説明

多段階硬化を伴う表面コーティング

本発明は、
(a)湿気架橋性ポリウレタン系放射線硬化性溶融体の層を、物体の表面の少なくとも一部分に適用する工程;および
(b)溶融体層に放射線照射する工程
を含む、物体の表面の少なくとも一部分のシーリング方法に関する。本発明は、さらに、このようにしてシールされた物体の表面、また、表面にシールするための上記溶融体の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の表面のシーリング方法、かかるシールされた表面を有する物体、および表面にシールするための溶融体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、非常に広範で多様な適用分野、例えば、家具製造産業や木材加工産業などにおいて、コーティング材料が物体の表面上のシーリング層として大量に使用されている。
【0003】
このような状況において、広く使用されているコーティング系はUV硬化性コーティング材料であり、これは、ほとんどの場合ローラーによって、より稀には吹付けによって部品に適用される。その後の硬化作業は、UV光またはUVランプを用いて行なわれる。UVコーティング材料を用いるコーティングに伴う機械の複雑度は非常に高く、非常に大きな空間を必要とする。大きな空間が必要とされる別の理由は、UV硬化系を用いるコーティング作業には通常、複数回の適用が必要とされることであり、実際には、3〜4回の適用が一般的である。各回のコーティング材料の適用では、その粘度だけでなく、特に大容量(volume)をUV硬化させるため、1回の作業で適用することが可能な層の厚さはわずか約10〜20μmであり、一般的に言えば、これが、コーティング材料の2回以上の適用が必要とされる理由である。
【0004】
他のコーティング系、例えば、2成分系PUコーティング材料、ニトロラッカーまたは水系コーティング材料なども同様に、2層以上で適用しなければならない。さらに、このような場合、サーフェイサー、下塗剤、および適切な場合は、その間に研磨作業が通常、必要とされる。
【0005】
しかしながら、該コーティング材料に伴う利点は、該材料が比較的速やかに乾燥され得、その後、高い耐湿性および洗浄用製品に対する耐性を有することである。
【0006】
コーティング材料の層を多層で適用する必要性のため、シーリング層が物体にできるだけ1回の作業で適用されることを可能にするシーリング方法が模索されている。
【0007】
DE 198 06 136 C2により、少なくとも1つの木材層とその表面上にシーリング層とを有するウッドブロックフローリング用の床板の場合、シーリング層を、水分無含有および溶媒無含有の反応性のポリウレタン系溶融体層(これは、大気中の湿気で硬化する)として構成することが知られている。この場合、反応性の溶融体層は木材層に、ナイフコーティング、ロールコーティング(rolling)または吹付けによって適用される。
【0008】
また、WO−A 02/094549およびWO−A 02/094457には、ベニアまたは家具用部材のシーリングのための反応性のポリウレタン系溶融体層が提案されている。このような場合には、溶融体層は、例えば、均質な表面を得るためにロールを用いて平滑化される。平滑化作業の過程において、溶融体がロールに固着しないように、ロール表面にパラフィンワックス系の離型剤が設けられている。
【0009】
溶融体層の利点は、所望の層厚さが1回の作業で適用され得ることである。さらに、硬化された溶融体はなお、脆性の亀裂の形成を抑制するための充分な可撓性をもたらす。
【0010】
しかしながら、反応性溶融体の使用に伴う不都合点は、架橋前の滞留時間が長く、した
がって、完全な硬化が終わることである。この期間は一般的に数日間であり、この間、さらなる加工処理またはシールされた物体の包装のためのオプション作業が制限される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、上記に概要を示した不都合点の少なくとも一部が回避される改善されたシーリング方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、
(a)湿気架橋性ポリウレタン系放射線硬化性溶融体の層を、物体の表面の少なくとも一部分に適用する工程;および
(b)溶融体層に放射線照射する工程
を含む、物体の表面の少なくとも一部分をシーリング方法によって達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
