説明

多機能複層吸収体およびその製造方法

【課題】吸収製品の多岐に渡る用途に最適な吸収特性を有するとともに、液の拡散および吸収の各機能を自由に設定できるような吸収体を提供する。
【解決手段】 不織布状基材の表面に担持された高吸水性樹脂を主体とする吸収層、およびこの吸収層の表面を被覆する繊維ネット状ホットメルト接着剤からなる複合吸収体に、同一構造の、あるいは異なる構造の複合吸収体あるいはシート材料を、ホットメルト接着剤により相互に一体化して構成した、各層が異なる機能を有する多機能複層吸収体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多機能複層吸収体に関し、特に、不織布基材シートに固形の高吸水性樹脂が担持された高吸水性複合体、およびその製造方法に関する。本発明はまた、この多機能複層吸収体を用いた吸収体物品にも関する。本発明の高吸収性複合体は、例えばベビー用、大人用オムツ、女性用失禁対応用品、生理対応用品、ペッドシート等の広汎な用途を持つ素材として使用できる。
【0002】
本発明において、高吸水性樹脂として、粒子状、顆粒状、フィルム状、あるいは不織布状を含むあらゆる形態の固形物も使用可能である。これらすべての形態の高吸水性樹脂を包含する総称として、この明細書においては、「SAP」が使用される。
【背景技術】
【0003】
不織布基材シートと、その表面に担持されたSAPとを備えた高吸水性複合体シートは、例えば子供用オムツ、大人用オムツ、生理用ナプキン、血液吸収剤、および母乳パッドのような吸収体製品の吸収体として広く用いられてきた。このような高吸水性複合体シートは、例えば米国特許第5,147,343 号明細書その他のいくつかの特許に記載されている。
【0004】
従来から、このような高吸水性複合体シートにおいて、不織布基材シートに対するSAPの固定は、ホットメルト接着剤の粘着性によってなされてきた。あるいは、SAPのサスペンジョン、またはSAPとパルプとの混合物からなるサスペンジョンを不織布基材シートに塗布する形態も適用されてきた。SAP/パルプの混合系の場合、SAPの不織布基材シートに対する固定は、パルプの自着作用に依存している。
【0005】
SAPを含有するサスペンジョンを使用する場合、熱易溶性バインダー繊維(例えばバイコンポーネント繊維)が添加されたサスペンジョンが使用されることもある。このサスペンジョンは、不織布基材シートに塗布された後、加熱し、ついで冷却されることにより、SAP、およびもし存在すればパルプが、熱易溶性バインダー繊維により不織布基材シートに固定される。
【0006】
SAPを不織布基材シートに固定する別の方策では、易熱融着繊維またはこれを含有する繊維ウェブにSAPを包持させ、熱処理により前記繊維ウェブを構成する繊維同士を融着させて、その結果としてSAPが基材に固定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上に述べたような従来の技術では、特に、SAP/パルプ混合系では、SAP/パルプ比(以下「SAP比」という)を大幅に高めることは困難であり、50重量%付近に限界があった。また、バインダーでSAPを基材に固定した系では、SAPの膨潤力とSAPのバインダーによる拘束力とが拮抗的に作用する。すなわち、SAPの拘束力が増すにしたがってSAPの膨潤が阻害され、逆に、SAPの膨潤が阻害されないようにすると、SAPの拘束が困難になる。
【0008】
したがって本発明の主な目的は、SAPが膨潤するにつれて基材も同時に膨張する構造体、すなわち、一方ではSAPの自由度を保てるような緩やかな結合状態を保ちながら、他方では膨潤したSAPが基材から離脱しないように包持する構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、不織布状基材、その表面に担持された高吸水性樹脂を主体とする吸収層、およびこの吸収層の表面を被覆する繊維ネット状ホットメルト接着剤からなる複合吸収体と、この複合吸収体の前記繊維ネット状ホットメルト接着剤の存在する表面に重ね合わされたシート材料とを備え、前記複合吸収体および前記シート材料は、前記ホットメルト接着剤により相互に一体化された構成を有しており、さらに吸収層は、SAPの存在領域とSAPの不存在領域とからなる複数の領域に分割されて存在することができ、この場合、繊維ネット状ホットメルト接着剤は、吸収層の存在しない部分に露出している不織布基材の表面に結合されることを特徴としている。
【0010】
吸収層は、高吸水性樹脂の粒子と、それらを相互に結合する微細セルロース繊維とで構成されていてもよい。
【0011】
前記吸収層の前記高吸水性樹脂は、前記不織布状基材の繊維間の空隙内に包蔵されることにより前記不織布状基材の表面に担持されており、前記繊維ネット状ホットメルト接着剤は、前記高吸水性樹脂の膨潤に応じて伸長することにより膨潤した前記高吸水性樹脂が前記不織布状基材から離脱するのを防止するカバーリング効果を有するものとすることができる。
【0012】
シート材料は、好ましくは木材パルプを原料とするティッシュ、あるいは液の拡散機能の大きいセルロース系不織布である。
【0013】
本発明の他の態様によれば、不織布状基材、およびその表面に担持された高吸水性樹脂を主体とするからなる吸収層からなる第1の複合吸収体、および不織布状基材、およびその表面に担持された高吸水性樹脂を主体とする吸収層からなる第2の複合吸収体とを備え、前記第1および第2の複合吸収体の少なくとも一方は、前記吸収層の表面を被覆する繊維ネット状のホットメルト接着剤を有しており、前記第1および第2の複合吸収体は、各々の前記吸収体が互いに向き合うような配置で重ね合わされ、かつ前記ホットメルト前記ホットメルト接着剤により相互に一体化された構成を有しており、前記吸収層が存在する領域と、前記吸収層が存在しない領域を有し、前記繊維ネット状ホットメルト接着剤が、前記吸収層の存在しない部分に露出している前記不織布基材の表面に結合されているように構成することができる。
