説明

多極単頭プラグ及びその製造方法

【課題】多極単頭プラグの極数が多い場合でも、電極相互の絶縁性の確保や短絡防止を確実に図り、歩留まりを大幅に高める。
【解決手段】先端で露出する棒状電極2と、棒状電極2の外周に同心円状に設けられ、棒状電極2の先端露出部分よりも根本側で外周にそれぞれ露出する筒状電極3a〜3dと、棒状電極2と筒状電極3aとの間の絶縁部41a、及び筒状電極3a・3b、筒状電極3b・3c、筒状電極3c・3d相互の間の絶縁部41b〜41dから構成される絶縁体4を備え、絶縁体4の一部であるインサート成形の絶縁樹脂により一体化されている多極単頭プラグ1であり、少なくとも一の絶縁部の中間部を、電着塗装部412b、412c或いは絶縁チューブ414b、414cなどインサート成形の絶縁樹脂とは別体の絶縁材とし、この別体の絶縁材を棒状電極2若しくは筒状電極3a、3b等の外周の所定領域を被覆するように設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば多機能型携帯電話、携帯用音楽プレーヤーなど各種電子機器の電気的な接続に用いられる多極単頭プラグ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種電子機器の電気的な接続に多極単頭プラグとこれに対応する多極ジャックが用いられており、例えばヘッドフォンなど周辺電子機器に設けられる多極単頭プラグと、多機能型携帯電話、携帯用音楽プレーヤーなどの電子機器本体に設けられる多極ジャックとでコネクタが構成される。
【0003】
この多極単頭プラグは、多極ジャックに差し込まれる芯棒を有し、芯棒には先端で露出する棒状電極と、棒状電極よりも根本側で外周に露出する単数又は複数の筒状電極とが設けられる。棒状電極と筒状電極との間、筒状電極が複数設けられる場合の筒状電極相互の間には、絶縁部がそれぞれ設けられ、電極相互間の絶縁性が確保されている。多極単頭プラグは、通常、日本工業規格や電子情報技術産業協会規格の単頭プラグ・ジャックの規格に準拠し或いは互換性を持たせて形成されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−49838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記多極単頭プラグは、棒状電極と筒状電極を金型内の所定距離離間したインサート位置に配置して保持し、金型内に絶縁樹脂を注入して、棒状電極と筒状電極との間や筒状電極相互の間に、この絶縁樹脂による絶縁部を形成すると共に、棒状電極と筒状電極と絶縁部を絶縁樹脂で一体化するインサート成形で形成される。
【0006】
しかしながら、4極、5極と多極プラグの極数が増加するに伴い、棒状電極と筒状電極との間の絶縁樹脂の流路や、筒状電極相互の間の絶縁樹脂の流路が狭くなり、絶縁樹脂の注入圧が増加してしまう。この絶縁樹脂の注入圧の増加は、棒状電極や筒状電極を偏心させるため、棒状電極と筒状電極との間や筒状電極相互の間に絶縁樹脂をスムーズに流して所定形状の絶縁部を形成する障害となり、耐圧試験や通電試験で電極が短絡する多極単頭プラグが多くなって、歩留まりが低下するという問題がある。
【0007】
そのため、多極単頭プラグの極数が多い場合でも、電極相互の絶縁性の確保や短絡防止を確実に図ることができ、歩留まりを高めることができる多極単頭プラグが求められている。
【0008】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、多極単頭プラグの極数が多い場合でも、電極相互の絶縁性の確保や短絡防止を確実に図ることができ、歩留まりを大幅に高めることができる多極単頭プラグ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の多極単頭プラグは、先端で露出する棒状電極と、前記棒状電極の外周の所定位置に離間して設けられ、前記棒状電極の先端露出部分よりも根本側で外周にそれぞれ露出する複数の曲状電極と、前記棒状電極と前記曲状電極との間の絶縁部、及び前記曲状電極相互の間の絶縁部から構成される絶縁体とを備え、前記絶縁体の一部であるインサート成形の絶縁樹脂により一体化されている多極単頭プラグであって、少なくとも一の前記絶縁部の中間部が、前記インサート成形の絶縁樹脂とは別体の絶縁材であり、前記別体の絶縁材が、少なくとも前記棒状電極若しくは一の前記曲状電極の外周の所定領域を被覆するように設けられていることを特徴とする。
この構成によれば、絶縁部の中間部を別体の絶縁材とすることにより、インサート成形の絶縁樹脂の充填状態に関わらすに当該箇所の絶縁を確実に行うことができると共に、例えば他の絶縁部の空間が狭い中間部に対応する樹脂流路を拡げて絶縁樹脂を厚くする或いはこの樹脂流路に相当する箇所に同様の別体の絶縁材を設ける等で、他の絶縁部の中間部など空間が狭い箇所でも絶縁を確実に行うことができる。従って、多極単頭プラグの極数が多い場合でも、電極相互の絶縁性の確保や短絡防止を確実に図ることができ、多極単頭プラグの歩留まりを大幅に高めることができる。
【0010】
本発明の多極単頭プラグは、前記曲状電極が筒状電極であり、前記筒状電極を前記棒状電極の外周に同心円状に設けられるもの、即ち、先端で露出する棒状電極と、前記棒状電極の外周に同心円状に設けられ、前記棒状電極の先端露出部分よりも根本側で外周にそれぞれ露出する複数の筒状電極と、前記棒状電極と前記筒状電極との間の絶縁部、及び前記筒状電極相互の間の絶縁部から構成される絶縁体とを備え、前記絶縁体の一部であるインサート成形の絶縁樹脂により一体化されている多極単頭プラグであって、少なくとも一の前記絶縁部の中間部が、前記インサート成形の絶縁樹脂とは別体の絶縁材であり、前記別体の絶縁材が、少なくとも前記棒状電極若しくは一の前記筒状電極の外周の所定領域を被覆するように設けられていることを特徴とする。
