説明

多形核細胞の動員および/または遊走を減少させる化合物および方法

オリゴヌクレオチドの治療有効量は、多形核細胞の特性および挙動に影響を与えること、例えば前記細胞の内皮接着および遊出を抑制することができ、この機構を介して炎症部位への多形核細胞の動員および/または遊走を減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多形核細胞の動員および/または遊走を減少させる方法および化合物に関し、特に多形核細胞の特性および挙動が発病に役割を果たすさまざまな状態を予防、治療または軽減する化合物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炎症は、身体が免疫系の成分を動員しながら、感染、刺激および他の損傷に反応する機構の一般用語である。多形核細胞は炎症の初期段階で動員され、炎症部位に遊出する。ケモカインおよびそれらの受容体は他の化学誘引物質とともに、PMN遊走の主要なメディエーターである。化学誘引物質の例はIL−8およびLTB4であり、それぞれ受容体CXCR1/CXCR2およびBLT1に結合して、炎症部位へのPMNの動員に重要な役割を果たす。重要なことには、炎症は、炎症性疾患に通常は分類される疾患のみならず、多数の状態に役割を果たす。
【0003】
虚血は、器官への血液供給の絶対的または相対的不足であり、酸素および栄養素の欠乏による組織損傷をもたらす。心臓、脳、および腎臓は、不十分な血液供給に最も敏感な器官の一つである。種々の治療戦略が、病変臓器および虚血の原因に応じて使用される。一例では、急性心臓虚血(心筋梗塞)後、血栓溶解療法または初回経皮冠動脈インターベンションのどちらかが梗塞関連冠動脈における血流の回復(心筋再灌流)に使用されなければならない。しかし、虚血エピソード後の血液の回復は、心筋再灌流直前には生存可能であった心筋細胞の死の原因となる。この心筋損傷は致死的な再灌流傷害と呼ばれ、心筋梗塞の最終的なサイズを増加させる。心筋虚血および再灌流傷害は、さまざまな種類の細胞およびサイトカインに関わる炎症反応に関連があると考えられている(EntmanおよびSmith 1994年)。
【0004】
もう一つの例は脳卒中、特に虚血性脳卒中である。虚血性脳卒中では、脳の1つまたは複数の部分への血液供給が減少し、これらの部分における脳組織の機能不全および壊死をもたらす。虚血性脳卒中には幾つかの根本原因がある。すなわち、血栓症(局所的に形成する血の塊による血管の閉塞)、塞栓症(身体の他の場所で形成された塞栓による血管の閉塞)、全身性低灌流(例えばショックの結果としての血液供給の全般的低下)および静脈血栓症である。
【0005】
塞栓症は、塞栓から下流の器官または組織への血液供給が限られかねない深刻な状態である。脳卒中の1つの原因因子として上述した塞栓症は、他の器官における閉塞(しばしば肺、腎臓、または肝臓におけるものであるが、下肢におけるものもある)の原因となることが知られている。塞栓は、例えばプラック(plack)が血管壁から転移および血流中で移動するときに自然発生的に形成され得る。塞栓は、例えば複雑骨折からの脂肪塞栓または出血部位からの血の塊(血栓)など、外傷の結果としても形成され得る。血栓および脂肪塞栓はいずれ外科的介入中に形成し得ることから、手術を受けている患者もリスクがある。また、不動、肥満および癌も、塞栓症に関連することが知られた危険因子である。
【0006】
腸間膜虚血は、小腸の炎症および損傷が不十分な血液供給によって生じる医学的状態である。血流低下の原因には、体循環の変化(例えば低血圧)または血管収縮もしくは血の塊などの局所因子が含まれ得る。虚血をもたらす可能性のある他の腸の障害および状態には、腸閉塞、腸の拡張、腸重積、および腸捻転が含まれ、これらでは、腸の異常な向き、蠕動運動の途絶、および他の状態によって、血流の低下、炎症、および最終的には虚血がもたらされ得る。例えば腸閉塞は、腸部分が長期にわたり接触し線維性癒着を形成させることから、癒着形成を増加させ得、腸の拡張は漿膜損傷および虚血の原因となり得る。このような障害は、外傷、熱傷、ショックまたはさまざまな病因等の結果としての、手術中または回復中における、外科的介入の結果として生じ得、多臓器不全をもたらし得る。
【0007】
多形核細胞(PMN)、特に血液白血球の大部分を占める多形核好中球は、心筋再灌流の最初の6時間の間に化学誘引物質により梗塞域に引き寄せられ、次の24時間の間に多形核好中球は心筋組織に遊走する。このプロセスは、細胞接着分子により促進される。好中球は血管塞栓を引き起こし、分解酵素および活性酸素種を放出する(Vinten−Johansen J、2004年)。したがって好中球は、炎症の治療または予防目的の第一標的である。幾つかの介入は、心筋再灌流中に梗塞領域から好中球を減少させることを目的とした(例えば白血球を除去した血液、細胞接着分子に対する抗体、および補体活性化の薬理学的阻害剤)。しかし、対応する臨床研究は、このような介入の有意義な心臓保護効果をいずれも示していない(Yellonにおけるレビュー、2007年)。
【0008】
PMN蓄積および活性化は、関節リウマチ、アテローム性硬化症、潰瘍性大腸炎、乾癬、および虚血性傷害といった種々の幅広い疾患状態の病因において中心的な役割を果たすことが示されている。故に好中球機能を調節することができる内因性調節機構の解明は、多分に治療上興味深い。広範な研究が薬剤候補の特定に費やされており、1つのアプローチは、αMインテグリンIドメインに結合しproMMP−9による複雑な形成を阻害することで好中球遊走を阻止するペプチド化合物の使用に代表される(例えばWO2004/110477参照)。
【0009】
別のアプローチは、炎症の動物モデルにおいて白血球動員およびPMN浸潤を阻害することが示された小さな親油性化合物であるリポキシンおよびリポキシン誘導体の使用である(例えばWO2000/055109参照)。
【0010】
さらに別のアプローチは抗体の使用である。1990年代はじめに、β2インテグリン媒介接着を阻害することなく血管内皮、コラーゲン皮膜フィルターおよび腸上皮にわたりPMN遊走を阻害できることができる、強力なCD47特異的抗体(Ab)であるC5/D5が特定された(Parkosら、1996年)。同時に、抗CD47は内皮単層にわたるPMN遊走も阻害することが示された(Cooperら、Proc Natl Acad Sci USA、92:3978頁、1995年)。CD47ノックアウトマウスによる後続研究は、CD47が感染部位へのPMN動員率を調節する役割を果たすことを示唆し、in vivoでのPMN遊走におけるCD47の重要性を確認した(Lindbergら、1996年)。
【0011】
移植は、再灌流虚血の結果を検討しなければならない別の適用である。移植とは、細胞、組織または臓器の部分もしくは臓器全体の、ある位置から別の位置への移動を意味する。移植は自己移植、いわゆる自家移植片であり得、主に細胞が個人から採取され、およびこの同じ個人に戻される。より頻繁には、用語移植は、ドナーである1人の人間から採取され、レシピエントである別の人間に与えられる細胞、組織もしくは臓器に使用される。腎臓移植が最も一般的に行われている。心臓、肝臓および肺の移植も定期的に行われている。医学が進歩するにつれ、膵臓および小腸を含む他の重要な臓器も移植に使用されている。角膜、心臓弁、皮膚および骨などの組織も提供され得る。
【0012】
実用的な理由のため、移植組織は、一定期間身体の外で保存され、輸送、機能検査、組織適合検査およびドナーとレシピエントの照合を可能にする必要がある。移植の登場以来、移植される臓器は冷虚血保存で保存されている。この方法は、輸送中の臓器損傷の程度を低減するのを助けることが意図されたが、著しい損傷は依然として生じている。時間が経過すればするほど、損傷は深刻になる。さまざまな技術的および化学的解決策が提案された。しかし、移植を必要とする人の数がドナー数をはるかに超えていること、および手順がきわめて複雑であり、費用がかかり、すべての当事者にとってストレスが多いことから、移植の成功機会を増やす改善は依然として必要である。保存および輸送中の臓器損傷を最小限に抑えることは重要な問題である。
【0013】
WO2005/080568は、哺乳動物における続発性虚血性傷害の程度を予防または減少させるNF−kB阻害化合物の使用に関する。NF−kB阻害化合物は、アンチセンスNF−kB p65サブユニットオリゴヌクレオチド、NF−kB p65サブユニットの優性阻害型、デコイ、リボソーム阻害剤、NF−kB p65に対する酵素RNA、およびsiRNA構築物から成る群から選択される。
【0014】
WO2007/030580は、トール様受容体に結合および活性化する薬剤を含む組成物を被験者に投与する(場合によりASIC阻害剤の投与と併用して)ことを含む、細胞毒性損傷に対し細胞を保護する方法に関する。該方法は、神経および非神経系細胞の保護に適用可能であることが記載されている。例えば、興奮毒性脳損傷に対して神経系細胞を保護する方法が提供されている。興奮毒性損傷、虚血および/または低酸素症の予防的治療用の医薬品を調製する方法も提供される。
【0015】
WO2007/030581は、細胞毒性の攻撃から細胞を保護するための、CpGオリゴヌクレオチドの投与に焦点をあてた、上記WO2007/030580との並行出願である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】WO2005/080568
【特許文献2】WO2007/030580
【特許文献3】WO2007/030581
【発明の概要】
【0017】
本発明者らは、驚くべきことに特定のオリゴヌクレオチド化合物が多形核細胞の特性および挙動、特に炎症部位への多形核細胞の動員および/または遊走に影響を与えること、ならびにこれらの化合物がこの機構を介してさまざまな疾患の予防、治療および/または軽減に有用性を有することを示した。
【0018】
本発明者らは、オリゴヌクレオチドならびに治療およびこの目的のための医薬組成物の製造におけるオリゴヌクレオチドの使用方法を提供する。炎症部位への多形核細胞の動員および/または遊走を阻止または減少させることが望ましい臨床状況には、気道炎症、胸膜炎、心筋梗塞、脳梗塞、脳卒中、組織または臓器移植に関連した再灌流傷害、ならびに外科的介入、塞栓症、創傷治癒、および外傷に関連した再灌流傷害が含まれるが、これらに限定されない。
【0019】
本発明の1つの態様は、新規化合物、ならびにさまざまな病因の疾患において炎症部位への多形核細胞の動員および/もしくは遊走を阻止または減少させる方法などの、該化合物の使用方法の提供である。本発明の他の態様は、これらの利点とともに、特許請求の範囲の記載を検討することによって当業者には明らかとなろう。
【0020】
添付の図面を参照して、以下、発明を実施するための形態、非限定的な実施例、および特許請求の範囲により詳細に本発明を開示する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1a】図1aは、OVA誘発気道炎症マウスモデルにおける予防的プロトコルを示す図である。マウスは、0および12日目に2回の水酸化アルミニウムゲル中OVAの腹腔内注射により感作した。治療は、16および21日目に試験薬剤またはビヒクルの2回の鼻腔内投与により行った。マウスを次いで4回のエアロゾルチャレンジに曝露した。実験は35日目に終了した。
【図1b】図1bは、図1aによる治療後のBAL液由来細胞の平均値を示すヒストグラムである。IDX9059による治療は白血球(主に好酸球)、およびリンパ球の減少をもたらした。バーは平均±標準偏差を示す。ボンフェローニ事後補正(Bonferroni post hoc correction)を用いた一元配置分散分析によって、PBS対照に対して、*P<0.05、***P<0.001。
【図2】図2は、マウスでのチオグリコレート誘発胸膜炎モデルにおける本発明の化合物による治療後のPMN蓄積の減少を示す図である。図2aでは、IDX9010が胸膜炎の誘発20分前に投与され、胸腔へのPMNの遊走の68.2%の減少をもたらした。図2bでは、IDX9059が胸膜炎の誘発20分前に投与され、胸腔へのPMNの遊走の25.1%の減少をもたらした。バーは平均±標準偏差を示す。
【図3a】図3aは、マウスでの精巣挙筋細静脈の生体顕微鏡検査モデルにおける任意の化学走化性因子で刺激をしない顕微鏡視野当たりの細胞のヒストグラムを示す図である。R=ローリング細胞、A=接着細胞およびT=遊出細胞。n=4、平均±標準偏差。非刺激細胞はR>A>Tの細胞活性順序を明らかにした。IDX9059による治療は、非刺激PMN細胞のローリングおよび接着に対するダウンレギュレーション効果を示した。
【図3b】図3bは、マウスでの精巣挙筋細静脈の生体顕微鏡検査モデルにおける走化性血小板活性化因子(PAF)を添加後の顕微鏡視野当たりの細胞のヒストグラムを示す図である。R=ローリング細胞、A=接着細胞およびT=遊出細胞。刺激細胞では、(PAF後の)活性順序はT>A>R>と逆転した。IDX9059による治療は、PMN細胞のローリングおよび接着ならびに遊出に対するダウンレギュレーション効果を示した。n=4、平均±標準偏差。
【図4−1】図4a〜cは、局所虚血のラットモデルにおける脳虚血誘発後の本発明の薬剤およびビヒクル(PBS)による治療効果を示すための図である。 図4aは、PBS(スライドE)対IDX9059(スライドD)を与えた非治療動物における虚血性傷害の程度の比較を示す2枚の写真である。オスのウィスターハノーバーラットでの虚血性脳傷害を誘発するのに、中大脳動脈の一過性閉塞を使用した。中大脳動脈(MCA)の皮質血流を示すためレーザードップラーを使用した。閉塞の90分後、線維が除去され、MCAで血液循環が継続し、皮質血流が回復した。物質は再循環後0および24時間に腹腔内注射した。動物を手術の48時間後に屠殺し、脳を摘出し、および2mm厚スライスにカットした。スライスは次いで、生存脳細胞(赤)を壊死細胞(青)と区別するためリン酸緩衝液中0.8%塩化トリフェニルテトラゾリウム(TTC)でインキュベートした。スライスを撮影し、脳傷害をコンピュータ分析により評価した。
【図4−2】図4bは、局所虚血のラットモデルにおける脳虚血誘発後の本発明の薬剤およびビヒクル(PBS)による治療効果を示すための図であって、全脳傷害のパーセンテージを示す棒グラフである。 図4cは、局所虚血のラットモデルにおける脳虚血誘発後の本発明の薬剤およびビヒクル(PBS)による治療効果を示すための図であって、選択的神経壊死(SNN)面積のパーセンテージを示す棒グラフである。選択的神経壊死は、わずかにピンクがかった、およびペナンブラ領域と考えられる部分の推定として示される。
【図4−3】図4dは、梗塞領域(虚血中心部)のパーセンテージを示す棒グラフである。データは平均±標準偏差として示されている(n=4〜8)。平均は棒で示されている。治療群対PBS対照での対応のないt−試験により得られた*P<0.05。
