説明

多目的ファントム及びその使用方法

【課題】診断から治療までの多用途に兼用することができ、診断から治療までのプロセスを同一の幾何学的条件下で総合的に評価することが可能な多目的ファントム及びその多目的ファントムの使用方法を得る。
【解決手段】密閉蓋20は複数の取付孔26を密閉した状態でファントム容器12を密閉することができる。取付孔26には、使用目的に応じた器具が着脱可能に取り付け可能となっている。また、密閉蓋20の内側に取り付け可能な器具用基板30には、人体組織と等価な組織等価物質が収納される複数の収納容器40が取り付け可能であると共に、密閉蓋20に取り付けられた前記使用目的に応じた器具が貫通する貫通穴32が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多目的ファントム及び多目的ファントムの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放射線治療や放射線診断に従事するユーザーは、放射線治療で必要とされるパラメータの取得、MRI、CT、PET等での画質評価等でそれぞれの目的に応じてファントムを用意してきた。例えば、放射線治療では、患者体内の不均質な状態を均質媒質へ置き換え、体内での放射線の線量分布を計算して治療計画を立案している。この際、予め撮影された患部を含むCT画像が用いられ、そのCT画像より得られるCT値を用いて均質媒質への換算を行っている。このように、CT画像より得られるCT値を用いて不均質媒質を均質媒質へ置き換えるためには、患者体内で想定される様々な物質の「電子密度とCT値の相関テーブル」が必要になる。そのために、電子密度ファントムが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
電子密度ファントム内には、人体を構成する様々な物質(組織等価物質)が封入されている。組織等価物質の例としては、筋肉等価物質(水)、肺等価物質(空気)、骨等価物質(リン酸水素二カリウム水溶液)、及び脂質等価物質(エタノール)等が挙げられる。この電子密度ファントムのCT画像より各々の物質のCT値を測定し、物質の電子密度と関連付けることで、電子密度とCT値の相関テーブルが作成される。
【0004】
近年の放射線治療は、強度変調放射線治療(IMRT)、トモセラピー、サイバーナイフ、及び粒子線治療等、従来の放射線治療と比べて高度化が進み、一連の治療プロセスが複雑化してきている。そのため、治療計画装置等で多種多様に亘る計算を行い、治療計画を立案している。この過程は複雑、かつ、その一部がブラックボックスとなっているため、ユーザーはCT撮影等の診断から治療までの一連のプロセスを、物理学的かつ生物学的に総合評価する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭60−159357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の電子密度ファントムや画質評価を目的としたJISファントム(JIS Z4923規格準拠品)等は、既に製品として販売されている。しかし、これらのファントムは独立した一つの製品となっているため、同一の幾何学的条件下で物理学的かつ生物学的に総合評価することができない。すなわち、現在製品として販売されているファントムは、それぞれの用途に特化したファントムとなっており、診断から治療までのすべてをカバーするファントムは存在しない。また、放射線治療効果の検証・評価には生物学的な評価が欠かせないが、そのような生物学的な評価を行うためにファントム内で細胞照射を実現するようなファントムは存在しない。
【0007】
本発明は、診断から治療までの多用途に兼用することができ、診断から治療までのプロセスを同一の幾何学的条件下で総合的に評価することが可能な多目的ファントム及びその多目的ファントムの使用方法を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の多目的ファントムは、密閉可能な密閉容器と、使用目的に応じた器具が着脱可能に取り付け可能な複数の取付孔が穿設されると共に、前記複数の取付孔を密閉した状態で前記密閉容器を密閉することが可能な密閉蓋と、人体組織と等価な組織等価物質が収納される複数の収納容器が取り付け可能であると共に、前記密閉蓋の内側に取り付け可能で、かつ前記密閉蓋に取り付けられた前記使用目的に応じた器具が貫通する貫通部が設けられた器具用基板と、を含んで構成されている。
【0009】
複数の収納容器としては、肺等価物質が収納される肺等価物質収納容器、骨等価物質が収納される骨等価物質収納容器、及び脂肪等価物質が収納される脂肪等価物質収納容器を用いることができる。これらの収納容器にそれぞれの組織等価物質が収納された状態で、器具用基板を介して密閉蓋の内側に収納容器を取り付けた後、密閉蓋で密閉容器が密閉された状態でCT撮影によるCT断層画像を取得すれば、そのCT断層画像を、放射線照射位置の決定及び放射線量の理論計算に用いる計算機(治療計画装置)内へ取り込むことにより、密閉容器内の放射線照射位置の決定、及びその照射位置での放射線量を計算することが可能となる。
【0010】
