説明

多素子X線検出器、その希土類ルミネセンス材料、多素子シンチレータおよび検出器の製造

シンチレータの外面に当たるX線を可視光に変換するプレートタイプの多素子シンチレータと、シンチレータの放射面と光学的に接触し、シンチレータの内面で放射される光放射を電気信号に変換する光検出器マトリックスと、を備える多素子X線検出器が提供され、該X線検出器は、多素子シンチレータは、X線を吸収して光を反射する金属から構成されるグリッドのセル内に位置するヘテロ相ルミネセンス素子の個別の組が、各特定のルミネセンス素子に関する間隔、断面および相互接続厚さに関する幾何学寸法でもって組み合わされたものであり、かつ、光検出器マトリックスの作用に適合しており、金属グリッドの裏面は反射層を有し、一方で金属グリッドの前面はルミネセンス検出器と素子毎に接触する多素子半導体マトリックスを有し、接触している素子が、30〜140keVのエネルギーを有するX線放射によって同時に励起される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5keV〜200keVのエネルギー範囲内のX線放射の画像化および視覚表現の技法を扱うX線技術および医療診断に関する。特に、本発明は、生体内の病理変化の制御および監視のために医学で有用である。放射線学として知られているこの医学分野は、20世紀初頭にドイツの物理学者C.レントゲンが貫通放射線を発見したときに遡る。この放射線はその発見者の名前にちなんで命名された。
【0002】
また、本発明は、患者の動的ストリーム予防検査に適用可能であり、その主な役割は主要な病理を発見することである。また、本発明は歯科学でも使用することができ、歯科学では、歯牙顔面領域のX線検査を必要とする。本発明が担うことがある別の重要な役割は、女性の乳腺の検査のためのマンモグラフィの分野である。
【0003】
医学に加え、本発明は、パイプラインの溶接検査など様々な分野の技術における欠陥検査および非破壊検査システムで有用である。本発明は、完全武装軍需物資の品質管理のために特に重要であり、この技術は、ことによると動的品質管理の唯一の方法である。
【0004】
本発明は、線路、陸上、および海上輸送での大きな貨物の税関管理で使用することもできる。
【0005】
本発明のこのような広範囲の利用可能性は、非破壊品質管理および診断のためのニーズによって一部は説明することができ、と、情報読み取り、コンピュータ処理、および保存のためのマトリックスタイプの半導体システムを有するシンチレータから構成される従来技術の材料の通例とは異なる組合せである。本発明が高度な技術を含むことは疑いない。
【背景技術】
【0006】
最初のX線装置は、1920年代に作製され、X線放射源と放射線受信機を備えていた。その後、X線放射源に大きな変更は成されなかった。すなわち、真空装置の高エネルギー加速電子ビームが、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、または時として銅(Cu)から構成される金属製の対陰極に衝突する。生じた衝撃X線放射がフィルタされて単色にされ、次いで特別な材料を通って装置から出る。これらの材料は、放射線種によって貫通可能である(ベリリウム箔など)。得られるX線ビームは、数ミリメートルから10センチメートルの直径を有する。検査を必要とする貫通不可能な構造または身体が、このビーム内に置かれる。
【0007】
長い間、ビーム中のX線量子密度の変化を視覚的に画像化する唯一の方法は、ハロゲン化銀に基づくフォトエマルジョン検出器によるものであった。しかし、検出層の比較的低い密度(2〜3g/cm)、および、X線放射に対するハロゲン化銀の低い感度により、この方法は、X線放射への高い曝露を必要とし、したがって医療用途を制限した。
【0008】
X線検査を受ける患者の被曝量を大幅に減少させることを狙いとした最初の技術的な解決策は、X線増感スクリーンであった。これらのスクリーンは、量子エネルギーの物理的な遷移を可能にした。スクリーンは、基本的には、X線に露出されるときに放射する物質(X線ルミネセンス材料)の薄層であった。スクリーンは通常、前方および後方スクリーンと感光性フィルムとを備えるカセットの形態で形成された。前方スクリーンは、より薄いX線ルミネセンス材料層を有し、後方スクリーンは、X線放射をほぼ完全に止めることが狙いであった。
【0009】
長い間、増感スクリーンでのX線ルミネセンス材料の主な材料は、タングステン酸カルシウム(CaWO40)であった。これは、高い重力密度および中程度のエネルギー変換効率(6.0〜8.0%)を特徴とする。これらのパラメータが、X線ルミネセンス材料の最適な化合物のための基準として使用された。これらの化合物に対する基本的な要件は以下のようなものであった。
【0010】
− 40原子単位を超える平均原子数N
− 4.5g/cmを超える重力密度
− X線ルミネセンス材料放出のエネルギー効率>6%
− 1×10−3秒未満のバックグロー
− 放射線のスペクトル最大λ>400nm
【0011】
X線放射と生体組織の間(医療X線診断において)、または、X線放射と複雑なシステムおよび構造の部品との間(X線欠陥検査において)の直接の相互作用に基づく放射線学が、感光性フィルムまたは半透明スクリーンの以下の画像化特性を実現した。
【0012】
− 1対のライン当たり1〜0.6mmの分解能
− 30%未満の暗視野または明視野と背景との比を有するコントラスト
− 650〜800μmのサイズの小さな細部の画像化
− 約1×10−3秒のアフターグロー期間
【0013】
当時の技術水準でさえ、一回の照射での患者の放射線ストレスが過剰であったことに留意すべきである(胃腸管の検査1回につき、1.0〜10.0レントゲン単位)[非特許文献1]。
【0014】
40〜70秒の短時間におけるX線診断の低い性能のため、他の物理的な原理に基づく新規の診断法の開発が必要とされた。すなわち、1964年に[非特許文献2]、最初のX線電子光学画像変換システム(EOIC)が提案された。これは、さらに複数回の増倍をもちいた可視光へのX線放射の一次変換(トランスダクション)と、光信号の小さなピクチャフレームテレビジョン画像への変換とを取り扱っている[非特許文献2]。最初のEOICの変換器は、水溶性ヨウ化セシウムなどのハロゲン化物ルミネセンス材料に基づいていた。これは、機器の製造技術を大幅に複雑にした。
【0015】
同時に、高速X線撮影法が開発された。これは、大口径レンズシステムによって、大きな半透明ルミネセンススクリーン上に形成された画像を写真フィルム上に投影することを含んでいた。この方法は、多くの患者が短期間の検査を必要とする用途に関して好都合なものになった。このX線撮影法は、大きな病巣しか発見できなかった。
【0016】
70年代中頃に、希土類X線ルミネセンス材料の時代が始まり[非特許文献4]、まず、一次酸硫化物(YS:Tb、GdS:Tb)、次いで酸臭化物(LaOBr)が用いられた。以下に、材料およびスクリーンの開発におけるこの時代の主な業績および課題を要約する[非特許文献5]。
【0017】
放射線学用の材料の急速な発展が見られたこの期間に、重要な科学的な成果が得られた。特に、X線ルミネセンスマトリックスの化学結合に関する要件の調整、およびX線またはガンマ放射線の下での可視光エネルギー出力効率に関する良好な実験結果の実現である(例えば、YS:Tbに関して22%)。これは、新たな知識水準への道を開いた。
【0018】
La−LaS−LaOBr:Tb系列の比較により、ルミネセンスマトリックス中の共有結合タイプの結合における大きな影響を示されている。ルミネセンスマトリクスは従前はほとんどイオン結合を有していた。X線ルミネセンス材料に関する最適パラメータの以下の表に、研究結果および特定の一般化[特許文献1]をまとめることができる。
【0019】
【表1】

【0020】