PU溶融体中の放射線硬化性成分の放射線照射により、さらなる処理を可能にするシーリング初期強度をもたらすことが可能であること、さらに、溶融体の完全な硬化は湿気への溶融体層の典型的な曝露により起こることがわかった。この場合、表面のシーリングのために多段階硬化を伴うが、複数の層の適用または1つの層の多重層での適用が回避される表面コーティングを得ることが可能である。
【0014】
関与する放射線照射は、例えば、電子線またはUV照射である。UV照射が好ましい。
本発明は、さらに、表面上の少なくとも一部分に、湿気架橋性ポリウレタン系放射線硬化性溶融体の層で構成されるシーリング層を有する物体を提供する。
【0015】
溶融体の主成分を構成するポリウレタン画分に関して、放射線硬化性または放射線反応性のポリウレタン系溶融体(以下、簡略化のため、反応性溶融体ともいう)は、好ましくは、市販の慣用的なポリウレタン系反応性溶融体であり、これは、通常、周囲大気中に存在する湿気の補助により反応し、反応しながら硬化する。好ましくは、この反応性溶融体は溶媒無含有である。
【0016】
溶融体の溶融範囲は、好ましくは50℃で始まり、より好ましくは75℃で、特に好ましくは100℃で始まる。
【0017】
好ましくは溶媒無含有である反応性溶融体層は、典型的には、少なくとも100℃、例えば100℃〜160℃、好ましくは120℃〜150℃の温度でシールされる領域に適用される。ここで、通常、コーティング対象の表面1平方メートルあたり約20〜170gの反応性溶融体を適用することが可能である。反応性溶融体は室温で固体であり、典型的には、約1.1g/mの密度および120℃で約1000mPas〜約50000mPas、好ましくは4000mPas〜10000mPasのブルックフィールド粘度を有する。
【0018】
例えば、該層は、ナイフコーティング、ロールコーティング、吹付け、またはスロットダイもしくは他のダイによって適用され得る。ロールコーティングによる適用が好ましい。
【0019】
また、溶融体層の表面は平滑化されているが好ましい。これは、例えば、平滑化ストリッピング(smoothing strip)またはカレンダーロールによってなされ得る。
【0020】
硬化された状態であっても、反応性溶融体層はなお、一定の残留弾性を有する。
反応性溶融体層は、好ましくは5μm〜200μm、より好ましくは20μm〜200μm、特に好ましくは80μm〜120μmの範囲の厚さを有する。
【0021】
反応性溶融体のこのような物性のため、この種の厚さが1回の適用によってもたらされ得る。したがって、該層は単層で生成される。とりわけ、このことが、まさに好都合な時間節約を提示するため、単層の適用が本発明において好ましい。しかしながら、多重層の適用も同様に可能である。また、例えば、ワニス層などのさらなる層を溶融体層に適用することが可能である。
【0022】
本発明の方法用およびかかる層を有する本発明の物体のための湿気架橋性ポリウレタン系反応性溶融体に関して、驚くべきことに、WO−A 01/12691に記載された、重合後にブックブロックが接着されて一続きに円弧状にすることが意図される種類の出発材料を主成分とするPUホットメルト接着剤が適性を有することが明らかになった。
【0023】
したがって、本発明の方法用およびかかる層を有する本発明の物体のための湿気架橋性ポリウレタン系反応性溶融体は、例えば、WO−A 01/12691に開示された種類のホットメルト接着剤であり得る。
【0024】
したがって、湿気架橋性ポリウレタン系放射線硬化性溶融体の主成分となる化学物質は、好ましくは、WO−A 98/40225に記載されているものと同様である。したがって、湿気架橋性ポリウレタン系放射線反応性溶融体は、好ましくは、電子放射線重合性またはUV放射線重合性の成分、光開始剤および、適切な場合は添加剤を含む。
【0025】
湿気架橋性ポリウレタン系反応性溶融体は、好ましくは、硬化前に少なくとも1つの放射線重合性官能基およびNCO基もまた含む。
【0026】
ここで、本発明において、例えば、硬化前のアクリル酸またはスチレンの誘導体内に存在するような種類のオレフィン性不飽和結合が放射線重合性官能基として好ましい。
【0027】
本発明において特に好適で好ましいのはアクリル酸の誘導体であり、例は、アルコール成分中に1〜16個、好ましくは1〜4個のC原子を有するアクリレートおよびメタアクリレートである。
【0028】
該反応性溶融体は、室温で固体であり、本発明により、
1.)1種類以上のポリイソシアネートを、
2.)少なくとも1種類のポリオールおよび
3.)UV放射線重合性または電子放射線重合性基を含有する少なくとも1種類の化合物、好ましくは、イソシアネート反応性基をさらに含有する化合物
4.)所望により開始剤、ならびに
5.)所望により添加剤、例えば、安定化剤、可塑剤、接着性向上剤、充填剤、艶消し剤など
を反応させることによって得られ得る。