【0014】
第1の複合吸収体の吸収層が複数の不連続な領域からなり、また第2の複合吸収体の吸収層が不織布基材の実質的に全表面を被覆する領域からなっていてもよく、さらに第1および第2の複合吸収体の間にシート材料が介装され、第1および第2の複合吸収体に各々のホットメルト接着剤により結合されていてもよい。
【0015】
第1の複合吸収体の吸収層に含まれる高吸収性樹脂は、好ましくはボルテックス法による吸水速度で20秒(35℃)以下のものであり、第2の複合吸収体の吸収層に含まれる高吸水性樹脂が、30秒(35℃)以上である、吸水速度の異なる高吸水性樹脂の組み合わせも好ましい態様である。
【0016】
また第1の複合吸収体に含まれる高吸水性樹脂は、平均粒径500 mμ以上の粒子であり、第2の複合吸収体に含まれる高吸水性樹脂が、平均粒径で500 mμ以下の球形の粒子であるような多機能複層吸収体が、ある種の用途に適している。
【0017】
また第1の複合吸収体の吸収層に含まれる高吸水性樹脂のAULが20g以上であり、第2の複合吸収体の吸収層に含まれる高吸水性樹脂のAULが20g以下であるような多機能複層吸収体が好ましい場合もある。
【0018】
複合吸収体の各々に設けられた吸収層に含まれる高吸水性樹脂は、相互に異なる特性を有していることができる。
【0019】
第1の複合吸収体の不織布基材として、表面親水化処理を施された疎水性合成繊維を主成分とした見掛け比重0.5g/cm3 以下のアクイジション層を構成する嵩高不織布を、また第2の複合吸収体の不織布状基材が、セルロース系親水性繊維を主成分とする拡散層を構成する不織布を使用することができる。
【0020】
第1の複合吸収体の不織布状基材が、SMS層を持つ耐水性不織布であり、第2の複合吸収体の不織布基材が、セルロース系親水性繊維を主成分とする不織布である組み合わせを使用することもできる。
【0021】
繊維ネット状ホットメルト接着剤として、酢酸ビニル系のノンタック性接着剤、あるいは永久粘着性を持つものを使用することができる。
【0022】
さらに本発明は、不織布状基材の表面に、SAPを含有するスラリーを塗布し、ついで液体の除去および乾燥を行って、高吸水性樹脂を主体とする吸収層を設け、ついで前記吸収層の表面にホットメルト接着剤を繊維状に供給して、前記吸収層を覆う繊維ネット状ホットメルト接着剤層を形成することにより、前記吸収層が存在する領域と、前記吸収層が存在しない領域を有し、前記繊維ネット状ホットメルト接着剤が、前記吸収層の存在しない部分に露出している前記不織布基材の表面に結合されている第1の複合吸収体を形成する第1工程と、
不織布状基材の表面に、SAPを含有するスラリーを塗布し、ついで液体の除去および乾燥を行って、高吸水性樹脂を主体とする吸収層を設け、ついで前記吸収層の表面にホットメルト接着剤を繊維状に供給して、前記吸収層を覆う繊維ネット状ホットメルト接着剤層を形成することにより、前記多機能複層吸収体が、前記吸収層が存在する領域と、前記吸収層が存在しない領域を有し、前記繊維ネット状ホットメルト接着剤が、前記吸収層の存在しない部分に露出している前記不織布基材の表面に結合されている第2の複合吸収体を形成する第2工程と、
前記第1工程で得られた第1の複合吸収体の、前記ホットメルト接着剤層が設けられている表面に、前記第2工程で得られた第2の複合吸収体を、そのホットメルト接着剤層が前記第1の複合吸収体側に向くように重ね合わせる第3工程と、
前記第1の複合吸収体と前記第2の複合吸収体とを相互に圧着して、前記ホットメルト接着剤の持つ粘着性により結合させる第4工程と、
を備えていることを特徴とする多機能複層吸収体の製造方法を提供する。
【0023】
ホットメルト接着剤がノンタック性である場合には、ホットメルト接着剤の固化後に第1および第2の複合吸収体を重ね合わせ、重ね合わさせた後に、ホットメルト接着剤を粘着性を示す温度まで加熱し、同時に第1の複合吸収体と第2の複合吸収体とを相互に圧着することにより一体化させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施の形態による多機能複層吸収体を模式的に示す断面図。
【図2】本発明の第2の実施の形態による多機能複層吸収体を模式的に示す断面図。
【図3】本発明の第3の実施の形態による多機能複層吸収体を模式的に示す断面図。
【図4】本発明の第4の実施の形態による多機能複層吸収体を模式的に示す断面図。
【図5】本発明の第5の実施の形態による多機能複層吸収体を模式的に示す断面図。
【図6】本発明の第6の実施の形態による多機能複層吸収体を模式的に示す断面図。
【図7】本発明にしたがって多機能複層吸収体を製造する工程を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1に示す第1の実施の形態において、本発明の多機能複層吸収体は、不織布基材11の表面に設けられたSAP層12、および繊維ネット状ホットメルト接着剤13を有する複合吸収体Aを備えている。ホットメルト接着剤は、カーテンスプレー法のような適当な方法で繊維ネット状に形成されている。またこの複合吸収体10の繊維ネット状ホットメルト接着剤13が設けられている面に、ティッシュのような単一層の他のシート材料Bが重ね合わされ、繊維ネット状ホットメルト接着剤13の接着力により、複合吸収体Aに結合されている。これにより、(A/B)という構成の多機能複層吸収体が構成される。
【0026】
好ましくは、SAP層12は、不織布基材1の表面にストライプ状の複数の領域に設けられており、SAP層12が存在しない領域では不織布基材11の表面が露出している。繊維ネット状ホットメルト接着剤13は、このSAP層12が存在しない領域では、露出している不織布基材11の表面に自身の接着性で接着している。