この構成によれば、絶縁部の中間部を別体の絶縁材とすることにより、インサート成形の絶縁樹脂の充填状態に関わらすに当該箇所の絶縁を確実に行うことができると共に、例えば他の絶縁部の空間が狭い中間部に対応する樹脂流路を拡げて絶縁樹脂を厚くする或いはこの樹脂流路に相当する箇所に同様の別体の絶縁材を設ける等で、他の絶縁部の中間部など空間が狭い箇所でも絶縁を確実に行うことができる。従って、棒状電極と筒状電極を有する多極単頭プラグの極数が多い場合でも、電極相互の絶縁性の確保や短絡防止を確実に図ることができ、多極単頭プラグの歩留まりを大幅に高めることができる。
【0011】
本発明の多極単頭プラグは、前記別体の絶縁材が円筒形の絶縁材であり、前記円筒形の別体の絶縁材が、前記棒状電極と前記筒状電極との間、若しくは前記筒状電極相互の間の円筒形で軸方向に延びる隘路に対応して設けられることを特徴とする。
この構成によれば、絶縁部の隘路に限定して必要最小限の箇所に別体の絶縁材を設けることができると共に、別体の絶縁材の形状を円筒形で単純化することができ、製造コストの低減、製造プロセスの効率化を図ることができる。また、棒状電極と筒状電極との間や筒状電極相互の間に同心円状の隘路の絶縁必要箇所が設けられる構造である場合に、円筒形の絶縁材を用いて各絶縁部の厚みを調整することが容易となる。
【0012】
本発明の多極単頭プラグは、前記中間部が前記別体の絶縁材である絶縁部の前部が絶縁カラーであることを特徴とする。
この構成によれば、絶縁部の前部として絶縁カラーを設けることにより、絶縁部の前部に対応してインサート成形の絶縁樹脂の注入口を設ける必要や複数の注入口を設ける必要がなくなり、既存の設備をそのまま利用することを可能にして、製造コストを低減することができる。
【0013】
本発明の多極単頭プラグは、前記別体の絶縁材と前記絶縁カラーとが係合するように設けられることを特徴とする。
この構成によれば、別体の絶縁材と絶縁カラーとの密着を確実にし、絶縁性をより確実に確保することができる。
【0014】
本発明の多極単頭プラグは、前記別体の絶縁材が電着塗装部であることを特徴とする。
この構成によれば、別体の絶縁材を電着塗装で形成することにより、別体の絶縁材の層厚の均一性を高め、絶縁の均一性や安定性の向上を図ることができる。また、別体の絶縁材の耐圧性を高めることができる。また、所望の領域に自在に制御して別体の絶縁材を形成することができ、別体の絶縁材の形成領域の自由度を高めることができる。
【0015】
本発明の多極単頭プラグは、前記別体の絶縁材が絶縁チューブであることを特徴とする。
この構成によれば、別体の絶縁材を絶縁チューブとすることにより、電極表面に容易に組み込むことができる。また、別体の絶縁材の層厚を容易に制御することができる。また、汎用品のチューブを使用することが可能となり、別体の絶縁材の製造コスト低減、製造プロセスの効率化を図ることができる。
【0016】
本発明の多極単頭プラグは、前記絶縁体が、前記別体の絶縁材を前記中間部に有する絶縁部と、全体が前記インサート成形の絶縁樹脂で形成されている絶縁部とから構成されていることを特徴とする。
この構成によれば、別体の絶縁材によってインサート成形の絶縁樹脂の充填状態に関わらすに当該箇所の絶縁を確実に行うことができると共に、全体がインサート成形の絶縁樹脂で形成されている絶縁部において、空間が狭い中間部に対応する樹脂流路を拡げて絶縁樹脂を厚くし、絶縁を確実に行うことができる。また、電着塗装工程若しくは絶縁チューブの組込工程など別体の絶縁材を設ける工程数を最小限にし、製造工程の効率化、製造コストの低減を図ることができる。
【0017】
本発明の多極単頭プラグは、前記棒状電極と前記筒状電極との間の絶縁部と、最外側の前記筒状電極相互の間の絶縁部との間に位置する、前記筒状電極相互の間の複数の絶縁部を、前記別体の絶縁材を前記中間部に有するものとすることを特徴とする。
この構成によれば、絶縁樹脂の流路が狭くなって筒状電極の偏心の影響が大きくなりがちな最外側と最内側の間の絶縁部に別体の絶縁材を設け、多極単頭プラグの極数がより多い場合でも、電極相互の絶縁性の確保や短絡防止をより確実に図ることができ、多極単頭プラグの歩留まりを一層大幅に高めることができる。
【0018】
本発明の多極単頭プラグは、前記絶縁体を構成する前記絶縁部の全てが、前記別体の絶縁材を前記中間部に有する絶縁部であることを特徴とする。
この構成によれば、絶縁樹脂の注入圧の増加による電極の偏心で絶縁樹脂の注入や良好な絶縁が阻害されることを無くし、絶縁部の全てにおいて、空間が狭い中間部の絶縁を別体の絶縁材で確実に行うことができる。従って、歩留まりをより一層向上することができる。
【0019】
本発明の多極単頭プラグは、前記別体の絶縁材の厚みが0.008mm〜0.15mmであることを特徴とする。
この構成によれば、電着塗装で形成された別体の絶縁材の厚みや、絶縁チューブの別体の絶縁材の厚みなど別体の絶縁材の厚みを所定範囲とすることにより、多極単頭プラグの極数が4極、5極或いはそれよりも多い極数の場合でも、最小限の絶縁部の厚みを確保して、中間部の絶縁を確実に行うことができると共に、絶縁部の厚さが過大にならないようにして、日本工業規格や電子情報技術産業協会規格の単頭プラグ・ジャックの規格との互換性を確実に確保することができる。また、絶縁樹脂のインサート成形で充分な場合には適用せず、絶縁樹脂のインサート成形の不充分な状態が生ずる可能性が高い中間部の厚さ以下の場合に適用を限定することが可能となり、製造コストの低減、製造プロセスの効率化の効果を確実に得ることができる。
