多目的作業車の原動部空冷構造
【課題】本発明では、エンジンを冷却する吸引風冷却装置の配置位置を工夫することによって作業中に発生する粉塵を吸引することが少ない多目的作業車の原動部空冷構造にすることを課題とする。
【解決手段】多目的作業車の機体略中央にエンジン6とその周辺機器90及び吸引風冷却装置91を配置し、この吸引風冷却装置91の吸引風取り込み口89をキャビン11の後側の機体略中央で上方に開口部98を形成し、この開口部89をフード92で覆い該フード92に形成した吸引風取り込み口99a,99bから冷却風を吸引すべくして多目的作業車の原動部空冷構造とした。
【解決手段】多目的作業車の機体略中央にエンジン6とその周辺機器90及び吸引風冷却装置91を配置し、この吸引風冷却装置91の吸引風取り込み口89をキャビン11の後側の機体略中央で上方に開口部98を形成し、この開口部89をフード92で覆い該フード92に形成した吸引風取り込み口99a,99bから冷却風を吸引すべくして多目的作業車の原動部空冷構造とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、芝刈り機や清掃機等を牽引する多目的作業車における原動部の空冷構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多目的作業車は、走行機体の前側や機体下部或いは機体の後部に芝刈り機や清掃機等を装着して作業を行っている。例えば、特開2005−343187号公報に記載の多目的作業車は、機体の前側に設ける昇降リンク装置に芝刈り機や清掃機等を装着し、機体の後部寄りに搭載するエンジンの吸引風冷却装置を機体後部に設けて、機体の後方から冷却風をエンジンに向けて吸引するように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−343187号公報(図1、図2を参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エンジンを冷却する空気は粉塵が少ない方がフィルター等に目詰りを生じ難いために良いが、多目的作業車は機体の前後や下部に作業機を装着し、その作業機が発生する粉塵を吸引風冷却装置が吸引することがある。前記の従来の多目的作業車では、機体の前側に装着する芝刈り機が芝刈り中に発生する粉塵を冷却風として吸引する。
【0005】
そこで、本発明では、エンジンを冷却する吸引風冷却装置の配置位置と吸引風の通路を工夫することによって作業中に発生する粉塵を吸引することが少ない多目的作業車の原動部空冷構造にすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
即ち、請求項1記載の発明では、多目的作業車の機体略中央にエンジン6とその周辺機器90及び吸引風冷却装置91を配置し、この吸引風冷却装置91の吸引風取り込み口(99a,99b)をキャビン11の後側の機体略中央で上方に開口部89を形成し、この開口部89をフード92で覆い該フード92に形成した吸引風取り込み口99a,99bから冷却風を吸引すべくして多目的作業車の原動部空冷構造とした。
【0007】
この構成で、多目的作業車の機体の前後や下部に装着する作業機が作業中に発生する粉塵が最も少ない空気を吸引風冷却装置91が冷却風として吸引することになり、開口部98から雨が直接降り込んで吸引風冷却装置91に悪影響を与えることもない。
【0008】
請求項2に記載の発明では、請求項1の構成で、フード92内にオイルクーラ97を縦に配置した。
この構成で、あまり加熱されないオイルクーラ97が新鮮な冷却風で効果的に冷却される。
【0009】
請求項3に記載の発明では、請求項2の構成で、フード92の吸引風取り込み口99a,99bをキャビン11の後壁119側の第一取込口99aとフード92の後方側の第二取込口99bとした。
【0010】
この構成で、第一取込口99aと第二取込口99bからフード92内に雨が侵入し難く、吸引された冷却風がオイルクーラ97を通過する。
請求項4に記載の発明では、請求項3の構成で、第二取込口99bに冷却風の通路を上部に限定する遮壁120を設けた。
【0011】
この構成で、第二取込口89bから入る冷却風が遮壁120でオイルクーラ97の上部へ送られてからオイルクーラ97を冷却しながら下方へ送られる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によると、吸引風冷却装置91が機体上方のフード92内から最も粉塵が少ない空気を冷却風として取り込むために、エアフィルターが粉塵で目詰りする頻度が少なくなり、雨の侵入による吸引風冷却装置91の悪影響が無く、メンテナンスの周期を短く出来る。
【0013】
請求項2記載の発明によると、特に冷却の必要なオイルクーラ97が新鮮な冷却風で効果的に冷却される。
請求項3記載の発明によると、第一取込口99aと第二取込口99bからフード92内に雨が侵入し難く、オイルクーラ97が効果的に冷却される。
【0014】
請求項4記載の発明によると、第二取込口89bから入る冷却風がオイルクーラ97の上部から下方へ流れてオイルクーラ97全体を効果的に冷却する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施例の多目的作業車の全体側面図である。
【図2】本実施例の多目的作業車の全体平面図である。
【図3】本実施例の多目的作業車の一部斜視図である。
【図4】別実施例の多目的作業車の全体平面図である。
【図5】別実施例の多目的作業車の全体側面図である。
【図6】別実施例の多目的作業車の全体平面図である。
【図7】別実施例の一部っ拡大平面図である。
【図8】ミッションケースの全体断面図である。
【図9】ミッションケースの部分拡大断面図である。
【図10】ミッションケースの部分拡大断面図である。
【図11】ミッションケースの部分拡大断面図である。
【図12】一部の拡大斜視図である。
【図13】制御のブロック図である。
