説明

多糖ゲル配合物

本明細書は、少なくとも1つの多糖分解阻害剤を含むゲル配合物およびその製造法について記載する。本明細書に記載の方法は、少なくとも1つの多糖を準備する工程および少なくとも1つの分解阻害剤を多糖に組み込む工程を含む。ある実施形態において、組み込み工程は、1)少なくとも1つの阻害剤と少なくとも1つの高水和状態の多糖とを混合し、それにより少なくとも1つの阻害剤を多糖網状構造に封入すること、および2)多糖網状構造を脱水し、それにより放出動態または最終膨潤率を調節することを含む。他の実施形態において、組み込み工程は、1)少なくとも1つの阻害剤を、生物適合性または生物分解性容器に封入すること、および2)多糖と容器を合わしてゲル配合物にすることを含む。本明細書の多糖ゲル配合物は各種の美容用途に使用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
美容または医療用の多糖ゲルの寿命を増加させるのに有用な配合物、ならびにその製造法および使用法を一般に開示する。
【背景技術】
【0002】
多糖は、比較的複雑な炭水化物である。それらは、グリコシド結合によって結合した多くの単糖から構成される。従って、それらは、大きく、分岐していることが多い、巨大分子である。多糖、特にヒアルロン酸(HA)は、美容および医療用途に有用である。これらのポリマーは、例えば、軟部組織増強における充填剤として、有用である。
【0003】
HAは、細胞外空間に存在し、特殊展性物理的特性および優れた生物適合性を有する空間充填、構造安定化および細胞保護の分子として機能する。HA基質は、高レベルの水和を維持しながら、極めて粘弾性である。皮膚の含水量と、皮膚組織のHAレベルとの間に強い相関関係が存在する。ヒト皮膚が老化すると共に、HA含有量および代謝が変化することが既知である。これらの変化に伴って、皮膚の機械的特性が有意に低下する。若々しい皮膚と、細胞間基質中の強いHA網状構造の存在との間に関連性があると考えられる。
【0004】
残念なことに、HAのような非架橋および架橋多糖鎖は、種々の経路(例えば、酵素、遊離基)による分解を受け、それによって重合体の生体内寿命を限定する。従って、自然分解の速度を減少させ、生体内での製剤存続性(product's persistence)を増加させる方法および組成物を開発することが重要である。耐分解性であることによって増加した寿命を有する多糖配合物が現在も必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
生体内での増加した寿命または増加した分解時間を有する多糖ゲル(例えば、ヒアルロン酸、HA)を本明細書において開示する。この分解時間の増加は、分解に対して阻害剤として作用する分子を組み込むことによって付与される。さらに、本開示は、生体内での長時間の寿命または分解時間を維持するために、これらの配合物を封入する方法を提供する。本開示は、医薬または美容用途を有しうるゲルの製造にも関する。
【0006】
本明細書に開示される1つの実施形態は、下記を含んで成る多糖ゲル配合物である:
下記から成る群から選択される少なくとも1つの多糖:ヒアルロン酸、セルロース、キトサン、o-硫酸化HA、デキストラン、硫酸デキストラン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラチン硫酸、ヘパリン、ヘパリン硫酸、およびアルギン酸塩、および
下記から成る群から選択される少なくとも1つの多糖分解阻害剤:グリコサミノグリカン、抗酸化剤、フラボノイド、タンパク質、脂肪酸、およびそれらの組合せ。
1つの実施形態において、多糖は架橋されている。1つの実施形態において、少なくとも1つの多糖はヒアルロン酸である。
【0007】
1つの実施形態において、グリコサミノグリカンは、下記から成る群から選択される:ヘパリン、ヘパリン硫酸、デルマタン硫酸、コンドロイチン硫酸、o-硫酸化ヒアルロン酸、リナマリン、およびアミグダリン。他の実施形態において、グリコサミノグリカンはコンドロイチン硫酸であり、約1wt%〜約40wt%の濃度で存在する。
【0008】
1つの実施形態において、抗酸化剤は、下記から成る群から選択される:アスコルビン酸、メラトニン、ビタミンC、ビタミンEおよびそれらの組合せ。
【0009】
1つの実施形態において、フラボノイドは、下記から成る群から選択される:
ルテオリン、アピゲニン、タンゲリチン、ケルセチン、ケンプフェロール、ミリセチン、フィセチン、イソルハムネチン、パキポドール、ラムナジン、ヘスペレチン、ナリンゲニン、エリオジクチオール、ホモエリオジクチオール、タキシホリン、ジヒドロケルセチン、ジヒドロケンプフェロール、タンニン酸、タニス、縮合タニス、加水分解性タニス、およびそれらの組合せ。他の実施形態において、フラボノイドはタンニン酸であり、約0.0001wt%〜約1wt%の濃度で存在する。
【0010】
1つの実施形態において、タンパク質は血清ヒアルロニダーゼ阻害剤である。他の実施形態において、脂肪酸は飽和C10-22脂肪酸である。
【0011】
1つの実施形態において、配合物は、生物適合性または生物分解性容器(vessel)をも含んで成り、該容器の中または一部に阻害剤が存在し、該容器はリポソーム、ミセル、または重合小胞である。他の実施形態において、阻害剤が、向上した流動学的性質を有する配合物を与え、それによって、架橋多糖ゲル配合物と比較して、投与に必要な押出力がより少なくなる。
【0012】
本明細書に開示される1つの実際形態は、増加した分解時間を有する多糖ゲル配合物の製造法であり、下記の工程を含んで成る:
下記から成る群から選択される少なくとも1つの多糖を準備する工程:ヒアルロン酸、セルロース、キトサン、o-硫酸化HA、デキストラン、硫酸デキストラン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラチン硫酸、ヘパリン、ヘパリン硫酸、およびアルギン酸塩;および
下記から成る群から選択される少なくとも1つの多糖分解阻害剤を、多糖に組み込む工程:グリコサミノグリカン、抗酸化剤、フラボノイド、タンパク質、および脂肪酸。
【0013】
前記方法の1つの実施形態において、組み込み工程は、下記を含んで成る:
1) 阻害剤と高水和状態の多糖とを混合し、それによって多糖網状構造に阻害剤を封入し;
2) 多糖網状構造を脱水し、それによって放出動態または最終膨潤率を調節する。
【0014】
前記方法の他の実施形態において、少なくとも1つの多糖分解阻害剤の組み込み前に、少なくとも1つの多糖が、下記から成る群から選択される架橋剤を使用して架橋される:1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)、1,2-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)エチレン、1-(2,3-エポキシプロピル)-2,3-エポキシシクロヘキサン、およびそれらの組合せ。
【0015】
前記方法の他の実施形態において、組み込み工程は、下記を含んで成る:
1) 阻害剤を、生物適合性または生物分解性容器に封入し;
2) 少なくとも1つの多糖および該容器を合わして、ゲル配合物にする。
【0016】
本明細書に開示される1つの実施形態は、増加した分解時間を有する多糖ゲル配合物であって、架橋ヒアルロン酸およびタンニン酸を含んで成り、タンニン酸が約0.0001%〜約1%の濃度で存在する多糖ゲル配合物である。
【0017】
本明細書において開示される1つの実施形態は、増加した分解時間を有する多糖ゲル配合物であって、架橋ヒアルロン酸およびコンドロイチン硫酸を含んで成り、コンドロイチン硫酸が約1%〜約40%の濃度で存在する多糖ゲル配合物である。
【0018】
多糖ゲル配合物、医薬的に許容される担体、および活性成分を含んで成る医薬組成物も本明細書において開示される。1つの実施形態において、活性成分は、下記から成る群から選択される:抗かゆみ剤、抗セルライト剤、抗瘢痕剤、抗炎症剤、抗酸化剤、ビタミン、保湿剤、およびそれらの組合せ。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】比色定量法を使用した、コンドロイチン硫酸(CSA)を含有する多糖ゲルの酵素的分解度を示すグラフである。
【図2】比色定量法を使用した、タンニン酸(TA)を含有する多糖ゲルの酵素的分解度を示すグラフである。
【図3】溶解HA定量法を使用した、CSA含有および不含多糖ゲルの酵素的分解度を示すグラフである。
【図4】溶解HA定量法を使用した、TA含有および不含多糖ゲルの酵素的分解度を示すグラフである。
【図5】多糖ゲルの押出力における、CSAの作用を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書において、分解阻害剤として作用する分子を組み込むことによって付与される生体内での増加した寿命または増加した分解時間を有する多糖ゲル(例えば、ヒアルロン酸、HA)配合物を開示する。いくつかの実施形態において、多糖ゲルは架橋されている。さらに、本開示は、生体内での長時間の寿命または分解時間を維持するために、これらの配合物を封入する方法にも関する。本開示は、医薬または美容用途を有しうるゲルの製造にも関する。
【0021】
本開示の1つの態様は、少なくとも1つの多糖および少なくとも1つの多糖分解阻害剤を含んで成る多糖ゲル配合物に関する。本開示は、さらに、分解阻害剤を組み込むことによって多糖ゲルの分解時間を増加させることにも関する。「多糖」は、2つ以上の単糖分子のポリマーを意味し、該単糖は同じであってもよく異なってもよい。本開示の多糖は、架橋していても架橋していなくてもよい。本明細書において使用される多糖は、HA、セルロース、キトサン、o-硫酸化HA、デキストラン、硫酸デキストラン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラチン硫酸、ヘパリン、ヘパリン硫酸およびアルギン酸塩であってよいが、それらに限定されない。
【0022】
阻害剤は、酵素的分解および遊離基分解のような特定分解メカニズムを標的とし中和することによって作用する分子である。阻害活性を示す分子は、グリコサミノグリカン(GAG)(例えば、ヘパリン、ヘパリン硫酸、デルマタン硫酸、コンドロイチン硫酸、o-硫酸化HA、リナマリンおよびアミグダリン)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メラトニン、ビタミンCおよびビタミンE)、タンパク質(例えば、血清ヒアルロニダーゼ阻害剤)および脂肪酸(例えば、飽和C10〜C22脂肪酸)を包含するが、それらに限定されない。
【0023】
