説明

多成分コーティング材料をスプレーするための装置

多成分コーティング材料をスプレーするためのこの装置は、可動部(6)を有する少なくとも一つのロボット(1)と、導電性の成分を有するコーティング材料とを、電気的に絶縁された或いは低導電性の少なくとも一つの第二成分とともに有している。可動部(6)は、少なくとも一つの静電スプレーヤ(8)を有している。装置は、第一に、回路(11)と一時的に接続させるための手段(71)を備えたメインタンク(7)と、第二に、前記或いは各第二成分を連続的に供給するための供給回路(10、101、102)を有している。回路(11)は、第一成分を供給するとともに、前記接続手段が接続されていないときに高電圧に昇圧されるものである。メインタンク(7)および前記或いは各第二成分供給回路(10、101、102)は、ロボット(1)の可動部(6)によって保持されるとともにスプレーヤに供給されるために接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多成分コーティング材料をスプレーするための装置に関し、この多成分コーティング材料は、少なくとも一つの第二成分とともに、導電性の第一成分を有する。本発明の意味において、用語“第二成分”は、多成分コーティング材料を形成するために第一成分に対して加えられる成分のために使用される。
【背景技術】
【0002】
欧州特許出願公開第1473090号(EP−A−1473090)は、二成分コーティング材料をスプレーするための静電スプレー装置の使用を開示している。その装置では、その二成分はスプレーヤに供給される前に静的ミキサによって混合され、ミキサにはギアポンプの補助が与えられる。そのような装置を使用すると、スプレー用材料が、例えばたまたま、水溶性塗料の場合にように低抵抗率を有するときに問題が生じる。そのような環境下では、高電圧まで昇圧されるスプレーヤと、コーティング材料を構成する成分を供給する接地回路との間のいかなる短絡も回避することが適切である。洩れ電流が許容可能であることを保証するために、長さおよび断面積の大きな絶縁ダクトを使用することが必要であり、それによって、許容できないコーティング材料の損失をもたらす。
【特許文献1】欧州特許出願公開第1473090号明細書
【発明の開示】
【0003】
本発明は、特にこれらの欠点を是正しようとするものであり、コーティング材料を構成する成分を供給するスプレーヤと回路との間の絶縁を保証することを可能にする多成分コーティング材料をスプレーするための装置を提供することによって達成される。
【0004】
この精神において、本発明は多成分コーティング材料をスプレーするための装置に関し、このコーティング材料は導電性の第一成分と電気的に絶縁された或いは低導電性の少なくとも一つの第二成分とを有している。この装置が特徴としていることは、この装置が、第一に、静電スプレーヤをも有しているロボットの可動部によって保持されたメインタンクと、第二に、前記或いは各第二成分を連続的に供給するための供給回路を有していることである。このタンクは、前記第一成分を供給するための回路と一時的に接続するための手段を備えているとともに、前記接続手段が接続されないときは高電圧に昇圧される。前記メインタンクおよび前記或いは各供給回路は、前記可動部によって保持されるとともに前記スプレーヤに供給するために接続される。
【0005】
本発明によれば、導電性の第一成分を供給するためのスプレーヤと回路との間の電気絶縁は保証されるが、それは、第一成分を供給する回路がスプレーの段階の間、高電圧になったロボットの部分から物理的に分離されるからである。前記或いは各第二成分の供給回路は、第二成分の低導電率性ゆえに、第二成分源を高電圧から絶縁する。
【0006】
有利な本発明の他の特徴に従い、以下を挙げる。
・前記或いは各第二成分の供給回路は、接地電位に保たれる。
・前記或いは各第二成分の供給回路は、ピストンタンクを有している。
・前記或いは各第二成分の供給回路は、ギアポンプを有している。
・メインタンクは、ピストンタンクである。
・メインタンクのピストンの面積と第二成分供給回路のタンクの面積との比率は、第一成分と第二成分の流量比率とほぼ等しい。
・前記或いは各第二成分供給回路は、第二成分の流量および/又はコーティング材料の総流量を確認するための装置を含んでいる。前記装置は、有利には、前記スプレーヤへの第二成分の流量を抑制するための狭窄と、前記狭窄を介した水頭損失を決定するための手段とを含んでいる。
・少なくとも一つのミキサは、前記メインタンクから延びているダクトと、前記或いは各第二成分供給回路との間の分岐点から下流に配置される。前記ミキサは、好ましくは、前記スプレーヤのインジェクタキャリアに収容される。前記或いは各ミキサは、有利には、静的ミキサである。
