説明

多層物品及びその剥離寿命の改善方法

フードウェア基材、並びに80重量%〜94重量%のテトラフルオロエチレン、6重量%〜20重量%の1種以上の式CF2=CFO(RafO)n(RbfO)mcfのペルフルオロビニルエーテル(式中、RafとRbfとは、独立して1個〜6個の炭素原子の直鎖又は分枝状のペルフルオロアルキレン基から選択され、mとnとはそれぞれ独立して0〜10であり、Rcfは1個〜6個の炭素原子のペルフルオロアルキル基であり、ここで、ペルフルオロビニルエーテル含有量が7重量%未満であるとき、フルオロポリマーが5以下のMFIを有する)からなるコポリマー、並びに/又は、80重量%〜94重量%のテトラフルオロエチレン、5重量%〜20重量%の式CF2=CFO(RafO)n(RbfO)mcfのペルフルオロビニルエーテル(式中、Raf、Rbf、m、n、及びRcfは、上記と同一である)を含むコポリマー、及びフルオロポリマーの総重量に対して、15重量%以下の1種以上の追加のモノマー、を有するフルオロポリマー組成物を含む多層物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層物品及びフードウェア物品の剥離寿命の改善方法に関し、より詳しくは、応力亀裂に耐性を示すフルオロポリマーに関するものである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0002】
本発明は、多層物品にてフルオロポリマーを使用することによって生じる特定の問題を解決することに関する。本明細書で記載されるコーティング及び方法の利用によって、フードウェア基材を含む多層物品の剥離寿命が、従来のフルオロポリマーコーティングを使用して作製した多層物品の剥離寿命と比較して、延びる可能性がある。
【0003】
本発明の一態様では、表面を有するフードウェア基材を含む多層物品が提供される。フードウェア基材の表面をコーティングするフルオロポリマー組成物もまた提供され、当該フルオロポリマー組成物は、(a)80重量%〜94重量%のテトラフルオロエチレン、6重量%〜20重量%の1種以上の式CF2=CFO(Raf)n(RbfO)mcfのペルフルオロビニルエーテル(式中、RafとRbfとは、それぞれ独立して1個〜6個の炭素原子の直鎖又は分枝状のペルフルオロアルキレン基から選択され、mとnとはそれぞれ独立して0〜10であり、Rcfは1個〜6個の炭素原子のペルフルオロアルキル基であり、ここで、ペルフルオロビニルエーテル含有量が7重量%未満であるとき、前記フルオロポリマーが5以下のMFIを有する)からなるコポリマー、並びに(b)80重量%〜94重量%のテトラフルオロエチレン、5重量%〜20重量%の式CF2=CFO(RafO)n(RbfO)mcfのペルフルオロビニルエーテル(式中、RafとRbfとは、それぞれ独立して1個〜6個の炭素原子の直鎖又は分枝状のペルフルオロアルキレン基から選択され、mとnとはそれぞれ独立して0〜10であり、Rcfは1個〜6個の炭素原子のペルフルオロアルキル基である)を含むコポリマー、及び前記フルオロポリマーの総重量に対して、15重量%以下の1種以上の追加のモノマー、から選択されるフルオロポリマーを含む。本発明で使用するとき、全てのモノマー量は、ポリマー総重量と比較して、重量%で与えられる。「15重量%以下の1種以上の追加のモノマー」とは、1種以上の追加のモノマーがフルオロポリマー内に存在するが、下限値が制限されていないことを意味する。
【0004】
フルオロポリマーは、フードウェア基材の表面へ結合してよい。幾つかの実施形態では、フードウェア基材へのフルオロポリマーの接触は、本発明のフルオロポリマーより少ない応力亀裂抵抗を有するフルオロポリマー組成物を含む多層物品と比較して、多層物品の剥離寿命を延ばし得る。
【0005】
理論に束縛されるものではないが、出願人らは、剥離寿命の延長は増大したフルオロポリマー応力亀裂抵抗と関連していると考えている。一態様では、本発明で、剥離寿命が応力亀裂抵抗と正比例であり、例えば幾つかの実施形態において、当該技術分野において従来使用した材料とはほぼ桁違いに応力亀裂抵抗を増大させることによって、多層物品の剥離寿命を大幅に延ばし得ると、認識されている。
