説明

多段式の摩擦真空ポンプ

少なくとも1つのターボ圧縮機段(11)を有する多段式の摩擦真空ポンプは、ターボ圧縮機段の吐出し側にサーキュラ圧縮機段(33)を備えている。このサーキュラ圧縮機段(33)は僅かな軸方向の寸法を有している。このサーキュラ圧縮機段(33)によって、スペース要求が著しく高められる恐れなしに、圧縮が増大させられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多段式の摩擦真空ポンプであって、軸方向に圧縮する少なくとも1つのターボ圧縮機段が設けられており、該ターボ圧縮機段が、その軸線を中心として回転するロータを有しており、該ロータが、不動のステータディスクの間に突入したロータディスクを備えている形式のものに関する。
【0002】
ターボ分子ポンプは、たとえば半導体製作のための真空容器または質量分析計のために高真空を発生させることができる摩擦真空ポンプのグループに属している。ドイツ連邦共和国特許出願公開第10004271号明細書(Leybold Vakuum GmbH)に記載された多段式の摩擦真空ポンプは1つまたはそれ以上のターボ圧縮機段を有している。このターボ圧縮機段はそれぞれ、半径方向に突出したロータディスクを備えたロータと、半径方向に突出したステータディスクを備えたステータとから成っている。ロータディスクとステータディスクとは僅かな間隔を置いて櫛状に噛み合っている。両ディスクはロータ軸線に対して軸方向の分子流れを生ぜしめる。ターボ圧縮機段に対して付加的にサーキュラ圧縮機段(円形圧縮機段)が設けられていてよい。このサーキュラ圧縮機段は、円軌道に配置された、軸方向に突出したロータ羽根を備えたロータと、円軌道に配置された、軸方向に突出したステータ羽根を備えたステータとを有している。ロータ羽根とステータ羽根とは交互に噛み合っていて、ロータの回転方向と羽根の取付け角とに応じて半径方向内側にまたは半径方向外側に向けられた分子流れを生ぜしめる。
【0003】
本発明の課題は、段が流路に直列に配置された、高められた圧縮を供給するようになっている、少なくとも1つのターボ圧縮機段を備えた摩擦真空ポンプを提供することである。
【0004】
本発明による多段式の摩擦真空ポンプは、請求項1の特徴を有している。真空ポンプは、ターボ圧縮機段と、流路において後置されたサーキュラ圧縮機段とを有している。ターボ圧縮機段は、高真空を発生させるために適しているのに対して、後置されたサーキュラ圧縮機段は、増圧を生ぜしめるために働く。したがって、サーキュラ圧縮機段は、圧縮によって低減されるガス体積のため、僅かな寸法を有していてよい。サーキュラ圧縮機段は僅かな軸方向の延在長さを有している。なぜならば、サーキュラ圧縮機段は主に半径方向で通流されるからである。摩擦ポンプの全寸法はサーキュラ圧縮機段によって著しく増加させられない。しかし、圧縮は単段式の摩擦真空ポンプに比べて著しく高められる。前置された1つのターボ圧縮機段と、後置された1つのサーキュラ圧縮機段とから成る本発明による組合せは、僅かなスペース要求と同時に高い圧縮出力の利点を提供する。
【0005】
本発明の有利な構成によれば、ターボ圧縮機段とサーキュラ圧縮機段とが、ロータとステータとから成る共通の組合せ内に組み込まれている。このことは、両圧縮機段のロータがただ1つの全ロータから成っており、両圧縮機段のステータが同じくただ1つの全ステータから成っていることを意味している。こうして、寸法と重量とを一層減少させることができる。
【0006】
本発明による摩擦真空ポンプは、有利にはマルチインレットポンプ(多入口ポンプ)として形成されている。このマルチインレットポンプは、軸方向に間隔を置いて配置された、連続して圧縮する少なくとも2つのターボ圧縮機段を有している。これらのターボ圧縮機段の間には、中間入口が位置している。第1のターボ圧縮機段のかつ/または第2のターボ圧縮機段の圧縮機側には、サーキュラ圧縮機段が配置されている。このようなポンプは、特に質量分析計に相俟って使用するために適している。この質量分析計の分析装置に接続された中間入口における高められるガス流によって、高真空入口における圧力に不利な影響が与えられることなしに、ガス流が中間入口で高められる。この中間入口でのガス流の増大は、質量分析計に対して感度の向上を意味している。
【0007】
サーキュラ圧縮機段として、圧縮比に応じて、ドイツ連邦共和国特許出願公開第10004271号明細書に記載したように、種々異なるタイプおよび構成を使用することができる。
【0008】
以下に、本発明の実施例を図面につき詳しく説明する。この実施例は、これによって、本発明の保護範囲が制限されるように解釈され得ない。この保護範囲は、むしろ、等価のものを含む特許請求の範囲により規定される。
【0009】
