説明

多方向入力装置

【課題】多方向入力装置の提供。
【解決手段】 磁石部と、前記磁石部を収容し、ユーザーの操作によって多方向に移動される操作部材と、前記操作部材の少なくとも一方側を包囲するように設けられ、弾性力によって前記操作部材を初期の位置に戻すヒンジ部と、を備え、前記操作部材は、少なくとも一部が磁場遮断物質から製作された多方向入力装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は入力装置に係り、特に、携帯用端末をはじめとする様々な電子機器に適用可能な多方向入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の電子機器は、次第に多機能化及び小型化が進んでいる。例えば、携帯用電話機は、DMB受信、デジタルカメラ、データ送受信、MP3プレーヤー、インターネット通信など様々なサービスを提供しつつも、そのサイズは小型化されつつある。このような電子機器の操作を容易にするために、ポインターなどを用いるグラフィックユーザーインタフェース(Graphic UserInter face;GUI)方式を利用することになり、ポインターなどの動きを制御するために多方向入力装置が求められている。
【0003】
最近では、センサーを用いて、磁石の移動による磁場の変化を感知して画面上のポインターの動きを制御する多方向入力装置が用いられている。このとき、センサーは基板の上に実装され、磁石は、シリコンゴムを用いて多方向に移動させられた後に、元の位置に戻る。即ち、ユーザーの操作によって、磁石はシリコンゴムと共に移動し、磁石の移動をセンサーが検出して画面上のポインターの動きを表示することとなる。この後、ユーザーの操作が完了すれば、シリコンゴムの弾性によって磁石は元の位置に戻る。しかしながら、シリコンゴムは、基板との摩擦によって損傷され易く、これにより、シリコンゴムの弾性力が低下する。このため、磁石が速やかに元の位置に戻らないという問題が発生する。
【0004】
一方、電子機器の薄肉化が進むに伴い、多方向入力装置の薄肉化も進んでいる。ところが、多方向入力装置の薄肉化が進むにつれて、磁石の上部に位置する構造物の厚さが薄くなり、磁石からの磁場が外部に放出される。多方向入力装置から放出される磁場にクレジットカードなどが露出される場合、ここに存在する磁力線を損傷させるおそれがある。なお、磁場によって微細な鉄粉などが多方向入力装置の内部に引き込まれ、これにより、多方向入力装置の動作に悪影響を及ぼしてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、磁石が速やかに元の位置に戻り、且つ、磁石の磁場が外部に放出されることが回避される多方向入力装置を提供する。
【0006】
本発明は、磁石の少なくとも一部を収容する操作部材を、透磁率が優れた物質を用いて製作し、弾性を有する物質を螺旋状に巻き付けて操作部材を包囲するようにヒンジ部を設けることにより、磁石の磁場が外部に放出されることを防ぎ、ヒンジ部の弾性復元力によって操作部材が速やかに元の位置に戻る多方向入力装置を提供する。
【0007】
一方、本発明の技術的課題は上述した技術的課題に制限されるものではなく、言及されていない更なる他の技術的課題を、下記の記載から当業者は明確に理解できるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一様態による多方向入力装置は、磁石部と、前記磁石部を収容し、ユーザーの操作によって多方向に移動させられる操作部材と、前記操作部材の少なくとも一方側を包囲するように設けられ、弾性力によって前記操作部材を初期の位置に戻すヒンジ部と、を備え、前記操作部材は、少なくとも一部が磁場遮断物質から製作される。
【0009】
前記多方向入力装置において、前記操作部材は、内部に空間が設けられて前記磁石部が収容されるキャップ部と、前記キャップ部の任意の領域から外方に向けて延設された平板部と、を備える。
【0010】
前記多方向入力装置において、前記平板部の上部の前記キャップ部の上端にボタン部が結合され、前記平板部の下部の前記キャップ部の下端に前記ヒンジ部が結合される。
【0011】
前記多方向入力装置において、前記操作部材は、前記キャップ部が前記磁場遮断物質から製作されるか、前記キャップ部及び前記平板部が前記磁場遮断物質から製作されるか、あるいは、前記磁石部と接する前記キャップ部の内側に前記磁場遮断物質が設けられる。