・ロボットは、調整可能な高電圧源に接続される。高電圧源は、前記スプレーヤがスプレーしている間以外の期間においてスイッチオフされるのに適している。
【0007】
本発明の特徴および利点は、例によって純粋に与えられるとともに付随の図を参照してなされる、本発明に従ったスプレー装置の実施態様の以下の記載で明らかにされる。
【0008】
図1および2に示された装置において、ロボット1は、塗装用物品、特には自動車の車体部分3を運搬するコンベヤー2に近接して配置される。ロボット1は、多軸タイプであり、コンベヤー方向X−X'に対して平行に延びるガイド5上で可動のスタンド4を有している。アーム6は、スタンド4によって支持されており、互いに回動可能に連結される複数のセグメント6a、6b、および6cを有している。スタンド4は、ほぼ垂直な軸Z−Z'の周りで互いに回動可能に連結される二つの部分4aおよび4bで構成される。
【0009】
アーム6のセグメント6cは、タンク7、回転スプレーヤ8、およびベースプレート9を有するアセンブリを支持する。ベースプレート9は、中に形成されたダクトを有しており、このダクトはタンク7をスプレーヤ7へと接続するものであり、そのダクトの一つが図1および2に参照番号72で示されている。
【0010】
スプレーヤ8は、静電タイプであり、調整可能な高電圧ジェネレータ(図示されず)に接続される。ジェネレータは、スプレーヤ8がスプレーしている間以外はスイッチオフされる。
【0011】
タンク7に含まれる材料は、多成分コーティング材料の第一成分、例えば水溶性ベースである。このベースは、導電性である。すなわち、低い抵抗率を示し、水の抵抗率と同程度の大きさを有している。したがって、高電圧に直接昇圧されることには適しておらず、1メガオーム・センチメートル(MΩ.cm)より小さい、好ましくは1キロオーム・センチメートル(kΩ.cm)より小さい抵抗率を示す。
【0012】
第二タンク10は、セグメント6cに近接してロボット1上に設置されて、ベースプレート9に形成されたダクトを介してスプレーヤ8に接続される。これらのダクトの一つが図1および2に参照番号102で示されている。タンク10は、第二成分、例えば、硬化剤或いは触媒のような電気的に絶縁された添加剤を収容するためのものである。ベースと添加剤との所定の割合での混合は、スプレー用の多成分コーティング材料を作り出す働きをする。
【0013】
添加剤は、10メガオーム.センチメートル(MΩ.cm)よりも大きな抵抗率を示すという意味では、電気的に絶縁されているか或いは低導電性である。
【0014】
図1の配置において、スプレーヤ1は、タンク7および10からくる成分を混合することによって得られる多成分コーティング材料を車体3上にスプレーするために使用される。
【0015】
タンク7は、その外面に、ロボット1が設置される場所である塗装室Cの仕切り12の固定位置に設けられたコネクタ11と協働するためのコネクタ71が設けられている。コネクタ11は、ダクト111によってコーティング材料のベースを変更するためのユニット112に接続され、従って、ロボット1に来る次の車体部分3にスプレーされるべき材料の性質に応じて、コネクタ11にコーティング材料のための別タイプのベースを供給することが可能になる。
【0016】
従って、タンク7が、図2に示されるように、コネクタ11に面しているとき、タンク7はコーティング材料のための導電性ベースで満たされる。
【0017】
スプレーヤに水溶性ベースを供給することに関しては、この装置は、欧州特許出願公開第0274322号(EP−A−0274322)の技術的教示を全て組み込む。
【0018】
タンク10は、ダクト101によって、比較的大きな容量のタンクのような、添加剤のソースSに接続される。添加剤供給回路は、高電圧に、或いは浮遊電位に或いは中間電位に昇圧される。変形としておよび記載された例で組み入れたように、タンク10およびダクト101は、スプレーの段階においても、添加剤供給回路が接地電位に維持されるように設計される。そのスプレーの段階では、スプレーヤはコーティング材料を供給されるとともに、スイッチオン中の高電圧ジェネレータに接続されている。
【0019】
添加剤が絶縁性或いは低導電性であるという事実によって、対応する回路101、10、102は周囲と異なる電位に昇圧されることが可能になる。特に、ソースSは高電圧に昇圧されるスプレーヤ8の部分と異なる電位になる。
【0020】
多成分コーティング材料を形成するために複数の添加剤がベースに加えられるとき、前記添加剤のそれぞれに対して供給回路が設けられる。
【0021】
図3に示されるように、タンク7および10は、電気ステッピングモータM7およびM10によって制御されるピストンを有するタンクである。タンク7は、コネクタ71がコネクタ11と協働している間に満たされる。タンク10は、ダクト101を介して連続的に満たされる。二つのバルブ73および103は、タンク7および10を満たすための遮断バルブの機能を果たす。