【図5】図5は、心臓虚血の動物モデルにおける梗塞のパーセンテージを示す棒グラフである。IDX9059(1μg/μl)またはプラセボを、心臓切除の24時間前に皮下に与えた(100μl)。心臓を回収し、および安定化のため20分間灌流した。全虚血は灌流を止めて誘発し、この後120分の再灌流を行った。再灌流の最後に、心臓を除去し、左心室を4枚のスライスにカットし(各1mm厚)およびリン酸緩衝液中1%塩化トリフェニルテトラゾリウムでインキュベートして生存心筋細胞を識別した。スライスから写真を撮り、梗塞体積をコンピュータ分析により評価した。結果が梗塞傷害のパーセンテージを示す棒グラフに示されている。データは平均(n=8)および平均値の標準誤差を示す。*P<0.05はマン−ホイットニー検定により計算した。
【図6−1】図6a〜cは、腸虚血−再灌流マウスモデルにおけるIDX0150およびビヒクル(PBS)による治療結果を示す図である。虚血は15分間の腸間膜動脈結紮により誘発し、この後3時間の再灌流を行った。マウスは虚血誘発20分前にPBS(図6a)、またはIDX0150(図6b)を受けた。図6a〜bは、それぞれPBSまたはIDX0150を投与後のマウス消化管の部分を示す(胃、左;小腸;盲腸および結腸)。
【図6−2】図6cには、IDX0150で治療したマウス(スコア2)対PBSを受けているマウス(スコア6.5)の炎症スコアが示されている。
【図6−3】図6d〜gは、腸虚血および再灌流傷害マウスモデルにおける腸および肺組織のミエロペルオキシダーゼ(MPO)レベルを示す図である。IDX0150またはPBSを、虚血誘発(図6d、および、図6f)の20分前、または、再灌流(図6e、および、図6g)の開始直後に皮下投与した。再灌流の3時間、小腸(図6d、および、図6e)および肺(図6f、および、図6g)をホモジナイズし、MPOレベルをELISAで分析した。結果は標準偏差とともに平均値として表されている。
【図6−4】図6−3の続きで、腸虚血および再灌流傷害マウスモデルにおける腸および肺組織のミエロペルオキシダーゼ(MPO)レベルを示す図である(図6fおよび図6g)。
【図7−1】図7a〜fは、さまざまな試験物質による刺激後のヒト末梢PMNにおけるCXCR1およびCXCR2発現の結果を示す図である。5人の健康な血液ドナー由来のヒトPMNを、25μMの試験化合物または培地のみ(未処理)で3時間刺激した。細胞をこの後回収し、フローサイトメトリーによりCXCR1およびCXCR2発現について分析した。CXCR1(図7a)およびCXCR2(図7c)に関する平均蛍光強度(MFI)の倍率変化、または、CXCR1+CD66b+PMN(図7b)およびCXCR2+CD66b+PMN(図7d)の%の倍率変化を、対応する未処理細胞のMFIまたは%陽性PMNを1に正規化(黒い点線)して計算した。
【図7−2】図7eは、0.5、10および25μMのIDX9052、IDX9054およびIDX9059(n=5)による刺激後のCXCR1+PMNの相対MFIを示す。 図7fは、5人の健康な血液ドナー由来のPMNを用いた別の実験における、10μM IDX9074による刺激後のCXCR1+PMNの相対MFIを示す。結果は平均±平均値の標準誤差として表されている。ボンフェローニ事後補正対を用いた二元配置ANOVAによって、未処理細胞に対して、*P<0.05、**P<0.01および***P<0.001が計算された。
【図7−3】図7gは、さまざまな時点にIDX9059で刺激したヒトPMNでのCXCR1発現を示す図である。3人の健康な血液ドナー由来のヒトPMNを、15分、30分、1時間、2時間または3時間、10μMのIDX9059で刺激した。細胞をこの後回収し、各時点で固定化し、フローサイトメトリーによりCXCR1発現について分析した。IDX9059処理細胞におけるCD66b陽性PMNのCXCR1のMFIの倍率変化を、対応する未処理細胞のMFIを1に正規化して計算した。結果は平均値±平均値の標準誤差として表されている。
【図7−4】図7hは、CXCR1の表面発現に対するCpGおよびオリゴG−オリゴヌクレオチドの重要性を示す図である。3人の健康な血液ドナー由来のヒトPMNを、0.5、10または25μMのIDX9022およびIDX9059ならびにそれぞれIDX9022およびIDX9059と同じ配列を有するがCpGモチーフのない、修飾した対照オリゴヌクレオチドIDX0480およびIDX9134で3時間インキュベートした。細胞をこの後回収し、フローサイトメトリーによりCXCR1発現について分析した。CXCR1+CD66b+PMNのMFIの倍率変化を、未処理細胞のMFIを1に正規化(黒い点線)して計算した。結果は平均値±平均値の標準誤差として表されている。
【図7−5】図7iは、本発明の化合物による処理後のCXCR1表面発現のダウンレギュレーションに対するクロロキン効果を示す図である。4人の健康な血液ドナー由来のヒトPMNを、10μMの試験化合物で3時間刺激する前に、0.5、5または10μg/mlのクロロキンとともに30分間プレインキュベートした。細胞をこの後回収し、フローサイトメトリーによりCXCR1発現について分析した。MFIの倍率変化を、対応する未処理細胞のMFIを1に正規化(黒い点線)して計算した。結果は平均値±平均値の標準誤差として表されている。ボンフェローニ事後補正を用いた二元配置ANOVAによって、未処理細胞に対して、*P<0.05が計算された。
【図7−6】図7j〜kは、異なる試験物質による刺激後のヒトPMNでのBLT1表面発現の結果を示す図である。5人の健康な血液ドナー由来のヒトPMNを、0.5、10または25μMの本発明の化合物または培地のみ(未処理)で3時間刺激した。細胞をこの後回収し、フローサイトメトリーによりBLT1発現について分析した。MFIの倍率変化(図7j)または%BLT1+CD66b陽性PMN(図7k)を、対応する未処理細胞のMFIまたは%を1に正規化(黒い点線)して計算した。結果は平均値および平均値の標準誤差として表されている。ボンフェローニ事後補正を用いた二元配置ANOVAによって、未処理細胞に対して、*P<0.05、**P<0.01および***P<0.001が計算された。
【図7−7】図7l〜nは、PMNのIL−8およびLTB4誘発走化性に対する本発明の化合物の効果を示す図である。5(図7l)または4〜6(図7n)人の健康な血液ドナー由来のヒトPMNを、0.5、10または25μMの本発明の化合物で1時間プレインキュベートした後、遊離化合物を洗浄し、IL−8(図7l)またはLTB4(図7n)に向かって遊走する能力について細胞を走化性アッセイで3時間調べた。結果は遊走PMNの平均数±平均値の標準誤差として表されている。Dunnettの事後補正を用いた一元配置ANOVAによって、IL−8/LTB4とともにインキュベートした未処理細胞に対して、*P<0.05および**P<0.01が計算された。図7mは、2人の健康な血液ドナー由来のPMNを、0.5、10または25μMのIDX9045とともに1時間プレインキュベートした後、化合物の非存在下でIL−8に向かって遊走する能力について細胞を走化性アッセイで3時間調べた別の実験を示す。
【図7−8】図7−7の続きで、PMNのIL−8およびLTB4誘発走化性に対する本発明の化合物の効果を示す図である(図7n)。
【図7−9】図7o〜qは、CXCR1、CXCR2およびBLT1表面発現と本発明の化合物による刺激後のPMN遊走との間の相関を示す図である。本発明の化合物による刺激後のPMNのCXCR1(図7o)、CXCR2(図7p)およびBLT1(図7q)のMFIを、走化性アッセイでIL−8(図7oおよび図7p)またはLTB4(図7q)に向かって遊走するPMNの数に対してプロットした。曲線適合(r2)は図中に指定されている。
【図7−10】図7−9の続きで、CXCR1、CXCR2およびBLT1表面発現と本発明の化合物による刺激後のPMN遊走との間の相関を示す図である(図7q)。
【図8−1】図8a〜fは、異なる試験物質による刺激後のMS患者から単離したヒト末梢PMNにおけるCXCR1、CXCR2およびBLT1発現の結果を示す図である。MS患者由来のヒトPMNを、0.5、10および25μMの試験化合物または培地のみ(未処理)で3時間刺激した。細胞をこの後回収し、フローサイトメトリーによりCXCR1(n=4)、CXCR2(n=4)およびBLT1(n=2)発現について分析した。CXCR1(図8a)、CXCR2(図8c)およびBLT1(図8e)に関する平均蛍光強度(MFI)の倍率変化、または、CXCR1+CD66b+PMN(図8b)、CXCR2+CD66b+PMN(図8d)、BLT1+CD66b+PMN(図8f)の%の倍率変化を、対応する未処理細胞のMFIまたは%陽性PMNを1に正規化(黒い点線)して計算した。結果は平均値±平均値の標準誤差として表されている。ボンフェローニ事後補正を用いた二元配置ANOVAによって、未処理細胞に対して、*P<0.05、**P<0.01および***P<0.001が計算された。
【図8−2】図8−1の続きで、異なる試験物質による刺激後のMS患者から単離したヒト末梢PMNにおけるCXCR1、CXCR2およびBLT1発現の結果を示す図である(図8cおよび図8d)。
【図8−3】図8−2の続きで、異なる試験物質による刺激後のMS患者から単離したヒト末梢PMNにおけるCXCR1、CXCR2およびBLT1発現の結果を示す図である(図8eおよび図8f)。
【図8−4】図8g〜iは、本発明の化合物による刺激後の喘息患者由来のヒト抹消PMNにおけるCXCR1、CXCR2およびBLT1発現の結果を示す図である。喘息患者由来のヒトPMNを、0.5、10および25μMの試験化合物または培地のみ(未処理)で3時間刺激した。細胞をこの後回収し、フローサイトメトリーによりCXCR1、CXCR2およびBLT1発現について分析した。CXCR1(図8g)CD66b+PMN、CXCR2(図8h)CD66b+PMN、および、BLT1(図8i)CD66b+PMNに関する平均蛍光強度(MFI)の倍率変化を、対応する未処理細胞のMFIを1に正規化(黒い点線)して計算した。
【図8−5】本発明の化合物による刺激後の喘息患者由来のヒト抹消PMNにおけるCXCR1、CXCR2およびBLT1発現の結果を示す図(図8i)である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明が記載される前に、本発明の範囲は添付特許請求の範囲およびこの同等物によってのみ制限されるため、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を記載する目的のみに使用され、制限的であるものではないことが理解されるべきである。
【0023】
この明細書および添付特許請求の範囲で使用される通り、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「この(the)」は、文脈が特に明白に指示しない限り複数の指示対象を含むことに留意しなければならない。
【0024】
また、用語「約(about)」は、適用できる場合、任意の値の+/−2%、好ましくは+/−5%、および最も好ましくは数値の+/−10%の偏差を示すために使用される。
【0025】
上記に加え、以下の用語が使用されるであろう。
【0026】
用語「相同性(homology)」および「相同性の程度(degree of homology」は、2つの配列間の類似性または同一性を意味し、100%相同性は配列が同一であること、およびより低い相同性は変異の存在を示していることを意味する。例えば、20核酸塩基から成る配列では、別の配列は18塩基が同一であれば90%相同である。
【0027】
「機能的に相同な(functionally homologous)」は、開示された配列と恐らくより低い構造的相同性を共有するが、健康なまたは罹患した生物のいずれにおいてもin vivoで相同な機能を示す、例えば同じタンパク質または類似の細胞機能を有する高度に類似したタンパク質をコードする配列を意味する。
【0028】
用語「治療(treatment)」、「治療(therapy)」、「治療的使用」、「医薬品」、および「医学的使用」は、ヒトおよび動物の両方または獣医学的適用を含む。
【0029】
本発明者らは、特定のオリゴヌクレオチドは多形核細胞の特性および挙動、例えばこの内皮接着および遊出に影響を与えること、ならびにこれらの化合物が、この機構および場合により他の機構を介して異なる病因の疾患の予防および/または軽減に有用性を有することを見出した。これらの発見は、ドナー血液から単離されたPMNで行われた動物実験およびin vitro試験において確認されている。
【0030】
【表1】

【0031】
本発明者らは新規のオリゴヌクレオチドを提供し、したがって本発明の1つの実施形態は、配列番号1〜12、14、15、および16、ならびに特に配列番号8[IDX9059]、配列番号14[IDX9052]、配列番号7[IDX9054]、配列番号6[IDX9045]、配列番号1[IDX9005]、配列番号9[IDX9074]、配列番号3[IDX9022]、配列番号2[IDX9010]、および配列番号4[IDX9030]から成る群から選択される単離および実質的に精製されたオリゴヌクレオチドである。
【0032】
好ましくは、上記の配列から選択される配列における少なくとも1つのヌクレオチドは、リン酸骨格修飾を有する。前記リン酸骨格修飾は、好ましくはホスホロチオエートまたはジチオリン酸修飾である。
【0033】
本発明者らはまた、上記の配列から選択されるオリゴヌクレオチドを含む医薬組成物も提供する。
【0034】
本発明の1つの実施形態は、炎症部位への多形核細胞の動員および/または遊走を減少させる医薬製剤を製造するためのオリゴヌクレオチドの使用であり、オリゴヌクレオチドが、配列番号8[IDX9059]、配列番号14[IDX9052]、配列番号7[IDX9054]、配列番号6[IDX9045]、配列番号1[IDX9005]、配列番号9[IDX9074]、配列番号3[IDX9022]、配列番号2[IDX9010]、配列番号4[IDX9030]、および配列番号13[IDX0150]から成る群から選択される。
【0035】
好ましくは、本発明者らに現在入手できる結果によれば、炎症部位への多形核細胞の前記減少した動員および/または遊走は、受容体CXCR1およびCXCR2の少なくとも1つのダウンレギュレーションの結果、または受容体BLT1のダウンレギュレーションの結果である。
【0036】
好ましい実施形態によれば、前記オリゴヌクレオチドは、好ましくは配列番号8[IDX9059]、配列番号14[IDX9052]、および配列番号7[IDX9054]の中で選択される。
【0037】
上記の使用では、オリゴヌクレオチドは好ましくは、以下の投与経路、すなわち経皮、腹腔内、粘膜、腸内、経口、胃内、食道、口腔内、鼻腔内および肺内投与の一つを介して与えられる。
【0038】
上記と自由に組み合わせ可能な好ましい実施形態によれば、オリゴヌクレオチドは炎症性疾患の治療におけるステップとして投与される。
【0039】
上記と自由に組み合わせ可能な別の好ましい実施形態によれば、オリゴヌクレオチドは心筋梗塞に罹患している、または罹患していることが疑われる患者に投与される。
【0040】