【0029】
有用なポリオールは、例えば、少なくとも約200の分子量(Mn)を有する、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネートおよびポリアセタールからなる群より選択されるポリマー、またはその2種類以上の混合物である。該ポリオールは、好ましくは、末端OH基を有する。
【0030】
ポリエステル系のポリオールは、当業者に知られた様式で、酸成分とアルコール成分との重縮合によって、より具体的には、ポリカルボン酸または2種類以上のポリカルボン酸の混合物とポリオールまたは2種類以上のポリオールの混合物との重縮合によって得られ得る。
【0031】
ポリエステル系のポリオールは、液状で非晶質であり得るか、あるいは結晶性であり得る。
【0032】
ポリエステル系のポリオールの調製に適したポリカルボン酸は、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族、芳香族または複素環式の親構造を中心として構築されたものであり得、適切な場合は、少なくとも2つのカルボン酸基に加え、重縮合において非反応性である1つ以上の置換基(例えば、ハロゲン原子またはオレフィン性不飽和結合など)もまた有するものであり得る。適切な場合は、遊離カルボン酸の代わりに、その無水物(それが存在する場合)、またはそのエステルを、C1〜5モノアルコールまたはこれらの2種類以上の混合物との重縮合に用いることも可能である。好適なポリカルボン酸および無水物は、例えば、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、グルタル酸、無水グルタル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水テトラクロロフタル酸、無水エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水グルタル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、ダイマー脂肪酸もしくはトリマー脂肪酸またはその2種類以上の混合物である。適切な場合は、少量の一価脂肪酸を反応混合物中に存在させることが可能である。
【0033】
ポリエステルまたはポリカーボネートを調製するためのジオールとしては、さまざまなポリオールを用いることが可能である。これらは、例えば、1分子あたり2〜4個のOH基を有する脂肪族ポリオールである。OH基は、第1級および第2級両方の結合のものであり得る。好適な脂肪族ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオール、ブタン−1,3−ジオール、ブタン−2,3−ジオール、ブテン−1,4−ジオール、ブチン−1,4−ジオール、ペンタン−1,5−ジオールおよびペンタンジオール異性体、ペンテンジオールもしくはペンチンジオールまたはその2種類以上の混合物、ヘキサン−1,6−ジオールおよびヘキサンジオール異性体、ヘキセンジオールもしくはヘキシンジオールまたはその2種類以上の混合物、ヘプタン−1,7−ジオールおよびヘプタン−、ヘプテン−もしくはヘプチンジオール異性体、オクタン−1,8−ジオールおよびオクタン−、オクテン−もしくはオクチンジオール異性体、ならびに各場合にCH基1つずつ炭化水素鎖を段階的に伸長することにより得られるか、または分枝をその炭素鎖内に導入することによって得られる種類の記載の化合物の高級同族体もしくは異性体またはこれらの2種類以上の混合物が挙げられる。同様に、多価アルコール、例えば、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールまたはソルビトールなどの糖アルコールもしくはグルコース、また、上記の物質とそれ自身とのオリゴマーエーテル、または2種類以上の上記の化合物の互いとの混合物なども適しており、一例は、約2〜約4の重合度を有するポリグリセロールである。多価アルコールにおいて、1個以上のOH基は、1〜約20個のC原子を有する一価カルボン酸でエステル化されていてもよいが、平均して少なくとも2個のOH基は、なお残留しているものとする。上記の多価アルコールは純粋な形態で、または可能な場合は、その合成において得られ得る技術的混合物の形態で使用され得る。
【0034】
ポリオールとして好適なポリエステルの例としては、Degussa社から入手可能なDynacoll製品が挙げられる。ポリエステルとして使用され得るポリオールの分子量は、1000〜10000g/mol、より好ましくは2000〜6000g/molである。
【0035】
本発明において、結晶性および非晶質ポリエステルを使用することは、これらのポリエステルを用いると、非常に短い開放時間およびブロッキングからの速やかな解放を達成することが可能であるため好ましい。
