説明

多指ハンドユニットおよびロボット

【課題】骨格フレームの曲げ剛性およびリンク部の収納スペースを維持しながらリンク部の小型化を図ることが可能な多指ハンドユニットを提供する。
【解決手段】この多指ハンドユニット1は、複数の指部10、20および30を備え、少なくとも指部10は、内部に収納部141dが配置される中空の骨格フレーム141を有する根元リンク部14と、根元リンク部14を回動させる関節駆動部11とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多指ハンドユニットおよびロボットに関し、特に、複数の指部を備える多指ハンドユニットおよびロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の指部を備える多指ハンドユニットが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、中実の骨格フレームを有するリンク部と、リンク部を回動させるアクチュエータ(関節駆動部)とを含む複数の指部を備える多指ハンドユニットが開示されている。この多指ハンドユニットのリンク部では、中実の骨格フレームと骨格フレームを取り囲むカバーとが設けられ、それらに挟まれた間の部分がアクチュエータのアンプ部を収納する収納部になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−208213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の多指ハンドユニットでは、中実の骨格フレームと骨格フレームを取り囲むカバーとの間に収納部が配置されているので、中実の骨格フレームの曲げ剛性を維持した状態で、リンク部の収納スペースを小さくすることなくリンク部を小型化することが困難である。すなわち、中実の骨格フレームの断面形状を小さくしてリンク部を小型化する場合には、中実の骨格フレームの曲げ剛性が小さくなってしまう。その一方、中実の骨格フレームの断面形状をそのままにカバーのみを小型化する場合には、リンク部の収納スペースが小さくなってしまう。したがって、上記特許文献1の多指ハンドユニットでは、骨格フレームの曲げ剛性およびリンク部の収納スペースを維持しながらリンク部の小型化を図ることができないという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、骨格フレームの曲げ剛性およびリンク部の収納スペースを維持しながらリンク部の小型化を図ることが可能な多指ハンドユニット、および、そのような多指ハンドユニットを備えるロボットを提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面における多指ハンドユニットは、複数の指部を備え、複数の指部の少なくとも1つは、内部に収納部が配置される中空の骨格フレームを有するリンク部と、リンク部を回動させる関節駆動部とを含む。
【0008】
この発明の第1の局面による多指ハンドユニットでは、上記のように、複数の指部の少なくとも1つに、内部に収納部が配置される中空の骨格フレームを有するリンク部を設けることによって、中実の(中空ではない)骨格フレームとは異なり、骨格フレームが収納部の外側に配置されるので、骨格フレームをより外側に広げて配置することができる。これにより、リンク部に生じる所定方向の曲げモーメントに対する骨格フレームの断面の高さを大きくすることができるので、その分、骨格フレームの曲げ剛性を高めることができる。このように骨格フレームの曲げ剛性を高めることができるので、骨格フレームの曲げ剛性を維持しながら骨格フレームを薄肉化することができる。これにより、骨格フレームの曲げ剛性を維持した状態で骨格フレームの薄肉化により骨格フレームの配置領域を小さくすることができ、かつ、中空の骨格フレームの内部全体を収納部とすることができる。したがって、この多指ハンドユニットでは、骨格フレームの曲げ剛性およびリンク部の収納スペースを維持しながらリンク部の小型化を図ることができる。さらに、この多指ハンドユニットでは、骨格フレームを薄肉化することによって、骨格フレームの熱抵抗を低減することができるので、骨格フレームの放熱性を向上させることができる。
【0009】
この発明の第2の局面におけるロボットは、アーム部と、アーム部の先端部に設けられ、複数の指部を含む多指ハンドユニットとを備え、複数の指部の少なくとも1つは、内部に収納部が配置される中空の骨格フレームを有するリンク部と、リンク部を回動させる関節駆動部とを有する。
【0010】
