぞれCuをスパッタにて製膜した。各膜厚は、引き出し電極(プリント基板部)20、引き出し電極リング部分21、補助電極5、基板上配線共に100nmである。
【0091】
ディスクを装置に接した状態で電圧を印加し、着色による反射光量変化を装置の光検出器での出力電圧変化として確認した。それぞれの透明電極に対応したピン電極へ選択的に3Vの電圧印加を行うことにより、所望の層の着色をテスタにて反射率変化として確認した。トラッキングをかけた状態にて、ディスク一周に渡り反射率変化は15%少なく、内外周より電圧印加する効果を確認できた。
【0092】
また、ICチップを接続したピン電極に1.5Vの電圧印加を行ったところ、ICチップの出力信号を確認した。一方で、電圧印加を行っていないときはICチップの出力信号はなく、電圧印加によるICチップの正常動作を確認した。
【0093】
光ディスクへのICチップ埋め込みは、ICチップへの電圧供給を非接触で行うため、給電用のアンテナを形成する必要がある。しかし、層選択光ディスクでは直接電圧が供給されるためアンテナ形成は不要であり、前記マスクを用いてICチップと直接結線すれば良い。そのため、低消費電力駆動しかできないICチップとは異なり、本発明では、ICチップのみならずオペアンプやダイオード等の電源を必要とする大型電気回路の駆動も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】電気的等価回路モデルの一例を示す図。
【図2】電気的等価回路モデルの一例を示す図。
【図3】電気的等価回路モデルの一例を示す図。
【図4】電気的等価回路モデルの一例を示す図。
【図5】光記録媒体上の電圧値の測定結果を示す図。
【図6】電気的等価回路モデルの一例を示す図。
【図7】光記録媒体上の電圧値の測定結果を示す図。
【図8】実施例の光情報媒体の電気的等価回路を示す図。
【図9】複数の記録層を持つ記録媒体と装置との接続を示す図。
【図10】複数の記録層を持つ記録媒体と装置との接続の一例を示す図。
【図11】光情報媒体の断面図。
【図12】実施例における電極の配線を示す図。
【図13】記録または再生時のドライブフローを示す図。
【図14】情報記録再生の動作を説明する図。
【図15】複数の記録層を持つ記録媒体と装置との接続の一例を示す図。
【図16】光情報媒体の断面図。
【図17】実施例における電極の配線を示す図。
【図18】複数の記録層を持つ記録媒体と装置との接続の一例を示す図。
【図19】光情報媒体の断面図。
【図20】実施例における電極の配線を示す図。
【図21】複数の記録層を持つ記録媒体と装置との接続の一例を示す図。
【図22】光情報媒体の断面図。
【図23】実施例における電極の配線を示す図。
【符号の説明】
【0095】
1:1層目記録層、2:2層目記録層、3:3層目記録層、4:透明電極層、5:引き出し電極、6:(リング状)補助電極、7:接触電極、8:ピン電極、9:ディスク回転軸、10:基板、11:導電性接着剤、12:絶縁層、13:反射層、14:引き出し電極層配線用絶縁層、15:還元型エレクトロクロミック層、16:固体電解質層、17:酸化型エレクトロクロミック層、18:紫外線硬化樹脂、19:貼り合わせ基板、20:引き出し電極(プリント基板部)、21:引き出し電極リング部分、22:引き出し電極接続部(金属膜)、23:透明電極引き出し電極、24:引き出し電極接続部(ワイヤーボンディング)、25:パターン透明電極積層基板、26:エレクトロクロミック記録膜積層基板、27:絶縁層(紫外線硬化樹脂)、28:引き出し電極(異方性導電性樹脂)、29:プリント回路基板、30:基板上配線、31:ICチップ、141:光ディスク、142:モーター、143:光ヘッド、144:プリアンプ回路、145:記録波形発生回路、
146:レーザ駆動装置、147:8−16変調器、148:L/Gサーボ回路、149:8−16復調器。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を用いて情報の記録再生を行う多層光記録媒体、及びその媒体に情報を記録・再生する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光記録媒体として普及している光ディスクは、記録媒体(ディスク)自身を記録再生装置から外せること、記録媒体自身が比較的安価であること、が大きな特徴になっている。従って、この記録媒体に情報を記録したり、またはこの記録媒体から情報を再生したりするための光ディスク装置では、この特徴を失わずに情報の記録や再生をより高速・高密度化することが望ましい。
【0003】
記録媒体の記録膜に光を照射して情報を記録する原理は種々知られている。その中で、有機材料を記録膜の材料として使用した光ディスクで実用化されているものには、CD−RやDVD−Rがある。これらは、照射する光の光源の波長に対応して光を吸収する色素を含む記録膜を有しており、この記録膜にレーザを照射することで、記録膜の材料を変質させて情報が記録されている。また、記録膜材料の相変化(相転移、相変態とも呼ばれる)を利用して情報の記録や再生を行う手法など、熱による原子配列変化を利用する手法は、多数回書換え可能な情報記録媒体に利用されている。例えば、相変化光ディスクの基本構成は、基板上に保護層、Ge−Sb−Te系等の記録膜、保護層、反射層を順次積層した構造である。相変化光ディスクではDVD−R DLとして記録膜が2層のものがすでに市販されている。しかし従来の記録膜を複数層備えた多層記録媒体では、特に3層以上では、各層の透過率と記録感度とがトレードオフの関係にあるため、再生信号品質か記録感度か、どちらかが犠牲にならざるを得なかった。また、DVDの場合、隣接する層に記録されている情報の悪影響(層間クロストークなど)を受けないように層間隔を約20μm以上にする必要があり、層数を多くすると記録媒体の作製が困難であった。
【0004】
特許文献1には、記録膜の材料として、エレクトロクロミック材料を用い、電圧によって層を選択する方式を採用した光ディスクが記載されている。装置に関しては、記録・再生装置が静止している状況から回転するディスクに電圧を供給するために、回転軸またはその近傍に電圧伝達機構を配置する。特許文献1または特許文献2には、層選択方式の光ディスクへの電圧伝達機構が開示されている。
【0005】
