説明

多方向入力装置

【課題】高さ方向の寸法が小型化された多方向入力装置を提供すること。
【解決手段】操作軸の傾倒に伴って操作される第1、第2可変抵抗器6、7を備えた多方向入力装置1において、第1可変抵抗器6(7)は、抵抗体パターン611、集電体パターン612が設けられた絶縁基板61と、抵抗体パターン611、集電体パターン612にそれぞれ導通する端子613、614と、抵抗体パターン611、集電体パターン612上をそれぞれ摺動する第1、第2摺動子を有する回転部材62とを備え、抵抗体パターン611と集電体パターン612とが回転部材62の回転中心を挟んで対向して設けられ、絶縁基板61に対する端子614の取付部614aが抵抗体パターン611と集電体パターン612との内側に配置されると共に、端子613の取付部613aが端子614の取付部614aを挟んで操作軸の突出方向と交差する方向に対向して配置されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多方向入力装置に関し、特に、操作部材に対する周囲の任意方向への操作に応じて各種信号の入力を行う多方向入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、周囲の任意方向への操作が可能な操作軸を備え、この操作軸に対する操作方向及び操作量に応じて信号出力を行う多方向入力装置が知られている。このような多方向入力装置として、例えば、操作軸により回動される第1、第2連動部材と、第1連動部材を介して操作される第1可変抵抗器と、第2連動部材を介して操作される第2可変抵抗器とを備え、第1、第2可変抵抗器のそれぞれにおいて、第2摺動子が摺動する集電体パターンと、第1摺動子が摺動する抵抗体パターンとを同一円周上に配置したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−147175号公報、図4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の多方向入力装置においては、集電体パターン及び抵抗体パターンに導通される端子が、これらの下方側に配置されたかしめ部により絶縁基板に取り付けられているため、更なる高さ方向の寸法の小型化に対応することが困難であるという問題がある。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、高さ方向の寸法を小型化が可能な多方向入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の多方向入力装置は、ハウジングと、このハウジングにそれぞれ回動可能に設けられ、互いに直交する方向に延設される第1連動部材及び第2連動部材と、これらの第1連動部材及び第2連動部材の延設方向に対して交差する方向に突出して配置され、前記第1連動部材及び第2連動部材を回動させる傾倒可能な操作軸と、この操作軸の傾倒に伴って前記第1連動部材の回動を介して操作される第1回転型可変抵抗器及び第2連動部材の回動を介して操作される第2回転型可変抵抗器とを備えた多方向入力装置であって、前記第1回転型可変抵抗器及び第2回転型可変抵抗器のそれぞれは、円弧状の抵抗体パターンと集電体パターンとが設けられた絶縁基板と、この絶縁基板に取り付けられ前記抵抗体パターンと導通する一対の第1端子と、前記絶縁基板に取り付けられ前記集電体パターンと導通する第2端子と、前記抵抗体パターン上を摺動する第1摺動子及び前記集電体パターン上を摺動する第2摺動子を有する回転可能な回転部材とを備え、前記抵抗体パターンと前記集電体パターンとは、前記回転部材の回転中心を挟んで対向して設けられており、前記絶縁基板に対する前記第2端子の取付部が前記抵抗体パターンと前記集電体パターンとの内側に配置されると共に、前記絶縁基板に対する前記一対の第1端子のそれぞれの取付部が前記第2端子の取付部を挟んで前記操作軸の突出方向と交差する方向に対向して配置されることを特徴とする。
【0007】
上記多方向入力装置によれば、抵抗体パターンと集電体パターンとが回転部材の回転中心を挟んで対向して設けられ、第2端子の取付部が抵抗体パターンと集電体パターンとの内側に配置されると共に、この第2端子の取付部を挟んで一対の第1端子の取付部が操作軸の突出方向と交差する方向に対向して配置されていることから、第1、第2端子の取付部に要する絶縁基板の高さ方向のスペースを小さくできるので、第1、第2回転型可変抵抗器の所要スペースを縮小することができ、装置自体の高さ方向の寸法を小型化することが可能となる。
【0008】
上記多方向入力装置においては、前記第2端子の取付部を、円弧状をなした前記抵抗体パターンと前記集電体パターンとの中央部に設けることが好ましい。この場合には、第2端子の取付部が、円弧状をなした抵抗体パターンと集電体パターンとの中央部に設けられることから、抵抗体パターンと集電体パターンとを近づけても、第2端子のかしめ等による取付部の領域を確保することができるので、より絶縁基板の寸法を小型化することが可能となる。
【0009】
また、上記多方向入力装置において、前記第1端子及び第2端子は、前記抵抗体パターン及び集電体パターンが設けられた面側で前記第1端子及び第2端子の取付部により取り付けられ、前記第2端子の取付部の少なくとも一部は、前記回転部材における前記絶縁基板に対向する側に設けられた凹部に収容されることが好ましい。この場合には、第2端子の取付部の少なくとも一部が回転部材に設けられた凹部に収容されることから、絶縁基板と回転部材とを近接させることができるので、装置本体の幅方向の寸法を小型化することが可能となる。
【0010】
さらに、上記多方向入力装置において、前記回転部材には、回転中心線に沿って前記絶縁基板側に突出する突起部が設けられ、当該突起部の少なくとも一部が前記第2端子の取付部内に設けた凹部に収容されることが好ましい。この場合には、回転中心線に沿って設けられた突起部が、第2端子の取付部内の凹部に収容されることから、回転部材の回転中心を第2端子の取付部内に配置することができるので、第1摺動子及び第2摺動子を安定して抵抗体パターン及び集電体パターンに摺動させることが可能となる。
【0011】
