説明

多相交流送電網の各相を流れる部分電力の均一化

一方における複数の相導体(9〜11)を備える多相交流電力送電網(2)と、他方における多相インバータ(5)を有し電気エネルギーを交流電力送電網(2)に供給するためのユニット(3)、及び交流電力送電網に接続された電力消費負荷(6、7)と、の間の送電網の接続点(1)において、各相導体(9〜11)を流れる部分電力を均一化するために、各相導体(9〜11)を流れる部分電力間の差を判定し、インバータ(5)によって各相導体(9〜11)に対してそれぞれ異なる部分電力を供給することにより、その差を減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方における複数の相導体を備える多相交流電力送電網と、他方における多相インバータを有し電気エネルギーを交流電力送電網に供給するユニット、及び交流電力送電網に接続された消費負荷と、の間の送電網の接続点において、各相導体を流れる部分電力を均一化する方法に関する。
【0002】
更に、本発明は、一方における複数の相導体を備える多相交流電力送電網と、他方における多相インバータを有し電気エネルギーを交流電力送電網に供給するユニット、及び交流電力送電網に接続された消費負荷と、の間の送電網の接続点において、各相導体を流れる部分電力を均一化する装置に関する。本装置は特に、本発明の方法を実施するのに役立つものである。
【0003】
更に、本発明は、一方における複数の相導体を備える多相交流電力送電網と、他方における多相インバータを有し電気エネルギーを交流電力送電網に供給するユニット、及び交流電力送電網に接続された消費負荷と、の間の送電網の接続点において、各相導体を流れる部分電力を均一化する多相インバータに関する。本多相インバータもまた、特に、新方法を実施するのに役立つものである。
【0004】
送電網の接続点は、公共電力送電網への接続が行われる中継地点になり得る。別の方法として、送電網の接続点に、交流電力送電網をなすローカルグリッド形成ユニットを設けてもよい。
【0005】
具体的には、多相交流電力送電網は三相交流電力送電網である。しかし、本発明は、一般的に、例えば二相交流電力送電網などのあらゆる多相交流電力送電網に適用することができる。
【0006】
本発明の目的である各相導体を流れる部分電力の均一化、又は一致化には、不平衡負荷を小さくすること、つまり、例えば単相消費負荷が接続されることによって生じる多相交流電力送電網の各相の非対称負荷を小さくすることが含まれる。しかし、本発明は、交流電力送電網から受け取る電力だけでなく、送電網の接続点において交流電力送電網に対して供給される電力をも考慮に入れるものである。もしこの給電が、単相消費負荷が接続された1つの相を介して行われるだけではなく、別の相をも介して行われる場合、1つの相では交流電力送電網から電力が流れ、別の相では送電網の接続点において交流電力送電網に対して電力が供給されるという状況が発生し得る。これが非平衡負荷の極端な例である。
【背景技術】
【0007】
多相交流電力送電網から複数の消費負荷の電力を受け取る際、多相交流電力送電網の各相に単相消費負荷を分散させることにより、非対称負荷を抑えることが知られている。しかし、この手法では、多相交流電力送電網の各相導体を流れる部分電力を、統計平均として均一化するにすぎない。
【0008】
接続された交流電力送電網に対して高インピーダンスを示す送電網の接続点において、交流電力送電網から大電力を受け取る際、送電網の電圧が低下する。この現象を可変変圧器によって補償することが知られている。しかし、各相における負荷が非対称の場合、交流電力送電網に対して高インピーダンスを示す送電網の接続点における各相間に生じる電圧差は、可変変圧器によって補償することはできない。
【0009】
既に述べたように、1つの相により多相交流電力送電網に電気エネルギーを供給することにより、不要かつ非対称な電力の分配が生じることもある。ドイツ特許公開第102006003904号はこのような非対称に対抗するものとして知られており、複数の単相インバータにより交流電力送電網に供給される電力が交流電力送電網の相に対して均等に分配されるが、1つの相に給電する1つのインバータが故障した場合、その他の相に給電するその他のインバータの電力が制限される。
【0010】