【0036】
ポリオールとして同様に好適であるのは、ポリエーテルポリオールである。ポリエーテルポリオールは、典型的には、少なくとも2個の反応性水素原子を有する出発化合物と、アルキレンオキシドまたはアリーレンオキシド(例は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、テトラヒドロフランもしくはエピクロロヒドリンまたはその2種類以上の混合物である)との反応によって得られる。好適な出発化合物の例は、水、エチレングリコール、プロピレン−1,2−グリコールもしくは−1,3−グリコール、ブチレン−1,4−グリコールもしくは−1,3−グリコール、ヘキサン−1,6−ジオール、オクタン−1,8−ジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ヒドロキシメチルシクロヘキサン、2−メチル−1,3−プロパンジオール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ヘキサン−1,2,6−トリオール、ブタン−1,2,4−トリオール、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、マンニトール、ソルビトール、メチルグリコシド、糖類、フェノール、イソノニルフェノール、レゾルシノール、ヒドロキノン、1,2,2−もしくは1,1,2−トリス(ヒドロキシフェニル)エタン、アンモニア、メチルアミン、エチレンジアミン、テトラ−もしくはヘキサメチレンアミン、トリエタノールアミン、アニリン、フェニレンジアミン、2,4−および2,6−ジアミノトルエンならびにアニリン−ホルムアルデヒド縮合によって得られ得る種類のポリフェニルポリメチレンポリアミンである。この点に関して特に好適であるのは、約250〜約4000の分子量を有するポリプロピレングリコールである。
【0037】
ポリオールとして同様に好適であるのは、ポリアセタールである。ポリアセタールは、例えばグリコール、ジエチレングリコールまたはヘキサンジオールを、ホルムアルデヒドと反応させることにより得られ得る種類の化合物である。また、本発明において有用なポリアセタールは環状アセタールを重合することによっても得られ得る。
【0038】
さらに、ポリオールとして有用であるのはポリカーボネートである。ポリカーボネートは、例えば上記のポリオール、より具体的にはジオール(例えば、プロピレングリコール、ブタン−1,4−ジオールもしくはヘキサン−1,6−ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールもしくはテトラエチレングリコールまたはその2種類以上の混合物)を、例えばジアリールカーボネート、ジフェニルカーボネートまたはホスゲンと反応させることにより得られ得る。
【0039】
ポリオールとして同様に好適であるのは、OH基を有するポリアクリレートである。この種のポリアクリレートは、例えば、OH基を有するエチレン性不飽和モノマーを重合させることにより得られ得る。かかるモノマーは、例えば、エチレン性不飽和カルボン酸と2価アルコール(通常、アルコールをほんのわずかに過剰に存在させる)のエステル化により得られ得る。この目的に適したエチレン性不飽和カルボン酸の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸またはマレイン酸が挙げられる。OH基を有する対応エステルの例としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレートもしくは3−ヒドロキシプロピルメタクリレートまたはその2種類以上の混合物が挙げられる。
【0040】
ポリオールとの反応に適したポリイソシアネートは、平均して2つから最大約4つまでのイソシアネート基を含有する。好適なイソシアネートの例は、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、水素添加MDI(ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、H12−MDI)、キシレンジイソシア
ネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、また、ジ−およびテトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−および2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)ならびにその混合物、より具体的には、約20重量%の2,4−トリレンジイソシアネートおよび80重量%の2,6−トリレンジイソシアネートを含む混合物、また、TDI−ウレトジオン、より具体的には、二量体1−メチル−2,4−フェニレン−ジイソシアネート(TDI−U)およびTDI−尿素;1−メチル−2,4−ジイソシアナートシクロヘキサン、1,6−ジイソシアナート−2,2,4−トリメチルヘキサン、1,6−ジイソシアナート−2,4,4−トリメチルヘキサン、1−イソシアナート−3−イソシアナートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(IPDI)ならびにその異性体および誘導体、特に、二量体、三量体および重合体、また、IPDI−イソシアヌレート(IPDI−T)、塩素化および臭素化ジイソシアネート、リン含有ジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナートフェニルパーフルオロエタン、テトラメトキシブタン−1,4−ジイソシアネート、1,4−ブタンジイソシアネート、1,6−ヘキサンジイソシアネート(HDI)、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、エチレン−ジイソシアネート、フタル酸ビスイソシアナートエチル;反応性ハロゲン原子を含有するポリイソシアネート、例えば、1−クロロメチルフェニル−2,4−ジイソシアネート、1−ブロモエチルフェニル2,6−ジイソシアネート、3,3−ビスクロロメチルエーテル4,4’−ジフェニルジイソシアネートなどである。また、例えば、2molのヘキサメチレンジイソシアネートと1モルのチオジグリコールまたはジヒドロキシジヘキシルスルフィドとの反応によって得られ得る種類の硫黄含有ポリイソシアネートも有用である。他のジイソシアネートは、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアナートブタン、1,2−ジイソシアナートドデカンおよびダイマー脂肪酸ジイソシアネートである。
【0041】
本発明において特に好ましいのは、脂肪族イソシアネート、例えば、IPDI、HDI、TMXDIおよびH12−MDIならびにその誘導体である。ポリイソシアネートとして、プレポリマー、すなわち上記のイソシアネートと上記のポリエーテルポリオールとの反応生成物を使用することもまた可能である。これらのプレポリマーは、上記のポリエーテルポリオールを過剰の上記のポリイソシアネートと、既知の様式で反応させることにより調製される。ポリエーテルポリオール成分として、ポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドを使用することが好ましい。
【0042】
本発明において、前述のポリイソシアネートは、単独で、または記載のポリイソシアネート2種類以上の混合物として使用され得る。本発明において、1種類のポリイソシアネートまたは2種類もしくは3種類のポリイソシアネートの混合物を使用することが好ましい。
【0043】
使用される放射線重合性成分は、好ましくは、電子放射線および/またはUV放射線によって重合可能な1つ以上の官能基を含有するあらゆる化合物であり得る。ここで、オレフィン性不飽和官能基を含有する化合物が好ましい。
【0044】
特に好ましいのは、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸およびマレイン酸の誘導体である。これらの誘導体は、好ましくは、イソシアネート反応性基、例えば、ヒドロキシル基、アミン基およびメルカプト基を含有するものであり得る。かかる化合物の例は、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートおよび3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートである。これらは、例えば、アクリル酸をジオールと反応させることにより得られる。
【0045】
イソシアネート反応性基を有する放射線重合性化合物の他に、イソシアネート反応性基をもたないこの種の化合物を少なくとも一部使用することも可能である。その例は、メチル(メタ)アクリレート、スチレン、フェノキシエチルアクリレートなどである。
【0046】
しかしながら、1分子あたり2つ以上のUV硬化性基および/または電子線硬化性基を有する放射線硬化性化合物を使用することもまた可能であり、好ましい。その例は、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレートおよびエポキシアクリレートである。これらの原料は、例えば、UCB社からEbecrylの名称で、またはRahn社からGenomerおよびMiramerの名称で市販品として入手可能である。