さらに、上記多方向入力装置においては、前記回転部材の凹部の外側に設けられた突出壁部と対向する前記絶縁基板の位置に絶縁性のレジスト層を設けることが好ましい。この場合には、集電体パターンと第2端子の取付部とを導通させる導電体パターン(配線パターン)をレジスト層で保護することができるので、回転部材の突出部により導電体パターンが削られる事態を防止することが可能となる。
【0012】
さらに、上記多方向入力装置においては、前記第1端子の取付部の少なくとも一部が、円弧状をなした前記抵抗体パターンの延長上に位置することが好ましい。この場合には、第1端子の取付部を、第2端子の取付部の近傍に配置することができるので、絶縁基板の幅方向の寸法を小型化することが可能となる。
【0013】
さらに、上記多方向入力装置においては、前記抵抗体パターンと前記集電体パターンとが、前記回転部材の回転中心を挟んで前記操作軸の突出方向に対向して配置されると共に、前記第1端子の取付部と前記第2端子の取付部とが同一直線上に位置しており、当該直線が前記操作軸の突出方向に対して交差することが好ましい。この場合には、円弧状の抵抗体パターンと集電体パターンとが回転部材の回転中心を挟んで操作軸の突出方向に対向配置されると共に、第1端子の取付部と第2端子の取付部とが直線上に配置され、その直線が操作軸の突出方向に対して交差することから、抵抗体パターン及び集電体パターン、並びに、第1端子及び第2端子の取付部をスペース効率良く絶縁基板に配置することができ、絶縁基板の寸法を更に小型化することが可能となる。
【0014】
さらに、上記多方向入力装置においては、前記操作軸の軸線方向に対する押圧操作により駆動されるプッシュスイッチを備え、前記回転部材には、前記第1連動部材又は第2連動部材の連結部に対応する位置に前記操作軸の軸線方向に沿って溝部が形成され、前記操作軸に対する押圧操作に伴う前記連結部との係合を回避することが好ましい。この場合には、操作軸に対する押圧操作に伴う第1連動部材又は第2連動部材の連結部と回転部材との係合を回避できるので、プッシュスイッチを駆動するための押圧操作に伴って第1連動部材又は第2連動部材が回動するのを防止でき、信号の誤出力を防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、抵抗体パターンと集電体パターンとが回転部材の回転中心を挟んで対向して設けられ、第2端子の取付部が抵抗体パターンと集電体パターンとの内側に配置されると共に、この第2端子の取付部を挟んで一対の第1端子の取付部が操作軸の突出方向と交差する方向に対向して配置されていることから、第1、第2端子の取付部に要する絶縁基板の高さ方向のスペースを小さくできるので、第1、第2回転型可変抵抗器の所要スペースを縮小することができ、装置自体の高さ方向の寸法を小型化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態に係る多方向入力装置の分解斜視図である。
【図2】上記実施の形態に係る多方向入力装置が有する回転型可変抵抗器の拡大図である。
【図3】上記実施の形態に係る多方向入力装置を組み立てた状態の斜視図である。
【図4】図3に示す本多方向入力装置から上側ケース及び第1、第2回転型可変抵抗器を取り外した場合の斜視図である。
【図5】上記実施の形態に係る多方向入力装置の操作状態を説明するための斜視図である。
【図6】上記実施の形態に係る多方向入力装置の操作状態を説明するための斜視図である。
【図7】上記実施の形態に係る多方向入力装置の操作状態を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る多方向入力装置1の分解斜視図である。図2は、本実施の形態に係る多方向入力装置1が有する第1回転型可変抵抗器6を分解した拡大図である。図3は、本実施の形態に係る多方向入力装置1を組み立てた状態の斜視図である。なお、以下においては、説明の便宜上、図1及び図3に示す上下方向を、「多方向入力装置1の上下方向」と呼ぶものとする。
【0018】
図1に示すように、本実施の形態に係る多方向入力装置1は、概して箱状のハウジング2内に、多方向入力装置1の上下方向に延在する操作軸3と、操作軸3に対する傾倒操作に応じて回動する第1連動部材4及び第2連動部材5と、操作軸3の傾倒に伴って第1連動部材4の回動を介して操作される第1回転型可変抵抗器(以下、「第1可変抵抗器」という)6と、操作軸3の傾倒に伴って第2連動部材5の回動を介して操作される第2回転型可変抵抗器(以下、「第2可変抵抗器」という)7と、操作軸3に対する押圧操作に応じて駆動されるプッシュスイッチ8とを含んで構成され、操作軸3に対する傾倒操作及び押圧操作に応じた信号出力を行うことが可能となっている。
【0019】
ハウジング2は、図1に示すように、装置本体の底面部を構成する下側ケース21と、装置本体の所定の構成部品が取り付けられた状態の下側ケース21に上側から被せられる上側ケース22とから構成されている。このような下側ケース21と、上側ケース22と、後述する第1可変抵抗器6、第2可変抵抗器7の絶縁基板61、71との内部には一定の空間が形成される。この空間内に本多方向入力装置1の各種の構成部材が収納される。
【0020】
下側ケース21は、例えば、絶縁性の樹脂材料を成形して構成され、略矩形状をなした平板形状を有する底面部211と、この底面部211の隣接する一対の側縁部に立設される側面部212a、212bとを有している。底面部211の中央部には正方形状の凹部211aが設けられ、この凹部211aには円形状をなし、プッシュスイッチ8を構成する可動接点板81を収容する収容部211bが設けられている。この収容部211bの表面には、プッシュスイッチ8を構成する固定接点(中央固定接点、周辺固定接点)82の一部が露出するように埋設されている。この固定接点の端部82aは、側面部212a、212bが設けられた底面部211の側面から下方側に導出されて、外部端子を構成している。なお、このような固定接点82は、下側ケース21を製造する際にインサート成形される。
【0021】