この発明の第2の局面によるロボットでは、上記のように、複数の指部の少なくとも1つに、内部に収納部が配置される中空の骨格フレームを有するリンク部を設けることによって、中実の(中空ではない)骨格フレームとは異なり、骨格フレームが収納部の外側に配置されるので、骨格フレームをより外側に広げて配置することができる。これにより、リンク部に生じる所定方向の曲げモーメントに対する骨格フレームの断面の高さを大きくすることができるので、その分、骨格フレームの曲げ剛性を高めることができる。このように骨格フレームの曲げ剛性を高めることができるので、骨格フレームの曲げ剛性を維持しながら骨格フレームを薄肉化することができる。これにより、骨格フレームの曲げ剛性を維持した状態で骨格フレームの薄肉化により骨格フレームの配置領域を小さくすることができ、かつ、中空の骨格フレームの内部全体を収納部とすることができる。したがって、この多指ハンドユニットを備えるロボットでは、骨格フレームの曲げ剛性およびリンク部の収納スペースを維持しながらリンク部の小型化を図ることができる。さらに、このロボットでは、骨格フレームを薄肉化することによって、骨格フレームの熱抵抗を低減することができるので、骨格フレームの放熱性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態による多指ハンドユニットを備えるロボットの全体構成を示した概略図である。
【図2】本発明の第1実施形態による多指ハンドユニットの構成を示した平面図である。
【図3】本発明の第1実施形態による多指ハンドユニットの構成を示した側面図である。
【図4】本発明の第1実施形態による多指ハンドユニットの指部を示した斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態による多指ハンドユニットの指部を示した平面図である。
【図6】図5の400−400線に沿った骨格フレームの断面図である。
【図7】図5の500−500線に沿った骨格フレームの断面図である。
【図8】本発明の第1実施形態による多指ハンドユニットのサーボアンプモジュールを示した斜視図である。
【図9】本発明の第1実施形態による多指ハンドユニットのサーボアンプ・通信モジュールを示した斜視図である。
【図10】本発明の第1実施形態による多指ハンドユニットの構成を示したブロック図である。
【図11】本発明の第2実施形態による多指ハンドユニットの構成を示したブロック図である。
【図12】本発明の第3実施形態による多指ハンドユニットの骨格フレームを示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
(第1実施形態)
まず、図1〜図10を参照して、本発明の第1実施形態による多指ハンドユニット1を備えたロボット100の構成について説明する。
【0014】
ロボット100は、図1に示すように、本発明の第1実施形態による多指ハンドユニット1と、アーム部2とを備えている。また、ロボット100は、壁面や床面などの設置面に基台3を介して取り付けられている。
【0015】
アーム部2は、第1アームリンク2a、第2アームリンク2b、第3アームリンク2c、第4アームリンク2d、第5アームリンク2e、第6アームリンク2fおよびフランジ2gが基台3側から先端に向かって順に連結されることによって構成されている。また、アーム部2には、各アームリンクを回動させる第1アクチュエータ211、第2アクチュエータ221、第3アクチュエータ231、第4アクチュエータ241、第5アクチュエータ251、第6アクチュエータ261および第7アクチュエータ271が設けられている。
【0016】
具体的には、第1アームリンク2aは、第1アクチュエータ211を介して基台3に連結されている。また、第1アームリンク2aは、第1アクチュエータ211の駆動力により設置面に対して垂直な方向(X方向)に延びる回動軸211a回りに回動可能に構成されている。また、第2アームリンク2bは、第2アクチュエータ221を介して第1アームリンク2aに連結されている。また、第2アームリンク2bは、第2アクチュエータ221の駆動力により回動軸211aに対して直交する方向(図1,図2ではY方向)に延びる回動軸221a回りに回動可能に構成されている。
【0017】
第3アームリンク2cは、回動軸221aに対して直交する回動軸231a回りに回動可能に構成されている。第4アームリンク2dは、回動軸231aに対して直交する回動軸241a回りに回動可能に構成されている。第5アームリンク2eは、回動軸241aに対して直交する回動軸251a回りに回動可能に構成されている。第6アームリンク2fは、回動軸251aに対して直交する回動軸261a回りに回動可能に構成されている。そして、フランジ2gは、回動軸261aに対して直交する回動軸271a回りに回動可能に構成されている。
【0018】
また、多指ハンドユニット1は、アーム部2のフランジ2gに取り付けられている。次に、多指ハンドユニット1の構成について詳細に説明する。
【0019】
多指ハンドユニット1は、図2および図3に示すように、3つの指部10、20および30を備えている。また、多指ハンドユニット1は、指部10および20と、指部30との間に対象物を挟み込むことによって対象物を把持するように構成されている。また、指部10、20および30は、ともに手甲部40に取り付けられている。具体的には、指部10および20は、それぞれ、後述の関節駆動部11および21が手甲部40の突出部40aの下面(図3のZ2方向側の表面)に取り付けられている。また、指部30は、手甲部40の突出部40aの下方において後述の関節駆動部31が前面(図3のX1方向側の表面)に取り付けられている。
