説明

多層建築物の昇降方法及びシステム

【課題】構造種別に拘らず多層建築物の下層階に介装したジャッキで上層階を短時間で上昇又は下降させる。
【解決手段】多層建築物1の下層階Fvの床面2上の複数位置にそれぞれ半割型中空筒状ブロック20を天井(上層階Fjの床2)近傍まで複数段積層配置すると共に、そのブロック積層体の中空部に荷重受け治具22を上下移動可能に係合させる。各積層体の最下段の中空部にジャッキ10を設置し、荷重受け治具22を最下段ブロック又はその上段ブロックに係止してジャッキ10を伸張させ且つ係止部位の上方ブロックを押し上げて上層階Fjの荷重を支持しつつ最下段ブロックを組み立て又は除去する伸張ステップと、ジャッキ10を収縮させて係止部位の上方ブロックを最下段ブロック又は床面上に着座させ且つ荷重受け治具22を最下段ブロック又はその上段ブロックへ移動させる収縮ステップとを繰り返すことにより、ジャッキ上層階Fjを上昇又は下降させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多層建築物の昇降方法及びシステムに関し、とくに多層建築物の下層階に介装したジャッキで上層階を上昇又は下降させる方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
多層建築物を構築する場合に、従来はクレーン等を用いて下層階(例えば地上階)から上層階へと順次積み重ねて構築する工法が一般的であるが、例えば特許文献1及び2が開示するように、地上で1階層ずつ構築してジャッキにより順次上昇(ジャッキアップ)させながら上層階から下層階へと順次構築する工法(以下、ジャッキアップ工法ということがある)が開発されている。図7は、特許文献1の開示するジャッキアップ工法によって多層建築物1の上層階を下層階(図示例では地上階)に介装したジャッキ10で上昇させながら構築する手順を示す。なお図示例のジャッキ10は、建築物の1階層に相当する高さの仮設柱体10aとネジ棒とを備え、そのネジ棒を利用して仮設柱体10aに沿って上昇又は下降するネジ式ジャッキである。
【0003】
図7のジャッキアップ工法では、先ず地盤Gに土留杭40、現場造成杭41、仮設支柱42等を打設し、その上にジャッキ10及び仮設架台43を設置する(同図(A))。次いで、降下位置にあるジャッキ10上に多層建築物1の屋上及び最上階F10の床梁又は床板、柱・壁等の躯体を建て込むと共にコンクリートを打設し(同図(B))、構築した最上階F10をジャッキ10により上昇位置まで持ち上げてジャッキ10の仮設柱体10aに設けた仮設ブラケット44で支持する(同図(C))。なお図示例では、最上階F10を持ち上げた段階で土留杭40、現場造成杭41、仮設支柱42により地下躯体(基礎部)Bを構築している。最上階F10を仮設ブラケット44に支持したのちジャッキ10を降下位置まで下降させ(同図(D))、下降したジャッキ10の上に最上階F10の下層階F9の床梁又は床板、柱・壁等の躯体を建て込むと共にコンクリートを打設し、構築した下層階F9を最上階F10と結合してジャッキ10により持ち上げ、仮設ブラケット44に支持してジャッキ10を下降させる(同図(E)〜(G))。同様のサイクルを下層階F8〜F2についても順次繰り返し(同図(H))、最後にジャッキ10を撤去しつつ地上層F1を構築することにより、所定階層の多層構造物を構築する(同図(I))。
【0004】
また、多層建築物1を解体する場合にも、クレーン等を用いて上層階から下層階へと順次に躯体・コンクリート等を破砕又は切断する従来の一般的な工法に代えて、例えば特許文献3及び4が開示するように、ジャッキによって多層建築物1を徐々に下降(ジャッキダウン)させながら下層階から上層階へと順次解体する工法(以下、ジャッキダウン工法ということがある)が開発されている。図6は、特許文献3の開示するジャッキダウン工法によって多層建築物1の上層階を下層階(図示例では地上階)に介装したジャッキ10で下降させながら解体する手順を示す。
【0005】
図6のジャッキダウン工法では、先ず多層建築物1の地上階F1の上部鉛直荷重を負担する全ての柱P1、P2、P3の下部にジャッキ10を介装したうえで、ジャッキ上方の各階の下降の障害となる地上階F1の柱P以外の躯体やコンクリート(壁等)を解体撤去する(同図(A))。次いで、全ての柱P1、P2、P3のジャッキ10を同時に縮める収縮ステップと、各柱P1、P2、P3のジャッキ10を柱相互間で荷重分担しながら順次にジャッキ直上部を吊るし切りして伸ばす伸張ステップとを繰り返すことにより、ジャッキ上方の柱に結合した上層階Fj(j≧2)を徐々に下降させる(同図(B)〜(C))。ジャッキ上層階Fjが1階層分下降したのち、下降した上層階F2に解体装置9を進入させて柱P以外の躯体やコンクリート(床梁又は床板・壁等)を解体撤去する(同図(D))。図9(E)は1階層分の解体後に同図(A)と同じ状体に復帰することを示しており、上述したジャッキ上方の各階層の下降ステップと下降した階層の解体ステップとを同様に繰り返すことにより、3階F3以上の各層階も順次解体することができる(同図(F))。
【0006】
