説明

多段エマルジョンポリマーの水性分散物を製造する方法

【課題】多段エマルジョンポリマーの水性分散物を製造する方法を提供する。
【解決手段】水性ポリマー分散物を製造する方法であって、(a)1以上のエチレン性不飽和基を有する少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーおよび/または少なくとも1つのエチレン性不飽和界面活性剤モノマーを、フリーラジカル水性エマルジョン重合によって重合し、第一ポリマーを供給する工程;および(b)1以上の連続した重合段階において、エチレン性不飽和モノマーおよび/またはエチレン性不飽和界面活性剤モノマーから選択された1以上のモノマーを、第一ポリマーの水性分散物中のフリーラジカル重合によってさらに重合する工程を含む方法が記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、感圧接着剤(PSA)を包含する、改良された水ベースの接着剤または水性接着剤に関する。特にこの発明は、PSAとしての有用性を有する、1以上の重合性界面活性剤を包含する、多段エマルジョンポリマーの水性分散物の製造方法を目的とする。
【背景技術】
【0002】
感圧接着剤(PSA)は、室温においてわずかな圧力下でさえ、非常に多様な表面に粘着する永久粘着性フィルムを形成する。感圧接着剤は、粘着性(self−adhesive)製品、例えば粘着性ラベル、テープ、およびフィルムを生産するために用いられる。この種の製品は、使用が非常に簡単で、接着した時に迅速に機能することを可能にする。接触接着剤組成物とは対照的に、換気時間は必要でない。さらには、接着剤結合がその間に実行されなければならない「オープンタイム」が無い。粘着性物品の品質は本質的に、内部強度(凝集)、および接着されることになる表面上の接着性フィルムの固着(接着)が、有用性にしたがって互いに対して適切に設定されるかどうかによる。
【0003】
米国特許第6,262,144 B1号は、水性ポリマー分散物の製造方法であって、エチレン性不飽和モノマーをフリーラジカル水性エマルジョン重合に付して、ガラス転移温度Tgを有する第一ポリマーの水性分散物を製造する工程、ついでさらに、比較的硬質なモノマーを第一ポリマーの分散粒子中に溶解し、その後これらの粒子中に溶解されたモノマーのフリーラジカル重合を実施する工程を含む方法を開示している。この方法の本質的特徴は、段階iにおいて重合されたモノマーが、重合容器へ添加され、したがってその有意な割合が、その重合に先立って、重合容器中に水性媒質中の分散分布として既に存在するポリマー粒子中に溶解することが可能であり、このようにして、これらの分散されたポリマー粒子中に溶解されている形態において(すなわち分散ポリマー粒子を膨潤した後)これが重合されるということである。これらの水性分散物の形態において、この方法から製造されたポリマーは、接着剤として、特に感圧接着剤として用いることができる。記載された水性分散物と比較して改良された特性を有するのみならず、非限定的に耐水性、水白化耐性、界面活性剤マイグレーション耐性、および縁部漏れおよび流れの減少を包含し、改良された転化、切断、およびストリッピングを、接着剤物品へ付与する追加の特性を有する代替水性分散物を提供することが望ましい。
【特許文献1】米国特許第6,262,144 B1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
感圧接着剤の場合、接着および凝集を互いから独立して最適化することは可能でない。両方の特性のレベルを上げるか、または少なくとも、1つの特性を不変のまま維持する一方で、他方の特性を改良する手段への要望が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、本発明は、水性ポリマー分散物の製造方法であって、(a)1以上のエチレン性不飽和基を有する少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマー、および少なくとも1つのエチレン性不飽和界面活性剤モノマーを、フリーラジカル水性エマルジョン重合によって重合し、第一ポリマーを供給する工程;および(b)1以上の連続した重合段階において、エチレン性不飽和モノマーおよびエチレン性不飽和界面活性剤モノマーから選択された1以上のモノマーを、第一ポリマーの水性分散物中のフリーラジカル重合によってさらに重合する工程を含み、
第一ポリマーと、各連続した重合段階から形成された対応するポリマーとの間のガラス転移温度の差が、10℃以上であり、第一ポリマーを製造するために重合されたエチレン性不飽和モノマーの量が、該方法において重合されたモノマーのすべての量を基準にして、75重量%〜99.9重量%であり、すべての重合段階において重合されたエチレン性不飽和モノマーの総量が、該方法において重合されたモノマーのすべての総量を基準にして、0.1重量%〜25重量%である方法を提供することである。
【0006】
1つの実施形態において、本発明はまた、エチレン性不飽和界面活性剤モノマーが、重合の各段階において添加される方法も提供する。
【0007】
別個の実施形態において、本発明はまた、エチレン性不飽和界面活性剤モノマーが、重合の第一段階においてのみ添加される方法も提供する。
【0008】
別個の実施形態において、本発明はまた、エチレン性不飽和界面活性剤モノマーが、重合のその後の段階において添加される方法も提供する。
【0009】
本発明はまた、製造された水性ポリマー分散物が、感圧接着剤として用いられる方法も提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本明細書において用いられている「エチレン性不飽和界面活性剤モノマー」という用語は、水へ添加された時、水の表面張力を72ダイン/cm未満へ低下させるモノマーのことを言う。本発明に用いられているエチレン性不飽和モノマーのエチレン性不飽和基は、本明細書に記載されたエマルジョン重合の条件下で重合され、形成された水性エマルジョンポリマー中に組み込まれ、ついでその後本発明の接着剤を製造するために用いられる。
【0011】
このエチレン性不飽和界面活性剤モノマーは、界面活性剤であり、エマルジョン重合反応において特に有用であり、一般に、エマルジョン重合反応において従来から用いられているほかのエチレン性不飽和モノマーと共重合することが可能であり、それ自体と重合するか、または部分的に重合されたポリマーと共重合することが可能である。
【0012】
適切なエチレン性不飽和界面活性剤モノマーは、これらに限定されるわけではないが、例えば、少なくとも1つの酸および少なくとも1つの窒素塩基を含む塩または第四窒素化合物であって、ここで当該酸は、スルホン酸、カルボン酸、またはリン酸、またはこれらの混合物であり、当該窒素塩基は、少なくとも1つの窒素原子および少なくとも1つのエチレン性不飽和部分を含有する、ものを包含する。ほかの適切な例は、米国特許出願公開公報第2003/0149119号に記載されている。
【0013】
ほかの適切な重合性界面活性剤モノマーには、ノニルフェノキシプロペニルポリエトキシル化スルフェート(例えば第一コーポレーションからのハイテノール(Hitenol)(商標)など);ナトリウムアルキルアリルスルホスクシネート(例えばヘンケル・コーポレーションからのトレム(Trem)(商標)LF−40など);アンモニウムジ−(トリシクロ(5.2.1.0 2,6)デセ−3−ン(8または9)オキシエチル)スルホスクシネート;およびアンモニウムジ−(トリシクロ(5.2.1.0 2,6)デセ−3−ン(8または9)スルホスクシネートが含まれる。さらには、不飽和C−C30有機酸のアンモニウムおよび金属塩を、単独で、または上記界面活性剤とともに用いることができる。これらの酸の例は、次のものである:すなわち、アルファメチル桂皮酸、アルファフェニル桂皮酸、オレイン酸、リネオリン酸(lineolic acid)(米国特許第5,362,832号に記載されているもの)、リンシノリン酸(rincinoleic acid)、トール油ロジンおよび脂肪酸の不飽和フラクション、不均衡化ロジン酸、大豆油脂肪酸、オリーブ油脂肪酸、ひまわり油脂肪酸、亜麻仁油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、ソルビタンモノオレエート、アビエチン酸、ポリ(オキシエチレン)ソルビトールセスキオレエート、およびエンポール(Empol)1010ダイマー酸である。ほかの適切な重合性界面活性剤モノマーにはまた、例えばマレエート誘導体(米国特許第4,246,387号に記載されているもの)、およびアルキルフェノールエトキシレートのアリル誘導体(特開昭62−227435号に記載されているもの)が含まれる。用いられる界面活性剤の量は典型的には、モノマーの総重量を基準にして、0.1〜6重量%である。