【0012】
前記多方向入力装置において、前記磁場遮断物質は、透磁率が200以上の金属、セラミック、ゴムの少なくともいずれか1種類から製作される。
【0013】
前記多方向入力装置は、前記キャップ部の下端から前記平板部に向けて延びて前記ヒンジ部の抜脱を防ぐ固定部を更に備える。
【0014】
前記多方向入力装置は、上ケース及び下ケースが組み合わされて前記ヒンジ部及び前記操作部材を内部に収容するケース部を更に備え、前記下ケースの外側に上方に突き出て前記ヒンジ部の外側を固定する突出部を更に備える。
【0015】
前記多方向入力装置は、前記磁石部の下側に設けられたアクチュエータ及びドームスイッチを更に備え、前記ドームスイッチの上にアクチュエータが接触させられて接着手段によって貼り付けられる。
【0016】
前記多方向入力装置において、前記接触手段は、前記アクチュエータを含む前記ドームスイッチの全体を覆うように設けられたテフロン(登録商標)テープを含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、磁石の少なくとも一部を収容する操作部材を透磁率に優れた物質を用いて製作して、磁石の磁場が外部に放出されることを防ぐことができる。これにより、多方向入力装置の薄肉化が図れると共に、多方向入力装置によるクレジットカードなどの誤りを防ぐことができ、外部の物質が多方向入力装置に引き込まれることを防ぐことができて、多方向入力装置の誤りを防ぐことができる。
【0018】
また、本発明は、弾性を有する物質を螺旋状に巻き付けて操作部材を包囲し、基板と接触されないようにヒンジ部を設ける。このため、ヒンジ部が基板と接触されることなく、ヒンジ部及び基板の損傷を防ぐことができ、ヒンジ部の弾性復元力により操作部材を速やかに戻すことを可能にする。
【0019】
そして、磁石部の下側に位置するアクチュエータをドームスイッチの上に置いた後、テフロン(登録商標)テープを用いて貼り付けることにより、操作部材の移動距離が広い場合にも磁石部の下側にアクチュエータが位置することとなり、アクチュエータを用いたドームスイッチのクリックが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態による多方向入力装置の外形図である。
【図2】本発明の一実施形態による多方向入力装置の分解斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態による多方向入力装置の断面図である。
【図4】本発明の一実施形態による多方向入力装置の動作によるヒンジ部の状態を説明するための概略図である。
【図5】本発明の他の実施形態による多方向入力装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面に基づき、本発明の実施形態を詳述する。しかしながら、本発明は下記の実施形態に限定されるものではなく、様々な形態に実現可能であり、単にこれらの実施形態は本発明の開示を完全たるものにし、通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものである。図中、同じ符号は同じ要素を指し示す。
【0022】
図1から図4は、本発明の一実施形態による多方向入力装置を説明するための図である。即ち、図1は、本発明の一実施形態による多方向入力装置の外形図であり、図2は、本発明の一実施形態による多方向入力装置の分解斜視図であり、図3は、本発明の一実施形態による多方向入力装置の断面図である。ここで、図1(a)は多方向入力装置の上面図であり、図1(b)は同側面図であり、図1(c)は同底面図である。更に、図4は、本発明の一実施形態による多方向入力装置の動作によるヒンジ部の状態を説明するための概略図である。
【0023】
図1から図3を参照すれば、本発明の一実施形態による多方向入力装置は、磁石部400と、磁場遮断物質から製作され、ユーザーの操作を通じて磁石部400を移動させる操作部材300と、一部が操作部材300を包囲するように設けられて弾性力によって操作部材300を元の位置に戻すヒンジ部500と、磁石部400の動きによる磁場の変化を感知して所定の出力信号を生成するセンサーが設けられた基板800と、を備える。また、ユーザーの操作による力を操作部材300に伝えるボタン部100と、基板800、ヒンジ部500などを固定し、操作部材300の抜脱を防ぐ上ケース210及び下ケース220を有するケース部200と、を更に備える。