【0047】
フリーラジカル反応のための光開始剤として、260前後〜480nm前後の波長を有する光を照射すると、オレフィン性不飽和二重結合のフリーラジカル重合を開始することができる化合物および組成物を使用することが可能であり、好ましい。原則的に、湿気架橋性ポリウレタン系のUV反応性溶融体と適合性である、すなわち、少なくとも大部分が均質な混合物をもたらす市販のあらゆる光開始剤が好適性を有する。
【0048】
例えば、これらは、NorrishタイプIのフラグメンテーションを示すあらゆる物質である。その例は、ベンゾフェノン、カンフルキノン、Quantacure(製造業者:International Bio−Synthetics)、Kayacure
MBP(製造業者:日本化薬)、Esacure BO(製造業者:Fratelli
Lamberti)、Trigonal 14(製造業者:Akzo)、Irgacure TMシリーズ、Darocure TMシリーズもしくはSpeedcure TMシリーズ(製造業者:Ciba−Geigy)の光開始剤、Darocure TM 1173および/またはFi−4(製造業者:Eastman)である。これらの中でも、Irgacure TM 651、Irgacure TM 369、Irgacure TM 184、Irgacure TM 907、Irgacure TM 1850、Irgacure TM 1173 (Darocure TM 1173)、Irgacure TM 1116、Speedcure TM EDB、Speedcure TM ITX、Irgacure TM 784もしくはIrgacure TM 2959またはこれらの2種類以上の混合物が特に好適性を有する。
【0049】
好ましいのは、以下の群:ベンゾインおよびその誘導体、また、フェニルヒドロキシアルカノン生成物ならびにチオキサントン生成物由来の光開始剤である。
【0050】
さらにまた、硬化させるため、またはある種の特性を変化させるために、溶融体において添加剤を使用することが賢明であり得る。このような添加剤は、熱可塑性ポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル(EVA)、アタクチックポリオレフィン(APAO)およびポリアクリレートであり得る。さらにまた、粘着性樹脂、ワックス、可塑剤、充填剤および艶消し剤、補助剤、加速剤、接着促進剤、顔料、触媒、安定化剤および/または溶媒を存在させることも可能である。安定化剤としては、特に、既知の光安定化剤および酸化安定化剤および/または加水分解安定化剤を使用することが可能である。
【0051】
放射線硬化性溶融体は、少なくとも1種類のポリイソシアネートを少なくとも1種類のポリオールと、ポリオールのイソシアネート反応性基に対するイソシアネート基のモル比を1.1:1〜5:1として反応させることにより調製され得る。
【0052】
このようにして調製されるプレポリマーAは、0.5〜20%のNCO含量を有する。
その後、イソシアネート反応性基を有する放射線硬化性化合物を、イソシアネート末端プレポリマーAと反応させる。また、この第2工程では、1種類または複数種類の開始剤、適切な場合は、イソシアネート反応性基を含有しない上記の化合物、また、適切な場合
は、安定化剤、充填剤などの添加剤を添加することも可能である。
【0053】
第2の反応は、反応性溶融体の組成物が、該組成物全体に対して0.25〜20%、好ましくは0.5〜10%、より好ましくは1〜5%のイソシアネートをなお含有するように行なわれる。
【0054】
調製の第2の実施形態では、少なくとも1種類のポリオールを第1のポリイソシアネートと、ポリオールのイソシアネート反応性基に対するイソシアネート基のモル比を5:1〜1:5として反応させる。次いで、第2段階では反応を第2のポリイソシアネートを用いて、このようにして調製されるプレポリマーBが0.5〜20%のNCO含量を有するように行なう。
【0055】
その後、イソシアネート反応性基を有する放射線硬化性化合物を、イソシアネート末端プレポリマーと反応させる。また、この第3工程では、1種類または複数種類の開始剤、適切な場合は、イソシアネート反応性基を含有しない上記の放射線重合性化合物、また、適切な場合は、安定化剤、充填剤などの補助剤を添加することも可能である。
【0056】
該反応は、反応性溶融体の組成物が、該組成物全体に対して0.25〜20%、好ましくは0.5〜10%、より好ましくは1〜5%のイソシアネートをなお含有するように行なわれる。
【0057】