【0006】
別の態様では、本発明は、フルオロポリマー組成物でフードウェア基材を粉末コーティングすることによって、多層物品の剥離寿命を延ばす工程を含む方法に関する。フルオロポリマー組成物は、(a)80重量%〜94重量%のテトラフルオロエチレン、6重量%〜20重量%の式CF2=CFO(RafO)n(RbfO)mcfの1種以上のペルフルオロビニルエーテル(式中、RafとRbfとは、それぞれ独立して1個〜6個の炭素原子の直鎖又は分枝状のペルフルオロアルキレン基から選択され、mとnとはそれぞれ独立して0〜10であり、Rcfは1個〜6個の炭素原子のペルフルオロアルキル基であり、ここで、ペルフルオロビニルエーテル含有量が7重量%未満であるとき、前記フルオロポリマーが5以下のMFIを有する)からなるコポリマー、並びに(b)80重量%〜94重量%のテトラフルオロエチレン、5重量%〜20重量%の式CF2=CFO(RafO)n(RbfO)mcfのペルフルオロビニルエーテル(式中、RafとRbfとは、それぞれ独立して1個〜6個の炭素原子の直鎖又は分枝状のペルフルオロアルキレン基から選択され、mとnとはそれぞれ独立して0〜10であり、Rcfは1個〜6個の炭素原子のペルフルオロアルキル基である)を含むコポリマー、及び前記フルオロポリマーの総重量に対して、15重量%以下の1種以上の追加のモノマー、から選択されるフルオロポリマーを含む。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の多層物品は、フルオロポリマーを含む。本発明の多層物品内にて提供されるフルオロポリマーは、幾つかの実施形態では、テトラフルオロエチレン及びペルフルオロビニルエーテルから誘導されるインターポリマー化単位を含んでよい。幾つかの実施形態では、ペルフルオロビニルエーテルは、フルオロポリマーの総重量に対して5重量%超の量で存在する。例えば、ペルフルオロビニルエーテルは、フルオロポリマーがテトラフルオロエチレンと1種類のペルフルオロビニルエーテルとの二元重合体であるとともに、ペルフルオロビニルエーテル含有量が7重量%未満であるとき、前記フルオロポリマーが5以下のMFIを有するという条件で、約5%〜約20%、約5%〜約12%、又は約5%〜約7%の量で存在してよい。即ち、場合によっては、ペルフルオロビニルエーテル含有量が少ないと、応力亀裂抵抗がより少なくなり得ることが分かった。この小さい応力亀裂抵抗の影響を弱めるために、ポリマーのMFIを小さくしてよく、これにより、ほぼ同量のペルフルオロビニルエーテルを含有するポリマーの応力亀裂抵抗は更に増大する。MFIコントロールは、例えば、ポリマー分子量を調整するなどの、当該技術分野において既知の手段によって行ってよい。ペルフルオロビニルエーテルの量はまた、ペルフルオロビニルエーテル内の炭素原子数に伴って変化し得る。即ち、より多くの炭素原子を有するペルフルオロビニルエーテルは、より少ない炭素原子を有するペルフルオロビニルエーテルよりも、より少量で存在してよい。
【0008】
幾つかの実施形態では、ペルフルオロビニルエーテルには、式CF2=CF−O−Rfのものが挙げられ、式中、Rfは、1個以上の酸素原子を含み得るペルフルオロ化脂肪族基を表す。その他の実施形態は、式CF2=CFO(RafO)n(RbfO)mRcfのペルフルオロビニルエーテルを含み、式中、RafとRbfとは、それぞれ独立して1個〜6個の、特に2個〜6個の炭素原子の直鎖又は分枝状のペルフルオロアルキレン基から選択され、mとnとはそれぞれ独立して0〜10であり、Rcfは1個〜6個の炭素原子のペルフルオロアルキル基である。幾つかの実施形態では、Rcfは、2個〜6個の炭素原子のペルフルオロアルキル基である。ペルフルオロビニルエーテルの具体例としては、ペルフルオロ(メチルビニル)エーテル、ペルフルオロ(n−プロピルビニル)エーテル、ペルフルオロ(2−メトキシエチルビニル)エーテル、及びCF3(CF22−O−CF(CF3)CF2−O−CF(CF3)−CF2−CF=CF2が挙げられる。上記ペルフルオロビニルエーテルの幾つかは、重合条件下で液体であり、したがって、非ガス状のフッ素化モノマーである。幾つかの実施形態では、2種又はそれ以上のペルフルオロビニルエーテルの組み合わせが、フルオロポリマー内に存在してよい。