【0027】
このように構成された多機能複層吸収体において、SAP層12は、不織布基材11とシート材料Bとの間に挟まれており、不織布基材11とシート材料Bとは、繊維ネット状ホットメルト接着剤13により結合されている。このような結合は、繊維ネット状ホットメルト接着剤13を構成する材料として、常温でタック性のホットメルト接着剤を使用した場合には、繊維ネット状ホットメルト接着剤13が内側になるように複合吸収体Aとシート材料Bとを重ね合わせ、必要に応じて両者を圧着させることにより容易に行うことができる。
【0028】
本発明の高吸収性複合体に使用される不織布基材1は、天然繊維、化合繊繊維、木材パルプ、発泡シート等を構成素材とするもので、嵩高で、空隙率が高く、かつ液拡散性に優れた不織布からなっていることが好ましい。このような不織布としては、カードウエブ法、ニードルパンチ法、スパンレース法、およびウェブの折りたたみ法のような公知の方法により加工された、バルク化ウェブ等が挙げられる。中でも特に好ましいのは、繊維ウェブを起毛処理して得られる不織布であって、均一な起毛のある嵩高構造を有するものである。具体的には、目付10g/m2〜100g/m2 、見掛け比重0.5g/m2 以下、さらに好ましくは見掛け比重0.2g/m2 以下の比較的目付が低くて、しかも嵩高な不織布が望ましい。
【0029】
他の好ましい不織布基材として、比較的大きい耐水抵抗を有しているSMSおよびSMMSが挙げられる。一般的なSMSはつぎのような耐水抵抗を示す。
【0030】
【表1】

【0031】
本発明において、不織布基材としてSMSまたはSMMSが使用すると、多くの用途に十分な強度、特に引張り強度を発揮する。さらに重要なこととして、大きい耐水抵抗を有しているということがある。
【0032】
さらにSMSまたはSMMSの表面に、カードウェブ層を積層し、この両者をホットメルト接着剤を介して、もしくは熱または超音波のエネルギーによる構成繊維自体の融合により相互に融着したものも有利に使用できる。
【0033】
カードウェブとしては、一般に市販されているほとんどすべてのものを利用することができる。例えば、ポリエステル繊維をローラーカードを用いてカーディングして得られたパラレルカードウェブ、ポリエステル繊維にポリエステル系芯/鞘型易熱溶性コンジュゲート繊維を混合し、ローラーカードを用いて得られたカードウェブ、PETを芯、PEを鞘とするコンジュゲート繊維ステープルからなるカードウェブ、PP/PEコンジュゲート繊維ステープルとPET繊維のブレンド繊維からなるカードウェブ、等が使用できる。
【0034】
本発明においては、この分野で一般的なすべての組成、形態のSAPを使用することができる。好ましく使用できるSAPの成分を例示すると、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸およびその塩類、アクリル酸塩重合体架橋物、澱粉−アクリル酸グラフト共重合体、澱粉−アクリロニトリルグラフト共重合体の加水分解物、ポリオキシエチレン架橋物、カルボキシメチルセルロース架橋物、ポリスルフォン酸系化合物、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド等の水膨潤性ポリマーを部分架橋したポリマー、またはイソブチレンとマレイン酸との共重合体等の水和ゲル形成能を持つ高分子樹脂が挙げられる。これらの樹脂を乾燥してベースとなる高分子樹脂が得られる。つぎ、一般には、さらに粒子状樹脂表面の架橋密度を高めるために後処理が施され、同時に吸湿による粉体のブロッキング性を抑制するためにブロッキング防止剤が添加される。
【0035】
これらの他に、生分解性のあるポリアスパラギン酸のアミノ酸架橋物、およびアルカリゲネス属ラタス(Alcaligenes Latus) からの培養生成物である微生物を起源とする高吸水性高分子樹脂等もまた、本発明においてSAPとして使用され得る。
【0036】
SAPの形態の好ましい例は、粒子状、顆粒状、フィルム状、繊維状あるいは不織布状を含む。中でも、分散媒体中で均一に分散可能な粒子状、顆粒状、フレーク状、ペレット状、繊維状(長さ10mm以下)および短針状のものが、より好ましい。この明細書においては、これら種々の形態のSAPを包含する用語として、便宜上「SAP粒子」と呼ぶ。さらに、SAP粒子のサイズは、球形の場合には直径で、それ以外の形状の場合にはその最も長い部分の長さで表される。本発明において、SAP粒子のサイズの好ましい範囲は、100 〜1000μmである。
【0037】
SAP粒子は、そのすべてが、前記不織布基材の持つ嵩高構造、すなわち、繊維間の空隙内に包蔵されるのが望ましい。しかし、添加される樹脂量およびウェブの嵩高性によっても異なるが、一部は不織布基材の表面に露出してくることは妨とならない。なぜならば、このような露出樹脂は、乾燥状態では、微細セルロース繊維の水素結合を通じて結合状態を保っているからである。しかしながら、加工中の摩擦や屈曲によって粉塵の原因ともなり、湿潤時には脱離の原因になる可能性も皆無ではないので、不織布基材中に包持する樹脂量は少なくとも50重量%以上、好ましくは70重量%以上に保つことが望ましい。このような観点から、包蔵される樹脂の濃度が高いことを望むならば、それに応じた嵩高度合いの不織布基材のすることが望ましいと言える。
【0038】
また近年、SAPに関して、ゲル安定度の高い、いわゆるドライな高分子樹脂が重要視され、その評価の目安として、加重下吸収量(AUL)、加重下能力(PUP)または膨潤ゲルの液透過性(SFC)という測定値をもって、SAPの機能を評価することが議論されている(U.S. patent No. 5,599,335 to Goldman et al.)。しかし、本発明に使用されるSAPの場合は、人尿や動物の尿、血液に対して安定であれば、架橋度の低い通常の高分子樹脂でも使用可能であり、通常はAUL値が10g/g 以上、、好ましくは15g/g 以上であれば十分である。ここに示したAUL値は、20g/cm2 の加圧下で0.9 %食塩水を吸収させ、30分経過後の加圧下吸収量で表される。