最も顕著には、放射線学の発展があったこの期間によって、患者、特に子供に対する放射線ストレスを3〜4分の1に減少した。これと共に、新規のX線感受性材料によるかなり高い比率のX線吸収により、従来使用されていたX線スクリーンの粗い粒子の材料は使用されなくなり、増感スクリーンの分解能を20〜40%高める中程度の粒子の材料が利用されるようになった。これは、女性の乳房の石灰化病巣を裸眼で見ることができるようにするのに十分であった。これは、実用放射線学の予防分野としてのマンモグラフィの始まりであった。
【0021】
同時に、PHILLIPS社が、EOICのスクリーンで新規な柱状結晶X線感受性コーション(CsJ:Tl)の使用を提案した。これは、ヨウ化セシウムの柱状微結晶の光伝導特性により、光を分散しないという利点を有していた。これらの装置の画像品質は、酸硫化ガドリニウムを用いたスクリーンを備えた、成功している連続装置におけるものと同程度に高いものであった。EOICは、患者の身体の潰瘍の病巣または他の病理を発見するために、硫酸バリウムまたはタンタル酸ガドリニウム(GdTaO)などX線造影物質を用いた軟組織間の相互作用の観察を可能にした(図1)。X線装置でのスクリーンの輝度が改良されて、やはりCCDマトリックスに基づく光学的画像伝達および/または増倍手段によって、直接レジストレーションのしきい値(輝度レベル2〜3cd/m)に達した[特許文献1]。
【0022】
同時に、これは、エネルギーE=100〜1000eVを特徴とする軟X線放射に関するレジストレーションのエネルギー限界の低減を可能にした。この技術は後に深空間装置に使用された[特許文献1]。
【0023】
10−2ルクスの光しきい値を有する高感度CCDマトリックスの製造により、患者検査中に短時間の遅延で画像を生成する高度なデジタルX線感受性装置の開発が始まった[非特許文献6]。
【0024】
この新たな段階のリアルタイム放射線学の発展は、今日まで続いている。この段階は以下のことを含む。
【0025】
− GdS:Tbをベースとする最も効果的な材料の分散の改良[特許文献2]
− このルミネセンス材料をベースとする組成物の選択[特許文献3]
− X線マイクロ検出器の作製[非特許文献7]
− シリコンマトリックスの改良[非特許文献8]
− 最初のタイプのデジタルX線検出器の作製[特許文献4]
− デジタルX線検出器[特許文献5]
− Taをベースとする白色反射コーティングの利用[特許文献6]
− 新規の検出器でのLuEuをベースとする透光性セラミックの利用[非特許文献9]
【0026】
この主題に関する最新の刊行物は、韓国の科学者による論文である[非特許文献10]。この科学者は、Cr−Alから構成される反射膜(厚さ6000Å)でコーティングされた素子を有するポリエチレンプレス加工でのGdS:Tbの多素子X線感受性層の構成および製造技術を提案した。著者は、ルミネセンス材料の固体層と比較して、このX線ルミネセンス材料において、放射線が1.5〜2倍減少することを指摘した。しかし、構造化されたX線感受性スクリーン上に生成される画像の変調伝達関数はいくぶん高く、スクリーン素子の幾何学的寸法に近い周波数の複数の極値を有する。
【0027】
画素化された(多素子)シンチレータのみに当たる全体のX線放射の減少など、[非特許文献10]に記載される検出器におけるいくつかの利点にもかかわらず、この構成にはいくつかの大きな欠点がある。
【0028】
− GdS:Tbから構成される多素子スクリーンの放射線強度の減少;
− X線ルミネセンス材料の浅い厚さ。これにより、X線放射がフォトダイオードに直接達して、フォトダイオードを劣化させる;
− フォトリソグラフィプロセスの利用による微小多素子検出器の複雑な製造。したがって、元の論文は、サイズ2×3cmの小さいスクリーン試料のみに言及している;
− シンチレータでの画像の低いコントラスト。画像を拡大するために、シンチレータがさらに黒色黒鉛グリッドで覆われる;
− GdS:Tbルミネセンス材料の浅い厚さは、X線管で例えば45keVの低い加速電圧しか使用できないようにし、これは、限られた用途、例えば歯牙顔面検査などにしか適していない。
【0029】
これらの欠点は刊行物[非特許文献11]で考察されており、本発明者らは、この文献を本発明のプロトタイプとして使用した。この著者らは、厚さ4〜7μmの柱状結晶物から構成されるCsJ:Tlから構成される放射線源に戻すことを提案する。そのような構造から構成される高さ16mmまでの素子が、完全なシンチレータを作製するために使用された。著者らは、そのような検出器が、画像コントラストの減少に伴い、1mm当たり4対のラインの分解能で変調伝達関数MTF=40%を有し、1mm当たり最高8対のラインの分解能でMTF=10〜20%を有することを主張した。
【0030】
高い量子検出能DQL=0.28によって示されるいくつかの利点にも関わらず、著者らは、微結晶中の欠陥により、CsJ:Tlの使用が必ずしも効果的でないことを示唆している。このため、著者らが述べているように、この高精細の検出器によっては患者の放射線ストレスの強度を部分的にしか調整できない。
【0031】
低エネルギーで非常に顕著な高い量子検出能など、プロトタイプ検出器の様々な利点にもかかわらず、このプロトタイプは、多くの重大な欠点を有していた。第1に、35keV〜60keVという狭い範囲のX線放射励起エネルギーしか有しておらず、これは完全な医療検査には不十分である。第2の問題は、特に複雑な病理を検査すべき場合、またはX線造影物質が使用される場合に、放射線負荷が10レントゲンという高い値に達し得ることである。第3に、検出器の構造素子それぞれのサイズが小さい(16mm)ため、各素子が不連続性であることにより、得られる画像がぼやけることである。
【0032】
第4に、ヨウ化セシウムCsJ:Tlの親水性挙動および感温特性が、検出器素子の広範囲のシーリングおよび水分からの保護を必要とすることである。これは、素子の小さいサイズに鑑みて、複雑な問題を生じる。
【0033】
第5に、非常に毒性の強いタリウムTlとの相互作用を伴うCsJの柱状結晶構造の製造は、非常に複雑であり環境面での問題が生じやすく、これは、閉じた雰囲気および誘発される空気を含む先進技術の反応室の使用によって解決することができることに留意すべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0034】
【特許文献1】特許第1569906号(Zhitnik L., Tindo L. SU(06.07.1990))
【特許文献2】米国特許第5126573号(West P. 他(30.06.1992))
【特許文献3】米国特許第5302817号(K. Yokota他(12.04.1994))
【特許文献4】米国特許出願公開第2006/0033030A1号(Keitchie A他 (12.07.2006))
【特許文献5】米国特許出願公開第2005/028044A11号(Mollov N.(26.6.2001))
【特許文献6】米国特許第6252231B1号(Horotian S.G.(26.05.2001))
【非特許文献】
【0035】
【非特許文献1】<<Image forming in roentgenography>>. Under redaction of B.Webb, Moscow, <<Mir>>, V.1, p.346 (2000)
【非特許文献2】Tevtor A. Philips Tech. Rev., V.14, pp.33-43 (1976)
【非特許文献3】Gurvich A.M., Malova A.M., Soschin N.P. USSR Author. Certificate No. 457789 (21.02.1978)
【非特許文献4】Tomas A. et al. J.Electrochem.Soc., V.118, p.151 (1971)
【非特許文献5】Gurvich A.M., Soschin N.P. Izvestiya Acad. of Sciences of USSR, ser. Phys., V.41, p.1372-1379 (1977)
