説明

多層配線構造の形成方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体ウェーハやガラス基板上に多層配線構造を形成する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体ウェーハやガラス基板上に形成されるデバイスは、下層配線と上層配線とをビアホールを介して電気的に接続してなる多層配線構造としたものが一般的である。
【0003】
そして、下層配線と上層配線との間に絶縁膜のみを介在させただけでは、下層配線の凹凸がそのまま残ってしまい、この凹凸の上に上層配線をCVD等で形成することになり、断線等の原因になる。そこで、配線間の凹部をSOG(Spin-On-Glass:珪素化合物溶液、及びこの溶液を塗布・焼成することで形成される酸化珪素膜)で充填して平坦化を図る技術が通常行われている。中でも、Si−H結合を含む無機SOGについては、例えば特開平8−316228号公報に開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
特開平8−316228号公報にあっては、SOGとしてSi−H結合を含む無機SOGを用いているため、有機SOGに比べ誘電率が高く、熱によるクラックが発生しやすい。
【0005】
一方、有機SOGにあっては、無機SOGが抱える問題はないのであるが、酸素ガスを用いてレジストをアッシングする際に、ポアゾンドビア(poisoned via)と称する欠陥を生じやすい。特に、有機SOGにあってはSiに有機基(例えばメチル基(CH3)等)が結合しており、このメチル基の原子半径は無機SOGの水素基の原子半径よりも大きいため、深刻な問題となる。
【0006】
これを図5の従来の多層配線構造の形成方法に基づいて説明すると、先ず同図(a)に示すように、基板W上に下層配線101を施した後、CVDによってヒロック防止膜102を形成し、この上に同図(b)に示すようにSOG膜103を形成し、この後、同図(c)に示すように、SOG膜103の上に上層配線104を形成し、また同図(d)に示すように、パターン化レジスト膜105を設け、同図(e)に示すように、パターン化レジスト膜105をマスクとしてエッチング処理にてヒロック防止膜102、SOG膜103と上層配線104にビアホール(スルーホール)106を形成し、次いで(f)に示すようにプラズマによるアッシング処理にてパターン化レジスト膜105を除去する。更に同図(g)に示すように、ビアホール106内にAl等の導体107を充填して電気的に接続して多層配線構造となす。
【0007】
そして、有機SOGを使用した場合には、図5(f)に示すように、レジストをアッシングする際に、有機系の成分が分解し、水分等の生成物を膜中に蓄え、ポアゾンドビアと称する欠陥108を生じる。
【0008】
そこで、図6に示す有機SOGを使用したエッチバック工程を必須とした方法が行われている。即ち、同図(a)に示すように、基板W上に下層配線101を施した後、CVDによってヒロック防止膜102を形成し、この上に有機SOG膜103を形成し、次いで同図(b)に示すように、酸素プラズマ等によって有機SOG膜103を所定の厚みだけ除去するエッチバックを行って下層配線101の直上の有機SOG膜103を除去し、この後同図(c)に示すように、上層配線104を形成し、また同図(d)に示すように、パターン化レジスト膜105を上層配線104上に被覆し、同図(e)に示すように、エッチング処理、続けてアッシング処理にてヒロック防止膜102と上層配線104にビアホール106を形成するとともにレジスト膜を除去し、更に同図(f)に示すように、このビアホール106内にAl等の導体107を充填し電気的に接続して多層配線構造となす。
【0009】
図6に示すようにエッチバックを行えば、有機SOG膜103が存在する箇所にはビアホールを形成しないことになるので、ポアゾンドビアは発生しない。
しかしながら、最近では更なる微細化(例えば0.3μm以下)が要求されており、配線パターンが微細化されると、有機SOG膜の厚さは、配線パターンが密な部分では厚くなり、配線パターンが粗な部分では薄くなる。
このような状態の有機SOG膜をエッチバックすると、パターンが粗な部分において配線層までエッチングされてしまう不利がある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決すべく本発明に係る多層配線構造の形成方法は、下層配線上に直接若しくはヒロック防止膜等の所定の膜を介して有機SOG膜を形成し、この後、エッチバックを行わずに、有機SOG膜上に上層配線を形成し、更にその上に設けたパターン化レジスト膜をマスクとしてエッチングを行ってビアホールを形成し、次いで、酸素ガスから誘導されるイオン又はラジカルを主反応種としたプラズマによるアッシング処理を0.01Torr〜30.0Torrの圧力雰囲気下で行った後、前記ビアホールに導体を埋設して下層配線と上層配線とを電気的に接続するようにした。
