説明

多段カラムにおける流体分配および収集のシステム

【解決手段】多段カラムは、一連のプレートを有している。各プレートは、粒状固体床を支持している。各プレートには、前記流体を分配するためのネットワークが備えられている。前記ネットワークは、ランク1〜Nの複数の分岐段階を有する実質的に水平なライン(6,7,10)によって構成されている。ランクP〜Nのラインの集合体は、当該プレートのベース面に付随させられている。分岐の最終段階Nのラインは、前記プレートのベース面のすぐ下に配置された混合室(8)と連通させられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状媒体と称される固体粒子媒体中の流体の流れを利用する多段カラムにおいて、前記流体の分配および収集を行うための新規な装置に関する。
【0002】
多段カラムは、実質的に垂直な軸に沿って配置された多数のプレートによって構成されるカラムである。各プレート(支持プレートと称される)は、粒状固体床を支持している。種々の連続的な床を、カラムにおいて用いられる流体が順次に通過させられる。連続的な床中を通過する流体は、主流体と称され、他の流体と区別される。他の流体は、一般的には、2つの連続的床の間に位置しかつ分配プレートと称されるプレートによって、主流体に加えられる。
【0003】
各床の粒状固体は、一般的に、前記床の上流に位置する分配プレートを介して供給される。
【0004】
本発明は、分配プレートに関する。
【0005】
本明細書において、略語「プレート」が使われている場合、これは、分配プレートを意味する。
【0006】
分配プレートは、典型的に、分配ネットワークと称される、流体を供給あるいは収集するためのネットワークと、分配ネットワークを介して、注入または注出された流体を主流体と混合するための1つ以上の混合室とを含む。
【0007】
本発明の装置は、複数の分配プレートから構成されている。その分配ネットワークは、少なくとも部分的に粒状媒体と接触している。
【0008】
本発明は、本質的に、分配プレートの分配ネットワークを、カラム中のランクP+1の粒状床に供給するために、ランクPの粒状床を支持する支持プレートに限りなく近く位置決めするように構成するものである。支持プレートに限りなく近接させて位置決めすることが意味するところは、当該分配プレートの分配ネットワークを構成するライン下方のデッドスペースが最小限に抑えられることである。
【0009】
本発明は、また、周辺粒状媒体の分配プレートと接触するラインを分離する充填物を分配ネットワークに追加する可能性に関する。
【0010】
本発明は、粒子の固体床内部が栓流に近づき、これにより、疑似移動床(SMB)方式の吸着のように、このタイプのカラムにおいて行われる種々の方法の性能を最適化できることを意味する。
【背景技術】
【0011】
分配装置は、多段式の反応器または分離カラムにおいて用いられかつ複数の機能を有している。この機能には、例えば、前記反応器または分離カラム中のあらゆる段階における流体の注入または注出が含まれる。
【0012】
一般に、この注入または注出機能は、カラム部分の種々の領域間においてバランスがとれる方法で実施されるのが望ましい。
【0013】
カラム部分は、一般に、ある定められた数の部分に分割される。各部分は、他の部分に対して均質な方法で洗われなければならない。
【0014】
これには、特定の外形を有する分配器の使用が必要となり、これにより、各部分が等しい表面積を有する場合、分配器は各部分に到達し各部分上にほぼ等しい流れを供給(または除去)する。もし個々の部分が異なる表面積を有する場合、注入または注出される流れは、関連する部分(同士)の表面積とほぼ比例する。関連するカラムが大きな寸法を有する場合(例えば、直径5〜15メートル)、より大きく、またはより小さく分岐されるラインを用いるネットワークが、しばしば用いられ、流体をカラム外部から多段式カラムの種々のプレートへと導き、その後、あるプレートから前記プレートの個々の部分へと導く。
【0015】
プレートは、また、カラム中の主流とネットワークによって注入される流れを混合して、下流のプレートに均質な濃度を有する流体を供給する機能を有する。
【0016】
クロマトグラフィー型またはSMB型の多段式カラム吸着分離方法に関し、特許文献1〜4において、カラム中の異なる高さのプレートに供給する分配ネットワークの構成が例示されている。
【0017】
分配ネットワークは、相当かさ高く、定常的につかわれるものであり、カラムの総スペースを最小化するために、粒状固体(触媒または吸収剤)の床中に位置されている。
【0018】