【非特許文献6】Well S. The Proc. of Medical Imaging Institute of Phys. Bristol. G.B.(1992)
【非特許文献7】Rocha J.G et al. IEEE Trans., V.6, No.5, p.7803(2002)
【非特許文献8】Rocha J.G. 14 European Conf. On Solid-State Transistors, V.2, p.27 (2000)
【非特許文献9】Nagarkar V.V. et al. Nuclear Science. IEEE Transaction, V.50, No.3, p.297 (2006)
【非特許文献10】Deok Jm.Jung et al. ETRI Journal, V.30, No.5, p.747 (2008)
【非特許文献11】Simon M. et al. Medical Phys., V.35, p.968-981 (2008)
【非特許文献12】Metallic grids. GOST 6613-86, 2002
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0036】
したがって、既存のX線検出器設計の一連の欠点、例えば、狭いエネルギー動作範囲、画像化領域の不連続性、低い加水分解安定性、および耐久性が、本明細書で提案するX線検出器の必要性を生み出す。
【0037】
本発明の主な目的は、シリコンフォトダイオードのマトリックスシステムによる高いコントラストの全体画像および情報の読み取りを特徴とする多素子X線検出器を作製することである。本発明の別の目的は、X線放出器(管)において様々な電圧で動作することができる広い範囲のX線エネルギー装置を作製することである。本発明の主要な目的の1つは、分解能は異なるが、等しいコントラストおよびコントラスト伝達パラメータを有する1組の多素子検出器を作製することである。
【0038】
本発明を開発する際の非常に重要な課題は、幾何学的寸法に依存しない、多素子検出器を製造するための単一プロセスサイクルを進化させることである。
【0039】
本発明を開発する際の別の課題は、低エネルギーX線放射(10〜15keV未満)、ガンマ放射線(エネルギー値150〜250keV)、および、遅い中性子ビーム(エネルギー値E=0.1eV〜E=1〜2eV)など、いくつかのタイプの貫通放射線のための汎用の多素子検出器を製造する可能性を探ることである。
【課題を解決するための手段】
【0040】
上述した目的および課題を達成するために、本発明者らは、シンチレータの外面に達したX線放射を可視光に変換するのに必要な平坦な多素子シンチレータと、シンチレータの内面側のルミネセンス放射線を電気信号に変換する光検出器マトリックスとから構成されるマトリックスX線検出器の新規の構成を提案する。この検出器は、ルミネセンスシンチレータ構成を有する他の検出器とは以下の点で異なる。すなわち、この検出器は、X線を吸収して可視光を反射する金属から構成されるグリッドのセル内に配置された個別のヘテロ相ルミネセンス素子の組として形成される。前述のグリッドの間隔、断面、および相互接続寸法は、各特定のルミネセンス素子の寸法と等しく、光検出器マトリックスの作用に適合し、一方、グリッドの裏面は反射層を有し、前面は多素子感光性半導体マトリックスで覆われている。この半導体マトリックスの各素子は、ルミネセンス検出器の素子と光学的に接触し、それらは、30〜140keVのエネルギー範囲内のX線放射によって同時に励起される。
【0041】
本発明で提案する構成の詳細な説明を始める前に、説明のために与える図面を列挙して確認しておく。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】Gd、O、S、Ta、Luイオンを含む様々な組成物に関するX線ルミネセンスの強度依存性を示す図である。物質の電子の内殻K殻軌道でのエネルギーピークが明らかである。
【図2】本発明で提案する装置の構成配置を示し、装置が、織り合わせたワイヤ2から構成される直交金属グリッドから構成される多素子シンチレータ1を備え、グリッドのセル3が、X線放射下で見えるルミネセンス発光材料(X線ルミネセンス材料)を保持するヘテロ相素子4を含むことを示す図である。図2の挿入図は、1つのグリッドセルの構造を示す。セル内にヘテロ相シンチレータ素子4が存在する。この素子は、その表面全体にわたって広がるX線ルミネセンス材料6の粒子を有する透光性のポリマー5から構成される。半導体フォトダイオード素子のマトリックス7がシンチレータの内面に接続される。このマトリックス7は、シリコンフォトダイオード8と、ベースプレート9内に設けられた制御電極のシステムとを保持する。シンチレータの外面は、X線放射を透過する二層反射コーティング10を有し、厚さ0.6mmである。カバーガラス12が保持構造として使用され、この構造は、ポリマーコーティング11と共に検出器の全ての機能層を固定する。
【図3】X線シンチレータ用のキャストフィルムコーティングを示す図である。
【図4】使用されるX線ルミネセンス材料の単一の粒子の顕微写真である。
【図5】本発明で提案する検出器のスクリーンの写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
次に、X線ルミネセンス材料を充填された金属グリッドに基づく本発明で提案するマトリックス検出器の物理的な特徴をさらに簡単に説明する。本発明者らが以前の光学試験で立証しているように、この金属グリッドは、ルミネセンス材料の固体層をモザイク多素子パターンに分割し、検出器による画像化のコントラストを大幅に(1.5〜2倍)高める。
【0044】
上記特徴は、原子数が24〜74の金属から構成されるグリッドによってX線ルミネセンス材料層に形作られたモザイクパターンを有するX線感受性層を備えるX線検出器によって実現される。
【0045】
装置の物理的なプロセスを考察する。X線放射の全幅ビームが、装置の前面に達する。このビームは、交流アノード電圧U=60keV〜125keVを有する真空X線管と、Moから構成される作用対陰極によって放出される。電子ビームの減速により放出されるX線放射は、ベリリウム箔で遮蔽された真空気密窓を通って管から出る。高エネルギーX線放射は、検出器の表面の反射層を貫通し、X線ルミネセンス材料粒子に達する。
【0046】
この元のX線放射は、ルミネセンス材料粒子中で一次K殻電子を生じ、次いで集団エネルギー振動(プラズモン)を引き起こし、これがさらに電子正孔対(e+p)に崩壊して、X線ルミネセンス材料粒子の活性剤および増感剤のイオンと直接相互作用する。一次X線量子がシンチレーティングターゲット内を進む距離は、初期エネルギーEX−rayおよび使用されるX線ルミネセンス材料の密度に応じて20〜200μmである。密度ρ=6.6g/cmのGdS:Tbから構成されるルミネセンス材料では、エネルギーE=60keVを有する量子が、深度ε=0.1p×dav=0.1×6.6×10=40mg/cmまで侵入することが知られている。量子の初期エネルギーがE=120keVである場合、侵入深度は160mg/cmである。
【0047】
後で示すように、技術的な解決策は、X線量子エネルギーの作業値に関して、十分必要な侵入深度を最大100mg/cmに減少することである。
【0048】
X線ルミネセンス材料のバルク中の励起活性イオン(活性剤)は通常、電子正孔対の影響下でイオン化され、すなわちその酸化度を変える。すなわち、活性イオンEu+3は、電子を吸収する
Eu+3+e→Eu+2*+p→Eu+3*→Eu+3 (5D−7FJ)
これは、波長λ=626nm〜λ=710nmの赤色粒子の放出を伴う。X線ルミネセンス材料によって放出される量子の生じ得る数は、N=Ep/hωprであり、ここで、Epは量子の初期エネルギーであり、hωprはプラズモンのエネルギーである。