上記と自由に組み合わせ可能な別の好ましい実施形態によれば、オリゴヌクレオチドは脳卒中に罹患している、または罹患していることが疑われる患者に投与される。
【0041】
上記と自由に組み合わせ可能な別の好ましい実施形態によれば、オリゴヌクレオチドは外傷もしくは熱傷を負っている、または手術を受ける予定の患者に投与される。
【0042】
上記と自由に組み合わせ可能な別の好ましい実施形態によれば、オリゴヌクレオチドは、塞栓の除去の前、後もしくは実質的に同時に、または血栓溶解剤の投与の前もしくは後に塞栓症を有する患者に投与される。該化合物はポストコンディショニング効果も有することが示されたことから、塞栓の除去後、または集中治療設定で該化合物の有用性を著しく増加させるものである血栓溶解剤の投与後にも投与されることが企図される。
【0043】
上記と自由に組み合わせ可能な別の好ましい実施形態によれば、オリゴヌクレオチドは、ドナーからの摘出前のin situ、レシピエントへの移植前の輸送中、または血流回復前もしくは回復時のin vivoのどちらかで、移植用に指定された臓器に投与される。
【0044】
さらに、本発明者らは、患者の臓器における炎症部位への多形核細胞の動員および/または遊走を減少させる方法を提供し、配列番号8[IDX9059]、配列番号14[IDX9052]、配列番号7[IDX9054]、配列番号6[IDX9045]、配列番号1[IDX9005]、配列番号9[IDX9074]、配列番号3[IDX9022]、配列番号2[IDX9010]、配列番号4[IDX9030]、および配列番号13[IDX0150]から成る群から選択されるオリゴヌクレオチドが、前記臓器に局所投与または前記患者に全身投与される。
【0045】
あるいは、本発明者らは臓器における炎症部位への多形核細胞の動員および/または遊走を減少させる方法を提供し、オリゴヌクレオチドは、前記臓器の再灌流の前、同時、または後で前記臓器に局所投与されるまたは前記患者に全身投与され、オリゴヌクレオチドが、配列番号8[IDX9059]、配列番号14[IDX9052]、配列番号7[IDX9054]、配列番号6[IDX9045]、配列番号1[IDX9005]、配列番号9[IDX9074]、配列番号3[IDX9022]、配列番号2[IDX9010]、配列番号4[IDX9030]、および配列番号13[IDX0150]から成る群から選択される。
【0046】
治療の上記方法のどちらかでは、および本発明者らに現在入手できる結果によれば、炎症部位への多形核細胞の前記減少した動員および/または遊走は、受容体CXCR1およびCXCR2の少なくとも1つのダウンレギュレーションの結果、受容体BLT1のダウンレギュレーションの結果である。
【0047】
治療の上記方法では、前記オリゴヌクレオチドは好ましくは、配列番号8[IDX9059]、配列番号14[IDX9052]、および配列番号7[IDX9054]の中で選択される。
【0048】
本発明者らはまた、臓器における血流障害または遮断に罹患しているまたは罹患していることが疑われる、および治療が予定されている患者を調整する方法も企図し、前記臓器における炎症部位への多形核細胞の動員および/または遊走を減少させることができるオリゴヌクレオチドが、予定された治療の前、同時、または後で前記患者に投与され、オリゴヌクレオチドは、配列番号8[IDX9059]、配列番号14[IDX9052]、配列番号7[IDX9054]、配列番号6[IDX9045]、配列番号1[IDX9005]、配列番号9[IDX9074]、配列番号3[IDX9022]、配列番号2[IDX9010]、配列番号4[IDX9030]、および配列番号13[IDX0150]から成る群から選択される。
【0049】
上記方法の実施形態では、前記臓器は好ましくは心臓であり、ならびに前記臓器における炎症部位への多形核細胞の動員および/または遊走の前記減少は、虚血性傷害を減少する、および続発性再灌流傷害を予防または軽減するのに有効である。この実施形態では、前記続発性再灌流傷害は、血栓溶解剤の投与による心臓への血流の回復に続いて起こる損傷であり得る。あるいは、前記続発性再灌流傷害は、外科的介入、例えばバイパス手術による心臓への血流の回復に続いて起こる損傷である。あるいは、前記続発性再灌流傷害は、バルーン血管形成術による心臓への血流の回復に続いて起こる損傷である。あるいは、前記続発性再灌流傷害は、移植のレシピエントにおいて移植された臓器への血流の外科的回復に続いて起こる損傷である。
【0050】
上記方法の別の実施形態では、前記臓器は脳であり、および前記虚血性傷害は続発性再灌流傷害である。この実施形態では、前記続発性再灌流傷害は、血栓溶解剤の投与による脳への血流の回復後の損傷であり得る。
【0051】
上記方法のさらに別の実施形態では、前記臓器は肝臓、少なくとも1つの腎臓、腸またはこの部分、少なくとも1つの肺またはこの部分の中で選択され、および前記虚血性傷害が続発性再灌流傷害である。
【0052】
方法の上記実施形態のいずれかでは、オリゴヌクレオチド以下の投与経路、すなわち全身、好ましくは経皮、腹腔内、粘膜投与(腸内、経口、胃内、食道、口腔内、鼻腔内、および肺内投与を含む)の一つを介して与えられる。
【0053】
本発明者らはまた、心筋梗塞の治療のためのアジュバント法も提供し、配列番号8[IDX9059]、配列番号14[IDX9052]、配列番号7[IDX9054]、配列番号6[IDX9045]、配列番号1[IDX9005]、配列番号9[IDX9074]、配列番号3[IDX9022]、配列番号2[IDX9010]、配列番号4[IDX9030]、および配列番号13[IDX0150]から成る群から選択されるオリゴヌクレオチドが、血栓溶解剤の投与の前、後または同時に投与される。
【0054】
さらに、本発明者らは、脳卒中の治療のためのアジュバント法を提供し、配列番号8[IDX9059]、配列番号14[IDX9052]、配列番号7[IDX9054]、配列番号6[IDX9045]、配列番号1[IDX9005]、配列番号9[IDX9074]、配列番号3[IDX9022]、配列番号2[IDX9010]、配列番号4[IDX9030]、および配列番号13[IDX0150]から成る群から選択されるオリゴヌクレオチドが、血栓溶解剤の投与の前、後または同時に投与される。
【0055】
本発明の別の実施形態は、移植臓器の保存および/または輸送のための技術的解決策であり、前記解決策が、虚血性傷害の予防および/または軽減に十分な量で、多形核細胞の特性および挙動に影響する、例えば多形核細胞の内皮接着ならびに動員および/または遊走を抑制することができるオリゴヌクレオチドを含み、ならびに前記オリゴヌクレオチドは、配列番号8[IDX9059]、配列番号14[IDX9052]、配列番号7[IDX9054]、配列番号6[IDX9045]、配列番号1[IDX9005]、配列番号9[IDX9074]、配列番号3[IDX9022]、配列番号2[IDX9010]、配列番号4[IDX9030]、および配列番号13[IDX0150]の中で選択される。
【0056】
使用の上記方法、および治療方法では、オリゴヌクレオチドは治療有効量で投与される。「治療有効量」の定義は疾患および治療設定によって決まり、「治療有効量」は単独または他の治療との併用で患者の状態の測定可能な改善をもたらす用量である。当業者は、経験的に、または不当な負担なく行われる実験室実験に基づき、治療有効量を決定することができる。治療担当医師もまた、自身の経験に基づきならびに疾患の性質および重症度、ならびに患者の状態を考慮して、適切な用量を決定することができる。
【0057】
1つの実施形態によれば、オリゴヌクレオチドは、約1から約2000μg/kg体重、好ましくは約5から約1000μg/kg体重の間の用量、最も好ましくは約10から約500μg/kg体重の間の用量で与えられる。
【0058】
オリゴヌクレオチドは、単回投与または反復投与で投与されてよい。現在最も好ましい実施形態は、粘膜に投与される、例えばkg体重当たり約2000μg未満、好ましくは約500μg未満、好ましくは約100μgの量で鼻腔内、経口、直腸内または膣内に与えられる、本発明によるオリゴヌクレオチドの1回の単回投与を伴う。
【0059】
別の現在好ましい実施形態は、約2、約6、約12、または約24時間の時間に隔てられた、2または3用量でのオリゴヌクレオチドの投与である。
【0060】
本発明の別の実施形態によれば、オリゴヌクレオチドは、ドナーからの摘出前のin situ、レシピエントへの移植前の輸送中、または血流回復前もしくは回復時のin vivoのどちらかで、移植用に指定された臓器に投与される。好ましくはオリゴヌクレオチドは、ドナーからの摘出前に移植臓器を調整するのに使用される溶液中に約0.1から約2000μg/lの濃度で存在する。あるいは、またはこれに加えて、オリゴヌクレオチドは、移植臓器を輸送するのに使用される溶液中に0.1から約1000μg/lの濃度で存在する。あるいは、またはこれに加えて、オリゴヌクレオチドは、血流の回復前に移植臓器を調整するのに使用される溶液中に0.1から約1000μg/lの濃度で存在する。
【0061】
オリゴヌクレオチドは、血流の回復前だけでなく、回復と同時、または回復後でさえも投与され得る徴候がある。実施例4との関連では、プレコンディショニング、およびポストコンディショニングの可能性が説明される。結果は驚くべきことに、配列番号8[IDX9059]による治療は、脳卒中の誘発後もポストコンディショニングの機能を果たすことができ、虚血損傷に対し脳を保護できることを示している。
【0062】
上記の実施形態は、相互に包含的であり、異なる用量、投与方法および時間間隔が、列挙された実施形態内、および当業者に明らかとなる他の実施形態と自由に組み合わされ得ることを意味する。
【0063】
上記の実施形態は、記載および例を研究する際に当業者に明らかとなる多くの利点を提供する。1つの利点は、オリゴヌクレオチドの使用が、現在使用されている薬剤に取って代わるまたはこれを補完する、ならび現在の薬剤および治療に関連した悪影響を減少させる可能性を提供する点である。
【実施例1】
【0064】
OVA誘発気道炎症マウスモデルにおける免疫調節オリゴヌクレオチド試験物質の鼻腔内投与
材料および方法
動物
B&K Sollentuna社、ストックホルム、スウェーデンから入手したメスのBalb/cマウス(8週)を実験に使用した。マウスに完全ペレットげっ歯類食、R36(Laktamin AB社、ストックホルム、スウェーデン)および家庭飲用品質の水を適宜給餌した。動物は、動物飼育室で21℃、±3℃および55%±15%の相対湿度で飼育した。換気システムは1時間当たり10換気を与えるように設計した。部屋は、12時間の明サイクルおよび12時間の暗サイクルを与えるように照明した。明かりは07:00から19:00まで点灯した。マウスは、透明なポリカーボネート(Macrolone型III)ケージ(床面積:820cm2)で各ケージに5匹ずつ飼育した。ケージの床敷は4HVアスペン床敷(Tapvei社、フィンランド)であった。各ケージは、試験番号、群番号、性別および動物番号がマークされたケージカードにより識別した。
【0065】
感作およびエアロゾルチャレンジ
マウスは、0および12日目に200μL OVA/水酸化アルミニウムゲル(1:3)で腹腔内感作した(図1a)。OVA(鶏卵アルブミングレードV、Sigma社、セントルイス、MO)を生理食塩水で溶解し、および4℃で3時間回転させて50μg/mLの濃度まで水酸化アルミニウムゲルと混合した。23、26、30および33日目(図1a参照)に、マウスにBatelle曝露チャンバーを用いて30分間エアロゾル化OVAを吸入して肺で曝露した。エアロゾルは、PBSに溶解した10mg/mL OVA(Sigma社、セントルイス、MO、USA)のネブライザー濃度を用いて気流7.4L/分で圧縮空気ネブライザー(Collison 6ジェット)により生成した。非感作動物による対照群は、23、26、30および33日目のエアロゾル化OVA以外の処理は受けなかった。エアロゾルチャレンジを受けなかった感作マウスの対照群もあった。
【0066】
オリゴヌクレオチド
このOVAモデル(図1a)では、選択したオリゴヌクレオチド、IDX9059、(配列番号8、表1)を試験した。オリゴヌクレオチドはbiomers.net GmbH社(ウルム、ドイツ)により合成され、および−20℃で冷凍保存された。
【0067】
調製
免疫調節オリゴヌクレオチドを、リン酸緩衝生理食塩水(PBS、Fluka Biochemika Ultra、Sigma Aldrich社、セントルイス、USA)に溶解した。
【0068】
OVA誘発気道炎症の治療
この実験では、予防的設定で(図1a)16および21日目にIDX9059(1,247μg/μL)の鼻腔内注入を与えた。物質は、約50μg/マウス(49.88μg/マウス)の用量を与える40μL PBSで投与した。2つの感作偽治療群は、16および21日目に試験化合物と同じ合計容積をPBSで注入した。
【0069】
気道炎症パラメータの分析
マウスを、最終OVAエアロゾルチャレンジの42時間後に頸椎脱臼により屠殺した。気管にポリエチレン管(Becton Dickinson社、スパークス、MD、USA)によるカニューレを挿入し、4×1mLアリコートの氷冷ハンクス平衡塩液(HBSS)(Sigma社、セントルイス、MO、USA)を用いて気管支肺胞洗浄(BAL)を行った。BAL液を遠心分離し(400g、10分、4℃)、上清を回収、および後の分析用に冷凍した。細胞を0.4mL PBSに再懸濁し、白血球総数をBuerkerチャンバーでトリパンブルー除外を用いてカウントした。BAL液細胞の二重のサイトスピン(サイトスピン3、Shandon社、ランコーン、UK)調製物を、標準の形態学的基準を用いた白血球画分のためMay Gruenewaldギムザ染色で染色した。
【0070】
統計分析
統計比較は、感作PBS処理した対照マウスと比較するため、Dunnettの事後補正を用いて一元配置分散分析(ANOVA)を用いて行った(GraphPad Prism4)。データは平均±標準偏差として示した。0.05より低いP値を有意と見なした。
【0071】
結果
オボアルブミン誘発アレルギー性喘息モデルは、喘息中に見出される気道好酸球、肺内炎症およびIgEレベルの上昇を再現するのに広範に使用されるモデルである。このモデル分析は、浸潤炎症細胞の種類および量がそれぞれ特定およびカウントされるBAL分析などの喘息の一般的指標に依存している。
【0072】
この結果、各マウス由来のBAL液細胞は記載の通りにカウントし、値は異なる群の平均値を提供する複合ヒストグラムとしてプロットした(図1b)。
【0073】
大まかに言えば、動物(PBS群)の肺への4つの分析細胞種の大量流入により示される通り、誘発された気道炎症のレベルは高い。対照群は誘発炎症の徴候を示さず、動物がエアロゾルオボアルブミンタンパク質に対する自然なアレルギー反応を示さないこと、および使用したオボアルブミンタンパク質が例えば、LPSに汚染されていないことを裏付けた。
【0074】