【0024】
ボタン部100は、所定の厚さを有する概ね円形の板110と、板110の下面に設けられて概ね円形に突き出た突出部120と、を備える。板110の上面には指の滑りを防ぐために所定のパターンが形成されていてもよい。板110はまた、図示されたように、突出部120よりも広幅に設けられてもよいが、突出部120と同幅に設けられてもよい。このようなボタン部100は、下側が操作部材300と結合され、ユーザーのボタン部100の操作によって操作部材300が移動させられるようにする。即ち、操作部材300には、中央部に他の領域よりも凸状のキャップ部310が設けられるが、突出部120は、操作部材300のキャップ部310を包囲するように設けられる。このとき、突出部120内側の板110の下面と操作部材300のキャップ部310との間に両面テープなどの接着部材910が設けられてボタン部100と操作部材300とが貼り合わせられてもよい。もちろん、突出部120とキャップ部310は、接着部材910に加えて、他の様々な方式により結合可能であるが、突出部120の内側の所定の領域に溝又は突起を設け、キャップ部310の外側に突起又は溝を設けて、突出部120及びキャップ部310の突起と溝とを係合して結合してもよい。これらに加えて、突出部120の内径とキャップ部310の外径とを一致させて、突出部120とキャップ部310とを嵌合してもよく、突出部120の下面と操作部材300のキャップ部310の外側の平板部320との間に接着部材を設け、この接着部材を用いて貼り合わせても良い。
【0025】
ケース部200は、上ケース210と下ケース220とが組み合わせられて形成され、その内部に所定の空間が設けられて、操作部材300、磁石部400、ヒンジ部500及び基板800などが収容される。上ケース210は、中央部に所定の大きさの開口212が設けられ、底面無しの概ね円筒状に製作される。即ち、上ケース210は、上部に概ね円形に設けられた開口212と、開口212の周りを包囲するように概ね円形の所定の幅をもって設けられた上面部214と、上面部214から下方に向けて延設された側面部216と、を備える。このような上ケース210は、側面部216が多方向入力装置の厚さに対応する厚さに製作可能である。即ち、上ケース210と下ケース220との間には、操作部材300、磁石部400、ヒンジ部500及び基板800などが収容され、上ケース210は、これらを収容可能な厚さに製作されるため、これらの厚さを考慮に入れて、上ケース210の厚さ、即ち、側面部216の厚さを調節することができる。
【0026】
下ケース220は、ある領域と他の領域とが異なる厚さを有する板状に製作され、下面部が平面状に製作される。下ケース220は、中央部に設けられた概ね四角形状の溝222と、溝222に周設され、第1の厚さを有する第1の平面部224と、第1の平面部224に外設されて第1の厚さよりも厚い第2の厚さを有する第2の平面部226と、を備える。即ち、下ケース220は、中央部に溝222が凹設され、内側の厚さが外側の厚さよりも薄い概ね円板状に製作される。下ケース220の内面、即ち、第1の平面部224の上には、両面テープなどの接着部材930を介して基板800が貼り付けられる。なお、下ケース220の溝222には、基板800の下部に取り付けられた制御部810が嵌まり込む。このため、下ケース220の溝222は、制御部810の形状に応じて様々な形状に製作可能である。
【0027】
これらの上ケース210及び下ケース220は、下ケース220の外側と上ケース210の内側とが組み合わせられて一体化される。即ち、上ケース210の側面部216の内面と下ケース220の第2の平面部226の外側面とが結合して一体化され、これらの間に両面テープなどの接着部材(図示せず)が設けられてこれらが貼り合わせられてもよい。それだけではなく、上ケース210と下ケース220とは様々な方式により組み合わせられるが、例えば、下ケース220の第2の平面部226の外側面の少なくともある領域に溝又は突起が設けられ、上ケース210の側面部216の内面の少なくともある領域に突起又は溝が設けられて溝及び突起が係合されることにより、上ケース210と下ケース220とが組み合わせられてもよい。また、上ケース210の側面部216の内径と下ケース220の外側面の外径とを一致させて、これらを嵌合してもよい。一方、上ケース210と下ケース220とが組み合わせられれば、これらの間、即ち、下ケース220の第2の平面部226と上ケース210の上面部214の内側との間に所定の空間が設けられ、この空間において操作部材300及びヒンジ部500が移動自在になる。