図1に示した摩擦真空ポンプはハウジング10を有している。このハウジング10はほぼ円筒状に形成されていて、一方の端部に高真空接続部HVを有している。ハウジング壁には、側方で開放した中間入口ZE1が位置している。この中間入口ZE1はウェブ18によって橋渡しされている。このウェブ18はステータ部分を互いに結合している。
【0010】
ハウジング10の前方の部分10aには、ステータ12とロータ13とから成る第1のターボ圧縮機段11が位置している。ステータ12は、周壁14から半径方向内側に向けられた複数のステータディスク15を有している。ロータ13は、ステータディスク15の間に突入した、半径方向外向きに突出した複数のロータディスク16を有している。ロータ13は、高速回転する電動モータを有する駆動装置17によって30000〜60000rpmの回転数で駆動される。
【0011】
第2のターボ圧縮機段21が第1のターボ圧縮機段11の圧縮機側に配置されていて、入口側で中間入口ZE1に接続されている。ターボ圧縮機段21はステータ22とロータ23とから成っている。ステータ22は、周壁24から半径方向内側に向けられた複数のステータディスク25を有している。ロータ23は、ステータディスク25の間に突入した、半径方向外向きに突出した複数のロータディスク26を有している。ロータ13,23は互いに固く結合されていて、駆動装置17によって一緒に駆動される。
【0012】
第2のターボ圧縮機段21には、ハウジング10内で別の圧縮機段30が続いている。この圧縮機段30は付加的に中間入口ZE2に接続されている。圧縮機段30は、たとえばホルベック段または別の分子ポンプ、たとえばゲーデポンプ、ジーグバーンポンプ、エングレンダーポンプまたはサイドチャンネルポンプである。
【0013】
本実施例では、第1のターボ圧縮機段11に続いてサーキュラ圧縮機段(円形圧縮機段)33が設けられている。このサーキュラ圧縮機段33は、ターボ圧縮機段11のロータ13の構成要素であるロータディスク34と、ステータ12の構成要素であるステータディスク32とを有している。ロータディスク34はロータ羽根35を有している。このロータ羽根35は同心的な円に配置されている。ステータディスク32はステータ羽根36を有している。このステータ羽根36も同じく同心的な円に配置されていて、図2に示したように、ロータ円の間の空所に係合している。ステータ羽根とロータ羽根とは半径方向に関して逆方向の傾斜位置を有している。ロータの回転方向に関連して、サーキュラ圧縮機段33は半径方向外向きに媒体圧送するかまたは半径方向内向きに媒体圧送する。圧送方向は、本実施例では、矢印37によって示してある。ガス搬送は高真空入口HVからターボ圧縮機段11を通って、このターボ圧縮機段11の周面から半径方向内向きにサーキュラ圧縮機段33を通って、そこからギャップ38を通って中間入口ZE1に進行する。この中間入口ZE1から、ターボ圧縮機段21がガスを圧縮機段30に圧送する。この圧縮機段30には、第2の中間入口ZE2も開口している。圧縮機段30は出口(図示せず)に媒体圧送する。
【0014】
ターボ圧縮機段11のロータディスク16の1つは、サーキュラ圧縮機段33のロータ羽根のための支持ディスクである。サーキュラ圧縮機段のステータ羽根は、同時にターボ圧縮機段11の吐出し側の端部のための端壁を形成している。
【0015】
特別な利点は、サーキュラ圧縮機段33がターボ圧縮機段11内にいわば組み込まれていることにある。付加的に必要となる唯一の手間は、ターボ圧縮機段のロータとステータとに付加的に設けられたロータ羽根35とステータ羽根36とにある。
【0016】
本実施例に対して択一的には、サーキュラ圧縮機段33が第2のターボ圧縮機段21の後方に設けられていてもよい。各ターボ圧縮機段の吐出し側に設けられた、このターボ圧縮機段内に組み込まれたサーキュラ圧縮機段によって、ガス流が吐出し側で高められる。接続された質量分析計に対して、このことは、感度の向上を意味している。
【0017】
図3には、サーキュラ圧縮機段33を通って半径方向外側から内方に流れるガス流40が示してある。
【0018】
図4の実施例では、ロータディスク34の羽根面が円錐形である。ロータ羽根35は、円軌道の、より小さくなる半径と共に減少させられる軸方向の長さを有している。
【0019】
一般的にドイツ連邦共和国特許出願公開第10004271号明細書の図7に示されているように、複数のディスクと、交互に外側にかつ内側に向けられた流れ経過とを備えたサーキュラ圧縮機段を使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による摩擦真空ポンプの縦断面図である。
【図2】サーキュラ圧縮機段を示す図である。
【図3】サーキュラ圧縮機段の別の構成の縦断面図である。