下型ケース21の底面部211における凹部211aの外側であって、その各辺の中央部には、上方側に向けて延出する4つの支持片213が設けられている。これらの支持片213は、第1連動部材4、第2連動部材5の一部を回動可能に保持する。これらの支持片213の上端部には、円弧形状の凹部213aが設けられている。なお、側面部212aの内側に設けられた支持片213の凹部213aは、他の支持片213の凹部213aよりも深さ寸法が大きく設けられている。これは、詳細について後述するように、操作軸3の押圧操作に伴う第2連動部材5の下方移動を許容するためである。また、底面部211における側面部212a、212bに挟まれる角部と対角線上に配置される角部には、上方側に向けて延出する軸部214が設けられている。この軸部214は、上側ケース22を下側ケース21に取り付ける際に位置合わせ用に利用される。
【0022】
上側ケース22は、例えば、絶縁性の樹脂材料を成形して構成され、概して下方側に開口した箱状に設けられている。上側ケース22は、円形状の開口部221aが形成された上面部221と、この上面部221の下面であって開口部221aよりも外側の位置に垂下して設けられた4つの平板状の側面部223とを有している。そして、4つの側面部223により、その内側に下面視して略矩形状の収容空間が形成されている。上面部221における隣接する一対の側縁部には、それぞれ上面部221と同一平面上に延伸する位置決め片221bと、この位置決め片221bの両側方側に設けられた係止片221cが設けられている。また、係止片221cと離間して対向する4つ(二対)の係止片223cが、上側ケース22の下部から延出して設けられている。これらの位置決め片221bにより位置決めされた、後述する第1可変抵抗器6、第2可変抵抗器7の絶縁基板61、71の上端部が係止片221cにより係止されると共に、絶縁基板61、71の下端側が係止片223cによって係止される。
【0023】
側面部223は、上側ケース22が下側ケース21に取り付けられた場合に底面部211の支持片213に対応する位置に設けられている。それぞれの側面部223の下端部の中央には、下側ケース21の支持片213を収容する矩形状の凹部223aが設けられており、この矩形状の凹部223aの中央部には、円弧形状の凹部223bが設けられている。これらの凹部223bは、下側ケース21の支持片213に保持された第1連動部材4、第2連動部材5の一部を回動可能に保持(支持)した状態で収容する。係止片221cが設けられた上面部221に対応する一対の側面部223の角部には、位置決め孔224が設けられている。この位置決め孔224は、上側ケース22が下側ケース21に取り付けられた場合に底面部211の軸部214に対応する位置に設けられ、この軸部214が挿通されるように構成されている。
【0024】
操作軸3は、例えば、絶縁性の樹脂材料を成形して構成され、角棒状の軸部31と、この軸部31の下端部に設けられた連結部32とを有している。軸部31は、長方形状の断面を有する角棒状に構成され、図1等において上方側に突出している。連結部32の中央部には、円形状の貫通孔32aが設けられている。この貫通孔32aには、その内部を貫通するように連結部材9が配置される。連結部材9は、後述する第2連動部材5の挿通孔51aに挿通された状態で貫通孔32aに貫通している。これにより、操作軸3が押圧操作を受け付けると、第2連動部材5は、操作軸3と共に下方側に移動し、押圧操作が解除されると、操作軸3と共に上方側に移動する。なお、操作軸3の軸部31は、角棒状に限られず、例えば円柱状(円筒状)であってもよい。
【0025】
第1連動部材4は、例えば、絶縁性の樹脂材料を成形して構成される。第1連動部材4は、成形加工により図1に示す上方側に向かってアーチ状に湾曲形成されると共に、そのアーチ状部分の長手方向に沿って長孔からなるスリット孔41が形成されている。このスリット孔41は、操作軸3の軸部31の長辺の寸法と略同一の幅に設定されている。また、第1連動部材4の長手方向の両端には、側面部42が設けられている。これらの側面部42には、それぞれ装置本体の側方側に突出して設けられる、概して円形状の突出部42aが設けられている(図1に示す紙面奥側の突出部42aについては不図示)。これらの突出部42aのうち、第1可変抵抗器6に対向して配置される突出部42aには、断面が長方形状の連結部としての連結片42bが設けられている。この連結片42bは、操作軸3の傾倒動作に伴う第1連動部材4の回動を後述する第1可変抵抗器6の回転部材62に伝達する。また、側面部42(側面部42の近傍を含む)の下方側には、後述するばね受け部材112と当接する平面状をした平坦部が設けられている。
【0026】
第2連動部材5は、第1連動部材4の下方側に、第1連動部材4に対して直交するように延在して配設されている。第2連動部材5は、例えば、絶縁性の樹脂材料を成形して構成され、対向して配置される長尺の一対の側面部51と、これらの側面部51の両端部同士を連結する連結部52とを有している。これらの側面部51及び連結部52の内側には、上面視にて概して長方形状の長孔からなる開口部53が設けられている。側面部51の中央には、上述した連結部材9が挿通される挿通孔51aが設けられている。開口部53に操作軸3の連結部32を収容した状態において、挿通孔51aに挿通された連結部材9を連結部32の貫通孔32aに貫通させることで、操作軸3と第2連動部材5とが連結される。連結部52には、それぞれ装置本体の側方側に突出して設けられる、概して円形状の突出部52aが設けられている。これらの突出部52aのうち、第2可変抵抗器7に対向して配置される突出部52aには、断面が長方形状の連結部としての連結片52bが設けられている。この連結片52bは、操作軸3の傾倒動作に伴う第2連動部材5の回動を後述する第2可変抵抗器7の回転部材72に伝達する。また、連結部52の下方側には、後述するばね受け部材112と当接する平面状をなした平坦部が設けられている。なお、第2連動部材5に連結部材9の機能を有する軸部を一体に形成して、この軸部に操作軸3に設けた係合部を例えばスナップ係合して操作軸3を第2連動部材5に対して、傾動可能に構成しても良い。
【0027】
第1可変抵抗器6は、下側ケース21の底面部211及び上側ケース22の上面部221に垂直に配設される絶縁基板61と、この絶縁基板61の内側に配設される回転部材62とから構成されている。絶縁基板61の内面には、図2に示すように、抵抗体パターン611と集電体パターン612とが設けられている。例えば、抵抗体パターン611は、絶縁基板61に設けたカーボン層で構成され、集電体パターン612は、絶縁基板61に銀ペーストを印刷形成して設けた銀層にカーボン層を重ねて構成されている。