【0009】
幾つかの実施形態では、フルオロポリマーは、フルオロポリマーの総重量に対して、80重量%〜94重量%のテトラフルオロエチレン、5重量%〜20重量%のペルフルオロビニルエーテルを含むコポリマー、及び15重量%以下の1種以上の追加のモノマーを含む。
【0010】
フルオロポリマー組成物は、その内1種以上が上記部類から選択されてよい、1種以上のフルオロポリマーを含んでよい。幾つかの実施形態では、フルオロポリマー組成物は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの更なるポリマーを含む。特定の実施形態では、PTFE量は、フルオロポリマーの総重量に対して、フルオロポリマー組成物の50重量%未満、30重量%未満、10重量%未満、5重量%未満、又は更に1重量%未満であってよい。更なる実施形態では、フルオロポリマー組成物はPTFEを含有しない。
【0011】
本明細書中に記載するフルオロポリマーの融点は、TFE以外のインターポリマー化モノマーの濃度が増加するに伴って、減少する。インターポリマー化モノマーの濃度が更に増加するに伴い、1を超える溶融ピークが示差走査熱量計によって明らかになり得る。多くの場合、追加の溶融ピークが、所望の溶融ピーク温度より高い温度にて発生する。幾つかの実施形態では、記載されたフルオロポリマーは、300℃未満の溶融ピークを有し、300℃超の溶融終点を有することができる。特定の実施形態では、300℃超の溶融ピークは存在しない。即ち、特定の実施形態では、本明細書で記載されるフルオロポリマーは、300℃未満の、又は更には約290℃未満の、かつ約270℃超の、又は更には約280℃超の主要溶融ピークを有する。
【0012】
フルオロポリマーのメルトフローインデックス(「MFI」)に特に制限はない。幾つかの実施形態では、例えば、MFIは、1超、2超、5超、又は10超であってよい。MFIは、例えば、20未満、15未満、10未満、5未満、又は4未満であってよい。本明細書で、MFIを参照する場合には常に、報告された値は、ASTM D−1238に従い5kg重を使用して372℃にて測定される。当業者は、特定用途に応じて、MFIが最適化されて、良好な応力亀裂抵抗(低MFI)及び平坦なコーティング(高MFI)を与え得ることを理解するであろう。
【0013】
本発明の多層物品内に提供されるフルオロポリマーは、1種以上の追加のモノマーから誘導される単位を15%以下の量で更に含んでもよい。例えば、1種以上の追加のモノマーは、0.1重量%〜15重量%、0.5重量%〜10重量%、0.5重量%〜5重量%、又は1重量%〜3重量%の量で存在してよい。追加のモノマーとしては、例えば、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロピレンオキシド、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニル、及びフッ化ビニリデンなどのフッ素化モノマーが挙げられる。追加のモノマーとしては、更に例えば、C2〜C9α−オレフィンなどの非フッ素化モノマー(例えば、エチレン及びプロピレン)も挙げられる。ペルフルオロ化ポリマー、特に、追加のモノマーがヘキサフルオロプロピレンであるようなものが、特に本発明に適している。
【0014】
本発明の多層物品中に提供されるフルオロポリマーは、従来の重合法によって調製してよい。これらとしては、例えば、溶液重合、水性乳化重合、及び懸濁重合が挙げられる。
【0015】
幾つかの実施形態では、フルオロポリマーは、約10ミクロン〜約100ミクロンの体積平均粒径を有する。本発明の一態様では、フルオロポリマーは、粉末形態であってよい。フルオロポリマー粉末は、例えば、粉末塗料として使用することが可能である。
【0016】