【図14】キャビンの前方回動状態説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に示す実施例を参照しながら説明する。
本発明の適用対象となる多目的作業車は、図1と図2に全体図を示すように、モノコックフレームに左右の前輪8,8と左右の後輪9,9からなる走行装置10を操舵可能に支持し、一般的なトラクタの構成と前後を逆に、すなわち、エンジン6を機体中央後部に配置し、トランスミッション14を機体前部に配置する。その機体前部に操縦部2dを備えるキャビン11を設け、後部に荷台2tを設け、かつ、作業機動力として機体前部のキャビン11下部にPTO軸13を備えている。
【0017】
また、操縦部2dには、図3に示す如く、ハンドルコラム2cを立設してステアリングハンドルSを設け、ハンドルコラム2cの左側部に前後進切換レバーR、ハンドルコラム2cの基部にはその右側位置にHSTペダル5、左側位置にブレーキペダル12等の操作手段をそれぞれ配置する。
【0018】
また、ハンドルコラム2cには、エンジン6を始動するキースイッチ94を設けている。このキースイッチ94は、オン位置に回すとエンジン6が始動し、オフ位置に回すとエンジン6が停止するが、ステアリングハンドルSの中央上面に緊急エンジン停止スイッチ95を設けて、緊急時にこの緊急エンジン停止スイッチ95を押すとエンジン6が停止するようにしている。
【0019】
さらに、ブレーキペダル12の近くに、後述する高速油圧クラッチ51か低速油圧クラッチ52のどちらか或いは両方を切にして走行装置10への動力伝動を断って走行を停止する緊急走行停止スイッチ96を設けている。
【0020】
これらの緊急エンジン停止スイッチ95と緊急走行停止スイッチ96はどちらか一方を設けるだけでも良い。
トランスミッション14は、後に詳述するように、「HST」と略称する静油圧式無段変速機構1および多段ギア変速機構7を直列に内設して前後輪8,9とPTO出力軸13に駆動力を伝動する。前後進切換レバーRを操作してHSTペダル5を踏むと、エンジン6からの動力はトランスミッション14内の無段変速機構1で変速され、さらに、多段ギア変速機構7で変速されて、後輪9,9のみまたは、後輪9,9と前輪8,8の両方に伝達され、機体は前進または後進する。
【0021】
また、ブレーキペダル12を踏むと前輪8,8と後輪9,9のディスクブレーキ(図示せず)を作動させるとともに、HSTの可変油圧ポンプのトラニオン軸を中立に戻し、HSTの定量油圧モータからの出力を停止する。また、HSTペダル5とブレーキペダル12を同時に踏むとブレーキペダル12が優先する。
【0022】
PTO軸13には各種の作業機を接続して多目的作業を可能とする。例えば、路上清掃機を機体に装着して路上清掃を行ったり、芝刈機を装着して芝刈作業を行ったり、雪掻機を設けて除雪などの作業を行う。
【0023】
機体の中央後側に搭載するエンジン6の前側にキャブレータに吸引する空気を浄化するエアクリーナ90と空気をファンで吸引するレシーバ(吸引風冷却装置)91を配置し、エアクリーナ90とレシーバ91の間に反射板93を設けてレシーバ91の熱がエアクリーナ90に伝わらないようにしている。さらにレシーバ91の上側を後方へ下り傾斜した天板118を設け、この天板118の前側に開口部89を形成し、開口部89上にオイルクーラ97を設け、オイルクーラ97の上側をフード92で覆っている。
【0024】
このフード92には、キャビン11の後壁119との間に第一取込口99aと後方に向かって開口した第二取込口99bを形成し、レシーバ91が吸引する吸引風が第一取込口99aと第二取込口99bからフード92内に入りオイルクーラ97を冷却する。
【0025】
図4には、冷却風の取り込み構成の別実施例を示している。フード92から左側方へダクト121を設け、このダクト121のキャビン11から側方に突出した部分に開口部122を形成し、機体の走行に伴う空気の流れをフード92内に取り込むようにしている。
【0026】
図5の冷却風の取り込み構成の実施例では、フード92の上側からキャビン11の後壁119に沿ってダクト123を設け、キャビン11の天井上に開口するダクト123の開口部124から機体の走行に伴う空気の流れをフード92内に取り込むようにしている。
【0027】
図6の冷却風の取り込み構成の実施例では、キャビン11の底部の左右中央にフード92に通じるダクト125を設け、キャビン11の前側に形成する開口部126から機体の走行に伴う空気の流れをフード92内に取り込むようにしている。
【0028】
図7は、オイルクーラ97の配置構成の実施例で、エンジン6の後部にシュラウド130とラジエータ127を配置し、シュラウド130に取り付けたステー129にオイルクーラ131を取り付け、エンジン6の冷却ファン128とエンジン6の間に配置している。
【0029】
エンジン6の冷却ファン128でエンジン6側からラジエータ127に向かって流れる冷却風でオイルクーラ131がラジエータ127よりも先に冷却されて、冷却効率が良い。
【0030】
図7の実施例に示すエンジン6の冷却ファン128とエンジン6の間に配置するオイルクーラ131は、前記実施例のフード92内に設けるオイルクーラ97と共に設けると、エンジン6が加熱するまでは冷却ファン128側のオイルクーラ131が良く冷却し、エンジン6が加熱するとフード92内のオイルクーラ97が新鮮な冷却風で良く冷却する。
【0031】
次に、ミッションケース14の内部構造を図8乃至図11で説明する。
ミッションケース14は、図8と図9に示す如く、前ケース15、繋ぎケース16、中間ケース17、後ケース18の4つの中空ケースを連結した構成で、後ケース18に軸支した入力軸19にエンジン6の駆動力が入力し、この入力軸19の回転がインプットケース20内の増速ギア21,22で第一中継軸23へ伝動し、さらに増速ギア24,25で増速され、この増速ギア25に無段変速機構1の油圧入力軸38をスプライン嵌合している。
【0032】
