説明

多糖類由来化合物の生成方法並びに生成装置

【課題】バイオマスである多糖類由来のアルデヒド型鎖状分子及び低分子有機化合物、有機化合物複合体を生成する方法において、低コストで効率的な方法を提供する。
【解決手段】多糖類含有液に対し、多糖類含有液に含まれる1種又は複数種の官能基を電子的励起状態又は分子振動状態とする紫外光〜赤外光の波長範囲から選択された波長の電磁波を照射することにより、多糖類由来のアルデヒド型鎖状分子及び低分子有機化合物を生成する。多糖類がセルロースであり、パルプ及び廃材粉砕木、チップダスト、製紙スラッジに含まれる。低分子有機化合物がCH、CH、CH、CH10、CH12及びCH14、CHOH、CHOH、CHOH、CHOH、CH11OH及びCH13OHのアルコール、多価アルコール、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、ギ酸、酢酸、乳酸からなる群のうち1種又は複数種及び有機化合物複合体を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース等の多糖類からアルデヒド型鎖状分子及び低分子有機化合物を生成する方法並びにその生成装置、並びにその生成方法を用いて製紙スラッジの排液から無機薬品を回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、社会情勢の影響により価格が変動し、経済影響が大きく、埋蔵量に限りある化石資源の代替品として、持続再生可能な生物由来の有機性資源であるバイオマスが注目されている。セルロースやデンプンなどの多糖類は、代表的なバイオマスであり、デンプンは加工性に優れているものの、食物を原料とするため、食品類の価格上昇を招いている。また、セルロースは結晶が安定していて、バイオマスとして加工するにはエネルギーコストが掛かる。一般産業化のため、セルロースやデンプンなどの多糖類を経済的かつ効率的に分解することで種々の低分子有機化合物を得る技術が提示されている。
【0003】
特許文献1には、セルロース含有材料を分散させた飽和炭化水素溶液中に、セルロース加水分解酵素を添加撹拌してセルロースを酵素加水分解することにより、グルコース又はそのオリゴ糖を得る方法が開示されている。
特許文献2には、セルロース系バイオマスを、水素活性化金属触媒を用い、アルカリ性物質の存在下及び水性媒体の存在下で高温高圧に保持することにより、低分子の炭化水素を得る方法が開示されている。
特許文献3には、リグノセルロース系バイオマスを、320℃〜360℃の超臨界状態アルコール中で処理することにより、グルコースなどの糖類及びその誘導体を回収する方法が開示されている。
特許文献4には、木材を糖化酵素で処理してセルロースを五炭糖及び六炭糖に変換し、さらにこれらを発酵させることにより、エタノール、乳酸又はプロパンジオールを得る方法が開示されている。
【0004】
近年レーザー照射設備及び加工技術の発展が目覚しく、紫外線や赤外線を利用した半導体製造や金属、樹脂の加工、レーザー照射設備による光化学反応を利用した分析装置など適用される分野が広がってきている。また、光化学反応の挙動も明らかになりつつある。未だ製造工程に適用されていない製紙業の分野での光化学反応の利用技術を解明し、更に発展した活用方法での適用が期待できるようになった。
【0005】
図1の構成図において、太線囲み以外の部分は、従来の製紙業とバイオマスとの密接な関係を示している。製紙業においては、植物由来資源50をパルプ化するパルプ製造工程51で効率的にリグニン成分を含む黒液とセルロース(パルプ)を分離し、非化石燃料である黒液を安価なエネルギー源として回収ボイラー(熱回収装置)52により燃焼し、燃焼により発生する熱を利用して蒸気を生成して発電53を行い、その電力を製造工程に利用することで、コスト低減を実現している。パルプはパルプ製品として完成させるか製紙工程55を経て紙製品となる。紙製品は、最終的には分解され二酸化炭素を発生し、バイオマスである植物に吸収されることで循環する。
【0006】
従来はセルロース結晶が安定し、セルロースの集合体であるパルプは素材原料としての価値が主であった。
【特許文献1】特許第2689161号公報
【特許文献2】特許第2500337号公報
【特許文献3】特許第3755076号公報
【特許文献4】特開2006−111593号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の多糖類由来物質の生成方法においては、以下のような問題点が挙げられる。
【0008】
多糖類バイオマスから低分子有機化合物を生成する一般的な方法は、酵素や発酵を用いるものであり、化石資源から生成する方法に比べてコストが高い。
また、連続処理において、酵素や発酵を用いる方法は、処理状態が安定するまでの応答が遅く、処理量の変化や処理原料の性状の変化、微生物の生育状況により品質低下(未反応、過反応)を発生させる。処理時間も長く、処理完了までの時間の滞留時間を要する発酵槽が必要となり、処理能力の大きさに比例し、大きな設備面積が必要になる。また、酵素や発酵を用いる場合、多糖類の一部を消費し、COが副生するため、転換効率が50〜70%となる。
【0009】
また、多糖類バイオマスから低分子有機化合物を生成する一般的な方法として、高温・高圧状態による超臨界でHOにより分解する方法や非常に高温化することにより、木質原料をタール化して、汎用バイオマスとして生成する方法が知られるが、多糖類バイオマスの構成成分により分解条件が異なるため、温度・圧力・反応時間の管理が複雑化し、処理装置構成も複雑になる。さらに、反応環境を作り出すために非常にエネルギーを使うため、化石資源から生成する方法に比べてコストが高い。
【0010】
図1に示した製紙業のパルプ製造工程及び製紙工程から発生する排水は排水設備56で処理されるが、排水中には製紙スラッジの形態で製紙用途としては使用し難い短繊維のセルロースが多く含まれている。この製紙スラッジに含まれるセルロースはスラッジ焼却炉としての専用炉で熱回収よりも燃焼処理が主要な目的として行われてきた。近年、バイオマスとしての付加価値を高め、従来のスラッジ焼却炉では40〜50%の熱エネルギーの回収率であったが、熱エネルギー用の廃熱回収ボイラーにより90%以上の熱エネルギー回収率で、利用可能されるようになった。しかし、スラッジの燃焼という特殊性によりスラッジ中の無機質による磨耗や成分の腐食影響により設備が痛み易く維持管理費用が嵩む。また、スラッジの状態で燃焼した場合、補助燃料(重油)を使用するケースもあり、回収するエネルギーの形態も蒸気として制約を受ける。
現状では製紙スラッジは特殊用途のバイオマスであるが、汎用性を高め、より付加価値の高いコスト的に有利なバイオマスへの効率的な変換方法が求められている。
【0011】
従来は木質原料からバイオマス資源を取り出す技術が研究され、現在も開発が進められている。木質原料から汎用的なバイオマスを取り出すためにコストやエネルギーを消費し、
現在に至るまで、コスト的に有利なバイオマスへの変換技術が提案されていない。また、製紙業では木質原料からリグニン質を含む黒液分離後のパルプをバイオマス変換し活用する概念がない。現状の技術ではコスト的に割高なバイオマスであり、石油、石炭、天然ガス、メタンハイグレードの代替品としての木質原料や穀物由来の多糖類と同等に扱われることがなかった。未だにパルプからバイオマスへの効率的で低コストな変換方法が提示されていない。
