説明

多段階反応を用いて調製されるコラーゲン−合成ポリマーマトリックス

【課題】免疫原性が低く、種々の医療用途で使用される生体適合性移植物の調製に有用なコラーゲン−合成ポリマーマトリックスを提供すること。さらに、より制御されそして再現性のあるコラーゲン−合成ポリマーマトリックスの調製方法を提供すること。
【解決手段】本発明のコラーゲン−合成ポリマーマトリックスは、以下の工程により調製される:
コラーゲンを第1の合成親水ポリマーと反応させてコラーゲン−合成ポリマーマトリックスを形成する工程;および
該コラーゲン−合成ポリマーマトリックスを、第2の合成親水性ポリマー、生物学的活性物質、グリコサミノグリカンおよびその誘導体、化学的架橋剤、エステル化剤、アミド化剤、アシル化剤、アミノ酸、ペプチド、およびそれらの化合物からなる群より選択される化学物質とさらに反応させる工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の関係)
本出願は、1994年2月17日に出願された同時係属中の米国特許出願第08/198,128号の一部継続出願であり、この一部継続出願は1992年7月30日出願の米国特許出願第07/922,541号の分割出願であり、この分割出願は1992年11月10日に発行された米国特許第5,162,430号の一部継続出願であり、この特許は1988年11月21日に
出願され、その後放棄された米国特許出願第07/274,071号の一部継続出願である。これらの出願および発行された特許をすべて、本明細書中で参考として援用する。現在係属中の出願については、米国特許法第120条に従って優先権を主張する。
【0002】
本発明は、多段階反応を用いて調製されたコラーゲン−合成ポリマーマトリックスに関する。第1の反応工程には、通常、コラーゲンと機能的に活性化した合成親水性ポリマーとの反応によるコラーゲン−合成ポリマーマトリックスの調製が含まれる。これに続く工程には、所望の最終用途に応じて、前記マトリックスと種々の化学物質との反応によるコラーゲン−合成ポリマーマトリックスの化学的修飾が含まれる。このようなコラーゲン−合成ポリマーマトリックスおよびこれらを調製する方法を本明細書中に開示する。
【背景技術】
【0003】
Danielsらの米国特許第3,949,073号では、組織を酸の水溶液中に溶解した後、酵素的消化による可溶性コラーゲンの調製が開示された。得られたアテロペプチドコラーゲンは可溶性であり、未修飾コラーゲンよりも実質的に免疫原性は低い。このアテロペプチドコラーゲンは、硬組織または柔組織の増強のために、原線維形成プロモーター(上記特許において重合プロモーターとして記載されている)とともに患者の適切な部位に注入され得、インサイチュで線維性コラーゲン移植物を形成し得る。この材料は、現在Zyderm(登録商標)Collagen ImplantとしてCollagenCorporation(PaloAlto,CA)から市販購入可能である。
【0004】
Miyataらの米国特許第4,164,559号では、化学的に修飾したコラーゲンの薄膜キャリア
を有する眼用薬剤送達システムが開示された。
【0005】
Davisらの米国特許第4,179,337号では、カップリング剤を用いてポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールに連結した生理学的に活性なポリペプチドを含有する生理学的に活性な水溶性のポリペプチド組成物が開示された。
【0006】
Luckらの米国特許第4,488,911号では、溶液中のコラーゲン(CIS)の調製方法が開示された。この場合、動物組織から希薄な酸の水溶液中に天然コラーゲンを抽出し、次いで、ペプシン、トリプシン、またはPronase(登録商標)(American Hoechst Corporation,SomervilleNJ)のような酵素で消化する。この酵素消化によりコラーゲン分子のテロペプチド部分を除去し、「アテロペプチド」コラーゲン溶液を得る。そのようにして生産した溶液中のアテロペプチドコラーゲンは実質的に非免疫原性であり、そして主要な架橋領域の損失のため実質的に非架橋性でもある。次いでこの溶液中のコラーゲンを適度なシェア条件下で透析することによって沈澱させ、天然コラーゲン線維に似たコラーゲン線維を生産し得る。この沈澱し再構成された線維は、化学薬剤(例えば、ホルムアルデヒドおよびグルタルアルデヒドのようなアルデヒド)、熱、または放射線を用いてさらに架橋され得る。得られた生成物は、生体適合性および低免疫原性であることにより、医療用移植物として使用するのに適している。
【0007】
Chuらの米国特許第4,557,764号では、所望の展性とパテ様稠度を示す「第2の核形成」コラーゲン沈澱物が開示された。コラーゲンは溶液として提供され(例えば、2〜4mg/ml)、そして「第1の核形成生成物」は、迅速な滴定および遠心分離により沈澱する。次いで、残存する上清(元のコラーゲンの大部分を含有する)をデカントし、そして一晩静置する。沈澱した第2の核形成生成物を遠心分離によって集める。
【0008】
Chuらの米国特許第4,600,533号;同4,655,980号;同4,689,399号;および同4,725,617
号では、コラーゲンのゲルを加圧し、そして乾燥することによる高い引張強度を有するコラーゲン膜の調製方法が開示された。
【0009】
Nguyenらの米国特許第4,642,117号では、再構成され、機械的に剪断されたアテロペプ
チドコラーゲン線維から構成される、注入可能なコラーゲン材料が開示された。このコラーゲン線維は、線維の大きさが充分に減少し、そして大きさが不均一になるまで、繰り返し堅いメッシュスクリーンに再構成されたコラーゲン線維を通すことにより調製される。この機械的に剪断された線維は、その後架橋され得る。
【0010】
Ramshawらの米国特許第4,980,403号では、PEG水溶液からのウシコラーゲン(タイプI、II、およびIII)の沈澱が開示された。この場合、コラーゲンとPEGとの間に結合はない。
【0011】
1992年8月17日に公開されたMiyataらの日本国特許出願第4-227265号には、ポリエポキシ化合物に結合したアテロペプチドコラーゲンを含有する組成物が開示されている。この組成物は、体内に注入され、持続性の皮膚リフト効果が得られる。
【0012】
1992年11月10日にRheeらに発行され、本願の譲受人の共有に係る米国特許第5,162,430号には、コラーゲン−合成ポリマー結合体、およびコラーゲンと合成親水性ポリ
マーとを共有結合的に結合する方法が開示されている。この特許はさらに、生物学的活性物質を合成ポリマー分子に結合し、次いでコラーゲンと反応させて3部分からなるコラーゲン−合成ポリマー−活性物質結合体を形成することが開示された。1994年3月8日に発行された共有に係る米国特許第5,292,802号には、コラーゲン−合成ポリマー結合体
を含有するチューブの作製方法が開示されている。共有され、特許査定された、1992年7月30日出願の米国特許出願第07/922,541号には、種々の活性化形態のポリエチレングリコールと、幅広い物理的性質および化学的性質を有するコラーゲン−合成ポリマー結合体を生産するために使用され得る種々の結合が開示されている。共有に係り、同時係属中の1992年12月2日出願の米国特許出願第07/984,933号には、コラーゲン−合成ポリマー結合体で移植物をコートする方法が開示されている。
【0013】
共有に係り、同時係属中の1993年11月3日出願の米国特許出願第08/146,843号には、合成親水性ポリマーに共有結合的に結合した種々のグリコサミノグリカンを含む結合体が開示されている。これらは、必要に応じてコラーゲンにも結合する。共有に係り、同時係属中の1993年11月3日出願の米国特許出願第08/147,227号には、例えばスクシニル化コラーゲンまたはメチル化コラーゲンのような、化学的修飾コラーゲンを含むコラーゲン−ポリマー結合体が開示されている。これらの化学的修飾コラーゲンは、合成親水性ポリマーに共有結合的に結合して、眼用または他の医療用途に使用するための、光学的に透明な材料を生成する。
【0014】
共有に係る、1994年2月17日出願の米国特許出願第08/201,860号には、線維の大きさの分布が制御されたコラーゲンを用いて調製されるコラーゲン−合成ポリマー結合体が開示されている。この結合体は、例えば、コラーゲンのpHを操作することにより得られ得る。
【0015】
上記および本明細書中で引用されるすべての刊行物を、引用される内容を記載し、そして開示するために、本明細書中で参考として援用する。
【0016】
以下、多段階反応を用いて調製されるコラーゲン−合成ポリマー結合体組成物を開示する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、多段階反応を用いて調製されるコラーゲン−合成ポリマーマトリックスを開示する。第1工程の反応は、一般に、コラーゲンを機能的に活性化された合成親水ポリマーと反応させてコラーゲン−合成ポリマーマトリックスを形成することを包含する。この合成ポリマーは、単官能性または多官能性に活性化しているが、好ましくは二官能性に活性化しており、その結果架橋したコラーゲマトリックスを形成する。第2工程の反応は、コラーゲン−合成ポリマーマトリックスを、以下の1種またはそれ以上の方法により修飾することを包含する:多官能性に活性化した合成ポリマーを用いてマトリックスをさらに架橋すること、単官能性に活性化した合成ポリマーを用いてマトリックスを結合すること、生物学的活性物質またはグリコサミノグリカンをマトリックスに連結すること、従来の化学的架橋剤を用いてマトリックスを架橋すること、または種々の化学反応によりマトリックス中のコラーゲンを修飾すること。必要に応じて行う第3工程の反応は、例えば、合成ポリマー上の利用可能な活性基を介して、生物学的活性物質またはグリコサミノグリカンをマトリックスに共有結合的に連結することによるコラーゲン−合成ポリマーマトリックスの修飾をさらに包含し得る。
【0018】
本発明は、コラーゲンを第1の合成親水性ポリマーと反応させて、コラーゲン−合成ポリマーマトリックスを形成し、次いでコラーゲン−合成ポリマーマトリックスを、第2の合成親水性ポリマー、生物学的活性物質、グリコサミノグリカンまたはその誘導体、化学的架橋剤、エステル化剤、アミド化剤、アシル化剤、アミノ酸、ペプチド、またはこれらの混合物からなる群より選択される化学物質とさらに反応させることにより調製されるコラーゲン−合成ポリマーマトリックスを開示する。
【0019】
本発明はさらに、本発明の好ましい実施態様を詳細に開示する。この場合、コラーゲンを第1の合成親水性ポリマーと反応させてコラーゲン−合成ポリマーマトリックスを形成する第1の反応工程に続いて、コラーゲン−合成ポリマーマトリックスを第2の合成親水性ポリマーとさらに反応させることを含む第2の反応工程がある。
【0020】
さらに、生物学的活性物質またはグリコサミノグリカンを含有するコラーゲン−合成ポリマーマトリックスを開示する。このようなマトリックスは、多段階反応を用いて調製される。この場合、第1の反応工程は、コラーゲンを第1の合成親水性ポリマーと反応させてコラーゲン−合成ポリマーマトリックスを形成することを含み、第2の反応工程は、コラーゲン−合成ポリマーマトリックスを第2の合成親水性ポリマーとさらに反応させることを含み、そして第3の反応工程は、コラーゲン−合成ポリマーマトリックスを、生物学的活性物質あるいはグリコサミノグリカンまたはその誘導体と共有結合的に結合させることを含む。
【0021】
得られるマトリックス組成物の免疫原性は低く、そしてそのために多様な医療用途(例えば、薬物送達システムまたは種々の成形移植物の調製)に用いられ得る。
【0022】
さらに、上記のコラーゲン−合成ポリマーマトリックスを調製するための多段階反応工程を開示する。
【0023】
本発明の1つの特徴は、コラーゲン−合成ポリマーマトリックスが、特別な一連の反応工程(すなわち「多段階反応」)を用いて、より制御されそして再現性のある方法で調製され得ることである。
【0024】
本発明の他の特徴は、用いた特定の一連の反応工程に依存して、種々の治療学的用途での使用のために望ましい物理的性質および化学的性質を特に有するように、コラーゲン−合成ポリマーマトリックスが目的にあわせて調製され得ることである。
【0025】
本発明のさらなる他の特徴は、生物学的活性物質を含有するコラーゲン−合成ポリマーマトリックスが、効率的でより制御された方法で調製され、生物学的活性物質が最大限利用されるマトリックスが提供され得ることである。
【0026】
本発明の重要な特徴は、コラーゲン−合成ポリマーマトリックスを用いて、移植物の生体適合性を向上させる、または、移植物に生物学的活性を与えるために、合成移植物または補綴物をコートし得ることである。この場合、生物学的活性分子が、コラーゲン−合成ポリマーマトリックスに結合している。
【0027】
本発明の他の特徴は、生物学的活性物質がその治療効果を最大に発揮し得る移植物の表面上に分布するように、移植可能な器具が調製され得ることである。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、免疫原性が低く、そしてそのために多様な医療用途(例えば薬物送達システムまたは種々の成形移植物の調製)に用いられ得るコラーゲン−合成ポリマーマトリックス組成物が得られる。
【0029】
本発明によれば、多段階反応を用いて、より制御されそして再現性のある方法でコラーゲン−合成ポリマーマトリックスが調製される。
【0030】
本発明によれば、用いた特定の一連の反応工程に依存して、種々の治療学的用途での使用のために望ましい物理的性質および化学的性質を特に有するように、コラーゲン−合成ポリマーマトリックスが目的にあわせて調製される。
【0031】
本発明によれば、生物学的活性物質を含有するコラーゲン−合成ポリマーマトリックスが、効率的でより制御された方法で調製され、そして生物学的活性物質が最大限利用されるマトリックスが提供される。
【0032】
本発明によれば、本発明のコラーゲン−合成ポリマーマトリックスを用いることにより移植物の生体適合性が向上する、または、本発明のコラーゲン−合成ポリマーマトリックスで合成移植物または補綴物をコートすることにより、移植物が生物学的活性を有し得る。
【0033】
本発明によれば、生物学的活性物質がその治療効果を最大に発揮し得る移植物の表面上に分布する、移植可能な器具が調製される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本明細書および添付の請求項において用いる、単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈により明らかに指示されない限り、複数形の指示対象を包含するということに留意されたい。例えば、「結合体」の指示対象には、1個またはそれ以上の結合体分子が包含され、「物品」の指示対象には、当業者に公知の1個またはそれ以上の種々のタイプの
物品が包含され、「コラーゲン」の指示対象には、種々のタイプのコラーゲンの混合物が包含される、などである。
【0035】
本発明の記載に特別な重要性を有する特定の用語を以下に定義する:
用語コラーゲンの「水性混合物」は、コラーゲンおよび水を含有する液体溶液、懸濁液、分散物、コロイドなどを包含する。
【0036】
用語「アテロペプチドコラーゲン」は、化学的処理または他の方法で、ウシのような他の動物ソース由来のコラーゲンに対する、ヒトの免疫応答を引き起こす原因として知られているテロペプチド領域を除く処理が行われたコラーゲンをいう。
【0037】
本明細書中で用いる用語「利用可能なリジン残基」は、コラーゲン分子の外部表面上で露出しているリジン側鎖をいう。この側鎖は、活性化したポリマー性グリコールと反応し得る第一アミノ基を有する。利用可能なリジン残基の数は、
2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム(TNBS)との反応により決定され得る。
【0038】
