説明

多数の波長のポンピングを行う光増幅器

【解決手段】
本発明の光増幅器は、デバイス基板と、デバイス基板に埋め込まれた第一の導波路と、複数のレーザとを備える。複数のレーザは、第一の導波路を実質的に横切る複数の第一のビーム光を供給するために、設置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光信号の増幅に分野に関する。特に本発明は、横方向のポンピングビーム光を用いた、光信号の増幅に関する。
【背景技術】
【0002】
エリビウムのような希土類元素が複数のイオンと共に添加されることにより、導波路は、光増幅器としての役目を果すことができる。この導波路内を伝播する光信号は、ポンピングビーム光が導入された場合に、増幅される。例えば、エリビウムイオンは、約980nm、又は、約1480nmの波長を持つポンピングビーム光によって、より高いエネルギー状態へと励起され、より低いエネルギー状態へ遷移するに伴い、1530nmから1600nm程度の広い波長帯の光信号を増幅する。この技術は、光ファイバー増幅において、広く知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図1は、平面導波路20における光信号10を増幅する従来の方法の一例を示す概略図である。導波路20は、基板30内に埋め込まれ、エリビウムイオンが添加されている。光信号10は導波路20へと導かれ、導波路20内を伝播する。ポンプレーザ50は、同じ伝播方向、即ち、光信号が伝播する方向と実質的に同じ方向になるように、導波路20にポンピングビーム光を供給する。信号10とポンプレーザ50とは、例えば、一時的な方向性連結器において、同じ導波路20に対して接続される。ある形態において、約1550nmの波長を持つ光信号10は、ポンプレーザ50が約980nmの波長、又は約1480nmの波長を持つポンピングビーム光を供給することによって、増幅される。
【0004】
図2は、光信号10を増幅する従来の方法の他の例を示す概略図である。図2において、ポンプレーザ50は、導波路20の反対側の端部から、反対の伝播方向、即ち、光信号が伝播する方向と実質的には反対方向に、ポンピングビーム光へと導かれる。図1と同様に、光信号は、導波路20内で増幅され、基板30から出力される。
【0005】
現在の光ネットワークは、長距離の転送には、シングルモードの光ファイバーを用いている。これにより、色分散、つまり波長による光の速度の依存性に起因する信号の減衰を防いでいる。シングルモードファイバーを用いた効果的な通信方式のためには、ファイバーや導波路増幅器を含む全ての光学機器は、事実上、シングルモード方式である。光学において普遍的な原理である、光量保存則により、シングルモードにおける光の強さは、単に、線形な受動的(エネルギーを与えない)光学素子を用いただけでは、増すことができない。これは、ある一つのモードのみによる、ある波長の光の強さは、シングルモードの導波路へとつなぐことができるという事実に帰着する。このことは、増幅器においては、ある1つの波長を持つポンプレーザだけが、各伝播方向、および各偏光方向へと、ポンピングビーム光を供給することが許容されている、と言い換えることができる、
【0006】
ポンピングビーム光の強度が、光信号の強度と光増幅器の材料特性とに依存するある閾値よりも高い場合に、光信号は、光増幅器内でゲインを獲得する。そして、十分に高い増幅率を達成するために、ポンピングビーム光の強度は、この閾値よりもずっと高い値でなければならない。この結果、通常、高出力のポンピングレーザが必要となる。
【0007】
以下に述べられる本発明と比較して、上記の方法には、幾つかの欠点がある。第一に、上記で述べられた同一方向の伝播および反対方向の伝播において使用される、相対的に高い出力のレーザは、高価である。第二には、高出力レーザは高いエネルギー損失であり、それらを封止する場合における熱問題の原因となる場合がある。第三には、高出力レーザの信頼性は、低出力レーザのそれと比べて一般的に良くはない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
