説明

多心ケーブルコネクタ

【課題】冷却媒体を循環させるポンプ機構、冷却媒体の熱を吸熱する冷却機構を、大きなスペースを必要とすることなく電気コネクタに一体的に組付けることができ、単一品として取扱うことが可能な多心ケーブルコネクタを提供する。
【解決手段】冷却媒体流路を備えた多心ケーブル用のコネクタ10であって、コネクタ筐体12に冷却媒体を循環させるポンプ機構16と、冷却媒体を冷却する冷却機構19とを有し、ポンプ機構のポンプ本体部17はコネクタ筐体12内に収納され、ポンプ機構16はコネクタ筐体12の外部に配設されたポンプ機構の駆動部18から駆動力が供給されて作動する構成とする。なお、ポンプ機構16をマグネットスターラで構成し、コネクタ外部からの磁力により回転されるようにし、冷却機構19は、コネクタ筐体から外部に露出した放熱部を有する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の信号線を持つ信号ケーブルに沿って冷却媒体流路を備えている多心ケーブルコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
医療の分野で人体の断層検査、また、その他各種の構造物の欠陥検出等に超音波を用いた検査装置が利用されている。この超音波を用いた検査装置は、超音波を対象物にあててその反射した超音波を映像化することで、対象物内部の状態を非破壊的に調査することができる画像検査法の一種である。特に、医療の分野では、放射線被爆なく軟部組織の各臓器の動きがリアルタイムで観察できることから、その利用が増大している。
【0003】
この超音波による医療検査方法は、圧電振動子を備えた超音波探触子を人体に当てて超音波を投射し、その反射波を受信する検査方法である。圧電振動子は、人体に当たる超音波探触子の先端部分に収納配置され、送受信回路もノイズの影響を受けないように超音波探触子の近くに設けられる。したがって、超音波探触子の患者に当たる部分の温度が高くなりやすく、患者に火傷を負わせたりする恐れがあり、操作者の扱いにも支障をきたすこととなる。最近は、さらなる高性能、高機能化が求められており、多チャンネル化が進むと探触子先端部の発熱量も更に大きくなる。
【0004】
このため、医療用の超音波探触子においては、熱伝導部材を用いて探触子の後方側に放熱させるという程度では、十分な放熱ができないという問題がある。これに対して、超音波探触子を冷却媒体で強制的に冷却するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
図4は、上記特許文献1に開示の超音波探触子の概略を説明する図である。この超音波探触子1は、探触子ケースの外面に冷却ジャケット2を巻き付け、外部に設けられた冷却器5から循環チューブ3aを経て冷却ジャケット2に冷却媒体を送り込み、超音波探触子1から熱を受けた冷却媒体は、循環チューブ3bを経て冷却器5に戻すように構成されている。循環チューブ3a,3bは、クランプ7で信号ケーブル4に沿わせて冷却器5に接続され、チューブ内の冷却媒体は冷却器5のポンプにより循環される。また、信号ケーブル4は電気コネクタ6により超音波診断装置本体に接続される。
【特許文献1】特開2005−27737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図4に示すように、超音波探触子のような冷却対象物に対して、冷却媒体を強制的に循環させることにより、冷却能力を高め温度上昇の抑制を図ることができる。しかし、冷却媒体を循環させるためのポンプ、冷却媒体の熱を吸熱するための冷却器が必要となるため、制御装置本体側の必要スペースが増加する。また、冷却器(ポンプを含む)と電気コネクタとは別々に設けられているため、その取扱い性がよくない。
【0007】
本発明は上述した実情に鑑みてなされたもので、冷却媒体を循環させるポンプ機構、冷却媒体の熱を吸熱する冷却機構を、大きなスペースを必要とすることなく電気コネクタに一体的に組付けることができ、単一品として取扱うことが可能な多心ケーブルコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による多心ケーブルコネクタは、冷却媒体流路を備えた多心ケーブル用のコネクタであって、コネクタ筐体に冷却媒体を循環させるポンプ機構と、冷却媒体を冷却する冷却機構とを有し、ポンプ機構のポンプ本体部はコネクタ筐体内に収納され、ポンプ機構はコネクタ筐体の外部に配設されたポンプ機構の駆動部から駆動力が供給されて作動する構成とする。