「非エアロゾル」対照群でいずれの炎症徴候も完全に欠如していたことは、OVA免疫処置の実験手順自体は肺の炎症を誘発しないことを裏付けた。
【0075】
鼻腔内治療後、試験物質配列番号8[IDX9059]は炎症細胞、すなわち白血球(P<0.001)、好酸球(P<0.001)およびリンパ球(P<0.05)に対する減少効果を有した。
【0076】
アレルギー性喘息のこのin vivoモデルでは、白血球すなわちPMN(主に好酸球)は肺の炎症に重要な役割を果たす。本発明の化合物の配列番号8[IDX9059]で治療した場合、BAL液を浸潤する白血球、好酸球およびリンパ球数の統計学的に有意な減少が動物で観察された。これは、本発明の化合物がPMN浸潤の阻害により炎症を予防できることを示す。
【実施例2】
【0077】
C57/BI6マウスにおけるチオグリコレート誘発胸膜炎
材料および方法
細胞遊走および血管透過性に対する本発明の実施形態によるオリゴヌクレオチドの効果を試験するため、動物モデルを設定した。
【0078】
マウスは、ケタミン(Ketalar(登録商標)Parke−Davis社、25mg/ml)およびキシラジン(Narcoxyl vet.(登録商標)Veterinaria AG社、5mg/ml)の混合物0.15〜0.20mlの腹腔内注射により麻酔した。
【0079】
静脈内投与(i.v.)のため、左頸静脈にポリエチレン管(PE10)によるカニューレを挿入した。皮膚切開は胸部右側で行った。下層の筋肉の切開後、100μlのチオグリコレート(Sigma社)の単回胸膜内注射により胸膜炎(肺嚢の炎症)を誘発した。滅菌PBSは陰性対照に使用した。PBS中FITC結合デキストラン(100μl、30mg/ml)をi.v.注射した。4時間後、動物を麻酔の過剰投与により安楽死させ、胸部を慎重に開き、滲出液を吸引により除去し、および容量を記録した。胸部を次いでPBS中氷冷3mM EDTA 1mlですすいだ。赤血球細胞で汚染され滲出液は廃棄した。
【0080】
滲出液およびリンス材料を1500gで5分間遠心分離し、上清は蛍光光度計(Fluoroskan Acsent、LabSystems社)での蛍光強度の測定に使用し、FITC−デキストランのクリアランス容量を計算した。ペレットを15分間、0.1%BSAとともにPBSに再懸濁して非特異的抗体結合をブロックした。細胞懸濁液10μlをBuerkerチャンバーでの白血球分画に使用した。
【0081】
滲出液からの細胞を、好中球およびマクロファージ特異的抗体で染色し、フローサイトメトリー(FACSort and CellQuestソフトウェア、BD)により分析した。分析は、前方および側方散乱での典型的な外観に基づく総白血球数を含んだ。PMNおよびマクロファージはさらに、それぞれLy6GおよびF4/80の発現により特定した。
【0082】
本発明の実施形態によるPMN遊走の減少によるオリゴヌクレオチドの抗炎症効果を試験するため、試験化合物を、胸膜炎誘発の約20分前に100μl、すなわち50μg/マウスの用量で腹腔内投与した。この試験では、IDX9010、IDX9054、IDX9059、(それぞれ配列番号2、7、および8、表1)およびIDX0150(配列番号13)を試験した。
【0083】
結果
チオグリコレート誘発胸膜炎モデルは、開発中の新薬の実用的なスクリーニングのための最適モデルの一つであるが、該モデルは技術的に複雑であり、および時として個々の異なる値を示す場合がある。しかし、このモデルは、同時に試験できる動物の数が限られる。
【0084】
結果は、胸膜腔へのPMNの高い遊走および胸膜浮腫の蓄積により、動物が炎症誘発剤、チオグリコレートに反応することを示した。
【0085】
IDX9010を受け取るマウス(n=4)は、68.2%のPMN数の減少を示した(図2a)が、浮腫の減少は示さなかった(データ不図示)。IDX9054(n=4)を与えられたマウスは、PMN数の減少は示さなかったが、浮腫を36%減少させることができた(データ不図示)。IDX9059は、7匹の動物群でPMN蓄積(25.1%、図2b)、および浮腫(31%)の両方の減少を示した(データ不図示)。IDX0150を与えられたマウス(n=5)は、PMN数の40.9%の減少、および浮腫の68.2%の減少を示した(データ不図示)。結果は平均±標準偏差を表す。
【0086】
抗PMN抗体を用いた実験は、抗PMN−abが本発明の化合物と似たレベルまでPMNおよび浮腫を等しく減少させることができることを示した(データ不図示)。チオグリコレート誘発胸膜炎への本発明の化合物の予防的投与は、胸膜腔へのPMN遊走の減少をもたらした。
【実施例3】
【0087】
血管炎症マウスモデルにおける生体顕微鏡検査
マウスにおける白血球の血管外遊出に対するオリゴヌクレオチドIDX9059(配列番号8、表1)のin vivo、抗炎症効果を調べた。走化性刺激に反応して、炎症細胞は刺激勾配に向かって血管壁を遊出する。遊出には、細胞は先ず断続的に血管内壁に接着し(すなわちローリング(R))、この後よりしっかりと接着し始め(接着(A))、次いで周囲組織に移動し(遊出(T))なければならない。血小板活性化因子(PAF)を使用してこの炎症プロセスを誘発した。正常な非刺激血管では、これらのイベントの順序はR>A>Tであった。PAFへの曝露後、この順序はT>A>Rと逆転し、細胞が接着および遊出し始めたことを示した。
【0088】
序論
白血球動員は炎症反応の必要条件である。血管では、白血球細胞と内皮との間の一連のイベントが、損傷または炎症部位での炎症細胞の蓄積をもたらす(Lindbom、1983年)。このイベントカスケードにおける1つの重要な細胞は多形核細胞(PMN)である。PMNは血流で輸送される。血流は血管の中心でより高い速度を、周辺へ向かってより低いスピードを有し、PMNと血管壁との間の接触を可能にする。分子機構は内皮へのPMNの接着を促す(Penberthyら、1997年)。このような分子の1つの群はセレクチンと呼ばれる。最初は、この相互作用は部分的に過ぎず、内皮に沿ってPMNを回転させる。炎症誘発性分子により刺激され、この接着はより強固になり内皮へのPMNの接着(固着と呼ばれる現象)を引き起こす。固着は、PMNが内皮層を積極的に遊出および続いて結合組織へ進入できるようにし、さらに炎症因子の勾配により炎症の中心部に向けられる。
【0089】
すべてのこれらのイベントは、生体顕微鏡検査によりin vivoで試験することができる。生体顕微鏡検査は、小血管、および周囲結合組織での細胞試験を可能にする。
【0090】
適切な細静脈は、例えばウサギの骨格筋(tenuissimus muscle)およびマウスの精巣挙筋で試験されている。
【0091】
この例は、マウスの精巣挙筋での生体顕微鏡検査を取り上げる。精巣挙筋は、陰嚢の精巣温度をコントロールする筋肉である。この筋肉の血管系は、水浸対物レンズ下で容易に曝露され得、体温でリン酸緩衝生理食塩水により灌流され得る。走化性または炎症誘発性物質は、灌流緩衝液に添加することができ、薬理学的物質は灌流液または動物に添加することができる。
【0092】
ローリング、固着および遊出は、この後、微速度録画を用いて試験することができ、記録は後に、細胞の定量化またはトランスバース距離の測定に使用することができる。
【0093】
この試験の目的は、マウスにおけるPAF刺激後の細静脈での炎症細胞遊走に対する本発明の化合物IDX9059の効果を試験することであった。
【0094】
材料および方法
動物材料および条件:Scanbur AB社(ソレントゥナ、スウェーデン)製のC57BL/6 SPFマウスは、各12時間の明暗サイクルにより管理温度(21±2℃)で動物飼育室で飼育し、および食餌および水に自由にアクセスできるようにした。
【0095】
試験化合物:オリゴヌクレオチド配列番号8[IDX9059]は、biomers.net GmbH(ウルム、ドイツ)により非GMP条件下で合成され、およびPBS溶液で提供された。オリゴヌクレオチドを貯蔵液として−20℃で保存し、および実験開始2〜3日前に調製した。
【0096】
調製:オリゴヌクレオチドを、室温でPBS(Fluka、Sigma社)にさらに希釈した。濃度は、所望の濃度に達するまで、95%精度でUV分光光度法(SmartSpec(商標)3000、BIO−RAD社、ハーキュリーズ、USA)を用いて調節した。
【0097】
PAF誘発炎症の治療:炎症誘発の約20分前に、動物にIDX9059を皮下注射(50μg/100μl/マウス)により与えた。
【0098】
白血球動員の生体顕微鏡検査:4匹のマウス群を使用した。マウスは、ケタミン(Ketalar(登録商標)、Pfizer AB社(ソレントゥナ、スウェーデン)、25mg/ml)およびキシラジン(Narcoxyl vet.(登録商標)、Intervet International B.V.社(オランダ)、5mg/ml)の混合物0.15〜0.20mlの腹腔内注射により麻酔した。麻酔の継続投与のため、左頸静脈にポリエチレン管(PE10)によるカニューレを挿入した。腹部切開は右の陰嚢で行い、片方の精巣を取り出した。精巣挙筋を切開し(筋膜なし)、切り込みを入れ、および透明な台座に平らにピンアウトして透照させた。精巣は次いで側面をピンでとめた。調製物は、37℃の温度管理重炭酸塩緩衝液の連続灌流により湿潤および温かく保ち、温度、pH、およびガス圧の生理学的レベルを維持した。白血球の血管外遊出は、血小板活性化因子(PAF、Sigma−Aldrich社、セントルイス、MO、USA;100nM)を60分間、灌流溶液に添加して誘発した。ローリング、接着および遊出の測定は刺激の前後に行った。録画は20〜50μmワイドの十分に明確な細静脈から得た。ローリングは、30秒間に血流に垂直な基準線を通過する白血球数として判定した。血管内の細胞は、30秒間を超える間、静止している場合に接着性として分類した。遊出細胞は、試験される血管から70μmの距離内の血管外組織でカウントした。
【0099】
すべての顕微鏡観察は、Leitz SW25水浸対物レンズを備えるLeitz Orthoplan生体顕微鏡(Leitz Wetslar GMBH社、ドイツ)を用いて行った。画像をテレビ画面に映し、およびPanasonic WV−1550/G(Panasonic社、日本)ビデオカメラを用いて録画した。
【0100】
結果
遊出するには、細胞はローリングを開始し、この後、よりしっかりと接着し始め、次いで周囲組織に遊走する。血小板活性化因子(PAF)を用いてこの炎症プロセスを誘発し、正常な非刺激血管では、これらのイベントの順序はR>A>Tであった。化学誘引物質(PAF)の非存在下では、配列番号8[IDX9059]はローリングを81.4%および接着を41.9%減少させることができた(図3a)。
【0101】
PAFへの曝露後、イベント(ローリング、接着、および遊出)の順序はT>A>Rと逆転し、細胞が接着および遊出し始めることを示した。これと一致して、結果は、PAFを添加した場合、1.7細胞/視野の基礎レベル(PAF添加前、図3a)からの遊出細胞が、20.66に達した(PAF添加後、図3b)ことを示している。22.3細胞/視野(PAF添加前、図3a)から7.7(PAF添加後、図3b)へのローリング細胞の減少があり、および接着細胞は約14細胞/視野のままであった。この条件で配列番号8[IDX9059]は、PAF曝露後にローリング、接着および遊出を減少させた。減少は、ローリング細胞が48.4%、接着細胞が28.5%および遊出細胞が54.4%であり、異なる炎症レベルで有効になり得、および異なる炎症性メディエーターに作用し得る抗炎症特性を、配列番号8が有することを示した。
【0102】
まとめると、これらの結果は、配列番号8[IDX9059]の抗炎症効果を示している。驚くべきことに、配列番号8は、走化性物質の非存在下でローリングおよび接着値に対する低下効果を示した。これは、この配列が、PMN浸潤の阻害が好ましい臨床状況で使用される可能性を有する1つの徴候である。
【実施例4】
【0103】
実験ラットモデルにおける脳虚血性傷害に対する免疫調節オリゴヌクレオチドの阻害効果に関する試験
試験の目的は、脳虚血の実験ラットモデルにおいて、虚血性脳傷害に対する免疫調節オリゴヌクレオチドによる阻害効果を調べることであった。動物試験は、Facility for Division of Experimental Vascular Research、Department of Clinical Sciences、ルンド大学、ルンド、スウェーデンで行われた。
【0104】
序論
虚血損傷に対する耐性は、心臓、脳、および腎臓などのさまざまな器官でTLR4を介したLPSにより誘発され得ることが示されている(Heemannら 2000年、Rowlandら、1997年;Tasakiら、1997年)。保護機構は十分に理解されていないが、パラダイムは、LPS−プレコンディショニングによる小さな炎症反応が、より強力な続発性刺激を伴う炎症反応のこの後の損傷を軽減する、というものである。既知のTLRシグナル経路の間には類似点および違いの両方があり、免疫系および中枢神経系の幾つかの細胞によりTLR4およびTLR9の両方が発現される(McKimmie and Fazakerley 2005年;Tangら、2007年)。したがって、CpGオリゴデオキシヌクレオチドは、選択された細胞集団内でTLR9の活性化を引き起こして、先天性免疫を促しTh1偏向適応免疫を誘発すると考えられる。
【0105】
この試験の1つの目的は、本発明者らにより特定された特異的化合物が、虚血性脳損傷に対するLPS誘発耐性と同じように脳の虚血損傷も低減できるかどうかを調べることであった。
【0106】
材料および方法
動物材料および条件:使用したラットは、Harlan Horst社(オランダ)から入手した近交系ウィスターハノーバーラットであった。各ラットの体重は約350〜400グラムであった。ラットは、タイプMacrolon3の標準的なオープンケージで維持した。ケージは、プラスチックカーテンの後ろの連続気流下のオープンラックに収容した。標準的な床敷はScanbur−BK社(ソレントゥナ、スウェーデン)から購入した。床敷は週に1回交換した。動物飼育室の温度は18℃〜22℃であり、実験室の周囲換気システムにより管理した。明サイクルは12時間の暗および12時間の明(06:00に点灯)であった。
【0107】
ラットにはScanbur−BK社(ソレントゥナ、スウェーデン)から購入した通常のラット食餌を与えた。給水ボトルは順化および実験期間中、必要に応じて補給した。食餌および水は適宜投与した。
【0108】
ラットはFELASA SPF状態を有し、畜舎および交換システムは、SPF状態が試験中に確実に温存されるように設計された。教育を受けた人がラットを扱った。獣医学的専門知識はLUの獣医学部から急遽入手した。動物福祉に鑑みて毎日の記録および判断を行った。
【0109】