分配プレート中にネットワークを一体化する代替物が用いられてもよいが、そのような代替物は、よりスペースの大きいプレートを使用する必要がある。カラムの総スペースは、分配ネットワークが、プレートの外部にありかつネットワークにより提供されたベッドの上方または下方の粒状固体に埋め込まれている場合より、更に大きくなる。
【0019】
分配ネットワークのタイプ、ラインの寸法およびそれらの位置の選択は、種々の基準を満たさなければならない。
【0020】
・分配プレート全体にわたってバランスのとれた分配プレートを提供する。
【0021】
・プレートの種々のゾーンにおいて流体を同期させる方法で導く、すなわち、ネットワークにおける滞留時間の分散を最小化する。
【0022】
・可及的に低減した体積のネットワークを用いて、活性固体のスペースを最大化させる。
【0023】
・流体速度を十分低減したネットワークを用いて、ネットワークとプレートに損傷を与え得る振動のリスクを避ける。
【0024】
種々の基準を満たすために、寸法の大きいネットワークが用いられることがあり、粒状媒体自体の中にネットワークを配置することにより、カラム中の流れがかき乱される可能性がある。これは、特に、栓流が望まれる粒状固体を用いる方法における場合である。
【0025】
用語「栓」流は、速度の方向および大きさが可級的に均質である流れを意味し、これにより、当該装置における軸方向分散が最小化される。この目的が1またはそれ以上の多段式カラムを用いる疑似移動床(SMB)分離方法において達成されることが、特に重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】国際公開第2006/027118号
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0108274号明細書
【特許文献3】欧州特許第0074815号明細書
【特許文献4】仏国特許発明第2792645号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
本発明により解決すべき課題は、多段カラムと称される、粒状固体のベッドを支持している多数のプレートを備えたカラム内の流体の流れを改善することである。
【0028】
本明細書において、「流れを改善する」とは、流れが理想的に栓流に近づくこと、すなわち、カラムの種々の連続床を通過する流体の軸方向分散が可能な限り小さくなることを意味する。
【課題を解決するための手段】
【0029】
カラムは、一般的に、粒状媒体を構成し、そして、種々のプレート間を移動する流体は下降流の液体である。
【0030】
本発明は、カラムに供給する流体を分配するためのネットワークの集合体からなる。各分配ネットワークは、前記カラムの各プレートにそれぞれ割り当てられかつ実質的に水平なライン6によって構成される。前記ラインは、ランク1〜Nの複数の分岐段階を有している。ランクP〜N(Pは1〜Nの範囲で選択される)のラインの集合体は、当該プレートのベース面に付随している。分岐の最終段階Nのラインが、前記ベース面の直ぐ下方に配置された混合室8と連通している。
【0031】
より正確には、直ぐ下流の分配プレートのベース面からネットワークの1つのラインの下端が離れた距離がHである場合、Hは、0〜当該ラインの直径の1/4の範囲であれば、当該ラインは分配プレートに付随していると言える。
【0032】
分配器ネットワークが複数の分岐段階を有する一般的な場合において、これら種々の段階は1と示される第1のラインから出発し、Nと示される最終の分岐段階のラインへと移動する。
【0033】
このように、本発明は、ある分岐ランクPから最終の分岐ランクNまでのラインの少なくとも一部が分配プレートに付随していることにある。
【0034】
好ましくは、ランク1〜Nのネットワークを構成するラインがすべて分配プレートに付随している。
【0035】
この場合、ネットワークは完全に付随していると言える。
【0036】
好ましい変形例において、本発明は、また、充填物を使用することにある。前記充填物は、ネットワークを構成しかつ周辺粒状媒体から前記ラインを分離するラインの少なくとも1部の下方に配置されている。これにより、粒状媒体中の前記ラインの存在に起因する軸方向分散を最小化することができる。
【0037】
本発明はまた、本発明の装置を使用する疑似移動床分離方法において、分離されるべき供給原料は、7〜9個の炭素原子を含有する芳香族化合物のあらゆる混合物であることにある。
【0038】
本発明はまた、本発明の装置を使用する疑似移動床分離方法において、分離されるべき供給原料は、ノルマルパラフィンおよびイソパラフィンの混合物であることにある。
【0039】
最後に、本発明は、本発明の装置を使用する疑似移動床分離方法において、分離されるべき供給原料は、ノルマルオレフィンおよびイソオレフィンの混合物であることにある。