【0011】
酸素ガスから誘導されるイオン又はラジカルを主反応種とした処理を0.01〜30.0Torr好ましくは0.01Torr〜1.2Torrという低い圧力下でアッシング処理を行うことで、有機SOG膜のSi原子に結合している有機基(例えばCH3基等)の分解を抑制でき、その結果、アッシング処理の際にポアゾンドビア等を生じない。したがって、エッチバックを行わなくて済む。
【0012】
前記有機SOG膜の炭素含有量としては、5〜25原子量%、好ましくは8〜20原子量%とする。ここで、炭素含有量とは有機SOG中の有機基の割合を示す尺度であり、詳しくは、有機SOG形成用塗布液を調製するアルコキシシラン化合物の反応量から理論的に算出されるものであり、総元素の原子量合計に対する炭素原子量の割合である。
炭素含有量が上記の範囲より小さいと有機成分が少なすぎ厚膜化できないし、また、クラックも生じやすくなる上、低誘電率という有機SOG本来の長所を失う。また、多すぎると上層に設けられる絶縁膜との密着性不足が起こり好ましくない。
【0013】
上記炭素含有量を有する被膜を得るには、例えば、一般式(I)RnSi(OR14-n (ただし、一般式(I)におけるRは炭素数1〜4のアルキル基、アリール基であり、R1は炭素数が1〜4のアルキル基であり、nは1〜2の整数である。)で表されるアルコキシシラン化合物から選ばれる少なくとも1種を有機溶剤中、酸触媒下で加水分解し、縮合反応して得られる化合物を含んでなる塗布液を用いると好適である。
【0014】
上記一般式で表される化合物の具体例としては、
(イ)n=1の場合、モノメチルトリメトキシシラン、モノメチルトリエトキシシラン、モノメチルトリプロポキシシラン、モノエチルトリメトキシシラン、モノエチルトリエトキシシラン、モノエチルトリプロポキシシラン、モノプロピルトリトリメトキシシラン、モノプロピルトリエトキシシランなどのモノアルキルトリアルコキシシラン、モノフェニルトリメトキシシラン、モノフェニルトリエトキシシランなどのモノフェニルトリアルコキシシラン
(ロ)n=2の場合、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン、ジプロピルジジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジプロピルジプロポキシシランなどのジアルキルジアルコキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランなどのジフェニルジアルコキシシラン
が挙げられる。これらの(イ)及び(ロ)を少なくとも1種使用することが必要である。
【0015】
所望によりこれら(イ)、(ロ)と共縮合させることのできる他の成分として、上記一般式(I)で表わされる化合物のn=0の場合、すなわち、(ハ)テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどのテトラアルコキシシラン、等を用いることも有効である。
これらの中で実用上好ましい化合物は、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、モノメチルトリメトキシシラン、モノメチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシランである。
【0016】
これらのアルコキシシラン化合物は、1種用いてもよいし、2種以上用いてもよい。
具体的には、(イ)と(ハ)の2種を組み合わせた場合、若しくは(イ)と(ロ)と(ハ)の3種を組み合わせた場合、(イ)単独の場合が好適である。
その際の反応モル比は、(イ)と(ハ)の2種を組み合わせる場合、(ハ)テトラアルコキシシラン1モルに対し(イ)モノアルキルトリアルコキシシラン0.5〜4.0モル、好ましくは1.0〜2.0モルを反応させて得られる加水分解共縮合物を含んでなる塗布液がよい。
【0017】
また、(イ)と(ロ)と(ハ)の3種を組み合わせる場合、(ロ)ジアルキルジアルコキシシラン1モルに対し(ハ)テトラアルコキシシラン0.5〜4モル、好ましくは1.0〜3.0モル及び(イ)モノアルキルトリアルコキシシラン0.5〜4モル、好ましくは0.5〜3.0モルを反応させて得られる加水分解共縮合物を含んでなる塗布液がよい。
【0018】