【0020】
本発明の多極単頭プラグの製造方法は、先端で露出する棒状電極と、前記棒状電極の外周に同心円状に設けられ、前記棒状電極の先端露出部分よりも根本側で外周にそれぞれ露出する複数の筒状電極と、前記棒状電極と前記筒状電極との間の絶縁部、及び前記筒状電極相互の間の絶縁部から構成される絶縁体とを備え、前記絶縁体の一部であるインサート成形の絶縁樹脂により一体化されている多極単頭プラグの製造方法であって、少なくとも前記棒状電極若しくは一の前記筒状電極の外周の所定領域を被覆するように前記インサート成形の絶縁樹脂とは別体の絶縁材を設ける第1工程と、前記棒状電極と前記複数の筒状電極を金型内に配置する第2工程と、前記金型内に絶縁樹脂を注入し、前記別体の絶縁材に前記絶縁樹脂を密着させて形成する絶縁部を含む絶縁体を形成して、前記棒状電極と前記複数の筒状電極と前記絶縁体とを一体化する第3工程とを有することを特徴とする。
この構成によれば、絶縁部の中間部を別体の絶縁材とすることにより、インサート成形の絶縁樹脂の充填状態に関わらずに当該箇所の絶縁を確実に行うことができると共に、例えば他の絶縁部の空間が狭い中間部に対応する樹脂流路を拡げて絶縁樹脂を厚くする或いはこの樹脂流路に相当する箇所に同様の別体の絶縁材を設ける等で、他の絶縁部の中間部など空間が狭い箇所でも絶縁を確実に行うことができる。従って、多極単頭プラグの極数が多い場合でも、電極相互の絶縁性の確保や短絡防止を確実に図ることができ、多極単頭プラグの歩留まりを大幅に高めることができる。また、別体の絶縁材を有する電極を金型に配置し、絶縁樹脂を注入することにより、別体の絶縁材を絶縁体の一部として簡単に且つ強固に一体化することができる。
【0021】
本発明の多極単頭プラグの製造方法は、前記第1工程において、少なくとも一の前記筒状電極の外周の所定領域を被覆するように電着塗装して別体の絶縁材である電着塗装部を設け、前記別体の絶縁材を設けた前記筒状電極の外周露出部分の側面に当接するようにして絶縁カラーを嵌め込む工程を行うことを特徴とする。
この構成によれば、電着塗装による電極の所定領域の確実な被覆、絶縁カラーの所定位置への確実な配置を行えると共に、絶縁カラーと電着塗装の別体の絶縁材との密着を確実に行うことができる。
【0022】
本発明の多極単頭プラグの製造方法は、前記第1工程において、少なくとも一の前記筒状電極の外周露出部分の側面に当接するようにして絶縁カラーを嵌め込み、前記絶縁カラーに係合するようにし、且つ前記筒状電極の外周の所定領域を被覆するようにして絶縁チューブを嵌め込む工程を行うことを特徴とする。
この構成によれば、絶縁チューブによる電極の所定領域の確実な被覆、絶縁カラーの所定位置への確実な配置を行えると共に、絶縁カラーと絶縁チューブとの密着を確実に行うことができる。
【0023】
本発明の電子機器は、本発明の多極単頭プラグを備えることを特徴とする。
この構成によれば、本発明の多極単頭プラグの効果を有する周辺電子機器など電子機器を得ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、多極単頭プラグの極数が多い場合でも、電極相互の絶縁性の確保や短絡防止を確実に図ることができ、歩留まりを大幅に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1実施形態の多極単頭プラグの斜視図。
【図2】(a)は第1実施形態の多極単頭プラグの正面図、(b)はそのA−A線断面図。
【図3】絶縁カラーの斜視図。
【図4】第1実施形態の多極単頭プラグの製造工程を示すフローチャート。
【図5】(a)〜(c)は第1実施形態における筒状電極への電着塗装と絶縁カラーの組み込みを説明する説明図。
【図6】第2実施形態の多極単頭プラグのA−A線断面に相当する断面図。
【図7】絶縁チューブの斜視図。
【図8】第2実施形態の多極単頭プラグの製造工程を示すフローチャート。
【図9】(a)〜(c)は第2実施形態における筒状電極への絶縁カラーと絶縁チューブの組み込みを説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
〔第1実施形態の多極単頭プラグ及びその製造方法〕
本発明による第1実施形態の多極単頭プラグ1及びその製造方法について説明する。
【0027】
第1実施形態の多極単頭プラグ1は、図1及び図2に示すように、5極単頭プラグであり、日本工業規格や電子情報技術産業協会規格の単頭プラグ・ジャックの2極〜4極の規格と互換性を有するように形成され、例えば多機能型携帯電話、携帯用音楽プレーヤーのヘッドフォンのような周辺電子機器などの電子機器に用いられる。
【0028】
多極単頭プラグ1は、導電性金属で形成されている棒状電極2を有し、棒状電極2は、軸部21と、軸部21より大径で、先端に露出して設けられている導電接触部22と、軸部21の後部に設けられるリード部23とから構成される。棒状電極2の外周には同心円状に配置して筒状電極3a〜3dが設けられており、本実施形態では第1〜第4の4つの筒状電極3a〜3dが設けられ、それぞれ導電性金属で形成されている。棒状電極2、筒状電極3a〜3dは、後述する導電接触部22、31a〜31dやリード部23、33a〜33dを確保できるように、順次長さが短くなるように形成されている。