国際公開第2006/084294号によると、三相交流電力送電網の相に個別に給電するインバータシステムが知られている。この場合、複数の単相インバータが、その入力端において、複数の太陽光発電機により給電される電力バスに接続される。太陽光発電機によって電力バスに供給される電力は、日射によって変化する。各インバータは並列に結合又は接続され、現在電力バスにおいて使用可能な電力を交流電力送電網に供給するが、インバータの数は電力損失を避けるために適宜少ないものとする。各相における不平衡負荷を避けるため、電力を供給する単相インバータは3つのグループ、すなわち1つの相に対して1つのグループにプールされる。
【0011】
譲受人は「サニーアイランド」と称する双方向のバッテリ接続インバータを販売しているが、これは、アイランドネットワークのための送電網の構成要素として使用することができ、負荷が接続されていない相から電力を受け取り、負荷が接続された相へ電力を出力することにより、アイランドネットワークの各相における非対称負荷を補償するものである。しかし、電力を補償しても、結果として双方向のインバータ内で電力損失が生じる。
【0012】
米国特許第4,177,508号において、三相ネットワークから給電される非対称負荷を平衡化させるために使用する装置が開示されている。装置は三相出力電流システムを発生させるためのインバータをその交流側に備え、ネットワークの逆相が供給される。次にインバータの直流側には、直流源から、平衡化すべき最大の非対称電力に対応する直流電流が供給される。直流源は、ネットワークに接続された整流器であることが好ましい。このように、既知であるこの装置は、全体として、非対称負荷を平衡化するためだけに提供されたものであり、これにはコストが嵩むうえ、電力損失も生じる。
【0013】
送電網の接続点において、1つの相において電力を受け取りつつ、同時に他の相において交流電力送電網へ給電することによって生じる不平衡負荷の極端な例について冒頭に述べたが、これは、インバータによって供給される電力の自家消費が利点を有する場合には、交流電力送電網において生じる不平衡負荷とは無関係に不利となる。この利点には、一般的に、自家発電された電力を自家消費すると、交流電力送電網に負荷がかからないという点が含まれる。更に、交流電力送電網から受け取る電気エネルギーのほうが交流電力送電網に供給される電力より高価な場合には、金銭的な利点も生じるであろう。しかし、自家発電した電気エネルギーを自家消費するインセンティブが、送電網に供給する電気エネルギーの支払額と送電網から受け取る電気エネルギーの料金との差より高い場合もまた、金銭的な利点が生じることになる。これが2009年1月1日施行版のドイツ再生可能エネルギー法(EEG2009)に従って生じる事例である。自家消費をすることにより金銭的な利点が得られるのであれば、1つの相から電力を供給しつつ、同時に他の相では交流電力送電網から電力を受け取るという状況は何としてでも避けなければならない。
【0014】
欧州特許公開第2114002号では、太陽電池の出力端子と、三相電力系統との間に接続された三相電力変換装置が開示される。変換装置は、三相インバータ回路及び三相インバータ回路の交流出力線に直列接続された単相インバータを備える。三相インバータ回路は、系統電圧半周期に対応する期間、逆極性の電圧パルスを出力する。半周期間における各単相インバータの電力負担が概ゼロとされ、各単相インバータは、逆極性電圧パルスを発生する期間には、各相の目標出力電圧に共通電圧を減算して補正するものである。三相電力システムにおける各相の負荷を平衡化することについての言及はない。
【0015】
一方における複数の相導体を備える多相交流電力送電網と、他方における多相インバータを有し電気エネルギーを交流電力送電網に供給するユニット、及び交流電力送電網に接続された消費負荷と、の間の送電網の接続点において、各相導体を流れる部分電力を均一化する方法、装置、及びインバータは、依然として必要とされており、それにより、一般的に、自家発電された電力の自家消費が最も効果的に行われると共に、送電網の接続点における多相交流電力送電網の非対称負荷を小さくする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】ドイツ特許公開第102006003904号
【特許文献2】国際公開第2006/084294号
【特許文献3】米国特許第4,177,508号