【0039】
本発明の多機能複層吸収体において、特にSAPが微細セルロース繊維で被覆された状態であれば、表面架橋密度の大きい、そして20g/g 以上の高いAUL値を持つSAPを使用すすることにより、そのAUL値が90%以上の効率で多機能複層吸収体の性能に発現される。また未架橋の、AUL値が10g/g 以下であるSAPを用いた場合においても、シート化によって、AUL値は100%以上に上昇する傾向がある。この傾向は、個々のSAP粒子が微細セルロース繊維によって被覆され、区画化されている構造に起因していると推測される。
【0040】
つぎ、微細セルロース繊維について説明する。微細セルロース繊維としては、微粉砕パルプをはじめ、各種のサイズのものが使用できるが、好ましくは、少なくとも250重量%の保水率を有するミクロフィブリル化セルロース(Microfibrillated Cellulose、以下「MFC」という)である。
【0041】
微細セルロース繊維は、本発明の多機能複層吸収体の製造過程においては、SAPを液体に分散させたサスペンジョンにおけるSAP粒子の沈降を防止し、またSAP粒子同士の凝集を防ぐ分散安定剤としての役割を果たす。また多機能複層吸収体の製造完了後には、SAP粒子相互、およびSAP粒子と不織布基材とを結合するバインダーとしての役割を果たすとともに、SAP粒子を被覆してゲルブロッキングが起こるのを防止する。
【0042】
本発明において好ましい微細セルロース繊維は、平均繊維長が0.01〜0.1mm 、平均直径が約0.1 μmの繊維である。見掛けデニール0.01d以下の極微細繊維であって、高剪断力で木材パルプを解繊して得られるMFC、このMFCをさらに解繊して得られる、より改良された極微細繊維(Super Microfibrillated Cellulose: S−MFC)、微生物を原料とする微生物繊維(Bacterial Cellulose:BC)および、これらを希釈した状態のものを離解処理して得られたもの等が挙げられる。これらの微細繊維は、繊維サイズが小さく、かつ含水状態で高い保水率を保つという特長をもち、タッピー(Tappi) テスト法で測定して、少なくとも250%の保水率を有するものが、本発明において好ましく使用される。それらの詳細については、特開平08−284090号公報、特開平11−170414号公報等に記載されている。
【0043】
つぎ、本発明に使用されるホットメルト接着剤成分について説明する。
まず第一に、繊維ネット状にSAP粒子をカバーすることにより、SAP粒子が複合吸収体および不織布基材上にさらに安定に保持され、また、複合吸収体からのSAP粒子の剥離、離脱が防止される。例えば、繊維ネット状ホットメルト接着剤は、SAPが乾燥している場合では、複合吸収体の製造工程、スリット工程で、SAP粒子が複合体から剥離、離脱するのが防止される。また、繊維ネット状ホットメルト接着剤は、SAPが湿潤・膨張している場合は、SAP粒子が膨潤し、かつ、不織布基材が膨張しても、不織布基材の捕捉能力を維持し、その結果、複合体からSAP粒子が剥離、離脱するのを防止する。さらにまた、複合吸収体をロール巻きしたり、ロール状態で保存する場合、繊維ネット状ホットメルト接着剤は、複合体のSAP層と隣接する複合体の不織布基材背面との接触面でブロッキングが生じないようにする効果もある。
【0044】
本発明における熱融着成分は、ホットメルト接着剤である。前記したように、熱融着成分は薄いフィルム状、細い繊維状、好ましくは細いフィブリル状繊維に成形され、SAP粒子表面をカバーする。
【0045】
本発明において、ホットメルト接着剤の曳糸性及び伸長性を改良するために、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、スチレン・イソブチレン・スチレン共重合体(SIS)、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体(SEBS)等のエラストマー成分を添加することができる。その結果、さらにSAP粒子のカバーリング効果が向上する。すなわち、SAP粒子の膨潤に応じて繊維状ホットメルト接着剤が糸曳き状に伸長する。その結果、SAP粒子の膨潤を妨げることがなく、しかも膨潤したSAP粒子が複合体から離脱するのが防止される。
【0046】
またホットメルト接着剤として、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体を主体とする、常温で非タック性で繊維化しやすく、さらにフィブリル化しやすいのもを使用することもできる。エチレン−酢酸ビニル共重合体場合、酢酸ビニル含量は、曳糸性や繊維化にとって重要であり、また酢酸ビニルの分子量は、吐出性と繊維化に大きく影響する。エチレン−酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニル含量は多い方が好ましく、例えば、15重量%以上、好ましくは20〜40重量%である。分子量は、液の吐出性を示す熱流動性係数(単位MFR(g/10分))で表現すると、通常のエチレン−酢酸ビニル共重合体系ホットメルト接着剤では200 〜400g/10 分であるが、本発明では200g/10 分以下、好ましくは50〜150g/10 分のものが好まれる。
【0047】
図1に示した、複合吸収体Aとシート材料Bが繊維ネット状ホットメルト接着剤13で相互に結合される場合には、ホットメルト接着剤層が繊維ネット状に形成された直後の、ホットメルト接着剤が未だタック性を有している間に、図示の向きで複合吸収体Aとシート材料Bを重ね合わせるだけで一体化が行われる。