【0029】
筒状電極3a〜3dには、棒状電極2の先端露出部分である導電接触部22よりも根本側において外周露出部分に相当する導電接触部31a〜31dが、外周にそれぞれ露出して設けられている。内側に位置する3つの筒状電極3a〜3cは、円筒形の基部32a〜32cの先端に、基部32a〜32cよりも大径で筒状の導電接触部31a〜31cが設けられているものであり、後部には後述する絶縁体4から露出するリード部33a〜33cが設けられている。また、最外側に位置する筒状電極3dは、略中央に外側に突出するフランジ32dが形成され、フランジ32dの前側が導電接触部31d、後側がリード部33dになっている。
【0030】
フランジ32dより前側はジャック側への差込部であり、導電接触部22、31a〜31dは、この差込部がジャック側に差し込まれた状態でジャック側の対応する導電端子にそれぞれ接触して電気的に接続される部分である。また、リード部23、33a〜33dは、周辺電子機器の配線等のリード線が接続される部分である。
【0031】
棒状電極2と筒状電極3a〜3dは、絶縁部41a〜41dで構成される絶縁体4で絶縁されており、棒状電極2と筒状電極3aとの間は絶縁部41a、筒状電極3a・3b相互の間は絶縁部41b、筒状電極3b・3c相互の間は絶縁部41c、筒状電極3c・3d相互の間は絶縁部41dでそれぞれ絶縁されている。
【0032】
絶縁部41aは、棒状電極2と筒状電極3aとの間の隙間を埋めるようにして設けられ、インサート成形の絶縁樹脂を充填して全体が形成されている。
【0033】
絶縁部41bは、筒状電極3a・3b相互の間の隙間を埋めるようにして設けられ、前部の絶縁カラー411bと、中間部に設けられ、インサート成形の絶縁樹脂とは別体の絶縁材に相当する円筒形の電着塗装部412bと、後部の絶縁樹脂充填部413bとから構成されている。電着塗装部412bは、筒状電極3aの外周の所定領域を被覆するように設けられ、筒状電極3a・3b相互の間の円筒形で軸方向に延びる隘路に対応して設けられており、その厚みは0.008mm〜0.15mm程度とすると好ましく、より好適には0.015mm〜0.1mm程度とするとよい。
【0034】
絶縁カラー411bは、図3に示すように、筒部4111bの先端にフランジ4112bを有し、筒部4111bの後部内周面に切欠4113bが形成されている形状であって、電着塗装部412bは、その先端を絶縁カラー411bの切欠4113bに係合するようにして配置されている。電着塗装部412bの後端面は、絶縁樹脂充填部413bに密着するようにして設けられている。
【0035】
絶縁部41cも絶縁部41bと同様に、筒状電極3b・3c相互の間の隙間を埋めるようにして設けられ、前部の絶縁カラー411cと、中間部に設けられ、インサート成形の絶縁樹脂とは別体の絶縁材に相当する円筒形の電着塗装部412cと、後部の絶縁樹脂充填部413cとから構成されている。電着塗装部412cは、筒状電極3bの外周の所定領域を被覆するように設けられ、筒状電極3b・3c相互の間の円筒形で軸方向に延びる隘路に対応して設けられており、その厚みは0.008mm〜0.15mm程度とすると好ましく、より好適には0.015mm〜0.1mm程度とするとよい。
【0036】
絶縁カラー411cは、図3に示すように、筒部4111cの先端にフランジ4112cを有し、筒部4111cの後部内周面に切欠4113cが形成されている形状であって、電着塗装部412cは、その先端を絶縁カラー411cの切欠4113cに係合するようにして配置されている。電着塗装部412cの後端面は、絶縁樹脂充填部413cに密着するようにして設けられている。
【0037】
絶縁部41dは、筒状電極3c・3d相互の間の隙間を埋めるようにして設けられ、インサート成形の絶縁樹脂を充填して全体が形成されている。即ち、棒状電極2と筒状電極3aとの間の絶縁部41aと、筒状電極3c・3d相互の間の最外側の絶縁部41dとの間に位置する、筒状電極3a・3b相互の間、筒状電極3b・3c相互の間の複数の絶縁部41b、41cに、別体の絶縁材である電着塗装部412b、412cがそれぞれ設けられている。
【0038】
そして、絶縁部41a、41dと絶縁樹脂充填部413b、413cは、インサート成形で絶縁樹脂を充填して一体的に形成されており、この絶縁樹脂を介して絶縁部41a〜41dが一体化されて絶縁体4が構成され、更には、絶縁体4の一部であるインサート成形の絶縁樹脂により、棒状電極2、筒状電極3a〜3d、絶縁体4が一体化されて多極単頭プラグ1が構成されている。
【0039】
第1実施形態の多極単頭プラグ1を製造する際には、図4に示すように、所定形状の棒状電極2と筒状電極3a〜3dを切削加工等により形成する(S101)。次いで、図4及び図5に示すように、筒状電極3aと筒状電極3bの外周の所定領域を被覆するように電着塗装して別体の絶縁材である電着塗装部412b、412cを形成する(S102)。電着塗装部412b、412cの素材は、電着塗装で形成可能な適宜の絶縁素材とすることが可能であり、例えばポリアミド樹脂、フッ素樹脂等とすることが可能である。
【0040】