記録膜の材料としてエレクトロクロミック材料を用いたエレクトロクロミックデバイスは、下面透明電極、エレクトロクロミック膜、固体電解質膜、上面透明電極が順次積層された構成によって形成される。この上下透明電極間に電圧印加することにより、固体電荷質膜内のH+(プロトン)もしくは陽イオンがエレクトロクロミック膜内に入り、エレクトロクロミック材料の化学構造が変わることにより着色する。記録レーザ光照射によって着色機能が失われて記録マークが形成されれば、層全体を透明に戻したとき記録マークが見えず、他の層の記録・再生時に障害とならない。これにより、他の層との間で干渉が無いので層間隔を狭くでき、従来の多層ディスクと比較して多層・大容量化が可能となる。
【0006】
【特許文献1】特開2003−346378号公報
【特許文献2】特開2004−310912号公報
【特許文献3】特開2006−107658号公報
【非特許文献1】“Optical Characteristics for Layer-Selection-type Recordable Optical Disk (LS-R)”, A. Hirotsune et al., ISOM/ODS 2005 Tech. Digest (2005) MC7
【非特許文献2】J. I. Ponkove: Optical Processes in Semiconductors (Dover, 1975) p75
【非特許文献3】産業図書(株)平成3年6月28日初版発行の「エレクトロクロミックディスプレイ」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のとおり、層選択方式を採用することは多層ディスクにとって好ましい。一方、透明電極の持つ抵抗が大きいため、電圧印加時に、電圧印加点付近であるディスク内周部の電圧が最も高く、外周に向かうにつれ電圧が小さくなってしまう。このため、記録膜面内の着色が均一でなくなるので、層選択型光ディスクでは記録再生が困難になるという問題が生じる。
【0008】
まず、最初に従来の装置において内周から電圧印加を行っていた理由を説明する。電圧を印加するタイプの層選択方式を採用した光ディスクは、記録層の層数を非常に多くすることが可能であるという長所がある。そこで、電圧伝達機構では、この記録層の層選択のために、記録層の層数と同じだけのピン電極を装置側に設け、媒体側の電極に接触させる。層選択は、スイッチングにより所望の層に接続された電極に電圧印加することで行う。このピン電極は回転軸に固定されたディスク載置部に設置されており、回転安定性の観点から小型であることが望ましい。そのため、ピン電極はディスク内周部において媒体内に設けられた電極と接触する構造となっている。
【0009】
続いて、層選択方式を採用した光ディスクに用いられる透明電極の持つ抵抗がなぜ大きくなるか説明する。層選択方式を採用した光ディスクは、選択されていない層(記録領域)が透明である必要がある。しかし、記録層の多層化に伴い、ディスク1枚を構成する層数が全体として増大し、1層あたりのわずかな光の吸収量の影響が大きくなり、結果として信号強度が低下することがある。層選択方式に採用されるエレクトロクロミック材料を用いた光ディスクについては、記録層の多層化の際に必要な各々の層の光学特性計算値が述べられた非特許文献1によると、20層の記録層を有する多層ディスクでは、それを構成する各層での消衰係数k=0.01以下であることが必要であることが報告されている。この結果は、光ディスクの記録再生時に用いられる光の波長においては、各層において1%の光の吸収も許されないことを意味する。光学デバイス向けの市販のITOガラスでは、透過率90%以上という仕様が良く用いられているが、この値は吸収率10%以下と置き換えれば、多層光ディスクにおける光の吸収率1%以下に比べ非常に大きな値である。
【0010】
この透明導電膜の透過率と導電率との間にトレードオフの関係があることは、例えば、Drudeの古典電子論から導くことができるが、非特許文献2の中で、このことを引用している。古典電子論では金属における自由キャリア吸収の吸収係数αfは、以下の数1で表される。
【0011】
【数1】
【0012】
ここで、Nはキャリア密度、nは屈折率、τは散乱の緩和時間である。
半導体では、τは散乱のメカニズムによって異なる波長依存性を持つため、αfは以下の数2で表される。
【0013】
【数2】
【0014】
ここで、A、B、Cは材料によって決まる定数である。一方、シート抵抗のもとになる直流の導電率σは以下の数3で表すことができる。
【0015】
【数3】
【0016】
ここで、Nはキャリア密度、μは移動度である。この移動度μは、等方的な散乱の場合に、以下の数4で表すことができ、
【0017】
【数4】
【0018】
導電率σは以下の数5で表される。
【0019】
【数5】
【0020】
ここで、τと自由キャリア吸収のτが同じであるとすると、自由キャリア吸収と導電率の間には、以下の数6が成立する。
【0021】
【数6】
【0022】
以上により、透明電極の抵抗率を下げるためには、吸収率を上げる(透過率を下げる)必要があることがわかる。つまり、層選択方式を採用した光ディスクでは、このトレードオフを解決しながら大容量化しなければならないので、市販のITOガラスと比べても、透明電極はある程度抵抗を持ってしまうこととなる。
【0023】
続いて、この透明電極の抵抗が半径依存性(光ディスクの半径方向の位置に依存する特性)を持つことをシミュレーションによって確認したので、その結果について述べる。
(シミュレーションモデル)
ここでエレクトロクロミック膜の着色メカニズムを考察するために、図1に示す電気的等価回路モデルを考える。モデルの簡略化のために、エレクトロクロミック膜・電解質層を1セットのエレクトロクロミック記録膜とする。ここで、記録膜の垂直・水平方向を考え、等価回路モデルを考えると以下のようになる。
【0024】
光ディスクを想定したモデルでは、ディスク平面をrθ平面(半径r、角度θ)で表し、ディスク垂直方向をzで示すことがある。しかし、本モデルでは、計算の簡略化のためにディスクのθ方向に寄らず媒体構造は等しいと仮定して、中心からの距離(水平方向)、記録膜の構造(垂直)方向のみに注目している。さらにディスク平面をn個のセルに分割し、その領域の電気特性値を代入し、任意の半径位置(水平方向)での電圧応答を求めている。
【0025】
【化1】
【0026】
電圧が流れたパスのみに着目すると、この等価回路モデルは図2のように簡略化できる。ここで、n番目の電圧が流れたパスのみに着目した場合、各素子に流れる電流を以下の式のように定義する。
【0027】
【数7】
【0028】
なお、エレクトロクロミックデバイスの媒体構成によって、図3に示すような等価回路モデルとなることもある。これは、図1に示されたエレクトロクロミック記録膜の抵抗成分と電気容量成分とが並列接続された素子に、電気容量成分の前にもうひとつ抵抗成分が付与された形である。