【0022】
多成分コーティング材料をスプレーする段階の間、タンク7および10はそれぞれ、対応する成分をスプレーヤ8にダクト78を介して注入する。ダクト78は、タンク7からくるダクト72とタンク10からくるダクト102との間の合流点Jから始まる。モータM7は、ベースをダクト78およびスプレーヤ8へダクト72を介して注入するために、タンク7のピストン75を作動させる。同時に、モータM10には、添加剤をダクト78およびスプレーヤ8へダクト102を介して注入するために、タンク10のピストン107を作動させる。この二成分をダクト78およびスプレーヤ8へ注入するための遮断バルブの働きをさせるため、二つのバルブ77および107がそれぞれダクト72および102に設けられている。
【0023】
二つのピストンタンクを有するこの装置によって、したがって、混合用成分を、制御された方法で計量することができる。特に、ピストン75の面積S75とピストン105の面積S105との比率は、多成分コーティング材料のベースと添加剤との混合比率、すなわち、ベースと添加剤とに要求される体積流量の比率にほぼ等しい。ベースを含んでいるタンク7のピストン75の面積S75は、特に、添加剤を含んでいるタンク10のピストン105の面積S105よりも大きい。そのような面積の相違は、簡素化の理由から図3には示されていない。ピストン75および105の移動速度も、成分の計量を最適化するために調整される。
【0024】
さらに、添加剤の流量およびコーティング材料のスプレーヤ8への総流量を制御するために、ダクト102に狭窄13が設けられている。圧力を測定するために狭窄13から下流および上流の二つのセンサ15および16を使用することによって、計算ユニット17により狭窄13を通過する水頭損失を決定することが可能となり、したがって、添加剤の粘性が既知である場合は、添加剤の流量値が正しいかを確認することが可能となる。
【0025】
センサ16によって実行される圧力の測定によって、ダクト103とスプレーヤ8のインジェクタ84からの大気圧下にある出口との間の水頭損失の値を決定することも可能となる。混合物の粘性は既知であるので、コーティング材料の総流量の値を確認することが可能である。これによって、第一に、過渡状態下でこれらの流量を調整することが可能となり、第二に、定常状態下でこれらを制御することが可能となる。
【0026】
変形として、センサ15、16およびユニット17が予め較正されている場合は、混合物の成分の粘性を知ることなしに確認することができる。
【0027】
要素13から17は、任意の適切なタイプの流量計に置き換えられる。そのような環境下で、センサ16は、混合材の総流量を確認できるように、確保される。
【0028】
ベースおよび添加剤はベースプレート9を通過して、スプレーヤ8で混合され、その後それによってできた多成分材が車体3上にスプレーされる。ベースおよび添加剤は、合流点Jから下流に位置するとともにスプレーヤ8のインジェクタキャリア83内に収容される少なくとも一つのミキサ14によって混合される。より正確には、ベースおよび添加剤はまずスプレーヤ8のボディ81を通過して、それから一連の静的ミキサ14を通過するように方向付けられる。記載される例において、つまり図4の矢印Fによって表されるように、ベースおよび添加剤は、三つの連続した静的ミキサ14を通過する。静的ミキサ14は、ベースおよび添加剤の均一な混合が保証されるように、一連の交互配置された螺旋物、バッフル、および格子によって構成される。結果として生成されるスプレー用多成分コーティング材料に対応した混合物は、次に、インジェクタ84およびスプレーヤ8のボウル85へと通過する。ボウル35は、図4に一部示されているように、スプレーキャップ87と同様、ロータ86に取り付けられている。多成分コーティング材料は、回転するボウル85から車体3上にスプレーされる。
【0029】
したがって、上記の装置によって可能となることは、第一に、スプレーヤ8と導電性ベースを供給するための回路11との電気絶縁を保証することであり、第二に、スプレー用材料を構成するベースおよび添加剤の最適な混合を達成することである。インジェクタキャリア83に少なくとも一つのミキサ14を置くことによって、混合された材料がそこを通して流れる装置の部品点数を制限することができる。したがって、事故の場合、例えば、誤った分量が計量された場合、インジェクタキャリア83およびインジェクタ84だけの変更が必要となる。
【0030】
記載された実施態様では、添加剤供給回路は、添加剤をスプレーヤ8に注入するためのピストンタンクを有している。変形として、添加剤は、ギアポンプによってスプレーヤに注入されることもできる。
【0031】