繋ぎケース16は従来の前ケース15と中間ケース17を連結してミッションケース14を長くするもので、前ケース15と中間ケース17及び後ケース18を従来のミッションケースと共用化することで製作コストを低く出来る。
【0033】
増速ギア21,22と増速ギア24,25を内装するインプットケース20は、高速走行を可能にするためにエンジン6の出力回転を増速するために設けるもので、従来のトラクタのミッションケース14内に伝動機構を収納可能にしている。このインプットケース20は図9に示す如く、密封ケースにしてミッションケース14の外部へ通じる給油管からオイルを給油するようにすれば、増速ギア21,22,24,25の修理の際にミッシ
ョンケース14内のオイルを抜かずにインプットケース20のみを取り外せるので、作業が楽になる。
【0034】
無段変速機構1の内部では油圧変速により出力を大きく無段階で変速して、PTO駆動軸26と走行駆動軸27の二つの軸へ出力する。
PTO駆動軸26にはPTOギア軸28を連結し、このPTOギア軸28のギア29と第二中継軸30に遊嵌したギア31を噛み合わせ、このギア31をPTO軸32に装着したPTOクラッチ34のギア33に噛み合わせている。PTOクラッチ34はギア33からPTO軸32への回転伝動を断続する。
【0035】
PTO軸32にはPTO延長軸35を連結し、このPTO延長軸35のギア36をPTO出力軸13にスプライン嵌合したクラッチギア37に噛み合わせてPTO出力軸13を駆動している。(図10参照)
PTOクラッチ34の詳細を図11に示しているが、クラッチ入ではクラッチ盤88が繋がってケーシング86が回転して伝動するが、クラッチ切では戻しバネ87の圧でクラッチ盤88が離れてケーシング86をフリーにする。この時にケーシング86の付き回りを防ぐ為に繋ぎケース16のボス部81に当接する係止リング85をケーシング86の外周に装着している。
【0036】
走行駆動軸27には第三中継軸39を連結し、この第三中継軸39に固着したギア40ヘギア41,42を噛み合わせて第四中継軸43に伝動する。第四中継軸43にはメインギア軸44を連結している。
【0037】
メインギア軸44には、大ギア45と中ギア46を一体的に固着し、このメインギア軸44の延長上にサブギア軸47を分離して回転可能に軸支している。このサブギア軸47には小ギア48と大ギア74及び走行伝動ギア75を一体的に固着している。従って、大ギア45と中ギア46は同一回転をし、小ギア48と大ギア74は後述するクラッチギア77からの回転を受ける。(図11参照)
大ギア45はクラッチ軸49に装着した高速油圧クラッチ51のギア50と噛み合い、中ギア46はクラッチ軸49に装着した低速油圧クラッチ52のギア53と噛み合い、メインギア軸44の回転をクラッチ軸49へ高速或いは低速で伝動する。
【0038】
クラッチ軸49の延長上にスプライン軸76をスプライン嵌合し、このスプライン軸76にクラッチギア77をスプライン嵌合して、クラッチ軸49の回転をクラッチギア77に伝動している。また、クラッチ軸49を支持する繋ぎケース16のボス部81にはクラッチ軸49の油圧孔に通じる油圧用孔82,83,84を設けて、高速油圧クラッチ51と低速油圧クラッチ52に作動油を送るようにしている。
【0039】
クラッチギア77には大ギア78と小ギア73を形成し、大ギア78が前記サブギア軸47の小ギア48に噛み合って増速伝動して高速ギアクラッチ3aを構成したり、小ギア79がサブギア軸47の大ギア74に噛み合って減速伝動して低速ギアクラッチ3bを構成したり、大ギア78と小ギア73が共に游転して動力切になるようにして高低ギア変速クラッチ3を構成している。
【0040】
サブギア軸47の走行伝動ギア75は、スプライン軸76に遊嵌したべベルギア軸62にスプライン嵌合した走行ギア56に噛み合ってベベルギア軸62を駆動している。ベベルギア軸62のべベルギア63が前輪8の車軸へ装着したベベルギアへ駆動力を伝動するのである。
【0041】
ベベルギア軸62は、高速油圧クラッチ51からクラッチギア77の大ギア78とサブギア軸47の小ギア48への伝動による四速か、高速油圧クラッチ51からクラッチギア77の小ギア73とサブギア軸47の大ギア74への伝動による三速か、低速油圧クラッチ52からクラッチギア77の大ギア78とサブギア軸47の小ギア48への伝動による二速か、低速油圧クラッチ52からクラッチギア77の小ギア73とサブギア軸47の大ギア74への伝動による一速かのどれかで回転することになる。
【0042】
高速油圧クラッチ51と低速油圧クラッチ52と高低ギア変速クラッチ3を多段ギア変速機構7という。
また、ベベルギア軸62の回転は、走行ギア56からPTO軸32に装着した大小ギア59の小ギア部57へ伝動し、さらに大ギア部58に噛み合う後輪駆動軸61のクラッチギア60で適宜に後輪9へ駆動力を伝動可能にしている。
【0043】
走行ギア56は、ベベルギア軸62に伝動すると共に大小ギア59を介して後輪駆動軸61へ伝動しているので、伝動構成を単純化して前後に長くなるのを防いでいる。
尚、高速油圧クラッチ51と低速油圧クラッチ52はコントローラからの制御信号によりソレノイドを介してどちらかを入に保持するのであるが、ブレーキペダル12の踏み込みを検出するスイッチを設けて、このスイッチの踏込み信号で高速油圧クラッチ51と低速油圧クラッチ52のソレノイドへの電力を断って両クラッチ51,52をニュートラルにするようにしている。このニュートラルの状態でブレーキを作用することで素早く停止でき、ギア変速クラッチ3の切換えがスムースに行える。
【0044】
図12は、変速レバー4を示し、変速溝65を中央のニュートラル位置Nから前後位置H,Lに回動することで、前記のギア変速クラッチ3の高速ギアクラッチ3aが入か低速ギアクラッチ3bが入に変速し、この変速レバー4のグリップ66の頭部に設ける増速ボタン67を押すと高速油圧クラッチ51を入動作し、減速ボタン68を押すと低速油圧クラッチ52を入動作する。
【0045】