また、使用目的に応じた器具としては、密閉容器内に照射された放射線量を計測する放射線計測器、及び放射線が照射される試料を収納した試料容器を支持する支持具を用いることができる。このため、密閉蓋の取付孔に放射線計測器を取り付けることで、密閉容器内において所定の放射線照射位置へ放射線を照射した際の該放射線照射位置の放射線量が計測可能となる。また、放射線計測器を取り付けた取付孔に、放射線計測器に代えて、放射線が照射される試料が収納された試料容器を支持する支持具が取り付けられ、放射線照射位置に試料を位置させた状態で試料に放射線が照射されることにより、生物学的効果を評価することが可能となる。
【0011】
また、密閉蓋の内側にジグ取付用基板が取り付け可能になっており、ジグ取付用基板には複数の座標確認用ジグが取り付け可能になっている。このため、密閉容器の任意の位置に、複数の座標確認用ジグが配置可能になっている。
【0012】
本発明の多目的ファントムの使用方法は、密閉可能な密閉容器と、使用目的に応じた器具が着脱可能に取り付け可能な複数の取付孔が穿設されると共に、前記複数の取付孔を密閉した状態で前記密閉容器を密閉することが可能な密閉蓋と、肺等価物質が収納される肺等価物質収納容器、骨等価物質が収納される骨等価物質収納容器、及び脂肪等価物質が収納される脂肪等価物質収納容器を含む複数の収納容器と、前記複数の収納容器が取り付け可能であると共に、前記密閉蓋の内側に取り付け可能で、かつ前記密閉蓋に取り付けられた前記使用目的に応じた器具が貫通する貫通部が設けられた器具用基板と、を含む多目的ファントムの使用方法であって、肺等価物質が収納された前記肺等価物質収納容器、骨等価物質が収納された前記骨等価物質収納容器、及び脂肪等価物質が収納された前記脂肪等価物質収納容器が取り付けられた前記器具用基板を前記密閉蓋の内側に取り付けると共に、前記密閉容器に筋肉等価物質を収納し、前記密閉容器内の筋肉等価物質に、肺等価物質が収納された前記肺等価物質収納容器、骨等価物質が収納された前記骨等価物質収納容器、及び脂肪等価物質が収納された前記脂肪等価物質収納容器を浸漬して前記密閉蓋で前記密閉容器を密閉した状態でCT撮影によるCT断層画像を取得する第1ステップと、前記第1ステップで取得されたCT断層画像を治療計画装置内へ取り込み、前記密閉容器内の放射線照射位置、及び該放射線照射位置での放射線量を決定する第2ステップと、前記密閉蓋の前記取付孔に前記放射線計測器を取り付け、前記第2ステップで決定された放射線照射位置へ放射線を照射した際の該放射線照射位置の放射線量を計測する第3ステップと、前記放射線計測器を取り外した前記取付孔に、前記放射線計測器に代えて、放射線が照射される細胞が収納された細胞収納用容器を支持した支持具を取り付け、前記放射線照射位置に前記細胞を位置させた状態で前記細胞に放射線を照射することにより生物学的効果を評価する第4ステップと、を含んでいる。
【0013】
すなわち、第1ステップでは、肺等価物質が収納された肺等価物質収納容器、骨等価物質が収納された骨等価物質収納容器、及び脂肪等価物質が収納された脂肪等価物質収納容器が取り付けられた器具用基板を密閉蓋の内側に取り付けると共に、密閉容器に筋肉等価物質を収納し、密閉容器内の筋肉等価物質に、肺等価物質が収納された肺等価物質収納容器、骨等価物質が収納された骨等価物質収納容器、及び脂肪等価物質が収納された脂肪等価物質収納容器を浸漬して密閉蓋で密閉容器を密閉した状態でCT撮影によるCT断層画像を取得する。第2ステップでは、第1ステップで取得されたCT断層画像を治療計画装置内へ取り込み、密閉容器内の放射線照射位置、及び該放射線照射位置での放射線量を決定する。第3ステップでは、密閉蓋の取付孔に放射線計測器を取り付け、第2ステップで決定された放射線照射位置へ放射線を照射した際の該放射線照射位置の放射線量を計測する。第4ステップでは、放射線計測器を取り外した取付孔に、放射線計測器に代えて、放射線が照射される細胞が収納された細胞収納用容器を支持した支持具を取り付け、放射線照射位置に細胞を位置させた状態で細胞に放射線を照射することにより生物学的効果を評価する。このように、多目的ファントムは診断から治療までの多用途に兼用される。
【0014】
また、多目的ファントムの使用方法は、前記多目的ファントムに、複数の座標確認用ジグと、前記複数の座標確認用ジグが取り付け可能で、かつ前記密閉蓋の内側に取り付け可能なジグ取付用基板と、を設け、前記複数の座標確認用ジグが取り付けられた前記ジグ取付用基板を前記密閉蓋の内側に取り付け、前記密閉蓋で前記密閉容器の開口を閉鎖した状態で、CT撮影装置が持つ座標系をもとに前記多目的ファントムをセットアップし、CT撮影によるCT断層画像を取得する第5ステップと、前記第5ステップで取得されたCT断層画像を前記治療計画装置内へ取り込み、前記治療計画装置が持つ座標系と、前記CT撮影装置が持つ座標系の一致を確認する第6ステップと、前記治療計画装置によって計算された前記放射線照射位置の座標と、実際に放射線照射を実行する放射線照射場(治療室等)が持つ座標系の一致を確認する第7ステップと、をさらに含んでもよい。
【0015】