試験化合物:IDX9010、IDX9054、IDX9059、およびIDX9074(それぞれ、表1の配列番号2、および7〜9)を、脳虚血実験ラットモデルにおける脳傷害を減少させるin vivoでの有効性について試験した。さらに、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ阻害剤[1,4−ジアミノ−2,3−ジシアノ−1,4−ビス(2−アミノフィニルチオ)ブタジエン;C181662](U0126、Sigma−Aldrich社)、およびPBS(Invitrogen社)は、それぞれ陽性および陰性対照の役割を果たした。IDX9059およびU0126の併用治療も、この試験の後の段階で使用した。IDX物質はすべてBiomers.net GmbH社(ウルム、ドイツ)により非GMP条件下で合成され、およびPBS溶液で提供された。試験化合物は貯蔵液として−20℃で保存した。U0126、および併用治療(U0126+IDX9059)を除いて、他の試験物質はすべて盲検法で与えた。
【0110】
調製:実験開始前に、化合物を室温でPBSにさらに希釈して作用濃度(1μg/μl)を調製した。濃度は、95%精度でUV分光光度法(SmartSpec(商標)300、BIO−RAD社、ハーキュリーズ、USA)を用いて調節した。
【0111】
動物実験および用量:ラットは、NO2:O2(70%:30%)と混合したイソフルラン(4.5%)により麻酔した。レーザードップラーを用いて中大脳動脈(MCA)の皮質血流をモニターした。フィラメントを内頸動脈に導入し、右MCAの血流を閉塞するまで前進させた。レーザードップラー信号(皮質血流)の80%を超える減少が閉塞を裏付けた。
【0112】
血圧、血液ガスおよび血液糖は手術中に管理した。閉塞の90分後、フィラメントを除去し、血液循環をMCAで再開させ、皮質血流を回復させた(再灌流)。閉塞後、80%を超える血流の減少、および皮質血流の高い再循環があった動物のみをこの試験に含めた。
【0113】
体温および神経学的挙動(スコア)は、手術中および再循環の0、1、2、24、48時間後に管理した。100μlの試験化合物を200μlのPBSとともに、再循環の0および24時間後にラットに腹腔内注射した。動物を手術終了の48時間後に屠殺し、脳をすばやく摘出し重炭酸塩緩衝溶液で冷却した。脳の2mm厚冠状スライス(6スライス)を調製し、および生理食塩水溶液に溶解した1%2,3,5−塩化トリフェニルテトラゾリウム(TTC;Sigma Aldrich社)で染色した。梗塞体積は、台形公式を用いて各スライスの虚血面積の数値積分法により計算し、ソフトウェアプログラムBrain Damage Calculator1.1(MB Teknikkonsult社、ルンド、スウェーデン)を用いてスライス中の全脳体積のパーセンテージで表した。
【0114】
統計:統計分析はPrism(Graphpad version4.03、サンディエゴ、CA、USA)を用いて行った。ノンパラメトリックなマン−ホイットニーt検定を用いて統計学的有意性を計算した。0.05未満のP値を統計学的に有意と見なした(*)。
【0115】
結果
特定のオリゴヌクレオチドによる虚血性細胞死に対する耐性の誘発を、ウィスターハノーバーラットでの脳虚血in vivoモデルにおいて調べた。
【0116】
この試験では合計7つの異なる群があった。合計約60ラットをこの試験で使用し、手術による致死率は30%であった。データは、手術と同時および追跡期間の両方で、実験の間中回収した。
【0117】
TTC染色後、インタクトな脳組織は明るい赤であったのに対し、傷害領域は淡い青〜白であった(図4a)。脳を切片化し、各切片を撮影し画像プログラムで分析した(方法参照)。図は脳梗塞のさまざまな側面を説明している;全梗塞領域(図4b)、境界域または選択的神経壊死(SNN)(図4c)、および虚血中心部(中心部と解釈される、図4aに示された白い領域)(図4d)。
【0118】
試験は、IDX9010(物質A)、IDX9074(物質B)、IDX9054(物質C)、IDX9059(物質D)、およびPBS(物質E)について盲検法で行ったが、U0126または併用治療については盲検法を行わなかった。図4bおよび4dに見ることができるように、物質D(IDX9059)および対照物質U0126による梗塞体積の著しい減少(35〜40%)があった。異なる物質によるSNN減少での有意な差はなかった(図4c)。
【0119】
試験の非盲検化後、この試験に導入した最後の群はIDX9059およびU0126の組み合わせであった。減少は、期待したほど付加的ではなく、各物質単独により見られた減少より少なかった。
【0120】
実験中の生理学的パラメータおよび神経学的評価の結果を記録した。生理学的パラメータに群間差はなかった(データ不図示)。しかし、神経学的評価は配列番号8[IDX9059]による改善と十分に相関した。
【0121】
結果は、脳卒中誘発後の配列番号8[IDX9059]による治療が、ポストコンディショニングの機能を果たし得、および虚血損傷に対し脳を保護し得ることを示す。
【0122】
MEK1/2阻害剤(U0126)は、梗塞サイズを30〜40%減少できることが以前に示されている(Henriksson M、2007年、Wang ZQ、2004年)。本試験では、この物質は陽性対照の役割を果たし、およびi.p.投与した場合、梗塞体積を33%減少させた。また、48時間でのU0126による改善という神経学的評価に関する良好な効果もあった。故に、この実験が他の研究者(Henrikssonら、2007年)に一致して行われたことを裏付けている。
【0123】
最近、Stevensら(2008年)は、CpG含有オリゴヌクレオチドによるプレコンディショニングが虚血損傷に対する神経保護を誘発し得ること、この耐性はTNF−アルファ依存的であることを示した。この試験で使用した4つの本発明の化合物(IDX9010、IDX9074、IDX9054、およびIDX9059)のうち、IDX9059およびIDX9074は、より良好な神経保護効果を示した。しかし、4つのオリゴヌクレオチドは以前に、定量的PCRによるTNFアルファ発現を評価するためのウィスターラット脾細胞試験に使用された。結果は、IDX9054、およびIDX9010がTNFアルファmRNA発現を誘導することができるのに対し、IDX9059、およびIDX9074はTNFアルファを誘導しないことを示した。故に、TNFアルファの他に、共同で神経保護を提供する、必要とされる他の因子があることを示唆している可能性がある。さらに、Stevensら(2008年)により行われたこの試験では、CpG含有オリゴヌクレオチドの保護効果は、これが脳卒中誘発の1〜14日前に予防的に投与された場合に見られたのみであった。本試験では、本発明の薬剤を脳卒中誘発の90分後に治療的に与え、配列番号8[IDX9059]の効力を明確に示した。
【0124】
本試験の非盲検化後、配列番号8[IDX9059]は、脳の虚血性傷害の減少に最も有効であることが判明した。陽性対照物質U0126は同様に、虚血性傷害の減少に顕著な効果を有することから、U0126および配列番号8[IDX9059]の併用治療も評価した。併用治療により得られた虚血損傷の減少は、期待したほどではなかった。この理由は不明である。しかし、2つの物質が互いの効果を拮抗することがあり得る。
【0125】
故に、このin vivo試験は、脳虚血ラットモデルでの脳卒中の治療における本発明の化合物の神経保護効果を示した。
【実施例5】
【0126】
単離灌流ラット心臓モデルにおける心筋虚血性傷害に対する免疫調節オリゴヌクレオチドの阻害効果試験
この試験の目的は、単離、灌流されたラット心臓モデルにおける虚血性心臓傷害に対する免疫調節オリゴヌクレオチドの阻害効果の可能性を調べることであった。動物試験はUlleval大学病院動物部門(オスロ、ノルウェー)で行った。
【0127】
序論
冠再灌流の短時間のエピソードにより心筋再灌流を遮断して心筋梗塞サイズを減少させる能力は、虚血ポストコンディショニング(I Post)と呼ばれる現象である心臓保護の標的として再灌流段階での関心を集めている。虚血ポストコンディショニング−誘発保護機構は十分に理解されていないが、酸化ストレスの減少、細胞間Ca2+過負荷の減少、内皮機能の改善、およびアポトーシス心筋細胞死の軽減による、致死的再灌流傷害の重要なメディエーターを標的にする手順が示されている(Yellonにおけるレビュー)。
【0128】
虚血プレコンディショニング(IPC)介入も、持続性冠状動脈閉塞の前に、非致死的心筋虚血および再灌流の1つまたは複数のエピソードに心臓をさらして実験設定での心筋梗塞サイズを減少させるのに使用した。このようなプレコンディショニングは、心臓バイパス手術前の予防的治療として有益となろう(Yellonにおけるレビュー)。ポストおよびポストコンディショニングはいずれも、心臓または脳における虚血保護を媒介する、RISK経路(再灌流損傷サルベージキナーゼ経路)での下流シグナル伝達カスケードの類似群を活性化する(Pignataro、2008年)。しかし、IPCおよびIPostはいずれも、心臓保護を達成するには心筋に直接適用される侵襲的治療を必要とし、幾つかの臨床設定では非実用的および有害となる場合がある。
【0129】
代わりのより適した戦略は、遠隔虚血プレコンディショニング(RIPC)現象に象徴されるアプローチである、心臓から離れた器官または組織に心臓保護刺激を適用することである。ある器官または組織での短い虚血および再灌流エピソードが、遠隔器官または組織での虚血−再灌流損傷のこの後の持続性傷害に対する保護を発揮する実際の機構は、現在不明である。
【0130】
オリゴデオキシヌクレオチドは、選択された細胞集団内でToll様受容体9(TLR9)の活性化を引き起こして、先天性免疫を促しTh1偏向適応免疫を誘発する。オリゴヌクレオチドのこの特性は炎症を調節し、ならびに感性症および非感症に対する保護をもたらすことができる。オリゴヌクレオチドによるTLR9の活性化は、IPostおよびIPCに似たRISK経路における一連のタンパク質キナーゼも標的にする(Sun−Hey Lee 2007年)。以前の例(例4)では、本発明者らは、オリゴヌクレオチドIDX9059が脳での虚血−再灌流損傷を減少できることを示した。したがってこの試験の1つの目的は、以前の試験で脳損傷を減少させるのに使用したオリゴヌクレオチドが、心筋虚血−再灌流中の心臓保護効果も発揮できるかどうかを調べることであった。
【0131】
材料および方法
動物材料および条件:Scanbur AS社(ニッテダル、ノルウェー)から入手したオスのウィスターハノーバーラットをこの実験で使用した。ラットはUlleval大学病院の中央動物小屋で飼育した。適正に許可され教育を受けた人がラットを扱った。福祉に関して毎日記録を取った。各ラットの体重は約250〜350グラムであった。ラットは2つの実験群に無作為に割り付けた(試験および対照、各群n=8)。
【0132】
ラットは、標準的な床敷を備える標準的なオープンケージで維持した。動物飼育室の温度は18℃〜22℃であり、実験室の周囲換気システムにより管理した(湿度55〜60%)。明サイクルは12時間の暗および12時間の明(06:00に点灯)であった。
【0133】
完全ペレット食RM3(Scanbur BK AS社、ニッテダル、ノルウェー)を適宜供給し、ラットは新鮮な飲用水ボトルに自由にアクセスした。
【0134】
試験化合物:DNAベースのオリゴヌクレオチドIDX9059(配列番号8、表1)は、Biomers.net GmbH(ウルム、ドイツ)(別表1)により非GMP条件下で合成された。化合物はPBS溶液で提供され、到着時に貯蔵液として−20℃で保存された。
【0135】
調製:実験開始前に、InDex SOPB015に従い、室温でPBS(Fluka、Sigma社)による貯蔵液のさらなる希釈により作用濃度(1μg/μl)を調製した。濃度は、95%精度でUV分光光度法(SmartSpec(商標)300、BIO−RAD社、ハーキュリーズ、USA)を用いて調節した。試験化合物は使用まで4℃で維持した。
【0136】
動物実験および用量:試験薬剤(1μg/μl)またはプラセボ(PBS、試験薬剤のビヒクル)を、心臓単離の24時間前に皮下に与えた(100μl)。実験は盲検法で行った。
【0137】
ラットを5%ペントバルビタールナトリウム(60〜80mg kg-1)の腹腔内注射により麻酔し、およびヘパリン処置した(500 IU i.p)。心臓を回収し、および灌流液(mmol/L:NaCl118.5;NaHCO325;KCl4.7;KH2PO41.2;MgSO4/7H2O1.2;糖/1H2O11.1; CaCl21.8)にKrebs Henseleit緩衝液を用いて、70mmHgの定圧で安定化のため20分間灌流した(改変Langendorffモード、37℃)。緩衝液は、95%O2および5%CO2によるガスを充填して酸素を供給し生理学的pHで維持した。心臓温度は、加熱チャンバーから水で灌流した周りを囲むガラス管により実験中一定に維持した。液体充填ラテックスバルーン(Hugo Sachs Elektronik−Harvard Apparatus GmbH社、Hugstetten、ドイツ)を左心室に挿入して、Powerlab system(AD Instruments Pty Ltd社、キャッスルヒル、NSW2154、オーストラリア)により心室圧を測定した。左心室拡張終期圧(LVEDP)を5〜10mmHgに設定し、LVEDPの変化を測定した。左心室発生圧(LVDevP=左心室収縮期圧(LVSP)−LVEDP)ならびに最大および最小の左心室圧発生(LVdp/dtmaxおよびLVdp/dtmin)を計算した。冠血流(CF)は、冠流出液の時限収集(timed collection)により測定した。不整脈は、再灌流の最初の30分間のオールオアナッシング(all or nothing)の反応(不全収縮または心室細動)としてカウントし、および心拍数(HR)として圧力曲線から評価した。心筋温度は右心室に温度プローブを挿入して測定した。
【0138】
再灌流中、虚血または不可逆的不整脈前に30分を超えてLVSP≦100mmHg、CF≦8または≧20ml分−1、HR≦220拍(1分間当たり)である心臓は、試験から除外した。
【0139】
再灌流の最後に、心臓を4枚の1mm切片および3枚の2mm切片にカットした(AgnThor’s AB社(Lidingoe、スウェーデン)によるアクリルラット脳マトリックスに固定した心臓)。2mmスライスは液体窒素で冷凍固定し、予定される後の分析用に保存した(ウェスタンブロット、リアルタイムPCR)。
【0140】
4枚の心室1mmスライス(心尖部から5〜8mm)は、PBS中1%塩化トリフェニルテトラゾリウム(TTC)で37℃、15分間インキュベートした。インキュベーション後、スライスを2枚のガラスプレートの間でやさしく押し、撮影した(Nikon社、Colorfix5400)。梗塞領域を、総面積のパーセンテージとして測定し、Adobe PhotoshopおよびScionImage(Infarct Area Calculation Macroファイル、著作権(著作権)1998 Rob Bell、Hatter Institute、UCL、UK)により計算した。
【0141】
主要評価項目としての壊死(梗塞サイズ)の拡張、および副次的評価項目としての心臓機能(LVEDP、LVSP、LVDevP、LVdp/dtmax、LVdp/dtmin、HR、不整脈、CF)を評価した。