上述したジャッキアップ工法及びジャッキダウン工法は、多層建築物1の構築作業や解体作業を特定の下層階(図示例では地上階)のみで行うので、地上階又は低層階のみを覆う比較的簡単な養生仮設によって飛石・粉塵・騒音等の周囲への飛散を防止することができ、構築作業や解体作業に伴う周囲環境への影響を小さく抑えることができる。また、作業階が地上階のみに限定されており、作業機械・設備等を上層階へ移動させる盛り替え作業が不要となるので省エネルギーであると共に、高さに拘わらず同じ工程速度で構築作業や解体作業を進めることができるので、クレーン等を用いる従来工法に比して多層建築物を短工期で効率的に構築又は解体することができ、構築作業又は解体作業の自動化を図ることも期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平07−062746号公報
【特許文献2】特公昭54−021657号公報
【特許文献3】特開2009−138377号公報
【特許文献4】特開2009−156022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、図6のジャッキダウン工法は特定の構造種別(例えばS造)の建築物には適しているが、他の構造種別(例えばRC造、SRC造、CFT造等)の建築物1には必ずしも適していない問題点がある。すなわち、図6の工法は伸縮ストローク長L1のジャッキ10を用いてS造建築物1を解体する場合を想定しており、各柱Pのジャッキ10を同時にストローク長L1だけ縮める収縮ステップと、各柱Pのジャッキ直上部を所定長さL1だけ吊るし切りしてジャッキ10を伸ばす伸張ステップとを小刻みに繰り返すので、建築物1をストローク長L1(例えば70cm程度)だけ下降させる度に全てのS造柱Pをそれぞれ切断する作業が必要となる。S造柱P(鉄骨)は比較的短時間で溶断可能であるが、他の構造種別の柱Pは例えばワイヤーソー等を使用して切断する必要があり、例えば1m径のRC造柱Pを切断するには装置準備も含めて3時間程度、鉄骨芯のあるSRC造柱Pの切断作業には5〜7時間を要する。従って、図6の工法では柱P等の切断に時間がかかるため、S造以外の建築物1を短工期で解体することは難しくなる。また、仮に工期的な制約がない場合でも、柱切断の要する労力、エネルギー等が大きくなり、柱切断時に発生する排水の処理量も増えることは望ましくはない。
【0009】
図6のジャッキダウン工法をS造以外の多層建築物1に適用して短工期で解体するためには、建築物1の下降時に必要な柱Pの切断回数をできるだけ少なくし、建築物1を短時間で下降させる技術が必要である。また、ネジ式ジャッキ10を使用して多層建築物1を1階層ずつ上昇させる図7のジャッキアップ工法においても、様々な構造種別の建築物1を短工期で効率的に構築するためには、建築物1を短時間でジャッキアップする技術が求められる。例えばネジ式ジャッキ以外の構造のジャッキ(油圧式ジャッキ等)を用いて多層建築物1を短時間で上層させることができれば、図7のジャッキアップ工法の短工期化を図ると共に、ジャッキアップ工法の適用対象の建築物1を広げることが期待できる。
【0010】
そこで本発明の目的は、構造種別に拘らず多層建築物の下層階に介装したジャッキで上層階を短時間で上昇又は下降させることができる方法及びシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
図1(A)〜(C)及び図2(A)〜(C)の実施例を参照するに、本発明による多層建築物の昇降方法は、多層建築物1(図6及び図7参照)の特定下層階Fvの床面2上の複数位置にそれぞれ所定高さL1の半割型中空筒状ブロック20を天井(上層階Fjの床2)の近傍まで複数段積層配置すると共にそのブロック20の積層体の中空部に荷重受け治具22を上下移動可能に係合させ、各積層体の最下段の中空部にジャッキ10を設置し(図1(A)及び図2(A)参照)、荷重受け治具22を最下段ブロック又はその上段ブロックに係止してジャッキ10を伸張させ且つ係止部位の上方ブロックを押し上げて上層階Fjの荷重を支持しつつ最下段ブロックを組み立て又は除去する伸張ステップ(図1(B)及び図2(B)参照)と、ジャッキ10を収縮させて係止部位の上方ブロックを最下段ブロック又は床面上に着座させ且つ荷重受け治具22を最下段ブロック又はその上段ブロックへ移動させる収縮ステップ(図1(C)及び図2(C)参照)とを繰り返すことにより、ジャッキ上層階Fjを上昇又は下降させてなるものである。
【0012】
また、図1(A)〜(C)及び図2(A)〜(C)の実施例を参照するに、本発明による多層建築物の昇降システムは、多層建築物1(図6及び図7参照)の特定下層階Fvの床面2上の複数位置にそれぞれ天井(上層階Fjの床2)の近傍まで複数段積層配置する所定高さL1の半割型中空筒状ブロック20;ブロック20の積層体の中空部に上下移動可能に係合させる荷重受け治具22;各積層体の最下段の中空部に設置するジャッキ10;及び荷重受け治具22を最下段ブロック又はその上段ブロックに係止してジャッキ10を伸張させ且つ係止部位の上方ブロックを押し上げて上層階Fjの荷重を支持しつつ最下段ブロックを組み立て又は除去する伸張ステップ(図1(B)及び図2(B)参照)と、ジャッキ10を収縮させて係止部位の上方ブロックを最下段ブロック又は床面上に着座させ且つ荷重受け治具22を最下段ブロック又はその上段ブロックへ移動させる収縮ステップ(図1(C)及び図2(C)参照)とを繰り返すことにより、ジャッキ上層階Fjを上昇又は下降させるジャッキ制御装置12を備えてなるものである。