その上更なる実施形態では、本明細書で記載されたフルオロポリマーは、応力亀裂に耐性を示す。フルオロプラスチックサンプルを小半径で曲げ、次にそれを、応力亀裂を生じさせることが知られている環境にて応力亀裂剤に晒すことによって、本性質を評価することができる。
【0017】
応力亀裂剤は、応力亀裂に寄与することが知られている物質である。このような剤としては、例えば、イソオクタンなどのアルカン、メタノールなどの低級アルコール、及びフッ素化界面活性剤などの界面活性剤並びに界面活性剤を含む流体が挙げられる。これらの剤の活性は、例えば、フルオロポリマーが露出される温度を上げることによって、及び/又は応力亀裂剤の濃度を高めることによって増進し得る。
【0018】
応力亀裂を生じることが知られている環境は、最終物品が晒され得る実際の状況であってよい。加速試験目的のために、例えば、温度を上げることによって、より高濃度の若しくはより強力な応力亀裂剤を使用することによって、及び/又は物品に適用される応力を増加させることによって、環境をより過酷なものとしてよい。
【0019】
曲げ疲労強度(「屈曲亀裂寿命」)の増大は、応力亀裂抵抗の増大と強く関連する。本性質を試験する際に、フィルムストリップの重さを量り、次に135度の角度、毎分約250回での両振り曲げ(前後)により、ストリップが破断するまで屈曲する。破断までのサイクル数を屈曲亀裂寿命として記録する。本手順についてのより詳細な情報は、ASTM D−2176(97a)に見出すことができる。
【0020】
本発明の別の態様では、フルオロポリマー粉末を利用して、プロセス済みフィルム及びコーティング済みフィルムを、フードウェア基材上に形成することができる。平滑表面を得るために、粉末塗装の粒子は、見掛け密度が高くてもよく、また優れた流動性を有してもよい。
【0021】
本発明の更なる実施態様においては、炭素原子100万個当たりの不安定末端基の数を減らすことで、剥離寿命に加えて、多層物品の初期剥離特性が増大し得る。「不安定末端基」とは、任意のプロセス、例えば、酸化、加水分解、熱分解、又はこれらの任意の組み合わせによってHFを放出する、ポリマー鎖の終端にある基を意味する。このような末端基としては、例えば、−COOH、−COF、CONH2、及びCF2CH2OHが挙げられる。不安定末端基の数を(例えば、「ポストフッ素化」によって)減らすことができる。ポストフッ素化は、全ての又はほぼ全ての不安定末端基を除去するのに十分な条件下にて、ポリマーをフッ素ガスと接触させること、及び更に、抽出可能なフッ素分を低濃度まで減らすことを含む。得られたフルオロポリマーは、炭素原子100万個当たり80個以下の不安定末端基、炭素原子100万個当たり20個以下の不安定末端基を有してよく、又は実質的に不安定末端基を含まなくてもよい。「実質的に含まない」とは、炭素原子100万個当たり、5個以下の不安定末端基を有することを意味する。好ましくは、ポストフッ素化は、ペルフルオロ化ポリマーに対して実施されるが、本明細書では、ポストフッ素化を非ペルフルオロ化フルオロポリマーに対して実施できるとも考えられている。更に、本出願にて使用される「安定末端基」を有するものとしてフルオロポリマーについて記載する場合、炭素原子100万個当たり80個以下の不安定末端基を有するフルオロポリマーを意味する。
【0022】
添加剤化合は、カーボンブラック、安定剤、可塑剤、色素、潤滑剤、充填剤、均染剤、プライマー、接着助剤、追加のフルオロポリマー(上記の1種以上のフルオロポリマーを含む)及び通常フルオロポリマーにて利用される加工助剤など、組成物中に組み込むことができる。
【0023】
本明細書で記載される多層物品を使用して、本明細書で記載されるものよりも応力亀裂抵抗が小さいフルオロポリマーを含有するフルオロポリマー組成物で粉末コーティングされた基材を有するフードウェア物品と比較したときに、フードウェア物品の剥離寿命が延びたフードウェア物品を提供し得る。本発明の記載は、剥離寿命の延長が、フルオロポリマー組成物の応力亀裂抵抗の増大と関連していることを示している。したがって、別の実施形態では、本発明は、本明細書に記載されるフルオロポリマー組成物に材料を添加することに関し、添加材料は、添加材料を含まないフルオロポリマー組成物と比較して、フルオロポリマー組成物の応力亀裂抵抗を増大させる。