【0142】
統計:梗塞サイズについて:スチューデントt検定、連続データの反復測定分散分析のため
【0143】
結果
IDX9059による虚血細胞死への耐性誘発を、単離ラット心臓のex vivoモデルで調べた。材料および方法に記載の通り、心臓を切除し、Longendorffモードで灌流し、虚血および再灌流エピソードにさらした。TTC染色後、心臓を切片化し、各切片を撮影し画像プログラムで分析した(方法参照)。左心室の梗塞損傷は、PBS(ビヒクル対照)で治療したラットと比べて、IDX9059で治療したラットで35%の減少を示した(図5)。再灌流中の心臓機能のさまざまな側面も調べたが、IDX9059治療動物対対照では機能データに有意な差は観察されなかった(データ不図示)。
【0144】
結果は、IDX9059によるラット皮下前治療が、全虚血性傷害の程度を著しく減少できる(ここでは35%)ことを明らかに示している。
【0145】
本発明者らは、オリゴヌクレオチドIDX9059が、脳虚血ラットモデルで虚血中心部を減少させることを以前に観察した。本試験では、単離/灌流ラット心臓モデルでのIDX9059によるラットの前治療が、耐性を増加させ、虚血損傷の程度を減少させることを見出した。
【0146】
単離心臓モデルでは、白血球による効果など、有益となり得る因子の多くが存在していない。この結果、in vivo試験は、より顕著な効果をもたらす可能性があることが期待される。
【0147】
単離心臓では、IDX9059の観察された保護は、心臓自体で開始された機構に起因する可能性がある。これは、IDX9059による前治療後、シグナル伝達および効果の観点から、プレコンディショニング様刺激による心筋細胞での分子変化に起因すると考えることが妥当である。これは、熱ショックタンパク質、核因子カッパB、タンパク質キナーゼなどのさまざまな要素により媒介され得る(Hausenloyら、2005年、および2007年、Valen G 2003年、および2005年)。
【0148】
実験は、上記のさまざまな例においてIDX9059による治療がPMN遊走を減少させることを示し、試験化合物がプレコンディショニングなどの他の機構による保護効果も発揮することを示唆する。
【実施例6】
【0149】
免疫調節オリゴヌクレオチドによる腸間膜虚血での好中球蓄積の阻害
要約
腸虚血は、腸間膜動脈閉塞によりマウスで誘発した。再灌流後、小および大腸、ならびに肺に対する傷害を評価した。
【0150】
IDX0150(配列番号13、表1)の抗炎症効果を、組織学的検査、MPOアッセイ、テトラゾリウム減少および小腸液蓄積により調べた。
【0151】
試験は、IDX0150が、ビヒクルを与えた対照動物と比べて虚血誘発の20分前に投与した場合にのみ有意な改善効果を示すことを示した。
【0152】
結果は、IDX0150が虚血における再灌流傷害の減少に有益となり得ることを示唆する。
【0153】
材料および方法
試験化合物
化合物はすべて貯蔵液として−20℃で保存し、および実験開始の2〜3日前に調製した。
【0154】
調製
オリゴヌクレオチドを、室温でPBS(Fluka Biochemika Ultra、Sigma Aldrich社、セントルイス、USA)にさらに希釈した。濃度は、所望の濃度に達するまで、95%精度でUV分光光度法(SmartSpec(商標)3000、BIO−RAD社、ハーキュリーズ、USA)を用いて調節した(InDex SOPB015)。
【0155】
動物実験
動物部門(Animal Department)
MTC動物部門はカロリンスカ研究所獣医学部により監視および監督されている。動物部門は質の高い動物施設を維持するため日常の仕事を定めている。動物試験は、非GLP認定学術研究所で実施された。
【0156】
動物
メスのBalb/cJ SPFマウス、10〜30週齢、(Jackson Laboratory(バーハーバー、メイン州、USA)由来はカロリンスカ研究所MTCのCFGR部門(ストックホルム)で飼育した)。動物をグループ化しおよび実験開始の少なくとも1週間前に順化を許可した。動物は、1年に最低2回、FELASA規則(5)による試験を受けた監視員とともに飼育した。
【0157】
畜舎
動物は、動物飼育室で21℃±3℃、および55%±15%の相対湿度で飼育した。換気システムは1時間当たり10換気を与えるように設計してあった。部屋は、12時間の明および12時間の暗のサイクルを与えるように照明した。明かりは06:00から18:00まで点灯した。
【0158】
マウスは、透明なポリカーボネート(Macrolone型III、Scanbur AB社、ソレントゥナ、スウェーデン)ケージ(床面積:810cm2)で、各ケージに8匹ずつ飼育した。
【0159】
床敷
ケージの床敷はScanbur Bedding(Scanbur AB社、ソレントゥナ、スウェーデン)であった。
【0160】
環境エンリッチメント
環境エンリッチメントのため、動物にSizzleネストまたはHappi−Mat、(Scanbur AB社、ソレントゥナ、スウェーデン)の供給を与えた。
【0161】
食餌および飲用水
完全ペレットげっ歯類食、R36((Lantmaennen社、Kimstad、スウェーデン)を適宜供給した。動物は、家庭用品質の飲用水を備えた飲用ボトルに自由にアクセスした。
【0162】
動物の識別、グループ化および治療
各ケージは、試験番号、群番号、および性別がマークされたケージカードにより識別した。動物は、パーマネントインクフェルトペンを用いて、動物番号に対応する横線で尾に個別にマークした。
【0163】
試験手順
虚血誘発および再灌流
マウスをイソフルラン(Forene(登録商標)、Abbott Scandinavia AB社、ソルナ、スウェーデン)で麻酔し、この後外科麻酔(Univentor400 麻酔ユニット、AgnTho’s AB社、Lidingoe、スウェーデン)で維持し、体温を37℃に維持する直腸サーミスタにより制御された熱電対温度計(Pharmacia AB社、ウプサラ、スウェーデン)に制御された加熱パッドの上に置いた。オペレーティング外科用実体顕微鏡(Leitz Wild社、ヴェッツラー、ドイツ)を用いて腹部に4〜5cm長の切り込みを作り、頭側(上)腸間膜動脈の位置を特定した。微小血管クランプ、Biemerクリップ、締めつけ力0.20〜0.25N、Aesculap−Werke AG社、チューリンゲン、ドイツ)を、血流を完全に閉塞(脈動の欠如および青白さにより示唆される)するように動脈の上に置いた。腹部を閉じ、生理食塩(0.9%(w/v-1 NaCl)溶液で浸したガーゼパッドを腹部の上に置いた。血流は15分後に回復した(血管での脈拍および赤みにより示唆される)。腹部を留め金または外科縫合で閉じた。マウスに2mL滅菌生理食塩水をs.c.に与えて生理学的状態を維持した。Buprenorphin(Temgesic(登録商標)、Schering−Plough Corp.社、ニュージャージ、USA)、0.05〜0.1mg/kgを鎮痛のため与えた。3時間後、動物を麻酔し、血液を眼窩神経叢から採取した。組織学的検査および他の検査のため、試料を腸および肝臓から採取した。
【0164】
薬理的治療
50μg/100μL IDX0150の皮下(s.c.)注射を、虚血誘発の20分前または再灌流の開始直後に動物の頸部に与えた。
【0165】
臨床徴候
各マウスは殺傷まで定期的に観察した。疾患、健康およびいずれかの挙動変化のすべての徴候を記録した。
【0166】
臨床パラメータ
炎症効果は炎症採点システムを用いて格付けした。腸の赤み:正常0、やや赤い1、赤い2、非常に赤い3;腸液:正常0、わずか1、多い2;動物の挙動:機敏0、不活発2。
【0167】
MPO測定のための肺および腸組織のホモジナイゼーション
肺および小腸(100〜200μg)は、腸虚血および再灌流傷害を施した、IDX0150およびPBS治療マウスから回収した。組織を、5mM EDTA(Sigma Aldrich社)およびプロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma Aldrich社)を含有する1ml RIPA緩衝液(Sigma Aldrich社、セントルイス、MO、USA)中Disperser T10(IKA(登録商標)−Werke GMBH & Co.KG社、シュタウフェン、ドイツ)を用いて30秒間氷上でホモジナイズした。試料をこの後、氷上で30分間インキュベートした後、残屑は、2ラウンドの遠心分離、10,000×g、10分間、4℃によりホモジネートから除去した。上清を回収し、等分し、および後のミエロペルオキシダーゼ(MPO)測定用に−70℃で冷凍した。MPOは、MPO ELISAキット(Hycult biotechnology社、ウーデン、オランダ)を用いて製造者の指示に従いホモジネートにおいて分析した。
【0168】
結果
虚血は、不活発および毛がけば立っているように見える重度の炎症反応を誘発した。剖検すると腸は体液を含んで肥大化し、および炎症を起こしていた(図6a)。IDX0150治療動物では、腸は炎症が少なかった(図6b)。採点システムにより、炎症を起こした動物はスコアが6.5であり、IDX0150治療をi.pで受けた動物でのスコアの低さと対照的であった(図6c)。
【0169】
ミエロペルオキシダーゼ(MPO)は、多形核好中球で多量に発現するヘムタンパク質であり、好中球浸潤および活性化のマーカーに使用される(LauおよびBaldus、2006年)。好中球は、虚血組織に浸潤する主な白血球であり、および誘発炎症に対する重要な寄与因子である。
【0170】
この試験では腸虚血および再灌流傷害マウスモデルにおける小腸および肺への好中球浸潤に対するオリゴヌクレオチド化合物IDX0150(配列番号13、表1)の効果を、ホモジナイズした組織でのMPOを測定して調べた。腸(図6d、およびe)および肺(図6f、およびg)の両組織でのMPOレベルは、PBS治療対照と比べてIDX0150治療マウスで減少した。MPOのこの減少は、化合物を虚血誘発前(図6d、およびf)および再灌流開始後(図6e、およびg)に投与した場合に見られた。MPOで観察された減少は、本発明の化合物オリゴヌクレオチドに反応した虚血組織への好中球の浸潤の減少があることを示唆する。
【0171】
これらの結果は、炎症スコアの減少による臨床結果にも反映された。
【実施例7】
【0172】
多形核細胞でのケモカイン受容体発現に対する免疫調節オリゴヌクレオチドの効果
序論
IL−8は、炎症中に好中球の動員および活性化に重要な役割を果たす強力な炎症誘発性サイトカインである。IL−8は、2つの異なる種類の受容体(CXCR1およびCXCR2)を介して好中球と反応する。IL−8への好中球の走化性は大部分がCXCR1(78%)により、残りがCXCR2により媒介される。好中球に対する別の強力な化学誘引物質は、好中球表面で発現した受容体BLT1に高親和性で結合するロイコトリエンB4(LTB4)である。この試験の目的は、本発明の化合物がCXCR1/2およびBLT1発現を減少できるか、およびこれによりPMN浸潤を減少させるかを調べることであった。
【0173】
材料および方法
試験化合物
IDX9005、IDX9010、IDX9022、IDX9030、IDX9031、IDX9045、IDX9052、IDX9054、IDX9059、IDX9074、IDX9092、IDX9095、IDX9096およびIDX0150(配列番号1〜14、表1)を、健康な多形核細胞(PMN)でのCXCR1およびCXCR2表面発現に対するこれらの効果について調べた。本発明の化合物IDX9022、IDX9052、IDX9054およびIDX9059(配列番号3、14、7および8、表1)はさらに、健康なボランティア由来のPMNにおけるBLT1表面発現に対するこれらの効果について調べた。Avecia社(マンチェスター、英国)から注文したIDX0150を除いて、オリゴヌクレオチドはすべてBiomers.net(ウルム、ドイツ)により合成された。
【0174】
調製
オリゴヌクレオチドは、500μMの貯蔵濃度に達するようUV分光光度法(SmartSpec(登録商標)3000、BIO−RAD社、ハーキュリーズ、USA)を用いてリン酸緩衝生理食塩水(PBS、Invitrogen社、カールスバッド、CA)で調整し、および使用まで−20℃で保存した。
【0175】
細胞調製およびオリゴヌクレオチドによるin vitro刺激
健康な血液ドナー由来の全血をPMNの調製に使用した。PMNは、Polymorphprep(商標)(Axis−Schield社、オスロ、ノルウェー)を用いて密度遠心分離により単離した。細胞を次いでさらにPBSで洗浄し、生存率および細胞数はトリパンブルー(Sigma Aldrich社、ストックホルム、スウェーデン)で細胞をカウントして判定した。この後、細胞は、10%加熱不活性化ウシ胎仔血清(FCS、Invitrogen社)を追加したRPMI 1640(Sigma Aldrich社)、2mM L−グルタミン、100 U/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン、10mM HEPES(Sigma Aldrich社)および5μg/mLゲンタマイシン(Invitrogen社)から成る完全細胞培地に再懸濁した。PMNは、0.5、10μMもしくは25μMの本発明の化合物、または総容量200μl/ウェルの陰性対照として培地単独とともに、濃度2×106細胞/mLで96ウェル培養組織プレート(Becton Dickinson、フランクリンレイクス、NJ)に培養した。細胞は、特に記載のない場合、5%CO2を有する加湿細胞培養インキュベーター(Thermo Scientific社、ウォルサム、MA)で37℃、3時間インキュベートした後、細胞を、下記の通りフローサイトメトリーを用いてCXCR1、CXCR2およびBLT1発現について分析した。
【0176】
CXCR1表面発現に対するオリゴヌクレオチドの効果の動力学的評価
健康な血液ドナー由来のヒトPMNを、さまざまな時点(15分、30分、1時間、2時間および3時間)に、10μMのIDX9059(配列番号8、表1)または培地単独で刺激した。細胞をこの後回収し、各時点で2%パラホルムアルデヒドで固定化した後、下記の通りフローサイトメトリーによりCXCR1発現について分析した。
【0177】
フローサイトメトリー
本発明の化合物とともにインキュベートした細胞を回収し、PBSで洗浄し、2%FCSを追加したPBSに再懸濁した。細胞は、蛍光色素標識マウスモノクローナル抗体(Becton Dickinson社、サンノゼ、CA、USA)を用いて4℃、30分間、CXCR1またはCXCR2またはBLT1とともに顆粒球マーカーCD66bを染色した。使用した抗体をアイソタイプマッチ対照(Becton Dickinson社)と比較した。PBSでの洗浄後、細胞をFACSarrayフローサイトメーター(Becton Dickinson社)により分析し、データはFACSarrayソフトウェアシステム(Becton Dickinson社)を用いて分析した。試料当たり最低15000ゲートPMNを分析した。