【0049】
前に示したように、より正確な量子の量は、バルクプラズモンの値hωprに関してではなく、線形クラスタプラズモンの値hωplに関して得られる。本発明者らの調節によれば、クラスタの元素の原子質量が大きければ大きいほど、そのようなクラスタを励起するのに必要なエネルギーはより低くなる。したがって、X線ルミネセンス材料GdS:Tbでは値hωpr=16〜20eVであり、本発明で提案する材料(Gd,Lu)O(Br,N)Sでは、線形クラスタの値がhωpl=14.8eVまで減少し、特許請求の範囲で提案する新規のルミネセンス材料による効果の大幅な向上を示す。
【0050】
X線ルミネセンス材料で発生される可視光の量子は、エネルギー値がhu=2.1eV〜hu=1.85eVである。各X線発光団が、量子を一様に放出し、4π空間を満たす。検出器の感光素子に導かれる光の度合いを高めるために、本発明は、厚さ0.1〜0.6mmの反射Al膜による検出器の外面のコーティングを採用し、これは、検出器素子のグロー輝度を40〜60%高める。
【0051】
上記の利点は、厚さ2000Å〜6000Åの二層反射金属膜でコーティングされた裏面を特徴とする多素子検出器で実現される。検出器は、厚さが最大1000Åの金属銀と、それに重なる最大5000Åのアルミニウムコーティングで覆われる。
【0052】
本発明の開発中に明らかになったように、本発明で提案する二層膜の反射率は、電子管装置で好都合に使用される単層Alコーティングでの82%に対して、88〜92%である。
【0053】
さらに、検出器での光濃度を向上させるために、本発明者らは、Al(真空プロセス)またはAg(電着または真空プロセス)を備える、検出器グリッド構造のベースとなるコーティングワイヤを提案する。本発明者らが実証しているように、これは、光検出器の非構造化層に比べてさらに最大10〜15%多く光を生じる。
【0054】
この利点は、電着または真空堆積プロセスによって形成される最大2000Å厚の銀の反射金属層でコーティングされたグリッド巻線を有する本発明で提案する検出器の設計で実現される。
【0055】
(X線検出器で使用されるグリッドの特性)
さらに、金属グリッドの基本パラメータを示す。まず、グリッドは、互いに垂直に配置された相互に接触する金属ワイヤから構成される構造要素である。製造プロセスでは、たとえばグリッドは織製され、これらは織機で製造される。したがって、基本ワイヤとそれに垂直な緯糸とを有する。グリッドは、グリッド1センチメートル当たりの基本ワイヤの量を示す数で表される。この値に加えて、使用されるワイヤの定格直径が、通常は数分の1ミリメートルの単位で表される。グリッドの別の重要なパラメータは、「受光領域内(in the light)」のグリッドサイズ、すなわちワイヤ巻線で充填されていない直線空間である。そのような空間の面積を考察する場合、このパラメータを「実効断面積(%)」と呼ぶ。
【0056】
一例として、織製されたグリッドN20のパラメータを考える。このグリッドは、同じ定格直径0.10mmを有する1つの基本ワイヤと1つの緯糸ワイヤとを用いる。このワイヤに関する受光領域内のグリッドサイズは、ベースで0.400mmである。正方形のセルの「実効断面積」は64%と算出され、これは、このグリッドが、64%の光または貫通放射線を通過させてその表面に当てることを意味する。
【0057】
そのような高い値の「実効断面積」は、本発明で提案する多素子検出器に関する設計の非常に重要な特徴であることに留意すべきである。基本的には、金属グリッドの「実効断面積」値は約25%〜50%である。まれに、例えば1mmのワイヤから構成されるグリッドN1は、9mmの受光領域内のセルサイズ、および、81.90%の「実効断面積」を有する。しかし、以下に説明するように、検出器の分解能が低くなるので、そのような粗いグリッドを本発明で提案する方法で利用するのは難しい。
【0058】
グリッドは通常、円筒体に巻かれてリールとして搬送される。リールが解かれた後、グリッドを機械的に平らにすることができ、必要分が切り取られる。検出器の使用対象となるX線制御のタイプが、これらの必要分の特性を決定する。本発明者らの試験では、受光領域内で64×64素子、128×128素子、256×256素子、512×512素子、および1024×1024素子を有するグリッドシートを選択した。したがって、N20グリッドでのそれらの素子の直線寸法は、25.6×25.6ミリメートルであり、実効断面積の面積はS=25.6×25.6×0.64=419.43mmであった。他の試験素子に関するセル寸法および「実効断面積」の面積も同様に計算することができる。
【0059】
本発明を開発する過程において、本発明者らは、使用されるグリッドパラメータを改良するための主要な基準が以下の2つであることを見出した。
【0060】
− 実効断面積の最大面積(パーセントで表される)
− グリッド長さ1mm当たりのベースラインの最適数
【0061】
これらのパラメータが適切である場合、検出器の分解能は、1ミリメートル当たり3対を超えるライン数に達しうる。
【0062】
これは、本発明で提案する検出器の別の重要な利点であり、検出器のX線感受性層は、織製、コイル成形、または電着されたグリッドに基づくセル状の多素子構造を有し、「実効断面積」の面積が48%超であり、典型的には61%超であり、ベースの単位長さ当たりのワイヤの数が1ミリメートル当たり3を超える。
【0063】
金属グリッドの工業カタログを検討して、1mm当たり2〜4本のワイヤでは、「実効断面積」の最大面積は60〜64%であることが示された。本発明の開発中、本発明者らは、多素子検出器の情報および輝度パラメータを測定するための計測回路を提案した。この回路は、X線源と、試験物体(様々な直径のワイヤから構成される金属グリッドのシート)と、ルミネセンス材料でコーティングされた検出器の素子とを備えていた。試験で使用したX線放射のエネルギーは45keVであった。定量特性が選択マトリックス内で設定され、このマトリックスは、シンチレータの内面のグロー輝度および画像中の白黒境界の直線サイズの測定結果を含んでいた。
【0064】
本明細書で提案するシンチレータに関して、以下の関係が得られた。
【0065】
− ワイヤの直径が等しい場合、グロー輝度は、金属ワイヤの「実効断面積」に比例する
− ワイヤの直径が等しい場合、輝度強度は、1ミリメートル当たりの金属グリッド巻線の数に比例して減少する
− 金属グリッド巻線の数が増加すると、検出器の作業領域内でのバックグラウンド光ノイズの強度が増加する
【0066】
したがって、本発明者らは、以下のタイプの金属グリッドを多素子検出器で使用することを提案した。
【0067】
− 様々な金属から構成される織製されたグリッド:まずステンレス鋼、次いで主元素が原子数24の鉄Feの合金、さらに真鍮、青銅、または原子数29の銅に基づくトムバック合金
− 材料の主元素が原子数28のニッケルNiである電着グリッド
− 主元素が原子数74のタングステンである非常に細いタングステンワイヤから構成されるコイル成形グリッド
【0068】
グリッドの機械的および光学的特性を以下の表2に示す。
【0069】
【表2】

【0070】
本発明の開発時に明らかになったように、金属グリッドシートはいずれも画像化コントラストを1.5〜2倍に向上させ、一方、コイル成形タングステングリッドは、このパラメータを2.5〜3倍に高める。
【0071】
画像化コントラストの大幅な向上という上記の利点は、「実効断面積」が最大64%であるステンレス鋼、ニッケル、または青銅から構成される織製された金属グリッドシートを特徴とする検出器、および「実効断面積」が最大85%であるコイル成形タングステングリッドを特徴とする検出器で実現される。
【0072】
(検出器用のX線感受性ルミネセンス材料)