【0014】
本発明の方法によれば、1以上のエチレン性不飽和界面活性剤モノマーを含有する、1以上のエチレン性不飽和モノマーは、連続的に添加されるエチレン性不飽和モノマーの有意な割合が、その重合に先立って、重合容器中に水性媒質中の分散分布として既に存在するポリマー粒子中に溶解することが可能であり、このようにして、これらの分散されたポリマー粒子中に溶解されている形態において(すなわち分散ポリマー粒子を膨潤した後)重合されるように、連続する段階において重合され、かつ重合容器へ添加される。
【0015】
本発明の1つの実施形態によれば、各重合段階において、この重合段階で重合されることになるエチレン性不飽和モノマーの重合容器への添加は、添加の終了までのどの時点でも、段階iにおいて重合されることになるモノマー、および重合容器へ既に添加されたモノマーの重合度Uが、50モル%を超えないように行なわれる。別の実施形態によれば、添加の終了までの重合度は、30モル%以下、または20モル%以下、または10モル%以下、または5モル%以下である。
【0016】
1つの実施形態によれば、工程iにおいて重合されることになるモノマーを重合容器に添加する時、重合を実質的に中断すること、換言すれば、段階iにおいて重合されることになるモノマーの重合を、段階iにおいて重合されることになるモノマーの全量を重合容器へ添加してしまった後でのみ実施することは有利である。ここで、段階iにおいて重合されることになるモノマーの全量は、常にこの新規方法の状況内においてであるが、すべてを一度に、または部分に分けて重合容器へ添加することができる。既に記載されているように、重合は、手段、例えば温度低下、重合禁止剤(フリーラジカルスカベンジャー、例えばヒドロキノン)の添加、開始剤の消費などによって中断させることができる。
【0017】
重合段階iにおいて重合されることになるモノマーによる、重合容器における水性媒質中の分散分布として既に存在しているポリマー粒子の膨潤は一般に、これらのモノマーが、水性媒質中で予め乳化されるか、または純粋な形態で添加されるという点で、より容易に行なわれる。さらには、実質的に中断される重合の場合、この添加が、高温、例えば50〜95℃、または60〜80℃で実施されるならば、通常は、および本発明によれば有利である。この種の高温は通常、所望の溶解および膨潤プロセスを加速させる。後者はまた、十分な時間を与えることによってプラスの影響が与えられる。換言すれば、必要であるならば、重合段階iにおいて重合されることになるモノマーは、重合容器へ添加され、そして重合容器の内容物は、好ましくは攪拌をともなって、かつ高温で長時間(数分から数時間、数日まで)、重合が中断されて、そのまま放置される。このような手段は、ポリマー1が、共重合形態において、2つの非共役エチレン性不飽和基を有するモノマーを含んでいるような多くの場合に、特に有利である。後者は、ポリマー粒子中に存在するポリマー鎖を架橋し、これによって所望の膨潤をより困難にする。
【0018】
本発明によれば、したがって、ポリマー1を製造するために重合されたモノマーの全量が、2つの共役エチレン性不飽和基を有するモノマーとは別に、1より多いエチレン性不飽和基を有するモノマー2重量%超を包含しないならば、一般に有利である。本発明によれば、ポリマー1が、共重合形態において、このような架橋性モノマーをまったく含有しないことが通常は有利である。
【0019】
2つの共役エチレン性不飽和基を有するモノマー、例えばブタジエンは通常、フリーラジカル水性エマルジョン重合において顕著な架橋をほとんど誘発しない(第二エチレン性不飽和基の反応性が通常低下される)が、ポリマー1が、共重合形態において、2つの共役エチレン性不飽和基を有するモノマーをまったく含有しないならば、本発明によれば有利である。同じことが、重合段階iに当てはまる。
【0020】
同様に、重合段階iにおいて重合されたモノマーが、1より多い非共役エチレン性不飽和基を有するモノマーをまったく含んでいないならば好ましい。換言すれば、これらのモノマーは、好ましくは架橋剤をまったく含まない。
【0021】
この方法において、第一ポリマーの製造の後に、ただ1つの重合段階iを行なう。その場合、1つの重合段階iにおいて重合されることになるエチレン性不飽和界面活性剤モノマーのいくつかは、第一ポリマーの製造の一部として重合容器へ既に添加されていてもよい。これは、例えば第一ポリマーを製造するためのフリーラジカル水性エマルジョン重合が、重合容器へ添加されたエチレン性不飽和モノマーが重合によって完全に組み込まれてしまう前に、故意に中止される場合である。残りのエチレン性不飽和モノマーはついで、その後の重合段階iの一部を形成する(2以上の重合段階iの場合には、対応する手順にしたがうこともできる)。
【0022】
この文献において用いられているガラス転移温度という用語は、DSC技術(示差走査熱量計、20℃/分、中点;ASTM D3418−82参照)によって決定されたガラス転移温度のことを言う。
【0023】
本発明の1つの実施形態によれば、Tgは、−60℃〜+110℃であり、これは−50℃〜+50℃、または−50℃〜+20℃、−50℃〜0℃、または−40℃〜−20℃を包含する。
【0024】
感圧接着剤として用いられるポリマーのTgは一般に、−70℃〜20℃であり、これは−60℃〜0℃、または−55℃〜−20℃、または−50℃〜−20℃を包含する。
【0025】
i番目の重合段階についての所定のTgを用いて、i番目の重合段階において重合されることになるモノマー組成物は、フォックス方程式を用いて簡単に構築することができる。Fox(T.G.Fox,Bull.Am.Phys.Soc.(Ser.II)1、123(1956)および「ウルマンの工業化学百科事典(Ullmanns Encyklopadie der technischen Chemie)」、Verlag Chemie,ヴァインハイム(Weinheim),1980、第19巻、第4版、18ページ)によれば、次の式は、ランダムコポリマーのガラス転移温度の高分子限界値の良好な概算において有効である:
【0026】
1/Tg=X/Tg+X/Tg+・・・X/Tg
【0027】
式中、X、X、・・・Xは、モノマー1、2、・・・nの質量分率であり、Tg、Tg、・・・Tgは、モノマー1、2、・・・またはnの1つだけの各々の場合に構成されたホモポリマーのガラス転移温度のケルビン度における高分子限界値である。
【0028】
ホモポリマーについてのガラス転移温度の高分子限界値は、モノマーの大部分について公知であり、例えば「ウルマンの工業化学百科事典」、VCHヴァインハイム、1992年、第五版、第A21巻、169ページに記載されている。ホモポリマーガラス転移温度のほかの情報源は、例えばJ.Brandrup,E.H.Immergut,「ポリマーハンドブック」、第一版、J.Wiley、ニューヨーク、1966年、第二増補版、J.Wiley、ニューヨーク、1975年、および第三版、J.Wiley、ニューヨーク、1989年である。
【0029】
実験的には、重合段階iにおけるモノマー組成物のランダム共重合は本質的に、供給技術におけるフリーラジカル水性エマルジョン重合方法によって対応するモノマー混合物を重合することによって実施することができる。換言すれば、モノマー混合物は、水性相中に予め乳化され、開始剤の添加をともなって、この混合物は、重合容器中に既に存在するモノマーの重合度が、常に95モル%以上であるように消費される速度で、重合容器中に流される。適切な開始剤は、好ましくはナトリウムペルオキソジスルフェートであり、重合は通常、60〜90℃で実施される。用いることができる分散剤は、新規水性ポリマー分散物を製造するためにこの文献において推奨されている物質である。分子量は、この効果を有する物質(例えばメルカプタン)を用いることによるよく知られた方法で、および/または用いられる開始剤の量によって調節することができる。分子量調節剤の不存在下、およびモノマーの量を基準にして重合開始剤0.1〜2重量%の使用によって、高分子限度Tgに相当するガラス転移温度を有する水性ポリマー分散物を得ることができる。