【0012】
以上の現状に鑑み、本発明の目的は、バイオマスである多糖類由来のアルデヒド型鎖状分子を基点とし、低分子有機化合物を生成する方法において、環境影響やコスト的に化石資源の代替品として汎用的に産業へ活用できるエネルギー資源及び素材への効率的な転換方法を提供することである。また、低分子有機化合物から更に光化学反応を利用し、低分子有機化合物から脱水素、脱酸素を促し、有機化合物複合体に転換する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するべく、本発明は以下の構成を提供する。
(1)本発明の第1の態様は、多糖類由来化合物の生成方法であって、多糖類含有液に対し、前記多糖類含有液に含まれる1種又は複数種の多糖類分子の官能基を電子的励起状態または分子振動状態とする紫外光〜赤外光の波長範囲から選択された1又は複数の波長の電磁波を照射することにより、前記官能基を活性化し化学反応を生じさせて、前記多糖類由来の1又は複数のアルデヒド型鎖状分子及び低分子有機化合物を生成することを特徴とする。
【0014】
(2)本発明の第2の態様は、上記第1の態様において、前記多糖類から前記アルデヒド型鎖状分子を経て前記低分子有機化合物を生成することを特徴とする。
【0015】
(3)本発明の第3の態様は、上記第1又は2の態様において、前記低分子有機化合物がCH、CH、CH、CH10、CH12及びCH14のアルカン、CHOH、CHOH、CHOH、CHOH、CH11OH及びCH13OHのアルコール並びにこれらの多価アルコール、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、ギ酸、酢酸並びに乳酸からなる群のうち1種又は複数種を含むことを特徴とする。
【0016】
(4)本発明の第4の態様は、上記第1〜3のいずれかの態様において、前記多糖類がセルロースであることを特徴とする。
【0017】
(5)本発明の第5の態様は、上記第4の態様において、前記セルロースがパルプ又は廃材粉砕木、チップダスト、製紙スラッジに含まれることを特徴とする。
【0018】
(6)本発明の第6の態様は、上記第4又は5の態様において、
前記電磁波の照射に先立って照射対象の前記セルロースに対し触媒を添加し、該触媒が、カーボン、オゾン、酸化ケイ素酸化アルミニウム複合体、酸化チタン、ルテニウム、二酸化マンガン、酸化第二鉄、酸化第三鉄、リグニン質及び黒液からなる群から選択されることを特徴とする。
【0019】
(7)本発明の第7の態様は、上記第1〜6のいずれかの態様において、前記電磁波を、振動数20kHz〜1THzの範囲の1又は複数の振動数を含む超音波に替えたことを特徴とする。
【0020】
(8)本発明の第8の態様は、多糖類由来化合物であって、上記第1〜7のいずれかの態様の方法により生成されたことを特徴とする。
【0021】
(9)本発明の第9の態様は、製紙用無機薬品の再生方法であって、上記第5の態様の多糖類由来化合物の生成方法を用いて、前記製紙スラッジに由来する炭酸カルシウム及び酸化ケイ素酸化アルミニウム複合体を含む無機薬品を、副生反応により再生することを特徴とする。
【0022】
(10)本発明の第10の態様は、上記第9の態様において、前記無機薬品を副生反応により再生後、前記無機薬品に対し尿素、二酸化チオ尿素、メタノール、アセトン及びアルデヒド系化合物を含む有機化合物を加えることにより双極性を付加した後、硫酸を添加することによりJIS白色度80度以上に改質を行うことを特徴とする。
【0023】
(11)本発明の第11の態様は、製紙用無機薬品であって、上記第9又は10の態様の製紙用無機薬品の再生方法により再生されたことを特徴とする。
【0024】
(12)本発明の第12の態様は、多糖類由来物質の生成装置であって、多糖類含有液に含まれる1種又は複数種の官能基を電子的励起状態または分子振動状態とする紫外光〜赤外光までの波長範囲から選択された1又は複数の波長の電磁波を照射する電磁波照射装置と、前記電磁波照射装置により照射される電磁波に暴露させつつ前記多糖類含有液を送流させる反応装置と、前記電磁波の照射により前記多糖類含有液から生成された多糖類由来物質のうち揮発性成分を抽気しかつ分離すると共に、不揮発性成分を回収する脱気装置とを備えたことを特徴とする。
【0025】
(13)本発明の第13の態様は、上記第12の態様において、前記反応装置が前記脱気装置の内部に設置されていることを特徴とする。
【0026】
(14)本発明の第14の態様は、上記第12又は13の態様において、前記反応装置内を665Pa〜大気圧の圧力範囲のいずれかの圧力に調整し維持する手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一態様においては、多糖類含有液に含まれる1種又は複数種の多糖類分子の官能基を電子的励起状態または分子振動状態とするような電磁波を照射することで、多糖類含有液から多糖類由来化合物を生成する。多糖類由来化合物は、アルデヒド型鎖状分及び低分子有機化合物である。ここでの多糖類含有液は、多糖類の固体粒子が懸濁している状態の液体(スラリー)、又は多糖類が溶解している状態の液体をいう。多糖類含有液中には、多糖類分子の他に、例えば、水や種々の溶媒の成分分子も含まれている。多糖類含有液に含まれる多糖類以外の分子は、多糖類含有液をどのような前段工程から得るかによって異なるが、本発明は多糖類を含有する液体に対して広く適用可能である。従って、従来廃棄されていたような多糖類も、本発明により有効に利用することができる。
【0028】
本発明によれば、多糖類のもつ特定の官能基、並びに多糖類含有液に含まれる溶媒又は水の成分分子を選択的に電子的励起状態または分子振動状態とする特定の波長の電磁波を照射することにより、多糖類の官能基及び成分分子が活性化される。この結果、多糖類が分断されると共に反応活性種が生成し、異性化、単糖化及び開環されたアルデヒド型鎖状分子化を経てさらに種々の化学反応を誘起することができる。化学反応とは、これらの多糖類及び成分分子の結合開裂、異性化、閉環若しくは開環、付加・縮合若しくは付加環化、置換、酸化、還元・加水分解等が発生することを意味する。
【0029】
例えば、2種の官能基又は成分分子の励起状態または分子振動状態となるエネルギーが異なる場合には、それぞれ異なる波長の電磁波を同時に照射することで、双方のポテンシャルエネルギーまたは振動(熱運動)エネルギーを高め、電子軌道の移動または分子分断による電子的励起状態とし、反応活性種とすることができる。異なる複数の波長を含む電磁波であっても、各波長の電磁波が特定の官能基にのみ選択的に作用する。これにより、双方の成分分子による化学反応を生じさせることができる。さらに、電磁波の強度や照射時間を調整すれば、反応活性種の量を容易に調整することができ、化学反応を制御することが可能である。多段階の化学反応についても、各段階に最適に制御することができる。
【0030】
本発明によれば、ほぼ常温での温度領域で上記の反応を生じさせることができるので、また、基本動力及び反応装置効率を加味し、化学反応に必要なエネルギーを付与するに限るため、従来のバイオマス多糖類からの低分子有機化合物の生成に必要であった熱源のための電力並びに重油などの化石燃料の消費を大幅に削減できる。
【0031】