【0028】
また、絶縁基板61には、抵抗体パターン611の両端部とそれぞれ導通し、抵抗体パターン611に電圧を印加可能とする第1端子としての一対の端子613と、集電体パターン612と導通し、検出電圧などの電気信号を外部出力する第2端子としての端子614とが設けられている。金属材からなる、これらの端子613、614は、絶縁基板61の外面に設けられ、装置本体の下方側に導出されている。端子613、614は、絶縁基板61に設けられた孔61a、61bを介して外側(抵抗体パターン611等が形成されていない面側)から挿入された端子613、614の筒状をなした部分(筒状部)の一部(先端)を鳩目形状にかしめるなどで変形して設けた取付部613a、614aにより絶縁基板61の内面側から抵抗体パターン611、集電体パターン612に導通するように固着されている。
【0029】
なお、ここでは、端子613、614の一部を鳩目形状にかしめなどで変形して取付部613a、614aを設ける場合について説明しているが、取付部613a、614aの構成についてはこのかしめ形状に限定されるものではない。例えば、かしめられる筒状部にスリットを入れて複数に分割されたかしめ片を筒状部の先端に形成しておき、各かしめ片を外側に変形させて端子をかしめてもよい。さらに、取付部613a、614aの構成は、かしめに限定されず、例えば、孔61a、61bを介して挿入された端子613、614の一部を折り曲げて半田や導電性接着剤等により抵抗体パターン611、集電体パターン612に導通可能に固着するようにしても良い。
【0030】
絶縁基板61に設けられた孔61bは、一対の孔61aの間に配置されており、これらの孔61a及び孔61bは、同一直線上に位置するように配置されている。抵抗体パターン611は、孔61bの上方側領域において、孔61bの中心を中心点として円弧状に設けられている(図2に示す実線斜線部分)。一方、集電体パターン612は、孔61bの下方側領域において、孔61bの中心を中心点とした円弧状(抵抗体パターン611と略同一の半径を有する円弧状)に設けられている(図2に示す点線斜線部分)。すなわち、抵抗体パターン611と集電体パターン612とは、孔61b(回転部材62の回転中心)を挟んで操作軸3の突出方向に沿った上下方向に対向して絶縁基板61に設けられている。なお、集電体パターン612は、抵抗値が小さい導電性のパターンであることから、後述する第2摺動子623bが摺動可能であれば、矩形状等、円弧状でなくても構わない。この場合において、集電体パターン612は、円弧状の抵抗体パターン611を周方向に回転させた場合に、この仮想の抵抗体パターン611と集電体パターン612とがオーバーラップするように、すなわち、抵抗体パターン611の周方向における延長線上に集電体パターン612の少なくとも一部が位置するように設けるのが好ましい。また、抵抗体パターン611を孔61bの下方側領域に、集電体パターン612を孔61bの上方側領域に設けてもよい。さらに、両パターン611、612は、回転中心を挟んで完全に上下に分かれていなくても構わない。
【0031】
絶縁基板61を貫通した一対の孔61a及び孔61bの周辺には、概して円形状の導電体パターン615a、615bが設けられている(孔61b周辺の導電体パターン615bは不図示)。これらの導電体パターン615a、615bは、絶縁基板61に設けた銀層にカーボン層を重ねて構成されている。孔61aの周辺に設けられた導電体パターン615aは、円弧状をなす抵抗体パターン611の端部に接続されている。端子613の取付部613aは、これらの導電体パターン615aに固着されている。この場合において、端子613の取付部613aは、その少なくとも一部が円弧状をなす抵抗体パターン611の延長上に配置されている。このように端子613の取付部613aを抵抗体パターン611の延長上に配置することにより、端子613の取付部613aを、端子614の取付部614aの近傍に配置でき、絶縁基板61の幅方向の寸法を小型化することができるものとなっている。
【0032】
一方、孔61bの周辺に設けられた導電体パターン615bは、抵抗体パターン611の内側に配置され、集電体パターン612の内周部に接続されている。端子614の取付部614aは、この導電体パターン615bに固着されている。すなわち、端子614の取付部614aは、抵抗体パターン611及び集電体パターン612の内側に配置されている。
【0033】
このように本実施の形態に係る多方向入力装置1においては、端子614の取付部614aが抵抗体パターン611と集電体パターン612との内側に配置されると共に、端子613の取付部613aが端子614の取付部614aを挟んで絶縁基板61の側方側に対向して配置されている。これにより、端子613、614の取付部613a、614aに要する絶縁基板61の高さ方向のスペースを小さくすることができるものとなっている。
【0034】
特に、本実施の形態に係る多方向入力装置1においては、端子614の取付部614aを抵抗体パターン611と集電体パターン612との中央部に設けている。これにより、抵抗体パターン611と集電体パターン612とを近づけて配置しても、端子614のかしめ等による取付部614aの領域を絶縁基板61上に確保することができるので、より絶縁基板61の高さ方向の寸法を小型化することができるものとなっている。
【0035】
また、本実施の形態において、絶縁基板61に設けられた一対の孔61a及び孔61bは、同一直線上に配置されている。絶縁基板61は、これらの一対の孔61a及び孔61bで形成される直線が、初期状態における操作軸3の突出方向に沿った軸線と直交状態で交差するように下側ケース21に取り付けられている。これにより、端子613、614の取付部613a、614aが直線上に配置され、その直線が操作軸3の突出方向に沿った軸線と直交状態で交差することから、絶縁基板61における端子613、614の取付部613a、614aに要するスペースを小さくすることができ、絶縁基板61の高さ方向の寸法を抑制することができるものとなっている。