【0048】
また常温で非タック性のホットメルト接着剤で繊維ネット状ホットメルト接着剤13を形成した場合、このホットメルト接着剤が固化した後であっても、上記の向きで複合吸収体Aとシート材料Bを重ね合わせる前、あるいは重ね合わせた後に、ホットメルト接着剤を、タック性を示す温度まで加熱することにより、複合吸収体Aとシート材料Bとを結合することが可能である。
【0049】
以下に、図2に示した本発明の第2の実施の形態について説明する。この実施の形態では、図1の例で用いられた単一層のシート材料Bに代えて、複合吸収体Aと同様に、不織布基材11’、SAP層12’および繊維ネット状ホットメルト接着剤13’からなる複合吸収体A’が用いられている。これらの複合吸収体AおよびA’は、各々の繊維ネット状ホットメルト接着剤13および13’が互いに向き合うような配置で重ね合わされ、繊維ネット状ホットメルト接着剤13および13’のタック性により相互に結合されて、(A/A’)という構成の多機能複層吸収体が構成されている。
【0050】
複合吸収体Aと複合吸収体A’とは、相互に同一もしくは類似の特性を有するものであってもよいが、一方の複合吸収体Aの不織布基材11が水透過性、他方の複合吸収体A’の不織布基材11’が水不透過性のように、相互に異なる特性を有するものを使用することもできる。
【0051】
また第1の複合吸収体Aの不織布基材11として、表面親水化処理を施された疎水性合成繊維を主成分とした見掛け比重0.5g/m3以下のアクイジション層を構成する嵩高不織布を使用し、また第2の複合吸収体A’の不織布状基材11’として、セルロース系親水性繊維を主成分とする拡散層を構成する嵩高不織布を使用することもできる。
【0052】
また、図3に示す第3の実施の形態のように、前述のような2層の複合吸収体AおよびA’の間に、図1の例で用いられたようなシート材料Bを介在させることも可能である。
【0053】
さらに図4に示す本発明の第4の実施の形態においては、図1〜図3の例で用いられたものと同じ複合吸収体Aに、これとは異なる構造の複合吸収体Cが使用される。この複合吸収体Cは、不織布基材21の表面の実質的全面にSAP層22を設けた構成を有するもので、この複合吸収体Cは、複合吸収体Aに、そのSAP層22が複合吸収体AのSAP層12と向き合うように配置され、複合吸収体Aに設けられている繊維ネット状ホットメルト接着剤13の接着性により相互に結合されている。これにより、(A/C)という構成の多機能複層吸収体が構成される。
【0054】
また図5に示す本発明の第5の実施の形態においては、複合吸収体A、ティッシュのようなシート材料Bおよび複合吸収体B’を複合させた構成が採られている。この複合吸収体B’は、図4の例で用いられたような、不織布基材31の表面の実質的全面にSAP層22を設け、そのSAP層22を覆うようにさらにホットメルト接着剤の繊維ネット状ホットメルト接着剤33を設けた構成を有する。2枚の複合吸収体AおよびC’の間に、図1の例で用いられたようなシート材料Bを介在させることも可能である。ただし、この場合には、複合吸収体Cとシート材料Bとを結合させるために、複合吸収体BのSAP層22の上に、繊維ネット状ホットメルト接着剤23が設けられる。
【0055】
介装されたシート材料Bは、好ましくは木材バルブを原料とする、いわゆるティッシュ、液の拡散機能の大きいセルロース系不織布である。
【0056】
さらに図6に示す本発明の第6の実施の形態においては、不織布基材31の表面にストライプ状にSAP層32を設け、さらにその上に繊維ネット状ホットメルト接着剤33を設けた複合吸収体Dと、不織布基材31’の表面にストライプ状にSAP層32’を設け、さらにその上に繊維ネット状ホットメルト接着剤33’を設けた複合吸収体Eが用いられ、これらの複合吸収体DおよびEが、各々の繊維ネット状ホットメルト接着剤33および33’が向き合うように、しかも互いのSAPのない部分を補完するように重ね合わされ、維状ネットワーク33および33’の接着力により相互に結合されている。これにより、多機能複層吸収体は、(D/E)の構成を有する。
【0057】
この多機能複層吸収体の(D/E)の構成は、図2の多機能複層吸収体の構成と類似しているが、SAP層32および32’において使用されたSAPの特性が異なる。一例を示すと、複合吸収体DのSAP層32に用いられたSAPは、ボルテックス法による吸水速度で20秒(35℃)以下であり、複合吸収体EのSAP層32’に用いられたSAPは、ボルテックス法による吸水速度で30秒(35℃)以上である。
【0058】
<ボルテックス法による吸水速度の測定法>
ボルテックス法による吸水速度の測定は、100 ccのビーカーに50gの生理食塩水を入れて、攪拌子を添加し、マグネットスターラーをセットする。この生理食塩水を攪拌しながら、SAP2gを添加する。SAP添加時を0秒とし、液の渦が消えて液面が水平となるまでの時間(秒)を測定することで行われ、その測定値を吸水速度とする。
【0059】
あるいは、この特性の相違は、SAPの粒度の相違である。例えば、複合吸収体AのSAP層12に用いられたSAPは、平均粒径500mμ以上の造粒状ないし不定形の形状を持ったものであり、一方、複合吸収体Dに用いられたSAPは平均粒径が500mμ以下の球形粒子である。
【0060】
さらに他の特性として、AULが挙げられる。例えば、複合吸収体AのSAP層12に用いられたSAPのAULが20g以上であり、複合吸収体DのSAP層32に用いられたSAPのAULが20以下のものである。
【0061】