また、変速溝65には変速レバー4の位置を検出するセンサ70H,Lを設けて、変速レバー4が低速位置Lから高速位置Hに移動すると高速油圧クラッチ51が入であっても切にして、低速油圧クラッチ52が入になって三速になり、高速位置Hから低速位置Lに移動すると低速油圧クラッチ52が入であっても切にして、高速油圧クラッチ51が入になって二速になるようマイコン制御を行っている。なお、高速油圧クラッチ51を入りにする場合には、HSTペダル5が3/4以上踏込まれて無段変速機構が高速であれば一旦低速にして変速ショックを低減させる。また、変速レバー4が低速位置Lで滅速ボタン73を押すと一速になり、変速レバー4が高速位置Hで増速ボタン72を押すと四速になる。
【0046】
図13は、マイクロコンピュータ100の制御ブロック図である。
マイクロコンピュータ100へ入力するデータ信号は、HSTペダル5の踏込み角度がHSTペダルセンサ103から入力し、トラニオンセンサ(A,B)104からHST1のトラニオン軸の回動角度が入力し、リニアレバーセンサ105から前後進切換レバーRの前後進切換信号が入力し、クルーズコントロールスイッチ106からオートクルーズのオン・オフ信号が入力し、増減速スイッチ107から増減速設定信号が入力し、クルーズコントロールメモリスイッチ108から走行速度設定信号が入力し、ブレーキペダルセンサ109からブレーキペダル12の踏込み信号が入力し、車速センサ110から走行速度信号が入力し、HST回転軸センサ111からHST1で変速された走行駆動軸27の回転数が入力し、駐車ブレーキセンサ101からブレーキのオン信号が入力し、外気温度センサ102から外気温度が入力し、HSTオイルセンサ132からHST1のオイル温度が入力する。
【0047】
マイクロコンピュータ100から出力される制御信号は、トラニオン前進モータ112とトラニオン後進モータ113への駆動信号と、警報ブザー114への鳴動信号と、警報表示パネル115への表示信号と、低速油圧クラッチ52を作動する低速クラッチソレノイド116への一速と二速への切換信号と、高速油圧クラッチ51を作動する高速クラッチソレノイド117への三速と四速への切換信号等である。
【0048】
マイクロコンピュータ100による制御は、例えば、駐車ブレーキセンサ101からオン信号が入力中にHSTペダルセンサ103から踏込み信号が入力すれば、警報ブザー114を鳴らせるようにして、駐車ブレーキをしたままでの走行に注意を促がす。また、駐車ブレーキセンサ101からオン信号が入力中に車速センサ110から走行信号が出ると、警報ブザー114を鳴らして、不測の走行を防ぐ。
【0049】
また、HSTオイルセンサ132が検出するHST1内のオイル温度が所定温度以上になれば、増減速スイッチ107から増速信号が入力したら増速割合を低下させ、さらに上限温度に達すると増減速スイッチ107から増速信号が入力しても増速させないようにして、HST1のオーバーヒートによる作業中断を防ぐ。
【0050】
図示を省略するが、前輪と後輪を操舵する油圧シリンダを設けた構成で、二輪操舵と四輪操舵の切換スイッチを設け、二輪操舵の時の油圧力を四輪操舵の時の油圧力の半分になるように油圧回路のバルブを切り換えて操舵機構に過大な負荷が加わらないようにする。
【0051】
また、四輪駆動や四輪操舵で高速走行を行おうとすると警報を出したり高速への変速を出来ないように制御したりして、四輪駆動による車輪の摩耗を防ぎ、四輪操舵による操舵時の転倒を防ぐ。
【0052】
夜間走行で高速走行にすると電力不足でライトが暗くなったり、雨天時に草刈り作業を行うと負荷が増大して詰りが生じたりするので、ライトスイッチやワイパースイッチをオンすると走行速度を低下する制御を行う。
【0053】
住宅の近くて作業をする時に騒音を少なくするためのエコモードスイッチを設け、このエコモードスイッチをオンしてエンジンを起動している場合には、各種の警報の音量を小さくするように制御する。
【0054】
予熱スイッチを有するディゼルエンジンの場合に、キースイッチを予熱位置にした際にパーキングブレーキをしていなかったり燃料切れであったりエンジン回転がアイドリング位置になっていなければ警報を出すように制御する。
【0055】
PTO軸を駆動してオートクルーズで作業して場合には、前輪或は後輪の操舵を検出すると走行速度を低下させる制御を行って、機体が揺れたり車輪がスリップしたりするのを防ぐ制御を行う。
【0056】
図14は、キャビン11を手動油圧ポンプ133で前方回動させる構成で、手動油圧ポンプ133のアーム134に連結するエクステンションロッド135の連結ピン136を、ブレーキペダル12とブレーキを連結するブレーキロッド137とブレーキアーム138の連結に使っている。
【0057】
従って、キャビン11を前に倒して底部を開く場合には、ブレーキペダル12とブレーキの連結を切って手動油圧ポンプ133を使用することになるので、ブレーキペダル12とブレーキの連結部を破損することが無い。
【符号の説明】
【0058】
6 エンジン
90 周辺機器
11 キャビン
89a 第一取込口
89b 第二取込口
91 吸引風冷却装置(レシーバ)
92 フード
97 オイルクーラ
119 後壁
120 遮壁
【技術分野】
【0001】
この発明は、芝刈り機や清掃機等を牽引する多目的作業車における原動部の空冷構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多目的作業車は、走行機体の前側や機体下部或いは機体の後部に芝刈り機や清掃機等を装着して作業を行っている。例えば、特開2005−343187号公報に記載の多目的作業車は、機体の前側に設ける昇降リンク装置に芝刈り機や清掃機等を装着し、機体の後部寄りに搭載するエンジンの吸引風冷却装置を機体後部に設けて、機体の後方から冷却風をエンジンに向けて吸引するように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−343187号公報(図1、図2を参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エンジンを冷却する空気は粉塵が少ない方がフィルター等に目詰りを生じ難いために良いが、多目的作業車は機体の前後や下部に作業機を装着し、その作業機が発生する粉塵を吸引風冷却装置が吸引することがある。前記の従来の多目的作業車では、機体の前側に装着する芝刈り機が芝刈り中に発生する粉塵を冷却風として吸引する。