【0029】
本発明は、エレクトロクロミックデバイスが持つ電気特性に着目したものであり、その等価回路形状を図2の一例に限定するものではない。しかしながら、以下の実施例におけるシミュレーション及び作製した媒体は、図2に示す等価回路モデルのものである。
【0030】
【数8−1】
【0031】
【数8−2】
【0032】
【数9】
【0033】
【数10】
【0034】
ここで、漸化式を使って、上記の式の微分方程式を解く。
【0035】
【数11】
【0036】
【数12】
【0037】
【化2】
【0038】
図5から分かるように、外周に向かうに従って、電圧が低くなっている。この結果は、ディスク内周に電圧印加すると、ディスク外周に向うに従って電圧が小さくなることを示している。エレクトロクロミックデバイスは、記録膜に印加される電圧の大きさによって着色し、光学的性質(透過率・反射率・吸収率)が変化するため、ディスク内部での電圧分布は、記録再生時の不安定動作を生じさせてしまう。
【0039】
本発明の目的の一つは、これらの問題点を解決し、透明電極の抵抗の大きさに関係なく安定な大容量記録・層選択を達成するための光記録媒体、並びにこの光記録媒体に情報を記録・再生する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0040】
本発明による光記録媒体は、一対の電極の間に積層して形成された複数のエレクトロクロミック記録層を有する。ディスク面内において、水平方向から見て記録膜の両側である内外周より電圧を印加する。内外周より電圧を印加するために、光記録媒体には、外周まで電気を導く引き出し電極と、内周へ電気を導く補助電極とが設けられ、エレクトロクロミック記録膜を挟んだ一対の電極のそれぞれに接続されている。
【0041】
本発明では、従来のように、記録膜を挟んだ一対の透明電極に内周から電極ピンで接触することにより記録膜への電圧印加を行うものではない。一方の電極ピンに印加された電圧は、引き出し電極の導線部分からディスク外周に設けられたリング部分を介し透明電極へ向かう。もう一方の電極ピンに印加された電圧は、内周に設けられた補助電極のリング部分より透明電極へと向かう。このように構成することで、一対の透明電極に挟まれた記録膜の印加電圧をディスク半径位置によらずに一定とすることができる。このとき、ディスクにおいては、半径位置によらずに記録膜に印加される電圧が等しくなることで、全面が均一に着色されることになる。この光記録媒体に対して記録・再生動作を行うと、選択され、着色された記録層に対してのみ、情報の記録あるいは再生を行うことができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明によると、透明電極の抵抗の大きさに関係なく、従来の光記録媒体の場合に比べて、より記録面全体が均一に着色され、かつ同一ディスク半径での着色変化、反射率変化が少ないため、安定した記録・再生を行うことが可能となる。
【0043】
そのため、より安価で高密度記録が可能な記録媒体とその記録媒体に情報を記録・再生する方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
本発明の情報記録媒体には、電圧選択式の層選択型多層光ディスクを用いる。電圧層選択式多層記録媒体を用いるとき、各記録層の基本状態が透明な状態であれば、記録層を挟む電極層間に電圧をかけた場合に、その記録層だけが着色する。本明細書では、H+(プロトン)もしくは陽イオンにより、エレクトロクロミック材料が着色するときの印加電圧の向きを正と定義する。
【0045】
本発明でいうエレクトロクロミック材料層は、電圧印加によって直接着色する材料の層以外に、電圧印加によって発光する領域とその光を受けて着色または消色する領域を有する層も含む。このような記録媒体を実現するには、記録層として、有機または無機のエレクトロクロミック材料層と固体電解質層との積層膜、またはエレクトロルミネッセント材料とフォトクロミック材料との混合材料層あるいは積層膜を用いれば良い。これにより、任意に選択された層だけが光を吸収し、他の層はほとんど光の吸収が無いようにできる。エレクトロクロミック材料としては、例えば酸化タングステン、チオフェン系有機分子の重合体がある。その他のエレクトロクロミック材料としては、非特許文献3に開示されている各種材料など、既知の多くのエレクトロクロミック材料が使用可能である。
【0046】
異なる層を選択する際は、異なる電極ピンを選択すれば良い。異なる電極ピンは、異なる引き出し電極、補助電極を通じて、選択を所望する層に接した透明電極に接続されている。
【0047】
以上の構造により、多層化にとって課題になっている透明電極の抵抗の大きさに関わらず、記録膜を均一に着色することが可能である。この多層光記録媒体に対して記録・再生動作を行うと、選択され、着色された記録層に対してのみ情報の記録あるいは再生を行うことができる。
【0048】
情報の記録再生は以下のように行う。一対の電極で挟まれた電圧印加によって着色する複数の記録層を有するディスクを回転軸に固定されたディスク載置部に設置し、ディスク載置部に載置されたディスクをディスク押え部により押えて固定する。この押え部はディスクと共に回転する。ディスク載置部のディスク接触面に設けた一対の接触電極により、複数の記録層の中から指定した1つの記録層を含む一対の電極に、指定した1つの記録層が着色するように電圧を印加する。こうして指定された記録層を着色させ、着色した記録層に対して、光照射によって情報の記録・再生を行う。
(実施例1)
【0049】
【数13】
【0050】
【数14】
【0051】
【化3−1】
【0052】
【化3−2】
【0053】
ただし、シミュレーションでは、上記式が全ての角度方向で成立すると仮定した。実際には媒体とピン電極との接触点は一点であるため、補助電極、引き出し電極のリング部分の抵抗は、透明電極に比べれば低いものの、ゼロではなく抵抗による電圧降下が生じている。また、実際のディスクでは製膜プロセスへの依存によって膜厚変動が生じて、面内で電気特性が多少変動している。そのため、各角度において式の係数が変わってくるため、実際に作製した媒体では、シミュレーションのように電圧分布が完全に均一になることはない。しかし、図5と図7とを比較すると分かるように、電圧印加位置変更により、外周部までの電圧が印加できるようになっている。
(実施例2)