【0030】
本発明によれば、各Tgについて、差Tg−Tgは、少なくとも10℃である。この新規方法の代表的な態様は、各重合段階iについて、差Tg−Tgは、10℃〜220℃であり、これは30℃〜200℃、または50℃〜180℃、または80℃〜150℃、100℃〜130℃を包含する。
【0031】
差Tg−Tgが、すべての重合段階iについて比較的小さい場合、この新規方法は特に、破断点伸びにおいて顕著な増加をもたらす。差Tg−Tgが、すべての重合段階iについて比較的高い場合、この新規方法は特に、引裂強さにおいて顕著な増加をもたらす。本発明の1つの実施形態によれば、最適な差Tg−Tgは、60〜190℃である。感圧接着剤としての使用のためには、60〜160℃のTg−Tgが最適である。
【0032】
上に記載されたことは、新規方法において、ポリマー1の製造の後に唯一の重合段階iが行なわれる時に特に適切である。
【0033】
本発明にしたがって水性媒質中の分散分布として存在するポリマー1の重量平均直径dは、広い範囲にわたっている。例えばdは、50nm〜2,000nmであり、これは100nm〜1,000nm、または200〜500nmを包含する。
【0034】
同様に第一ポリマーの数平均分子量Mは、広い範囲の値にわたる。例えばMは、5,000または50,000〜5×10であってもよく、これは100,000〜3×10、または250,000〜1×10を包含する。第一ポリマーを製造するためには、分子量調節剤、例えばメルカプタン(メルカプトエタノール、第三ドデシルメルカプタンなど)および/またはハロゲン化炭化水素(例えば塩化メチレン、四塩化炭素、クロロホルム、ブロモホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン)および/またはC−Cアルコール、例えばメタノールおよびアリルアルコールを用いることも、当然ながら可能である。同じことは、重合段階iにも当てはまる。好ましくは第一ポリマーおよび重合段階iの両方は、分子量調節剤の使用をともなわずに実施される。
【0035】
本発明によれば、すべての重合段階iにおいて重合されたモノマーの総量は、新規方法の間に重合されたモノマーのすべての量を基準にして、0.1重量%〜<25重量%であり、これは0.1〜10重量%以下を包含する。多くの場合、0.5重量%〜8重量%のすべての重合段階において重合されたモノマーの対応する基準の総量が有利であるか、または1重量%〜6重量%、または2重量%〜6重量%が有利である。
【0036】
第一ポリマーの製造に適した、および重合段階iにおける重合に適したモノマーは、本発明によれば、および原則として、それ自体知られているフリーラジカルメカニズムによって重合することができるすべてのモノエチレン性不飽和モノマーである。これらは、モノマー、例えばスチレン、アルファ−メチルスチレン、o−クロロスチレン、アルファ−フェニルスチレン、またはビニルトルエン、ビニルアルコールおよびC−C18モノカルボン酸のエステル、例えばビニルアセテート、プロピオネート、n−ブチレート、ラウレートおよびステアレート、アリルアルコールおよびC−C18モノカルボン酸のエステル、例えばアリルアセテート、プロピオネート、n−ブチレート、ラウレートおよびステアレート、好ましくはC−Cアルファ、ベータ−モノエチレン性不飽和モノ−およびジカルボン酸、特にアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、およびイタコン酸と、一般に、C−CおよびC−Cを包含するC−C12アルカノールとのエステル、例えばメチルアクリレートおよびメタクリレート、エチルアクリレートおよびメタクリレート、n−ブチルアクリレートおよびメタクリレート、イソブチルアクリレートおよびメタクリレート、第三ブチルアクリレートおよびメタクリレート、ヘキシルアクリレートおよびメタクリレート、n−オクチルアクリレートおよびメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートおよびメタクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソボルニルアクリレートおよびメタクリレート、ノルボルニルアクリレート、4−第三ブチルシクロヘキシルアクリレートおよびメタクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシルアクリレートおよびメタクリレート、ジメチルマレエートまたはn−ブチルマレエート、およびまたアルファ、ベータ−モノエチレン性不飽和カルボン酸のニトリル、例えばアクリロニトリルおよびメタクリロニトリルである。適切なC−C共役ジエンの例は、1,3−ブタジエンおよびイソプレンである。同様に重要なのは、商品として入手しうるモノマーベオヴァ(VEOVA)(商標)9−11である(ベオヴァは、シェル社の商品名であり、式:
C−C(O)−O−CH=CH
(式中、R、R、およびRは、炭素の総数(R+R+R)がX−2に等しいアルキルである)の[ヴァーサティック(Versatic)(商標)X酸としても公知であるカルボン酸の]ビニルエステルを表わす)。
【0037】
上記モノマーは一般に、第一ポリマーおよびその後の重合段階iの大部分を占める。一般にこの大部分は、第一ポリマーのおよび各々の重合段階iの75重量%超を占める。単独で重合された時に、通常、増加した水中溶解性のホモポリマーを生じるモノマーは、通常は、第一ポリマーおよび重合段階iの両方において、改変する量においてのみ、通常は25重量%未満存在する。これは、0.1〜10重量%、または0.1〜5重量%を包含する。
【0038】
このようなモノマーの例は、C−Cアルファ、ベータ−モノエチレン性不飽和モノ−およびジカルボン酸並びにこれらのアミド、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、およびイタコン酸、アクリルアミドおよびメタクリルアミド、およびまたビニルスルホン酸、アクリルアミドプロパンスルホン酸、および上記酸の水溶性塩である。このようなモノマーのほかの例は、二価アルコールとC−Cアルファ、ベータ−モノエチレン性不飽和カルボン酸とのモノエステル、例えばヒドロキシエチルアクリレート、n−ヒドロキシプロピルアクリレート、n−ヒドロキシブチルアクリレートおよび対応するメタクリレートである。通常、上記モノマーの共重合は、結果として生じたポリマーの水性媒質中の分散分布の増加した安定性をもたらす。
【0039】
重合段階iは好ましくは、増加した水中溶解性を有する上記モノマーのどれも包含しない。むしろ、重合段階iにおいて重合されることになるモノマーは有利には、特に低い水中溶解性を有するものである。一般に、重合段階iにおいて重合されるモノマーは、水中のモル溶解性(1気圧、25℃で)が、水中のメチルメタクリレートの対応する溶解性に等しいか、それ以下未満であるものである。
【0040】
本発明によれば、第一ポリマーはまた、2以上の非共役エチレン性不飽和基を含有するモノマー、例えば二価アルコールとアルファ、ベータ−モノエチレン性不飽和モノカルボン酸とのジエステルを、共重合形態で含有しうる。好ましい二不飽和ジエステルは、アクリル酸およびメタクリル酸のものである。挙げることができる例は、アルキレングリコールジアクリレートおよびジメタクリレート、例えばエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、およびトリメチロールプロパントリアクリレートである。ポリマー1の架橋性成分として、モノマー、例えばジビニルベンゼン、ビニルメタクリレート、ビニルアクリレート、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、メチレンビスアクリルアミド、シクロペンタジエニルアクリレート、およびトリアリルシアヌレートも適切である。
【0041】