特に、製紙業ではパルプ製造工程から発生する黒液をバイオマスとして燃焼し、また、排水設備で発生する製紙スラッジを燃焼し、発生した熱の利用による効率的な発電を行っており、バイオマスの活用が進んだ分野である。また、紙製品として再生、循環を繰り返すサイクルの中で、紙製品として使用できなくなった短繊維を選別後、排水設備56で製紙スラッジとして回収し、スラッジボイラで燃焼していたが、今後は汎用バイオマスとして資源化が期待できる。本発明を適用することで、製紙業では紙生産の数量に制限されたバイオマス利用から解き放たれ、バイオマスシフトによる脱化石燃料及び大幅な生産効率の向上が図れ、また、化石燃料と同等のコストで汎用的なバイオマスを一般向けに提供し、バイオマスの恩恵を一般産業に波及できるようになる。
【0032】
製紙業は、本発明の実施に適した分野であり、高度な植林技術と管理された森林資源との需給バランスを維持し、化石原料によらず、再生サイクルが早いため、持続可能な経済成長に貢献し、地球規模での化石原料の経済影響の良化及び効率改善による温暖化防止及びCO2増加の抑制に貢献できる。
【0033】
本発明においては、光化学反応によりアルデヒド型鎖状分子及び低分子有機化合物(好適には、CH、CH、CH、CH10、CH12及びCH14のアルカン、CHOH、CHOH、CHOH、CHOH、CH11OH及びCH13OH のアルコール並びにこれらの多価アルコール、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、ギ酸、酢酸並びに乳酸からなる群のうち1種又は複数種含む)が生成される。これらの中には、化石燃料代替品として一般的なガス燃焼装置で燃焼させることができるものが多く含まれる。これらの可燃物は容易に分離でき、一般的な燃焼装置及び発電装置の燃料に利用できる。また、分離されたアルコール類は化石燃料と混合して利用できるほか、燃料電池の燃料として使用することができる。
【0034】
本発明により生成されたアルコール類は製紙業におけるパルプ漂白に使用する晒薬品製造工程やDIPの脱墨工程で自製してオンサイトで使用することができる。従来は市場のものを購入しているので、物流費や製造コストなどオンサイト化で効率が改善され、コストダウンできる。
【0035】
本発明により生成された可燃物を燃料とし使用された場合、従来の重油と対比し、燃料反応系の違いにより発電設備での燃焼効率が上がり、燃焼ガスに含まれるNO、NO、CO、SOを削減できる。
【0036】
また、本発明により生成されるアルデヒド型鎖状分子を基点とし、生成される種々の低分子有機化合物は加工性に富み、工業用樹脂の製造に用いられる化石原料と同様に樹脂原料とて使用することができる。また、アルデヒド型鎖状分子を中間物質として、直接縮重合し、樹脂を製造できる。
【0037】
本発明の効果はまとめると次の通りとなる。
(1) バイオマスは化石原料より再生サイクルが早いため、地球温暖化ガスCOの増大を抑制する。
(2) 植物性バイオマスから低分子有機化合物が製造されれば、化石原料の市場価額の影響、石炭及び原油の精製時に発生する排気ガスの環境への影響を抑制できる。
(3) 従来はセルロースの主用途は紙パルプ製品であり、一部レーヨンや樹脂原料として加工されていたが、セルロース結晶が分解され難く、高温での燃焼若しくは超臨界状態や微生物による発酵に寄らなければ石炭、石油と同じに活用できなかったが、本発明によれば容易に分解することができる。
(4) 化石資源(原油、石炭、天然、メタンハイグレード等)を採取するためには、地中深く若しくは海底深く探索し、掘削・採取し、搬送する必要があり、埋設量も有限である。これに対し、植物由来バイオマスであれば、植林や栽培など面積を拡大し、需要に見合ったバランスを人工的に作り出すことができる。
(5) 穀物類のように人間の食料を兼ねた植物からのアルコール等の採取では食品のコスト上昇を招くことから、採取後の廃棄物を原料として、セルロース製品やアルコール等を抽出する技術の開発が望まれており、本発明はこの要望に対応できる。
(6) 木材を原料とした場合、紙パルプでは既にリグニン成分及びセルロースの抽出分離技術が確立されているので、セルロースを安価に加工できる。また、紙製品以外にパルプ用途が拡大することにより、バイオマス化が図れ、効率的な生産及び一般産業までバイオマスの恩恵を波及できる。
(7) 製紙スラッジ排水中に含まれる塩素イオンを塩素分子化し、無害化する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態を説明する。
図1の構成図において、太線囲みの部分は、製紙業の各工程に対して本発明を組み合わせた一実施例を概略的に示している。本発明は、多糖類を含有する液体に適用され、特定の成分組成のものに限定されない。多糖類としては、セルロースが好適である。セルロースは、植物由来の資源であり、農作物及びその加工品製造の残渣からも得ることができる。セルロースは、β−グルコースが直鎖状に結合した高分子であり(CH10O)の分子式である。なお、本発明を適用可能な多糖類はセルロースに限定されず、他の多糖類、例えばデンプン(アミロース、アミロペクチン)、グリコーゲン、キチン等にも適用可能である。多糖類含有液には、懸濁液(スラリー)も溶液も含まれる。
【0039】
セルロース含有液は、製紙業の各工程から得ることができる。例えば、パルプ製造工程51においては、黒液と分離することによりパルプが得られる。得られたパルプを製紙工程に用いない場合は、その全部をセルロース原料であるパルプスラリー101として本発明を適用する。得られたパルプの一部を製紙工程に用いる場合は、残りの部分をセルロース原料であるパルプスラリー101として本発明を適用する。パルプスラリー101は、後述する本発明の反応装置104に送られ、適切な電磁波を照射することにより光化学反応を生じさせて低分子の有機化合物112を生成し、あるいは樹脂を生成する。生成された低分子有機化合物112は、バイオマス循環サイクルにおける循環使用製品である。
【0040】
また、例えば、パルプ製造工程51及び製紙工程55において生じる排水にもセルロース原料となる製紙スラッジが含まれている。この製紙スラッジを排水設備56で回収し、製紙スラッジスラリー201として本発明を適用する。製紙スラッジスラリー201は、後述する本発明の反応装置204に送られ、適切な電磁波を照射することにより光化学反応を生じさせて低分子の有機化合物212を生成する。生成された低分子有機化合物212もまた、バイオマス循環サイクルにおける循環使用製品である。
【0041】
さらに図1において、パルプスラリー101に替えて、別の多糖類を含む糖類原料301を用い、これをスラリー又は溶液の状態として本発明を適用することもできる。
【0042】
化学反応には、反応活性種が必要である。化学物質は分子構造毎に特性振動を引き起こす固有の振動数を保有し、赤外線及び音波(超音波含む)による熱反応(振動・運動エネルギー)を利用する場合は、固有の振動数をターゲットとして、分子の振動を活性化させ、分子の分断を引き起こすのに対し、主として紫外光による光反応では、基底状態の分子軌道中の電子が光エネルギーによりエネルギー準位の高い軌道に励起されることにより生じる。これを電子的励起状態という。吸収された光の振動数をν、プランク定数をhとすると、電子的励起状態は、吸収された光エネルギーhνだけ大きなエネルギーをもつ。電子的励起状態にある分子の反応性は高くなる。
【0043】