【特許文献4】欧州特許公開第2,114,002号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一態様によると、一方における複数の相導体を備える多相交流電力送電網と、他方における多相インバータを有し電気エネルギーを交流電力送電網に供給するユニット、及び交流電力送電網に接続された消費負荷と、の間の送電網の接続点において、各相導体を流れる部分電力を均一化する方法であって、各相導体を流れる部分電力間の差を判定する工程と、インバータを使用して各相導体に対してそれぞれ異なる部分電力を供給することにより、判定された差を減少させる工程を備える方法を提供する。
【0018】
本発明のその他の態様によると、一方における複数の相導体を備える多相交流電力送電網と、他方における多相インバータを有し電気エネルギーを交流電力送電網に供給するユニット、及び交流電力送電網に接続された消費負荷と、の間の送電網の接続点において、特に上記に記載の方法に従って、各相導体を流れる部分電力を均一化する装置であって、各相導体を流れる部分電力の差を判定する測定器と、インバータを稼働させ、各相導体にそれぞれ異なる部分電力を供給して、前記測定器において判定した差を減少させる制御器とを備える装置を提供する。
【0019】
本発明のその他の態様によると、一方における複数の相導体を備える多相交流電力送電網と、他方における多相インバータを有し電気エネルギーを交流電力送電網に供給するユニット、及び交流電力送電網に接続された消費負荷と、の間の送電網の接続点において、特に上記に記載の方法に従って、各相導体を流れる部分電力を均一化する多相インバータであって、前記インバータは、各相導体にそれぞれ異なる部分電力を意図的に供給するために前記インバータを稼働させることができるコントローラを備える。
【0020】
本発明のその他の特徴及び利益は、添付の図面及び詳細な説明を検討することによって当業者に明らかになるものである。それら追加の特徴及び利益についても、特許請求の範囲において明確になる本発明の範囲に含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明は、添付の図面を参照することでよりよく理解されよう。図面における構成要素は、必ずしも一定の比率の縮尺ではなく、その代わり本発明の原理を明確に図示することを重要視している。複数の図面を通して、同様の参照番号は対応する部品を示すものとする。
【図1】図1は第一実施形態による新装置及び新インバータによって新方法を実施したものを示す。
【図2】図2は第二実施形態による図1の新装置及び新インバータによって新方法を実施したものを示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
この新方法によると、多相交流電力送電網の各相導体を流れる部分電力の差を判定し、多相インバータにより各相導体に対してそれぞれ異なる部分電力を供給することにより、その差を減少させる。本発明では、多相インバータを使用して、各相導体を流れる電力を均一化する。そのため、現在最も多く電力が消費されている交流電力送電網の相又は相導体に、その出力電力を集中させることができるような特別な方法で、多相インバータを制御できるようにする必要がある。現在、既にこの目的に十分適う基本的な機能を有するインバータが存在するため、そのコントローラに関して、又は、インバータを稼働させる際にコントローラが実行するソフトウェアに関して、変更を行うだけでよい。
【0023】
多相インバータにより供給された電力を1つ又は複数の相又は相導体に集中させることにより、自家発電した電力を最も効果的に自家消費するためには、送電網の接続点において電力が各相導体内を流れる方向を判定し、それを互いに比較するだけでよい。電力の流れる方向が全て同じであれば、すなわち、全ての相において交流電力送電網から電力を受け取っているか、又は交流電力送電網に対して電力を供給しているならば、何もする必要はない。しかし、電力の流れる方向、すなわち、電力の利用状況を表すサインが互いに異なる場合は、インバータにより選択的に電力を供給することによってこの状態を阻止する必要がある。このため、最大供給電力において、自家発電した電力が自家消費される電力をどのような形にせよ上回っている場合には、最大供給電力における通常の比重と比較して、交流電力送電網の各相に対応する段階的な部分出力に関して、インバータのサイズを変える必要はない。しかし、多相インバータのサイズが基本的に小さい場合は、供給電力全体、ひいては最大供給電力を多相交流電力送電網の1つの相又は相導体に集中させることができ、好都合である。