上記参考文献の検出器では通常、真空技術の下でのCsJ:Tlから構成される柱状スクリーンなどの単相ルミネセンスコーティングが使用される。この技術は、5%のタリウムTlをドープしたセシウム塩CsJなどのプロセス材料を基板上に熱蒸着することを含む。この場合、ヨウ化セシウム(n≒2)と媒体(典型的には大気;n≒1)との大きく異なる屈折率が、可視光の好ましい分散である視感透過を提供する。そのように屈折率が倍も違うため、素子内での40〜50μm程度の視感透過が可能になる。そのような柱状結晶構造の唯一の欠点は、コーティング中に気泡および微小包有物が生じることである。
【0073】
本発明者らは、検出器の別の構造を提案する。この構造は、検出器のX線感受性層の各素子を金属グリッドコイルから構成された枠内に配置することによって、層の素子どうしの光学的な相互作用がなくなるようにする。この場合、本発明者らは、ルミネセンス粒子間の空間を透光性のポリマーで充填することを提案する。この空間は、検出器の総体積の最大60%になる。本発明者らが見出したように、層のヘテロ相性質が、X線ルミネセンス粒子とポリマーバインダの屈折率の差により生じる視感透過の影響を最小限にすることを保証する。また、本発明者らは、ルミネセンス材料の屈折率と、本発明で提案するX線感受性検出器のポリマーの屈折率との比を1.2≦nluminescent/npolymer≦1.6の範囲内にしなければならないことも示している。
【0074】
本発明で提案するルミネセンス材料の粒子(ガドリニウム−ルテチウム−ユーロピウムから構成される)の屈折率がn=2.2である場合、この不等式の上限は、使用されるポリマーの光学的特性によって決定され、それらのポリマーは典型的には低い屈折率を有する。すなわち、メチルメタクリレートは屈折率n=1.45である。よく知られているオルガノシリコンポリマーはn=1.45〜1.55である。光学エポキシポリマーはn=1.56である。本発明者らは、本発明において、屈折率n=1.59〜1.60であり、可視スペクトル内で透光率が約91〜92%であるX線耐性ポリカーボネートの使用を提案する。この場合、ポリカーボネートポリマーとX線ルミネセンス材料から構成されるヘテロ相媒体中の光伝播は2.3倍に増加し、または、ルミネセンス材料が最適な濃度で採用された場合には2.8倍になる。
【0075】
X線感受性層のこの重要な利点は、屈折率n=2.2の希土類X線ルミネセンス材料の分散媒を被包する屈折率n=1.59〜1.60のポリカーボネートから構成される分散媒を特徴とする検出器で実現される。
【0076】
また、本発明者らが研究で見出しているように、検出器のヘテロ相材料のポリマー体積濃度の増加は、さらなる視感透過またはルミネセンス材料放射線チャネリングを生じ、75〜80%を超えるヘテロ相媒体中のポリマーの体積濃度の過剰な増加は悪影響を及ぼす。これは、ヘテロ相検出器中のポリマーの体積濃度の増加と共に検出器素子のX線放射強度が減少することにより生じる。表3に、検出器の放射線強度と半透明ポリマーの体積濃度との間の依存性に関するデータを示す。これは、X線感受性層を製造するための最適な濃度が、20〜60%の比率であることを示唆する。
【0077】
【表3】

【0078】
(検出層の製造プロセス)
参考文献に、多素子X線検出器製造のいくつかの製造プロセスが示されている。
【0079】
第1に、その押出成形法には、高密度ポリエチレン(HDP)とルミネセンス材料粒子との混合物からの超濃縮液の調製が含まれる。これらの超濃縮液は、最大で20質量%のルミネセンス材料を含有する。次いで、これらの微粒子が、シングルウォーム押出機で、ポリエチレン薄膜として押出成形される。次いで、この膜が、T=130〜160℃の温度で検出器の櫛形構造上に成形され、個別の層としての性質を提供するのに必要なキャビティを形成する。
【0080】
この手順は工業的に実施されているにもかかわらず、重大な欠点がある。すなわち、この手順によれば、溶融ポリエチレン中のルミネセンス材料が2度加熱され、その結果、X線ルミネセンス材料の表面酸化が生じ、GdSOのオキシ硫酸塩膜が形成されてしまう。これにより、非放射再結合、および、X線放射を光に変換する効率が低下してしまう。広く使用されているプロセスのこの欠点をなくすために、本発明者らは、検出器を製造するための鋳造プロセスを開発した。以下のことが、この鋳造プロセスの主な特徴である。
【0081】
− ポリカーボネートとルミネセンス材料粒子との分子分散液から構成される特別な構成の懸濁液の使用
− 検出器のグリッド上に塗布されるルミネセンス材料懸濁液の不足分供給のための分離ダイホールの利用
− 予め固定されたグリッドシートを有する移動連続ベルトの利用
− 層を完全に貫通する赤外光でのヘテロ相ポリマー層の乾燥
得られる検出層は、例えば40〜120μmの精密な厚さを特徴とする。
【0082】
重要な利点は、鋳造プロセス製造を特徴とする検出器のX線感受性コーティングで実現され、これは、ポリマーバインダ溶液への液相X線ルミネセンス材料懸濁液の分散を含み、ここで、ポリマーは、低沸点溶媒中に溶解された分子量M=10000〜15000炭素単位のポリカーボネート、例えば塩化メチレンであり、ポリマー質量の約20〜40%の粉末X線ルミネセンス材料を懸濁液として含有する。
【0083】
本発明者らは、ポリマーバインダとして特殊なX線安定ポリカーボネートの使用を提案する。このポリカーボネートは、官能基(C−O−C−O)を含み、重合度n=150〜250、分子量M=10000〜15000炭素単位である。このポリマーの粒子を、沸点Tboil=40.1℃を特徴とする塩化メチレンCHClタイプの有機塩化物含有溶媒中に溶解させる。鋳造に使用される一次懸濁液は、1:1の塩化メチレン:ポリカーボネート比で特別なミキサで調製し、10〜25センチポアズの所要の粘度を有する溶液にする。さらに、粉末ルミネセンス材料を、使用される始めのポリカーボネートの20〜65質量%まで溶液に添加する。
【0084】
したがって、試験鋳物を製造するために、本発明者らは、50グラムのペレット状のポリカーボネートと、50グラムのCHClと、20グラムのルミネセンス材料粒子とを使用した。懸濁液は、粘度が18〜20センチポアズであり、ステンレス鋼から構成されるテーパダイ中に注がれた。ダイ体積は150cmとした。ダイは、マイクロスクリュによって制御された所要の速度でグリッドシートに懸濁液を塗布することができた。塗布層の厚さは、懸濁液を塗布する速度および金属グリッドシートを担持する移動連続ベルトの速度によって決まった。本発明者らは、移動ベルトの一回の進行で、20μm(使用されるグリッドワイヤの直径の約20%)〜100μmのキャストコーティングを行うことができることを確認した。より厚いコーティングが必要とされた場合には、プロセスを2回行わなければならなかった。2度目の塗布の前に、一次コーティングをT=110〜120℃の温度で30分間重合した。
【0085】
本発明で提案する、グリッドシートバルクに対して直接ルミネセンスコーティング形成を行うための鋳造方法の重要な特徴は、検出器のX線感受性素子を各グリッドセル内に含むグリッドシートから構成される検出器構造全体の可撓性が保たれることである。
【0086】
図3は、検出器素子の様々な試験素子を示す。本発明者らは、100μmワイヤ、120μmワイヤおよび150〜200μmワイヤから構成されるグリッドシート上での検出層の製造に成功した。
【0087】
グリッドシートのルミネセンス多素子コーティングの厚さは、δ=40μm〜δ=120μmで変えた。
【0088】
この場合の検出層内のルミネセンス材料の総装填量は、m=20mg/cm〜m=80mg/cmで変動した。これは、E=20keV〜E=85〜90keVのX線放射の吸収に十分である。多素子検出層は、全厚の30%に当たる、グリッドシート厚さ(完全充填)の80%であり、内面にはキャビティがあり、シリコンフォトダイオードの層に隣接する外面は、溝がなくほぼ滑らかであった。
【0089】
(検出器用のX線ルミネセンス材料の新規の組成物)