阻害剤は、一般に、架橋多糖ポリマーより数オーダー小さい分子である。それらの小ささおよびより高い拡散性により、それらは生体内で急速に吸着されやすく、それは潜在的にそれらの性能を限定しうる。生体内におけるそのような分子の局所半減期を増加させる1つの方法は、それらを多糖ポリマー網状構造に化学的にグラフトし、それらを同時に送達することである。この方法の1つの不利点は、結合分子が、非結合分子と比較して、有意に低い活性を示すことである。本発明の多糖ゲル配合物において、阻害剤濃度は、約0.0001wt%〜約99wt%、約0.001wt%〜約75wt%、約0.01wt%〜約60wt%、約1wt%〜約50wt%、約1wt%〜約40wt%、約1wt%〜約30wt%、約1wt%〜約20wt%、約10wt%〜約20wt%、約20wt%〜約30wt%、約0.0001wt%〜約0.01wt%、約0.0001wt%〜約0.1wt%、約0.0001wt%〜約1wt%、約0.001wt%〜約1wt%、約0.01wt%〜約1wt%、または約1wt%〜約10wt%の範囲であってよい。
【0024】
本開示の他の態様は、減少した分解を有する多糖ゲル配合物を製造する方法であって、多糖を準備し、該多糖に分解阻害剤を組み込むことを含んで成る方法に関する。
【0025】
非架橋および架橋多糖鎖は、種々の経路(例えば、酵素、遊離基)による分解を受け、これは多くの場合、生体内におけるポリマーの寿命を限定する。従って、この自然分解過程の速度を減少させ、組織における製剤存続性を高める方法を開発することが重要である。
【0026】
増加した多糖存続性を得る1つの方法は、多糖ポリマー網状構造自体かまたは該網状構造内の大容器に阻害剤分子を封入し、それにより分解阻害剤の局所(注入部位)持続制御放出を可能にしうる。これは、自然分解メカニズムの回避をも可能にしうる。本発明の封入法は、何週間にもわたって、多糖ポリマー網状構造への分解阻害剤の一定供給を付与する。他の実施形態においては、分解阻害剤の一定供給が、何ヵ月にもわたって付与される。1つの封入方法は、吸着によるかまたは封入法によって、分解阻害剤を多糖ポリマー網状構造に組み込むことである。後者の場合、阻害剤を、高水和状態の多糖網状構造と混合し、次に、網状構造を脱水して、放出動態(例えば、ポリマーの最終膨潤率)を調節しうる。高水和状態は、約20mg/mL未満のHA濃度に相当する。
【0027】
最終膨潤率は、pHを調節するか、または多糖網状構造を部分的に脱水することによって、調節できる。収縮した網状構造を粒子の大きさにし、多糖ゲルと混合し、注入部位で送達することができる。阻害剤負荷多糖粒子のゆっくりした再水和は、それらの活性含有物の持続制御送達を付与しうる。
【0028】
本開示の他の態様は、多糖および多糖分解阻害剤を含んで成り、生物適合性または生物分解性容器をさらに含んで成り、該阻害剤が該容器の中に存在するかまたは該容器の一部である、多糖ゲル配合物に関する。そのような容器は、非共有結合または共有結合自己構成分子、例えば、リポソーム、ミセルおよび重合小胞から成ってよい。
【0029】
リポソームは、混合脂質鎖を有する天然由来燐脂質(例えば、卵ホスファチジルエタノールアミン)または純粋界面活性剤成分(例えば、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE))から形成された1つまたはそれ以上の二重膜から成る小胞である。リポソームは、限定的ではないが一般に、水溶液のコアを有し、水性物質を含有しない脂質構造物はミセルと呼ばれる。ミセルは、液体コロイドに分散した界面活性剤分子の凝集体である。典型的な水溶液中のミセルは、親水性「頭部」領域が周囲溶媒と接触し、ミセル中心における疎水性「尾部」領域を金属イオン封鎖する凝集体を形成する。このタイプのミセルは、順相ミセル(水中油型ミセル)として既知である。逆ミセルは、中心に頭部を有し、尾部が外方向に伸長している(油中水型ミセル)。ミセルは、多くの場合、ほぼ球形であるが、楕円形、円柱形および二重層を包含する他の形態も可能である。ミセルの形および大きさは、その界面活性剤分子の分子構造ならびに溶解条件、例えば、界面活性剤濃度、温度、pHおよびイオン強度の関数である。ミセルの形成過程は、ミセル化(micellisation)として既知であり、多くの脂質の相挙動の部分をそれらの多形性に従って形成する。
【0030】
本開示の他の態様は、減少した分解性を有する多糖ゲル配合物の製造法に関し、該方法は下記の工程を含んで成る:1)多糖を準備し、2)生物適合性または生物分解性容器に阻害剤を組み込み、3)該多糖および該容器を合わして、ゲル配合物にする。従って、この封入方法は、多糖と共に送達することができる生物適合性および生物分解性容器に、阻害剤を組み込む。そのような容器は、非共有結合または共有結合自己構成分子から形成できる(例えば、ミセル、リポソームおよび重合小胞)。本明細書において使用される自己構成という用語は、既存成分の無秩序系が、外部指示なしに、成分自体の間の特定の局所相互作用の結果として、組織化された構造またはパターンを形成する過程を意味する。
【0031】
提示されている配合物の他の利点は、最終製剤の流動学的性質の調節可能性の増加である。架橋多糖ゲルは、高い粘度を一般に有し、細い針を通して押出すのにかなりの力を必要とする。非架橋多糖は、この押出工程を容易にするための潤滑剤として使用されることが多い。しかし、特にHA皮膚充填剤において、非架橋HAは、生体内での最終製剤の存続性に寄与しない。実際に、皮膚充填剤の流動学的性質を調節するために、より多くの架橋HAを非架橋HAで置き換えた場合(固定総HA濃度)、製剤の耐分解性がより低くなる。それに代わって、提示配合物によれば、分解阻害剤でもある非架橋GAG(例えば、コンドロイチン硫酸、o-硫酸化ヒアルロン酸)を使用して、最終製剤の寿命を延長させることができ、かつ流動学的性質を向上させることもできる。
【0032】