実施例2として、3層構造の層選択方式を採用した光ディスクにおいて、ディスク内外周より電圧印加を行った例について説明する。
【0054】
本実施例で使用した光情報媒体の電気的等価回路は、図8のように表すことができる。1層目の記録層1、2層目の記録層2、3層目の記録層3は、それぞれ透明電極層4に挟まれており、それぞれの透明電極は、引き出し電極5または補助電極6と接続されている。ある特定の層の記録層選択を行うには、その層を指定して、接触電極7を通して装置より電圧供給を得ることで、所望の層に接続した引き出し電極5または補助電極6間に電圧を印加することにより記録層が着色する。
【0055】
実際の光情報媒体、光記録再生装置の構成を考えて、図9に示すように複数の記録層を持つ記録媒体と装置とを接続して、電圧印加する方法を説明する。ディスク基板上に引き出し電極6が形成されており、外周まで引き出された配線は、1層目の記録層1と2層目の記録層2との間の透明電極4に接続されている。また、1層目の記録層1に接した片方の透明電極4は、ディスク内周部において、またディスク平面において、リング状の補助電極5に接続されている。それぞれの補助電極5と、引き出し電極6とは導電性接着剤を介して、ディスク表面に置かれた同心円状の接触電極7と接続される。記録再生装置のディスク回転軸上で、それぞれ別の電極に接続するため、装置に設けられたディスク中心穴付近の複数のピン電極8に接続されている。ディスクは図8の状態から上下を反転させて回転軸に取り付ける。回転軸9のディスク受け部分にはディスクの電極に対応する位置に置かれた上下方向に少しバネ性がある複数のピン電極8があり、各接触電極7に接続される。なお、図9中の破線9は回転軸を示している。
【0056】
図10に、図9の光情報媒体を異なる角度から見たときの断面を示す。ここで示すように、引き出し電極6を経由して、3層目の記録膜3に接続された透明電極4を形成するときには、引き出し電極配線用絶縁層14が必要となる。この引き出し電極配線用絶縁層14は、内周から電圧が印加されている透明電極と接触(導通)しないために設けられている。
【0057】
図11に示したように、直径12cm、厚さ0.6mmで表面にトラックピッチが0.74μmで深さ60nm、溝幅0.35μmのイングルーブ記録用のトラッキング用の溝を有し、アドレス情報を上記溝のウォブルとして有するポリカーボネート基板10上に、引き出し電極6としてCuを100nm、絶縁層12としてSiO2を1μm、反射層13としてAg94Pd4Cu2を100nm、透明電極4としてITO(酸化スズ亜鉛合金)を形成し、記録膜として、還元型のエレクトロクロミック材料層15、固体電解質層16、酸化型のエレクトロクロミック層17を用い、透明電極4で挟みこんだ。この構造を3回繰り替えし、3層媒体を作製した。さらに、この上に紫外線硬化樹脂18を用いて、直径120mm、厚さ0.6mmのポリカーボネート基板19を貼り付けた。光はこの貼り合せ基板側から入射させた。
【0058】
透明電極は、透明性を重視し、記録再生に用いるレーザ波長λ=660nmにて吸収がない透明電極ITOをスパッタにより製膜した。この膜厚100nmの透明電極ITO薄膜のシート抵抗は400Ω/□であり、市販の透明電極ITOガラスのシート抵抗数十Ω/□に比べ高い。これは、市販の透明電極ITOガラスはシート抵抗を最優先で作製されており、多少の吸収を含むためである。
【0059】
【化4】
【0060】
反射層13は、パターン製膜された引き出し電極6へ記録再生光が届かないようにする役目がある。アクリル系紫外線硬化樹脂14にLiトリフロロメタンスルフォネートを用いた。紫外線硬化樹脂の膜厚は25μmであった。
【0061】
図12に示すように、引き出し電極、補助電極を形成した。ポリカーボネート基板10上に製膜した引き出し電極(プリント基板部)20は、ディスク内周から外周へと伸びる配線であり、スパッタ時にマスクに形成できる。引き出し電極リング部分21は全ての記録膜が製膜を終えた後、マスクを用いてリング状に金属を製膜することにより、それぞれの接続する透明電極上に形成できる。補助電極5は、引き出し電極リング部分21と同様、全ての記録膜が製膜を終えた後、マスクを用いてリング状に金属を製膜することにより、それぞれの接続する透明電極上に形成できる。最後に、引き出し電極(プリント基板部)20と引き出し電極リング部分21とを電気的に接続する必要がある。今回は、この引き出し電極接続部22を金属膜スパッタにて形成した。全ての記録膜製膜終了時には、まだ全ての透明電極が露出しているためそのまま金属製膜を行うと、所望の透明電極以外のものと接続(導通)してしまう懸念がある。そこで図10に示したように、引き出し電極リング部分を製膜した後に絶縁膜14を形成し、その絶縁膜の上に通す形で、電極接続部(金属膜)22を形成した。
【0062】
引き出し電極、補助電極にはCuをスパッタにて製膜した。各膜厚は、引き出し電極(プリント基板部)20、引き出し電極リング部分21、補助電極5が共に100nm、引き出し電極接続部(金属膜)24は、1.5μmである。引き出し電極接続部24(金属膜)は安定した電気的接続の観点から、絶縁層14よりも膜厚が大きいことが望ましい。
【0063】
このように、記録膜をはさむ上下の透明電極にリング状の金属電極が形成され、内外周より電圧印加されることで、実施例1のように記録膜全面に電圧が印加されることが期待できる。この(リング状)補助電極5、引き出し電極リング部分21の配置は、ディスク上の任意の点から前記ディスク外周部までの距離が一定の場合、前記任意の点から前記引き出し電極までの距離が一定であり、前記任意の点から前記ディスク内周部までの距離が一定の場合、前記任意の点から前記補助電極までの距離が一定となる特徴がある。
【0064】
記録または再生を行うときのドライブフローを図13に示す。複数の記録層の中で情報の記録または再生を行いたい層について、本発明では当該層と表記する。
【0065】
まず、当該層を挟む一対の透明電極に電圧を印加して、当該層を着色させる。着色することにより反射率が変化し、装置の光検出器で信号を検出することが可能となる。本発明では、当該層は面内均一着色となるため、当該層全面で反射率が一定となる。したがって、当該層の内外周で反射率が変わらないため、当該層選択時に印加した電圧はそのままの状態で記録再生を行うことができる。一方、従来の電圧印加方法では、ディスク半径位置により着色分布が生じてしまうため、着色の濃い内周部と着色の薄い外周部では反射率が異なってしまう。この状態では安定した記録再生を行うことができないため、ドライブフローとして、記録再生箇所に光ヘッドを移動させた後に電圧印加制御を行い、所望の反射率になるように調整してから記録再生を行う必要がある。このため、本発明に方法に比べ、電圧制御のための時間ロスと、外周部を記録再生する際の電力ロスが生じる。