【0040】
より一般的に、本発明の流体分配装置は、あらゆる方法において用いられる。当該方法では、1つ以上の多段カラムが用いられる。多段カラムは、カラムを構成する、各プレートまたは複数のプレートの一部のみにおいて流体分配システムを必要とし、特に、疑似移動床分離方法に用いられる。
【0041】
好ましくは、前記装置を通過する主流体は、600〜950kg/mの範囲の密度および0.1〜0.6cPoの範囲の粘度を有する。略語cPoは、センチポアズ(センチポイズ)、すなわち10−3kg/m.s.を表す。
【0042】
本発明の方法の用途に関連する流体では、本発明の装置は、カラムの床のあらゆる地点において3×10−3cm/s未満となる軸方向分散係数をもたらせる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】先行技術に合致し、流体の流れは下降流である多段カラムの一部の線図である。
【図2】先行技術に合致し、「レーキ」型分配ネットワークの説明図である。
【図3】先行技術に合致し、「蛸」型分配ネットワークの説明図である。
【図4】本発明に合致し、連続する多段副分割または分岐を有するネットワークの説明図である。
【図5a】先行技術に合致し、粒状固体床中の分配ネットワークの詳細図である。
【図5b】先行技術に合致し、図5aのA-A線に沿う部分に相当する部分を示し、ネットワークおよびその下方プレート間の距離がゼロではない場合を示す断面図である。
【図5c】本発明に合致し、図5aのA-A線に沿う部分に相当する部分を示し、ネットワークが分配プレートに付随している場合を示す断面図である。
【図5d】本発明に合致し、図5aのA-A線に沿う部分に相当する部分を示し、ネットワークが分配プレートに付随しかつネットワークのラインと前記プレートとの間のデッドスペースを排除する充填物を備えた場合を示す断面図である。
【図6a】本発明に合致し、本発明の種々の実施形態を示す説明図である。
【図6b】本発明に合致し、図6aとは別の本発明の実施形態を示す説明図である。
【図6c】本発明に合致し、図6aとはさらなる別の本発明の実施形態を示す説明図である。
【図7】本発明に合致し、本発明に合致するネットワークを用いる多段カラムの一部の線図である。
【図8a】本発明に合致し、本発明により低減可能なデッドスペース減少の現象を示すコンピュータシミュレーションによる説明図である。
【図8b】本発明に合致し、本発明によって生じさせられた軸方向分散の低減を表したグラフである。この場合において、基本形態(ラインはプレートに密着)または好ましい形態(ラインを補足的充填物に密着)であり、幅1mおよび高さ1mの固定床中、ラインの直径が0.35mである二次元構造である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明は、複数の床に分割された粒状媒体を通過する流体を用いる方法において使用される。複数の床を含む容器は、一般的に円柱形状であり、よってカラムを構成する。しかし、円柱形状は必須ではなく、他の形状をとることも可能である。本明細書において、前記カラムの外形にかかわらず用語「カラム」が用いられる。
【0045】
したがって、本発明は、連続的に配置された複数の床を有するカラムに適用可能である。そのようなカラムは、多段式と称される。粒状固体床は、分配プレートによって分離される。この分配プレートは、床中の種々の流体の注入または注出をして、流体を注入する場合、前記流体をカラムの外部からプレートへと運び、流体を注出する場合、プレートからカラムの外部へと前記流体を運ぶことを必要とする。
【0046】
種々の流体を注入または注出するためのラインが、各分配プレートにおいてネットワークを形成する。
【0047】
一般に、分配プレートは、そのすぐ上流および下流の粒状固体床間に介在させられている。
【0048】
本発明が適用されるのは、上述したように、使用されるラインのネットワークの少なくとも一部が粒状固体床中のすぐ上流にある場合である。つまり、段階Pの床を提供する分配プレートの少なくとも一部は、段階P−1の床の粒状媒体中にある。
【0049】
図1は、先行技術であって、カラム1の一部を図式的に示す。カラム1は、多数の床2へと更に分割されている。各床2は、固体粒子の固定床によって構成されている。カラムは、下向きの黒矢印によって示された主下降流によって洗われる。
【0050】
床2は、分配プレートによって分離されている。分配プレートの機能は、上方の床からの主流および混和可能な流体の流れの注出または注入を可能にすることである。
【0051】