【0005】
そこで、本発明では、エンジンを冷却する吸引風冷却装置の配置位置と吸引風の通路を工夫することによって作業中に発生する粉塵を吸引することが少ない多目的作業車の原動部空冷構造にすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
即ち、請求項1記載の発明では、多目的作業車の機体略中央にエンジン6とその周辺機器90及び吸引風冷却装置91を配置し、この吸引風冷却装置91の吸引風取り込み口(99a,99b)をキャビン11の後側の機体略中央で上方に開口部89を形成し、この開口部89をフード92で覆い該フード92に形成した吸引風取り込み口99a,99bから冷却風を吸引すべくして多目的作業車の原動部空冷構造とした。
【0007】
この構成で、多目的作業車の機体の前後や下部に装着する作業機が作業中に発生する粉塵が最も少ない空気を吸引風冷却装置91が冷却風として吸引することになり、開口部98から雨が直接降り込んで吸引風冷却装置91に悪影響を与えることもない。
【0008】
請求項2に記載の発明では、請求項1の構成で、フード92内にオイルクーラ97を縦に配置した。
この構成で、あまり加熱されないオイルクーラ97が新鮮な冷却風で効果的に冷却される。
【0009】
請求項3に記載の発明では、請求項2の構成で、フード92の吸引風取り込み口99a,99bをキャビン11の後壁119側の第一取込口99aとフード92の後方側の第二取込口99bとした。
【0010】
この構成で、第一取込口99aと第二取込口99bからフード92内に雨が侵入し難く、吸引された冷却風がオイルクーラ97を通過する。
請求項4に記載の発明では、請求項3の構成で、第二取込口99bに冷却風の通路を上部に限定する遮壁120を設けた。
【0011】
この構成で、第二取込口89bから入る冷却風が遮壁120でオイルクーラ97の上部へ送られてからオイルクーラ97を冷却しながら下方へ送られる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によると、吸引風冷却装置91が機体上方のフード92内から最も粉塵が少ない空気を冷却風として取り込むために、エアフィルターが粉塵で目詰りする頻度が少なくなり、雨の侵入による吸引風冷却装置91の悪影響が無く、メンテナンスの周期を短く出来る。
【0013】
請求項2記載の発明によると、特に冷却の必要なオイルクーラ97が新鮮な冷却風で効果的に冷却される。
請求項3記載の発明によると、第一取込口99aと第二取込口99bからフード92内に雨が侵入し難く、オイルクーラ97が効果的に冷却される。
【0014】
請求項4記載の発明によると、第二取込口89bから入る冷却風がオイルクーラ97の上部から下方へ流れてオイルクーラ97全体を効果的に冷却する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施例の多目的作業車の全体側面図である。
【図2】本実施例の多目的作業車の全体平面図である。
【図3】本実施例の多目的作業車の一部斜視図である。
【図4】別実施例の多目的作業車の全体平面図である。
【図5】別実施例の多目的作業車の全体側面図である。
【図6】別実施例の多目的作業車の全体平面図である。
【図7】別実施例の一部っ拡大平面図である。
【図8】ミッションケースの全体断面図である。
【図9】ミッションケースの部分拡大断面図である。
【図10】ミッションケースの部分拡大断面図である。
【図11】ミッションケースの部分拡大断面図である。
【図12】一部の拡大斜視図である。
【図13】制御のブロック図である。
【図14】キャビンの前方回動状態説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に示す実施例を参照しながら説明する。
本発明の適用対象となる多目的作業車は、図1と図2に全体図を示すように、モノコックフレームに左右の前輪8,8と左右の後輪9,9からなる走行装置10を操舵可能に支持し、一般的なトラクタの構成と前後を逆に、すなわち、エンジン6を機体中央後部に配置し、トランスミッション14を機体前部に配置する。その機体前部に操縦部2dを備えるキャビン11を設け、後部に荷台2tを設け、かつ、作業機動力として機体前部のキャビン11下部にPTO軸13を備えている。
【0017】
また、操縦部2dには、図3に示す如く、ハンドルコラム2cを立設してステアリングハンドルSを設け、ハンドルコラム2cの左側部に前後進切換レバーR、ハンドルコラム2cの基部にはその右側位置にHSTペダル5、左側位置にブレーキペダル12等の操作手段をそれぞれ配置する。
【0018】
また、ハンドルコラム2cには、エンジン6を始動するキースイッチ94を設けている。このキースイッチ94は、オン位置に回すとエンジン6が始動し、オフ位置に回すとエンジン6が停止するが、ステアリングハンドルSの中央上面に緊急エンジン停止スイッチ95を設けて、緊急時にこの緊急エンジン停止スイッチ95を押すとエンジン6が停止するようにしている。
【0019】
さらに、ブレーキペダル12の近くに、後述する高速油圧クラッチ51か低速油圧クラッチ52のどちらか或いは両方を切にして走行装置10への動力伝動を断って走行を停止する緊急走行停止スイッチ96を設けている。
【0020】
これらの緊急エンジン停止スイッチ95と緊急走行停止スイッチ96はどちらか一方を設けるだけでも良い。