【0066】
記録または再生を行いたい記録層に対応する電圧を透明電極に印加すると、その層だけが着色し、レーザ光を吸収、反射するようになるので、波長660nmのレーザ光を照射すると着色した層のみ選択的に情報の記録や読み出しができる。このとき、他の記録層は無色であり、何も変化しない。上記記録媒体に対して、情報の記録再生を行った。図14を用いて、情報記録再生の動作を説明する。まず、記録再生を行う際のモーター制御方法として、記録再生を行うゾーン毎にディスクの回転数を変化させるZCLV(Zoned Constant Linear Ve1ocity)方式を採用したものについて述べる。
【0067】
それぞれのデータは8ビットを1単位として、8−16変調器147に伝送される。情報記録媒体141上に情報を記録する際には、情報8ビットを16ビットに変換する変調方式、いわゆる8−16変調方式を用い記録を行った。この変調方式では媒体上に、8ビットの情報に対応させた3T〜14Tのマーク長の情報の記録を行っている。図中の8−16変調器147はこの変調を行っている。なお、ここでTとは情報記録時のクロックの周期を表している。ディスクは光スポットとの相対速度が15m/sの線速度となるよう回転させた。
【0068】
8−16変調器147により変換された3T〜14Tのデジタル信号は、記録波形発生回路146に転送され、マルチパルス記録波形が生成される。記録波形発生回路146内において、3T〜14Tの信号を時系列的に交互に「0」と「1」に対応させるようにしている。また、上記記録波形発生回路146内は、マーク部を形成するための一連の高パワーパルス列を形成する際に、マーク部の前後に位置するスペース部の長さに応じてマルチパルス波形の先頭パルス幅と最後尾のパルス幅とを変化させる方式(適応型記録波形制御)に対応したマルチパルス波形テーブルを有しており、これによりマーク間に発生するマーク間熱干渉の影響を極力排除できるマルチパルス記録波形を発生している。
【0069】
記録波形発生回路145により生成された記録波形は、レーザ駆動回路146に転送され、レーザ駆動回路146はこの記録波形をもとに、光ヘッド143内の半導体レーザを発光させる。光ヘッド143には、情報記録用のレーザビームとして光波長660nmの半導体レーザが使用されている。また、このレーザ光をNA0.65の対物レンズにより光ディスク141の記録層上に絞り込み、レーザビームを照射することにより情報の記録を行った。
【0070】
上記のような記録原理であるから、同一または別々の記録トラックに、単一の光ヘッドからまたは複数の光ヘッドから複数の光スポットを形成し、同時に記録することも容易に行える複数の光スポットを用いることにより、高速化が実現可能である。
【0071】
今回、層選択ができるかどうか確認するために、ディスクを装置に接した状態で電圧を印加して、着色による反射光量変化を装置の光検出器での出力電圧変化として確認した。これは、反射膜14があるためディスク全面で干渉による色変化が生じており、着色時の変化を目視では判別しにくいために行ったものである。それぞれの透明電極に対応したピン電極へ選択的に3Vの電圧印加を行うことにより、所望の層の着色をテスタにて反射率変化として確認した。トラッキングをかけた状態にて、ディスク一周に渡り反射率変化は10%であり、内外周より電圧印加する効果を確認できた。
(実施例3)
実施例3として、図15に示すような透明電極を引き出し電極として用いた例を挙げる。エレクトロクロミック膜等の製膜条件は実施例2と同様である。しかし、透明電極を用いるため、最下層のパターン基板を遮蔽するための反射膜13が不要となる。しかし、透明電極では光の吸収がないとしても、周りの物質との屈折率差により反射が生じてしまうので、本実施例では透明電極の屈折率に近い絶縁層の材料を選ぶ必要がある。
【0072】
【化5】
【0073】
図17に示すように、引き出し電極、補助電極を形成した。ポリカーボネート基板10上に製膜した引き出し電極(プリント基板部)23は、ディスク内周から外周へと伸びる配線であり、スパッタ時にマスクに形成した。引き出し電極リング部分21は全ての記録膜が製膜を終えた後、マスクを用いてリング状に金属を製膜することにより、それぞれの接続する透明電極上に形成した。補助電極5は、引き出し電極リング部分21と同様、全ての記録膜が製膜を終えた後、マスクを用いてリング状に金属を製膜することにより、それぞれの接続する透明電極上に形成した。最後に透明電極引き出し電極23と引き出し電極リング部分21を電気的に接続する必要がある。
【0074】
引き出し電極接続部24をワイヤーボンディングにて形成した。ワイヤーボンディングは直接ワイヤーを接続させる方法である。ワイヤーボンディングは配線作業がスパッタに比べ難しいが、実施例3のように大きな膜厚の金属膜をスパッタが必要にならないこと、また直接配線なので抵抗が金属配線同様小さくすることができる利点がある。ワイヤーは直接所望の補助電極5と引き出し電極リング部分21との間でしか接続されないが、絶縁膜3を形成した方が望ましい。
【0075】
透明電極引き出し電極23は、ITO透明電極を100nmスパッタした。その他の引き出し電極、補助電極にはCuをスパッタした。各膜厚は、引き出し電極リング部分21、補助電極5が共に100nmである。
【0076】
ディスクを装置に接した状態で電圧を印加して、着色による反射光量変化を装置の光検出器での出力電圧変化として確認した。それぞれの透明電極に対応したピン電極へ選択的に5Vの電圧印加を行うことにより、所望の層の着色をテスタにて反射率変化として確認した。トラッキングをかけた状態にて、ディスク一周に渡り反射率変化は15%であり、内外周より電圧印加する効果を確認できた。
【0077】
また、この構造のディスクでは反射膜がないため、電圧印加した状態の記録膜の変化を色の変化として目視で確認できる。5Vの電圧印加時には、当初無色だった記録膜が濃い青色へと記録膜全体で変化することが確認できた。
【0078】
実施例2に比べて着色に必要な印加電圧が大きいのは、透明電極引き出し電極23での電圧低下が原因である。しかし反射膜13が不要で、透過型の装置構成を採用できる。
(実施例4)