多くの場合、ポリマー1および/または重合段階iの1以上が、皮膜形成の間に架橋をもたらすモノマーを、少量、一般に0.5〜5重量%の量で有するならば有利である。挙げることができる例は、カルボニル含有モノマー、例えばアクロレイン、メタクロレイン、ジアセトンアクリルアミド、およびメタクリルアミド、およびまたビニルアセトアセテートである。上記モノマーは、例えば水性ポリマー分散物が、添加されたポリアミン化合物の適量を同時に含有する時に、後架橋をもたらす。特に適切なこのような化合物は、C−C10脂肪族ジカルボン酸のジヒドラジドである。例としては、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、およびセバシン酸のジヒドラジドである。
【0042】
後架橋をもたらす別のモノマーの一例は、2−アセトアセトキシエチルメタクリレートである(単独、またはポリアミンもしくはポリアルデヒド、例えばグリオキサールと組合わせて)。同様に後架橋に適しているのは、加水分解性Si−C結合を有するポリマー単位である。挙げることができる例は、共重合可能なモノマーのメタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランおよびビニルトリメトキシシランである。対応するタイプのほかの適切なポリマー単位が、ドイツ国特許第DE−A4341260号に示されている。分散ポリマー粒子がカルボキシル基を有するならば、その場合には後架橋はまた、多価カチオン(例えばMg、Ca、Zn、またはZr塩)を含有する金属塩を添加することによってもたらすことができる。同様に、後架橋の目的に適したものは、エポキシおよび/またはN−アルキロール基を含有するモノマー、例えばグリシジルアクリレート、N−メチロールアクリルアミド、およびN−メチロールメタクリルアミドである。後架橋はまた、不飽和ベンゾフェノン誘導体またはアセトフェノン誘導体の少量の共重合、およびその後の光開始によって達成することができる。代替方法として、適切な飽和ベンゾフェノン誘導体またはアセトフェノン誘導体も、本発明にしたがって得ることができる水性ポリマー分散物中に攪拌して入れることができる。
【0043】
本発明は、分散ポリマーフィルムの所望の機械的特性プロフィールを得るために、後架橋性成分の使用を必要としない。この新規方法が、後架橋をもたらす系を含む場合、その時にはガラス転移温度TgおよびTgは、少量でのみ存在するこれらの架橋性成分が除外される時に見られるガラス転移温度のことを言う。
【0044】
さらには、第一ポリマーおよび/または重合段階iは、結果として生じる水性ポリマー分散物のフィルムの、多くの材料、例えば木、金属、鉱物、紙、テキスタイル、およびプラスチックへの接着であるが、特に乾性油および/またはアルキド樹脂をベースとした古いコーティングへの接着を高めるため、および湿分および湿潤の効果へのこの接着の感受性を減少させる(湿潤接着の増加)ため、接着モノマー(例えば窒素含有モノマー)を少量、一般に0.1〜5重量%含んでいてもよい。
【0045】
適切な窒素含有接着モノマーは、少なくとも1つのアミノ、ウレイド、またはN−ヘテロ環式基を有するフリーラジカル重合性モノマーを包含する。非常に多数のこのような適切な接着モノマーが、特許第EP−B421185号、第EP−B379892号の3ページ、第EP−A609756号の2ページ、第DE−A4334178号、および第DE−A3902067号の3/4ページに示されている。
【0046】
挙げることができる例は、アミノエチルアクリレートおよびメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレートおよびメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレートおよびメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリレートおよびメタクリレート、3−ジメチルアミノ−2,2−ジメチルプロピルアクリレートおよびメタクリレート、2−N−モルホリノエチルアクリレートおよびメタクリレート、2−N−ピペリジノエチルアクリレートおよびメタクリレート、N−(3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミドおよびメタクリルアミド、N−ジメチルアミノエチルアクリルアミドおよびメタクリルアミド、N−ジエチルアミノエチルアクリルアミドおよびメタクリルアミド、N−(4−モルホリノメチル)アクリルアミドおよびメタクリルアミド、ビニルイミダゾールおよびまたエチレンウレアのモノエチレン性不飽和誘導体、例えばN−(2−アクリロイルオキシエチル)エチレンウレア、N−(ベータ、アクリルアミドエチル)エチレンウレア、N−2−(アリルカルバマト)アミノエチルイミダゾリジノン、N−(3−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)アミノエチルエチレンウレア、N−ビニルエチレンウレア、N−ビニルオキシエチレンウレア、N−メタクリロイルオキシアセトキシエチルエチレンウレア、N−(アクリルアミドエチレン)エチレンウレア、N−(メタクリルアミドエチレン)−エチレンウレア、1−(2−メタクリロイルオキシエチル)イミダゾリン−2−オン、およびN−(メタクリルアミドエチル)エチレンウレアである。さらにほかの適切なウレイドモノマーは、R.W.Kreis、A.M.Sherman、「ラテックスペイントにおける湿潤接着を促進するためのウレイド機能性モノマーにおける開発(Developments in Ureido Functional Monomer for Promoting Wet Adhesion in Latex Paints)」、「水性およびより高い固体コーティングのシンポジウム(Water−Borne and Higher Solids Coating Symposium)」、1988年2月3日−5日、ルイジアナ州ニューオーリンズによるレビューに示されている。
【0047】
この新規方法は、ポリマー1を構成するために用いられるモノマーおよび重合段階iにおいて重合されるモノマーが、化学的に類似であるならば強化される。換言すれば、第一ポリマーが、アクリルおよびメタクリル酸のアルキルエステルから、またはこれらとスチレンおよび/またはアクリロニトリルとの混合物から優勢的に構成されているならば、重合段階iにおいても同様に優勢的に、アクリルおよびメタクリル酸のアルキルエステルが、単独で、またはスチレンおよび/またはアクリロニトリルとの混合物として共重合されるなら有利である。他方、第一ポリマーが、ビニルエステルから、またはこれらとエチレンとの混合物から優勢的に重合されるならば、ビニルエステルまたはこれらとエチレンとの混合物が優勢的に、重合段階iにおいても同様に重合されるならば有利である。第一ポリマーが、ブタジエンまたはこれらとアクリロニトリルおよび/またはスチレンとの混合物から優勢的に構成されている場合、アクリロニトリルおよび/またはスチレンがまた、重合段階iの主要成分を形成するならば有利である。換言すれば、新規手順の状況において、第一ポリマーの組成物の少なくとも75重量%が、アクリル酸および/またはメタクリル酸とC−C−アルカノールとのエステルによってのみ、またはこれらとスチレンおよび/またはアクリロニトリルとの混合物によって占められてもよい。しかしながらまた、少なくとも75%が、ビニルエステルおよび/またはエチレンによって占められている組成も考えることができる。
【0048】
したがってこの新規方法は、ポリマー1の組成の90(95%からも包含する)〜100重量%が、フリーラジカル重合形態において、アクリル酸および/またはメタクリル酸とC−C−アルカノールとのエステルによって占められ、0〜10(好ましくは5)重量%が、C−Cアルファ、ベータ−モノエチレン性不飽和カルボン酸、これらのアミド、および/またはアルカリ金属塩によって占められる場合に用いることができる。
【0049】
しかしながらこれはまた、第一ポリマーの組成の95〜100重量%が、フリーラジカル重合形態において、アクリル酸および/またはメタクリル酸とC−C−アルカノールとのエステルおよびスチレンによって占められ、0〜5重量%が、C−Cアルファ、ベータ−モノエチレン性不飽和カルボン酸、これらのアミド、および/またはアルカリ金属塩によって占められる場合にも用いることができる。