トランスミッション14は、後に詳述するように、「HST」と略称する静油圧式無段変速機構1および多段ギア変速機構7を直列に内設して前後輪8,9とPTO出力軸13に駆動力を伝動する。前後進切換レバーRを操作してHSTペダル5を踏むと、エンジン6からの動力はトランスミッション14内の無段変速機構1で変速され、さらに、多段ギア変速機構7で変速されて、後輪9,9のみまたは、後輪9,9と前輪8,8の両方に伝達され、機体は前進または後進する。
【0021】
また、ブレーキペダル12を踏むと前輪8,8と後輪9,9のディスクブレーキ(図示せず)を作動させるとともに、HSTの可変油圧ポンプのトラニオン軸を中立に戻し、HSTの定量油圧モータからの出力を停止する。また、HSTペダル5とブレーキペダル12を同時に踏むとブレーキペダル12が優先する。
【0022】
PTO軸13には各種の作業機を接続して多目的作業を可能とする。例えば、路上清掃機を機体に装着して路上清掃を行ったり、芝刈機を装着して芝刈作業を行ったり、雪掻機を設けて除雪などの作業を行う。
【0023】
機体の中央後側に搭載するエンジン6の前側にキャブレータに吸引する空気を浄化するエアクリーナ90と空気をファンで吸引するレシーバ(吸引風冷却装置)91を配置し、エアクリーナ90とレシーバ91の間に反射板93を設けてレシーバ91の熱がエアクリーナ90に伝わらないようにしている。さらにレシーバ91の上側を後方へ下り傾斜した天板118を設け、この天板118の前側に開口部89を形成し、開口部89上にオイルクーラ97を設け、オイルクーラ97の上側をフード92で覆っている。
【0024】
このフード92には、キャビン11の後壁119との間に第一取込口99aと後方に向かって開口した第二取込口99bを形成し、レシーバ91が吸引する吸引風が第一取込口99aと第二取込口99bからフード92内に入りオイルクーラ97を冷却する。
【0025】
図4には、冷却風の取り込み構成の別実施例を示している。フード92から左側方へダクト121を設け、このダクト121のキャビン11から側方に突出した部分に開口部122を形成し、機体の走行に伴う空気の流れをフード92内に取り込むようにしている。
【0026】
図5の冷却風の取り込み構成の実施例では、フード92の上側からキャビン11の後壁119に沿ってダクト123を設け、キャビン11の天井上に開口するダクト123の開口部124から機体の走行に伴う空気の流れをフード92内に取り込むようにしている。
【0027】
図6の冷却風の取り込み構成の実施例では、キャビン11の底部の左右中央にフード92に通じるダクト125を設け、キャビン11の前側に形成する開口部126から機体の走行に伴う空気の流れをフード92内に取り込むようにしている。
【0028】
図7は、オイルクーラ97の配置構成の実施例で、エンジン6の後部にシュラウド130とラジエータ127を配置し、シュラウド130に取り付けたステー129にオイルクーラ131を取り付け、エンジン6の冷却ファン128とエンジン6の間に配置している。
【0029】
エンジン6の冷却ファン128でエンジン6側からラジエータ127に向かって流れる冷却風でオイルクーラ131がラジエータ127よりも先に冷却されて、冷却効率が良い。
【0030】
図7の実施例に示すエンジン6の冷却ファン128とエンジン6の間に配置するオイルクーラ131は、前記実施例のフード92内に設けるオイルクーラ97と共に設けると、エンジン6が加熱するまでは冷却ファン128側のオイルクーラ131が良く冷却し、エンジン6が加熱するとフード92内のオイルクーラ97が新鮮な冷却風で良く冷却する。
【0031】
次に、ミッションケース14の内部構造を図8乃至図11で説明する。
ミッションケース14は、図8と図9に示す如く、前ケース15、繋ぎケース16、中間ケース17、後ケース18の4つの中空ケースを連結した構成で、後ケース18に軸支した入力軸19にエンジン6の駆動力が入力し、この入力軸19の回転がインプットケース20内の増速ギア21,22で第一中継軸23へ伝動し、さらに増速ギア24,25で増速され、この増速ギア25に無段変速機構1の油圧入力軸38をスプライン嵌合している。
【0032】
繋ぎケース16は従来の前ケース15と中間ケース17を連結してミッションケース14を長くするもので、前ケース15と中間ケース17及び後ケース18を従来のミッションケースと共用化することで製作コストを低く出来る。
【0033】
増速ギア21,22と増速ギア24,25を内装するインプットケース20は、高速走行を可能にするためにエンジン6の出力回転を増速するために設けるもので、従来のトラクタのミッションケース14内に伝動機構を収納可能にしている。このインプットケース20は図9に示す如く、密封ケースにしてミッションケース14の外部へ通じる給油管からオイルを給油するようにすれば、増速ギア21,22,24,25の修理の際にミッシ
ョンケース14内のオイルを抜かずにインプットケース20のみを取り外せるので、作業が楽になる。
【0034】
無段変速機構1の内部では油圧変速により出力を大きく無段階で変速して、PTO駆動軸26と走行駆動軸27の二つの軸へ出力する。
PTO駆動軸26にはPTOギア軸28を連結し、このPTOギア軸28のギア29と第二中継軸30に遊嵌したギア31を噛み合わせ、このギア31をPTO軸32に装着したPTOクラッチ34のギア33に噛み合わせている。PTOクラッチ34はギア33からPTO軸32への回転伝動を断続する。
【0035】
PTO軸32にはPTO延長軸35を連結し、このPTO延長軸35のギア36をPTO出力軸13にスプライン嵌合したクラッチギア37に噛み合わせてPTO出力軸13を駆動している。(図10参照)
PTOクラッチ34の詳細を図11に示しているが、クラッチ入ではクラッチ盤88が繋がってケーシング86が回転して伝動するが、クラッチ切では戻しバネ87の圧でクラッチ盤88が離れてケーシング86をフリーにする。この時にケーシング86の付き回りを防ぐ為に繋ぎケース16のボス部81に当接する係止リング85をケーシング86の外周に装着している。
【0036】