実施例4として、透明電極の引き出し電極が記録再生光の入射方向から見て一番奥にない例を挙げる。透明電極を用いるメリットは、反射層が必要でないこと、引き出し電極のレイアウトが自由になる点である。実施例2の金属配線の場合では、記録再生光から配線を隠すために反射膜が別途必要となったが、透明電極で配線するのであれば記録再生光からは透明に見えるため、実施例3のように光入射側よりみて一番奥の層に配置するだけでなく、途中の層、また一番手前側の層に配置することが可能となる。
【0079】
このとき図18に示すように、あらかじめエレクトロクロミック膜を製膜した基板25と、もうひとつ引き出し電極を透明電極にて形成したパターン基板26基板とを、絶縁層としての役目を持つ紫外線硬化性樹脂27により貼り合わせる。透明電極の引き出し電極23を所望の透明電極4と電気的に接続させるために、異方性導電性樹脂接着剤28を用いる。
【0080】
異方性導電性接着剤とは、応力を与えた方向のみに導電性を有する接着剤であり、各層へ接続するための引き出し電極と対応する電極を一度に接続することが可能となる(例えば、(株)日立化成製アニソルム)。従来の実施例と比較すると、スパッタ等の製膜時のようにパターン製膜のためのマスクや絶縁層が必要なく、銀ペーストに代表される通常の導電性接着剤を用いるときのように、導電性接着剤が所望の透明電極以外のものと接続しないよう特別な仕切り等を設ける必要がない。したがって、媒体垂直方向の配線プロセスが容易となり、層選択可能な光情報媒体の作製が安価で可能となる。
【0081】
【化6−1】
【0082】
【化6−2】
【0083】
図20に示すように、引き出し電極、補助電極を形成した。ポリカーボネート基板25上に製膜した透明電極の引き出し電極23は、ディスク内周から外周へと伸びる配線であり、スパッタ時にマスクに形成した。引き出し電極リング部分21はポリカーボネート基板26上の全ての記録膜が製膜を終えた後に、マスクを用いてリング状に金属を製膜することにより、それぞれの接続する透明電極上に形成した。補助電極5は、引き出し電極リング部分21と同様、全ての記録膜が製膜を終えた後に、マスクを用いてリング状に金属を製膜することにより、それぞれの接続する透明電極上に形成した。最後に透明電極引き出し電極23と引き出し電極リング部分21とを電気的に接続する必要がある。
【0084】
この引き出し電極接続部28を25μmの膜厚で、異方性導電性樹脂によって形成した。透明電極の引き出し電極23は、ITO透明電極を100nmスパッタした。その他の引き出し電極、補助電極にはそれぞれCuをスパッタした。各膜厚は、引き出し電極リング部分21、補助電極5が共に100nmである。
【0085】
ディスクを装置に接した状態で電圧を印加し、着色による反射光量変化を装置の光検出器での出力電圧変化として確認した。それぞれの透明電極に対応したピン電極へ選択的に6Vの電圧印加を行うことにより、所望の層の着色をテスタにて反射率変化として確認した。トラッキングをかけた状態で、ディスク一周に渡り反射率変化は15%であり、内外周より電圧印加する効果を確認できた。
【0086】
実施例3に比べて着色に必要な印加電圧が大きかったのは、導電性接着剤の密着性が低かったことによる電極内での電圧低下が原因である。しかし、実施例3と比べて、本実施例では、記録膜とパターン電極とを別々の基板に分けて作製することができ、絶縁層が必要ではなく、異方性導電性樹脂を用いて容易にディスク垂直方向での配線が可能であり、光情報媒体作製プロセスが容易であるという利点がある。
(実施例5)
実施例5として、図21に示すように、引き出し電極が形成された層にプリント回路基板29を作製した例を挙げる。プリント回路基板29の作製はスパッタ、あるいは塗布で行われるため、製膜時には配線部分のみ選択的に電極材料を堆積するためのマスクが必要である。ここでは、このマスクを用いて、引き出し電極だけでなく基板上配線も作製し、ICチップとの接続を行った。本発明では、ディスク一面に電気配線の作製が容易にでき、かつ層選択方式を採用した光ディスクでは、媒体に直接電気を供給できる特徴を利用し、大規模な電気回路を駆動することができる。
【0087】
【化7】
【0088】
図23に示すように、引き出し電極、補助電極、基板上配線を形成し、基板上に積載したICチップと電気的接続を行った。ポリカーボネート基板10上には、ICチップが積載されており、ICチップへ電気を供給するための配線は、引き出し電極(プリント基板部)20と同時にマスクに用いて製膜した。
【0089】
引き出し電極リング部分21は全ての記録膜が製膜を終えた後、マスクを用いてリング状に金属を製膜することにより、それぞれの接続する透明電極上に形成できる。補助電極5は、引き出し電極リング部分21と同様に、全ての記録膜が製膜を終えた後、マスクを用いてリング状に金属を製膜することにより、それぞれの接続する透明電極上に形成できる。最後に引き出し電極(プリント基板部)20と引き出し電極リング部分21とを電気的に接続する必要がある。今回は、この引き出し電極接続部22をワイヤーボンディングにて形成した。
【0090】
引き出し電極、補助電極、基板上配線はそれぞれCuをスパッタにて製膜した。各膜厚は、引き出し電極(プリント基板部)20、引き出し電極リング部分21、補助電極5、基板上配線共に100nmである。
【0091】
ディスクを装置に接した状態で電圧を印加し、着色による反射光量変化を装置の光検出器での出力電圧変化として確認した。それぞれの透明電極に対応したピン電極へ選択的に3Vの電圧印加を行うことにより、所望の層の着色をテスタにて反射率変化として確認した。トラッキングをかけた状態にて、ディスク一周に渡り反射率変化は15%少なく、内外周より電圧印加する効果を確認できた。
【0092】
また、ICチップを接続したピン電極に1.5Vの電圧印加を行ったところ、ICチップの出力信号を確認した。一方で、電圧印加を行っていないときはICチップの出力信号はなく、電圧印加によるICチップの正常動作を確認した。
【0093】
光ディスクへのICチップ埋め込みは、ICチップへの電圧供給を非接触で行うため、給電用のアンテナを形成する必要がある。しかし、層選択光ディスクでは直接電圧が供給されるためアンテナ形成は不要であり、前記マスクを用いてICチップと直接結線すれば良い。そのため、低消費電力駆動しかできないICチップとは異なり、本発明では、ICチップのみならずオペアンプやダイオード等の電源を必要とする大型電気回路の駆動も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】電気的等価回路モデルの一例を示す図。
【図2】電気的等価回路モデルの一例を示す図。
【図3】電気的等価回路モデルの一例を示す図。