【0050】
第一ポリマーの構成のためのモノマーは、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、イタコン酸、スチレン、アクリロニトリル、アクリルアミドプロパンスルホン酸、およびビニルスルホン酸からなる群から、および特に好ましくは、n−ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、およびイタコン酸からなる群から選択される。
【0051】
上記の場合のすべてにおいて、イソブチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、第三ブチルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、4−第三ブチルシクロヘキシルアクリレート、4−第三ブチルシクロヘキシルメタクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシルアクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、アクリロニトリル、スチレン、アルファ−フェニルスチレン、アルファ−メチルスチレン、メチルメタクリレート、および上記モノマーの混合物は、好ましくは重合段階iにおいて重合されるモノマーを構成する。この記載はまた、ほかの第一ポリマーの場合にも当てはまる。
【0052】
感圧接着剤用途として用いることができるポリマー分散物を製造するために、第一ポリマーの場合、そのホモポリマーがTg<0℃を有し、かつアクリル酸およびメタクリル酸と、少なくとも4個の炭素を有するアルカノールとのエステル、特にn−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、およびTg<0℃のホモポリマーを有するほかのモノマーから選択された少なくとも1つのモノマーから好ましくは製造される。特に好ましいのは、n−ブチルアクリレートおよび/または2−エチルヘキシルアクリレートである。これらのモノマーは主要なフラクションを形成する。すなわちこれらは、ポリマー1を製造するために用いられるモノマーの全体の重量を基準にして、70〜100重量%、特に80〜100重量%の量で一般に用いられる。ポリマー1はしたがって、Tg>0℃を有するコモノマーの30重量%まで、特に20重量%までから構成されてもよい。これらは好ましくは、スチレン、アルファ−メチルスチレン、o−クロロスチレン、アルファフェニルスチレン、ビニルスルホン酸、アクリルアミドプロパンスルホン酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、第三ブチルアクリレート、第三ブチルメタクリレート、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、n−ブチルメタクリレートおよびメタクリルアミドから選択され、特に好ましくは(メタ)アクリル酸およびこれのアミドである。上に記載されたものは、段階iにおいて重合されるモノマーに当てはまる。換言すれば、これらは特定の制限を受けない。
【0053】
本発明によれば、第一ポリマーは、フリーラジカル水性エマルジョン重合方法によって、すなわちフリーラジカル重合開始剤の存在下に、水性媒質中で直接、分散剤を必要とせずに製造される。エチレン性不飽和界面活性剤モノマーは、水性媒質中の分散剤として作用する。
【0054】
第一ポリマーを製造するためのフリーラジカル重合の開始は、フリーラジカル水性エマルジョン重合を始動させうるすべてのフリーラジカル開始剤によって達成される。これらは、過酸化物、例えばH、ペルオキソ二硫酸、および/またはその塩、例えばアルカリ金属またはアンモニウムペルオキソジスルフェート、およびまたアゾ化合物、例えばアゾビスイソブチロニトリルまたは4,4’−アゾビスシアノ吉草酸であってもよい。
【0055】
比較的低い温度で第一ポリマーを製造するためのフリーラジカル水性エマルジョン重合の開始は、組合わされた開始剤系によって可能にされる。これらは、少なくとも1つの有機および/または無機還元剤、および少なくとも1つの過酸化物および/またはヒドロペルオキシドからなる。これらの例は、第三ブチルヒドロペルオキシドおよびヒドロキシメタンスルフィン酸のナトリウム金属塩、または過酸化水素およびアスコルビン酸である。上に記載されたものは特に、重合媒質中に可溶であり、かつ金属成分が2以上の原子価状態(多くの場合、沈殿を防ぐために複合形態)で存在しうる金属化合物の少量をさらに含んでいる組合わせ系に当てはまる。一例は、アスコルビン酸/鉄(II)スルフェート/過酸化水素であり、アスコルビン酸が、例えばヒドロキシメタンスルフィン酸のナトリウム金属塩、亜硫酸ナトリウムもしくは亜硫酸水素ナトリウムによって置換されること、および過酸化水素が、例えばアルカリ金属ペルオキソジスルフェートおよび/またはアンモニウムペルオキソジスルフェートによって置換されることも可能である。水溶性鉄(II)塩の代わりに、V塩または水溶性Fe/V塩の組合わせを用いることも同様に可能である。一般に、重合されることになるモノマーの量を基準にして、第一ポリマーを製造するために用いられるフリーラジカル開始剤系の量は、0.1〜2重量%である。
【0056】
第一ポリマーの製造の状況において、重合の温度および圧力は、比較的重要性が小さい。重合は一般に、0〜100℃で実施され、これは20〜100℃、または50〜95℃、または60〜90℃を包含する。特に長い鎖の第一ポリマーを得るために、重合は便宜上、40〜70℃で実施されるであろう。大気圧未満または大気圧超の使用が可能であり、したがって重合温度は100℃を超えてもよく、130℃までまたはそれ以上であってもよい。高い揮発性モノマー、例えばエチレンまたはブタジエンは、好ましくは過圧下に重合される。重合媒質のpHを調節するために、第一ポリマーを製造するためのフリーラジカル水性エマルジョン重合の間、緩衝剤、例えばNaHCO、NaCO、Na−アセテート、またはNaを添加することが可能である。
【0057】
規定された粒子直径の再現性および確立を改良するために、第一ポリマーの製造の状況において、予め形成された水性ポリマー分散物(シード(seed)ラテックス)の規定量を重合容器へ装入するか、またはこのような分散物をその場で前記容器において予め形成することによって、当業者にそれ自体公知の方法で、ポリマー粒子形成相とポリマー粒子成長相を、互いから切り離すことが可能である。フリーラジカル水性エマルジョン重合のその後の経過において添加された分散物の量は、ついで一般に、臨界的ミセル濃度を超えないように、および新しいポリマー粒子の形成を大幅に避けるように計算される。第一ポリマーの粒子の直径の広い分布が望まれるならば、シードラテックスは一般に、フリーラジカル水性エマルジョン重合の間、それ自体公知の方法で、重合容器に添加されるであろう。一般にフリーラジカル重合プロセスのように、第一ポリマーを製造するためのフリーラジカル水性エマルジョン重合および各重合段階iの両方は、不活性ガス雰囲気下(例えばN、Ar)、または酸素含有雰囲気(例えば空気)下に実施することができる。
【0058】
第一ポリマーの水性分散物を製造するためのフリーラジカル水性エマルジョン重合は、次のようにして特に簡単に実施することができる。重合されることになるモノマーは、水性媒質中で乳化され、フリーラジカル重合開始剤は水中に溶解される。水、および所望であれば、少量のアルファ、ベータ−モノエチレン性不飽和カルボン酸が、重合容器に装入され、この当初装入材料が重合温度に加熱される。水性モノマーエマルジョンの一部および水性開始剤溶液の一部が、当初装入材料へ一気に(in one go)に添加され、これはついで重合される。その後、重合を維持しつつ、水性モノマーエマルジョンの残りおよび水性開始剤溶液の残りが、好ましくは実質的に同時に、連続的に重合容器へ供給される。開始剤およびモノマーの供給の終了後、重合混合物は、攪拌しつつ、かつ重合温度を維持しつつ、しばらくの間便宜上、そのままで放置される。その後の重合段階iを実施するために、反応混合物が、ついでまず最初に便宜上冷却されるであろう。段階iで重合されることになるモノマーが、ついで重合容器へ、好ましくはそれだけで、そしてすべて一度に添加されるであろう。第一ポリマーの水性分散物の乳化剤含量はここで、有利には、水性分散物媒質が、本質的に乳化剤ミセルを含有しないようなものであろう。有利には冷却されていたであろう反応器の内容物は一般についで、膨潤を促進するために攪拌しつつ、ある時間、便宜上そのまま放置される。その後、新たなフリーラジカル重合開始剤が通常添加されるであろうし、ついでこのバッチが重合温度に加熱され、所望どおりに重合されるであろう。必要であれば、さらなる重合段階iを、対応して付加することができる。