【0020】
また、指部10は、手甲部40から指先に向かって順に配置された関節駆動部11、12および13を含んでいる。関節駆動部11、12および13は、ともにフィードバック制御可能なサーボモータにより構成されている。また、関節駆動部11および12は、根元リンク部14により互いに連結されている。また、関節駆動部12および13は、中間リンク部15により互いに連結されている。また、関節駆動部13には、指先側に延びるように指先センサ部16が取り付けられている。なお、関節駆動部11は、本発明の「第1関節駆動部」の一例であり、関節駆動部12は、本発明の「第2関節駆動部」の一例である。また、根元リンク部14は、本発明の「リンク部」の一例である。
【0021】
また、関節駆動部11は、根元リンク部14を手甲部40に対して図2の場合、図1のZ方向(図1参照)を回転軸として回動可能に構成されている。また、関節駆動部12は、中間リンク部15を根元リンク部14に対して上下方向(図3のZ方向)に回動可能に構成されている。また、関節駆動部13は、指先センサ部16を中間リンク部15に対して上下方向(図3のZ方向)に回動可能に構成されている。すなわち、関節駆動部12および13は、それぞれ、中間リンク部15および指先センサ部16を指背(指腹)側から指腹(指背)側に回動させることが可能である。
【0022】
また、図4および図5に示すように、指部10の根元リンク部14および中間リンク部15は、それぞれ、骨格フレーム141および151を含んでいる。また、指部10の根元リンク部14(中間リンク部15)は、骨格フレーム141(151)が関節駆動部11(12)および関節駆動部12(13)に取り付けられることによって関節駆動部11(12)および関節駆動部12(13)を互いに連結している。
【0023】
また、骨格フレーム141および151は、ともに放熱性の高いアルミニウムにより構成されている。また、骨格フレーム141および151は、指背側(図4のZ1方向側)および指腹側(図4のZ2方向側)から見て、ともに略U字形状に形成されている。詳細には、骨格フレーム141(151)は、2箇所で屈曲されて根元側壁部141a(151a)、指先側壁部141b(151b)、側壁部141c(151c)を形成している。すなわち、骨格フレーム141(151)は、関節駆動部11(12)に取り付けられる根元側壁部141a(151a)と、関節駆動部12(13)に取り付けられる指先側壁部141b(151b)と、指部10の側部に配置され、根元側壁部141a(151a)および指先側壁部141b(151b)を連結する側壁部141c(151c)とにより主として構成されている。これにより、骨格フレーム141(151)は、根元側壁部141a(151a)、指先側壁部141b(151b)および側壁部141c(151c)により取り囲まれる収納部141d(151d)を有する中空形状に形成されている。また、側壁部141c(151c)は、指部10の根元リンク部14(中間リンク部15)の側部において外面を構成している。なお、側壁部141cは、本発明の「壁部」の一例である。
【0024】
また、骨格フレーム141(151)は、図4および図5に示すように、指背側(図4のZ1方向側)、指腹側(図4のZ2方向側)および側部において収納部141d(151d)を開放する1つの開口部141e(151e)を有している。これにより、1つの開口部141e(151e)により収納部141d(151d)が広い範囲で開放されるので、収納部141d(151d)に収納される後述のサーボアンプモジュール17(サーボアンプ・通信モジュール18)のメンテナンスを容易に行うことが可能である。また、開口部141eおよび151eは、互いに同じ側の側部を開放するように形成されている。具体的には、開口部141eおよび151eは、指部10に並列して配置された指部20側とは反対の外側(図2、図4および図5のY2方向側)の側部を開放するように形成されている。
【0025】
また、図6および図7に示すように、骨格フレーム141および151は、ともに人間の指の厚みと略同じ大きさの高さh(約10mm〜15mm)を有している。また、骨格フレーム141および151は、ともに薄肉状に形成されており、肉厚t1(約2mm)を有している。
【0026】
また、根元側壁部141a(151a)および指先側壁部141b(151b)は、図6に示すように、指部10の縦断方向(図4〜図6のX方向)の断面において指背側から指腹側に延びるように形成された略矩形形状の断面形状を有している。また、側壁部141c(151c)は、図7に示すように、指部10の横断方向(図4、図5および図7のY方向)の断面において指背側から指腹側に延びるように形成された略矩形形状の断面形状を有している。
【0027】