分配プレートは、一般的に、直ぐ上方の床を離れる流体を収集するパネル5へと更に分割される。プレートは、プレートの上流の床から注出される流体とプレートに注入される流体との混合機能を促進させるために、パネルへと分割される。各パネル5は、上方の床を支持する上方スクリーン4または穿孔プレートと、パネル底部に、前記プレート下流の粒子床を提供するための流体分配器3とを備えている。
【0052】
この分配器3は、スクリーンまたは穿孔プレートによって構成されてもよい。各パネル5は、1カ所以上の注入点を有する供給ネットワークに接続されている。注入ネットワーク6は、注入室8を提供している。注入室は、パネル自体に配置されかつ流体の注入および注出がパネル自体の中で実施されるような開口を備えている。
【0053】
図1からわかるように、先行技術によると、注入室8は、概ね、パネル5の内部に配置されている。場合によっては、注入室の一部は、注入室8を上方スクリーン4上に配置することによって、床の粒状媒体内に入り込むことがある。
【0054】
パネルの形状は、概ね、下方のベッドに分配される前に、上方の床からの主流体およびネットワークによって注入された流体間で良好に混合されるように設計されている。流体の混合および分散の質は、パネルの分割方法およびパネル数に部分的に依存する。
【0055】
プレートをパネルに分割する方法は、多くのバリエーションがある。
【0056】
分配プレートは、分散/収集ネットワークに接続されている。このネットワークは、少なくとも1つの主ライン6および副ライン7を含む種々のラインから構成されている。
【0057】
より高度の分岐に対応するために、例えば、3または4の他のラインも可能であるが、簡潔にするために、本明細書では、主ライン6および副ライン7を含むネットワークに限定する。
【0058】
先行技術によると、主ライン6は、概ね、支持スクリーン4に対して、ゼロでない距離Hのところに位置させられており、一方、副ライン7は、少なくとも1つの下向きの実質的垂直部分を有し、水平ライン6を分配プレートのパネル5に接続している。
【0059】
図2は、上方から見た、「レーキ」型ネットワークラインの一例である。
【0060】
パネル5が、プレートを互いに略同一幅の平行部分に分割している。
【0061】
副ライン7は全て、パネル5の長さ(または、大きい方の寸法)に相当する実質的に同一方向に配列されている。
【0062】
主ライン6は、副ライン7に、主ライン6に沿って分配されかつ各セクターを画定する異なる点で接続されている。副ライン7の端部は、注入室8を提供している。この注入室は、パネル5の長さの大部分をカバーしている。
【0063】
図3は、先行技術の他の例であって、「蛸」型と称されるラインのネットワークを、上から見たものである。
【0064】
パネル5は、ここでは、扇形部に相当する。
【0065】
図3に示すように、主ライン6は、このように、流体を外部からカラムの中心へ導き、その後、流体を種々の副ライン7に分配する。これらの副ライン7は、図3に見られるように、円形状分配室を介して、種々の扇形部分によってカラム放射状に広がっている。
【0066】
図4は、いくつかの連続する副分割を用いた、ラインネットワークの他の例である。主ライン6は、それ自身が他の副カラムへを提供している2つのラインに分割されており、これにより、3段階のネットワークを形成している。図2と比較して、このネットワークは、ライン9に相当する3段階の分岐段階を有している。各ライン9は、2つの連続するパネル5を提供している。
【0067】
これら種々のネットワーク構成が図解されているが、本発明は、いかなるタイプのネットワークにも適用可能である。好ましくは、本発明は、図4に示すような、複数の分岐段階を有するネットワークに適用可能である。
【0068】
図5aは、ネットワークの詳細図であって、水平な副ライン7hの一部に相当する。この副ライン7hは、プレートに密着しておらず、肘部分を通じて、プレートに接続された他の垂直部分7vへと続いている。副ラインの水平部分7hが分配プレート4から離れたゼロでない距離は、Hで表される。
【0069】
図5bは、図5A中のA-Aに沿う断面である。
【0070】
図5cは、図5A中のA-Aに沿う断面である。この場合、副ネットワークのラインが関連するプレートに密着している。本発明によると、距離Hは、ライン7hの直径の1/4に等しい。
【0071】
図5dは、本発明よるA-Aに沿う断面であって、ネットワークの副ラインが分配プレート4に密着しており、本発明の好ましい変形例によれば、副ラインは、充填物によって粒状床から分離されている。これは、流体が副ラインの下方に移動しないことを意味する。つまり、副ラインはネットワークのライン下に位置するスペースを塞いでいる。
【0072】