本明細書に開示されている多糖は、架橋または非架橋であってよい。本開示に従って、架橋剤を使用して、多糖を架橋することができる。架橋剤は、多糖およびその誘導体をそれらのヒドロキシル基によって架橋するのに適していることが既知の任意の架橋剤であってよい。好適な架橋剤は、例えば、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(または、1,4-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)ブタンまたは1,4-ビスグリシジルオキシブタン、それらは全てBDDEとして一般に既知である)、1,2-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)エチレンおよび1-(2,3-エポキシプロピル)-2,3-エポキシシクロヘキサンであるが、それらに限定されない。2つ以上の架橋剤または異なる架橋剤の使用も、本発明の開示の範囲に含まれる。1つの実施形態において、架橋剤は、BDDEを含んで成るか、またはそれから成る。
【0033】
皮膚充填剤は、中等度〜重度の顔のシワおよびヒダ、例えば法令線(鼻翼から口角に伸長する線)を処置するのに使用できる。皮膚充填剤は、HA、天然複合糖(皮膚弾力性を高め、滑らかでかつ柔らかい外観を与える)を含有するゲルインプラントであってよい。それは、生物適合性であり、加齢によって減少する体の天然HAを補充することができる。
【0034】
皮膚用ゲルは、顔の真皮の中間層〜深層に注射器で注入することができる。真皮は、結合組織、神経終末、汗腺、皮脂腺および血管を含む表皮下層である。真皮充填剤は、処置領域のシワおよびヒダを伸ばし、それらに量感を付加することによって、皮膚外観を向上させることができる。
【0035】
本開示の他の態様は、本発明の多糖ゲル配合物、美容担体および活性成分を含んで成る美容組成物に関する。美容活性成分は、抗酸化剤、ビタミンおよび保湿剤を包含しうるが、それらに限定されない。
【0036】
本明細書において使用される「美容」は、表面の外観を向上させるか、または欠点をカバーすることを意味する形容詞である。一般に、美容組成物は、表面の機能的側面ではなく美しさを向上させるために使用することができる。最も一般的には、美容組成物は、健康および美容処置としての適用のため、または容姿、例えば、皮膚、髪、爪等の角質面への作用のために、配合される。
【0037】
本明細書において使用される「美容的に許容される担体」は、体の角質面または他の領域に適用するのに好適な物質を意味する。適用の際に、美容的に許容される担体は、皮膚および他の角質面との有害反応を実質的に生じない。例えば、美容担体は、脂肪質または非脂肪質クリーム、油中エマルジョンまたは水中油型の乳状懸濁液、ローション、ゲルまたはゼリー、コロイド状または非コロイド状水性または油性溶液、ペースト、エーロゾル、可溶性錠剤またはスティックの形態であってよい。
【0038】
本明細書において使用される「配合物」および「組成物」は交換可能に使用してよく、所定の目的のために合わされた成分の組合せを意味する。そのような用語は、当業者に周知である。
【0039】
本明細書において使用される「担体」、「不活性担体」および「許容される担体」は、交換可能に使用してよく、所望の組成物を得るために、現在開示されている多糖ゲルと組み合わせてよい担体を意味する。当業者は、特定の治療用医薬組成物および/または美容組成物の製造に関して周知の、多くの担体を認識している。
【0040】
本開示の他の態様は、多糖ゲル配合物、医薬担体および活性成分を含んで成る医薬組成物に関する。本明細書において使用される、活性成分は、薬剤を包含するが、それに限定されない。薬剤は一般に、疾患の治療、治癒、予防または診断に使用されるか、または肉体的または精神的健康を増進させるのに使用される化学物質として定義できる。
【0041】
本発明の医薬組成物に含有させることができる活性成分の例は、抗かゆみ剤、抗セリュライト剤、抗瘢痕剤および抗炎症剤である。抗かゆみ剤は、メチルスルホニルメタン、炭酸水素ナトリウム、カラミン、アラントイン、カオリン、ペパーミント、ティーツリー油およびそれらの組合せを包含しうる。抗セルライト剤は、フォルスコリン、キサンチン化合物(例えば、カフェイン、テオフィリン、テオブロミンおよびアミノフィリンを包含するが、それらに限定されない)、およびそれらの組合せを包含しうる。抗瘢痕剤は、IFN-Y、フルオロウラシル、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)、メチル化ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、ポリエチレングリコール、およびそれらの組合せを包含しうる。抗炎症剤は、デキサメタゾン、プレドニゾロン、コルチコステロン、ブデソニド、エストロゲン、スルファサラジン、メサラミン、およびそれらの組合せを包含しうる。
【0042】
HAのような多糖は、体の多くの組織(例えば、皮膚、軟骨および硝子体液であるが、それらに限定されない)に天然に見出される。従って、これらの組織を標的とする生物医学用途に極めて適している。HAは、眼手術(例えば、角膜移植、白内障手術、緑内障手術、および網膜剥離の修復手術)に使用することができる。HAは、膝の骨関節炎の治療にも使用される。粘性補充(visco-supplementation)と称されるそのような治療は、膝関節への注射によって行なわれ、関節液の粘性を補い、それによって、関節を潤滑にし、関節への衝撃を緩和し、鎮痛作用を生じると考えられる。HAは、軟骨細胞における正の生化学作用を有することも示されている。有効性を立証する必要はあるが、最近、HAの経口使用が示されている。現在、いくつかの予備臨床試験は、HAの経口投与が骨関節炎に正の作用を有することを示唆している。