【0059】
重合段階iを開始するために用いることができるフリーラジカル重合開始剤は、原則として、第一ポリマーの分散物の製造と関連して既に記載されたすべてのものである。しかしながら好ましくは、有機過酸化物または有機ヒドロペルオキシドを含んでいるフリーラジカル開始剤系、特に、このような有機過酸化物および/またはヒドロペルオキシドを含んでいるレドックス開始剤系を用いることである。第三ブチルヒドロペルオキシドおよびクメンヒドロペルオキシドを含んでいるフリーラジカル開始剤系が特に適切である。しかしながら、ピナンヒドロペルオキシド、p−メンタンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルフェニルヒドロペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、およびジアセチルペルオキシドを含んでいるフリーラジカル開始剤系も適切である。このような系において適切な還元性パートナーの例は、アルカリ金属スルファイト、アスコルビン酸、アセトンビスルファイト、およびヒドロキシメタンスルフィン酸のアルカリ金属塩である。重合段階iにおいて重合されることになるモノマーを基準にして、フリーラジカル重合開始剤0.1〜2重量%が、一般に添加される。当然ながら、本発明の好ましさがより低い実施形態において、水性媒質中で予め乳化された形態において重合段階iにおいて重合されることになるモノマーを、重合容器へ添加することも可能である。この状況において用いることができる分散剤は、ポリマー1の水性分散物を製造するために既に推奨されているすべてのものである。重合段階iにおいて有機レドックス開始剤系の好ましい使用から考えて、関連する重合温度は通常、80℃以下(大部分の場合、40℃またはそれ未満〜80℃またはそれを超える)であろう。重合圧力に関するかぎり、第一ポリマーの製造に関連して記載されたものが、ここでもまた当てはまる。
【0060】
本発明にしたがって結果として生じる水性ポリマー分散物のフィルム(着色および/または充填されているか、または着色されておらず、充填もされていない)は、既に記載された利点を有するのみならず、良好な柔軟性、低下した表面粘着性、および満足すべき硬度を有する。これらはとりわけ、皮革および疎水性支持体へのコーティングのためのバインダー、例えば断熱のために例えばポリウレタンベース組成物でコーティングされている、例えば平らな屋根へのコーティングのためのバインダーとして適している。公知のスプレー乾燥技術の1つを用いることによって、本発明にしたがって入手しうる水性ポリマー分散物を、水性媒質中に再分散することができるポリマー粉末へ転化することが可能である。この乾燥形態に転化された本発明にしたがって入手しうる水性ポリマー分散物は、使用現場において水性分散物形態へ転化して戻される前に、有利な費用で輸送することができる。さらには、このようにして入手可能なポリマー粉末は、市場志向型ドライプラスターを生産するため、およびポリマー変性結合無機建築材料、例えばドライモルタル、特にセメントベースのものを生産するために用いることができる。本発明にしたがって入手しうるポリマー系はまた、接着剤として、紙コーティングスリップ用バインダーとして、および不織布用バインダーとしても適している。特にこれらは、既に記載されているように、クラック橋かけコーティング組成物(例えばペイント)用に適している。
【0061】
この種のコーティング組成物は一般に、不揮発性成分40〜95重量%(60〜90重量%、および65〜85重量%も包含する)を含有する。これらの総量を基準にして、これらの成分の約10〜99.5重量%(10〜50重量%および20〜40重量%も包含する)が、ポリマーバインダー中に存在する固体によって占められ、0〜60重量%(20〜60重量%および30〜55重量%も包含する)が充填剤によって占められ、0〜60重量%(0〜20重量%を包含する)が顔料によって占められ、0.5〜25重量%(1〜10重量%を包含する)が助剤によって占められる。
【0062】
適切な充填剤の例は、アルモシリケート、シリケート、アルカリ土類金属炭酸塩、好ましくはカルサイトまたはチョークの形態の炭酸カルシウム、ドロマイト、およびまたケイ酸アルミニウムまたはケイ酸マグネシウム、例えばタルクである。
【0063】
典型的な顔料の一例は、好ましくはルチル形態における二酸化チタンである。しかしながらこれらのコーティング組成物はまた、特に装飾目的のために用いられる時、着色顔料を含んでいてもよい。その例は、酸化鉄である。
【0064】
慣例的な助剤には、湿潤剤、例えばナトリウムまたはカリウムポリホスフェート、ポリアクリル酸、これらのアルカリ金属塩、ポリビニルアルコールなどが含まれる。さらには、これらのコーティング組成物は一般に、粘度調節剤、例えばセルロースエーテルを含有する。一例は、ヒドロキシエチルセルロースである。さらには、これらのコーティング組成物は、これらに分散剤、消泡剤、防腐剤、疎水化剤(hydrophobicizing agent)、殺生剤、染料、繊維、またはほかの成分が添加されていてもよい。バインダーポリマーの皮膜形成特性を確立するために、これらのコーティング組成物はまた、可塑剤を含んでいてもよい。
【0065】
本発明にしたがって入手しうる水性ポリマー分散物中に存在するポリマーはまた当然ながら、凝集によって単離することもできる。これは、それ自体公知の方法で実施することができ、このポリマーは、例えばエンジニアリングプラスチックを変性させるために用いることができる。
【0066】
本発明にしたがって入手しうる水性ポリマー分散物はまた、ほかの水性ポリマー分散物を変性させるためにも用いることができる。このことは、単にこれらをほかの水性ポリマー分散物へ添加することによって行なうことができる。しかしながら、代替方法は、これらを、異なる水性ポリマー分散物を製造するためにシード分散物として用いることである。
【0067】
さらには、これらの新規ポリマーは、接着剤、特に感圧接着剤として用いることができる。これらは特に感圧接着剤として適している。
【0068】
この目的のために、これらのポリマーは好ましくは、これらの水性分散物の形態で用いられる。
【0069】
感圧接着剤としての用途の場合、粘着付与剤、換言すれば、粘着を与える樹脂を、ポリマーまたはポリマーの水性分散物へ添加することができる。粘着付与剤、例えば、Adhesive Age、1987年7月、19−23ページ、またはPolym.Mater.Sci.Eng.61(1989)、588−592ページから公知である。
【0070】
粘着付与剤の例は、天然樹脂、例えば、ロジン、および不均化もしくは異性化、重合、二量化、および/または水素化によって生成されたロジンの誘導体である。これらは、これらの塩形態(例えば一価または多価対イオン(カチオン)を有するもの)、または好ましくはこれらのエステル化形態で存在しうる。エステル化のために用いられるアルコールは、一価または多価であってもよい。その例は、メタノール、エタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,3−プロパントリオール、またはペンタエリトリトールである。
【0071】
さらにはまた、粘着付与剤として、炭化水素樹脂、例えばインデン−クマロン樹脂、ポリテルペン樹脂、不飽和CH化合物をベースとする炭化水素樹脂、例えばブタジエン、ペンテン、メチルブテン、イソプレン、ピペリレン、ジビニルメタン、ペンタジエン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、スチレン、アルファ−メチルスチレン、またはビニルトルエンが用いられる。