【0028】
操作部材300は、ボタン部100と磁石部400との間に設けられ、磁石部400を内部に収容してユーザーの操作によって磁石部400と共に移動する。操作部材300は、例えば、中央部に下側が開放され、上側及び側面が密閉されて内部に所定の空間が設けられたキャップ部310と、キャップ部310の外側の所定の領域、例えば、中央領域と接触させられて外方に延びた概ね円形の平板部320と、を備える。キャップ部310内には磁石部400が収容され、磁石部400の形状に応じてキャップ部310の形状は変更可能であるが、概ね円柱状に設けられる。平板部320は、操作部材300が上ケース210の開口212から抜脱することを防ぐ。また、キャップ部310は、平板部320を中心として上端312及び下端314によって仕切られるが、上端312はボタン部100の突出部120と接触させられ、下端314はヒンジ部500と接触させられる。即ち、ボタン部100の突出部120がキャップ部310の上端312を包囲し、ヒンジ部500の少なくとも一部がキャップ部310の下端314を包囲するように設けられる。これにより、ヒンジ部500がキャップ部310の下端314に固定される。このとき、ヒンジ部500はキャップ部310の下端314及び平板部320の底面に接触させられて下端314を包囲するように設けられてもよい。即ち、ヒンジ部500の接触領域を調節して、キャップ部310の下端314にのみ接触させられるようにしてもよく、キャップ部310の下端314及び平板部320の底面に同時に接触させられるようにしてもよい。一方、キャップ部310の下端314は上端312よりも広幅に製作可能であるが、これは、キャップ部310の下端314が、ここに固定されるヒンジ部500の内径に応じて幅が調節可能であるためである。このような操作部材300は、ユーザーの操作によって上ケース210と下ケース220との間の空間を移動するが、キャップ部310の直径は、上ケース210の開口212の直径よりも小さく、平板部320の直径は、上ケース210の内径よりも小さく製作可能である。即ち、操作部材300の移動、回転などの動作は、ヒンジ部500によって制限されるが、キャップ部310及び平板部320が上ケース210の開口212及び内部空間内で移動するため、キャップ部310及び平板部320の直径は上ケース210の開口212及び内部空間の直径よりも小さくなければいけない。また、キャップ部310と平板部320との直径比は、上ケース210の開口212と内部空間との直径比に等しくてもよい。もちろん、キャップ部310と平板部320との直径比は異なるが、キャップ部310又は平板部320の移動が制限されないように製作される必要がある。一方、本発明による操作部材300は、磁石部400の磁場が上側に放出されることを防ぐために、少なくとも一部が磁場遮断物質から製作されてもよい。即ち、キャップ部310は磁場遮断物質から製作されてもよく、キャップ部310及び平板部320を有する操作部材300の全体が磁場遮断物質から製作されてもよく、キャップ部310の内側に磁場遮断物質を設けてもよい。磁場遮断物質としては、高透磁率の物質が利用可能であるが、例えば、透磁率が200以上の金属、セラミック、ゴムなどが利用可能である。例えば、高透磁率の鉄(Fe)を用いてもよく、含鉄ステンレス鋼などの金属、セラミック、ゴムなどを用いてもよい。このように操作部材300の少なくとも一部を高透磁率の物質から製作することにより、操作部材300を厚肉化させることなく、磁石部400の磁場が外部に放出されることを防ぐことができ、磁石部400の多量の磁場が下側に伝達可能になるため、センサーに十分な感度を伝えることができ、その結果、センシング効率が高められる。
【0029】