調製の第3の実施形態では、少なくとも1種類のポリオール、イソシアネート反応性基を有する放射線硬化性化合物、1種類または複数種類の開始剤、適切な場合は、イソシアネート反応性基を含有しない上記の放射線重合性化合物、また、適切な場合は、安定化剤、充填剤などの補助剤を混合し、少なくとも1種類のポリイソシアネートと反応させる。
【0058】
この反応は、反応性溶融体の組成物が、該組成物全体に対して0.25〜20%、好ましくは0.5〜10%、より好ましくは1〜5%のイソシアネートをなお含有するように行なわれる。
【0059】
調製の第4の実施形態では、少なくとも1種類のポリオール、イソシアネート反応性基を有する放射線硬化性化合物、1種類または複数種類の開始剤、適切な場合は、イソシアネート反応性基を含有しない上記の放射線重合性化合物、また、適切な場合は、安定化剤、充填剤などの補助剤を混合し、第1のポリイソシアネートと、ポリオールのイソシアネート反応性基に対するイソシアネート基のモル比を5:1〜1:5として反応させる。
【0060】
次いで、第2工程では反応を第2のポリイソシアネートを用いて、反応性溶融体の組成物が、該組成物全体に対して0.25〜20%、好ましくは0.5〜10%、より好ましくは1〜5%のイソシアネートをなお含有するように行なう。
【0061】
反応性溶融体の組成物全体に対する放射線重合性成分の総量は、2〜75%、好ましくは5〜50%であるのがよい。放射線重合性成分のこの総量は、イソシアネート反応性基を含有する化合物およびイソシアネート反応性基を含有しない化合物で構成される。
【0062】
表面が少なくとも部分的にシールされた物体のさらなる処理が、できるだけ早く行なわれ得る位置を得るため、放射線照射は、典型的には、溶融体層の完全な硬化前に行なう。これにより、層に対して、該処理を可能にする部分的強度がもたらされる。次いで、ポリウレタンの湿気架橋による完全な硬化が行なわれる。
【0063】
曝露は、好ましくは、溶融体層の適用後24時間以内に行なう。曝露は、好ましくはイ
ンラインで、すなわち物体への溶融体の適用直後に行なう。
【0064】
放射線照射は、慣用的な装置の補助により行なってもよい。例えば、UV照射はUVランプを用いて行なわれる。
【0065】
本発明の方法は、非常に多種多様な任意の物体表面、またはその少なくとも一部分のシーリングのために使用され得、このような物体も同様に、本発明によって提供される。
【0066】
ラミネート、ウッドブロックフローリング用の部材、また、そのパネル用材の表面だけでなく、例えば、家具または家具の部品、また、ベニアの表面を少なくとも部分的にシールするためにも使用され得る。しかしながら、原則的には、任意の所望の物体の表面が、本発明の方法によってシールされること、および任意の物体が本発明によるシーリング層を有し得ることを強調しておく。
【0067】
物体の表面の一部分は、好ましくは、該物体の外面の1つの表面全体、外面の諸部分の和およびその外面の反対側の面の諸部分の和(好ましくは、該外面の本質的に全体を構成する)であり、さらに好ましくは、該諸画分の和は、少なくとも75%、より好ましくは90%、特に好ましくは95%である。
【0068】
したがって、実質的に二次元に延在する物体(例えば、平行であり得る2つの対向する面および周縁部を有する板材形態の物体またはベニアなど)の場合は、1つの面は、好ましくは、本発明による表面の部分を構成する。
【0069】
対象となる物体は、好ましくは、シーリングに関して特に厳格な要件に支配されるラミネートフローリングもしくはウッドブロックフローリング用の部材、また、パネル用材またはベニアである。また、物体は金属シートであり得る。
【0070】
シールされる物体の表面は、少なくとも部分的に、木材または木材様材料、例えば、ベニアもしくはファイバボード(例えば、紙)など、金属、プラスチック、また、無機物質で構成されたものであり得る。好ましくは、該表面は、少なくとも一部が木材、木材様材料またはプラスチックで構成されたものである。
【0071】
本発明は、さらに、物体の表面の少なくとも一部分をシールするための、湿気架橋性ポリウレタン系放射線硬化性溶融体の使用を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)湿気架橋性ポリウレタン系放射線硬化性溶融体の層を、物体の表面の少なくとも一部分に適用する工程;および
(b)溶融体層に放射線照射する工程
を含む、物体の表面の少なくとも一部分のシーリング方法。
【請求項2】
前記層を、ロール、ドクターブレードもしくはスロットダイを用いて、または吹付けによって適用することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
溶融体層の表面が平滑化されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