【0013】
ジャッキ10は、図1(A)及び図2(A)のような積層体の最下段の中空部に代えて、図1(D)及び図2(D)のように中空部に係合させた荷重受け治具22上に設置してもよい。この場合は、図1(E)〜(G)及び図2(E)〜(F)に示すように、伸長ステップにおいて荷重受け治具22を最上段ブロック又はその下段ブロックに係止して各ジャッキ10を伸張させ且つ上層階Fjを押し上げつつ最上段ブロックを組み立て又は除去し、収縮ステップにおいて各ジャッキ10を収縮させて上層階Fjを最上段ブロック上に着座させ且つ荷重受け治具22を最上段ブロック又はその下段ブロックへ移動させることができる。
【0014】
好ましくは、図3に示すように、各ブロック20に荷重受け治具22の上下移動案内部26と係止部27とを設け、図3(D)及び(E)に示すように案内部26が上下方向に繋がるように各ブロック20を積層する。更に好ましくは、図1及び図2に示すように、特定下層階Fvの床面2上の複数位置にそれぞれ筒状ベース29を設置し、その筒状ベース29上にブロック20を天井まで複数段積層する。
【発明の効果】
【0015】
本発明による多層建築物の昇降方法及びシステムは、多層建築物1の特定下層階Fvに天井(上層階Fjの床2)の近傍まで半割型中空筒状ブロック20を複数段積層配置すると共にその積層体の中空部に荷重受け治具22を上下移動可能に係合させ、各積層体の最下段の中空部にジャッキ10を設置したうえで、各積層体の荷重受け治具22を最下段ブロック又はその上段ブロックに係止してジャッキ10を伸張させ且つ係止部位の上方ブロックを押し上げて上層階Fjの荷重を支持しつつ最下段ブロックを組み立て又は除去する伸張ステップと、各積層体のジャッキ10を収縮させて係止部位の上方ブロックを最下段ブロック又は床面上に着座させ且つ荷重受け治具22を最下段ブロック又はその上段ブロックへ移動させる収縮ステップとを繰り返すことにより上層階Fjを上昇又は下降させるので、次の効果を奏する。
【0016】
(イ)中空部に荷重受け治具22を上下移動可能に係合させた半割型中空筒状ブロック20の積層体で上層階Fjの荷重を支持し、積層体内で荷重受け治具22の係止部位を移動させながら積層体の最下段に内包させたジャッキ10を伸縮させて最下段ブロックを組み立て又は除去することにより、最下段ブロックの追加又は撤去という簡単な作業でジャッキ上層階を短時間で上昇又は下降させることができる。
(ロ)従来のジャッキダウン工法に本発明の昇降方法を適用し、多層建築物1の特定下層階(例えば地上階)Fvの各柱Pを床面位置と天井位置とで切断して中空筒状ブロック20の積層体で置き換えることにより、最小限の柱切断回数でジャッキ上層階Fjを降下させることが可能となり、柱切断時間ひいては建築物の解体工期を短縮すると共に柱切断に要する労力、エネルギー、排水処理等を削減することができる。
(ハ)また、ジャッキアップ工法に本発明の昇降方法を適用し、多層建築物1の特定下層階(例えば地上階)Fvに中空筒状ブロック20の積層体を配置してジャッキ上層階Fjを上昇させることにより、油圧式ジャッキ等をジャッキアップ工法に適用することが可能となり、従来のネジ式ジャッキを用いた工法に比してジャッキアップ工法の短工期化及び適用範囲の拡大を図ることができる。
(ニ)ジャッキ10は、中空筒状ブロック20の積層体の最下段の中空部に代えて荷重受け治具22上に設置して内包させることも可能であり、積層体を設置する床面位置に応じてジャッキ10の設置部位を切り替えることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための形態及び実施例を説明する。
【図1】は、本発明による多層建築物の下降システムの一実施例である。
【図2】は、本発明による多層建築物の上昇システムの一実施例である。
【図3】は、本発明の昇降方法で用いる半割型中空筒状ブロックの一実施例の説明図である。
【図4】は、本発明による多層建築物の昇降方法の一実施例である。
【図5】は、本発明による多層建築物の昇降方法の他の実施例である。
【図6】は、多層建築物を下降させながら解体する従来のジャッキダウン工法の説明図である。
【図7】は、多層建築物を上昇させながら構築する従来のジャッキアップ工法の説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、例えば図6に示すジャッキダウン工法に本発明の昇降方法を適用した実施例を示す。先ず図1(A)に示すように多層建築物1の特定下層階Fv(例えば地上階F1)の上部荷重を負担する全ての柱Pをそれぞれ床面位置と天井位置(上層階Fjの床梁又は床板2の直下部位)とで切断し、各柱Pの切断部の下端位置にそれぞれジャッキ10を設置すると共に、そのジャッキ10を内包するように所定径の中空筒状ベース29を周囲に配置する。次いで、筒状ベース29上に同じ径で所定高さL1の半割型中空筒状ブロック20を特定下層階Fvの天井近傍まで複数段(図示例では5段)積み上げ、柱Pの切断部分を複数の筒状ブロック20の積層体で置き換える。