図1〜図6に示した本発明の多機能複層吸収体において、ホットメルト接着剤からなる繊維ネット状ホットメルト接着剤13の粘着性もしくは接着性を利用して、互いに隣接する2つの層を結合する。ホットメルト接着剤として、永久粘着性をもつホットメルト接着剤を使用した場合には、一方の複合吸収体を他の複合吸収体もしくはシート材料に圧着するだけで、ホットメルト接着剤の粘着性により結合させることができる。
【0062】
また繊維ネット状ホットメルト接着剤13として、酢酸ビニル系のノンタック性接着剤を使用した場合には、ホットメルト接着剤が繊維ネット状にSAP層を被覆した直後の、未だ固化していない段階で、複合すべき他の複合吸収体あるいはシート材料に重ね合わせることにより結合することができる。あるいは、繊維ネット状ホットメルト接着剤が固化した後には、ホットメルト接着剤を加熱して再び粘着性としてから、他の複合吸収体あるいはシート材料と複合させることも叶である。
【0063】
図7は、本発明の多機能複層吸収体のうち、図2に示した、同一構造の2枚の複合吸収体(A)および(A’)からなる多機能複層吸収体を、インラインプロセスで製造する製造工程を示している。図7の工程では、2系統の複合吸収体製造ライン40−1および40−2が使用される。
【0064】
第1の複合吸収体製造ライン40−1において、ロール状の不織布基材41−1を巻き出すアンワインダー42−1から繰り出される。繰り出された不織布基材41−1は、まずコーター43−1へ送られ、そこでSAPスラリーライン44−1を通じて供給されたSAPスラリーが、不織布基材41−1表面に塗布される。引き続き、吸引ライン45−1を通じて雰囲気ガスとともに液体が吸引され、未乾燥状態の複合吸収体となる。なおSAPスラリーは、例えば水/エタノール液(水/エタノール=60重量部/40重量部)にSAP( 三菱化学(株)製、商品名「アクアパールUS−40」)を30重量%になるように添加して調製されたものが使用される。
【0065】
なお、コーター43−1に導入される前の段階で、不織布基材41−1に熱風を吹き付けると、圧縮状態にあった不織布基材41−1の繊維ウェブが膨張して嵩高くなって好ましい場合もある。
【0066】
コーター43−1を出た未乾燥状態の不織布基材は、つぎに乾燥装置46−1に入り、一連の乾燥ロール47−1上を順に通過する間に加熱、乾燥される。
【0067】
乾燥された不織布基材41−1上に、ついでホットメルトライン48−1から供給されるホットメルト接着剤がカーテンスプレー装置49−1から線状に塗布され、SAP層の各SAP粒子の表面に、ホットメルト接着剤層が繊維ネット状に形成された、複合吸収体50−1となる。
【0068】
このホットメルト接着剤層でカバーリングされた複合吸収体50−1は、一対の圧着ロール51aおよび51bのニップ間に導かれる。
【0069】
第2の複合吸収体製造ライン40−2も、前述の第1の複合吸収体製造ライン40−1と実質的に同一の構成を有しているので、第1の複合吸収体製造ライン40−1で使用したものと同一の要素は、符号の「−1」に代えて「−2」を付して示し、その説明を省略する。
【0070】
ただし、第2の複合吸収体製造ライン40−2において、カーテンスプレー装置49−2でホットメルト接着剤層が塗布された複合吸収体51−2は、反転機構52により上下反転されたのち、圧着ロール50−1のニップ間に導かれる。すなわち、圧着ロール50−1のニップ間に導かれる前の段階で、SAP層およびホットメルト接着剤層が設けられた第1の複合吸収体50−1は、そのホットメルト接着剤層が上方に位置しているが、第2の複合吸収体製造ライン40−2を出た第2の複合吸収体50−2は、そのホットメルト接着剤層が下方に位置するように上下反転されており、圧着ロール50−1のニップ間に導かれた段階では、第1の複合吸収体50−1のホットメルト接着剤層と、第2の複合吸収体50−2のホットメルト接着剤層とが互いに向き合っている。
【0071】
したがって、この状体で圧着ロール50−1のニップ間で圧着されると、未だ固化せずに粘着性を保有しているホットメルト接着剤が相互に粘着し、その結果として、第1の複合吸収体50−1および第2の複合吸収体50−2が相互に結合され、図2に示したような構造の多機能複層吸収体53を構成する。
【0072】
最後に、2枚の複合吸収体50−1および50−2からなる多機能複層吸収体53は、ワインダー54でロール巻きされる。
【0073】
図7に示した工程は、不織布基材にSAP層およびホットメルト接着剤層を設け、引き続いて2枚の複合吸収体を相互に結合するまでの処理を1段階の連続処理で行うインラインプロセスである。しかし、あらかじめ複合吸収体を別個に製造しておき、必要に応じて2枚の複合吸収体を重ね合わせた後、加熱によりホットメルト接着剤を粘着性にして圧着するという、オフラインプロセスを採用することも可能である。このオフラインプロセスは、複合吸収体に、異種の複合吸収体やシート材料を組み合わせる場合に有利である。
【実施例】
【0074】
以下に、本発明の実施例の一例を示す。
【0075】
実施例1
ホットメルト表面加工された複合吸収体(A)の調製
不織布基材として、スパンレース法によるレーヨン不織布(大和紡製、1.5d、30g/m2)を用意する。
この不織布基材に、バイブレータを備えた多岐チューブ状のSAPフィーダーからSAP(三菱化学製、AP50X )を幅8mm、間隔3mmのライン状になるように添加した。そのラインゾーン状SAPの上部からSAPを被覆するように、前記カーテンスプレー装置から粘着性を持つホットメルト(商品名"Moresco TN-288")を5g/m2になるように添加し、冷却シリコーンロールで圧着して、図3の(A)に相当する構造の複合吸収体を調製した。SAPの目付量は150g/m2 であった。
【0076】
ホットメルト表面加工された複合吸収体(A’)の調製
表面親水化、中空のバイコンポーネントポリエステル繊維8d×51mmより、50g/m2の低密度でニードルパンチされた嵩高不織布(東洋紡製)を不織布基材として用意する。