また(イ)モノアルキルトリアルコキシシラン単独の場合は、ラダー型の加水分解縮合物が得られれやすく、このラダー型は緻密な膜を形成するため好ましい。
加水分解物は完全加水分解物であってもよいし、部分加水分解物であってもよい。加水分解度は水の添加量により調整することができ、目的とする有機SOG被膜の特性により、適宜、水の添加量を調整すればよいが、一般には前記一般式で表されるアルコキシシラン化合物の合計量1モルに対し1.0〜10.0倍モル、好ましくは1.5〜8.0倍モルの割合で反応させることが望ましい。この範囲より少なすぎると加水分解度が低くなり、被膜形成が困難であるので好ましくない。また、多すぎるとゲル化を起こしやすく保存安定性が悪くなるので好ましくない。
【0019】
また、酸触媒としては、従来慣用的に使用されている有機酸、無機酸いずれも使用できる。有機酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸等の有機カルボン酸が挙げられる。無機酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、燐酸等の無機酸が挙げられる。
【0020】
この場合、酸触媒を塗布液中の酸の濃度が、1〜1,000ppm、好ましくは、5〜500ppmの範囲になるように酸触媒を加えるか、又は酸と加える水を混合し酸水溶液として加えて、加水分解させる。
加水分解反応は、通常5〜100時間程度で完了する。また、室温から80℃を超えない加熱温度で、アルコキシシラン化合物を含む有機溶剤に酸触媒水溶液を滴下して反応させることにより、短い反応時間で反応を完了させることもできる。このようにして加水分解したアルコキシシラン化合物は、縮合反応を生起し、その結果、被膜形成能を有することになる。
【0021】
有機溶剤としては、従来慣用的に使用されている有機溶剤が使用できる。そのようなものとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコールのような一価アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールのような多価アルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートのような多価アルコール誘導体、酢酸、プロピオン酸のような脂肪酸などを挙げることができる。これらの有機溶剤は、単独で用いてもよいし2種以上組み合わせて用いてもよい。その使用量については、アルコキシシランの1モルに対し、10〜30モル倍量の割合で用いられる。
【0022】
また、本発明における多層配線構造の形成方法は、ポリシラザンを含んでなる塗布液から形成されるSOG被膜に対しても良好な結果が得られる。
このようなポリシラザンとしては、ゲルパーミュエーションクロマトフラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、1500〜5000の範囲にあるものが好ましく、特に1700〜3000の範囲にあるものが好適である。また、分散度(Mw/Mn)は1〜4の範囲にあるものが保存安定性が良好であるので好ましい。
【0023】
特にポリシラザンは内部に活性な有機基(窒素原子、珪素原子に結合した水素)を有しており、これが架橋して増粘やゲル化を引き起こしやすく、これを防ぐためにヘキサメチルジシラザンで処理し、該活性水素の一部をトリメチルシリル基で置換したものが、保存安定性がより優れ好ましい。
【0024】
ポリシラザンを溶解する有機溶剤としては、消防上、乾燥性及び塗布液の保存安定性の点から吸湿性が低いものが好ましい。このようなものとしては、例えば、炭素数4以上のアルキル基のジアルキルエーテル、キシレン、シクロヘキセン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、p−メンタン、デカリン、2,2,5−トリメチルヘキサン、ジペンテン、デカン、イソノナン、オクタンなどが挙げられるが、中でも炭素数4以上のアルキル基のジアルキルエーテルが好ましく、特にジブチルエーテルが好ましい。これらの有機溶剤は1種又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0025】
本発明における有機SOG被膜形成用塗布液又はポリシラザンを含んでなる塗布液は、上記アルコキシシランの加水分解物又はポリシラザンを固形分濃度約5〜40重量%、好ましくは10〜25重量%含むものが保存安定性、形成される被膜の厚膜化を考慮すると好ましい。
【0026】