図6は、本発明のいくつかの実施例を示す。本発明の普遍の目的は、ネットワークおよびそれに関連するプレート間に含まれるスペースを最小化することである。
【0073】
図6aにおいて、ライン7hの両側のスペースを塞ぐことが可能な2つの充填物が用いられている。
【0074】
図6bにおいて、ライン7hの上に載せられた1つのU字型充填物が使用される。
【0075】
図6cにおいて、平坦な底面を有する形状のラインからなるネットワークが使用されている。
【0076】
図7は、カラム1の一部を図式的に示すものである。同部分は、複数の粒状床2に副分割されている。各粒状床は、固体粒子の固定床を含んでいる。
【0077】
図7の好ましい変形例では、本発明は、主ライン6と副ライン7がプレートに密着している、すなわち、距離Hがゼロである場合に適用される。
【0078】
より一般的には、ネットワークが1からNまでのいくつかの分岐段階を含む場合、本発明は、分岐部分の一部が関連する床を支持するプレートと密着すること、また、好ましくは、全ての分岐部分が関連するプレートと密着することを確実にすることからなる。
【0079】
いくつかのケースにおいて、上記条件を達成するのが非常に困難である場合、密着状態は、例えば、PからNの分岐段階にのみ限定され、1からP−1迄の分岐段階は、プレート上方のゼロでない距離Hに配置される。本発明のネットワークによれば、分岐部分の最終段階がプレートに密着していればよい。
【実施例】
【0080】
本発明の重要性は、図8aに示された二次元的構造において行われた一連の流体力学的計算でもって実証された。図8aは、分配プレートの底面に対するラインの種々の高さを示す。種々のグレー表示されたゾーンは、粒状床を通過する流体の再循環のレベルに相当する。特に、上記ゾーン下の黒色のゾーンは、デッドゾーン、すなわち最大の再循環を有するゾーンに相当する。
【0081】
しかしながら、可及的に栓流に近い流れ、すなわち、再循環のない流れが求められる。
【0082】
研究されている構成は、高さ1m、幅1mの寸法と、第三の寸法、つまり、高さおよび幅より遙かに大きい長さとを有している粒状床からなるものであった。
【0083】
粒状床を構成する粒子は、球状の無孔粒子であって、直径が0.6mmであり、間質内間隙率が32%であった。
【0084】
直径0.25m、長さ3mのラインが粒子の床に埋め込まれた。
【0085】
ラインの一番低い地点(下端)から床の底(あるいは下方プレート)迄の距離(H)は、0〜0.65mであった。
【0086】
ラインが下方プレートに密着していた場合(H=0)、ライン下に、図5dに相当する充填物9が存在する。
【0087】
周囲温度での水の流れが粒状床を下向きに通過することにおいて、シミュレーションされた。液体の速度プロファイルは、床の入口では平坦であった。
【0088】
流れは「Brinkman-Forchheimer」模型(モデル)と表示される多孔媒体流れ模型に従ってシミュレーションされた。この模型の詳細は、例えば、F Benyahia, “On the modeling of flow in packed bed systems”, Part Sci Tech 22 (2004), 367-378の記載に見ることができる。
【0089】
種々の試験構成の結果、得られた軸方向分散は、軸方向分散係数Daxcm2/sによって測定された。
【0090】
下方プレートからラインが離れている距離、つまり高さ(H)の機能としてのDaxの変化は、図8bに示されている。
【0091】
図8bから非常に明らかであるのは、軸方向分散係数Daxは、ラインがプレートに接近し、約3×10―3〜2×10―3cm/sの値を通過するにつれて減少することである。
【0092】
高さHは、ラインの下端に対して計測された。
【0093】
図8b中、白で示された2つのポイントは、本発明に相当する。図8b中、黒で示された他のポイントは、先行技術に相当する。
【0094】
下方プレートのところでラインをフラットすることにより、軸方向分散係数Daxは最小値である2×10―3cm/sに達した。
【0095】
更に、ラインを粒状媒体から分離しかつライン下方のデッドスペースを更に減少させるために、ライン側方に充填物を置くことにより、軸方向分散は更に減少し2×10―3cm/sから1.2×10―3cm/sまで減少した。
【産業上の利用可能性】
【0096】
この発明による分配装置は、粒状媒体と称される固体粒子媒体中の流体の流れを利用する多段カラムにおいて、前記流体の分配および収集を行うことを達成するのに適している。
【符号の説明】
【0097】
1 カラム
2 床
6,7,10 ライン
8 混合室(注入室)