【0043】
HAは、高生物適合性であり、かつ組織の細胞外基質に一般に存在することにより、組織工学研究における生体材料骨格として使用することができる。ある種の癌において、HAレベルは、悪性度および悪い予後によく相関している。従って、HAは、前立腺癌および乳癌の腫瘍マーカーとして使用されることが多い。それは、疾患の進行を監視するのにも使用しうる。HAは、組織治癒を誘導するために手術後、特に白内障手術後に、使用することもできる。現在の創傷治癒モデルは、治癒の早期段階でより大きいHA高分子が現れて、免疫応答を媒介する白血球のための空間を物理的に形成することを示している。
【0044】
医薬組成物は、1つまたはそれ以上の剤、例えば、限定するものではないが、乳化剤、湿潤剤、甘味または香味剤、等張化剤、防腐剤、緩衝剤、抗酸化剤およびフラボノイドを含有してもよい。本開示の医薬組成物に有用な等張化剤は、限定するものではないが、塩、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトールまたはグリセリンおよび他の医薬的に許容される等張化剤である。本明細書に記載されている医薬組成物に有用な防腐剤は、限定するものではないが、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、チメロサール、酢酸フェニル水銀および硝酸フェニル水銀を包含する。種々の緩衝剤およびpH調節手段を、医薬組成物の製造に使用でき、それらは、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、燐酸緩衝液および硼酸緩衝液を包含するが、それらに限定されない。医薬組成物に有用な抗酸化剤も当分野において周知であり、例えば、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アセチルシステイン、ブチル化ヒドロキシアニソールおよびブチル化ヒドロキシトルエンである。フラボノイドは、種々の有益な生化学的作用および酸化防止作用を有することが周知の、植物に見出される化合物である。フラボノイドの下位範疇は、フラボン、フラボノール、フラバノンおよびフラバノノールを包含する。フラボノイドの例は、下記の物質である:ルテオリン、アピゲニン、タンゲリチン、ケルセチン、ケンプフェロール、ミリセチン、フィセチン、イソルハムネチン、パキポドール、ラムナジン、ヘスペレチン、ナリンゲニン、エリオジクチオール、ホモエリオジクチオール、タキシホリン、ジヒドロケルセチン、ジヒドロケンプフェロール、タンニン酸、タニス、縮合タニスおよび加水分解性タニス。薬理学分野で既知のこれらおよび他の物質を、本発明の医薬組成物に含有しうることが理解される。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences Mac Publishing Company, Easton, PA 第16版 1980参照。
【0045】
本発明の利点のいくつかが、実施例を用いて下記に示され、該実施例は、本明細書に記載されている方法によるHA充填ゲルの製造、先行技術によるHA充填剤ゲルの製造、およびそれらの試料について行なわれた分解試験を記載している。
【0046】
本明細書において使用されている分子量(Mw)は、分子中の原子の原子量の合計を意味する。例えば、メタン(CH4)の分子量は16.043g/molであり、原子量は炭素=12.011g/mol、水素=1.008g/molである。ダルトン(Da)は、12Oの質量の1/12に等しい質量の単位であり、百万Daは1MDaで示すことができる。
【実施例1】
【0047】
本開示によるHA充填ゲルの製造法
24mg/mLのHA濃度、約6%の架橋度および約180のG'を有する1〜5gの多糖充填剤(JUVEDERM(登録商標)24HV、Allergan Inc., Irvine, California)を、10〜200mgのコンドロイチン硫酸A(CSA、Mw=5,000〜120,000Da)を補充した1000μLの燐酸緩衝生理食塩水(PBS)(pH約7)と混合する。混合物を機械的に均質化する。
【実施例2】
【0048】
先行技術の方法によるHA充填ゲルの製造法
24mg/mLのHA濃度、約6%の架橋度および約180のG'を有する1〜5gの多糖充填剤(JUVEDERM(登録商標)24HV)を、1000μLのPBSと混合して、最終HA濃度を実施例1と同じにする。混合物を機械的に均質化する。
【実施例3】
【0049】
本開示によるヒアルロン酸充填ゲルの代替製造法
24mg/mLのHA濃度、約6%の架橋度および約170のG'を有する1〜5gのHA基剤多糖充填剤(JUVEDERM(登録商標)30)を、1〜20mgのタンニン酸(TA、Mw=800〜4,000Da)を補充した50μLのPBS(pH約7)と混合する。混合物を機械的に均質化する。
【実施例4】
【0050】
先行技術の方法によるヒアルロン酸充填ゲルの代替製造法
24mg/mLのHA濃度、約6%の架橋度および約170のG'を有する1〜5gのHA基材多糖充填剤(JUVEDERM(登録商標)30)を、50μLのPBSと混合して、最終HA濃度を実施例3と同じにする。混合物を機械的に均質化する。
【実施例5】
【0051】
本開示によるヒアルロン酸充填ゲルの製造法