用語「生物学的活性分子」は、成長因子、サイトカイン、および活性ペプチドのような分子(これらは天然由来または合成のいずれでもあり得る)をいう。これらは正常な組織の治癒または再生を促進する。サイトカインおよび成長因子のような生物学的活性分子の機能は2つある:1)局部細胞を刺激して新しい組織を産生させ得る、または2)矯正の必要がある部位に細胞を引きつける。このように、生物学的活性分子は、宿主組織内の移植物の「生物学的固定」を促進する働きをする。本発明のコラーゲン−合成ポリマー結合体に関して有用な生物学的活性分子は、インターフェロン(IFN)、腫瘍壊死因子(TNF)、インターロイキン、コロニー刺激因子(CSF)のようなサイトカイン、および骨形成因子抽出物(OFE)、上皮増殖因子(EGF)、トランスフォーミング成長因子(TGF)α、TGF−β(TGF−β類のいかなる組み合わせも含む)、TGF−β1、TGF−β2、血小板由来成長因子(PDGF−AA,PDGF−AB,PDGF−BB)、酸性線維芽細胞増殖因子(FGF)、塩基性FGF,結合組織活性化ペプチド(CTAP)、β−トロンボグロブリン、インスリン様増殖因子、エリトロポエチン(EPO)、および神経成長因子(NGF)のような成長因子を包含するが、これらには限定されない。本明細書中で用いる用語「生物学的活性分子」は、抗生物質、抗炎症剤、抗血栓症剤などのような薬剤を包含することがさらに意図されている。
【0039】
本明細書中で用いる用語「化学的に結合した」および「結合した」は、化学的共有結合により結合していることを意味する。本発明の実施において、親水性合成ポリマーとコラーゲン分子とは、合成親水性ポリマー上の機能的に活性な基によって、直接相互に共有結合的に結合し得るか、または、親水性合成ポリマーおよびコラーゲンはそれぞれこの基に結合するが、直接には相互に結合しないように、コラーゲンと合成ポリマーとは結合基を用いて共有結合的に結合し得る。
【0040】
本明細書中で用いる用語「コラーゲン」は、出発材料として用いられ得るすべての形態のコラーゲンをいう。これらのコラーゲンには、組換えにより産生されたコラーゲン、天然由来のソース(例えば、ウシの真皮またはヒトの胎盤)から抽出されたコラーゲン、処理されたコラーゲン、または、他の方法で修飾コラーゲンが包含される。
【0041】
用語「溶液中のコラーゲン」または「CIS」は、pHが約3またはそれより低い酸性溶液中のコラーゲンをいい、この場合コラーゲンは非線維状である。
【0042】
用語「コラーゲン懸濁液」は、水またはリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)のような水
性キャリア中のコラーゲン線維の懸濁液をいう。
【0043】
用語「コラーゲン−合成ポリマー」は、本発明の意味の範囲内では、合成親水性ポリマーに化学的に結合したコラーゲンをいう。例えば、「PEG−コラーゲン」は、コラーゲン分子がポリエチレングリコール(PEG)分子に共有結合的に結合している、本発明中の組成物を示す。
【0044】
用語「架橋したコラーゲン」は、コラーゲン分子が、二官能性に活性化したポリエチレングリコールのような、多官能性に活性化した合成親水性ポリマーと共有結合によって結合しているコラーゲン組成物をいう。
【0045】
用語「脱水した」は、実質的にすべての非結合水を除去するために材料を風乾または凍結乾燥するという意味である。
【0046】
用語「二官能性に活性化した」は、化学的誘導体化により、コラーゲン分子上の利用可能なリジン残基と反応し得る2つの官能基を有する合成親水性ポリマーをいう。二官能性に活性化した合成親水性ポリマー上の2つの機能的に活性な基は、ポリマー鎖の各端部にある。二官能性に活性化した合成親水性ポリマー分子上の機能的に活性な基はそれぞれ、コラーゲン分子と共有結合的に結合し得、そのことによりコラーゲン分子間の架橋が起こる。
【0047】
用語「有効量」は、所望の効果を得るのに必要な組成物の量をいう。このように、生物学的活性分子を含有する組成物の「組織成長促進量」は、検出可能な程度まで組織成長を刺激するのに必要な生物学的活性分子の量をいう。これに関連して、組織には人体のすべての組織が包含される。有効量であると決定される実際の量は、患者の体格、体調、性別、および年齢のような要因に依存して変化し、そして介護者によってより容易に決定され得る。
【0048】
用語「原線維性コラーゲン」は、分子間電荷相互作用によって三重らせん状分子が凝集して、太い線維を形成するコラーゲンをいう。その結果、線維性コラーゲンを含有する組成物は多少不透明である。
【0049】
用語「機能的に活性化した」は、化学的誘導体化により、コラーゲン分子上の利用可能なリジン残基と反応し得る官能基を、ポリマー鎖上の種々の位置に1個またはそれ以上有する合成親水性ポリマーをいう。
【0050】
用語「移植物」および「固体移植物」は、生体内への挿入および長期または短期の使用を目的とする半固体物体または固体物体をいう。
【0051】
本明細書中で用いる用語「インサイチュで」は、投与部位で、ということを意味する。
【0052】
本明細書中で用いる用語「インサイチュでの架橋」は、多官能性に活性化した合成ポリマーを用いて、コラーゲン移植物を患者自身のコラーゲンに架橋することをいう。この場合、合成ポリマーの一方の機能的に活性化した端部は、コラーゲン移植物中のコラーゲン分子と共有結合的に結合しており、ポリマーのもう一方の機能的に活性化した端部はフリーであって、患者自身の組織内のコラーゲン分子に共有結合的に結合する。
【0053】
本明細書中で用いる用語「分子量」は、当該分野で一般的に用いられているように、あるサンプル中の多数の分子の重量平均分子量をいう。従って、PEG2000というサンプルは、例えば1500〜2500の範囲の分子量を有する、統計学的なポリマー分子混
合物を含有し得、ある範囲で1つの分子が隣の分子とわずかに異なる。分子量の範囲の指定は、平均分子量は指定した限界間のいかなる値でもあり得、そしてそれらの範囲外の分子が含まれ得ることを示す。従って、約800〜約20,000という分子量範囲は、平均分子量が少なくとも約800〜約20,000であることを示す。
【0054】
用語「単官能性に活性化した」は、化学的誘導体化によりコラーゲン分子上の利用可能なリジン残基と反応し得る1個の官能基を有する合成親水性ポリマーをいう。単官能性に活性化した合成親水性ポリマー上の機能的に活性な基は、一般的にこのポリマー鎖の一方の端部にある。これらの官能基は一度に1個のコラーゲンにしか結合し得ないので、単官能性に活性化した合成親水性ポリマーは、コラーゲン分子間の架橋を行い得ない。
【0055】
用語「多官能性に活性化した」は、化学的誘導体化により、コラーゲン分子上の利用可能なリジン残基と反応し得る2個またはそれ以上の官能基を、ポリマー鎖上の種々の位置に有する合成親水性ポリマーをいう。多官能性に活性化した合成親水性ポリマー分子上の機能的に活性な基はそれぞれ、コラーゲン分子と共有結合的に結合し得、そのことによりコラーゲン分子間の架橋を行い得る。多官能性に活性化した親水性合成ポリマーのタイプには、二官能性に活性化したポリマー、四官能性に活性化したポリマー、および放射状に分岐したポリマーが包含される。
【0056】
本明細書中で用いる用語「多段階反応」は、親水性合成ポリマーに共有結合的に結合したコラーゲンを含有するマトリックスを調製し、そして引き続き修飾するために用いる用語、特定の一連の反応工程をいう。そのような多段階反応には、一般的に少なくとも2つの反応工程が含まれる。第1の反応工程は、コラーゲンを合成親水性ポリマーに共有結合的に結合させることを含む。それに続く(第2、第3、第4などの)反応工程は、コラーゲン−合成ポリマーマトリックスのさらなる修飾に関する。このような後続の反応工程は、コラーゲン−合成ポリマーマトリックスの所望の最終用途のために必要な特定の化学的性質および生物学的性質により変化し、従ってそれらにより決定される。
【0057】
用語「非原線維性コラーゲン」は、三重らせん状分子が凝集せず、太い線維を形成しないコラーゲンをいう。その結果、非原線維性コラーゲンを含有する組成物は光学的に透明である。
【0058】
本明細書中で用いる用語「光学的に透明な」は、1mmの厚さのときに、照射さ れた可視光のうちの少なくとも90%を透過するような物品をいう。
【0059】
用語「薬学的に受容可能な流動性キャリア」は、注入可能または移植可能な処方物に用いる流動性キャリアをいう。これらは生体適合性であり(すなわちヒト体内に注入または移植されたときに不都合な反応を引き起こさない)、そして水性(例えば水またはPBS)または非水性(例えば生体適合性オイル)のいずれかである。
【0060】
本明細書中で用いる用語「十分な量」は、所望のpHおよび/または線維の大きさを得るためにコラーゲン組成物に添加されなければならない、酸、塩基、または塩の量に適用される。
【0061】
用語「合成親水性ポリマー」または「合成ポリマー」は、合成され、そして親水性であるが、必ずしも水溶性ではないポリマーをいう。本発明の実施に用いられ得る合成親水性ポリマーの例として、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリオキシエチレン、ポリメ
チレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンのブロックポリマーおよびコポリマー、ならびにこれらの誘導体が挙げられる。タンパク質、澱粉、セルロース、ヘパリン、ヒアルロン酸、および
これらの誘導体のような天然由来のポリマーは、この定義の範囲から明らかに除外される。
【0062】
本明細書中で用いる用語「処置する」および「処置」は、柔組織および/または硬組織に関連する欠損の置換、増強、修復、予防、または緩和をいう。さらに、「処置する」および「処置」はまた、本発明の結合体と連結または混合した生物学的活性分子を用いる、障害または疾病の予防、手当、または緩和をいう。
【0063】
上記の定義を除いて、本明細書中で用いるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中に記載の方法および材料に類似または同等のいかなる方法および材料も本発明の実施または試験に有用であるが、好ましい方法および材料のみについて、以下に説明する。しかし、本発明がこれらの好ましい実施態様に限定されることを意図するものではない。本発明は添付の請求項により定義される範囲を有することが意図されている。
【0064】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0065】
本発明のコラーゲン−合成ポリマーマトリックスは、以下の工程により調製される:
コラーゲンを第1の合成親水ポリマーと反応させてコラーゲン−合成ポリマーマトリックスを形成する工程;および
上記コラーゲン−合成ポリマーマトリックスを、第2の合成親水性ポリマー、生物学的活性物質、グリコサミノグリカンおよびその誘導体、化学的架橋剤、エステル化剤、アミド化剤、アシル化剤、アミノ酸、ペプチド、およびそれらの化合物からなる群より選択される化学物質とさらに反応させる工程。
【0066】
好ましい実施態様においては、上記コラーゲンはアテロペプチド原線維性コラーゲンである。
【0067】
好ましい実施態様においては、上記第1の合成親水性ポリマーは機能的に活性化したポリマー性グリコールである。
【0068】
好ましい実施態様においては、上記機能的に活性化したポリマー性グリコールは二官能性に活性化したポリエチレングリコールである。
【0069】
好ましい実施態様においては、上記コラーゲンおよび上記第1の合成親水性ポリマーは、エーテル結合、エステル結合、およびウレタン結合からなる群より選択される結合によって共有結合的に結合している。
【0070】
好ましい実施態様においては、上記化学物質は第2の合成親水性ポリマーである。
【0071】
好ましい実施態様においては、上記第2の合成親水性ポリマーは、機能的に活性化したポリマー性グリコールである。
【0072】
好ましい実施態様においては、上記機能的に活性化したポリマー性グリコールは、二官能性に活性化したポリエチレングリコールおよび単官能性に活性化したポリエチレングリコールからなる群より選択される。
【0073】
好ましい実施態様においては、上記コラーゲンおよび上記第2の合成親水性ポリマーは、エーテル結合、エステル結合、およびウレタン結合からなる群より選択される結合によって共有結合的に結合している。
【0074】
好ましい実施態様においては、上記コラーゲン−合成ポリマーマトリックスは、さらに生物学的活性物質に結合している。
【0075】
好ましい実施態様においては、上記コラーゲン−合成ポリマーマトリックスは、さらにグリコサミノグリカンに結合している。
【0076】
好ましい実施態様においては、上記化学物質は生物学的活性物質である。
【0077】
好ましい実施態様においては、上記生物学的活性物質は、成長因子、サイトカイン、抗生物質、抗炎症剤、抗血栓症剤、および活性ペプチドからなる群より選択される。
【0078】
好ましい実施態様においては、上記化学物質は、グリコサミノグリカンまたはその誘導体である。
【0079】
好ましい実施態様においては、上記グリコサミノグリカンは、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸A、コンドロイチン硫酸C、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ケラト硫酸、キチン、キトサン、およびヘパリンからなる群より選択される。
【0080】
好ましい実施態様においては、上記化学物質は化学的架橋剤である。
【0081】
好ましい実施態様においては、上記化学的架橋剤は、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、ジビニルスルホン、カルボジイミド、エポキシド、およびイミダゾールからなる群より選択される。
【0082】
好ましい実施態様においては、上記化学物質はエステル化剤である。
【0083】
好ましい実施態様においては、上記エステル化剤は、メタノール、エタノール、プロパノール、およびブタノールからなる群より選択される。
【0084】
好ましい実施態様においては、上記化学物質はアミド化剤である。
【0085】
好ましい実施態様においては、上記アミド化剤は、無水グルタル酸および無水コハク酸からなる群より選択される。
【0086】
好ましい実施態様においては、上記化学物質はアシル化剤である。
【0087】
好ましい実施態様においては、上記アシル化剤は、塩化ベンゾイルおよび塩化ブチリルからなる群より選択される。
【0088】
本発明のコラーゲン−合成ポリマーマトリックスは、以下の工程により調製される:
コラーゲンを第1の合成親水性ポリマーと反応させてコラーゲン−合成ポリマーマトリックスを形成する工程;および
上記コラーゲン−合成ポリマーマトリックスを、第2の合成親水性ポリマーとさらに反応させる工程。
【0089】
好ましい実施態様においては、上記コラーゲンはアテロペプチド原線維性コラーゲンである。
【0090】
好ましい実施態様においては、上記第1の合成親水性ポリマーは、機能的に活性化した
ポリマー性グリコールである。
【0091】
好ましい実施態様においては、上記機能的に活性化したポリマー性グリコールは、二官能性に活性化したポリエチレングリコールである。
【0092】
好ましい実施態様においては、上記コラーゲンおよび上記第1の合成親水性ポリマーは、エーテル結合、エステル結合、およびウレタン結合からなる群より選択される結合によって共有結合的に結合している。
【0093】
好ましい実施態様においては、上記第2の合成親水性ポリマーは、機能的に活性化したポリマー性グリコールである。
【0094】
好ましい実施態様においては、上記機能的に活性化したポリマー性グリコールは、二官能性に活性化したポリエチレングリコールおよび単官能性に活性化したポリエチレングリコールからなる群より選択される。
【0095】
好ましい実施態様においては、上記コラーゲンおよび上記第2の合成親水性ポリマーは、エーテル結合、エステル結合、およびウレタン結合からなる群より選択される結合によって共有結合的に結合している。
【0096】
好ましい実施態様においては、上記コラーゲン−合成ポリマーマトリックスはさらに生物学的活性物質に結合している。
【0097】
好ましい実施態様においては、上記生物学的活性物質は、成長因子、サイトカイン、抗生物質、抗炎症剤、抗血栓症剤、および活性ペプチドからなる群より選択される。
【0098】
好ましい実施態様においては、上記コラーゲン−合成ポリマーマトリックスは、さらにグリコサミノグリカンまたはその誘導体に結合している。