開発した本発明の別の分野は、検出器用のX線ルミネセンス材料の新規の組成物の調製であった。図1に示す原子の内殻軌道でのK殻ジャンプに関するデータによれば、材料は、E=40keV〜E=70keVの結合エネルギーを特徴とする内殻K殻軌道上の電子を有する物質を含まなければならない。このために、本発明者らは、KジャンプエネルギーE=56keVのガドリニウムGdやKジャンプエネルギーE=61keVのルテチウムLuなどの元素をルミネセンス材料のマトリックス(基質)として使用することを試みた。KジャンプエネルギーE=54keVの元素ユーロピウムEuと、KエネルギーE=57keVのサマリウムとが中間位置にある。補助吸収元素として、本発明者らは、原子数N=83の元素ビスマスBiをルミネセンス材料に含めることを提案する。ビスマスBiは、酸化物として存在する場合には高い重力密度ρ=8.9g/cmを特徴とし、高い電子ビームエネルギーE=120keVの下でのエネルギーパラメータの向上を可能にする。ルミネセンス材料のエネルギー改質剤として、本発明者らは、ρ=8.2g/cmの密度を有する少量のレニウム酸化物Reの添加を採用する。
【0090】
KジャンプエネルギーE=12keVの酸素Oが、アニオン副格子のベースイオンとして提案される。本発明者らが研究で示しているように、フッ素、塩素、臭素Br(N=35;Kジャンプエネルギー=37keV)およびヨウ素I(N=53;Kジャンプエネルギー=46keV)のイオンもエネルギー改質剤(エネルギー効率を高める添加剤)として使用することができる。
【0091】
したがって、本発明者らは、カチオン副格子として酸化物Gd、Lu、Eu、Dy、Bi、Reの範囲のX線感受性ルミネセンス材料、および、アニオン副格子としてO−2、S−2、Se−2、F、Cl、Br−1、J−1の範囲のイオンの、以下の組成物を提案する。
【0092】
本発明で提案する結晶化学性質の組成物のほとんどは、F−1、Cl−1、Br−1、J−1、N−3から構成される群のイオン配位子がさらに加えられた一配位酸硫化セレン化物である。本発明で提案するX線ルミネセンス材料の組成物は、X線ビームの初期エネルギーが80keVである場合に最大24%の(絶対)エネルギー効率を提供し、しかも層の厚さを減少させる。本発明で提案するルミネセンス材料の放射線スペクトルは主に可視スペクトルの赤色領域内にあり、シリコン光検出器の感度と最適に相関するので、シリコン光検出器が電流信号の1.8〜2倍の強度を生み出す。
【0093】
この重要な利点は、以下の化学量論式を特徴とするX線ルミネセンス材料に基づく検出器で実現される。
(ΣMe)2−x(ΣHal)x/2−3x/2,S1+y
ここで、ΣMe=Gdおよび/またはLuおよび/またはEuおよび/またはDyおよび/またはBiおよび/またはReであり、
ΣHal=F−1および/またはCl−1および/またはBr−1および/またはJ−1であり、
化学量論係数は、以下の範囲内である。
0.001<x≦0.08、0.001≦y≦0.01
【0094】
本発明で提案するガドリニウム(最大50%原子単位)と、ルテチウム(最大42原子単位)と、ユーロピウム(最大6%原子単位)と、ジスプロシウム、ビスマスおよびレニウムの混合物(最大2%原子単位)とから構成されるX線ルミネセンス材料の原子数の平均値はN=69単位であり、実験から求められた実効密度値はρ=8.3〜8.5g/cmである。
【0095】
(X線ルミネセンス材料の処理)
材料が10元素よりも多くの元素を含む場合、元素の濃度に関して生成物の不均質性が生じないようにし、同時に化学的な強度および安定性の要件の下での化合物の計画的な合成を実現する材料製造技術を提案しなければならない。
【0096】
同じく特許請求される本発明におけるルミネセンス材料は、主にCsJ:Tlタイプの柱状ウィスカー結晶の真空蒸着による処理、または、酸硫化ガドリニウムGdS:Tbの化学的な1段階の溶融処理による処理を提案することに留意すべきである。
【0097】
最も近い同等の処理として、本発明者らは、本発明で提案する、希土類イオンとd殻イオン(Bi、Re、Br−1、およびJ−1)から構成されるX線ルミネセンス材料の溶融処理を2段階の合成プロセスで提案する。第1の段階において、T=400℃〜T=700℃の温度で1〜4時間、始めに共堆積された希土類元素BiおよびReの酸化物とハロゲン化アンモニウムとを相互作用させることによって、カチオン群の元素のオキシハライドを生成する。続いて、1:1または1:3の分子比率でのアルカリカルコゲナイド中で、T=800℃〜T=1200℃の温度で二次熱処理を2〜8時間行い、その後、水および鉱物酸溶液で最終生成物の浸出を行う。
【0098】
したがって、本発明で提案する希土類X線ルミネセンス材料の生成の主な特徴は、一体化されたプロセスの各段階での様々な化学試薬の使用と共に、時間および温度の面で多段階であることである。
【0099】
特許請求の範囲に記載されるX線ルミネセンス材料のいくつかの可能な組成を表4に示す。
【0100】
【表4】

【0101】
本発明で提案する合成プロセスの別の特徴は、希土類X線ルミネセンス材料の組織化された粒子の開発である。そのような粒子の1つを図4に示す。これは、粒子の高い透光性および一軸性と共に、形成された粒子の高い一様性を示す。
【0102】
X線ルミネセンス材料粒子の外的耐性を向上させるために、それらの表面を、厚さ40nm〜100nmのケイ酸亜鉛ZnO・SiOをベースとする薄い半透明コーティングで覆う。このコーティングは固体であり、HOおよび活性ガスから粒子を保護する。さらに、このケイ酸亜鉛膜は、良好な流動性を提供し、ルミネセンス材料粒子の凝集を防止する。
【0103】
本発明者らは、バルク生成物中に凝集粒子が包有されている可能性を求めるための特別な技法を試みた。この技法は、特定の質量のルミネセンス材料粒子の体積測定を含む。再現性を高めるために、ルミネセンス材料のバッチ重量を、較正されたシリンダ内で5分間、5Hzの振動数で振動させる。得られるX線ルミネセンス材料粉末の体積は、化学組成、粒子形状、および凝集物の存在によって決まる。本発明で提案する技法によれば、X線ルミネセンス材料(Gd0.3Lu0.55Bi0.05Eu0.011.91.9(B,J)0.1(S,Se)に関する比容積値は、ρ=4.8〜4.9g/cmであった。これは、ルミネセンス物質の推定される理論上の密度約ρ=8.3〜8.5g/cmを考慮すると、非常に大きな値であると考えられる。高いバルク密度のこの利点は、ヘテロ相層の非常に高い充填密度(約40〜120mg/cm)を特徴とする本発明で提案する検出器で実現される。
【0104】
したがって、X線ルミネセンス材料の得られる高いバルク密度値は、多素子X線画像化検出器に関する総光強度値を高めることができるようにする。本発明者らによる測定では、80keVのX線ビームエネルギーに対する総光強度値は4cd/mを上回った。
【0105】
(フォトダイオードマトリックス)
新規の装置の次の設計構成要素は、n列m行のマトリックスで配列されたフォトダイオードである。値「n」および「m」は、検査される物体のサイズに応じて決まる。したがって、事前の調査で分かっているように、歯牙顔面X線検査にはn=64およびm=64で十分である。歯牙顔面用途に関する要件には256×256素子のマトリックスが十分に見合ったものとなる。マンモグラフィには256×256〜512×512素子のマトリックスが適しており、より大きな対象物には1024×1024で十分である。そのようなマトリックスは、10才以下の子供の患者の大抵のX線検査に適している。成人患者の検査には、3072×3072(正方形)および2048×4096(長方形)素子の最も大きなマトリックスが必要とされる。これらのワイドスクリーンマトリックスは、440×440mmの視野を提供し、これは、X線EOICで提供されるいかなる視野(200×200mm)よりも大きい。
【0106】