また、有機SOG被膜の形成方法は、例えば、上記塗布液を半導体基板、ガラス基板、金属板、セラミック基板などの基板上に、スピンナー法、ロールコーター法、浸漬引き上げ法、スプレー法、スクリーン印刷法、刷毛塗り法などで塗布し、溶媒を飛散させるために乾燥させ塗膜を形成する。次いで、250〜500℃の温度で焼成することにより、有機SOG被膜が形成される。
一方、ポリシラザンを含んでなる塗布液から形成されるSOG膜の形成方法についても、同様にして形成される。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を説明する。
(実施例1)
塗布液の調製
テトラメトキシシラン246g(1.62モル)とモノメチルトリメトキシシラン220g(1.62モル)をプロピレングリコールモノプロピルエーテル635g(5.38モル)に溶解しかき混ぜた。次いで、純水194g(10.78モル)と硝酸24ppmを混合したものを、ゆっくりかき混ぜながら滴下したのち、約5時間かき混ぜ、その後室温で5日間静置させて固形分濃度15重量%の溶液とした。
【0028】
上記溶液を塗布液とし、この塗布液を基板上の下層配線を被覆するヒロック防止膜上に塗布して有機SOG膜を形成した。有機SOG被膜中の炭素含有量は次式より9.4原子量%であった。
C/(CH3SiO3/2+SiO2)×100
【0029】
次いで、この有機SOG膜上にエッチバックを行わずに、上層配線を形成し、更にパターン化レジスト膜をマスクとしてエッチングを行ってビアホールを形成し、この後、枚葉式ダウンストリーム型のプラズマアッシング装置を用いて、酸素ガスから誘導されるイオン又はラジカルを主反応種としたアッシング処理を1.2Torrの圧力雰囲気下で施してレジスト膜を除去し、この後ビアホールに導体を埋設して下層配線と上層配線とを電気的に接続するようにした。
【0030】
図1(a)は上記のアッシング処理時間を上の曲線から順にそれぞれ、60秒、45秒、30秒、15秒、未処理と異ならせた赤外線吸光スペクトルであり、この図から、本発明の場合にはSi−C結合が切れないことが分る。
【0031】
一方、図1(b)は、エッチングを行ってビアホールを形成するまでの条件は前記と同様とし、この後同じプラズマアッシング装置を用いてアッシング処理時間を30秒として、圧力を上の曲線から順にそれぞれ50Torr、40Torr、35Torr、30Torrに変えてアッシング処理した場合の赤外線吸光スペクトルであり、この図からアッシング時の圧力が高くなるとSi−C結合が切れ、OH結合が生じることが分る。
【0032】
(実施例2)
塗布液の調製
テトラメトキシシラン304.4g(2モル)とモノメチルトリメトキシシラン272.4g(2モル)とジメチルジメトキシシラン120.2g(1モル)とをイソプロピルアルコール608.6g(8.21モル)に溶解しかき混ぜた。次いで、純水288.0g(16モル)と硝酸40ppmを混合したものを、ゆっくりかき混ぜながら滴下したのち、約5時間かき混ぜ、その後室温で5日間静置させて固形分濃度16重量%の溶液とした。
【0033】
上記溶液を塗布液とし、この塗布液を基板上の下層配線を被覆するヒロック防止膜上に塗布して有機SOG膜を形成した。有機SOG被膜中の炭素含有量は次式より14.6原子量%であった。
3C/[(CH32SiO2/2+CH3Si3/2+SiO2]×100
【0034】
次いで、この有機SOG膜上に前記同様エッチバックを行わずに、上層配線を形成し、更にパターン化レジスト膜をマスクとしてエッチングを行ってビアホールを形成し、この後、枚葉式ダウンストリーム型のプラズマアッシング装置を用いて、アッシング処理を1.0Torrの圧力雰囲気下で施してレジスト膜を除去し、この後ビアホールに導体を埋設して下層配線と上層配線とを電気的に接続するようにした。
【0035】
図2(a)は上記のアッシング処理時間を上の曲線から順にそれぞれ、60秒、45秒、30秒、15秒、未処理と異ならせた赤外線吸光スペクトルであり、この図から、本発明の場合にはSi−C結合が切れないことが分る。
【0036】
一方、図2(b)は、エッチングを行ってビアホールを形成するまでの条件は前記と同様とし、この後同じプラズマアッシング装置を用いてアッシング処理時間を30秒として圧力を上の曲線から順に、それぞれ50Torr、40Torr、35Torr、30Torrに変えてアッシング処理した場合の赤外線吸光スペクトルであり、この図からアッシング時の圧力が高くなるとSi−C結合が切れ、OH結合が生じることが分る。
【0037】
(実施例3)
塗布液の調製