一般的に多糖類は炭素5酸素1の六角形状のピラノース型と炭素4酸素1の五角形状のフラノース型の2種類の形態を有す。セルロースの場合はピラノース型をセルロースと呼び後者のフラノース型をヘミセルロースと分類している。セルロースよりもヘミセルロースは低いエネルギー状態で開列し、結晶が溶解する。それぞれ二糖類(セオビロース)及び単糖類(β−グルコース)に分断する反応を経て、環構造を構成する炭素と酸素の結合を分断し、開列させる。ここで生成したアルデヒド型鎖状分子を基点とし、反応活性種と組合せ、更に結合開裂、異性化、閉環若しくは開環、付加・縮合若しくは付加環化、置換、酸化、還元・加水分解を進め、目的の有機化合物を生成する。
デンプン等の多糖類を反応させる場合も同様である。
【0044】
一般の光化学反応に利用される波長領域は、紫外光及び可視光と、赤外光の一部も可能とされている。不対電子を保有する原子(炭素、酸素、窒素、硫黄など)を有する分子構造のものが官能基として機能する傾向にあり、有機化合物の特徴を示す官能基とも一致する。その代表としてカルボキシル基やヒドロキシル基などが挙げられ、特定の波長で吸収端を有する。従って、吸光特性試験を行い電磁波の吸収端と被照射物質の組成により、官能基毎に単独若しく複数の照射光の波長領域を組みわせて、反応を制御することができる。主として200nm〜700nmの紫外光と可視光に吸収をもつ分子が多い。
【0045】
本発明は、農業や製造業の主工程から廃棄される多糖類含有物を有効利用することが好適であるので、通常、その液体の成分組成は単純ではなく、バラツキがある場合が多い。このように多様な成分組成に対しても、電磁波吸収特性試験を行い、電磁波の吸収端と被照射物質の組成から類推される電磁波照射条件(波長、強度、照射時間)を適切に組み合わせ、また、反応装置前後の物質濃度を測定することにより、適切なエネルギーを付与し、効率的に光反応を生じさせることができる。
【0046】
光反応でよく用いられる水銀灯の輝線スペクトルは254nmであり471kJ/molのエネルギーをもつ。多くの有機物がもっているC−C結合のエネルギーは350kJ/molであり、C−H結合のエネルギーは410kJ/mol、C−O結合のエネルギーは350kJ/molであり、C=C結合エネルギーは610kJ/mol、C=O結合エネルギーは750kJ/molであり、H−H結合エネルギーは、440kJ/molである。分子に対して外部より電磁波エネルギーを付与し、分子は活性化エネルギーを得て反応可能な活性状態となる。このとき、化学反応は反応性に富む物質同士が反応する。通常、光反応を生じさせるには、紫外光から短波長の可視光が特に有用である。
【0047】
光反応の本質はラジカル反応である。電子的励起状態にあり不対電子をもつラジカル分子は、エネルギー準位の高い軌道にある電子を他の分子に与え、強い還元性を有する。また、励起された電子の元の軌道には他の分子から電子を受容し、酸化性も有する。光反応は、分子の特定の場所のみを選択的に活性化して反応を起こさせるので、燃焼による熱反応のような高温の雰囲気によらず、より常温近い雰囲気で実行できる。
【0048】
通常の分子をイオン化する場合はイオン化ポテンシャルより大きなエネルギーが必要であり、これはほとんど紫外光よりも短波長の電磁波に相当する。従って、単独の分子は、紫外光より長波長の光エネルギーによってはイオン化しないが、2つの分子が光エネルギーにより電子的励起状態となりかつ2分子間で電子が移動し、不対電子をもつラジカルイオンとなる。ラジカルイオンは不安定であり、それ自身が反応するとともに、他の分子をも反応させる。
【0049】
図2は、パルプスラリー及び廃材粉砕木、チップダストに対して本発明を適用するシステムの一実施例の概略構成図である。図1に示したチップ受入設備、パルプ製造工程51又はパルプシート溶解設備から得たパルプスラリーまたは、廃材粉砕木、チップダストは酸又はアルカリ薬品を加え、主にpH4以上の溶液に調整され、パルプスラリータンク101に貯蔵される。パルプスラリータンク101から温度調節器102へ送られる。
【0050】
温度調整器102において適切な温度に調整される。加熱の場合は加温蒸気が用いられ、冷却の場合は清水が用いられる。ドレンは適宜処理される。具体例として、間接式熱交換器を用いることができ、駆動蒸気若しくは温水を使用して加温し、冷却水により冷却する。別の例として、パルプスラリーに対して直接、蒸気若しくは温水又は冷却水を注入して温度調整することもできる。本発明では光化学反応を利用するため、燃焼反応に比べれば遙かに低温で反応が行われるが、より効率的に反応させるために適度な温度に調整することが好ましい。
【0051】
また、任意であるが、電磁波の照射に先立って照射対象の液体に触媒を添加する工程を設けてもよい。触媒としては、カーボン、オゾン、酸化ケイ素酸化アルミニウム複合体、酸化チタン、ルテニウム、二酸化マンガン、酸化第二鉄、酸化第三鉄、リグニン質及び黒液等があり、これらの中から適宜選択される。触媒により反応の活性化エネルギーを小さくできる。
【0052】
その後、反応装置104にパルプスラリーを送り込み、電磁波発生装置103により発生させた電磁波を黒液に照射する。(電磁波に替えて超音波を用いる場合は、超音波発生装置により発生させた超音波をパルプスラリーに照射する。)反応装置104内で光化学反応が行われる。
【0053】
任意であるが、電磁波の照射中に照射対象の液体の圧力を制御してもよい。より効率的な反応を行わせる圧力に調整するためである。圧力調整範囲は、665Pa〜大気圧が好適である。
特に負圧領域では、ラジカル遊離基が発生し易く、光増感反応により光化学的反応が誘起し易い。また、揮発性物質を伴う場合、積極的に抽気し、ガス化させた有機成分を分離することにより、反応液中の物質濃度バランスを常に化学平衡に於けるガス化成分の欠乏状態とし、反応促進方向に反応速度高めることができる。
【0054】
照射する電磁波は、紫外光(波長100〜400nm)、可視光(400〜700nm)、赤外光(0.7〜10.6μm)の波長範囲から選択された1又は複数の波長の電磁波である。レーザー光、連続スペクトル光、輝線スペクトル光のいずれの形態でも利用できる。具体的な照射装置及び反応装置については、後に図4において説明する。電磁波の照射により、パルプスラリーに含まれる1種又は複数種の成分分子の官能基を電子的励起状態とする。個々の光化学反応の例については、後に図6A〜図6Hにおいて説明するが、それらの光化学反応を誘起する波長を含む電磁波を照射する。
【0055】
電磁波照射にあたって、特に、セルロースを二糖類(セオビロース)及び単糖類(β−グルコース)に分断する反応を経て、環構造を構成する炭素と酸素の結合を分断し、開列させる。ここで生成するアルデヒド型鎖状分子を基点とし、さらに分解・置換反応を進め、酸性物質及び揮発性有機物等の低分子有機化合物を生成する反応を標的とする。これらの多段にわたる反応を行う場合は、図2中の一点破線で囲った部分を複数段階設け、各段階毎に目的とする生成物を回収してもよい。また、アルデヒド型鎖状分子を基点とし、反応装置を直列若しくは並列に設置し、各段に目的の反応活性種を定め、電磁波を主要な官能基へ照射し、反応活性種同士の反応を進め、生成物質をコントロールできるため、反応活性種との組合せを工夫し、更に結合開裂、異性化、閉環若しくは開環、付加、縮合若しくは付加環化、置換、酸化、還元、加水分解を進め、短鎖だけでなく長鎖の有機物質を含む多様な目的の有機化合物を生成できる可能性がある。電磁波波長は、紫外光200nm〜赤外光900nmの範囲が好適である。光エネルギー(フォトンのエネルギー)としては、ほぼ1000〜100kJ/molの範囲に相当し、この範囲の光エネルギーにより電子的励起状態となる分子に対して有効である。さらに好適には、電磁波波長を紫外光200nm〜可視光700nmの範囲とする。