【0036】
また、絶縁基板61における導電体パターン615bの上層には、円環形状をした絶縁性のレジスト層616が設けられている。このようにレジスト層616を設けたのは、後述する回転部材62の凸部との接触により集電体パターン612と端子614の取付部614aとを導通させる導電体パターン615bが削られる事態を防止するためである。このように導電体パターン615bの上層にレジスト層616を設けることにより、安定した信号出力の実現が図られている。
【0037】
第1可変抵抗器6を構成する回転部材62は、例えば、絶縁性の樹脂材料を成形して構成され、概して円柱形状を有する基部621と、この基部621の周面から外周側に延出して設けられた一対の腕部622a、622bとを有している。また、回転部材62には、絶縁基板61に設けられた抵抗体パターン611上を摺動可能な第1摺動子623aと、集電体パターン612上を摺動可能な第2摺動子623bとを有する摺動部材623が埋設されている。摺動部材623は、第1摺動子623a及び第2摺動子623bを連結した一部材からなり、回転部材62の製造時にインサート成形される。
【0038】
摺動部材623において、第1摺動子623aは、その先端部が腕部622aから露出するように設けられ、第2摺動子623bは、その先端部が腕部622bから露出するように設けられている。これらの第1摺動子623a及び第2摺動子623bの露出部分は、基部621の周方向に沿って同一方向に延出するように設けられている。また、これらの第1摺動子623a及び第2摺動子623bは、その先端部近傍にて抵抗体パターン611及び集電体パターン612上を円弧状の軌跡を描くように摺動可能に構成されている。
【0039】
また、回転部材62の基部621における絶縁基板61と対向する面には、凹部624が設けられている。この凹部624の外周には、円環状の突出壁部625が設けられている。また、凹部624の中央には、絶縁基板61側に突出する円柱状の突起部626が設けられている。第1可変抵抗器6が本多方向入力装置1に組み込まれた状態において、突起部626は、絶縁基板61に設けられた孔61b内にその一部が収容される。一方、この孔61bの周辺の導電体パターン615bに固着される端子614の取付部614aは、凹部624内にその一部が収容される。また、円環状の突出壁部625は、この端子614の取付部614aの外周側のレジスト層616に対向して配置されている。
【0040】
このように本実施の形態に係る多方向入力装置1においては、回転部材62の回転中心線に沿って設けられた突起部626の一部が、端子614の取付部614a内の凹部としての孔61bに収容されることから、回転部材62の回転中心を端子614の取付部614a内に配置することができるので、第1摺動子623a及び第2摺動子623bを安定して抵抗体パターン611及び集電体パターン612に摺動させることができるものとなっている。また、端子614の取付部614aの一部が,回転部材62に設けられた凹部624に収容されることから、絶縁基板61と回転部材62とを近接させることができるので、装置本体の幅方向の寸法を小型化することができるものとなっている。
【0041】
一方、基部621における凹部624とは反対側の面には、装置本体の内側に突出する一対の突出片627が設けられている。これらの突出片627は、一定距離挟んで対向して配置されている。これらの突出片627の間には、第1連動部材4の連結片42bを収容する溝部628が設けられている。この溝部628は、第1連動部材4の連結片42bの短辺よりも僅かに広い幅を有し、操作軸3の軸線方向(すなわち、図1に示す上下方向)に沿って形成されている。連結片42bが溝部628に収容された状態において、第1連動部材4が回動すると、その回転力が回転部材62に伝達される。
【0042】
なお、第2可変抵抗器7は、第1可変抵抗器6と共通する構成を有するため、その説明を省略する。第2可変抵抗器7の符号は、第1可変抵抗器6と同様の要領(すなわち、第1可変抵抗器6を第2可変抵抗器7に置き換える要領)で付与されるものとする。第2可変抵抗器7において、回転部材72の内側に設けられる溝部728には、第2連動部材5の連結片52bが連結され、操作軸3に対する傾倒操作に伴って第2連動部材5が回動すると、その回転力が回転部材72に伝達されるものとなっている。一方、操作軸3の押圧操作に伴って連結片52bが上下移動する場合には、溝部52bの上端部又は下端部から進退可能に構成されている。
【0043】
プッシュスイッチ8は、上述したように、下側ケース21の底面部211の収容部211bに収容される可動接点板81と、この収容部211bに埋設された固定接点82とから構成される。可動接点板81は、僅かに上方側に膨出するドーム状に設けられており、収容部211bに収容された状態で中央部が固定接点(中央固定接点)から離間した状態となっている。また、可動接点板81は、操作軸3に対する押圧操作に応じて反転し、固定接点(中央固定接点)に接触可能に構成されている。なお、固定接点82の端部82aは、下側ケース21の側面から下方側に導出され、操作軸3に対する押圧操作に応じた信号を外部出力可能に構成されている。
【0044】
なお、本実施の形態に係る多方向入力装置1においては、プッシュスイッチ8に埃や塵が浸入しないように、可動接点板81の上方側からシール部材10が下側ケース21の底面部211に貼り付けられる。このシール部材10は、概して矩形状を有し、底面部211に設けられた凹部211aに貼り付けられる。
【0045】
このシール部材10の上方側であって、第2連動部材5の下方側には、操作軸3の自動復帰機構11が配設されている。自動復帰機構11は、シール部材10上に載置され、下側ケース21に支持されるばね部材である円錐ばね111と、この円錐ばね111の付勢力を受けると共に、その上面で第1連動部材4及び第2連動部材5を支持するばね受け部材112とから構成されている。円錐ばね111の内側には、開口部111aが設けられている。押圧操作が行われた操作軸3は、この開口部111aを通過可能に構成されている。
【0046】