更に、図4及び図5に示すように、筒状電極3a、3bの導電接触部31a、31bとは逆側から、基部32a、32bに、フランジ4112b、4112cを前側にして絶縁カラー411b、411cをそれぞれ嵌め込んでいき、絶縁カラー411b、411cのフランジ4112b、4112cが導電接触部31a、31bの側面に当接するまで嵌め込む(S103)。絶縁カラー411b、411cは弾性を有する素材とし、径を拡げながら基部32a、32bの所定位置まで外嵌していく。嵌め込まれた絶縁カラー411b、411cは、切欠4113b、4113cにおいて電着塗装部412b、412cの先端に係合する。尚、弾性を有する絶縁カラー411b、411cの素材は適宜であり、例えばポリアセタール(POM)、ポリプロピレン(PP)等とすると良好である。
【0041】
次いで、図4に示すように、棒状電極2と、電着塗装部412b、412cと絶縁カラー411b、411cを組み込んだ筒状電極3a、3bと、筒状電極3c、3dとを金型内に配置する(S104)。
【0042】
その後、金型内に絶縁樹脂を注入してインサート成形を行い、絶縁部41a、41dと、別体の絶縁材である電着塗装部412b、412cに絶縁樹脂を密着させて形成する絶縁部41b、41cとから構成される絶縁体4を形成して、棒状電極2と複数の筒状電極3a〜3dと絶縁体4とを一体化する(S105)。
【0043】
この際、棒状電極2と筒状電極3aとの間の隙間と、筒状電極3c・3d相互の間の隙間には、全体に亘って絶縁樹脂が流れて硬化し、全体がインサート成形の絶縁樹脂で形成されている絶縁部41a、41dが形成される。また、絶縁樹脂は、絶縁カラー411b、411cと係合されている電着塗装部412b、412cの後端面に密着するように流れて硬化し、絶縁部41b、41cが形成される。そして、棒状電極2、筒状電極3a〜3d、絶縁カラー411b、411c、電着塗装部412b、412cは、インサート成形の絶縁樹脂により一体化される。
【0044】
第1実施形態の多極単頭プラグ1或いはその製造方法によれば、絶縁部41b、41cの中間部を別体の絶縁材である電着塗装部412b、412cとすることにより、インサート成形の絶縁樹脂の充填状態に関わらすに当該箇所の絶縁を確実に行うことができると共に、例えば他の絶縁部41a、41dの空間が狭い中間部に対応する樹脂流路を拡げて絶縁樹脂を厚くする或いはこの樹脂流路に相当する箇所に同様の別体の絶縁材を設ける等で、他の絶縁部41a、41dの中間部など空間が狭い箇所でも絶縁を確実に行うことができる。従って、多極単頭プラグ1の極数が多い場合でも、電極相互の絶縁性の確保や短絡防止を確実に図ることができ、多極単頭プラグ1の歩留まりを大幅に高めることができる。
【0045】
更に、絶縁樹脂の流路が狭くなって筒状電極4a、4b、4cの偏心の影響が大きくなりがちな、棒状電極2と最外側の筒状電極3dとの間の複数の絶縁部41b、41cに電着塗装部412b、412cを設けることにより、これらの効果をより一層高めることができる。
【0046】
また、円筒形の電着塗装部412b、412cにより、絶縁部41b、41cの隘路に限定して必要最小限の箇所に電着塗装部412b、412cを設けることができると共に、電着塗装部412b、412cの形状を円筒形で単純化することができ、製造コストの低減、製造プロセスの効率化を図ることができる。また、棒状電極2と筒状電極3aとの間、筒状電極3a・3b相互の間、筒状電極3b・3c相互の間、筒状電極3c・3d相互の間に同心円状の隘路の絶縁必要箇所が設けられる構造である場合に、円筒形の電着塗装部412b、412cを用いて各絶縁部41a〜41dの厚みを調整することが容易となる。
【0047】
また、絶縁部41b、41cの前部として絶縁カラー411b、411cを設けることにより、絶縁部41b、41cの前部に対応してインサート成形の絶縁樹脂の注入口を設ける必要や複数の注入口を設ける必要がなくなり、既存の設備をそのまま利用することを可能にして、製造コストを低減することができる。また、別体の絶縁材である電着塗装部412b、412cと絶縁カラー411b、411cとを係合することにより、電着塗装部412b、412cと絶縁カラー411b、411cとの密着を確実にし、絶縁性をより確実に確保することができる。
【0048】
また、別体の絶縁材を電着塗装部412b、412cとすることにより、別体の絶縁材の層厚の均一性を高め、絶縁の均一性や安定性の向上を図ることができる。また、耐圧性を高めることができる。また、所望の領域に自在に制御して別体の絶縁材を形成することができ、別体の絶縁材の形成領域の自由度を高めることができる。
【0049】
また、絶縁体4が、別体の絶縁材である電着塗装部412b、412cを中間部に有する絶縁部41b、41cと、全体がインサート成形の絶縁樹脂で形成されている絶縁部41a、41dとから構成することにより、電着塗装工程の工程数を最小限にし、製造工程の効率化、製造コストの低減を図ることができる。
【0050】
また、別体の絶縁材である電着塗装部412b、412cの厚みを0.008mm〜0.15mmとすることにより、多極単頭プラグ10の極数が4極、5極或いはそれよりも多い極数の場合でも、絶縁部41b、41cの最小限の厚みを確保して、中間部の絶縁を確実に行うことができると共に、絶縁部41b、41cの厚さが過大にならないようにして、日本工業規格や電子情報技術産業協会規格の単頭プラグ・ジャックの規格との互換性を確実に確保することができる。また、絶縁樹脂のインサート成形で充分な場合には適用せず、絶縁樹脂のインサート成形の不充分な状態が生ずる可能性が高い中間部の厚さ以下の場合に適用を限定することが可能となり、製造コストの低減、製造プロセスの効率化の効果を確実に得ることができる。
【0051】