【0099】
好ましい実施態様においては、上記グリコサミノグリカンは、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸A、コンドロイチン硫酸C、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ケラト硫酸、キチン、キトサン、およびヘパリンからなる群より選択される。
【0100】
本発明のコラーゲン−合成ポリマーマトリックスは、以下の工程により調製される:
コラーゲンを第1の合成親水性ポリマーと反応させてコラーゲン−合成ポリマーマトリックスを形成する工程;
上記コラーゲン−合成ポリマーマトリックスを第2の合成親水性ポリマーとさらに反応させて修飾コラーゲン−合成ポリマーマトリックスを形成させる工程;ならびに
上記修飾コラーゲン−合成ポリマーマトリックスを、生物学的活性物質およびグリコサミノグリカンまたはその誘導体からなる群より選択される物質に結合する工程。
【0101】
好ましい実施態様においては、上記コラーゲンは、アテロペプチド原線維性コラーゲンである。
【0102】
好ましい実施態様においては、上記第1の合成親水性ポリマーおよび上記第2の合成親水性ポリマーは、機能的に活性化したポリマー性グリコールである。
【0103】
好ましい実施態様においては、上記機能的に活性化したポリマー性グリコールは、二官能性に活性化したポリエチレングリコールである。
【0104】
好ましい実施態様においては、上記コラーゲンおよび上記第1の合成親水性ポリマーは、エーテル結合、エステル結合、およびウレタン結合からなる群より選択される結合によって共有結合的に結合している。
【0105】
好ましい実施態様においては、上記コラーゲンおよび上記第2の合成親水性ポリマーは、エーテル結合、エステル結合、およびウレタン結合からなる群より選択される結合によって共有結合的に結合している。
【0106】
好ましい実施態様においては、上記コラーゲンおよび上記第1の合成親水性ポリマーは、エーテル結合によって共有結合的に結合し、そして上記コラーゲンおよび上記第2の合成親水性ポリマーはエステル結合によって共有結合的に結合している。
【0107】
好ましい実施態様においては、上記生物学的活性物質は、成長因子、サイトカイン、抗生物質、抗炎症剤、抗血栓症剤、および活性ペプチドからなる群より選択される。
【0108】
好ましい実施態様においては、上記グリコサミノグリカンは、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸A、コンドロイチン硫酸C、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ケラト硫酸、キチン、キトサン、およびヘパリンからなる群より選択される。
【0109】
本発明のコラーゲン−合成ポリマーマトリックスを調製する方法は、以下の工程を含む:
コラーゲンを第1の合成親水性ポリマーと反応させてコラーゲン−合成ポリマーマトリックスを形成する工程;および
上記コラーゲン−合成ポリマーマトリックスを、第2の合成親水性ポリマー、生物学的活性物質、グリコサミノグリカンおよびその誘導体、化学的架橋剤、エステル化剤、アミド化剤、アシル化剤、アミノ酸、ペプチド、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される化学物質とさらに反応させる工程。
【0110】
好ましい実施態様においては、上記コラーゲンはアテロペプチド原線維性コラーゲンである。
【0111】
好ましい実施態様においては、上記第1の合成親水性ポリマーは、機能的に活性化したポリマー性グリコールである。
【0112】
好ましい実施態様においては、上記機能的に活性化したポリマー性グリコールは、二官能性に活性化したポリエチレングリコールである。
【0113】
好ましい実施態様においては、上記コラーゲンおよび上記第1の合成親水性ポリマーは、エーテル結合、エステル結合、およびウレタン結合からなる群より選択される結合によって共有結合的に結合している。
【0114】
好ましい実施態様においては、上記化学物質は、第2の合成親水性ポリマーである。
【0115】
好ましい実施態様においては、上記第2の合成親水性ポリマーは、機能的に活性化したポリマー性グリコールである。
【0116】
好ましい実施態様においては、上記機能的に活性化したポリマー性グリコールは、二官能性に活性化したポリエチレングリコールおよび単官能性に活性化したポリエチレングリコールからなる群より選択される。
【0117】
好ましい実施態様においては、上記コラーゲンおよび上記第2の合成親水性ポリマーは、エーテル結合、エステル結合、およびウレタン結合からなる群より選択される結合によって共有結合的に結合している。
【0118】
好ましい実施態様においては、上記化学物質は生物学的活性物質である。
【0119】
好ましい実施態様においては、上記生物学的活性物質は、成長因子、サイトカイン、抗生物質、抗炎症剤、抗血栓症剤、および活性ペプチドからなる群より選択される。
【0120】
好ましい実施態様においては、上記化学物質は、グリコサミノグリカンまたはその誘導体である。
【0121】
好ましい実施態様においては、上記グリコサミノグリカンは、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸A、コンドロイチン硫酸C、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ケラト硫酸、キチン、キトサンおよびヘパリンからなる群より選択される。
【0122】
好ましい実施態様においては、上記化学物質は化学的架橋剤である。
【0123】
好ましい実施態様においては、上記化学的架橋剤は、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、ジビニルスルホン、カルボジイミド、エポキシド、およびイミダゾールからなる群より選択される。
【0124】
好ましい実施態様においては、上記化学物質はエステル化剤である。
【0125】
好ましい実施態様においては、上記エステル化剤は、メタノール、エタノール、プロパノール、およびブタノールからなる群より選択される。
【0126】
好ましい実施態様においては、上記化学物質はアミド化剤である。
【0127】
好ましい実施態様においては、上記アミド化剤は、無水グルタル酸および無水コハク酸からなる群より選択される。
【0128】
好ましい実施態様においては、上記化学物質はアシル化剤である。
【0129】
好ましい実施態様においては、上記アシル化剤は、塩化ベンゾイルおよび塩化ブチリルからなる群より選択される。
【0130】
本発明のコラーゲン−合成ポリマーマトリックスを調製する方法は、以下の工程を含む:
コラーゲンを第1の合成親水性ポリマーと反応させて、コラーゲン−合成ポリマーマトリックスを形成する工程;および
コラーゲン−合成ポリマーマトリックスを、第2の合成親水性ポリマーとさらに反応させる工程。
【0131】
好ましい実施態様においては、上記コラーゲンは、アテロペプチド原線維性コラーゲンである。
【0132】
好ましい実施態様においては、上記第1の合成親水性ポリマーは、機能的に活性化したポリマー性グリコールである。
【0133】
好ましい実施態様においては、上記機能的に活性化したポリマー性グリコールは、二官能性に活性化したポリエチレングリコールである。
【0134】
好ましい実施態様においては、上記コラーゲンおよび上記第1の合成親水性ポリマーは、エーテル結合、エステル結合、およびウレタン結合からなる群より選択される結合によって共有結合的に結合している。
【0135】
好ましい実施態様においては、上記第2の合成親水性ポリマーは機能的に活性化したポリマー性グリコールである。
【0136】
好ましい実施態様においては、上記機能的に活性化したポリマー性グリコールは、二官能性に活性化したポリエチレングリコールおよび単官能性に活性化したポリエチレングリコールからなる群より選択される。
【0137】
好ましい実施態様においては、上記コラーゲンおよび上記第2の合成親水性ポリマーは、エーテル結合、エステル結合、およびウレタン結合からなる群より選択される結合によって共有結合的に結合している。
【0138】
好ましい実施態様においては、上記コラーゲン−合成ポリマーマトリックスを生物学的活性物質に結合させることを含む第3の工程をさらに包含する。
【0139】
好ましい実施態様においては、上記生物学的活性物質は、成長因子、サイトカイン、抗生物質、抗炎症剤、抗血栓症剤、および活性ペプチドからなる群より選択される。
【0140】
好ましい実施態様においては、上記コラーゲン−合成ポリマーマトリックスをグリコサミノグリカンまたはその誘導体に結合させることを含む第3の工程をさらに包含する。
【0141】
好ましい実施態様においては、上記グリコサミノグリカンは、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸A、コンドロイチン硫酸C、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ケラト硫酸、キチン、キトサン、およびヘパリンからなる群より選択される。
【0142】
本発明のコラーゲン−合成ポリマーマトリックスを調製する方法は、以下の工程を含む:
コラーゲンを第1の合成親水性ポリマーと反応させて、コラーゲン−合成ポリマーマトリックスを形成する工程;
上記コラーゲン−合成ポリマーマトリックスを、第2の合成親水性ポリマーとさらに反応させて、修飾コラーゲン−合成ポリマーマトリックスを形成する工程;および
上記修飾コラーゲン−合成ポリマーマトリックスを、生物学的活性物質およびグリコサミノグリカンまたはその誘導体からなる群より選択される物質に結合する工程。
【0143】
好ましい実施態様においては、上記コラーゲンはアテロペプチド原線維性コラーゲンである。
【0144】
好ましい実施態様においては、上記第1の合成親水性ポリマーおよび上記第2の合成親水性ポリマーは、機能的に活性化したポリマー性グリコールである。
【0145】
好ましい実施態様においては、上記機能的に活性化したポリマー性グリコールは、二官能性に活性化したポリエチレングリコールである。
【0146】
好ましい実施態様においては、上記コラーゲンおよび上記第1の合成親水性ポリマーは
、エーテル結合、エステル結合、およびウレタン結合からなる群より選択される結合によって共有結合的に結合している。
【0147】
好ましい実施態様においては、上記コラーゲンおよび上記第2の合成親水性ポリマーは、エーテル結合、エステル結合、およびウレタン結合からなる群より選択される結合によって共有結合的に結合している。
【0148】
好ましい実施態様においては、上記コラーゲンおよび上記第1の合成親水性ポリマーは、エーテル結合によって共有結合的に結合し、そして上記コラーゲンおよび上記第2の合成親水性ポリマーは、エステル結合によって共有結合的に結合している。
【0149】
好ましい実施態様においては、上記生物学的活性物質は、成長因子、サイトカイン、抗生物質、抗炎症剤、抗血栓症剤、および活性ペプチドからなる群より選択される。
【0150】
好ましい実施態様においては、上記グリコサミノグリカンは、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸A、コンドロイチン硫酸C、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ケラト硫酸、キチン、キトサン、およびヘパリンからなる群より選択される。
【0151】
本発明のコラーゲン−合成ポリマーマトリックスでコートされた移植物は、以下の工程により調製される:
コラーゲンを第1の合成親水性ポリマーと反応させて、コラーゲン−合成ポリマーマトリックスを形成する工程;および
上記コラーゲン−合成ポリマーマトリックスを、第2の合成親水性ポリマー、生物学的活性物質、グリコサミノグリカンおよびその誘導体、化学的架橋剤、エステル化剤、アミド化剤、アシル化剤、アミノ酸、ペプチド、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される化学物質とさらに反応させる工程。
【0152】
好ましい実施態様においては、上記化学物質は、生物学的活性物質およびグリコサミノグリカンまたはその誘導体からなる群より選択される。
【0153】
好ましい実施態様においては、上記コラーゲン−合成ポリマーマトリックスは、さらに第2の合成親水性ポリマーと反応している。
【0154】
好ましい実施態様においては、上記化学物質は第2の合成親水性ポリマーである。
【0155】
好ましい実施態様においては、上記コラーゲン−合成ポリマーマトリックスは、生物学的活性物質およびグリコサミノグリカンまたはその誘導体からなる群より選択される物質にさらに結合している。
【0156】
好ましい実施態様においては、上記移植物は、脈管移植片、脈管ステント、および脈管ステント−移植片結合物からなる群より選択される。
【0157】
本発明のマトリックスは、合成親水性ポリマー分子に共有結合的に結合しているコラーゲン分子を含むマトリックスであって、上記マトリックス内で生物学的活性分子が合成親水性ポリマー分子に結合し、上記生物学的活性分子の大部分が上記マトリックスの表面で合成親水性ポリマー分子に結合している。
【0158】
(発明の背景)
本発明者らの以前の出願で、成長因子のような生物学的活性物質を含有するコラーゲン−合成ポリマー結合体組成物が開示された。これらの出願において、成長因子をコラーゲ
ン−合成ポリマー結合体組成物に組み込む、以下の2つの方法が開示された:成長因子をコラーゲン−合成ポリマー結合体と混合する方法、または、成長因子をコラーゲン−合成ポリマー結合体に共有結合的に結合させて、3部分からなるコラーゲン−合成ポリマー−成長因子結合体を形成する方法。
【0159】
米国特許第5,162,430号では、これらの3部分からなる結合体が調製され得る2つの方
法が開示された。それらのうちの第1の方法は、活性化した合成親水性ポリマーで処理する前に、上記因子をコラーゲンに組み込むことによるものであった。第2の方法は、上記因子をモル過剰の二官能性に活性化した合成親水性ポリマーと反応させ、次いで結合した因子をコラーゲンの水性混合物に添加し、そして因子を反応させて、コラーゲン−合成ポリマー−成長因子結合体を形成することを包含していた。
【0160】
本発明者らはその後、コラーゲンを活性化した合成親水性ポリマーと反応させることにより架橋したコラーゲン−合成ポリマーマトリックスをまず形成し、次いでさらにこのマトリックスを種々の化学物質と反応させ得ることを見出した。上記化学物質には、成長因子のような生物学的活性物質が包含され、そして、限定なしで、他の合成親水性ポリマー、グリコサミノグリカン、他の化学的架橋剤、エステル化剤、アミド化剤、アシル化剤、アミノ酸、またはペプチドがまた包含される。これらの化学物質は、マトリックス形成後、第2段階として、マトリックス中のコラーゲン上に残存するリジン残基上の利用可能なアミノ基、または、マトリックスに結合した合成ポリマー上に残存する未反応の官能基によって、コラーゲン−合成ポリマーマトリックスに結合し得る。好ましい実施態様においては、まず、コラーゲンを多官能性に活性化した合成親水性ポリマーと反応させることによって、コラーゲン−合成ポリマーマトリックスを形成し、次いでこのマトリックスを第2の機能的に活性化した合成ポリマー(第1のポリマーと同一または異なるポリマーであり得る)と反応させることにより、利用可能な官能基を得る。これらの官能基には、第3工程の反応で、生物学的活性物質またはグリコサミノグリカンのような他の化学物質が結合され得る。得られたコラーゲン−合成ポリマーマトリックスの物理的性質および化学的性質は、当然、用いられた特定の一連の反応および反応物の種類に依存する。
【0161】