【図4】サーキュラ圧縮機段のさらに別の構成の縦断面図である。
【符号の説明】
【0021】
10 ハウジング、 10a 部分、 11 ターボ圧縮機段、 12 ステータ、 13 ロータ、 14 周壁、 15 ステータディスク、 16 ロータディスク、 17 駆動装置、 18 ウェブ、 21 ターボ圧縮機段、 22 ステータ、 23 ロータ、 24 周壁、 25 ステータディスク、 26 ロータディスク、 30 圧縮機段、 32 ステータディスク、 33 サーキュラ圧縮機段、 34 ロータディスク、 35 ロータ羽根、 36 ステータ羽根、 37 圧送方向、 38 ギャップ、 40 ガス流、 HV 高真空接続部、 ZE1,ZE2 中間入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多段式の摩擦真空ポンプであって、軸方向に圧縮する少なくとも1つのターボ圧縮機段(11,21)が設けられており、該ターボ圧縮機段(11,21)が、その軸線を中心として回転するロータ(13)を有しており、該ロータ(13)が、不動のステータディスク(15)の間に突入したロータディスク(16)を備えている形式のものにおいて、
ターボ圧縮機段(11)の圧縮機側に、半径方向に圧縮するサーキュラ圧縮機段(33)が配置されており、該サーキュラ圧縮機段(33)が、円軌道に配置された、軸方向に突出したロータ羽根(35)を備えたロータ(34)と、円軌道に配置された、軸方向に突出したステータ羽根(36)を備えたステータ(32)とを有していることを特徴とする、多段式の摩擦真空ポンプ。
【請求項2】
サーキュラ圧縮機段のロータ羽根(35)が、ターボ圧縮機段(11)の、ロータディスク(16)を支持するロータボディに配置されている、請求項1記載の摩擦真空ポンプ。
【請求項3】
ステータ羽根(36)が、ターボ圧縮機段(11)の、ステータ羽根(15)を支持するステータボディに配置されている、請求項1または2記載の摩擦真空ポンプ。
【請求項4】
マルチインレットポンプとしての請求項1から3までのいずれか1項記載の摩擦真空ポンプにおいて、軸方向に間隔を置いて配置された、連続して圧縮する少なくとも2つのターボ圧縮機段(11,21)が設けられており、該ターボ圧縮機段(11,21)の間に中間入口(ZE1)が位置しており、サーキュラ圧縮機段(33)が、第1のターボ圧縮機段(11)の圧縮機側に配置されていることを特徴とする、マルチインレットポンプとしての請求項1から3までのいずれか1項記載の摩擦真空ポンプ。
【請求項5】
マルチインレットポンプとしての請求項1から3までのいずれか1項記載の摩擦真空ポンプにおいて、軸方向に間隔を置いて配置された、連続して圧縮する少なくとも2つのターボ圧縮機段(11,21)が設けられており、該ターボ圧縮機段(11,21)の間に中間入口(ZE1)が位置しており、サーキュラ圧縮機段(33)が、第2のターボ圧縮機段(21)の圧縮機側に配置されていることを特徴とする、マルチインレットポンプとしての請求項1から3までのいずれか1項記載の摩擦真空ポンプ。
【請求項6】
サーキュラ圧縮機段(33)が、半径方向内向きに圧縮するようになっている、請求項1から5までのいずれか1項記載の摩擦真空ポンプ。
【請求項7】
サーキュラ圧縮機段(33)が、少なくとも2段式に形成されていて、交互に半径方向内向きにかつ半径方向外向きに(または逆の順序で)圧縮するようになっている、請求項1から6までのいずれか1項記載の摩擦真空ポンプ。
【請求項8】
ロータ羽根(35)が、圧縮方向に先細りにされた軸方向の長さを有している、請求項1から7までのいずれか1項記載の摩擦真空ポンプ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2007−510853(P2007−510853A)
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538704(P2006−538704)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【国際出願番号】PCT/EP2004/012196
【国際公開番号】WO2005/047707
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(505222392)ライボルト ヴァキューム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (8)
【氏名又は名称原語表記】Leybold Vacuum GmbH
【住所又は居所原語表記】Bonner Strasse 498,D−50968 Koeln,Germany
【Fターム(参考)】