【0024】
また、交流電力送電網の各相導体内の電力が異なる方向に流れない非対称負荷をも明確にするため、各相導体を流れる部分電力の判定及び比較は、サイン、つまり方向だけに関して行うのではなく、その値についても行い、その後、インバータにより選択的に各相導体に電力を供給することにより、それらを一致させてもよい。
【0025】
各相導体を流れる部分電力を判定するため、各相導体を流れる電流を個別に判定し、互いに比較してもよい。しかし、網の接続点における交流電力送電網のインピーダンスが、網の接続点とインバータとの間のインピーダンスに対して支配的な場合は、各相導体に存在する実効電圧の差を判定し、インバータにより各相導体に対してそれぞれ異なる部分電力を供給することにより、その差を減少させてもよい。この場合、各相導体を流れる電力は、存在する実効電圧への影響によって互いに比較される。
【0026】
この新方法で使用されるインバータは、交流電力送電網の他の相に対して、現在、供給電力を集中すべきでない場合に、この相に供給する電力を減少させるというだけの原理に基づいて動作するものではないことが理解されよう。その代わり、本インバータは、現在集中して給電すべき相に対して供給電力を集中させ、この相に対する供給電力を増加させる。この目的のために、多相インバータが交流電力送電網の全ての相に供給する電力に関しては、同じ電源から供給されるか、又は少なくとも供給されてもよい。具体的には、それぞれ異なる大きな部分電力が、インバータによって共通のリンクから交流電力送電網の各相導体に対して供給されてもよい。すなわち、使用可能な電気エネルギーはすべてリンクを介して流れ、その後、インバータによって交流電力送電網の相又は複数の相に分配されるが、この時、電気エネルギーの供給は適切に行われる。詳細には、各相導体に対してそれぞれ異なる電流を供給することによって、それぞれ異なる部分電力が実現され得る。複数の単相インバータから成るインバータを実現するためには、所望の各相に対応する複数の単相インバータに複数の電源を接続してもよい。このような、異なるインバータ間におけるエネルギー源の切り替えは、ドイツ特許公開第10061724号において一般に知られている。
【0027】
本発明の装置は、各相導体を流れる部分電力の差を判定する測定器、及び、インバータにより各相導体にそれぞれ異なる部分電力を供給してその差を減少させる制御器を特徴とする。測定器は各相導体を流れる電力の方向のみを測定してもよく、又は、それと共に、各相導体を流れる部分電力又は電流、及び/又は各相導体に存在する実効電圧を個別に測定してもよい。
【0028】
制御器は、少なくとも、各相導体を流れる電流の方向を一致させるように構成される。さらに、相導体を流れる部分電力の値、電流の値、及び/又は相導体に存在する実効電圧を一致させてもよい。
【0029】
本発明のインバータは、各相導体に対してそれぞれ異なる部分電力を供給するよう構成されたコントローラを特徴とする。既に述べたとおり、インバータが、共通のリンクから各相導体に対してそれぞれ異なる部分電力を供給することは好都合であり、これは、各相導体にそれぞれ異なる電流を供給することにより実現する。具体的には、インバータは、それぞれが多相の出力電流を発生させる1つ又は複数の反転回路を有していてもよく、又は、相毎に単相インバータを1つ又は複数組み合わせていてもよい。各相への供給電力については、インバータが三相インバータの場合、最大供給電力全体の少なくとも50%、好ましくは最大供給電力全体の少なくとも75%、最も好ましくは最大供給電力の全体を1つの相導体に供給し、多相インバータの供給電力を、部分負荷動作範囲だけでなく、交流電力送電網の1つの相に完全に集中させることができるように構成される。
【0030】