【0056】
電磁波照射においては、波長以外に、照射時間、光強度(照射出力)の調整により、ラジカル反応を制御しながら行うことが好ましい。また、照射対象であるパルプスラリーの流量も調整し、十分な反応が生じるようにする。
【0057】
得られる低分子有機化合物は、多糖類を加水分解反応にて得られる物質であるが、製紙スラッジなどには不純物の薬品が含まれるため、有機化合物の他に無機化合物も含まれる。典型的な物質として、酸性物質CO、O、Hの他にH2S、SO、SO、NO、NO、揮発性有機物CH、CH、CH、CH10、CH12及びCH14のアルカン、CHOH、CHOH、CHOH、CHOH、CH11OH及びCH13OH のアルコール並びにこれらの多価アルコールとがある。その他にホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、ギ酸並びに酢酸も得られる場合がある。これらの物質のうち1種又は複数種が含まれる。
【0058】
多段反応装置を直列若しくは並列設置することにより、アルデヒド型鎖状分子を基点とし、反応活性種との組合せによってはラジカル縮合等による長鎖の有機物質 [CH4]n、[CHCHCH3]n、[OCHCHCOO]nを基本構成とする有機物質を生成できる可能性がある。また、アルデヒド型鎖状分子を酸化及び分断し、セルロースと混合し、反応させることにより酢酸セルロース等の有機化合物も生成できる可能性がある。
【0059】
その後、脱気装置105において液体成分と気体成分を分離する。脱気(抽気)装置は、内部の圧力・温度を制御することができ、液体成分中へのCO及び有機物の溶存量を管理し、負圧状態でラジカル自動連鎖反応を促進させる。これにより、できるだけ多くの酸性物質及び揮発性有機物を気体として分離させる。脱気装置内の圧力調整範囲も、665Pa〜大気圧が好適である。また、脱気装置は、次工程の液体貯槽106内の液面でシールさせたレグ配管を有する。これにより、負圧を発生させるため、液体貯槽106の液面よりも10.3m以上の高さに設置することが好適である。
【0060】
低分子有機化合物は、気化温度(沸点)の差を用いて液体成分と容易に分離することが可能である。液体成分と気体成分の分離に用いる脱気装置105の具体例については、後に図5において説明する。得られた低分子有機化合物は、ほとんどが一般的な物質であるのでその利用方法は限定されず多様である。
【0061】
分離された低分子有機化合物を揮発性有機物分離装置111に送り、揮発性有機物(例えばアルコール)のみを分離する。排ガスは、例えば、熱回収設備(回収ボイラー又は重油ボイラー等)へ送られ燃焼される。ドレンは適宜処理される。得られた揮発性有機物のほとんどは、一般的な可燃性ガスであるので、汎用的な燃焼装置で燃焼させることができる。例えば、アルコールは、燃料用、燃料電池原料、薬品資材用など用途別に純度を調整して利用する。
【0062】
反応装置104と脱気装置105は、別個の装置として設けてもよく、一体化した装置として設けてもよい。パルプスラリー中のセルロースを、酸性物質及び揮発性有機物の低分子有機化合物に転化する反応系を多段階で行う場合は、反応装置104と脱気装置105を複数段設けることが効果的である。
【0063】
脱気装置105により分離された液体成分は、液体貯槽106において未反応繊維を分離する。未反応繊維は、未反応繊維回収装置107で回収され、再びパルプ製造工程等に戻される。その後、液体成分は、濃縮槽108で濃縮される。排出された濾水は、再びパルプ製造工程等に戻される。濃縮後の副生した不揮発性有機化合物は化学薬品原料などの用途で使用される。不揮発性有機物は副生物として使用しない場合は、パルプシート溶解設備51へ戻し、再度反応装置に掛け反応させる。
【0064】
なお、本発明の別の実施形態として、電磁波照射と組み合わせて超音波照射を行ってもよい。その場合の超音波は、振動数は20kHz〜1THzのうち1又は複数の振動数を含むものである。電磁波照射と同じく分子の電子的励起状態を生じさせるエネルギーを付与できればよい。超音波の振動数はラジオ波程度であり、その振動エネルギーが直接、活性種を励起させるわけではないが、液体中での有機化学反応を促進させることが知られている。
また、電磁波照射と超音波照射を併用してもよい。これにより、さらに反応促進を図ることが可能である。
【0065】
図3は、製紙スラッジスラリーに対して本発明を適用するシステムの一実施例の概略構成図である。図1に示したパルプ製造工程又は製紙工程からの排水を処理する排水処理設備56から得る製紙スラッジスラリーは、pH調整用の酸又はアルカリ薬品を加え、主にpH4以上の溶液に調整され、製紙スラッジスラリータンク201に貯蔵される。製紙スラッジスラリータンク201から温度調節器202へ送られる。
【0066】
電磁波発生装置(超音波発生装置)203、反応装置204、脱気装置205、液体貯槽206、濃縮槽208、揮発性有機物分離装置211、及びアルコールタンク212の構成は、図2のパルプスラリーに適用した構成例と同じであるので説明を省略する。但し、液体貯槽206から分離される無機薬品は、反応装置内で発生する双極子の特性をもつ有機化合物により、インカレートされ捕捉していた金属類と置換し、無機薬品の主要な層状結晶である酸化ケイ素酸化アルミニウム複合体に光学的に影響を及ぼすπ電子配列を整理し、かつ原子間距離を変化させることにより、光学特性を変化させ、再生される。薬品回収装置207で回収され、助剤(尿素、二酸化チオ尿素、メタノール、アセトン、アルデヒド系化合物を含む有機化合物)により調質される。その後、硫酸添加により改質し、再利用可能なJIS白色度80度以上の無機質原料に転化し、再び抄紙製造工程へ戻される。
【0067】
図4は、図2又は図3に示した反応装置の実施例を概略的に示す側面(一部断面を含む)図である。(a)〜(e)の実施例で用いた電磁波発生装置1は、レーザーを想定している。紫外域ではエキシマレーザー、可視域ではアルゴンレーザー、半導体レーザー又はルビーレーザー、赤外域ではYAGレーザー又はCO、COレーザーなどがある。レーザーを用いる場合の反応容器は、入射部である照射窓が透光性を有する材料で形成され、内壁にはレーザーを反射するミラー膜などを形成する。レーザー照射装置の場合、複数のレーザー光源を備えることが好適である。また、異なる波長の光を発生する複数のレーザー光源を組み合わせてもよい。
【0068】
また、レーザー以外の光源としては、定常光を照射するランプがある。紫外域では高圧又は低圧の水銀ランプ又は重水素ランプ、紫外域〜可視域では金属ハライドランプ、可視光〜赤外域では希ガスショートアークランプ又はハロゲンランプなどがある。これらのランプ光源は、反応容器の内部に設置しても外部に設置してもよい。このようなランプは、光化学反応において一般的に用いられている。
【0069】