磁石部400は、操作部材300のキャップ部310の内部に少なくとも一部が収容され、上下が着磁した概ね円柱状の磁石が利用可能である。即ち、磁石部400は、操作部材400のキャップ部310の形状と対応する形状に製作されてもよく、少なくとも一部がキャップ部310内に収容されてもよい。ところが、操作部材300は少なくともキャップ部310が磁場遮断物質から製作されるため、磁石部400の磁場を完全に遮断するためには、磁石部400の全体がキャップ部310内に収容されることが好ましい。また、磁石部400は、直径をキャップ部310の内径と一致させて磁石部400がキャップ部400内において動かないようにすることが好ましい。一方、磁石部400は、端面多極(2極、4極、8極)着磁した磁石又は断面異型の多極着磁した磁石を用いてもよく、四角形、楕円形及び多角形状の磁石を用いてもよい。しかしながら、様々な形状の磁石を用いる場合でも、磁石部400の直径を操作部材300のキャップ部310の内径と一致させることが好ましい。このような磁石部400は、ユーザーの操作によって操作部材300と共に移動し、磁石部400の移動による磁場の変化を基板800上のセンサーが感知して磁石部400の位置を検出することができる。なお、磁石部400の下側にはテフロン(登録商標)テープ920及びアクチュエータ600が設けられてもよい。
【0030】
ヒンジ部500は、一部が操作部材300のキャップ部310の下端314を包囲し、外側に向けて回転しつつ複数のパターンが巻き付けられる螺旋状に設けられる。ヒンジ部500は、複数のパターン同士の間隔を、パターンが繰り返されるに伴い異なるように製作可能であるが、例えば、内径からパターンが狭くなったり広くなったりすることを繰り返して製作可能である。また、ヒンジ部500は、内径側が外径側よりも上部に位置するように内径から外径に向けてパターンが繰り返されるに伴い、パターンが下側に次第に下降するように製作されてもよい。しかしながら、ヒンジ部500は、内径側と外径側が同じ高さに製作されてもよい。この外径よりも上側に位置するヒンジ部500は、中心の内径がキャップ部310の下端314の外径と同径に、あるいは、これよりも小径に製作されて、ヒンジ部500にキャップ部310の下端314を包囲せしめる。このとき、ヒンジ部500をキャップ部310の下端314に強固に固定するために、これらの間に接着手段を設けて貼り合わせてもよい。また、ヒンジ部500の中心の内径がキャップ部310の下端314の外径よりも小径である場合、ヒンジ部500の弾性力を用いてキャップ部310の下端314に固定されてもよい。ヒンジ部500は、外側が上ケース210の側面部216の内側と下ケース220の第2の平面部226との間に接設されてもよい。即ち、ヒンジ部500は、キャップ部310の下端314から外側に向けて回転する螺旋状に設けられて、外側が上ケース210の側面部216の内側と下ケース220の第2の平面部226との間に接設されてもよい。ヒンジ部500は、金属などの弾性を有する物質を螺旋状に巻き付けて製作することができる。一方、ヒンジ部500は、図4に示すように、操作部材300が移動すれば、移動方向のヒンジ部500のパターン同士が圧縮させられ、移動方向とは反対方向のヒンジ部500のパターン同士は弛緩して、ヒンジ部500を変形させる。このとき、ヒンジ部500は、外側に伸びようとする弾性力を有しているため、操作部材300の移動方向とは反対方向のヒンジ部500は操作部材300の移動方向に移動することなく、現在の接触状態を維持することとなる。移動操作後には、ヒンジ部500の弾性復元力によって圧縮されたパターン同士が元の状態に弛緩して、操作部材300が初期の位置に自動的に戻る。このようなヒンジ部500は、操作部材300の移動を設定された範囲内において制限可能な弾性変形力を有するように製作される。このため、操作部材300は、磁石部400を内部に収納して左右方向、上下方向など多方向に移動し、ヒンジ部500の弾性復元力によって初期の位置に自動的に戻る。一方、ヒンジ部500の外側と接触される上ケース210の側面部216の内側及び下ケース220の第2の平面部226の少なくとも一方に固定手段(図示せず)を設けてヒンジ部500の外側を固定してもよい。
【0031】