溶融体層が5μm〜200μmの範囲の厚さで適用されることを特徴とする、請求項1〜3いずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
溶融体層が単層で適用されることを特徴とする、請求項1〜4いずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
硬化前の溶融体が、少なくとも1つの放射線重合性官能基だけでなくNCO基もまた含有することを特徴とする、請求項1〜4いずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
硬化前の溶融体が、アクリル酸誘導体、メタクリル酸誘導体またはスチレン誘導体を含むことを特徴とする、請求項1〜6いずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
シールされる物体の表面が、少なくとも部分的に、木材、ベニアもしくはファイバボードなどの木材様材料、例えば、金属、プラスチックまたは無機物質で構成されていることを特徴とする、請求項1〜7いずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
物体が、ラミネートフローリング材であるか、またはウッドブロックフローリング材、パネル用材もしくはベニア、家具用部材もしくは家具であることを特徴とする、請求項1〜8いずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
放射線照射を、ポリウレタンの湿気架橋による溶融体層の完全な硬化前に行なうことを特徴とする、請求項1〜9いずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
放射線照射を、溶融体層の適用後24時間以内に行なうことを特徴とする、請求項1〜10いずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
湿気架橋性ポリウレタン系放射線硬化性溶融体の層を含む、表面上の少なくとも一部分にシーリング層を有する物体。
【請求項13】
溶融体層が5μm〜200μmの範囲の厚さを有することを特徴とする、請求項12に記載の物体。
【請求項14】
溶融体層が単層で適用されていることを特徴とする、請求項12または13に記載の物体。
【請求項15】
硬化前の溶融体が、少なくとも1つの放射線重合性官能基だけでなくNCO基もまた含有することを特徴とする、請求項12〜14いずれか1項に記載の物体。
【請求項16】
硬化前の溶融体が、アクリル酸誘導体、メタクリル酸誘導体またはスチレン誘導体を含むことを特徴とする、請求項12〜15いずれか1項に記載の物体。
【請求項17】
シールされる物体の表面が、少なくとも部分的に、木材、ベニアもしくはファイバボードなどの木材様材料、例えば、金属、プラスチックまたは無機物質で構成されていることを特徴とする、請求項12〜16いずれか1項に記載の物体。
【請求項18】
物体が、ラミネートフローリング材であるか、またはウッドブロックフローリング材、パネル用材もしくはベニア、家具用部材もしくは家具または金属シートであることを特徴とする、請求項12〜17いずれか1項に記載の物体。
【請求項19】
溶融体層の放射線硬化が、ポリウレタンの湿気架橋による反応性溶融体の完全な硬化前に行なわれたことを特徴とする、請求項12〜18いずれか1項に記載の物体。
【請求項20】
放射線照射が、溶融体層の適用後24時間以内に行なわれたことを特徴とする、請求項12〜19いずれか1項に記載の物体。
【請求項21】
物体の表面の少なくとも一部分をシールするための湿気架橋性ポリウレタン系放射線硬化性溶融体の使用。

【公表番号】特表2008−534275(P2008−534275A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−504783(P2008−504783)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【国際出願番号】PCT/EP2006/061436
【国際公開番号】WO2006/106143
【国際公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(505411701)クレープヒェミー・エム・ゲー・ベッカー・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディートゲゼルシャフト (6)
【氏名又は名称原語表記】KLEBCHEMIE M.G. BECKER GMBH + CO. KG
【Fターム(参考)】