ここで図面をより詳細に参照すると、図1は、一方における三相交流電力送電網2と、他方におけるインバータ5を有し電気エネルギーを複数の太陽光発電機4から供給するためのユニット3、及び複数の電力消費負荷6及び7と、の間の送電網の接続点1を示す図である。交流電力送電網2の電線には、零導体8及び交流電力送電網2の三相のための三相導体9、10、11が含まれる。インバータ5は三相導体9、10、11の全てに給電する。消費負荷6及び7は単相消費負荷であり、それぞれが交流電力送電網2の1つの相のみから電力を受け取る。消費負荷6は相導体11と零導体8との間に接続され、消費負荷7は相導体10と零導体8との間に接続される。図示した消費負荷6及び7の他にも消費負荷があってもよく、その内いくつかが相導体9と零導体8との間に接続されていてもよい。送電網の接続点1において、各相導体9〜11を流れる電力、特にその電力の流れる方向が測定器12によって判定される。測定器12は、交流電力送電網2から受け取る電気エネルギー並びに交流電力送電網2に供給される電気エネルギーを相毎に監視するメータであってもよい。測定器12の測定信号13は制御器14に送られ、そこから制御信号15がインバータ5のコントローラ16に出力される。コントローラ16は、インバータ5からの供給電力を各相導体8〜11に分配する。ここで、供給電力全体が全ての太陽光発電機4が接続されたリンク17を介して流れるため、インバータ5の当該供給電力を、交流電力送電網2の1つ又は2つの相に集中させることが可能である。
【0031】
3つの消費負荷6及び7がそれぞれインバータ5の当該供給電力の1/3ずつの電力を消費する場合、インバータ5の供給電力を均一に相導体9〜11に分配すると仮定すると、交流電力送電網2から相導体11を介して電力を受け取ると共に、相導体9を介して交流電力送電網2に対して電力が供給されることになる。これは、2つの消費負荷6が相導体11に接続されていて、インバータ5から供給される電力を併せて2倍消費するのに対して、相導体9には消費負荷6又は7が接続されていないので、インバータ5から供給される電力が交流電力送電網2に供給されてしまうという事実によるものである。電気エネルギーを交流電力送電網2から受け取ると同時に、電気エネルギーが交流電力送電網2に対して供給されるというこの状況を避けるために、また、交流電力送電網2に不平衡負荷のみがかかるというこの不必要な状況を避けるために、制御器14はインバータ5のコントローラ16を稼働させ、相導体9の供給電力を利用して相導体11への供給電力を増加させ、最終的には、送電網の接続点1において各相導体を流れる電力の方向が少なくとも全て同じになるようにする。この場合、網の接続点には電力が全く流れない。その代わり、インバータ5は消費負荷6及び7に対して給電を行うので、自家発電した電気エネルギーを完全に自家消費するという意味をもつ。
【0032】
自家発電した電気エネルギーの合計が自家消費される電気エネルギーと異なる場合には、制御器14がインバータ5のコントローラ16を稼働させて、相導体9〜11の全てを介して、交流電力送電網2に電気エネルギーが供給されるか、又は交流電力送電網2から電気エネルギーを受け取るかのどちらか一方になるようにする。これにより自家発電した電気エネルギーを確実に最大限自家消費することができる。同時に、交流電力送電網2の非対称負荷がどのようなものであってもそれを小さくする。不平衡負荷を小さくすることにより、制御器14もまた各相導体9〜11を流れる電力値を互いに均一化させるのに役立つということもできるであろう。
【0033】
交流電力送電網2は公共電力送電網だけでなく、例えば、送電網の構成要素として双方向のバッテリ接続インバータを備える、例えばアイランドネットワークなどであってもよい。この場合、制御器14はインバータ5のコントローラ16を稼働させて、双方向のバッテリ接続インバータによって交流電力送電網2の1つの相から別の相へ電力が分流して不要な電力損失が発生することを防ぐ。この不要な電力損失は、このような送電網の構成要素に接続されたアイランドネットワークにおいて、特に、エネルギー不足が生じた場合、すなわち、不要な電気エネルギーの消費を避けなければならない状況において生じる。送電網の構成要素とアイランドネットワークとの間の送電網の接続点において本新方法を実施しても、非常に好都合である。
【0034】
インバータ5もまた、2つ以上の単相インバータから形成されていてもよく、各単相インバータは、相導体9〜11の1つにのみ電力を供給し、自身の電力は自身で賄うか、又は、例えば同じ太陽光発電機等の同じ電源により少なくとも電力の供給を受けて、使用可能な全電力を可変の比重で各相導体9〜11へ供給する。
【0035】