すなわち、第5ステップでは、複数の座標確認用ジグが取り付けられたジグ取付用基板を密閉蓋の内側に取り付け、密閉蓋で密閉容器の開口を閉鎖した状態で、CT撮影装置が持つ座標系をもとに前記多目的ファントムをセットアップし、CT撮影によるCT断層画像を取得する。第6ステップでは、第5ステップで取得されたCT断層画像を治療計画装置内へ取り込み、治療計画装置が持つ座標系と、CT撮影装置が持つ座標系の一致を確認する。第7ステップでは、治療計画装置によって計算された放射線照射位置の座標と、実際に放射線を照射する治療室等が持つ座標系の一致を確認する。これにより、診断に該当するCT撮影装置から治療に該当する放射線照射場(治療室等)までの一連プロセスの位置座標が確認される。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明の多目的ファントム及び多目的ファントムの使用方法によれば、診断から治療までの多用途に兼用することができ、診断から治療までのプロセスを同一の幾何学的条件下で総合的に評価することが可能になるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る多目的ファントムの概略構成を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る多目的ファントムの密閉蓋を示す平面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る多目的ファントムの器具用基板を示す平面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る多目的ファントムを収納容器が取り付けられた状態で示す図である。図4(A)は縦断面図(図4(B)の4A−4A線に沿った断面図)である。図4(B)は平面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る多目的ファントムの放射線計測器ジグを示す図である。図5(A)は平面図(図5(B)の矢印5A方向視の図)である。図5(B)は縦断面図(図5(A)の5B−5B線に沿った断面図)である。
【図6】本発明の一実施形態に係る多目的ファントムの密閉蓋へ放射線計測器が取り付けられた状態を示す断面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る多目的ファントムの照射ジグによる細胞収納用容器の支持状態を示す斜視図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る多目的ファントムに器具等が取り付けられた状態を示す縦断面図である。図8(A)は収納容器及び放射線計測器等が取り付けられた状態を示す。図8(B)は収納容器及び照射ジグ等が取り付けられた状態を示す。
【図9】本発明の一実施形態に係る多目的ファントムを座標確認用ジグが取り付けられた状態で示す図である。図9(A)は縦断面図(図9(B)の9A−9A線に沿った断面図)である。図9(B)は平面図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る多目的ファントムのジグ取付用基板を示す平面図である。
【図11】図9の座標確認用ジグをX線撮影した場合の撮影イメージ図である。図11(A)は側面側より撮影した場合の図である。図11(B)は図9(A)の下方側から撮影した場合の図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態に係る多目的ファントム及び多目的ファントムの使用方法について図1〜図11を用いて説明する。
【0019】
(多目的ファントムの構成)
図1には、多目的ファントムの概略構成が分解斜視図で示されている。なお、図1では詳細部を一部簡略化ないし省略して図示している。また、図4には、収納容器が取り付けられた状態の多目的ファントムが示されており、図4(A)は縦断面図(図4(B)の4A−4A線に沿った断面図)、図4(B)は平面図でそれぞれ示されている。なお、図4(A)において二点鎖線で示された構成要素は図4(A)の切断面より手前側に配置された構成要素である。
【0020】
これらの図に示されるように、多目的ファントム10は、密閉可能な密閉容器としてのファントム容器12を備えている。ファントム容器12は、例えば、放射線の透過率が高い透明なプラスチック(本実施形態ではアクリル樹脂)で構成され、有底の略円筒形状に形成されている。多目的ファントム10が例えば電子密度ファントムとして用いられる場合、ファントム容器12内には、人体を構成する筋肉の等価物質(筋肉等価物質)の水が充填される。
【0021】
ファントム容器12には、その開口部14からは開口外側へ延設されたフランジ部16が形成されている。フランジ部16の上面には、Oリング取付溝16Aが形成されており、このOリング取付溝16Aは、フランジ部16の外周に沿って全周に亘る環状に形成されている。Oリング取付溝16Aには、Oリング18(ゴムパッキン、広義には「シール手段」として把握される要素である。)が嵌め込まれて装着されている。
【0022】
ファントム容器12を密閉するための密閉蓋20は、全体としては略円板状に形成され、図4(A)に示されるように、密閉蓋20の外周端部はファントム容器12のフランジ部16に重ね合わせられてボルト22A及びナット22Bによって固定される。なお、ファントム容器12のフランジ部16と密閉蓋20との間にOリング18を配設する構成が採用されることで、ファントム容器12及び密閉蓋20に多少変形(所謂ソリ)が生じても、密閉蓋20を閉める際にOリング18は閉まり性の妨げにはならず、密閉蓋20の閉めやすさへの影響は殆どない。
【0023】