また、図4に示すように、根元リンク部14および中間リンク部15は、それぞれ、開口部141eおよび151eを覆うカバー部142および152を有している。また、カバー部142および152は、ともに放熱性の高いアルミニウムにより構成されている。また、カバー部142(152)は、骨格フレーム141(151)よりも薄い約1mmの肉厚を有している。また、カバー部142(152)は、指背側カバー142a(152a)および指腹側カバー142b(152b)を含んでいる。指背側カバー142a(152a)は、開口部141e(151e)の指背側の部分および側部の指背側の略半分の部分を覆うように指先側(図4のX1方向側)から見て略L字形状に形成されている。また、指腹側カバー142b(152b)は、開口部141e(151e)の指腹側の部分および側部の指腹側の略半分の部分を覆うように指先側(図4のX1方向側)から見て略L字形状に形成されている。すなわち、指背側カバー142a(152a)および指腹側カバー142b(152b)により、開口部141e(151e)の全体が覆われる。
【0028】
また、指背側カバー142a(152a)および指腹側カバー142b(152b)は、ともに骨格フレーム141(151)に固定的に取り付けられるように構成されている。具体的には、指背側カバー142a(152a)は、骨格フレーム141(151)の指背側の四隅において図示しないネジ部材により骨格フレーム141(151)に固定的に取り付けられるように構成されている。また、指腹側カバー142b(152b)は、骨格フレーム141(151)の指腹側の四隅において図示しないネジ部材により骨格フレーム141(151)に固定的に取り付けられるように構成されている。
【0029】
また、収納部141dおよび151dは、それぞれ、サーボアンプモジュール17およびサーボアンプ・通信モジュール18を収納するように構成されている。サーボアンプモジュール17は、図8および図10に示すように、関節駆動部11を駆動するためのサーボアンプ基板171と、関節駆動部12を駆動するためのサーボアンプ基板172とを有している。なお、サーボアンプ基板171は、本発明の「第1アンプ部」の一例であり、サーボアンプ基板172は、本発明の「第2アンプ部」の一例である。
【0030】
また、サーボアンプ基板171(172)は、図10に示すように、関節駆動部11(12)の回動角度を検知するエンコーダ11a(12a)に電気的に接続されている。また、図8に示すように、サーボアンプ基板171(サーボアンプ基板172)は、互いに電気的に接続された3つのサーボアンプ回路171a(172a)により主として構成されている。3つのサーボアンプ回路171a(172a)は、それぞれ、対応する関節駆動部を駆動するための電流を生成するモータドライブ回路、モータドライブ回路を制御するためのモータ制御回路およびエンコーダ11a(12a)による検知結果を処理するためのエンコーダ演算処理回路である。これら3つのサーボアンプ回路171a(172a)は、互いに指部10の高さ方向(Z方向)に積層するように配置されている。また、サーボアンプ基板171および172は、互いに指部10の高さ方向に重なるように配置されている。また、サーボアンプ基板171および172は、互いにフレキシブル基板173により電気的に接続されている。
【0031】
また、サーボアンプモジュール17の指背側(図4および図8のZ1方向側)の表面および指腹側(図4および図8のZ2方向側)の表面には、それぞれ、熱伝導シート174が2枚ずつ取り付けられている。熱伝導シート174の厚みは、サーボアンプモジュール17と熱伝導シート174とを合わせた高さが骨格フレーム141の高さhよりも若干(約1mm〜2mm)大きくなるように調整されている。また、熱伝導シート174は、厚み方向において弾性変形可能に構成されている。これにより、カバー部142が熱伝導シート174に当接した状態で熱伝導シート174を押圧するように、骨格フレーム141にカバー部142を取り付けることが可能となる。また、サーボアンプモジュール17は、図10に示すように、手甲部40に設けられたサーボ制御部41に電気的に接続されている。
【0032】
また、サーボ制御部41は、指部10、20および30の各関節駆動部に対してフィードバック制御を行うように構成されている。また、サーボ制御部41は、手甲部40の外部に設けられた図示しない上位制御部からの指示に基づいて各関節駆動部を制御するように構成されている。上位制御部は、指部10、20および30の各関節駆動部に対する多軸制御および互いに協調して駆動させる協調制御を行うようにサーボ制御部41に指示を送信する。また、手甲部40には、サーボ制御部41と、指部10、20および30全てのサーボアンプモジュール17およびサーボアンプ・通信モジュール18とに電力を供給する電源回路42が設けられている。また、手甲部40は、放熱性の高いアルミニウムにより構成されている。
【0033】