図2において、送電網の接続点1における交流電力送電網2の高インピーダンスを抵抗器18として表す。このインピーダンスにより、送電網の接続点1において相導体9〜11から電力を受け取る際に、送電網の接続点1において送電網の電圧が低下する。ここでは、1つの消費負荷6のみが図示されているように、電力は1つの相導体11のみでしか利用されないため、この相導体11に存在する送電網の電圧のみが低下する。逆に、図示されない追加の単相インバータによって、1つの相導体に対してのみ電気エネルギーが供給された場合には、この相導体における送電網の電圧がその分増加し、例えば、各相導体における送電網の電圧が非対称になることもある。それぞれの場合において、送電網の電圧の非対称は測定器12によって判定されるが、ここでは測定器は電圧計とする。この制御器14は、電圧計19で測定された電圧を制御信号15を介して均一化し、非対称負荷に対応、すなわち減少した電力を供給するうえ、特に、交流電力送電網2の1つの相から電力を受け取り、一方で交流電力送電網2の他の相に電力が供給されることを防ぐ。
【符号の説明】
【0036】
1 送電網の接続点
2 交流電力送電網
3 電気エネルギー供給ユニット
4 太陽光発電機
5 インバータ
6 消費負荷
7 消費負荷
8 零導体
9 相導体
10 相導体
11 相導体
12 測定器
13 測定信号
14 制御器
15 動作信号
16 コントローラ
17 リンク
18 抵抗器
19 電圧計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方における複数の相導体(9〜11)を備える多相交流電力送電網(2)と、他方における多相インバータ(5)を有し電気エネルギーを前記交流電力送電網(2)に供給するユニット(3)、及び交流電力送電網に接続された消費負荷(6、7)と、の間の送電網の接続点(1)において、前記各相導体(9〜11)を流れる部分電力を均一化する方法であって、
前記各相導体(9〜11)を流れる部分電力間の差を判定する工程を備え、
前記インバータ(5)を使用して前記各相導体(9〜11)に対してそれぞれ異なる部分電力を供給することにより、判定された差を減少させる工程を更に備える方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記判定する工程において、前記各相導体(9〜11)を流れる部分電力の方向を判定し、互いに比較することによって、前記減少させる工程において減少させる部分電力間の差が決定する方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって、前記判定する工程において、前記各相導体(9〜11)を流れる部分電力を判定し、互いに比較することによって、前記減少させる工程において減少させる部分電力間の差が決定する方法。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載の方法であって、前記判定する工程において、前記各相導体(9〜11)を流れる電流を判定し、互いに比較することによって、前記減少させる工程において減少させる部分電力間の差が決定する方法。
【請求項5】
請求項1、2又は3に記載の方法であって、前記判定する工程において、前記交流電力送電網(2)のインピーダンスが支配的な場合には、前記各相導体(9〜11)に存在する実効電圧の差を判定し、互いに比較することによって、前記減少する工程において減少させる部分電力間の差が決定する方法。
【請求項6】
請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の方法であって、前記減少させる工程において、それぞれ異なる部分電力は、前記インバータ(5)によって、共通のリンク(17)から前記各相導体(9〜11)に対して供給される方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、前記減少させる工程において、それぞれ異なる部分電力は、前記インバータ(5)によって、前記共通のリンク(17)から前記各相導体(9〜11)に対して、それぞれ異なる電流を供給することによって供給される方法。
【請求項8】
一方における複数の相導体(9〜11)を備える多相交流電力送電網(2)と、他方における多相インバータ(5)を有し電気エネルギーを前記交流電力送電網(2)に供給するユニット(3)、及び交流電力送電網に接続された消費負荷(6、7)と、の間の送電網の接続点(1)において、特に請求項1〜7のうちいずれか一項に記載の方法に従って、前記各相導体(9〜11)を流れる部分電力を均一化する装置であって、
前記各相導体(9〜11)を流れる部分電力の差を判定する測定器(12)を備え、