走行駆動軸27には第三中継軸39を連結し、この第三中継軸39に固着したギア40ヘギア41,42を噛み合わせて第四中継軸43に伝動する。第四中継軸43にはメインギア軸44を連結している。
【0037】
メインギア軸44には、大ギア45と中ギア46を一体的に固着し、このメインギア軸44の延長上にサブギア軸47を分離して回転可能に軸支している。このサブギア軸47には小ギア48と大ギア74及び走行伝動ギア75を一体的に固着している。従って、大ギア45と中ギア46は同一回転をし、小ギア48と大ギア74は後述するクラッチギア77からの回転を受ける。(図11参照)
大ギア45はクラッチ軸49に装着した高速油圧クラッチ51のギア50と噛み合い、中ギア46はクラッチ軸49に装着した低速油圧クラッチ52のギア53と噛み合い、メインギア軸44の回転をクラッチ軸49へ高速或いは低速で伝動する。
【0038】
クラッチ軸49の延長上にスプライン軸76をスプライン嵌合し、このスプライン軸76にクラッチギア77をスプライン嵌合して、クラッチ軸49の回転をクラッチギア77に伝動している。また、クラッチ軸49を支持する繋ぎケース16のボス部81にはクラッチ軸49の油圧孔に通じる油圧用孔82,83,84を設けて、高速油圧クラッチ51と低速油圧クラッチ52に作動油を送るようにしている。
【0039】
クラッチギア77には大ギア78と小ギア73を形成し、大ギア78が前記サブギア軸47の小ギア48に噛み合って増速伝動して高速ギアクラッチ3aを構成したり、小ギア79がサブギア軸47の大ギア74に噛み合って減速伝動して低速ギアクラッチ3bを構成したり、大ギア78と小ギア73が共に游転して動力切になるようにして高低ギア変速クラッチ3を構成している。
【0040】
サブギア軸47の走行伝動ギア75は、スプライン軸76に遊嵌したべベルギア軸62にスプライン嵌合した走行ギア56に噛み合ってベベルギア軸62を駆動している。ベベルギア軸62のべベルギア63が前輪8の車軸へ装着したベベルギアへ駆動力を伝動するのである。
【0041】
ベベルギア軸62は、高速油圧クラッチ51からクラッチギア77の大ギア78とサブギア軸47の小ギア48への伝動による四速か、高速油圧クラッチ51からクラッチギア77の小ギア73とサブギア軸47の大ギア74への伝動による三速か、低速油圧クラッチ52からクラッチギア77の大ギア78とサブギア軸47の小ギア48への伝動による二速か、低速油圧クラッチ52からクラッチギア77の小ギア73とサブギア軸47の大ギア74への伝動による一速かのどれかで回転することになる。
【0042】
高速油圧クラッチ51と低速油圧クラッチ52と高低ギア変速クラッチ3を多段ギア変速機構7という。
また、ベベルギア軸62の回転は、走行ギア56からPTO軸32に装着した大小ギア59の小ギア部57へ伝動し、さらに大ギア部58に噛み合う後輪駆動軸61のクラッチギア60で適宜に後輪9へ駆動力を伝動可能にしている。
【0043】
走行ギア56は、ベベルギア軸62に伝動すると共に大小ギア59を介して後輪駆動軸61へ伝動しているので、伝動構成を単純化して前後に長くなるのを防いでいる。
尚、高速油圧クラッチ51と低速油圧クラッチ52はコントローラからの制御信号によりソレノイドを介してどちらかを入に保持するのであるが、ブレーキペダル12の踏み込みを検出するスイッチを設けて、このスイッチの踏込み信号で高速油圧クラッチ51と低速油圧クラッチ52のソレノイドへの電力を断って両クラッチ51,52をニュートラルにするようにしている。このニュートラルの状態でブレーキを作用することで素早く停止でき、ギア変速クラッチ3の切換えがスムースに行える。
【0044】
図12は、変速レバー4を示し、変速溝65を中央のニュートラル位置Nから前後位置H,Lに回動することで、前記のギア変速クラッチ3の高速ギアクラッチ3aが入か低速ギアクラッチ3bが入に変速し、この変速レバー4のグリップ66の頭部に設ける増速ボタン67を押すと高速油圧クラッチ51を入動作し、減速ボタン68を押すと低速油圧クラッチ52を入動作する。
【0045】
また、変速溝65には変速レバー4の位置を検出するセンサ70H,Lを設けて、変速レバー4が低速位置Lから高速位置Hに移動すると高速油圧クラッチ51が入であっても切にして、低速油圧クラッチ52が入になって三速になり、高速位置Hから低速位置Lに移動すると低速油圧クラッチ52が入であっても切にして、高速油圧クラッチ51が入になって二速になるようマイコン制御を行っている。なお、高速油圧クラッチ51を入りにする場合には、HSTペダル5が3/4以上踏込まれて無段変速機構が高速であれば一旦低速にして変速ショックを低減させる。また、変速レバー4が低速位置Lで滅速ボタン73を押すと一速になり、変速レバー4が高速位置Hで増速ボタン72を押すと四速になる。
【0046】
図13は、マイクロコンピュータ100の制御ブロック図である。
マイクロコンピュータ100へ入力するデータ信号は、HSTペダル5の踏込み角度がHSTペダルセンサ103から入力し、トラニオンセンサ(A,B)104からHST1のトラニオン軸の回動角度が入力し、リニアレバーセンサ105から前後進切換レバーRの前後進切換信号が入力し、クルーズコントロールスイッチ106からオートクルーズのオン・オフ信号が入力し、増減速スイッチ107から増減速設定信号が入力し、クルーズコントロールメモリスイッチ108から走行速度設定信号が入力し、ブレーキペダルセンサ109からブレーキペダル12の踏込み信号が入力し、車速センサ110から走行速度信号が入力し、HST回転軸センサ111からHST1で変速された走行駆動軸27の回転数が入力し、駐車ブレーキセンサ101からブレーキのオン信号が入力し、外気温度センサ102から外気温度が入力し、HSTオイルセンサ132からHST1のオイル温度が入力する。
【0047】
マイクロコンピュータ100から出力される制御信号は、トラニオン前進モータ112とトラニオン後進モータ113への駆動信号と、警報ブザー114への鳴動信号と、警報表示パネル115への表示信号と、低速油圧クラッチ52を作動する低速クラッチソレノイド116への一速と二速への切換信号と、高速油圧クラッチ51を作動する高速クラッチソレノイド117への三速と四速への切換信号等である。