アクチュエータ600は、磁石部400とドームスイッチ700との間に設けられ、アクチュエータ600の上にはテフロン(登録商標)テープ920が設けられるが、テフロン(登録商標)テープ920は、アクチュエータ600及びドームスイッチ700を覆うように設けられる。アクチュエータ600は、ユーザーのメニュー選択のためのボタン部100の押下動作、即ち、クリック動作時に、ドームスイッチ700にユーザーの力を提供し、これにより、ドームスイッチ700が下側の基板800と電気的に接触することとなる。また、テフロン(登録商標)テープ920は、アクチュエータ600を挟んでドームスイッチ700と貼り合わせられてアクチュエータ600を固定し、テフロン(登録商標)テープ920はクリック動作を柔軟にしてユーザーに操作感を与える。即ち、アクチュエータ600が磁石部400の下側に取り付けられて磁石部400及び操作部材300と共に移動する場合には、操作部材300の移動距離が広い場合に、アクチュエータ600を用いてドームスイッチ700をクリックすることが困難であったが、アクチュエータ600を、テフロン(登録商標)テープ920を用いてドームスイッチ700の上に取り付ける場合、操作部材300の移動距離が広い場合にも磁石部400の下側にアクチュエータ600が位置することになって、アクチュエータ600を用いてドームスイッチ700をクリックすることが容易になる。一方、アクチュエータ600及びドームスイッチ700と接触させられるその下側の基板800には、ドームスイッチ700及びアクチュエータ600に電源又は信号を印加するための配線パターンが設けられる。
【0032】
ドームスイッチ700は基板800の上に設けられ、上部にアクチュエータ600が設けられる。ドームスイッチ700は、基板800の中心領域において基板800から所定の間隔だけ離れ、基板800の外周領域において基板800と当接するドーム状に設けられる。このようなドームスイッチ700は、ユーザーのクリックなどの動作によって選択された動作を行うための電気信号を生じさせる。即ち、ドームスイッチ700と基板800との間の接触によって、ユーザーの選択された動作のための電気信号が生じる。もちろん、ドームスイッチ700の他に様々な形状のスイッチが利用可能であり、例えば、クリック感のあるスイッチが利用可能である。このようなドームスイッチ700は、必要に応じて省略可能である。
【0033】
基板800には、磁石部400の移動による磁場の変化を検出するためのセンサーをはじめとして様々な回路パターンが設けられる。基板800としては、プリント回路基板を用いることが好ましい。基板800の形状は、多方向入力装置が適用される電子装置に応じて様々な形状に変形可能である。基板800の下側には制御部810が設けられていてもよく、制御部810内に複数のセンサーが設けられていてもよい。即ち、複数のセンサーは、制御部810と単一チップから構成可能である。もちろん、センサーは、制御部810とは別に、基板800の上縁に設けられてもよい。このようなセンサーは、それぞれ磁石部400のX軸方向の動きによる磁場の変化を感知して、これに相当するX座標値を出力する磁気センサーと、Y軸方向の動きによる磁場の変化を感知して、これに相当するY座標値を出力する磁気センサーと、を備える。一方、制御部810は、センサーの出力を増幅し、まとめて最終磁場の変化を検出して出力する機能をする。ここで、制御部810に設けられた複数のセンサーは、磁石部400の中心点領域において互いに対称となるように配置されることが好ましい。センサーとしては、ホール素子、半導体磁気抵抗素子、感磁性体磁気抵抗素子又は巨大磁気抵抗(GMR:Giant Magneto Resistive)素子のうちのいずれか一種を用いることが好ましい。即ち、センサーとしては、磁場の変化に応じてその電気的特性が変化するような素子を用いることが好ましい。
【0034】
一方、図5に示すように、キャップ部310の下端314に固定されたヒンジ部500が抜脱することを防ぐために、キャップ部310の下端314から外側に突き出た固定部316が設けられていてもよく、ヒンジ部500の外側が操作部材300の移動によって動かないように、下ケース220の第2の平面部226から上側に突き出た突出部228が設けられていてもよい。ここで、固定部316及び突出部228は、少なくとも2領域以上に設けられてもよい。また、突出部228は、操作部材300の移動に邪魔にならないように、ヒンジ部500のパターンと同じ高さに製作してもよく、これよりも低い高さに製作してもよい。
【0035】
