説明

多機能切削工具

本発明は切削工具に関するものであり、より詳細には、旋削加工及びドリリング加工に用いられる多機能切削工具に関するものである。本発明の多機能切削工具は、切削装置に固定されるための平坦面を有するシャンク部と、前記シャンク部の両端部からそれぞれ延長する円筒状の第1切削部及び第2切削部と、切削工具の回転軸方向に前記第1切削部の端部から前記第2切削部の端部まで貫通して直線に延長する冷却ホールとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は切削工具に関するものであり、より詳細には、旋削加工及びドリリング加工に用いられる多機能切削工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
切削加工には一般に、回転する工作物に直線運動をする切削工具の切削刃を接触させて工作物を加工する方式と、直線運動をする工作物に回転する切削工具を接触させて工作物を加工する方式がある。前者の例としては、外径旋削加工、内径旋削加工、断面旋削加工、ネジ加工及びドリリング加工などがあり、後者の例としては、ミリング加工、ドリリング加工がある。ドリリング加工は前者と後者ともに該当され得る。
【0003】
多機能切削工具は、ドリリング加工及び旋削加工に用いられる切削工具であり、1つの切削刃とそれから延長するチップ排出溝を有する。
【0004】
図1は、従来技術による多機能切削工具10を示す。図1に示すように、多機能切削工具10は、1つの切削インサートを収容するためのポケットを有する切削部12と、切削工具に固定装着されるためのシャンク部14とを備える。多機能切削工具10は、切削工具の軸方向に移送されながらドリリング加工が可能であり、切削工具の軸方向に垂直な方向に移送されながら旋削加工が可能である。しかし、多機能切削工具10は、その一側に1つの切削部12のみを有し、2つの切削部を備える切削工具に比べて工具の使用寿命が短いという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した問題を解決するために、本発明は、シャンク部の両端部に切削部をそれぞれ備え、この切削部に同一の冷却効果及び強度を提供し、使用寿命を延長できる多機能切削工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態による多機能切削工具は、切削装置に固定されるための平坦面を有するシャンク部と、前記シャンク部の両端部からそれぞれ延長する円筒状の第1切削部及び第2切削部と、切削工具の回転軸方向に前記第1切削部の端部から前記第2切削部の端部まで貫通して直線に延長する冷却ホールとを備える。前記第1切削部は、第1切削刃を有する第1平面と、前記第1平面と傾斜角をなす第2平面とを備える第1チップ排出溝を備える。前記第2切削部は、第2切削刃を有し、前記第2平面と実質的に同一の平面上にある第3平面と、前記第1平面と実質的に同一の平面上にある第4平面とを備える第2チップ排出溝を備える。前記冷却ホールの中心が前記第1平面〜第4平面となす角度がいずれも実質的に同一であり、前記平坦面は、前記第1切削部の第1平面と第2平面との傾斜角を二等分する仮想線と実質的に垂直なように配置される。
【0007】
本発明の他の実施形態による多機能切削工具は、切削装置に固定するための平坦面を有するシャンク部と、前記シャンク部の両端部からそれぞれ延長する円筒状の第1切削部及び第2切削部と、前記シャンク部の平坦面に形成され、切削工具の回転軸方向に延長する冷却溝とを備える。前記第1切削部は、第1切削刃を有する第1平面と、前記第1平面と傾斜角をなす第2平面とを備える第1チップ排出溝を備え、前記第2切削部は、第2切削刃を有し、前記第2平面と実質的に同一の平面上にある第3平面と、前記第1平面と実質的に同一の平面上にある第4平面とを備える第2チップ排出溝を備える。前記冷却溝は、前記第1チップ排出溝及び前記第2チップ排出溝と連結される。前記平坦面は、前記第1切削部の第1平面と第2平面との傾斜角を二等分する仮想線と実質的に垂直なように配置される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ドリリング加工及び旋削加工にいずれも使用可能な多機能切削工具の使用寿命をさらに延長させることができる。特に、切削に用いられる切削部を交換するために装着スリーブの内部に挿入された未使用の切削部が装着スリーブの外に突出するように装着される。また、冷却ホールまたは冷却溝及び切削刃の配置が変わらないようになる。これにより、両切削部に同一の冷却効果が提供され、両切削刃は同一の使用寿命を有することができる。また、両切削部の切削刃の強度が同一になるので、従来の多機能切削工具に比べて本発明による多機能切削工具の使用寿命を大きく延長させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】従来技術による多機能切削工具の概略図である。
【図2】本発明の第1実施形態による多機能切削工具の概略図である。
【図3】装着スリーブ内に固定された本発明による多機能切削工具の斜視図である。
【図4】図2のA方向から見た多機能切削工具の側面図である。
【図5】図2のB方向から見た多機能切削工具の側面図である。
【図6】本発明の第2実施形態による冷却溝を備える切削工具の概略図である。
【図7】図6のA方向から見た多機能切削工具の側面図である。
【図8】図6のB方向から見た多機能切削工具の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、添付した図面を参照して本発明を説明する。