【0019】
図1(A)において、特定下層階Fvの各柱Pは、他の柱に上部荷重を支持させながら1本ずつ又は複数本まとめて吊るし切りし、順次に筒状ブロック20の積層体へ置き換えることができる。吊るし切りが困難である場合は、必要に応じて図4(A)に示すように柱Pの周囲に支保部材(サポート部材)19を配置して上部荷重を支持しながら柱Pを切断してもよい。なお、図示例では多層建築物1の地上階F1を特定下層階Fvとしてジャッキ10を設置しているが、ジャッキダウン工法のジャッキ設置階は地上階F1に限るものではなく、建築物1の2階F2、3階F3、又は地下階B1〜B3を特定下層階Fvとすることも可能である。
【0020】
図1(A)では、特定下層階Fvの天井(各柱Pの切断上端)に当接するまで筒状ブロック20の積層体を積み上げることにより、その上層階Fjの荷重を積層体で支持している。ただし、本発明では後述するジャッキ10の伸張ステップにおいて上層階Fjの荷重を積層体で支持することができれば足り、ジャッキ10の伸張前に特定下層階Fvの天井とブロック20の積層体との間に多少の隙間(ジャッキ10の伸縮ストローク長L1より小さい隙間)が存在していてもよい。すなわち、筒状ブロック20は図示例のように天井に当接するまで積み上げる必要はなく、ジャッキ10の伸張ステップにおいて天井に当接することができる天井近傍まで積み上げれば足りる。積層体の頂部には当て板又はシュー等の調整部材11を配置し、天井との当接時に柱Pの切断面の凹凸の影響を避けることが望ましい。
【0021】
筒状ベース29及び筒状ブロック20は、それぞれ上部荷重を支持する強度・耐力を有しており、例えばボルト等で分離可能に接合させて積み上げることができる。そのように積み上げた積層体は、後述するようにジャッキ10の伸長ステップにおいて、最下段(又は最上段)から1ブロックずつ筒状ブロック20を分離して除去することができる(図1(B)参照)。各ブロック20の所定高さL1は、例えばジャッキ10の伸縮ストローク長L1と同じ高さ又はその整数分の1の高さとすることが望ましいが、ジャッキ10の伸縮ストローク長L1の範囲内で適宜高さを選択することが可能であり、伸縮ストローク長L1の範囲内でブロック20毎に異なる高さL1としてもよい。
【0022】
図3は、本発明で用いる半割型中空筒状ブロック20の一例を示す。図3(A)の筒状ブロック20aは、周方向に分割可能な複数の筒状片21a、21bを例えば解除可能な締結具28によって筒状に結合したものであり、両筒状片21a、21bの間に突合せ間隙を設けて後述する荷重受け治具22の上下移動案内部26とし、各筒状片21a、21bの下端24に一部切欠きを設けて荷重受け治具22の係止部27としたものである。また図3(B)の筒状ブロック20bは、周方向に分割可能な複数の筒状片21c、21dを筒状ブロック20aと同様に締結部28等によって筒状に結合させ、両筒状片21c、21dの間に荷重受け治具22の上下移動案内部26となる突合せ間隙を設けたものであるが、各筒状片21c、21dの下端24に設けた係止部27の案内部26に対する相対的な位置を筒状ブロック20aと相違させたものである。
【0023】
なお、図示例では一対の半割型筒状片21a、21b(又は21c、21d)により筒状ブロック20a(又は20b)を構成しているが、筒状片21の分割数は図示例に限定されず、筒状ブロック20を3以上の筒状片21で構成してもよい。また、図示例では各筒状片21の下端24を一部切欠いて荷重受け治具22の係止部27を設けているが、係止部27は各筒状片21の上端23に設けてもよく、或いは下端24と上端23とを結ぶ上下移動案内部26の一部に分岐を設けて係止部27としてもよい。図1に示す筒状ベース29も図3の中空筒状ベース29と同様の半割型筒状構造とすることができ、例えば図1(A)において筒状ベース19を省略し、特定下層階Fvの床面から天井近傍まで中空筒状ベース29を積上げて積層体を形成することも可能である。
【0024】
例えば、図3(A)の筒状ブロック20aと図3(B)の筒状ブロック20bとを、図3(D)及び(E)に示すように各ブロック20a、20bの上下移動案内部26が上下方向に繋がるように交互に積み重ねて積層体を形成し、そのブロック積層体の中空部に図3(C)に示すような荷重受け治具22を上下移動可能に係合させる。図示例の荷重受け治具22は、中間円盤部22bとその両端に突出する棒状端部22aと有し、例えば係止部27から積層体の中空部内に挿入し、両端の棒状端部22aを案内部26に係合させて中間円盤部22bを上下方向の移動を許容すると共に、両端の棒状端部22aを係止部27に係合させて中間円盤部22bの上下方向の移動を禁止することができる。また、図示例のように各ブロック20a、20bを垂直方向の案内部26が水平方向の係止部27を介して折れ線状に繋がるように積み重ねて積層体とすることにより、同図に白三角矢印で示すように、荷重受け治具22を任意のブロック20に容易に係止させると共に、その係止を容易に解放して上下方向のブロック20へ移動させることができる。ただし、荷重受け治具22の形状は図示例に限定されず、積層体の中空部に係合して中空部内を上下移動可能な形状であれば足りる。