1gのヒアルロン酸ナトリウム繊維(NaHA、Mw=0.5〜3MDa)を、5〜10gの1%水酸化ナトリウム溶液と混合し、混合物を1〜5時間水和させ;
50〜200mgの1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)をNaHAゲルに添加し、混合物を機械的に均質化し;
次に、混合物を40〜70℃のオーブンに1〜4時間入れ;
得られた架橋ヒドロゲルを、等モル量の塩酸(HCl)で中和し、PBS(pH約7)中で膨潤させ;
10〜200mgのCSA(Mw=5,000〜120,000Da)を添加し、ヒドロゲルを機械的に均質化する。
【実施例6】
【0052】
先行技術の方法によるヒアルロン酸(HA)充填ゲルの製造法
1gのNaHA(Mw=0.5〜3MDa)を、5〜10gの1%水酸化ナトリウム溶液と混合し、混合物を1〜5時間水和させ;
50〜200mgのBDDE(実施例5と同じHA/架橋剤モル比)をNaHAゲルに添加し、混合物を機械的に均質化し;
次に、混合物を40〜70℃のオーブンに1〜4時間入れ;
得られた架橋ヒドロゲルを、等モル量の塩酸(HCl)で中和し、PBS(pH約7)中で膨潤させ、それによって最終HA濃度を実施例5と同じにし;
得られたヒドロゲルを機械的に均質化する。
【実施例7】
【0053】
酵素的分解試験(比色定量試験)
実施例1および2で製造したHA充填ゲルの耐酵素的分解性を、モルガン-エルソン比色定量法によって評価した。この定量法は、酵素的分解前および後のHA鎖の平均分子量を推定するために使用される。
【0054】
ヒアルロニダーゼ(0.1〜10mg)を、HA試料に37℃で10〜250分間にわたって添加し、次に、0.8M 四硼酸カリウム溶液(0.1mL)を添加し、100℃で10分間加熱した。試料に、酢酸中の10%(wt)p-ジメチルアミノベンズアルデヒド溶液(3mL)を添加し、37℃で10〜120分間インキュベートした。分解後および分解前の585nmにおける光学密度(OD)の変化を使用して、各試料における分解度を定量化した。
【0055】
図1に示されている本開示方法および先行技術方法に従って調製した充填ゲルについて行なった測定の結果(酵素的分解試験結果(比色定量法))は、本開示方法によって調製したゲル(実施例1:0.774〜25.184mg/mL CSA)のOD値が先行技術方法によって調製したゲル(実施例2:0mg/mL CSA)のOD値より低いことを示している。さらに、OD値の減少は、CSAの濃度に比例している。OD値は分解度を示すので、該結果は、本開示方法によって調製したゲルが先行技術方法によって調製したゲルより3〜75%高い耐酵素的分解性であることを示している。
【0056】
CSA添加ゲルの場合と同様に、本開示方法によって調製したTA添加ゲル(実施例3:0.063〜1.000mg/mL TA)のOD値は、図2に示すように、先行技術方法によって調製したゲル(実施例4:0mg/mL TA)のOD値より低い。さらに、OD値の減少は、TAの濃度に比例している。OD値は分解度を示すので、該結果は、本開示方法によって調製したゲルが先行技術方法によって調製したゲルより15〜90%高い耐酵素的分解性であることを示している。さらに、CSAと同じ阻害を得るために1オーダー少ない量のTAが一般に必要とされるので、TAがCSAより高い阻害活性を有することも理解される。
【実施例8】
【0057】
酵素的分解試験(溶解HA定量法)
実施例1および2で調製したHA充填ゲルの耐酵素的分解性をさらに評価するために、SEC-MALS(サイズ排除複数角度光散乱)に基づく溶解HA定量法を使用した。この定量法を使用して、各試料に含有された溶解HA(0.2〜1.0μmフィルターを通過できるゲルの部分として定義される)のパーセンテージを評価することによって分解を定量化することができる。分解前および後の溶解HAの量の変化を使用して、各試料の分解度を定量化することができる。
【0058】
SEC-MALS試験は、Wyatt光散乱および屈折率ユニットを取り付けたAgilentサイズ排除クロマトグラフィー系を使用して行なった。ヒアルロニダーゼ(0.1〜10mg)を、HA試料に37℃で10〜250分間にわたって添加し、次に、0.8M 四硼酸カリウム溶液(0.1mL)を添加し、100℃で10分間加熱した。試料をPBSで希釈し、0.2〜1.0μmフィルターで濾過し、SEC-MALS系に導入した。酵素的分解前および後の溶解HA含有量、ならびにその差を図3に示す。
【0059】
図3に示す結果(酵素的分解試験結果(SEC-MALS定量法))は、酵素的分解後の溶解HA含有量の増加が、CSA不含試料において有意に多いことを示している。CSA含有試料とCSA不含試料との溶解HA増加におけるこの差は、比色分解定量法で得た結果と一致しており、本開示方法によって調製されたゲルが、先行技術方法によって調製されたゲルより高い耐分解性を有することを示している。
【0060】
CSA添加ゲルの場合と同様に、本開示方法によって調製したTA添加ゲル(実施例3:0.063〜1.000mg/mL TA)の溶解HA含有量の分解後増加は、先行技術方法によって調製したゲル(実施例4:0mg/mL TA)の分解後増加より少ない。これらの結果は、図4に示されている比色法と一致している。さらに、TAの阻害活性が、CSAの阻害活性より1オーダー高いことも分かる。
【実施例9】
【0061】
連続押出力試験
実施例5および6で調製したヒアルロン酸充填ゲルの流動学的性質を評価するために、各試料について連続押出力試験を行なった。押出力試験を使用して、CSAが潤滑剤として作用することによって押出過程を促進しうるかを判定することができる。