また、電着塗装部412b、412cを有する筒状電極3a、3bを金型に配置し、絶縁樹脂を注入することにより、電着塗装部412b、412cを絶縁体4の一部として簡単に且つ強固に一体化することができる。また、筒状電極3a、3bに電着塗装部412b、412cを設け、この筒状電極3a、3bの導電接触部31a、31bの側面に当接するようにして絶縁カラー411b、411cを嵌め込むことにより、電着塗装による筒状電極3a、3bの所定領域の確実な被覆、絶縁カラー411b、411cの所定位置への確実な配置を行えると共に、絶縁カラー411b、411cと電着塗装部412b、412cとの密着を確実に行うことができる。
【0052】
〔第2実施形態の多極単頭プラグ及びその製造方法〕
本発明による第2実施形態の多極単頭プラグ5及びその製造方法について説明する。
【0053】
第2実施形態の多極単頭プラグ5は、図6に示すように、基本的な構成は第1実施形態と同様であり、第1実施形態と同様の棒状電極2、筒状電極3a〜3d、絶縁部41a〜41dから構成される絶縁体4を備えるが、別体の絶縁材を電着塗装部412b、412cに代えて、絶縁チューブ414b、414cとしている点で相違する(図7参照)。
【0054】
即ち、筒状電極3a・3b相互の間の隙間を埋めるようにして設けられる絶縁部41bは、前部の絶縁カラー411bと、中間部に設けられ、インサート成形の絶縁樹脂とは別体の絶縁材に相当する円筒形の絶縁チューブ414bと、後部の絶縁樹脂充填部413bとから構成されている。筒状電極3b・3c相互の間の隙間を埋めるようにして設けられる絶縁部41cは、前部の絶縁カラー411cと、中間部に設けられ、インサート成形の絶縁樹脂とは別体の絶縁材に相当する円筒形の絶縁チューブ414cと、後部の絶縁樹脂充填部413cとから構成されている。
【0055】
絶縁チューブ414b、414cは、筒状電極3a、3bの外周の所定領域を被覆するようにそれぞれ設けられ、筒状電極3a・3b相互の間又は筒状電極3b・3c相互の間の円筒形で軸方向に延びる隘路に対応して設けられており、その厚みはそれぞれ0.008mm〜0.15mm程度とすると好ましく、より好適には0.015mm〜0.1mm程度とするとよい。また、絶縁チューブ414b、414cは、その先端を絶縁カラー411b、411cの切欠4113b、4113cに係合するようにして配置され、その後端面は、絶縁樹脂充填部413b、413cに密着するようにして設けられている。
【0056】
そして、インサート成形の絶縁樹脂で一体的に形成されている絶縁部41a・41dと絶縁樹脂充填部413b、413cにより、絶縁部41a〜41dが一体化されて絶縁体4が構成され、更に、棒状電極2、筒状電極3a〜3d、絶縁体4が一体化されて多極単頭プラグ5が構成されている。
【0057】
第2実施形態の多極単頭プラグ5を製造する際には、図8に示すように、所定形状の棒状電極2と筒状電極3a〜3dを切削加工等により形成する(S201)。次いで、図8及び図9に示すように、筒状電極3a、3bの導電接触部31a、31bとは逆側から、基部32a、32bに、フランジ4112b、4112cを前側にして絶縁カラー411b、411cをそれぞれ嵌め込んでいき、絶縁カラー411b、411cのフランジ4112b、4112cが外周露出部分である導電接触部31a、31bの側面に当接するまで嵌め込む(S202)。尚、絶縁カラー411b、411cの素材には第1実施形態と同様の素材等を適宜用いることが可能である。
【0058】
次いで、図8及び図9に示すように、導電接触部31a、31bとは逆側から、筒状電極3a、3bの基部32a、32bに、絶縁チューブ414b、414cを嵌め込み、絶縁チューブ414b、414cの先端を絶縁カラー411b、411cの切欠4113b、4113cに係合すると共に、絶縁チューブ414b、414cによって筒状電極3a、3bの外周の所定領域を被覆する(S203)。この絶縁チューブ414b、414cの素材は適宜の絶縁素材とすることが可能であり、例えばポリアミド樹脂、フッ素樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK、登録商標)等とすることが可能である。
【0059】
次いで、図8に示すように、棒状電極2と、絶縁チューブ414b、414cと絶縁カラー411b、411cを組み込んだ筒状電極3a、3bと、筒状電極3c、3dとを金型内に配置する(S204)。
【0060】
その後、金型内に絶縁樹脂を注入してインサート成形を行い、絶縁部41a、41dと、別体の絶縁材である絶縁チューブ414b、414cに絶縁樹脂を密着させて形成する絶縁部41b、41cとから構成される絶縁体4を形成して、棒状電極2と複数の筒状電極3a〜3dと絶縁体4とを一体化する(S205)。
【0061】
この際にも、棒状電極2と筒状電極3aとの間の隙間と、筒状電極3c・3d相互の間の隙間には、全体に亘って絶縁樹脂が流れて硬化し、全体がインサート成形の絶縁樹脂で形成されている絶縁部41a、41dが形成される。また、絶縁樹脂は、絶縁カラー411b、411cと係合されている絶縁チューブ414b、414cの後端面に密着するように流れて硬化し、絶縁部41b、41cが形成される。そして、棒状電極2、筒状電極3a〜3d、絶縁カラー411b、411c、絶縁チューブ414b、414cは、インサート成形の絶縁樹脂により一体化される。
【0062】