【0178】
クロロキンアッセイ
健康な血液ドナーから単離したPMNは、さらに3時間10μMの試験物質で刺激する前に、0.5、5および10μg/mlのクロロキン(Sigma Aldrich社)で30分間、37℃で前処理した。CXCR1およびCXCR2の表面発現を、次いで上記の通りフローサイトメトリーにより分析した。
【0179】
走化性アッセイ
PMNの走化性は、QCM(商標)3μm 24ウェル比色分析走化性アッセイ(Millipore、テメキュラ、CA)を用いて製造者の指示に従い調べた。簡単には、上記の通りPMNは健康なドナー由来の全血から調製し完全細胞培地に再懸濁した。PMNは、5%CO2を有する加湿細胞培養インキュベーター(Thermo Scientific社)で37℃、1時間、0.5、10または25μMの本発明の化合物とともに、ウェル当たり250μl細胞懸濁液を用いて、濃度1×106細胞/mLで48ウェルプレート(Becton Dickinson社)でプレインキュベートした。細胞は次いで完全細胞培地で洗浄し、細孔径3μm(Millipore社)を有する24ウェル細胞遊走プレートプレートアセンブリのトップインサートに細胞を移した。より下のチャンバーには、100ng/mlの組換えヒトIL−8(Invitrogen社)または500nM LTB4(Sigma Aldrich社)含有完全細胞培地を添加した。IDX9045を試験する1つの実験では、細胞は走化性プレートのトップインサートに添加する前に洗浄せず、この場合IL−8をIDX9045とともに、トップインサートに使用したのと同じ濃度で、より下のチャンバーに添加した。これは化合物の勾配を作り出すリスクを排除するためであった。細胞は次いで、5%CO2を有する加湿細胞培養インキュベーター(Thermo Scientific社)で37℃、3時間、フィルターを通って化学誘引物質に向かって遊走できた。この後、より下のチャンバーからの細胞、すなわち遊走細胞を細胞生存性染色WST−1とともに1時間インキュベーションして検出し、続いてマイクロプレートリーダー(Tecan,Maennedorf社、スイス)を用いて450nmで吸光度を測定して定量した。
【0180】
結果および考察
PMNは、虚血組織へ誘引される主な白血球である。ここで、好中球は、フリーラジカル、ミエロペルオキシダーゼなどのタンパク質分解酵素を遊離、および局所細胞からのサイトカイン放出を刺激して組織傷害を増大させ、炎症増加をもたらす。IL−8は、この受容体CXCR1およびCXCR2、およびLTB4は、PMN細胞表面のこの受容体BLT1に結合して、炎症部位への好中球の動員に重要な役割を果たす(Kobayashi、2008年;TagerおよびLuster、2003年)。
【0181】
この試験では、健康な血液ドナーから単離したPMN上のCXCR1、CXCR2およびBLT1の表面発現に対するオリゴヌクレオチド化合物の効果を調べた。試験物質による刺激の3時間後、本発明の化合物の幾つかは、CXCR1の平均蛍光強度(MFI)、すなわち細胞ごとに発現されるCXCR1の量を減少させた(図7a)。CXCR1発現の最大の減少は、IDX9052、IDX9054、IDX9005、IDX9030、IDX9059、IDX9022、およびIDX9045(配列番号14、7、1、4、8、3、および6、表1)により誘発され、25μMで使用した場合、MFIがそれぞれ68%、62%、61%、60%、53%、52%および30%減少した。さらに、IDX9005、IDX9022、IDX9030、IDX9052、IDX9054およびIDX9059(配列番号1、3、4、14、7および8、表1)で刺激したPMNではCXCR1+細胞のパーセンテージの若干の減少があったが、減少はMFIほど大きくはなかった(図7b)。CXCR2もまた、特にPMNをIDX9052およびIDX9054(配列番号14および7、表1)で刺激した場合に、本発明のオリゴヌクレオチド化合物に反応してダウンレギュレートされ(図7c)、それぞれCXCR2のMFIの50および36%の減少を誘発した。IDX9052およびIDX9054も、CXCR2+PMNのパーセンテージの若干の減少を誘発した(図7d)。CXCR発現の減少は用量依存的であり、最大効果は25μMのオリゴヌクレオチド化合物で見られ、および最小効果は10および0.5μMで見られた(図7e)。さらに、健康な血液ドナー由来のPMNを用いた別の実験では、IDX9074(配列番号9、表1)はCXCR1発現をダウンレギュレートすることができた(図7f)。
【0182】
CXCR1ダウンレギュレーション動態を調べるため、ヒトPMNを10μMのIDX9059(配列番号 8、表1)で15分間、30分間、1時間、2時間および3時間刺激した後、CXCR1発現をフローサイトメトリーで調べた。15分後には既に、CXCR1表面発現の若干の減少を観察することができ、2時間後にダウンレギュレーションは最大レベルに達し、3時間後はさらなる減少は見られなかった(図7g)。
【0183】
本発明の化合物IDX9052、IDX9054、IDX9059、IDX9005およびIDX9045(配列番号14、7、8、1、および6)は、CXCR1/2発現の減少にいずれも非常に効果的であり、これらはすべて、5’および/または3’末端にGフランク(G−flank)を含有するという共通点を有する。これは、この構造モチーフがオリゴヌクレオチド配列とともに、オリゴヌクレオチドによるより効果的なCXCR1/2減少能力に関連し得ることを示唆する。これをさらに裏付けため、健康な血液ドナー由来のPMNを、それぞれIDX9022およびIDX9059と同じ配列を有するが、CpGモチーフのない対照オリゴヌクレオチドIDX0480(T***TGCTTCTGCCATGCTG***T)およびIDX9134(G***GCTCTG***G)とともにインキュベートした場合、IDX0480は、IDX9022について見られたようなCXCR1表面発現を減少させることができなかったのに対し、IDX9134は、CXCR1表面発現の減少においてIDX9059と同様に強力であった(図7h)。いずれかの理論に制約されることを望むことなく、本発明者らは、これらの結果が、Gフランクを持たないIDX9022は、主にCpGモチーフによるCXCR1およびCXCR2減少効果を媒介するのに対し、Gフランクを含有するIDX9059はCpG非依存的効果を有することを示唆していると考える。
【0184】
試験物質により誘発されたCXCR表面発現の減少におけるTLR9の役割を調べるため、PMNを試験物質による刺激前にクロロキンにより前処理した。クロロキンは、エンドソーム融合および酸性化を阻害し、ならびにTLR9活性化および下流代謝シグナル伝達経路を妨げる4−アミノキノリン剤である。クロロキンは、IDX9059およびIDX9022(配列番号8および3、表1)により誘発されたCXCR1表面発現の減少を用量依存的に阻害することができた(図7i)。10μg/mlのクロロキンは、これら2つの化合物により誘発されたCXCR1発現の減少をほぼ完全に阻害した(図7i)。しかし、クロロキンは、IDX9054またはIDX9052(配列番号7および14、表1)に誘発されたCXCR1表面発現の減少を阻害することはできなかった(図7i)。これらの結果は、本発明の化合物の幾つかは、エンドソームTLR9活性化によるCXCR減少効果を媒介するのに対し(すなわちIDX9022およびIDX9059)、他の化合物は媒介しない(すなわちIDX9052およびIDX9054)ことを示唆する。
【0185】
化学誘引物質LTB4に対する受容体、BLT1の用量依存的減少は、異なる濃度(0.5、10および25μM)の本発明の化合物とともにインキュベートした後も示すことができた(図7j)。25μMで使用した場合、MFIの87%、80%、64%および57%減少が、それぞれ本発明の化合物IDX9052、IDX9054、IDX9059およびIDX9022(配列番号14、7、8および3、表1)で見られた。(図7j)。さらに、IDX9052およびIDX9054は、BLT1陽性PMNのパーセンテージを著しく減少させた(図7k)。図7jに示されている通り、5’および/または3’末端にGフランクを含有する本発明の化合物、すなわちIDX9052、IDX9054およびIDX9059(配列番号14、7および8、表1)は、Gフランクを持たないIDX9022と比べて、BLT1表面発現の減少により効果的であった。
【0186】
本発明の化合物に誘発されたCXCR1、CXCR2およびBLT1表面発現の減少が、CXCR1およびCXCR2リガンド(IL−8)またはBLT1リガンド(LTB4)へのPMNの遊走減少ももたらすかどうかを調べるため、健康な血液ドナー由来のPMNを、本発明のオリゴヌクレオチド化合物とともに1時間プレインキュベートした。細胞を次いで走化性アッセイで3時間、IL−8またはLTB4へ遊走するままにした。遊走PMN数の用量依存的減少は、両方ともIDX9022、IDX9052、IDX9054およびIDX9059(配列番号3、14、7および8、表1)とともにプレインキュベーションした後に見られ、最も効果的な化合物は、25μMでIL−8(図7l)およびLTB4(図7n)の両方へのPMN遊走を完全に阻害またはほぼ完全に阻害したIDX9052、IDX9054およびIDX9059であった。さらに、2人の健康な血液ドナー由来のPMNを用いた別の実験では、IDX9045(配列番号6、表1)は、IL−8誘発PMN遊走を用量依存的に減少させた(図7m)。
【0187】
IL−8誘発走化性での遊走PMN数は、LTB4誘発走化性でのBLT1表面発現および遊走PMN数と同様に、CXCR1および2表面発現と相関した(図7o〜q)。これは、PMN遊走の減少が受容体の表面発現の低下に起因することを示す。
【0188】
本発明者らは、オリゴヌクレオチド化合物とともにインキュベートしたPMNでのCXCR1、CXCR2およびBLT1発現の急速な減少を実証し、CXCR1発現の減少は刺激の15分間後に既に開始することが示された。好中球は最終分化細胞であり、したがって短命であることから、これは非常に重要で、迅速に誘発される免疫調節効果が望まれる理由である。Hayashiらは2003年に、GM−CSFで前処理した細胞でのみCpG DNAによるPMNでのCXCR1発現がダウンレギュレーションされることを実証した(Hayashiら、2003年)のに対し、この試験では、本発明のオリゴヌクレオチド物質は、サイトカイン前処理なしでCXCR1および2の表面発現を減少させ、強力な免疫調節特性を明確に示した。
【0189】
本発明者らは、CXCR1、2およびBLT1の表面発現の減少を実証しただけでなく、遊走の低下をもたらす、化学誘引物質IL−8およびLTB4への細胞の反応性の減少をさらに実証した。これらの結果がin vivoシナリオも反映し、この結果炎症組織へのPMNの走化性低下をもたらすことを予測する理由がある。
【0190】
CXCR1、CXCR2およびBLT1の表面発現の低下、ならびに化学誘引物質IL−8およびLTB4への細胞の反応性の減少は、本発明の化合物で処理した健康なPMNで観察された。オリゴヌクレオチド化合物のこれらの特性は、PMNの特性および挙動に影響を与える本発明の化合物の効力を明らかに示している。
【実施例8】
【0191】
喘息およびMS患者由来の多型核細胞でのケモカイン受容体発現に対する免疫調節オリゴヌクレオチドの効果
序論
PMNは、虚血だけでなく、多くの他の炎症性障害の病因にも関与し、したがってPMN機能を阻害することは、多くの炎症性疾患で有益となるであろう。PMN、すなわち好酸球および好中球による気道の細胞炎症は、喘息の特性である。PMNはまた、多発性硬化症(MS)の病因に関与することも記載されている。この試験の目的は、本発明の化合物が、健康な個人由来のPMNだけでなく、この場合では喘息およびMSに例示される炎症状態を有する患者由来のPMNでも、CXCR1/2およびBLT1発現を減少させることができるかを調べることであった。
【0192】
材料および方法
試験化合物
IDX9022、IDX9052、IDX9054およびIDX9059(配列番号3、14、7および8、表1)を、喘息およびMS患者由来のPMNでのCXCR1、CXCR2およびBLT1表面発現に対する効果について調べた。オリゴヌクレオチドはすべて、Biomers.net社(ウルム、ドイツ)により合成された。
【0193】
調製
オリゴヌクレオチドは、UV分光光度法(SmartSpec(登録商標)3000、BIO−RAD社、ハーキュリーズ、USA)を用いて500μMの貯蔵濃度に達するようリン酸緩衝生理食塩水(PBS、Invitrogen社、カールスバッド、CA)で調整し、および使用まで−20℃で保存した。
【0194】
細胞調製およびオリゴヌクレオチドによるin vitro刺激
喘息およびMS患者由来の全血をPMNの調製に使用した。PMNを単離し、カウントし、実施例7の材料および方法に記載した完全細胞培地に再懸濁した。PMNは、0.5、10μMもしくは25μMのオリゴヌクレオチド、または総容量200μl/ウェルでの陰性対照として培地単独とともに、濃度2×106細胞/mLで96ウェル培養組織プレート(Becton Dickinson社、フランクリンレイクス、NJ)に培養した。細胞は、5%CO2を有する加湿細胞培養インキュベーター(Thermo Scientific社、ウォルサム、MA)で37℃、3時間インキュベートした後、細胞を、フローサイトメトリーを用いてCXCR1、CXCR2およびBLT1発現について分析した。
【0195】
フローサイトメトリー
オリゴヌクレオチドとともにインキュベートした細胞を回収し、PBSで洗浄し、2%FCSを追加したPBSに再懸濁した。細胞は、実施例7の材料および方法に記載した通りCXCR1もしくはCXCR2またはBLT1とともに顆粒球マーカーCD66bを染色した。細胞を次いでFACSarrayフローサイトメーター(Becton Dickinson社)により分析し、データはFACSarrayソフトウェアシステム(Becton Dickinson社)を用いて分析した。試料当たり最低15000ゲートPMNを分析した。
【0196】
結果および考察
PMNは、炎症反応中の組織損傷を媒介する主な細胞の一つである。PMNは、血液から、局所産生された化学誘引物質に反応して炎症部位へ遊走する。PMN遊走の2つの主なメディエーターは、CXCケモカインIL−8およびロイコトリエンLTB4である。この試験では、本発明者らは、本発明の化合物が炎症性疾患患者由来のPMN表面のIL−8に対する受容体、すなわちCXCR1およびCXCR2、ならびにLTB4に対する受容体、すなわちBLT1をダウンレギュレートできるかを調べようと試みた。
【0197】