密閉蓋20の外周端部側の外面の所定部位には、気泡収集ケース部24が形成されており、ファントム容器12を密閉蓋20で密閉した状態で、気泡収集ケース部24の内室24Aがファントム容器12の本体室12Aに連通するようになっている。これによって、ファントム容器12内で発生した気泡を気泡収集ケース部24の内室24Aに収集することが可能である。
【0024】
図2には、密閉蓋20が平面図にて示されている。図1及び図2に示されるように、密閉蓋20の中央部に複数の(本実施形態では五個の)取付孔26が穿設(板厚方向に貫通形成)されている。これらの取付孔26は、タップ加工が施されたネジ孔として形成されており、取付孔26の内面には雌ネジ部26A(図1参照)が形成されている。雌ネジ部26Aによって、取付孔26には、使用目的に応じた器具が着脱可能に取り付け可能とされている。使用目的に応じた器具には、詳細後述する放射線計測器42(図8(A)参照)、支持具としての照射ジグ52(図8(B)参照)が含まれる。図6に示されるように、取付孔26には、密閉蓋20の外面側(図中上側)に座繰り部26Bが形成されている。
【0025】
また、図4に示されるように、取付孔26に使用目的に応じた器具を取り付けない場合には、取付孔密閉用のネジキャップ(ジグ)25の雄ネジ部25A(図1参照)が取付孔26の雌ネジ部26A(図1参照)に螺合される。ここで、図1に示されるネジキャップ25の軸部回りの頭部25B寄りにはシール材としてのOリング25Cが配置されており、ネジキャップ25の雄ネジ部25Aが取付孔26の雌ネジ部26Aに螺合されることで、取付孔26が密閉される。取付孔26を密閉することによって、密閉蓋20で複数の取付孔26を密閉した状態でファントム容器12を密閉することが可能となっている。
【0026】
図4(A)に示されるように、密閉蓋20の内側(内面側)には、複数のナット28Aが埋設されて固着されており、ボルト28Bによって器具用基板(器具用ブラケット)30が取り付け可能とされている。すなわち、図1に示される器具用基板30のボルト挿通孔30Aを貫通するボルト28Bがワッシャ28Cに挿通されてナット28Aに螺合されることで、密閉蓋20の内面側に器具用基板30が取り付けられる構成になっている。なお、ナット28Aに代えて、密閉蓋20の内側(内面側)にネジ穴部が直接形成されていてもよい。
【0027】
図3には、器具用基板30が平面図にて示されている。図3に示されるように、器具用基板30は略円板状とされ、中央部側にクロス状(十字状)の貫通穴32が形成されている。なお、本実施形態では、一例として、中央部側にクロス状の貫通穴32を形成したが、貫通穴(貫通部)の加工位置およびその形状は他の形状としてもよい。図4(B)に示されるように、この貫通穴32は、密閉蓋20の複数の取付孔26の位置に対応する領域に形成されている。これによって、密閉蓋20に取り付けられた使用目的に応じた器具が貫通穴32を貫通するようになっている。
【0028】
また、図3に示されるように、器具用基板30には、複数の設置孔34が貫通穴32を除くほぼ全域の縦横方向に等間隔に形成されている。図1に示されるように、設置孔34は、ボルト挿通孔とされており、ボルト36によって、複数の収納容器40が器具用基板30の目的とする位置に取り付け可能とされている。すなわち、図4(A)に示されるように、収納容器40は容器部140とキャップ部240とで構成されると共にキャップ部240にネジ穴部が形成され、ボルト36が器具用基板30の設置孔34を貫通して収納容器40の前記ネジ穴部の雌ネジ部に螺合されれば、収納容器40は器具用基板30に取り付けられる。
【0029】
多目的ファントム10が電子密度ファントムとして用いられる場合、収納容器40内には人体組織と等価な組織等価物質(CT値測定試料)が収納される。組織等価物質の例として、肺等価物質(例えば、空気)、骨等価物質(例えば、リン酸水素二カリウム水溶液)、脂質等価物質(例えば、エタノール)等が挙げられる。前述した複数の収納容器40としては、図1に示されるように、肺等価物質が収納される肺等価物質収納容器40A、骨等価物質が収納される骨等価物質収納容器40B、及び脂肪等価物質が収納される脂肪等価物質収納容器40Cを挙げることができる。
【0030】
一方、図8(A)には、多目的ファントム10に放射線計測器42等を取り付けた状態が図4(A)と同様の位置で切断した断面図にて示されている。図8(A)に示される放射線計測器42は、ファントム容器12内に照射された放射線量を計測する計測器であり、放射線計測器ジグ44を介して、密閉蓋20の取付孔26に取り付けられる。図5には放射線計測器ジグ44が示されており、図5(A)は平面図、図5(B)は縦断面図(図5(A)の5B−5B線に沿った断面図)である。
【0031】
これらの図に示されるように、放射線計測器ジグ44は、貫通孔46が形成された略筒状に形成され、図5(B)に示されるように、密閉蓋20の取付孔26へ挿入されて取り付けられる挿入部44Aを備えている。挿入部44Aの外周面には、密閉蓋20の取付孔26の雌ネジ部26Aに螺合可能な雄ネジ部144Aが形成されており、この雄ネジ部144Aが取付孔26の雌ネジ部26Aに螺合することで、放射線計測器ジグ44の挿入部44Aが密閉蓋20の取付孔26へ取り付けられる。
【0032】