複数の波長のポンピングビーム光を用いて光信号を増幅させるための装置と方法とが、開示される。多数の低出力光源が、ポンピングビーム光を供給する。ある実施形態においては、複数のレーザダイオードが、このポンピングビーム光を、全てのポンピングビーム光が結集する光マルチプレクサへと供給する。光マルチプレクサは、光信号が増幅される光導波路へと接続される。結集された光信号と、複数の波長のポンピングビーム光は増幅導波路へと導かれ、そこで光信号は増幅される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図3は、光増幅器の一実施形態の上面から示した概略図である。光信号110は、導波路120の中へ入り伝播し、導波路120は、デバイス基板130の内部に埋め込まれている。基板の中に導波路を加工して埋め込む場合には、各イオン種の拡散、エッチング、エピタキシャル成長法のような様々な方法がある。そして、“基板内に埋め込まれる”とは、SOIを含むこれらの多様な方法を含むことを意味する。場合によっては、導波路は、実際には、基板の上部に堆積させられ、基板とは異なるクラッド材によって被覆されることもあるが、このような場合も、“基板内に埋め込まれる”という用語に含まれる。
【0010】
ある実施形態において、導波路120は、シングルモードの導波路である。複数の光源150のそれぞれは、例えば、レーザダイオードであり、埋め込まれた導波路120を実質的に横切ってポンピングビーム光を導くデバイス基板130に接続される。
【0011】
ある形態においては、複数の光源150のそれぞれは、埋め込まれた導波路120の長さ(方向)に沿って、均等に離れて配置される。しかしながら、他の形態においては、複数の光源150同士の配置は、異なる配置であってもよい。ある形態においては、複数の光源150は、垂直共振型レーザ(VCSELs)を有する。垂直共振型レーザは、共通の半導体基板155から加工されてもよく、そして、垂直共振型レーザは、デバイス基板130の表面に連結されてもよい。これにより、各垂直共振型レーザ同士の配置間隔を、リソグラフィー技術によって定まる間隔に、許容する。
【0012】
ある形態において、垂直共振型レーザは、相対的に低い出力を用いる。例えば、1つのVSCLは、この例に限られるわけではないが、20mW以下のパワーを放出する。同一の伝播方向の構造、および反対の伝搬方向の構造のそれぞれにおいて用いられる、比較的高い出力のレーザは、これに限定されるわけではないが、例えば100mWの高出力レーザを用いている。
【0013】
図4は、図3におけるA−A´線に沿った断面からみた光増幅器の概略図である。ある形態において、光源150からのポンピングビーム光160が導波路120を通過した後、このポンピングビーム光は、下部表面180に反射して、矢印170で示されるように、導波路120へと戻ってくる。ある形態において、下部表面180での反射は屈折率の変化に基づいており、このことは下部表面180を、異なる材料に隣接させるか、或いは、同じ材料ではあるが性質の異なる材料に隣接させることにより達成されても良いことは周知の通りである。ある形態において、下部表面180は、空気、又は、ヒートシンクに隣接する。
【0014】
ある形態において、複数の光源150と、埋め込まれた導波路120との間隔は、相対的に小さく、例えば、5ミクロンである。他の形態において、レンズ、又はコリメータが、光源と基板との間に接続されてもよい。
【0015】
図5は、光ポンピングに基づく光信号出力の増加を示すグラフの一例である。ある形態において、ポンピングビーム光は、出力PPUMPを有しており、光信号200へと与えられる。ポンピング出力PPUMP202は、光源210の直下で最大となる。そして、光信号200が導波路を伝播するにつれて、光信号200は、複数の光源210によって、連続的にポンピングされる。
【0016】
ある形態において、複数の導波路が、同一の基板内に埋め込まれていてもよい。各導波路は、導波路内の光信号を増幅するための、一連のトランスバース・ポンプを有していてもよい。ある形態において、複数のトランスバース・ポンプは、複数の垂直共振型レーザである。共通の基板内に加工された垂直共振型レーザの行列は、複数の導波路における複数の光信号を増幅させるために使用されてよい。
【0017】
これにより、光信号を増幅するための装置とその方法とが開示された。しかしながら、ここでは、特別な構成と方法とが示されたにすぎない。例えば、イオン種の拡散、エッチング、およびエピタキシャル成長法など、基板内の導波路を加工するためには様々な方法がある。当業者は、例えば埋め込まれた導波路を加工するために、様々な手法のいずれを用いてもよい。そして、特許請求の範囲により定まる本発明の範囲から離れない限りにおいて、形状や細部における多様な変更をおこなうことができる。本発明は、付記された特許請求の範囲によってのみ限定される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】平面の導波路における光信号を増幅する従来の方法の一例を示す概略図である。