第2実施形態の多極単頭プラグ5或いはその製造方法は、第1実施形態と対応する構成により対応する効果を奏する。また、別体の絶縁材を絶縁チューブ414b、414cとすることにより、電極表面に容易に組み込むことができ、又、別体の絶縁材の層厚を容易に制御することができる。また、別体の絶縁材として汎用品のチューブを使用することが可能となり、別体の絶縁材の製造コスト低減、製造プロセスの効率化を図ることができる。
【0063】
〔実施形態の変形例等〕
本明細書開示の発明は、各発明、各実施形態の構成の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な構成を本明細書開示の他の構成に変更して特定したもの、或いはこれらの構成に本明細書開示の他の構成を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な構成を部分的な作用効果が得られる限度で削除して特定した上位概念化したものを含むものである。そして、下記変形例等も包含する。
【0064】
例えば第1、第2実施形態では、全体の複数の絶縁部41a〜41dのうち、一部の絶縁部41b、41cの中間部に、別体の絶縁材である電着塗装部412b、412c或いは絶縁チューブ414b、414cを設け、他の絶縁部41a、41dについては全体をインサート成形の絶縁樹脂で形成するようにしたが、絶縁体4に含まれる全ての絶縁部41a〜41d等について、電着塗装部或いは絶縁チューブなど別体の絶縁材を中間部に設けるようにすることも可能である。この場合にも、各別体の絶縁材は円筒形の絶縁材とし、棒状電極2と筒状電極3aとの間、若しくは筒状電極3a・3b相互、筒状電極3b・3c相互、筒状電極3c・3d相互の間の円筒形で軸方向に延びる隘路に対応して設けると好適である。
【0065】
これにより、絶縁樹脂の注入圧の増加による電極の偏心で絶縁樹脂の注入や良好な絶縁が阻害されることを無くし、絶縁部41a〜41d等の全てにおいて、空間が狭い中間部の絶縁を別体の絶縁材で確実に行うことができる。従って、歩留まりをより一層向上することができる。
【0066】
絶縁部41a〜41dの全てに別体の絶縁材を設けて多極単頭プラグを製造する際には、例えば所定形状の棒状電極2と筒状電極3a〜3dをそれぞれ形成し、金型に配置する前に、棒状電極2と筒状電極3a〜3cの外周の所定領域に、電着塗装を施す或いは絶縁チューブを嵌め込む等により別体の絶縁材を設けると共に、棒状電極2と筒状電極3a〜3cに絶縁カラーをそれぞれ外嵌めし、これらの電極を金型内に配置し、絶縁樹脂をインサート成形して多極単頭プラグを形成する。
【0067】
また、別体の絶縁材は、絶縁体4のうちの少なくとも任意の一の絶縁部に設ければ適宜であり、例えば棒状電極2の外周の所定領域を被覆するようにして、若しくは筒状電極3a〜3c等の適宜の電極の外周の所定領域を被覆するようにして、若しくはこれらを適宜組み合わせるようにして、電着塗装部や絶縁チューブ等の別体の絶縁材を設けることが可能である。
【0068】
また、別体の絶縁材は、電着塗装部或いは絶縁チューブに限定されず、棒状電極2若しくは一の筒状電極3a〜3c等の外周の所定領域を被覆して設けられ、インサート成形の絶縁樹脂に密着可能なものであれば適宜であり、例えばカプトンテープ(登録商標)等のポリイミドテープなど絶縁テープを巻き付けた絶縁テープ部等とすることも可能である。この場合の多極単頭プラグの製造の際には、例えば少なくとも棒状電極2若しくは一の筒状電極3a〜3c等の外周の所定領域を被覆するようにインサート成形の絶縁樹脂とは別体の絶縁材を設けると共に、上記と同様に、必要な絶縁カラーの嵌め込みを行い、これらの電極を金型内に配置して絶縁樹脂のインサート成形を施す。
【0069】
また、絶縁カラーを設けずに、絶縁カラーに相当する箇所にインサート成形で絶縁樹脂を充填し、別体の絶縁材の前部と後部に絶縁樹脂充填部を設けて密着させるようにして、多極単頭プラグを形成することも可能である。また、本発明の多極単頭プラグは実施形態の5極に限定されず、2極、3極、4極などそれより小さい極数や、6極、7極、8極などそれより大きい極数の多極単頭プラグにも適用可能である。また、一つの多極単頭プラグに複数種類の別体の絶縁材を組み合わせて設ける構成としてもよく、例えば電着塗装部と絶縁チューブを一つの多極単頭プラグに設けてもよい。
【0070】
また、棒状電極2、筒状電極3a〜3d、絶縁カラー411b、411cや筒部4111b、4111cなど絶縁部41a〜41dの軸方向視の形状は円形に限定されず、楕円形など適宜である。
【0071】
また、本発明は、棒状電極2の外周の所定位置に離間して設けられ、棒状電極2の先端露出部分よりも根本側で外周にそれぞれ露出する複数の曲状電極と、棒状電極2と曲状電極との間の絶縁部、及び曲状電極相互の間の絶縁部から構成される絶縁体4を備え、絶縁体4の一部であるインサート成形の絶縁樹脂により一体化されており、少なくとも一の絶縁部の中間部が、インサート成形の絶縁樹脂とは別体の絶縁材であり、別体の絶縁材が、少なくとも棒状電極2若しくは一の曲状電極の外周の所定領域を被覆するように設けられている多極単頭プラグであれば、適宜の構成を包含するものであり、曲状電極として、筒状電極3a〜3dに代えて、対向配置等で配置される弧状電極とし、弧状電極の外周の所定領域を被覆するように別体の絶縁材を設ける構成とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、例えば多機能型携帯電話、携帯用音楽プレーヤーなど各種電子機器の電気的な接続に用いられる多極単頭プラグに利用することができる。
【符号の説明】
【0073】