また、放射線計測器ジグ44の挿入部44Aの軸線方向一端側には、拡径部44Bが設けられている。拡径部44Bは、挿入部44Aよりも外径が大きく形成されると共に、密閉蓋20におけるファントム容器12(図8(A)参照)側とは反対側に配置される。この拡径部44Bと挿入部44Aとの境界部には、平面視で環状のOリング取付溝44Cが形成され、このOリング取付溝44CにOリング48Aが装着されている。
【0033】
また、拡径部44Bには、挿入部44A側とは反対側に貫通孔46の一端側を構成する座繰り孔46Aが形成されている。座繰り孔46Aの底面の径方向外側の部位には、Oリング取付溝46Zが形成されており、このOリング取付溝46ZにOリング48Bが装着されている。座繰り孔46Aの内周面には雌ネジ部146Aが形成されており、放射線計測器42(図6参照)の取付用となっている。
【0034】
図6に示されるように、放射線計測器42は、長尺状の本体部に電離箱42Aを備え、電離箱42Aに隣接して取付部42Bを備えると共に、取付部42Bに対して電離箱42Aとは反対側に取付部42Bよりも小径で放射線計測器ジグ44の貫通孔46からファントム容器12(図8(A)参照)内に挿入される棒状の挿入部42Cを備えている。取付部42Bの外周面には、雄ネジ部142Bが形成されており、雄ネジ部142Bは、放射線計測器ジグ44の雌ネジ部146Aに螺合可能とされている。
【0035】
以上により、図8(A)に示されるように、放射線計測器42は、放射線計測器ジグ44によってファントム容器12内に配置可能とされている。これにより、CT断層画像撮影により得られるCT断層画像を基に、放射線量の理論計算を行うソフトウェア(治療計画計算機)上で求められた照射位置での放射線量を、放射線計測器42での計測により確認することができる。換言すれば、多目的ファントム10は、放射線量の理論計算を行うソフトウェア(治療計画計算機)での計算結果を、放射線計測器42による実測にて検証可能なファントムとして用いることができ、後述の細胞照射時の放射線量を正確に求めることが可能なファントムである。
【0036】
また、図8(B)には、多目的ファントム10に照射ジグ52等を取り付けた状態が図8(A)と同様の位置で切断した断面図にて示されている。図8(B)に示されるように、密閉蓋20の取付孔26の一つには、照射ジグ52を介して試料容器としての細胞収納用容器50が取り付けられる。細胞収納用容器50は、容器部150とキャップ部250とで構成され、細胞収納用容器50の容器部150内には、放射線が照射される試料としての細胞(生物試料)が収納される。なお、本実施形態では、細胞を収納した細胞収納用容器50が照射ジグ52を介して密閉蓋20の取付孔26に取り付けられるが、細胞収納用容器50と同様の構造の試料容器が化合物や試薬等の化学試料、X線フィルム等の材料を収納した状態で照射ジグ52を介して密閉蓋20の取付孔26に取り付けられてもよい。
【0037】
図7には、照射ジグ52が細胞収納用容器50を支持する状態が斜視図にて示されている。図7に示されるように、照射ジグ52は、短柱状の頭部54を備えると共に、この頭部54の軸線方向一端側から同軸的かつ一体に延設された取付部56を備えている。この取付部56は、頭部54に比べて小径とされた短円柱状に形成されており、図8(B)に示されるように、密閉蓋20の取付孔26へ挿入されて取り付けられる。取付部56の外周面には、取付孔26の雌ネジ部26A(図6参照)に螺合可能な雄ネジ部56Aが形成されている。この雄ネジ部56Aが取付孔26の雌ネジ部26A(図6参照)に螺合することで、照射ジグ52が密閉蓋20の取付孔26へ取り付けられるようになっている。なお、取付部56と頭部54との境界部にシール部材(Oリング)を設ける構成にすることが好ましい。
【0038】
また、照射ジグ52においては、細胞収納用容器50を挟持可能な支持具本体58が取付部56に一体的に設けられており、照射ジグ52が密閉蓋20の取付孔26へ取り付けられた状態では、支持具本体58がファントム容器12内に配置されるようになっている。図7に示されるように、支持具本体58は、可撓性を備えると共に、基端部58A側(取付部56側)を除く部位が先端部58B側へ向けて枝分かれするように複数本延出されており、枝分かれした先端部58Bで細胞収納用容器50のキャップ部250を挟持可能となっている。支持具本体58を構成する材料(材質)としては、本実施形態ではアクリルが適用される。但し、支持具本体58を構成する材料(材質)は、アクリルに代えて、ポリエチレン、ポリプロピレン等の他の合成樹脂材や金属類が適用されてもよい。
【0039】
支持具本体58の外周側には、Oリング60が配設されており、このOリング60の内径は、支持具本体58の基端部58A側よりも若干大径に設定されている。Oリング60は、支持具本体58の先端部58Bが細胞収納用容器50を挟持した状態では、支持具本体58の長手方向中間部(基端部58Aと先端部58Bとの間)に配置されて支持具本体58の先端部58Bの撓み変形を抑制するストッパ(固定具)として機能している。なお、Oリング60に代えて、針金や輪ゴム等のような他のストッパ(固定具)を適用してもよい。
【0040】
以上により、図8(B)に示されるように、細胞収納用容器50は、照射ジグ52によって支持可能とされ、照射ジグ52を介してファントム容器12内に配置可能とされている。換言すれば、多目的ファントム10は、ファントム容器12内での細胞照射を実現するファントムとして用いることが可能になっている。なお、ファントム容器12内での細胞照射は、生物学的な評価を行うための照射である。そして、生物学的な評価は放射線治療効果の検証・評価には欠かせないものといえる。