本発明の方法により、望ましい性質(例えば、生物学的活性分子が、その生物学的効果を最大に発揮し得るマトリックス表面上に結合している)を有するコラーゲン−合成ポリマーマトリックスが効率的に生産される。本発明のコラーゲン−合成ポリマーマトリックスを調製するための好ましい方法によれば、(a)機能的に活性化した親水性合成ポリマーは調製され、または他の方法で供給され、(b)コラーゲンは合成親水性ポリマーに共有結合的に結合して、コラーゲン−合成ポリマーマトリックスを与え、(c)次いでこのコラーゲン−合成ポリマーマトリックスは、1種またはそれ以上の種々の化学反応によって修飾され、そして必要に応じて(d)修飾コラーゲン−合成ポリマーマトリックスの表面上の利用可能な官能基を介して、例えば生物学的活性分子またはグリコサミノグリカンをマトリックスに共有結合的に結合することにより、修飾コラーゲン−ポリマーマトリックスはさらに改変される。
【0162】
(合成親水性ポリマーの活性化)
本発明のコラーゲン−合成ポリマーマトリックスの形成において重要な工程には、合成親水性ポリマーの機能化または活性化が包含される。本発明で有用な合成ポリマーは、親水性であり、コラーゲン分子上のリジン残基と共有結合的に結合し得る少なくとも1個、好ましくは2個またはそれ以上の官能基を有し、そして非常に純度が高いか、あるいはこのポリマーがヒト患者に注入または移植され得るように薬学的に純粋であるかまたは純粋になるように処理されている非常に高純度な状態にまで精製されている。最も親水性の合成ポリマーは、水溶液中での水素結合の形成に利用可能な、十分な数の酸素原子(または、頻度は少ないが窒素原子)を組み込むことによって水溶性になり得る。好ましい合成ポ
リマーは親水性であるが、必ずしも水溶性ではない。
【0163】
すべての適切な合成ポリマーは、それが皮下に投与されたとき、毒性がなく、非炎症性であり、そして免疫原性がなく、そして好ましくは少なくとも数ヶ月の間、本質的にインビボで非分解性である。これらの親水性合成ポリマーは、結合体の親水性を増加させ得るが、結合体を水溶性にしない。これらの合成ポリマーは、直線状または多岐状であり得るが、それらは代表的には、実質的に架橋していない。
【0164】
本発明のコラーゲン−合成ポリマーマトリックスの形成に関して、種々の合成親水性ポリマーを用い得るが、これらの合成ポリマーは生体適合性でありかつ親水性であるが、水には比較的不溶性でなければならず、その生体適合性が知られていることから好ましくは1種またはそれ以上の形態の誘導体化されたポリマー性グリコールであり、好ましくはポリエチレングリコール(PEG)である。種々の形態の誘導体化PEGは、生物学的活性分子の修飾に広く用いられている。なぜなら、PEGは、広い範囲の可溶性を有するように処方され得るからであり、そしてPEGには毒性、抗原性、免疫原性がなく、そして代表的には酵素活性および/またはペプチドの立体配座を妨害しないからである。さらに、PEGは一般に非生物分解性であり、ヒトを含むほとんどの生物から容易に排出される。
【0165】
本発明における使用では、多官能性に活性化した合成ポリマーが最も好ましく、二官能性に活性化したポリマーが特に好ましい。多官能性に活性化したポリマー性グリコールは、好ましくは約3000と100,000との間の平均分子量を有する。二官能性に活性化したポリマー性グリコールは、好ましくは約400と約40,000との間の、最も好ましくは約3000と約10,000との間の平均分子量を有する。単官能性に活性化したポリマーもまた、本発明の実施に用いられる。しかし、単官能性に活性化した合成ポリマーには活性化した官能基が1個しかないので、これらの合成ポリマーは、コラーゲンと共有結合的に結合し得るが、コラーゲン分子間の架橋ネットワークを形成し得ない。
【0166】
多官能性に活性化した合成ポリマーは、このポリマー上の種々の位置に官能基を与える、当該分野で公知の種々の手法を用いて調製され得る。二官能性に活性化したポリマー性グリコールは、代表的には、このポリマーの両端部に反応性水酸基を構築することによって調製される。多官能性に活性化した合成ポリマーは、本発明の組成物を架橋し得、そしてさらに、生物学的活性物質をコラーゲン−合成ポリマー結合体に結合するために用いられ得る。
【0167】
種々の機能化ポリエチレングリコールが、以下のような分野で効果的に用いられている:タンパク質の修飾(Abuchowskiら、Enzymesas Drugs, John Wiley &
Sons: New York,NY (1981) 第367頁−第383頁;およびDreborgら、Crit. Rev. Therap. Drug Carrier Syst.(1990)6:315を参照、ペプチド化学(Mutter
ら、The Peptides, Academic: New York,NY 2:285-332;およびZalipskyら、Int. J. Peptide Protein Res.(1987)30:740を参照)、ならびにポリマー性薬剤(Zalipskyら、Eur. Polym. J.(1983)19:1177;およびOuchiら、J.Macromol. Sci.-Chem.(1987)A24:1011を参照)。機能的に活性化したポリエチレングリコールと特定の薬学的に活性なタンパク質との
結合により形成される種々のタイプの結合体が開示され、そして医療用途に有効であることが見出された。このことは、一部は、そのような結合体のタンパク質分解性の消化に関する安定性、低免疫原性、および生体内で半減期がより長いことによる。
【0168】
ポリエチレングリコールの1つの形態は、モノメトキシ−ポリエチレングリコール(mPEG)である。これは塩化シアヌルのような化合物の添加により活性化され得、次いでタンパク質に連結し得る(Abuchowskiら、J. Biol. Chem.(1977)252:3578を参照)。ポリエチレングリコールを活性化するこのような方法は、本発明に関して用いられ得るが、塩
化シアヌルが比較的毒性であり、そして薬学的に受容可能な組成物を得るためには、全ての得られた生成物から完全に除去されなければならないという点で、これらの方法は好ましくない。
【0169】
活性化形態のPEGは、市販購入され得る反応物から作製され得る。本発明に関して特に有用であることが見出された活性化PEGの1つの形態は、PEG−スクシネート−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(SS−PEG)である(Abuchowskiら、Cancer Biochem.Biphys.(1984)7:175を参照)。SS−PEGのようなPEGの活性化形態は、比較的緩やかな条件下でタンパク質と反応し、そしてPEGに結合しているタンパク質の特定の生物学的活性および特異性を破壊することなく結合体を生成する。しかし、そのような活性化PEGがタンパク質と反応するときには、これらはエステル結合により反応しそして結合を形成する。エステル結合は、本発明に関して用いられ得るが、ヒト体内での長期使用を目的とした成形移植物において使用するには、長期間生理学的条件下におかれるとこれらは加水分解されるという点で、特には好ましくない。(Dreborgら、Crit. Rev. Therap. Drug Carrier Syst.(1990)6:315;およびUlbrichら、J. Makr
omol. Chem. (1986) 187:1131を参照)。
【0170】
ウレタン結合によりPEGをタンパク質に結合させ、それによって、エステル結合よりも加水分解に耐性である、より安定な結合を与えることは可能である(Zalipskyら、Polymeric Drug and Drug Delivery Systems, 第10章、「ポリエチレングリコールのスクシンイミジルカーボネート」(1991)を参照)。ウレタン結合の安定性は、生理学的条件下で
例証されている(Veroneseら、Appl. Biochem. Biotechnol. (1985)11:141;およびLarwoodら、J. LabelledCompounds Radiopharm. (1984) 21:603を参照)。PEGをタンパク質に結合させる他の手段は、カルバメート結合を介し得る(Beauchampら、Anal.Biochem. (1983) 131:25;およびBergerら、Blood (1988) 71:1641を参照)。カルバメート結合は、カルボニルジイミダゾール−活性化PEGを用いることによって生成される。これらの結合には利点はあるが、反応は比較的遅く、そして完了するのに2日から3日かかり得る。
【0171】
上記のPEGを活性化する種々の手段および活性化手段に関して引用された刊行物を、PEGと特定の生物学的に活性なタンパク質、および、コラーゲンのような化学的には不活性ではないが、生物学的に不活性な天然ポリマーとの結合に関連して記載する(PolymericDrug and Drug Delivery Systems、第10章、「ポリエチレングリコールのスクシン
イミジルカーボネート」(1991))。このような活性化PEG化合物は、医療用途に用いる種々の成形移植物の調製に用いられ得る、共有結合的に架橋した種々のコラーゲン結合体の調製に用いられ得る。
【0172】
(特定の形態の活性化PEG)
本発明に使用するために、PEG分子の骨格に沿った1個あるいは好ましくは2個またはそれ以上の部位に官能基を与えるために、ポリエチレングリコールは修飾される。その結果、PEGとコラーゲン分子上の第一アミノ基との間で共有結合が生じ得る。いくつかの特定の活性化形態のPEGを以下、構造的に示す。これらは、活性化形態のPEGをコラーゲンと反応させることにより得られる一般化した反応生成物である。下式1〜7において、用語COLはコラーゲンを表す。用語PEGは、繰り返し構造(OCH2CH2n
を有するポリマーを表す。
【0173】
第1の活性化PEGは、二官能性に活性化したPEGスクシンイミジルグルタレートであり、本明細書中では(SG−PEG)という。この分子の構造式およびこの分子をコラーゲンと反応させることにより得られる反応生成物を下式1に示す。
【0174】
【化1】

【0175】
他の二官能性に活性化した形態のPEGを、PEGスクシンイミジル(S−PEG)と
いう。この化合物の構造式およびこの分子をコラーゲンと反応させることにより得られる反応生成物を下式2に示す。これらの化合物の一般構造式のいずれにおいても、下付き文字の3は「n」で置き換えられる。式1に示された実施態様においては、PEGの両側に
3個繰り返すCH2基がある点でn=3である。式2の構造は、加水分解されない「エー
テル」結合を包む結合体になる。これは、式1に示した、エステル結合のある結合体とは異なる。エステル結合は生理学的条件下では加水分解される。
【0176】
【化2】

【0177】
さらなる他の二官能性に活性化した形態のポリエチレングリコールを、下式3に示す。この場合はn=2であり、活性化PEGをコラーゲンと反応させることにより結合体が形成される。
【0178】
【化3】

【0179】
式2および式3の化合物に類似の、本発明の他の好ましい実施態様は、n=1のとき与えられる。構造式および得られるコラーゲン−合成ポリマー結合体を下式4に示す。この結合体がエーテル結合およびペプチド結合の両方を有することに注目されたい。これらの結合は生理学的条件下で安定である。
【0180】
【化4】

【0181】
さらなる他の二官能性に活性化した形態のPEGは、n=0のとき、与えられる。この化合物を、PEGスクシンイミジルカーボネート(SC−PEG)という。この化合物の構造式、および、SC−PEGをコラーゲンと反応させることにより形成される結合体を下式5に示す。
【0182】
【化5】

【0183】
式1〜5に示された、すべての活性化ポリエチレングリコール誘導体は、スクシンイミジル基を有する。しかし、種々の活性基がPEG分子の骨格上の部位に結合され得る。例えば、PEGは誘導体化により、下式6に示される二官能性に活性化したPEGプロピオンアルデヒド(A−PEG)を形成し得る。そしてA−PEGをコラーゲンと反応させることにより結合体が形成される。式6に示す結合を、−(CH2)n−NH−結合(ここでnは1〜10である)と表す。
【0184】
【化6】

【0185】
さらなる他の形態の活性化したポリエチレングリコールは、下式7に示される、二官能性に活性化したPEGグリシジルエーテル(E−PEG)である。そして、E−PEGをコラーゲンと反応させることにより結合体が形成される。
【0186】
【化7】

【0187】
上記の多くの活性化形態のポリエチレングリコールは、現在Shearwater Polymers,Huntsville,Alabamaから市販されている。広範囲の物理的性質および化学的性質を有するコラーゲン−合成ポリマー結合体を生成するために用いられ得る、種々の活性化形態のポリエチレングリコールおよび種々の結合は、1992年7月2日に出願された、特許査定された、同時継続中の米国特許出願第07/922,541号においてさらに詳細に記載されている。
【0188】
用いられる機能的に活性化した合成親水性ポリマーの特定の形態は、コラーゲン−合成ポリマーマトリックスの所望の最終用途に依存する。コラーゲンと機能的に活性化したポリエチレングリコールとの間に必要な結合のタイプは、このマトリックスが患者の体内に長期に存在することを目的としているかまたは短期に存在することを目的としているかどうかに依存する。一般に、長期間の使用を目的としたマトリックスに対しては、エーテル結合を生じる機能的に活性化したポリエチレングリコールが好ましい。なぜなら、これらの結合は、エステル結合よりも加水分解に対して耐性である傾向があるからである。より弱いエステル結合を生じるポリエチレングリコールは、体内にこのマトリックスが短期間存在することが望ましいときに用いられるべきである。実際に、エステル結合は、局部的な薬剤送達を与えることを目的としたマトリックスに好適である。共有結合的に結合した薬剤は、エステル結合が加水分解されるにつれて、コラーゲン−合成ポリマーマトリックスから放出される。以下にさらに述べるように、異なる結合を生じる合成ポリマーの組み
合わせも、用いられ得る。
【0189】
(コラーゲン−合成ポリマーマトリックスの調製)
あらゆるソースから得られるコラーゲンが、本発明のコラーゲン−合成ポリマーマトリックスを調製するのに用いられ得る。コラーゲンはヒトまたはその他の哺乳類ソースから抽出され、そして精製され得、あるいは組換えによりまたは他の方法で生成され得る。あらゆるタイプのコラーゲンが用いられ得、タイプI、II、III、IV、またはこれらのあら
ゆる組み合わせが包含されるが、これらには限定されない。しかし、一般にタイプIが好ましい。アテロペプチドコラーゲンは、一般に、免疫原性が低いという理由で、テロペプチドを含有するコラーゲンよりも好ましい。放射線、熱、あるいはグルタルアルデヒドまたはカルボジイミドのような他の化学的架橋剤によって予め架橋されているコラーゲンは、一般に出発材料としては好ましくない。このコラーゲンは、いかなる重大な免疫応答も引き起こさずに人体に取り込まれ得るように、薬学的に純粋な形態でなければならない。
【0190】
当業者に公知の方法で調製された原線維性コラーゲン、またはZyderm(登録商標)Iコラーゲン(コラーゲン濃度35mg/ml)またはZyderm IIコラーゲン(コラーゲン濃度65mg/ml)のような市販購入可能なアテロペプチドの原線維性コラーゲン組成物は、
本発明の組成物を調製するための好ましい出発材料である。コラーゲン懸濁液のコラーゲン濃度は、一般に、所望の最終用途に応じて、約10mg/ml〜約120mg/mlの範囲内でなければならない。市販購入可能なコラーゲン組成物のコラーゲン濃度は、このコラーゲン組成物を適切な量の滅菌水またはリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)と混合することにより低下させ得る。逆に、コラーゲン濃度を上昇させるためには、コラーゲン組成物を遠心分離によって濃縮し、次いで適切な量の滅菌水またはPBSと混合することにより所望のコラーゲン濃度に調製し得る。
【0191】
非原線維性コラーゲンも、本発明の実施において用いられ得る。本発明で用いられる非原線維性コラーゲンには、溶液中のコラーゲン(「CIS」)(pH2)、および、化学的な修飾によりこのコラーゲン分子上の電荷分布を変え、その結果、このコラーゲンの線維構造が破壊されたコラーゲンが包含される。このような化学的修飾コラーゲンには、スクシニル化コラーゲンおよびメチル化コラーゲンが包含される。これらは、Miyataらの米国特許第4,164,559号で開示されているように調製され得る。化学的に修飾した非原線維