【0025】
図1(A)に示すように各柱Pの切断部分にそれぞれ、例えば図3(D)のように筒状ブロック20a、20bの積層体を積上げたのち、図1(B)に示すように各ブロック積層体の中空部に係合させた荷重受け治具22を最下段ブロック20aとその上段ブロック20bとの間に係止し、積層体内のジャッキ10を伸張させて上層階Fjの荷重を支持する(伸長ステップ)。ジャッキ10を荷重受け治具22に当接させながら伸長させることにより、ジャッキ10の作用力によって積層体の係止部位の上方ブロック(すなわち最下段以外のブロック)を押し上げて最下段ブロック20aを上部荷重から解放し、最下段ブロック20aを複数の筒状片21a、21bに分割して除去することができる(図4(C)も参照)。図1(B)では、ジャッキ10は上部荷重を支持しながら伸長させることができ、全ての柱Pの積層体の最下段ブロック20aとその上段ブロック20bとの間に荷重受け治具22を係止したうえで、特定下層階Fvの全ての柱Pのジャッキ10を同時に伸長させることが可能である。ただし、上述した各柱Pを切断する場合と同様に、各柱Pのジャッキ10を1本ずつ又は複数本まとめて伸張させてもよい。
【0026】
次いで図1(C)に示すように、特定下層階Fvの全てのジャッキ10を同時に収縮して荷重受け治具22で押し上げられた係止部位の上方ブロックを筒状ベース29上に着座させ、着座させた上方ブロック(最下段ブロック20b)の係止部27から荷重受け治具22を解放し、図3(D)の白三角矢印に示すように最下段ブロック20bの上下移動案内部26を介して荷重受け治具22を最下段ブロック20bとその上段ブロック20aとの間の係止部27に移動させる(収縮ステップ)。全てのジャッキ10を同時に収縮させることにより、ジャッキ上層階Fjを水平に維持しつつジャッキ10のストローク長L1だけ下降させることができる(図4(D)も参照)。
【0027】
図示例では、ケーブル17を介して各ジャッキ10をジャッキ制御装置12に接続し、制御装置12によって全てのジャッキ10の伸長ステップ(図1(B))と収縮ステップ(図1(C))とを個別に制御している。図示例のジャッキ制御装置12は、上述した図1(B)のように各柱Pのジャッキ10を同時に又は1本ずつ伸長させる伸長ステップ手段14と、図1(C)のように各柱Pのジャッキ10を同時に縮める収縮ステップ手段15と、各ジャッキ10のストローク長L1や各ステップの繰り返し回数等を記憶する記憶手段16を有している。例えばジャッキ10を油圧ジャッキ装置とし、各ジャッキ10に供給される油圧を制御装置12で制御することによりジャッキ10を伸長又は収縮させる。ただし、本発明で利用可能なジャッキ10は油圧ジャッキ装置に限定されず、建築物1の各柱Pを支持できる十分な揚力及び耐荷重性能を有する適当なジャッキ装置を利用することができる。
【0028】
図4は、ジャッキ制御装置12によって図1(B)〜(C)のように各柱Pのジャッキ10の伸長ステップと収縮ステップとを繰り返すことにより、建築物1のジャッキ上層階Fjを所定高さL1ずつ降下させる処理を示す(同図(E)〜(L)参照)。図4の実施例では、伸長ステップと収縮ステップとを5回繰り返すことにより、多層建築物1を1階層高さLだけ降下させている。図4(L)において、ジャッキ上層階Fjを解体に適する1階層高さLだけ降下させたのち、図6(D)を参照して上述したように、降下したジャッキ上層階Fjに解体装置9を進入させて柱以外の躯体やコンクリート(床梁又は床板・壁等)を解体撤去する。図4(L)は同図(A)の柱Pの切断前と同じ状態に復帰することを示しており、再び同図(A)に戻って各柱Pを床面位置から天井位置なで切断すると共に、同図(B)に示すように柱Pの切断部分を複数段の半割型中空筒状ブロック20の積層体で置き換えて上層階F(j+1)の荷重を支持し、同図(C)〜(L)のように各ジャッキ10の伸長ステップ及び収縮ステップを繰り返すことにより、ジャッキ上層階F(j+1)を階層毎に順次解体する。
【0029】
図1及び図4のように特定下層階Fvの各柱Pを床面位置と天井位置との2箇所で切断し、筒状ブロック20の積層体に置き換えて上層階Fjの荷重を支持する方法によれば、ジャッキダウン工法において柱Pの切断回数を最小限に抑えつつ上層階Fjを短時間で下降させることができる。すなわち、図6の工法では建築物1をストローク長L1(例えば70cm程度)だけ下降させる度に柱Pを切断する必要があり、建築物1を1階層高さ(例えば3.5m程度)下降させるために各柱Pを少なくとも5回切断する必要があるのに対し、図1(A)のように柱Pの切断部分を複数の筒状ブロック20の積層体で置き換える方法によれば、建築物1を1階層高さ下降させるために必要な柱Pの切断回数を2箇所(2階F2以上の解体時は1箇所)に抑え、ブロック20の除去のみによって建築物1をストローク長L1ずつ下降させることができる(図4の流れ図を参照)。また、S造、RC造、SRC造、CFT造等の構造種別に拘わらず柱Pの切断回数を一定とすることができ、一箇所当たりの切断及び撤去に要する時間は構造種別によって相違するものの、何れの構造種別においても建築物1の解体工期を短縮することが期待できる。