【0024】
フルオロポリマー組成物が、本発明の多層物品のフードウェア基材上に層を形成する場合、本発明の記載から逸脱することなく、任意の厚みのフルオロポリマー組成物層を用いることができる。例えば、フルオロポリマー層は、約5ミクロン〜約5,000ミクロンの厚みであり得る。別の態様では、フルオロポリマー組成物層は、約5ミクロン〜約1,000ミクロンの厚みであり得る。
【0025】
多数のフードウェア基材が、本発明で使用され得る。適切な基材としては、例えば、フライパン、炊飯器、グリル、及び耐熱皿が挙げられる。本発明の多層物品は、耐熱皿としての使用に特に適している。
【0026】
フードウェア基材は、多数の材料のいずれかを含んでよい。適切な材料は、例えば、温度、腐食、化学的環境、圧力への耐性に対する必要性、又は任意のその他の処理条件を考慮しつつ、それらが置かれる最終用途に従って選択されてよい。好適な材料としては、例えば、ガラス、強化ガラス、アルミニウム、鋼鉄、ステンレス鋼、又はガラスライニング鋼が挙げられる。特に適した材料としては、316Lステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウムクラッド鋼、及び低い膨張係数タイプのガラスが挙げられる。
【0027】
本発明の多層物品は、フードウェア基材層、フルオロポリマー組成物層、及び所望により、任意の追加の層(単一又は複数)を含んでよい。追加の層は、例えば、絶縁体及び/又は接着剤を含んでよい。
【0028】
別の態様では、本発明は、(a)80重量%〜94重量%のテトラフルオロエチレン、6重量%〜20重量%の式CF2=CFO(RafO)n(RbfO)mcfの1種以上のペルフルオロビニルエーテル(式中、RafとRbfとは、それぞれ独立して1個〜6個の炭素原子の直鎖又は分枝状のペルフルオロアルキレン基から選択され、mとnとはそれぞれ独立して0〜10であり、Rcfは1個〜6個の炭素原子のペルフルオロアルキル基であり、ここで、ペルフルオロビニルエーテル含有量が7重量%未満であるとき、フルオロポリマーが5以下のMFIを有する)からなるコポリマー、(b)80重量%〜94重量%のテトラフルオロエチレン、5重量%〜20重量%の式CF2=CFO(RafO)n(RbfO)mcfのペルフルオロビニルエーテル(式中、RafとRbfとは、それぞれ独立して1個〜6個の炭素原子の直鎖又は分枝状のペルフルオロアルキレン基から選択され、mとnとはそれぞれ独立して0〜10であり、Rcfは1個〜6個の炭素原子のペルフルオロアルキル基である)を含むコポリマー、及び前記フルオロポリマーの総重量に対して、15重量%以下の1種以上の追加のモノマー、から選択されるフルオロポリマー組成物で耐熱皿基材をコーティングする工程を含むコーティングされた耐熱皿の剥離寿命を延ばす方法に関する。幾つかの実施形態では、フルオロポリマー層は、約5ミクロン〜約5,000ミクロンの厚みであり得る。
【0029】
耐熱皿(フードウェアの1種)は、ベーキング表面及び所望により形態(パン生地又は衣用生地を目的の形状に保持するくぼみの形状であってよい)を提供する。ベーキング表面はまた平坦な表面であってもよい。耐熱皿表面は、限定された剥離寿命を有するが、これはベークした食品が最終的には耐熱皿にくっつき始めるからである。耐熱皿物品の剥離寿命は、ベークサイクル数を数えることによって定量化することができる。衣用生地又はパン生地を耐熱皿物品に加え、ベークし、耐熱皿物品から取り出す毎に、1回のベークサイクルと数える。ベークした食品の各種に対するベークサイクルは、パン生地が膨れるように発酵させるなどの追加の工程を有してもよい。ベークされた食品を耐熱皿物品から取り除くことが比率に基づいて実用上困難になるまで(これは焼き機によって異なる)、ベークサイクル数を数える。物品が剥離に失敗する割合が一定の許容限界を超えたとき、耐熱皿物品をベーキングシステムから取り外し、新しい耐熱皿物品一式を導入する。