性コラーゲンは、化学的修飾度に依存して程度の大小はあるが、光学的にほぼ透明である。
【0192】
共有に係る米国特許出願第08/201,860号において記載されているように調製され得る、線維の大きさの分布が制御されているコラーゲンも、本発明のコラーゲン−合成ポリマーマトリックスを生成するために用いられ得る。
【0193】
本発明のコラーゲン−合成ポリマーマトリックスを調製する一般的な方法では、まずコラーゲンを合成親水性ポリマーと反応させて、コラーゲン−合成ポリマーマトリックスを形成する。合成親水性ポリマーは、コラーゲン分子のリジン残基上にある第一アミノ基と反応する。例えば、タイプIコラーゲンは、全部で89のリジン残基を有する。これらのリジン残基はそれぞれ、1個のフリーの(結合していない)アミノ基を有する。さらに、タイプIコラーゲンを含有する3本鎖の各鎖のN末端に1個の第一アミノ基がある。そのため、タイプIコラーゲンの各分子は、合成親水性ポリマーとの反応に利用可能なアミノ基を全部で92(89+3)個有する。
【0194】
コラーゲンと合成ポリマーとの反応は、一般に、制御された方法で行われる(すなわち、合成ポリマー対コラーゲン分子比率を比較的低くして用いる)。そのことにより、架橋度が所望通りに制限されるかまたは最大化される。
【0195】
合成ポリマーは、好ましくは機能的に活性化したポリマー性グリコール、好ましくは多官能性に活性化したポリエチレングリコール、最も好ましくは二官能性に活性化したポリエチレングリコールである。単官能性に活性化したポリマーは、この段階の反応に用いられ得、実際に、以下にさらに述べるように、本発明の特定の実施態様での使用に好ましくあり得る。しかし、単官能性に活性化したポリマーは、1分子のコラーゲンに結合し得るのみであり、従って、架橋したコラーゲン−合成ポリマーネットワークを形成し得ない。
【0196】
第1工程の反応に用いられる活性化した合成ポリマーの濃度は、用いられるコラーゲンの濃度、用いられる活性化したポリマーのタイプ(例えば、S−PEG、SG−PEGなど)、活性化したポリマーの分子量、および所望の架橋度または結合度に依存して変化する。例えば、約35mg/mlのコラーゲン濃度のコラーゲン懸濁液を二官能性に活性化したS−PEGと反応させるとき、第1工程の反応で望ましい、制御された架橋を達成するために用いられるS−PEGの濃度は、一般に、コラーゲン懸濁液1ミリリットルあたり二官能性に活性化したS−PEG約1ミリグラム〜約10ミリグラムの範囲内である。約65mg/mlのコラーゲン濃度を有するコラーゲン懸濁液を用いるときには、第1工程の反応で用いる二官能性に活性化したS−PEGの濃度は、一般に、コラーゲン懸濁液1ミリリットルあたり二官能性に活性化したS−PEG約1ミリグラム〜約20ミリグラムの範囲内である。一般に、この第1工程の反応の後、コラーゲン上には多くの第一アミノ基が残っている。
【0197】
(コラーゲン−合成ポリマーマトリックスの化学的修飾)
多段階反応の後続の工程(すなわち第2工程および/または第3工程)は、主として得られる組成物の所望の最終用途によって決定される。しかし、第2工程の反応は、一般に、マトリックス中のコラーゲン分子上に残存する第一アミノ基の修飾を含む。例えば、コラーゲン−合成ポリマーマトリックスは、第2の多官能性に活性化したポリマーとさらに反応して、より高度に架橋したコラーゲン−合成ポリマーネットワークを生成し得、または、例えば生物学的活性物質またはグリコサミノグリカンとのさらなる結合のために利用可能なフリーの官能基を有する、多数の合成ポリマー分子が存在するネットワークを与え得る。第2の合成ポリマーは、最初のコラーゲン−合成ポリマーマトリックスを生成するために用いられた第1の合成ポリマーと同一または異なるタイプであり得る。例えば、コラーゲンとポリマーとの間のエーテル結合を形成する合成ポリマーが第1工程の反応で用いられる場合、エステル結合を形成する合成ポリマーを第2工程の反応で用いることが望ましくあり得、あるいは、マトリックスが薬剤送達システムとして用いられる場合のように、コラーゲン−合成ポリマーマトリックスが時間とともに分解または部分的に分解することが意図されている場合は、その逆であり得る。
【0198】
この第2工程の反応に必要な活性化した合成ポリマーの濃度は、一般にコラーゲン上のすべての第一アミノ基の完全な結合に必要な量とほぼ同等か、または過剰であり、その量は用いられるコラーゲン濃度ならびに用いられる活性化したポリマーのタイプおよび分子量に応じて変化する。例えば、タイプIコラーゲンは1分子当たり92個の第一アミノ基を有し、そして約300,000ダルトンの分子量を有する。理論的には、タイプIコラ
ーゲン1分子上の全ての第一アミノ基に結合するためには92分子の活性化した合成ポリマーが必要である。例えば、コラーゲン濃度が35mg/mlであるタイプIコラーゲンの懸濁液を分子量が3,755ダルトンの合成親水性ポリマーと反応させる場合、以下の
ように、各コラーゲン分子上の全ての第一アミノ基を(理論上)結合するためには、コラーゲン1ミリリットル当たり40.3ミリグラムのポリマーが必要とされる:
【0199】
【数1】


従って、この特別な場合では、コラーゲン懸濁液(コラーゲン濃度35mg/ml)1ミリリットル当たり少なくとも約40ミリグラムの合成ポリマーという合成ポリマー濃度が、第2工程の反応で用いられる。上記の式はまた、例えばHPLCによって測定されるように、実際にコラーゲンに結合している合成ポリマーの量に基づいて、コラーゲン上の第一アミノ基の何%が結合しているかを決定するために用いられ得る。
【0200】
第2工程の反応に関する他の可能性は、コラーゲン−合成ポリマーマトリックスを単官能性に活性化した合成ポリマーと結合させることである。単官能性に活性化したポリマーとの結合により、マトリックス内での架橋度は増加しないが、低分子量の、単官能性に活性化したポリマーを用いることにより、第1工程の反応で結合しなかった第一アミノ基と結させることによって、コラーゲンを「コート」するのに役立ち得る。このことにより、従来のコラーゲン−合成ポリマー結合体組成物に比べて免疫原性の低いコラーゲン−合成ポリマーマトリックスが得られ得る。従って、免疫原性の極めて低い移植物が所望物である場合、架橋したコラーゲン−合成ポリマーマトリックスと単官能性に活性化した合成ポリマーとの結合は、第2工程の反応であるべきである。
【0201】
第1工程の反応で形成されたコラーゲン−合成ポリマーマトリックスはまた、マトリックス中のコラーゲン分子上に残っている第一アミノ基と結合し得る反応性の基を有するか、または化学的誘導化によりそのような反応性の基を有する、あらゆる生物学的活性物質、薬剤、グリコサミノグリカンまたはグリコサミノグリカン誘導体などと直接連結し得る。生物学的活性物質をコラーゲン−合成ポリマーマトリックスに連結することにより、効果的な徐放性薬剤送達システムが提供され、または、コラーゲン−合成ポリマーマトリックスを宿主組織に生物学的に「固定」するのに役立ち得る。治療学的に有効であるために必要な生物学的活性物質の量は、用いられる特定の物質に依存する。グリコサミノグリカ
ンまたはそれらの誘導体をコラーゲン−合成ポリマーマトリックスに連結すると、用いられるグリコサミノグリカンのタイプおよび組成物中のコラーゲンおよびグリコサミノグリカンの相対量に依存して、新規な物理的性質および化学的性質を有する移植組成物が得られる。本発明で用いられるグリコサミノグリカンには、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸A、コンドロイチン硫酸C、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ケラト硫酸、キチン、キトサン、ヘパリン、およびこれらの誘導体が包される。例えば、ヘパリンのようなグリコサミノグリカンは、脈管移植片または人工器官のような血液接触性移植物または器具の内部またはそれらの上での使用において、それらを非常に望ましくする、独特の抗凝血性を有する。
【0202】
コラーゲン−合成ポリマーマトリックスはまた、任意の多くの従来の化学的架橋剤によりさらに架橋され得る。このような化学的架橋剤には、グルタルアルデヒド、ジビニルスルホン、エポキシド、カルボジイミド、およびイミダゾールが包含されるが、これらには限定されない。必要な化学的架橋剤の濃度は、用いられる特定の物質および所望の架橋度に依存する。
【0203】
コラーゲン−合成ポリマーマトリックスを修飾するさらなる他の可能性は、まずアミノ酸またはペプチドを二官能性に活性化した合成ポリマーに結合させ、次いでそれを予め形成しておいたコラーゲン−合成ポリマーマトリックスと反応させることにより、アミノ酸またはペプチドをマトリックス中のコラーゲンに連結することである。あるいは、アミノ酸またはペプチドは、化学的修飾によりマトリックス中のコラーゲン分子上の利用可能なアミノ基と反応し得る官能基を有し得る。これらのアミノ酸またはペプチドは、直接アミノ酸分子と反応するように化学的に誘導体化された他のポリマーをマトリックスに結合する結合点として働き得る。このようなポリマーには制限はないが、グリコサミノグリカン、ポリ(N−アセチルグリコサミン)、およびポリエチレングリコール、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシドのようなポリ(アルキレンオキシド)、などが包含される。
【0204】
他の選択肢は、マトリックスの所望の最終用途に応じて、エステル化、アミド化、またはアシル化のような種々の化学反応によりコラーゲン−合成ポリマーマトリックス中のコラーゲンを修飾することである。エステル化は、コラーゲン−合成ポリマーマトリックスを、メタノール、エタノール、プロパノール、またはブタノールのような、任意の適切なエステル化剤と反応させることにより達成され得る。アミド化は、マトリックスを、無水グルタル酸または無水コハク酸のような、任意の適切なアミド化剤と反応させることにより達成され得る。アシル化は、マトリックスを、塩化ベンゾイルまたは塩化ブチリルのような、任意の適切なアシル化剤と反応させることにより達成され得る。コラーゲン上の電荷分布を変化させる反応はいずれもコラーゲン線維構造の破壊を引き起こし、その結果、コラーゲンが修飾されている程度に依存して、程度の大小はあるが透明な生体材料を生じる。
【0205】
共有に係る、同時係属中の米国特許出願第08/147,227号では、合成親水性ポリマーと、メチル化コラーゲンまたはスクシニル化コラーゲンのような、予め行われた化学的修飾により非原線維性であるコラーゲンとの結合が開示された。しかし、非原線維性コラーゲンは、非常に粘性が高い。粘性が高いことにより、非原線維性コラーゲンを合成親水性ポリマーと混合することは、非常に困難であり、そのため不均一に架橋したコラーゲン−合成ポリマーマトリックスが生じ得る。このマトリックスは、例えば、眼で長期間使用するために予め形成されたレンズ核またはインサイチュで架橋したレンズ核を調製する場合には、好ましくない。一方、原線維性コラーゲンは粘性がより低く、より弾性であり、一般に扱いがより容易であり、そして非原線維性コラーゲンより容易に合成親水性ポリマーと混合される。従って、眼用の(または他の光学的に透明な)器具を調製する場合、原線維性
コラーゲンを出発材料に用い、このコラーゲンを合成親水性ポリマーと混合してコラーゲン−合成ポリマーマトリックスを形成し、次いで得られたコラーゲン−合成ポリマーマトリックスを、例えば、エステル化またはアミド化により化学的に修飾することにより、光学的に透明な移植物を生産することは有利である。
【0206】
光学的に透明なコラーゲン−合成ポリマーマトリックスを調製する他の方法では、pHが約3またはそれより低い非原線維性コラーゲン(例えばCIS)をpH7に中和し、次いで、線維形成が起こるのを防ぐために、直ちに単官能性に活性化した合成ポリマーと反応させることにより、光学的に透明なコラーゲン−合成ポリマー結合体を形成する。得られたコラーゲン−合成ポリマー結合体は、多官能性に活性化したポリマーが用いられた場合に得られる分子内架橋を有さないので、ゲージの小さいニードルを通して押出成形され得る。この透明なコラーゲン−合成ポリマー結合体は、その後多官能性に活性化した合成ポリマーを用いて実質的に架橋され得、光学的に透明なコラーゲン−合成ポリマーマトリックスを与える。
【0207】
(コラーゲン−合成ポリマーマトリックスのさらなる修飾(第3工程))
上記の1種またはそれ以上の反応により修飾コラーゲン−合成ポリマーマトリックスは、第3工程の反応に供され得る。この反応ではそのマトリックスに共有結合的に結合している合成親水性ポリマー上に残存する活性な基によって、生物学的活性分子またはグリコサミノグリカンが、マトリックスに共有結合的に結合する。
【0208】
共有に係る米国特許第5,162,430号は、生物学的活性物質を合成ポリマーに結合するこ
と、次いでコラーゲンと反応させて3部分からなるコラーゲン−合成ポリマー−活性物質結合体を形成することを開示した。しかし、生物学的活性物質を合成ポリマーに結合するとき、活性物質−合成ポリマー−X(ここで、Xは合成ポリマー分子上のフリーな官能基である)から構成される、大部分の結合体を得るために、そして不活性かつさらにコラーゲンマトリックスに結合する活性な基が残っていない活性物質−合成ポリマー−活性物質結合体を得る可能性を低くするために、大過剰のポリマー分子が用いられなければならなかった。この活性物質−合成ポリマー−X結合体を、その後コラーゲンと混合し、活性物質−合成ポリマー−コラーゲン結合体を形成した。
【0209】
上記の方法は、活性物質のいくつかが依然として活性物質−合成ポリマー−活性物質結合体を形成したため、効率が悪かった。生物学的活性の高いマトリックスを生産することも困難であった。なぜなら、活性物質−合成ポリマー−活性物質結合体の形成を避けるために、合成ポリマーの濃度に比べて活性物質の濃度が低くなければならなかったからである。生物学的活性物質、合成ポリマー、およびコラーゲンの同時結合は、比較的多数の活性物質−合成ポリマー−活性物質結合体が形成されるために、さらに効率が悪いことが示された。
【0210】
本発明の特に好ましい実施態様においては、コラーゲンは、好ましくはエーテル結合によって、合成親水性ポリマー、好ましくは二官能性に活性化したポリエチレングリコールに共有結合的に結合し、架橋したコラーゲン−合成ポリマーマトリックスを形成する。このコラーゲン−合成ポリマーマトリックスは、第2の合成親水性ポリマー(好ましくは二官能性に活性化したポリエチレングリコールである)を、コラーゲン分子上に残っている第一アミノ基に、好ましくはエステル結合により共有結合的に結合させることによって、さらに修飾する。(この時点で、コラーゲン−合成ポリマーマトリックスから全ての未反応合成ポリマーを洗い落とす。第3工程で、生物学的活性物質(あるいはグリコサミノグリカンまたはその誘導体)は、1個の官能基によってコラーゲン−合成ポリマーマトリックスに結合している合成ポリマーの残存する活性な端部のいずれかに共有結合的に結合する。上記の方法は、各ポリマーの少なくとも1つの端部が既にコラーゲン分子に結合して
いるので、活性物質−合成ポリマー−活性物質結合体を得る可能性がなくなるという点で、生物学的活性マトリックスを生産するのに非常に効率的な方法である。
【0211】
(使用および投与)
本発明のコラーゲン−合成ポリマーマトリックスは、脈管移植片、人工器官、および心臓弁のような種々の医療用途に用いる移植物の調製に用いられ得る。成形移植物を調製する一般的な方法では、コラーゲンとポリマーの間に充分なな架橋が起こる前に、コラーゲンと多官能性に活性化した合成ポリマーとを混合し、所望の大きさおよび形状にキャストし、成形する。このコラーゲンおよび合成ポリマーは、所望の大きさおよび形状を得るために、インキュベートおよび架橋され得る。一旦第1工程の架橋反応が完了すると、成形移植物は、多官能性に活性化した合成ポリマーまたは従来の化学的架橋剤を用いてさらに架橋され、単官能性に活性化した合成ポリマーを用いて結合され、そして/または生物学的活性物質と連結され得る。第2工程の反応は、例えば、移植物を所望の物質の溶液に浸漬することによって達成され得る。例えば、脈管移植片または人工心臓弁のような血液と接触して用いる移植物を調製する場合、抗血栓症剤または血小板の固着を防ぐ物質を移植物に連結するのが好適である。生物学的活性物質をそのような方法で移植物に結合させることにより、ほとんどの生物学的活性物質が移植物の表面上に分布し、そこでそれらは、最大の治療効果を発揮し得る。移植物を単官能性に活性化した合成ポリマーに結合することは、一般的に移植物の表面を「滑らかにし」、そして移植物を低免疫原性または低反応性にすることにより血栓症または血小板の固着を減少させる。