また、前記のポンプ機構をマグネットスターラで構成し、コネクタ外部からの磁力により回転されるようにし、前記の冷却機構は、コネクタ筐体から外部に露出した放熱部を有する構成とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、冷却媒体を循環させるポンプ機構のポンプ本体部のみを、電気コネクタ内に収納し、ポンプ駆動部を電気コネクタとは分離した外部に設置されるようにしているので、電気コネクタの形状をあまり大きくすることなく、ポンプ機構を組付けることができる。また、冷却媒体の冷却機構もコネクタ筐体から表面積が増加された熱放散性のよい放熱部を露出させる簡単な構成で、あまり大きなスペースを要することなく組付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図により本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の概略を説明する図、図2は本発明によるコネクタの外観の一例を示す図である。図中、10は多心ケーブルコネクタ、11は多心ケーブル、11aは信号線、12はコネクタ筐体、12aは組立ねじ、13はコネクタ端子部、14はケーブル導入スリーブ、15a,15b,15cはチューブ、16はポンプ機構、17はポンプ本体部、18はポンプ駆動部、19は冷却機構、20は放熱プレート、20aは放熱部、21は制御装置を示す。
【0011】
図1に示すように、本発明の多心ケーブルコネクタ10は、一般的な電気コネクタと同様に2分割されたコネクタ筐体12に、多心ケーブル11の接続端部分をケーブル導入スリーブ14を介して導入し、コネクタ筐体12内に設置されたコネクタ端子部13に信号線11aを接続して構成される。また、多心ケーブル11に沿って、冷却媒体流路を形成する冷却媒体用のチューブが配されていて、図1には、その往路側のチューブ15aの終端部と復路側のチューブ15bの終端部がコネクタ筐体12内に導入した状態で示してある。なお、図2に示すように、2分割されたコネクタ筐体12は、組立ねじ12aにより結合されて閉塞される。
【0012】
なお、冷却媒体を循環させるチューブは、特許文献1に開示のように多心ケーブル11の外周に沿う形態で設けてもよいが、信号線と冷却媒体媒用のチューブを一体的に束ね、これを共通の外被で覆った複合ケーブルとした形態で設けられていてもよい。この冷却媒体用のチューブは、コネクタ筐体12内において、往路用のチユ−ブ15aは、ポンプ機構16の出口ポートに繋がれ、復路用のチューブ15bは、冷却機構19の入口ポートに繋がれる。
【0013】
ポンプ機構16は、ポンプ本体部17とポンプ駆動部18からなり、ポンプ本体部17はコネクタ筐体12内に収納され、ポンプ駆動部18はコネクタ筐体12の外(例えば、制御装置21)に設置され、ポンプ本体部17は、多心ケーブルコネクタ10とともに、ポンプ駆動部18から離れたところに移動させることができる。他方、ポンプ駆動部18は制御装置21側に固定的に設置され、多心ケーブルコネクタ10が制御装置21に装着されたときに、コネクタ筐体12内に設置されたポンプ本体部17と関連づけられて、ポンプ駆動部18でポンプ本体部17が駆動される。
【0014】
ポンプ本体部17とポンプ駆動部18との関連付けは、磁力を用いた磁気的結合、あるいは、コネクタの装着後にキー手段、磁気吸着等により機械的結合させる形態が考えられる。ポンプ本体部17は、内部に冷却媒体液が入れられた容器に、例えば、回転又は往復動する駆動子を配して構成され、ポンプ駆動部18によって駆動される。駆動子が回転又は往復動することにより、栄脚媒体液は攪拌されて流動し、ポンプ本体部17の出口ポートから押出されて往路用のチューブ15aに送出される。
【0015】
本発明のポンプ機構の特徴は、上述したようにコネクタ内部に流体を循環させるポンプ本体部を持つが、その駆動源であるポンプ駆動部をコネクタ外部に備える。したがって、ポンプ本体部の駆動力は、コネクタ外部から供給される。また、ポンプ本体部とポンプ駆動部を非接触(例えば、磁気的結合等)の状態とする形態、又は、多心ケーブルコネクタが制御装置に装着されたときにポンプ本体部にポンプ駆動部が接触(例えば、キー結合、磁気吸着等)の形態がある。
【0016】
冷却機構19は、例えば、熱伝導性のよい材料で形成された基板あるいはシートに蛇行状の密閉通路を設けた放熱プレート20が用いられる。この放熱プレート20は、コネクタ筐体12によって支持されるが、一部はコネクタ筐体12から外部に露出されて、放熱部20aとして放熱を促進するように構成される。このため、少なくともコネクタ筐体12から露出している放熱部20aは、放熱フィンなどの放熱表面積を増加させるのが望ましい。このため、放熱プレート20は、熱伝導性のよい金属で形成される。また、放熱性を高めるために、例えば、アルミの金属多孔体からなる放熱プレート20を用いることも好ましい。
【0017】
コネクタ筐体12から露出している放熱部20aは、自然冷却で冷却媒体の熱を放散する形態であってもよいが、制御装置21内に冷却ファンを備えている場合は、その冷却風の一部が放熱部20aに当たるように案内して、強制冷却するのが望ましい。
放熱プレート20に設けた密閉通路の一方の入口ポートには、冷却媒体の復路用のチューブ15bが繋がれ、他方の出口ポートには循環用のチューブ15cが繋がれる。循環用のチューブ15cの他端は、ポンプ本体部17の入口ポートに繋がれる。
【0018】
超音波振動子等の発熱部からの熱を吸収した冷却媒体は、復路用のチューブ15bを経て制御装置21側(コネクタ側)に戻され、放熱プレート20にて吸熱され冷却される。冷却された冷却媒体は、循環用のチューブ15cを経てポンプ本体部17に送られ、再び往路用のチューブ15aに送出される。
【0019】