サーボアンプ・通信モジュール18は、図9および図10に示すように、関節駆動部13を駆動するためのサーボアンプ基板181と、指先センサ部16による検知結果を取得するアナログ入力基板182とを有している。また、図10に示すように、サーボアンプ基板181は、関節駆動部13の回動角度を検知するエンコーダ13aに電気的に接続されている。また、図9に示すように、サーボアンプ基板181は、互いに電気的に接続された3つのサーボアンプ回路181aにより主として構成されている。3つのサーボアンプ回路181aは、それぞれ、上記3つのサーボアンプ回路171aと同様に、モータドライブ回路、モータ制御回路およびエンコーダ演算処理回路である。3つのサーボアンプ回路181aは、互いに指部10の高さ方向(Z方向)に積層するように配置されている。
【0034】
また、アナログ入力基板182は、互いに電気的に接続された2つの通信回路182aにより主として構成されている。また、アナログ入力基板182は、指先センサ部16により出力されるアナログデータをデジタルデータに変換するように構成されている。また、アナログ入力基板182により変換されたデジタルデータは、フレキシブル基板183を介してシリアル通信によりサーボアンプ基板181に伝達される。また、2つの通信回路182aは、互いに指部10の高さ方向(Z方向)に積層するように配置されている。また、サーボアンプ基板181およびアナログ入力基板182は、互いに指部10の高さ方向に重なるように配置されている。また、サーボアンプ基板181およびアナログ入力基板182は、互いにフレキシブル基板183により電気的に接続されている。
【0035】
また、サーボアンプ・通信モジュール18の指背側(図4および図9のZ1方向側)の表面には、熱伝導シート184が2枚取り付けられている。熱伝導シート184の厚みは、サーボアンプ・通信モジュール18と熱伝導シート184とを合わせた高さが骨格フレーム151の高さhよりも若干(約1mm〜2mm)大きくなるように調整されている。また、熱伝導シート184は、厚み方向において弾性変形可能に構成されている。これにより、カバー部152が熱伝導シート184に当接した状態で熱伝導シート184を押圧するように、骨格フレーム151にカバー部152を取り付けることが可能となる。また、サーボアンプ・通信モジュール18は、図10に示すように、手甲部40に設けられたサーボ制御部41に電気的に接続されている。
【0036】
指先センサ部16は、対象物に接触した際の外力を検知するように構成されている。また、指先センサ部16は、検知結果をアナログデータとしてアナログ入力基板182に出力するように構成されている。
【0037】
また、指部20および30は、ともに上記指部10と同様の構成を有している。具体的には、指部20(30)の関節駆動部21(31)、22(32)および23(33)は、それぞれ、指部10の関節駆動部11、12および13に対応している。また、指部20(30)の根元リンク部24(34)、中間リンク部25(35)および指先センサ部26(36)は、それぞれ、指部10の根元リンク部14、中間リンク部15および指先センサ部16に対応している。
【0038】
第1実施形態では、上記のように、内部に収納部141dが配置される中空の骨格フレーム141を有する根元リンク部14を指部10に設けることによって、骨格フレーム141が収納部141dの外側に配置されるので、骨格フレーム141をより外側に広げて配置することができる。これにより、根元リンク部14に生じる指腹側からの外力による曲げモーメントに対する骨格フレーム141の断面の高さhを大きくすることができるので、その分、骨格フレーム141の曲げ剛性を高めることができる。このように骨格フレーム141の曲げ剛性を高めることができるので、骨格フレーム141の指腹側からの外力に対する曲げ剛性を維持しながら骨格フレーム141を薄肉化することができる。これにより、骨格フレーム141の曲げ剛性を維持した状態で骨格フレーム141の薄肉化により骨格フレーム141の配置領域を小さくすることができ、かつ、中空の骨格フレーム141の内部全体を収納部141dとすることができる。したがって、この多指ハンドユニット1では、骨格フレーム141の曲げ剛性および根元リンク部14の収納スペースを維持しながら根元リンク部14の小型化を図ることができる。さらに、この多指ハンドユニット1では、骨格フレーム141を薄肉化することによって、骨格フレーム141の熱抵抗を低減することができるので、骨格フレーム141の放熱性を向上させることができる。
【0039】
また、第1実施形態では、上記のように、骨格フレーム141により指部10の外面を構成する。これによって、骨格フレーム141を指部10の外面を構成するカバー(筐体)として用いることができるので、骨格フレーム141の外側にカバー(筐体)を別途設ける場合に比べて、根元リンク部14をより小型化することができる。
【0040】
また、第1実施形態では、上記のように、骨格フレーム141に、指背側および指腹側に収納部141dを開放する開口部141eを設ける。これによって、収納部141dに収納されるサーボアンプモジュール17のメンテナンスを開口部141eを介して行うことができるので、サーボアンプモジュール17のメンテナンスを行いやすくすることができる。