【0041】
一方、図9には、複数の座標確認用ジグ70がジグ取付用基板(ジグ取付用ブラケット)64を介して密閉蓋20に取り付けられた状態が示されている。図9(A)は縦断面図(図9(B)の9A−9A線に沿った断面図)であり、図9(B)は平面図である。
【0042】
図9に示されるように、密閉蓋20の内側(内面側)には、ボルト28Dによってジグ取付用基板64が取り付け可能とされている。すなわち、ジグ取付用基板64のボルト挿通孔64A(図10参照)を貫通するボルト28Dがワッシャ28Eに挿通されてウエルドナット28A(雌ネジ部)に螺合されることで、密閉蓋20の内面側にジグ取付用基板64が取り付けられる構成になっている。
【0043】
図10には、ジグ取付用基板64が平面図にて示されている。図10に示されるように、ジグ取付用基板64は、略円板状とされており、複数の設置孔66がほぼ全域に貫通形成されて放射状に配列されている。
【0044】
図9(A)に示されるように、設置孔66は、ボルト挿通孔とされており、ボルト68によって、複数の座標確認用ジグ70がジグ取付用基板64に取り付け可能とされている。すなわち、座標確認用ジグ70が円柱形状に形成されると共にその底部(ジグ取付用基板64に取り付けられる側の部位)にネジ穴部70Aが形成され、ボルト68がジグ取付用基板64の設置孔66を貫通して座標確認用ジグ70のネジ穴部70Aの雌ネジ部に螺合されれば、座標確認用ジグ70はジグ取付用基板64に取り付けられる。
【0045】
座標確認用ジグ70は、CT撮影装置(診断装置)、治療計画装置(放射線量の理論計算を行う治療計画計算機)、及び治療室(実際に照射する照射場)等のすべての座標系を確認するためのジグである。座標確認用ジグ70は、本実施形態ではアクリル製とされ、種々の高さに設定されてその頂部(取付状態における突出先端部)に位置確認用の金属球72が取り付けられている。なお、座標確認用ジグ70を構成する材料(材質)は、アクリルに代えて、ポリエチレン、ポリプロピレン等の他の合成樹脂材、シリコン、木材、金属等が適用されてもよい。また、金属球72に代えて、高密度の樹脂で構成された小球が適用されてもよい。
【0046】
図11は、座標確認用ジグ70をX線撮影した場合の撮影イメージ図であり、図11(A)は側面側から撮影した状態を示し、図11(B)は図9(A)の下方側から撮影した状態を示す。図11に示されるように、座標確認用ジグ70をX線撮影すると、金属球72が画像上に映し出される。これらの金属球72の座標がCT撮影装置、治療計画装置、治療室での撮影装置等で読み取られることによって、それぞれの座標系が確認される。
【0047】
(多目的ファントムの使用方法)
放射線治療システムは、CT断層画像を撮影するためのCT撮影装置、被検体(患者)の治療部に放射線を照射して治療するための放射線治療装置、及び放射線の照射位置及び照射線量等の治療計画を立案するためのコンピュータで構成された治療計画装置を組合せて構成されている。
【0048】
以下、本実施の形態の多目的ファントム10を用いて、放射線治療装置の幾何学的な位置精度を検証する場合の多目的ファントム10の使用方法について説明する。
【0049】
まず、図9に示される複数の座標確認用ジグ70をジグ取付用基板64に取り付けた後、複数の座標確認用ジグ70が取り付けられたジグ取付用基板64を密閉蓋20の内面側に取り付ける。次に、複数の座標確認用ジグ70がファントム容器12内に収納されるように、複数の座標確認用ジグ70及びジグ取付用基板64が取り付けられた密閉蓋20によって、ファントム容器12の開口部14を閉鎖する。これによって、ファントム容器12の内部に複数の座標確認用ジグ70が収納された座標確認用のファントムとして組み立てられる。
【0050】
CT撮影装置の寝台テーブルに上記のように組み立てた座標確認用のファントム(多目的ファントム10)をセットし、放射線治療計画を行う手順と同様の手順で多目的ファントム10をスキャンしながら、CT撮影を行い、CT断層画像を取得する。次に、取得されたCT断層画像を治療計画装置に取り込み、CT断層画像を表示させ、マウスでのプロッティングなどにより、治療計画装置上での金属球72の座標を取得する。取得した治療計画装置上での座標を、実物のファントム容器12内における金属球72の幾何学的な座標と比較することで、両者の一致を確かめる(すなわち、治療計画装置が持つ座標系と、CT撮影装置が持つ座標系の一致を確認する)。両者の一致を確認した後に、治療計画を立案する。
【0051】
立案した治療計画データを放射線治療装置に転送し、治療室内に設置されたX線撮影装置により座標確認用のファントム(多目的ファントム)10を撮影しながら治療用位置決め装置を用いて治療計画画像と同様の画像が得られる位置になるように座標確認用のファントム(多目的ファントム)10を移動させ、位置決めを行う。位置決めが行われた状態で得られるX線撮影画像と治療計画画像とを照合することで、放射線治療システムの幾何学的位置を確認することができる。これにより、治療計画装置によって計算された放射線照射位置の座標と、実際に放射線照射を実行する放射線照射場が持つ座標系の一致が確認される。なお、照合した結果、X線撮影画像と治療計画画像とがずれている場合には、X線撮影画像と治療計画画像とが一致するように放射線治療システムのキャリブレーションを行う。