この不織布基材に、上記チューブ状SAPフィーダーを用いてSAP(三菱化学製AP211D)を幅10mm、間隔5mmのライン状になるように添加した。そのラインゾーン状SAPの上部からSAPを被覆するように、前記カーテンスプレー装置から粘着性を持つホットメルト(商品名"Moresco TN-288")を10g/m2になるように添加、圧着して、図3の(A’)に相当する構造の複合吸収体を調製した。SAPの目付量は200g/m2 であった。
【0077】
木材パルプティッシュ(B)の用意
吸収体のラッピングに使用される30g/m2の市販のティッシュを用意する。
【0078】
多機能複層吸収体シート(A/B/A’)の調製
上記(A)、(A’)、(B)を、(B)が(A)および(A’)の間になるように、図3のように積層して、熱アイロンで加圧して、(A/B/A’)構造の多機能複層吸収体シートを得た。この高次高吸収性複合体シートは、全体の目付410g/m2 、SAP含有量が350g/m2 であり、アクイジション機能と拡散機能を併せ持った高吸収性複合体シートであることが確認された。
【0079】
以上に説明したように本発明の多機能複層吸収体においては、複合吸収体あるいはこれに結合される複合吸収体の不織布基材および吸収層、またはシート材料の素材として、所望の特性をもつものを自由に選択することが可能となり、種々の用途に必要とされる条件を満足する多機能複層吸収体の設計が可能となる。
【0080】
また2または3以上の複合吸収体またはシート材料の組み合わせを選択することにより、従来の技術では実現できなかった特異な特性を有する多機能複層吸収体を提供することができる。
【0081】
しかも、複合吸収体またはシート材料結合は、吸収層を覆うように設けられた繊維ネット状ホットメルト接着剤により行われるので、強固で安定した結合が得られる。また結合の工程も容易であるので、工業的な規模での製造プロセスに容易に適用できる。
【符号の説明】
【0082】
A,A’ 複合吸収体
B,B’ シート材料
C 複合吸収体
D,E 複合吸収体
11,11’ 21,31 不織布基材
12,12’,22,32 SAP層
13,13’,23,33 ホットメルトの繊維状ネットワーク
41−1,41−2 不織布基材
42−1,42−2 アンワインダー
43−1,43−2 コーター
44−1,44−2 SAPスラリーライン
45−1,45−2 吸引ライン
46−1,46−2 乾燥装置
47−1,47−2 乾燥ロール
48−1,48−2 ホットメルトライン
49−1,49−2 カーテンスプレー装置
50−1,50−2 複合吸収体
51a,51b 圧着ロール
53 多機能複層吸収体
54 ワインダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布状基材、その表面に担持された高吸水性樹脂を主体とする吸収層、およびこの吸収層の表面を被覆する繊維ネット状ホットメルト接着剤からなる複合吸収体と、この複合吸収体の前記繊維ネット状ホットメルト接着剤の存在する表面に重ね合わされたシート材料とを備え、前記複合吸収体および前記シート材料は、前記ホットメルト接着剤により相互に一体化された構成を有しており、
前記吸収層が存在する領域と、前記吸収層が存在しない領域を有し、前記繊維ネット状ホットメルト接着剤が、前記吸収層の存在しない部分に露出している前記不織布基材の表面に結合されていることを特徴とする多機能複層吸収体。
【請求項2】
前記吸収層が、高吸水性樹脂の粒子およびそれらを相互に結合する微細セルロース繊維とで構成されている請求項1に記載の多機能複層吸収体。
【請求項3】
前記吸収層の前記高吸水性樹脂は、前記不織布状基材の繊維間の空隙内に包蔵されることにより前記不織布状基材の表面に担持されており、
前記繊維ネット状ホットメルト接着剤は、前記高吸水性樹脂の膨潤に応じて伸長することにより膨潤した前記高吸水性樹脂が前記不織布状基材から離脱するのを防止するカバーリング効果を有することを特徴とする請求項1または2に記載の多機能複層吸収体。
【請求項4】
前記シート材料が木材パルプを原料とするティッシュである請求項1〜3のいずれか1項に記載の多機能複層吸収体。
【請求項5】
前記シート材料が、液の拡散機能の大きいセルロース系不織布である請求項1〜3のいずれか1項に記載の多機能複層吸収体。
【請求項6】
不織布状基材、およびその表面に担持された高吸水性樹脂を主体とするからなる吸収層からなる第1の複合吸収体、および不織布状基材、およびその表面に担持された高吸水性樹脂を主体とする吸収層からなる第2の複合吸収体とを備え、前記第1および第2の複合吸収体の少なくとも一方は、前記吸収層の表面を被覆する繊維ネット状のホットメルト接着剤を有しており、前記第1および第2の複合吸収体は、各々の前記吸収体が互いに向き合うような配置で重ね合わされ、かつ前記ホットメルト前記ホットメルト接着剤により相互に一体化された構成を有しており、
前記吸収層が存在する領域と、前記吸収層が存在しない領域を有し、前記繊維ネット状ホットメルト接着剤が、前記吸収層の存在しない部分に露出している前記不織布基材の表面に結合されていることを特徴とする多機能複層吸収体。
【請求項7】
前記吸収層が、高吸水性樹脂の粒子およびそれらを相互に結合する微細セルロース繊維とで構成されている請求項6に記載の多機能複層吸収体。
【請求項8】
前記第1および第2の複合吸収体の前記吸収層が複数の不連続な領域からなり、前記繊維ネット状ホットメルト接着剤が、前記吸収層の存在しない部分に露出している前記不織布基材の表面に結合されている請求項6または7に記載の多機能複層吸収体。
【請求項9】