【0041】
また、第1実施形態では、上記のように、骨格フレーム141を、指背側および指腹側から見て、略U字形状に形成する。これによって、指背側と指腹側と一方の側部側とが開放された骨格フレーム141が形成されるので、収納部141dに収納されるサーボアンプモジュール17に対して指背側、指腹側および一方の側部側から容易にメンテナンスを行うことができる。
【0042】
また、第1実施形態では、上記のように、指部10の骨格フレーム141の開口部141eを、他の指部20が配置される側とは反対側(図2、図4および図5のY2方向側)の側部を開放するように形成する。これによって、他の指部20が配置されない側のより広い作業スペースを確保しやすい側からサーボアンプモジュール17のメンテナンスを行うことができるので、サーボアンプモジュール17のメンテナンスをより行いやすくすることができる。
【0043】
また、第1実施形態では、上記のように、骨格フレーム141の開口部141eを覆うように骨格フレーム141に取り付けられるカバー部142を設ける。これによって、収納部141dに収納されるサーボアンプモジュール17が露出されるのを抑制することができるので、埃や塵などの混入に起因してサーボアンプモジュール17に不具合が生じるのを抑制することができる。また、カバー部142が開口部141eを覆うように骨格フレーム141に取り付けられるので、開口部141eにより低下する骨格フレーム141の機械的強度をカバー部142により部分的に補強することができる。
【0044】
また、第1実施形態では、上記のように、関節駆動部11を駆動させるためのサーボアンプ基板171を収納するように骨格フレーム141の収納部141dを構成する。これによって、サーボアンプ基板171を手甲部40に設ける必要がないので、その分、手甲部40を小型化することができる。
【0045】
また、第1実施形態では、上記のように、サーボアンプ基板171とカバー部142との間に配置され、カバー部142に当接される熱伝導シート174を設け、熱伝導シート174を押圧した状態で骨格フレーム141に取り付けられるようにカバー部142を構成する。これによって、カバー部142と熱伝導シート174とを密着させることができるので、サーボアンプ基板171が発熱した場合にも、熱伝導シート174を介してカバー部142から確実に放熱することができる。
【0046】
また、第1実施形態では、上記のように、関節駆動部11を駆動させるためのサーボアンプ基板171および関節駆動部12を駆動させるためのサーボアンプ基板172の両方を収納するように骨格フレーム141の収納部141dを構成する。これによって、1つの根元リンク部14に2つのサーボアンプ基板171および172を設けることができるので、サーボアンプ基板171および172のいずれも手甲部40に設ける必要がなく、手甲部40の小型化を図ることができる。その結果、ロボット100の手首部から指先部までの長さを小さくすることができるので、手首部に多指ハンドユニット1の制御点を設ける場合に、制御点からのストロークが小さくなり、その分、精度よく多指ハンドユニット1の制御を行うことができる。
【0047】
また、第1実施形態では、上記のように、指部10の側部側において、指背側から指腹側に延びるように形成された断面形状を有する側壁部141cを骨格フレーム141に設ける。これによって、多指ハンドユニット1により対象物を把持する際に指腹側から加えられる外力に対する骨格フレーム141の曲げ剛性を効率よく高めることができるので、骨格フレーム141を薄肉化した場合でも、骨格フレーム141に必要な曲げ強度を確保することができる。
【0048】
(第2実施形態)
次に、図11を参照して、第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、各関節駆動部11〜13に対する多軸制御および協調制御を行う上位制御部を手甲部40の外部に設ける構成の上記第1実施形態とは異なり、上位制御部243を手甲部40の内部に設ける構成について説明する。なお、第2実施形態では、上記第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0049】
本発明の第2実施形態では、図11に示すように、手甲部40の内部に、各関節駆動部11〜13(21〜23および31〜33)に対する多軸制御および互いに協調して駆動させる協調制御を行う上位制御部243が設けられている。すなわち、第2実施形態では、サーボアンプモジュール17およびサーボアンプ・通信モジュール18をそれぞれ根元リンク部14および中間リンク部15に設けることによって、手甲部40の内部にサーボアンプモジュール17およびサーボアンプ・通信モジュール18を配置する必要がないので、手甲部40が大きくなるのを抑制しながら、手甲部40の内部に上位制御部243を設けることが可能である。また、第2実施形態では、電源回路42は、上位制御部243にも電力を供給するように構成されている。
【0050】
なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0051】
第2実施形態では、上記のように、関節駆動部11〜13が互いに協調して駆動するように協調制御を行う上位制御部243を手甲部40に設ける。これによって、多指ハンドユニット1の外部に上位制御部243を設ける必要がないとともに、指部10の動作のための制御部41および243を多指ハンドユニット1内に集約して収納することができる。
【0052】
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0053】
(第3実施形態)
次に、図12を参照して、第3実施形態について説明する。この第3実施形態では、上記第1実施形態とは異なり、骨格フレーム314に放熱フィン314aを設ける構成について説明する。なお、第3実施形態では、上記第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0054】
本発明の第3実施形態では、図12に示すように、指部10の根元リンク部14(図2および図3参照)の骨格フレーム314は、根元側壁部141aと、指先側壁部141bと、指部10の側部に配置され、根元側壁部141aおよび指先側壁部141bを連結する側壁部141cとにより主として構成されている。また、側壁部141cの収納部141dが配置される側とは反対側(図12のY1方向側)の表面には、放熱フィン314aが側壁部141cに一体的に設けられている。骨格フレーム314および放熱フィン314aは、ともに放熱性の高いアルミニウムにより構成されている。また、放熱フィン314aは、並列して配置された複数のフィンにより構成されている。これにより、放熱フィン314aの表面積が大きくなるので、放熱フィン314aの放熱性がより高められる。また、放熱フィン314aは、指背側から指腹側に延びるように形成されている。すなわち、放熱フィン314aは、側壁部141cの横断方向の断面形状(図7参照)と同じ指部10の高さ方向(Z方向)に延びるように形成されている。
【0055】
また、指部10、20および30のその他の骨格フレームについても、指部10の根元リンク部14(図4参照)の骨格フレーム314と同様に、放熱フィンが設けられている。
【0056】
なお、第3実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0057】
第3実施形態では、上記のように、骨格フレーム314の側壁部141cに、指背側から指腹側に延びるように形成された放熱フィン314aを設ける。これによって、放熱フィン314aにより、骨格フレーム314の放熱性を高めることができる。また、放熱フィン314aが側壁部141cの横断方向の断面形状(図7参照)と同じ指部10の高さ方向(Z方向)に延びるように形成されるので、放熱フィン314aにより側壁部141cの曲げ剛性がより高められる。すなわち、放熱フィン314aを骨格フレーム314の補強部材として有効に利用することができる。
【0058】
なお、第3実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0059】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0060】
たとえば、上記第1〜第3実施形態では、本発明の多指ハンドユニットを、主としてアーム部からなるロボットに適用する例について説明したが、本発明はこれに限られない。本発明の多指ハンドユニットを、たとえば、人型ロボットなど、主としてアーム部からなるロボット以外のロボットに適用してもよい。
【0061】
また、上記第1〜第3実施形態では、本発明の多指ハンドユニットに3つの指部を設ける構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、多指ハンドユニットに2つの指部を設けてもよいし、4つ以上の指部を設けてもよい。
【0062】
また、上記第1〜第3実施形態では、多指ハンドユニットの3つの指部の全てに本発明の中空の骨格フレームを設ける例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、多指ハンドユニットの複数の指部のうちの少なくとも1つに本発明の中空の骨格フレームを設ければよい。
【0063】
また、上記第1〜第3実施形態では、1つの指部の2つのリンク部に本発明の中空の骨格フレームを設ける例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、1つの指部の1つのリンク部だけに本発明の中空の骨格フレームを設けてもよいし、1つの指部の3つ以上のリンク部に本発明の中空の骨格フレームを設けてもよい。
【0064】
また、上記第1〜第3実施形態では、骨格フレームの開口部が指背側、指腹側および側部側を開放する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、骨格フレームの開口部が指背側だけを開放する構成であってもよいし、指腹側だけを開放する構成であってもよい。