9 充填物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を多段カラムに供給する分配装置であって、前記多段カラムは、一連のプレートを有しており、前記各プレートは、粒状固体床を支持しかつ前記流体を分配するためのネットワークを備えており、前記ネットワークは、ランク1〜Nの複数の分岐段階を有する実質的に水平なライン(6,7,10)によって構成されており、ランクP〜Nのラインの集合体は、当該プレートのベース面に付随させられており、換言するならば、ネットワークの1つのラインの下端がすぐ下流のプレートのベース面から離れている距離をHとすると、Hは、ゼロから当該ライン径の1/4までであり、Pは、1〜N間のいずれかの値であり、分岐最終段Nのラインが、前記ベース面のすぐ下に配置された混合室(8)と連通させられている分配装置。
【請求項2】
請求項1に記載の分配装置であつて、
ランク1〜Nの分配ネットワークを構成するライン(6,7,10)の全てが、当該プレートのベース面に付随させられている分配装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の分配装置であって、
プレートは、実質的に同一長さの経線パネル形状のM個の部分に分割されており、各部分には、分配ネットワークのランクNの少なくとも1つのターミナルがある分配装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の分配装置であって、
プレートは、扇形にほぼ等しいM個の部分に分割されており、各部分には、分配ネットワークのランクNの少なくとも1つのターミナルがある分配装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の分配装置であって、
ランクP〜Nの分配ネットワークのライン(6,7,10)の少なくとも一部に、前記ライン下方のスペースを塞ぐための充填物(9)が備えられている分配装置。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の分配装置であって、
ランク1〜Nの分配ネットワークのライン(6,7,10)の全てに、前記ライン下方のスペースを塞ぐための充填物(9)が備えられている分配装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の分配装置の使用方法であって、
疑似移動床分離方法において、分離されるべき供給原料が、7〜9個の炭素原子を含有する芳香族化合物のあらゆる混合物である使用方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の分配装置の使用方法であって、
疑似移動床分離方法において、分離されるべき供給原料が、ノルマルパラフィンおよびイソパラフィンの混合物である使用方法。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の分配装置を使用する疑似移動床分離方法であって、分離されるべき供給原料が、ノルマルオレフィンおよびイソオレフィンの混合物である方法。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の分配装置を使用する疑似移動床分離方法であって、
前記分配装置を通過する主流体が、600〜950kg/mの範囲の密度および0.1〜0.6cPoの範囲の粘度を有する方法。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の分配装置の使用する疑似移動床分離方法であって、
カラムの床のあらゆる地点における軸方向分散係数が、3×10−3cm/s未満である方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図5d】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【公表番号】特表2011−518665(P2011−518665A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505545(P2011−505545)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【国際出願番号】PCT/FR2009/000320
【国際公開番号】WO2009/133254
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(591007826)イエフペ エネルジ ヌヴェル (261)
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
【Fターム(参考)】