1、5…多極単頭プラグ 2…棒状電極 21…軸部 22…導電接触部 23…リード部 3a〜3d…筒状電極 31a〜31d…導電接触部 32a〜32c…基部 33a〜33d…リード部 32d…フランジ 4…絶縁体 41a〜41d…絶縁部 411b、411c…絶縁カラー 4111b、4111c…筒部 4112b、4112c…フランジ 4113b、4113c…切欠 412b、412c…電着塗装部 413b、413c…絶縁樹脂充填部 414b、414c…絶縁チューブ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端で露出する棒状電極と、
前記棒状電極の外周の所定位置に離間して設けられ、前記棒状電極の先端露出部分よりも根本側で外周にそれぞれ露出する複数の曲状電極と、
前記棒状電極と前記曲状電極との間の絶縁部、及び前記曲状電極相互の間の絶縁部から構成される絶縁体とを備え、
前記絶縁体の一部であるインサート成形の絶縁樹脂により一体化されている多極単頭プラグであって、
少なくとも一の前記絶縁部の中間部が、前記インサート成形の絶縁樹脂とは別体の絶縁材であり、
前記別体の絶縁材が、少なくとも前記棒状電極若しくは一の前記曲状電極の外周の所定領域を被覆するように設けられていることを特徴とする多極単頭プラグ。
【請求項2】
前記曲状電極が筒状電極であり、前記筒状電極を前記棒状電極の外周に同心円状に設けられることを特徴とする請求項1記載の多極単頭プラグ。
【請求項3】
前記別体の絶縁材が円筒形の絶縁材であり、
前記円筒形の別体の絶縁材が、前記棒状電極と前記筒状電極との間、若しくは前記筒状電極相互の間の円筒形で軸方向に延びる隘路に対応して設けられることを特徴とする請求項2記載の多極単頭プラグ。
【請求項4】
前記中間部が前記別体の絶縁材である絶縁部の前部が絶縁カラーであることを特徴とする請求項2又は3記載の多極単頭プラグ。
【請求項5】
前記別体の絶縁材と前記絶縁カラーとが係合するように設けられることを特徴とする請求項4記載の多極単頭プラグ。
【請求項6】
前記別体の絶縁材が電着塗装部であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の多極単頭プラグ。
【請求項7】
前記別体の絶縁材が絶縁チューブであることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の多極単頭プラグ。
【請求項8】
前記絶縁体が、
前記別体の絶縁材を前記中間部に有する絶縁部と、
全体が前記インサート成形の絶縁樹脂で形成されている絶縁部と、
から構成されていることを特徴とする請求項2〜7の何れかに記載の多極単頭プラグ。
【請求項9】
前記棒状電極と前記筒状電極との間の絶縁部と、最外側の前記筒状電極相互の間の絶縁部との間に位置する、前記筒状電極相互の間の複数の絶縁部を、
前記別体の絶縁材を前記中間部に有するものとすることを特徴とする請求項8記載の多極単頭プラグ。
【請求項10】
前記絶縁体を構成する前記絶縁部の全てが、前記別体の絶縁材を前記中間部に有する絶縁部であることを特徴とする請求項2〜7の何れかに記載の多極単頭プラグ。
【請求項11】
前記別体の絶縁材の厚みが0.008mm〜0.15mmであることを特徴とする請求項1〜10の何れかに記載の多極単頭プラグ。
【請求項12】
先端で露出する棒状電極と、
前記棒状電極の外周に同心円状に設けられ、前記棒状電極の先端露出部分よりも根本側で外周にそれぞれ露出する複数の筒状電極と、
前記棒状電極と前記筒状電極との間の絶縁部、及び前記筒状電極相互の間の絶縁部から構成される絶縁体とを備え、
前記絶縁体の一部であるインサート成形の絶縁樹脂により一体化されている多極単頭プラグの製造方法であって、
少なくとも前記棒状電極若しくは一の前記筒状電極の外周の所定領域を被覆するように前記インサート成形の絶縁樹脂とは別体の絶縁材を設ける第1工程と、
前記棒状電極と前記複数の筒状電極を金型内に配置する第2工程と、
前記金型内に絶縁樹脂を注入し、前記別体の絶縁材に前記絶縁樹脂を密着させて形成する絶縁部を含む絶縁体を形成して、前記棒状電極と前記複数の筒状電極と前記絶縁体とを一体化する第3工程と、
を有することを特徴とする多極単頭プラグの製造方法。
【請求項13】
前記第1工程において、
少なくとも一の前記筒状電極の外周の所定領域を被覆するように電着塗装して別体の絶縁材である電着塗装部を設け、
前記電着塗装部を設けた前記筒状電極の外周露出部分の側面に当接するようにして絶縁カラーを嵌め込む工程を行うことを特徴とする請求項12記載の多極単頭プラグの製造方法。
【請求項14】
前記第1工程において、
少なくとも一の前記筒状電極の外周露出部部分の側面に当接するようにして絶縁カラーを嵌め込み、
前記絶縁カラーに係合するようにし、且つ前記筒状電極の外周の所定領域を被覆するようにして絶縁チューブを嵌め込む工程を行うことを特徴とする請求項12記載の多極単頭プラグの製造方法。
【請求項15】
請求項1〜11の何れかに記載の多極単頭プラグを備えることを特徴とする電子機器。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−93246(P2013−93246A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235478(P2011−235478)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(504172452)株式会社エクセル電子 (6)
【Fターム(参考)】