【0030】
また図3のような半割型中空筒状ブロック20は量産化が可能であり、解体する構造物1の階層高さLに応じて筒状ブロック20の所定高さL1を調整することも容易である。構造物の階層高さLが大きく、ジャッキ10の伸長ステップ又は収縮ステップにおいて筒状ブロック20の積層体が転倒する等のおそれがある場合は、必要に応じて特定下層階Fvの各柱Pの周囲に放射状の斜材(図示せず)を設けて筒状ブロック20の積層体を支持することも可能である。
【0031】
更に、図3の半割型中空筒状ブロック20は、図6のようなジャッキダウン工法だけでなく、図7のようなジャッキアップ工法に適用してジャッキ上層階Fjを短時間で上昇させる場合にも利用することができる。図2(A)〜(C)は、本発明の昇降方法を図7のジャッキアップ工法に適用した実施例を示す。図7のようなネジ式ジャッキ10に代えて、例えば、図2(A)に示すように多層建築物1の特定下層階Fv(例えば地上階F1)の複数の床面位置にそれぞれジャッキ10を設置すると共に、そのジャッキ10を内包するように所定径の中空筒状ベース29を配置し、更に筒状ベース29上に図3(A)のような半割型中空筒状ブロック20aを積層したうえで、その最下段ブロック20a上で上層階Fjの柱Pや壁、床梁又は床板2を構築する。
【0032】
最下段ブロック20a上で上層階Fjを構築したのち、図2(A)に示すように最下段ブロック20aと筒状ベース29との間の係止部27に荷重受け治具22を挿入・係止したうえで、図2(B)に示すように特定下層階Fvの全てのジャッキ10を同時に伸張させて上層階Fjの荷重を支持する(伸長ステップ)。ジャッキ10を荷重受け治具22に当接させながら伸長させることにより積層体の係止部位の上方ブロック(すなわち筒状ベース29以外のブロック20a)を所定高さL1だけ押し上げ、押し上げたブロック20aの下方間隙に筒状片21c、21dを挿入して最下段ブロック20bを組み立てる。また、全てのジャッキ10を同時に伸張させることにより、ジャッキ上層階Fjを水平に維持しつつジャッキ10のストローク長L1だけ上昇させることができる。
【0033】
次いで図2(C)に示すように、各ジャッキ10を同時に収縮して荷重受け治具22で押し上げられた係止部位の上方ブロック(筒状ベース29以外のブロック20a)を最下段ブロック20b上に着座させ、着座させた上方ブロック(ブロック20a)の係止部27から荷重受け治具22を解放し、図3(E)の白三角矢印に示すように最下段ブロック20bの上下移動案内部26を介して荷重受け治具22を最下段ブロック20bと筒状ベース29との間の係止部27に移動させる(収縮ステップ)。図2(C)の収縮ステップでは、全ての柱Pのジャッキ10を同時に収縮させることが可能であるが、ジャッキ10を1個ずつ収縮させてもよい。
【0034】
図2(B)及び(C)のような伸長ステップ及び収縮ステップも、各ジャッキ10に接続したジャッキ制御装置12によって制御することができる。例えばジャッキ制御装置12によって図4の流れ図と逆向きに各ジャッキ10の伸長ステップ(図2(B))と収縮ステップ(図2(C))とを繰り返し、図4(L)のジャッキ10上で構築された上層階Fjに対して図4(K)、同図(I)、同図(G)、同図(E)、同図(C)のように5回の伸長ステップと収縮ステップとを繰り返すことにより、多層建築物1を1階層高さLだけ上昇させることができる。図4(B)において、ジャッキ上層階Fjを1階層高さLだけ上昇させたのち、必要に応じて図4(A)のように支保部材(サポート部材)19で上層階Fjを支持したうえで、図7(E)を参照して上述したようにジャッキ10の上に次の上層階F(j−1)を構築する。上層階F(j−1)を構築することで図4(L)の状態に復帰するので、再び図4の流れ図を逆向きに各ジャッキ10の伸長ステップ(図2(B))と収縮ステップ(図2(C))とを繰り返すことにより、所定階層の多層構造物を構築することができる(図7(I)参照)。
【0035】
こうして本発明の目的である「構造種別に拘らず多層建築物の下層階に介装したジャッキで上層階を短時間で上昇又は下降させることができる方法及びシステム」を提供することができた。
【実施例1】
【0036】
図1(D)〜(G)は、図3を参照して上述した半割型中空筒状ブロック2の積層体を用いた本発明の他の実施例を示す。ただし本実施例では、図1(A)〜(C)のように特定下層階Fvの床面位置にジャッキ10を設置して多層建築物1を下降させる方法に代えて、積層体の中空部に係合させた荷重受け治具22上にジャッキ10を設置している。すなわち、多層建築物1の特定下層階Fv(例えば地上階F1)の上部荷重を負担する全ての柱Pをそれぞれ切断し、各柱Pの切断床面位置に中空筒状ベース29及び筒状ブロック20を天井近傍(各柱Pの切断上端近傍)まで積み上げて積層体を形成すると共に、その積層体の中空部に荷重受け治具22(図3(C)参照)を上下移動可能に係合させ、その荷重受け治具22上にジャッキ10を載置して積層体に内包させる。図示例では、説明簡単化のため、伸縮時におけるジャッキ10の本体高さを筒状ブロック20と実質上同じ高さL1(ジャッキ10の伸縮ストローク長L1と同じ高さ)としているが、上述したブロック20の所定高さL1と同様にジャッキ10の大きさも調整可能である。