ばね受け部材112は、例えば、絶縁性の樹脂材料を成形して構成され、概して矩形状を有する平面形状部113と、この平面形状部113の四隅から上方側に向けて立設された4本のガイド部材114とを有している。平面形状部113は、操作軸3の非操作状態(初期状態)において、第1連動部材4及び第2連動部材5の下面側に設けられた平坦部と面接触して当接している。平面形状部113の中央には、円形状の開口部113aが設けられている。この開口部113aの周縁部には、テーパ面113bが設けられている。
【0047】
このような自動復帰機構11において、第1連動部材4や第2連動部材5が操作軸3の傾動(傾倒操作)に応じて回動すると、第1連動部材4や第2連動部材5の回動した平坦部の角部により平面形状部113が下方側に押圧され、ばね受け部材112は、円錐ばね111の付勢力に抗して下方側へ移動する。一方、操作軸3に対する傾倒操作が解除されると、ばね受け部材112は、円錐ばね111の付勢力に応じて上方側へ移動する。これにより、平面形状部113と角部が接していた第1連動部材4や第2連動部材5の平坦部が、平面形状部113と面接触した状態に戻ると共に、第1連動部材4や第2連動部材5が初期位置に回動するものとなる。したがって、これらの第1連動部材4、第2連動部材5を介して操作軸3を初期位置に復帰させることが可能となる。
【0048】
このような構成を有する多方向入力装置1を組み立てると、図3に示すように、下側ケース21の軸部214が、上側ケース22の位置決め孔224に挿通された状態で一体化され、ハウジング2が構成されている。第1回転型可変抵抗器6、第2回転型可変抵抗器7の絶縁基板61、71は、位置決め片221b等により位置決めされた状態で係止片221c、223cにより係止することにより上側ケース22に保持されている。操作軸3の軸線に沿った上方向に突出した軸部31の上端部、並びに、第1連動部材4の上方側の一部を上側ケース22の開口部221aから露出した状態で、各構成部品がハウジング2及び絶縁基板61、71内の空間に収納される。なお、本実施の形態では、下側ケース21の側面部212a、212bには矩形状の係合孔が形成されており、この係合孔に上側ケース22に設けられた図示しない係合突部が係合してスナップ止めされることにより、両ケース21、22は一体化されている。ただし、両ケース21、22を一体化させる手段はこれに限られず、係合孔と係合突部を逆に形成してスナップ止めしてもよい。さらには、ネジ止めや接着剤を用いて一体化しても構わない。
【0049】
図4は、図3に示す本多方向入力装置1から上側ケース22及び第1、第2可変抵抗器6、7を取り外した場合の非操作状態(初期状態)における斜視図である。図4に示すように、上側ケース22の内部においては、第1連動部材4の下方に第2連動部材5が直交して配設されている。第1連動部材4は、長手方向の両端部がばね受け部材112の平面形状部113上に載置されると共に、その突出部42aの下面を下側ケース21の支持片213に保持された状態で配設されている。同様に、第2連動部材5は、両端の連結部52がばね受け部材112の平面形状部113上に載置されると共に、その突出部52aの下面を下側ケース21の支持片213に保持された状態で配設されている。
【0050】
第1、第2連動部材4、5の突出部42a、52aに設けられた連結片42b、52bは、操作軸3の軸線方向に沿って長辺を配置した状態となっている。これらの連結片42b、52bは、それぞれ第1、第2可変抵抗器6、7の回転部材62、72の溝部628、728に収容されている(図2参照)。第1連動部材4の回動は、連結片42bと、溝部628を規定する一対の突出片627との係合により回転部材62に伝達される。同様に、第2連動部材5の回動は、連結片52bと、溝部728を規定する一対の突出片727との係合により回転部材72に伝達される。
【0051】
操作軸3は、ハウジング2内において直交して配設される第1連動部材4のスリット孔41及び第2連動部材5の開口部53に挿通されている。そして、操作軸3は、第2連動部材5の挿通孔51aに挿通された連結部材9が連結部32の貫通孔32aを貫通することで、第1、第2連動部材4、5に連結されている。本実施の形態に係る多方向入力装置1においては、このように第1、第2連動部材4、5に連結される操作軸3で操作者から傾倒操作及び押圧操作を受け付け可能に構成されている。なお、操作軸3が操作されていない初期状態において、操作軸3は、第1連動部材4及び第2連動部材5の延設方向(長手方向)に対して、直交状態で交差する方向(図4の上方向)に突出して配設されている。
【0052】
以下、本実施の形態に係る多方向入力装置1において、傾倒操作を受け付けた場合の動作の一例について説明する。図5〜図7は、本実施の形態に係る多方向入力装置1で傾倒操作を受け付けた場合の操作状態を説明するための斜視図である。なお、図5〜図7においても、図4と同様に、上側ケース22及び第1、第2可変抵抗器6、7を除いて示している。図5においては、第2連動部材5の長手方向(A方向)に操作軸3を傾倒操作した場合の斜視図を示し、図6においては、第1連動部材4の長手方向(B方向)に操作軸3を傾倒操作した場合の斜視図を示し、図7においては、下側ケース21の側面部212a、212bが交差する角部方向(C方向)に操作軸3を傾倒操作した場合の斜視図を示している。
【0053】
図5に示すように、操作軸3に対する第2連動部材5の長手方向(A方向)への傾倒操作は、第1連動部材4における図5に示すX方向の回転運動に変換される。第1連動部材4のX方向の回動に伴って連結片42bが回動すると、不図示の回転部材62が同一方向に回転する。この場合、回転部材62に埋設された第1、第2摺動子623a、623bは、それぞれ絶縁基板61の抵抗体パターン611、集電体パターン612上を摺動し、これらの摺接位置に応じた信号が端子614から外部出力されるものとなっている。
【0054】
同様に、図6に示すように、操作軸3に対する第1連動部材4の長手方向(B方向)への傾倒操作は、第2連動部材5における図6に示すY方向の回転運動に変換される。第2連動部材5のY方向の回動に伴って連結片52bが回動すると、不図示の回転部材72が同一方向に回転する。この場合、回転部材72に埋設された第1、第2摺動子723a、723bは、それぞれ絶縁基板71の抵抗体パターン711、集電体パターン712上を摺動し、これらの摺接位置に応じた信号が端子714から外部出力されるものとなっている。