【図4】電気的等価回路モデルの一例を示す図。
【図5】光記録媒体上の電圧値の測定結果を示す図。
【図6】電気的等価回路モデルの一例を示す図。
【図7】光記録媒体上の電圧値の測定結果を示す図。
【図8】実施例の光情報媒体の電気的等価回路を示す図。
【図9】複数の記録層を持つ記録媒体と装置との接続を示す図。
【図10】複数の記録層を持つ記録媒体と装置との接続の一例を示す図。
【図11】光情報媒体の断面図。
【図12】実施例における電極の配線を示す図。
【図13】記録または再生時のドライブフローを示す図。
【図14】情報記録再生の動作を説明する図。
【図15】複数の記録層を持つ記録媒体と装置との接続の一例を示す図。
【図16】光情報媒体の断面図。
【図17】実施例における電極の配線を示す図。
【図18】複数の記録層を持つ記録媒体と装置との接続の一例を示す図。
【図19】光情報媒体の断面図。
【図20】実施例における電極の配線を示す図。
【図21】複数の記録層を持つ記録媒体と装置との接続の一例を示す図。
【図22】光情報媒体の断面図。
【図23】実施例における電極の配線を示す図。
【符号の説明】
【0095】
1:1層目記録層、2:2層目記録層、3:3層目記録層、4:透明電極層、5:引き出し電極、6:(リング状)補助電極、7:接触電極、8:ピン電極、9:ディスク回転軸、10:基板、11:導電性接着剤、12:絶縁層、13:反射層、14:引き出し電極層配線用絶縁層、15:還元型エレクトロクロミック層、16:固体電解質層、17:酸化型エレクトロクロミック層、18:紫外線硬化樹脂、19:貼り合わせ基板、20:引き出し電極(プリント基板部)、21:引き出し電極リング部分、22:引き出し電極接続部(金属膜)、23:透明電極引き出し電極、24:引き出し電極接続部(ワイヤーボンディング)、25:パターン透明電極積層基板、26:エレクトロクロミック記録膜積層基板、27:絶縁層(紫外線硬化樹脂)、28:引き出し電極(異方性導電性樹脂)、29:プリント回路基板、30:基板上配線、31:ICチップ、141:光ディスク、142:モーター、143:光ヘッド、144:プリアンプ回路、145:記録波形発生回路、
146:レーザ駆動装置、147:8−16変調器、148:L/Gサーボ回路、149:8−16復調器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体上に形成された一対の電極と、該一対の電極の間に形成されたエレクトロクロミック記録層とを有する光記録媒体であって、
前記一対の電極の一方は前記媒体の外周部から、前記一対の電極の他方は前記媒体の内周部から電圧が印加されていることを特徴とする光記録媒体。
【請求項2】
前記エレクトロクロミック記録層が前記一対の電極の間に複数層積層して形成され、
前記一対の電極の一方に、前記媒体の外周部から電圧を印加する引き出し電極が、また 前記一対の電極の他方に、前記媒体の内周部から電圧を印加する補助電極が接続されていることを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
【請求項3】
前記引き出し電極は、前記補助電極が、前記一対の電極の他方に接続されている位置と比較して、前記媒体の中心からの距離が大きい位置で前記一対の電極の一方に接続されていることを特徴とする請求項2記載の光記録媒体。
【請求項4】
前記引き出し電極が接続されている前記一対の電極の一方は層構造であり、情報の記録再生のための光の入射側から見た場合に前記媒体の一番奥側に配置されていることを特徴とする請求項2記載の光記録媒体。
【請求項5】
前記引き出し電極が接続されている前記一対の電極の一方は金属層であり、情報の記録再生のための光の入射側から見た場合に前記金属層の電極の一層手前に、反射層を有することを特徴とする請求項4記載の光記録媒体。
【請求項6】
前記引き出し電極が接続されている前記一対の電極の一方が、透明電極層であることを特徴とする請求項4記載の光記録媒体。
【請求項7】
前記引き出し電極が接続されている前記一対の電極の一方は層構造であり、情報の記録再生のための光の入射側から見た場合に前記媒体の一番手前に配置されていることを特徴とする請求項2記載の光記録媒体。
【請求項8】
前記引き出し電極が接続されている前記一対の電極の一方が金属層または透明電極層のであり、前記引き出し電極とは別に、ICチップまたは電気回路が形成されていることを特徴とする請求項2記載の光記録媒体。
【請求項9】
前記媒体上の任意の点を基点として、該基点から前記媒体の外周部までの距離が一定である場所は、前記基点から前記引き出し電極までの距離が一定であり、
前記基点から前記媒体の内周部までの距離が一定である場所は、前記基点から前記補助電極までの距離が一定であることを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
【請求項10】
媒体上に形成された一対の電極と、該一対の電極の間に形成されたエレクトロクロミック記録層とを有する光記録媒体に光を照射して情報を記録する方法であって、
前記一対の電極の一方には前記媒体の外周部から、前記一対の電極の他方には前記媒体の内周部から電圧を印加して、
前記エレクトロクロミック記録層に情報を記録することを特徴とする情報記録方法。
【請求項11】
前記エレクトロクロミック記録層が前記一対の電極の間に複数層積層して形成され、
前記一対の電極に、前記複数層積層されたエレクトロクロミック記録層のいずれかを選択する電圧を印加して、
前記選択されたエレクトロクロミック記録層に光を照射して、
前記選択されたエレクトロクロミック記録層に情報を記録することを特徴とする請求項10記載の情報記録方法。
【請求項12】
前記エレクトロクロミック記録層が前記一対の電極の間に複数層積層して形成され、
前記エレクトロクロミック記録層の中から、情報を記録する記録層を選択するステップと、
前記記録層の情報を記録する場所を決めるステップと、
前記情報を記録する場所の反射率を確認するステップと、
前記反射率が所望の値であるときに、前記情報を記録する場所に情報を記録するステップと、
を有することを特徴とする請求項10記載の情報記録方法。
【請求項13】
媒体上に形成された一対の電極と、該一対の電極の間に形成されたエレクトロクロミック記録層とを有する光記録媒体に光を照射して情報を再生する方法であって、
前記一対の電極の一方には前記媒体の外周部から、前記一対の電極の他方には前記媒体の内周部から電圧を印加して、
前記エレクトロクロミック記録層から情報を再生することを特徴とする情報再生方法。