モノメチルトリエトキシシランを酸触媒下、加水分解、縮合して得られたラダー型加水分解縮合物をエタノールに溶解した固形分濃度10重量%の溶液を塗布液とした。この塗布液を基板状の下層配線を被覆するヒロック防止膜上に塗布して有機SOG膜を形成した。なお、この塗布液から形成される有機SOG被膜中の炭素含有量は次式より17.9原子量%であった。
C/[(CH3)SiO3/2]×100
【0038】
次いで、この有機SOG膜上に前記同様エッチバックを行わずに、上層配線を形成し、更にパターン化レジスト膜をマスクとしてエッチングを行ってビアホールを形成し、この後、枚葉式ダウンストリーム型のプラズマアッシング装置を用いて、アッシング処理を0.8Torrの圧力雰囲気下で施してレジスト膜を除去し、この後ビアホールに導体を埋設して下層配線と上層配線とを電気的に接続するようにした。
【0039】
図3(a)は上記のアッシング処理時間を上の曲線から順にそれぞれ、60秒、45秒、30秒、15秒、未処理と異ならせた赤外線吸光スペクトルであり、この図から、本発明の場合にはSi−C結合が切れないことが分る。
【0040】
一方、図3(b)は、エッチングを行ってビアホールを形成するまでの条件は前記と同様とし、この後同じプラズマアッシング装置を用いてアッシング処理時間を20秒として圧力を40Torr、35Torr、30Torr、0.01Torrに変えてアッシング処理した場合の赤外線吸光スペクトルであり、この図からアッシング時の圧力が高くなるとSi−C結合が切れ、OH結合が生じることが分る。
【0041】
(実施例4)
塗布液の調製
ジクロロシランとアンモニアを原料として常法に従って合成されたポリシラザンにヘキサメチルジシラザンを添加し反応を行ったもの(重量平均分子量=2200、数平均分子量=950、分散度=2.3)をジブチルエーテルに溶解し、固形分20重量%の溶液とした。この塗布液を基板上の下層配線を被覆するヒロック防止膜上に塗布してSOG膜を形成した。
【0042】
次いで、このSOG膜上に前記同様エッチバックを行わずに、上層配線を形成し、更にパターン化レジスト膜をマスクとしてエッチングを行ってビアホールを形成し、この後、枚葉式ダウンストリーム型のプラズマアッシング装置を用いて、アッシング処理を0.01Torrの圧力雰囲気下で30秒間施してレジスト膜を除去し、この後ビアホールに導体を埋設して下層配線と上層配線とを電気的に接続するようにした。
【0043】
図4(a)は上記のアッシング処理後の赤外線吸光スペクトルであり、この図から、本発明の場合にはN−H結合が切れないことが分る。
【0044】
一方、図4(b)は、エッチングを行ってビアホールを形成するまでの条件は前記と同様とし、この後同じプラズマアッシング装置を用いて雰囲気圧力を35Torrとして30秒間アッシング処理した場合の赤外線吸光スペクトルであり、この図からアッシング時の圧力が高くなるとN−H結合が切れ、OH結合が生じることが分る。
【0045】
【発明の効果】
以上に説明したように本発明によれば、有機SOG膜のSi原子に結合している有機基(例えばCH3基等)の分解を抑制でき、その結果、レジストアッシング時にポアゾンドビア等を生じることがない。したがって、エッチバックを行わなくて済むので、工程を簡略化することができる。また、ポリシラザンを含んでなる塗布液から形成されるSOG被膜についても同様なことが言える。
【0046】
また、エッチバックを行わなくて済むので、エッチバックの際に下層配線までエッチングしてしまう虞れがなくなり、更なる微細化パターンの形成に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は枚葉式ダウンストリーム型のプラズマアッシング装置を用いて雰囲気圧力を1.2Torrとして所定時間アッシング処理した場合の赤外線吸光スペクトルのグラフ、(b)は同じプラズマアッシング装置を用いて、所定圧力において30秒間アッシング処理した場合の赤外線吸光スペクトルのグラフ
【図2】(a)は枚葉式ダウンストリーム型のプラズマアッシング装置を用いて雰囲気圧力を1.0Torrとして所定時間アッシング処理した場合の赤外線吸光スペクトルのグラフ、(b)は同じプラズマアッシング装置を用いて所定圧力において、30秒間アッシング処理した場合の赤外線吸光スペクトルのグラフ
【図3】(a)は枚葉式ダウンストリーム型のプラズマアッシング装置を用いて雰囲気圧力を0.8Torrとして所定時間アッシング処理した場合の赤外線吸光スペクトルのグラフ、(b)は同じプラズマアッシング装置を用いて所定圧力において20秒間アッシング処理した場合の赤外線吸光スペクトルのグラフ
【図4】(a)は枚葉式ダウンストリーム型のプラズマアッシング装置を用いて雰囲気圧力を0.01Torrとして30秒間アッシング処理した場合の赤外線吸光スペクトルのグラフ、(b)は同じプラズマアッシング装置を用いて所定圧力において30秒間アッシング処理した場合の赤外線吸光スペクトルのグラフ