【0037】
先ず図1(D)において、床面上の複数位置にそれぞれ図3(E)のような筒状ブロック20a、20bの積層体を積上げ、ブロック積層体の中空部に係合させた荷重受け治具22を最上段ブロック20aの係止部27に係止したのち、図1(E)に示すように、荷重受け治具22上のジャッキ10を伸長させて上層階Fjに当接させることにより上層階Fjの荷重を支持する(伸長ステップ)。図1(E)においても、図1(B)の場合と同様に、各積層体の最上段ブロック20aにそれぞれ荷重受け治具22を係止したうえで、全ての積層体のジャッキ10を同時に伸長させることが可能である。
【0038】
次いで図1(F)に示すように、各積層体のジャッキ10を同時に収縮して押し上げられた上層階Fjを最上段ブロック20a上に着座させ、着座させた最上段ブロック20aの係止部27から荷重受け治具22を解放し、図3(E)の白三角矢印に示すように最上段ブロック20aの上下移動案内部26を介して荷重受け治具22をジャッキ10と共に下方移動させ、その下段ブロック20bの係止部27にジャッキ10が載置された荷重受け治具22を移動させる(収縮ステップ)。この場合も、図1(C)の場合と同様に全ての積層体のジャッキ10を同時に収縮させることにより、ジャッキ上層階Fjを水平に維持しつつジャッキ10のストローク長L1だけ下降させることができる(図5(D)も参照)。その後、図1(G)に示すように、荷重受け治具22に反力を取りながらジャッキ10を伸長させ、上層階Fjを押し上げて積層体の最上段ブロック20aを上部荷重から解放することにより、最上段ブロック20aを複数の筒状片21c、21dに分割して除去する(図5(C)も参照)。
【0039】
図5は、ジャッキ制御装置12によって上述した各ジャッキ10の伸長ステップ(図1(G))と収縮ステップ(図1(F))とを繰り返すことにより、建築物1のジャッキ上層階Fjを所定高さL1ずつ降下させる処理を示す(図5(E)〜(M)参照)。図5(N)において、ジャッキ上層階Fjを解体に適する1階層高さLだけ降下させたのち、図4(L)の場合と同様に降下したジャッキ上層階Fjに解体装置9を進入させて柱以外の躯体やコンクリート(床梁又は床板・壁等)を解体撤去する。図5(N)は同図(A)の柱Pの切断前と同じ状態に復帰することを示しており、再び同図(A)に戻って各柱Pを床面位置から天井位置なで切断すると共に、同図(B)に示すように柱Pの切断部分に半割型中空筒状ブロック20の積層体を積上げ、積層体の中空部に係合させた荷重受け治具22上に設置したジャッキ10で上層階F(j+1)の荷重を支持しつつ伸長ステップ及び収縮ステップを同図(C)〜(M)のように繰り返すことにより、ジャッキ上層階F(j+1)を階層毎に順次解体することができる。
【0040】
また図2(D)は、図2(A)のように特定下層階Fvの床面位置にジャッキ10を設置して建築物1を上昇させる方法に代えて、積層体の中空部に係合させた荷重受け治具22上にジャッキ10を設置してジャッキ上層階Fjを上昇させる本発明の他の実施例を示す。例えば、図2(D)に示すように多層建築物1の特定下層階Fv(例えば地上階F1)の複数の床面位置にそれぞれ中空筒状ベース29及び筒状ブロック20aを積み上げ、その最上段の筒状ブロック20a上で上層階Fjの柱Pや壁、床梁又は床板2を構築する。また、その筒状ベース29と筒状ブロック20aとの間の係止部27に荷重受け治具22を上下移動可能に係合させ、その荷重受け治具22上にジャッキ10を載置して筒状ブロック20aに内包させる。
【0041】
最上段ブロック20a上で上層階Fjを構築したのち、図2(E)に示すように、荷重受け治具22上のジャッキ10を上層階Fjに当接させて荷重を支持しながら伸長させる(伸長ステップ)。荷重受け治具22に反力を取りながらジャッキ10を伸長させて上層階Fjを所定高さL1だけ押し上げ、押し上げた上層階Fjの下方間隙に筒状片21c、21dを挿入して最下段ブロック20bを組み立てる。この場合も、図2(B)の場合と同様に全てのジャッキ10を同時に伸張させることにより、ジャッキ上層階Fjを水平に維持しつつジャッキ10のストローク長L1だけ上昇させることができる。
【0042】
次いで図2(F)に示すように、各ジャッキ10を収縮させて押し上げられた上層階Fjを最上段ブロック20b上に着座させ、筒状ベース29と下段ブロック20aとの間の係止部27から荷重受け治具22を解放し、図3(D)の白三角矢印に示すように下段ブロック20aの上下移動案内部26を介して荷重受け治具22を最上段ブロック20bと下段ブロック20aとの間の係止部27に移動させる(収縮ステップ)。図2(F)の収縮ステップでは、図2(C)の場合と同様に全ての柱Pのジャッキ10を同時に収縮させることの可能であるが、ジャッキ10を1個ずつ収縮させてもよい。
【0043】