【0072】
粘着付与剤としてますます用いられるようになっているほかの化合物は、低モル重量のポリアクリレートである。これらのポリアクリレートは好ましくは、30,000未満の重量平均分子量Mwを有する。これらのポリアクリレートの少なくとも60重量%、特に、少なくとも80重量%が、C−Cアルキル(メタ)アクリレートからなる。
【0073】
好ましい粘着付与剤は、天然ロジンまたは化学変性されたロジンである。ロジンは、主としてアビエチン酸またはその誘導体からなる。
【0074】
粘着付与剤は、新規ポリマーへ、好ましくはこれらのポリマーの水性分散物へ、簡単な方法で添加することができる。この場合、粘着付与剤は好ましくは、それ自体水性分散物の形態にある。
【0075】
粘着付与剤の量(重量)は好ましくは、ポリマー100重量部を基準にして5〜100重量部(固体/固体)であり、これは10〜50重量部を包含する。
【0076】
粘着付与剤に加えて、(感圧)接着剤としてのポリマーの使用の場合、添加剤、例えば増粘剤、消泡剤、可塑剤、顔料、湿潤剤、または充填剤を用いることも可能である。
【0077】
(感圧)接着剤としての使用のために、新規ポリマーおよび水性分散物、または水性配合物は、慣例的な方法によって、例えばローリング、ナイフコーティング、スプレッディングなどによって、支持体、例えば、紙またはポリマーフィルム、好ましくはポリエチレン、共軸または一軸延伸することができるポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミドからなるもの、または金属へ塗布することができる。水は、好ましくは50〜150℃での乾燥によって除去することができる。その後の使用のためには、(感圧)接着剤でコーティングされる支持体例えばラベルの面は、剥離紙、例えばシリコーン処理された紙で覆われていてもよい。
【0078】
接着剤として使用された時、これらのポリマーは、本質的に不変の接着性および粘着性と組合わされた耐水性、水白化耐性、および改良された凝集力を示す。
【実施例】
【0079】
実施例および比較例:
次の省略形が以下で用いられる:
MMA=メチルメタクリレート
nBA=n−ブチルアクリレート
EHA=2−エチルヘキシルアクリレート
tBMA=第三ブチルメタクリレート
iBMA=イソブチルメタクリレート
nBMA=n−ブチルメタクリレート
S=スチレン
alMS=アルファ−メチルスチレン
BDA2=ブタンジオールジアクリレート
AA=アクリル酸
MAA=メタクリル酸
IA=イタコン酸
AM=アクリルアミド
NaPS=ナトリウムペルオキソジスルフェート
tBHP=第三ブチルヒドロペルオキシド
RC=ヒドロキシメタンスルフィン酸のナトリウム塩(ロンガリット(Rongalit(商標)C)
E1=ハイテノール(Hitenol)(商標)BC−10
E2=ポリステップ(Polystep)(商標)NMS−7
E3=トレム(Trem)(商標)LF−40
E4=マキセムル(Maxemul)(商標)6112
DS=ジスソルビン(Dissolvine)E−Fe−13(商標)、EDTAの鉄ナトリウム錯体
AcBS=アセトンビスルファイト
【0080】
比較例:水性モノマーエマルジョンを、水249g、従来のアニオン性界面活性剤であるドデシルフェノキシベンジルジスルホン酸のナトリウム塩(ダウファックス(Dowfax)(商標)2A1に相当する活性物質)の45%重量強度(strength by weight)水溶液14.22g、従来の界面活性剤であるエトキシル化アルカノール(アルキル:C16−18;EO単位:18)の20%重量強度水溶液20g、150.4gのEHA、488.8gのnBA、112.8gのMMA、16gのMAA、およびAMの50%重量強度水溶液8.0gから生成した。水性開始剤溶液を、ナトリウムペルオキソジスルフェート2.4g、および水75gから製造した。水250gおよび1.6gのIAを、攪拌ガラス重合容器(2L)へ装入した。重合容器および当初装入材料を、窒素でフラッシュし、ついで装入材料を85℃に加熱した。その後、水性モノマーエマルジョン21.2gを重合容器に全て一度に添加し、ついで水性開始剤溶液7.7gを添加した。85℃を維持しつつ、反応器の内容物を、30分間重合させておいた。ついで85℃を保持しつつ、水性モノマーエマルジョンの残り(3時間にわたって)および水性開始剤溶液の残り(4時間にわたって)を、同時に開始して、重合容器へ連続的に供給した。水性開始剤溶液の供給の終了後、重合容器には、次の組成を有する第一ポリマーの水性分散物が入っていた:63.2重量%のnBA、19.4重量%のEHA、14.6重量%のMMA、2.1重量%のMAA、0.5重量%のAM、および0.2重量%のIA。関連するフィルムのガラス転移温度は、Tg=−29℃であった。
【0081】
ポリマーの水性分散物を、40℃に冷却し、48gのtBMA(重合されたモノマーのすべてを基準にして5.8重量%)を、全て一度に添加した。40℃に維持しつつ、反応器の内容物を10分間攪拌した。ついでまず最初に、tBHPの50%重量強度水溶液3.2gを全て一度に添加し、ついで水5g中に溶解された0.8gのRCを添加した。最後に、反応混合物の温度を、60℃に上昇させ、反応混合物を、攪拌しつつ45分間この温度に維持した(放出された反応熱は、重合が進行していることを示した)。最後に、反応混合物を25℃に冷却し、水性分散物媒質のpHを、10%重量強度NaOH水溶液を用いて、8.5の値に調節した。結果として生じた水性ポリマー分散物の固体含量は、57重量%であり、フォトン相関分光法を用いて決定された平均ポリマー粒子直径は、480nmであった。
【0082】
実施例1:水性モノマーエマルジョンを、水240.5g、E1の水溶液1重量%、144gのEHA、468gのnBA、108gのMMA、16gのMAA、およびAMの50%重量強度水溶液8gから生成した。水性開始剤溶液を、ナトリウムペルオキソジスルフェート2.4gおよび水75gから製造した。水250gおよび1.6gのIAを、攪拌ガラス重合容器(2L)へ装入した。重合容器および当初装入材料を、窒素でフラッシュし、ついで装入材料を85℃に加熱した。その後、水性モノマーエマルジョン20.55gおよび水性開始剤溶液7.7gを重合反応器に全て一度に添加した。85℃を維持しつつ、反応器の内容物を、30分間重合させておいた。ついで85℃を保持しつつ、水性モノマーエマルジョンの残り(3時間にわたって)および水性開始剤溶液の残り(4時間にわたって)を、同時に開始して、重合容器へ連続的に供給した。水性開始剤溶液の供給の終了後、重合容器には、次の組成を有する第一ポリマーの水性分散物が入っていた:63.1重量%のnBA、19.4重量%のEHA、14.6重量%のMMA、2.2重量%のMAA、0.5重量%のAM、および0.2重量%のIA。
【0083】
ポリマー1の水性分散物を40℃に冷却し、80gのtBMA(重合されたモノマーのすべてを基準にして9.7重量%)を、全て一度に添加した。40℃に維持しつつ、反応器の内容物を10分間攪拌した。ついでまず最初に、tBHPの50%重量強度水溶液4.8gを全て一度に添加し、ついで水5g中に溶解された1.2gのRCを添加した。最後に反応混合物の温度を、60℃に上昇させ、反応混合物を、攪拌しつつ45分間この温度に維持した(放出された反応熱は、重合が進行していることを示した)。最後に、反応混合物を25℃に冷却し、水性分散物媒質のpHを、10%重量強度NaOH水溶液を用いて、8.2の値に調節した。結果として生じた水性ポリマー分散物の固体含量は、56.2重量%であり、平均ポリマー粒子直径は、354nmであった。
【0084】
実施例2:水性モノマーエマルジョンを、水240.5g、E1の水溶液1重量%、144gのEHA、468gのnBA、108gのMMA、16gのMAA、およびAMの50%重量強度水溶液8gから生成した。水性開始剤溶液を、ナトリウムペルオキソジスルフェート2.4gおよび水75gから製造した。水250gおよび1.6gのIAを、攪拌ガラス重合容器(2L)へ装入した。重合容器および当初装入材料を、窒素でフラッシュし、ついで装入材料を85℃に加熱した。その後、水性モノマーエマルジョン20.55gおよび水性開始剤溶液7.7gを重合反応器に全て一度に添加した。85℃を維持しつつ、反応器の内容物を、30分間重合させておいた。ついで85℃を保持しつつ、水性モノマーエマルジョンの残り(3時間にわたって)および水性開始剤溶液の残り(4時間にわたって)を、同時に開始して、重合容器に連続的に供給した。水性開始剤溶液の供給の終了後、重合容器には、次の組成を有する第一ポリマーの水性分散物が入っていた:63.1重量%のnBA、19.4重量%のEHA、14.6重量%のMMA、2.2重量%のMAA、0.5重量%のAM、および0.2重量%のIA。