【0030】
寿命末期での破壊原因を決定するために、本発明者らは、本明細書で記載されるものよりも低いペルフルオロビニルエーテル含有量を有し、かつそれらの耐用年数を超えた耐熱皿物品について評価を行った。耐熱皿物品は、フルオロポリマーの厚みを失わず、明らかな表面の引っ掻きを示さず、また基材に対して相対的に強力な固着を維持した。しかし、実用的な寿命末期に達したフライパンは色変化したことが観察された。
【0031】
走査型電子顕微鏡(SEM)の観察によれば、多くの小さな堆積物が存在した。SEM/EDXA(エネルギー分散型X線分析装置)を使用して、堆積物が主として炭素であることが判断された。2.5センチ(1インチ)半径でコーティングされた金属を曲げることによりコーティングに引張応力を適用した場合、コーティングに亀裂が入ることも更に明らかになった。亀裂は、光学顕微鏡で観ると、干割れのように見える。しかし、コーティングは基材への接着を維持した。新しい耐熱皿物品コーティングは、亀裂挙動を示さない。これは、油、糖、及びその他のパン生地又は衣用生地成分が、フルオロポリマー表面上の高表面エネルギー領域に付着した際に、炭素堆積物が形成されるためと結論づけられた。高表面エネルギー領域は、亀裂(下層材料が露出する)又はその他の表面汚染を生じやすく、そこでは、パン生地及び衣用生地の成分が付着し、最終的にはベークサイクルを繰り返すことで炭素化する。炭素化の増殖(carbonized growth)は、ベークサイクルごとに追加成分を引き寄せる可能性がある更なる高表面エネルギー領域を提供した。このため、本発明者らは、少なくとも幾つかの実施形態では、耐熱皿物品の主要破壊モードは、フルオロポリマーコーティングの応力亀裂に起因する剥離寿命の喪失であると結論づけた。
【0032】
本明細書の目的と利点は、以下の実施例によって更に例示される。実施例において列挙されるその特定の材料及びその量、並びに他の条件及び詳細は、特許請求された発明を過度に制限しないと解釈されるべきである。
【実施例】
【0033】
折り畳み耐久性試験方法
折り畳み耐久性試験は、M.I.T.試験機による紙の折り畳み耐久性のためのASTM D 2176−97a標準試験法に適合している。試験は、ASTM D 2176に記載されている一般法に従って実施したが、以下の特定の適合条件を使用し、報告された折り畳み数は多重測定の平均である。
【表1】

【表2】

【0034】
フランク・ガジェット試験方法
本方法下で実施された曲げ疲労試験は、DIN 53442に従って、1mm厚である圧縮成形サンプルが、1MPaの引張荷重を使用して実施される折り畳み試験を受けることによって実施された。この曲げ疲労試験は、交互応力に晒されたプラスチックの挙動から定性的評価できるようにした。試験片の寸法、それらを作製するために使用される方法、及びそれらの試験条件は、疲労試験の結果に著しい影響を与え得る。一般的に、本試験から得られるデータは、同様に作製されたサンプルの間でのみ、定性的に適用されることができる。報告された結果は、多重測定の平均値であった。
【表3】

【0035】
本発明の一般原理並びに前述の「発明を実施するための形態」の上記開示から、当業者は、本発明が影響を受けやすい様々な変更を容易に理解するであろう。したがって、本発明の範囲は以下の請求項及びそれらと同等であるものによってのみ制限されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)80重量%〜94重量%のテトラフルオロエチレン、6重量%〜20重量%の1種以上の式CF2=CFO(RafO)n(RbfO)mcfのペルフルオロビニルエーテル
(式中、RafとRbfとは、それぞれ独立して1個〜6個の炭素原子の直鎖又は分枝状のペルフルオロアルキレン基から選択され、mとnとはそれぞれ独立して0〜10であり、Rcfは1個〜6個の炭素原子のペルフルオロアルキル基であり、ここで、コポリマーがテトラフルオロエチレンと1種類のペルフルオロビニルエーテルとの二元重合体であるとともに、ペルフルオロビニルエーテル含有量が7重量%未満であるとき、前記フルオロポリマーが5以下のMFIを有する)からなるコポリマー、並びに