【請求項14】
前記エレクトロクロミック記録層が前記一対の電極の間に複数層積層して形成され、
前記一対の電極に、前記複数層積層されたエレクトロクロミック記録層のいずれかを選択する電圧を印加して、
前記選択されたエレクトロクロミック記録層に光を照射して、
前記選択されたエレクトロクロミック記録層から情報を再生することを特徴とする請求項13記載の情報再生方法。
【請求項15】
前記エレクトロクロミック記録層が前記一対の電極の間に複数層積層して形成され、
前記エレクトロクロミック記録層の中から、情報を再生する記録層を選択するステップと、
前記記録層の情報を再生する場所を決めるステップと、
前記情報を再生する場所の反射率を確認するステップと、
前記反射率が所望の値であるときに、前記情報を再生する場所から情報を再生するステップと、
を有することを特徴とする請求項13記載の情報再生方法。
【請求項1】
媒体上に形成された一対の電極と、該一対の電極の間に形成されたエレクトロクロミック記録層とを有する光記録媒体であって、
前記一対の電極の一方は前記媒体の外周部から、前記一対の電極の他方は前記媒体の内周部から電圧が印加されていることを特徴とする光記録媒体。
【請求項2】
前記エレクトロクロミック記録層が前記一対の電極の間に複数層積層して形成され、
前記一対の電極の一方に、前記媒体の外周部から電圧を印加する引き出し電極が、また 前記一対の電極の他方に、前記媒体の内周部から電圧を印加する補助電極が接続されていることを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
【請求項3】
前記引き出し電極は、前記補助電極が、前記一対の電極の他方に接続されている位置と比較して、前記媒体の中心からの距離が大きい位置で前記一対の電極の一方に接続されていることを特徴とする請求項2記載の光記録媒体。
【請求項4】
前記引き出し電極が接続されている前記一対の電極の一方は層構造であり、情報の記録再生のための光の入射側から見た場合に前記媒体の一番奥側に配置されていることを特徴とする請求項2記載の光記録媒体。
【請求項5】
前記引き出し電極が接続されている前記一対の電極の一方は金属層であり、情報の記録再生のための光の入射側から見た場合に前記金属層の電極の一層手前に、反射層を有することを特徴とする請求項4記載の光記録媒体。
【請求項6】
前記引き出し電極が接続されている前記一対の電極の一方が、透明電極層であることを特徴とする請求項4記載の光記録媒体。
【請求項7】
前記引き出し電極が接続されている前記一対の電極の一方は層構造であり、情報の記録再生のための光の入射側から見た場合に前記媒体の一番手前に配置されていることを特徴とする請求項2記載の光記録媒体。
【請求項8】
前記引き出し電極が接続されている前記一対の電極の一方が金属層または透明電極層のであり、前記引き出し電極とは別に、ICチップまたは電気回路が形成されていることを特徴とする請求項2記載の光記録媒体。
【請求項9】
前記媒体上の任意の点を基点として、該基点から前記媒体の外周部までの距離が一定である場所は、前記基点から前記引き出し電極までの距離が一定であり、
前記基点から前記媒体の内周部までの距離が一定である場所は、前記基点から前記補助電極までの距離が一定であることを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
【請求項10】
媒体上に形成された一対の電極と、該一対の電極の間に形成されたエレクトロクロミック記録層とを有する光記録媒体に光を照射して情報を記録する方法であって、
前記一対の電極の一方には前記媒体の外周部から、前記一対の電極の他方には前記媒体の内周部から電圧を印加して、
前記エレクトロクロミック記録層に情報を記録することを特徴とする情報記録方法。
【請求項11】
前記エレクトロクロミック記録層が前記一対の電極の間に複数層積層して形成され、
前記一対の電極に、前記複数層積層されたエレクトロクロミック記録層のいずれかを選択する電圧を印加して、
前記選択されたエレクトロクロミック記録層に光を照射して、
前記選択されたエレクトロクロミック記録層に情報を記録することを特徴とする請求項10記載の情報記録方法。
【請求項12】
前記エレクトロクロミック記録層が前記一対の電極の間に複数層積層して形成され、
前記エレクトロクロミック記録層の中から、情報を記録する記録層を選択するステップと、
前記記録層の情報を記録する場所を決めるステップと、
前記情報を記録する場所の反射率を確認するステップと、
前記反射率が所望の値であるときに、前記情報を記録する場所に情報を記録するステップと、
を有することを特徴とする請求項10記載の情報記録方法。
【請求項13】
媒体上に形成された一対の電極と、該一対の電極の間に形成されたエレクトロクロミック記録層とを有する光記録媒体に光を照射して情報を再生する方法であって、
前記一対の電極の一方には前記媒体の外周部から、前記一対の電極の他方には前記媒体の内周部から電圧を印加して、
前記エレクトロクロミック記録層から情報を再生することを特徴とする情報再生方法。
【請求項14】
前記エレクトロクロミック記録層が前記一対の電極の間に複数層積層して形成され、
前記一対の電極に、前記複数層積層されたエレクトロクロミック記録層のいずれかを選択する電圧を印加して、
前記選択されたエレクトロクロミック記録層に光を照射して、
前記選択されたエレクトロクロミック記録層から情報を再生することを特徴とする請求項13記載の情報再生方法。
【請求項15】
前記エレクトロクロミック記録層が前記一対の電極の間に複数層積層して形成され、
前記エレクトロクロミック記録層の中から、情報を再生する記録層を選択するステップと、
前記記録層の情報を再生する場所を決めるステップと、
前記情報を再生する場所の反射率を確認するステップと、
前記反射率が所望の値であるときに、前記情報を再生する場所から情報を再生するステップと、
を有することを特徴とする請求項13記載の情報再生方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2008−165898(P2008−165898A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−353694(P2006−353694)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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