【0085】
ポリマー1の水性分散物を40℃に冷却し、80gのtBMA(重合されたモノマーのすべてを基準にして9.7重量%)を、水20gおよび0.8gのE1の攪拌溶液に添加することによって、エマルジョン100gを製造した。40℃に維持しつつ、反応器の内容物を10分間攪拌した。ついでまず最初に、tBHPの50%重量強度水溶液4.8gを全て一度に添加し、ついで水5g中に溶解された1.2gのRCを添加した。最後に反応混合物の温度を、60℃に上昇させ、反応混合物を、攪拌しつつ45分間この温度に維持した(放出された反応熱は、重合が進行していることを示した)。最後に、反応混合物を25℃に冷却し、水性分散物媒質のpHを、10%重量強度NaOH水溶液を用いて、8.2の値に調節した。結果として生じた水性ポリマー分散物の固体含量は、56.2重量%であり、平均ポリマー粒子直径は、354nmであった。
【0086】
実施例3−5:1重量%のそれぞれ異なる界面活性剤モノマーE2−E4を用いて、実施例1のように実施例を実施した。
【0087】
実施例6−8:1重量%のそれぞれ異なる界面活性剤モノマーE2−E4を用いて、実施例2のように実施例を実施した。
【0088】
接着テスト
先行実施例において製造されたポリマーを、接着特性についてテストした。ついでこれらの接着剤を、アセトンで拭き取られたポリエチレンテレフタレートシートにコーティングし、105℃で5分間乾燥した(または示されている場合は、未処理の二軸延伸ポロプロピレンにコーティングし、70℃で15分間乾燥した)。乾燥された接着性フィルムの厚さは、0.001インチであった。コーティングされたシートを、ついで未処理ポリプロピレンカバーシートへラミネートした。これらのラミネートを、テストに先立って、1インチ幅のストリップにカットし、少なくとも24時間25℃、50%相対湿度で状態調節した。
【0089】
ラミネートサンプルを、水浸漬の前後に透明度について目視検査し、次の尺度にしたがって評価した:
E=完全な透明度を有する優れたフィルム品質
VG=非常にわずかな曇りを有する非常に良好なフィルム品質
G=わずかな曇りを有する良好なフィルム品質
F=中程度の曇りを有するまずまずのフィルム品質
P=ひどい曇りを有する低いフィルム品質
【0090】
これらの結果を表Iに示すが、これらの結果は、この発明のポリマーが、従来のポリマーと比べて、接着剤特性に対する悪い影響をともなわずに、同等または改良された耐水性および水白化耐性を示すことを証明している(比較例参照)。
【0091】
【表1】

【0092】
これらの結果は、本発明のポリマーが、接着特性の良好な全体のバランスを与えることを示している。実施例は、同等または改良されたせん断抵抗、良好なフィルム透明度、匹敵しうる剥離強さ、およびループタックを有し、すべて改良された耐水性および水白化耐性をともに有していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性ポリマー分散物を製造する方法であって、(a)1以上のエチレン性不飽和基を有する少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマー、および少なくとも1つのエチレン性不飽和界面活性剤モノマーを、フリーラジカル水性エマルジョン重合によって重合し、第一ポリマーを供給する工程;および(b)1以上の連続した重合段階において、エチレン性不飽和モノマーおよびエチレン性不飽和界面活性剤モノマーから選択された1以上のモノマーを、第一ポリマーの水性分散物中のフリーラジカル重合によってさらに重合する工程を含み、
第一ポリマーと、各連続した重合段階から形成された対応するポリマーとの間のガラス転移温度の差が、10℃以上であり、第一ポリマーを製造するために重合されたエチレン性不飽和モノマーの量が、該方法において重合されたモノマーのすべての量を基準にして、75重量%〜99.9重量%であり、すべての重合段階において重合されたエチレン性不飽和モノマーの総量が、該方法において重合されたモノマーのすべての総量を基準にして、0.1重量%〜25重量%である方法。
【請求項2】
エチレン性不飽和界面活性剤モノマーが、水に添加された時に水の表面張力を72ダイン/cm未満へ低下させるモノマーである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
エチレン性不飽和モノマーが、エチルアクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、(メタ)アクリルアミド、スチレン、イタコン酸、アクリロニトリル、アクリロアミドプロパンスルホン酸、およびビニルスルホン酸からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
第一ポリマーのガラス転移温度が、−60〜110℃である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
製造された水性ポリマー分散物が、接着剤として用いられる、請求項1記載の方法。
【請求項6】
製造された水性ポリマー分散物が、感圧接着剤として用いられる、請求項1記載の方法。
【請求項7】
水性ポリマー分散物を製造する方法であって、(a)1以上のエチレン性不飽和基を有する少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマー、および少なくとも1つのエチレン性不飽和界面活性剤モノマーを、フリーラジカル水性エマルジョン重合によって重合し、第一ポリマーを供給する工程;および(b)1以上の連続した重合段階において、エチレン性不飽和モノマーから選択された1以上のモノマーを、第一ポリマーの水性分散物中のフリーラジカル重合によってさらに重合する工程を含み、
第一ポリマーと、各連続した重合段階から形成された対応するポリマーとの間のガラス転移温度の差が、10℃以上であり、第一ポリマーを製造するために重合されたエチレン性不飽和モノマーの量が、該方法において重合されたモノマーのすべての量を基準にして、75重量%〜99.9重量%であり、すべての重合段階において重合されたエチレン性不飽和モノマーの総量が、該方法において重合されたモノマーのすべての総量を基準にして、0.1重量%〜25重量%である方法。
【請求項8】
水性ポリマー分散物を製造する方法であって、(a)1以上のエチレン性不飽和基を有する少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーを、フリーラジカル水性エマルジョン重合によって重合し、第一ポリマーを供給する工程;および(b)1以上の連続した重合段階において、エチレン性不飽和モノマーおよびエチレン性不飽和界面活性剤モノマーから選択された1以上のモノマーを、第一ポリマーの水性分散物中のフリーラジカル重合によってさらに重合する工程を含み、
第一ポリマーと、各連続した重合段階から形成された対応するポリマーとの間のガラス転移温度の差が、10℃以上であり、第一ポリマーを製造するために重合されたエチレン性不飽和モノマーの量が、該方法において重合されたモノマーのすべての量を基準にして、75重量%〜99.9重量%であり、すべての重合段階において重合されたエチレン性不飽和モノマーの総量が、該方法において重合されたモノマーのすべての総量を基準にして、0.1重量%〜25重量%である方法。

【公開番号】特開2006−299260(P2006−299260A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−112063(P2006−112063)
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】