図4(a)では、電磁波発生装置1と曲部をもつ筒状の反応容器2aとを組み合わせている。反応容器2aの一端から多糖類含有液10が流入し、他端から照射後の液体20が流出する(以下同様)。反応容器2aの曲部において電磁波を照射する。(b)では、角筒状の反応容器2bの一側面から斜めに電磁波を照射している。(c)では、曲部をもつ筒状の反応容器2cの内部に内筒が設けられと複数のプリズム2c1、2c2が進行方向に配置され、レーザー光を拡散する。(d)では、筒状の反応容器2dの一端にレンズ2d1を設けて入射したレーザー光を拡散させ、筒内壁で反射を繰り返させ、他端に設けたレンズ2d2で集光している。(e)では、環状反応容器2e内をレーザー及び多糖類含有液が周回する。
【0070】
なお、超音波を照射する場合には、反応装置として超音波振動子を備えた超音波ソノリアクターを用いる。
【0071】
図5(a)(b)は、図2又は図3に示した脱気装置(反応装置と一体化)の実施例を概略的に示す側断面図である。図5では、図4(a)に示した反応装置と一体化した脱気装置の例を示す。図示の構成は一例であり、脱気装置容量及び反応装置数量は、実際に処理する量により決定する。(a)では、筒体の脱気装置3の上面に4つの反応装置が取り付けられている。各反応装置の流出側の管部が、脱気装置3の内部に挿入され、中央付近で流出口が下向きに開口している。流出口の直下には、ガス分散揮発板3aが水平に設置されている。反応装置から流出した液体は、メッシュ状のガス分散揮発板3aを通過することで揮発性有機物30が気化し、上面の抽気口3bから抽気される。一方、液体成分20は滴下し、脱気装置3の下部に溜まる。一定の時間滞留できるように、液溜りを形成する潜り堰板3dを取出口3cの手前に設ける。堰板3d下部は開口しており、潜り堰となっている。設計処理量に応じて、潜り堰開口高さを決定する。また、タンク内は無機質や未反応液が沈降し、溜らないように潜り堰方向に3/100〜5/100の勾配を付け、沈降性の無機質は潜り堰を通過し、液体成分20と共に下面の取出口3cから流出する。こうして、反応後の液体から酸性物質及び揮発性有機物が分離される。
【0072】
図5(b)では、筒体の脱気装置3の下面に4つの反応装置が取り付けられている。各反応装置の流出側の管部が、脱気装置3の内部に挿入され、上面付近で流出口が上向きに開口している。反応装置から流出した液体は、上面内壁に衝突して落下する。この衝突により揮発性有機物30が気化し、上面の抽気口3bから抽気される。一方、液体成分20が滴下し、脱気装置3の下部に溜まる。一定の時間滞留できるように、液溜りを形成する堰板3dを取出口3cの手前に設ける。堰板3d下部は開口しており、潜り堰となっている。設計処理量に応じて、潜り堰開口高さを決定する。また、タンク内は無機質や未反応液が沈降し、溜らないように潜り堰方向に3/100〜5/100の勾配を付け、沈降性の無機質は潜り堰を通過し、液体成分20と共に下面の取出口3cから流出する。こうして、反応後の液体から酸性物質及び揮発性有機物が分離される。
【0073】
図5(a)(b)には図示しないが、上述のように、脱気装置3の内部を適切な温度及び圧力に調整する温度調節手段及び圧力調節手段を設けることが好適である。
【0074】
図6A〜図6Hは、本発明をセルロース含有液体に適用した場合に生じていると考えられる光化学反応の幾つかを模式的に示した図である。反応は矢印の方向に進む。hνで示す波矢印は、光エネルギーを吸収する部位を示す。破線囲みは、反応に直接関係する原子群を示す。
【0075】
光化学反応に関与する反応活性種としては、励起種、ラジカル、ラジカルイオン又はイオン等多様であり、具体例としてはCOCOCO2−CH、OHOHHOHHSHSONONH等がある。これらは、パルプスラリー又は製紙スラッジスラリー等に含まれている成分分子に由来する。これらのスラリーの成分分子の種類は多様であるので、光化学反応の機構も複雑であるが、以下に典型例のみを示す。
【0076】
多糖類特にセルロースについては、加水分解を進め、二糖類(セオビロース)及び単糖類(β−グルコース)に分断する反応を経て、環構造を構成する炭素と酸素の結合を分断し、開列させる。これにより生成するアルデヒド型鎖状分子を基点とし、更にカルボニル基(CO)やヒドロキシル基(OH)等の官能基に光エネルギーが吸収されるようにエネルギーを付与し、結合開裂、異性化、閉環若しくは開環、付加、縮合若しくは付加環化、置換、酸化、還元、加水分解を発生させる。その他の官能基としては、O、COH、CH、S、SO、SO、SO、NH、N、NO等がある。従って、これらの官能基による吸収を生じる波長の電磁波を照射することが有効である。
【0077】
光官能基と有機化合物の特性を持つ官能基は、ほほ一致している。例えば、2種の成分分子の各々の官能基(例えば、ヒドロキシル基とカルボニル基)が励起状態となるエネルギーが異なる場合には、それぞれ異なる波長の電磁波ν、ν’を同時に照射する。これにより、双方の成分分子を電子的励起状態若しくは分子振動状態とし、分子の分断と共に反応活性種とすることができる。異なる複数の波長を含む電磁波であっても、各波長の電磁波が特定の官能基にのみ選択的に作用し、特性を変化させる。さらに、挙動を原子レベルで見れば、官能基を構成する原子電子配置毎に基底状態を有し、例えば炭素原子C、C、C2+、C3+の各々に幾つかの電子配置を持ちエネルギー準位の差分を外部からエネルギーを付与することにより、分子の反応活性度をコントロールできる。酸素原子についても同様で、官能基を構成する分子の活性度をコントロールできる。これにより、双方の成分分子による化学反応を生じさせることができる。化学反応には、これらの成分分子の結合開裂、異性化、閉環若しくは開環、付加、縮合若しくは付加環化、置換、酸化、還元、加水分解等が含まれる。また、低分子の縮重合及びセルロースのエステル化、アセチル化、ペプチドの形成も含まれる。さらに、電磁波の強度や照射時間を調整すれば、反応活性種の量を容易に調整することができ、化学反応を制御することが可能である。
【0078】
図6Aは、セルロースの加水分解を進め、環構造を構成する炭素と酸素の結合を分断し、開列させ、アルデヒド型鎖状分子に至る反応を模式化した例である。アルデヒド型鎖状分子を基点とし、更に加水分解を進め、分子分断と低分子有機化合物の生成過程を示す。
また、図6Aに示す模式図は、次段以降でアルデヒド型鎖状分子をラジカル縮合し、多価アルコールのエステル結合した長鎖の有機化合物を生成させ、更に安定するまで反応を進めることにより、一般に工業化されている多種多様な有機化合物複合体 (樹脂)を製造できる可能性を示している。
【0079】
図6Bはメタン生成まで加水分解を進めた場合の模式図である。反応経路は一つではなく、副生反応として、CO2ガスが発生する。光化学反応として、紫外線を照射し、アルデヒド型鎖状分子を構成する炭素原子に電子的励起状態にし、炭素間の結合を分断と同時にヒドロキシル基の酸素原子を電子的励起状態にし、水分子の水素原子と置換反応を起す。
【0080】
図6Cではメタンまでの加水分解を中間で止めた場合で、メタノール若しくは多価アルコールを生成する模式図である。反応経路は一つではなく、副生反応として、CO2ガスが発生する。光化学反応として、紫外線を照射し、アルデヒド型鎖状分子を構成する炭素原子に電子的励起状態にし、炭素間の結合を分断と同時にヒドロキシル基の酸素原子を電子的励起状態にし、水分子の水素原子と置換反応を起す。
【0081】