前記第1の複合吸収体の前記吸収層が複数の不連続な領域からなり、かつ前記第2の複合吸収体の前記吸収層が前記不織布基材の実質的に全表面を被覆する領域からなり、前記第1および第2の複合吸収体の間にシート材料が介装され、前記第1および第2の複合吸収体に各々の前記ホットメルト接着剤により結合されている請求項6乃至8のいずれか一つに記載の多機能複層吸収体。
【請求項10】
前記シート材料が、液の拡散機能の大きいセルロース系不織布である請求項9に記載の多機能複層吸収体。
【請求項11】
前記シート材料が、木材パルプを原料とするティッシュである請求項9に記載の多機能複層吸収体。
【請求項12】
前記複合吸収体の各々に設けられた前記吸収層に含まれる高吸水性樹脂が、相互に異なる特性を有している請求項6〜11のいずれか1項に記載の多機能複層吸収体。
【請求項13】
前記第1の複合吸収体の吸収層に含まれる高吸収性樹脂が、ボルテックス法による吸水速度で20秒(35℃)以下であり、前記第2の複合吸収体の吸収層に含まれる高吸水性樹脂が、ボルテックス法による吸水速度で30秒(35℃)以上である、吸水速度の異なる高吸水性樹脂の組み合わせからなっている請求項6〜12のいずれか1項に記載の多機能複層吸収体。
【請求項14】
前記第1の複合吸収体に含まれる高吸水性樹脂が、平均粒径500mμ以上の粒子であり、前記第2の複合吸収体に含まれる高吸水性樹脂が、平均粒径で500mμ以下の球形の粒子である請求項6〜12のいずれか1項に記載の多機能複層吸収体。
【請求項15】
前記第1の複合吸収体の吸収層に含まれる高吸水性樹脂のAULが20g以上であり、前記第2の複合吸収体の吸収層に含まれる高吸水性樹脂のAULが20g以下である請求項6〜12のいずれか1項に記載の多機能複層吸収体。
【請求項16】
前記第1の複合吸収体の前記不織布基材が、表面親水化処理を施された疎水性合成繊維を主成分とした見掛け比重0.5g/cm3以下のアクイジション層を構成する嵩高不織布であり、前記第2の複合吸収体の不織布状基材が、セルロース系親水性繊維を主成分とする拡散層を構成する不織布である請求項6〜15のいずれか1項に記載の多機能複層吸収体。
【請求項17】
前記第1の複合吸収体の不織布状基材が、SMS層を持つ耐水性不織布であり、前記第2の複合吸収体の不織布基材が、セルロース系親水性繊維を主成分とする不織布である請求項6〜16のいずれか1項に記載の多機能複層吸収体。
【請求項18】
前記第1の複合吸収体の不撒布状基材が、SMS層を持つ耐水性不撒布であり、前記第2の複合吸収体の不織布基材が、表面親水化処理を施された疎水性合成繊維を主成分とした見掛け比重0.5g/cm3以下のアクイジション層を持つ嵩高不織布であり、耐水性機能とアクイジション機能を併せ持つ請求項6〜17のいずれか1項に記載の多機能複層吸収体。
【請求項19】
前記繊維ネット状ホットメルト接着剤が、酢酸ビニル系のノンタック性接着剤である請求項1〜18のいずれか1項に記載の多機能複層吸収体。
【請求項20】
前記繊維ネット状ホットメルトとして使用されるホットメルト接着剤が、永久粘着性を持つものである請求項1〜18のいずれか1項に記載の多機能複層吸収体。
【請求項21】
不織布状基材の表面に、固形SAPを含有するスラリーを塗布し、ついで液体の除去および乾燥を行って、高吸水性樹脂を主体とする吸収層を設け、ついで前記吸収層の表面にホットメルト接着剤を繊維状に供給して、前記吸収層を覆う繊維ネット状ホットメルト接着剤層を形成することにより、前記吸収層が存在する領域と、前記吸収層が存在しない領域を有し、前記繊維ネット状ホットメルト接着剤が、前記吸収層の存在しない部分に露出している前記不織布基材の表面に結合されている第1の複合吸収体を形成する第1工程と、
不織布状基材の表面に、固形SAPを含有するスラリーを塗布し、ついで液体の除去および乾燥を行って、高吸水性樹脂を主体とする吸収層を設け、ついで前記吸収層の表面にホットメルト接着剤を繊維状に供給して、前記吸収層を覆う繊維ネット状ホットメルト接着剤層を形成することにより、前記多機能複層吸収体が、前記吸収層が存在する領域と、前記吸収層が存在しない領域を有し、前記繊維ネット状ホットメルト接着剤が、前記吸収層の存在しない部分に露出している前記不織布基材の表面に結合されている第2の複合吸収体を形成する第2工程と、
前記第1工程で得られた第1の複合吸収体の、前記ホットメルト接着剤層が設けられている表面に、前記第2工程で得られた第2の複合吸収体を、そのホットメルト接着剤層が前記第1の複合吸収体側に向くように重ね合わせる第3工程と、
前記第1の複合吸収体と前記第2の複合吸収体とを相互に圧着して、前記ホットメルト接着剤の持つ粘着性により結合させる第4工程と、
を備えていることを特徴とする多機能複層吸収体の製造方法。
【請求項22】
前記ホットメルト接着剤の固化後に前記第1および第2の複合吸収体を重ね合わせ、重ね合わさせた後に、前記ホットメルト接着剤を粘着性を示す温度まで加熱し、同時に前記第1の複合吸収体と前記第2の複合吸収体とを相互に圧着する請求項21に記載の方法。
【請求項23】
吸収体として、請求項1〜20のいずれか1項に記載の多機能複層吸収体を用いた吸収体製品。
【請求項24】
吸収体として、請求項21または22に記載の方法により得られた多機能複層吸収体を用いた吸収体製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−10361(P2013−10361A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−208167(P2012−208167)
【出願日】平成24年9月21日(2012.9.21)
【分割の表示】特願2000−310852(P2000−310852)の分割
【原出願日】平成12年10月11日(2000.10.11)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】