【0011】
図2は、本発明の第1実施形態による多機能切削工具の概略図である。図3は、装着スリーブ内に固定された本発明による多機能切削工具の斜視図である。図4は、図2のA方向から見た多機能切削工具の側面図であり、図5は、図2のB方向から見た多機能切削工具の側面図である。
【0012】
多機能切削工具20は、シャンク部100、第1切削部200及び第2切削部300を備える。シャンク部100は、円筒状であり、その側面に平坦面150を有する。シャンク部100が装着スリーブ400の内部に挿入される際に、装着スリーブ400の貫通孔420を通じて挿入される固定部材440で平坦面150を押すことにより、多機能切削工具20は切削装置の装着スリーブ400内で回転しないように固定される。
【0013】
第1切削部200及び第2切削部300は、シャンク部100の両端部からそれぞれ延長して円筒状である。切削部200、300を冷却させるための冷却ホール280が、切削工具20の回転軸R方向に切削工具20の一端部から他端部まで切削工具20を貫通して形成される。冷却ホール280は、直線に延長する。切削工具20が工作物を加工する際に、多機能切削工具20が嵌められる装着スリーブ400の後方から供給される冷却オイルが冷却ホール280を通じて切削部200、300に供給される。第1切削部200及び第2切削部300には、各切削部の端部から切削工具の回転軸R方向に直線に延長する第1チップ排出溝240及び第2チップ排出溝340がそれぞれ提供される。望ましくは、ドリリング加工時に、第1及び第2チップ排出溝の端部に捩れモーメントが集中することを避けるために、第1チップ排出溝240及び第2チップ排出溝340は、シャンク部100の近傍で螺旋状(helix)に曲がる。ドリリング、ボーリング加工時に切削されたチップは、第1チップ排出溝240または第2チップ排出溝340に沿って排出される。
【0014】
第1チップ排出溝240は、切削工具の回転軸R方向に延長する2つの平面、即ち、第1平面242と第2平面244とにより形成される。望ましくは、第1切削部200の端部で、第1平面242と第2平面244との間の傾斜角は約90゜である。第2チップ排出溝340は、切削工具の回転軸R方向に延長する2つの平面、即ち、第3平面344と第4平面342とにより形成される。第3平面344は、第2平面244と実質的に同一の平面上に配置され、第4平面342は、第1平面242と実質的に同一の平面上に配置される。即ち、第3平面344は、第1平面242と実質的に同一の機能を行い、第4平面342は第2平面244と実質的に同一の機能を行う。
【0015】
第1切削部200の端部では、第1平面242に第1切削刃260が提供され、第2切削部300の端部では、第3平面344に第2切削刃360が提供される。第1切削刃260及び第2切削刃360は、ドリリング加工及び旋削加工をいずれもできる形状を有し、その具体的な形状は多機能切削工具20の用途に応じて変わり得る。また、第1切削刃260及び第2切削刃360は、それぞれ第1切削部200及び第2切削部300と一体に形成され得て、交換可能な切削インサートタイプに提供され得る。
【0016】
第1及び第2切削部200、300と第1及び第2チップ排出溝240、340は、そのサイズ及び形状が同一である。また、図4に示すように、第1切削部200において、冷却ホール280の中心と第1平面242とがなす角度A1と、冷却ホール280と第2平面244とがなす角度A2とが略同一の位置に、第1チップ排出溝240が配置される。前述したように、冷却ホール280及び第1平面242及び第2平面244が切削工具の回転軸R方向に沿って直線に延長し、第4平面342及び第3平面344がそれぞれ第1平面242及び第2平面244と実質的に同一の平面上に配置されるところ、図5に示すように、第2切削部300において、冷却ホール280の中心と第3平面344とがなす角度A3及び冷却ホール280の中心と第4平面342とがなす角度A4も略同一である。
【0017】
シャンク部100の平坦面150は、第1切削部200での第1平面242と第2平面244との傾斜角、または第2切削部300での第3平面344と第4平面342との傾斜角を二等分する仮想線L1と垂直に近くなるように配置される。
【0018】
これにより、切削に用いられる切削部を代えるために、装着スリーブ400の内部に挿入された第2切削部300が、装着スリーブ400の外に突出して装着されるように多機能切削工具20が再装着されても、第2切削部300の切削刃360及び冷却ホール280の位置は、はじめに装着スリーブ400の外に突出した第1切削部200の切削刃260及び冷却ホール280の位置と同一になる。
【0019】
このように、多機能切削工具20の2つの切削部のある部分を工作物側に配置しても、切削刃260、360の配向は変わらないため、旋削加工時に作業条件を再び調整する必要がない。また、第1及び第2切削部200、300の第1及び第2切削刃260、360は、切削加工時に摩擦により発熱し、冷却オイルにより冷却される。この時、異なる冷却条件、例えば、冷却水の流速などが同一であれば、第1及び第2切削部200、300、特に第1及び第2切削刃260、360の冷却効果は、第1及び第2切削刃260、360に対する冷却ホール280の位置により決定され、冷却効果は第1及び第2切削部200、300の寿命に影響を及ぼす。本発明においては、冷却ホール280及び切削刃260、360の配置が第1及び第2切削部200、300で同一であるので、第1及び第2切削部200、300で同一の冷却効果が提供され、第1及び第2切削部200、300の寿命が実質的に差がなくなる。また、冷却ホール280の第1及び第2切削刃260、360に対する配置が同一であるため、第1及び第2切削刃260、360の強度も同一になる。