本発明は、多軸ロボットに関連して上記に記載されている。しかしながら、第一成分のためのタンクおよび第二成分を供給するための少なくとも一つの回路がロボットの可動部に置かれて取り付けられる場合には、本発明はロボットの種類と無関係に適応させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】多成分コーティング材料をスプレーするために使用されている本発明によるスプレー装置の概略図である。
【図2】図1の装置を使用して多成分コーティング材料の第一成分を含んだタンクを補充している間の図1に類似する図である。
【図3】図1の細部IIIに対応した成分供給回路を示す簡易化された略図である。
【図4】図1の細部IVに対応した装置部分を示す、部分的に横断面である簡易化された略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多成分コーティング材料をスプレーするための装置であって、前記コーティング材料は、導電性の第一成分と、電気的に絶縁された或いは低導電性の少なくとも一つの第二成分とを有しており、
第一に、静電スプレーヤ(8)をも有するロボット(1)の可動部によって保持されるメインタンク(7)と、
第二に、前記或いは各第二成分を連続的に供給するための供給回路(10、101、102)とを有し、
前記タンクは、前記第一成分を供給するための回路(11)と一時的に接続させるための手段を備えているとともに、前記接続手段が接続されていないときに高電圧に昇圧され、
前記メインタンク(7)および前記或いは各供給回路(10、101、102)は、前記可動部によって保持されるとともに前記スプレーヤに供給するために接続されることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記或いは各第二成分供給回路(10、101、102)は、接地電位に維持されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記或いは各第二成分供給回路(10、101、102)は、ピストンタンク(10)を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記或いは各第二成分供給回路(10、101、102)は、ギアポンプを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。
【請求項5】
前記メインタンク(7)はピストンタンクであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
メインタンク(7)および第二成分供給回路のタンク(10)のピストン(75、105)の面積(S75、S105)の比率は、前記第一成分および第二成分の流量の比率にほぼ等しいことを特徴とする請求項3および5に記載の装置。
【請求項7】
前記或いは各第二成分供給回路(10、101、102)は、前記第二成分の流量および/又はコーティング材料の総流量を確認するためのデバイス(13、15〜17)を含むことを特徴とする請求項1から6に記載の装置。
【請求項8】
前記デバイスは、前記スプレーヤ(8)への前記第二成分の流れを抑えるための狭窄(13)と、前記狭窄を介した水頭損失を決定するための手段(15〜17)とを含むことを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
少なくとも一つのミキサ(14)が、前記メインタンク(7)からくるダクト(72)と前記或いは各第二成分供給回路(10、101、102)との間の合流点(J)から下流に配置され、
前記ミキサは、好ましくは、前記スプレーヤ(8)のインジェクタキャリア(83)に収容されることを特徴とする請求項1から8に記載の装置。
【請求項10】
前記或いは各ミキサ(14)は、静的ミキサであることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記ロボット(1)は、調整可能な高電圧源に接続され、この高電圧源は前記スプレーヤ(8)がスプレーしている間以外はスイッチオフされるのに適していることを特徴とする請求項1から10に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−508670(P2009−508670A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530572(P2008−530572)
【出願日】平成18年9月18日(2006.9.18)
【国際出願番号】PCT/FR2006/002128
【国際公開番号】WO2007/034058
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(302002258)サム テクノロジーズ (6)
【Fターム(参考)】