【0055】
また、図7に示すように、操作軸3に対する下側ケース21の側面部212a、212bが交差する角部方向(C方向)への傾倒操作は、第1連動部材4における図7に示すX方向及び第2連動部材5における図7に示すY方向の回転運動に変換される。第1連動部材4のX方向の回動に伴って連結片42bが回動すると、図5の場合と同様に、第1、第2摺動子623a、623bの摺接位置に応じた信号が端子614から外部出力される。また、第2連動部材5のY方向の回動に伴って連結片52bが回動すると、図6の場合と同様に、第1、第2摺動子723a、723bの摺接位置に応じた信号が端子714から外部出力される。
【0056】
これらのように操作軸3に対する傾倒操作に応じた信号を外部出力する第1(第2)可変抵抗器6(7)において、本実施の形態に係る多方向入力装置1では、抵抗体パターン611(711)と集電体パターン612(712)とが回転部材62(72)の回転中心を挟んで対向して設けられ、端子614(714)の取付部614a(714a)が抵抗体パターン611(711)と集電体パターン612(712)との内側に配置されると共に、この端子614(714)の取付部614a(714a)を挟んで一対の端子613のそれぞれの取付部613aが絶縁基板61(71)の側方側(操作軸3の突出方向と交差する方向)に対向して配置されている。このことから、端子613、614(713、714)の取付部613a、614a(713a、714a)に要する絶縁基板61(71)の高さ方向のスペースを小さくできるので、第1、第2可変抵抗器6(7)の所要スペースを縮小することができ、装置自体の高さ方向の寸法を小型化することが可能となる。
【0057】
一方、本実施の形態に係る多方向入力装置1において、操作軸3が軸線方向への押圧操作を受け付けた場合には、円錐ばね111の付勢力に抗して、連結部材9を介して操作軸3に連結された第2連動部材5のみが下方側に押圧される。下側ケース21において、第2連動部材5を保持する一方の支持片213(連結片52bが設けられていない方の突出部52aに対応する支持片213)には、他方の支持片213よりも深さ寸法が大きい凹部213aが設けられている。このため、第2連動部材5が押圧されると、第2連動部材5における上記他方の支持片213を回動支点として、上記一方の支持片213側の部分が押し下げられる。この場合、連結片52bは、僅かに上方側に移動するが、回転部材72には、連結片52bと同一方向に延在する溝部728が設けられているため、このような第2連動部材5の動作を制限することはない。
【0058】
この場合において、回転部材62、72には、第1連動部材4又は第2連動部材5の連結片42b、52bに対応する位置に操作軸3の軸線方向に沿って溝部628、728が形成され、操作軸3に対する押圧操作に伴う連結片42b、52bとの係合を回避可能に構成されている。これにより、プッシュスイッチ8を駆動するための押圧操作に伴って第1連動部材4又は第2連動部材5が回動するのを防止でき、信号の誤出力を防止することができるものとなっている。
【0059】
このように下方側への移動を許容する第2連動部材5と共に操作軸3が下方側に移動すると、その下端部がシール部材10を介して可動接点板81に当接する。そして、一定位置以上に操作軸3が押し下げられると、可動接点板81が反転され、下側ケース21の底面部211に埋設された固定接点(中央固定接点)82と接触する。これにより、プッシュスイッチ8がオン状態に切り替えられるものとなっている。
【0060】
なお、上述したような操作軸3に対する傾倒操作及び押圧操作が解除された場合には、自動復帰機構11を構成する円錐ばね111の付勢力によりばね受け部材112が押し上げられる。そして、ばね受け部材112が押し上げられると、第1連動部材4及び第2連動部材5の両方の平坦部が平面形状部113と面接触して当接している初期状態に復帰する。これにより、直交する長孔である開口部53とスリット孔41に挿通されている操作軸3が初期位置に復帰されるものとなっている。
【0061】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0062】
例えば、上記実施の形態の第1(第2)可変抵抗器6(7)においては、端子614(714)の取付部614a(714a)を挟んで端子613(713)の取付部613a(713a)が絶縁基板61(71)の側方側に対向して配置される場合について説明しているが、端子613(713)の取付部613a(713a)の配置については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、操作軸3の軸線方向と交差する方向に含まれる任意の方向に配置することが考えられる。また、一対の端子613(713)の取付部613a(713a)を取付部614a(714a)に対して、斜め下方側や斜め上方側に設けてもよい。しかしながら、絶縁基板61(71)の高さ方向の寸法の小型化という観点からすると、上記実施の形態のように配置することが好ましい。
【0063】
また、上記実施の形態の第1(第2)可変抵抗器6(7)においては、端子613(713)、614(714)の取付部613a(713a)、614a(714a)を同一直線上に位置するように配置する場合について説明しているが、これらの配置については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。厳密に同一直線上に配置されていない場合であっても、絶縁基板61(71)の高さ方向の寸法の小型化という効果が得られる範囲内において、端子613(713)、614(714)の取付部613a(713a)、614a(714a)をずらしても構わない。なお、本発明(明細書)において、「第1端子の取付部と第2端子の取付部とが同一直線上に位置しており」とは、同一直線上に、取付部613a(713a)と取付部614a(714a)の少なくとも一部が位置しているものを含む概念である。
【0064】
また、集電体パターン612(712)は、抵抗体パターン611(711)と端子614(714)の取付部614a(714a)を挟んで対向配置されていればよく、円弧状である必要はない。