【0052】
次に、本実施の形態の多目的ファントム10を用いて、放射線照射部位の生物学的評価を行う場合の多目的ファントム10の使用方法について説明する。
【0053】
この場合には、まず、図4(A)に示されるように、肺等価物質(例えば、空気)が収納された肺等価物質収納容器40A、骨等価物質(例えば、リン酸水素二カリウム水溶液)が収納された骨等価物質収納容器40B、及び脂肪等価物質(例えば、エタノール)が収納された脂肪等価物質収納容器40Cを器具用基板30に取り付け、肺等価物質収納容器40A、骨等価物質収納容器40B、及び脂肪等価物質収納容器40Cが取り付けられた器具用基板30を密閉蓋20の内側に取り付ける。
【0054】
一方、ファントム容器12には、筋肉等価物質(例えば、水)を収納する。続いて、ファントム容器12内の筋肉等価物質に、肺等価物質が収納された肺等価物質収納容器40A、骨等価物質が収納された骨等価物質収納容器40B、及び脂肪等価物質が収納された脂肪等価物質収納容器40Cが浸漬されるように、密閉蓋20によってファントム容器12の開口部14を閉鎖し、複数のボルト22Aをそれぞれナット22Bに螺合させて密閉蓋20でファントム容器12を密閉して、生物学的効果確認用のファントムとして組み立てる。なお、密閉蓋20に穿設された取付孔26には、取付孔密閉用のネジキャップ25を取り付け、全ての取付孔26を密閉しておく。
【0055】
上記の使用方法と同様に、CT撮影装置の寝台テーブルに生物学的効果確認用のファントム(多目的ファントム10)をセットし、放射線治療計画を行う手順と同様の手順で生物学的効果確認用のファントム(多目的ファントム)10をスキャンしながら、CT撮影を行い、CT断層画像を取得する。次に、取得されたCT断層画像を治療計画装置に取り込み、そのCT断層画像に基づいて、ファントム10のファントム容器12内の放射線を照射する放射線照射位置を決定し、その照射位置での放射線量を計算する(治療計画の立案)。
【0056】
次に、多目的ファントム10については、放射線照射位置に対応する取付孔密閉用のネジキャップ25の一つを取り外し、取付孔密閉用のネジキャップ25を取り外した密閉蓋20の取付孔26に、図8(A)に示されるように、放射線計測器ジグ44を用いて放射線計測器42を取り付け、前述のように決定された放射線照射位置に放射線計測部位が一致するようにセットする。そして、放射線計測器42が取り付けられた多目的ファントム10を治療室内に設置されたX線撮影装置を用いて放射線治療装置にセットする。
【0057】
一方、治療計画装置で立案した治療計画データを放射線治療装置に転送し、放射線計測器42が取り付けられた多目的ファントム10を治療室内に設置されたX線撮影装置により撮影しながら、治療用位置決め装置を用いて多目的ファントム10の放射線照射位置が放射線の照射位置となるように多目的ファントム10を移動させて位置決めを行う。そして、位置決めされた多目的ファントム10に放射線を照射して、前記放射線照射位置へ放射線を照射した際の該放射線照射位置の放射線量を放射線計測器42により計測し、治療計画装置での計算値と比較する。
【0058】
放射線量を計測した後、放射線治療装置から多目的ファントム10を降ろして、放射線計測器42を取り外し、放射線計測器42が取り付けられていた取付孔26に、放射線計測器42に代えて、図8(B)に示されるように、放射線が照射される細胞を収納した細胞収納用容器50を支持した照射ジグ52を取り付ける。照射ジグ52を取り付ける際、細胞収納用容器50に収納した細胞が、上記のようにして決定された放射線照射位置に位置するように取り付ける。そして、細胞を収納した細胞収納用容器50が内部に支持された多目的ファントム10を放射線治療装置にセットする。
【0059】
次に、放射線量を計測する際に使用した治療計画データを用いて、細胞を収納した細胞収納用容器50が内部に支持された多目的ファントム10を、治療室内に設置されたX線撮影装置により撮影しながら、治療用位置決め装置を用いて多目的ファントム10内の細胞に放射線を照射できる位置に移動させ位置決めを行う。そして、位置決めされた多目的ファントム10内の細胞に放射線を照射し、放射線が照射された細胞を用いて生物学的効果を評価する。
【0060】
以上説明したように、本実施形態に係る多目的ファントム10及び多目的ファントムの使用方法によれば、診断から治療までの多用途に兼用することができ、診断から治療までのプロセスを同一の幾何学的条件下で総合的に評価することが可能になる。
【0061】
なお、上記実施形態では、図1に示される密閉蓋20の取付孔26が円形状のネジ孔とされた例について説明したが、取付孔は、円形状のネジ孔に代えて、三角形、四角形(台形等)、その他の多角形等のような様々な形状の孔であってもよく、これらの孔に挿入された器具が、ピン留め、ロック式による固定、接着剤等による固定等で取り付けられてもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、図5に示される放射線計測器ジグ44が平面視で外形が円形状(略円筒状)とされているが、放射線計測器ジグは、平面視での外形が四角形(矩形や台形)、その他の多角形等の様々な形状に置き換えたものであってもよい。