上述のように、冷却媒体を循環させるポンプ機構16として、ポンプ本体部17とポンプ駆動部18が分離可能な構成のものを用い、ポンプ本体部17のみをコネクタ筐体12内に収納する。これにより、多心ケーブルコネクタ10の形状を大幅に増大することなく、コネクタに冷却媒体を循環させるポンプ機構16をコンパクトに組込むことができる。
また、冷却媒体の冷却機構19として、コネクタ筐体12の外面に放熱部20aが露出する形状の放熱プレート20を用いる。これにより、前記と同様に多心ケーブルコネクタ10の形状を大幅に増大することなく、コネクタに冷却媒体の冷却機構19をコンパクトに組込むことができる。
【0020】
図3は、本発明によるポンプ機構を、一般的には液体の攪拌に用いられるマグネットスターラで構成する一例を示す図である。図中、30はポンプ駆動部、31は回転磁石、32はモータ、33はポンプ本体部、34は容器、34aは出口ポート、34bは入口ポート、35は冷却媒体液、36はマグネット回転子、37は攪拌羽根を示す。
【0021】
マグネットスターラを用いたポンプ機構は、ポンプ本体部とポンプ駆動部を非接触の状態として、構成することができる。本発明で言うポンプ駆動部30とポンプ本体部33とで構成され、ポンプ駆動部30は、コネクタ筐体12の外部に非接触であるが近接するように設置される。このポンプ駆動部30は、回転磁石31と、この回転磁石を駆動するモータ32からなり、回転磁石31は、例えば、N極とS極が交互に付された円盤形状で形成され、モータ32により回転駆動され回転方向に交番磁界を生成する。
【0022】
ポンプ本体部33は、コネクタ筐体12内にポンプ駆動部30の回転磁石31に近接するような位置に取付固定される。このポンプ本体部33は、冷却媒体液35が溜められる容器34と、攪拌羽根37が付されたマグネット回転子36とで構成される。また、容器34は,非磁性の材料を用いて密封形状で形成され、出口ポート34aと入口ポート34bを有している。そして、出口ポート34aには、図1で説明した往路用のチューブ15aが繋がれ、入口ポート34bには、循環用のチューブ15cが繋がれる。
【0023】
上記のように構成されたポンプ機構は、ポンプ駆動部30の回転磁石31がモータ32により回転されると、コネクタ筐体12を挟んでポンプ本体部33のマグネット回転子36が回転される。このマグネット回転子36が回転すると、攪拌羽根37により容器34内に溜められている冷却媒体液35が攪拌揺動され、その振動や遠心力で出口ポート34aから押出され、往路用のチューブ15aを経て発熱部に送出される。
【0024】
この他、ポンプ機構として、ピストンを用いたピストンポンプや隔膜を用いたダイヤフラムポンプ等の往復動ポンプ等の各種のポンプを用いることができる。なお、隔膜を用いた往復動ポンプとしては、例えば、コネクタ筐体に収納するポンプ本体部に周縁部を波型にして可撓性を持たせた密閉膜を設け、この密閉膜を外部から直接的または間接的に往復動させる機構を用いることにより実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の概略を説明する図である。
【図2】本発明の多心ケーブルコネクタの外観の一例を示す図である。
【図3】本発明によるポンプ機構をマグネットスターラで構成する一例を示す図である。
【図4】従来技術を説明する図である。
【符号の説明】
【0026】
10…多心ケーブルコネクタ、11…多心ケーブル、11a…信号線、12…コネクタ筐体、12a…組立ねじ、13…コネクタ端子部、14…ケーブル導入スリーブ、15a,15b,15c…チューブ、16…ポンプ機構、17…ポンプ本体部、18…ポンプ駆動部、19…冷却機構、20…放熱プレート、20a…放熱部、21…制御装置、30…ポンプ駆動部、31…回転磁石、32…モータ、33…ポンプ本体部、34…容器、34a…出口ポート、34b…入口ポート、35…冷却媒体液、36…マグネット回転子、37…攪拌羽根。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却媒体流路を備えた多心ケーブル用のコネクタであって、コネクタ筐体に冷却媒体を循環させるポンプ機構と、前記冷却媒体を冷却する冷却機構とを有し、前記ポンプ機構のポンプ本体部は前記コネクタ筐体内に収納され、前記ポンプ機構は前記コネクタ筐体の外部に配設された前記ポンプ機構の駆動部から駆動力が供給されて作動することを特徴とする多心ケーブルコネクタ。
【請求項2】
前記ポンプ機構はマグネットスターラで構成され、コネクタ外部のからの磁力により回転されることを特徴とする請求項1に記載の多心ケーブルコネクタ。
【請求項3】
前記冷却機構は、前記コネクタ筐体から外部に露出した放熱部を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の多心ケーブルコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−330507(P2007−330507A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−165804(P2006−165804)
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】