本発明に戻ると、感光素子を様々な化学元素を利用するマトリックスとして製造することができることには言及した。デジタルマトリックスX線検出器の最初の構成は、元素セレンSeを用いたマトリックスを使用した。この材料は、容易に真空蒸発され(Tevp≒600℃)、片面で最大2000素子のテンプレート堆積蒸着によって、様々な構造の加工を可能にし、高精細度を保つ。しかし、実証されている技術であるにもかかわらず、セレンマトリックスには明らかな欠点があった。すなわち、総光感度値が1cm当たり約1ルクスであり、これは、X線ルミネセンス材料による多量の発光を必要とした。さらに、セレン層の感度が低いため、X線管(放射線源)での高い作業電流が必要であり、その結果として患者はかなりの放射線を被爆することになる。
【0107】
多素子検出器に元素ケイ素を利用し始めたことで重要な進展が得られた。当初、この設計は画像の光学的伝達を示してはいたが、1素子当たり最大10−4ルクスの感度を特徴とするCCDマトリックスが必要とされた。しかしながら、これらの高い感度値は、単結晶シリコン素子で達成可能なものであり、大きな検出器が必要とされた場合の構成は経済的に望ましくなく、技術的にも不十分であった。
【0108】
能動マトリックス液晶ディスプレイの開発が、多結晶膜さらには非晶質膜シリコンコーティングを可能にした。コーティングの処理および特性は様々であった。以下にこれらの問題を特に論じる。
【0109】
まず、Scint−x(Scintillator technology)社の材料を使用して、本発明で提案するシリコンマトリックス検出器を製造する技術を説明する。プロセスフローは、以下の6段階を含む。
【0110】
段階1−一次多結晶コーティングの表面酸化。酸化は、酸素雰囲気中で行い、圧力p=10mmHgでガス放電酸素プラズマによる点火を必要とする。多結晶シリコン表面上に生成されるSiO膜は、δ=250nm〜δ=1.5μmである。
【0111】
段階2−多結晶シリコンへのフォトリソグラフィ。フォトレジストの一次層を、遠心分離プロセスによってシリコン上に塗布する。フォトレジストは、特殊な成分により、重合中に感光性を得る。
【0112】
フォトレジスト層に熱を加えて、層をより薄くする。次いで、フォトレジスト層を、クロムめっきネガを通して硬紫外線および青色放射線に露出させる。UV光で露光されたフォトレジスト層の領域は、重合して不溶性コーティングを形成する。フォトレジストの残りの部分は、フォトレジストの重合領域を保持する多結晶シリコン基板から除去される。
【0113】
次の段階は、二酸化ケイ素層への穴形成である。通常、このプロセスは、特殊な装置で低フッ素化ハロゲン化水素プラズマのHF雰囲気中で行う。
【0114】
二酸化ケイ素のエッチング中に生成されるガスSiFを除去し、二酸化ケイ素チャネルを開け、シリコンのさらなる直接のエッチングを可能にする。
【0115】
次の段階は、シリコン層のエッチングである。これは、電気化学エッチングまたは深堀り反応性イオンエッチング(DRIE)法によって行う。二酸化ケイ素の表面格子が、多結晶シリコン層の直接のエッチングを防止する。したがって、多結晶シリコンのエッチングされたチャネルと、浮彫りにされた領域が、シンチレータ検出器の光検出器の所要のテクスチャを形成する。
【0116】
Scint−x社によれば、次の段階は、形成された多素子シリコンマトリックスへのシンチレーティング物質の膜のコーティングである。本発明の変形形態の1つは、検出器マトリックスを金属グリッドシートで直接覆い、金属グリッドシートを光検出器マトリックスの上に固定し、次いで多素子シンチレーティング層を定位置で鋳造することを提案する。この技法に関して、本発明者らは、X線耐性を提供する検出器用の最適なポリマー組成物を選択した。本発明者らが提案するポリマーは、破壊されることなくT=400℃までの加熱に耐えることができる。ポリマーの別の重要な特性は、X線を含めた様々なタイプの貫通放射線に対するその高い耐性である。
【0117】
Scint−x社によれば、最終段階は、シンチレータに向かう放射線に対して透明な層で感光性マトリックスをコーティングすることによる、感光性マトリックスのパッシベーションである。
【0118】
高いコントラストに加えて画像分解能が装置に最も重要である場合には、ワークフローは以下のことを遵守しなければならない。すなわち、始めに、光信号の読み取りのためにシリコンマトリックス基板を製造しなければならず、次いで、この基板の上に放射線検出器の多素子層を形成しなければならない。シリコン光検出器の中心とシンチレーティングX線感受性検出器の中心との適切な位置合わせのために対角3点位置合わせシステムを使用し、これは、シリコンマトリックス上の3つの突起した基準マークの位置決めを含み、これらの中心が、シンチレーティング検出器のグリッドプレートを位置決めするために使用される。グリッドシートの外面に薄い半透明膜をコーティングし、これは、フォトダイオードマトリックスシートとマトリックスシンチレーティング検出器シートとの固定および位置合わせを可能にする。さらに、構成された組を鋳造機械の移動プレート上に配置し、鋳造機械が、ポリカーボネートX線ルミネセンス材料懸濁液を鋳造してグリッドセルを形成する。したがって、検出器は、高いX線感度および画像輝度という所要の特性を得る。
【0119】
多素子検出器では相違が実現され、グリッドシートが固定されたシリコン感光性セルの上にX線感受性層を直接形成し、それにより、感光性セルの光学的中心が各グリッドセルの「実効断面積」の中心と位置合わせされる。
【0120】
本発明者らが見出しているように、高エネルギーシステムでは、シンチレータ(全深度ヘテロ相X線ルミネセンス層検出器)に関して、鋳造された各ヘテロ相層の重合を合間に行いながら2段階または3段階で鋳造することがより実用的である。提案されたT=130〜140℃の重合温度は、シリコン光検出器マトリックスの一貫性に影響を及ぼさない。X線ルミネセンス材料による単層の質量負荷はm=20〜25mg/cmであり、これは、E=40keVの初期エネルギーを有するX線放射の完全な吸収に相当する。m=20〜25mg/cmの質量負荷を有する第2の鋳造ヘテロ相シンチレーティング層は、初期エネルギーE=80keVを有する放射線を吸収することができるコーティングをもたらす。第3の鋳造層では、コーティングの厚さはE=120keVの吸収に十分であり、これは、主な医療および診断用途に適している。
【0121】
以上のようにして得られる多層シリコンおよびポリマーシンチレーティング構造を試験用に準備する。これは、フォトダイオードマトリックスの整流配線を整列させ、それらを、多数のコンタクトワイヤを含む端子にまとめることを必要とする。端子は、周辺レセプタクルに固定される。
【0122】
装置の最初の試験は、Siemens社のX線装置または同様のX線装置で、E=80keVの試験放射線エネルギーで行われる。様々なサイズのセルを有する円形テンプレートが基準として使用される。
【0123】
図5は、中心円直径が120mmの多素子検出器ディスプレイの写真を示す。この写真から明らかなように、この構成の分解能は、1mm当たり4対をはるかに超えるライン数である。
【0124】
全コントラスト範囲は50%超であり、ルミネセンス材料組成物と、ルミネセンス材料の厚さと、織製されたグリッドシートの特性との改良が、ほぼ完全なバランスおよび背景光の減少をもたらす。この利点は、本発明で提案する多素子検出器で実現され、50%を超える画像化コントラストと、1ミリメートル当たり4対を超えるライン数の分解能とを特徴とする。参考文献には、ゴースト光のない画像化品質に関する同様の説明は見当たらない。
【0125】
本発明で提案する検出器の開発および工業的処理は、複雑で高度な製造プロセスであり、高品質のワークフローの実施を必要とする。これらの検出器の製造開始は2010年に計画された。
【符号の説明】
【0126】