【0020】
即ち、本発明の第1実施形態による多機能切削工具は、旋削加工及びドリリング加工がいずれも可能ながらも、第1及び第2切削部200、300に同一の冷却効果及び強度を提供し、第1及び第2切削部の使用寿命を延長することが可能となる。
【0021】
図6は、本発明の第2実施形態による冷却溝を備える切削工具の概略図である。図7は、図6のA方向から見た多機能切削工具の側面図であり、図8は、図6のB方向から見た多機能切削工具の側面図である。冷却ホールの代わりに冷却溝が提供されるということを除いては、第2実施形態の構成は第1実施形態の構成と同一であるので、冷却溝に関する構成を中心に説明する。
【0022】
図6に示すように、冷却溝380は、多機能切削工具30の回転軸R方向に直線に延長する。冷却溝380は、第1切削部200の第1チップ排出溝240と第2切削部300の第2チップ排出溝340と連結される。これにより、切削工具30が工作物を加工する際に、多機能切削工具30が嵌められる装着スリーブ400の後方から供給される冷却オイルが順次第2切削部300の第2チップ排出溝340、冷却溝380及び第1切削部200の第1チップ排出溝240を通じて流れながら、多機能切削工具30が冷却される。図7及び図8に示すように、シャンク部100の平坦面150は、第1切削部200での第1平面242と第2平面244との傾斜角、または第2切削部300での第3平面344と第4平面342との傾斜角を二等分する仮想線L1と垂直に近く配置される。
【0023】
これにより、切削に用いられる切削部を代えるために、装着スリーブ400の内部に挿入された第2切削部300が装着スリーブ400の外に突出して装着されるように多機能切削工具30が再装着されても、冷却溝380及び第2切削部300の第2切削刃360の配置は、はじめに装着スリーブ400の外に突出した第1切削部200の第1切削刃260及び冷却溝380の配置と同一になる。従って、本発明の第1実施形態と同様に、本発明の第2実施形態による多機能切削工具は、旋削加工及びドリリング加工がいずれも可能ながらも第1及び第2切削部200、300に同一の冷却効果及び強度を提供して第1及び第2切削部の使用寿命を延長することが可能になる。
【0024】
以上本発明の原理を説明したが、当業者であればこれは単に例示的なものであり、本発明の範囲を制限しようとするものではないことを理解できる。当業者による変形及び変更は本発明の範囲内にあるものと見なされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削装置に固定されるための平坦面を有するシャンク部と、
前記シャンク部の両端部からそれぞれ延長する円筒状の第1切削部及び第2切削部と、
切削工具の回転軸方向に前記第1切削部の端部から前記第2切削部の端部まで貫通して直線に延長する冷却ホールと、を備え、
前記第1切削部は、第1切削刃を有する第1平面と、前記第1平面と傾斜角をなす第2平面とを備える第1チップ排出溝を備え、
前記第2切削部は、第2切削刃を有し、前記第2平面と実質的に同一の平面上にある第3平面と、前記第1平面と実質的に同一の平面上にある第4平面とを備える第2チップ排出溝を備え、
前記冷却ホールの中心が前記第1平面〜第4平面となす角度がいずれも実質的に同一であり、
前記平坦面は、前記第1切削部の第1平面と第2平面との傾斜角を二等分する仮想線と実質的に垂直なように配置される、
多機能切削工具。
【請求項2】
切削装置に固定されるための平坦面を有するシャンク部と、
前記シャンク部の両端部からそれぞれ延長する円筒状の第1切削部及び第2切削部と、
前記シャンク部の平坦面に形成され、切削工具の回転軸方向に延長する冷却溝と、を備え、
前記第1切削部は、第1切削刃を有する第1平面と、前記第1平面と傾斜角をなす第2平面とを備える第1チップ排出溝を備え、
前記第2切削部は、第2切削刃を有し、前記第2平面と実質的に同一の平面上にある第3平面と、前記第1平面と実質的に同一の平面上にある第4平面とを備える第2チップ排出溝を備え、
前記冷却溝は、前記第1チップ排出溝及び前記第2チップ排出溝と連結され、
前記平坦面は、前記第1切削部の第1平面と第2平面との傾斜角を二等分する仮想線と実質的に垂直なように配置される、
多機能切削工具。
【請求項3】
前記切削刃は、切削工具と一体に形成される、請求項1または2に記載の多機能切削工具。
【請求項4】
前記切削刃は、前記切削部に装着可能な切削インサートに形成される、請求項1または2に記載の多機能切削工具。
【請求項5】
前記第1チップ排出溝及び第2チップ排出溝は、前記シャンク部の近傍で螺旋状に曲がる、請求項1または2に記載の多機能切削工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−501638(P2013−501638A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525461(P2012−525461)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【国際出願番号】PCT/KR2010/000193
【国際公開番号】WO2011/025097
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(508151781)デグテック エルティーディー (30)
【Fターム(参考)】