(b)80重量%〜94重量%のテトラフルオロエチレン、5重量%〜20重量%の式CF2=CFO(RafO)n(RbfO)mcfのペルフルオロビニルエーテル
(式中、RafとRbfとは、それぞれ独立して1個〜6個の炭素原子の直鎖又は分枝状のペルフルオロアルキレン基から選択され、mとnとはそれぞれ独立して0〜10であり、Rcfは1個〜6個の炭素原子のペルフルオロアルキル基である)を含むコポリマー、及び前記フルオロポリマーの総重量に対して、15重量%以下の1種以上の追加のモノマー、
から選択されるフルオロポリマーを含むフルオロポリマー組成物でフードウェア基材を粉末コーティングする工程を含む、多層物品の剥離寿命を延ばす方法。
【請求項2】
前記フルオロポリマーが、94%未満のテトラフルオロエチレンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フルオロポリマー組成物が、50重量%未満のポリテトラフルオロエチレンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記フルオロポリマー組成物が、ポリテトラフルオロエチレンホモポリマーを含まない、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記フルオロポリマーが、300℃未満の融点を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記フルオロポリマーが、270℃超の融点を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記フルオロポリマーが、2種又はそれ以上のペルフルオロビニルエーテルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記フルオロポリマーが、ペルフルオロ(エチルビニル)エーテル、ペルフルオロ(プロピルビニル)エーテル、ペルフルオロ(メチルビニル)エーテル、及びこれらの組み合わせから選択されるペルフルオロビニルエーテルを含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記追加的モノマーが、ヘキサフルオロプロピレンである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記フルオロポリマーが、5以下のMFIを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記フルオロポリマーが、炭素原子100万個当たり80個未満の不安定末端基を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記フルオロポリマーが、炭素原子100万個当たり20個未満の不安定末端基を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記フルオロポリマーが、炭素原子100万個当たり5個未満の不安定末端基を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記フルオロポリマーが、テトラフルオロエチレン、ペルフルオロ(プロピルビニル)エーテル、及びヘキサフルオロプロピレンを含む、請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2010−506009(P2010−506009A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531573(P2009−531573)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【国際出願番号】PCT/US2007/080271
【国際公開番号】WO2008/042942
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】