インバータ(5)を稼働させ、前記各相導体(9〜11)にそれぞれ異なる部分電力を供給して、前記測定器(12)において判定した差を減少させる制御器(14)を更に備える装置。
【請求項9】
請求項8に記載の装置であって、前記測定器(12)は前記各相導体(9〜11)を流れる部分電力の方向を判定し、前記制御器(14)は前記各相導体(9〜11)を流れる電力の方向を均一化する装置。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の装置であって、前記測定器(12)は前記各相導体(9〜11)を流れる部分電力を判定し、前記制御器(14)は前記各相導体(9〜11)を流れる部分電力を均一化する装置。
【請求項11】
請求項8、9又は10に記載の装置であって、前記測定器(12)は前記各相導体(9〜11)を流れる電流を判定し、前記制御器(14)は前記各相導体(9〜11)を流れる電流を均一化する装置。
【請求項12】
請求項8〜11のうちいずれか一項に記載の装置であって、前記測定器(12)は前記各相導体(9〜11)に存在する実効電圧を判定し、前記制御器(14)は前記各相導体(9〜11)に存在する実効電圧を均一化する装置。
【請求項13】
一方における複数の相導体(9〜11)を備える多相交流電力送電網(2)と、他方における多相インバータ(5)を有し電気エネルギーを前記交流電力送電網(2)に供給するユニット(3)、及び交流電力送電網に接続された消費負荷(6、7)と、の間の送電網の接続点(1)において、特に請求項1〜7のうちいずれか一項に記載の方法に従って、前記各相導体(9〜11)を流れる部分電力を均一化する前記多相インバータ(5)であって、
前記インバータは、前記各相導体(9〜11)にそれぞれ異なる部分電力を意図的に供給するために前記インバータを稼働させることができるコントローラ(16)を備えるインバータ。
【請求項14】
請求項13に記載のインバータであって、前記インバータ(5)は、それぞれ異なる部分電力を、共通のリンク(17)から各相導体 (9〜11)に対して供給するインバータ。
【請求項15】
請求項14に記載のインバータであって、前記インバータ(5)は、それぞれ異なる部分電力を、共通のリンク(17)から前記各相導体 (9〜11)に対してそれぞれ異なる電流を供給することによって供給するインバータ。
【請求項16】
請求項14又は15に記載のインバータであって、前記インバータ(5)は、前記共通のリンク(17)から給電される多相インバータ回路を備えるインバータ。
【請求項17】
請求項14又は15に記載のインバータであって、前記インバータ(5)は、前記共通のリンク(17)から給電されるいくつかの単相インバータを備えるインバータ。
【請求項18】
請求項14〜17のうちいずれか一項に記載のインバータであって、前記各相導体に対応する前記インバータの段階的な部分出力は、前記インバータ(5)の最大供給電力全体の少なくとも50%を1つの前記相導体(9、10又は11)に供給できるように構成されているインバータ。
【請求項19】
請求項18に記載のインバータであって、各相導体に対応する前記インバータの段階的な部分出力は、前記インバータ(5)の最大供給電力全体の少なくとも75%を1つの前記相導体(9、10又は11)に供給できるように構成されているインバータ。
【請求項20】
請求項19に記載のインバータであって、前記各相導体に対応する前記インバータの段階的な部分出力は、前記インバータ(5)の最大供給電力全体の100%を1つの前記相導体(9、10又は11)に供給できるように構成されているインバータ。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−517757(P2013−517757A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−549354(P2012−549354)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際出願番号】PCT/EP2011/050746
【国際公開番号】WO2011/089181
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(504109698)エスエムエー ソーラー テクノロジー アーゲー (14)
【Fターム(参考)】