【0048】
マイクロコンピュータ100による制御は、例えば、駐車ブレーキセンサ101からオン信号が入力中にHSTペダルセンサ103から踏込み信号が入力すれば、警報ブザー114を鳴らせるようにして、駐車ブレーキをしたままでの走行に注意を促がす。また、駐車ブレーキセンサ101からオン信号が入力中に車速センサ110から走行信号が出ると、警報ブザー114を鳴らして、不測の走行を防ぐ。
【0049】
また、HSTオイルセンサ132が検出するHST1内のオイル温度が所定温度以上になれば、増減速スイッチ107から増速信号が入力したら増速割合を低下させ、さらに上限温度に達すると増減速スイッチ107から増速信号が入力しても増速させないようにして、HST1のオーバーヒートによる作業中断を防ぐ。
【0050】
図示を省略するが、前輪と後輪を操舵する油圧シリンダを設けた構成で、二輪操舵と四輪操舵の切換スイッチを設け、二輪操舵の時の油圧力を四輪操舵の時の油圧力の半分になるように油圧回路のバルブを切り換えて操舵機構に過大な負荷が加わらないようにする。
【0051】
また、四輪駆動や四輪操舵で高速走行を行おうとすると警報を出したり高速への変速を出来ないように制御したりして、四輪駆動による車輪の摩耗を防ぎ、四輪操舵による操舵時の転倒を防ぐ。
【0052】
夜間走行で高速走行にすると電力不足でライトが暗くなったり、雨天時に草刈り作業を行うと負荷が増大して詰りが生じたりするので、ライトスイッチやワイパースイッチをオンすると走行速度を低下する制御を行う。
【0053】
住宅の近くて作業をする時に騒音を少なくするためのエコモードスイッチを設け、このエコモードスイッチをオンしてエンジンを起動している場合には、各種の警報の音量を小さくするように制御する。
【0054】
予熱スイッチを有するディゼルエンジンの場合に、キースイッチを予熱位置にした際にパーキングブレーキをしていなかったり燃料切れであったりエンジン回転がアイドリング位置になっていなければ警報を出すように制御する。
【0055】
PTO軸を駆動してオートクルーズで作業して場合には、前輪或は後輪の操舵を検出すると走行速度を低下させる制御を行って、機体が揺れたり車輪がスリップしたりするのを防ぐ制御を行う。
【0056】
図14は、キャビン11を手動油圧ポンプ133で前方回動させる構成で、手動油圧ポンプ133のアーム134に連結するエクステンションロッド135の連結ピン136を、ブレーキペダル12とブレーキを連結するブレーキロッド137とブレーキアーム138の連結に使っている。
【0057】
従って、キャビン11を前に倒して底部を開く場合には、ブレーキペダル12とブレーキの連結を切って手動油圧ポンプ133を使用することになるので、ブレーキペダル12とブレーキの連結部を破損することが無い。
【符号の説明】
【0058】
6 エンジン
90 周辺機器
11 キャビン
89a 第一取込口
89b 第二取込口
91 吸引風冷却装置(レシーバ)
92 フード
97 オイルクーラ
119 後壁
120 遮壁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多目的作業車の機体略中央にエンジン(6)とその周辺機器(90)及び吸引風冷却装置(91)を配置し、この吸引風冷却装置(91)の吸引風取り込み口(99a,99b)をキャビン(11)の後側の機体略中央で上方に開口部(89)を形成し、この開口部(89)をフード(92)で覆い該フード(92)に形成した吸引風取り込み口(99a),(99b)から冷却風を吸引すべくした多目的作業車の原動部空冷構造。
【請求項2】
フード(92)内にオイルクーラ(97)を縦に配置したことを特徴とする請求項1に記載の多目的作業車の原動部空冷構造。
【請求項3】
フード(92)の吸引風取り込み口(99a),(99b)をキャビン(11)の後壁(119)側の第一取込口(99a)とフード(92)の後方側の第二取込口(99b)としたことを特徴とする請求項1に記載の多目的作業車の原動部空冷構造。
【請求項4】
第二取込口(99b)に冷却風の通路を上部に限定する遮壁(120)を設けたことを特徴とする請求項3に記載の多目的作業車の原動部空冷構造。
【請求項1】
多目的作業車の機体略中央にエンジン(6)とその周辺機器(90)及び吸引風冷却装置(91)を配置し、この吸引風冷却装置(91)の吸引風取り込み口(99a,99b)をキャビン(11)の後側の機体略中央で上方に開口部(89)を形成し、この開口部(89)をフード(92)で覆い該フード(92)に形成した吸引風取り込み口(99a),(99b)から冷却風を吸引すべくした多目的作業車の原動部空冷構造。
【請求項2】
フード(92)内にオイルクーラ(97)を縦に配置したことを特徴とする請求項1に記載の多目的作業車の原動部空冷構造。
【請求項3】
フード(92)の吸引風取り込み口(99a),(99b)をキャビン(11)の後壁(119)側の第一取込口(99a)とフード(92)の後方側の第二取込口(99b)としたことを特徴とする請求項1に記載の多目的作業車の原動部空冷構造。
【請求項4】
第二取込口(99b)に冷却風の通路を上部に限定する遮壁(120)を設けたことを特徴とする請求項3に記載の多目的作業車の原動部空冷構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−31662(P2011−31662A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−177640(P2009−177640)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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