図2(E)及び(F)のような伸長ステップ及び収縮ステップも、各ジャッキ10に接続したジャッキ制御装置12によって図5の流れ図と逆向きに繰り返し、図5(N)のジャッキ10上で構築された上層階Fjに対して図5(L)、同図(I)、同図(F)、同図(C)のように伸長ステップと収縮ステップとを繰り返すことにより、多層建築物1を1階層高さLだけ上昇させることができる。図5(B)において、ジャッキ上層階Fjを1階層高さLだけ上昇させたのち、必要に応じて図5(A)のように支保部材(サポート部材)19で上層階Fjを支持したうえで、図7(E)を参照して上述したようにジャッキ10の上に次の上層階F(j−1)を構築する。上層階F(j−1)を構築することで図5(N)の状態に復帰するので、再び図5の流れ図を逆向きに各ジャッキ10の伸長ステップ(図2(E))と収縮ステップ(図2(F))とを繰り返すことにより、所定階層の多層構造物を構築することができる(図7(I)参照)。
【符号の説明】
【0044】
1…多層建築物 3…床面(天井面)
9…解体装置
10…ジャッキ 10a…仮設柱体
11…調整部材(シュー) 12…ジャッキ制御装置
14…伸長ステップ手段 15…収縮ステップ手段
16…記憶手段 17…ケーブル
19…支保部材(サポート部材)
20…筒状ブロック 21…半割筒状片
22…荷重受け治具 23…上端
24…下端 25…中空部
26…案内部 27…係止部
28…締結具 29…筒状ベース
30…荷重伝達構造体(コア壁) 32…荷重伝達梁
40…土留杭 41…造成杭
42…仮設支柱 43…仮設架台
44…仮設ブラケット
B…基礎部 F…階層
G…地盤 P…柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層建築物の特定下層階の床面上の複数位置にそれぞれ所定高さの半割型中空筒状ブロックを天井近傍まで複数段積層配置すると共にそのブロック積層体の中空部に荷重受け治具を上下移動可能に係合させ、前記各積層体の最下段の中空部にジャッキを設置し、前記荷重受け治具を最下段ブロック又はその上段ブロックに係止してジャッキを伸張させ且つ係止部位の上方ブロックを押し上げて上層階の荷重を支持しつつ最下段ブロックを組み立て又は除去する伸張ステップと、前記ジャッキを収縮させて係止部位の上方ブロックを最下段ブロック又は床面上に着座させ且つ荷重受け治具を最下段ブロック又はその上段ブロックへ移動させる収縮ステップとを繰り返すことにより、ジャッキ上層階を上昇又は下降させてなる多層建築物の昇降方法。
【請求項2】
請求項1の昇降方法において、前記ジャッキを積層体の最下段の中空部に代えて中空部に係合させた荷重受け治具上に設置し、前記伸長ステップにおいて荷重受け治具を最上段ブロック又はその下段ブロックに係止して各ジャッキを伸張させ且つ上層階を押し上げつつ最上段ブロックを組み立て又は除去し、前記収縮ステップにおいて各ジャッキを収縮させて上層階を最上段ブロック上に着座させ且つ荷重受け治具を最上段ブロック又はその下段ブロックへ移動させてなる多層建築物の昇降方法。
【請求項3】
請求項1又は2の昇降方法において、前記各ブロックに荷重受け治具の上下移動案内部と係止部とを設け、前記案内部が上下方向に繋がるように各ブロックを積層してなる多層建築物の昇降方法。
【請求項4】
請求項1から3の何れかの昇降方法において、前記特定下層階の床面上の複数位置にそれぞれ筒状ベースを設置し、その筒状ベース上に前記ブロックを天井まで複数段積層してなる多層建築物の昇降方法。
【請求項5】
多層建築物の特定下層階の床面上の複数位置にそれぞれ天井近傍まで複数段積層配置する所定高さの半割型中空筒状ブロック;前記ブロック積層体の中空部に上下移動可能に係合させる荷重受け治具;前記各積層体の最下段の中空部に設置するジャッキ;及び前記荷重受け治具を最下段ブロック又はその上段ブロックに係止してジャッキを伸張させ且つ係止部位の上方ブロックを押し上げて上層階の荷重を支持しつつ最下段ブロックを組み立て又は除去する伸張ステップと、前記ジャッキを収縮させて係止部位の上方ブロックを最下段ブロック又は床面上に着座させ且つ荷重受け治具を最下段ブロック又はその上段ブロックへ移動させる収縮ステップとを繰り返すことにより、ジャッキ上層階を上昇又は下降させるジャッキ制御装置を備えてなる多層建築物の昇降システム。
【請求項6】
請求項5の昇降システムにおいて、前記ジャッキを積層体の最下段の中空部に代えて中空部に係合させた荷重受け治具上に設置し、前記伸長ステップにおいて荷重受け治具を最上段ブロック又はその下段ブロックに係止して各ジャッキを伸張させ且つ上層階を押し上げつつ最上段ブロックを組み立て又は除去し、前記収縮ステップにおいて各ジャッキを収縮させて上層階を最上段ブロック上に着座させ且つ荷重受け治具を最上段ブロック又はその下段ブロックへ移動させてなる多層建築物の昇降システム。
【請求項7】
請求項5又は6の昇降システムにおいて、前記各ブロックに荷重受け治具の上下移動案内部と係止部とを設け、前記案内部が上下方向に繋がるように各ブロックを積層してなる多層建築物の昇降システム。
【請求項8】
請求項5から7の何れかの昇降システムにおいて、前記特定下層階の床面上の複数位置にそれぞれ筒状ベースを設置し、その筒状ベース上に前記ブロックを天井まで複数段積層してなる多層建築物の昇降システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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