【0212】
本発明のコラーゲン−合成ポリマーマトリックスから作製したチューブは、脈管移植片またはステントとして、あるいは、体内の他の損傷したまたは欠陥のある非血管性の管状器官(例えば、生殖器官または泌尿器官における、例えば損傷したファローピウス管または尿管)の置換物として用いられ得る。種々の用途に用いるコラーゲン−合成ポリマーチューブの作製方法は、米国特許第5,292,802号にさらに記載されている。
【0213】
本発明のコラーゲン−合成ポリマーマトリックスはまた、体内への移植のため合成移植物をコートするために用いられ得る。これらの合成移植物には、骨および関節の補綴物、動脈瘤処置のためのコイル状白金ワイヤー、胸部移植物、カテーテル、人工器官、脈管移植片(例えば、Dacron(登録商標)移植片またはTeflon(登録商標)移植片)およびステント、縫合糸、および人工靱帯または人工腱が包含される。移植物は、コラーゲンと合成ポリマーの間の実質的な架橋が達成される前に、コラーゲンと合成ポリマーとを含有する溶液でコートされる。コラーゲンおよび合成ポリマーは、移植物の表面上で架橋し得る。一旦第1工程の架橋反応が完了すると、移植物は、多官能性に活性化した合成ポリマーまたは従来の化学的架橋剤を用いてさらに架橋され、単官能性に活性化した合成ポリマーと結合され、そして/または生物学的活性物質と連結され得る。例えば、合成脈管移植片は、まず、コラーゲン−合成ポリマー結合体組成物でコートされ得る。これはその後、抗血栓症剤、血小板付着防止剤、またはヘパリンのような抗血液凝固性を有するグリコサミノグリカンに連結され得る。骨移植物の場合、移植物の周囲の新しい骨の成長を促進し、そして/または、宿主組織内への移植物の取り込みを促進する骨形態発生タンパク質または骨形成因子を、移植物をコートしているコラーゲン−合成ポリマーに連結することは有利である。移植物をコラーゲン−合成ポリマー結合体でコートする方法は、1992年12月2日提出の同時係属中の米国特許出願第07/984,933号にさらに詳細に記載されている。
【0214】
1つの好ましい実施態様では、実質的な架橋が起こる前に、架橋を制限し得るのに十分な量でコラーゲンと合成親水性ポリマーの混合物を、コートされる物質の表面に塗布する。コラーゲンと合成ポリマーとは移植物の表面上で架橋し得、その後、移植物を第2の合成親水性ポリマーの溶液に浸漬する。第3工程の反応で、生物学的活性物質またはグリコサミノグリカンのような物質は、移植物上にコートされたコラーゲン−合成ポリマーマト
リックスに結合している合成ポリマー上に残存する官能基と反応し得る。この方法によって、生物学的活性物質が、その治療学的効果を最大限に発揮し得る移植物の表面上に分布するように、移植物が効率的に調製され得る。
【0215】
例えば、コートされた脈管移植片または脈管ステントを調製するための特定の好ましい実態様では、部分的に架橋したコラーゲン−合成ポリマーチューブを形成するためにコラーゲンと活性化した合成ポリマーとを、合成ポリマー対コラーゲン比率を比較的低くして混合し、そして実質的な架橋が起こる前にチューブ状にキャストして、部分的に架橋したコラーゲン−合成ポリマーマトリックスを形成する。次いで得られるチューブを、金属性ワイヤーから形成されたステントのような合成ステントの内部に装着する。第2の部分的に架橋したコラーゲン−合成ポリマーチューブをステントの外部表面に形成し配置する。
【0216】
2本のコラーゲン−合成ポリマーチューブは同一の特性を有する必要はない。例えば、部分的に架橋したコラーゲン−合成ポリマーマトリックスを形成した後の第2工程の反応では、外側のチューブは、ステントが周辺の組織に取り込まれるのを促進するために、生物学的活性物質(例えばTGF−βのような成長促進因子)に共有結合的に結合され得る。内部のチューブのコラーゲン−合成ポリマーマトリックスは、血液がステントの内部表面で凝固するのを防ぐために、ヘパリンのような抗トロンボン形成物質に共有結合的に結され得る。従って、内部チューブおよび外部チューブを形成するために、コラーゲンに結合したとき種々のタイプの結合を形成する合成親水性ポリマーを用い得る。例えば、外部チューブのコラーゲンマトリックスは、コラーゲンと合成ポリマーとの間のエステル結合を形成する合成ポリマーによって結合され得る。従って、コラーゲンと合成ポリマーとの間の結合は、ステントの外部表面が時間とともに周辺組織に取り込まれるにつれて、ゆっくりと加水分解される。逆に、内部チューブのコラーゲンマトリックスは、エーテル結合を形成する合成ポリマーによって結合され得る。なぜならステントの内部表面は長期間安定でかつ非反応性であることが重要だからである。
【0217】
次いで、コラーゲン−合成ポリマーでコートされたステント構築物全体を、機能的に活性化した合成親水性ポリマーの溶液中に置くかまたは浸す。このポリマーは、2本のコラーゲン−合成ポリマーチューブのいずれかを形成するために用いたタイプと同一または異なるタイプであり得る。次いで、これらの内部コラーゲン−合成ポリマーチューブおよび外部コラーゲン−合成ポリマーチューブは、相互に架橋し得、ステントの開口部で単一の連続的な表面を形成し得る。
【0218】
本発明のコラーゲン−合成ポリマーマトリックスはさらに、特に局部薬剤送達システムとして用いられ得る。所望の治療剤は、直接コラーゲン−合成ポリマーマトリックスに連結され得、そのマトリックスは次いで、創傷または腫瘍のような治療の必要な部位で体内移植され得る。治療剤は、それらとマトリックス間の共有結合が酵素的消化によってゆっくりと壊されるにつれて、マトリックスから放出される。このような条件では、マトリックス自体が比較的安定で加水分解性の分解に対して耐性であるように、第1の反応でコラーゲン−合成ポリマーマトリックスを形成するときにエーテル結合を生じる合成ポリマーを用いることが有利であり得る。治療剤自体は、第2の反応でエステル結合を形成する合成ポリマーによってマトリックスに連結されることにより、治療剤と合成ポリマーの間のエステル結合が時間とともに加水分解されるので、治療剤は連続的に放出され得る。あるいは、合成ポリマーの混合物(そのうちのあるものはエーテル結合を生じ、あるものはエステル結合を生じる)は、治療剤をマトリックスに連結するために用いられ得る。その結果、いくらかの治療剤が持続的に放出され、そしていくらかの治療剤がマトリックスに結合したままであって活性を維持し、そしてタンパク質の活性な部位に対する天然の基質に生物学的効果を及ぼす。
【0219】
光学的に透明なコラーゲン−合成ポリマーマトリックスはまた、本発明の多段階反応を適用することによって調製され得る。このようなマトリックスは、以下に記載する種々の眼への適用、または、光学的に透明な材料が望ましいあらゆる治療的用途に用いられ得る。光学的に透明なコラーゲン−合成ポリマーマトリックスを生産する1つの方法では、まずコラーゲンを多官能性に活性化した合成ポリマーと反応させて、光学的に透明な、架橋したコラーゲン−合成ポリマーマトリックスを生産する。このマトリックスを成形あるいは型削して、予め形成したレンズ核あるいは人工角膜またはレンズのような眼移植物を形成する。次いで、このコラーゲン−合成ポリマーマトリックスを、例えばエステル化またはアミド化により化学的に修飾してコラーゲン分子間のイオン性相互作用を減少させることにより、マトリックスの化学的修飾の程度に依存して、程度の大小はあるが透明なコラーゲン−合成ポリマーマトリックスを得る。
【0220】
あるいは、pHが約3またはそれ以下の、非原線維性コラーゲン(例えばCIS)をpH7に中和し、次いで直ちに単官能性に活性化した合成ポリマーと反応させて線維形成を防止することにより、光学的に透明なコラーゲン−合成ポリマー結合体を形成させ得る。得られたコラーゲン−合成ポリマー結合体は、多官能性に活性化したポリマーが用いられる場合に得られる分子内架橋を有さないので、ゲージの小さいニードルを通して押出形成され得る。透明なコラーゲン−合成ポリマー結合体は、眼の角膜上でインサイチュで重合し得るレンズ核を形成する場合のように、その後、多官能性に活性化した合成ポリマーを用いて、架橋され得る。
【0221】
光学的に透明なコラーゲン−合成ポリマーマトリックスを調製するための、上記の多工程法はまた、創傷の治癒、薬剤送達、または癒着予防のような種々の用途に用いる膜の調製に用いられ得る。例えば、原線維性コラーゲンの懸濁液を、多官能性に活性化した合成ポリマーと混合し、次いで、コラーゲンとポリマーの間に実質的な架橋が起こる前に、平板容器の底部に薄層としてキャストする。コラーゲン上に残存する全ての官能基を合成ポリマーでコートするために、得られた薄膜を単官能性に活性化した合成ポリマーとさらに反応させ、次いで必要に応じて凍結乾燥する。TGF−βのような種々の創傷治療剤、あるいは抗炎症剤または抗生物質のような薬剤は、コラーゲン−合成ポリマー膜に連結され得る。器官の間の組織内成長(ingrowth)を防止する因子は、癒着の予防に用いる膜に連結され得る。
【0222】
膜を形成する他の方法では、まずコラーゲンを単官能性に活性化した合成ポリマーと反応させる。得られたコラーゲン−合成ポリマー結合体は、押出成形によりインサイチュで膜を形成し得、次いで後に、多官能性に活性化した合成ポリマーを用いて実質的に架橋され得る。
【実施例】
【0223】
結合体、組成物、および装置の好ましい実施態様をどのように行うかを当業者に完全に開示し、そして記載するために、以下の実施例を示すが、本発明者らが発明とみなしているものの範囲の限定は意図されていない。用いる数値(例えば、量、温度、分子量など)に関しては、正確度を保証するために努力がなされたが、いくらかの実験的誤差および偏差が考慮されるべきである。他に指示しないかぎり、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏温度であり、そして圧力は大気圧または大気圧付近である。
【0224】
(実施例1)
(単一段階反応を用いるPEG−コラーゲンマトリックスの調製)
サンプルを以下のように調製した:1ミリリットルのZyderm(登録商標) I コラーゲ
ン(コラーゲン濃度35mg/ml、CollagenCorporation, Palo Alto,Californiaから
入手可能)と1.5mg、5mg、または10mgの、乾燥した二官能性に活性化したS
−PEG(分子量3,755)とをシリンジ−シリンジ混合により混合した。混合を完全
にするために、約40回〜50回シリンジ間を通した。各サンプルのS−PEG濃度はそれぞれコラーゲン1mlあたりPEG1.5mg、5.0mg、および10.0mgであった。サンプルを各シリ
ンジ中で37℃にて16時間インキュベートした。得られたPEG−コラーゲンの架橋したマトリックスを、シリンジの太い端部から押出した。1mlの円柱形の3種のマトリックスをそれぞれ半分に切断し、各PEG−コラーゲンマトリックスの半分を、さらなる実験のためにそれぞれ元のシリンジに戻した。
【0225】
残った0.5mlの3種のマトリックスをそれぞれ水で洗浄し、未反応PEGを除去した。各サンプルの未反応PEGを含む水は保存した。
【0226】
次いで、PEG−コラーゲンマトリックスを1MのNaOH中に65℃〜70℃で1時間置き、結合PEGを加水分解した。コラーゲンと結合PEGとの間の共有結合を切るために加水分解を行うことにより、実際にコラーゲンに結合したPEGの量を、以下の実施例2で記載されるように、その後HPLCで定量し得た。0.5mlの3種のサンプルのそれぞれから、CHCl3を用いてPEGを抽出した。次に、CHCl3をN2雰囲気下で
エバポレートした。次いでPEGの残渣を水に溶解した。
(実施例2)
(単一段階反応を用いて調製したPEG−コラーゲンマトリックス中の結合PEGの定量)
コラーゲンに結合していたPEGの量を定量するために、未反応PEG、および上記実施例1で記載したように、単一段階反応を用いて調製したPEG−コラーゲンマトリックスから得た、結合PEG(加水分解されたPEG)を含むサンプルを、HPLCを用いて3回分析した。PEGサンプルのHPLC分析は、イソクラチック溶出を用いて行った。HPLC分析の条件は以下の通りであった:
【0227】
【表1】

【0228】
種々の濃度のPEG溶液を用いて、外部標準検量線を得た。10.0mgの二官能性に活性化したS−PEGを1.000mlの脱イオン水に溶解することにより原液を調製した。この原液を段階的に希釈して5.00mg/ml、2.50mg/ml、1.25mg/ml、0.625mg/ml、および0.3125mg/mlとし、そしてHPLCで分析した。16分の保持時間でピークを積分し、各PEG標準の濃度に対してピーク面積をプロットした。
【0229】
図1〜3は、S−PEG濃度がそれぞれ1.5mg/ml、5.0mg/ml、および10.0mg/mlであるPEG−コラーゲンマトリックスについて、未反応PEGおよび結合PEGの相対量を、コラーゲンに加えられたPEGの総量のパーセントとして示し
ている。
【0230】
図1に示されるように、S−PEG濃度が1.5mg/mlであるサンプルは、未反応S−PEGを含まなかった。図2に示されるように、S−PEG濃度が5.0mg/mlであるサンプルは、少量(約10〜15%)の未反応S−PEGを含んでいた。図3に示されるように、S−PEG濃度が10.0mg/mlであるサンプルでは、未反応S−PEGの量はやや多く、コラーゲンに最初に加えたS−PEGの総量の約20%を占めることが示された。
(実施例3)
(2段階反応を用いるPEG−コラーゲンマトリックスの調製)
次いで、シリンジに戻した0.5mlのPEG−コラーゲンマトリックスを、各シリンジの針側の端部を通して押出し、マトリックスを小片にした。マトリックス小片を試験管に入れ、約1〜2mlのPBSに溶解した、100mgの二官能性に活性化したS−PEGを3本の試験管それぞれに加えた。PEG−コラーゲンマトリックス小片と過剰のPEGの入った試験管を、37℃で約16時間インキュベートした。
【0231】
3種のPEG−コラーゲンマトリックスをそれぞれ水で洗浄し、全ての未反応PEGを除去した。次いで、PEG−コラーゲンマトリックスを、1MのNaOH中に65℃〜70℃で1時間置き、結合PEGを加水分解した。以下の実施例4に記載するように、実際にコラーゲンに結合しているPEGの量を後でHPLCによって定量し得るようにコラーゲンと結合PEGの間の共有結合を壊すため、加水分解を行った。3種のサンプルそれぞれから、CHCl3を用いてPEGを抽出し、その後、CHCl3をN2雰囲気下でエバポ
レートした。次いで各サンプルのPEGの残渣を水に溶解した。
(実施例4)
(2段階反応を用いて調製したPEG−コラーゲンマトリックス中の結合PEGの定量)
コラーゲンに結合していたPEGの量を定量するために、上記実施例3で記載したように、2段階反応を用いて調製したPEG−コラーゲンマトリックスから得た、結合していた(加水分解された)PEGを含むサンプルを、実施例2の記載と同一条件で、HPLCを用いて3回分析した。図4〜6に、初期S−PEG濃度がそれぞれ1.5mg/ml、5.0mg/ml、および10.0mg/mlであるPEG−コラーゲンマトリックスについて、2段階反応を用いて調製したPEG−コラーゲンマトリックス中にあった結合PEGの実際の量(ミリグラム単位)を、単一段階反応を用いて調製したマトリックスと比較して示す。これらの図において、2段階反応をR×2、単一段階反応をR×1と表す。
【0232】
各コラーゲン分子は、機能的に活性化した合成ポリマーとの反応に利用可能な第一アミノ基92個を有する。そのため、理論的には、92分子のPEGがコラーゲン1分子上の92個の第一アミノ基残基に結合し得るはずである。コラーゲン1ml当たり1.5mgのS−PEG濃度は、コラーゲン1分子当たりS−PEGが約3.6分子あることを意味する。従って、第2工程の架橋反応で添加された過剰(100mg)なPEGとのさらなる架橋のために利用可能なリジン残基がまだ多数残っている。図4に示されるように、初期のS−PEG濃度が1.5mg/mlであるPEG−コラーゲンマトリックスは、第2工程の反応の後では、マトリックス0.5ml当たり約16〜17mgのS−PEGを含有していた。このことはコラーゲン1分子当たりS−PEGが約76〜80分子であることを意味する。