【図5】(a)〜(g)は従来の平坦化方法を説明した図
【図6】(a)〜(f)は従来のエッチバックを説明した図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下層配線と上層配線とをビアホールを介して電気的に接続してなる多層配線構造の形成方法において、前記下層配線上に直接若しくはヒロック防止膜等の所定の膜を介して有機SOG膜を形成し、この後、エッチバックを行わずに、有機SOG膜上に上層配線を形成し、更にその上に設けたパターン化レジスト膜をマスクとしてエッチングを行ってビアホールを形成し、次いで、酸素ガスから誘導されるイオン又はラジカルを主反応種としたプラズマによるアッシング処理を0.01Torr〜30.0Torrの圧力雰囲気下で行った後、前記ビアホールに導体を埋設して下層配線と上層配線とを電気的に接続するようにしたことを特徴とする多層配線構造の形成方法。
【請求項2】
請求項1に記載の多層配線構造の形成方法において、前記有機SOG膜の炭素含有量は5〜25原子量%であることを特徴とする多層配線構造の形成方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の多層配線構造の形成方法において、前記有機SOG膜を形成するための塗布液は、
一般式 RnSi(OR14-n・・・・・・・・・・・・・・・(I)
(ただし、一般式(I)におけるRは炭素数1〜4のアルキル基、アリール基であり、R1は炭素数が1〜4のアルキル基であり、nは1〜2の整数である。)で表されるアルコキシシラン化合物から選ばれる少なくとも1種を有機溶剤中、酸触媒下で加水分解し、縮合反応して得られる化合物を含んでなる塗布液であることを特徴とする多層配線構造の形成方法。
【請求項4】
請求項3に記載の多層配線構造の形成方法において、前記有機SOG膜を形成するための塗布液は、テトラアルコキシシラン1モルに対しモノアルキルトリアルコキシシラン0.5乃至4モルを反応させて得られる加水分解共縮合物を含んでなる塗布液であることを特徴とする多層配線構造の形成方法。
【請求項5】
請求項3に記載の多層配線構造の形成方法において、前記有機SOG膜を形成するための塗布液は、ジアルキルジアルコキシシラン1モルに対しテトラアルコキシシラン0.5乃至4モル及びモノアルキルトリアルコキシシラン0.5乃至4モルを反応させて得られる加水分解共縮合物を含んでなる塗布液であることを特徴とする多層配線構造の形成方法。
【請求項6】
請求項3に記載の多層配線構造の形成方法において、前記有機SOG膜を形成するための塗布液は、モノアルキルトリアルコキシシランから得られるラダー型加水分解縮合物を含んでなる塗布液であることを特徴とする多層配線構造の形成方法。
【請求項7】
下層配線と上層配線とをビアホールを介して電気的に接続してなる多層配線構造の形成方法において、前記下層配線上に直接若しくはヒロック防止膜等の所定の膜を介してポリシラザンを含んでなる塗布液から形成されるSOG膜を形成し、この後、エッチバックを行わずに、該SOG膜上に上層配線を形成し、更にその上に設けたパターン化レジスト膜をマスクとしてエッチングを行ってビアホールを形成し、次いで、酸素ガスから誘導されるイオン又はラジカルを主反応種としたプラズマによるアッシング処理を0.01〜30.0Torrの圧力雰囲気下で行った後、前記ビアホールに導体を埋設して下層配線と上層配線とを電気的に接続するようにしたことを特徴とする多層配線構造の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【特許番号】特許第3916284号(P3916284)
【登録日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【発行日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−45649
【出願日】平成9年2月28日(1997.2.28)
【公開番号】特開平10−242140
【公開日】平成10年9月11日(1998.9.11)
【審査請求日】平成16年1月19日(2004.1.19)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【参考文献】
【文献】特開平05−013405(JP,A)
【文献】特開平09−050994(JP,A)
【文献】特開平08−245792(JP,A)
【文献】特開平01−319942(JP,A)
【文献】特開平09−022903(JP,A)