MS患者由来の血液の使用は、本発明の化合物による刺激後のPMNにおけるCXCR1、CXCR2およびBLT1の用量依存的減少を示唆した(図8a〜f)。同様の結果が、喘息患者由来の血液を使用した場合に見られた(図8g〜i)。減少は大部分が、MFI、すなわち細胞ごとに発現される受容体の量に対して見られた。IDX9052、IDX9054およびIDX9059(配列番号8、7および14、表1)は、25μMで使用した場合、MS患者由来のPMN上のCXCR1に対し、それぞれ45%、56%および42%のMFIの減少を誘発した(図8a)。さらに、IDX9052、IDX9054およびIDX9059は、それぞれ、CXCR2の表面発現を76%、58%および39%(図8c)、ならびにBLT1の表面発現を50%、47%および26%減少させた(図8e)。喘息患者由来のPMNを本発明の化合物で刺激した場合、CXCR1に対するMFIの減少は、IDX9052、IDX9054およびIDX9059(図8g)でそれぞれ、56%、71%および62%であった。IDX9052、IDX9054およびIDX9059はまた、それぞれ、喘息患者由来のPMN上のCXCR2に対するMFIを69%、50%および37%(図8h)、ならびにBLT1に対するMFIを85%、77%および64%(図8i)減少させた。健康なドナー由来のPMNで見られた通り、フランキングオリゴ−G配列、すなわちIDX9052、IDX9054およびIDX9059(配列番号14、7および8、表1)を含有する本発明の化合物は、MSおよび喘息患者由来のPMNにおいてもCXCR1、CXCR2およびBLT1表面発現の減少に最も効果的であった。
【0198】
CXCR1、CXCR2およびBLT1の表面発現の減少は、炎症性障害患者、すなわち喘息およびMS患者由来のPMNを本発明の化合物で処理した場合にも観察された。オリゴヌクレオチド化合物のこれらの特性は、炎症を起こした組織へのPMNの浸潤を減少させるうえで有用となり得る。
【0199】
本発明は、本発明者らに現在既知の最良の形態を成す、好ましい実施形態に関して記載されているが、さまざまな変更および修正は、当業者に明らかであるように、本明細書に添付された特許請求の範囲に記載の通り、本発明の範囲を逸脱することなく行われ得ることが理解されるべきである。
【0200】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号8[IDX9059];
配列番号14[IDX9052];
配列番号7[IDX9054];
配列番号6[IDX9045];
配列番号1[IDX9005];
配列番号9[IDX9074];
配列番号3[IDX9022];
配列番号2[IDX9010];
配列番号4[IDX9030];
配列番号10[IDX9092];
配列番号11[IDX9095];
配列番号12[IDX9096];
配列番号15[IDX0480];および
配列番号16[IDX9134]
から成る群から選択される単離および実質的に精製されたオリゴヌクレオチド。
【請求項2】
少なくとも1つのヌクレオチドがリン酸骨格修飾を有する、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項3】
リン酸骨格修飾がホスホロチオエートまたはジチオリン酸修飾である、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドを含む医薬組成物。
【請求項5】
オリゴヌクレオチドが、
配列番号8[IDX9059];
配列番号14[IDX9052];
配列番号7[IDX9054];
配列番号6[IDX9045];
配列番号1[IDX9005];
配列番号9[IDX9074];
配列番号3[IDX9022];
配列番号2[IDX9010];
配列番号4[IDX9030];および
配列番号13[IDX0150]
から成る群から選択される、炎症部位への多形核細胞の動員および/または遊走を減少させる医薬製剤を製造するためのオリゴヌクレオチドの使用。
【請求項6】
炎症部位への多形核細胞の前記減少した動員および/または遊走が、受容体CXCR1およびCXCR2の少なくとも1つのダウンレギュレーションの結果である、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
炎症部位への多形核細胞の前記減少した動員および/または遊走が、受容体BLT1のダウンレギュレーションの結果である、請求項5に記載の使用。
【請求項8】
前記オリゴヌクレオチドが、
配列番号8[IDX9059];
配列番号14[IDX9052];および
配列番号7[IDX9054]
の中で選択される、請求項5に記載の使用。
【請求項9】
オリゴヌクレオチドが以下の投与経路、すなわち皮下、腹腔内、粘膜、腸内、経口、静脈内、胃内、食道、口腔内、鼻腔内および肺内投与の一つを介して与えられる、請求項5に記載の使用。
【請求項10】
オリゴヌクレオチドが炎症性疾患の治療におけるステップとして投与される、請求項5に記載の使用。
【請求項11】
オリゴヌクレオチドが心筋梗塞に罹患している、または罹患していることが疑われる患者に投与される、請求項5に記載の使用。
【請求項12】
オリゴヌクレオチドが、脳卒中に罹患している、または罹患していることが疑われる患者に投与される、請求項5に記載の使用。
【請求項13】
オリゴヌクレオチドが、外傷もしくは熱傷を負っている、または手術を受ける予定の患者に投与される、請求項5に記載の使用。
【請求項14】
オリゴヌクレオチドが、塞栓の除去の前、後もしくは実質的に同時に、または血栓溶解剤の投与の前もしくは後に塞栓症を有する患者に投与される、請求項5に記載の使用。
【請求項15】
オリゴヌクレオチドが、ドナーからの摘出前のin situ、レシピエントへの移植前の輸送中、または血流回復前もしくは回復時のin vivoのどちらかで、移植用に指定された臓器に投与される、請求項5に記載の使用。
【請求項16】
ヒト患者の臓器における炎症部位への多形核細胞の動員および/または遊走を減少させる方法であって、
配列番号8[IDX9059];
配列番号14[IDX9052];
配列番号7[IDX9054];
配列番号6[IDX9045];
配列番号1[IDX9005];
配列番号9[IDX9074];
配列番号3[IDX9022];
配列番号2[IDX9010];
配列番号4[IDX9030];および
配列番号13[IDX0150]
から成る群から選択されるオリゴヌクレオチドが、前記患者の前記臓器に局所投与または全身投与される、多形核細胞の動員および/または遊走を減少させる方法。
【請求項17】
臓器における炎症部位への多形核細胞の動員および/または遊走を減少させる方法であって、オリゴヌクレオチドが、前記臓器の再灌流の前、同時、または後で前記臓器に局所投与または前記患者に全身投与され、オリゴヌクレオチドが、
配列番号8[IDX9059];
配列番号14[IDX9052];
配列番号7[IDX9054];
配列番号6[IDX9045];
配列番号1[IDX9005];
配列番号9[IDX9074];
配列番号3[IDX9022];
配列番号2[IDX9010];
配列番号4[IDX9030];および
配列番号13[IDX0150]
から成る群から選択される、多形核細胞の動員および/または遊走を減少させる方法。
【請求項18】
炎症部位への多形核細胞の前記減少した動員および/または遊走が、受容体CXCR1およびCXCR2の少なくとも1つのダウンレギュレーションの結果である、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
炎症部位への多形核細胞の前記減少した動員および/または遊走が、受容体BLT1のダウンレギュレーションの結果である、請求項16または17に記載の方法。
【請求項20】
前記オリゴヌクレオチドが、
配列番号8[IDX9059];
配列番号14[IDX9052];および
配列番号7[IDX9054]
の中で選択される、請求項16または17に記載の方法。
【請求項21】
臓器における血流障害または遮断に罹患しているまたは罹患していることが疑われる、および治療が予定されている患者を調整する方法であって、前記臓器における炎症部位への多形核細胞の動員および/または遊走を減少させることができるオリゴヌクレオチドが、予定された治療の前、同時、または後で前記患者に投与され、オリゴヌクレオチドが、
配列番号8[IDX9059];
配列番号14[IDX9052];
配列番号7[IDX9054];
配列番号6[IDX9045];
配列番号1[IDX9005];
配列番号9[IDX9074];
配列番号3[IDX9022];
配列番号2[IDX9010];
配列番号4[IDX9030];および
配列番号13[IDX0150]
から成る群から選択される、調整する方法。
【請求項22】
前記臓器が心臓であり、前記臓器における炎症部位への多形核細胞の動員および/または遊走の前記減少が、虚血性傷害を減少させ、続発性再灌流傷害を予防または軽減するのに有効である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記続発性再灌流傷害が、血栓溶解剤の投与による心臓への血流の回復に続いて起こる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記続発性再灌流傷害が、外科的介入、例えばバイパス手術による心臓への血流の回復に続いて起こる、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記続発性再灌流傷害が、バルーン血管形成術による心臓への血流の回復に続いて起こる、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記続発性再灌流傷害が、移植のレシピエントにおける移植された臓器への血流の外科的回復に続いて起こる、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記臓器が脳であり、前記虚血性傷害が続発性再灌流損傷である、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
前記続発性再灌流損傷が、血栓溶解剤の投与による脳への血流の回復に続いて起こる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記臓器が肝臓、少なくとも1つの腎臓、腸またはこの部分、少なくとも1つの肺またはこの部分の中で選択され、前記虚血性傷害が続発性再灌流損傷である、請求項21に記載の方法。
【請求項30】
オリゴヌクレオチドが以下の投与経路、すなわち全身投与、好ましくは経皮投与、腹腔内投与、腸内投与を含めた粘膜投与、経口投与、胃内投与、食道投与、口腔内投与、鼻腔内投与、および肺内投与の一つを介して与えられる、請求項21に記載の方法。
【請求項31】
心筋梗塞の治療のためのアジュバント法であって、
配列番号8[IDX9059];
配列番号14[IDX9052];
配列番号7[IDX9054];
配列番号6[IDX9045];
配列番号1[IDX9005];
配列番号9[IDX9074];
配列番号3[IDX9022];
配列番号2[IDX9010];
配列番号4[IDX9030];および
配列番号13[IDX0150]
から成る群から選択されるオリゴヌクレオチドが、血栓溶解剤の投与の前、後または同時に投与される、アジュバント方法。
【請求項32】
脳卒中の治療のためのアジュバント法であって、
配列番号8[IDX9059];
配列番号14[IDX9052];
配列番号7[IDX9054];
配列番号6[IDX9045];
配列番号1[IDX9005];
配列番号9[IDX9074];
配列番号3[IDX9022];
配列番号2[IDX9010];
配列番号4[IDX9030];および
配列番号13[IDX0150]
から成る群から選択されるオリゴヌクレオチドが、血栓溶解剤の投与の前、後または同時に投与される、アジュバント方法。
【請求項33】
移植臓器の保存および/または輸送のための技術的解決策であって、前記解決策が、虚血性傷害の予防および/または軽減に十分な量で、多形核細胞の特性および挙動に影響する、例えば多形核細胞の内皮接着ならびに動員および/または遊走を抑制することができるオリゴヌクレオチドを含み、前記オリゴヌクレオチドが、
配列番号8[IDX9059];
配列番号14[IDX9052];
配列番号7[IDX9054];
配列番号6[IDX9045];
配列番号1[IDX9005];
配列番号9[IDX9074];
配列番号3[IDX9022];
配列番号2[IDX9010];
配列番号4[IDX9030];および
配列番号13[IDX0150]
の中から選択される技術的解決策。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図6−3】
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【図6−4】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図7−3】
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【図7−4】
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【図7−5】
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【図7−6】
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【図7−7】
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【図7−8】
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【図7−9】
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【図7−10】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図8−3】
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【図8−4】
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【図8−5】
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【図4−1】
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【公表番号】特表2012−507307(P2012−507307A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535537(P2011−535537)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【国際出願番号】PCT/SE2009/051227
【国際公開番号】WO2010/053430
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(508003011)インデックス・ファーマシューティカルズ・アクチエボラーグ (12)
【Fターム(参考)】