【0233】
図7に示されるように、この実験の間に評価した3種のS−PEG濃度(コラーゲン1ml当たりS−PEG1.5mg、5.0mg、および10.0mg)のうち、S−PEG濃度が5.0mg/mlであるPEG−コラーゲンマトリックスが最良のゲル強度(Instron Model 4202を用いて測定)を示し、このことはPEGとコラーゲンとの間の架橋の最適レベルが、このS−PEG濃度で達成されたことを示す。S−PEG濃度がコラーゲ
ン1ml当たりS−PEG5.0mgであるということは、コラーゲン1分子当たり約12分子のS−PEGが結合していることを意味する。図5に示されるように、初期のS−PEG濃度が5.0mg/mlであるPEG−コラーゲンマトリックスは、第2工程の架橋反応の後、マトリックス0.5ml当たり約10〜11mgのS−PEGを含み、このことはコラーゲン1分子当たり約48〜52分子のS−PEGが結合していることを示している。S−PEG濃度が5.0mg/mlのときに得られたPEG−コラーゲンの緊密なネットワークのため、立体障害により多数のさらなるS−PEGのコラーゲンマトリックスへの結合が妨げられ得、それにより、初期S−PEG濃度が5.0mg/mlであるPEG−コラーゲンマトリックスでは、初期S−PEG濃度がわずか1.5mg/mlであるマトリックスの場合よりも第2の架橋反応後の結合S−PEGの量が少ない理由が説明される。
【0234】
図6に示されるように、初期のS−PEG濃度が10.0mg/mlであるPEG−コラーゲンマトリックスは、架橋反応の第2段階の後、マトリックス0.5ml当たり約24〜25mgのS−PEGを含んでいた(すなわち、コラーゲン1分子当たり、約96〜100分子のS−PEGが結合していることを意味する)。図7に示されるように、S−PEG濃度が10.0mg/mlであるPEG−コラーゲンマトリックスは、S−PEG濃度が1.5mg/mlであるPEG−コラーゲンマトリックスとほぼ等しく、そしてS−PEG濃度が5.0mg/mlであるPEG−コラーゲンマトリックスのゲル強度より著しく低いゲル強度を示す。S−PEG濃度がコラーゲン1ml当たり10.0mgであるということは、コラーゲン1分子当たり約24分子のS−PEGが結合していることを意味する。このS−PEG濃度では、多くの二官能性に活性化したS−PEG分子はそれぞれ、単にコラーゲン1分子につき1個結合し、それによりコラーゲン分子上の利用可能な架橋部位が除かれ、そしてS−PEGは作為的に(さらなる反応に関して)単官能性になる。この現象により、緩く架橋したPEG−コラーゲンネットワークが生成される。
【0235】
このため、既に大量のPEGが結合しているにも関わらず、第2段階の架橋反応の間に、多量のさらなるS−PEGがPEG−コラーゲンネットワークに結合し得た。マトリックス中の初期PEG濃度が高いことにより生成される緩く架橋したネットワークにより、より最適に架橋した5.0mg/mlのPEG−コラーゲンマトリックスで起きると思われた立体障害が妨害された。なぜなら、多くのS−PEG分子が、コラーゲン2分子ではなくコラーゲン1分子のみに結合しているため、PEGとのさらなるに結合に利用可能な多数の第一アミノ基が残存していたためである。
【0236】
緩く架橋したコラーゲン−合成ポリマーネットワークは、種々の用途において望ましい。例えば、これらのマトリックスは、生物学的活性物質の送達に理想的である。なぜなら、これらのマトリックスは、(1個のコラーゲン分子を2個の官能基それぞれに結合させることにより2分子のコラーゲンを架橋するのではなく)ただ1個の官能基によってコラーゲン−合成ポリマーマトリックスに結合する、多数の合成ポリマー分子を含有し、そのために、成長因子または他の薬剤のような生物学的活性物質を結合するのに利用可能な別の官能基を有するからである。逆に、グリコサミノグリカンも、そのようにPEG−コラーゲンマトリックスに結合し得る。
【0237】
上記のように調製された緩く架橋したコラーゲン−合成ポリマーネットワークはまた、宿主のコラーゲン分子への結合に利用可能な、合成ポリマー分子上の多くのフリーな官能基のため、コラーゲン−合成ポリマー移植物をインサイチュでの宿主組織に架橋することが望ましい用途において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0238】
【図1】コラーゲン1ml当たりS−PEGが1.5mgのPEG濃度であるPEG−コラーゲンマトリックスについて、未反応PEGおよび結合PEGの相対量を、コラーゲンに加えられたPEGの総量に占めるパーセントとして示す。
【図2】コラーゲン1ml当たりS−PEGが5.0mgのPEG濃度であるPEG−コラーゲンマトリックスについて、未反応PEGおよび結合PEGの相対量を、コラーゲンに加えられたPEGの総量に占めるパーセントとして示す。
【図3】コラーゲン1ml当たりS−PEGが10.0mgのPEG濃度であるPEG−コラーゲンマトリックスについて、未反応PEGおよび結合PEGの相対量を、コラーゲンに加えられたPEGの総量に占めるパーセントとして示す。
【図4】コラーゲン1ml当たりS−PEGが1.5mgの初期PEG濃度であるマトリックスについて、2段階反応を用いて調製されたPEG−コラーゲンマトリックスにおいて見出された結合PEGの実際量を、単一段階反応を用いて調製されたPEG−コラーゲンマトリックスと比較して、ミリグラム単位で示す。
【図5】コラーゲン1ml当たりS−PEGが5.0mgの初期PEG濃度であるマトリックスについて、2段階反応を用いて調製されたPEG−コラーゲンマトリックスにおいて見出された結合PEGの実際量を、単一段階反応を用いて調製されたPEG−コラーゲンマトリックスと比較して、ミリグラム単位で示す。
【図6】コラーゲン1ml当たりS−PEGが10.0mgの初期PEG濃度であるマトリックスについて、2段階反応を用いて調製されたPEG−コラーゲンマトリックスにおいて見出された結合PEGの実際量を、単一段階反応を用いて調製されたPEG−コラーゲンマトリックスと比較して、ミリグラム単位で示す。
【図7】コラーゲン1ml当たりS−PEGが1.5mg、5.0mg、および10.0mgのPEG濃度であるPEG−コラーゲンマトリックスについて、ゲル強度(Instron Model 4202を用いて測定)をニュートン単位で示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コラーゲン−合成ポリマーマトリックスを調製するための方法であって、
コラーゲンを第1の合成親水ポリマーと反応させてコラーゲン−合成ポリマーマトリックスを形成する工程;および
該コラーゲン−合成ポリマーマトリックスを、第2の合成親水性ポリマー、生物学的活性物質、グリコサミノグリカンおよびその誘導体、化学的架橋剤、エステル化剤、アミド化剤、アシル化剤、アミノ酸、ペプチド、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される化学物質とさらに反応させる工程
を包含する、方法。
【請求項2】
前記コラーゲンがアテロペプチド原線維性コラーゲンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の合成親水性ポリマーが機能的に活性化したポリマー性グリコールである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記機能的に活性化したポリマー性グリコールが二官能的に活性化したポリエチレングリコールである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記コラーゲンおよび前記第1の合成親水性ポリマーが、エーテル結合、エステル結合、およびウレタン結合からなる群より選択される結合によって共有結合的に結合している、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記化学物質が第2の合成親水性ポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の合成親水性ポリマーが、機能的に活性化したポリマー性グリコールである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記機能的に活性化したポリマー性グリコールが、二官能的に活性化したポリエチレングリコールおよび単官能性に活性化したポリエチレングリコールからなる群より選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記コラーゲンおよび前記第2の合成親水性ポリマーが、エーテル結合、エステル結合、およびウレタン結合からなる群より選択される結合によって共有結合的に結合している、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記コラーゲン−合成ポリマーマトリックスが、さらに生物学的活性物質に結合している、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記コラーゲン−合成ポリマーマトリックスが、さらにグリコサミノグリカンに結合している、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記化学物質が生物学的活性物質である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記生物学的活性物質が、成長因子、サイトカイン、抗生物質、抗炎症剤、抗血栓症剤、および活性ペプチドからなる群より選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記化学物質が、グリコサミノグリカンである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記グリコサミノグリカンが、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸A、コンドロイチン硫酸C、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ケラト硫酸、キチン、キトサン、およびヘパリンからなる群より選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記化学物質が化学的架橋剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記化学的架橋剤が、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、ジビニルスルホン、カルボジイミド、エポキシド、およびイミダゾールからなる群より選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記化学物質がエステル化剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記エステル化剤が、メタノール、エタノール、プロパノール、およびブタノールからなる群より選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記化学物質がアミド化剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記アミド化剤が、無水グルタル酸および無水コハク酸からなる群より選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記化学物質がアシル化剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記アシル化剤が、塩化ベンゾイルおよび塩化ブチリルからなる群より選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
コラーゲン−合成ポリマーマトリックスを調製する方法であって、
コラーゲンを第1の合成親水性ポリマーと反応させてコラーゲン−合成ポリマーマトリックスを形成する工程;および
該コラーゲン−合成ポリマーマトリックスを、第2の合成親水性ポリマーとさらに反応させる工程
を包含する、方法。
【請求項25】
前記コラーゲンがアテロペプチド原線維性コラーゲンである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第1の合成親水性ポリマーが、機能的に活性化したポリマー性グリコールである、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記機能的に活性化したポリマー性グリコールが、二官能的に活性化したポリエチレングリコールである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記コラーゲンおよび前記第1の合成親水性ポリマーが、エーテル結合、エステル結合、およびウレタン結合からなる群より選択される結合によって共有結合的に結合している、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記第2の合成親水性ポリマーが、機能的に活性化したポリマー性グリコールである、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記機能的に活性化したポリマー性グリコールが、二官能的に活性化したポリエチレングリコールおよび単官能性に活性化したポリエチレングリコールからなる群より選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記コラーゲンおよび前記第2の合成親水性ポリマーが、エーテル結合、エステル結合、およびウレタン結合からなる群より選択される結合によって共有結合的に結合している、請求項24に記載の方法。
【請求項32】
前記コラーゲン−合成ポリマーマトリックスを生物学的活性物質に結合させることを含む第3の工程をさらに包含する、請求項24に記載の方法。
【請求項33】
前記生物学的活性物質が、成長因子、サイトカイン、抗生物質、抗炎症剤、抗血栓症剤、および活性ペプチドからなる群より選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記コラーゲン−合成ポリマーマトリックスをグリコサミノグリカンまたはその誘導体に結合させることを含む第3の工程をさらに包含する、請求項24に記載の方法。
【請求項35】
前記グリコサミノグリカンが、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸A、コンドロイチン硫酸C、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ケラト硫酸、キチン、キトサン、およびヘパリンからなる群より選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
コラーゲン−合成ポリマーマトリックスを調製する方法であって、
コラーゲンを第1の合成親水性ポリマーと反応させてコラーゲン−合成ポリマーマトリックスを形成する工程;
該コラーゲン−合成ポリマーマトリックスを第2の合成親水性ポリマーとさらに反応させて修飾コラーゲン−合成ポリマーマトリックスを形成させる工程;ならびに
該修飾コラーゲン−合成ポリマーマトリックスを、生物学的活性物質およびグリコサミノグリカンまたはその誘導体から選択される物質に結合する工程
を包含する、方法。
【請求項37】
前記コラーゲンが、アテロペプチド原線維性コラーゲンである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記第1の合成親水性ポリマーおよび前記第2の合成親水性ポリマーが、機能的に活性化したポリマー性グリコールである、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記機能的に活性化したポリマー性グリコールが、二官能的に活性化したポリエチレングリコールである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記コラーゲンおよび前記第1の合成親水性ポリマーが、エーテル結合、エステル結合、およびウレタン結合からなる群より選択される結合によって共有結合的に結合している、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