図6Dでは、更にメタノール若しくは多価アルコールの加水分解を中間で止めた場合で、エタノールを生成する模式図である。反応経路は一つではなく、副生反応として、CO2ガスが発生する。光化学反応として、紫外線を照射し、アルデヒド型鎖状分子を構成する炭素原子に電子的励起状態にし、炭素間の結合を分断と同時にヒドロキシル基の酸素原子を電子的励起状態にし、水分子の水素原子と置換反応を起す。
【0082】
図6Eは、更に分解を手前で止め場合に生成する乳酸の生成過程を示す模式図である。多糖類から加水分解し得られる低分子有機化合物の中で、乳酸が最も効率的に生成できる。炭素間の分断及び加水分解に使用する水分子量がメタン、メタノール、エタノールに比べ、極端に少なく、また、副生物の生成が少ないことに起因する。そのため、高分子ポリマーの原料としても近年重視される有用な素材である。
【0083】
図6B、図6C、図6D、図6Eでは炭素分子間の分断に必要なエネルギーと加水分解に必要なエネルギーの付与の仕方をレーザー照射波長、照射量の組合せ及び照射時間、触媒の使い方を適量に調整することにより、各目的の反応物質が効率的に生成する条件で反応を進める。また、反応経路は一通りではなく、COを発生する副生反応も平行して発生する。副生反応率が高まると、有機化合物の生成効率を低下させてしまう要因になるので、副生反応をできるだけ抑えた反応条件で生成することが重要である。実際の反応装置では、脱気装置から抽気するCO、COを管理し、副生反応を抑える条件を維持する。
【実施例1】
【0084】
マイクロケミカルレベルで自然現象を用い簡単に常温でセルロース加水分解を証明できることから、水中で検体に太陽光を照射し、加水分解による揮発性有機物のガス発生の確認と実証モデルに必要エネルギー試算のため、基礎試験を行った。
<試験条件>
・試料1:木材チップを磨り潰したグランドパルプ、試料2:白色紙、試料3:新聞紙
(各試料は、光感度に差をつけるため、黒色のものと、無着色のものとを用いた)
・溶媒 :蒸留水(19℃)
・pH :pH7以下 クエン酸水溶液 3.2g/L、
pH7 蒸留水
pH7以上 炭酸水素ナトリウム水溶液 0.6g/L
・照射時間:2分程度(発生ガス捕集時間)
・光源 :太陽光(100mm径レンズにより集光 晴れ 10:00〜14:00)
・照射方法:集光を直径5mm範囲(投光反応領域)、試料を水面下1mmに設置
・照射量 :地球表面で1.37kW/m2
(照射部位でのエネルギー付与は集光により換算して550〜1,500kW/m2)
・ガスの捕集:容器に水を一杯に満たし、透明のビニールシートを張り、発生ガスを透明シート内に貯めて、ガス発生量の確認及び導管から気泡を放出し、燃焼テストを行った。
【0085】
判定方法
1)セルロース加水分解による揮発性有機物(水素若しくはアルカンまたはアルコール)ガス発生有無(溶媒への吸収性、色、臭い、可燃性の違いにより判別)
2)セルロース結晶の溶解有無
3)光感度差及び触媒存在下による光反応の促進性の確認
4)再現性の確認
5)有機化合物複合体の生成の確認
【0086】
<試験結果>
1)セルロース加水分解による揮発性有機物ガス発生有無
a.触媒(カーボン)あり試料の光反応テストの結果
試料1〜3のいずれも照射開始から1〜3秒程度で検体表面からガスが発生した。
酸性条件 :気泡直径5〜7mm程度 1.1〜2.2L/時ガス発生
(クエン酸水溶液)
中性条件 :気泡直径1〜1.2mm程度5.6E-3〜11 E-3L/時ガス発生
(蒸留水)
アルカリ条件:気泡直径0.7〜1mm程度3.3E-3〜6.4 E-3L/時ガス発生
(炭酸水素ナトリウム水溶液)
ガスを大気に曝した場合、結露し、ミスト化する。各ケースとも発生ガスは凝縮性ガスで、非凝縮性ガスは発生ガスの約0.83〜1%の割合である。
捕集した気化ガスは、透明シート内に気泡となって蓄積し、2cm直径程度まで蓄積されたところで、導管で外気に放出し、燃焼させたところ、瞬間激しく燃焼し、揮発性ガスは可燃焼性ガスであることが判明した。(ガスは無臭)
b.触媒なし試料の光反応テストの結果:
試料1及び3では反応開始まで1〜3秒程度で検体表面からガスが発生した。
酸性条件 :気泡直径3〜5mm程度 0.4〜0.8L/時ガス発生
(クエン酸水溶液)
中性条件 :気泡直径0.7〜1mm程度3.3E-3〜6.4 E-3L/時ガス発生
(蒸留水)
アルカリ条件:気泡直径0.5〜0.7mm程度1.1E-3〜2.2 E-3L/時ガス発生
(炭酸水素ナトリウム水溶液)
ガスを大気に曝した場合、結露し、ミスト化する。各ケースとも発生ガスは凝縮性ガスで、非凝縮性ガスは発生ガスの約0.83〜1%の割合である。発生したガスは溶媒に吸収され、可燃性不溶ガスが透明シートに蓄積された。
試料2の白色紙は光を散乱し、単位時間当たりのエネルギー付与率が低下し、反応開始まで120秒を要した。
2)セルロース溶解:
新聞紙端面を毛羽立たせ、セルロース繊維が見えるようにして、太陽光を照射したところ、常温でセルロース繊維結晶が分解して、溶媒に溶け込む瞬間を観察できた。
3)触媒存在下による光反応の影響:
触媒機能を確認するため、活性炭素を付着させ、テストを実施した結果、光感受性が上昇し、揮発性ガスが無触媒の場合に対し、約1.2〜1.4倍程度発生した。
4)再現性の確認
以上のテストを繰り返し、再現性があることが確認できた。
5)有機化合物複合体の生成の確認
試料1を炭酸水素ナトリウム水溶液0.6g/L濃度に浸し、試料1に2時間程度太陽光を照射し、自然乾燥させた。有機化合物複合が炭酸水素ナトリウム結晶と共存する形で、採取できた。
【0087】
<結論>
自然現象を用い太陽光照射により常温の水中でのセルロース結晶の加水分解及び揮発性有機物ガスの発生が観察できた。光感受性の差及び触媒存在の有無により、光反応活性に差が発生することも確認できた。揮発性ガスの発生状況から、セルロースが加水分解し、低分子有機化合物が、発生したと説明できる。更に、太陽光を照射し続けることで、有機化合物複合体を溶媒から水分を飛ばし、乾燥することで分離することが出来た。実験条件を本発明の目的とする物質生成が可能な電磁波の組合せを選択し、エネルギーを付与することにより、目的とする樹脂を生成することが出来る可能性を示唆する結果である。
実際のパルプスラリーや製紙スラッジスラリー中に存在する有機物は、試料1〜3と同様の光官能基を保有し、由来も同じものである。太陽光照射による水温上昇はほとんどなく、光照射によるエネルギー付与が光官能基に行われ、低分子有機化合物が反応すると考えられる。本発明では、人工的に特定の電磁波を波長、照射時間、光強度(照射出力)を調整し、多糖類の電磁波吸収端により最適化された反応環境下で実施されるため、本テストの結果以上に効率的に低分子有機化合物及び有機化合物複合体を合成できる。
【実施例2】
【0088】
図2に示したパルプスラリーへ適用されるシステムについて、エタノール生成量を試算した結果は次の通りである。
原料及び条件:パルプ生産量100Adt/日、スラリー濃度5%、照射エネルギー紫外線280nm、赤外線5.8μm、レーザー照射装置出力合計 550kW
エタノール生成量: 72t/日 生成効率 80%
エタノール生成量: 48t/日 生成効率 54%(副生反応が起きた場合)
【0089】
図3に示したパルプスラリーへ適用されるシステムについて、ポリ乳酸生成量を試算した結果は次の通りである。
原料及び条件:パルプスラッジ 100Adt/日(60%パルプ、40%ASH)、スラリー濃度 5% 照射エネルギー紫外線280nm、赤外線5.8μm