【0065】
また、自動復帰機構11の構成は、上述した本実施の形態に限られない。例えば、円錐ばね111の代わりに円筒状をなしたコイルばねでもよく、ばね受け部材を省略してこのコイルばねの一部で直接、第1、第2連動部材4、5を上方側へ付勢することも可能である。
【0066】
さらに、自動復帰機構やプッシュスイッチを備えていない多方向入力装置に本発明を適用しても構わない。
【符号の説明】
【0067】
1 多方向入力装置
2 ハウジング
21 下側ケース
211 底面部
211a 凹部
212a、212b 側面部
213 支持片
214 軸部
22 上側ケース
221 上面部
221a 開口部
221b 位置決め片
221c、223c 係止片
3 操作軸
31 軸部
32 連結部
32a 貫通孔
4 第1連動部材
41 スリット孔
42 側面部
42a 突出部
42b 連結片
5 第2連動部材
51 側面部
52 連結部
52a 突出部
52b 連結片
53 開口部
6 第1可変抵抗器(第1回転型可変抵抗器)
61 絶縁基板
61a、61b 孔
611 抵抗体パターン
612 集電体パターン
613、614 端子
613a、614a 取付部
615a、615b 導電体パターン
616 レジスト層
62 回転部材
621 基部
622a、622b 腕部
623a 第1摺動子
623b 第2摺動子
624 凹部
625 突出壁部
626 突起部
627 突出片
628 溝部
7 第2可変抵抗器(第2回転型可変抵抗器)
71 絶縁基板
71a、71b 孔
711 抵抗体パターン
712 集電体パターン
713、714 端子
713a、714a 取付部
715a、715b 導電体パターン
716 レジスト層
72 回転部材
721 基部
722a、722b 腕部
723a 第1摺動子
723b 第2摺動子
724 凹部
725 突出壁部
726 突起部
727 突出片
728 溝部
8 プッシュスイッチ
81 可動接点板
82 固定接点
9 連結部材
10 シール部材
11 自動復帰機構
111 円錐ばね
112 ばね受け部材
113 平面形状部
114 ガイド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、このハウジングにそれぞれ回動可能に設けられ、互いに直交する方向に延設される第1連動部材及び第2連動部材と、これらの第1連動部材及び第2連動部材の延設方向に対して交差する方向に突出して配置され、前記第1連動部材及び第2連動部材を回動させる傾倒可能な操作軸と、この操作軸の傾倒に伴って前記第1連動部材の回動を介して操作される第1回転型可変抵抗器及び第2連動部材の回動を介して操作される第2回転型可変抵抗器とを備えた多方向入力装置であって、
前記第1回転型可変抵抗器及び第2回転型可変抵抗器のそれぞれは、円弧状の抵抗体パターンと集電体パターンとが設けられた絶縁基板と、この絶縁基板に取り付けられ前記抵抗体パターンと導通する一対の第1端子と、前記絶縁基板に取り付けられ前記集電体パターンと導通する第2端子と、前記抵抗体パターン上を摺動する第1摺動子及び前記集電体パターン上を摺動する第2摺動子を有する回転可能な回転部材とを備え、前記抵抗体パターンと前記集電体パターンとは、前記回転部材の回転中心を挟んで対向して設けられており、前記絶縁基板に対する前記第2端子の取付部が前記抵抗体パターンと前記集電体パターンとの内側に配置されると共に、前記絶縁基板に対する前記一対の第1端子のそれぞれの取付部が前記第2端子の取付部を挟んで前記操作軸の突出方向と交差する方向に対向して配置されることを特徴とする多方向入力装置。
【請求項2】
前記第2端子の取付部を、円弧状をなした前記抵抗体パターンと前記集電体パターンとの中央部に設けたことを特徴とする請求項1記載の多方向入力装置。
【請求項3】
前記第1端子及び第2端子は、前記抵抗体パターン及び集電体パターンが設けられた面側で前記第1端子及び第2端子の取付部により取り付けられ、前記第2端子の取付部の少なくとも一部は、前記回転部材における前記絶縁基板に対向する側に設けられた凹部に収容されることを特徴とする請求項2記載の多方向入力装置。
【請求項4】
前記回転部材には、回転中心線に沿って前記絶縁基板側に突出する突起部が設けられ、当該突起部の少なくとも一部が前記第2端子の取付部内に設けた凹部に収容されることを特徴とする請求項3記載の多方向入力装置。
【請求項5】
前記回転部材の凹部の外側に設けられた突出壁部と対向する前記絶縁基板の位置に絶縁性のレジスト層を設けたことを特徴とする請求項3又は請求項4記載の多方向入力装置。
【請求項6】
前記第1端子の取付部の少なくとも一部が、円弧状をなした前記抵抗体パターンの延長上に位置することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の多方向入力装置。
【請求項7】
前記抵抗体パターンと前記集電体パターンとが、前記回転部材の回転中心を挟んで前記操作軸の突出方向に対向して配置されると共に、前記第1端子の取付部と前記第2端子の取付部とが同一直線上に設けられ、当該直線が前記操作軸の突出方向に対して交差することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の多方向入力装置。
【請求項8】
前記操作軸の軸線方向に対する押圧操作により駆動されるプッシュスイッチを備え、前記回転部材には、前記第1連動部材又は第2連動部材の連結部に対応する位置に前記操作軸の軸線方向に沿って溝部が形成され、前記操作軸に対する押圧操作に伴う前記連結部との係合を回避したことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の多方向入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−94453(P2012−94453A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242736(P2010−242736)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】