【図2】光信号を増幅する従来の方法の他の例を示す概略図である。
【図3】光増幅器の一実施形態を上面から示した概略図である。
【図4】図3におけるA−A´線に沿った断面からみた光増幅器の概略図である。
【図5】光ポンピングに基づく光信号出力の増加を示すグラフの一例である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイス基板と、
前記デバイス基板に埋め込まれた第一の導波路と、
前記第一の導波路を実質的に横切る、第一の複数のビーム光を供給するために設置された、第一の複数のレーザと、
を備えた光増幅器。
【請求項2】
前記第一の複数のレーザのそれぞれは、前記第一の導波路の長さ方向に沿って、互いに離間して設置される請求項1に記載の光増幅器。
【請求項3】
前記第一の複数のレーザは、複数の垂直共振型レーザである請求項2に記載の光増幅器。
【請求項4】
前記第一の複数のレーザは、共通の基板を共有する請求項3に記載の光増幅器。
【請求項5】
複数の前記垂直共振型レーザは、前記デバイス基板に連結されている請求項4に記載の光増幅器。
【請求項6】
前記デバイス基板は、エリビウム元素を含むリン酸ガラスである請求項1に記載の光増幅器。
【請求項7】
前記デバイス基板に埋め込まれた第二の導波路と、
前記第二の導波路を実質的に横切る第二の複数のビーム光を供給するために設置された、第二の複数のレーザと
を更に備えた請求項1に記載の光増幅器。
【請求項8】
前記第一の複数のレーザは、互いに均等に配置される請求項1に記載の光増幅器。
【請求項9】
光信号を増幅するための方法であって、
第一の伝播方向を持つ前記光信号を、導波路を通じて導く導波ステップと、
複数のビーム光を、前記第一の伝播方向を実質的に横断する方向へと適用するビーム光適用ステップと
を備える光信号増幅方法。
【請求項10】
複数の前記ビーム光は、複数のレーザダイオードによって供給される請求項9に記載の光信号増幅方法。
【請求項11】
前記光信号は、約1550nmの波長を持ち、前記複数のビーム光は、約980nmの波長を持つ請求項10に記載の光信号増幅方法。
【請求項12】
前記ビーム光適用ステップは、50mW以下の電力を消費する複数のレーザのそれぞれを使用するステップを更に有する請求項11に記載の光信号増幅方法。
【請求項13】
前記ビーム光適用ステップは、20mW以下の電力を消費する複数のレーザのそれぞれを使用するステップを更に有する請求項11に記載の光信号増幅方法。
【請求項14】
前記導波路において、前記導波路を通過した後に、複数のビーム光を反射する反射ステップを更に備える請求項9に記載の光信号増幅方法。
【請求項15】
光信号を増幅するための方法であって、
複数の光源を、基板の表面に取り付ける取り付けステップを備え、
前記基板は、内部に埋め込まれた導波路を有しており、前記複数の光源は、前記導波路を実質的に横切って導かれる光信号増幅方法。
【請求項16】
前記取り付けステップは、複数の垂直共振型レーザを、前記基板の表面へ連結する連結ステップを更に有する請求項15に記載の光信号増幅方法。
【請求項17】
前記垂直共振型レーザのそれぞれは、共通の半導体基板の上に、一列に、離れて設置される請求項16に記載の光信号増幅方法。
【請求項18】
前記垂直共振型レーザのそれぞれは、一定の距離だけ離れて設置される請求項16に記載の光信号増幅方法。
【請求項19】
前記垂直共振型レーザのそれぞれは、50mW以下で動作する請求項16に記載の光信号増幅方法。
【請求項20】
前記垂直共振型レーザのそれぞれは、20mW以下で動作する請求項16に記載の光信号増幅方法。
【請求項21】
基板と、
前記基板に埋め込まれ、第一の伝播方向を持つ導波路と、
前記第一の伝播方向を横切る、ポンピングされたビーム光を供給するために整列した複数のレーザと
を備える光増幅器。
【請求項22】
前記複数に並べられたレーザの少なくとも1つは、20mW以下の電力で動作する請求項21に記載の光増幅器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−503420(P2006−503420A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−553675(P2003−553675)
【出願日】平成14年11月22日(2002.11.22)
【国際出願番号】PCT/US2002/037677
【国際公開番号】WO2003/052885
【国際公開日】平成15年6月26日(2003.6.26)
【出願人】(591003943)インテル・コーポレーション (1,101)
【Fターム(参考)】