1 多素子シンチレータ、 2 金属グリッド、 3 グリッドセル、 4 ヘテロ相シンチレータ素子、 5 透光性ポリマー、 6 X線発光粒子、 7 光ダイオードマトリクス、 8 フォトダイオード、 9 ベースプレート、 10 反射コーティング、 11 ポリマーコーティング、 12 カバーガラス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シンチレータの外面に当たるX線を可視光に変換するプレートタイプの多素子シンチレータと、
前記シンチレータの放射面と光学的に接触し、前記シンチレータの内面で放射される光放射を電気信号に変換する光検出器マトリックスと、
を備える多素子X線検出器であって、
前記多素子シンチレータは、X線を吸収して光を反射する金属から構成されるグリッドのセル内に位置するヘテロ相ルミネセンス素子の個別の組が、各特定のルミネセンス素子に関する間隔、断面および相互接続厚さに関する幾何学寸法でもって組み合わされたものであり、かつ、前記光検出器マトリックスの作用に適合しており、
前記金属グリッドの裏面は反射層を有し、一方で前記金属グリッドの前面はルミネセンス検出器と素子毎に接触する多素子半導体マトリックスを有し、
前記接触している素子が、30〜140keVのエネルギーを有するX線放射によって同時に励起される、
ことを特徴とする多素子X線検出器。
【請求項2】
前記金属グリッドが原子数N=24〜N=74の元素からなり、前記グリッドサイズが1mm当たり2〜4、20〜40または40〜60巻きである、請求項1に記載の多素子X線検出器。
【請求項3】
前記X線感受性層が、原子数24〜74の元素から構成される金属グリッドのセルによって配列されたX線ルミネセンスの層から構成される多素子モザイクである、請求項1に記載の多素子X線検出器。
【請求項4】
前記検出器の裏面が厚さ2000Å〜6000Åの二層反射膜でコーティングされ、一方、前記検出器の上には、厚さ1000Å未満の金属銀の層と、前記銀層の上にコーティングされた厚さ5000Å未満の反射アルミニウム層とが設けられている、請求項1に記載の多素子X線検出器。
【請求項5】
前記グリッド巻線が、厚さ2000Å未満の反射銀層で電気化学コーティングされている、請求項1に記載の多素子X線検出器。
【請求項6】
グリッドシート長さ1mm当たり3本を超えるワイヤを有して48%超、基本的には61%超、の「実効断面積」を有する前記検出器のX線感受性層のセル状多素子構造を形成するために、金属織製、コイル成形、または電気化学堆積されたグリッドシートが使用されている、請求項1に記載の多素子X線検出器。
【請求項7】
金属グリッド用に、「実効断面積」が64.5%未満のステンレス鋼、ニッケルまたは青銅から構成される織製されたグリッドシート、あるいは、「実効断面積」が85%未満のタングステンワイヤから構成されるコイル成形されたグリッドシートが使用されている、請求項1に記載の多素子X線検出器。
【請求項8】
前記検出器のX線感受性層が、屈折率n=2.2の希土類X線ルミネセンス粒子から構成される分散媒を被包する屈折率n=1.59〜1.60を有するポリカーボネートによって提供される分散媒から構成されている、請求項1に記載の多素子X線検出器。
【請求項9】
鋳造製造法を用い、前記製造法が、ポリマーバインダ溶液中のX線ルミネセンス材の液体懸濁液を前記光検出器マトリックスの表面上に分散させることを含み、
前記ポリマーバインダが、分子量M=10000〜15000炭素単位のポリカーボネートであり、塩化メチレンなどの低沸点溶媒中に溶解され、
粉末X線ルミネセンス材が前記ポリマーの20〜56質量%である、
請求項1に記載の多素子X線検出器。
【請求項10】
前記検出器の光検出器マトリックスが、光学フォトリソグラフィプロセスおよび化学エッチングによる、複数の非晶質または多結晶シリコン層から構成される請求項1に記載の多素子X線検出器。
【請求項11】
金属グリッドシートがその上に固定された前記光検出器マトリックス上に、前記検出器のX線感受性層が直接塗布され、これにより、光検出器の光学的中心が、各グリッドセルの「実効断面積」の中心に正確に位置している、請求項1に記載の多素子X線検出器。
【請求項12】
金属グリッドシートがその上に固定されたX線透過性材料から構成される個別プレート上に、前記検出器のX線感受性層が塗布され、前記グリッドが、前記光検出器マトリックスに対して設けられ、そのセルの側でX線ルミネセンス材を保持し、これにより前記光検出器の光学的中心が、各グリッドセルの「実効断面積」の中心に正確に位置している、
請求項1に記載の多素子X線検出器。
【請求項13】
1ミリメートル当たり4対を超えるライン数の分解能で、前記検出器のコントラスト比が50%超である、請求項1に記載の多素子X線検出器。
【請求項14】
希土類元素の活性化合物を含み、前記検出器の個別のヘテロ相ルミネセンス素子が、ガドリニウム、ルテチウム、ユーロピウム、ジスプロシウム、ビスマスおよびレニウムなどの元素の多配位酸硫化物から得られる希土類ルミネセンス材の単結晶微粒子を含み、それらのベースにおいて、酸素がハロゲンで部分的に置換され、硫黄が窒素で部分的に置換され、それにより化学量論式
(ΣMe)2−x(ΣHal)x/2−3x/2,S1+y
を有し、ここで、ΣMe=Gdおよび/またはLuおよび/またはDyおよび/またはEuおよび/またはBiおよび/またはReであり、
Hal=F−1および/またはCl−1および/またはBr−1および/またはJ−1であり、
0.01<x≦0.08、0.001≦y≦0.01
であり、前記ルミネセンス材の粒子が、3次元多角形の形状であり、20〜65%の比でポリマーバインダの分散相でコーティングされている、請求項1に記載の多素子X線検出器のための希土類X線発光団。
【請求項15】
希土類組成物の共堆積と、その後の希土類イオンおよびd殻イオン(Bi、Re、Br−1、Cl−1、およびJ−1)の溶融化合物中での熱処理による、請求項14に記載のX線発光団のための製造方法であって、
合成が2段階であり、第1の段階が、1〜4時間、T=400℃〜T=700℃の温度の下で、始めに共堆積された希土類元素BiおよびReの酸化物とハロゲン化アンモニウムとの反応によって、カチオンサブグループ元素のオキシハライドを生成し、次いで溶融カルコゲナイド中で二次熱処理を行い、ここで2〜8時間、T=800℃〜T=1200℃の温度の下で分子比率が1:1〜1:3であり、その後、水または鉱酸溶液によって最終生成物の浸出を行う製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−501932(P2013−501932A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524673(P2012−524673)
【出願日】平成22年8月13日(2010.8.13)
【国際出願番号】PCT/RU2010/000449
【国際公開番号】WO2011/019303
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(512036317)ザクリトエ アクチオネルノエ オブシュチェストヴォ ナウチョ−プロイズヴォドストヴェナヤ コメルチェスカヤ フィルマ エルタン リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】ZAKRYTOE AKTSIONERNOE OBSCHESTVO  NAUCHO−PROIZVODSTVENNAYA KOMMERCHESKAYA FIRMA  ELTAN LTD
【住所又は居所原語表記】Zavodskoi proezd, 2, Fryazino Moskovskaya obl., 141190, Russian Federation
【出願人】(512036328)エス・ティー・シー−エム・ティー エル.エル.シー. (1)
【氏名又は名称原語表記】STC−MT  LLC
【住所又は居所原語表記】dom 6, Izmailovskoe Shosse, Moscow 105118, Russian Federation
【Fターム(参考)】