一方、本発明の実施形態による多方向入力装置は、携帯用端末をはじめとする様々な電子装置に適用可能である。即ち、携帯用電話機はもとより、デジタルカメラ、カメラ付きビデオ、MP3、PMP、PDA、GPS、ノート型パソコン、ゲーム機、リモコン、電子辞書などの様々な種類の電子装置に使用可能である。この種の電子装置は、画像を表示する画面表示部を備え、前記画面表示部内にはポインター又はカーソルが設けられる。電子装置は、画面表示部内のポインター又はカーソルは、入力装置を介して印加された入力信号に基づいて移動する。このような入力装置として、多方向入力装置が使用可能である。即ち、多方向入力装置のセンサー出力座標信号は制御部に印加され、制御部によって画面表示部内のポインター又はカーソルを移動させる。
【0036】
この実施形態による電子装置において使用可能な多方向入力装置は、これに限定されることなく、画面上のカーソルを動かすための様々なセンサーとセンサー駆動のための装置が更に設けられてもよい。例えば、光センサーを用いて操作部材の動きを感知して画面のカーソルを移動させることができる。
【0037】
本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、異なる様々な形態に実現可能である。即ち、上記の実施形態は本発明の開示を完全たるものにし、通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明の範囲は本願の特許請求の範囲によって理解さるべきである。
【符号の説明】
【0038】
100:ボタン部
200:ケース部
300:操作部材
400、450:磁石部
500:ヒンジ部
600:アクチュエータ
700:ドームスイッチ
800:基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁石部と、
前記磁石部を収容し、ユーザーの操作によって多方向に移動させられる操作部材と、
前記操作部材の少なくとも一方側を包囲するように設けられ、弾性力によって前記操作部材を初期の位置に戻すヒンジ部と、
を備え、
前記操作部材は、少なくとも一部が磁場遮断物質から製作された多方向入力装置。
【請求項2】
前記操作部材は、
内部に空間が設けられて前記磁石部が収容されるキャップ部と、
前記キャップ部の任意の領域から外方に向けて延設された平板部と、
を備える、請求項1記載の多方向入力装置。
【請求項3】
前記平板部の上部の前記キャップ部の上端にボタン部が結合され、前記平板部の下部の前記キャップ部の下端に前記ヒンジ部が結合される、請求項2に記載の多方向入力装置。
【請求項4】
前記操作部材は、前記キャップ部が前記磁場遮断物質から製作されるか、前記キャップ部及び前記平板部が前記磁場遮断物質から製作されるか、あるいは、前記磁石部と接する前記キャップ部の内側に前記磁場遮断物質が設けられる、請求項2記載の多方向入力装置。
【請求項5】
前記磁場遮断物質は、透磁率が200以上の金属、セラミック、ゴムの少なくともいずれか1種類から製作される、請求項4記載の多方向入力装置。
【請求項6】
前記キャップ部の下端から前記平板部に向けて延びて前記ヒンジ部の抜脱を防ぐ固定部を更に備える、請求項3記載の多方向入力装置。
【請求項7】
上ケース及び下ケースが組み合わせられて前記ヒンジ部及び前記操作部材を内部に収容するケース部を更に備え、前記下ケースの外側に上方に突き出て前記ヒンジ部の外側を固定する突出部を更に備える、請求項1記載の多方向入力装置。
【請求項8】
前記磁石部の下側に設けられたアクチュエータ及びドームスイッチを更に備え、前記ドームスイッチの上にアクチュエータが接触させられて接着手段によって貼り付けられる、請求項1に記載の多方向入力装置。
【請求項9】
前記接着手段は、前記アクチュエータを含む前記ドームスイッチの全体を覆うように設けられたテフロン(登録商標)テープを含む、請求項8記載の多方向入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−104482(P2012−104482A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244040(P2011−244040)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(509275998)イノチップ テクノロジー シーオー エルティディー (2)
【Fターム(参考)】