【0062】
押出力試験は、30G針を有する5mL注射器を使用してインストロン器具で行なった。各試料0.5mLを、50mm/分の定速度で押し出した。記録されるピーク力が、押出容易性を定量化する。2つの試料についての、圧縮伸長量の関数としての圧縮力が、図5にプロットされている。
【0063】
図5の結果は、本開示方法によって調製したゲルについて記録した押出力は、先行技術方法によって調製したゲルの押出力より低いことを示している。この押出力の差は、流動下のゲル硬度の差を示し、本開示方法によって調製されたゲルに含有されたCSAが、流動を促進する潤滑剤として作用することを示している。
【0064】
特に指定しない限り、明細書および特許請求の範囲に記載されている成分の量、属性、例えば分子量、反応条件等を表わす全ての数値は、あらゆる場合において「約」という語によって修飾されているものと理解される。従って、特に指示されない限り、明細書および特許請求の範囲に記載されている数値パラメーターは、本発明によって得ようとする所望の特性に基づいて変化しうる概数である。少なくとも、かつ、特許請求の範囲への均等の原則の適用を制限するものではないが、各数値パラメーターは、少なくとも、記載されている有効桁の数字に照らして、かつ通常の端数計算法を適用して、解釈されるものとする。本発明の広い範囲を示す数値範囲およびパラメーターは概数であるが、特定の実施例に記載されている数値は、できる限り正確に記載されている。しかし、あらゆる数値は、各試験測定値に見出される標準偏差から必然的に生じるある程度の誤差を本質的に含んでいる。
【0065】
本発明の説明に関して(特に、特許請求の範囲に関して)使用されている「a」、「an」、「the」という語および同様の指示詞は、特に指示がない限り、または文脈と明らかに矛盾するものでない限り、単数および複数の両方を含むものと解釈される。本明細書における数値範囲の記載は、単に、範囲内の各個別数値を個々に記載するのを簡潔化した方法として示すものである。特に指示しない限り、各個別数値は、本明細書において個々に記載されているものとして、本明細書に組み入れられる。本明細書に記載されている全ての方法は、特に指示しない限り、または文脈と明らかに矛盾するものでない限り、任意の好適な順序で行なうことができる。任意のおよび全ての例、または本明細書に示されている例示的語句(例えば、「例えば」という語句)は、本発明をより詳しく例示するものにすぎず、特許請求の範囲に記載されている以外は本発明の範囲を限定するものではない。
【0066】
本明細書に開示されている発明の選択的要素または実施形態のグループ分けは、限定されたものと理解すべきでない。各グループの構成員は、個々に、またはグループの他の構成員もしくは本明細書に見出される他の要素と任意に組み合わせて、言及してよく、主張してよい。グループの1つまたはそれ以上の構成員を、便宜上および/または特許性の理由により、グループに包含するかまたはグループから削除することが考えられる。そのような包含または削除が行なわれる場合、明細書は、変更されたグループを含み、従って、特許請求の範囲に使用されている全てのマーカッシュグループの記載を満たすとみなされる。
【0067】
本発明の特定の実施形態が本明細書に記載されており、該実施形態は、本発明者らに既知の、本発明の実施に最良の形態を含んでいる。当然、前記の説明を読めば、これらの実施形態の変形が当業者に明らかである。本発明者らは、当業者が必要に応じてそのような変形を使用することを考え、本発明者らは本明細書に特に記載されている以外の方法で本発明が実施されることを予期している。従って、本発明は、特許請求の範囲に記載されている主題についての、適用可能な法律によって許可される全ての変更および等価物を包含する。さらに、全ての可能な変形における前記要素の任意組合せも、本明細書において特に指示されない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、本発明に含まれる。
【0068】
さらに、本明細書を通して、多くの特許および刊行物が参照されている。前記の各文献および刊行物の全内容は、個々に、参照により本明細書に組み入れられる。
【0069】
最後に、本明細に開示されている本発明の実施形態は、本発明の本質を例示するものと理解される。他の変更を、本発明の範囲内で使用しうる。即ち、例示するものであって限定するものではないが、本発明の選択的形態を本明細書の開示に従って使用しうる。よって、本発明は、提示され記載されているものに厳密に限定されない。
【0070】
本明細書に開示されている特定の実施形態は、特許請求の範囲において「から成る」または「から本質的に成る」という語句を使用して、さらに限定しうる。出願されたまたは補正により付加された特許請求の範囲に使用される場合、移行用語(transition term)「から成る」は、特許請求の範囲において特定されていない任意の要素、工程または成分を除外する。移行用語「から本質的に成る」は、特定の物質または工程、ならびに基本的かつ新規な特性に実質的に影響を与えないものに、特許請求の範囲を限定する。このように特許請求される本発明の実施形態が、本明細書において本質的にまたは明確に記載され使用可能にされている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記を含んで成る多糖ゲル配合物:
下記から成る群から選択される少なくとも1つの多糖:ヒアルロン酸、セルロース、キトサン、o-硫酸化HA、デキストラン、硫酸デキストラン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラチン硫酸、ヘパリン、ヘパリン硫酸およびアルギン酸塩;および
下記から成る群から選択される少なくとも1つの多糖分解阻害剤:グリコサミノグリカン、抗酸化剤、フラボノイド、タンパク質、脂肪酸およびそれらの組合せ。
【請求項2】
前記多糖が架橋されている請求項1に記載の配合物。
【請求項3】
前記少なくとも1つの多糖が、ヒアルロン酸である請求項1に記載の配合物。
【請求項4】
前記グリコサミノグリカンが、ヘパリン、ヘパリン硫酸、デルマタン硫酸、コンドロイチン硫酸、o-硫酸化ヒアルロン酸、リナマリンおよびアミグダリンから成る群から選択される請求項1に記載の配合物。
【請求項5】
前記グリコサミノグリカンが、コンドロイチン硫酸である請求項4に記載の配合物。
【請求項6】
前記コンドロイチン硫酸が、約1wt%〜約40wt%の濃度で存在する請求項5に記載の配合物。
【請求項7】
前記抗酸化剤が、アスコルビン酸、メラトニン、ビタミンC、ビタミンEおよびそれらの組合せから成る群から選択される請求項1に記載の配合物。
【請求項8】
前記フラボノイドが、下記から成る群から選択される請求項1に記載の配合物
:ルテオリン、アピゲニン、タンゲリチン、ケルセチン、ケンプフェロール、ミリセチン、フィセチン、イソルハムネチン、パキポドール、ラムナジン、ヘスペレチン、ナリンゲニン、エリオジクチオール、ホモエリオジクチオール、タキシホリン、ジヒドロケルセチン、ジヒドロケンプフェロール、タンニン酸、タニス、縮合タニス、加水分解性タニス、およびそれらの組合せ。
【請求項9】
前記フラボノイドが、タンニン酸である請求項8に記載の配合物。
【請求項10】
前記タンニン酸が、約0.0001wt%〜約1wt%の濃度で存在する請求項9に記載の配合物。
【請求項11】
前記タンパク質が、血清ヒアルロニダーゼ阻害剤である請求項1に記載の配合物。
【請求項12】
前記脂肪酸が、飽和C10-22脂肪酸である請求項1に記載の配合物。
【請求項13】
生物適合性または生物分解性容器をさらに含んで成り、前記容器の中または一部に阻害剤が存在し、前記容器がリポソーム、ミセルまたは重合小胞である請求項1に記載の配合物。
【請求項14】
前記阻害剤が配合物に向上した流動学的性質を与え、それによって、架橋多糖ゲル配合物と比較して、配合物の投与に必要とされる押出力が少ない請求項1に記載の配合物。
【請求項15】
増加した分解時間を有する多糖ゲル配合物の製造法であって、下記の工程を含んで成る方法:
下記から成る群から選択される少なくとも1つの多糖を準備する工程:ヒアルロン酸、セルロース、キトサン、o-硫酸化HA、デキストラン、硫酸デキストラン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラチン硫酸、ヘパリン、ヘパリン硫酸、およびアルギン酸塩;および
下記から成る群から選択される少なくとも1つの多糖分解阻害剤を、前記多糖に組み込む工程:グリコサミノグリカン、抗酸化剤、フラボノイド、タンパク質および脂肪酸。
【請求項16】
前記組み込み工程が下記を含んで成る請求項15に記載の方法:
1) 前記少なくとも1つの阻害剤と、高水和状態の前記少なくとも1つの多糖とを混合し、それによって前記少なくとも1つの阻害剤を多糖網状構造に封入する工程と、
2) 前記多糖網状構造を脱水し、それによって放出動態または最終膨潤率を調節する工程。
【請求項17】
前記少なくとも1つの多糖分解阻害剤の組み込み前に、少なくとも1つの多糖が、下記から成る群から選択される架橋剤を使用して架橋される請求項15に記載の方法:1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)、1,2-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)エチレン、1-(2,3-エポキシプロピル)-2,3-エポキシシクロヘキサン、およびそれらの組合せ。
【請求項18】
前記組み込み工程が下記を含んで成る請求項15に記載の方法:
1) 前記少なくとも1つの阻害剤を、生物適合性または生物分解性容器に封入する工程と、
2) 前記少なくとも1つの多糖と前記容器を合わせて、ゲル配合物にする工程。
【請求項19】
増加した分解時間を有する多糖ゲル配合物であって、架橋ヒアルロン酸およびタンニン酸を含んで成り、前記タンニン酸が約0.0001%〜約1%の濃度で存在する多糖ゲル配合物。
【請求項20】
増加した分解時間を有する多糖ゲル配合物であって、架橋ヒアルロン酸およびコンドロイチン硫酸を含んで成り、前記コンドロイチン硫酸が約1%〜約40%の濃度で存在する多糖ゲル配合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−505362(P2011−505362A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536094(P2010−536094)
【出願日】平成20年11月24日(2008.11.24)
【国際出願番号】PCT/US2008/084515
【国際公開番号】WO2009/073437
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(591018268)アラーガン、インコーポレイテッド (293)
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
【Fターム(参考)】