前記コラーゲンおよび前記第2の合成親水性ポリマーが、エーテル結合、エステル結合、およびウレタン結合からなる群より選択される結合によって共有結合的に結合している、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
前記コラーゲンおよび前記第1の合成親水性ポリマーが、エーテル結合によって共有結合的に結合し、そして前記コラーゲンおよび前記第2の合成親水性ポリマーがエステル結合によって共有結合的に結合している、請求項36に記載の方法。
【請求項43】
前記生物学的活性物質が、成長因子、サイトカイン、抗生物質、抗炎症剤、抗血栓症剤、および活性ペプチドからなる群より選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項44】
前記グリコサミノグリカンが、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸A、コンドロイチン硫酸C、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ケラト硫酸、キチン、キトサンおよびヘパリンからなる群より選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項45】
コラーゲン合成ポリマーマトリックスを含む移植物のコーティングを調製するための方法であって、該方法は、以下:
コラーゲンを第1の合成親水性ポリマーと反応させて、コラーゲン−合成ポリマーマトリックスを形成する工程;および
該コラーゲン−合成ポリマーマトリックスを、第2の合成親水性ポリマー、生物学的活性物質、グリコサミノグリカンおよびその誘導体、化学的架橋剤、エステル化剤、アミド化剤、アシル化剤、アミノ酸、ペプチド、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される化学物質とさらに反応させる工程
を包含する、方法。
【請求項46】
前記化学物質が、生物学的活性物質およびグリコサミノグリカンまたはその誘導体からなる群より選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記コラーゲン−合成ポリマーマトリックスを、第2の合成親水性ポリマーと結合させることを含む第3の工程をさらに法包含する、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記化学物質が第2の合成親水性ポリマーである、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
前記コラーゲン−合成ポリマーマトリックスを、生物学的活性物質およびグリコサミノグリカンまたはその誘導体からなる群より選択される物質に結合させることを含む第3の工程をさらに包含する、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記移植物が、脈管移植片、脈管ステント、および脈管ステント−移植片からなる群より選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項51】
生物学的活性物質である、グリコサミノグリカンまたはグリコサミノグリカン誘導体を保有するコラーゲン−合成ポリマーマトリックスを調製するための方法であって、該方法が以下の工程:
(a)コラーゲンと第1の多官能性に活性化された合成親水性ポリマーを反応させ、コラーゲン−合成ポリマーマトリックス中間体を形成する工程;
(b) 該コラーゲン−合成ポリマーマトリックス中間体と第1の化学物質をさらに反応させ、修飾コラーゲン−合成ポリマーマトリックスを形成する工程であって、該第1の化学物質が、第2の合成親水性ポリマー、化学的架橋剤、エステル化剤、アミド化剤、アシル化剤、アミノ酸およびペプチドからなる群より選択される、工程;および
(c)第2の化学物質と前記修飾コラーゲン−合成ポリマーマトリックスを結合させる工程であって、該第2の化学物質が、生物学的活性物質、グリコサミノグリカンおよびグリコサミノグリカン誘導体からなる群より選択される、工程;
を包含する、方法。
【請求項52】
コラーゲン−合成ポリマーマトリックスを調製するための方法であって、該方法が、以下:
(a)コラーゲンと合成親水性ポリマーからなる第1の多官能的に活性化された架橋剤を反応させ、コラーゲン−合成ポリマーマトリックス中間体を形成する工程;
(b) 該コラーゲン−合成ポリマーマトリックス中間体を第2の多官能的に活性化された架橋剤でさらに架橋させ、修飾コラーゲン−合成ポリマーマトリックスを形成 する
工程であって、該第2の多官能的に活性化された架橋剤が、第2の合成親水性ポリマーおよび化学的架橋剤からなる群より選択される、工程;および
(c)生物学的活性物質である、グリコサミノグリカンおよびグリコサミノグリカン誘導体と該修飾コラーゲン−合成ポリマーマトリックスにおける該第2の多官能的に活性化した架橋剤とを結合する工程;
を包含する方法。
【請求項53】
生物学的活性物質が、前記第2の多官能的に活性化した架橋剤と結合している、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
グリコサミノグリカンまたはグリコサミノグリカン誘導体が、前記第2の多官能的に活性化した架橋剤と結合する請求項52に記載の方法。
【請求項55】
生物学的活性物質である、グリコサミノグリカンまたはグリコサミノグリカン誘導体を保有するコラーゲン−合成ポリマーマトリックスを調製するための方法であって、該方法が以下:
(a)コラーゲンと第1の多官能的に活性化した合成親水性ポリマーを反応させ、コラーゲン−合成ポリマーマトリックス中間体を形成する、工程。
(b)該コラーゲン−合成ポリマーマトリックス中間体と第2の合成親水性ポリマーをさらに反応させ、修飾コラーゲン−合成ポリマーマトリックスを形成する、工程;および
(c)生物学的活性物質である、グリコサミノグリカンまたはグリコサミノグリカン誘導体と該修飾コラーゲン−合成ポリマーマトリックスを結合させる、工程;
を包含する、方法。
【請求項56】
前記コラーゲンが、アテロペプチド原線維コラーゲンである、請求項51から請求項55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記第1および/または前記第2の合成親水性ポリマーが、機能的に活性化されたポリマー性グリコールである、請求項52から請求項56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
前記機能的に活性化されたポリマー性グリコールが、二官能的に活性化されたポリエチレングリコールである、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記コラーゲンおよび前記第1および/または前記第2の合成親水性ポリマーが、エーテル結合、エステル結合、およびウレタン結合からなる群より選択される結合により相互に共有結合的に結合する、請求項55に記載の方法。
【請求項60】
前記第1の化学物質が、第2の合成親水性ポリマーである、請求項51に記載の方法。
【請求項61】
前記第2の合成親水性ポリマーが、二官能的に活性化したポリエチレングリコールおよび単官能的に活性化したポリエチレングリコールからなる群より選択される、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記第2の化学物質が、生物学的活性物質である請求項51に記載の方法。
【請求項63】
前記生物学的活性物質が、成長因子、サイトカイン、抗生物質、抗炎症剤、抗血栓症剤およびペプチドからなる群より選択される、請求項53〜請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記第2の化学物質が、グリコサミノグリカンまたはグリコサミノグリカン誘導体である、請求項51に記載の方法。
【請求項65】
前記第2の化学物質が、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸A、コンドロイチン硫酸C、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ケラト硫酸、キチン、キトサンおよびヘパリンからなる群より選択されるグリコサミノグリカンである、請求項51に記載の方法。
【請求項66】
前記第1の化学物質が、化学的架橋剤である、請求項51に記載の方法。
【請求項67】
前記化学的架橋剤が、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、ジビニルスルホン、カルボジイミド、エポキシド、およびイミダゾールからなる群より選択される、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記第1の化学物質が、エステル化剤である、請求項51に記載の方法。
【請求項69】
前記エステル化剤が、メタノール、エタノール、プロパノール、およびブタノールからなる群より選択される、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記第1の化学物質が、アミド化剤である、請求項51に記載の方法。
【請求項71】
前記アミド化剤が、無水グルタル酸および無水コハク酸からなる群より選択される、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記第1の化学物質が、アシル化剤である、請求項51に記載の方法。
【請求項73】
前記アシル化剤が、塩化ベンゾイルおよび塩化ブチリルからなる群より選択される、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記コラーゲンと前記第1の合成親水性ポリマーが、エーテル結合により相互に共有結合的に結合し、そして該コラーゲンと前記第2の合成親水性ポリマーがエステル結合により相互に共有結合的に結合する、請求項55に記載の方法。
【請求項75】
コラーゲン−合成ポリマーマトリックスを含む移植物コーティングを調整する方法であって、以下の工程:
(a)コラーゲンと第1の多官能的に活性化された合成親水性ポリマーを反応させ、コラーゲン−合成ポリマーマトリックス中間体を形成する工程;
(b) 該コラーゲン−合成ポリマーマトリックス中間体と第1の化学物質をさらに反応させ、修飾コラーゲン−合成ポリマーマトリックスを形成する工程であって、該化学物質が、第2の合成親水性ポリマー、化学的架橋剤、エステル化剤、アミド化剤、アシル化剤、アミノ酸、およびペプチドからなる群より選択される、工程;および
(c)第2の化学物質と該修飾コラーゲン−合成ポリマーマトリックスを結合する工程であって、該第2の化学物質が、生物学的活性物質、グリコサミノグリカンおよびグリコサミノグリカン誘導体からなる群より選択される、工程;
を包含する方法。
【請求項76】
前記第2の化学物質が、生物学的活性物質である、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記第1の化学物質が、第2の合成親水性ポリマーである、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記第1の化学物質が、第2の合成親水性ポリマーである、請求項75に記載の方法。
【請求項79】
前記第2の化学物質が、グリコサミノグリカンまたはグリコサミノグリカン誘導体である、請求項75に記載の方法。
【請求項80】
前記コーティングが脈管移植片、脈管ステント、および脈管ステント−移植片結合物からなる群より選択される移植片をコートするために使用され得る、請求項75から請求項79のいずれか1項に記載の方法。
【請求項81】
合成親水性ポリマーと架橋されたコラーゲンを含むコラーゲン合成ポリマーマトリックスを含む組成物であって、ここで、該マトリックスは、アミノ酸またはペプチドに結合される、組成物。
【請求項82】
前記コラーゲンが、アテロペプチド原線維コラーゲンである、請求項81に記載の組成物。
【請求項83】
前記コラーゲンが、スクシニル化コラーゲンおよびメチル化コラーゲンからなる群より選択される化学的に改変された非原線維コラーゲンである、請求項81に記載の組成物。
【請求項84】
前記合成親水性ポリマーが、機能的に活性化したポリマー性グリコールである、請求項83に記載の組成物。
【請求項85】
前記機能的に活性化したポリマー性グリコールが二官能的に活性化したポリエチレングリコールである、請求項84に記載の組成物。
【請求項86】
第1の合成親水性ポリマーおよび第2の合成親水性ポリマーに架橋されたコラーゲンを含むコラーゲン合成ポリマーマトリックスを含む組成物であって、該コラーゲン合成ポリマーマトリックスが、グリコサミノグリカンに結合する、組成物。
【請求項87】
第1の合成親水性ポリマーおよび第2の合成親水性ポリマーに架橋されたコラーゲンを含むコラーゲン合成ポリマーマトリックスを含む組成物であって、該コラーゲン合成ポリマーマトリックスが、生物学的活性物質に結合する、組成物。
【請求項88】
第1の合成親水性ポリマーおよび第2の合成親水性ポリマーに架橋されたコラーゲンを含むコラーゲン合成ポリマーマトリックスを含む組成物であって、該コラーゲン合成ポリマーマトリックスが、メタノール、エタノール、プロパノール、およびブタノールからなる群より選択されるエステル化剤で改変された、組成物。
【請求項89】
前記コラーゲンが、アテロペプチド原線維コラーゲンである、請求項85〜87のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項90】
前記コラーゲンが、スクシニル化コラーゲンおよびメチル化コラーゲンからなる群より選択される化学的に改変された非原線維コラーゲンである、請求項85〜87に記載の組成物。
【請求項91】
前記第1の合成親水性ポリマーが、機能的に活性化したポリマー性グリコールである、請求項86〜88のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項92】
前記機能的に活性化したポリマー性グリコールは、二官能的に活性化したポリエチレングリコールである、請求項91に記載の組成物。
【請求項93】
前記第2の合成親水性ポリマーが、機能的に活性化したポリマー性グリコールである、請求項86〜88のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項94】
前記機能的に活性化したポリマー性グリコールは、二官能的に活性化したポリエチレングリコールでまたは単官能的に活性化したポリエチレングリコールまたは単官能的に活性化したポリエチレングリコールである、請求項93に記載の組成物。
【請求項95】
前記グリコサミノグリカンが、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸A、コンドロイチン硫酸C、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ケラト硫酸、キチン、キトサン、ヘパリンおよびそれらの誘導体からなる群より選択される、請求項86に記載の組成物。
【請求項96】
前記生物学的活性物質が、成長因子、サイトカイン、抗生物質、抗炎症剤、および抗血栓剤からなる群より選択される、請求項87に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−257428(P2006−257428A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−79819(P2006−79819)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【分割の表示】特願平7−104476の分割
【原出願日】平成7年4月27日(1995.4.27)
【出願人】(500065912)アンジオテック バイオマテリアルズ コーポレイション (4)
【Fターム(参考)】