ポリ乳酸生成量:56t/日 生成効率103% 合計出力 1,330kW
副生反応で製紙薬品再生の場合:36.4t/日 合計出力 25,200kW
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】従来のバイオマス循環サイクルに本発明を適用した一例を示す構成図である。
【図2】パルプスラリーに対して本発明を適用するシステムの一実施例の概略構成図である。
【図3】製紙スラッジスラリーに対して本発明を適用するシステムの一実施例の概略構成図である。
【図4】図2又は図3に示した反応装置の実施例を概略的に示す側面(一部断面を含む)図である。
【図5】図2又は図3に示した脱気装置(反応装置と一体化)の実施例を概略的に示す側断面図である。
【図6A】本発明により低分子化合物及び有機化合物合成体を生成する光化学反応を模式的に示した図である。
【図6B】本発明により低分子化合物を生成する光化学反応を模式的に示した図である。
【図6C】本発明により低分子化合物を生成する光化学反応を模式的に示した図である。
【図6D】本発明により低分子化合物を生成する光化学反応を模式的に示した図である。
【図6E】本発明により低分子化合物を生成する光化学反応を模式的に示した図である。
【符号の説明】
【0091】
1 電磁波発生装置
2a〜2e 反応容器
3 脱気装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多糖類含有液に対し、前記多糖類含有液に含まれる1種又は複数種の多糖類分子の官能基を電子的励起状態または分子振動状態とする紫外光〜赤外光の波長範囲から選択された1又は複数の波長の電磁波を照射することにより、前記官能基を活性化し化学反応を生じさせて前記多糖類由来の1又は複数のアルデヒド型鎖状分子及び低分子有機化合物を生成することを特徴とする多糖類由来化合物の生成方法。
【請求項2】
前記多糖類から前記アルデヒド型鎖状分子を経て前記低分子有機化合物を生成することを特徴とする請求項1に記載の多糖類由来化合物の生成方法。
【請求項3】
前記低分子有機化合物がCH、CH、CH、CH10、CH12及びCH14のアルカン、CHOH、CHOH、CHOH、CHOH、CH11OH及びCH13OHのアルコール並びにこれらの多価アルコール、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、ギ酸、酢酸並びに乳酸からなる群のうち1種又は複数種を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の多糖類由来化合物の生成方法。
【請求項4】
前記多糖類がセルロースであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の多糖類由来化合物の生成方法。
【請求項5】
前記セルロースがパルプ又は製紙スラッジ、廃材粉砕木、チップダストに含まれることを特徴とする請求項4に記載の多糖類由来化合物の生成方法。
【請求項6】
前記電磁波の照射に先立って照射対象の前記セルロースに対しpH調整用の酸又はアルカリ薬品を添加した溶媒と混合し、スラリー液化した後触媒を添加し、該触媒が、カーボン、オゾン、酸化ケイ素酸化アルミニウム複合体、酸化チタン、ルテニウム、二酸化マンガン、酸化第二鉄、酸化第三鉄、リグニン質及び黒液からなる群から選択されることを特徴とする請求項4又は5に記載の多糖類由来化合物の生成方法。
【請求項7】
前記電磁波を、振動数20kHz〜1THzの範囲の1又は複数の振動数を含む超音波に替えたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の多糖類由来化合物の生成方法。
【請求項8】
請求項1〜7いずれかの方法により生成されたことを特徴とする多糖類由来化合物。
【請求項9】
請求項5に記載の多糖類由来化合物の生成方法を用いて、前記製紙スラッジに由来する炭酸カルシウム及び酸化ケイ素酸化アルミニウム複合体を含む無機薬品を、副生反応により再生することを特徴とする製紙用無機薬品の再生方法。
【請求項10】
前記無機薬品を副生反応により再生後、前記無機薬品に対し尿素、二酸化チオ尿素、メタノール、アセトン及びアルデヒド系化合物を含む有機化合物を加えることにより双極性を付加した後、硫酸を添加することにより改質を行うことを特徴とする請求項9に記載の製紙用無機薬品の再生方法。
【請求項11】
請求項9又は10の製紙用無機薬品の再生方法により白色度JIS80以上に再生されたことを特徴とする製紙用無機薬品。
【請求項12】
多糖類由来物質の生成装置であって、
多糖類含有液に含まれる1種又は複数種の官能基を電子的励起状態または分子振動状態とする紫外光〜赤外光までの波長範囲から選択された1又は複数の波長の電磁波を照射する電磁波照射装置と、
前記電磁波照射装置により照射される電磁波に暴露させつつ前記多糖類含有液を送流させる反応装置と、
前記電磁波の照射により前記多糖類含有液から生成された多糖類由来物質のうち揮発性成分を抽気しかつ分離すると共に、不揮発性成分を回収する脱気装置とを備えたことを特徴とする多糖類由来物質の生成装置。
【請求項13】
前記反応装置が前記脱気装置の内部に設置されていることを特徴とする請求項12に記載の多糖類由来物質の生成装置。
【請求項14】
前記反応装置内を665Pa〜大気圧の圧力範囲のいずれかの圧力に調整し維持する手段を備えたことを特徴とする請求項12又は13に記載の多糖類由来物質の生成装置。
【請求項15】
請求項1の多糖類からアルデヒド型鎖状分子を経て高分子有機化合物を生成することを特徴とする請求項1に記載の多糖類由来の化合物の生成方法。
【請求項16】
前記高分子有機化合物がポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ乳酸及び環構造を有するセオビロース、セルロースの有機化合物合成体及び同有機化合物合成体でOH基、CHO基を保有数する有機化合物合成体及び請求項3に記載する低分子有機化合物とポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ乳酸及び環構造を有するセオビロース、セルロースの有機化合物合成体または同有機化合物合成体でOH基、CHO基を保有数する有機化合物合成体の生成方法。
【請求項17】
請求項1から7いずれかの方法により生成されたことを特徴する低分子有機化合物を経てポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ乳酸及び環構造を有するセオビロース、セルロースの有機化合物合成体及び同有機化合物合成体でOH基、CHO基を保有数する有機化合物合成体の生成方法。
【請求項18】
請求項1から7及び請求項15,16の何れかの方法により生成されたことを特徴とする多糖類由来の化合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【公開番号】特開2009−29796(P2009−29796A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−169216(P2008−169216)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(507197719)
【Fターム(参考)】