【0065】
また、上記第1〜第3実施形態では、中空の骨格フレームが指背側および指腹側から見て略U字形状に形成された構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、中空の骨格フレームが、指背側および指腹側の少なくとも一方から見て、たとえば、略O字形状、正方形形状または長方形形状など略U字形状以外の形状に形成された構成であってもよい。
【0066】
また、上記第1〜第3実施形態では、骨格フレーム、手甲部およびカバー部をアルミニウムにより構成する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、骨格フレーム、手甲部およびカバー部を、たとえば、銅や鉄などアルミニウム以外の材質により構成してもよい。また、骨格フレーム、手甲部およびカバー部を、金属以外の材質で構成してもよい。なお、強度および放熱性の観点からは、金属製にすることが好ましい。
【0067】
また、放熱フィンの厚さ等については適宜設定可能である。放熱フィンの厚みを大きく設定することで、リブ等の構造材としての機能を兼ねることができる。
【符号の説明】
【0068】
1 多指ハンドユニット
2 アーム部
10、20、30 指部
11 関節駆動部(第1関節駆動部)
12 関節駆動部(第2関節駆動部)
14 根元リンク部(リンク部)
40 手甲部
100 ロボット
141 骨格フレーム
141c 側壁部(壁部)
141d 収納部
141e 開口部
142 カバー部
171 サーボアンプ基板(第1アンプ部)
172 サーボアンプ基板(第2アンプ部)
174 熱伝導シート
243 上位制御部
314a 放熱フィン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の指部を備え、
前記複数の指部の少なくとも1つは、
内部に収納部が配置される中空の骨格フレームを有するリンク部と、前記リンク部を回動させる関節駆動部とを含む、多指ハンドユニット。
【請求項2】
前記骨格フレームは、前記指部の外面を構成している、請求項1に記載の多指ハンドユニット。
【請求項3】
前記骨格フレームは、指背側および指腹側の少なくともいずれか一方に前記収納部を開放する開口部を有している、請求項1または2に記載の多指ハンドユニット。
【請求項4】
前記骨格フレームは、指背側および指腹側の少なくとも一方から見て、略U字形状に形成されている、請求項3に記載の多指ハンドユニット。
【請求項5】
前記骨格フレームの開口部は、他の指部が配置される側とは反対側の側部を開放するように形成されている、請求項4に記載の多指ハンドユニット。
【請求項6】
前記骨格フレームの開口部を覆うように前記骨格フレームに取り付けられるカバー部をさらに備える、請求項3〜5のいずれか1項に記載の多指ハンドユニット。
【請求項7】
前記骨格フレームの収納部は、少なくとも前記関節駆動部を駆動させるためのアンプ部を収納するように構成されている、請求項6に記載の多指ハンドユニット。
【請求項8】
前記アンプ部と前記カバー部との間に配置され、前記カバー部に当接される熱伝導シートをさらに備え、
前記カバー部は、前記熱伝導シートを押圧した状態で前記骨格フレームに取り付けられるように構成されている、請求項7に記載の多指ハンドユニット。
【請求項9】
前記関節駆動部は、第1関節駆動部および第2関節駆動部を含み、
前記アンプ部は、前記第1関節駆動部を駆動させるための第1アンプ部および前記第2関節駆動部を駆動させるための第2アンプ部を含み、
前記骨格フレームの収納部は、前記第1アンプ部および前記第2アンプ部の両方を収納するように構成されている、請求項7または8に記載の多指ハンドユニット。
【請求項10】
前記骨格フレームは、前記指部の側部側において、指背側から指腹側に延びるように形成された断面形状を有する壁部を有している、請求項1〜9のいずれか1項に記載の多指ハンドユニット。
【請求項11】
前記骨格フレームの壁部には、指背側から指腹側に延びるように形成された放熱フィンが設けられている、請求項10に記載の多指ハンドユニット。
【請求項12】
前記関節駆動部は、第1関節駆動部および第2関節駆動部を含み、
前記指部の根元側が取り付けられる手甲部と、
前記手甲部に設けられ、前記第1関節駆動部および前記第2関節駆動部が互いに協調して駆動するように協調制御を行う上位制御部とをさらに備える、請求項1〜11のいずれか1項に記載の多指ハンドユニット。
【請求項13】
アーム部と、
前記アーム部の先端部に設けられ、複数の指部を含む多指ハンドユニットとを備え、
前記複数の指部の少なくとも1つは、
内部に収納部が配置される中空の骨格フレームを有するリンク部と、前記リンク部を回動させる関節駆動部とを有する、ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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