【符号の説明】
【0063】
10 多目的ファントム
12 ファントム容器(密閉容器)
20 密閉蓋
26 取付孔
30 器具用基板
32 貫通穴(貫通部)
40 収納容器
40A 肺等価物質収納容器
40B 骨等価物質収納容器
40C 脂肪等価物質収納容器
42 放射線計測器(使用目的に応じた器具)
50 細胞収納用容器(試料容器)
52 照射ジグ(支持具(使用目的に応じた器具))
64 ジグ取付用基板
70 座標確認用ジグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉可能な密閉容器と、
使用目的に応じた器具が着脱可能に取り付け可能な複数の取付孔が穿設されると共に、前記複数の取付孔を密閉した状態で前記密閉容器を密閉することが可能な密閉蓋と、
人体組織と等価な組織等価物質が収納される複数の収納容器が取り付け可能であると共に、前記密閉蓋の内側に取り付け可能で、かつ前記密閉蓋に取り付けられた前記使用目的に応じた器具が貫通する貫通部が設けられた器具用基板と、
を含む多目的ファントム。
【請求項2】
肺等価物質が収納される肺等価物質収納容器、骨等価物質が収納される骨等価物質収納容器、及び脂肪等価物質が収納される脂肪等価物質収納容器を含む前記複数の収納容器を更に含む請求項1記載の多目的ファントム。
【請求項3】
複数の座標確認用ジグと、
前記複数の座標確認用ジグが取り付け可能で、かつ前記密閉蓋の内側に取り付け可能なジグ取付用基板と、
を更に含む請求項1又は請求項2記載の多目的ファントム。
【請求項4】
前記使用目的に応じた器具を、前記密閉容器内に照射された放射線量を計測する放射線計測器、及び放射線が照射される試料を収納した試料容器を支持する支持具とした請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の多目的ファントム。
【請求項5】
密閉可能な密閉容器と、
使用目的に応じた器具が着脱可能に取り付け可能な複数の取付孔が穿設されると共に、前記複数の取付孔を密閉した状態で前記密閉容器を密閉することが可能な密閉蓋と、
肺等価物質が収納される肺等価物質収納容器、骨等価物質が収納される骨等価物質収納容器、及び脂肪等価物質が収納される脂肪等価物質収納容器を含む複数の収納容器と、
前記複数の収納容器が取り付け可能であると共に、前記密閉蓋の内側に取り付け可能で、かつ前記密閉蓋に取り付けられた前記使用目的に応じた器具が貫通する貫通部が設けられた器具用基板と、
を含む多目的ファントムの使用方法であって、
肺等価物質が収納された前記肺等価物質収納容器、骨等価物質が収納された前記骨等価物質収納容器、及び脂肪等価物質が収納された前記脂肪等価物質収納容器が取り付けられた前記器具用基板を前記密閉蓋の内側に取り付けると共に、前記密閉容器に筋肉等価物質を収納し、前記密閉容器内の筋肉等価物質に、肺等価物質が収納された前記肺等価物質収納容器、骨等価物質が収納された前記骨等価物質収納容器、及び脂肪等価物質が収納された前記脂肪等価物質収納容器を浸漬して前記密閉蓋で前記密閉容器を密閉した状態でCT撮影によるCT断層画像を取得する第1ステップと、
前記第1ステップで取得されたCT断層画像を治療計画装置内へ取り込み、前記密閉容器内の放射線照射位置、及び該放射線照射位置での放射線量を決定する第2ステップと、
前記密閉蓋の前記取付孔に前記放射線計測器を取り付け、前記第2ステップで決定された放射線照射位置へ放射線を照射した際の該放射線照射位置の放射線量を計測する第3ステップと、
前記放射線計測器を取り外した前記取付孔に、前記放射線計測器に代えて、放射線が照射される細胞が収納された細胞収納用容器を支持した支持具を取り付け、前記放射線照射位置に前記細胞を位置させた状態で前記細胞に放射線を照射することにより生物学的効果を評価する第4ステップと、
を含む多目的ファントムの使用方法。
【請求項6】
前記多目的ファントムに、複数の座標確認用ジグと、前記複数の座標確認用ジグが取り付け可能で、かつ前記密閉蓋の内側に取り付け可能なジグ取付用基板と、を設け、
前記複数の座標確認用ジグが取り付けられた前記ジグ取付用基板を前記密閉蓋の内側に取り付け、前記密閉蓋で前記密閉容器の開口を閉鎖した状態で、CT撮影装置が持つ座標系をもとに前記多目的ファントムをセットアップし、CT撮影によるCT断層画像を取得する第5ステップと、
前記第5ステップで取得されたCT断層画像を前記治療計画装置内へ取り込み、前記治療計画装置が持つ座標系と、前記CT撮影装置が持つ座標系の一致を確認する第6ステップと、
前記治療計画装置によって計算された前記放射線照射位置の座標と、実際に放射線照射を実行する放射線照射場が持つ座標系の一致を確認する第7ステップと、
を更に含む請求項5記載の多目的ファントムの使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−239830(P2011−239830A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112300(P2010−112300)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(504145364)国立大学法人群馬大学 (352)
【出願人】(510134134)財団法人医用原子力技術研究振興財団 (1)
【Fターム(参考)】